説明

酸化物半導体膜の作製方法、およびトランジスタの作製方法

【課題】結晶性の高い酸化物半導体膜の作製方法を提供することを課題の一とする。また、高い電界効果移動度を有するトランジスタの作製方法を提供することを課題の一とする。
【解決手段】基板上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で酸化物半導体膜を形成し、酸素を含む雰囲気で熱処理をして、酸化物半導体膜を結晶化させる酸化物半導体膜の作製方法である。また、基板上に、ゲート電極を形成し、ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で酸化物半導体膜を形成し、酸素を含む雰囲気での第1の熱処理をして、酸化物半導体を結晶化させ、結晶化した酸化物半導体膜上にソース電極およびドレイン電極を形成し、結晶化した酸化物半導体膜、ソース電極およびドレイン電極上に酸素原子を含む絶縁膜を形成し、結晶化した酸化物半導体膜を第2の熱処理により酸化させるトランジスタの作製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体膜の結晶化方法、および該酸化物半導体膜を用いたトランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイに代表される表示装置において、盛んに研究開発がなされており、その多くに用いられているトランジスタは、ガラス基板上にて、アモルファスシリコンや多結晶シリコンなどのシリコン半導体によって形成されている。
【0003】
シリコン半導体を用いたトランジスタに代わって、酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、電子デバイスや光デバイスに応用する技術が注目されている。例えば、酸化物半導体として一元系金属酸化物である酸化亜鉛や、ホモロガス化合物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物を用いてトランジスタを作製し、表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる技術が、特許文献1および特許文献2で開示されている。
【0004】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタの多くは、チャネル領域にアモルファス酸化物半導体が用いられている。アモルファス酸化物半導体を用いたトランジスタは、アモルファスシリコンを用いたトランジスタより高い電界効果移動度が得られる。しかし、高機能デバイスに応用するためには、さらに高い電界効果移動度が得られる結晶性の高い酸化物半導体が求められており、さまざまな結晶化技術の研究開発がなされている(特許文献3および特許文献4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【特許文献3】特開2008−311342号公報
【特許文献4】特開2009−295997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化物半導体膜を結晶化させるには、600℃以上の高温の熱処理、またはレーザ照射処理が必要とされる。しかし、酸化物半導体は原子の結合エネルギーが大きな材料であるため、融点は2000℃以上と高く、結晶性の高い酸化物半導体膜を形成することは困難であった。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、結晶性の高い酸化物半導体膜の作製方法を提供することを課題の一とする。また、該酸化物半導体膜を用いた高い電界効果移動度を有するトランジスタの作製方法を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、酸化物半導体膜を作製する際に、酸素を意図的に含ませない雰囲気で酸化物半導体膜を形成したのち、酸素を含むガス雰囲気中で酸化物半導体膜に熱処理をし、酸化物半導体膜を結晶化させることである。
【0009】
また、本実施の一形態の酸化物半導体膜は、単層の酸化物半導体膜に限定されず、構成元素の異なる酸化物半導体、同じ構成元素であっても組成比の異なる酸化物半導体を積層した酸化物半導体膜にも適用できる。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、基板に第1の酸化物半導体膜を形成し、第1の熱処理により第1の酸化物半導体膜を結晶化させ、結晶化した第1の酸化物半導体膜の上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で第2の酸化物半導体を形成したのち、酸素を含むガス雰囲気中で第2の熱処理をし、第2の酸化物半導体膜を結晶化させることである。
【0011】
また、本発明の他の一態様は、酸素を意図的に含ませない雰囲気で、基板に第1の酸化物半導体膜を形成し、第1の熱処理により第1の酸化物半導体膜を結晶化させ、結晶化した第1の酸化物半導体膜上に第2の酸化物半導体膜を、酸素を意図的に含ませない雰囲気で形成したのち、酸素を含むガス雰囲気中で第2の熱処理をし、第2の酸化物半導体膜を結晶化させることである。
【0012】
また、第1の酸化物半導体膜および第2の酸化物半導体膜を形成した後に、第1の温度および第2の温度で加熱する熱処理をし、第1の温度で第1の酸化物半導体膜を結晶化させ、第2の温度で第2の酸化物半導体膜を結晶化させることができる。
【0013】
また、第1の酸化物半導体膜および第2の酸化物半導体膜を問わず、酸化物半導体膜として、In−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などに代表される一元系酸化物半導体、およびIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体、In−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体などに代表される多元系酸化物半導体を適用することができる。
【0014】
なお、本明細書において、「酸素を意図的に含ませない雰囲気」とは、「形成した酸化物半導体膜が酸素欠損する雰囲気」である。
【0015】
上記において、第2の酸化物半導体膜の結晶化は、結晶化した第1の酸化物半導体膜を種結晶として結晶化が生じる。
【0016】
また、第1の酸化物半導体膜および第2の酸化物半導体膜を問わず、酸素を意図的に含ませない雰囲気で、酸化物半導体膜を形成する際は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、キセノンガスまたはクリプトンガス雰囲気で形成することである。
【0017】
なお、第1の酸化物半導体膜および第2の酸化物半導体膜を問わず、酸素を意図的に含ませない雰囲気で形成した酸化物半導体膜は、酸素を含むガス雰囲気中で熱処理することで基板面に対してc軸配向しながら結晶化する。
【0018】
なお、第1の酸化物半導体膜および第2の酸化物半導体膜を問わず、酸素を意図的に含ませない雰囲気で形成した酸化物半導体膜を、酸素を含むガス雰囲気中で熱処理して結晶化させることで、結晶化した酸化物半導体膜のキャリア密度は1×1014/cm未満である。
【0019】
また、本発明の一態様である酸化物半導体膜の作製方法をチャネル領域の形成に用いることで、高い電界効果移動度を有するトランジスタを作製することができる。
【発明の効果】
【0020】
高い結晶性を有する酸化物半導体膜を作製することができる。また、高い電界効果移動度を有するトランジスタを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一態様を示す結晶化工程を説明する断面図である。
【図2】本発明の一態様を示すトランジスタの作製工程を説明する断面図である。
【図3】熱処理をした酸化物半導体膜のX線回折の測定結果を説明する図である。
【図4】積膜した酸化物半導体膜を熱処理した後のX線回折の測定結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
「ソース」や「ドレイン」の機能は、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0023】
(実施の形態1)
本実施の形態では、結晶性の高い酸化物半導体膜の作製方法について説明する。また、本実施の形態で記す結晶化方法は一元系酸化物半導体だけではなく、全ての多元系酸化物半導体にも適用することができる。
