説明

運転支援装置及びプログラム

【課題】運転者の危険箇所を認知する負担を軽減した運転支援装置を提供する。
【解決手段】走行時に走行情報(走行速度、加減速度合い、トラクション情報、操舵角情報、車道における走行位置、ハンドル操作、アクセル操作、ブレーキ操作、シフト操作、ウィンカー操作等)を記憶しておき、走行後、走行情報に基づいて運転評価を行う(S220)。そして、危険運転状態が発生した箇所の情報を記憶する(S230)。以降、この記憶しておいた情報を用いて、次に当該箇所を通行する際に運転者へ警告する。このようになっていれば、運転者の危険箇所を認知する負担を軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転を評価し、危険の予防を行う運転支援装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、下記の特許文献1に記載のような技術が知られている。この技術は、記憶媒体に予め記憶されている道路地図情報に基づいて車両操作の基準値をマップ化し(地図に対応させ)、さらにこれを現在の道路状況を示すリアルタイム情報に基づいて補正する(特許文献1の段落「0011」参照)。そして、この補正した基準値と各種センサにより検出された車両操作情報とを比較して安全運転の度合いを採点し、採点結果を表示部や音声出力部から出力するものである(特許文献1の段落「0012」等を参照)。
【特許文献1】特開2004−249821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、採点後にその結果を表示部や音声出力部から出力するものであるため、採点結果が低いものとなるような運転、すなわち、スピード超過や急ブレーキ等の危険な運転が発生した後でないと、運転者は、その事実を知ることができない。したがって、運転者は採点結果を理解し、当該ルートを次に通る際、以前の採点結果に基づき、自身の判断によりスピード超過をしがちな場所や急ブレーキを踏みがちな箇所を認知して注意する必要がある。このことは、様々な情報に基づいて即座に適切な判断が常に強いられる運転者にとって負担となる場合も考えられる。
【0004】
本発明はこのような問題にかんがみなされたものであり、運転者の危険箇所を認知する負担を軽減した運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する運転支援装置は、報知手段と、記憶手段と、現在位置情報取得手段と、走行状態情報取得手段と、危険運転判定手段と、報知制御手段とを備える。このうち、報知手段は運転者へ情報を報知可能な手段であり、記憶手段は情報を記憶可能な手段であり、現在位置情報取得手段は車両の現在位置に関する情報である現在位置情報を取得する手段であり、走行状態情報取得手段は車両の走行状態に関する情報である走行状態情報を取得する手段である。なお、この「車両の走行状態に関する情報」というのは、例えば、走行速度や、加減速度合いや、トラクション状態や、操舵角情報、車道における走行位置等である。
【0006】
また、危険運転判定手段は、走行状態情報取得手段が取得した走行状態情報に基づいて危険運転状態が発生したか否かを判定し、危険運転状態が発生したと判定した場合、その危険運転状態が発生したときに現在位置情報取得手段が取得した現在位置情報を危険箇所情報として記憶手段に記憶させ、さらに、危険運転状態の種類を示す危険情報を危険箇所情報に対応させて記憶手段に記憶させる手段である。また、報知制御手段は、現在位置情報取得手段により取得された現在位置情報と、記憶手段に記憶された危険箇所情報とに基づいて、危険箇所への車両の接近を検知し、当該接近の事実と記憶手段に記憶された危険情報とを報知手段に報知させる手段である。
【0007】
このような運転支援装置によれば、記憶手段に記憶された危険箇所(危険運転状態が発生した箇所)へ車両が接近した際に、危険情報(危険運転状態の種類を示す情報)が報知されるため、運転者は、その危険箇所の存在について失念していても危険箇所の存在を知ることができる。つまり、運転者が認知しておかなければならない危険箇所を減らすことができ、運転者の負担を軽減することができる。また、本発明の運転支援装置を複数の運転者で利用すれば、他の運転者が危険運転状態を発生させた箇所へ、別の運転者の運転する車両が接近した際にも危険情報が報知される。したがって、より安全性が高まる。
【0008】
