説明

配線回路基板およびその製造方法

【課題】電子部品との接続を良好に維持しつつ放熱性が向上された配線回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁層1の一面の略中央部には、実装領域Sが設けられる。実装領域Sの内側から外側に延びるように導体パターン2が形成される。実装領域Sの周囲において、導体パターン2を覆うようにカバー絶縁層4が形成される。実装領域S上には、導体パターン2の端子部21が配置され、その端子部21に電子部品5のバンプがボンディングされる。絶縁層1の他面には例えば銅からなる金属層3が設けられる。金属層3には、電子部品5に対向する領域を挟むように一対のスリット3aが形成される。各スリット3aは、金属層3を複数の領域に分断しないように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LSI(Large scale integration)等の電子部品をフィルム状の基板に実装する技術として、COF(chip on film)実装技術がある。一般的に、COF用の基板(以下、COF基板と呼ぶ)は、ポリイミドからなる絶縁層と銅からなる導体パターンとの2層構造を有する。導体パターンには、端子部が形成される。導体パターンの端子部に電子部品の端子部(バンプ)がボンディングされる。
【0003】
ところで、COF基板のファインピッチ化および電子部品の高性能化に伴い、駆動時の発熱量が多くなる。それにより、電子部品の誤動作等の不具合が発生することがある。そのため、放熱を十分に行うことが重要になる。そこで、COF基板の裏面(電子部品がボンディングされない側の面)に、放熱のための金属層を設けることが提案されている。
【特許文献1】特開2007−27682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1に開示されるテープ配線基板では、チップ実装領域の下部において、ベースフィルムの下部面に金属層が形成されている。
【0005】
図7は、金属層を備えた従来のCOF基板の模式的断面図である。図7のCOF基板200においては、絶縁層31の一面に導体パターン32が設けられ、他面に金属層33が設けられている。導体パターン32の端子部には、電子部品35のバンプ35aがボンディングされる。
【0006】
このような構成により、金属層33を通して電子部品35の熱が放散される。しかしながら、COF基板200上に電子部品35を実装する際、またはCOF基板200を折り曲げて使用する際に、金属層33の一部に局所的に加わる応力が金属層33を通してCOF基板200の全体に伝播する。その結果、COF基板200が全体的に湾曲した状態になる。それにより、図7(b)に示すように、導体パターン32の一部が絶縁層31から剥離して断線したり、電子部品35の端子部35aが導体パターン32から離間したりする。それにより、電子部品35とCOF基板200の導体パターン32との接続を良好に維持することができない。
【0007】
本発明の目的は、電子部品との接続を良好に維持しつつ放熱性が向上された配線回路基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の発明に係る配線回路基板は、電子部品が実装される実装領域を有する配線回路基板であって、絶縁層と、絶縁層の一面に形成され、電子部品に電気的に接続されるべき導体パターンと、絶縁層の他面に形成され、開口部を有する金属層とを備え、開口部は、実装領域よりも外側における金属層の領域に配置されるとともに、金属層が分断されないように形成されたものである。
【0009】
この配線回路基板においては、絶縁層の一面に形成された導体パターンに電子部品が接続される。電子部品の熱は、絶縁層の他面に形成された金属層を通して放散される。それにより、電子部品の誤動作の発生を防止することができる。
【0010】
また、実装領域よりも外側における金属層の領域に開口部が形成されることにより、電子部品の実装時等に配線回路基板の一部に局所的に加わる応力が、金属層を通して配線回路基板の全体に伝播することが抑制される。それにより、導体パターンの一部が絶縁層から剥離して断線すること、および電子部品が導体パターンから離間することが防止される。その結果、導体パターンと電子部品との間で接続不良が発生することが防止される。
【0011】
また、金属層が分断されないように開口部が形成されることにより、金属層内における熱の伝達効率の低下が抑制される。それにより、金属層による放熱性を十分に確保しつつ導体パターンと電子部品との接続を良好に維持することができる。
