説明

配線回路基板およびその製造方法

【課題】伝送特性を悪化させることなく導体パターンとカバー絶縁層との接着性を向上することが可能な配線回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】屈曲部100aおよび2つの非屈曲部100bに渡ってベース絶縁層1上に所定の導体パターン2が形成される。粗化レジスト4が形成されていない屈曲部100aにおける導体パターン2の表面に、例えば凹凸形状を有する粗化部5が形成される。粗化処理用の処理液として、例えば、硫酸と過酸化水素との混合液、アルカリ−亜塩素酸系の処理液、または有機酸系の処理液を用いることができる。また、粗化部5の表面粗さ(算術平均高さ)Raは、1μm〜3μmであることが好ましい。そして、導体パターン2上の端子用開口部の領域を除いて、ベース絶縁層1および導体パターン2上に例えばポリイミドからなるカバー絶縁層6が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の電子機器に用いられる配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線回路基板は、一般的にセミアディティブ法またはサブトラクティブ法等により製造される。
【0003】
上記の各方法により製造される配線回路基板は、一般的にポリイミドフィルム等からなるベース絶縁層と、当該ベース絶縁層上に形成される導体パターンと、当該導体パターンを覆うカバー絶縁層とを有する。
【0004】
従来から、導体パターンとカバー絶縁層との接着性を向上するために、当該導体パターンの表面に粗化処理が施されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0005】
導体パターンの表面に粗化処理を施すことにより、導体パターンの表面が凹凸形状となる。それにより、アンカー効果が生じ、導体パターンとカバー絶縁層との接着性が向上されている。
【特許文献1】特開2001−36219号公報
【特許文献2】特開2003−209351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2の回路基板(プリント基板)においては、信号配線となる導体パターン表面のほとんどの領域が粗化される。その結果、上記回路基板の導体パターンに高周波信号(例えば、100MHzまたは300MHz以上)が伝送される場合には、表皮効果によって電流が導体パターン表面の凹凸に沿って流れる。それにより、実質的な伝送路長が長くなり、高周波信号の伝送特性が悪くなる。
【0007】
例えば、高周波信号が1GHzの周波数を有する場合には、電流は導体パターンの表面から深さ2μm程度の領域に集中する。この場合、粗化処理が施された導体パターン表面の凹凸が大きいと、実質的な伝送路長が長くなり伝送特性は非常に悪化する。
【0008】
また、上記のように、導体パターンの粗化処理を行わずにカバー絶縁層を形成する場合には、導体パターンとカバー絶縁層との接着性が向上されない。その結果、回路基板の繰り返し屈曲される屈曲部において導体パターンとカバー絶縁層との間に剥離が生じる場合がある。
【0009】
本発明の目的は、伝送特性を悪化させることなく導体パターンとカバー絶縁層との接着性を向上することが可能な配線回路基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)第1の発明に係る配線回路基板は、屈曲部および非屈曲部を有する配線回路基板であって、屈曲部および非屈曲部に渡って設けられる絶縁層と、絶縁層上に形成される1または複数の配線と、1または複数の配線を覆うように絶縁層上に形成される保護層とを備え、屈曲部における1または複数の配線の面がそれぞれ粗化されているものである。
【0011】
第1の発明に係る配線回路基板においては、絶縁層が屈曲部および非屈曲部に渡って設けられる。1または複数の配線は絶縁層上に形成される。保護層は1または複数の配線を覆うように絶縁層上に形成される。そして、屈曲部における1または複数の配線の面がそれぞれ粗化されている。
【0012】
このような構成により、屈曲部および非屈曲部における1または複数の配線上の領域が粗化されることによって生じる高周波信号の伝送特性の悪化が防止される。
【0013】
すなわち、屈曲部における1または複数の配線上の面のみが粗化されることによって、実質的な伝送路長が長くなることが防止される。それにより、高周波信号の伝送特性が悪化しない。
【0014】
また、屈曲部における1または複数の配線上の面が粗化されることによって、1または複数の配線と保護層との接着性を向上することが可能となる。それにより、屈曲または屈曲の繰り返しによる剥離が1または複数の配線と保護層との間に生じることが防止される。
【0015】
(2)1または複数の配線における絶縁層との積層面に対向する面が少なくとも粗化されていてもよい。
【0016】
この場合、1または複数の配線と保護層との接着性を確保しつつ、実質的な伝送路長が長くなることによる高周波信号の伝送特性の悪化を十分に防止できる。
【0017】
(3)粗化された面の算術平均高さは、1μm以上3μm以下であってもよい。この場合、1または複数の配線と保護層との十分な接着性を確保しつつ、実質的な伝送路長が長くなることによる高周波信号の伝送特性の悪化を防止できる。
【0018】
(4)1または複数の配線は、屈曲部において互いに並列に延びる複数の配線を有し、複数の配線の互いに対向する面は粗化されていなくてもよい。
【0019】
この場合、複数の配線と保護層との接着性を確保しつつ、実質的な伝送路長が長くなることによる高周波信号の伝送特性の悪化を十分に防止できる。
【0020】