【0024】
酸化物半導体膜を形成する基板としては、本作製過程の処理温度に耐えうるものであれば特に限定されない。ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられる。なお、BよりBaOを多く含むガラス基板を用いることが好ましい。
【0025】
さらに、上記のガラス基板に代えて、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)基板等のセラミック基板、サファイア基板等の絶縁体からなる基板を用いても良く、他にも形成する酸化物半導体膜の格子定数に近い単結晶基板なども用いることができる。また、石英基板や結晶化ガラスだけではなく、プラスチック等の有機基板、または、シリコンウェハ等の半導体基板の表面や金属材料よりなる導電性の基板の表面に絶縁性の膜を形成したものを用いることもできる。
【0026】
次に、酸化物半導体膜を基板上に形成する。本実施の形態における酸化物半導体とは一元系酸化物半導体および、全ての多元系酸化物半導体であり、一元系酸化物半導体としては、In−O系、Sn−O系、Zn−O系等の酸化物半導体が挙げられ、多元系酸化物半導体としては、In−Sn−Ga−Zn−O系、In−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系等の酸化物半導体が挙げられる。
【0027】
酸化物半導体膜を形成する際は、酸素を意図的に含ませない雰囲気で行う。具体的には希ガス(代表的にはアルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトン)雰囲気または、窒素雰囲気で行うのが良い。
【0028】
また、酸化物半導体膜の形成方法としては、スパッタリング法や、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)、分子線エピタキシー法(MBE法)、反応堆積エピタキシー法(RDE法)、レーザアブレーション法などを挙げることができる。なお、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)で行う際は、10−4Pa以下の高真空状態で行うことで、所望の酸化物半導体膜を形成することができる。
【0029】
また、上記した方法は、基板を加熱しながら行ってもよいし、基板を加熱せずに行っても良いが、基板を加熱しながら酸化物半導体を形成することで、基板からの熱エネルギーを結晶格子の形成に利用できるため好ましい。また、形成する際の基板加熱は高温のほうがより好ましい。
【0030】
次に、熱処理をして結晶化を行う。特に本実施の形態では、酸化物半導体膜を結晶化させるため600℃以上で熱処理を行う。この熱処理は、大気中もしくは酸素を含むガス雰囲気中で行う必要がある。ここでは該結晶化として、大気雰囲気下で1時間の熱処理を行う。
【0031】
熱処理に用いる熱処理装置は特に限定されず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、基板を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、熱処理装置として、電気炉や、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、基板を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。また、エキシマレーザ等のレーザ照射による熱処理も行うことができる。
【0032】
上記熱処理によって、結晶性の高い酸化物半導体膜を得ることができる。これは、結晶化させる前の酸化物半導体膜が、酸素を意図的に含ませない雰囲気で形成された酸化物半導体膜であるために得られた結果である。
【0033】
以上のように、酸素を意図的に含ませない雰囲気で酸化物半導体膜を形成することで、酸素欠損した酸化物半導体膜を形成し、その後に熱処理を行うことで結晶化が促進される。
【0034】
酸素を意図的に含ませない雰囲気で酸化物半導体膜を形成すると、形成された酸化物半導体膜中で酸素欠損が生じ、酸化物半導体膜の原子密度は低下し、隙間の多い構造となると推測される。そして、隙間の多い構造の酸化物半導体膜を熱処理すると、酸化物半導体の構成原子は、基板面を動きやすくなるため、結晶格子が形成されやすくなり、結晶化が促進されるものと推測される。
【0035】
また、酸素を含む雰囲気中で、酸化物半導体膜を結晶化させる熱処理を行うことにより、酸素が酸化物半導体膜に供給され、該酸化物半導体膜の酸素欠損を補填する。このことは、視覚的にも確認される。酸素欠損が少なく、バンドギャップの広い酸化物半導体膜は無色透明であるが、酸素を意図的に含ませない雰囲気で形成した酸化物半導体膜は可視光を吸収し褐色となる。褐色の酸化物半導体膜は、酸素を含むガス雰囲気で熱処理を行うことで本来の透明な酸化物半導体膜となる。
【0036】
酸化物半導体膜の結晶性はX線回折(XRD)で評価することができる。X線回折結果から、酸素を意図的に含ませない雰囲気で形成した酸化物半導体膜は、基板に対してc軸配向しながら結晶化することを示すX線回折ピークが観測される。さらに、ホール効果測定やCV測定法(Capacitance Voltage法)を用いることにより、キャリア密度が1×1014/cm未満であることが確認できる。これより、結晶性の高い酸化物半導体膜が得られたことを確認することができる。
【0037】
(CV測定方法の説明)
本明細書中に示す酸化物半導体膜中のキャリア密度は、酸化物半導体膜を用いたMOSキャパシタを作製し、当該MOSキャパシタのCV測定(Capacitance Voltage Measurement)の結果(CV特性)を評価することで求めることが可能である。キャリア密度の測定は、次の(1)−(3)の手順で行う。(1)MOSキャパシタのゲート電圧Vgと、容量Cとの関係をプロットしたC−V特性を取得する。(2)当該C−V特性からゲート電圧Vgと、(1/C)との関係を表すグラフを取得し、当該グラフにおいて弱反転領域での(1/C)の微分値を求める。(3)得られた微分値を、キャリア密度Nを表す以下の式(1)に代入する。なお、式(1)において、eは電気素量、εは真空の誘電率、εは酸化物半導体の比誘電率である。
【0038】
【数1】


以上の手順により、酸化物半導体膜中のキャリア密度を求めることができる。
【0039】
(実施の形態2)
実施の形態1で示した結晶性の高い酸化物半導体膜の作製方法は、単層の酸化物半導体膜だけではなく、2層以上積層した酸化物半導体膜にも適用することができる。
【0040】
本実施の形態では、2層の酸化物半導体膜を結晶化する方法について図1(A)乃至図1(D)を用いて説明する。
【0041】
本実施の形態において、図1(A)に示すように、基板101と接するように第1の酸化物半導体膜102を形成したのち、第1の酸化物半導体膜102に熱処理をすることで、図1(B)に示すように、結晶化した第1の酸化物半導体膜121を形成する。次に、図1(C)に示すように、結晶化した第1の酸化物半導体膜121と接するように酸素を意図的に含ませない雰囲気で第2の酸化物半導体膜103を形成したのち、酸素を含むガス雰囲気中で熱処理することで、図1(D)に示すように、結晶化した第1の酸化物半導体膜121上に積層した第2の酸化物半導体膜103を結晶化させ、結晶性の高い第2の酸化物半導体膜104を得ることができる。
【0042】
結晶化した第1の酸化物半導体膜121を種結晶にして第2の酸化物半導体膜103を結晶化させることができるため、第2の酸化物半導体膜103にIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体膜など結晶化しにくいとされる多元系の酸化物半導体膜を用いた場合でも、第2の酸化物半導体膜103を容易に結晶化させることができる。例えば、第1の酸化物半導体膜102をZn−O系の酸化物半導体膜とし、第2の酸化物半導体膜103をIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体膜とすることができる。なお、第1の酸化物半導体膜102を、第2の酸化物半導体膜103と結晶構造が同じであり、且つ格子定数が近い酸化物半導体とすることが好ましい。
【0043】
