説明

運転者疲労度推定装置、運転者疲労度推定方法

【課題】コスト増を抑制して運転者が疲労したか否かをより正確に判定し、また、運転者の疲労をより正確に検出することができる運転者疲労度推定装置及び運転者疲労度推定方法を提供すること。
【解決手段】連続運転時間が許容運転時間を超えると、運転者の疲労軽減措置を行う運転者疲労度推定装置100において、地域ごとに高疲労地域を登録した疲労マップを記憶する疲労マップ記憶手段13と、疲労マップを参照して決定した、高疲労地域を運転した高疲労運転時間に応じて疲労度を算出する疲労度算出手段22と、疲労度算出手段22が算出した疲労度に応じて、許容運転時間を変更する基準変更手段23と、連続運転時間が許容運転時間を超えると運転者の疲労軽減措置を行うタイミングであると判定する判定手段24と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者の疲労を推定する運転者疲労度推定装置及び運転者疲労度推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の疲労が車両操作に悪影響を及ぼさないよう一般には連続運転時間に目安が設けられており、例えば2時間〜4時間連続して運転した場合には休息を取ることが推奨されている。この休息を取るべきタイミングであることを運転者に報知するため、例えばナビゲーション装置は、所定時間毎に画像と音声で休息の取得を促すメッセージを提供することができるようになっている。
【0003】
この所定時間の間、運転者が常に運転しているとは限らないので、運転者の疲労をより正確に把握する指標が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、車両が走行している時間のみを連続運転時間に計上する連続運転警告装置が記載されている。
【0004】
しかしながら、連続運転時間は、運転者の疲労に大きな影響を及ぼす要因ではあるものの、運転者の疲労は連続運転時間のみに依存するものでないことが知られている。この点について、生理データを用いて運転者の疲労を検出する精神状態検出装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2記載の精神状態検出装置は、ナビゲーション装置から取得された走行継続時間及び走行道路情報等の情報を、計測された運転者の心拍数に乗算して運転者の疲労度を推定する。
【0005】
また、目的地までの経路における信号機の数、カーブ情報、渋滞情報及び右左折回数、に基づき運転者の疲労を予測するナビゲーション装置が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3記載のナビゲーション装置によれば、運転者の疲労に影響を及ぼしやすい渋滞度や右左折の数から疲労の少ない経路を選択することができる。
【特許文献1】特開平5−67263号公報
【特許文献2】特許第3512493号公報
【特許文献3】特開2006−17678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2記載の運転精神状態検出装置では、運転者の疲労度を測定するために心拍等を検出する必要があるため、コスト増や車両重量増をもたらすという問題がある。また、特許文献2記載の運転精神状態検出装置は、連続運転時間との関係が考慮されていないので、上記の所定時間(2〜4時間程度)よりも極端に短い時間又は長い時間で、休息を取るよう助言されるおそれがある。
【0007】
また、特許文献3記載のナビゲーション装置は、信号機の数、カーブ情報、渋滞情報及び右左折回数から疲労を検出するが、これ以外の運転者の疲労に大きな影響を与える要因が考慮されていないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、コスト増を抑制して運転者が疲労したか否かをより正確に判定し、また、運転者の疲労をより正確に検出することができる運転者疲労度推定装置及び運転者疲労度推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、連続運転時間が許容運転時間を超えると、運転者の疲労軽減措置を行う運転者疲労度推定装置において、地域ごとに高疲労地域を登録した疲労マップを記憶する疲労マップ記憶手段と、疲労マップを参照して決定した、高疲労地域を運転した高疲労運転時間に応じて疲労度を算出する疲労度算出手段と、疲労度算出手段が算出した疲労度に応じて、許容運転時間を変更する基準変更手段と、連続運転時間が許容運転時間を超えると運転者の疲労軽減措置を行うタイミングであると判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、走行した地域に応じて疲労度を算出し、疲労度に応じて連続運転時間と比較される許容運転時間を変更するので、走行した地域に応じて疲労したか否かを正確に判定できるようになる。
【0011】
また、本発明の一形態において、運転者が運転に慣れた道路か否かを道路毎に登録した走行済み道路情報を参照し、運転に慣れてない道路を走行したことを検出する初走行道路判定手段を有し、初走行道路判定手段が運転に慣れてない道路を走行したことを検出した場合、疲労度算出手段は、該道路を運転した時間を前記高疲労運転時間に計上する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、初めて通る道路などを高疲労運転時間に計上するので、運転者の疲労度をより正確に検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
コスト増を抑制して運転者が疲労したか否かをより正確に判定し、また、運転者の疲労をより正確に検出することができる運転者疲労度推定装置及び運転者疲労度推定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【0015】
〔疲労の考え方〕
