農作業車の散布制御装置
【課題】左右の散布ブームを乗用管理機の散布精度を向上させる。
【解決手段】変速用アクチュエータ(47)を設けた乗用管理機(ブームスプレーヤー)(1)には薬液等を収納するタンク(2)及び長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)を装着する。また車体には車速センサ(14)を設け、散布装置(7)には同装置の揺れを検出する加速度センサ(44)を設け、この加速度センサ(44)が所定値以上の揺れを検出すると、乗用管理機(1)の走行速度を減速する。
【解決手段】変速用アクチュエータ(47)を設けた乗用管理機(ブームスプレーヤー)(1)には薬液等を収納するタンク(2)及び長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)を装着する。また車体には車速センサ(14)を設け、散布装置(7)には同装置の揺れを検出する加速度センサ(44)を設け、この加速度センサ(44)が所定値以上の揺れを検出すると、乗用管理機(1)の走行速度を減速する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体、粉体の薬剤、肥料等を散布する散布ブームを備えた農作業車の散布制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農作業機の散布制御装置において、走行変速手段を備えた走行車体に散布装置を装着した農作業機に、車速センサ及び散布量検出センサを設け、散布量検出センサの検出値と車速センサの検出値に基づき単位面積当たりの実散布量を検出し、単位面積当たりの実散布量が設定散布量を維持するように車速を制御するものが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−37700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のような散布作業では、農作業車を一定速度で走行するものであるが、散布ブームを左右に拡げて作業をする為、圃場に凹凸があると左右のブームが過剰に振れて、ブームを破損したり、作物に干渉し散布精度が悪くなる不具合が発生していた。そこで、この発明はこのような不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、走行用変速アクチュエータ(47)を具備する農作業車(1)には薬液等を収納するタンク(2)及び長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)を装着し、農作業車(1)には車速検出手段(14)、散布装置(7)の揺れを検出する散布装置揺れ検出手段(44)を設け、前記散布装置揺れ検出手段(44)が所定値以上の揺れを検出すると農作業車(1)の走行速度を減速する制御手段(46)を設けたことを特徴とする農作業車の散布制御装置とする。
【0005】
前記構成によると、農作業車(1)は所定の作業速度で走行しながら左右の長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)から薬液等を散布する。散布作業中に散布装置揺れ検出手段(44)により散布装置(7)の所定値以上の揺れを検出すると、農作業車(1)の走行速度が減速操作される。
【0006】
また請求項2の発明は、走行用変速アクチュエータ(47)を具備する農作業車(1)には薬液等を収納するタンク(2)及び長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)を装着し、農作業車(1)には車速検出手段(14)、散布量検出手段(41)及び累積散布量算出手段(46)を設け、前記累積散布量が所定値以上の累積散布量を検出すると農作業車(1)の走行速度を減速する制御手段(46)を設けたことを特徴とする農作業車の散布制御装置とする。
【0007】
前記構成によると、農作業車(1)は所定の作業速度で走行しながら左右の長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)から薬液等を散布する。散布作業中に散布量検出手段(41)の検出値に基づき累積散布量が演算され、累積散布量が所定値以上になると、農作業車(1)の走行速度が減速される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明は、左右ブーム(4L,4R)が大きく揺れるときには走行速度を減速制御することにより、ブーム(4L,4R)の振れを抑えて破損を防止すると共に、左右ブーム(4L,4R)の作物への干渉を抑制し散布精度を向上させることができる。
【0009】
また請求項2の発明は、散布薬液等の累積散布量が所定値に達しタンク(2)の残量が少なくなると農作業機(1)の走行速度を自動減速するので、オペレータが体感的にタンク(2)の薬液等の残量の減少を知ることができ、タンク(2)への薬液等の補給を適時に実行し作業能率を損なわない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この明を畑地管理用の農作業車(以下、乗用管理機1)に備えた構成を説明する。
乗用管理機1は、薬液を収納するタンク2と、散布ノズル3を備えたブーム4と、前記タンク2内の薬液を散布ノズル3まで送るポンプ6等からなる散布装置7を車体に装着した構成である。
【0011】
次に、乗用管理機1について説明する。
この乗用管理機1は、前後方向に沿った主フレーム8,8を左右平行に設け、主フレーム8,8の前側部左右両側に左右前輪9,9と後側部左右両側に左右後輪11,11を設けている。この左右の主フレーム8,8上にはオペレータが足を置くフロア12が設けられていて、フロア12上には左右のブレーキぺダル13,13が設けられている。
【0012】
車体前側部のボンネット16内にはエンジン17が搭載され、そのエンジン17の動力をミッションケース18内に伝動し、ミッションケース18内の静油圧式無段変速装置T及びギヤ式副変速装置を経て前輪9,9、後輪11,11に動力を伝動している。また、ミッションケース18内には走行伝動軸(図示省略)の回転数から車速を検出する車速センサ14を設けている。
