説明

透明導電性積層体及びタッチパネル

【課題】 透明なフィルム基材の一方の面に、前記フィルム基材の側から第一透明誘電体薄膜、第二透明誘電体薄膜および透明導電性薄膜がこの順に形成されている透明導電性積層体で、透過率が高く、かつ生産性の良好であって、かつペン入力耐久性、面圧耐久性を有する透明導電性積層体を提供する。
【解決手段】 透明なフィルム基材Fの一方の面に、フィルム基材の側から第一透明誘電体薄膜1、第二透明誘電体薄膜2および透明導電性薄膜3がこの順に形成されており、透明なフィルム基材の他方の面には、透明な粘着剤層A,aを介して透明基体が貼り合わされている透明導電性積層体であって、第一透明誘電体薄膜は、真空蒸着法、スパッタリング法またはイオンプレーディング法により形成され、第一透明誘電体薄膜の屈折率をn1、第二透明誘電体薄膜の屈折率をn2、透明導電性薄膜の屈折率をn3としたとき、n2<n3≦n1の関係を満たした積層透明基体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光線領域で透明であり、かつフィルム基材上に導電性薄膜を有する透明導電性積層体に関する。本発明の透明導電性積層体は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの新しいディスプレイ方式やタッチパネルなどにおける透明電極のほか、透明物品の帯電防止や電磁波遮断等に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電性薄膜としては、ガラス上に酸化インジウム薄膜を形成した、いわゆる導電性ガラスがよく知られているが、導電性ガラスは基材がガラスであるために可撓性、加工性に劣り、用途によっては好ましくない場合がある。そのため、近年では可撓性、加工性に加えて、耐衝撃性に優れ、軽量であるなどの利点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムをはじめとする各種のプラスチックフィルムを基材とした透明導電性薄膜が賞用されている。
【0003】
しかし、フィルム基材を用いた透明導電性薄膜は、薄膜表面の光線反射率が大きいために、透明性に劣るという問題があるほか、透明導電性薄膜が耐擦傷性に劣り、使用中に傷がついて電気抵抗が増大したり、断線を生じたりするといった問題があった。特に、タッチパネル用の透明導電性薄膜では、スペーサを介して対向させた一対の薄膜同士がその一方のパネル板側からの押圧打点で強く接触されるため、これに抗しうる良好な耐久特性、つまり打点特性を有していることが望まれるが、上記フィルム基材を用いた透明導電性薄膜では打点特性に劣るため、タッチパネルとしての寿命が短くなるという問題があった。
【0004】
前記問題に対して、フィルム基材として特定膜厚のものを用い、その一方の面に光の屈折率がフィルム基材の光の屈折率よりも小さい透明誘電体薄膜と、さらにその上に透明導電性薄膜とを順次形成するとともに、フィルム基材の他方の面に透明な粘着剤層を介して別の透明基体を貼り合わせてなる透明導電性積層体が提案されている(特許文献1)。かかる透明導電性積層体によれば、透明性および導電性薄膜の耐擦傷性を改良できるとともに、タッチパネル用としての打点特性の改良がなされている。
【0005】
また、透明なフィルム基材の一方の面に、前記フィルム基材の側から第一透明誘電体薄膜、第二透明誘電体薄膜および透明導電性薄膜がこの順に形成されている透明導電性積層体であって、前記フィルム基材、二層の透明誘電体薄膜、透明導電性薄膜のそれぞれの光の屈折率が、第二透明誘電体薄膜<フィルム基材≦第一透明誘電体薄膜<透明導電性薄膜、の関係のものが提案されている(特許文献2)。かかる透明導電性積層体によれば、タッチパネルを屈曲状態で用いる場合の打点特性の改良がなされている。しかし、特許文献2において、透明なフィルム基材に形成される第一透明誘電体薄膜には、有機物と無機物との混合体が用いられており、透明性等の光学的な調整が容易ではなかった。また、透明なフィルム基材の一方の面に、前記フィルム基材の側から第一透明誘電体薄膜、第二透明誘電体薄膜および透明導電性薄膜がこの順に形成されている透明導電性積層体であって、第二透明誘電体薄膜<透明導電性薄膜≦第一透明誘電体薄膜、の関係のものが提案されている(特許文献3)。かかる透明導電性積層体によれば、透過光の着色を抑制できることが記載されている。しかし、特許文献3では、透明なフィルム基材に形成される第一透明誘電体薄膜の形成には、各種の方法が記載されているが、いずれの方法によっても形成速度は十分ではなかった。
【0006】
一方、タッチパネルには、位置検出の方法により光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などがある。このうち、抵抗膜方式はその構造が単純であるため、コストパフォーマンスに優れており、近年、急速に普及している。抵抗膜方式タッチパネルは、例えば銀行の現金自動受払機(ATM)や交通機関の切符販売機等の表示板に用いられている。
【0007】
この抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電性積層体と透明導電性薄膜付ガラスとがスペーサーを介して対向配置されており、透明導電性積層体に電流を流し透明導電性薄膜付ガラスに於ける電圧を計測するような構造となっている。透明導電性積層体を指やペン等による押圧操作を介して透明導電性薄膜付きガラスに接触させると、その接触部分が通電することにより、その接触部分の位置が検知される。
【0008】
近年、スマートフォンやPDA(Personal Digital Assistance)、ゲームなどに搭載されるタッチパネルの市場が伸びてきており、タッチパネルの狭額縁化が進んでいる。これにより、タッチパネルを指で押圧する機会が多くなり、ペン入力耐久性に加えて、さらに面圧耐久性についても満足することが必要とされている。しかし、上記特許文献では、ペン入力耐久性を満足できたとしても、面圧耐久性は到底満足することはできなかった。
【特許文献1】特開平6−222352号公報
【特許文献2】特開2002−326301号公報
【特許文献3】特開2000−301648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、透明なフィルム基材の一方の面に、前記フィルム基材の側から第一透明誘電体薄膜、第二透明誘電体薄膜および透明導電性薄膜がこの順に形成されている透明導電性積層体であって、透過率が高く、かつ生産性の良好であって、かつペン入力耐久性に加えて、さらに面圧耐久性を有する透明導電性積層体を提供することを目的とする。また本発明は、当該透明導電性積層体を用いたタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下に示す透明導電性積層体により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、厚さが2〜200μmの透明なフィルム基材の一方の面に、前記フィルム基材の側から第一透明誘電体薄膜、第二透明誘電体薄膜および透明導電性薄膜がこの順に形成されており、
透明なフィルム基材の他方の面には、透明な粘着剤層を介して透明基体が貼り合わされている透明導電性積層体であって、
第一透明誘電体薄膜は、真空蒸着法、スパッタリング法またはイオンプレーディング法により形成され、かつ第一透明誘電体薄膜は、酸化インジウム100重量部に対して、酸化錫を0〜20重量部、酸化セリウムを10〜40重量部含む複合酸化物からなり、
第一透明誘電体薄膜の屈折率をn1、第二透明誘電体薄膜の屈折率をn2、透明導電性薄膜の屈折率をn3としたとき、n2<n3≦n1の関係を満たし、
透明基体は、少なくとも2枚の透明な基体フィルムを透明な粘着剤層を介して積層した積層透明基体であることを特徴とする透明導電性積層体、に関する。
【0012】
上記透明導電性積層体において、第一透明誘電体薄膜の厚さが10〜200nmであり、かつ表面抵抗値が1×106(Ω/□)以上であることが好ましい。
【0013】
前記透明導電性積層体において、前記透明基体の外表面に樹脂層が設けることができる。
【0014】
さらに、本発明は、透明導電性薄膜を有する一対のパネル板を、透明導電性薄膜同士が対向するように、スペーサを介して対向配置してなるタッチパネルにおいて、少なくとも一方のパネル板が前記透明導電性積層体を含むことを特徴とするタッチパネル、に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、第一透明誘電体薄膜を、酸化インジウムに対して、特定量の酸化錫、酸化セリウムを含む複合酸化物により形成している。当該複合酸化物は、透明導電性材料である、酸化インジウムと酸化錫の複合体に、さらに酸化セリウムを添加したものであり、これにより、透明導電性薄膜の屈折率以上の高屈折率の実現できる。その結果、第一透明誘電体薄膜と第二透明誘電体薄膜との屈折率の差が大きくなり、光学的な調整を容易に行うことができ、透過率が高く、透明性等の光学特性が良好な透明導電性積層体が得られる。
【0016】
また、前記本発明の複合酸化物により形成された第一透明誘電体薄膜は、その表面抵抗値が高く、透明導電性薄膜の導電性に影響を及ぼさない程度の高抵抗値に制御することができる。第一透明誘電体薄膜の表面抵抗値は、透明導電性薄膜の導電性に影響を及ぼさないように、絶縁性(高抵抗値)であることが好ましく、1×106(Ω/□)以上であることが好ましく、さらには、1×108(Ω/□)以上であることが好ましい。
【0017】
また、前記本発明の複合酸化物は、高屈折率を有し、しかも薄膜を形成する際に、通常、採用されるスパッタリング法での生産性(製膜におけるスパッタレート)が良好である。従来、高屈折率の材料としては、TiO2(2.35)、Nd23(2.15)、ZrO2(2.05)、Ta25(2.2)、ZnO(2.1)、In23(2.0)、SnO2(2.0)、等が用いられている〔上記各材料の( )内の数値は光の屈折率である〕。しかし、前記材料のなかで、TiO2、Nd23、ZrO2、Ta25、ZnO等は、薄膜を形成する際に、通常、採用されるスパッタリング法での生産性(製膜スパッタレート)が劣る。一方、In23、SnO2等は薄膜の生産性は良好であるものの、これらは表面抵抗値が低く、透明導電性薄膜の導電性に影響を及ぼすため、第一透明誘電体薄膜に適さない。