【0012】
(2)開口部は、実装領域に重なる金属層の領域を挟むように形成されてもよい。
【0013】
この場合、実装領域に加わる応力が金属層を通して実装領域の外側の領域に伝播することが抑制される。また、実装領域の外側に加わる応力が金属層を通して実装領域に伝播することが抑制される。これにより、簡単な構成で効率良く金属層内での応力の伝播を抑制することができる。
【0014】
(3)開口部は線状のスリットを含み、スリットの一端部および他端部のうち少なくとも一方は金属層の縁部から離間してもよい。
【0015】
この場合、開口部が線状のスリットであることにより、金属層の面積を十分に確保することができる。また、スリットの一端部および他端部のうち少なくとも一方は金属層の縁部から離間するので、スリットによって金属層が分断されない。したがって、金属層による放熱性を十分に確保しつつスリットにより金属層内での応力の伝播を十分に抑制することができる。
【0016】
(4)実装領域は矩形状を有し、スリットは、実装領域の互いに平行な一対の辺の一方および他方に沿って直線状にそれぞれ延びる第1および第2のスリットを含んでもよい。
【0017】
この場合、簡単な構成で金属層による放熱性を確保しつつ金属層内での応力の伝播を十分に抑制することができる。
【0018】
(5)第1および第2のスリットの幅は、0.1mmよりも大きく2mmよりも小さくてもよい。この場合、金属層内での応力の伝播をより十分に抑制することができる。
【0019】
(6)第1および第2のスリットの長さは、実装領域の一対の辺の長さよりも1mm以上長くてもよい。この場合、金属層内での応力の伝播をより十分に抑制することができる。
【0020】
(7)第1および第2のスリットの長さは、実装領域の一対の辺に平行な方向における金属層の長さの3分の2以下であってもよい。この場合、金属層による放熱性をより十分に確保することができる。
【0021】
(8)第1および第2のスリットと実装領域に重なる金属層の領域との距離は、それぞれ2mmより大きく5mmより小さくてもよい。この場合、金属層による放熱性を十分に確保しつつ金属層内での応力の伝播を十分に抑制することができる。
【0022】
(9)第2の発明に係る配線回路基板の製造方法は、電子部品が実装される実装領域を有する配線回路基板の製造方法であって、絶縁層の一面に、電子部品に電気的に接続されるべき導体パターンを形成する工程と、絶縁層の他面に、開口部を有する金属層を形成する工程とを備え、開口部は、実装領域よりも外側における金属層の領域に配置されるとともに、金属層が分断されないように形成されるものである。
【0023】
この配線回路基板の製造方法においては、絶縁層の一面に導体パターンが形成され、絶縁層の他面に金属層が形成される。この場合、導体パターンに接続された電子部品の熱が、金属層を通して放散される。それにより、電子部品の誤動作の発生を防止することができる。
【0024】
また、実装領域よりも外側における金属層の領域に開口部が形成されることにより、電子部品の実装時等に配線回路基板の一部に局所的に加わる応力が、金属層を通して配線回路基板の全体に伝播することが抑制される。それにより、導体パターンの一部が絶縁層から剥離して断線すること、および電子部品が導体パターンから離間することが防止される。その結果、導体パターンと電子部品との間で接続不良が発生することが防止される。
【0025】
また、金属層が分断されないように開口部が形成されることにより、金属層内における熱の伝達効率の低下が抑制される。それにより、金属層による放熱性を十分に確保しつつ導体パターンと電子部品との接続を良好に維持することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電子部品の熱が、絶縁層の他面に形成された金属層を通して放散されるので、電子部品の誤動作の発生を防止することができる。また、金属層による放熱性を十分に確保しつつ導体パターンと電子部品との接続を良好に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態では、配線回路基板の一例としてCOF(chip on film)用の基板(以下、COF基板と呼ぶ)について説明する。
【0028】
(1)構成
図1は本実施の形態に係るCOF基板の断面図であり、図2は本実施の形態に係るCOF基板の平面図である。なお、図2(a)は図1におけるCOF基板の上面を示し、図2(b)は図1におけるCOF基板の下面を示す。また、図2(a)および図2(b)のA−A線断面が図1の断面に相当する。