第1の酸化物半導体膜102と第2の酸化物半導体膜103は、構成元素の異なる酸化物半導体膜、または同じ構成元素であっても組成比の異なる酸化物半導体膜とすることができる。なお、第1の酸化物半導体膜102と第2の酸化物半導体膜103は、構成元素および組成比が同じである酸化物半導体同士であっても良い。これは、一の酸化物半導体膜を、第1の酸化物半導体膜102と第2の酸化物半導体膜103として、2回に分けて形成してもよいということである。
【0044】
本実施の形態における酸化物半導体を形成する基板としては、実施の形態1で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0045】
第1の酸化物半導体膜102は実施の形態1で説明したものと同様のものを用いることができる。第1の酸化物半導体膜102を結晶化しやすいZn−O系の酸化物半導体などにするとよいが、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体膜などの結晶化しにくい多元系酸化物半導体膜であっても、形成する膜厚を、容易に結晶化できる程度に薄くすることで第1の酸化物半導体膜として用いることができる。該膜厚として具体的には10nm未満が好ましい。
【0046】
また、第1の酸化物半導体膜102の形成方法は特に限定されず、スパッタリング法や、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)、分子線エピタキシー法(MBE法)、反応堆積エピタキシー法(RDE法)、レーザアブレーション法などを挙げることができる。例えば、スパッタリング法であれば、酸素を含む雰囲気で成膜してもよいし、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気または、窒素雰囲気のような酸素を意図的に含ませない雰囲気で形成する。
【0047】
また、第1の酸化物半導体膜102の形成は基板を加熱しながら行ってもよいし、基板を加熱せずに行っても良いが、基板を加熱しながら第1の酸化物半導体膜102を形成するほうが、基板からの熱エネルギーを結晶格子の配列に利用できるため好ましい。また、形成時の基板加熱は高温で行うほうが好ましい。
【0048】
次に、第1の酸化物半導体膜102に熱処理をして結晶化を行う。特に本実施の形態では、結晶化させるため600℃以上で熱処理をする。本熱処理は、不活性ガス雰囲気でも可能であるが、大気中もしくは酸素を含むガス雰囲気中で行うのが好ましく、ここでは大気雰囲気下で1時間の熱処理を行う。この工程により、結晶化した第1の酸化物半導体膜121を得ることができる。なお、基板を加熱しながら形成した第1の酸化物半導体膜102が、第2の酸化物半導体膜103の結晶化の種結晶として機能する程度に結晶化していれば、本熱処理は省略することができる。
【0049】
熱処理に用いる熱処理装置は特に限定されず、実施の形態1で説明したものを用いることができる。
【0050】
次に、結晶化した第1の酸化物半導体膜121の上層に第2の酸化物半導体膜103を形成する。第2の酸化物半導体膜103は酸素を意図的に含ませない雰囲気で成膜する。また、第2の酸化物半導体膜103として、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体膜などの結晶化しにくい多元系酸化物半導体を用いてもよい。
【0051】
第2の酸化物半導体膜103は、結晶化した第1の酸化物半導体膜121と同一の結晶構造を有するもので、さらには格子定数が近いものとするほうが第2の酸化物半導体膜103を容易に結晶化させることができるため好ましい。
【0052】
第2の酸化物半導体膜103を、酸素を意図的に含まない雰囲気で形成する方法は、実施の形態1で示した方法で行うことができる。また、第2の酸化物半導体膜103を形成する際も、基板を加熱しながら行ってもよいし、基板を加熱せずに行っても良いが、基板を加熱しながら第2の酸化物半導体膜103を形成するほうが、基板からの熱エネルギーを結晶格子の配列に利用できるため好ましい。また、基板加熱は高温で行うほうがより良い。
【0053】
次に、結晶化した第1の酸化物半導体膜121の上に積層した第2の酸化物半導体膜103に熱処理をして、第2の酸化物半導体膜103の結晶化を行う。特に本実施の形態では、結晶化させるため600℃以上で熱処理をする。この熱処理は、大気中もしくは酸素を含むガス雰囲気中で行うのが好ましく、ここでは大気雰囲気下で1時間の熱処理を行う。
【0054】
熱処理に用いる熱処理装置は特に限定されず、実施の形態1で説明したものを用いることができる。
【0055】
上記熱処理によって、図1(D)に示したように結晶性の高い第2の酸化物半導体膜104を得ることができる。
【0056】
以上のように、結晶化した第1の酸化物半導体膜121の上に第2の酸化物半導体膜103を、酸素を意図的に含ませない雰囲気で形成すること、すなわち、結晶化した第1の酸化物半導体膜121の上に、酸素欠損した第2の酸化物半導体膜103を形成し、その後に熱処理を行うと、第2の酸化物半導体膜103の結晶化が促進される。
【0057】
結晶化した第1の酸化物半導体膜121の上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で第2の酸化物半導体膜103を形成すると、形成された第2の酸化物半導体膜103は、その膜中で酸素欠損が生じ、酸化物半導体膜の原子密度は低下し、隙間の多い構造となると推測される。そして、隙間の多い構造の酸化物半導体膜を熱処理すると、酸化物半導体膜の構成原子は、基板面を動きやすくなるため、結晶格子が形成されやすくなり、結晶化が促進されるものと推測される。
【0058】
また、酸素を含む雰囲気中で、酸化物半導体膜を結晶化させる熱処理を行うことにより、酸素が酸化物半導体膜に供給され、該酸化物半導体膜の酸素欠損を補填する。このことは、視覚的にも確認される。酸素欠損が少なく、バンドギャップの広い酸化物半導体膜は無色透明であるが、酸素を意図的に含ませない雰囲気で形成した酸化物半導体膜は可視光を吸収し褐色となる。褐色の酸化物半導体膜は、酸素を含むガス雰囲気で熱処理を行うことで本来の透明な酸化物半導体膜となる。
【0059】
本実施の形態においても、実施の形態1で記載したものと同じ方法で結晶性を評価できる。X線回折結果から、結晶性の高い第2の酸化物半導体膜104は、基板面に対してc軸配向しながら結晶化することを示すX線回折ピークが得られる。さらに、ホール効果測定やCV測定法(Capacitance Voltage法)の結果より、キャリア密度が1×1014/cm未満であることが確認できる。
【0060】
また、第2の酸化物半導体膜に熱処理をして結晶化させる工程において、上記では第2の酸化物半導体膜のみが結晶化すると記載してある。しかし、結晶化した第1の酸化物半導体膜121に非晶質な領域が含まれている場合は、第2の酸化物半導体膜に熱処理をして結晶化させる工程で、第1の酸化物半導体膜はさらに結晶化され、それに引き続いて第2の酸化物半導体膜が結晶化される。例えば、酸素を含む雰囲気にて形成され、結晶化させた第1の酸化物半導体膜は、酸素を意図的に含ませない雰囲気で第2の酸化物半導体膜を形成し、その後、酸素を含む雰囲気で熱処理を行うことで、第1の酸化物半導体膜の結晶性も向上させることができる。ゆえに、本発明の一態様には、第1の酸化物半導体膜および第2の酸化物半導体膜が結晶化される構成を含む。
【0061】
また、本実施の形態において、第1の酸化物半導体膜および第2の酸化物半導体膜を形成した後に、第1の温度および第2の温度で加熱する熱処理で、第1の酸化物半導体膜および第2の酸化物半導体膜を結晶化させることができる。その際、第1の酸化物半導体膜は、第2の酸化物半導体膜より結晶化しやすい酸化物半導体膜とすることが必要である。例えば、第1の酸化物半導体膜は、第2の酸化物半導体膜より低い温度で結晶化する酸化物半導体膜である。
【0062】
なお、本実施の形態では、結晶化した2層の酸化物半導体膜の作製方法について説明したが、積層した酸化物半導体膜はこれに限らず、2層以上積層した酸化物半導体膜についても、該積層した酸化物半導体膜のうち少なくとも1層を、酸素を意図的に含ませない雰囲気で形成し、且つ、酸素を含む雰囲気で熱処理を行うことで、該積層した酸化物半導体膜を結晶化させることができる。
【0063】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態および実施例に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0064】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態2で説明した酸化物半導体膜を含むトランジスタの作製方法について、図2を用いて説明する。