(5)第2の発明に係る配線回路基板の製造方法は、屈曲部および非屈曲部を有する配線回路基板の製造方法であって、屈曲部および非屈曲部に渡って設けられる絶縁層上に1または複数の配線を形成する工程と、屈曲部を除く領域における1または複数の配線上に粗化用のレジストを形成する工程と、粗化用のレジストが形成されていない1または複数の配線の面を粗化する工程と、粗化用のレジストを除去する工程と、屈曲部および非屈曲部における1または複数の配線を覆うように絶縁層上に保護層を形成する工程とを備えたものである。
【0021】
第2の発明に係る配線回路基板の製造方法においては、絶縁層が屈曲部および非屈曲部に渡って設けられる。1または複数の配線は絶縁層上に形成される。そして、屈曲部を除く領域における1または複数の配線上に粗化用のレジストが形成され、粗化用のレジストが形成されていない1または複数の配線の面が粗化される。また、粗化用のレジストが除去され、屈曲部および非屈曲部における1または複数の配線を覆うように絶縁層上に保護層が形成される。
【0022】
このような構成により、屈曲部および非屈曲部における1または複数の配線上の領域が粗化されることによって生じる高周波信号の伝送特性の悪化が防止される。
【0023】
すなわち、屈曲部における1または複数の配線上の面のみが粗化されることによって、実質的な伝送路長が長くなることが防止される。それにより、高周波信号の伝送特性が悪化しない。
【0024】
また、屈曲部における1または複数の配線上の面が粗化されることによって、1または複数の配線と保護層との接着性を向上することが可能となる。それにより、屈曲または屈曲の繰り返しによる剥離が1または複数の配線と保護層との間に生じることが防止される。
【0025】
(6)第3の発明に係る配線回路基板の製造方法は、屈曲部および非屈曲部を有する配線回路基板の製造方法であって、屈曲部および非屈曲部に渡って設けられる絶縁層上に1または複数の配線を形成する工程と、1または複数の配線の表面を粗化する工程と、非屈曲部を除く領域における1または複数の配線上に平滑化用のレジストを形成する工程と、平滑化用のレジストが形成されていない1または複数の配線の面を平滑化する工程と、平滑化用のレジストを除去する工程と、屈曲部および非屈曲部における1または複数の配線を覆うように絶縁層上に保護層を形成する工程とを備えたものである。
【0026】
第3の発明に係る配線回路基板の製造方法においては、絶縁層が屈曲部および非屈曲部に渡って設けられる。1または複数の配線は絶縁層上に形成される。そして、1または複数の配線の表面が粗化される。また、非屈曲部を除く領域における1または複数の配線上に平滑化用のレジストが形成され、平滑化用のレジストが形成されていない1または複数の配線の面が平滑化される。そして、平滑化用のレジストが除去され、屈曲部および非屈曲部における1または複数の配線を覆うように絶縁層上に保護層が形成される。
【0027】
このような構成により、屈曲部および非屈曲部における1または複数の配線上の領域が粗化されることによって生じる高周波信号の伝送特性の悪化が防止される。
【0028】
すなわち、屈曲部における1または複数の配線上の面のみが粗化されることによって、実質的な伝送路長が長くなることが防止される。それにより、高周波信号の伝送特性が悪化しない。
【0029】
また、屈曲部における1または複数の配線上の面が粗化されることによって、1または複数の配線と保護層との接着性を向上することが可能となる。それにより、屈曲または屈曲の繰り返しによる剥離が1または複数の配線と保護層との間に生じることが防止される。
【0030】
(7)第4の発明に係る配線回路基板の製造方法は、屈曲部および非屈曲部を有する配線回路基板の製造方法であって、屈曲部および非屈曲部に渡って設けられる絶縁層上に1または複数の配線を、1または複数の配線とは逆パターンのめっき用のレジストを用いて形成する工程と、非屈曲部における1または複数の配線およびめっき用のレジスト上に粗化用のレジストを形成する工程と、粗化用のレジストが形成されていない1または複数の配線の面を粗化する工程と、めっき用のレジストおよび粗化用のレジストを除去する工程と、屈曲部および非屈曲部における1または複数の配線を覆うように絶縁層上に保護層を形成する工程とを備えたものである。
【0031】
第4の発明に係る配線回路基板の製造方法においては、絶縁層が屈曲部および非屈曲部に渡って設けられる。1または複数の配線が、当該1または複数の配線とは逆パターンのめっき用のレジストを用いて絶縁層上に形成される。また、非屈曲部における1または複数の配線およびめっき用のレジスト上に粗化用のレジストが形成され、粗化用のレジストが形成されていない1または複数の配線の面が粗化される。そして、めっき用のレジストおよび粗化用のレジストが除去され、屈曲部および非屈曲部における1または複数の配線を覆うように絶縁層上に保護層が形成される。
【0032】
このような構成により、屈曲部および非屈曲部における1または複数の配線上の領域が粗化されることによって生じる高周波信号の伝送特性の悪化が防止される。
【0033】
すなわち、屈曲部における1または複数の配線上の面のみが粗化されることによって、実質的な伝送路長が長くなることが防止される。それにより、高周波信号の伝送特性が悪化しない。
【0034】
また、屈曲部における1または複数の配線上の面が粗化されることによって、1または複数の配線と保護層との接着性を向上することが可能となる。それにより、屈曲または屈曲の繰り返しによる剥離が1または複数の配線と保護層との間に生じることが防止される。
【0035】
特に、本発明に係る配線回路基板の製造方法では、互いに隣接する配線に互いに逆方向の電流が流れる場合、電流が上記配線の互いに対向する側面に沿って流れることがある(近接効果)。したがって、上記のように、屈曲部における1または複数の配線の面が粗化されることによって、実質的な伝送路長が長くなることが防止される。それにより、高周波信号の伝送特性の悪化が防止される。