【0018】
本発明の透明導電性積層体は、透明導電薄膜とフィルム基材との間に、第一透明誘電体薄膜および第二透明誘電体薄膜の二層の透明誘電体薄膜を有することから、また耐擦傷性、屈曲性も良好であり、しかも、上記のように、第一透明誘電体薄膜に、特定成分を特定割合で含有する高屈折率で、高抵抗値を有する複合酸化物を用い、かつ第一透明誘電体薄膜をドライプロセスによって形成しているため、透過光の着色を抑えることができ、また生産性がよく、光学調整を容易に行うことができる。
【0019】
さらに本発明では、透明なフィルム基材における、透明導電性薄膜を設けていない側の面には、少なくとも2枚の透明な基体フィルムを透明な粘着剤層を介して積層した積層透明基体を設けた透明導電性積層体の構造としている。かかる構造より、例えば透明導電性積層体をタッチパネルに適用した場合における、ペン入力耐久性、さらにはこれに加えて、面圧耐久性を向上することができる。
【0020】
前記透明導電性積層体において、ペン入力耐久性、さらには面圧耐久性は、透明導電性薄膜をフィルム基材の側から透明な誘電体薄膜を介して設けることで、より向上することができる。すなわち、前記誘電体薄膜は、透明導電性薄膜のアンダーコート層として特に効果を発揮し、面内耐久性を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の透明導電性積層体を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の透明導電性積層体の一例を示したものであり、透明なフィルム基材Fの一方の面に、第一透明誘電体薄膜1および第二透明誘電体薄膜2と、さらに第二透明誘電体薄膜2に透明導電性薄膜3とが形成されている。
【0022】
また、透明導電性積層体のフィルム基材Fの他方の面には、透明な粘着剤層Aを介して積層透明基体Tが貼り合わされている。積層透明基体Tは、透明な基体フィルムt1と透明な基体フィルムt2を透明な粘着剤層aを介して積層体ものである。図1では、透明な基体フィルムを2層積層した場合を例示しているが、透明な基体フィルムの積層は2層以上であればよく、3層、4層、さらには5層以上とすることができる。この様な構造とすることにより、面内耐久性をより向上させることができる。また、図示はしていないが、図1の積層透明基体Tの外表面には、ハードコート処理層(樹脂層)等を設けることができる。
【0023】
本発明において使用するフィルム基材Fとしては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。たとえば、その材料として、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等があげられる。これらのなかでも、コストの点からポリエステル系樹脂が好ましい。フィルム基材Fの光の屈折率は、通常1.4〜1.7程度となるものが好ましく用いられる。
【0024】
これらフィルム基材Fの厚みは、2〜200μmの範囲にある。特に、厚みが20〜150μmの範囲である。厚みが2μm未満では基材としての機械的強度が不足し、この基材をロール状にして、第一、第二透明誘電体薄膜や透明導電性薄膜、さらには粘着剤層を連続的に形成する操作が難しくなる。一方、200μmを超えると、軽量、薄型化等の市場の要求の点で好ましくない。
【0025】
前記フィルム基材Fは、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理、ハードコート層や下塗り処理を施して、この上に設けられる第一透明誘電体薄膜1の上記透明基体Tに対する密着性を向上させることができる。また、第一透明誘電体薄膜1を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0026】
前記フィルム基材Fには、第一透明誘電体薄膜1、第二透明誘電体薄膜2、透明導電性薄膜3がこの順で設けられている。第一透明誘電体薄膜1の光の屈折率n1、第二透明誘電体薄膜2の光の屈折率n2、透明導電性薄膜3の光の屈折率n3は、n2<n3≦n1、の関係を満足するものであり、通常、透明導電性薄膜3の光の屈折率n3は約2程度(通常1.9〜2.1)であるため、その場合には第一透明誘電体薄膜1の光の屈折率n1は、通常、1.9〜2.3程度、さらには2.0〜2.2であるのが好ましく、第二透明誘電体薄膜2の光の屈折率n2は、通常、1.3〜1.7程度、さらには1.4〜1.6であるのが好ましい。
【0027】