【0065】
図2(A)乃至図2(E)は、トランジスタの作製工程にかかる断面図である。なお、ここで示すトランジスタ110は、逆スタガ型トランジスタである。
【0066】
以下、図2(A)乃至図2(E)を用い、基板105上にトランジスタ110を作製する工程を説明する。
【0067】
まず、絶縁表面を有する基板105上にゲート電極111を形成する。
【0068】
絶縁表面を有する基板105は、上記実施の形態で説明したように、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、基板105としてガラス基板を用いる場合、歪み点が730℃以上のものを用いることが好ましい。ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられる。なお、酸化ホウ素(B)と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませることで、より実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、酸化ホウ素より酸化バリウムを多く含むガラス基板を用いることが好ましい。また、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁体でなる基板を用いることができる。他にも、結晶化ガラスなどを用いることができる。さらには、シリコンウェハ等の半導体基板の表面や金属材料よりなる導電性の基板の表面に絶縁性の膜を形成したものを用いることもできる。本実施の形態では基板105としてガラス基板を用いる。
【0069】
なお、下地となる絶縁膜を基板105とゲート電極111との間に設けてもよい。該絶縁層には、基板105からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜などから選ばれた一または複数の膜により形成することができる。
【0070】
ゲート電極111は、以下に示す導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程およびエッチング工程により形成される。該導電膜としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。さらに、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体を用いてもよい。その構造は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。また、該導電膜としてアルミニウムまたは銅を用いる場合は、耐熱性や腐食性の問題を回避するために、高融点金属材料と組み合わせて用いると良い。なお、該導電膜の形成にはスパッタリング法、真空蒸着法、またはCVD法などを用いることができる。
【0071】
さらに、第1のフォトリソグラフィ工程に用いるレジストマスクは、インクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。なお、ゲート電極111の端部をテーパ形状とすると、後に形成されるゲート絶縁膜107の被覆性が向上するため好ましい。フォトリソグラフィ工程を用いる場合は、レジストマスクを後退させつつエッチングすることでテーパ形状とすることができる。
【0072】
次いで、ゲート電極111上にゲート絶縁膜107を形成する。ゲート絶縁膜107は、プラズマCVD法やスパッタリング法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化タンタル膜、または酸化ガリウム膜などから選ばれた一または複数の膜により単層または積層として形成することができる。本実施の形態では、ゲート絶縁膜107として、酸化シリコン膜をスパッタリング法にて形成する。なお、該スパッタリング法で酸化シリコンを形成する際は、基板を加熱しながら行うこともできる。
【0073】
ゲート絶縁膜107に水素、水酸基および水分がなるべく含まれないようにするために、ゲート絶縁膜107を形成する前処理として、ゲート電極111が形成された基板105を予備加熱し、基板105に吸着している水素、水分などの不純物を脱離させることが好ましい。また、予備加熱室に設ける排気手段は、後述する吸着型の真空ポンプとすることが好ましい。また、該予備加熱は、ソース電極115aおよびドレイン電極115bまで形成した基板105に対して行っても良い。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。
【0074】
次いで、ゲート絶縁膜107上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の酸化物半導体膜129を形成する。
【0075】
酸化物半導体膜129は、上記実施の形態で説明した方法で、上記実施の形態に示した一元系酸化物半導体および多元系酸化物半導体を形成することができる。なお、本実施の形態では、スパッタリング法を用いてIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体を形成する。
【0076】
酸化物半導体膜129をスパッタリング法で作製するためのターゲットの一例としては、組成比がIn:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]である酸化物ターゲットを用いることができる。また、このターゲットの材料および組成に限定されず、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]、またはIn:Ga:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有する酸化物ターゲットを用いてもよい。
【0077】
本実施の形態では、結晶化させる酸化物半導体膜を、In−Ga−Zn−O系の金属酸化物ターゲットを用いるスパッタリング法により形成することとする。
【0078】
金属酸化物ターゲット中の金属酸化物の相対密度は80%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99.9%以上とする。相対密度の高い金属酸化物ターゲットを用いる。
【0079】
酸化物半導体膜129の形成雰囲気は、酸素を意図的に含ませない雰囲気、つまりアルゴンに代表されるような希ガスのみのガス雰囲気とする。具体的には、例えば、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が、濃度1ppm以下(望ましくは濃度10ppb以下)にまで除去された高純度ガス雰囲気を用いるのが好適である。
【0080】
酸化物半導体膜129を形成する際には、減圧状態に保持された処理室内に基板105を保持し、基板105の温度が100℃以上550℃未満、好ましくは200℃以上400℃以下となるように基板105を加熱してもよいし、基板105の温度を室温(15℃以上35℃以下)としてもよい。さらに、処理室内の水分を除去しつつ、水素や水などが除去された高純度ガスを導入し、上記ターゲットを用いて酸化物半導体膜129を形成することが好ましい。基板105を加熱しながら酸化物半導体膜129を形成することにより、酸化物半導体膜に含まれる不純物を低減することができる。また、スパッタによる損傷を軽減することができる。なお、処理室内の水素や水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプなどを用いることができる。また、ターボポンプにコールドトラップを加えたものを用いてもよい。クライオポンプなどを用いて排気することで、処理室から水素や水などを除去することができるため、酸化物半導体膜129中の不純物濃度を低減できる。
【0081】
酸化物半導体膜129の形成条件としては、例えば、基板105とターゲットとの間の距離が60mm、圧力が0.4Pa、直流(DC)電力が0.5kW、雰囲気がアルゴン(アルゴン100%)雰囲気の条件である。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、パーティクルを低減でき、膜厚分布も均一となるため好ましい。酸化物半導体膜129の厚さは、1nm以上50nm以下、好ましくは1nm以上30nm以下、より好ましくは1nm以上10nm以下とする。酸化物半導体膜129をこの厚さで形成することにより、微細化に伴う短チャネル効果を抑制することが可能である。ただし、適用する酸化物半導体材料や、半導体装置の用途などにより適切な厚さは異なるため、用いる材料や用途などに応じて、酸化物半導体膜129の厚さは、適宜選択することもできる。