【0036】
(8)第5の発明に係る配線回路基板の製造方法は、屈曲部および非屈曲部を有する配線回路基板の製造方法であって、屈曲部および非屈曲部に渡って設けられ、絶縁層と導体層とが積層されてなる積層板における導体層上の面を粗化する工程と、導体層上の所定の領域にエッチング用のレジストを形成し、所定の領域を除いて導体層をエッチングすることにより絶縁層上に1または複数の配線を形成する工程と、エッチング用のレジストを除去する工程と、屈曲部における1または複数の配線上に平滑化用のレジストを形成する工程と、平滑化用のレジストが形成されていない1または複数の配線の面を平滑化する工程と、平滑化用のレジストを除去する工程と、屈曲部および非屈曲部における1または複数の配線を覆うように絶縁層上に保護層を形成する工程とを備えたものである。
【0037】
第5の発明に係る配線回路基板の製造方法においては、絶縁層が屈曲部および非屈曲部に渡って設けられ、絶縁層と導体層とが積層されてなる積層板における導体層上の面が粗化される。そして、導体層上の所定の領域にエッチング用のレジストが形成され、上記の所定の領域を除いて導体層をエッチングすることにより絶縁層上に1または複数の配線が形成される。また、エッチング用のレジストが除去された後、屈曲部における1または複数の配線上に平滑化用のレジストが形成され、平滑化用のレジストが形成されていない1または複数の配線の面が平滑化される。そして、平滑化用のレジストが除去され、屈曲部および非屈曲部における1または複数の配線を覆うように絶縁層上に保護層が形成される。
【0038】
このような構成により、屈曲部および非屈曲部における1または複数の配線上の領域が粗化されることによって生じる高周波信号の伝送特性の悪化が防止される。
【0039】
すなわち、屈曲部における1または複数の配線上の面のみが粗化されることによって、実質的な伝送路長が長くなることが防止される。それにより、高周波信号の伝送特性が悪化しない。
【0040】
また、屈曲部における1または複数の配線上の面が粗化されることによって、1または複数の配線と保護層との接着性を向上することが可能となる。それにより、屈曲または屈曲の繰り返しによる剥離が1または複数の配線と保護層との間に生じることが防止される。
【0041】
特に、本発明に係る配線回路基板の製造方法では、互いに隣接する配線に互いに逆方向の電流が流れる場合、電流が上記配線の互いに対向する側面に沿って流れることがある(近接効果)。したがって、上記のように、屈曲部における1または複数の配線の面が粗化されることによって、実質的な伝送路長が長くなることが防止される。それにより、高周波信号の伝送特性の悪化が防止される。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、伝送特性を悪化させることなく導体パターンとカバー絶縁層との接着性を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態に係る配線回路基板について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施の形態に係る配線回路基板はフレキシブル配線回路基板である。
【0044】
(1)第1の実施の形態
最初に、本実施の形態および後述する第2〜第4の実施の形態に係る配線回路基板の全体構成について説明する。
【0045】
図1は、第1〜第4の実施の形態に係る配線回路基板の全体構成を示す平面図である。
【0046】
図1に示すように、本実施の形態に係る配線回路基板100は、屈曲部100aおよび非屈曲部100bを備える。本実施の形態では、大きさが異なる2つの非屈曲部100bの間に屈曲部100aが設けられている。
【0047】
屈曲部100aは、屈曲する部位または屈曲を繰り返す部位であり、非屈曲部100bは、半導体チップ等が搭載されるとともに屈曲しない部位である。
【0048】
一方の非屈曲部100bから他方の非屈曲部100bまで複数(本実施の形態では、2つ)の導体パターン2が、屈曲部100aの外形に略平行に沿うように形成されている。また、導体パターン2を覆うようにカバー絶縁層6が形成される。各非屈曲部100bにおけるカバー絶縁層6に半導体チップ等が搭載されるための端子用開口部7がそれぞれ設けられる。
【0049】
各導体パターン2の両端部は、それぞれ各端子用開口部7において露出している。各導体パターン2の端子用開口部7で露出している部分が端子部となる。半導体チップ等は、端子用開口部7における導体パターン2の上記端子部にそれぞれ接続される。なお、上述したように、本実施の形態では、導体パターン2の数を2つとしたが、これに限定されるものではなく、例えば3つ以上としてもよい。
【0050】
導体パターン2の端子部上には図示しない電解金めっき層が形成される。なお、上記の電解金めっき層は、金を単一成分として含むものであってもよく、また、金を主成分として銅(Cu)、鉛(Pb)、銀(Ag)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、およびリン(P)等からなる群から選択される一種以上の元素を含むものであってもよい。
【0051】
次に、本実施の形態に係る配線回路基板100の製造方法について各工程を示した図面を参照しながら説明する。
【0052】
図2は、セミアディティブ法による配線回路基板100の製造方法の各工程を示す模式的断面図である。
【0053】
図2(a)に示すように、例えばポリイミドフィルムからなる厚さ12μmのベース絶縁層1を用意する。
【0054】
続いて、図2(b)に示すように、ベース絶縁層1上にドライフィルムレジスト等を用いて、後工程で形成される導体パターン2とは逆パターンのめっきレジスト3が形成される。
