説明

遠心ターボ機械の余寿命を求めるシステムおよび方法

【課題】遠心ターボ機械の余寿命を求めるシステムおよび方法が提供される。
【解決手段】遠心ターボ機械10は、インペラ16と、インペラ速度に関連する速度を検出するために配置された速度センサ22と、を含む。インペラの回転速度に関連する速度を検出する速度センサ22、インペラの出口温度に関連する温度を検出する温度センサ24が配置される。制御システムはインペラ速度、インペラ出口温度を含むインペラのパラメータを有する。インペラのパラメータを数学的に扱う計算法を用いてインペラの余寿命を求める。余寿命が閾値に達することに応答して、予告表示などのプログラムされた応答が、制御システムによってトリガされる。制御システムは、運転中にインペラの速度、温度を監視し、この速度、温度に基づいて余寿命を繰り返し計算する。例えば、余寿命の変化は、インペラの維持強度を越えるインペラ応力を起こすような速度変化に応答して計算される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ターボ機械のインペラの余寿命を求めるシステムおよび方法に関する。遠心ターボ機械は、ポンプ、タービンまたは圧縮機のインペラを1つまたは複数個含み得る。
【背景技術】
【0002】
遠心ターボ機械は、一般に、最高の空力性能を求めて高い軸速度で作動する。設計速度において、最大応力が、この用途に典型的に用いられるアルミニウム合金等の材料の降伏強度に近づく。この作用応力が一定速度などにおいて定常であれば、概して、この応力は吸収され得る。
【0003】
ターボ機械装置は、一定速度で比較的に定常状態のモードで運転されるか、あるいは可変速度で運転されることが想定されている。可変速度での用途の一例である空気圧縮機は、最大圧力を生み出した後、エネルギー節約のために、停止するか、低速のアイドルモードに戻らなければならない。典型的なアイドル速度は設計速度の30%であり、このときの出力は、最大出力の3%に減少している。インペラの内部に加わる応力は、速度の自乗に比例して変化する。
【0004】
多くの開始−停止サイクルや速度のランダムな変動(random excursions)を受けた材料は、疲労により劣化し、破断することがある。材料の寿命曲線は、最大応力に対する最小応力の比として定義される応力比の関数である。平均応力は、最大応力と最小応力との平均である。所与の応力サイクルの振幅は、最大応力と最小応力との差を2で割った値である。材料の強度は、温度上昇によっても減少する。十分なサイクルが累積されると、材料は、最大応力の位置で亀裂が入り、さらに遠心荷重からの高い平均応力によって不可逆的に破断する。速度は、実際には、使われ方次第で多少ランダムに最小値から最大値にサイクルすることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不可逆的な破断が発生するときを合理的に正しく予測できると都合が良い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1つまたは複数のインペラを備える遠心ターボ機械に関する。インペラの回転速度に関連する速度を検出する速度センサが配置される。インペラの出口温度に関連する温度を検出する温度センサが配置される。制御システムは、インペラ速度およびインペラ出口温度を含むインペラのパラメータを有する。インペラのパラメータを数学的に扱う計算法を用いて、インペラの余寿命を求める。余寿命が閾値に達することに応答して、予告表示などのプログラムされた応答が、制御システムによってトリガされる。
【0007】
制御システムは、運転中に、インペラの速度および温度を監視する。制御システムは、この速度および温度に基づいて余寿命を繰り返し計算する。一例において、余寿命の変化は、インペラの維持強度を越えるインペラ応力を起こすような速度変化に応答して計算される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の余寿命制御システムを有する遠心ターボ機械の断面図。
【図2】有限要素解析で得られた最大インペラ応力をインペラ速度の関数として示すグラフ。
【図3】インペラ材料の疲労寿命に対する疲労応力を温度および応力比の関数として示すグラフ。
【図4】修正Goodmanダイアグラムとして示された寿命計算の説明図。
【図5】インペラの余寿命を求める本発明の方法を一般的に示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、遠心ターボ機械10の概略が示される。ターボ機械10は、当技術分野で周知のように、ロータシャフト14を駆動する固定子12を備える。このシャフト14にはインペラ16が取付けられている。インペラ16は、流体を入口18から出口20まで流動させる。
【0010】
本発明の遠心ターボ機械10は、インペラ16の速度を検出する速度センサ22を有する。速度センサ22は、インペラ16の回転速度を直接的に検出するものでも間接的に検出するものでもよい。インペラ16に関連する出口温度を検出する温度センサ24が配置されている。図の例において、温度センサ24は、インペラ16の出口付近に配置されている。