【0013】
前記ボンネット16の後部には、ハンドル21を突設し、ハンドル21の基部にはハンドル切れ角センサ22が設けられている。またボンネット16の後側部に表示パネル23を設け、操縦席19の左側には前記HSTの出力を調整するHST変速レバー24を設け、HST変速レバー24の基部に操作位置を検出する変速レバー位置センサ26を設け、操縦席19の右側には散布量や散布幅を設定する散布設定器27を設けている。
【0014】
また散布装置7のタンク2は操縦席19を後側から囲むように平面視コ字状に構成し、タンク2の上部には薬液を投入する投入口を設け、タンク2の下部からパイプ28を経由してポンプ6に連通している。ポンプ6は、電動式に構成され、ポンプ6から吐出した薬液はパイプ29を経由して調圧装置31に送られる。調圧装置31は薬液の吐出圧力を調整するもので、エアチャンバ32、リリーフバルブ33、流量制御弁34、開閉コック(図示省略)、戻しホース36等で構成されている。
【0015】
また、ポンプ6からの吐出薬液の一部を撹拌用パイプ37を介してタンク2の底部に還流し沈殿した薬液を撹拌している。調圧装置31からの吐出薬液は流量センサ41を経て複数の高圧ホース38,38…に送られ、この高圧ホース38,38…の分岐直前の連通部分に圧力センサ49を設け、高圧ホース38,38…の薬液は中間高圧ホース39,39…を経て各散布ブーム4に送られる。
【0016】
散布装置7の散布ブーム4は、乗用管理機1の主フレーム8の前側部に設けたブーム支持部材42により支持されている。このブーム支持部材42は油圧シリンダ43により散布高さが調整できる構成である。また散布ブーム4は、中央ブーム4C、左右ブーム4L,4Rで構成されていて、所定間隔毎に散布ノズル3,3…を設け、ブーム支持部材42の中央部に同ブーム4の振動状態を検出する加速度センサ44を設けている。そして、この左右ブーム4L,4Rは、図2に示すように左右両側に拡開した散布状態と、乗用管理機1の左右側部に沿った収納状態とに切り替える構成となっている。
【0017】
次に、図5に基づき散布制御装置の制御構成について説明する。
制御手段となるコントローラ46の入力部には、薬液流量センサ41、車速センサ14、圧力センサ49、加速度センサ44、ハンドル切れ角センサ22、HST変速レバーの位置センサ26、散布量設定器27等が接続されていて、これらの設定情報及び検出情報がコントローラ46に入力される。また、コントローラ46の出力部には、散布状況を表示する液晶モニタ51、流量制御弁開調節手段52、流量制御弁閉調節手段53、HSTのトラニオン軸を調整する電動シリンダ(走行用変速アクチュエータ)47、警報ブザー48が接続されていて、コントローラ46の制御指令が出力される構成である。
【0018】
次に、コントローラ46の制御内容について説明する。
作業中にはエンジン17の動力がHST式無段変速装置Tを経由して左右の前輪9,9及び左右の後輪11,11に伝達されて所定作業速度で走行し、また、ポンプ6からの吐出薬液は調整装置31、高圧ホース38、中間高圧ホース39,…を経て中央ブーム4C、左右ブーム4L,4Rに送られ散布ノズル3,…から作物あるいは圃場面に散布される。
【0019】
散布作業中には所定時間毎に加速度センサ44によりブーム4の揺れが検出され、規定値以上の揺れを検出すると、コントローラ46からの指令信号により減速アクチュエータ47が減速作動され静油圧式無段変速装置Tを所定速度に減速される。また、所定時間経過し規定値以上の揺れより弱くなると、以前の所定走行速度に復帰する走行制御がなされる。
【0020】
尚、この走行速度の減速制御時には合わせて薬液の散布量を比例的に減少調節し、復帰増速制御時には散布量を比例的に増加調節すると、作物への薬液散布量を均等化することができる。
【0021】
悪条件の水田での薬剤散布作業では、圃場の凹凸を前輪9,9あるいは後輪11,11が走行する際に機体が左右にローリングする。すると、左右ブーム4L,4Rが大きく前後上下に揺れ、左右ブーム4L,4Rが破損したり、この先端部が作物に干渉して散布精度が低下するという不具合が発生していた。
【0022】
しかし、前記のように左右ブーム4L,4Rが大きく揺れるときには、前記電動シリンダ47を駆動して走行速度を減速制御する。
これにより、オペレータの操作負担を減少しながら前記不具合を解消し、また、路上走行時にも乗用管理機1の過度の揺れを防止し左右ブーム4L,4Rの過度の揺れを抑制しながら適正速度で走行することができる。
【0023】
次に、他の散布制御について説明する。
散布作業中には、薬液流量センサ41により所定時間毎に散布流量が検出され、所定の計算式により単位時間当たりの散布流量が算出され、散布累積流量を順次算出記憶していく。そして、散布累積流量が所定値を超えると、コントローラ46からの指令信号により減速アクチュエータ47が減速作動され、HST式無段変速装置Tを所定速度に減速する制御がなされる。尚、この減速制御と共に警報ブザー48で報知するようにしてもよい。
【0024】
防除作業中にはタンク2の薬液残量が分かりにくく、圃場の中央部で薬液がなくなることがあり、散布むらや能率低下の原因となっていた。しかし、前記のように、散布薬液の累積流量が所定値に達しタンク2の薬液残量が少なくなると乗用管理機1の走行速度を自動減速することにより、オペレータが体感的にタンク2の薬液残量の減少を知ることができ、タンク2への薬剤補給を適時に実行することができ作業能率を高めることができる。
【0025】
次に、図5と図6に基づき他の散布制御について説明する。
乗用管理機1で散布作業中に、圧力センサ49(あるいは薬液流量センサ41)で圧力(あるいは流量)を検出し、これらの検出値が図6に示すように、設定値Kに対して所定値以上の増減を複数回繰り返すと、コントローラ46からポンプ6の駆動手段に停止指令が出力されポンプ6が停止し、散布作業を自動的に停止する。
【0026】