始めに、本実施形態の運転者疲労度推定装置100における、疲労の考え方について説明する。図1(a)は運転者の疲労と連続運転時間の関係を模式的に示す図の一例である。運転者の疲労の大きさを疲労度と称すれば、一般には運転者の疲労度は連続運転時間で規定され、連続運転時間が所定時間(例えば、2時間。以下、許容運転時間という)になると許容疲労度に到達し休息が必要になったと判断される。このように許容疲労度を一律に設定した場合、図示するように運転時間に対し一様に比例して運転者の疲労度は増大することになる。
【0016】
しかしながら、運転者の疲労度は、走行する走行状況に大きく影響されると考えられる。図1(b)は、運転者の疲労度が大きく増大しやすい走行状況の一例を示す。例えば、渋滞した道路では先行車両との車間距離に応じてアクセル操作及びブレーキ操作を繰り返す必要があり、立体道路では進路の判断や車線変更、他車両の割込み等が頻発し、また、都市部では信号機による停止・発進の繰り返しや信号待ち、歩行者の横断待ち等が頻発する。このため、図1(b)に示したような走行状況では運転者は疲労を感じやすく、疲労度が増大しやすいと考えられる。
【0017】
これに対し、田園地帯や山間部(カーブの少ない)等では、運転者は疲労を感じにくく、運転者の疲労度は時間に対し一様に比例して増大するとしてよい。
【0018】
したがって、渋滞等の疲労度が増大しやすい走行状況(以下、高疲労地帯という)と、田園地帯等の疲労度が増大しにくい走行状況(以下、低疲労地帯という)とが、混在する領域を走行した場合、図1(a)に示すよう、高疲労地帯で疲労度が大きく増大し(傾きが大きくなり)、許容運転時間になる前に運転者の疲労度が許容疲労度を超えることになる(以下、運転者の疲労度が許容疲労度を超えた時間を許容疲労度到達時間という)。
【0019】
本実施形態の運転者疲労度推定装置100は、運転者の疲労度が許容疲労度を超えた時に、運転者の疲労軽減措置を行う。
【0020】
具体的には後述するが、高疲労地帯の疲労度の増大のしやすさが同じであるとすると、連続運転時間の減少分(許容運転時間−許容疲労度到達時間)は、高疲労地帯を走行した時間に応じて定まるとしてよい。
【0021】
そこで、運転者疲労度推定装置100は、全走行時間における高疲労地帯の走行時間の割合を算出し、この割合に応じて許容疲労度到達時間を算出する。したがって、全走行時間における高疲労地帯の走行時間の割合に応じて、見かけ上の許容運転時間が減少することになる。
【0022】
なお、疲労軽減措置とは、例えば、休息を取るように助言すること、芳香剤の香りを車内に漂わせること、クラシック音楽を流すこと、パーキングエリアまでの経路を案内すること等、運転者の疲労を軽減する種々の措置をいう。疲労軽減措置は各運転者に共通でなくてもよく、各運転者が所望の疲労軽減措置を設定しておくことができる。以下では、休息を取るように助言することを例に説明する。
【0023】
〔運転者の疲労度に初走行道路が与える影響〕
ところで、上記の渋滞した道路、立体道路、都市部の他に、運転者が初めて走行する道路(以下、初走行道路という)も運転者に大きな疲労を感じさせる。これは運転者が先の状況を予測できないため、急な操舵や車線変更などの車両操作が必要であったり、精神的なプレッシャーによるものであると考えられる。本実施形態の運転者疲労度推定装置100は、この初走行道路を検出して、高疲労地帯と同様に扱うことで、より正確に運転者の疲労度を検出することを可能にする。
【実施例1】
【0024】
図2は、運転者疲労度推定装置100のブロック図の一例を示す。運転者疲労度推定装置100は、所定のECU(Electronic Control Unit)により制御されるが、図2ではナビゲーション装置との親和性を考慮してナビECU20が運転者疲労度推定装置100を制御するものとした。車載されるECUであればどのECUが運転者疲労度推定装置100を制御してもよい。
【0025】
ナビECU20は、CAN(Controller Area Network)等の車載LANや専用線を介してGPS(Global Positioning System)受信機11、VICS(Vehicle Information and Communication System)受信機12、地図DB(Data Base)13、ディスプレイ14及びスピーカ15が接続されている。
【0026】
GPS受信機11は、複数のGPS衛星からの電波の到達時間に基づき車両の位置(緯度・経度・標高)を決定する。また、図示しないが、ナビECU20は、車速センサから車速情報を、ジャイロセンサから進行方向情報をそれぞれ受信しており、GPS受信機11が検出した位置を基準に、ジャイロセンサが検出する進行方向に車速情報に含まれる走行距離を累積して、車両の位置を高精度に推定する。なお、車速センサは、例えば、車両の各輪に備えられたロータの円周上に定間隔で設置された凸部が通過する際の磁束の変化をパルスとして計測して、単位時間あたりのパルス数に基づき各輪毎に車輪速を計測する。ジャイロセンサは、例えばマイクロマシニングで形成された震動片型ジャイロセンサであり、コリオリ力の作用により変化する震動片(電極間)の距離に基づき、車両がヨーイング方向又はピッチング方向に回転する時の角速度を検知する。
【0027】
VICS受信機12は、VICSセンタが配信するVICS情報を受信する。VICSセンタは、FM多重放送、光ビーコン及び電波ビーコンの3つのメディアでVICS情報を配信する。VICS受信機12は、FM放送に多重された電波、電波ビーコン及び光ビーコンを復調しベースバンド信号に戻した後、信号処理して元のデジタル信号に復号することでVICS情報を受信する。それぞれのメディア毎に、配信するVICS情報の種類やカバーするエリアが異なるが、VICS情報は、例えばVICSセンターが区分したVICSリンクに対応づけられた、渋滞情報、リンク旅行時間、交通規制情報、駐車場情報、等である。本実施形態では、車両が走行した道路の混雑状態を疲労度を算出するための一要因とするので、VICS情報のうち混雑に関わる渋滞情報やリンク旅行時間を抽出する。