なお、運転支援装置は、理想的な車両の走行状態に関する情報である理想走行状態情報を取得する理想走行状態情報取得手段をさらに備えているとよい。そして、危険運転判定手段は、上述した判定を行う際、走行状態情報取得手段が取得した走行状態情報と、理想走行状態情報取得手段が取得した理想走行状態情報とを比較して判定を行うようになっているとよい。
【0009】
このようになっていれば、走行状態情報と理想走行状態情報との乖離度合いを調べることによって容易に危険運転状態が発生したことを判定することができる。
また、上記課題を解決する別の運転支援装置は、報知手段と、記憶手段と、現在位置情報取得手段と、運転操作情報取得手段と、危険運転判定手段と、報知制御手段とを備える。このうち、報知手段と、記憶手段と、現在位置情報取得手段については上述した運転支援装置と同じであるが、運転操作情報取得手段は、実際の運転者の運転操作に関する情報である運転操作情報を取得する手段である。なお、ここで言う「運転操作」というのは、ハンドル操作、アクセル操作、ブレーキ操作、シフト操作、ウィンカー操作等の運転に必要な操作を意味する。
【0010】
また、危険運転判定手段は、運転操作情報取得手段が取得した運転操作情報に基づいて危険運転状態が発生したか否かを判定し、危険運転状態が発生したと判定した場合、その危険運転状態が発生したときに現在位置情報取得手段が取得した現在位置情報を危険箇所情報として記憶手段に記憶させ、危険運転状態の種類を示す危険情報を危険箇所情報に対応させて記憶手段に記憶させる手段である。また、報知制御手段は、現在位置情報取得手段により取得された現在位置情報と、記憶手段に記憶された危険箇所情報とに基づいて、危険箇所への車両の接近を検知し、当該接近の事実と記憶手段に記憶された危険情報とを報知手段に報知させる手段である。
【0011】
このような運転支援装置によっても、記憶手段に記憶された危険箇所(危険運転状態が発生した箇所)へ車両が接近した際に、危険情報(危険運転状態の種類を示す情報)が報知されるため、運転者は、その危険箇所の存在について失念していても危険箇所の存在を知ることができる。つまり、運転者が認知しておかなければならない危険箇所を減らすことができ、運転者の負担を軽減することができる。また、本発明の運転支援装置を複数の運転者で利用すれば、他の運転者が危険運転状態を発生させた箇所へ、別の運転者の運転する車両が接近した際にも危険情報が報知される。したがって、より安全性が高まる。
【0012】
なお、運転支援装置は、理想的な運転操作に関する情報である理想運転操作情報を取得する理想運転操作情報取得手段をさらに備えているとよい。そして、危険運転判定手段は、上述した判定を行う際、運転操作情報取得手段が取得した運転操作情報と、理想運転操作情報取得手段が取得した理想運転操作情報とを比較して判定を行うようになっているとよい。
【0013】
このようになっていれば、運転操作情報と理想運転操作情報との乖離度合いを調べることによって容易に危険運転状態が発生したことを判定することができる。
ところで、危険運転判断手段が上記判定を行う際、他の情報、例えば、車両の外部環境に関する情報である環境情報も加味して判定を行うようになっているとよい。ここで言う「車両の外部環境に関する情報」というのは、例えば、天候や、渋滞情報、規制情報、日時情報等を意味する。
【0014】
このような情報も加味して危険運転判断手段が上述した判定するようになっていれば、例えば、雨の日は速度超過時の判定基準を厳しくして判定することが可能となり、より実情に合った判定を行うことができる。
【0015】
また、危険運転判断手段が上記判定を行う際、他の情報、例えば、運転者の運転操作以外の運転者の動作に関する情報である運転者動作情報も加味して判定を行うようになっているとよい。ここで言う「運転者の運転操作以外の運転者の動作に関する情報」というのは、例えば、オーディ装置に対する操作や、ナビゲーション装置に対する操作や、シガライターに対する操作や、ウィンドウ開閉スイッチに対する操作や、よそ見や、居眠り等を意味する。
【0016】
このような情報も加味して危険運転判断手段が上述した判定するようになっていれば、例えば、運転者がよそ見をした場合、そのよそ見をした地点が記憶され、次に、当該地点を走行する際に、以前によそ見をした地点(≒よそみをしがちな地点)として運転者に報知される。このように、より危険運転状態が発生した地点として判定される事項が広がり、安全性向上に役立つ。
【0017】