薬剤の変更時やシーズン最後の散布作業終了後にタンク2や薬液流路を洗浄する場合に、タンク2に水を入れて散布し洗浄するが、その際にタンク2が空になるとポンプ6を停止して水の散布を停止する必要がある。しかし、タンク2が空になったことが判らず、そばについていて確認しなければならず不便であった。
【0027】
しかし、前記のように制御することにより、洗浄散布作業中に乗用管理機1から離れていても、タンク2が空になるとポンプ6が自動停止するので、ポンプ6の損傷を防止し安心である。
【0028】
次に、図7と図8に基づきHST変速レバー71によるHST式段変速装置Tの操作構成について説明する。
ハンドルポスト72には操作軸73を左右方向に沿わせて支架し、操作軸73の一端に前後方向に沿ったピン71aにより前記変速レバー71を軸支し、操作軸73の一端側にレバーガイド74を設け、このレバーガイド74をハンドルポスト72側のガイド面76に沿って前後方向に回動自在とし、このレバーガイド74を荷重調節自在のレバースプリング77により押圧し、T操作レバー71を所定の回動操作位置に保持するように構成している。
【0029】
また、操作軸73の他端部に取り付けたアーム73aとHST式無段変速装置Tのトラニオン軸63操作用の第一トラニオンアーム64aとをロッド79により連動連結している。
【0030】
また、ミッションケース18には減速アーム61を軸支し、この減速アーム61に操作用の減速ぺダル81を取り付けている。そして、この減速ぺダル81の図7に示す状態が一定速度位置で、この状態から反時計方向に踏み込むと減速アーム61の先端のピンが第一トラニオンアーム64を押圧し、変速装置Tの出力が減速作動され構成となっている。また、前記減速ぺダル81の基部には、スプリング81aを取り付け、減速作動位置から一定速度位置に復帰するように構成している。
【0031】
またHST式無段変速装置Tのトラニオン軸63の他端部には、第二トラニオンアーム64bを取り付け、第二トラニオンアーム64bの先端部と減速アーム61の自由端側を当接連係し、一定速度保持機構66の前側端部をミッションケース18に枢支し、一定速度保持機構66の後側端部を第二トラニオンアーム64bの中間部に枢支連結している。この一定速度保持機構66は、前後方向に伸縮するシリンダ66aと、シリンダ66aを一定伸縮長さに保持するスプリング66bと、スプリング66bの強さを調節する荷重調節ボルト66cにより構成されている。
【0032】
そして、一定速度保持機構66におけるスプリング66bの減速ぺダル81の踏込み時の設定荷重よりも、HST変速レバー71を保持するレバースプリング77の設定荷重を大きく設定している。
【0033】
前記構成によると、減速ぺダル81の非踏込み状態では、減速ぺダル81及び第二トラニオンアーム64bは一定速度保持機構66により一定速度位置(図7に示す位置)に回動されて、HST式無段変速装置Tが一定変速位置に保持され、乗用管理機1は一定速度で走行する。また、減速ぺダル81を図7の位置から反時計方向に踏み込むと、減速アーム61を介して第二トラニオンアーム64bを減速側に回動しHST式無段変速装置Tは減速側に変速される。尚、このときには一定速度保持機構66のシリンダ66aはスプリング66bに抗しながら伸長し追従する。
【0034】
また、オペレータが減速ぺダル81から足を離すと、伸長していた一定速度保持機構66がスプリング66bの作用に一定長さに短縮し、第二トラニオンアーム64bは変速レバーで設定された元の位置に復帰し、減速アーム61もスプリング81aにより一定速度位置に復帰する。
【0035】
しかして、一定速度保持機構66におけるスプリング66bの減速ぺダル81の踏込み時の設定荷重よりも、HST変速レバー71を保持するレバースプリング77の設定荷重を大きく設定しているので、減速ぺダル81の踏込み操作時に第二トラニオンアーム64bが減速側へ回動するのに伴い、HST変速レバー71が減速側に回動しようとする力をレバースプリング77により所定変速位置に確実に静止させておくことができ、減速ぺダル81から足を離した際にHST式無段変速装置Tを元の一定変速速度に維持し散布精度を高めることができる。
【0036】
また前記電動シリンダ47は、前記減速アーム61近傍に設置され、コントローラ46の通電指令によりピストンの伸張操作して、同アームと同様、第二トラニオンアーム64bを減速側へ回動操作する構成となっている。
【0037】
次に、図9に基づき、乗用管理機1の操作装置の他の形態について説明する。
前記主フレーム8にはクラッチぺダル56を軸支し、ミッションケース18側部には走行クラッチを入切するクラッチアーム57を軸支し、クラッチぺダル56とクラッチアーム57とをクラッチロッド58により連動連結し、クラッチぺダル56とクラッチロッド58の連係部には長孔58aを設け、クラッチぺダル56の踏み込み初期作動時には走行クラッチの切り作動がなされず、これに続く後続回動時に走行クラッチが切り作動されるように構成している。
【0038】
また、クラッチぺダル56の基部には、回動アーム59を取り付け、リンクアーム62を介して前記減速アーム61と連動連結している。そして、前記同様、減速アーム61の自由端を、HST式無段変速装置Tのトラニオン軸63作動用の第二トラニオンアーム64bに当接連係している。また、前側端部をミッションケース18に軸支している一定速度保持機構66の後側端部を、第二トラニオンアーム64bに枢支連結している。
【0039】
しかして、クラッチぺダル56をクラッチ入り位置56Aの位置からクラッチ切り開始位置56Bの位置まで踏み込んでいくと、回動アーム59によりリンクアーム62、減速アーム61、第二トラニオンアーム64bが減速側に回動されHST式無段変速装置Tが減速される。そして更にクラッチぺダル56を踏み込み、前記クラッチ切り位置を越えると、走行クラッチが切り作動される。
【0040】
前記のように構成することにより、クラッチぺダル56により無段変速装置Tの減速作動も合わせてすることができ、車上のペダル数を削減し操作を簡単化することができる。
尚、前記電動シリンダ47等、図9中符号が同じ部材は前述の構成、作用と同じなので説明を省略する。
【0041】
次に、図4に基づき散布装置7の構成について説明する。
