説明

連続可変変速機

本発明は連続可変車両変速機の制御に関する。この変速機は、クラッチ(62;68)のような発進装置を介して、変速機駆動比の連続的な変化を提供するように、回転変速機入力(32)と回転変速機出力(46)との間で結合された変動器(10)を有するようにされる。変動器及び発進装置は入力信号により画定される所要のトルクを与えるように構成され、配列される。本発明によれば、変動器トルク及び発進装置のトルク容量の双方を制御するために同じ制御信号が使用される。このような構成により、車両の発進(即ち停車からの運動)は関連する制御信号好ましくは液圧信号を漸進的に上昇させることにより簡単な方法で制御することができる。更に、独立の請求項は変動器のレース(20、22)に対する牽引負荷の適用及び変動器(10)のトルクよりも大きい発進装置(62;68)のトルクの設定方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続可変変速機(continuously variable transmission)に関する。本発明の1つの態様は、発進装置の制御及びこのような変速機の変動器(variator)の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
どんな連続可変変速機においても、変速比の無段変化を提供する装置が存在する。このような装置はここでは「変動器(variator)」という。車両の変速機においては、「発進(launch)」のための、即ち、静止発車から車両を加速するための準備をしなければならない。この関係において、ある変速機は、クラッチのような「発進装置」の使用に頼っている。この装置は、車両が静止している間、車両の被駆動車輪からエンジンを切り離す役割をする。車両を発車待機状態から運動させるため、変速機がローギヤに設定され、エンジンが適当なトルクを生じるように設定され、発進装置が徐々に係合され車両の被駆動車輪の速度を上昇させる。しかしながら、この工程の管理は複雑になる可能性がある。
【0003】
連続可変変速機において周知である代替のアプローチは、変動器の出力を遊星混合ギヤ(epicyclic mixing gear)に適用することであり、これは、変速機の入力から変速機の出力を物理的に切り離すことなく、変速機が事実上無限速度減少を提供するような「ギヤ中立(geared neutral)」として参照する状態を達成することを可能にする。この形式の変速機においては、発進装置のようなものは不要である。発進は、単に「ギヤ中立」値から変動器比を移動させるだけで達成される。しかしながら、そのような変速機は、必然的に、伝動装置及び制御に関するある問題についての構造上の複雑さを含む。
【0004】
「比制御される(ratio controlled)」変動器と「トルク制御される」変動器との間の区別をつけることは有用である。比制御される変動器は、設定値を達成するようにそれ自体の比率を調整するためのある物理的な機構を有する。たとえば、「半トロイダル(half-toroidal)」転がり牽引形式の既知の変動器は、典型的には、変動器比に対応する位置を備えた変動器ローラに作動的に結合された1つの部分(例えば弁スプール)と、変動器比を設定するように移動する別の部分(例えば弁ポートを形成する可動スリーブ)とを有する弁を利用する。弁の状態はこれら2つの部分の相対位置に依存し、弁は変動器ローラに作用するピストン/シリンダ構造体に適用される圧力を制御する。結果として、流体機械的なフィードバックループが生じ、この場合、弁は変動器比を所望の値と常に比較し、その値を達成するように変動器比を調整する。関連する電子機器は所望の変動器比を選択し、それを表す信号を変速機に送る。
【0005】
トルク制御される変動器においては、変動器比を所望の値に調整するためのこのような物理的構成は存在しない。代わりに、変動器は生じさせるべきトルクを表す制御信号を受け取る。国際出願公開パンフレットWO2006/027540(PCT/GB2005/03098)に記載されたような既知の全トロイダル形式の変動器においては、この信号は液圧の形をしている。この圧力に応答して、変動器はその入力/出力において所要のトルクを生じさせる。変動器の実際の駆動比は自動的に変化することができ、関連する慣性体へのこのトルクの適用から由来する速度変化を調整する。