【0055】
その後、図2(c)に示すように、ベース絶縁層1上におけるめっきレジスト3が形成されていない表面に、電解銅めっきにより例えば18μmの厚さを有する導体パターン2が形成される。
【0056】
続いて、図2(d)に示すように、めっきレジスト3が剥離等により除去される。なお、ベース絶縁層1と導体パターン2との接着性が懸念される場合には、ベース絶縁層1と導体パターン2との間に金属薄膜を設けることにより接着性を向上することができる。
【0057】
次に、上述の図2(d)の工程後、本実施の形態に係る配線回路基板100が製造されるまでの各工程について説明する。
【0058】
図3は、ベース絶縁層1上に導体パターン2が形成された後、配線回路基板100が製造されるまでの各工程を示す断面図である。なお、図3においては、図1の配線回路基板100のC−C線断面におけるD領域が示されている。
【0059】
図3(a)に示すように、屈曲部100aおよび2つの非屈曲部100bに渡ってベース絶縁層1上に所定の導体パターン2が形成されている。
【0060】
2つの非屈曲部100bにおける導体パターン2上に、感光性樹脂により粗化レジスト4がそれぞれ形成される。すなわち、後述するように、屈曲部100aにおける導体パターン2上に粗化処理を施すので、屈曲部100aにおける導体パターン2上には粗化レジスト4は形成されない。なお、粗化処理の詳細については後述する。
【0061】
次いで、図3(a)において2つの非屈曲部100bにおける導体パターン2上に粗化レジスト4がそれぞれ形成されたものを、粗化処理用の処理液中に浸漬させる。このような処理を行うことにより、図3(b)に示すように、粗化レジスト4が形成されていない屈曲部100aにおける導体パターン2の表面に、例えば凹凸形状を有する粗化部5が形成される。
【0062】
上記の粗化処理用の処理液として、例えば、硫酸と過酸化水素との混合液、アルカリ−亜塩素酸系の処理液、または有機酸系の処理液を用いることができる。
【0063】
硫酸と過酸化水素との混合液の具体例として、メック社製のメックブライト(CB−5004)およびメックV−Bond(B0−7770)、ならびに、マクダーミッド社製のME−605およびマルチボンド(MB−100)等が挙げられる。
【0064】
また、アルカリ−亜塩素酸系の処理液の具体例として、マクダーミッド社製のオムニボンド(オムニボンド9251)およびB0−2000等が挙げられる。さらに、有機酸系の処理液の具体例として、メック社製のメックエッチボンド(CZ−8100)等が挙げられる。
【0065】
また、粗化部5の表面粗さ(算術平均高さ)Raは、1μm〜3μmであることが好ましい。本実施の形態では、粗化部5の表面粗さ(算術平均高さ)Raは、例えば2μmとすることができる。なお、表面粗さ(算術平均高さ)Raとは、日本工業規格(JIS B 0601−1994)に定められた表面粗さを表すパラメータであり、例えば触針式表面粗さ計により測定される。
【0066】
次に、図3(c)に示すように、粗化レジスト4が剥離等により除去される。そして、導体パターン2上の端子用開口部7(図1)の領域を除いて、ベース絶縁層1および導体パターン2上に例えばポリイミドからなるカバー絶縁層6が形成される。これにより、屈曲部100aにおける導体パターン2の表面に形成された粗化部5上にカバー絶縁層6の一部が接着される。なお、図3においては、ベース絶縁層1上に形成されたカバー絶縁層6は、断面線の位置の関係上図示されない。以上により、屈曲部100aにおける導体パターン2とカバー絶縁層6とが粗化部5を介して接着された配線回路基板100が製造される。
【0067】
ここで、このように製造された配線回路基板100のA−A線断面(図1)の模式図について説明する。
【0068】
図4は、第1の実施の形態に係る配線回路基板100の製造方法により製造された配線回路基板100のA−A線断面(図1)の模式図である。
【0069】
本実施の形態では、上述したように、屈曲部100aにおける導体パターン2上に粗化レジスト4を形成しないで、ベース絶縁層1上に導体パターン2が形成されたものを粗化処理用の処理液中に浸漬させる。
【0070】
これにより、図4に示すように、屈曲部100aにおける導体パターン2においては、ベース絶縁層1との接着面(図4では、下面)を除いた面(図4では、上面および両側面)上に粗化部5が形成される。
【0071】
(2)第2の実施の形態
次に、第2の実施の形態における配線回路基板100の製造方法について説明する。
【0072】
第2の実施の形態においては、セミアディティブ法によりベース絶縁層1上に所定の導体パターン2が形成されるまでの工程は第1の実施の形態(図2(a)〜(d)に相当する工程)と同じであるので、説明は省略する。
【0073】
図5は、ベース絶縁層1上に導体パターン2が形成された後、配線回路基板100が製造されるまでの各工程の他の例を示す断面図である。なお、図5においては、図1の配線回路基板100のC−C線断面におけるD領域が示されている。
【0074】
屈曲部100aおよび2つの非屈曲部100bに渡ってベース絶縁層1上に所定の導体パターン2が形成されている。このように、ベース絶縁層1上に導体パターン2が形成されたものを、第1の実施の形態と同じ粗化処理用の処理液中に浸漬させる。
【0075】
このような処理を行うことにより、図5(a)に示すように、屈曲部100aおよび2つの非屈曲部100bに渡って、導体パターン2の表面に粗化部5が形成される。粗化部5の表面粗さ(算術平均高さ)Raは、例えば2μmとすることができる。
【0076】
続いて、図5(b)に示すように、屈曲部100aにおける導体パターン2上に平滑化レジスト8が形成される。これは、後述するように、屈曲部100aにおける導体パターン2上に形成された粗化部5を残すためである。