ところで、危険運転判断手段は、リアルタイムに(運転者の運転操作と同時に)上述した判定を行うようになっていてもよいが、判定に必要な情報を記憶手段に記憶させておき、所定のタイミングで、記憶手段に記憶させておいた情報を用いて判定を行うようになっていてもよい。ここで言う「所定のタイミング」というのは、例えば、運転を終了した際や、所定の区間を走行した後や、所定の距離を走行した後や、所定の時間を経過した後や、運転者の希望するとき等を意味する。
【0018】
上述した判定をリアルタイムに(運転時に)行うためには、危険運転判断手段を構成するプロセッサの処理能力が十分である必要がある。しかし、判定に必要な情報を記憶手段に記憶させておき、所定のタイミングで判定を行うようになっているならば、リアルタイムで処理しなければならない場合と比較して、プロセッサは低い処理能力であってもよい。したがって、このようになっていれば、運転支援装置をより製造しやすくなり、コスト低下に寄与する。
【0019】
また、報知制御手段は、所定のタイミングで、記憶手段に記憶させておいた複数の危険箇所情報と危険情報とをまとめて報知手段に報知させるようになっていてもよい。ここで言う「所定のタイミング」というのは、例えば、運転を終了した際や、所定の区間を走行した後や、所定の距離を走行した後や、所定の時間を経過した後や、運転者の希望するとき等を意味する。
【0020】
このようになっていれば、運転者はまとめて複数の危険箇所情報と危険情報を知ることができるため、自分の運転傾向や、危険箇所が集中している地域について知ることができる。
【0021】
ところで、上述した危険運転判定手段としての機能や報知制御手段としての機能をプログラムによって実現してもよい。このようなプログラムを、運手支援装置が内蔵するコンピュータに実行させれば、上述した運転支援装置と同様の効果を奏する。また、プログラムはネットワーク等を用いて流通させることも可能である上、運転支援装置におけるプログラムの入れ替えは、部品の入れ替えに比較して容易である。したがって、運転支援装置の機能向上を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。尚、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0023】
[構成の説明]
図1は、本発明の運転支援装置の機能が組み込まれたナビゲーション装置20の概略構成を示すブロック図である。
【0024】
ナビゲーション装置20は車両に搭載され、車両の現在位置を検出する位置検出器21と、利用者からの各種指示を入力するための操作スイッチ群22と、操作スイッチ群22と同様に各種指示を入力可能であってナビゲーション装置20とは別体となったリモートコントロール端末(以下、リモコンと称す)23aと、リモコン23aからの信号を入力するリモコンセンサ23bと、パケット通信網等に接続して外部と通信を行う外部通信機24と、地図データや音声データ等が記録された地図記憶媒体からデータを入力する地図データ入力器25と、地図や各種情報の表示を行うための表示部26と、各種のガイド音声等を出力するための音声出力部27と、利用者が発話した音声に基づく電気信号を出力するマイクロフォン28と、図示しない各種のECUやセンサ等と車内LANを介して通信を行う車内LAN通信部33と、上述した位置検出器21,操作スイッチ群22,リモコンセンサ23b,外部通信機24,地図データ入力器25,マイクロフォン28,車内LAN通信部33からの入力に応じて各種処理を実行し、外部通信機24,表示部26,音声出力部27,車内LAN通信部33を制御する制御部29とを備えている。
【0025】
位置検出器21は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの電波を図示しないGPSアンテナを介して受信してその受信信号を出力するGPS受信機21aと、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロスコープ21bと、車両の前後方向の加速度等から走行した距離を検出するための距離センサ21cとを備えている。そして、これら各センサ等21a〜21cからの出力信号に基づいて制御部29が、車両の位置,方位,速度等を算出する。なお、GPS受信機21aからの出力信号に基づいて現在位置を求める方式は様々な方式があるが、単独測位方式、相対測位方式の何れであってもよい。
【0026】