高圧ホース38,38…、中間高圧ホース39,39…を経て各散布ブーム4に薬液を送るように構成し、高圧ホース38,38…には、ソレノイドで切替できる切替コック86,86…を設け、中間ホース39,39…を経て第一中央ブーム4C1、第一左右ブーム4L1,4R1に薬液を送り、散布ノズル3,3…から少量の薬液を散布するように構成している。また、前記切替コック86,86…から第二中間ホース39a,39a…を経て第二中央ブーム4C2、第二左右ブーム4L2,4R2に薬液を送り、散布ノズル3,3…から中程度の薬液を散布するように構成している。そして、第一ブーム4C1,4L1,4R1と第二ブーム4C2,4L2,4R2を並列し、散布ノズル3,3…が等間隔になるように纏めた構成としている。
【0042】
しかして、少量散布のときには、切替コック86,86…を切り替えて中間高圧ホース39,39…から中間ホース39,…を経て第一中央ブーム4C1、第一左右ブーム4L1,4R1に薬液を送り散布ノズル3,3…から少量の薬液を散布する。また、中程度の散布の際には、切替コック86,86…を切り替えて高圧ホース38,38…から第二中間ホース39a,39a…を経て第二中央ブーム4C2、第二左右ブーム4L2,4R2に送り、散布ノズル3,3…から中程度の薬液を散布する。また、大量散布のときには、切替コック86,86…を切り替えて、高圧ホース38,38…から中間ホース39,39…及び第二中間ホース39a,39a…に薬液を送り、第一ブーム4C1,4L1,4R1及び第二ブーム4C2,4L2,4R2の双方から散布し大量散布をする。
【0043】
従来では散布量調節の際には散布量の異なる散布ノズル3,3…を交換する構成であるので、散布量調節の切替には手数を要していた。しかし、前記構成とすることにより、簡単に散布量の調節することができ、また、少量散布の際にも薬液を霧化して散布でき散布調節精度を高めることができる。
【0044】
次に、図5、図10及び図11に基づき他の散布制御について説明する。
中央ブーム4C、左右ブーム4L,4Rには下方に向けて散布する上部ノズル3a,3a…と、左右両側に向けて散布する懸垂ノズル3b,3b…により薬液を散布するように構成している。また、前記コントローラ46により散布量を調節可能に構成し、乗用管理機1の走行伝動軸(図示省略)の回転数を車速センサ14により検出し、コントローラ46により車速を演算するように構成している。
【0045】
また、コントローラ46には、上部ノズル3a,3a…から散布する通常散布か、若しくは特殊ノズルを備えて散布する特殊散布かを選択するモード切替スイッチ92を設ける構成としている。そして、前記懸垂ノズルを装着した特殊散布モードでは、作業初期にはコントローラ46にオペレータが車速連動散布に必要な数値を入力し、専用の演算式により乗用管理機1の車速に連動して散布量を制御する構成となっている。
【0046】
次に、図11のフローに基づき前記の特殊散布モードによる制御を説明する。
前記スイッチ92により車両の特殊散布モードに切り替えると、液晶モニタ51の案内に沿って、散布量設定器27からコントローラ46に計画反当り散布量(F)を入力し(ステップS1)、コントローラ46に懸垂ノズル3b,3b…の条間隔(L1)を入力する(ステップS2)。
【0047】
次いで、農作業車1の車速パルス(V)が車速センサ14からコントローラ46に入力され(ステップS3)、所定の演算式により圧力制御関数(P)が算出される(ステップS4)。次いで、圧力センサ49により現在圧力(PR)が検出され、圧力設定関数(P)と現在圧力との異同が判定され(ステップS5)、圧力設定関数(P)と現在圧力が等しい場合には、流量制御弁34をそのまま維持する制御がなされる(ステップS6)。
【0048】
また、圧力設定関数(P)と現在圧力が等しくない場合には、現在圧力が圧力設定関数(P)より大か否かの判定をし(ステップS6)、現在圧力が圧力設定関数(P)より大のときには、流量制御弁34を開調節する(ステップS7)。また、現在圧力が圧力設定関数(P)より大でないときには、次いで、現在圧力が圧力設定関数(P)より小か否かの判定をし(ステップS8)、現在圧力が圧力設定関数(P)より小のときには流量制御弁34を閉調節する(ステップS9)。
【0049】
前記のように構成したので、懸垂ノズル3b,3b…を追加した噴霧作業でも所定の項目を入力するだけで車速に関連した噴霧制御をすることができ、操作性の向上をはかりながら噴霧精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】乗用管理機の側面図。
【図2】乗用管理機の正面図。
【図3】散布装置の平面図。
【図4】散布装置の回路を示す図。
【図5】制御ブロック図。
【図6】圧力センサの検出値を示す図。
【図7】操作装置の側面図。
【図8】操作装置の正面図。
【図9】操作装置の側面図。
【図10】乗用管理機の正面図。
【図11】フローチャート。
【符号の説明】
【0051】
T 走行速度変速手段(静油圧式無段変速装置)
1 農作業車
2 タンク
4C 中央ブーム
4L 左ブーム
4R 右ブーム
7 散布装置
14 車速センサ(車速検出手段)
41 散布量検出手段(薬液流量センサ)
44 散布装置揺れ検出手段(加速度センサ)
46 コントローラ