【0028】
また、ナビECU20は、VICSだけでなくプローブカーセンタ(プローブカーから収集したプローブ情報から交通情報を生成し配信するサーバ)から交通情報を受信してもよい。VICSセンタが配信するVICS情報は主要な幹線道路のものに限られているのに対し、プローブカーセンタが配信する交通情報は車両が通行する道路を全て含みうるので、より広範囲の渋滞情報を受信できる。
【0029】
地図DB13はハードディスクやフラッシュメモリなどで構成され、道路網を形成するための道路地図情報が記憶されている。道路地図情報は、実際の道路網に対応したノードと、ノードとノードを結ぶリンクとを対応づけるテーブル状のデータベースである。ノードテーブルは、ノードの番号、座標、そのノードから流出するリンク数及びそれらのリンク番号を有する。また、リンクテーブルは、リンクの番号、リンクを構成する始点ノードと終点ノード、リンク長、ノードに対する方位を有する。ノード番号及びリンク番号は、互いに重複しないように定められており、ノード番号とリンク番号をそれぞれ辿ることで道路網が形成される。なお、地図DB13には、各道路毎に一般道、高速道路等の道路種別、及び、ガソリンスタンド等の施設情報(ポイントデータ)が記憶されている。
【0030】
そして、本実施例の地図DB13には高疲労地帯が記憶されている。図3(a)は、高疲労地帯を示す道路地図を模式的に説明する図である。図示するように、道路地図を緯度・経度線でメッシュ状に分割し、各メッシュ毎に高疲労地帯か低疲労地帯かが登録されている(以下、疲労マップという)。図では、斜線部が高疲労地帯である。したがって、車両の位置を疲労マップに当てはめることで、高疲労地帯を走行しているのか低疲労地帯を走行しているのかを判別できる。なお、図示するようなメッシュ状の区分は、国土をメッシュ状に分割して扱うために定められた1次メッシュ〜3次メッシュと同じ区分を利用することができる。疲労マップは予め地図DB13に記憶されていてもよいし、所定のサーバからダウンロードしてもよい。
【0031】
ところで、立体道路のような敷設物は一年中(常に)疲労度を増大させる走行状況となるので疲労マップ上に固定であるが、渋滞地域はある程度固定的であるものの時間と共に遷移するし、都市部が高疲労地帯であるのは昼間の混雑を考慮したものであるので夜間は高疲労地帯とは限らない。また、逆に、低疲労地帯の田園部は、夜間になると敷設された照明の数が少ないなどの理由で高疲労地帯になることがあり、同様に、山間部は、雨天や積雪があると極端に走行しにくくなり高疲労地帯となることがある。また、週末になると必ず渋滞する地域があったり、夏季や冬季になるとレジャーの旅行者のため渋滞する地域がある。
【0032】
したがって、疲労マップは固定でなく、時間帯、曜日、季節、天候、等に応じてそれぞれ切り替えて使用することが好ましい。なお、渋滞地域はVICS情報等により随時更新できるので、予め疲労マップに記憶していなくてもよく、交通情報を取得する度に疲労マップに反映すればよい。
【0033】
図3(b)は、時間帯等に応じてそれぞれ定められた疲労マップの一例を示す。かかる疲労マップを参照することにより運転者疲労度推定装置100は、車両がそのメッシュを通過する時間帯や天候等に応じて、高疲労地帯か低疲労地帯かを柔軟に判定することができる。
【0034】
図3(a)又は(b)の如き疲労マップは、高疲労地帯になりうる立体道路などの道路形状、山間部などの地域をメッシュ毎に道路地図情報から読み出しておき、時間帯、曜日、季節、天候に応じて、それぞれのメッシュが高疲労地帯か低疲労地帯かを決定することで生成できる。
【0035】
高疲労地帯となりうる道路形状や地域は、例えば、次のようなものである。
・立体道路
・複雑な交差点(例えば、4つ以上の道路が連結)
・急カーブ(例えば、事故多発地帯、所定の曲率半径以上)
・連続したカーブ
・山間部
・臨海部
いずれも、地図DB13に記憶された道路地図情報から読み出すことができる。このうち、立体道路、複雑な交差点、急カーブ、及び、連続したカーブを含むメッシュは常に高疲労地帯として疲労マップに登録される。また、山間部を含むメッシュは、夜間や降雪時には高疲労地帯として疲労マップに登録され、臨海部を含むメッシュは、雨天時には高疲労地帯として疲労マップに登録される。
【0036】
図2戻り、ディスプレイ14は、タッチパネルを搭載した液晶や有機ELなどのフラットパネルディスプレイであり、例えばセンタークラスタや2DIN収納部に収納されている。また、スピーカ15はアンプで増幅された音声を出力する音声の出力部であり、例えばドアの内部に開口部を車室側に向けて配置されている。ディスプレイ14及びスピーカ15は、運転者に許容疲労度到達時間になったことを報知するユーザインターフェイスとなる。なお、ディスプレイ14はタッチパネルを有し、ディスプレイ14の周囲やリモコン、音声入力部等と共に、乗員が操作を入力する入力部となる。
【0037】
〔疲労度の算出〕
図4は、ナビECU20の機能ブロック図の一例を示す。ナビECU20は、CPU、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、入出力インターフェイス、レジスタ、メモリ、及びCANインターフェイス等を備えたコンピュータの一形態である。そして、CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行するか、又は、ASIC等のハードウェアにより実現される、連続運転時間計測部21、疲労度算出部22、判定基準変更部23、助言判定部24及び初走行道路判定部25を有する。
【0038】
連続運転時間計測部21は、例えばIG(イグニッション)スイッチがオンされると連続運時間の計測を開始する。車速が所定値以上の場合にのみ連続運転時間に運転時間を計上してもよい。なお、「連続」運転時間であるので、例えばIGがオフにされると連続運転時間は初期化(ゼロになり)され、次にIGがオンになるとゼロから連続運転時間の計測を再開する。
【0039】
