説明

長繊維強化樹脂ペレット

【課題】ペレット輸送時の縦割れや、長繊維フィラーのペレットからの脱離が極度に抑制され、ペレットの外観に優れ、更に、成形時の長繊維フィラーの解繊性にも優れ、極めて高い耐熱性と、耐衝撃性有する成形体を成形可能な長繊維フィラー強化樹脂ペレットを提供すること。
【解決手段】 長繊維フィラーと熱可塑性樹脂混合物とから構成されるペレットであって、前記長繊維フィラーが、前記ペレット中に、前記ペレットの長さ方向を中心軸方向として、ペレット中にスパイラル状に配されており、かつ、前記ペレットが、長繊維フィラー含有量の少ないスキン層部分と長繊維フィラー含有量の多いコア部分とを有し、前記コア部分の断面積が、前記ペレット断面積の30%〜70%の範囲であり、前記熱可塑性樹脂混合物が、ポリフェニレンエーテルと、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂からなる、長繊維フィラー強化樹脂ペレットを提供すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長繊維フィラー強化樹脂ペレットに関する。また、本発明は、長繊維フィラー強化樹脂ペレットを含む樹脂ペレット混合物、長繊維フィラー強化樹脂ペレット等を溶融成形して得られる成形体、及び長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は優れた賦形性を有するので、自動車、機械関連、建材および住宅設備部品などに広く利用されている。特に、ガラス繊維を配合した強化熱可塑性樹脂組成物は、その優れた機械的特性および成形加工性から、金属材料を代替し、部品の軽量化や部品点数の削減に非常に有用である。また、強化熱可塑性樹脂組成物は優れた耐衝撃性(特に面衝撃性)や剛性を有するので、高い負荷のかかる部材、繰り返し負荷のかかる部材等に広く利用されている。
【0003】
特許文献1には、長繊維フィラー強化組成物を達成する手段として、ガラス繊維のロービングから樹脂ストランドを引抜きながら樹脂を含浸させることで、強化繊維の長さとペレットの長さが等しいペレットが得られる製法としての、プルトルージョン法が開示されている。この手法が現在に至っても最も一般的に行われている方法である。
しかしながら、長繊維強化樹脂組成物は、チョップドストランド等の短繊維を押出機で溶融混練する通常の短繊維強化樹脂組成物と比較すると、樹脂と繊維の接触時間が少ないことから、樹脂によるフィラーの濡れ性に課題があり、これを向上させる検討がなされてきた。
【0004】
例えば、特許文献2には、連続した整列されたフィラメントを良好に熱可塑性樹脂をぬらすことができる方法の一つとして溶融粘度が相当低い熱可塑性樹脂を選択して用いることが開示されている。
また、特許文献3には、長繊維ストランドに撚りをかけることにより、ストランドの柔軟性や耐座屈性を向上させる技術が開示され、特許文献4には、同様に撚りをかけることにより、優れた生産性を有する製造方法の開示がある。
【0005】
【特許文献1】特公昭52−3985号公報
【特許文献2】特公昭63−37694号公報
【特許文献3】特開平5−169445号公報
【特許文献4】特開2003−175512号公報
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、樹脂と繊維の界面強度が充分でなく、得られるペレットが、輸送時に縦割れを起こしたり、長繊維フィラーがペレットから脱離し、脱離した長繊維フィラーが例えば製品袋や成型機ホッパーに付着する現象が発生し、市場からは改善を求められていた。また、樹脂と繊維の界面強度が充分でなく、ペレットの表面に光沢もないため、ペレット同士の摩擦抵抗が大きくなり、成型機への噛み込み不良が発生するといった問題も抱えている。
また、特許文献3及び4に開示された技術に基づいて、強い撚りをかけた場合、成形機等で加工するに際して、例えば、樹脂としてポリプロピレンやポリアミドを用いた場合、その溶融粘度では、撚りのかかった長繊維を充分に解繊させることができず、高い耐熱性や、耐衝撃性といった特性の発現が不充分であるといった課題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、長繊維フィラーと熱可塑性樹脂とが優れた濡れ性を有しており、ペレット輸送時の縦割れや、長繊維フィラーのペレットからの脱離が極度に抑制され、ペレットの外観に優れ、更に、成形時の長繊維フィラーの解繊性にも優れるため、極めて高い耐熱性と耐衝撃性とを有する成形体を成形可能な長繊維フィラー強化樹脂ペレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、長繊維フィラー強化樹脂ペレット中の長繊維フィラーを、ペレットの長さ方向を中心軸方向として、ペレット中に、スパイラル状に配することにより、上記課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下の通りである。
【0009】
(1)長繊維フィラーと熱可塑性樹脂混合物とから構成されるペレットであって、
前記長繊維フィラーが、前記ペレット中に、前記ペレットの長さ方向を中心軸方向として、ペレット中にスパイラル状に配されており、かつ、
前記ペレットが、長繊維フィラー含有量の少ないスキン層部分と長繊維フィラー含有量の多いコア部分とを有し、前記コア部分の断面積が、前記ペレット断面積の30%〜70%の範囲であり、
