転写方法および転写装置
【課題】原板が有する凹凸パターンを容易にかつ高い位置精度で基板上の転写液層にインプリントすることのできる技術を提供する。
【解決手段】原板Mの凹凸パターンP面が基板S上に塗布された転写液層UVRに接触した状態で、原板Mおよび基板Sのそれぞれに形成されたアライメントマークALを、1つの認識手段により、両アライメントマークALが重なる方向から同時に撮像して得られた1つの画像から両アライメントマークALの位置を別々に認識処理することで原板Mと基板Sとのアライメントを行う。そのため、撮像された原板Mおよび基板Sのアライメントマーク画像に相対的な位置誤差が生じるおそれがなく、振動や異なる走査タイミングに起因する位置誤差が生じることを防止できる。
【解決手段】原板Mの凹凸パターンP面が基板S上に塗布された転写液層UVRに接触した状態で、原板Mおよび基板Sのそれぞれに形成されたアライメントマークALを、1つの認識手段により、両アライメントマークALが重なる方向から同時に撮像して得られた1つの画像から両アライメントマークALの位置を別々に認識処理することで原板Mと基板Sとのアライメントを行う。そのため、撮像された原板Mおよび基板Sのアライメントマーク画像に相対的な位置誤差が生じるおそれがなく、振動や異なる走査タイミングに起因する位置誤差が生じることを防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原板が有する凹凸パターンを基板上に塗布された転写液層にインプリントする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路や光集積回路の高集積化が要望されており、これに伴い、露光装置を利用して所望の回路パターンを半導体基板に形成する光リソグラフィ技術が急速に進歩している。ところが、このような集積回路の高集積化を可能とする露光装置は非常に高価であり、また、露光装置を用いたデバイス製造プロセスは複雑であるため、単一製品を大量生産するシステムには向いているが、顧客ごとの要望に応じた製品を少量生産するシステムには不向きであった。そこで、原板が有する凹凸パターンを半導体基板上に塗布されたレジストなどの転写液層にインプリントすることにより半導体基板上に所望の回路パターンを形成する半導体リソグラフィ技術が注目されている。
【0003】
このインプリントによる回路パターンの形成技術を用いたデバイス製造は、レンズ等の高価な部品や装置が不要であること、また、デバイス製造プロセスも簡易なものとなることから、デバイス製造のコストダウンを図ることができるものとして期待されている。その一方で、原板が有する凹凸パターンを半導体基板上に塗布された転写液層にインプリントするときに、例えば光学的手法を用いて予め原板と半導体基板とのアライメントを高精度に行っても数μmの単位で位置誤差が生じることが知られている。
【0004】
例えば、インプリントによる半導体リソグラフィ技術における従来のアライメントは、光リソグラフィ技術におけるマスクと半導体基板との位置調整装置を流用して、原板と半導体基板とのアライメントを大気中で行われている。そして、原板と半導体基板とのアライメントを行った後は、原板および半導体基板を治具で固定した状態でプレス装置に搬送し、このプレス装置により加熱しながら原板および半導体基板をプレスすることで、原板が有する凹凸パターンが半導体基板上に塗布された転写液層にインプリントされる。
【0005】
しかしながら、上記した従来の位置調整装置では、原板と半導体基板との間に隙間を空けて、非接触の状態で半導体基板と原板との間の2次元的なアライメントを行っている。したがって、半導体基板の凹凸パターンの原板上の転写液層へのインプリント時に半導体基板と原板とを近接させて接触させるときに、原板と半導体基板との相対移動に伴う位置誤差が生じるおそれがあった。
【0006】
また、インプリントを真空チャンバー内で行うときは、治具で固定されることにより原板と半導体基板との間に隙間が空いた状態の原板および半導体基板を、内部にプレス装置が配設された真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバーを真空引きした後に治具による固定状態を解除してインプリントを行うこととなるが、このときに位置ずれが生じやすく、インプリント時に位置調整装置によるアライメント時のアライメント精度を維持することが難しかった。
【0007】
そこで、例えば特許文献1に記載の技術のように、原板と半導体基板とのそれぞれに、位置合わせ部として互いに嵌合する凹凸構造を形成し、半導体基板上に塗布された転写液層を原板で加圧するときに、これらの凹凸構造を互いに嵌合させることで、原板と半導体基板とのアライメント精度の向上を図ったものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−5023(段落0016〜0028、図1,6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、インプリントによる回路パターンの形成技術を用いて基板に所望の回路パターンを形成するには、所定の凹凸(回路)パターンを有する複数種類の原板を、原板と基板とのアライメントを高精度に行いながら順番に用いて基板を加工する必要がある。しかしながら、上記した従来技術における位置合わせ部としての凹凸構造を、複数種類の原板および基板のすべてに位置精度よく形成するのは困難である。また、凹凸構造の嵌合により位置合わせを行うため、原板と基板とのアライメントを高精度に行うためには、嵌合状態の当該凹凸構造に遊びが生じないようにしなければならない。ところが、遊びがない状態で当該凹凸構造の嵌合を複数回繰返すと当該凹凸構造が破損するおそれがあり、技術の改善が求められていた。
【0010】
また、凹凸構造の嵌合によるアライメント時は、原板および基板を加圧しながら、さらに、原板および基板の相対的な位置調整を行うこととなるが、このように原板および基板を加圧しながら、すなわち、原板と基板とを近接移動させながら原板および基板の相対的な位置調整を行うことは装置の複雑化を招いていた。また、凹凸構造が互いに摺接して凹凸構造に力が加えられつつ原板と基板とが相対移動するため、Siなどの強度の弱いもろい材料では凹凸構造が壊れるおそれがあった。また、樹脂により凹凸構造が互いに嵌り込まずに原板と基板との間の隙間にばらつきが生じるおそれがあり、このようなばらつきが生じると、位置精度もばらつくこととなる。また、原板の凹凸パターンを複数の基板上の転写液層にインプリントするには、複数の基板のそれぞれにアライメント用の凹凸構造を形成する加工を施さなければならず、生産性の向上の妨げとなっていた。また、このように、アライメントのために製品である基板に加工を施すことに対して、技術の改善が求められていた。したがって、インプリント時の位置精度に課題はあるものの、非接触で原板と基板とのアライメントを行う従来の方法が採用されることが多く、基板上に超高集積の回路パターンを形成することの妨げとなっていた。
【0011】
この発明は上記した課題に鑑みてなされたものであり、原板が有する凹凸パターンを容易にかつ高い位置精度で基板上の転写液層にインプリントすることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る転写方法は、原板が有する凹凸パターンを基板上に塗布された転写液層にインプリントする転写方法において、1つの認識手段により、前記原板の凹凸パターン面が前記転写液層に接触した状態で、前記原板および前記基板それぞれに形成されたアライメントマークを該両アライメントマークが重なる方向から同時に撮像して得られた1つの画像から、前記両アライメントマークの位置を別々に認識処理し、前記両アライメントマークの画像の相対的な位置関係に基づき前記原板と前記基板とのアライメントを行うことを特徴としている(請求項1)。
【0013】
また、本発明に係る転写装置は、原板が有する凹凸パターンを基板上に塗布された転写液層にインプリントする転写装置において、前記原板および前記基板のそれぞれに形成されたアライメントマークを撮像する機能を有する1つの認識手段と、前記認識手段による前記原板および前記基板の前記アライメントマークの認識に基づいて前記原板と前記基板とをアライメントするアライメント手段とを備え、前記アライメント手段は、前記原板の凹凸パターン面が前記転写液層に接触した状態で、前記認識手段により、前記原板および前記基板それぞれに形成されたアライメントマークを該両アライメントマークが重なる方向から同時に撮像して得られた1つの画像から前記両アライメントマークの位置を別々に認識処理し、前記両アライメントマークの画像の相対的な位置関係に基づき前記原板と前記基板とのアライメントを行うことを特徴としている(請求項4)。
【0014】
本発明者は、原板が有する凹凸パターンを基板上に塗布された転写液層にインプリントするときに、予め原板と基板とのアライメントを高精度に行っても数μmの単位で位置誤差が生じることに着目して種々の実験を行い、原板が有する凹凸パターンが基板上に塗布された転写液層に接触した状態で、原板と基板とのアライメントを行うことにより、インプリントにおける位置誤差が数nmの単位まで減少することを見出した。これは、上記しした原因に加えて、原板が有する凹凸パターンと基板上の転写液層とが非接触の状態で原板と基板とのアライメントを行えば、インプリントに際して原板が基板上の転写液層へ接触した時に何らかの外力が発生してアライメント誤差が生じるが、原板が有する凹凸パターンが基板上の転写液層に接触した状態でアライメントを行えば、インプリント時に原板と基板上の転写液層とが接触することによる外力の発生を防止でき、その結果、アライメント誤差の発生を防止できるからであると考えられる。
【0015】
したがって、上記したように構成された請求項1,4に係る発明では、原板の凹凸パターン面が基板上に塗布された転写液層に接触した状態で、原板および基板のそれぞれに形成されたアライメントマークを認識手段により認識することで原板と基板とのアライメントを行っているため、従来のように原板および基板に対して特殊な加工を施さなくとも、原板が有する凹凸パターンを容易に高い位置精度で基板上の転写液層にインプリントできる。しかも、1つの認識手段により原板および基板のアライメントマークを認識することで原板と基板とのアライメントを行っているため、原板および基板にアライメントに伴う破損が生じるおそれがない。
【0016】
さらに、認識手段により、原板および基板の両アライメントマークが重なる方向から同時に撮像して得られた画像から両アライメントマークの形状を検出するため、撮像された原板および基板のアライメントマーク画像に相対的な位置誤差が生じるおそれがなく、振動や異なる走査タイミングに起因する位置誤差が生じるのを防止でき、しかも1つの認識手段で済み構成を簡素化できる。1つのメモリフレームに画像を取り込んだ後、別々にソフト処理すればよい。また、原板および基板がシリコンなどの赤外線が透過する材料で構成されている場合には、赤外光を投光することにより赤外線カメラで原板および基板のアライメントマークを読取ることができる。
【0017】
また、アライメント時に原板と基板とをより近接させることで、原板および基板の両アライメントマークを撮像手段の被写界深度内として、焦点がずれてぼけたりすることなく両アライメントマークの撮像を同時に行うことができる。ところで、両アライメントマークが撮像手段の被写界深度内に入らないときは、例えば圧電素子により撮像手段が備えるレンズを微小移動する構成としてもよい。このような構成とすれば、圧電素子によりレンズを微小移動することで、焦点距離が微小に移動してオートフォーカスされ、原板および基板の両アライメントマークを被写界深度内とすることができる。
【0018】
また、前記認識手段は、同時に撮像した前記両アライメントマークの画像のうち、ぼやけた方の画像に対してベクトル相関法による画像処理を施してエッジを検出して当該アライメントマークの形状を検出するものであってもよい(請求項2,5)。
【0019】
タイミングによる位置ずれを防ぐために、原板および基板のアライメントマークを同時に読み取ることが望ましいが、焦点方向に離れたマークにおいては少なくとも一方にぼやけが生じる。しかし、請求項2のような構成とすれば、離れた両マークにおいては撮像手段により同時に撮像した原板および基板のアライメントマーク画像に焦点が合わないことによるぼやけが生じていても、ベクトル相関法により両アライメントマーク画像のエッジをベクトルで表示し、複数のベクトルの向きからなる形状で認識することで、ぼやけてもベクトルの長さは変わっても形状に変化はないので精度よく検出できる。また、撮像手段を赤外線カメラで構成した場合には、赤外線カメラで撮像した両アライメントマーク画像のエッジ部分はぼやけることが多いが、ベクトル相関法により両アライメントマークを精度よく検出できる。
【0020】
また、前記原板および前記基板それぞれに形成された前記アライメントマークの形状が異なっており、一方の外周が他方の外周に重ならない形状であるとよい(請求項3)。
【0021】
このような構成によれば、例えば原板のアライメントマークとして中空の□を透設し、基板のアライメントマークを原板のアライメントマークである□中に内接しないより小さい○とすることで、原板および基板それぞれの両アライメントマークの外周が重なることがなく、認識手段による両アライメントマークの同時撮像画像から、両アライメントマークの形状検出を確実に行うことができる。さらに、原板が金属により構成されている場合には、原板に穴を透設し、この穴を介して基板のアライメントマークを読取ることで、原板に形成した穴をアライメントマークとして用いることができる。
【0022】
なお、原板および基板上にアライメントマークを形成する位置は、原板の凹凸パターンの外側および基板上に回路パターンが形成される範囲の外側とするのがよい。また、大面積の基板に、一の原板の凹凸パターンを後述するように連続的にインプリントする場合は、基板上に凹凸パターンがインプリントされる複数の位置は、それぞれ隣接する位置の間に隙間を空けて、その隙間にアライメントマークを形成する必要があるが、アライメントマークを凹凸パターン内に形成することで、これらの隙間を設けずともよい。また、アライメントマークを凹凸パターンの隅部に形成すれば、凹凸パターンの隅部が削られるのみであるのでアライメントマークを形成することによる影響を少ないものとすることができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1,4に係る発明によれば、原板の凹凸パターン面が基板上に塗布された転写液層に接触した状態で、1つの認識手段により、原板および基板のそれぞれに形成された両アライメントマークをこれらが重なる方向から同時に撮像して得られた1つの画像から、両アライメントマークの位置を別々に認識処理し、両アライメントマークの画像の位置関係に基づき原板と基板とのアライメントを行うため、従来のように原板および基板に対して特殊な加工を施さなくとも、原板が有する凹凸パターンを容易にかつ高い位置精度で基板上の転写液層にインプリントできる。さらに、認識手段により原板および基板のアライメントマークを同時に読取るため、撮像された原板および基板のアライメントマーク画像に相対的な位置誤差が生じるおそれがなく、振動や異なる走査タイミングに起因する位置誤差が生じることを防止できる。
【0024】
請求項2,5に係る発明によれば、撮像手段により同時に撮像した原板および基板のアライメントマーク画像に焦点が合わないことによるぼやけなどが生じていても、ベクトル相関法により両アライメントマーク画像からアライメントマークの形状を精度よく検出することができる。
【0025】
請求項3に係る発明によれば、原板および基板それぞれのアライメントマークの外周が重なることがなく、認識手段によるアライメントマークの形状検出を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の転写装置の第1実施形態であるナノインプリント装置の構成を示す図である。
【図2】図1のナノインプリント装置の要部拡大図である。
【図3】基板の全面が均一に加圧されている状態を示す図である。
【図4】主に基板の中央部が加圧されている状態を示す図である。
【図5】主に基板の周縁部が加圧されている状態を示す図である。
【図6】基板の全面を均一に加圧する方法の一例を示す図である。
【図7】基板の全面を均一に加圧する方法の一例を示す図である。
【図8】基板の全面を均一に加圧する方法の一例を示す図である。
【図9】基板の転写層に原板の凹凸パターンを連続的に転写する状態を示す図である。
【図10】基板を移動する粗動テーブルの構成を示す図である。
【図11】ナノインプリント装置の要部拡大図である。