【0029】
図1および図2に示すように、COF基板100は例えばポリイミドからなる絶縁層1を有する。絶縁層1の一面の略中央部には、実装領域Sが設けられる。実装領域Sの内側から外側に延びるように導体パターン2が形成される。なお、導体パターン2は、電気信号を伝送するための信号線と、電気信号を伝送しないダミー線とを含む。実装領域Sの周囲において、導体パターン2を覆うようにカバー絶縁層4が形成される。実装領域S上には、導体パターン2の端子部21が配置される。
【0030】
実装領域Sに重なるように、絶縁層1上に電子部品5(例えばLSI(Large scale integration))が実装される。具体的には、電子部品5のバンプ5a(図1)が導体パターン2の端子部21にボンディングされる。実装領域Sの形状は、平面視における電子部品5の形状と等しく設定される。本例では、長方形状を有する電子部品5が用いられる。
【0031】
図2(b)に示すように、絶縁層1の他面には例えば銅からなる金属層3が設けられる。金属層3には、電子部品5に対向する領域を挟むように一対のスリット3aが形成される。
【0032】
各スリット3aは、金属層3を複数の領域に分断しないように形成される。すなわち、各スリット3aの一端および他端の少なくとも一方は、金属層3の四辺から離間する。
【0033】
このCOF基板100においては、電子部品5から発生する熱が絶縁層1を介して金属層3に伝達されて放散される。そのため、電子部品5およびその周囲に熱が滞留しないので、電子部品5の誤作動が発生することが防止される。
【0034】
(2)スリットの詳細な形状
図3は、金属層3に形成されるスリット3aの詳細な形状について説明するための平面図である。以下の説明において、電子部品5に対向する金属層3の矩形の領域(図3に一点鎖線で示す領域)を対向領域Saと称し、対向領域Saの短辺B1に平行な方向を短辺方向と称し、対向領域Saの長辺B2に平行な方向を長辺方向と称する。なお、対向領域Saの形状は平面視における電子部品5の形状と同じである。
【0035】
図3において、各スリット3aの幅W1は0.1mmよりも大きく2mmよりも小さいことが好ましい。また、各スリット3aは短辺方向に平行であることが好ましく、各スリット3aの長さL1は対向領域Saの短辺B1の長さL2よりも1mm以上大きいことが好ましい。また、各スリット3aの長さL1は短辺方向における金属層3の長さL3の3分の2以下であることが好ましい。
【0036】
また、短辺方向における各スリット3aの一端部と対向領域Saとの距離D1、および短辺方向における各スリット3aの他端部と対向領域Saとの距離D2は、それぞれ0.5mm以上であることが好ましい。また、各スリット3aと対向領域Saとの長辺方向における距離D3は2mmよりも大きく5mmよりも小さいことが好ましい。
【0037】
(3)製造方法
次に、本実施の形態に係るCOF基板100の製造方法の一例を説明する。図4および図5は、本実施の形態に係るCOF基板100の製造方法について説明するための工程断面図である。なお、図4および図5に示す断面は、図2のB−B線断面に相当する。
【0038】
図4(a)に示すように、ポリイミドおよび銅からなる2層基材を用意する。この2層基材は、COF基板100の絶縁層1および金属層3に相当する。
【0039】
まず、絶縁層1の上面にスパッタリングにより金属薄膜(図示せず)を形成する。そして、図4(b)に示すように、金属薄膜上に導体パターン2(図1)の反転パターンを有するドライフィルムレジスト12を形成する。反転パターンは、ドライフィルムレジスト12に露光および現像を行うことにより形成される。
【0040】
次に、図4(c)に示すように、絶縁層1の露出部分(金属薄膜の露出部分)に電解めっきにより導体パターン2を形成する。そして、図4(d)に示すように、ドライフィルムレジスト12を剥離液によって除去するとともに、ドライフィルムレジスト12下の金属薄膜の領域をエッチングにより除去する。
【0041】
続いて、電子部品5との接続のための表面処理として、導体パターン2の表面に錫の無電解めっきを行う。その後、図5(e)に示すように、導体パターン2の所定の領域を覆うようにカバー絶縁層4を形成する。
【0042】
次に、図5(f)に示すように、スリットを形成する領域を除いて金属層の下面にドライフィルムレジスト13を形成する。そして、図5(g)に示すように、露出する金属層3の部分をエッチングし、スリット3aを形成する。その後、図5(h)に示すように、剥離液によってドライフィルムレジスト13を除去する。このようにして、本実施の形態に係るCOF基板100が完成する。