・初走行道路の検出
初走行道路は、原則的に、過去に走行したことのある道路以外の道路である。ナビECU20は、自車両の位置をマップマッチングにより道路地図上の道路(リンク)に対応づけているので、走行している道路、すなわち走行したことのある道路については既知となる。
【0040】
ところで、過去に走行した道路であっても、その後長い間走行しない道路は、運転者の慣れと言う点から判定すると初走行道路として扱うべきである。このため、本実施例では、道路毎に、走行の有無だけでなく走行日を記録し、走行日から所定期間が経過した道路は初走行道路とみなす。
【0041】
図5は、走行済み道路情報の一例を示す図である。走行済み道路情報は、例えば地図DB13のリンクテーブルに記録される。初走行道路判定部25は、走行した道路のリンク番号に対応づけて走行した走行日を記録する。
【0042】
また、走行済み道路情報にはその道路を過去に走行した回数が登録されている。初走行道路判定部25は、同じ道路を走行する毎に回数を1つずつ増大させ、かつ、最後の走行日から例えば数ヶ月経過すると1つずつ減少させる。このような計算により、運転者の学習の程度に相関する回数を記録することができる。また、走行済み道路情報に登録されていない道路は、走行したことがないか、走行したことがあっても走行してから数ヶ月以上経過している道路、言い換えれば運転に慣れていない道路となる。
【0043】
なお、走行した回数が大きい道路は、運転者が十分に走行状況を学習したとしてよいので、所定以上の回数(例えば、20回)走行した道路は、最後に走行した日から数ヶ月経過しても走行済み道路情報から消去しないように定めてもよい。これにより、例えば、自宅の周辺や勤務先までの道路のように、極めて頻繁に走行する道路については、長期の出張等により最後に走行した日から数ヶ月が経過しても初走行道路と判定されることを防止できる。
【0044】
車両の走行中、初走行道路判定部25は、道路毎に走行済み道路情報を参照して、初走行道路か否かの判定結果を疲労度算出部22に通知する。
【0045】
なお、本実施例では、道路毎に走行済みか否かを判定することとしたが、走行したことのない道路が含まれるメッシュを高疲労地帯として疲労マップに登録してもよい。メッシュの一部の道路を走行したことがある場合そのメッシュを高疲労地帯とするか否かは、例えば、そのメッシュの全道路数のうち走行したことのない道路が半数以上であれば、高疲労地帯とする。このように疲労マップに登録することで、初走行道路を走行状況と同様に扱うことができるようになる。
【0046】
疲労度算出部22は、全走行時間における高疲労地帯の運転時間(以下、高疲労運転時間という)の割合から疲労度を算出する。したがって、疲労度算出部22は、運転中、車両の位置に照らし合わせて疲労マップを参照し、高疲労地帯を走行している場合には、高疲労運転時間を計測する。
【0047】
同様に、疲労度算出部22は、初走行道路判定部25の通知に従い、初走行道路を運転中は高疲労運転時間を計測する。高疲労地帯と初走行道路が重複する場合は、いずれか一方の高疲労運転時間を計測すればよいが、高疲労地帯と初走行道路が重複することで疲労度がより増大しやすいことを考慮して、初走行道路の運転時間と高疲労地帯の運転時間を高疲労運転時間に重複して計上してもよい。
【0048】
図6は、疲労度の算出を模式的に説明する図の一例である。図6では、連続運転時間tのうち、a秒、b秒、c秒が高疲労運転時間である。この場合の疲労度は、次式で定義される(この疲労度は図1の疲労度と厳密に一致するものではない。)。
疲労度 = (a+b+c)/t ×100 … (1)
例えば、連続運転時間tが5400秒(90分)、a=600秒、b=300秒、c=100秒の場合、疲労度は18.5と算出される。
【0049】
〔判定基準の変更〕
判定基準変更部23は、疲労度に応じて判定基準(図1の許容運転時間)を可変に変更する。図1にて説明したように、許容運転時間(例えば、2時間)が、連続運転が許容される最大時間である。本実施例では、この許容運転時間を判定基準の一態様として、許容運転時間を疲労度に応じて変更する。許容運転時間は、疲労度に応じて短くなると考えられるので、例えば疲労度に応じた比率だけ許容疲労度到達時間を短くする。
許容疲労度到達時間 =
許容運転時間 × (1− 疲労度/100) …(2)
したがって、疲労度が18.5、許容運転時間が120分(2時間)の場合、許容疲労度到達時間は97.8分となる。このような許容疲労度到達時間の算出により、疲労度に応じて許容できる運転時間を決定でき、運転者が疲労しているか否かを判定できるようになる。
【0050】
なお、(2)式は一例であるので、例えば、疲労度を少なく(1/2〜1/3程度)して、疲労度が許容疲労度到達時間に与える影響を低減してもよいし、疲労度を大きく(1.1〜2倍程度)して、疲労度が許容疲労度到達時間に与える影響を増大してもよい。
【0051】
〔疲労の有無の判定〕
助言判定部24は、判定基準変更部23が変更した許容運転時間と、連続運転時間を比較して、連続運転時間≧許容運転時間(判定基準)の場合に、運転者に休息を取るべき疲労がたまったと判定する。これにより、ディスプレイ14及びスピーカ15の少なくとも一方から「休息を取りましょう」等のメッセージを出力して運転者に助言することができる。
【0052】
なお、助言判定部24は、助言する連続運転時間に助言最小値を設定している。運転開始当初から高疲労地帯のみを走行すると、許容疲労度到達時間がゼロになってしまうなど、連続して運転しうる時間が極端に短くなってしまうからである。このため、例えば、連続運転時間に助言最小値(例えば、60分〜90分)を定めておき、連続運転時間が助言最小値を超えた場合にのみ、判定基準変更部23が変更した許容運転時間(判定基準)と連続運転時間を比較する。したがって、この助言最小値未満で助言が発せられることはない。
【0053】
〔動作手順〕
図7は、運転者疲労度推定装置100が運転者の疲労度に応じて休息を取るよう助言する手順を示すフローチャート図の一例である。図7のフローチャート図は、例えばイグニッションがオンになるとスタートする。