【0077】
次いで、図5(c)に示すように、屈曲部100aにおける導体パターン2上に平滑化レジスト8が形成されたものを、平滑化処理用の処理液中に浸漬させる。これにより、2つの非屈曲部100bにおける導体パターン2上に形成された各粗化部5がそれぞれ平滑化される。
【0078】
本実施の形態では、上記の平滑化処理用の処理液として、例えば、過硫酸ナトリウム水溶液、過硫酸案アンモニウム水溶液または過硫酸カリウム水溶液を用いることができる。
【0079】
続いて、図5(d)に示すように、平滑化レジスト8が剥離等により除去される。そして、導体パターン2上の端子用開口部7(図1)の領域を除いて、ベース絶縁層1および導体パターン2上にカバー絶縁層6が形成される。これにより、屈曲部100aにおける導体パターン2の表面に形成された粗化部5上にカバー絶縁層6の一部が接着される。なお、図5においては、ベース絶縁層1上に形成されたカバー絶縁層6は、断面線の位置の関係上図示されない。以上により、屈曲部100aにおける導体パターン2とカバー絶縁層6とが粗化部5を介して接着された配線回路基板100が製造される。
【0080】
なお、このように製造された配線回路基板100のA−A線断面(図1)の模式図は、上述の図4と同じである。
【0081】
(3)第3の実施の形態
次に、第3の実施の形態における配線回路基板100の製造方法について説明する。
【0082】
第3の実施の形態においては、ベース絶縁層1上にめっきレジスト3が形成された後、当該ベース絶縁層1上におけるめっきレジスト3が形成されていない表面に導体パターン2が形成されるまでの工程は第1の実施の形態(図2(a)〜(c)に相当する工程)と同じであるので、説明は省略する。したがって、以下では、上記図2(c)の工程後、本実施の形態に係る配線回路基板100が製造されるまでの各工程について説明する。
【0083】
図6Aおよび図6Bは、図2(c)の工程後、配線回路基板100が製造されるまでの各工程のさらに他の例を示す断面図である。
【0084】
ここで、図6Aおよび図6Bにおいては、(A1)と(B1)、(A2)と(B2)、(A3)と(B3)、および(A4)と(B4)が、それぞれ同じ工程における異なる領域の断面図を示している。
【0085】
すなわち、(A1)、(A2)、(A3)、および(A4)は、図1の配線回路基板100の屈曲部100aにおけるA−A線断面図を示し、(B1)、(B2)、(B3)、および(B4)は、配線回路基板100の一方の非屈曲部100bにおけるB−B線断面図を示している。なお、以下では、B−B線断面図を用いて一方の非屈曲部100bにおける断面の構成について説明するが、他方の非屈曲部100bにおける断面の構成については上記構成と同じであるので、説明は省略する。
【0086】
図6A(A1)に示すように、屈曲部100aにおいては、図2(c)の工程における処理後の状態が維持される。
【0087】
一方、図6A(B1)に示すように、非屈曲部100bにおいては、図2(c)の工程における処理の後、導体パターン2上およびめっきレジスト3上に粗化レジスト4が形成される。
【0088】
次いで、図6A(A2)に示すように、屈曲部100aにおいては、ベース絶縁層1上に導体パターン2およびめっきレジスト3が形成されたものが、第1の実施の形態と同じ粗化処理用の処理液中に浸漬される。これにより、導体パターン2の表面に粗化部5が形成される。なお、導体パターン2の側面はめっきレジスト3の側面に接しているので、当該導体パターン2の側面には粗化部5は形成されない。また、粗化部5の表面粗さ(算術平均高さ)Raは、例えば2μmである。
【0089】
一方、図6A(B2)に示すように、非屈曲部100bにおいては、図6A(B1)の工程における処理後の状態が維持される。
【0090】
次に、図6B(A3)に示すように、屈曲部100aにおいては、めっきレジスト3が除去される。
【0091】
一方、図6B(B3)に示すように、非屈曲部100bにおいては、めっきレジスト3および粗化レジスト4が共に除去される。
【0092】
続いて、図6B(A4)に示すように、屈曲部100aにおいては、ベース絶縁層1上および粗化部5が形成された導体パターン2上に、カバー絶縁層6が形成される。
【0093】
一方、図6B(B4)に示すように、非屈曲部100bにおいても、ベース絶縁層1上および粗化部5が形成されていない導体パターン2上に、カバー絶縁層6が形成される。
【0094】
以上により、屈曲部100aにおける導体パターン2とカバー絶縁層6とが粗化部5を介して接着された配線回路基板100が製造される。
【0095】
(4)第4の実施の形態
次に、第4の実施の形態における配線回路基板100の製造方法について説明する。
【0096】
図7Aおよび図7Bは、第4の実施の形態に係る配線回路基板100が製造されるまでの各工程を示す断面図である。
【0097】
ここで、図7Bにおいては、(e1)と(e2)、(f1)と(f2)、および(g1)と(g2)が、それぞれ同じ工程における異なる領域の断面図を示している。
【0098】
すなわち、(e1)、(f1)、および(g1)は、図1の配線回路基板100の屈曲部100aにおけるA−A線断面図を示し、(e2)、(f2)、および(g2)は、配線回路基板100の一方の非屈曲部100bにおけるB−B線断面図を示している。
【0099】
また、図7A(a)〜(d)においては、配線回路基板100の屈曲部100aにおけるA−A線断面図と一方の非屈曲部100bにおけるB−B線断面図とは同じであるので、一の断面図のみ示されている。なお、以下では、B−B線断面図を用いて一方の非屈曲部100bにおける断面の構成について説明するが、他方の非屈曲部100bにおける断面の構成については上記構成と同じであるので、説明は省略する。