【0043】
なお、ここでは導体パターン2をセミアディティブ法により形成する例を示したが、導体パターン2をサブトラクティブ法により形成してもよい。
【0044】
(4)実施の形態の効果
本実施の形態では、電子部品5に対向する領域を挟むように金属層2に一対のスリット3aが形成される。それにより、電子部品35の実装時またはCOF基板100の折曲時等において、COF基板100の一部に局所的に加わる応力が金属層2を通してCOF基板100の全体に伝播することが防止される。
【0045】
具体的には、一対のスリット3aの外側におけるCOF基板100の領域に加わる応力が一対のスリット3aの内側におけるCOF基板100の領域に伝播することが防止される。また、一対のスリット3aの内側におけるCOF基板100の領域に加わる応力が一対のスリット3aの外側におけるCOF基板100の領域に伝播することが防止される。それにより、導体パターン2の一部が絶縁層1から剥離して断線すること、および電子部品5のバンプ5aが導体パターン2の端子部21aから離間することが防止される。
【0046】
なお、スリット3aによって金属層3が分断されると、金属層2における熱の伝達効率が低下し、放熱性が悪化する。そこで、本実施の形態では、金属層2が分断されないようにスリット3aが形成される。そのため、放熱性を悪化させることなく、応力の伝播を抑制することができる。
【0047】
これらにより、電子部品5と配線パターン21との接続を良好に維持しつつ放熱性を十分に向上させることができる。
【0048】
(5)実施例および比較例
上記のCOF基板100において、スリット3aの幅W1および長さL1、ならびに各スリット3aと対向領域Saとの長辺方向における距離D3を種々の値に設定し(図3参照)、COF基板100と電子部品5との接続性およびCOF基板100の放熱性を調べた。
【0049】
なお、絶縁層1の材料としてポリイミドを用い、導体層2および金属層3の材料として銅を用いた。また、絶縁層1の厚さを35μmをとし、金属層3の厚さを15μmとした。また、導体パターン2の各信号線の幅を8μmとし、実装領域Sにおいて隣接する信号線間の距離を12μmとした。また、対向領域Saの短辺B1の長さL2を1.6mmとし、対向領域Saの長辺B2の長さL4を15.1mmとした。すなわち、平面視において1.6mmの短辺および15.1mmの長辺を有する電子部品5を用いた。また、短辺方向における金属層3の長さL3を15mmとした。
【0050】
(5−1)実施例
実施例1〜10における幅W1、長さL1,L2,L3および距離D3(図3参照)の設定値を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示すように、実施例1〜4では、長さL1および距離D3をそれぞれ7mmおよび3mmに設定し、幅W1を0.1mm、0.2mm、1mmまたは1.5mmに設定した。実施例5〜8では、幅W1および距離D3をそれぞれ1mmおよび3mmに設定し、長さL1を1mm、3mm、10mmまたは13mmに設定した。実施例9,10では、幅W1および長さL1をそれぞれ1mmおよび7mmに設定し、距離D3を3mmまたは4mmに設定した。
【0053】
(5−2)比較例
比較例1,2における幅W1、長さL1,L2,L3および距離D3(図3参照)の設定値を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2に示すように、比較例1では、金属層3にスリット3aを形成しなかった。また、比較例2では、幅W1および距離D3をそれぞれ1mmおよび3mmに設定するとともに、金属層3を分断するようにスリット3aを形成した。
【0056】
(5−3)評価
実施例1〜8および比較例1,2のCOF基板100において、電子部品5の実装時における導体パターン2の断線率および放熱性の良否を調べた。
【0057】
なお、実装時のツール温度を430℃とし、ステージ温度を100℃とし、実装荷重を30Nとした。ここで、ツール温度は、導体層2の端子部21aまたは電子部品5の端子部21の加熱温度であり、ステージ温度は、電子部品5の実装時にCOF基板100が載置されるステージの温度である。
【0058】
表3に、実施例1〜8および比較例1,2における導体パターン2の断線率を示す。
【0059】
【表3】

【0060】