【0054】
イグニッションがオンになると連続運転時間計測部21は連続運転時間の計測を開始する(S10)。また、疲労度算出部22は、高疲労地帯又は初走行道路のいずれかを走行している場合に高疲労運転時間を計測し、高疲労運転時間と連続運転時間とから式(1)により疲労度を算出する(S20)。そして、判定基準変更部23は、式(2)を用いて疲労度に応じて許容運転時間(判定基準)を変更する(S30)。
【0055】
ついで、助言判定部24は、連続運転時間が判定基準以上か否かを判定する(S40)。連続運転時間が判定基準未満の場合(S40のNo)、運転者の疲労度は許容疲労度に到達していないとしてよいので、ステップS10からの処理を繰り返す。
【0056】
連続運転時間が判定基準以上の場合(S40のYes)、運転者の疲労度が許容疲労度に到達していると判定して、助言判定部24はディスプレイ14又はスピーカ15の少なくとも一方から、運転者に休息するよう助言する(S50)。
【0057】
助言すると助言判定部24は、連続運転時間をリセット(ゼロに戻す)するよう連続運転時間計測部21に要求する(S60)。このリセットにより、連続運転時間はゼロから再度計測されることになる。
【0058】
以上説明したように、本実施例の運転者疲労度推定装置100は、走行した地域に応じて疲労しているか否かの判定基準を可変にすることができるので、疲労度に影響を与える走行状況を考慮して、正確な疲労判定を行うことができる。また、初めて運転する初走行道路が運転者の疲労度を増大させることを考慮して疲労度を算出するので、より正確な疲労度の算出が可能となる。
【実施例2】
【0059】
実施例1では運転者が疲労しているか否かの判定基準を変更したが、本実施例では判定基準を変更することなく、連続運転時間の算出方法を変更することで、走行状況に応じて正確な疲労判定を行う運転者疲労度推定装置100について説明する。なお、運転者疲労度推定装置100のブロック図は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0060】
図8(a)はナビECU20の機能ブロックの一例を、図8(b)は本実施例の重み付け運転時間の算出を模式的に説明する図の一例である。図8(a)に示すように、本実施例のナビECU20は判定基準変更部23を有さず、また、疲労度算出部22の代わりに重み付け運転時間算出部26を有する。
【0061】
〔重み付け運転時間の算出〕
重み付け運転時間算出部26は、高疲労地帯及び初走行道路を走行している運転時間に重み付けする。例えば図8(b)では、a秒、b秒、c秒が高疲労地帯及び初走行道路を走行している高疲労運転時間であるが、重み付け運転時間算出部26は、a秒、b秒及びc秒に重みづけする。
【0062】
具体的には、例えば、高疲労地帯及び初走行道路を走行している場合、高疲労運転時間をK倍(高疲労運転時間×K)すればよい。重み付け係数Kは1より大きい値で、例えば1.1〜4.0の間の値に定めることができる。
【0063】
連続運転時間6200秒(約103分)のうち、実施例1と同様にa秒、b秒、c秒の合計が1000秒であるとすると、重み付け運転時間は次のように算出できる。
重み付け運転時間=5200+1000×K
ここで、重み付け係数K=2とすると、重み付け運転時間=7200秒(120分)となるので、重み付け係数K=2とすれば連続運転時間が6200秒になると許容運転時間を超えることになり、実施例1と同程度の連続運転時間で休息を取るよう助言することができる。
【0064】
このように本実施例の重み付け運転時間算出部26は、高疲労地帯又は初走行道路を走行している場合、高疲労運転時間×重み付け係数Kを、高疲労地帯又は初走行道路を走行している高疲労運転時間とする。
【0065】
なお、連続運転時間には高疲労地帯又は初走行道路を運転した時間が含まれているので、連続運転時間から高疲労地帯又は初走行道路を運転した時間を除いた低疲労運転時間を算出することが好ましい。これにより、重み付け運転時間の算出が容易になる。
重み付け運転時間=低疲労運転時間 + 高疲労運転時間×重み付け係数K …(3)
重み付け係数Kは、高疲労地帯又は初走行道路で可変に設定でき、さらに、高疲労地帯を細分化して立体道路や渋滞した道路等で重み付け係数Kを可変に設定できるので、より柔軟に運転者の重み付け運転時間を算出することができる。また、初走行道路でない道路(走行済み道路情報に登録された道路)であっても、最後に走行した日時からの経過時間又は過去に走行した回数に応じて重み付け係数Kを設定することができる。
【0066】
〔疲労の有無の判定〕
そして、本実施例の助言判定部24は、重み付け運転時間と許容運転時間とを比較して、重み付け運転時間≧許容運転時間 となると、運転者の疲労度が許容疲労度に到達していると判定する。
【0067】
本実施例では、高疲労地帯又は初走行道路を走行するほど直接的に許容される連続運転時間が短くなるので、例えば算出された重み付け運転時間をそのまま運転者に提供しても、運転者にとって理解の容易な指標となる。
【0068】
〔動作手順〕
図9は、運転者疲労度推定装置100が運転者の重み付け運転時間に応じて休息を取るよう助言する手順を示すフローチャート図の一例である。図9のフローチャート図は、例えばイグニッションがオンになるとスタートする。
【0069】
イグニッションがオンになると連続運転時間計測部21は連続運転時間の計測を開始する(S10)。また、重み付け運転時間算出部26は、高疲労地帯又は初走行道路のいずれかを走行している場合に高疲労運転時間を計測し、低疲労地帯を走行している場合は低疲労運転時間を、それぞれ計測する(S21)。そして、重み付け運転時間算出部26は、式(3)から重み付け運転時間を算出する(S30)。
【0070】
ついで、助言判定部24は、重み付け運転時間が許容運転時間(判定基準)以上か否かを判定する(S41)。重み付け運転時間が判定基準未満の場合(S41のNo)、運転者の疲労度は許容疲労度に到達していないとしてよいので、ステップS10からの処理を繰り返す。