【0006】
従って、変速機のエンジン/入力側においては、変動器により生じるトルクとエンジンの出力トルクとを合計して、エンジン及び関連する部分の回転慣性に作用する正味のトルクを決定し、そのようにしてエンジンの加速度を決定する。変速機の車輪/出力側においては、変動器により生じるトルクは制動、路面勾配等による外部的に適用されるトルクと一緒に合計され、車両自体を加速するために利用するトルクを決定する。入力及び出力の双方における結果としての速度変化は変動器比の変化を含み、変動器はこのような変化を自動的に調整する。
【0007】
トルク制御される形式の既知の全トロイダル転がり牽引変動器においては、変動器は制御信号に対応する「反力トルク」を生じさせるのに役立つ。反力トルクは変動器の入力及び出力でのトルクの合計である。等価的には、これは、変動器の装着体の旋回を阻止するために変動器の装着体に作用しなければならないトルクとなるように定義することができる。
【0008】
変動器は、典型的には駆動力を伝達するための回転部分間の牽引に依存する。たとえば、トロイダルレース転がり牽引変動器の場合、ローラはトロイダル状に凹んだ変動器レースと摩擦的に係合し、この摩擦係合を介して、駆動力は可変比で変動器入力からその出力へ伝達される。ローラとレースとの間で牽引を提供するため、これらを互いの方へ偏倚しなければならない。変動器内で牽引を生じさせるために使用される偏倚力はここでは「牽引負荷」という。原則的には、固定の牽引負荷を使用することができる。しかし、これは、すべての状態の下でローラとレースとの間の過剰なスリップを回避するのに十分なほど高いレベルに設定する必要がある。その結果、選択された牽引負荷値は大半の状態に対して過剰となり、エネルギ効率の低下及び回転部分に対する早期の磨耗を生じさせてしまう。
【0009】
それ故、従来、適用されるトルクに同調して牽引負荷を変更していた。特にトルク制御される変動器においては、牽引負荷は典型的には牽引トルクに比例して変更される。これは一定の牽引係数を提供するという利点を有する。牽引負荷に対する調整は時々、緊急制動のような突然の「瞬間的な」事象の場合におけるスリップを阻止するために、極めて迅速に行わなければならない。ある既存の装置においては、これは牽引負荷を適用するために液圧機器を使用することにより行われる。特に、変動器ローラに結合されたピストンを制御するために適用される液圧はまた牽引負荷を生じさせるために使用される液圧アクチュエータにも導かれ、そのため、変動器ローラに適用される力及び牽引負荷は同調して変化する。
【0010】
この形式の液圧装置においては、変動器ローラの運動を制限してローラがレースから出るのを阻止するために、液圧「端ストッパ」を提供するのが普通である。これは、たとえば、その意図した動程の端部に達したときのピストンにより、上述のピストンの1つを収容するシリンダからの流体出口を閉じ、その結果ピストンの運動を拘束するのに役立つようにシリンダ内の圧力を増大させるように構成することによって、行うことができる。増大した圧力はまた牽引負荷アクチュエータにも適用されるが、これは、端ストッパの作用による反力トルクの変化が牽引負荷の対応する変化により釣り合わせるべき場合に行わなければならず、これは端ストッパの作用時にスリップを生じさせるべきではない場合に必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
WO2006/027540(PCT/GB2005/03098)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、改善されたCVTを提供することを意図する。特に(ただし、これに限らないが)、本発明はその構造及び制御方法が簡単なCVTを提供することを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、回転ドライバに接続可能な回転入力と、車両の車輪に接続可能な回転出力と、駆動比の無段変化を提供するために回転入力と回転出力との間で結合される変動器と、回転入力及び回転出力を選択的に結合/結合解除するように構成された発進装置と、を有し、発進装置が所要のトルク容量を提供するように構成され、配列されるような連続可変車両変速機が提供される。この変速機の特徴とするところは、所要のトルクを設定するために変動器へ及びそのトルク容量を設定するために発進装置へ、同じ制御信号を適用する制御構成を有することである。