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体、粉体の薬剤、肥料等を散布する散布ブームを備えた農作業車の散布制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農作業機の散布制御装置において、走行変速手段を備えた走行車体に散布装置を装着した農作業機に、車速センサ及び散布量検出センサを設け、散布量検出センサの検出値と車速センサの検出値に基づき単位面積当たりの実散布量を検出し、単位面積当たりの実散布量が設定散布量を維持するように車速を制御するものが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−37700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のような散布作業では、農作業車を一定速度で走行するものであるが、散布ブームを左右に拡げて作業をする為、圃場に凹凸があると左右のブームが過剰に振れて、ブームを破損したり、作物に干渉し散布精度が悪くなる不具合が発生していた。そこで、この発明はこのような不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、走行用変速アクチュエータ(47)を具備する農作業車(1)には薬液等を収納するタンク(2)及び長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)を装着し、農作業車(1)には車速検出手段(14)、散布装置(7)の揺れを検出する散布装置揺れ検出手段(44)を設け、前記散布装置揺れ検出手段(44)が所定値以上の揺れを検出すると農作業車(1)の走行速度を減速する制御手段(46)を設けたことを特徴とする農作業車の散布制御装置とする。
【0005】
前記構成によると、農作業車(1)は所定の作業速度で走行しながら左右の長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)から薬液等を散布する。散布作業中に散布装置揺れ検出手段(44)により散布装置(7)の所定値以上の揺れを検出すると、農作業車(1)の走行速度が減速操作される。
【0006】
また請求項2の発明は、走行用変速アクチュエータ(47)を具備する農作業車(1)には薬液等を収納するタンク(2)及び長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)を装着し、農作業車(1)には車速検出手段(14)、散布量検出手段(41)及び累積散布量算出手段(46)を設け、前記累積散布量が所定値以上の累積散布量を検出すると農作業車(1)の走行速度を減速する制御手段(46)を設けたことを特徴とする農作業車の散布制御装置とする。
【0007】
前記構成によると、農作業車(1)は所定の作業速度で走行しながら左右の長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)から薬液等を散布する。散布作業中に散布量検出手段(41)の検出値に基づき累積散布量が演算され、累積散布量が所定値以上になると、農作業車(1)の走行速度が減速される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明は、左右ブーム(4L,4R)が大きく揺れるときには走行速度を減速制御することにより、ブーム(4L,4R)の振れを抑えて破損を防止すると共に、左右ブーム(4L,4R)の作物への干渉を抑制し散布精度を向上させることができる。
【0009】
また請求項2の発明は、散布薬液等の累積散布量が所定値に達しタンク(2)の残量が少なくなると農作業機(1)の走行速度を自動減速するので、オペレータが体感的にタンク(2)の薬液等の残量の減少を知ることができ、タンク(2)への薬液等の補給を適時に実行し作業能率を損なわない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この明を畑地管理用の農作業車(以下、乗用管理機1)に備えた構成を説明する。
乗用管理機1は、薬液を収納するタンク2と、散布ノズル3を備えたブーム4と、前記タンク2内の薬液を散布ノズル3まで送るポンプ6等からなる散布装置7を車体に装着した構成である。
【0011】
次に、乗用管理機1について説明する。
この乗用管理機1は、前後方向に沿った主フレーム8,8を左右平行に設け、主フレーム8,8の前側部左右両側に左右前輪9,9と後側部左右両側に左右後輪11,11を設けている。この左右の主フレーム8,8上にはオペレータが足を置くフロア12が設けられていて、フロア12上には左右のブレーキぺダル13,13が設けられている。
【0012】
車体前側部のボンネット16内にはエンジン17が搭載され、そのエンジン17の動力をミッションケース18内に伝動し、ミッションケース18内の静油圧式無段変速装置T及びギヤ式副変速装置を経て前輪9,9、後輪11,11に動力を伝動している。また、ミッションケース18内には走行伝動軸(図示省略)の回転数から車速を検出する車速センサ14を設けている。
【0013】
前記ボンネット16の後部には、ハンドル21を突設し、ハンドル21の基部にはハンドル切れ角センサ22が設けられている。またボンネット16の後側部に表示パネル23を設け、操縦席19の左側には前記HSTの出力を調整するHST変速レバー24を設け、HST変速レバー24の基部に操作位置を検出する変速レバー位置センサ26を設け、操縦席19の右側には散布量や散布幅を設定する散布設定器27を設けている。
【0014】
また散布装置7のタンク2は操縦席19を後側から囲むように平面視コ字状に構成し、タンク2の上部には薬液を投入する投入口を設け、タンク2の下部からパイプ28を経由してポンプ6に連通している。ポンプ6は、電動式に構成され、ポンプ6から吐出した薬液はパイプ29を経由して調圧装置31に送られる。調圧装置31は薬液の吐出圧力を調整するもので、エアチャンバ32、リリーフバルブ33、流量制御弁34、開閉コック(図示省略)、戻しホース36等で構成されている。
【0015】
また、ポンプ6からの吐出薬液の一部を撹拌用パイプ37を介してタンク2の底部に還流し沈殿した薬液を撹拌している。調圧装置31からの吐出薬液は流量センサ41を経て複数の高圧ホース38,38…に送られ、この高圧ホース38,38…の分岐直前の連通部分に圧力センサ49を設け、高圧ホース38,38…の薬液は中間高圧ホース39,39…を経て各散布ブーム4に送られる。
【0016】
散布装置7の散布ブーム4は、乗用管理機1の主フレーム8の前側部に設けたブーム支持部材42により支持されている。このブーム支持部材42は油圧シリンダ43により散布高さが調整できる構成である。また散布ブーム4は、中央ブーム4C、左右ブーム4L,4Rで構成されていて、所定間隔毎に散布ノズル3,3…を設け、ブーム支持部材42の中央部に同ブーム4の振動状態を検出する加速度センサ44を設けている。そして、この左右ブーム4L,4Rは、図2に示すように左右両側に拡開した散布状態と、乗用管理機1の左右側部に沿った収納状態とに切り替える構成となっている。