【図12】ナノインプリント装置の要部拡大図である。
【図13】インプリント方法の一例を示す図である。
【図14】図13に示すインプリント方法を示す図である。
【図15】インプリント方法の他の例を示す図である。
【図16】図15に示すインプリント方法を示す図である。
【図17】本発明の転写装置の第2実施形態であるナノインプリント装置の構成を示す図である。
【図18】駆動ユニットを示す図である。
【図19】駆動部の正面図である。
【図20】駆動部の一部の平面図である。
【図21】駆動部によるウォーキング動作の説明図である。
【図22】駆動部によるウォーキング動作の説明図である。
【図23】ステージを位置決めする位置決め動作の説明図である。
【図24】平面調整機構の動作の一例を示す図である。
【図25】平面調整機構の動作の一例を示す図である。
【図26】主に基板の中央部が加圧されている状態を示す図である。
【図27】主に基板の周縁部が加圧されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
本発明の転写装置の第1実施形態であるナノインプリント装置1について図1を参照して説明する。図1はナノインプリント装置1の構成を示す図である。図1に示すナノインプリント装置1は、SiO2などにより構成される透光性を有する原板Mにリソグラフィ法により形成された凹凸パターンを、基板S上に塗布された紫外線硬化型樹脂液層からなる転写液層にインプリントするものであり、基板Sが載置される平面調整機構2と、原板Mおよび基板Sのそれぞれに形成されたアライメントマークALを同時に読取り可能な認識手段3と、認識手段3による原板Mおよび基板SのアライメントマークALの読取りに基づいて原板Mと基板Sとをアライメントするアライメント手段4と、モニタ8aを備え、平面調整機構2、認識手段3およびアライメント手段4の駆動制御を行うコントローラ8とを備えている。
【0028】
また、平面調整機構2はナノインプリント装置1が備える真空チャンバー5内に配設されており、真空ポンプ6により真空チャンバー5内を真空引きすることにより、原板Mの凹凸パターンの基板Sの転写液層へのインプリントを真空中で行うことができる。また、真空チャンバー5の上部にはガラス窓7が設けられており、認識手段3はガラス窓7を介して原板Mおよび基板SのアライメントマークALを読み取り、ガラス窓7を介して基板Sに塗布された紫外線硬化型樹脂液層に紫外光を照射することができる。また、真空チャンバー5内のガラス窓7の下部に、原板M、基板Sやその他の部品などを保持可能に、図示省略された静電チャック、機械式チャック、バイスなどの保持機構が設けられている。
【0029】
そして、この保持機構に、原板Mの代わりに基板Sまたはその他の部品を保持することで、ナノインプリント装置1を、平面調整機構2が有するステージ21に載置された基板Sと、保持機構に保持された基板Sまたは部品との接合装置として使用することもできる。また、後述するように、保持機構に保持された原板Mまたは基板S、その他の部品と、ステージ21上の基板Sとは、ステージ21を上方に移動することで接触し、ステージ21とガラス窓7下部の保持機構により狭持されて加圧される。したがって、ガラス窓7は、保持機構に保持された原板Mなどを、上面側から支持可能に硬質ガラスにより構成されている。
【0030】
認識手段3は、X−Y方向および焦点方向であるZ方向に移動可能なカメラテーブル31と、紫外線光源32aからの紫外光をガラス窓7およびSiO2で構成された原板Mを介して基板Sに導光して照射するファイバーレンズ32と、ガラス窓7を介して原板Mおよび基板SのアライメントマークALを同時に読取り可能にCCDなどにより構成されるカメラ33とを備えている。また、ファイバーレンズ32とカメラ33とはカメラテーブル31に設置されており、コントローラ8からの制御指令に基づくカメラテーブル31のX−Y方向およびZ方向への移動により、ファイバーレンズ32およびカメラ33はガラス窓7の上方に選択的に配置されて、基板Sに紫外光を照射するとともに、原板Mおよび基板SのアライメントマークALを同時に読み取る。
【0031】
アライメント手段4は、ピエゾ素子等により構成されてナノメートル単位での位置制御が可能なX−Yテーブル41と、一端が圧力センサ42を介してX−Yテーブル41に取り付けられて他端が真空チャンバー5外に導出されたZ軸43と、Z軸43をガイドするZ軸ガイド44aを有しZ軸43をθ(回転)方向に回転可能なθ軸44と、ボールねじ45aを介してZ軸43をY方向へ昇降制御可能であってコントローラ8により制御されるサーボ機構45とを備えている。なお、Z軸43の他端は、Oリング(図示省略)を介して真空チャンバー5の外へ導出されているため、真空チャンバー5内の雰囲気と外気とは確実に遮断される。
【0032】
また、サーボ機構45によりZ軸43が上方に移動制御されて、X−Yテーブル41に設置された平面調整機構2のステージ21上に載置された基板Sが原板Mに接触したことを、圧力センサ42により検出できるとともに、圧力センサ42の出力がコントローラ8にフィードバックされる。そして、コントローラ8は圧力センサ42の出力を利用してZ軸43を昇降制御することにより基板Sの原板Mに対する加圧力を制御できる。また、同軸光源33aからの光が照射された原板Mおよび基板SのアライメントマークALがカメラ33により同時に読取られることにより得た位置情報がコントローラ8にフィードバックされて、コントローラ8はカメラ33により得た位置情報を利用して原板Mおよび基板SのアライメントマークALの相対的な位置誤差を導出し、この位置誤差に基づいてアライメント手段4のX−Yテーブル41およびθ軸44を駆動することにより原板Mと基板Sとのアライメントを高精度に行うことができる。
【0033】
なお、コントローラ8はカメラ33により得た原板Mおよび基板Sのアライメントマーク画像にベクトル相関法による画像処理を施すことにより、それぞれのアライメントマーク画像のエッジを検出している。このような構成とすれば、原板Mおよび基板Sの両アライメントマークALがカメラ33の被写界深度内にない場合に、カメラ33により撮像された両アライメントマーク画像にぼやけが生じた場合であっても、それぞれのアライメントマーク画像の濃淡をベクトル表示することにより、両アライメントマーク画像からアライメントマークの形状を精度よく検出できる。以上のように、コントローラ8は撮像機能を有する本発明の「認識手段」として機能している。
【0034】
次に、平面調整機構2について図2も参照して説明する。図2はナノインプリント装置1の要部拡大図であって平面調整機構2を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。同図に示すように、平面調整機構2は、図示省略されたヒータを備え、静電チャックや機械チャックなどが設けられて基板Sを載置して保持可能に構成されたステージ21と、ステージ21の下面側に設けられた半球体22と、半球体22を接離自在に支持する球面軸受23と、ステージ21を下面側から伸縮することで押圧してステージ21の傾きを制御する3個の圧電素子24a,24b,24cと、圧電素子24a,24b,24cそれぞれの下方に配設され、ステージ21への荷重を検出可能な圧力センサ25とを備えている。平面調整機構2は、圧力センサ25の出力を利用して、ステージ21と原板Mとの間の平行度調整を行うことができる。
【0035】
すなわち、まず、サーボ機構45を駆動して、圧力センサ42によりステージ21と原板Mとの接地が検出されるまでZ軸43を上方に移動する。そして、半球体22が球面軸受23を摺接することによるステージ21と原板Mとの倣いが完了した後、さらに、3つの圧力センサ25の出力が一致するように圧電素子24a,24b,24cの伸縮制御を行うことで、原板Mとステージ21との平行度を高精度に調整できる。このように、原板Mとステージ21との平行度を調整することで、図3に示すように、ステージ21に載置された基板Sを原板Mに対して、全面にわたって均一に加圧できる。なお、図3は基板Sの全面が均一に加圧されている状態(以下、「均一加圧状態」と称する)を示す図である。
【0036】
次に、図4を参照して平面調整機構2の制御方法の一例について説明する。図4は主に基板Sの中央部が加圧されている状態(以下、「中高状態」と称する)を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図である。同図に示すように、コントローラ8からの制御指令より、圧電素子24a,24b,24cが縮むように駆動制御された状態で、Z軸43を上方に移動してステージ21に載置された基板Sと原板Mとを接触して加圧することで、球面軸受23によりステージ21(半球体22)が支持された基板Sの中央部を重点的に加圧することができる。このような構成とすれば、中央部に溜まった空気が基板Sの周縁部側へ押し出されるため、特に、基板中央部付近にボイドが発生するのを防止できる。
【0037】
次に、図5を参照して平面調整機構2の制御方法の他の例について説明する。図5は基板Sの主に周縁部が加圧されている状態(以下、「中べこ状態」と称する)を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図である。同図に示すように、コントローラ8からの制御指令より、圧電素子24a,24b,24cが伸びるように駆動制御した状態で、Z軸43を上方に移動してステージ21に載置された基板Sと原板Mとを接触して加圧することで、圧電素子24a,24b,24cによりステージ21が支持された基板Sの周縁部を重点的に加圧することができる。このような構成とすれば、周縁部に雰囲気封止用の枠体を形成した基板Sと、原板Mの代わりにステージ21の上方の保持機構に保持された蓋となる基板Sとを接合することにより、両基板S間の枠体に囲まれた部分に任意の雰囲気を封止するときに、基板Sの周縁部を重点的に加圧できるため、枠体と蓋となる基板Sとを良好に接合できる。
【0038】
また、均一加圧状態にするためには、中べこ状態と中高状態との中間の状態となるように圧電素子24a,24b,24cの伸縮を調整すればよい。従来では、ステージ21の傾きが一度固定されれば、該傾きが固定された状態が維持されたため、加圧状態を修正するのは不可能であり、加圧状態は、基板Sの研磨状態はステージ21などの製造精度に依存せざるを得なかったため、均一な加圧状態を達成することは難しかった。本方式においては、圧電素子24a,24b,24cの伸縮量を数値で調整すれば中べこ状態にも中高状態にも調整できるが、このことにより初めて中間の均一加圧状態を生み出すことができ、容易に加圧状態を調整可能である。
【0039】
また、基板Sどうしや、基板Sと原板Mとの接触時の平行度、すなわち、基板S、原板Mおよびステージ21などの傾きと、高加圧時の基板Sなどの平行度(傾き)とには微妙な違いがあるため、上記構成のように、圧電素子24a,24b,24cの長さを数値コントロールすることにより初めて達成でき、中べこ状態と中高状態との両方の状態を達成することを含めて、上記した構成は従来なかった画期的な方法である。
【0040】
また後述する均一加圧方法と同様に、基板Sどうしや、基板Sと原板Mとの接触時に、これらの基板Sどうし、または基板Sと原板Mとが位置ずれしないように、これらの平行度に合わせた状態で接触させるが、このとき、半球体22と球面軸受23とを隙間が空いた状態としてよい。そして、ステージ21の傾きを高加圧(加圧均一)時の傾きに移行し、すなわち、基板Sどうしまたは基板Sと原板Mとの平行度は維持した状態で傾きを変化させ、加圧しながら圧電素子24a,24b,24cを縮めて半球体22と球面軸受23とを接触させ、高荷重で加圧する。そのときの荷重均一性は、圧電素子24a,24b,24cと、半球体22および球面軸受23の軸受動作とがバランスよく機能することにより達成することができる。そして、圧電素子24a,24b,24cが長(高)ければ中べこ状態となり、圧電素子24a,24b,24cが短(低)ければ中高状態となる。
【0041】
次に、図6ないし図8を参照して、このナノインプリント装置1を、ガラス窓7の下部に設けられた保持機構に原板Mの代わりに基板Sまたはその他の部品を保持して、この基板Sまたはその他の部品とステージ21に載置された基板Sとの接合装置として使用するときの一例について説明する。図6ないし図8は基板Sを全面にわたって均一に加圧する方法の一例を示す図であって、それぞれ異なる状態を示す図である。なお、ガラス窓7とステージ21との平行度には少しずれが生じており、これらの図面ではこのずれを模式的に表している。
【0042】
図6に示すように、コントローラ8の駆動信号により、圧電素子24a,24b,24cの伸縮制御を行って半球体22を球面軸受23から浮かせた状態で、ステージ21に載置された基板Sと、ガラス窓7の下部に設けられた保持機構に保持された基板Sとの平行度を調整する。これは、上記したステージ21とガラス窓7とを接触する手法によるステージ21とガラス窓7の下部に配置された保持機構との平行度調整を事前に行い、ステージ21とガラス窓7との平行度が調整されたときの圧電素子24a,24b,24cの長さをコントローラ8が備えるメモリなどの記憶手段に記憶しておき、この記憶した値を利用することで、基板Sが載置されたステージ21と、基板Sまたは部品が保持されたガラス窓7下部の保持機構との平行度を調整できる。
【0043】
次に、図7に示すように、ステージ21を上方に移動して、ステージ21に載置された基板Sと、ガラス窓7の下部に設けられた保持機構に保持された基板Sとを接触させ、該接触状態のまま、ステージ21をさらに上方に移動して加圧力を徐々に増大しつつ、半球体22と球面軸受23とが接触するように圧電素子を縮める制御を行う。このとき、接触した両基板Sは接触面に働く静止摩擦力により位置ずれすることはない。
【0044】
そして、図8に示すように、半球体22と球面軸受23とが接触すれば、Z軸43(ステージ21)の駆動制御を、上方への位置(移動)制御から、圧力センサ42の出力値に基づく圧力制御に切換え、両基板Sを任意の圧力で加圧しながら、圧電素子24a,24b,24cをさらに縮める制御を行う。このような構成とすれば、ステージ21は半球体22を介して球面軸受23に支持された状態となり、この球面軸受23が半球体22を安定した状態で支持できるように、球面軸受23によるステージ21(半球体22)の支持方向が、加圧力の方向とほぼ反対の方向となるように自然にステージ21の傾きは変化する。
【0045】
すなわち、高加圧力によりガラス窓7などにたわみが生じることで、加圧力の方向と、ステージ21の基板載置面とがほぼ直交する方向となるようにステージ21の傾きが変化し、図6に示す例とは対照的に、ガラス窓7下部の保持機構側の平行度がステージ21に倣うこととなる。したがって、ステージ21および保持機構に保持された両基板Sの接触時のステージ21およびガラス窓7下部の保持機構側の傾きと(図6参照)、高加圧時のステージ21およびガラス窓7下部の保持機構側の傾きとが異なることとなり(図8参照)、このように接触時および高加圧時のステージ21等の傾きを異ならせることで、両基板Sを該両基板Sの接触面にほぼ直交する方向から均一に加圧することができる。
【0046】
換言すれば、平面調整機構2は、ステージ21やガラス窓7などにひずみが生じる程度の圧力が両基板Sに加わらないときは、半球体22、球面軸受23および圧電素子24a,24b,24cを利用してステージ21の平行度をガラス窓7、すなわち保持機構に保持された基板S側に合わせる制御を行う。一方、平面調整機構2は、ステージ21やガラス窓7などにひずみが生じる程度の高い圧力が両基板Sに加わるときは、上記したように、これらのひずみを利用してガラス窓7下部の保持機構側の平行度をステージ21に合わせる制御を行うことで、両基板Sの接触時から、両基板Sを高加圧力で加圧するまで、常に良好に両基板Sを加圧できる。
【0047】
なお、図6に示す両基板Sの接触時の状態から、ステージ21およびガラス窓7下部の保持機構側の傾きを維持した状態で両基板Sに高加圧力を加えた場合には、両基板Sへの加圧力の方向と、両基板Sの接触面の傾きとがほぼ直交する方向とならないため、加圧時に両基板S間で位置ずれを生じるおそれがある。しかしながら、上記した制御を行うことで、両基板Sの加圧時に、両基板S間で位置ずれが生じるのを確実に防止できる。
【0048】