【0014】
クラッチの形をとることのできる発進装置のトルク容量は、変動器へ伝達することができ、液圧式に制御されるクラッチにおけるその係合の度合いにより、たとえば適用流体圧力により、決定される最大トルクである。単一の信号を使用してクラッチ及び変動器トルクを制御することにより、変速機の制御に必要な設備が大幅に簡単化されるのみならず、発進工程の制御も容易化される。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、ほぼトロイダル状の変動器空洞を一緒に画定し、共通の変動器軸線上で回転するように装着された少なくとも1対の部分トロイダル状に凹んだレース(races)と、部分トロイダル状に凹んだレース上で運動し、変動器駆動比で駆動力を伝達するようにレース間に位置する少なくとも2つのローラとを有し、ローラが変動器軸線に対するローラ軸線の傾斜を変更するように傾斜でき、変動器駆動比の無段変化を許容するような方法で装着されているような変動器を提供し、変動器の特徴とするところは、そのレースの一方が、接続シャフトと変動器レースとの間でトルクを伝達すると共に伝達されるトルクの関数である牽引負荷力をレースに与えるのに役立つ機械的な牽引負荷構造体を介して、接続シャフトに結合され、牽引負荷力がローラと係合するように変動器レースを押圧して、駆動力の伝達に必要な牽引を提供し、変動器がローラの傾斜を制限する機械的な当接部を有することである。
【0016】
(液圧装置の代わりの)機械的な牽引負荷装置と(液圧的な端ストッパの代わりの)機械的な端ストッパとの組み合わせは極めて有利である。機械的に発生される牽引負荷は必要な速度に応じて変化することができる。牽引負荷が関連する変動器レース上で作用するトルクに応答して発生し、ローラに適用された力に応答しないので、端ストッパの作用から由来する変動器トルクの変化は、端ストッパ自体を牽引負荷装置に作動的に結合する必要なしに、牽引負荷の適当な変化を自動的にもたらす。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、回転ドライバに接続可能な回転入力と、車両の車輪に接続可能な回転出力と、駆動比の無段変化を提供するために回転入力と回転出力との間で結合される変動器と、回転入力及び回転出力を選択的に結合/結合解除するように構成された発進装置とを有する連続可変車両変速機を制御する方法が提供され、この方法は、所望の反力トルクを提供するように変動器を制御する工程と、変動器により発進装置に適用されたトルクが発進装置のトルク容量よりも常に小さくなるように、変動器の反力トルクに同調して発進装置のトルク容量を制御する工程と、を有する。
【0018】
従って、反力トルク及び発進装置のトルク容量の統合された制御が簡単化される。更に、この方法は変動器の反力トルク及び発進装置のトルク容量を漸進的に増大させることにより発進を管理する極めて有利な方法を容易化し、発進装置のトルク容量は、少なくとも発進装置のスリップが無くなるまで、変動器により発進装置に適用されるトルクを常に越え、そのため、その時点まで、変速機は発進装置を介してそれに適用されるトルクによりその最小比に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に従って構成された連続可変変速機(「CVT」)を示す概略図である。
【図2】図2aは半径方向に沿って見たCVTに使用する牽引負荷装置の一層詳細な図であり、図2bはその後面を示す変動器レースの斜視図である。
【図3】CVTの液圧制御構成を示す概略図である。