前記第一透明誘電体薄膜1は、酸化インジウム100重量部に対して、特定量の酸化錫および酸化セリウムを含む複合酸化物により形成されている。形成材料としては、各酸化物成分の混合物の焼結体を使用することが好ましい。前記複合酸化物において、酸化錫の割合は、光学特性の点から、酸化インジウム100重量部に対して、0〜20重量部である。さらには、3〜15重量部であるのが好ましい。酸化錫の割合が20重量部を超える場合には、形成材料として焼結体を用いる場合、その焼結密度が低下するため、膜形成時の放電を安定に保ち難い(放電安定性が悪い)。また酸化セリウムの割合は、高抵抗値(絶縁性)および光学特性の点から、酸化インジウム100重量部に対して、10〜40重量部である。さらには、15〜30重量部であるのが好ましい。酸化セリウムの割合が10重量部未満では、第一透明誘電体薄膜1の表面抵抗値が低くなって、導電性を有するようになり好ましくない。一方、酸化セリウムの割合が40重量部を超える場合には、生産性(製膜スパッタレート)が低下し好ましくない。
【0028】
前記第一透明誘電体薄膜1の厚さは、特に制限されないが、10〜200nmであるのが好ましい。さらには15〜60nmであるのが好ましい。10nm未満では連続被膜とするのが困難である。一方、200nm以下とするのが、光学的な調整の点から好ましい。
【0029】
第二透明誘電体薄膜2の材料としては、たとえば、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF3(1.63)、Al23(1.63)などの無機物〔上記各材料の( )内の数値は光の屈折率である〕や、光の屈折率が1.4〜1.6程度のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン系ポリマー、アルキド樹脂、メラミン樹脂などの有機物があげられる。これらのなかから材料を適宜に選択し、または組み合わせて、前記屈折率n2を満足する第二透明誘電体薄膜2を形成する。
【0030】
第二透明誘電体薄膜2の厚さは、特に制限されるものではないが、連続被膜とし、透明性や耐殺傷性を向上させるためには10nm以上とするのが好ましく、より好ましくは10〜300nm、特に好ましくは20〜120nmである。なお、第一透明誘電体薄膜1の厚さと第二透明誘電体薄膜2の厚さを合わせた総厚が、厚くなりすぎると透明性の向上が期待できなくなり、またクラックを生じるおそれがあるため、前記総厚は、150nm以下、さらには100nm以下とするのが好ましい。
【0031】
透明導電性薄膜3の材料としては、特に制限されるものではなく、例えば、酸化錫を含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化錫などが好ましく用いられる。
【0032】
透明導電性薄膜3の厚さは特に制限されないが、その表面抵抗を1×103Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚さ10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、厚さは、10〜300nm程度とするのがよい。
【0033】
第一透明誘電体薄膜1、第二透明誘電体薄膜2および透明導電性薄膜3は、フィルム基材F上に、通常、この順で順次に形成される。第一透明誘電体薄膜1および透明導電性薄膜3の形成方法としては、例えば、真空蒸着気相蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等があげられ、材料の種類および必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することができるが、これらのなかでもスパッタリング法が一般的である。また、第二透明誘電体薄膜2の形成方法としては、上記の方法の他に、塗工法などを採用することができる。
【0034】
上記のように第一透明誘電体薄膜1、第二透明誘電体薄膜2および透明導電性薄膜3が順次に形成されたフィルム基材Fの他方の面には、透明な粘着剤層Aを介して積層透明基体Tが貼り合わされる。積層透明基体Tは、少なくとも2枚の透明な基体フィルムを透明な粘着剤層により貼り合わせた複合構造であり、これによりペン入力耐久性、さらには面圧耐久性を向上することができる。
【0035】
積層透明基体Tの厚さは、通常、90〜300μmであるのが好ましく、より好ましくは100〜250μmに制御される。また、積層透明基体Tを形成する各基体フィルムの厚さは10〜200μm、更には20〜150μmであり、これら基体フィルムに透明な粘着剤層を含めた積層透明基体Tとしての総厚さが前記範囲に入るように制御される。基体フィルムとしては、前記したフィルム基材Fと同様のものが挙げられる。
【0036】
フィルム基材Fと積層透明基体Tの貼り合わせは、積層透明基体T側に前記の粘着剤層Aを設けておき、これに前記フィルム基材Fを貼り合わせるようにしてもよいし、逆にフィルム基材F側に前記の粘着剤層Aを設けておき、これに積層透明基体Tを貼り合わせるようにしてもよい。後者の方法では、粘着剤層Aの形成を、フィルム基材Fをロール状にして連続的に行なうことができるので、生産性の面で一層有利である。また、フィルム基材Fに、順次に基体フィルムt1、t2を粘着剤層A、aにより貼り合せることにより積層透明基体Tを積層することもできる。なお、基体フィルムの積層に用いる透明な粘着剤層(図1の粘着剤層a)は、下記の透明な粘着剤層Aと同様のものを用いることができる。