【0071】
重み付け運転時間が判定基準以上の場合(S41のYes)、運転者の疲労度が許容疲労度に到達していると判定して、助言判定部24はディスプレイ14又はスピーカ15の少なくとも一方から、運転者に休息するよう助言する(S50)。
【0072】
助言すると助言判定部24は、連続運転時間をリセット(ゼロに戻す)するよう要求する(S60)。このリセットにより、連続運転時間はゼロから再度計測されることになる。
【0073】
以上説明したように、本実施例の運転者疲労度推定装置100は、実施例1の効果に加え、運転者にとって理解の容易な指標により、運転者が疲労したか否かを判定することを可能にする。
【実施例3】
【0074】
実施例1及び2では、運転者疲労度推定装置100が予め疲労マップを予め記憶していることとしたが、本実施例では走行時に疲労度を増大させやすい道路か否かを判定しながら、疲労度を算出する運転者疲労度推定装置100について説明する。なお、運転者疲労度推定装置100のブロック図は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0075】
図10(a)はナビECU20の機能ブロックの一例を、図10(b)は本実施例の疲労度の算出を模式的に説明する図の一例である。なお、図10(a)において図4と同一部には同一の符号を付しその説明は小略する。
【0076】
図10(a)に示すように、本実施例のナビECU20は、判定基準変更部23を有さず、また、初走行道路判定部25の代わりに高疲労道路判定部27を有する。高疲労道路判定部27は、車両の位置情報に基づき地図DB13を参照しながら、道路(リンク)毎に高疲労をもたらす高疲労道路、例えば混雑状態、立体道路の有無、複雑な交差点の有無、急カーブの有無、連続したカーブの有無、及び、初走行道路か否か、を判定する。判定の方法や基準は実施例1と同様であるが、本実施例では実際に走行して高疲労道路か否かを判定するので、急カーブの有無を、例えば操舵角センサが検出する操舵角、ヨーレート等から判定することができる。また、メッシュのように広範囲にわたって高疲労をもたらすかどうかを定めた疲労マップでなく、道路毎に高疲労か否かを判定するので、より正確な疲労度が検出可能となる。
【0077】
そして、疲労度算出部22は、実施例1と同様に、全走行時間における高疲労道路の運転時間の割合から疲労度を算出する。したがって、疲労度算出部22は、高疲労道路判定部27の通知に従い、高疲労道路を運転中は高疲労運転時間を計測する。図10(b)では、連続運転時間tのうち、a秒、b秒、c秒が高疲労運転時間である。疲労度の算出式は式(1)と同じである。
【0078】
また、道路毎に高疲労道路か否かを判定するので、実施例2と同様に道路毎に高疲労運転時間に重み付けすることも可能である。したがって、より正確な疲労度を検出可能なだけでなく、道路毎に重み付け係数Kを変えることができ、柔軟に重み付け運転時間を算出することができる。
【0079】
〔疲労の有無の判定〕
本実施例の助言判定部24においても、実施例1の式(1)から算出された疲労度を式(2)に適用して判定基準を変更し、連続運転時間≧許容疲労度到達時間(判定基準)の場合に、運転者に休息を取るべき疲労がたまったと判定できる。また、実施例2と同様に、式(3)から重み付け運転時間を算出し、重み付け運転時間≧許容運転時間(判定基準)の場合に、運転者に休息を取るべき疲労がたまったと判定してもよい。
【0080】
また、助言判定部24は、式(1)から疲労度を算出し、疲労度と予め定めた判定閾値と比較して、疲労度≧判定閾値の場合に、運転者に休息を取るべき疲労がたまったと判定してもよい。図では判定閾値を「15」としたが、これは全走行時間のうち15%以上が高疲労道路の運転時間を占めることを意味する。例えば、連続運転時間6200秒(約103分)の場合、930秒に相当する。すなわち、かかる判定方法でも、実施例1又は2と同程度の連続運転時間で、運転者に休息を取るべき疲労がたまったと判定することができる。
【0081】
疲労があると判定すると運転者疲労度推定装置100は、ディスプレイ14及びスピーカ15の少なくとも一方から「休息を取りましょう」等のメッセージを出力して運転者に助言する。なお、本実施例においても助言判定部24は、助言する連続運転時間に助言最小値を設定している。したがって、この助言最小値未満で助言が発せられることはない。
【0082】
〔動作手順〕
図11は、運転者疲労度推定装置100が運転者の疲労度に応じて休息を取るよう助言する手順を示すフローチャート図の一例である。図11のフローチャート図は、例えばイグニッションがオンになるとスタートする。
【0083】
イグニッションがオンになると連続運転時間計測部21は連続運転時間の計測を開始する(S10)。疲労度算出部22は、高疲労道路を走行している場合に高疲労運転時間を計測し、高疲労運転時間と連続運転時間とから、疲労度を算出する(S20)。
【0084】
ついで、助言判定部24は、疲労度が判定閾値以上か否かを判定する(S42)。疲労度が判定閾値未満の場合(S42のNo)、運転者の疲労度は許容疲労度に到達していないとしてよいので、ステップS10からの処理を繰り返す。
【0085】
疲労度が判定基準以上の場合(S42のYes)、運転者の疲労度が許容疲労度に到達していると判定して、助言判定部24はディスプレイ14又はスピーカ15の少なくとも一方から、運転者に休息するよう助言する(S50)。
【0086】
助言すると助言判定部24は、連続運転時間をリセット(ゼロに戻す)するよう要求する(S60)。このリセットにより、連続運転時間はゼロから再度計測されることになる。
【0087】
以上説明したように、本実施例の運転者疲労度推定装置100は、道路毎に高疲労道路か否かを判定することで、より正確かつ柔軟な疲労度を検出することができる。
【実施例4】
【0088】