操作スイッチ群22は、表示部26の表示面と一体に構成されたタッチパネル及び表示部26の周囲に設けられたメカニカルなキースイッチ等から構成される。尚、タッチパネルと表示部26とは積層一体化されており、タッチパネルには、感圧方式,電磁誘導方式,静電容量方式,あるいはこれらを組み合わせた方式など各種の方式があるが、その何れを用いてもよい。
【0027】
外部通信機24は、路側に設置された光ビーコンや電波ビーコン等を介して情報センタから事故情報や渋滞情報や天候情報や規制情報等を取得する。
地図データ入力器25は、図示しない地図データ記憶媒体(例えばハードディスクやDVD−ROM等)に記憶された各種データを入力するための装置である。地図データ記憶媒体には、地図データ(ノードデータ、リンクデータ、コストデータ、背景データ、道路データ(幅員、道路種別、交通規制等のデータ)、名称データ、マークデータ、交差点データ、施設のデータ等)、案内用の音声データ、音声認識データ、理想的な運転操作情報(ハンドル操作、ブレーキ操作、アクセル操作等の情報)、理想的な走行状態(走行速度や、加減速度合いや、トラクション状態や、操舵角情報、車道における走行位置等)が記憶されている。なお、地図データ記憶媒体からこれらのデータを入力する代わりに、通信ネットワークを介してこれらのデータを入力するようになっていてもよい。
【0028】
表示部26は、カラー表示装置であり、液晶ディスプレイ,有機ELディスプレイ,CRTなどがあるが、その何れを用いてもよい。表示部26の表示画面には、位置検出器21にて検出した車両の現在位置と地図データ入力器25より入力された地図データとから特定した現在地を示すマーク、目的地までの誘導経路、名称、目印、各種施設のマーク等の付加データとを重ねて表示することができる。また、施設のガイド等も表示できる。
【0029】
音声出力部27は、地図データ入力器25より入力した施設のガイドや各種案内の音声を出力することができる。
マイクロフォン28は、利用者が音声を入力(発話)するとその入力した音声に基づく電気信号(音声信号)を制御部29に出力するものである。利用者はこのマイクロフォン28に様々な音声を入力することにより、ナビゲーション装置20を操作することができる。
【0030】
車内LAN通信部33は、図示しない各種のECU(エンジンECU、AT−ECU、VSC(Vehicle Stability Control)−ECU、車内監視カメラECU等)やセンサ(ワイパーセンサ、舵角センサ、方向指示器センサ、ホーンセンサ等)と車内LANを介して通信を行う。
【0031】
制御部29は、CPU,ROM,RAM,SRAM,I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいて各種処理を実行する。例えば、位置検出器21からの各検出信号に基づき座標及び進行方向の組として車両の現在位置を算出し、地図データ入力器25を介して読み込んだ現在位置付近の地図等を表示部26に表示する現在位置表示処理や、地図データ入力器25に格納された地図データと、操作スイッチ群22やリモコン23a等の操作に従って設定された目的地とに基づいて現在位置から目的地までの最適な経路を算出する経路算出処理や、その算出した経路を表示部26に表示させたり音声出力部27に音声として出力させることにより経路を案内する経路案内処理等を実行する。
【0032】
[動作の説明]
次に、制御部29が実行する各種処理について説明する。なお、現在位置を表示する現在位置表示処理や、目的地までの最適な経路を算出する経路算出処理や、目的地までの経路を案内する経路案内処理等の、ナビゲーション装置としての一般的な処理については説明を省略する。
【0033】
(1)走行情報記録処理
まず、走行情報記録処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。走行情報記録処理は、ナビゲーション装置20への電力供給が開始された際に実行が開始される。
【0034】
制御部29は、走行情報記録処理の実行を開始すると、まず、車両の現在位置が記録開始地点であるか否かを判定する(S110)。この「記録開始地点」というのは、予め運転者によって設定された地点であり、その地点を示す座標が制御部29のSRAMに記憶されている。なお、ユーザによって操作スイッチ群22の特定のスイッチが操作されたときの現在位置を、記録開始地点として扱ってもよい。
【0035】
S110において、車両の現在位置が記録開始地点であると判定した場合は(S110:Yes)、S120へ処理を移行し、車両の現在位置が記録開始地点でないと判定した場合は(S110:No)、本ステップ(S110)にとどまる。