【0082】
なお、酸化物半導体膜129をスパッタリング法により形成する前には、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、ゲート絶縁膜107の表面に付着しているパーティクルを除去することで、ゲート絶縁膜107と酸化物半導体膜129との界面における抵抗を低減することができる。逆スパッタとは、アルゴン雰囲気下で基板にRF電源を用いて電圧を印加し基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウムなどを用いてもよい。また、アルゴン雰囲気に酸素、亜酸化窒素などを加えた雰囲気で行っても良い。さらに、アルゴン雰囲気に塩素、四フッ化炭素などを加えた雰囲気で行っても良い。なお、上記実施の形態で説明したように、酸化物半導体膜を形成する際は、アルゴン雰囲気で行うことが好ましい。ここまでの工程を図2(A)に示す。
【0083】
次に、形成した酸化物半導体膜129に第1の熱処理を行い、結晶性の高い酸化物半導体膜130を形成する。酸化物半導体膜129を結晶化させるために600℃以上で熱処理をする。この熱処理は、酸化物半導体膜129の酸素欠損に酸素を補填させながら結晶化させるため、大気中もしくは酸素を含むガス雰囲気中で行うのが好ましく、ここでは大気雰囲気下で650℃、1時間の熱処理を行う。
【0084】
なお、本工程では酸化物半導体膜129を結晶化させると共に、酸化物半導体膜129中の不純物(例えば、水素、水および水酸基など)を除去することができる。つまり、結晶性の高い酸化物半導体膜130の水素濃度は、第1の熱処理によって低減し、結晶性の高い酸化物半導体膜130のバンドギャップ中のドナー準位または欠陥準位を低減することができる。
【0085】
熱処理に用いる熱処理装置は限定されず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、熱処理をする装置であればよい。例えば、熱処理装置は、電気炉や、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、熱処理をする装置である。GRTA装置は、高温のガスにより、熱処理をする装置である。また、エキシマレーザ等のレーザ照射により、熱処理をすることができる。上記熱処理工程により、結晶性の高い酸化物半導体膜130を得ることができる。この工程を図2(B)に示す。
【0086】
第1の熱処理は、酸化物半導体膜129の不純物を低減し、i型(真性半導体)またはi型に限りなく近い酸化物半導体膜130を形成する。さらに、トランジスタにi型(真性半導体)またはi型に限りなく近い酸化物半導体膜130を用いることで、該トランジスタを特性の優れたトランジスタとすることができる。
【0087】
なお、第1の熱処理は、後述する島状の酸化物半導体膜に加工した後に行ってもよいし、さらに、第1の熱処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0088】
本実施の形態では、トランジスタのチャネル領域に用いる酸化物半導体膜を、結晶化した単層の酸化物半導体膜130としているが、トランジスタのチャネル領域に用いる酸化物半導体膜は、実施の形態2で説明した結晶化した積層の酸化物半導体膜とすることができる。
【0089】
次いで、酸化物半導体膜130を第2のフォトリソグラフィ工程およびエッチング工程により島状の酸化物半導体膜131に加工する。なお、該フォトリソグラフィ工程に用いるレジストマスクは、インクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0090】
なお、ゲート絶縁膜107にコンタクトホールを形成する場合、その工程は酸化物半導体膜130の加工と同時に行うことができる。
【0091】
酸化物半導体膜130のエッチング工程は、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。例えば、酸化物半導体膜130のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸とを混合させた溶液、アンモニア過水(31重量%過酸化水素水:28重量%アンモニア水:水=5:2:2(体積比))などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0092】
なお、第2の熱処理は、後述するソース電極およびドレイン電極を形成した後、または、ソース電極およびドレイン電極上に絶縁膜を形成した後、などのタイミングにおいて行うことができる。
【0093】
次いで、ゲート絶縁膜107および島状の酸化物半導体膜131上に、ソース電極115aおよびドレイン電極115b(同時に形成できる配線を含む)となる導電膜を形成する。ソース電極115aおよびドレイン電極115bに用いる導電膜としては、ゲート電極111で説明したものを用いることができる。本実施の形態では導電膜としてチタン膜を用いる。
【0094】
第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極115aおよびドレイン電極115bを形成した後、レジストマスクを除去する(図2(C)参照。)。
【0095】
第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いるとよい。なお、トランジスタのチャネル長は、ソース電極層とドレイン電極層の間隔によって決定される。このため、チャネル長が25nm未満のトランジスタの作製に用いるマスク形成時の露光には、数nm〜数10nmと波長の短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いるのが望ましい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、トランジスタのチャネル長を、10nm以上1000nm(1μm)以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高めることが可能である。また、微細化によって、半導体装置の消費電力を低減することも可能である。
【0096】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数および工程数を削減するため、多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成されたレジストマスクは異なる厚さの領域を有し、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工するための複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。これにより、露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0097】
なお、ソース電極115aおよびドレイン電極115bとして機能する導電膜のエッチングの際には、島状の酸化物半導体膜131がエッチングにより分断されることのないように、エッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、該導電膜のみをエッチングし、島状の酸化物半導体膜131を全くエッチングしないという条件を得ることは難しく、該導電膜のエッチングの際に、島状の酸化物半導体膜131の一部がエッチングされ溝部(凹部)が形成されることもある。
【0098】
ソース電極115aおよびドレイン電極115bとして機能する導電膜のエッチングには、ウェットエッチング、ドライエッチングのいずれを用いても良い。なお、素子の微細化という観点からはドライエッチングを用いるのが好適である。エッチングガスやエッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。本実施の形態では、導電膜としてチタン膜を用い、島状の酸化物半導体膜131にはIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いているため、例えばウェットエッチングを適用する場合には、エッチャントとしてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いることができる。
【0099】