実施例1〜3の運転者疲労度推定装置100では、高疲労地帯又は高疲労道路の運転により、いずれも許容運転時間よりも許容疲労度到達時間が短くなることになる。しかしながら、高疲労地帯又は高疲労道路の運転による疲労の蓄積は、快適な走行が継続すれば緩和されると考えられる(以下、高疲労地帯以外の道路又は高疲労道路以外の道路を低疲労道路という)。快適な走行とは、例えば、ステアリングの操作が少なかったり、アクセルやブレーキ操作の頻度が十分に少ない地帯又は道路を走行している場合であり、このような走行状況が低疲労道路に相当する。また、快適に運転しているのに休息を取ることを強制するとドライバビリティを低下させてしまう。
【0089】
そこで、本実施例では、高疲労地帯又は高疲労道路を運転しても、低疲労道路が所定時間以上継続する場合、許容疲労度到達時間を許容運転時間までは延長しうる運転者疲労度推定装置100について説明する。なお、運転者疲労度推定装置100のブロック図は実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0090】
図12(a)はナビECU20の機能ブロック図の一例を 図12(b)は、本実施例の疲労度の算出を模式的に説明する図の一例を、それぞれ示す。疲労度の算出は実施例1を例に説明するが、高疲労運転時間a〜c秒を補正して疲労度を算出するので、実施例2の重み付け運転時間の算出にも同様に適用できる。また、本実施例では道路毎に高疲労道路か否かを判定するが、実施例1又は2と同様に疲労マップを参照して高疲労地帯か否かを判定してもよい。
【0091】
〔疲労度の算出〕
本実施例の運転者疲労度推定装置100は、低疲労道路を継続して運転した時間(以下、低疲労継続運転時間Tという)が十分に長ければ、直前の高疲労運転時間a〜cを、低疲労継続運転時間Tに続く疲労緩和時間αにより低減する。具体的には、疲労緩和時間αに1以下の定数Pをかけ、高疲労運転時間aから減じる。定数Pは、例えば0.1〜0.5程度である。
【0092】
低疲労継続時間判定部28は低疲労道路を継続して運転する時間が低疲労継続運転時間Tより大となったか否かを判定し、低疲労継続運転時間Tより大となった場合、疲労度算出部22に通知する。疲労度算出部22は通知を受け、以下のように疲労度を算出する。 例えば、高疲労運転時間aの高疲労道路を通過してから、高疲労運転時間bの高疲労道路に到達するまでの時間が、低疲労継続運転時間Tより大であるとすると、高疲労運転時間aは、(a−P・α1)に低減される。高疲労運転時間bの高疲労道路を通過してから、高疲労運転時間cの高疲労道路に到達するまでの時間が、低疲労継続運転時間Tより大であるとすると、高疲労運転時間cは、(a−P・α2)に低減される。
【0093】
一方、高疲労運転時間bの高疲労道路を通過してから、高疲労運転時間cの高疲労道路に到達するまでの時間が、低疲労継続運転時間T以下であるとすると、高疲労運転時間bは補正されない。
【0094】
したがって、疲労度は次式で算出される。
疲労度 = {(a−P・α1)+b+(c−P・α2)}/t ×100 … (4)
例えば、P=0.1とした場合、低疲労継続運転時間T経過後、高疲労運転時間の10倍の時間、疲労緩和時間αが継続すると、高疲労運転時間がゼロとなる。
【0095】
このように、低疲労継続運転時間Tより低疲労道路の運転が長く継続した場合にのみ、高疲労運転時間aを低減でき、算出される疲労度を緩和することができる。式(4)によれば、低疲労継続運転時間Tに続く疲労緩和時間αが十分長ければ、疲労度をゼロにしうるので、式(2)により算出される許容疲労度到達時間 を
許容運転時間と等しくすることができる。また、このような考え方は、高疲労道路が連続するほど、運転者に疲労が蓄積しやすいという考え方に沿ったものとなる。
【0096】
〔動作手順〕
図13は、運転者疲労度推定装置100が運転者の疲労度に応じて休息を取るよう助言する手順を示すフローチャート図の一例である。図13のフローチャート図は、例えばイグニッションがオンになるとスタートする。
【0097】
イグニッションがオンになると連続運転時間計測部21は連続運転時間の計測を開始する(S10)。また、低疲労継続時間判定部28は、低疲労道路を継続して運転する運転時間が低疲労継続運転時間Tを超えているか否かを判定する(S15)。
【0098】
そして、疲労度算出部22は、高疲労道路を走行している場合に高疲労運転時間を計測し、疲労緩和時間αに応じて高疲労運転時間を補正して、補正後の高疲労運転時間と連続運転時間とから、疲労度を算出する(S20)。そして、判定基準変更部23は、疲労度に応じて判定基準を変更する(S30)。
【0099】
ついで、助言判定部24は、連続運転時間が判定基準以上か否かを判定する(S40)。連続運転時間が判定基準未満の場合(S40のNo)、運転者の疲労度は許容疲労度に到達していないとしてよいので、ステップS10からの処理を繰り返す。
【0100】
連続運転時間が判定基準以上の場合(S40のYes)、運転者の疲労度が許容疲労度に到達していると判定して、助言判定部24はディスプレイ14又はスピーカ15の少なくとも一方から、運転者に休息するよう助言する(S50)。
【0101】
助言すると助言判定部24は、連続運転時間をリセット(ゼロに戻す)するよう要求する(S60)。このリセットにより、連続運転時間はゼロから再度計測されることになる。
【0102】
以上説明したように、本実施例の運転者疲労度推定装置100は、実施例1〜3の効果に加え、許容疲労度到達時間を許容運転時間と等しくしうることで、運転時の実際の疲労を考慮したタイミングで休息するよう助言することができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】運転者の疲労度と連続運転時間の関係を模式的に示す図の一例である。
【図2】運転者疲労度推定装置100のブロック図の一例である。
【図3】高疲労地帯を示す道路地図を模式的に説明する図の一例である。
【図4】ナビECUの機能ブロック図の一例である(実施例1)。
【図5】走行済み道路情報の一例を示す図である。