また、高加圧時に両基板Sを全面にわたって均一に加圧しているときの圧電素子24a,24b,24cの長さを予め計測してコントローラ8が備えるメモリなどの記憶手段に記憶しておき、図6に示す両基板Sの接触時の状態から高加圧状態に移行するときに、記憶手段に記憶された圧電素子24a,24b,24cの長さを用いて、圧電素子24a,24b,24cの伸縮制御を行ってもよい。すなわち、高加圧時にすべての圧力センサ25の出力値が同一、換言すれば、両基板Sを全面にわたって均一に加圧している状態となるように、圧電素子24a,24b,24cの伸縮制御を行う。次に、すべての圧力センサ25の出力値がほぼ同一となったときの圧電素子24a,24b,24cの長さを計測して、計測した圧電素子24a,24b,24c長さをコントローラ8が備えるメモリなどの記憶手段に予め記憶する。
【0049】
そして、図6に示す両基板Sの接触時の状態から、両基板Sの高加圧状態に移行するときに、記憶手段に記憶した値を利用して圧電素子24a,24b,24cの長さを制御することにより、両基板Sの接触時および高加圧時のステージ21等の傾きを異ならせることができる。このような構成とすれば、両基板Sの接触時から、両基板Sを高加圧力で加圧するまで、常に良好に両基板Sを加圧できる。なお、両基板Sの接触時の状態から高加圧状態に移行するときに、圧電素子24a,24b,24cの長さを記憶手段に記憶された長さへとステップ状に変化させてもよい。このような構成としても、両基板S間に働く静止摩擦力により、両基板S間にずれが生じることはなく、両基板Sを全面にわたって均一に加圧できる。
【0050】
次に、図9ないし図12を参照して、ナノインプリント装置1により、大判の基板Sに原板の凹凸パターンを連続的に転写するときの一例について図1も参照しつつ説明する。図9は基板Sに形成された転写液層UVRに原板Mの凹凸パターンを連続的に転写する状態を示す図である。また、図10は基板Sを移動するX−Y粗動テーブル9の構成を示す図である。また、図11および図12はナノインプリント装置1の要部拡大図であって、特にX−Y粗動テーブル9の構成を示し、それぞれ異なる状態を示す図である。
【0051】
本実施形態のナノインプリント装置1は、ステージ21および基板受26に載置された基板SをX−Y粗動テーブル9により粗く移動することで、大判の基板Sに塗布などして形成された転写液層UVRの所定の少領域SAに原板Mの凹凸パターンを連続して転写(インプリント)できる。図10に示すように、X−Y粗動テーブル9は、X軸91と、X軸91に沿って移動可能に、X軸91にほぼ直交して設けられたY軸92と、Y軸92に沿って移動可能に設けられた基板支持部93とを備えている。このような構成とすれば、図11に示すように、ステージ21および基板受26に載置された基板Sを、Y軸92をX軸91に沿って移動することによりX方向に移動することができ、基板支持部93をY軸92に沿って移動することによりY方向に移動することができる。
【0052】
また、X−Y粗動テーブル9は基板Sをステージ21に接触した状態で基板Sを移動させ、基板Sの移動後はアライメント移動するステージ21に接触配置している。また。基板Sは粗動テーブル9の基板支持部93(基板保持治具)により移動されるが、治具93は基板Sより多少大きめに構成されたガイドとなっており、基板Sの移動後に治具位置を微小移動することにより、基板Sと粗動テーブル9との間に隙間を作り、基板Sをアライメントするための微小移動を行うことができるようにしている。
【0053】
したがって、図11に示すように、コントローラ8から制御指令を与えることでX−Y粗動テーブル9を駆動して、基板S上に形成された転写液層UVRの全領域のうち、原板Mの凹凸パターンを転写したい領域がステージ21の上に位置するように基板Sを粗く動かすことができる。次に、アライメント手段4を駆動して、原板Mと基板Sとの高精度アライメントを行うことで、基板S上の転写液層UVRに原板Mの凹凸パターンを高い位置精度で転写できる。そして、図12に示すように、X−Y粗動テーブル9の駆動により基板Sを移動してアライメント手段4による高精度アライメントを行った後に、原板Mの凹凸パターンの転写液層UVRへの転写を繰返すことで、基板Sの転写液層UVRに連続して原板Mの転写液層UVRへ凹凸パターンを転写できる。
【0054】
1.インプリント方法の一例
次に、図13および図14を参照して、インプリント方法の一例について説明する。図13はインプリント方法の一例を示す図である。また、図14は図13に示すインプリント方法を示す図であり、(a)ないし(d)はそれぞれ異なる状態を示す。図13に示すように、このインプリント方法の一例では、基板S上に紫外光により硬化する光硬化型樹脂が塗布されて形成された一層構造の転写液層UVRに、原板Mが有する凹凸パターンPをインプリントするように構成されている。この転写液層UVRは、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ウレタンアクリレート系などの種々の光硬化型樹脂により形成することができる。
【0055】
図14(a)に示すように、まず、原板Mの凹凸パターンPと基板S上の転写液層UVRとが接触しない状態でX−Y粗動テーブル9を駆動して、原板Mおよび基板Sの両アライメントマークALを、両アライメントマークALが重なる方向(同図中の太線矢印で示す原板M側の上方向)から認識手段3で読取ることにより粗いアライメントを行う。そして、同図(b)に示すように、Z軸43を上方に移動して、原板Mの凹凸パターンPと転写液層UVRとを接触させる。
【0056】
次に、図14(c)に示すように、原板Mの凹凸パターンP面が基板S上の転写液層UVRに接触した状態でアライメント手段4を駆動して、原板Mおよび基板SのアライメントマークALを、両アライメントマークALが重なる方向から認識手段3により同時に撮像して得られた1つの画像からその形状を検出し、原板Mと基板Sとの高精度アライメントを行う。そして、同図(d)に示すように、Z軸43をさらに上方に移動して任意の加圧力で基板Sを原板Mへ押付けるとともに、カメラテーブル31を駆動することにより、ファイバーレンズ32をガラス窓7の上方に配置する。続いて、転写液層UVRの全領域のうち、SiO2により構成される原板Mが接触する領域に部分的に紫外光が照射される。これにより、転写液層UVRのうち、原板Mの凹凸パターンPが接触している部分が硬化して、当該部分への凹凸パターンPのインプリントが完了する。
【0057】
このような構成とすれば、原板Mの凹凸パターンP面が基板S上に塗布された転写液層UVRに接触した状態で、原板Mおよび基板Sのそれぞれに形成されたアライメントマークALを認識手段3により同時に読取ることにより原板Mと基板Sとのアライメントを行っているため、従来のように原板Mおよび基板Sに対して特殊な加工を施さなくとも、原板Mが有する凹凸パターンPを容易にかつ高い位置精度で基板S上の転写液層UVRにインプリントできる。しかも、認識手段3により原板Mおよび基板SのアライメントマークALを読取ることで、原板Mと基板Sとのアライメントを行っているため、原板Mおよび基板Sにアライメントに伴う破損が生じるおそれがない。
【0058】
また、上記したインプリント方法の一例の構成とすれば、転写液層UVRを樹脂液層により構成しているので、原板Mの凹凸パターンPがインプリントされた当該樹脂液層(転写液層UVR)をマスクとして基板Sに回路パターンと容易に形成できる。
【0059】
また、上記したインプリント方法の一例の構成とすれば、光硬化型樹脂は粘性が低いものが多く、粘性の低い光硬化型樹脂を転写液層UVRとすることで、原板Mの凹凸パターンP面が基板S上に塗布された転写液層UVRに接触した状態で、原板Mと基板Sとのアライメントを容易に行うことができる。
【0060】
2.インプリント方法の他の例
次に、図15および図16を参照して、インプリント方法の他の例について説明する。図15はインプリント方法の他の例を示す図である。また、図16は図15に示すインプリント方法を示す図であり、(a)ないし(d)はそれぞれ異なる状態を示す。図15に示すように、このインプリント方法の他の例が、上記したインプリント方法の一例と異なる点は、紫外光により硬化する光硬化型樹脂が塗布されて形成された基板S上の転写液層UVRが、ベース液層BRを下層とし、ベース液層BRよりも粘性の低い潤滑液層LRを上層とする2層構造である点である。そして、このように2層構造に構成された転写液層UVRに原板Mが有する凹凸パターンPがインプリントされるように構成されている。
【0061】
図16(a)に示すように、まず、原板Mの凹凸パターンPと基板S上の転写液層UVRとが接触しない状態でX−Y粗動テーブル9を駆動して、原板Mおよび基板SのアライメントマークALを、両アライメントマークALが重なる方向(同図中の太線矢印で示す原板M側の上方向)から認識手段3で読取ることにより、原板Mと基板Sとの粗いアライメントを行う。そして、同図(b)に示すように、Z軸43を上方に移動して、原板Mの凹凸パターンPと潤滑液層LR(転写液層UVR)とを接触させる。
【0062】
次に、図16(c)に示すように、原板Mの凹凸パターンP面が基板S上の潤滑液層LRに接触した状態でアライメント手段4を駆動して、原板Mおよび基板SのアライメントマークALを、両アライメントマークALが重なる方向から認識手段3により同時に撮像して得られた1つの画像からその形状を検出し、原板Mと基板Sとの高精度アライメントを行う。そして、同図(d)に示すように、Z軸43をさらに上方に移動して任意の加圧力で基板Sを、原板Mの凹凸パターンPがベース液層BRに接触するように原板Mへ押付けるとともに、カメラテーブル31を駆動することにより、ファイバーレンズ32をガラス窓7の上方に配置する。続いて、転写液層UVRのうち、SiO2により構成される原板Mの位置へ部分的に紫外光が照射される。これにより、転写液層UVRのうち、原板Mの凹凸パターンPが接触している部分が硬化して、当該部分への凹凸パターンPのインプリントが完了する。そして、同図(d)に示すように、Z軸43をさらに上方に移動して任意の加圧力で基板Sを原板Mへ押付けるとともに、カメラテーブル31を駆動することにより、ファイバーレンズ32をガラス窓7の上方に配置する。続いて、転写液層UVRの全領域のうち、SiO2により構成される原板Mが接触する領域に部分的に紫外光が照射される。これにより、転写液層UVRのうち、原板Mの凹凸パターンPが接触している部分が硬化して、当該部分への凹凸パターンPのインプリントが完了する。
【0063】
このような構成とすれば、原板Mの凹凸パターン面がベース液層BRよりも粘性の低い潤滑液層LRに接触した状態で原板Mと基板Sとのアライメントを行うことで、原板Mが有する凹凸パターンPを容易にかつ高い位置精度で基板S上の転写液層UVRにインプリントできる。
【0064】
<第2実施形態>
本発明の転写装置の第2実施形態であるナノインプリント装置1について図17を参照して説明する。図17はナノインプリント装置100の構成を示す図である。このナノインプリント装置100が第1実施形態のナノインプリント装置1と異なる点は、X−Yテーブル41の代わりにピエゾ駆動手段215を有する駆動ユニット200を備え、この駆動ユニット200によりステージ121を移動して、原板Mと基板Sとの高精度アライメントを行っている点である。また、ナノインプリント装置1においてX−Yテーブル41が配設された箇所には、プリズムやミラーにより構成された導光路42を有する土台141が配設されており、真空チャンバー5外に配設された光源34から、アライメント用の赤外光または転写液層硬化用の紫外光を原板Mおよび基板Sに照射可能に構成されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様であるため、同一の構成には相当符号を付してその構成および動作の説明を省略する。以下、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0065】
図17に示すように、平面調整機構102はナノインプリント装置100が備える真空チャンバー5内に配設されており、この平面調整機構102が上記した駆動ユニット200を備えている。この駆動ユニット200については後で詳細に説明する。このナノインプリント装置100では、真空ポンプ6により真空チャンバー5内を真空引きすることにより、原板Mの凹凸パターンの基板Sの転写液層へのインプリントを真空中で行うことができる。また、真空チャンバー5の上部にはガラス窓7が設けられており、認識手段3はガラス窓7を介して原板Mおよび基板SのアライメントマークALを読み取り、ガラス窓7を介して基板Sに塗布された紫外線硬化型樹脂液層に紫外光を照射することができる。
【0066】
一方、真空チャンバー5の側面にガラス窓5aが構成されており、真空チャンバー5外に設けられた光源34から、赤外光または紫外光を真空チャンバー5内に入射可能に構成されている。光源34から真空チャンバー内に入射された光は土台141に設けられた導光路141aによって原板M、基板Sおよびカメラ33に導光される。このような構成とすれば、例えば原板MがSiなどの可視光を透過しない材質により構成されている場合には、下方から赤外光をカメラ33へと導光することで、カメラ33は原板Mおよび基板SのアライメントマークALを同時に読取ることができる。また、原板Mが紫外光を透過できない材質により構成されている場合には、下方から紫外光を基板S上の転写液層UVRに導光することで、転写液層UVRを硬化して原板Mの凹凸パターンPを転写液層UVRにインプリントできる。
【0067】
次に、平面調整機構(本発明の「アライメント手段」に相当)102について図18も参照して説明する。図17に示すように、平面調整機構102は、図示省略されたヒータを備え、静電チャックや機械チャックなどが設けられて基板Sを載置して保持可能に構成されたステージ121と、ステージ121の下面側にステージ121と接離自在に設けられた半球体122と、半球体122を接離自在に支持する球面軸受123と、ステージ121を下面側から伸縮することで押圧してステージ121の傾きを制御するとともにステージ121をX−Y方向およびθ(回転)方向に移動する3個の駆動ユニット200と、駆動ユニット200それぞれの下方に配設され、ステージ121への荷重を検出可能な圧力センサ25とを備えている。
【0068】
図18に示すように、駆動ユニット200は、後で説明する駆動部219(図19参照)の基台203の下方に上下方向に伸縮可能な補助昇降用圧電素子227を設けており、基台203、受台217、昇降用圧電素子205、下部連結体207、ピエゾ駆動手段215、支持足213および補助昇降用圧電素子227が一体となって駆動ユニット200を構成している。
【0069】
次に、図19ないし図23を参照して、図19に示す駆動部219について詳細に説明する。図19は駆動部の正面図である。図20は駆動部の一部の平面図である。図21は駆動部によるウォーキング動作の説明図である。図22は駆動部によるウォーキング動作の説明図である。図23はステージを位置決めする位置決め動作の説明図である。
【0070】
駆動部219は以下のように構成されている。すなわち、図19および図20に示すように、平板状の基台203上に昇降用圧電素子205が配設され、この昇降用圧電素子205上に下部連結体207を介して3個の駆動用圧電素子209a,209b,209cが連結され、これら駆動用圧電素子209a,209b,209c上には上部連結体211を介して上下方向に長尺の支持足213が連結、支持されている。ここで、各駆動用圧電素子209a,209b,209cおよび上部連結体211によりピエゾ駆動手段215が構成されている。
【0071】
また、基台203には受台217が立設され、この受台217の上部中央の開口217aを支持足213が昇降するようになっており、支持足213は各駆動用圧電素子209a,209b,209cの上下方向への伸縮によって、支持足213の先端(上端)が受台217の上面よりも上、下に移動する。そして、基台203、受台217、昇降用圧電素子205、下部連結体207、ピエゾ駆動手段215および支持足213が一体となった駆動部219が形成され、例えば図23に示すように、この駆動部219を有する3個の駆動ユニット200がほぼ円周上に配列されて平面調整機構102が構成される。
【0072】
さらに、受台217の上面には、半導体ウエハなどの基板を保持する例えば円板状のステージ121が載置され、支持足213の先端の移動に伴い、ステージ121が受台217上から持ち上げられて移動されるようになっており、複数の駆動ユニット200(駆動部219)の支持足213が協調して動くことにより、ステージ121が所定方向に移動(回転も含む)されてステージ121に保持された半導体ウエハ等の基板が所定の位置に位置決めされる。
【0073】