また、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行い、露出している島状の酸化物半導体膜131の表面に付着した水素や水などを除去するのが望ましい。
【0100】
次いで、ゲート絶縁膜107、島状の酸化物半導体膜131、ソース電極115aおよびドレイン電極115b上に絶縁膜116を形成する。絶縁膜116を形成する際、少なくとも1nm以上の膜厚とし、絶縁膜116に水や水素等の不純物を混入させないように形成することが望ましい。絶縁膜116の形成方法の一例として、スパッタリング法を大気に触れない条件で行うことである。絶縁膜116に水素が含まれると、その水素が島状の酸化物半導体膜131へ侵入することや、島状の酸化物半導体膜131中の酸素が水素によって引き抜かれるなど、島状の酸化物半導体膜131のバックチャネル領域が低抵抗化(n型化)して、島状の酸化物半導体膜131に寄生チャネル領域が形成されるおそれがある。そこで、絶縁膜116には、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、または酸化窒化アルミニウム膜など、酸素を含む絶縁膜を用いることが望ましい。
【0101】
本実施の形態では、絶縁膜116として膜厚200nmの酸化シリコン膜を、スパッタリング法を用いて、基板の温度を100℃として形成する。なお、基板を加熱しながら形成することができ、該基板の温度は、室温(25℃)以上300℃以下とすることができる。酸化シリコン膜の形成は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、または希ガスと酸素ガスの混合ガス雰囲気下において行うことが好ましく、ターゲットとしては、酸化シリコンターゲットまたはシリコンターゲットを用いることができる。さらに、酸化シリコン膜を形成する際に用いるガスは、水素や水などの不純物が除去された高純度ガスであることが望ましい。
【0102】
さらに、ゲート絶縁膜107および酸化物半導体膜129と同様に、絶縁膜116に含まれる不純物の濃度を低減するために、スパッタリング法で形成する際には、吸着型の真空ポンプ(クライオポンプなど)を用いて、処理室内の残留水分を除去しておくことが好ましい。
【0103】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で第2の熱処理を行う。熱処理装置は、第1の熱処理と同じ装置を用いることができる。また、加熱温度が高いほど、光照射またはBTストレスが与えられることによるしきい値電圧(Vth)の変化量は抑制される。しかし、加熱温度を320℃より高くするとオン特性の低下が生じるため、加熱温度は、200℃以上450℃以下、望ましくは250℃以上350℃以下とする。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の熱処理を行えばよい。第2の熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性の変動(ばらつき)を抑えることができる。また、絶縁膜116には酸素を含むことから、第1の熱処理と同様に絶縁膜116から酸化物半導体膜131へ酸素が供給されることにより、島状の酸化物半導体膜131の酸素欠損を補填する。
【0104】
なお、本実施の形態では、絶縁膜116の形成後に第2の熱処理を行っているが、第2の熱処理を酸素雰囲気下にて行うのであれば、第2の熱処理のタイミングはこれに限定されない。例えば、第1の熱処理に続けて第2の熱処理を行っても良い。さらに、第1の熱処理に第2の熱処理を兼ねさせることで、第2の熱処理を省略することもできる。しかし、第2の熱処理を不活性ガス雰囲気下で行うのであれば、絶縁膜116の形成後に行うことが必要である。
【0105】
つまり、第1の熱処理および第2の熱処理によって、島状の酸化物半導体膜131を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化し、i型(真性)化またはi型に限りなく近い酸化物半導体膜とすることができる。
【0106】
以上の工程でトランジスタ110が形成される(図2(D)参照。)。
【0107】
なお、絶縁膜116上には、さらに保護絶縁膜106を形成するのが望ましい(図2(E)参照。)。保護絶縁膜106は、水素や水などの、外部からの侵入を防止する。保護絶縁膜106としては、例えば、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜などを用いることができる。形成方法は特に限定されないが、RFスパッタリング法は量産性優れているため、保護絶縁膜106の形成方法として適している。
【0108】
なお、保護絶縁膜106の形成後には、さらに、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下の条件で、熱処理を行ってもよい。
【0109】
このように、結晶性の高い酸化物半導体膜をトランジスタのチャネル領域として用いれば、トランジスタ110における電界効果移動度の向上が可能である。
【0110】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態および実施例に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0111】
本実施例では、本発明の一態様の作製方法で形成した酸化物半導体膜の結晶性ついて説明する。
【0112】
まず、ガラス基板上に膜厚500nmでIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体(以後、IGZOと記述。)を、基板加熱せずにスパッタリング法を用いて形成した。なお、IGZOのターゲット組成はIn:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]であり、形成時の印加電圧と印加圧力は0.5kwと0.4Paである。
【0113】
このとき、形成中に供給する雰囲気ガス(アルゴンガスおよび酸素ガス)を条件1乃至条件5の5通りとした。
(条件1)
アルゴン:酸素=45sccm:0sccm
(条件2)
アルゴン:酸素=35sccm:10sccm
(条件3)
アルゴン:酸素=25sccm:20sccm
(条件4)
アルゴン:酸素=15sccm:30sccm
(条件5)
アルゴン:酸素=5sccm:40sccm
【0114】
次に、条件1乃至条件5で形成したIGZO膜に、大気雰囲気中で650℃、1時間の熱処理を行った。
【0115】
熱処理した試料の結晶性を評価するためにX線回折(XRD)をout−of−plane法にて測定した。図3に熱処理後のXRDスペクトルのガス流量比依存性を示す。横軸はX線回折角2θを表し、縦軸はX線回折強度を表している。XRDスペクトルは結晶格子面からのX線反射強度を表し、スペクトルのピーク強度が大きく半値幅が狭いほど結晶性が高いことを示す。なお、結晶格子面とX線回折角はそれぞれ対応しており、結晶構造および結晶格子面が異なれば、XRDスペクトルが現れる位置(回折角2θ)は異なる。
【0116】
図3から、酸素流量が0sccmの条件1(アルゴン:酸素=45sccm:0sccm)で形成したIGZO膜のXRDスペクトルでは2θ=28〜32°、42°、47°、57°付近に鋭いピークが観測されるが、条件2乃至条件5で形成したIGZO膜のXRDスペクトルではブロードなピークしか観測されないことが確認された。なお、図3の括弧書きの数字は入射X線が反射した格子面を表す。これにより条件1のように酸素流量が0sccmで酸素原子が欠乏する条件では結晶化が進んでいるが、酸素ガスを供給する条件(条件2乃至条件5)で形成されたIGZO膜は、結晶化が進んでいないと確認できた。
【0117】
また、上記X線回折の結果より、熱処理を行い結晶化させたIGZO膜は、基板面に対してc軸配向しながら結晶成長していることが確認された。
【0118】
以上のことから、酸素ガスを供給せず、アルゴンのみ供給したガス雰囲気で作製したIGZO膜を大気雰囲気中で熱処理することによって、結晶性の高いIGZO膜を形成することができる。
【実施例2】
【0119】
本実施例では、本発明の一態様の作製方法で形成した結晶性の高い酸化物半導体膜について説明する。本実施例では、積層した酸化物半導体膜の結晶性について説明する。
【0120】