【0017】
次に、図5に基づき散布制御装置の制御構成について説明する。
制御手段となるコントローラ46の入力部には、薬液流量センサ41、車速センサ14、圧力センサ49、加速度センサ44、ハンドル切れ角センサ22、HST変速レバーの位置センサ26、散布量設定器27等が接続されていて、これらの設定情報及び検出情報がコントローラ46に入力される。また、コントローラ46の出力部には、散布状況を表示する液晶モニタ51、流量制御弁開調節手段52、流量制御弁閉調節手段53、HSTのトラニオン軸を調整する電動シリンダ(走行用変速アクチュエータ)47、警報ブザー48が接続されていて、コントローラ46の制御指令が出力される構成である。
【0018】
次に、コントローラ46の制御内容について説明する。
作業中にはエンジン17の動力がHST式無段変速装置Tを経由して左右の前輪9,9及び左右の後輪11,11に伝達されて所定作業速度で走行し、また、ポンプ6からの吐出薬液は調整装置31、高圧ホース38、中間高圧ホース39,…を経て中央ブーム4C、左右ブーム4L,4Rに送られ散布ノズル3,…から作物あるいは圃場面に散布される。
【0019】
散布作業中には所定時間毎に加速度センサ44によりブーム4の揺れが検出され、規定値以上の揺れを検出すると、コントローラ46からの指令信号により減速アクチュエータ47が減速作動され静油圧式無段変速装置Tを所定速度に減速される。また、所定時間経過し規定値以上の揺れより弱くなると、以前の所定走行速度に復帰する走行制御がなされる。
【0020】
尚、この走行速度の減速制御時には合わせて薬液の散布量を比例的に減少調節し、復帰増速制御時には散布量を比例的に増加調節すると、作物への薬液散布量を均等化することができる。
【0021】
悪条件の水田での薬剤散布作業では、圃場の凹凸を前輪9,9あるいは後輪11,11が走行する際に機体が左右にローリングする。すると、左右ブーム4L,4Rが大きく前後上下に揺れ、左右ブーム4L,4Rが破損したり、この先端部が作物に干渉して散布精度が低下するという不具合が発生していた。
【0022】
しかし、前記のように左右ブーム4L,4Rが大きく揺れるときには、前記電動シリンダ47を駆動して走行速度を減速制御する。
これにより、オペレータの操作負担を減少しながら前記不具合を解消し、また、路上走行時にも乗用管理機1の過度の揺れを防止し左右ブーム4L,4Rの過度の揺れを抑制しながら適正速度で走行することができる。
【0023】
次に、他の散布制御について説明する。
散布作業中には、薬液流量センサ41により所定時間毎に散布流量が検出され、所定の計算式により単位時間当たりの散布流量が算出され、散布累積流量を順次算出記憶していく。そして、散布累積流量が所定値を超えると、コントローラ46からの指令信号により減速アクチュエータ47が減速作動され、HST式無段変速装置Tを所定速度に減速する制御がなされる。尚、この減速制御と共に警報ブザー48で報知するようにしてもよい。
【0024】
防除作業中にはタンク2の薬液残量が分かりにくく、圃場の中央部で薬液がなくなることがあり、散布むらや能率低下の原因となっていた。しかし、前記のように、散布薬液の累積流量が所定値に達しタンク2の薬液残量が少なくなると乗用管理機1の走行速度を自動減速することにより、オペレータが体感的にタンク2の薬液残量の減少を知ることができ、タンク2への薬剤補給を適時に実行することができ作業能率を高めることができる。
【0025】
次に、図5と図6に基づき他の散布制御について説明する。
乗用管理機1で散布作業中に、圧力センサ49(あるいは薬液流量センサ41)で圧力(あるいは流量)を検出し、これらの検出値が図6に示すように、設定値Kに対して所定値以上の増減を複数回繰り返すと、コントローラ46からポンプ6の駆動手段に停止指令が出力されポンプ6が停止し、散布作業を自動的に停止する。
【0026】
薬剤の変更時やシーズン最後の散布作業終了後にタンク2や薬液流路を洗浄する場合に、タンク2に水を入れて散布し洗浄するが、その際にタンク2が空になるとポンプ6を停止して水の散布を停止する必要がある。しかし、タンク2が空になったことが判らず、そばについていて確認しなければならず不便であった。
【0027】
しかし、前記のように制御することにより、洗浄散布作業中に乗用管理機1から離れていても、タンク2が空になるとポンプ6が自動停止するので、ポンプ6の損傷を防止し安心である。
【0028】
次に、図7と図8に基づきHST変速レバー71によるHST式段変速装置Tの操作構成について説明する。
ハンドルポスト72には操作軸73を左右方向に沿わせて支架し、操作軸73の一端に前後方向に沿ったピン71aにより前記変速レバー71を軸支し、操作軸73の一端側にレバーガイド74を設け、このレバーガイド74をハンドルポスト72側のガイド面76に沿って前後方向に回動自在とし、このレバーガイド74を荷重調節自在のレバースプリング77により押圧し、T操作レバー71を所定の回動操作位置に保持するように構成している。
【0029】
また、操作軸73の他端部に取り付けたアーム73aとHST式無段変速装置Tのトラニオン軸63操作用の第一トラニオンアーム64aとをロッド79により連動連結している。
【0030】
また、ミッションケース18には減速アーム61を軸支し、この減速アーム61に操作用の減速ぺダル81を取り付けている。そして、この減速ぺダル81の図7に示す状態が一定速度位置で、この状態から反時計方向に踏み込むと減速アーム61の先端のピンが第一トラニオンアーム64を押圧し、変速装置Tの出力が減速作動され構成となっている。また、前記減速ぺダル81の基部には、スプリング81aを取り付け、減速作動位置から一定速度位置に復帰するように構成している。
【0031】