【0100】
図7A(a)に示すように、例えば12μmの厚さを有するポリイミドフィルムからなるベース絶縁層1と、当該ベース絶縁層1上の例えば銅箔からなる導体層2aとが積層されてなる二層基材が用意される。
【0101】
続いて、図7A(b)に示すように、上記の二層基材が、第1の実施の形態と同じ粗化処理用の処理液中(例えば、32℃)に例えば1分間浸漬される。これにより、導体層2aにおけるベース絶縁層1との接着面(図7Aでは、下面)を除いた面(上面および両側面)上に粗化部5が形成される。なお、粗化部5の表面粗さ(算術平均高さ)Raは、例えば2μmである。
【0102】
次いで、上記導体層2aをエッチングすることにより後述の所定の導体パターン2を形成するために、図7A(c)に示すように、導体層2a上のエッチングする領域を除いた領域にエッチングレジスト30が形成される。
【0103】
そして、所定のエッチング液によりエッチング処理が行われた後、エッチングレジスト30が除去されることによって、図7A(d)に示すように、ベース絶縁層1上に導体パターン2が形成される。なお、形成された導体パターン2の表面に粗化部5が形成されていることとなる。
【0104】
続いて、図7B(e1)に示すように、屈曲部100aにおいては、導体パターン2上に感光性樹脂により平滑化レジスト8が形成される。
【0105】
一方、図7B(e2)に示すように、非屈曲部100bにおいては、図7A(d)の工程における処理後の状態が維持される。
【0106】
そして、屈曲部100aにおける導体パターン2上に平滑化レジスト8が形成されたものが、第2の実施の形態と同じ平滑化処理用の処理液中に浸漬される。その後、平滑化レジスト8が除去される。
【0107】
これにより、図7B(f1)に示すように、屈曲部100aにおいては、導体パターン2上の粗化部5は維持される。一方、図7B(f2)に示すように、非屈曲部100bにおいては、導体パターン2上の粗化部5は平滑化され除去される。
【0108】
次いで、図7B(g1)に示すように、屈曲部100aにおいては、ベース絶縁層1上および粗化部5が形成された導体パターン2上に、カバー絶縁層6が形成される。
【0109】
一方、図7B(g2)に示すように、非屈曲部100bにおいても、ベース絶縁層1上および粗化部5が形成されていない導体パターン2上に、カバー絶縁層6が形成される。
【0110】
以上により、屈曲部100aにおける導体パターン2とカバー絶縁層6とが粗化部5を介して接着された配線回路基板100が製造される。
【0111】
(5)他の実施の形態
上記実施の形態において、配線回路基板100の製造方法として、セミアディティブ法を用いたが、これに限定されるものではなく、サブトラクティブ法またはフルアディティブ法等の他の方法を用いることも可能である。
【0112】
さらに、配線回路基板100の非屈曲部100bの端子用開口部7には、上述のように、半導体チップを接続してもよいし、別の配線回路基板を接続してもよい。
【0113】
また、ベース絶縁層1の他の例として、ポリパラバン酸フィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、およびポリエーテルエーテルケトンフィルム等のエンジニアリングプラスチックフィルムが挙げられる。
【0114】
また、カバー絶縁層6の材料として、ベース絶縁層1と同様の材料を用いることができる。
【0115】
さらに、導体パターン2の材料は、銅に限定されず、銅を含む合金、アルミニウム、銀等の他の金属材料を用いてもよい。
【0116】
(6)各実施の形態における効果
このように、上記各実施の形態では、配線回路基板100の屈曲部100aにおける導体パターン2上に粗化処理により粗化部5が形成される。そして、導体パターン2上に形成された粗化部5を介してカバー絶縁層6が接着される。
【0117】
このような構成により、屈曲部100aおよび非屈曲部100bにおける導体パターン2上の領域が粗化されることによって生じる高周波信号(例えば、100MHz以上または300MHz以上)の伝送特性の悪化が防止される。
【0118】
すなわち、屈曲部100aにおける導体パターン2上の領域にのみ粗化部5を形成することによって、実質的な伝送路長が長くなることが防止される。それにより、高周波信号の伝送特性が悪化しない。
【0119】
また、屈曲部100aにおける導体パターン2上に粗化部5を形成することによって、導体パターン2とカバー絶縁層6との接着性を向上することが可能となる。それにより、屈曲または屈曲の繰り返しによる剥離が導体パターン2とカバー絶縁層6との間に生じることが防止される。
【0120】
特に、第1および第2の実施の形態に係る配線回路基板100では、屈曲部100aにおける導体パターン2の絶縁層1との接着面を除いた面上に粗化部5が形成される。これにより、導体パターン2とカバー絶縁層6との接着性がより向上される。
【0121】
また、特に、第3および第4の実施の形態に係る配線回路基板100では、屈曲部100aにおける導体パターン2の上面上に粗化部5が形成される。これにより、実質的な伝送路長が長くなることがさらに防止される。それにより、高周波信号の伝送特性の悪化がさらに抑制または防止される。
【0122】
このような第3および第4の実施の形態に係る配線回路基板100においては、以下の効果も奏される。
【0123】
すなわち、互いに隣接する導体パターン2に互いに逆方向の電流が流れる場合、電流が上記各導体パターン2の側面に沿って流れることがある(近接効果)。したがって、上記のように、屈曲部100aにおける導体パターン2の上面上に粗化部5が形成されることによって、実質的な伝送路長が長くなることが十分に防止される。それにより、高周波信号の伝送特性の悪化が十分に抑制または防止される。