表3に示すように、実施例1〜10においては、比較例1に比べて断線率が低かった。これにより、金属層3にスリット3aが形成されている場合には、スリット3aが形成されてない場合に比べて導体パターン2と電子部品5との接続が良好に維持されることがわかった。
【0061】
また、実施例1〜8においては電子部品5の熱が適度に放散されたが、比較例2においては電子部品5の熱が放散されなかった。これにより、金属層3がスリット3aによって分断されない場合には、金属層3がスリット3aによって分断される場合に比べて良好な放熱性が確保されることがわかった。
【0062】
また、実施例1〜4により、スリット3aの幅W1が0.2〜1.5mmの範囲で設定された場合には、スリット3aの幅W1が1mmに設定された場合に比べて導体パターン2と電子部品5との接続がより良好に維持されることがわかった。
【0063】
また、実施例5〜8により、スリット3aの長さL1が3〜13mmの範囲で設定された場合には、スリット3aの長さL1が1mmに設定された場合に比べて導体パターン2と電子部品5との接続がより良好に維持されることがわかった。
【0064】
また、実施例9,10により、各スリット3aと対向領域Saとの長辺方向における距離D3が3〜4mmの範囲で設定された場合には、導体パターン2と電子部品5との接続が良好に維持されることがわかった。
【0065】
(6)スリットの変形例
金属層3に形成されるスリット3aの配置および形状は上記の例に限定されない。図6は、金属層3に形成されるスリット3aの変形例を示す図である。
【0066】
図6(a)の例では、対向領域Saを挟む一方および他方の領域において、金属層3の一方の長辺から複数のスリット6aが短辺方向に所定の長さで延び、金属層3の他方の長辺から複数のスリット6bが短辺方向に所定の長さで延びている。スリット6aとスリット6bとは、互いに連続しないように交互に配置されている。本例においても、スリット6a,6bにより、金属層3内での応力の伝播を十分に抑制することができる。また、スリット6a,6bによって金属層3が分断されないので、放熱性を良好に維持することができる。
【0067】
図6(b)の例では、対向領域Saを挟む一方および他方の領域において、金属層3の一方の長辺から複数のスリット7aが短辺方向に所定の長さで延び、複数のスリット7aに対応するように金属層3の他方の長辺から複数のスリット7bが短辺方向に所定の長さで延びている。各スリット7aとそれに対応するスリット7bとは、共通の直線上で互いに離間するように配置されている。隣接する2対のスリット7a,7bの間でかつ短辺方向の中央部の領域には、スリット7cが形成されている。本例においても、スリット7a,7b,7cにより、金属層3内での応力の伝播を十分に抑制することができる。また、スリット7a,7b,7cによって金属層3が分断されないので、放熱性を良好に維持することができる。
【0068】
図4(c)の例では、対向領域Saを挟む一方および他方の領域に複数の略円弧状のスリット8aおよびスリット8bがそれぞれ形成されている。スリット8aとスリット8bとは対向領域Saに関して互いに対称に形成されている。本例においても、スリット8a,8bにより、金属層3内での応力の伝播を十分に抑制することができる。また、スリット8a,8bによって金属層3が分断されないので、放熱性を良好に維持することができる。
【0069】
スリットの位置、数および形状はこれらに限定されず、電子部品5の形状または大きさ等に応じて、適宜変更してもよい。また、線状のスリットの代わりに、円形状または三角形状等の他の形状を有する開口部が金属層3に形成されてもよい。
【0070】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0071】
上記実施の形態では、COF基板100が配線回路基板の例であり、スリット3a,6a,6b,7a,7b,7c,8a,8bが開口部の例であり、スリット3aが第1および第2のスリットの例である。
【0072】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0073】
(8)他の実施の形態
絶縁層1の材料は、ポリイミドに限らず、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルフォン等の他の絶縁材料を用いてもよい。また、導体パターン2の材料は、銅に限らず、銅合金、金、アルミニウム等の他の金属材料を用いてもよい。
【0074】
金属層3の材料は、銅に限らない。ただし、例えば銅、金、銀またはアルミニウム等の熱伝導率が高い金属を用いることが好ましい。