駆動ユニット200の動作を、駆動部219の動作を中心に簡単に説明すると、各駆動用圧電素子209a,209b,209cにコントローラ8により電圧を印加して各駆動用圧電素子209a,209b,209cを上方へ伸長変位させて支持足213の先端を受台217の上面よりも上方に突出させる。これにより、受台217上のステージ121を一旦受台217から持ち上げ、この状態からコントローラ8による各駆動用圧電素子209a,209b,209cへの印加電圧を制御して各駆動用圧電素子209a,209b,209cを適宜伸縮させ、支持足213を例えば一方向に移動させてステージ121を平行移動させる。
【0074】
その後、各駆動用圧電素子209a,209b,209cに伸長時とは逆の電圧印加により圧縮変位させ、これにより支持足213の先端を受台217の上面よりも下方に沈ませて支持足213を下動させ、ステージ121を再び受台217上に載置する一方、支持足213を元の位置に復帰させ、このような動作を繰り返してステージ121を所定の位置まで移動させ、ステージ121に保持された半導体ウエハなどの基板を所定位置に位置決めするのである。このとき、各駆動用圧電素子209a,209b,209cの伸縮により各駆動用圧電素子209a,209b,209cの先端が水平方向と高さ方向に移動し、支持足213の先端が水平方向および高さ方向に移動可能となっている。また、圧電素子の配置構成としては平面方向と高さ方向を分離した構成であってもよい。
【0075】
駆動ユニット200(駆動部219)を上記のように構成すれば、受台217と支持足213との距離を近づけることができ、コンパクトな構成とすることができる。また、受台217と支持足213との距離を小さくすることができるため、ピエゾ駆動手段215を駆動して支持足213によりステージ121を受台217から持ち上げるときに、ステージ121の受台217との接触面のうねりや凹凸による影響を最も小さくすることができる。
【0076】
なお、各駆動用圧電素子209a,209b,209cは電圧が印加されることにより伸縮する素子のことであって、その材質はどのようなものであってもよい。また、駆動ユニット200は、ステージ121が載置されてその荷重を支持する受台217を備えているため、各駆動用圧電素子209a,209b,209cと連結された支持足213のみでステージ121を支持する場合に比べ、ステージ121に加えられる圧力に対する耐久性を向上させることができる。
【0077】
次に、平面調整機構102における駆動ユニット200(駆動部219)のウォーキング動作について図21ないし図23を参照して説明する。
【0078】
まず、駆動部219の動作を詳述すると、図21および図22に示すように、支持足213の先端が受台217の上面よりも下方に沈んだ状態を初期状態として、コントローラ8から各駆動用圧電素子209a,209b,209cのそれぞれに任意に電圧印加し、ステージ121を移動させる矢印Dの方向と反対方向に支持足213を傾ける(図21、図22のステップS1)。
【0079】
続いて、支持足213を傾けた状態で各駆動用圧電素子209a,209b,209cを伸長変位させて支持足213の先端を受台217の上面よりも上方に突出させ、支持足213によりステージ121を持ち上げてステージ121を受台217から浮上させる(図21、図22のステップS2)。そして、支持足213の先端によりステージ121を持ち上げた状態で、コントローラ8による印加電圧を制御して各駆動用圧電素子209a,209b,209cを変位させ、支持足213の先端を矢印Dの方向に傾けることでステージ121を矢印Dの方向に移動させる(図21、図22のステップS3)。
【0080】
その後、コントローラ8により印加電圧を制御して各駆動用圧電素子209a,209b,209cを圧縮変位させて支持足213の先端を受台217の上面よりも下方に沈み込ませ(図21、図22のステップS4)、さらに支持足213の傾きを初期状態に戻すと、1回のウォーキング動作が終了することとなる(図21、図22のステップS5)。
【0081】
次に、このような平面調整機構102の各駆動ユニット200(駆動部219)のウォーキング動作により位置決めされるステージ121の位置決め動作について図23を参照して説明する。図23に示すように、平面調整機構102を構成する3個の駆動ユニット200のウォーキング動作を適宜組み合わせることにより、ステージ121のX、Y、θ(回転)方向への移動および、3方向への移動を組み合わせた位置決め動作を行なうことができる。
【0082】
例えば、図23(a)に示すように、各駆動ユニット200の支持足213を同時に同じX方向に移動させると、ステージ121をX方向に移動させることができ、同図(b)に示すように、各駆動ユニット200の支持足213を同時に同じY方向に移動させると、ステージ121をY方向に移動させることができ、同図(c)に示すように、各駆動ユニット200の支持足213を同時に円板状のステージ121の円周の接線方向にそれぞれ移動させると、ステージ121をθ方向に回転移動させることができ、駆動ユニット200の支持足213の移動方向を逆にすると、ステージ121をθ方向と逆方向に回転させることができる。
【0083】
なお、必要に応じて、コントローラ8による各駆動用圧電素子209a,209b,209cへの電圧印加時に、各駆動用圧電素子209a,209b,209cの収縮動作におけるクリープ特性を、目標とする各駆動用圧電素子209a,209b,209cの伸縮量に対する目標電圧に対し、一旦オーバーシュートさせて目標電圧に戻すクリープ補正動作を行なうのが望ましい。こうすると、各駆動用圧電素子209a,209b,209cを最終の目標変位に精度よくかつ迅速に制御することが可能になり、各駆動用圧電素子209a,209b,209cを用いた平面調整機構102の応答性を改善できて高速でかつ高精度な位置決めを行なうことができる。
【0084】
このような構成によれば、平面調整機構102によりステージ121を移動することで、原板Mと基板Sとのアライメントを非常に高い位置精度で行うことができる。また、各駆動用圧電素子209a,209b,209cの下方に各駆動用圧電素子209a,209b,209cを同時に昇降させる昇降用圧電素子205を設けたため、昇降用圧電素子205の伸縮によって各駆動用圧電素子209a,209b,209cを同時に昇降させることができ、各駆動用圧電素子209a,209b,209cの伸縮量の不足を昇降用圧電素子205の昇降によって補うことが可能になり、支持足の受台からの突出量を確保するために受台上面を計測しながら研磨するなどの従来必要であった無駄な作業が不要になる。
【0085】
また、受台217と、一足の支持足213を有する駆動ユニット200により、ウォーキング動作を実行可能であるため、ウォーキング動作を実行するのに支持足213が2本必要であった従来の構成に比べ、装置のコンパクト化および製造コストの抑制を図ることができる。
【0086】
なお、支持足213が2足であれば、支持足213のステージ121への支持の切換時に、両方の支持足213は揺動中であるので支持足213とステージ121との間で滑りが生じ、その結果、位置ずれが生じるため、目的とする動作を得られなかった。しかしながら、上記した構成とすれば、支持足213が1足でウォーキング動作が可能となるため、支持足213とステージ121との間での滑りの発生を抑制でき、目的とするステージ121の移動を行なうことが可能となる。
【0087】
また、図23に示すように、平面調整機構102として、駆動ユニット200を任意の円周上に位置するように3個備えれば、9個の駆動用圧電素子によりステージ121の全ての方向への移動が可能となり、装置のコンパクト化およびコストの抑制を図ることが可能になる。
【0088】
さらに、3個の駆動ユニット200が有する支持足213の3つの先端により任意の平面が規定されるため、ステージ121の支持足213との接触面が平面であれば、ウォーキング動作中であっても、ステージ121と支持足213とは常に接触することとなるため、ステージ121と支持足213との間の滑りを抑制でき、非常に好ましい。
【0089】
また、上記した平面調整機構102は、各駆動用圧電素子209a,209b,209cを有する駆動ユニット200による高精度な位置制御と、受台217による高耐荷重性とを兼ね備えたものである。
【0090】
また、平面調整機構102は、圧力センサ25の出力を利用して、ステージ121と原板Mとの間の平行度調整を行うことができる。すなわち、まず、サーボ機構45を駆動して、圧力センサ42によりステージ121と原板Mとの接地が検出されるまでZ軸43を上方に移動する。そして、半球体122が球面軸受123を摺接することによるステージ121と原板Mとの倣いが完了した後、さらに、3つの圧力センサ25の出力が一致するように駆動ユニット200の圧電素子の伸縮制御を行うことで、原板Mとステージ121との平行度を高精度に調整できる。
【0091】
このとき、上記した昇降用圧電素子205を第1の昇降用圧電素子とし、補助昇降用圧電素子227を第2の昇降用圧電素子として、例えば接合において、ステージ121上の基板Sとガラス窓7下部の位置に保持された基板Sなどの接触対象と接触させる際には、両者の位置ずれを防ぐ必要があるため、第1の昇降用圧電素子である昇降用圧電素子205により両基板Sの平行調整を行えば、効果的に平行調整できて位置ずれを防止できる(図24参照)。
【0092】
一方、両基板Sを加圧して接合するときは、均一荷重をかけるための平行調整が必要になり、第2の昇降用圧電素子である補助昇降用圧電素子227により両基板Sの平行調整を行えば、加圧時の平行調整を効果的に行なって均一荷重をかけることができる(図25参照)。このとき、接触時の位置ずれを回避したり、加圧時の荷重を均一にするためには、数μm以内の微妙な平行調整が必要となるが、昇降用圧電素子205を使用することで可能となる。また、加圧時には支持足213は下降して受台217でテーブル121を支持しているため、基台203下の補助昇降用圧電素子227との2段構成とすることで接触時の平行調整と加圧時の平行調整を分離独立して調整することが可能となり好ましい。なお、図24および図25はそれぞれ平面調整機構102の動作の一例を示す図である。
【0093】
次に、図26を参照して平面調整機構102の制御方法の一例について説明する。図26は主に基板Sの中央部が加圧されている状態を示す図である。同図に示すように、コントローラ8からの制御指令より、圧電素子205,227が縮むように駆動制御された状態で、Z軸43を上方に移動してステージ121に載置された基板Sと原板Mとを接触して加圧することで、球面軸受123によりステージ121(半球体122)が支持された基板Sの中央部を重点的に加圧することができる。このような構成とすれば、中央部に溜まった空気が基板Sの周縁部側へ押し出されるため、特に、基板中央部付近にボイドが発生するのを防止できる。
【0094】
次に、図27を参照して平面調整機構2の制御方法の他の例について説明する。図27は基板Sの主に周縁部が加圧されている状態を示す図である。同図に示すように、コントローラ8からの制御指令より、圧電素子227が伸びるように駆動制御した状態で、Z軸43を上方に移動してステージ121に載置された基板Sと原板Mとを接触して加圧することで、受台217によりステージ121が支持された基板Sの周縁部を重点的に加圧することができる。このような構成とすれば、周縁部に雰囲気封止用の枠体を形成した基板Sと、原板Mの代わりにステージ121の上方の保持機構に保持された蓋となる基板Sとを接合することにより、両基板S間の枠体に囲まれた部分に任意の雰囲気を封止するときに、基板Sの周縁部を重点的に加圧できるため、枠体と蓋となる基板Sとを良好に接合できる。
【0095】
以上のように、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の方法により、基板S上に形成された転写液層UVRに、原板Mが有する凹凸パターンを高い位置精度でインプリントすることができる。
【0096】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、転写液層として、光硬化型樹脂以外の樹脂として、低粘性であって、熱以外の何らかのエネルギーを与えることにより硬化できる樹脂を採用してもよい。また、アライメントの際にステージ21側から認識手段により両アライメントマークを同時に撮像するようにしてもよい。
【0097】
UV(紫外光)を照射する方法は上部のガラス窓7から照射する方法と合わせて、下部の窓ガラス5aなどを介してステージ21側から照射することもできる。また、LEDをステージ21などに複数個埋め込むことで平坦な基板S上とすることもでき、LEDをステージ21下部に埋め込むことでチャンバー5外部から紫外光を照射する必要がなくなる。
【0098】
原板Mはガラス以外に金属であってもよい。この場合は、低温での加熱方法により転写液層としての樹脂を硬化させたり、下部ステージ21側から転写液層としての樹脂にUV(紫外光)を照射すればよい。また、アライメント用のアライメントマークALは原板Mや基板Sに穴を形成し、これをアライメントマークALとすることもできる。
【0099】
また、上記第2実施形態のように、駆動ユニット200を用いてステージ121をウォーキング動作させるときは、下部の補助昇降用圧電素子227以外に駆動部219の昇降用圧電素子205をステージ121の平行調整用に使用することもできる。
【0100】
また、補助昇降用圧電素子227または駆動部219の圧電素子209a,209b,209c,205を伸ばすことにより半球体122と球面軸受123との間に隙間を空けた状態で、基板Sどうし、または基板Sと原板Mとを接触させることで、接触時の微小な接地圧力を補助昇降用圧電素子227下部の圧力センサ25で検出することができる。そこのようにすれば、下部のZ軸43に取り付けられた圧力センサ42より微小な力を検知することができる。これはZ軸43に取り付けられた圧力センサ42はステージ121を保持するための剛性が要求されるため圧力に対しても感度が悪くなるからである。
【0101】
また、第1実施形態においては、Z軸のθ方向の回転はサーボモータを使用したが第2実施形態においては、円周状に配置された駆動ユニット200でテーブル121をθ方向に移動することにより、より高位置精度でテーブル121を位置決めできる。
【符号の説明】
【0102】
1,100 ナノインプリント装置(転写装置)
3 認識手段
4 アライメント手段
102 平面調整機構(アライメント手段)
AL アライメントマーク
P 凹凸パターン
S 基板
M 原板
UVR 転写液層
LR 潤滑液層
BR ベース液層
【技術分野】
【0001】
この発明は、原板が有する凹凸パターンを基板上に塗布された転写液層にインプリントする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路や光集積回路の高集積化が要望されており、これに伴い、露光装置を利用して所望の回路パターンを半導体基板に形成する光リソグラフィ技術が急速に進歩している。ところが、このような集積回路の高集積化を可能とする露光装置は非常に高価であり、また、露光装置を用いたデバイス製造プロセスは複雑であるため、単一製品を大量生産するシステムには向いているが、顧客ごとの要望に応じた製品を少量生産するシステムには不向きであった。そこで、原板が有する凹凸パターンを半導体基板上に塗布されたレジストなどの転写液層にインプリントすることにより半導体基板上に所望の回路パターンを形成する半導体リソグラフィ技術が注目されている。
【0003】
このインプリントによる回路パターンの形成技術を用いたデバイス製造は、レンズ等の高価な部品や装置が不要であること、また、デバイス製造プロセスも簡易なものとなることから、デバイス製造のコストダウンを図ることができるものとして期待されている。その一方で、原板が有する凹凸パターンを半導体基板上に塗布された転写液層にインプリントするときに、例えば光学的手法を用いて予め原板と半導体基板とのアライメントを高精度に行っても数μmの単位で位置誤差が生じることが知られている。
【0004】
例えば、インプリントによる半導体リソグラフィ技術における従来のアライメントは、光リソグラフィ技術におけるマスクと半導体基板との位置調整装置を流用して、原板と半導体基板とのアライメントを大気中で行われている。そして、原板と半導体基板とのアライメントを行った後は、原板および半導体基板を治具で固定した状態でプレス装置に搬送し、このプレス装置により加熱しながら原板および半導体基板をプレスすることで、原板が有する凹凸パターンが半導体基板上に塗布された転写液層にインプリントされる。
【0005】
しかしながら、上記した従来の位置調整装置では、原板と半導体基板との間に隙間を空けて、非接触の状態で半導体基板と原板との間の2次元的なアライメントを行っている。したがって、半導体基板の凹凸パターンの原板上の転写液層へのインプリント時に半導体基板と原板とを近接させて接触させるときに、原板と半導体基板との相対移動に伴う位置誤差が生じるおそれがあった。