まず、石英基板上に第1の酸化物半導体膜(以後、1st−IGZO膜と記述。)としてIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を、基板加熱せずにスパッタリング法で5nm形成した。なお、1st−IGZOのターゲット組成はIn:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]であり、印加電圧と印加圧力は0.5kwと0.4Paである。また、形成中に供給したガス種および流量はアルゴン:酸素=30sccm:15sccmとした。
【0121】
次に、1st−IGZO膜を大気雰囲気中で700℃1時間の熱処理を行い、1st−IGZO膜を結晶化させた。
【0122】
次に、結晶化した1st−IGZO膜上に、第2の酸化物半導体膜(以後、2nd−IGZO膜と記述。)としてIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を、基板加熱せずにスパッタリング法で50nm形成した。また、2nd−IGZO膜を形成する際に供給するガス種および流量を条件6乃至条件9の4通りとした。2nd−IGZOのターゲットおよび、印加電圧と印加圧力は1st−IGZO膜の条件と同じである。以後、1st−IGZO膜および2nd−IGZO膜を、「積層IGZO膜」と記載する。
【0123】
(条件6)
アルゴン:酸素=45sccm:0sccm
(条件7)
アルゴン:酸素=35sccm:10sccm
(条件8)
アルゴン:酸素=25sccm:20sccm
(条件9)
アルゴン:酸素=15sccm:30sccm
【0124】
次に、条件6乃至条件9で形成した積層IGZO膜に、大気雰囲気中で1000℃1時間の熱処理を行った。
【0125】
熱処理した試料の結晶性を評価するためにX線回折(XRD)をout−of−plane法にて測定した。図4にXRDスペクトルのガス流量比依存性を示す。横軸はX線回折角2θを表し、縦軸はX線回折強度を表している。XRDスペクトルは結晶格子面からのX線反射強度を表し、スペクトルのピーク強度が大きく半値幅が狭いほど結晶性が高いことを示す。なお、結晶格子面とX線回折角はそれぞれ対応しており、結晶構造および結晶格子面が異なれば、XRDスペクトルが現れる位置(回折角2θ)は異なる。
【0126】
図4から、条件6乃至条件9で作製した全ての積層IGZO膜においても、2θ=33°付近に(009)面に対応するピークが観察されることから、これらの積層IGZO膜は結晶化していると確認された。さらに、酸素流量が0sccmの条件6(アルゴン:酸素=45sccm:0sccm)で形成した積層IGZO膜のXRDスペクトルは、条件7乃至条件9で形成した積層IGZO膜のXRDスペクトルのピークよりも強度が高いことが確認された。これは酸素流量が0sccmの条件6(アルゴン:酸素=45sccm:0sccm)で形成したIGZO膜が条件7乃至条件9で形成した積層IGZO膜よりも結晶性が高いことを示している。
【0127】
また、積層IGZO膜のX線回折の結果から、本実施例で示す積層IGZO膜は、基板に対してc軸配向しながら結晶成長していることが確認された。
【0128】
以上のことから、積層IGZO膜においても、条件6のように酸素ガスを供給せず、形成した積層IGZO膜を大気雰囲気下で熱処理することによって、結晶性の高い積層IGZO膜を形成することができる。また、酸素を含む雰囲気にて形成した1st−IGZO膜は、酸素を意図的に含ませない雰囲気で2nd−IGZO膜を形成し、その後酸素を含む雰囲気で熱処理を行うことで、該1st−IGZO膜の結晶性も向上させることができる。
【符号の説明】
【0129】
101 基板
102 第1の酸化物半導体膜
103 第2の酸化物半導体膜
104 第2の酸化物半導体膜
121 第1の酸化物半導体膜
105 基板
106 保護絶縁膜
107 ゲート絶縁膜
110 トランジスタ
111 ゲート電極
115a ソース電極
115b ドレイン電極
116 絶縁膜
129 酸化物半導体膜
130 酸化物半導体膜
131 酸化物半導体膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で酸化物半導体膜を形成し、
酸素を含む雰囲気で熱処理をして、前記酸化物半導体膜を結晶化させることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項2】
基板上に第1の酸化物半導体膜を形成し、
第1の熱処理をして、前記第1の酸化物半導体膜を結晶化させ、
結晶化した前記第1の酸化物半導体膜上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で第2の酸化物半導体膜を形成し、
酸素を含む雰囲気で第2の熱処理をして、前記第2の酸化物半導体膜を結晶化させることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項3】
基板上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で第1の酸化物半導体膜を形成し、
第1の熱処理をして、前記第1の酸化物半導体膜を結晶化させ、
結晶化した前記第1の酸化物半導体膜上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で第2の酸化物半導体膜を形成し、
酸素を含む雰囲気で第2の熱処理をして、前記第2の酸化物半導体膜を結晶化させることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、
前記第2の熱処理で結晶化する前記第2の酸化物半導体膜は、前記第1の熱処理で結晶化した前記第1の酸化物半導体膜を種結晶とすることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項5】
基板上に第1の酸化物半導体膜を形成し、
前記第1の酸化物半導体膜上に、酸素を意図的に含ませない雰囲気で第2の酸化物半導体膜を形成し、
酸素を含む雰囲気で第1の温度および第2の温度で加熱する熱処理をして、
前記第1の酸化物半導体膜は前記第1の温度で結晶化され、前記第2の酸化物半導体膜は前記第2の温度で結晶化され、
前記第1の温度は第2の温度より低いことを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項6】
基板上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で第1の酸化物半導体膜を形成し、
前記第1の酸化物半導体膜上に、酸素を意図的に含ませない雰囲気で第2の酸化物半導体膜を形成し、
酸素を含む雰囲気で第1の温度および第2の温度で加熱する熱処理をして、
前記第1の酸化物半導体膜は前記第1の加熱温度で結晶化され、前記第2の酸化物半導体膜は前記第2の加熱温度で結晶化され、
前記第1の加熱温度は第2の加熱温度より低いことを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、
前記第2の温度で結晶化する前記第2の酸化物半導体膜は、前記第1の温度で結晶化した前記第1の酸化物半導体膜を種結晶とすることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜、前記第1の酸化物半導体膜または前記第2の酸化物半導体膜のいずれか一以上は、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体、In−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、In−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、およびZn−O系酸化物半導体から選択されることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜、または、前記第1の酸化物半導体膜および前記第2の酸化物半導体膜は、前記基板面に対してc軸配向していることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜のキャリア密度、または、前記第1の酸化物半導体膜および前記第2の酸化物半導体膜のキャリア密度は、1×1014/cm未満であることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜、第1の酸化物半導体膜または前記第2の酸化物半導体膜のいずれか一以上は、前記基板を加熱しながら形成することを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一において、