またHST式無段変速装置Tのトラニオン軸63の他端部には、第二トラニオンアーム64bを取り付け、第二トラニオンアーム64bの先端部と減速アーム61の自由端側を当接連係し、一定速度保持機構66の前側端部をミッションケース18に枢支し、一定速度保持機構66の後側端部を第二トラニオンアーム64bの中間部に枢支連結している。この一定速度保持機構66は、前後方向に伸縮するシリンダ66aと、シリンダ66aを一定伸縮長さに保持するスプリング66bと、スプリング66bの強さを調節する荷重調節ボルト66cにより構成されている。
【0032】
そして、一定速度保持機構66におけるスプリング66bの減速ぺダル81の踏込み時の設定荷重よりも、HST変速レバー71を保持するレバースプリング77の設定荷重を大きく設定している。
【0033】
前記構成によると、減速ぺダル81の非踏込み状態では、減速ぺダル81及び第二トラニオンアーム64bは一定速度保持機構66により一定速度位置(図7に示す位置)に回動されて、HST式無段変速装置Tが一定変速位置に保持され、乗用管理機1は一定速度で走行する。また、減速ぺダル81を図7の位置から反時計方向に踏み込むと、減速アーム61を介して第二トラニオンアーム64bを減速側に回動しHST式無段変速装置Tは減速側に変速される。尚、このときには一定速度保持機構66のシリンダ66aはスプリング66bに抗しながら伸長し追従する。
【0034】
また、オペレータが減速ぺダル81から足を離すと、伸長していた一定速度保持機構66がスプリング66bの作用に一定長さに短縮し、第二トラニオンアーム64bは変速レバーで設定された元の位置に復帰し、減速アーム61もスプリング81aにより一定速度位置に復帰する。
【0035】
しかして、一定速度保持機構66におけるスプリング66bの減速ぺダル81の踏込み時の設定荷重よりも、HST変速レバー71を保持するレバースプリング77の設定荷重を大きく設定しているので、減速ぺダル81の踏込み操作時に第二トラニオンアーム64bが減速側へ回動するのに伴い、HST変速レバー71が減速側に回動しようとする力をレバースプリング77により所定変速位置に確実に静止させておくことができ、減速ぺダル81から足を離した際にHST式無段変速装置Tを元の一定変速速度に維持し散布精度を高めることができる。
【0036】
また前記電動シリンダ47は、前記減速アーム61近傍に設置され、コントローラ46の通電指令によりピストンの伸張操作して、同アームと同様、第二トラニオンアーム64bを減速側へ回動操作する構成となっている。
【0037】
次に、図9に基づき、乗用管理機1の操作装置の他の形態について説明する。
前記主フレーム8にはクラッチぺダル56を軸支し、ミッションケース18側部には走行クラッチを入切するクラッチアーム57を軸支し、クラッチぺダル56とクラッチアーム57とをクラッチロッド58により連動連結し、クラッチぺダル56とクラッチロッド58の連係部には長孔58aを設け、クラッチぺダル56の踏み込み初期作動時には走行クラッチの切り作動がなされず、これに続く後続回動時に走行クラッチが切り作動されるように構成している。
【0038】
また、クラッチぺダル56の基部には、回動アーム59を取り付け、リンクアーム62を介して前記減速アーム61と連動連結している。そして、前記同様、減速アーム61の自由端を、HST式無段変速装置Tのトラニオン軸63作動用の第二トラニオンアーム64bに当接連係している。また、前側端部をミッションケース18に軸支している一定速度保持機構66の後側端部を、第二トラニオンアーム64bに枢支連結している。
【0039】
しかして、クラッチぺダル56をクラッチ入り位置56Aの位置からクラッチ切り開始位置56Bの位置まで踏み込んでいくと、回動アーム59によりリンクアーム62、減速アーム61、第二トラニオンアーム64bが減速側に回動されHST式無段変速装置Tが減速される。そして更にクラッチぺダル56を踏み込み、前記クラッチ切り位置を越えると、走行クラッチが切り作動される。
【0040】
前記のように構成することにより、クラッチぺダル56により無段変速装置Tの減速作動も合わせてすることができ、車上のペダル数を削減し操作を簡単化することができる。
尚、前記電動シリンダ47等、図9中符号が同じ部材は前述の構成、作用と同じなので説明を省略する。
【0041】
次に、図4に基づき散布装置7の構成について説明する。
高圧ホース38,38…、中間高圧ホース39,39…を経て各散布ブーム4に薬液を送るように構成し、高圧ホース38,38…には、ソレノイドで切替できる切替コック86,86…を設け、中間ホース39,39…を経て第一中央ブーム4C1、第一左右ブーム4L1,4R1に薬液を送り、散布ノズル3,3…から少量の薬液を散布するように構成している。また、前記切替コック86,86…から第二中間ホース39a,39a…を経て第二中央ブーム4C2、第二左右ブーム4L2,4R2に薬液を送り、散布ノズル3,3…から中程度の薬液を散布するように構成している。そして、第一ブーム4C1,4L1,4R1と第二ブーム4C2,4L2,4R2を並列し、散布ノズル3,3…が等間隔になるように纏めた構成としている。
【0042】
しかして、少量散布のときには、切替コック86,86…を切り替えて中間高圧ホース39,39…から中間ホース39,…を経て第一中央ブーム4C1、第一左右ブーム4L1,4R1に薬液を送り散布ノズル3,3…から少量の薬液を散布する。また、中程度の散布の際には、切替コック86,86…を切り替えて高圧ホース38,38…から第二中間ホース39a,39a…を経て第二中央ブーム4C2、第二左右ブーム4L2,4R2に送り、散布ノズル3,3…から中程度の薬液を散布する。また、大量散布のときには、切替コック86,86…を切り替えて、高圧ホース38,38…から中間ホース39,39…及び第二中間ホース39a,39a…に薬液を送り、第一ブーム4C1,4L1,4R1及び第二ブーム4C2,4L2,4R2の双方から散布し大量散布をする。
【0043】
従来では散布量調節の際には散布量の異なる散布ノズル3,3…を交換する構成であるので、散布量調節の切替には手数を要していた。しかし、前記構成とすることにより、簡単に散布量の調節することができ、また、少量散布の際にも薬液を霧化して散布でき散布調節精度を高めることができる。
【0044】