【0006】
また、インプリントを真空チャンバー内で行うときは、治具で固定されることにより原板と半導体基板との間に隙間が空いた状態の原板および半導体基板を、内部にプレス装置が配設された真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバーを真空引きした後に治具による固定状態を解除してインプリントを行うこととなるが、このときに位置ずれが生じやすく、インプリント時に位置調整装置によるアライメント時のアライメント精度を維持することが難しかった。
【0007】
そこで、例えば特許文献1に記載の技術のように、原板と半導体基板とのそれぞれに、位置合わせ部として互いに嵌合する凹凸構造を形成し、半導体基板上に塗布された転写液層を原板で加圧するときに、これらの凹凸構造を互いに嵌合させることで、原板と半導体基板とのアライメント精度の向上を図ったものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−5023(段落0016〜0028、図1,6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、インプリントによる回路パターンの形成技術を用いて基板に所望の回路パターンを形成するには、所定の凹凸(回路)パターンを有する複数種類の原板を、原板と基板とのアライメントを高精度に行いながら順番に用いて基板を加工する必要がある。しかしながら、上記した従来技術における位置合わせ部としての凹凸構造を、複数種類の原板および基板のすべてに位置精度よく形成するのは困難である。また、凹凸構造の嵌合により位置合わせを行うため、原板と基板とのアライメントを高精度に行うためには、嵌合状態の当該凹凸構造に遊びが生じないようにしなければならない。ところが、遊びがない状態で当該凹凸構造の嵌合を複数回繰返すと当該凹凸構造が破損するおそれがあり、技術の改善が求められていた。
【0010】
また、凹凸構造の嵌合によるアライメント時は、原板および基板を加圧しながら、さらに、原板および基板の相対的な位置調整を行うこととなるが、このように原板および基板を加圧しながら、すなわち、原板と基板とを近接移動させながら原板および基板の相対的な位置調整を行うことは装置の複雑化を招いていた。また、凹凸構造が互いに摺接して凹凸構造に力が加えられつつ原板と基板とが相対移動するため、Siなどの強度の弱いもろい材料では凹凸構造が壊れるおそれがあった。また、樹脂により凹凸構造が互いに嵌り込まずに原板と基板との間の隙間にばらつきが生じるおそれがあり、このようなばらつきが生じると、位置精度もばらつくこととなる。また、原板の凹凸パターンを複数の基板上の転写液層にインプリントするには、複数の基板のそれぞれにアライメント用の凹凸構造を形成する加工を施さなければならず、生産性の向上の妨げとなっていた。また、このように、アライメントのために製品である基板に加工を施すことに対して、技術の改善が求められていた。したがって、インプリント時の位置精度に課題はあるものの、非接触で原板と基板とのアライメントを行う従来の方法が採用されることが多く、基板上に超高集積の回路パターンを形成することの妨げとなっていた。
【0011】
この発明は上記した課題に鑑みてなされたものであり、原板が有する凹凸パターンを容易にかつ高い位置精度で基板上の転写液層にインプリントすることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る転写方法は、原板が有する凹凸パターンを基板上に塗布された転写液層にインプリントする転写方法において、1つの認識手段により、前記原板の凹凸パターン面が前記転写液層に接触した状態で、前記原板および前記基板それぞれに形成されたアライメントマークを該両アライメントマークが重なる方向から同時に撮像して得られた1つの画像から、前記両アライメントマークの位置を別々に認識処理し、前記両アライメントマークの画像の相対的な位置関係に基づき前記原板と前記基板とのアライメントを行うことを特徴としている(請求項1)。
【0013】
また、本発明に係る転写装置は、原板が有する凹凸パターンを基板上に塗布された転写液層にインプリントする転写装置において、前記原板および前記基板のそれぞれに形成されたアライメントマークを撮像する機能を有する1つの認識手段と、前記認識手段による前記原板および前記基板の前記アライメントマークの認識に基づいて前記原板と前記基板とをアライメントするアライメント手段とを備え、前記アライメント手段は、前記原板の凹凸パターン面が前記転写液層に接触した状態で、前記認識手段により、前記原板および前記基板それぞれに形成されたアライメントマークを該両アライメントマークが重なる方向から同時に撮像して得られた1つの画像から前記両アライメントマークの位置を別々に認識処理し、前記両アライメントマークの画像の相対的な位置関係に基づき前記原板と前記基板とのアライメントを行うことを特徴としている(請求項4)。
【0014】
本発明者は、原板が有する凹凸パターンを基板上に塗布された転写液層にインプリントするときに、予め原板と基板とのアライメントを高精度に行っても数μmの単位で位置誤差が生じることに着目して種々の実験を行い、原板が有する凹凸パターンが基板上に塗布された転写液層に接触した状態で、原板と基板とのアライメントを行うことにより、インプリントにおける位置誤差が数nmの単位まで減少することを見出した。これは、上記しした原因に加えて、原板が有する凹凸パターンと基板上の転写液層とが非接触の状態で原板と基板とのアライメントを行えば、インプリントに際して原板が基板上の転写液層へ接触した時に何らかの外力が発生してアライメント誤差が生じるが、原板が有する凹凸パターンが基板上の転写液層に接触した状態でアライメントを行えば、インプリント時に原板と基板上の転写液層とが接触することによる外力の発生を防止でき、その結果、アライメント誤差の発生を防止できるからであると考えられる。
【0015】
したがって、上記したように構成された請求項1,4に係る発明では、原板の凹凸パターン面が基板上に塗布された転写液層に接触した状態で、原板および基板のそれぞれに形成されたアライメントマークを認識手段により認識することで原板と基板とのアライメントを行っているため、従来のように原板および基板に対して特殊な加工を施さなくとも、原板が有する凹凸パターンを容易に高い位置精度で基板上の転写液層にインプリントできる。しかも、1つの認識手段により原板および基板のアライメントマークを認識することで原板と基板とのアライメントを行っているため、原板および基板にアライメントに伴う破損が生じるおそれがない。
【0016】
さらに、認識手段により、原板および基板の両アライメントマークが重なる方向から同時に撮像して得られた画像から両アライメントマークの形状を検出するため、撮像された原板および基板のアライメントマーク画像に相対的な位置誤差が生じるおそれがなく、振動や異なる走査タイミングに起因する位置誤差が生じるのを防止でき、しかも1つの認識手段で済み構成を簡素化できる。1つのメモリフレームに画像を取り込んだ後、別々にソフト処理すればよい。また、原板および基板がシリコンなどの赤外線が透過する材料で構成されている場合には、赤外光を投光することにより赤外線カメラで原板および基板のアライメントマークを読取ることができる。
【0017】
また、アライメント時に原板と基板とをより近接させることで、原板および基板の両アライメントマークを撮像手段の被写界深度内として、焦点がずれてぼけたりすることなく両アライメントマークの撮像を同時に行うことができる。ところで、両アライメントマークが撮像手段の被写界深度内に入らないときは、例えば圧電素子により撮像手段が備えるレンズを微小移動する構成としてもよい。このような構成とすれば、圧電素子によりレンズを微小移動することで、焦点距離が微小に移動してオートフォーカスされ、原板および基板の両アライメントマークを被写界深度内とすることができる。
【0018】
また、前記認識手段は、同時に撮像した前記両アライメントマークの画像のうち、ぼやけた方の画像に対してベクトル相関法による画像処理を施してエッジを検出して当該アライメントマークの形状を検出するものであってもよい(請求項2,5)。
【0019】
タイミングによる位置ずれを防ぐために、原板および基板のアライメントマークを同時に読み取ることが望ましいが、焦点方向に離れたマークにおいては少なくとも一方にぼやけが生じる。しかし、請求項2のような構成とすれば、離れた両マークにおいては撮像手段により同時に撮像した原板および基板のアライメントマーク画像に焦点が合わないことによるぼやけが生じていても、ベクトル相関法により両アライメントマーク画像のエッジをベクトルで表示し、複数のベクトルの向きからなる形状で認識することで、ぼやけてもベクトルの長さは変わっても形状に変化はないので精度よく検出できる。また、撮像手段を赤外線カメラで構成した場合には、赤外線カメラで撮像した両アライメントマーク画像のエッジ部分はぼやけることが多いが、ベクトル相関法により両アライメントマークを精度よく検出できる。
【0020】
また、前記原板および前記基板それぞれに形成された前記アライメントマークの形状が異なっており、一方の外周が他方の外周に重ならない形状であるとよい(請求項3)。
【0021】
このような構成によれば、例えば原板のアライメントマークとして中空の□を透設し、基板のアライメントマークを原板のアライメントマークである□中に内接しないより小さい○とすることで、原板および基板それぞれの両アライメントマークの外周が重なることがなく、認識手段による両アライメントマークの同時撮像画像から、両アライメントマークの形状検出を確実に行うことができる。さらに、原板が金属により構成されている場合には、原板に穴を透設し、この穴を介して基板のアライメントマークを読取ることで、原板に形成した穴をアライメントマークとして用いることができる。
【0022】
なお、原板および基板上にアライメントマークを形成する位置は、原板の凹凸パターンの外側および基板上に回路パターンが形成される範囲の外側とするのがよい。また、大面積の基板に、一の原板の凹凸パターンを後述するように連続的にインプリントする場合は、基板上に凹凸パターンがインプリントされる複数の位置は、それぞれ隣接する位置の間に隙間を空けて、その隙間にアライメントマークを形成する必要があるが、アライメントマークを凹凸パターン内に形成することで、これらの隙間を設けずともよい。また、アライメントマークを凹凸パターンの隅部に形成すれば、凹凸パターンの隅部が削られるのみであるのでアライメントマークを形成することによる影響を少ないものとすることができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1,4に係る発明によれば、原板の凹凸パターン面が基板上に塗布された転写液層に接触した状態で、1つの認識手段により、原板および基板のそれぞれに形成された両アライメントマークをこれらが重なる方向から同時に撮像して得られた1つの画像から、両アライメントマークの位置を別々に認識処理し、両アライメントマークの画像の位置関係に基づき原板と基板とのアライメントを行うため、従来のように原板および基板に対して特殊な加工を施さなくとも、原板が有する凹凸パターンを容易にかつ高い位置精度で基板上の転写液層にインプリントできる。さらに、認識手段により原板および基板のアライメントマークを同時に読取るため、撮像された原板および基板のアライメントマーク画像に相対的な位置誤差が生じるおそれがなく、振動や異なる走査タイミングに起因する位置誤差が生じることを防止できる。
【0024】
請求項2,5に係る発明によれば、撮像手段により同時に撮像した原板および基板のアライメントマーク画像に焦点が合わないことによるぼやけなどが生じていても、ベクトル相関法により両アライメントマーク画像からアライメントマークの形状を精度よく検出することができる。
【0025】
請求項3に係る発明によれば、原板および基板それぞれのアライメントマークの外周が重なることがなく、認識手段によるアライメントマークの形状検出を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の転写装置の第1実施形態であるナノインプリント装置の構成を示す図である。
【図2】図1のナノインプリント装置の要部拡大図である。
【図3】基板の全面が均一に加圧されている状態を示す図である。
【図4】主に基板の中央部が加圧されている状態を示す図である。
【図5】主に基板の周縁部が加圧されている状態を示す図である。
【図6】基板の全面を均一に加圧する方法の一例を示す図である。
【図7】基板の全面を均一に加圧する方法の一例を示す図である。
【図8】基板の全面を均一に加圧する方法の一例を示す図である。
【図9】基板の転写層に原板の凹凸パターンを連続的に転写する状態を示す図である。
【図10】基板を移動する粗動テーブルの構成を示す図である。
【図11】ナノインプリント装置の要部拡大図である。
【図12】ナノインプリント装置の要部拡大図である。
【図13】インプリント方法の一例を示す図である。
【図14】図13に示すインプリント方法を示す図である。
【図15】インプリント方法の他の例を示す図である。
【図16】図15に示すインプリント方法を示す図である。
【図17】本発明の転写装置の第2実施形態であるナノインプリント装置の構成を示す図である。
【図18】駆動ユニットを示す図である。
【図19】駆動部の正面図である。
【図20】駆動部の一部の平面図である。
【図21】駆動部によるウォーキング動作の説明図である。
【図22】駆動部によるウォーキング動作の説明図である。
【図23】ステージを位置決めする位置決め動作の説明図である。
【図24】平面調整機構の動作の一例を示す図である。
【図25】平面調整機構の動作の一例を示す図である。
【図26】主に基板の中央部が加圧されている状態を示す図である。
【図27】主に基板の周縁部が加圧されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
本発明の転写装置の第1実施形態であるナノインプリント装置1について図1を参照して説明する。図1はナノインプリント装置1の構成を示す図である。図1に示すナノインプリント装置1は、SiO2などにより構成される透光性を有する原板Mにリソグラフィ法により形成された凹凸パターンを、基板S上に塗布された紫外線硬化型樹脂液層からなる転写液層にインプリントするものであり、基板Sが載置される平面調整機構2と、原板Mおよび基板Sのそれぞれに形成されたアライメントマークALを同時に読取り可能な認識手段3と、認識手段3による原板Mおよび基板SのアライメントマークALの読取りに基づいて原板Mと基板Sとをアライメントするアライメント手段4と、モニタ8aを備え、平面調整機構2、認識手段3およびアライメント手段4の駆動制御を行うコントローラ8とを備えている。
【0028】
また、平面調整機構2はナノインプリント装置1が備える真空チャンバー5内に配設されており、真空ポンプ6により真空チャンバー5内を真空引きすることにより、原板Mの凹凸パターンの基板Sの転写液層へのインプリントを真空中で行うことができる。また、真空チャンバー5の上部にはガラス窓7が設けられており、認識手段3はガラス窓7を介して原板Mおよび基板SのアライメントマークALを読み取り、ガラス窓7を介して基板Sに塗布された紫外線硬化型樹脂液層に紫外光を照射することができる。また、真空チャンバー5内のガラス窓7の下部に、原板M、基板Sやその他の部品などを保持可能に、図示省略された静電チャック、機械式チャック、バイスなどの保持機構が設けられている。
【0029】
そして、この保持機構に、原板Mの代わりに基板Sまたはその他の部品を保持することで、ナノインプリント装置1を、平面調整機構2が有するステージ21に載置された基板Sと、保持機構に保持された基板Sまたは部品との接合装置として使用することもできる。また、後述するように、保持機構に保持された原板Mまたは基板S、その他の部品と、ステージ21上の基板Sとは、ステージ21を上方に移動することで接触し、ステージ21とガラス窓7下部の保持機構により狭持されて加圧される。したがって、ガラス窓7は、保持機構に保持された原板Mなどを、上面側から支持可能に硬質ガラスにより構成されている。
【0030】