【0075】
本発明は、フレキシブル配線回路基板、リジッド配線回路基板等の種々の配線回路基板に適用することができる。また、電子部品60としては、LSIに限らず、コンデンサ等の他の電子部品を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、電子部品が実装される種々の配線回路基板に有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施の形態に係るCOF基板の断面図である。
【図2】本実施の形態に係るCOF基板の平面図である。
【図3】金属層3に形成されるスリットの詳細な形状について説明するための平面図である。
【図4】本実施の形態に係るCOF基板の製造方法について説明するための工程断面図である。
【図5】本実施の形態に係るCOF基板の製造方法について説明するための工程断面図である。
【図6】金属層に形成されるスリットの変形例を示す図である。
【図7】金属層を備えた従来のCOF基板の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1,31 絶縁層
2,32 導体パターン
3,33 金属層
3a,6a,6b,7a,7b,7c,8a,8b スリット
4 カバー絶縁層
5,35 電子部品
5a,35a バンプ
21 端子部
S 実装領域
Sa 対向領域
100 COF基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装される実装領域を有する配線回路基板であって、
絶縁層と、
前記絶縁層の一面に形成され、前記電子部品に電気的に接続されるべき導体パターンと、
前記絶縁層の他面に形成され、開口部を有する金属層とを備え、
前記開口部は、前記実装領域よりも外側における前記金属層の領域に配置されるとともに、前記金属層が分断されないように形成されたことを特徴とする配線回路基板。
【請求項2】
前記開口部は、前記実装領域に重なる前記金属層の領域を挟むように形成されることを特徴とする請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記開口部は線状のスリットを含み、前記スリットの一端部および他端部のうち少なくとも一方は前記金属層の縁部から離間することを特徴とする請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記実装領域は矩形状を有し、
前記スリットは、前記実装領域の互いに平行な一対の辺の一方および他方に沿って直線状にそれぞれ延びる第1および第2のスリットを含むことを特徴とする請求項3記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記第1および第2のスリットの幅は、0.1mmよりも大きく2mmよりも小さいことを特徴とする請求項4記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記第1および第2のスリットの長さは、前記実装領域の前記一対の辺の長さよりも1mm以上長いことを特徴とする請求項4または5記載の配線回路基板。
【請求項7】
前記第1および第2のスリットの長さは、前記実装領域の前記一対の辺に平行な方向における前記金属層の長さの3分の2以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項8】
前記第1および第2のスリットと前記実装領域に重なる前記金属層の領域との距離は、それぞれ2mmより大きく5mmより小さいことを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項9】
電子部品が実装される実装領域を有する配線回路基板の製造方法であって、
絶縁層の一面に、前記電子部品に電気的に接続されるべき導体パターンを形成する工程と、
前記絶縁層の他面に、開口部を有する金属層を形成する工程とを備え、
前記開口部は、前記実装領域よりも外側における前記金属層の領域に配置されるとともに、前記金属層が分断されないように形成されることを特徴とする配線回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−182228(P2009−182228A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21273(P2008−21273)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】