【0037】
粘着剤層Aとしては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0038】
粘着剤層Aの構成材料である粘着剤の種類によっては、適当な粘着用下塗り剤を用いることで投錨力を向上させることが可能なものがある。従って、そのような粘着剤を用いる場合には、粘着用下塗り剤を用いることが好ましい。
【0039】
前記粘着用下塗り剤としては、粘着剤の投錨力を向上できる層であれば特に制限はない。具体的には、例えば、同一分子内にアミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基等の反応性官能基と加水分解性のアルコキシシリル基とを有するシラン系カップリング剤、同一分子内にチタンを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するチタネート系カップリング剤、及び同一分子内にアルミニウムを含む加水分解性の親水性基と有機官能性基とを有するアルミネート系カップリング剤等のいわゆるカップリング剤、エポキシ系樹脂、イソシアネート系樹脂、ウレタン系樹脂、エステルウレタン系樹脂等の有機反応性基を有する樹脂を用いることができる。工業的に取扱い易いという観点からは、シラン系カップリング剤を含有する層が特に好ましい。
【0040】
また、前記粘着剤層Aには、ベースポリマーに応じた架橋剤を含有させることができる。また、粘着剤層Aには必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また透明微粒子を含有させて光拡散性が付与された粘着剤層Aとすることもできる。
【0041】
尚、前記の透明微粒子には、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、酸化カルシウム、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等の導電性の無機系微粒子や、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタンの如き適宜なポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子など適宜なものを1種又は2種以上用いることができる。
【0042】
前記粘着剤層Aは、通常、ベースポリマー又はその組成物を溶剤に溶解又は分散させた固形分濃度が10〜50重量%程度の粘着剤溶液として用いられる。前記溶剤としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤や水等の粘着剤の種類に応じたものを適宜に選択して用いることができる。
【0043】
この粘着剤層Aは、積層透明基体Tの接着後に於いては、そのクッション効果により、フィルム基材Fの一方の面に設けられた導電性薄膜の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性、いわゆるペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させる機能を有する。この機能をより良く発揮させる観点から、粘着剤層Aの弾性係数を1〜100N/cmの範囲、厚さを1μm以上、通常5〜100μmの範囲に設定するのが望ましい。
【0044】
前記の弾性係数が1N/cm未満であると、粘着剤層Aは非弾性となるため、加圧により容易に変形してフィルム基材F、ひいては導電性薄膜3に凹凸を生じさせる。また、加工切断面からの粘着剤のはみ出しなどが生じやすくなり、そのうえ導電性薄膜3の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上効果が低減する。一方、弾性係数が100N/cmを超えると、粘着剤層Aが硬くなり、そのクッション効果が期待できなくなるため、導電性薄膜3の耐擦傷性やタッチパネル用としてのペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させることが困難になる傾向がある。
【0045】
また、粘着剤層Aの厚さが1μm未満となると、そのクッション効果が期待できないため、導電性薄膜3の耐擦傷性やタッチパネル用としてのペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させることが困難になる傾向がある。その一方、厚くしすぎると、透明性を損なったり、粘着剤層Aの形成や積層透明基体Tの貼り合わせ作業性、更にコストの面でも好結果を得にくい。
【0046】
この様な粘着剤層Aを介して貼り合わされる積層透明基体Tは、フィルム基材Fに対して良好な機械的強度を付与し、ペン入力耐久性および面圧耐久性の他に、とくに、カールなどの発生防止に寄与するものである。
【0047】