次に、図5、図10及び図11に基づき他の散布制御について説明する。
中央ブーム4C、左右ブーム4L,4Rには下方に向けて散布する上部ノズル3a,3a…と、左右両側に向けて散布する懸垂ノズル3b,3b…により薬液を散布するように構成している。また、前記コントローラ46により散布量を調節可能に構成し、乗用管理機1の走行伝動軸(図示省略)の回転数を車速センサ14により検出し、コントローラ46により車速を演算するように構成している。
【0045】
また、コントローラ46には、上部ノズル3a,3a…から散布する通常散布か、若しくは特殊ノズルを備えて散布する特殊散布かを選択するモード切替スイッチ92を設ける構成としている。そして、前記懸垂ノズルを装着した特殊散布モードでは、作業初期にはコントローラ46にオペレータが車速連動散布に必要な数値を入力し、専用の演算式により乗用管理機1の車速に連動して散布量を制御する構成となっている。
【0046】
次に、図11のフローに基づき前記の特殊散布モードによる制御を説明する。
前記スイッチ92により車両の特殊散布モードに切り替えると、液晶モニタ51の案内に沿って、散布量設定器27からコントローラ46に計画反当り散布量(F)を入力し(ステップS1)、コントローラ46に懸垂ノズル3b,3b…の条間隔(L1)を入力する(ステップS2)。
【0047】
次いで、農作業車1の車速パルス(V)が車速センサ14からコントローラ46に入力され(ステップS3)、所定の演算式により圧力制御関数(P)が算出される(ステップS4)。次いで、圧力センサ49により現在圧力(PR)が検出され、圧力設定関数(P)と現在圧力との異同が判定され(ステップS5)、圧力設定関数(P)と現在圧力が等しい場合には、流量制御弁34をそのまま維持する制御がなされる(ステップS6)。
【0048】
また、圧力設定関数(P)と現在圧力が等しくない場合には、現在圧力が圧力設定関数(P)より大か否かの判定をし(ステップS6)、現在圧力が圧力設定関数(P)より大のときには、流量制御弁34を開調節する(ステップS7)。また、現在圧力が圧力設定関数(P)より大でないときには、次いで、現在圧力が圧力設定関数(P)より小か否かの判定をし(ステップS8)、現在圧力が圧力設定関数(P)より小のときには流量制御弁34を閉調節する(ステップS9)。
【0049】
前記のように構成したので、懸垂ノズル3b,3b…を追加した噴霧作業でも所定の項目を入力するだけで車速に関連した噴霧制御をすることができ、操作性の向上をはかりながら噴霧精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】乗用管理機の側面図。
【図2】乗用管理機の正面図。
【図3】散布装置の平面図。
【図4】散布装置の回路を示す図。
【図5】制御ブロック図。
【図6】圧力センサの検出値を示す図。
【図7】操作装置の側面図。
【図8】操作装置の正面図。
【図9】操作装置の側面図。
【図10】乗用管理機の正面図。
【図11】フローチャート。
【符号の説明】
【0051】
T 走行速度変速手段(静油圧式無段変速装置)
1 農作業車
2 タンク
4C 中央ブーム
4L 左ブーム
4R 右ブーム
7 散布装置
14 車速センサ(車速検出手段)
41 散布量検出手段(薬液流量センサ)
44 散布装置揺れ検出手段(加速度センサ)
46 コントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用変速アクチュエータ(47)を具備する農作業車(1)には薬液等を収納するタンク(2)及び長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)を装着し、農作業車(1)には車速検出手段(14)、散布装置(7)の揺れを検出する散布装置揺れ検出手段(44)を設け、前記散布装置揺れ検出手段(44)が所定値以上の揺れを検出すると農作業車(1)の走行速度を減速する制御手段(46)を設けたことを特徴とする農作業車の散布制御装置。
【請求項2】
走行用変速アクチュエータ(47)を具備する農作業車(1)には薬液等を収納するタンク(2)及び長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)を装着し、農作業車(1)には車速検出手段(14)、散布量検出手段(41)及び累積散布量算出手段(46)を設け、前記累積散布量が所定値以上の累積散布量を検出すると農作業車(1)の走行速度を減速する制御手段(46)を設けたことを特徴とする農作業車の散布制御装置。
【請求項1】
走行用変速アクチュエータ(47)を具備する農作業車(1)には薬液等を収納するタンク(2)及び長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)を装着し、農作業車(1)には車速検出手段(14)、散布装置(7)の揺れを検出する散布装置揺れ検出手段(44)を設け、前記散布装置揺れ検出手段(44)が所定値以上の揺れを検出すると農作業車(1)の走行速度を減速する制御手段(46)を設けたことを特徴とする農作業車の散布制御装置。
【請求項2】
走行用変速アクチュエータ(47)を具備する農作業車(1)には薬液等を収納するタンク(2)及び長尺の左右ブーム(4L,4R)からなる散布装置(7)を装着し、農作業車(1)には車速検出手段(14)、散布量検出手段(41)及び累積散布量算出手段(46)を設け、前記累積散布量が所定値以上の累積散布量を検出すると農作業車(1)の走行速度を減速する制御手段(46)を設けたことを特徴とする農作業車の散布制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−271320(P2006−271320A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98949(P2005−98949)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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