【図4】軸方向に沿って見たCVTに使用する変動器のある素子を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ここで、添付図面を参照しながら、本発明の特定の実施の形態を単なる例として説明する。図1はトロイダルレース転がり牽引形式の変動器10を利用するCVTを示す。一層詳細には、これは双空洞全トロイダル変動器である。変動器は半トロイダル状に凹んだそれぞれの面16、18を備えた第1及び第2の入力レース12、14を有する。入力レース間には第1及び第2の出力レース20、22があり、これら2つはそれぞれの半トロイダル状に凹んだ面24、26を有し、そのため、第1の入力及び出力レース12、20間には第1のトロイダル空洞28が形成され、第2の入力及び出力レース22、14間には第2のトロイダル空洞30が形成される。レースは符号32で概略的に示すメインシャフトにより画定される共通回転軸線を有し、そのまわりでレースが回転する。
【0021】
各空洞28、30はそれぞれの組のローラ34、36を含む。各ローラは符号38のようなローラ軸線のまわりで回転するように装着され、一方から他方へ駆動力を伝達するようにその関連する入力及び出力レースのトロイダル面上で運動する。ローラの装着体(図1には示さないが、簡単に説明する)は、変動器駆動比の変化に従って、その傾斜を変更することができ、即ち、ローラ軸線38とメインシャフト32との間の角度を変更することができる。メインシャフト32は変動器への回転入力として作用し、この特定の実施の形態では符号40で概略的に示す内燃エンジンの形をしたエンジンのような回転ドライバに(直接的に又は中間の伝動装置(図示せず)を介して)結合される。
【0022】
本発明は、電気モータ、外燃エンジン等のような異なる形式の回転ドライバを使用して同様に首尾よく履行できる。変動器の入力レース12、14は一緒に回転するようにメインシャフト32に固定され、そのためエンジン40により駆動される。出力レース20、22はメインシャフト40に関して回転することができる。図示の実施の形態においては、これはローラ軸受42、44により提供され、これらの軸受を介して、出力レースはそれぞれメインシャフト32に装着される。駆動力は可変駆動比でローラ34、36を介して入力レース12、14から出力レース20、22に(又は「オーバーラン」状態ではその逆に)伝達される。出力レース20、22はまた車両の車輪に通じる最終の駆動子46に作動的に結合でき、これについて簡単に述べる。
【0023】
図示の変動器10においては、牽引負荷は変動器の出力トルクに比例する力(「牽引負荷」)で変動器ローラ34、36に係合するように変動器レース12、14、16、18を偏倚するのに役立つ機械的な(非液圧的な)牽引負荷装置48により提供される。これは(図示の実施の形態では出力レース20、22である)2つの最内側のレースを互いに離れるように押圧することにより行う。牽引負荷はローラ34、36を介してこの実施の形態では入力レース12、14である最外側のレースに伝達され、これらは次いで力をメインシャフト32に適用し、従ってメインシャフトは張力状態におかれる。このようにして牽引負荷をメインシャフト32に適用することにより、牽引負荷に耐えるためのスラスト軸受のいかなる必要性をも回避する。
【0024】
牽引負荷装置48は出力トルクを伝達するために簡単な傾斜構成を使用し、この傾斜構成は伝達されるトルクの関数である(特に、この実施の形態では、伝達されるトルクに比例する)、軸方向に沿った牽引負荷を生じさせる。
【0025】
図2a、2bは、牽引負荷装置48の構造を明らかにする。出力駆動ギヤ50は出力レース22の後面に固定される。出力レース22から遠い方のその面上で、出力駆動ギヤ50は図2aにおいて破線52で示す一組の傾斜状のくぼみを有する。それ自体の後面上で、出力レース20は図2bに明示する対応する組の傾斜状のくぼみ54を有する。くぼみ52、54はこの実施の形態では球状ボールとして形成されたローラ56を受け入れるために(図1で円周方向に沿って見たときに)部分円形断面を有する。半径方向に沿って見たとき、くぼみ52、54は浅い「V」形状を有するように見える。出力駆動ギヤ50及び出力レース20の分離は、図2aにおけるようにくぼみ52、54の最深区域が整合した場合に、最小となり、その場合、ボール56自体の位置はこれらの区域内にある。
【0026】
しかし、変動器出力がトルクを維持するために必要な場合に生じることを考慮されたい。出力レース20は軸受42、44のために出力駆動ギヤ50に関して回転できることに留意されたい。出力トルクがこれらの部分の相対回転を生じさせると、くぼみ52、54の最深区域が不整合となり、従って、ボール56は「V」形状のくぼみを乗り上げ、出力駆動ギヤ50から離れるように出力レース20を押圧し、それによって所要の牽引負荷を生じさせる。結果としての牽引負荷が伝達されているトルクと平衡したときに、この相対回転は停止する。それゆえ、牽引負荷は先に述べたように出力トルクの関数である。この関数の精確な特性はくぼみ52、54の形成に依存するが、図示の実施の形態においては、一方が他方に比例する。