【0011】
制御システムは、速度センサ22および温度センサ24と通信する制御装置26を含む。制御装置26は、他のセンサとも通信し得る。これに加え、制御装置26は、インペラの材料特性やインペラの応力特性に関するパラメータ等のインペラのパラメータも受けとり、記憶することができる。応力特性は、インペラ16の有限要素解析モデルおよび/またはテーブルからの出力として求められ得る。
【0012】
応力特性は、速度の関数である最大インペラ応力と、温度の関数である疲労強度と、応力比と、疲労破断に達するサイクル回数と、疲労強度修正係数と、を含み得る。応力特性は、当技術分野で周知であるように、ルックアップテーブルの一部としてまたは任意の他の適切な手段により提供され得る。疲労強度修正係数は、インペラの表面仕上げと、インペラの特定の形状の寸法と、インペラの特定の領域に加わる荷重と、インペラの温度と、に関する情報を含み得る。インペラのパラメータは、経験的に定められることもあれば、数学的に定められることもある。
【0013】
図1に示される遠心ターボ機械の例における設計速度は、58,000rpmである。最大の運転条件で、高い速度が、降伏点近くのインペラ応力を発生させる。図2に、速度の関数である応力が、過度の降伏点に至るまで示されている。アルミニウム合金についての解析からわかるように、最大応力が、降伏点の強度に近づく。
【0014】
図3に、所与の温度における通常のアルミニウム合金の強度の損失量が、変動する応力および疲労寿命サイクルの関数として示されている。寿命計算の概要は、図4に見られる修正Goodmanダイアグラムに示されている。最小−最大運転速度および温度が与えられれば、この解析法を用いて、インペラが破断するまで持ちこたえることができる応力サイクルの回数あるいは単位時間当たりの所与の開始−停止サイクルの回数についての許容運転時間とを推定することができる。本発明は、インペラのランダムな変動による寿命の短縮を考慮するのに有用である。計算法としてさまざまな手法を用いることができる。例えば、Palmgren−Minerのサイクル比率累積法(cycle−ratio summation method)、あるいはMansonのアプローチに基づく方法を用いることができる。これらの計算法は、当技術分野において周知の手法である。
【0015】
継続的に監視することが望ましいパラメータは、インペラ速度およびインペラ出口温度である。最大のインペラ応力は、例えば図2に示されるような速度の関数として、有限要素解析により定められる。インペラの材料特性は、詳細には、図3に示されるように、温度の関数である疲労応力と、応力比と、破断までのサイクルと、が用いられる。図3を参照すると、応力比0%は、開始−停止サイクルを表し、応力比10%は、設計速度の30%に相当する速度への変動の例を表す。図3は、これに応じる利用可能な材料の強度と、破断までのサイクル回数とを示す。
【0016】
監視データ、インペラ応力特性、材料特性、および計算法を、制御装置26にプログラミングし、遠心ターボ機械10の制御システムの一部として含めることができる。一例において、計算の結果を用いて、累積されたサイクルがアラーム制限すなわち破断までの許容サイクル回数に近づくと、視覚的アラームまたは音声アラーム等の予告表示をトリガする。許容可能なサイクルは、一般に、特定の用途に適した望ましい安全係数を用いて設定される。
【0017】
アラーム制限が1%よりも小さくなるように、アラーム予告を設定することができる。予告閾値に達すると、ユニットが停止され、かつインペラの交換がスケジュールされるまで、制御システムが速度の変動を防ぐことができる。速度の変動を防ぐことにより、インペラへの損傷が蓄積されるのを防ぐので、このアプローチが行われる。
【0018】
アラーム制限に達したら、インペラを交換するためにユニットを停止する。あるいは、都合のよいときに停止がスケジュールされるまで、変動する応力を避けるために、全速でユニットを作動し続けてもよい。顧客は、こうしてインペラの破断を未然に知らされて、インペラを交換することができる。
【0019】
図5に示す例に類似した手法を用いて、運転中にインペラの余寿命を求めることができる。フローチャート30は、ステップ32に示されるインペラの最大の設計応力を定めるステップを含む。最大の設計応力は、有限要素解析を用いて求められ得る。ステップ34で、インペラの速度および温度がセンサ22,24を用いて監視される。速度および平均温度の変化量が計算される。開始−停止サイクルおよびランダムな速度の変動により、インペラの疲労寿命に悪影響を与える速度変化が生じる。本発明の方法は、速度変化により生じる疲労寿命の短縮を定量化する。
【0020】
ステップ36で、速度変化の結果として生じる応力を計算し、この応力がインペラの無限寿命に対する疲労強度を超えているかを判定する。応力が疲労強度を超えている場合、ステップ38に示されるように、インペラの寿命の短縮される時間を計算する。計算法の一例において、速度変化により生じる応力サイクルに相当するサイクル回数(Nf)を計算する。Nfは、最大速度Nlおよび応力比rsの関数となる。
【0021】
【数1】