前記熱可塑性樹脂混合物が、ポリフェニレンエーテルと、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂からなる、長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(2)前記長繊維フィラー強化樹脂ペレットの長さに対する、前記長繊維フィラーの平均繊維長の比が1.0を超える、上記1に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(3)前記長繊維フィラー強化樹脂ペレット中に占める前記長繊維フィラーの割合が、30〜70質量%である、上記1又は2に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(4)前記長繊維フィラーがガラス繊維である、上記1〜3のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(5)前記ポリフェニレンエーテルの還元粘度(0.5g/dl濃度のクロロホルム溶液、30℃測定)が、0.30〜0.55dl/gの範囲である、上記1〜4のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(6)前記ポリフェニレンエーテルが、2,3,6−トリメチルフェノールを含む共重合体であり、前記ポリフェニレンエーテル中に占める2,3,6−トリメチルフェノールユニットの割合が10〜30質量%である、上記1〜5のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(7)前記ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン及びポリアリールケトンよりなる群から選ばれる1種以上である、上記1〜6のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(8)前記ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂が、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体及びN−フェニルマレイミドとスチレンの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上である、上記1〜7のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(9)前記熱可塑性樹脂混合物中に占めるポリフェニレンエーテルの割合が、10〜90質量%である、上記8に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(10)前記ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、液晶ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン及びポリアリールケトンよりなる群から選ばれる1種以上である、上記1〜7のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(11)前記熱可塑性樹脂混合物中に占めるポリフェニレンエーテルの割合が、1〜50質量%である、上記10に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(12)さらに相溶化剤を含む上記1〜11のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(13)前記相溶化剤が、エポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基及び酸無水物基よりなる群から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物である上記12に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(14)さらに立体障害フェノール系酸化防止剤を、前記熱可塑性樹脂混合物100質量部に対して0.1〜5質量部含む上記1〜13のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(15)さらに、ハロゲンを含まない難燃剤を、前記熱可塑性樹脂混合物100質量部に対して5〜50質量部含む上記1〜14のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(16)さらに、長繊維フィラー以外のフィラーを含む、上記1〜15のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
(17)上記1〜16のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット100質量部と、長繊維フィラーを含まない樹脂ペレット0.5〜150質量部と、を含有する樹脂ペレット混合物。
(18)前記樹脂ペレット混合物中に占める前記長繊維フィラーの割合が、10〜60質量%である、上記17に記載の樹脂ペレット混合物
(19)前記長繊維フィラーを含まない樹脂ペレットが、長繊維フィラー以外のフィラーを含む、上記17又は18に記載の樹脂ペレット混合物。