【0036】
S120では、走行情報の記録を開始する。この「走行情報」というのは、車両の走行状態に関する情報(例えば、走行速度、加減速度合い、トラクション情報、操舵角情報、車道における走行位置)や、運転操作に関する情報(ハンドル操作、アクセル操作、ブレーキ操作、シフト操作、ウィンカー操作等)や、運転操作以外の運転者の動作情報(オーディ装置に対する操作や、シガライターに対する操作や、ウィンドウ開閉スイッチに対する操作や、よそ見や、居眠り等)や、車両の外部環境に関する情報(例えば、天候や、渋滞情報、規制情報、日時情報等)や、現在位置情報である。これらの情報のうち、運転操作に関する情報と運転操作以外の運転者の動作情報とは、車内LAN通信部33を介して各種のECUやセンサ等から取得する。また、車両の外部環境に関する情報は、外部通信機24を介して情報センタから取得する。また、走行情報の記録先は、制御部29のSRAMである(ナビゲーション装置20にハードディスク等の外部記憶装置を接続してそれらを記録先として利用してもよい)。
【0037】
続くS130では、車両の現在位置が記録終了地点であるか否かを判定する。この「記録終了地点」というのは、予め運転者によって設定された地点であり、その地点を示す座標が制御部29のSRAMに記憶されている。なお、運転者に操作スイッチ群22の特定のスイッチが操作されたことによって、車両の現在位置が記録終了地点になったと判定するようになっていてもよい。
【0038】
S130において、車両の現在位置が記録終了地点であると判定した場合は(S130:Yes)、S140へ処理を移行し、車両の現在位置が記録終了地点でないと判定した場合は(S130:No)、本ステップ(S130)にとどまる。
【0039】
S140では、走行情報の記録を終了し、上述したS110へ処理を戻す。
(2)走行情報評価処理
次に、走行情報評価処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。走行情報評価処理は、運転者によって操作スイッチ群22の特定のスイッチが操作された際に実行が開始される。なお、上述した走行情報記録処理におけるS140のステップが実行されたことを契機に、走行情報評価処理の実行が開始されるようになっていてもよい。
【0040】
制御部29は、走行情報評価処理の実行を開始すると、まず、走行情報をSRAMから読み出し、RAMに展開する(S210)。
続いて、運転評価に必要な情報を地図データ入力器25を介して地図データ記憶媒体から取得し、RAMに展開する(S215)。ここで言う「運転評価に必要な情報」というのは、後述するステップで行う運転評価に必要な情報(S210で読み出した走行情報は除く)を意味する。具体的には、理想的な運転操作情報(ハンドル操作、ブレーキ操作、アクセル操作等の情報)、理想的な走行状態(走行速度や、加減速度合いや、トラクション状態や、操舵角情報、車道における走行位置等)である。
【0041】
続いて、運転評価を行う(S220)。この「運転評価」というのは、RAMに展開した走行情報や、地図データ入力器25を介して取得した理想的な運転操作情報や理想的な走行状態情報や、外部通信機24を介して情報センタから得られる情報等に基づいて、安全性や乗員にとっての快適性の観点で評価を行うことである。具体的には、主に、車両の走行状態に関する情報(走行情報を構成する情報の一つ)と、理想的な走行状態情報とを比較してその乖離度合いを求めることや、運転操作に関する情報(走行情報を構成する情報の一つ)と、理想的な運転操作情報とを比較してその乖離度合いを求めることによって行う。また、これらの乖離度合いや、その他の情報(運転操作以外の運転者の動作情報、車両の外部環境に関する情報)に基づいて、例えば、急ブレーキが発生した地点、横滑りが発生した地点、車両がふらついた地点、交通規制が守られなかった地点、運転者がよそ見をした地点等を抽出する。
【0042】
続くS230では、S220での運転評価により、危険運転状態が発生した箇所に関する情報(位置特定情報と、危険運転の種別)を制御部29のSRAMに記憶する。
続くS240では評価結果を報知するか否かを運転者へ問い合わせる。具体的には、表示部26に「運転評価結果を報知しますか?」というようなメッセージを表示させ、操作スイッチ群22の特定ボタンが押下させるのを監視することによって実現する。この結果、運転者は評価結果の報知を望んでいると判定した場合は(S240:Yes)、S250へ処理を移行し、運転者は評価結果の報知を望んでいないと判定した場合は(S240:No)、本処理(走行情報評価処理)を終了する。