【0027】
図示の変速機は前進及び後進ギヤの双方を提供することができ、即ち、最終駆動子46の回転方向を逆転させることができる。これは出力レース20、22から取り出されるパワーのための2つの経路を提供することにより達成される。これらの経路の一方は、図の明瞭のために図1において省略するが歯58及びチェーンギヤ60上で運動する駆動チェーンを介してチェーンギヤ60を駆動する出力駆動ギヤ50上に形成された第1の組の歯58を介するものである。チェーンギヤ60は前進クラッチ62の一側に作動的に結合され、その他側は最終駆動子46に作動的に結合される。パワー取り出しのための第2の経路は出力駆動ギヤ50上に形成された第2の組の歯64を介するものである。これらの歯64は逆転クラッチ68の一側に作動的に結合されたギヤホイール66と噛み合い、その他側は最終駆動子46に作動的に結合される。
【0028】
パワー取り出しのための第1の経路58、60、62はチェーン駆動の使用のために回転方向の逆転を提供しないことに留意されたい。パワー取り出しのための第2の経路64、66、68は1対のギヤの使用のために方向の逆転を生じさせる。それゆえ、前進クラッチ62の係合は1方向への最終駆動子の回転を生じさせ、クラッチ68の係合は反対方向への最終駆動子の回転を生じさせる。この特定の実施の形態においては、前進及び後進クラッチ62、68は両者が同時に係合するのを阻止するような方法で構成されることに留意されたい。最終駆動子46は図示しない車両の車輪に最終的に通じる伝動装置70を有する。
【0029】
上述のように、ローラ34、36のための装着体は図1で図示省略してある。装着体の1つの適当な形は図4に示す。この図においては、変動器レースの1つ12、14、20又は22及び2つのローラの1つ34又は36を示す。その位置は制御レバー72を介して影響を受け、この制御レバーは制御レバーの溝穴76内に受け入れられた振り子74上に枢着される。制御レバーは逆「T」形状を形成するようにクロスピース80と一体的に形成されたほぼ半径方向に突出するレバーアーム78を有する。クロスピース80の両終端部におけるボールカップリング82、84はそれぞれのローラを担持し回転自在に装着するそれぞれのローラ軸受86、88にクロスピースを結合する。また(図4では見えないが)、2つのボールカップリング82、84は共通の半径方向の面内に存在しないことに留意されたい。
【0030】
図1においては、トロイダル空洞30の中心における半径方向の面は点線90で示す。2つのボールカップリング86、88は各々この中心面90から変位していて、その両側に存在し、そのため、各ボールカップリングの中心から各ローラ34、36の中心への線は半径方向の面に対して傾斜する。この傾斜は「キャスター角度」と呼ぶ。制御レバー72を移動させたとき、図から明らかなように、両方のローラはメインシャフト32の軸線のまわりで右回り又は左回りのいずれかへ対応的に移動する。このように移動したとき、ローラは変動器レースにより(当業者には周知の方法で)操舵効果を受ける。その結果、両方のローラはボールカップリング及びローラの中心を通る上述の線/軸線のまわりで傾斜する。ローラ上の操舵効果は、ローラの軸線がメインシャフト32の軸線と交差するような傾斜角度にローラを運ぶ傾向を常に有する。キャスター角度のため、ローラはこの交差を提供する傾斜角度を常に見つけることができる。その結果は、ローラの傾斜それ故変動器比が制御レバー72の位置の関数となる。
【0031】
個々のローラにより支えられる負荷は等しく、図4の構成においては、溝穴76により画定されるほぼ半径方向に沿う制御レバー72の運動はローラ負荷の均等化を許容することは重要である。
【0032】