前記セパレーターを用いて粘着剤層Aを転写する場合、その様なセパレーターとしては、例えばポリエステルフィルムの少なくとも粘着剤層Aと接着する面に移行防止層及び/又は離型層が積層されたポリエステルフィルム等を用いるのが好ましい。
【0048】
また、必要に応じて、上記積層透明基体Tの外表面(粘着剤層とは反対側の面)に、視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止処理層を設けたり、外表面の保護を目的としたハードコート処理層を設けるようにしてもよい。ハードコート処理層としては、たとえば、メラニン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ樹脂などの硬化型樹脂からなる硬化被膜が好ましく用いられる。
【0049】
図2は、前記本発明の透明導電性積層体(図1)を用いたタッチパネルの例を示したものである。すなわち、透明導電性薄膜P1d,P2dを有する一対のパネル板P1,P2を、互いに直交する縞状に形成した透明導電性薄膜P1d,P2d同士が対向するように、スペーサSを介して対向配置してなるタッチパネルにおいて、一方のパネル板P1として、上記図1に示す透明導電性積層体を用いたものである。
【0050】
このタッチパネルは、パネル板P1側より、入力MにてスペーサSの弾性力に抗して押圧打点したとき、導電性薄膜P1d,P2d同士が接触して、電気回路のON状態となり、上記押圧を解除すると、元のOFF状態に戻る、透明スイッチ構体として機能する。その際、パネル板P1が上記の透明導電性積層体からなるために、透明導電性薄膜の耐擦傷性や打点特性やペン入力耐久性、面圧耐久性などに優れ、長期にわたって前記機能を安定的に維持させることができる。
【0051】
なお、図2において、パネル板P1は、図1に示す透明導電性積層体であってもよい。また、パネル板P2は、プラスチックフィルムやガラス板などからなる透明基体T´に透明導電性薄膜P2dを設けたものであるが、上記のパネル板P1と同様の図1に示す透明導電性積層体を用いてもよい。
【実施例】
【0052】
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。
【0053】
各層の屈折率と膜厚:透明誘電体薄膜および透明導電性薄膜と屈折率が相違する適当な熱可塑性フィルム基板上に同様のコーティング条件で単層で積層し、該積層面の光反射スペクトル上に光干渉効果に基づいて発現する反射率の極大ピークもしくは極小ピークの波長とそのピーク反射率の値を用いて、光学シミュレーションにより算出した。またハードコート層の屈折率はアッベ屈折率計(測定波長590nm)を用いて測定し、厚みは前記透明誘電体薄膜と同様の光干渉法を用いた計算により求めた。第一透明誘電体薄膜の表面抵抗値(Ω/□)は、三菱化学社製のハイレスター抵抗測定機により測定した。膜厚は、日立製作所製の透過型電子顕微鏡H−7650により測定した。
【0054】
実施例1
(第一透明誘電体薄膜の形成)
厚さが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)からなるフィルム基材(光の屈折率nf=1.66)の一方の面に、アルゴンガス95%と酸素ガス5%の混合ガスの雰囲気下、酸化インジウム100部、酸化錫10部および酸化セリウム25部の混合物の焼結体から、下記条件の反応スパッタリング法により、酸化インジウム100部に対して、酸化錫10部および酸化セリウム25部を有する複合酸化物(光の屈折率n1=2.1)の第一透明誘電体薄膜を形成した。第一透明誘電体薄膜の厚さは32nm、表面抵抗値(Ω/□)は、8.5×109であった。
【0055】
<スパッタリング条件>
ターゲットサイズ:200mm×500mm
出力:3.0kw
電圧値450V
放電時間:1min
真空度:0.5Pa。
【0056】
(第二透明誘電体薄膜の形成)
次いで、第一透明誘電体薄膜上に、SiO2(光の屈折率n2=1.46)を電子ビーム加熱法により、1×10-2〜3×10-2Paの真空度で真空蒸着して、厚さ50nmの第二透明誘電体薄膜を形成した。
【0057】
(透明導電性薄膜の形成)
次いで、上記のSiO2薄膜上に、アルゴンガス95%と酸素ガス5%の混合ガスを用いて、0.5Paの雰囲気中で、酸化インジウム100部および酸化錫10部の混合物の焼結体から、反応スパッタリング法により、酸化インジウム100部に対して酸化錫10部を有する複合酸化物(光の屈折率n1=2.0)の透明導電性薄膜を形成した
【0058】
(ハードコート層の形成)
ハードコート層の形成材料として、アクリル・ウレタン系樹脂(大日本インキ化学(株)製のユニディック17−806)100部に、光重合開始剤としてのヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャルティケミカルズ社製のイルガキュア184)5部を加えて、30重量%の濃度に希釈してなるトルエン溶液を調製した。
【0059】