【0022】
あるいは、応力が速度の自乗に比例するとすれば、
s=(N2÷N12
回転速度を監視し続ければ、ステップ38に示されるように、応力サイクルの累積回数を数えて、余寿命を推定することができる。例えば、寿命変数の初期値をL=0で開始すると、各応力サイクルは、次のように求められる。
【0023】
【数2】

【0024】
Lは、任意の時刻において、インペラにより時間を追って書換えられる予測寿命の変化量である。
【0025】
一例において、典型的な一日の運転は、休止状態から60000rpmの最高速度に上昇し、この最高速度と最低速度20000rpmとの間を全部で4往復し、休止状態に戻ることからなる。温度は、始めは環境温度であり、その後、300°F(149℃)の最高温度まで上昇する。疲労強度修正係数は、
【0026】
【数3】

【0027】
次の表は、寿命計算の結果を示す。
【0028】
【表1】

【0029】
一日の最後で、累積されたL値は、予測寿命のうちの0.072%を消耗したことを示し、典型的には、予測寿命は、残りが1/0.000720=1389日=3.8年であると予測される。
【0030】
余寿命が閾値に達すると、ステップ42に示されるように、制御装置26が予告表示を作動させ得る。予告表示は、視覚的な予告および/または音声による予告を含み得る。あるいは、整備士が定期的に点検し易いように、余寿命を簡単に記憶または簡単に表示できればよい。これにより整備士は、ステップ44に示されるように、インペラが破断する前に、インペラを交換することができる。この方法30は、繰り返し行われ、速度変化によるインペラの寿命の短縮を計算し続ける。
【0031】
本発明の好ましい実施形態を開示したが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更がなされ得ることを理解されるであろう。このため、本発明の特許請求の範囲および内容を決定するために請求項を検討されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラと、
インペラの速度に関連する速度を検出するために配置された速度センサと、
インペラの出口温度に関連する温度を検出するために配置された温度センサと、
インペラの速度およびインペラの出口温度を含むインペラのパラメータを有するとともに、前記インペラの余寿命を求めるために前記インペラのパラメータを数学的に扱う計算法を有し、かつ前記余寿命が閾値に達することに応答して前記制御システムによってトリガされるプログラムされた応答を有する制御システムと、
を備えるターボ機械。
【請求項2】
前記速度センサが、前記インペラを支持するシャフトの速度を検出することを特徴とする請求項1に記載の遠心ターボ機械。
【請求項3】
前記温度センサが、インペラの出口の近くに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心ターボ機械。
【請求項4】
前記計算法が、Palmgren‐Minerのサイクル比率累積法に基づいていることを特徴とする請求項1に記載の遠心ターボ機械。
【請求項5】
前記計算法が、Mansonのアプローチに基づいていることを特徴とする請求項1に記載の遠心ターボ機械。
【請求項6】
前記インペラのパラメータが、前記インペラの材料特性を含むことを特徴とする請求項1に記載の遠心ターボ機械。
【請求項7】
前記インペラのパラメータが、前記インペラの応力特性を含むことを特徴とする請求項6に記載の遠心ターボ機械。
【請求項8】
前記応力特性が、速度の関数である最大インペラ応力、温度の関数である疲労強度、応力比、および最大応力に対して破断までのサイクル回数のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7に記載の遠心ターボ機械。
【請求項9】
前記応力特性が、疲労強度修正係数を含むことを特徴とする請求項7に記載の遠心ターボ機械。
【請求項10】
前記プログラムされた応答が、予告表示であることを特徴とする請求項1に記載の遠心ターボ機械。
【請求項11】
a)インペラの速度を監視するステップと、
b)前記インペラに関連する温度を監視するステップと、
c)前記速度および前記温度に基づいて前記インペラの余寿命を繰り返し計算するステップと、
d)前記余寿命が閾値に近づいたとき、予告表示をするステップと、
を含むインペラの余寿命を計算する方法。
【請求項12】
ステップc)が、前記インペラの速度変化の関数として前記余寿命を計算することに基づいていることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップc)が、前記速度変化によって生じる応力サイクルに相当する比率で、繰り返し余寿命を計算することを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップc)が、前記速度変化に起因する寿命の変化を計算することを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップc)が、応力比の関数として前記余寿命を計算することに基づいていることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ステップc)が、前記インペラの最大の設計応力を用いることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記インペラの速度を検出するために配置された速度センサから情報を受信する手段と、
前記インペラの出口温度を検出するために配置された温度センサから情報を受信する手段と、
前記速度センサおよび前記温度センサから受信した前記情報を用いて前記インペラの余寿命を求める手段と、
前記余寿命が閾値に近づいたときに予告をする手段と、
を備えるインペラの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−2231(P2012−2231A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−213615(P2011−213615)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【分割の表示】特願2008−506585(P2008−506585)の分割
【原出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(500258053)サンダイン コーポレーション (11)
【氏名又は名称原語表記】Sundyne Corporation
【住所又は居所原語表記】14845 West 64th Avenue,Arvada,CO USA
【Fターム(参考)】