アクチュエータ92は、制御可能な偏倚力をレバーアーム78に適用するために使用される。この実施の形態においては、アクチュエータ92は複動する液圧装置である。即ち、アクチュエータは2つの反対方向の液圧を受け取り、それに加える力は、図4で左又は右となることのできるこれら2つの圧力の差により決定される。また、この実施の形態における単一のアクチュエータは両方の変動器空洞28、30のそれぞれのレバー72を制御することに留意されたい。第2の制御レバーは図4に示さないが、バー94が一方の制御レバー72から他方に通じ、アクチュエータ92のピストン96がこのバーの中間地点に枢着結合されることを理解すべきである。それゆえ、ピストン96の位置はバーの中間地点の位置に対応するが、2つの空洞間のローラ負荷を均等化する必要がある場合は、2つの制御レバーの相対位置は僅かに変わることができる。
【0033】
ここで、図3を参照して、CVTを制御するために使用される液圧機器を説明する。この図においては、ボックス98は調整可能な圧力で液圧流体を提供するための構成を概略的に示す。これを達成するための適当な手段は当業者にとって既知である。この圧力は変動器のクロスオーバー弁100に導かれ、この弁を介して、制御レバー72を一方向又は反対方向に押圧するように圧力をピストン96のいずれかの側に適用することができる。図3において、ピストンの低圧側からの排出流はサンプ102に通じるものとして示すが、実際には、関連する室が完全に空になるのを回避するために、代わりに、排出流は低圧源に通じることができる。アクチュエータ92は力を両方の制御レバー72に適用し、その大きさは圧力供給源98により決定され、その方向は変動器のクロスオーバー弁100により制御される。この力の調整により、変動器の反力トルクにわたって制御が行われる。
【0034】
源98からの圧力は、またクラッチ選択弁104に導かれる。この弁は上述の液圧を前進クラッチ62又は後進クラッチ68のいずれかに選択的に適用するようになっている。不作動のクラッチの圧力は同じ弁を通してサンプ102に排出される。それゆえ、クラッチ選択弁104は、変速機が前進作動するか後進作動するかを決定し、圧力供給源98は作動するクラッチを係合させる力、それ故そのトルク容量を決定する。圧力供給源98とクラッチ選択弁104との間の隔離弁105は、車両がニュートラル状態にあるときに、これらの部品を選択的に接続解除するのに役立つ。
【0035】
上述のように、最小及び最大変動器比を制限するためにある手段を通常設ける。このような手段が無い場合、変動器レース12、14、20、22を去るほどまでにローラ34、36が傾斜する危険性があり、破滅的な結果をもたらす可能性がある。上述のように、このような「端ストッパ」は典型的には従来技術において液圧的に履行される。しかし、本発明の図示の実施の形態においては、簡単な機械的ストッパがローラの運動路に置かれる。特に、これらのストッパはすべてのローラを制御するために使用される単一のアクチュエータの運動を制限する。原則的には、ストッパは任意の多数の異なる形をとることができるが、図3には、その動程の端部に達したときにピストン96に単に当接するアクチュエータ92内のバッファ106、108として示す。
【0036】
ピストン96の面積及び前進及び後進クラッチ62、68内のピストンの面積(後者のピストンは図では見えないが、適当なクラッチの構造は当業者にとって周知である)は、作動クラッチ62、68のトルク容量が変動器の出力トルクを越えることを保証するように選択され、もちろん、両者は源98から同じ液圧を受け取る。それゆえ、車両の発進中に生じることを考慮されたい。発進前に、クラッチ選択弁104への圧力は隔離弁105により解放される。いずれのクラッチも係合せず、従って、車両の車輪は変動器から結合解除される。
【0037】
発進を開始するため、クラッチ選択弁104は前進又は後進のいずれかを提供するように設定され、圧力供給源98は適当な低い値に設定され、次いで、隔離弁105の状態はこの圧力を関連するクラッチに適用するように変更される。クラッチのトルク容量が変動器の出力トルクを常に越えるので、変動器は最初に、端ストッパバッファ106により決定されたようなその最小比を採用するように強制される。これは、変動器のクロスオーバー弁100がどんな状態でも生じるが、実際、その比範囲の端部へ変動器を駆動するクラッチトルクにより生じるいかなる「金属音」をも回避するため、クロスオーバー弁100はまた、最初、その最小比へと押圧するように設定される。
【0038】