認識手段3は、X−Y方向および焦点方向であるZ方向に移動可能なカメラテーブル31と、紫外線光源32aからの紫外光をガラス窓7およびSiO2で構成された原板Mを介して基板Sに導光して照射するファイバーレンズ32と、ガラス窓7を介して原板Mおよび基板SのアライメントマークALを同時に読取り可能にCCDなどにより構成されるカメラ33とを備えている。また、ファイバーレンズ32とカメラ33とはカメラテーブル31に設置されており、コントローラ8からの制御指令に基づくカメラテーブル31のX−Y方向およびZ方向への移動により、ファイバーレンズ32およびカメラ33はガラス窓7の上方に選択的に配置されて、基板Sに紫外光を照射するとともに、原板Mおよび基板SのアライメントマークALを同時に読み取る。
【0031】
アライメント手段4は、ピエゾ素子等により構成されてナノメートル単位での位置制御が可能なX−Yテーブル41と、一端が圧力センサ42を介してX−Yテーブル41に取り付けられて他端が真空チャンバー5外に導出されたZ軸43と、Z軸43をガイドするZ軸ガイド44aを有しZ軸43をθ(回転)方向に回転可能なθ軸44と、ボールねじ45aを介してZ軸43をY方向へ昇降制御可能であってコントローラ8により制御されるサーボ機構45とを備えている。なお、Z軸43の他端は、Oリング(図示省略)を介して真空チャンバー5の外へ導出されているため、真空チャンバー5内の雰囲気と外気とは確実に遮断される。
【0032】
また、サーボ機構45によりZ軸43が上方に移動制御されて、X−Yテーブル41に設置された平面調整機構2のステージ21上に載置された基板Sが原板Mに接触したことを、圧力センサ42により検出できるとともに、圧力センサ42の出力がコントローラ8にフィードバックされる。そして、コントローラ8は圧力センサ42の出力を利用してZ軸43を昇降制御することにより基板Sの原板Mに対する加圧力を制御できる。また、同軸光源33aからの光が照射された原板Mおよび基板SのアライメントマークALがカメラ33により同時に読取られることにより得た位置情報がコントローラ8にフィードバックされて、コントローラ8はカメラ33により得た位置情報を利用して原板Mおよび基板SのアライメントマークALの相対的な位置誤差を導出し、この位置誤差に基づいてアライメント手段4のX−Yテーブル41およびθ軸44を駆動することにより原板Mと基板Sとのアライメントを高精度に行うことができる。
【0033】
なお、コントローラ8はカメラ33により得た原板Mおよび基板Sのアライメントマーク画像にベクトル相関法による画像処理を施すことにより、それぞれのアライメントマーク画像のエッジを検出している。このような構成とすれば、原板Mおよび基板Sの両アライメントマークALがカメラ33の被写界深度内にない場合に、カメラ33により撮像された両アライメントマーク画像にぼやけが生じた場合であっても、それぞれのアライメントマーク画像の濃淡をベクトル表示することにより、両アライメントマーク画像からアライメントマークの形状を精度よく検出できる。以上のように、コントローラ8は撮像機能を有する本発明の「認識手段」として機能している。
【0034】
次に、平面調整機構2について図2も参照して説明する。図2はナノインプリント装置1の要部拡大図であって平面調整機構2を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。同図に示すように、平面調整機構2は、図示省略されたヒータを備え、静電チャックや機械チャックなどが設けられて基板Sを載置して保持可能に構成されたステージ21と、ステージ21の下面側に設けられた半球体22と、半球体22を接離自在に支持する球面軸受23と、ステージ21を下面側から伸縮することで押圧してステージ21の傾きを制御する3個の圧電素子24a,24b,24cと、圧電素子24a,24b,24cそれぞれの下方に配設され、ステージ21への荷重を検出可能な圧力センサ25とを備えている。平面調整機構2は、圧力センサ25の出力を利用して、ステージ21と原板Mとの間の平行度調整を行うことができる。
【0035】
すなわち、まず、サーボ機構45を駆動して、圧力センサ42によりステージ21と原板Mとの接地が検出されるまでZ軸43を上方に移動する。そして、半球体22が球面軸受23を摺接することによるステージ21と原板Mとの倣いが完了した後、さらに、3つの圧力センサ25の出力が一致するように圧電素子24a,24b,24cの伸縮制御を行うことで、原板Mとステージ21との平行度を高精度に調整できる。このように、原板Mとステージ21との平行度を調整することで、図3に示すように、ステージ21に載置された基板Sを原板Mに対して、全面にわたって均一に加圧できる。なお、図3は基板Sの全面が均一に加圧されている状態(以下、「均一加圧状態」と称する)を示す図である。
【0036】
次に、図4を参照して平面調整機構2の制御方法の一例について説明する。図4は主に基板Sの中央部が加圧されている状態(以下、「中高状態」と称する)を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図である。同図に示すように、コントローラ8からの制御指令より、圧電素子24a,24b,24cが縮むように駆動制御された状態で、Z軸43を上方に移動してステージ21に載置された基板Sと原板Mとを接触して加圧することで、球面軸受23によりステージ21(半球体22)が支持された基板Sの中央部を重点的に加圧することができる。このような構成とすれば、中央部に溜まった空気が基板Sの周縁部側へ押し出されるため、特に、基板中央部付近にボイドが発生するのを防止できる。
【0037】
次に、図5を参照して平面調整機構2の制御方法の他の例について説明する。図5は基板Sの主に周縁部が加圧されている状態(以下、「中べこ状態」と称する)を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図である。同図に示すように、コントローラ8からの制御指令より、圧電素子24a,24b,24cが伸びるように駆動制御した状態で、Z軸43を上方に移動してステージ21に載置された基板Sと原板Mとを接触して加圧することで、圧電素子24a,24b,24cによりステージ21が支持された基板Sの周縁部を重点的に加圧することができる。このような構成とすれば、周縁部に雰囲気封止用の枠体を形成した基板Sと、原板Mの代わりにステージ21の上方の保持機構に保持された蓋となる基板Sとを接合することにより、両基板S間の枠体に囲まれた部分に任意の雰囲気を封止するときに、基板Sの周縁部を重点的に加圧できるため、枠体と蓋となる基板Sとを良好に接合できる。
【0038】
また、均一加圧状態にするためには、中べこ状態と中高状態との中間の状態となるように圧電素子24a,24b,24cの伸縮を調整すればよい。従来では、ステージ21の傾きが一度固定されれば、該傾きが固定された状態が維持されたため、加圧状態を修正するのは不可能であり、加圧状態は、基板Sの研磨状態はステージ21などの製造精度に依存せざるを得なかったため、均一な加圧状態を達成することは難しかった。本方式においては、圧電素子24a,24b,24cの伸縮量を数値で調整すれば中べこ状態にも中高状態にも調整できるが、このことにより初めて中間の均一加圧状態を生み出すことができ、容易に加圧状態を調整可能である。
【0039】
また、基板Sどうしや、基板Sと原板Mとの接触時の平行度、すなわち、基板S、原板Mおよびステージ21などの傾きと、高加圧時の基板Sなどの平行度(傾き)とには微妙な違いがあるため、上記構成のように、圧電素子24a,24b,24cの長さを数値コントロールすることにより初めて達成でき、中べこ状態と中高状態との両方の状態を達成することを含めて、上記した構成は従来なかった画期的な方法である。
【0040】
また後述する均一加圧方法と同様に、基板Sどうしや、基板Sと原板Mとの接触時に、これらの基板Sどうし、または基板Sと原板Mとが位置ずれしないように、これらの平行度に合わせた状態で接触させるが、このとき、半球体22と球面軸受23とを隙間が空いた状態としてよい。そして、ステージ21の傾きを高加圧(加圧均一)時の傾きに移行し、すなわち、基板Sどうしまたは基板Sと原板Mとの平行度は維持した状態で傾きを変化させ、加圧しながら圧電素子24a,24b,24cを縮めて半球体22と球面軸受23とを接触させ、高荷重で加圧する。そのときの荷重均一性は、圧電素子24a,24b,24cと、半球体22および球面軸受23の軸受動作とがバランスよく機能することにより達成することができる。そして、圧電素子24a,24b,24cが長(高)ければ中べこ状態となり、圧電素子24a,24b,24cが短(低)ければ中高状態となる。
【0041】
次に、図6ないし図8を参照して、このナノインプリント装置1を、ガラス窓7の下部に設けられた保持機構に原板Mの代わりに基板Sまたはその他の部品を保持して、この基板Sまたはその他の部品とステージ21に載置された基板Sとの接合装置として使用するときの一例について説明する。図6ないし図8は基板Sを全面にわたって均一に加圧する方法の一例を示す図であって、それぞれ異なる状態を示す図である。なお、ガラス窓7とステージ21との平行度には少しずれが生じており、これらの図面ではこのずれを模式的に表している。
【0042】
図6に示すように、コントローラ8の駆動信号により、圧電素子24a,24b,24cの伸縮制御を行って半球体22を球面軸受23から浮かせた状態で、ステージ21に載置された基板Sと、ガラス窓7の下部に設けられた保持機構に保持された基板Sとの平行度を調整する。これは、上記したステージ21とガラス窓7とを接触する手法によるステージ21とガラス窓7の下部に配置された保持機構との平行度調整を事前に行い、ステージ21とガラス窓7との平行度が調整されたときの圧電素子24a,24b,24cの長さをコントローラ8が備えるメモリなどの記憶手段に記憶しておき、この記憶した値を利用することで、基板Sが載置されたステージ21と、基板Sまたは部品が保持されたガラス窓7下部の保持機構との平行度を調整できる。
【0043】
次に、図7に示すように、ステージ21を上方に移動して、ステージ21に載置された基板Sと、ガラス窓7の下部に設けられた保持機構に保持された基板Sとを接触させ、該接触状態のまま、ステージ21をさらに上方に移動して加圧力を徐々に増大しつつ、半球体22と球面軸受23とが接触するように圧電素子を縮める制御を行う。このとき、接触した両基板Sは接触面に働く静止摩擦力により位置ずれすることはない。
【0044】
そして、図8に示すように、半球体22と球面軸受23とが接触すれば、Z軸43(ステージ21)の駆動制御を、上方への位置(移動)制御から、圧力センサ42の出力値に基づく圧力制御に切換え、両基板Sを任意の圧力で加圧しながら、圧電素子24a,24b,24cをさらに縮める制御を行う。このような構成とすれば、ステージ21は半球体22を介して球面軸受23に支持された状態となり、この球面軸受23が半球体22を安定した状態で支持できるように、球面軸受23によるステージ21(半球体22)の支持方向が、加圧力の方向とほぼ反対の方向となるように自然にステージ21の傾きは変化する。
【0045】
すなわち、高加圧力によりガラス窓7などにたわみが生じることで、加圧力の方向と、ステージ21の基板載置面とがほぼ直交する方向となるようにステージ21の傾きが変化し、図6に示す例とは対照的に、ガラス窓7下部の保持機構側の平行度がステージ21に倣うこととなる。したがって、ステージ21および保持機構に保持された両基板Sの接触時のステージ21およびガラス窓7下部の保持機構側の傾きと(図6参照)、高加圧時のステージ21およびガラス窓7下部の保持機構側の傾きとが異なることとなり(図8参照)、このように接触時および高加圧時のステージ21等の傾きを異ならせることで、両基板Sを該両基板Sの接触面にほぼ直交する方向から均一に加圧することができる。
【0046】
換言すれば、平面調整機構2は、ステージ21やガラス窓7などにひずみが生じる程度の圧力が両基板Sに加わらないときは、半球体22、球面軸受23および圧電素子24a,24b,24cを利用してステージ21の平行度をガラス窓7、すなわち保持機構に保持された基板S側に合わせる制御を行う。一方、平面調整機構2は、ステージ21やガラス窓7などにひずみが生じる程度の高い圧力が両基板Sに加わるときは、上記したように、これらのひずみを利用してガラス窓7下部の保持機構側の平行度をステージ21に合わせる制御を行うことで、両基板Sの接触時から、両基板Sを高加圧力で加圧するまで、常に良好に両基板Sを加圧できる。
【0047】
なお、図6に示す両基板Sの接触時の状態から、ステージ21およびガラス窓7下部の保持機構側の傾きを維持した状態で両基板Sに高加圧力を加えた場合には、両基板Sへの加圧力の方向と、両基板Sの接触面の傾きとがほぼ直交する方向とならないため、加圧時に両基板S間で位置ずれを生じるおそれがある。しかしながら、上記した制御を行うことで、両基板Sの加圧時に、両基板S間で位置ずれが生じるのを確実に防止できる。
【0048】
また、高加圧時に両基板Sを全面にわたって均一に加圧しているときの圧電素子24a,24b,24cの長さを予め計測してコントローラ8が備えるメモリなどの記憶手段に記憶しておき、図6に示す両基板Sの接触時の状態から高加圧状態に移行するときに、記憶手段に記憶された圧電素子24a,24b,24cの長さを用いて、圧電素子24a,24b,24cの伸縮制御を行ってもよい。すなわち、高加圧時にすべての圧力センサ25の出力値が同一、換言すれば、両基板Sを全面にわたって均一に加圧している状態となるように、圧電素子24a,24b,24cの伸縮制御を行う。次に、すべての圧力センサ25の出力値がほぼ同一となったときの圧電素子24a,24b,24cの長さを計測して、計測した圧電素子24a,24b,24c長さをコントローラ8が備えるメモリなどの記憶手段に予め記憶する。
【0049】
そして、図6に示す両基板Sの接触時の状態から、両基板Sの高加圧状態に移行するときに、記憶手段に記憶した値を利用して圧電素子24a,24b,24cの長さを制御することにより、両基板Sの接触時および高加圧時のステージ21等の傾きを異ならせることができる。このような構成とすれば、両基板Sの接触時から、両基板Sを高加圧力で加圧するまで、常に良好に両基板Sを加圧できる。なお、両基板Sの接触時の状態から高加圧状態に移行するときに、圧電素子24a,24b,24cの長さを記憶手段に記憶された長さへとステップ状に変化させてもよい。このような構成としても、両基板S間に働く静止摩擦力により、両基板S間にずれが生じることはなく、両基板Sを全面にわたって均一に加圧できる。
【0050】
次に、図9ないし図12を参照して、ナノインプリント装置1により、大判の基板Sに原板の凹凸パターンを連続的に転写するときの一例について図1も参照しつつ説明する。図9は基板Sに形成された転写液層UVRに原板Mの凹凸パターンを連続的に転写する状態を示す図である。また、図10は基板Sを移動するX−Y粗動テーブル9の構成を示す図である。また、図11および図12はナノインプリント装置1の要部拡大図であって、特にX−Y粗動テーブル9の構成を示し、それぞれ異なる状態を示す図である。
【0051】
本実施形態のナノインプリント装置1は、ステージ21および基板受26に載置された基板SをX−Y粗動テーブル9により粗く移動することで、大判の基板Sに塗布などして形成された転写液層UVRの所定の少領域SAに原板Mの凹凸パターンを連続して転写(インプリント)できる。図10に示すように、X−Y粗動テーブル9は、X軸91と、X軸91に沿って移動可能に、X軸91にほぼ直交して設けられたY軸92と、Y軸92に沿って移動可能に設けられた基板支持部93とを備えている。このような構成とすれば、図11に示すように、ステージ21および基板受26に載置された基板Sを、Y軸92をX軸91に沿って移動することによりX方向に移動することができ、基板支持部93をY軸92に沿って移動することによりY方向に移動することができる。
【0052】
また、X−Y粗動テーブル9は基板Sをステージ21に接触した状態で基板Sを移動させ、基板Sの移動後はアライメント移動するステージ21に接触配置している。また。基板Sは粗動テーブル9の基板支持部93(基板保持治具)により移動されるが、治具93は基板Sより多少大きめに構成されたガイドとなっており、基板Sの移動後に治具位置を微小移動することにより、基板Sと粗動テーブル9との間に隙間を作り、基板Sをアライメントするための微小移動を行うことができるようにしている。
【0053】
したがって、図11に示すように、コントローラ8から制御指令を与えることでX−Y粗動テーブル9を駆動して、基板S上に形成された転写液層UVRの全領域のうち、原板Mの凹凸パターンを転写したい領域がステージ21の上に位置するように基板Sを粗く動かすことができる。次に、アライメント手段4を駆動して、原板Mと基板Sとの高精度アライメントを行うことで、基板S上の転写液層UVRに原板Mの凹凸パターンを高い位置精度で転写できる。そして、図12に示すように、X−Y粗動テーブル9の駆動により基板Sを移動してアライメント手段4による高精度アライメントを行った後に、原板Mの凹凸パターンの転写液層UVRへの転写を繰返すことで、基板Sの転写液層UVRに連続して原板Mの転写液層UVRへ凹凸パターンを転写できる。