このハードコート層の形成材料を、厚さが125μmのPETフィルムからなる基体フィルムの一方の面に塗布し、100℃で3分間乾燥した。その後、直ちにオゾンタイプ高圧水銀灯(エネルギー密度80W/cm、15cm集光型)2灯で紫外線照射を行ない、厚さ5μmのハードコート層を形成した。
【0060】
(積層透明基体の作製)
次いで、前記基体フィルムのハードコート層形成面とは反対側の面に、厚さ約20μm、弾性係数10N/cmの透明なアクリル系の粘着剤層を形成した。粘着剤層組成物としては、アクリル酸ブチルとアクリル酸と酢酸ビニルとの重量比が100:2:5のアクリル系共重合体100部に、イソシアネート系架橋剤を1部配合してなるものを用いた。上記粘着剤層側に、厚さ25μmのPETフィルムからなる基体フィルムを貼り合せて、PETフィルムを2枚有する積層透明基体とした。
【0061】
(透明導電性積層体の作製)
上記積層透明基体のハードコート層形成面とは反対側の面に、上記同様条件にて粘着剤層を形成し、この粘着剤層面と、フィルム基材(導電性薄膜を形成していない側の面)とを貼り合わせ、これにより本実施例に係る透明導電性積層体を作製した。
【0062】
実施例2
(第二透明誘電体薄膜の形成)
実施例1の(第一透明誘電体薄膜の形成)において得られた、第一透明誘電体薄膜上に、シリカコート法により、ウェットSiO膜を形成した。即ち、シリカゾル(コルコート社製の「コルコートP」)を固形分濃度が2%となるようにエタノールで希釈したものを塗布し、150℃で2分間乾燥後、硬化させて、厚さが30nmのウェットSiO膜(相対屈折率1.46)を形成した。
【0063】
(透明導電性積層体の作製)
実施例1において、第二透明誘電体薄膜の形成を上記の方法により形成したこと以外は実施例1と同様にして、透明導電性薄膜を形成して、透明導電性積層体を作製した。
【0064】
実施例3
(第一透明誘電体薄膜の形成)
厚さが25μmのPETフィルム上に、紫外線硬化型樹脂(旭電化社製,KRX571‐76NL)100部に、シリコーン系レベリング剤0.5部を混合し、固形分が20%となるように溶媒で希釈した溶液を、#16番のワイヤーバーにて乾燥後の膜厚が3μmとなるように塗布し、溶媒を乾燥オーブンにより気化した後、高圧水銀灯により紫外線照射して硬化を行い、透明ハードコート層(光の屈折率1.54)を形成した。
【0065】
実施例1において、フィルム基材として、上記ハードコート層を形成したPETフィルムを用い、そのハードコート層上に、酸化インジウム100部、酸化錫5部および酸化セリウム10部の混合物の焼結体から、実施例1と同様の反応スパッタリング法により、酸化インジウム100部に対して、酸化錫5部および酸化セリウム10部を有する複合酸化物(光の屈折率n1=2.05)の第一透明誘電体薄膜を形成したこと以外は実施例1と同様にして第一透明誘電体薄膜を形成した。第一透明誘電体薄膜の厚さは35nm、表面抵抗値(Ω/□)は、5.7×107であった。
【0066】
次いで、第一透明誘電体薄膜上に、実施例1と同様にして第二透明誘電体薄膜を形成し、さらに実施例1と同様にして透明導電性薄膜を形成した。そして、前記フィルム基材(透明導電性薄膜を形成していない側の面)を、実施例1と同様にして積層透明基体と貼り合せて、透明導電性積層体を得た。
【0067】
比較例1
実施例1において、積層透明基体の代わりに、透明基体として、厚さが125μmのPETフィルムからなる基体フィルムにハードコート層を形成したもの(実施例1の積層透明基体において、厚さ25μmのPETフィルムからなる基体フィルムを貼り合せていないもの)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、透明導電性積層体を作製した。
【0068】
比較例2
実施例2において、積層透明基体の代わりに、透明基体として、厚さが125μmのPETフィルムからなる基体フィルムにハードコート層を形成したもの(実施例1の積層透明基体において、厚さ25μmのPETフィルムからなる基体フィルムを貼り合せていないもの)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、透明導電性積層体を作製した。
【0069】
実施例および比較例で得られた透明導電性積層体について、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
<スパッタレート>
実施例1に記載のスパッタリング条件における第一透明誘電体薄膜のスパッタレートを記載した。実施例1に記載のスパッタリング条件において、均一なスパッタレートであることが好ましい。
【0071】
<透明導電性薄膜の表面抵抗値>
三菱化学社製のローレスター抵抗測定器を用いて、表面抵抗値(Ω/□)を測定した。透明導電性薄膜は、450(Ω/□)に設定されたものであり、450(Ω/□)から変動していないものが好ましい。
【0072】
<光の透過率>
島津製作所製の分光分析装置UV−240を用いて、光波長550nmに於ける可視光線透過率を測定した。
【0073】
<光学特性>