【0043】
S250では、評価結果を報知し、本処理(走行情報評価処理)を終了する。なお、報知方法としては、運転者が注意すべき箇所を行程表と共に表示部26に表示させることによって行う。
【0044】
ここで、表示部26に表示させる評価結果の具体例について図4の画面例を用いて説明する。
制御部29は、図4に示すように表示部26へ、上から1段目に車速の推移を折れ線グラフにて表示させ、2段目に経路ポイント(例えば、出発地や、施設名や、交差点名や、交通障害地点や、右左折地点等)を表示させる。そして、その下に表形式で、経路時間、平均速度、急ブレーキ有無、横滑り有無、その他の危険発生有無等を表示させる。
【0045】
このような評価結果を表示部26に表示させると、本処理(走行情報評価処理)を終了する。
(3)警告処理
次に、警告処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。警告処理は、ナビゲーション装置20への電力供給が開始された際に実行が開始される。
【0046】
制御部29は、警告処理の実行を開始すると、危険運転状態が発生した箇所に関する情報をSRAMから読み出し、危険運転状態が発生した箇所に車両が接近したか否かを判定する(S310)。ここで言う「接近した」というのは、危険運転状態が発生した箇所の所定距離前(例えば100m)の地点に到達したことや、危険運転状態が発生した箇所まで所定時間(例えば10秒)の地点に到達したことを意味する。
【0047】
このS310において、危険運転状態が発生した箇所に車両が接近したと判定した場合は(S310:Yes)、S320へ処理を移行し、危険運転状態が発生した箇所に車両が接近していないと判定した場合は(S310:No)、本ステップ(S310)にとどまる。
【0048】
S320では、危険運転状態が発生した箇所に近いことと、その危険運転状態の内容について運転者へ報知する。具体的な報知方法は、危険の内容やその危険を避けるために必要な操作を示したメッセージを表示部26へ表示させる。また、そのメッセージを音声出力部27から出力させる。これらの報知を終えると、上述したS310へ処理を戻す。
【0049】
ここで、表示部26へ表示させるメッセージの具体例について図6の説明図を用いて説明する。制御部29は、図6に示すように表示部26へ、現在位置付近の地図と、車両の位置を示すアイコン51と、吹き出し52とを表示させる。なお、吹き出し52には「急ブレーキ注意!」というメッセージが記され、また、吹き出し52の吹き出し点は、そのメッセージに対応する地点となっている。
【0050】
[実施形態の効果]
このようなナビゲーション装置20によれば、危険箇所(危険運転状態が発生した箇所)へ車両が接近した際に、危険情報(危険運転状態の種類を示す)が報知されるため、運転者は、その危険箇所について失念していても危険箇所の存在を知ることができる。つまり、運転者が認知しておかなければならない危険箇所を減らすことができ、運転者の負担を軽減することができる。また、ナビゲーション装置20を複数の運転者で利用すれば、他の運転者が危険運転状態を発生させた箇所へ、別の運転者の運転する車両が接近した際にも危険情報が報知される。したがって、より安全性が高まる。
【0051】
また、制御部29は、実際の車両の走行状態に関する情報と理想走行状態情報とを比較すること、または、実際の運転操作に関する情報と理想運転操作情報とを比較することによって運転評価を行うようになっているため、客観的な評価を行うことができる。
【0052】
また、制御部29は、外部通信機24を介して取得した車両の外部環境に関する情報(例えば、事故情報や渋滞情報や天候情報や規制情報等)も用いて運転評価を行うようになっているため、より実情に合った判定を行うことができる。
【0053】
また、制御部29は、車内LAN通信部33を介して取得した、運転操作以外の運転者の動作情報(オーディ装置に対する操作や、シガライターに対する操作や、ウィンドウ開閉スイッチに対する操作や、よそ見や、居眠り等)も用いて運転評価を行うようになっているため、より実情にあった判定を行うことができる。
【0054】
また、制御部29は、運転評価の結果を表示部26に表示させるようになっている。すなわち、危険運転状態が発生した箇所をまとめて表示させるようになっている。このため、運転者は自分の運転傾向や危険箇所が集中している地域について知ることができる。