(20)前記長繊維フィラー以外のフィラーが、マグネシウム及びカルシウムから選ばれる元素の水酸化物、マグネシウム、チタン、鉄、銅、亜鉛及びアルミニウムよりなる群から選ばれる元素の酸化物、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、ガラス、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びシリカよりなる群から選ばれる少なくとも1種のフィラーであり、かつ、前記長繊維フィラー以外のフィラーの平均粒子径が1mm以下である、上記19に記載の樹脂ペレット混合物。
(21)上記1〜16のいずれか1項に記載の長繊維強化樹脂ペレット、または上記17〜20のいずれか1項に記載の樹脂ペレット混合物を溶融成形して得られる成形体。
(22)長繊維フィラーと熱可塑性樹脂混合物から構成されるペレットであって、
前記長繊維フィラーが、前記ペレット中に、前記ペレットの長さ方向を中心軸方向として、ペレット中にスパイラル状に配されており、かつ、
前記ペレットが、長繊維フィラー含有量の少ないスキン層部分と長繊維フィラー含有量の多いコア部分とを有し、前記コア部分の断面積が、前記ペレット断面積の30%〜70%の範囲であり、
前記熱可塑性樹脂混合物が、ポリフェニレンエーテルと、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂からなる、長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法であって、
(1)溶融状態の前記熱可塑性樹脂混合物を、押出機を用いて製造する工程、
(2)前記長繊維フィラーを前記溶融状態の熱可塑性混合物中に含浸させる工程、
(3)撚りをかけながら引き取って、樹脂ストランドにする工程、
(4)前記樹脂ストランドをカットしてペレット形状にする工程、
を含む長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法。
(23)上記(22)に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法であって、ここで、工程(1)〜(4)をこの順に連続して含む、上記(22)に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法。
(24)前記工程(1)において、前記ポリフェニレンエーテルと、前記ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂と、を混合して溶融状態の前記熱可塑性樹脂混合物を製造する工程をさらに含む、上記(22)または(23)に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法。
(25) 前記工程(2)における前記長繊維フィラーを溶融状態の前記熱可塑性樹脂混合物中に含浸させる浸漬用バスの設定温度が、前記工程(1)おける押出機の設定温度よりも20℃以上高い温度である、(22)〜(24)のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法。
(26)前記工程(3)における引き取り速度が、10〜150m/分の範囲である、(22)〜(25)のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長繊維フィラーと熱可塑性樹脂とが優れた濡れ性を有しており、ペレット輸送時の縦割れや、長繊維フィラーのペレットからの脱離が極度に抑制され、ペレットの外観に優れ、更に、成形時の長繊維フィラーの解繊性にも優れるため、極めて高い耐熱性と、耐衝撃性とを有する成形体を成形可能な長繊維フィラー強化樹脂ペレットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施の形態という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態の長繊維フィラー強化樹脂ペレット(以下、単に「ペレット」と略記する場合がある。)は、長繊維フィラーと、熱可塑性樹脂混合物を含有する熱可塑性樹脂組成物と、から構成されるペレットである。
長繊維フィラーは、ペレット中に、ペレットの長さ方向を中心軸方向として、スパイラル状に配されており、スパイラルのリードが20mm〜80mmであり、及びペレットが、長繊維フィラー含有量の少ないスキン層部分と長繊維フィラー含有量の多いコア部分とを有し、該コア部分の断面積が、該ペレット断面積の30〜70%の範囲である。
そして、熱可塑性樹脂混合物(以下、単に「樹脂」と略記する場合がある。)は、ポリフェニレンエーテルと、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂と、からなる。
【0012】
(長繊維フィラー)
本実施の形態において、長繊維フィラー強化樹脂ペレットに用いられる長繊維フィラーが、ペレット中に、ペレットの長さ方向を中心軸方向として、スパイラル状に配されており、スパイラルのリードが20mm〜80mmであり、及びペレットが、長繊維フィラー含有量の少ないスキン層部分と長繊維フィラー含有量の多いコア部分とを有し、該コア部分の断面積が、該ペレット断面積の30〜70%の範囲である。
【0013】
本実施の形態において、長繊維フィラーが、ペレット中に、ペレットの長さ方向を中心軸として、スパイラル状に配されているが、ペレットの長さ方向とは、長繊維フィラーの延長方向を意味し、ペレット形状が円柱状ペレットの場合は、その高さ方向を意味する。
本実施の形態において、スパイラル状に配されているとは、長繊維フィラーが撚りをかけられた状態でペレット中に存在していることを意味する。