作動クラッチの係合は、トルクを被駆動車輪に適用し、従って、車両は加速し始める。発進中のある時点で、変動器のクロスオーバー弁100の状態が変化し、そのため、適用された液圧は変動器比を増大させるようにそのバッファ106から離れるようにピストン96を押圧する傾向を有する。作動クラッチがスリップしている間にこの変化が生じる限り、この変化のタイミングは重要ではない。その理由は、この時間中、変動器が、いかなる状況においても、作動クラッチ62又は68により発生されるトルクによってその最小比に保たれるからである。車両が加速するとき、源98からの圧力は徐々に増大し、そして、ある時点で、作動クラッチのスリップが停止する。その後、液圧の継続的な増大により、ピストン96をその端バッファ106から離れるように移動させることができ、そのため、車両が加速するときに、変動器比は増大することができる。
【0039】
引き続きの加速及び制動中、作動クラッチのスリップは期待できない。その理由は、変動器によりクラッチに適用される負荷がそのトルク容量よりも小さいからである。効果は、発進の管理を特に簡単な方法で制御することができ、その液圧機器について既知のCVTよりも顕著な簡単化を示す変速機を提供することである。
【0040】
近代の車両は典型的には変速機及びエンジンの制御のための統合された方策を履行するために電子機器を使用する。ここでは、考慮中のCVTはこの方法で制御される。この例において制御すべき2つの最も基本的な量は(圧力供給源98により設定される)変動器の反力トルク及びエンジンコントローラに供給されるトルク要求により設定されるエンジン出力トルクである。
【0041】
上述の実施の形態は純粋に例として提示され、熟練した読者にとっては、本発明が実際多くの異なる方法で履行できることは明らかであろう。たとえば、図示の実施の形態はローラの動程それ故変動器の比を制限するために機械的な当接部を利用する。しかし、当業界においては、代わりに、アクチュエータ92からの出口ポートがそのシリンダの側に形成され、これにより、いずれかの方向へのピストンの過剰な動程が出口ポートを閉じて、端ストッパ機能を提供するような液圧構成を使用することが知られている。同じ形式の構成は本発明の履行の際に使用できる。また、図示の実施の形態は牽引負荷を提供するための機械的なボール及び傾斜構成を使用するが、この機能はまた液圧機器の他の実施の形態において実行することもできる。たとえば、端負荷を提供するために変動器レースの一方に作用するアクチュエータ92及び液圧ピストン/シリンダ構造体の双方に同じ圧力を供給することは周知であり、これと同じことは本発明の実施の形態において行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ドライバに接続可能な回転入力と、車両の車輪に接続可能な回転出力と、駆動比の無段変化を提供するために回転入力と回転出力との間に結合される変動器と、回転入力及び回転出力を選択的に結合/結合解除するように構成された発進装置と、を有し、変動器が所要のトルクを与えるように構成され配列され、発進装置が所要のトルク容量を提供するように構成され配列されるような連続可変車両変速機であって、
所要のトルクを設定するために変動器へ、及びそのトルク容量を設定するために発進装置へ、同じ制御信号を適用する制御構成を有することを特徴とする連続可変変速機。
【請求項2】
前記変動器及び発進装置の構成は、クラッチのトルク容量が変動器により与えられる出力トルクを常に越えるようなものであることを特徴とする請求項1の連続可変変速機。
【請求項3】
前記制御信号が液圧であることを特徴とする請求項1又は2の連続可変変速機。
【請求項4】
前記発進装置がクラッチ又はブレーキを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの連続可変変速機。
【請求項5】
前記液圧が変動器の液圧アクチュエータに適用され、変動器の可動なトルク伝達部分に適用される力を決定することを特徴とする請求項3の連続可変変速機。
【請求項6】
前記変動器が一方から他方へトルクを伝達するために一対のレース上で運動する可動ローラを有し、液圧アクチュエータがローラ上に力を与えるようにローラに結合され、液圧が上記力を決定するために液圧アクチュエータに適用されることを特徴とする請求項3の連続可変変速機。