【0055】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、走行情報評価処理は運転者によって操作スイッチ群22の特定のスイッチが操作された際に実行が開始され、その処理の中で運転評価及び危険運転状態が発生した箇所の情報の登録が行われるようになっているが(S220,S230)、走行情報記録処理の中でこれらを実行するようになっていてもよい。つまり、走行情報の取得と同時に(リアルタイムに)運転評価等を行うようになっていてもよい。
【0056】
このようになっていれば、別途、運転評価等を行うための時間が不要となり、運転終了後に運転者に即座に運転評価結果を提供することができる。
(2)走行情報評価処理における運転評価の際(S220)、予め記憶しておいた過去の同一地点の走行情報や、過去の運転評価の結果を利用して運転評価を行うようになっていてもよい。このようになっていれば、より適切な評価を行うことができる。
【0057】
(3)走行情報評価処理において危険運転状態が発生した箇所の情報を登録する際(S230)、時間帯や出発時間などの情報も登録しておき、それらの情報も加味して警告処理におけるS310の判定を行うようになっているとよい。つまり、危険運転状態が発生した箇所の情報を条件付きで登録しておき、その条件も加味して警告処理を行うようになっているとよい。
【0058】
このようになっていれば、より適切に警告を行うことができる。
[特許請求の範囲との対応]
上記実施形態の説明で用いた用語と、特許請求の範囲に記載した用語との対応を示す。
【0059】
表示部26及び音声出力部27が報知手段に相当し、制御部29のSRAMが記憶手段に相当し、位置検出器21が現在位置情報取得手段に相当し、車内LAN通信部33が走行状情報取得手段、運転操作情報取得手段及び運転者動作情報取得手段に相当する。
【0060】
また、地図データ入力器25が理想走行状態情報取得手段及び理想運転操作情報取得手段に相当し、制御部29が危険運転判定手段及び報知制御手段に相当し、外部通信機24が環境情報取得手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】走行情報記録処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】走行情報評価処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】表示部に表示させる評価結果画面の一例である。
【図5】警告処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】表示部に表示させる警告画面の一例である。
【符号の説明】
【0062】
20…ナビゲーション装置、21…位置検出器、21a…GPS受信機、21b…ジャイロスコープ、21c…距離センサ、22…操作スイッチ群、23a…リモコン、23b…リモコンセンサ、24…外部通信機、25…地図データ入力器、26…表示部、27…音声出力部、28…マイクロフォン、29…制御部、33…車内LAN通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者へ情報を報知可能な報知手段と、
情報を記憶可能な記憶手段と、
車両の現在位置に関する情報である現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、
車両の走行状態に関する情報である走行状態情報を取得する走行状態情報取得手段と、
前記走行状態情報取得手段が取得した前記走行状態情報に基づいて危険運転状態が発生したか否かを判定し、危険運転状態が発生したと判定した場合、その危険運転状態が発生したときに前記現在位置情報取得手段が取得した前記現在位置情報を危険箇所情報として前記記憶手段に記憶させ、さらに、危険運転状態の種類を示す危険情報を前記危険箇所情報に対応させて前記記憶手段に記憶させる危険運転判定手段と、
前記現在位置情報取得手段により取得された前記現在位置情報と、前記記憶手段に記憶された前記危険箇所情報とに基づいて、前記危険運転状態が発生した場所への車両の接近を検知し、当該接近の事実と前記記憶手段に記憶された前記危険情報とを前記報知手段に報知させる報知制御手段と、
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