【0054】
1.インプリント方法の一例
次に、図13および図14を参照して、インプリント方法の一例について説明する。図13はインプリント方法の一例を示す図である。また、図14は図13に示すインプリント方法を示す図であり、(a)ないし(d)はそれぞれ異なる状態を示す。図13に示すように、このインプリント方法の一例では、基板S上に紫外光により硬化する光硬化型樹脂が塗布されて形成された一層構造の転写液層UVRに、原板Mが有する凹凸パターンPをインプリントするように構成されている。この転写液層UVRは、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ウレタンアクリレート系などの種々の光硬化型樹脂により形成することができる。
【0055】
図14(a)に示すように、まず、原板Mの凹凸パターンPと基板S上の転写液層UVRとが接触しない状態でX−Y粗動テーブル9を駆動して、原板Mおよび基板Sの両アライメントマークALを、両アライメントマークALが重なる方向(同図中の太線矢印で示す原板M側の上方向)から認識手段3で読取ることにより粗いアライメントを行う。そして、同図(b)に示すように、Z軸43を上方に移動して、原板Mの凹凸パターンPと転写液層UVRとを接触させる。
【0056】
次に、図14(c)に示すように、原板Mの凹凸パターンP面が基板S上の転写液層UVRに接触した状態でアライメント手段4を駆動して、原板Mおよび基板SのアライメントマークALを、両アライメントマークALが重なる方向から認識手段3により同時に撮像して得られた1つの画像からその形状を検出し、原板Mと基板Sとの高精度アライメントを行う。そして、同図(d)に示すように、Z軸43をさらに上方に移動して任意の加圧力で基板Sを原板Mへ押付けるとともに、カメラテーブル31を駆動することにより、ファイバーレンズ32をガラス窓7の上方に配置する。続いて、転写液層UVRの全領域のうち、SiO2により構成される原板Mが接触する領域に部分的に紫外光が照射される。これにより、転写液層UVRのうち、原板Mの凹凸パターンPが接触している部分が硬化して、当該部分への凹凸パターンPのインプリントが完了する。
【0057】
このような構成とすれば、原板Mの凹凸パターンP面が基板S上に塗布された転写液層UVRに接触した状態で、原板Mおよび基板Sのそれぞれに形成されたアライメントマークALを認識手段3により同時に読取ることにより原板Mと基板Sとのアライメントを行っているため、従来のように原板Mおよび基板Sに対して特殊な加工を施さなくとも、原板Mが有する凹凸パターンPを容易にかつ高い位置精度で基板S上の転写液層UVRにインプリントできる。しかも、認識手段3により原板Mおよび基板SのアライメントマークALを読取ることで、原板Mと基板Sとのアライメントを行っているため、原板Mおよび基板Sにアライメントに伴う破損が生じるおそれがない。
【0058】
また、上記したインプリント方法の一例の構成とすれば、転写液層UVRを樹脂液層により構成しているので、原板Mの凹凸パターンPがインプリントされた当該樹脂液層(転写液層UVR)をマスクとして基板Sに回路パターンと容易に形成できる。
【0059】
また、上記したインプリント方法の一例の構成とすれば、光硬化型樹脂は粘性が低いものが多く、粘性の低い光硬化型樹脂を転写液層UVRとすることで、原板Mの凹凸パターンP面が基板S上に塗布された転写液層UVRに接触した状態で、原板Mと基板Sとのアライメントを容易に行うことができる。
【0060】
2.インプリント方法の他の例
次に、図15および図16を参照して、インプリント方法の他の例について説明する。図15はインプリント方法の他の例を示す図である。また、図16は図15に示すインプリント方法を示す図であり、(a)ないし(d)はそれぞれ異なる状態を示す。図15に示すように、このインプリント方法の他の例が、上記したインプリント方法の一例と異なる点は、紫外光により硬化する光硬化型樹脂が塗布されて形成された基板S上の転写液層UVRが、ベース液層BRを下層とし、ベース液層BRよりも粘性の低い潤滑液層LRを上層とする2層構造である点である。そして、このように2層構造に構成された転写液層UVRに原板Mが有する凹凸パターンPがインプリントされるように構成されている。
【0061】
図16(a)に示すように、まず、原板Mの凹凸パターンPと基板S上の転写液層UVRとが接触しない状態でX−Y粗動テーブル9を駆動して、原板Mおよび基板SのアライメントマークALを、両アライメントマークALが重なる方向(同図中の太線矢印で示す原板M側の上方向)から認識手段3で読取ることにより、原板Mと基板Sとの粗いアライメントを行う。そして、同図(b)に示すように、Z軸43を上方に移動して、原板Mの凹凸パターンPと潤滑液層LR(転写液層UVR)とを接触させる。
【0062】
次に、図16(c)に示すように、原板Mの凹凸パターンP面が基板S上の潤滑液層LRに接触した状態でアライメント手段4を駆動して、原板Mおよび基板SのアライメントマークALを、両アライメントマークALが重なる方向から認識手段3により同時に撮像して得られた1つの画像からその形状を検出し、原板Mと基板Sとの高精度アライメントを行う。そして、同図(d)に示すように、Z軸43をさらに上方に移動して任意の加圧力で基板Sを、原板Mの凹凸パターンPがベース液層BRに接触するように原板Mへ押付けるとともに、カメラテーブル31を駆動することにより、ファイバーレンズ32をガラス窓7の上方に配置する。続いて、転写液層UVRのうち、SiO2により構成される原板Mの位置へ部分的に紫外光が照射される。これにより、転写液層UVRのうち、原板Mの凹凸パターンPが接触している部分が硬化して、当該部分への凹凸パターンPのインプリントが完了する。そして、同図(d)に示すように、Z軸43をさらに上方に移動して任意の加圧力で基板Sを原板Mへ押付けるとともに、カメラテーブル31を駆動することにより、ファイバーレンズ32をガラス窓7の上方に配置する。続いて、転写液層UVRの全領域のうち、SiO2により構成される原板Mが接触する領域に部分的に紫外光が照射される。これにより、転写液層UVRのうち、原板Mの凹凸パターンPが接触している部分が硬化して、当該部分への凹凸パターンPのインプリントが完了する。
【0063】
このような構成とすれば、原板Mの凹凸パターン面がベース液層BRよりも粘性の低い潤滑液層LRに接触した状態で原板Mと基板Sとのアライメントを行うことで、原板Mが有する凹凸パターンPを容易にかつ高い位置精度で基板S上の転写液層UVRにインプリントできる。
【0064】
<第2実施形態>
本発明の転写装置の第2実施形態であるナノインプリント装置1について図17を参照して説明する。図17はナノインプリント装置100の構成を示す図である。このナノインプリント装置100が第1実施形態のナノインプリント装置1と異なる点は、X−Yテーブル41の代わりにピエゾ駆動手段215を有する駆動ユニット200を備え、この駆動ユニット200によりステージ121を移動して、原板Mと基板Sとの高精度アライメントを行っている点である。また、ナノインプリント装置1においてX−Yテーブル41が配設された箇所には、プリズムやミラーにより構成された導光路42を有する土台141が配設されており、真空チャンバー5外に配設された光源34から、アライメント用の赤外光または転写液層硬化用の紫外光を原板Mおよび基板Sに照射可能に構成されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様であるため、同一の構成には相当符号を付してその構成および動作の説明を省略する。以下、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0065】
図17に示すように、平面調整機構102はナノインプリント装置100が備える真空チャンバー5内に配設されており、この平面調整機構102が上記した駆動ユニット200を備えている。この駆動ユニット200については後で詳細に説明する。このナノインプリント装置100では、真空ポンプ6により真空チャンバー5内を真空引きすることにより、原板Mの凹凸パターンの基板Sの転写液層へのインプリントを真空中で行うことができる。また、真空チャンバー5の上部にはガラス窓7が設けられており、認識手段3はガラス窓7を介して原板Mおよび基板SのアライメントマークALを読み取り、ガラス窓7を介して基板Sに塗布された紫外線硬化型樹脂液層に紫外光を照射することができる。
【0066】
一方、真空チャンバー5の側面にガラス窓5aが構成されており、真空チャンバー5外に設けられた光源34から、赤外光または紫外光を真空チャンバー5内に入射可能に構成されている。光源34から真空チャンバー内に入射された光は土台141に設けられた導光路141aによって原板M、基板Sおよびカメラ33に導光される。このような構成とすれば、例えば原板MがSiなどの可視光を透過しない材質により構成されている場合には、下方から赤外光をカメラ33へと導光することで、カメラ33は原板Mおよび基板SのアライメントマークALを同時に読取ることができる。また、原板Mが紫外光を透過できない材質により構成されている場合には、下方から紫外光を基板S上の転写液層UVRに導光することで、転写液層UVRを硬化して原板Mの凹凸パターンPを転写液層UVRにインプリントできる。
【0067】
次に、平面調整機構(本発明の「アライメント手段」に相当)102について図18も参照して説明する。図17に示すように、平面調整機構102は、図示省略されたヒータを備え、静電チャックや機械チャックなどが設けられて基板Sを載置して保持可能に構成されたステージ121と、ステージ121の下面側にステージ121と接離自在に設けられた半球体122と、半球体122を接離自在に支持する球面軸受123と、ステージ121を下面側から伸縮することで押圧してステージ121の傾きを制御するとともにステージ121をX−Y方向およびθ(回転)方向に移動する3個の駆動ユニット200と、駆動ユニット200それぞれの下方に配設され、ステージ121への荷重を検出可能な圧力センサ25とを備えている。
【0068】
図18に示すように、駆動ユニット200は、後で説明する駆動部219(図19参照)の基台203の下方に上下方向に伸縮可能な補助昇降用圧電素子227を設けており、基台203、受台217、昇降用圧電素子205、下部連結体207、ピエゾ駆動手段215、支持足213および補助昇降用圧電素子227が一体となって駆動ユニット200を構成している。
【0069】
次に、図19ないし図23を参照して、図19に示す駆動部219について詳細に説明する。図19は駆動部の正面図である。図20は駆動部の一部の平面図である。図21は駆動部によるウォーキング動作の説明図である。図22は駆動部によるウォーキング動作の説明図である。図23はステージを位置決めする位置決め動作の説明図である。
【0070】
駆動部219は以下のように構成されている。すなわち、図19および図20に示すように、平板状の基台203上に昇降用圧電素子205が配設され、この昇降用圧電素子205上に下部連結体207を介して3個の駆動用圧電素子209a,209b,209cが連結され、これら駆動用圧電素子209a,209b,209c上には上部連結体211を介して上下方向に長尺の支持足213が連結、支持されている。ここで、各駆動用圧電素子209a,209b,209cおよび上部連結体211によりピエゾ駆動手段215が構成されている。
【0071】
また、基台203には受台217が立設され、この受台217の上部中央の開口217aを支持足213が昇降するようになっており、支持足213は各駆動用圧電素子209a,209b,209cの上下方向への伸縮によって、支持足213の先端(上端)が受台217の上面よりも上、下に移動する。そして、基台203、受台217、昇降用圧電素子205、下部連結体207、ピエゾ駆動手段215および支持足213が一体となった駆動部219が形成され、例えば図23に示すように、この駆動部219を有する3個の駆動ユニット200がほぼ円周上に配列されて平面調整機構102が構成される。
【0072】
さらに、受台217の上面には、半導体ウエハなどの基板を保持する例えば円板状のステージ121が載置され、支持足213の先端の移動に伴い、ステージ121が受台217上から持ち上げられて移動されるようになっており、複数の駆動ユニット200(駆動部219)の支持足213が協調して動くことにより、ステージ121が所定方向に移動(回転も含む)されてステージ121に保持された半導体ウエハ等の基板が所定の位置に位置決めされる。
【0073】
駆動ユニット200の動作を、駆動部219の動作を中心に簡単に説明すると、各駆動用圧電素子209a,209b,209cにコントローラ8により電圧を印加して各駆動用圧電素子209a,209b,209cを上方へ伸長変位させて支持足213の先端を受台217の上面よりも上方に突出させる。これにより、受台217上のステージ121を一旦受台217から持ち上げ、この状態からコントローラ8による各駆動用圧電素子209a,209b,209cへの印加電圧を制御して各駆動用圧電素子209a,209b,209cを適宜伸縮させ、支持足213を例えば一方向に移動させてステージ121を平行移動させる。
【0074】
その後、各駆動用圧電素子209a,209b,209cに伸長時とは逆の電圧印加により圧縮変位させ、これにより支持足213の先端を受台217の上面よりも下方に沈ませて支持足213を下動させ、ステージ121を再び受台217上に載置する一方、支持足213を元の位置に復帰させ、このような動作を繰り返してステージ121を所定の位置まで移動させ、ステージ121に保持された半導体ウエハなどの基板を所定位置に位置決めするのである。このとき、各駆動用圧電素子209a,209b,209cの伸縮により各駆動用圧電素子209a,209b,209cの先端が水平方向と高さ方向に移動し、支持足213の先端が水平方向および高さ方向に移動可能となっている。また、圧電素子の配置構成としては平面方向と高さ方向を分離した構成であってもよい。
【0075】
駆動ユニット200(駆動部219)を上記のように構成すれば、受台217と支持足213との距離を近づけることができ、コンパクトな構成とすることができる。また、受台217と支持足213との距離を小さくすることができるため、ピエゾ駆動手段215を駆動して支持足213によりステージ121を受台217から持ち上げるときに、ステージ121の受台217との接触面のうねりや凹凸による影響を最も小さくすることができる。
【0076】
なお、各駆動用圧電素子209a,209b,209cは電圧が印加されることにより伸縮する素子のことであって、その材質はどのようなものであってもよい。また、駆動ユニット200は、ステージ121が載置されてその荷重を支持する受台217を備えているため、各駆動用圧電素子209a,209b,209cと連結された支持足213のみでステージ121を支持する場合に比べ、ステージ121に加えられる圧力に対する耐久性を向上させることができる。
【0077】
次に、平面調整機構102における駆動ユニット200(駆動部219)のウォーキング動作について図21ないし図23を参照して説明する。
【0078】
まず、駆動部219の動作を詳述すると、図21および図22に示すように、支持足213の先端が受台217の上面よりも下方に沈んだ状態を初期状態として、コントローラ8から各駆動用圧電素子209a,209b,209cのそれぞれに任意に電圧印加し、ステージ121を移動させる矢印Dの方向と反対方向に支持足213を傾ける(図21、図22のステップS1)。
【0079】
続いて、支持足213を傾けた状態で各駆動用圧電素子209a,209b,209cを伸長変位させて支持足213の先端を受台217の上面よりも上方に突出させ、支持足213によりステージ121を持ち上げてステージ121を受台217から浮上させる(図21、図22のステップS2)。そして、支持足213の先端によりステージ121を持ち上げた状態で、コントローラ8による印加電圧を制御して各駆動用圧電素子209a,209b,209cを変位させ、支持足213の先端を矢印Dの方向に傾けることでステージ121を矢印Dの方向に移動させる(図21、図22のステップS3)。
【0080】