【請求項7】
前記変動器が更にレースに対してトルクを伝達するために一対のレースの一方に結合された牽引負荷装置を有し、牽引負荷装置が伝達するトルクにより決定される牽引負荷をレースに適用するように構成され、配列されることを特徴とする請求項1の連続可変変速機。
【請求項8】
前記牽引負荷装置が共通軸線のまわりで回転するように装着された第1及び第2の部分を有し、第1及び第2の部分は、他方に関する一方の回転が他方に関する一方の軸方向変位を生じさせるように形成されることを特徴とする請求項7の連続可変変速機。
【請求項9】
ほぼトロイダル状の変動器空洞を一緒に画定し、共通の変動器軸線上で回転するように装着された少なくとも1対の部分トロイダル状に凹んだレースと、部分トロイダル状に凹んだレース上で運動し、変動器駆動比で駆動力を伝達するようにレース間に位置する少なくとも2つのローラと、を有し、ローラが変動器軸線に対するローラ軸線の傾斜を変更するように傾斜でき、変動器駆動比の無段変化を許容するような方法で装着されるような変動器であって、
前記レースの一方が、接続シャフトと変動器レースとの間でトルクを伝達すると共に伝達されるトルクの関数である牽引負荷力をレースに与えるのに役立つ機械的な牽引負荷構造体を介して、接続シャフトに結合され、牽引負荷力がローラと係合するように変動器レースを押圧して、駆動力の伝達に必要な牽引を提供し、変動器がローラの傾斜を制限する機械的な当接部を有することを特徴とする変動器。
【請求項10】
前記牽引負荷装置が共通軸線のまわりで回転するように装着された第1及び第2の部分を有し、第1及び第2の部分は、他方に関する一方の回転が他方に関する一方の軸方向変位を生じさせるように、形状づけられることを特徴とする請求項9の変動器。
【請求項11】
前記牽引負荷装置の第1の部分が円周方向に延びて半径方向の面に対して傾斜する少なくとも1つのカム表面と、カム表面上に乗り、第2の部分に当接する少なくとも1つの従節とを有することを特徴とする請求項10の変動器。
【請求項12】
前記ローラが液圧ピストン/シリンダ構造体に作動的に結合され、機械的な当接部がその動程を制限してローラの傾斜を制限するようにピストンに当接するように位置することを特徴とする請求項9ないし11のいずれかの変動器。
【請求項13】
回転ドライバに接続可能な回転入力と、車両の車輪に接続可能な回転出力と、駆動比の無段変化を提供するために回転入力と回転出力との間で結合される変動器と、回転入力及び回転出力を選択的に結合/結合解除するように構成された発進装置とを有する連続可変車両変速機を制御する方法であって、
所望の反力トルクを提供するように変動器を制御する工程と、変動器により発進装置に適用されたトルクが発進装置のトルク容量よりも常に小さくなるように、変動器の反力トルクに同調して発進装置のトルク容量を制御する工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項14】
変動器及び発進装置に同じ制御信号を適用する工程を有することを特徴とする請求項13の方法。
【請求項15】
変動器の反力トルク及び発進装置のトルク容量を漸進的に増大させることにより発進装置を管理する工程を有し、少なくとも発進装置のスリップが無くなるまで、発進装置のトルク容量が変動器により適用されるトルクを常に越えるようにし、それによって、その時点まで、変速機が発進装置を介して適用されるトルクによりその最小比に維持されることを特徴とする請求項13又は14の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−505074(P2010−505074A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529777(P2009−529777)
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050578
【国際公開番号】WO2008/038043
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(504290859)トロトラク・(ディヴェロプメント)・リミテッド (33)
【Fターム(参考)】