前記酸素を意図的に含ませない雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、キセノンガスまたはクリプトンガス雰囲気であることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項13】
基板上に、ゲート電極を形成し、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で酸化物半導体膜を形成し、
酸素を含む雰囲気での第1の熱処理をして、前記酸化物半導体を結晶化させ、
結晶化した前記酸化物半導体膜上にソース電極およびドレイン電極を形成し、
結晶化した前記酸化物半導体膜、前記ソース電極および前記ドレイン電極上に酸素原子を含む絶縁膜を形成し
結晶化した前記酸化物半導体膜を第2の熱処理により酸化させることを特徴とするトランジスタの作製方法。
【請求項14】
基板上に、ゲート電極を形成し、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に第1の酸化物半導体膜を形成し、
第1の熱処理をして、前記第1の酸化物半導体膜を結晶化させ、
結晶化した前記第1の酸化物半導体膜上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で第2の酸化物半導体膜を形成し、
酸素を含む雰囲気で第2の熱処理をして、前記第2の酸化物半導体膜を結晶化させ、
結晶化した前記第2の酸化物半導体膜上にソース電極およびドレイン電極を形成し、
結晶化した前記第2の酸化物半導体膜、前記ソース電極および前記ドレイン電極上に酸素原子を含む絶縁膜を形成し、
第3の熱処理により結晶化した前記第1の酸化物半導体膜および結晶化した前記第2の酸化物半導体膜を酸化させることを特徴とするトランジスタの作製方法。
【請求項15】
基板上に、ゲート電極を形成し、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成し、
酸素を意図的に含ませない雰囲気で前記ゲート絶縁膜上に第1の酸化物半導体膜を形成し、
第1の熱処理をして、前記第1の酸化物半導体膜を結晶化させ、
結晶化した前記第1の酸化物半導体膜上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で第2の酸化物半導体膜を形成し、
酸素を含む雰囲気で第2の熱処理をして、前記第2の酸化物半導体膜を結晶化させ、
結晶化した前記第1の酸化物半導体膜および結晶化した前記第2の酸化物半導体膜上にソース電極およびドレイン電極を形成し、
結晶化した前記第1の酸化物半導体膜、結晶化した前記第2の酸化物半導体膜、前記ソース電極および前記ドレイン電極上に酸素原子を含む絶縁膜を形成し、
第3の熱処理により結晶化した前記第1の酸化物半導体膜および結晶化した前記第2の酸化物半導体膜を酸化させることを特徴とするトランジスタの作製方法。
【請求項16】
請求項14または請求項15において、
前記第2の熱処理で結晶化する前記第2の酸化物半導体膜は、前記第1の熱処理で結晶化した前記第1の酸化物半導体膜を種結晶とすることを特徴とするトランジスタの作製方法。
【請求項17】
基板上に、ゲート電極を形成し、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に第1の酸化物半導体膜を形成し、
前記第1の酸化物半導体膜上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で第2の酸化物半導体膜を形成し、
酸素を含む雰囲気で第1の温度および第1の加熱温度より低い第2の温度で加熱する第1の熱処理をして、前記第1の加熱温度で前記第1の酸化物半導体膜を結晶化させ、前記第2の加熱温度で前記第2の酸化物半導体膜を結晶化させ、
結晶化した前記第1の酸化物半導体膜および結晶化した前記第2の酸化物半導体膜上にソース電極およびドレイン電極を形成し、
結晶化した前記第1の酸化物半導体膜、結晶化した前記第2の酸化物半導体膜、前記ソース電極および前記ドレイン電極上に酸素原子を含む絶縁膜を形成し、
結晶化した前記第1の酸化物半導体膜および前記第2の酸化物半導体膜を第2の熱処理により酸化させ、
前記第1の加熱温度は第2の加熱温度より低いことを特徴とするトランジスタの作製方法
【請求項18】
基板上に、ゲート電極を形成し、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で第1の酸化物半導体膜を形成し、
前記第1の酸化物半導体膜上に酸素を意図的に含ませない雰囲気で第2の酸化物半導体膜を形成し、
酸素を含む雰囲気で第1の温度および第2の温度で加熱する第1の熱処理をして、前記第1の加熱温度で前記第1の酸化物半導体膜を結晶化させ、前記第2の加熱温度で前記第2の酸化物半導体膜を結晶化させ、
結晶化した前記第1の酸化物半導体膜および結晶化した前記第2の酸化物半導体膜上にソース電極およびドレイン電極を形成し、
結晶化した前記第1の酸化物半導体膜、結晶化した前記第2の酸化物半導体膜、前記ソース電極および前記ドレイン電極上に酸素原子を含む絶縁膜を形成し、
結晶化した前記第1の酸化物半導体膜および前記第2の酸化物半導体膜を第2の熱処理により酸化させ、
前記第1の加熱温度は第2の加熱温度より低いことを特徴とするトランジスタの作製方法
【請求項19】
請求項17または請求項18において、
前記第2の温度で結晶化する前記第2の酸化物半導体膜は、前記第1の温度で結晶化した前記第1の酸化物半導体膜を種結晶とすることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項20】
請求項13乃至請求項19のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜、前記第1の酸化物半導体膜または前記第2の酸化物半導体膜のいずれか一以上は、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体、In−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、In−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、およびZn−O系酸化物半導体から選択されることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項21】
請求項13乃至請求項20のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜、または、前記第1の酸化物半導体膜および前記第2の酸化物半導体膜は、前記基板面に対してc軸配向していることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項22】
請求項13乃至請求項21のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜のキャリア密度、または、前記第1の酸化物半導体膜および前記第2の酸化物半導体膜のキャリア密度は、1×1014/cm未満であることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項23】
請求項13乃至請求項22のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜、第1の酸化物半導体膜または前記第2の酸化物半導体膜のいずれか一以上は、前記基板を加熱しながら形成することを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。
【請求項24】
請求項13乃至請求項23のいずれか一において、
前記酸素を意図的に含ませない雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、キセノンガスまたはクリプトンガス雰囲気であることを特徴とする酸化物半導体膜の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−205089(P2011−205089A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46681(P2011−46681)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】