島津製作所製の分光光度計UV3150を用いて、色相b*を測定した。色相b*は、透過光の着色を表し、色相b*の値がマイナス側に大きくなると透過光は青味が増し、プラス側に大きくなると黄色味が増す。色相b*の値は、−2〜2の範囲にあることが、着色が抑制されており好ましい。
【0074】
<面圧耐久性>
図3に示すように、面圧耐久性試験用冶具(接地径φ20mm)が荷重2kgで押圧した状態(冶具がタッチパネルに接地時の摩擦係数が0.7〜1.3)で、各タッチパネルに対して冶具を摺動させ、所定条件で摺動させた後のリニアリティを測定し面圧耐久性を評価した。摺動動作は、透明導電性積層体側において、タッチパネルの周縁部から距離5mm以上離れた範囲内の領域で行った。また、摺動条件は、摺動回数を100回、タッチパネルのギャップを100μmとした。
【0075】
リニアリティの測定は、次の通りにした。即ち、透明導電性積層体に於いて、5Vの電圧を印加し、測定開始位置Aの出力電圧をE、測定終了位置Bの出力電圧をE、測定点の出力電圧をE、理論値をEXXとすると、リニアリティは以下の方法により得られる。
【0076】
即ち、各タッチパネルの摺動後、透明導電性積層体に於いて、5Vの電圧を印加し、測定開始位置Aの出力電圧をE、測定終了位置Bの出力電圧をE、測定点の出力電圧をE、理論値をExxとすると、リニアリティは下記数式を用いた計算から得られる。図4に、実施例1で得られたタッチパネルに於ける電圧値と測定位置との関係を示すグラフを示す。同図に示す実線は実測値を示し、破線は理論値を示す。得られたリニアリティの値から、面圧耐久性の評価をした。結果を下記表1に示す。
【0077】
【数1】

【0078】
【表1】

【0079】
表1に示すように、実施例の透明導電性積層体は、第一透明誘電性薄膜が高屈折率、高透過率であり、光学的調整が容易である。また、第一透明誘電性薄膜は、高抵抗値を有しており、透明導電性積層体の導電性が損なわれることはない。また、スパッタレートがよく生産性も良好である。また、実施例に係るタッチパネルであると、面圧耐久性に優れることが分かる。特に、実施例のように第一透明誘電体薄膜として特定のものを用いることで面圧耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の透明導電性積層体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のタッチパネルの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例に係わるタッチパネルの面圧耐久性試験を説明するための断面模式図である。
【図4】実施例1で得られたタッチパネルに於ける電圧値と測定位置との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0081】
F フィルム基材
1 第一透明誘電体薄膜
2 第二透明誘電体薄膜
3 透明導電性薄膜
A、a 粘着剤層
T 積層透明基体
t1、t2 基体フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが2〜200μmの透明なフィルム基材の一方の面に、前記フィルム基材の側から第一透明誘電体薄膜、第二透明誘電体薄膜および透明導電性薄膜がこの順に形成されており、
透明なフィルム基材の他方の面には、透明な粘着剤層を介して透明基体が貼り合わされている透明導電性積層体であって、
第一透明誘電体薄膜は、真空蒸着法、スパッタリング法またはイオンプレーディング法により形成され、かつ第一透明誘電体薄膜は、酸化インジウム100重量部に対して、酸化錫を0〜20重量部、酸化セリウムを10〜40重量部含む複合酸化物からなり、
第一透明誘電体薄膜の屈折率をn1、第二透明誘電体薄膜の屈折率をn2、透明導電性薄膜の屈折率をn3としたとき、n2<n3≦n1の関係を満たし、
透明基体は、少なくとも2枚の透明な基体フィルムを透明な粘着剤層を介して積層した積層透明基体であることを特徴とする透明導電性積層体。
【請求項2】
第一透明誘電体薄膜の厚さが10〜200nmであり、かつ表面抵抗値が1×106(Ω/□)以上であることを特徴とする請求項1記載の透明導電性積層体。
【請求項3】
前記透明基体の外表面に樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電性積層体。
【請求項4】
透明導電性薄膜を有する一対のパネル板を、透明導電性薄膜同士が対向するように、スペーサを介して対向配置してなるタッチパネルにおいて、少なくとも一方のパネル板が請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性積層体を含むことを特徴とするタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−146927(P2008−146927A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330794(P2006−330794)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】