【図6】疲労度の算出を模式的に説明する図の一例である。
【図7】運転者疲労度推定装置が運転者の疲労度に応じて休息を取るよう助言する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例1)。
【図8】ナビECUの機能ブロックの一例、重み付け運転時間の算出を模式的に説明する図の一例である(実施例2)。
【図9】運転者疲労度推定装置が運転者の重み付け運転時間に応じて休息を取るよう助言する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例2)。
【図10】ナビECUの機能ブロックの一例、疲労度の算出を模式的に説明する図の一例である(実施例3)。
【図11】運転者疲労度推定装置が運転者の疲労度に応じて休息を取るよう助言する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例3)。
【図12】ナビECUの機能ブロックの一例、疲労度の算出を模式的に説明する図の一例である(実施例4)。
【図13】運転者疲労度推定装置が運転者の疲労度に応じて休息を取るよう助言する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例4)。
【符号の説明】
【0104】
13 地図DB
14 ディスプレイ
15 スピーカ
20 ナビECU
21 連続運転時間計測部
22 疲労度算出部
23 判定基準変更部
24 助言判定部
25 初走行道路判定部
26 重み付け運転時間算出部
27 高疲労道路判定部
28 低疲労継続時間判定部
100 運転者疲労度推定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続運転時間が許容運転時間を超えると、運転者の疲労軽減措置を行う運転者疲労度推定装置において、
地域ごとに高疲労地域を登録した疲労マップを記憶する疲労マップ記憶手段と、
前記疲労マップを参照して決定した、高疲労地域を運転した高疲労運転時間に応じて疲労度を算出する疲労度算出手段と、
前記疲労度算出手段が算出した疲労度に応じて、前記許容運転時間を変更する基準変更手段と、
連続運転時間が前記許容運転時間を超えると運転者の前記疲労軽減措置を行うタイミングであると判定する判定手段と、
を有することを特徴とする運転者疲労度推定装置。
【請求項2】
運転者が運転に慣れた道路か否かを道路毎に登録した走行済み道路情報を参照し、運転に慣れてない道路を走行したことを検出する初走行道路判定手段、を有し、
前記初走行道路判定手段が運転に慣れてない道路を走行したことを検出した場合、前記疲労度算出手段は、該道路を運転した時間を前記高疲労運転時間に計上する、
ことを特徴とする請求項1記載の運転者疲労度推定装置。
【請求項3】
前記疲労マップには、時間帯、曜日、季節又は天候の少なくとも1以上に応じて、前記地域が高疲労地域か否かが登録されている、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の運転者疲労度推定装置。
【請求項4】
前記疲労度算出手段は、連続運転時間に対する前記高疲労運転時間の割合から前記疲労度を算出する、
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の運転者疲労度推定装置。
【請求項5】
前記高疲労運転時間を重み付けし、連続運転時間に重み付けされた前記高疲労運転時間を加えて、重み付け運転時間を算出する重み付け運転時間算出手段を有し、
前記判定手段は、前記重み付け運転時間が前記許容運転時間を超えると、運転者の前記疲労軽減措置を行うタイミングであると判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の運転者疲労度推定装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記疲労度算出手段が算出した前記疲労度が、予め定められた判定閾値を超えると、運転者の前記疲労軽減措置を行うタイミングであると判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の運転者疲労度推定装置。
【請求項7】
高疲労地域以外の地域又は運転に慣れた道路を、所定時間以上、継続して運転しているか否かを判定する低疲労継続時間判定手段を有し、
前記疲労度算出手段は、高疲労地域以外の地域又は運転に慣れた道路を継続して運転した運転時間に応じて、前記高疲労運転時間を低減する、
ことを特徴とする請求項2記載の運転者疲労度推定装置。
【請求項8】
前記判定手段が、運転者の前記疲労軽減措置を行うタイミングであると判定した場合、
運転者に休息を取るよう助言する助言手段、
を有することを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の運転者疲労度推定装置。
【請求項9】
連続運転時間が許容運転時間を超えると、運転者の疲労軽減措置を行う運転者疲労度推定方法において、
疲労度算出手段が、地域ごとに高疲労地域を登録した疲労マップを記憶する疲労マップ記憶手段を参照して決定した、高疲労地域を運転した高疲労運転時間に応じて疲労度を算出するステップと、
基準変更手段が、前記疲労度算出手段が算出した疲労度に応じて、前記許容運転時間を変更するステップと、
判定手段が、連続運転時間が前記許容運転時間を超えると、運転者の前記疲労軽減措置を行うタイミングであると判定するステップと、
を有することを特徴とする運転者疲労度推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−293996(P2009−293996A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146019(P2008−146019)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】