【0124】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各構成部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0125】
上記実施の形態においては、ベース絶縁層1が絶縁層に相当し、導体パターン2が配線に相当し、カバー絶縁層6が保護層に相当し、粗化レジスト4が粗化用のレジストに相当し、平滑化レジスト8が平滑化用のレジストに相当し、めっきレジスト3がめっき用のレジストに相当し、エッチングレジスト30がエッチング用のレジストに相当する。
【実施例】
【0126】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
【0127】
(a)実施例1
上述した第1の実施の形態に基づいて配線回路基板100を製造した。なお、以下では、具体的な設計条件を除き、第1の実施の形態と重複する部分の説明については省略する。
【0128】
具体的な設計条件として、ベース絶縁層1の厚さを12μmとし、導体パターン2の厚さを18μmとした。
【0129】
また、粗化処理においては、マクダーミッド社製のマルチボンド(MB−100)を処理液として用い32℃で、1分間浸漬した。粗化部5の表面粗さ(算術平均高さ)Raは2μmとした。
【0130】
(b)実施例2
上述した第2の実施の形態に基づいて配線回路基板100を製造した。なお、以下では、具体的な設計条件を除き、第2の実施の形態と重複する部分の説明については省略する。
【0131】
具体的な設計条件として、ベース絶縁層1の厚さを12μmとし、導体パターン2の厚さを18μmとした。
【0132】
また、粗化処理は、上述の実施例1と同じ処理液を用い、同様に行った。粗化部5の表面粗さ(算術平均高さ)Raは2μmとした。
【0133】
さらに、平滑化処理においては、過硫酸ナトリウム水溶液を処理液として用いた。
【0134】
(c)実施例3
上述した第3の実施の形態に基づいて配線回路基板100を製造した。なお、以下では、具体的な設計条件を除き、第3の実施の形態と重複する部分の説明については省略する。
【0135】
具体的な設計条件として、ベース絶縁層1の厚さを12μmとし、導体パターン2の厚さを18μmとした。
【0136】
また、粗化処理は、上述の実施例1と同じ処理液を用い、同様に行った。粗化部5の表面粗さ(算術平均高さ)Raは2μmとした。
【0137】
(d)実施例4
上述した第4の実施の形態に基づいて配線回路基板100を製造した。なお、以下では、具体的な設計条件を除き、第4の実施の形態と重複する部分の説明については省略する。
【0138】
具体的な設計条件として、二層基材のベース絶縁層1の厚さを12μmとし、銅箔からなる導体層2aの厚さを20μmとした。
【0139】
また、粗化処理は、上述の実施例1と同じ処理液を用い、同様に行った。粗化部5の表面粗さ(算術平均高さ)Raは2μmとした。さらに、平滑化処理においては、上述の実施例2と同じ処理液を用いた。
【0140】
(e)比較例1
粗化処理を行わないことを除いて、上述の実施例1と同様にして配線回路基板を製造した。
【0141】
すなわち、本比較例では、ベース絶縁層1上に形成される導体パターン2の表面に粗化部5を形成しないので、屈曲部100aおよび非屈曲部100bにおける導体パターン2の表面全体は平滑となっている。なお、導体パターン2の表面粗さ(算術平均高さ)Raは1.0μm未満であった。
【0142】
(f)比較例2
平滑化処理を行わないことを除いて、上述の実施例2と同様にして配線回路基板を製造した。
【0143】
すなわち、本比較例では、屈曲部100aおよび非屈曲部100bにおける導体パターン2の表面全体に粗化部5を形成した。粗化部5の表面粗さ(算術平均高さ)Raは2μmであった。
【0144】
(g)評価
実施例1〜4で製造した各配線回路基板100、および比較例1,2で製造した各配線回路基板について屈曲信頼性試験を行った。なお、屈曲信頼性試験とは、配線回路基板に対し屈曲(屈曲動作)を繰り返し行った後、導体パターン2とカバー絶縁層6との間に剥離が生じているか否かを調査する試験である。
【0145】
その結果、実施例1〜4の各配線回路基板100および比較例2の配線回路基板の屈曲部100aにおいては、導体パターン2とカバー絶縁層6との間に剥離は生じなかったが、比較例1の配線回路基板の屈曲部100aにおいては、導体パターン2とカバー絶縁層6との間に剥離が生じていた。
【0146】
また、実施例1〜4の各配線回路基板100、および比較例1の配線回路基板においては、高周波特性において周波数1GHzでの伝送損失が0.1dB/cmであったのに対して、比較例2の配線回路基板においては、高周波特性において周波数1GHzでの伝送損失が0.5dB/cmとなり非常に悪くなった。
【0147】
以上の結果から、屈曲部100aにおける導体パターン2上の領域にのみ粗化部5を形成することによって、実質的な伝送路長が長くなることが防止され、高周波信号の伝送特性が悪化しないことが確認できた。
【0148】
また、屈曲部100aにおける導体パターン2上に粗化部5を形成することによって、導体パターン2とカバー絶縁層6との接着性が向上されることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、種々の電気機器または電子機器等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】第1〜第4の実施の形態に係る配線回路基板の全体構成を示す平面図である。
【図2】セミアディティブ法による配線回路基板の製造方法の各工程を示す模式的断面図である。