その後、コントローラ8により印加電圧を制御して各駆動用圧電素子209a,209b,209cを圧縮変位させて支持足213の先端を受台217の上面よりも下方に沈み込ませ(図21、図22のステップS4)、さらに支持足213の傾きを初期状態に戻すと、1回のウォーキング動作が終了することとなる(図21、図22のステップS5)。
【0081】
次に、このような平面調整機構102の各駆動ユニット200(駆動部219)のウォーキング動作により位置決めされるステージ121の位置決め動作について図23を参照して説明する。図23に示すように、平面調整機構102を構成する3個の駆動ユニット200のウォーキング動作を適宜組み合わせることにより、ステージ121のX、Y、θ(回転)方向への移動および、3方向への移動を組み合わせた位置決め動作を行なうことができる。
【0082】
例えば、図23(a)に示すように、各駆動ユニット200の支持足213を同時に同じX方向に移動させると、ステージ121をX方向に移動させることができ、同図(b)に示すように、各駆動ユニット200の支持足213を同時に同じY方向に移動させると、ステージ121をY方向に移動させることができ、同図(c)に示すように、各駆動ユニット200の支持足213を同時に円板状のステージ121の円周の接線方向にそれぞれ移動させると、ステージ121をθ方向に回転移動させることができ、駆動ユニット200の支持足213の移動方向を逆にすると、ステージ121をθ方向と逆方向に回転させることができる。
【0083】
なお、必要に応じて、コントローラ8による各駆動用圧電素子209a,209b,209cへの電圧印加時に、各駆動用圧電素子209a,209b,209cの収縮動作におけるクリープ特性を、目標とする各駆動用圧電素子209a,209b,209cの伸縮量に対する目標電圧に対し、一旦オーバーシュートさせて目標電圧に戻すクリープ補正動作を行なうのが望ましい。こうすると、各駆動用圧電素子209a,209b,209cを最終の目標変位に精度よくかつ迅速に制御することが可能になり、各駆動用圧電素子209a,209b,209cを用いた平面調整機構102の応答性を改善できて高速でかつ高精度な位置決めを行なうことができる。
【0084】
このような構成によれば、平面調整機構102によりステージ121を移動することで、原板Mと基板Sとのアライメントを非常に高い位置精度で行うことができる。また、各駆動用圧電素子209a,209b,209cの下方に各駆動用圧電素子209a,209b,209cを同時に昇降させる昇降用圧電素子205を設けたため、昇降用圧電素子205の伸縮によって各駆動用圧電素子209a,209b,209cを同時に昇降させることができ、各駆動用圧電素子209a,209b,209cの伸縮量の不足を昇降用圧電素子205の昇降によって補うことが可能になり、支持足の受台からの突出量を確保するために受台上面を計測しながら研磨するなどの従来必要であった無駄な作業が不要になる。
【0085】
また、受台217と、一足の支持足213を有する駆動ユニット200により、ウォーキング動作を実行可能であるため、ウォーキング動作を実行するのに支持足213が2本必要であった従来の構成に比べ、装置のコンパクト化および製造コストの抑制を図ることができる。
【0086】
なお、支持足213が2足であれば、支持足213のステージ121への支持の切換時に、両方の支持足213は揺動中であるので支持足213とステージ121との間で滑りが生じ、その結果、位置ずれが生じるため、目的とする動作を得られなかった。しかしながら、上記した構成とすれば、支持足213が1足でウォーキング動作が可能となるため、支持足213とステージ121との間での滑りの発生を抑制でき、目的とするステージ121の移動を行なうことが可能となる。
【0087】
また、図23に示すように、平面調整機構102として、駆動ユニット200を任意の円周上に位置するように3個備えれば、9個の駆動用圧電素子によりステージ121の全ての方向への移動が可能となり、装置のコンパクト化およびコストの抑制を図ることが可能になる。
【0088】
さらに、3個の駆動ユニット200が有する支持足213の3つの先端により任意の平面が規定されるため、ステージ121の支持足213との接触面が平面であれば、ウォーキング動作中であっても、ステージ121と支持足213とは常に接触することとなるため、ステージ121と支持足213との間の滑りを抑制でき、非常に好ましい。
【0089】
また、上記した平面調整機構102は、各駆動用圧電素子209a,209b,209cを有する駆動ユニット200による高精度な位置制御と、受台217による高耐荷重性とを兼ね備えたものである。
【0090】
また、平面調整機構102は、圧力センサ25の出力を利用して、ステージ121と原板Mとの間の平行度調整を行うことができる。すなわち、まず、サーボ機構45を駆動して、圧力センサ42によりステージ121と原板Mとの接地が検出されるまでZ軸43を上方に移動する。そして、半球体122が球面軸受123を摺接することによるステージ121と原板Mとの倣いが完了した後、さらに、3つの圧力センサ25の出力が一致するように駆動ユニット200の圧電素子の伸縮制御を行うことで、原板Mとステージ121との平行度を高精度に調整できる。
【0091】
このとき、上記した昇降用圧電素子205を第1の昇降用圧電素子とし、補助昇降用圧電素子227を第2の昇降用圧電素子として、例えば接合において、ステージ121上の基板Sとガラス窓7下部の位置に保持された基板Sなどの接触対象と接触させる際には、両者の位置ずれを防ぐ必要があるため、第1の昇降用圧電素子である昇降用圧電素子205により両基板Sの平行調整を行えば、効果的に平行調整できて位置ずれを防止できる(図24参照)。
【0092】
一方、両基板Sを加圧して接合するときは、均一荷重をかけるための平行調整が必要になり、第2の昇降用圧電素子である補助昇降用圧電素子227により両基板Sの平行調整を行えば、加圧時の平行調整を効果的に行なって均一荷重をかけることができる(図25参照)。このとき、接触時の位置ずれを回避したり、加圧時の荷重を均一にするためには、数μm以内の微妙な平行調整が必要となるが、昇降用圧電素子205を使用することで可能となる。また、加圧時には支持足213は下降して受台217でテーブル121を支持しているため、基台203下の補助昇降用圧電素子227との2段構成とすることで接触時の平行調整と加圧時の平行調整を分離独立して調整することが可能となり好ましい。なお、図24および図25はそれぞれ平面調整機構102の動作の一例を示す図である。
【0093】
次に、図26を参照して平面調整機構102の制御方法の一例について説明する。図26は主に基板Sの中央部が加圧されている状態を示す図である。同図に示すように、コントローラ8からの制御指令より、圧電素子205,227が縮むように駆動制御された状態で、Z軸43を上方に移動してステージ121に載置された基板Sと原板Mとを接触して加圧することで、球面軸受123によりステージ121(半球体122)が支持された基板Sの中央部を重点的に加圧することができる。このような構成とすれば、中央部に溜まった空気が基板Sの周縁部側へ押し出されるため、特に、基板中央部付近にボイドが発生するのを防止できる。
【0094】
次に、図27を参照して平面調整機構2の制御方法の他の例について説明する。図27は基板Sの主に周縁部が加圧されている状態を示す図である。同図に示すように、コントローラ8からの制御指令より、圧電素子227が伸びるように駆動制御した状態で、Z軸43を上方に移動してステージ121に載置された基板Sと原板Mとを接触して加圧することで、受台217によりステージ121が支持された基板Sの周縁部を重点的に加圧することができる。このような構成とすれば、周縁部に雰囲気封止用の枠体を形成した基板Sと、原板Mの代わりにステージ121の上方の保持機構に保持された蓋となる基板Sとを接合することにより、両基板S間の枠体に囲まれた部分に任意の雰囲気を封止するときに、基板Sの周縁部を重点的に加圧できるため、枠体と蓋となる基板Sとを良好に接合できる。
【0095】
以上のように、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の方法により、基板S上に形成された転写液層UVRに、原板Mが有する凹凸パターンを高い位置精度でインプリントすることができる。
【0096】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、転写液層として、光硬化型樹脂以外の樹脂として、低粘性であって、熱以外の何らかのエネルギーを与えることにより硬化できる樹脂を採用してもよい。また、アライメントの際にステージ21側から認識手段により両アライメントマークを同時に撮像するようにしてもよい。
【0097】
UV(紫外光)を照射する方法は上部のガラス窓7から照射する方法と合わせて、下部の窓ガラス5aなどを介してステージ21側から照射することもできる。また、LEDをステージ21などに複数個埋め込むことで平坦な基板S上とすることもでき、LEDをステージ21下部に埋め込むことでチャンバー5外部から紫外光を照射する必要がなくなる。
【0098】
原板Mはガラス以外に金属であってもよい。この場合は、低温での加熱方法により転写液層としての樹脂を硬化させたり、下部ステージ21側から転写液層としての樹脂にUV(紫外光)を照射すればよい。また、アライメント用のアライメントマークALは原板Mや基板Sに穴を形成し、これをアライメントマークALとすることもできる。
【0099】
また、上記第2実施形態のように、駆動ユニット200を用いてステージ121をウォーキング動作させるときは、下部の補助昇降用圧電素子227以外に駆動部219の昇降用圧電素子205をステージ121の平行調整用に使用することもできる。
【0100】
また、補助昇降用圧電素子227または駆動部219の圧電素子209a,209b,209c,205を伸ばすことにより半球体122と球面軸受123との間に隙間を空けた状態で、基板Sどうし、または基板Sと原板Mとを接触させることで、接触時の微小な接地圧力を補助昇降用圧電素子227下部の圧力センサ25で検出することができる。そこのようにすれば、下部のZ軸43に取り付けられた圧力センサ42より微小な力を検知することができる。これはZ軸43に取り付けられた圧力センサ42はステージ121を保持するための剛性が要求されるため圧力に対しても感度が悪くなるからである。
【0101】
また、第1実施形態においては、Z軸のθ方向の回転はサーボモータを使用したが第2実施形態においては、円周状に配置された駆動ユニット200でテーブル121をθ方向に移動することにより、より高位置精度でテーブル121を位置決めできる。
【符号の説明】
【0102】
1,100 ナノインプリント装置(転写装置)
3 認識手段
4 アライメント手段
102 平面調整機構(アライメント手段)
AL アライメントマーク
P 凹凸パターン
S 基板
M 原板
UVR 転写液層
LR 潤滑液層
BR ベース液層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原板が有する凹凸パターンを基板上に塗布された転写液層にインプリントする転写方法において、
1つの認識手段により、前記原板の凹凸パターン面が前記転写液層に接触した状態で、前記原板および前記基板それぞれに形成されたアライメントマークを該両アライメントマークが重なる方向から同時に撮像して得られた1つの画像から、前記両アライメントマークの位置を別々に認識処理し、前記両アライメントマークの画像の相対的な位置関係に基づき前記原板と前記基板とのアライメントを行うことを特徴とする転写方法。
【請求項2】
前記認識手段は、同時に撮像した前記両アライメントマークの画像のうち、ぼやけた画像に対してベクトル相関法による画像処理を施してエッジを検出して当該アライメントマークの形状を検出することを特徴とする請求項1に記載の転写方法。
【請求項3】
前記原板および前記基板それぞれに形成された前記アライメントマークの形状が異なっており、一方の外周が他方の外周に重ならない形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の転写方法。
【請求項4】
原板が有する凹凸パターンを基板上に塗布された転写液層にインプリントする転写装置において、
前記原板および前記基板のそれぞれに形成されたアライメントマークを撮像する機能を有する1つの認識手段と、
前記認識手段による前記原板および前記基板の前記アライメントマークの認識に基づいて前記原板と前記基板とをアライメントするアライメント手段とを備え、
前記アライメント手段は、
前記原板の凹凸パターン面が前記転写液層に接触した状態で、前記認識手段により、前記原板および前記基板それぞれに形成されたアライメントマークを該両アライメントマークが重なる方向から同時に撮像して得られた1つの画像から前記両アライメントマークの位置を別々に認識処理し、前記両アライメントマークの画像の相対的な位置関係に基づき前記原板と前記基板とのアライメントを行うことを特徴とする転写装置。
【請求項5】
前記認識手段は、同時に撮像した前記両アライメントマークの画像のうち、ぼやけた画像に対してベクトル相関法による画像処理を施してエッジを検出して当該アライメントマークの形状を検出することを特徴とする請求項4に記載の転写装置。
【請求項1】
原板が有する凹凸パターンを基板上に塗布された転写液層にインプリントする転写方法において、
1つの認識手段により、前記原板の凹凸パターン面が前記転写液層に接触した状態で、前記原板および前記基板それぞれに形成されたアライメントマークを該両アライメントマークが重なる方向から同時に撮像して得られた1つの画像から、前記両アライメントマークの位置を別々に認識処理し、前記両アライメントマークの画像の相対的な位置関係に基づき前記原板と前記基板とのアライメントを行うことを特徴とする転写方法。
【請求項2】
前記認識手段は、同時に撮像した前記両アライメントマークの画像のうち、ぼやけた画像に対してベクトル相関法による画像処理を施してエッジを検出して当該アライメントマークの形状を検出することを特徴とする請求項1に記載の転写方法。
【請求項3】
前記原板および前記基板それぞれに形成された前記アライメントマークの形状が異なっており、一方の外周が他方の外周に重ならない形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の転写方法。
【請求項4】
原板が有する凹凸パターンを基板上に塗布された転写液層にインプリントする転写装置において、
前記原板および前記基板のそれぞれに形成されたアライメントマークを撮像する機能を有する1つの認識手段と、
前記認識手段による前記原板および前記基板の前記アライメントマークの認識に基づいて前記原板と前記基板とをアライメントするアライメント手段とを備え、
前記アライメント手段は、
前記原板の凹凸パターン面が前記転写液層に接触した状態で、前記認識手段により、前記原板および前記基板それぞれに形成されたアライメントマークを該両アライメントマークが重なる方向から同時に撮像して得られた1つの画像から前記両アライメントマークの位置を別々に認識処理し、前記両アライメントマークの画像の相対的な位置関係に基づき前記原板と前記基板とのアライメントを行うことを特徴とする転写装置。
【請求項5】
前記認識手段は、同時に撮像した前記両アライメントマークの画像のうち、ぼやけた画像に対してベクトル相関法による画像処理を施してエッジを検出して当該アライメントマークの形状を検出することを特徴とする請求項4に記載の転写装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2013−48249(P2013−48249A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204101(P2012−204101)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2008−151316(P2008−151316)の分割
【原出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(304019355)ボンドテック株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2008−151316(P2008−151316)の分割
【原出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(304019355)ボンドテック株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
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