さらに、理想的な車両の走行状態に関する情報である理想走行状態情報を取得する理想走行状態情報取得手段を備え、
前記危険運転判定手段は、前記判定を行う際、前記走行状態情報取得手段が取得した前記走行状態情報と、前記理想走行状態情報取得手段が取得した前記理想走行状態情報とを比較して前記判定を行うこと、
を特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
運転者へ情報を報知可能な報知手段と、
情報を記憶可能な記憶手段と、
車両の現在位置に関する情報である現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段と、
運転者の運転操作に関する情報である運転操作情報を取得する運転操作情報取得手段と、
前記運転操作情報取得手段が取得した前記運転操作情報に基づいて危険運転状態が発生したか否かを判定し、危険運転状態が発生したと判定した場合、その危険運転状態が発生したときに前記現在位置情報取得手段が取得した前記現在位置情報を危険箇所情報として前記記憶手段に記憶させ、さらに、危険運転状態の種類を示す危険情報を前記危険箇所情報に対応させて前記記憶手段に記憶させる危険運転判定手段と、
前記現在位置情報取得手段により取得された前記現在位置情報と、前記記憶手段に記憶された前記危険箇所情報とに基づいて、前記危険運転状態が発生した場所への車両の接近を検知し、当該接近の事実と前記記憶手段に記憶された前記危険情報とを前記報知手段に報知させる報知制御手段と、
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の運転支援装置において、
さらに、理想的な運転操作に関する情報である理想運転操作情報を取得する理想運転操作情報取得手段を備え、
前記危険運転判定手段は、前記判定を行う際、前記運転操作情報取得手段が取得した前記運転操作情報と、前記理想運転操作情報取得手段が取得した前記理想運転操作情報とを比較して前記判定を行うこと、
を特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の運転支援装置において、
さらに、車両の外部環境に関する情報である環境情報を取得する環境情報取得手段を備え、
前記危険運転判定手段は、前記判定を行う際、前記環境情報取得手段が取得した前記環境情報も加味して前記判定を行うこと、
を特徴とする運転支援装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5何れかに記載の運転支援装置において、
さらに、運転者の運転操作以外の動作に関する情報を運転者動作情報として取得する運転者動作情報取得手段を備え、
前記危険運転判定手段は、前記判定を行う際、前記運転者動作情報取得手段が取得した前記運転者動作情報も加味して前記判定を行うこと、
を特徴とする運転支援装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れかに記載の運転支援装置において、
前記危険運転判定手段は、前記判定に必要な情報を前記記憶手段に記憶させておき、所定のタイミングで、前記記憶手段に記憶させておいた前記判定に必要な情報を用いて前記判定を行うこと、
を特徴とする運転支援装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載の運転支援装置において、
前記報知制御手段は、さらに、前記所定のタイミングで、前記記憶手段に記憶させておいた複数の前記危険箇所情報と前記危険情報とをまとめて前記報知手段に報知させること、
を特徴とする運転支援装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1〜請求項8の何れかに記載の運転支援装置における前記危険運転判定手段として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1〜請求項8の何れかに記載の運転支援装置における前記報知制御手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−108926(P2007−108926A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297670(P2005−297670)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】