【図3】ベース絶縁層上に導体パターンが形成された後、配線回路基板が製造されるまでの各工程を示す断面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る配線回路基板の製造方法により製造された配線回路基板のA−A線断面(図1)の模式図である。
【図5】ベース絶縁層上に導体パターンが形成された後、配線回路基板が製造されるまでの各工程の他の例を示す断面図である。
【図6A】図2(c)の工程後、配線回路基板が製造されるまでの各工程のさらに他の例を示す断面図である。
【図6B】図2(c)の工程後、配線回路基板が製造されるまでの各工程のさらに他の例を示す断面図である。
【図7A】第4の実施の形態に係る配線回路基板が製造されるまでの各工程を示す断面図である。
【図7B】第4の実施の形態に係る配線回路基板が製造されるまでの各工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0151】
1 ベース絶縁層
2 導体パターン
2a 導体層
3 めっきレジスト
4 粗化レジスト
5 粗化部
6 カバー絶縁層
7 端子用開口部
8 平滑化レジスト
30 エッチングレジスト
100 配線回路基板
100a 屈曲部
100b 非屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲部および非屈曲部を有する配線回路基板であって、
前記屈曲部および前記非屈曲部に渡って設けられる絶縁層と、
前記絶縁層上に形成される1または複数の配線と、
前記1または複数の配線を覆うように前記絶縁層上に形成される保護層とを備え、
前記屈曲部における前記1または複数の配線の面がそれぞれ粗化されていることを特徴とする配線回路基板。
【請求項2】
前記1または複数の配線における前記絶縁層との積層面に対向する面が少なくとも粗化されていることを特徴とする請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記粗化された面の算術平均高さは、1μm以上3μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記1または複数の配線は、前記屈曲部において互いに並列に延びる複数の配線を有し、前記複数の配線の互いに対向する面は粗化されていないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項5】
屈曲部および非屈曲部を有する配線回路基板の製造方法であって、
前記屈曲部および前記非屈曲部に渡って設けられる絶縁層上に1または複数の配線を形成する工程と、
前記屈曲部を除く領域における前記1または複数の配線上に粗化用のレジストを形成する工程と、
前記粗化用のレジストが形成されていない前記1または複数の配線の面を粗化する工程と、
前記粗化用のレジストを除去する工程と、
前記屈曲部および前記非屈曲部における前記1または複数の配線を覆うように前記絶縁層上に保護層を形成する工程とを備えたことを特徴とする配線回路基板の製造方法。
【請求項6】
屈曲部および非屈曲部を有する配線回路基板の製造方法であって、
前記屈曲部および前記非屈曲部に渡って設けられる絶縁層上に1または複数の配線を形成する工程と、
前記1または複数の配線の表面を粗化する工程と、
前記非屈曲部を除く領域における前記1または複数の配線上に平滑化用のレジストを形成する工程と、
前記平滑化用のレジストが形成されていない前記1または複数の配線の面を平滑化する工程と、
前記平滑化用のレジストを除去する工程と、
前記屈曲部および前記非屈曲部における前記1または複数の配線を覆うように前記絶縁層上に保護層を形成する工程とを備えたことを特徴とする配線回路基板の製造方法。
【請求項7】
屈曲部および非屈曲部を有する配線回路基板の製造方法であって、
前記屈曲部および前記非屈曲部に渡って設けられる絶縁層上に1または複数の配線を、前記1または複数の配線とは逆パターンのめっき用のレジストを用いて形成する工程と、
前記非屈曲部における前記1または複数の配線および前記めっき用のレジスト上に粗化用のレジストを形成する工程と、
前記粗化用のレジストが形成されていない前記1または複数の配線の面を粗化する工程と、
前記めっき用のレジストおよび前記粗化用のレジストを除去する工程と、
前記屈曲部および前記非屈曲部における前記1または複数の配線を覆うように前記絶縁層上に保護層を形成する工程とを備えたことを特徴とする配線回路基板の製造方法。
【請求項8】
屈曲部および非屈曲部を有する配線回路基板の製造方法であって、
前記屈曲部および前記非屈曲部に渡って設けられ、絶縁層と導体層とが積層されてなる積層板における前記導体層上の面を粗化する工程と、
前記導体層上の所定の領域にエッチング用のレジストを形成し、前記所定の領域を除いて前記導体層をエッチングすることにより前記絶縁層上に1または複数の配線を形成する工程と、
前記エッチング用のレジストを除去する工程と、
前記屈曲部における前記1または複数の配線上に平滑化用のレジストを形成する工程と、
前記平滑化用のレジストが形成されていない前記1または複数の配線の面を平滑化する工程と、
前記平滑化用のレジストを除去する工程と、
前記屈曲部および前記非屈曲部における前記1または複数の配線を覆うように前記絶縁層上に保護層を形成する工程とを備えたことを特徴とする配線回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2007−317900(P2007−317900A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146212(P2006−146212)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】