本実施の形態において、長繊維フィラーがペレット中に、ペレットの長さ方向を中心軸方向として、スパイラル状に配されていることにより、ペレット輸送時の縦割れや、長繊維フィラーのペレットからの脱離を抑制することができる。
【0014】
本実施の形態において、長繊維フィラーは、ペレット中に繊維の束としてスパイラル状に存在することにより、長繊維フィラーのペレットからの脱離を抑制し、ペレットの外観性に優れるペレットとすることができる。ペレット中で、長繊維フィラーの繊維の束は、一つの束であることがより好ましい。
本実施の形態において、長繊維フィラーがスパイラル状に配されていないとは、長繊維フィラーが撚りをかけられた状態でなくペレット中に存在していることを意味し、スパイラル状に配されていないペレットとしては、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されたペレットが挙げられる。
【0015】
本実施の形態において、スパイラルのリードとは、スクリューで用いられるリードと同じ意味であり、具体的には、スパイラル状に配されている長繊維フィラーがストランド外周を1回転(360°)する時に進むストランド表面の長さ方向の距離を意味する。
本実施の形態において、スパイラルのリードが、20mm以上であることにより、樹脂と長繊維フィラーとが界面剥離を起こしペレット外観が悪化したり、成形時の解繊性が悪化したりすることを抑制することができる。また、スパイラルのリードが80mm以下であることにより、ペレット輸送時の縦割れや、長繊維フィラーのペレットからの脱離、及び成形時の成形機への噛み込み性不良を抑制することができる。
【0016】
本実施の形態において、スパイラルのリードは25mm以上であることが好ましく、27mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがさらに好ましい。また、スパイラルのリードは、75mm以下であることが好ましく、60mm以下であることがより好ましく、55mm以下がさらに好ましい。
【0017】
本実施の形態において、ペレットが、長繊維フィラー含有量の少ないスキン層部分と長繊維フィラー含有量の多いコア部分とを有し、該コア部分の断面積が、該ペレット断面積の30〜70%の範囲である。
長繊維フィラー含有量の少ないスキン層部分とは、樹脂から構成されているペレット表面から連続している領域で、充填されている長繊維フィラーの充填量が、ペレット全体として充填されている長繊維フィラーの半分未満の充填量である部分、例えば、ペレット中の長繊維フィラーの充填量が40質量%である場合、長繊維フィラーの充填量が20質量%未満の領域を意味する。本実施の形態においては、ペレット中の長繊維フィラーの充填量の半分以下の領域であっても、長繊維フィラーは撚りをかけられた状態で存在するため、長繊維フィラーの外延の内側の領域に該当する長繊維フィラーを有する領域に囲まれた領域、すなわちペレット表面から連続していない領域はコア部分とし、スキン層部分からは除かれる。
本実施の形態において、長繊維フィラー含有量の多いコア部分とは、ペレットの断面積中の長繊維フィラー含有量の少ないスキン層部分を除いた部分を意味する。本実施の形態においては、長繊維フィラーは撚りをかけられた状態でペレット中に配されるため、長繊維フィラーは、ペレット中で凝集した形態で存在するため、ペレット断面を顕微鏡観察することにより、スキン層部分とコア部分とを容易に判別することができる。
【0018】
本実施の形態において、コア部分の断面積が、ペレットの断面積の30〜70%であることにより、ペレットの外観を大きく向上させることが可能となり、成形機への噛み込み性向上といった効果を得ることができる。また、ペレット外観としては光沢を有する外観を得ることが可能となり、高品位な外観を有するペレットとすることが可能となる。
本実施の形態において、コア部分の断面積は、ペレット断面積の35%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、45%以上であることがさらに好ましい。また、コア部分の断面積は、ペレット断面積の65%以下であることが好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。
本実施の形態において、コア部分の断面積は、以下に詳述する実施例に記載するように、ペレットの少なくとも10カ所の断面を観察し、そのコア部分の断面積の平均値として測定することができる。
【0019】
本実施の形態において、長繊維フィラーの長さ(繊維長)は、長繊維フィラー強化樹脂ペレット等を溶融成形して得られる成形体(以下、単に「成形体」と略記する場合がある。)の耐熱性や耐衝撃性を充分に高くするために、3mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることがさらに好ましい。また、長繊維フィラーの長さは、成形加工等における取り扱い性の観点より、50mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることがさらに好ましい。
【0020】
本実施の形態において、長繊維フィラーの繊維長は、外観に優れ、縦割れの少ないペレットを得るためには、長繊維フィラーを含んでいるペレットの長さより、包含されている長繊維フィラーの繊維長が長いことが好ましく、ペレットの長さに対する長繊維フィラーの平均繊維長の比が1.0を超えることがより好ましい。
ペレットの長さに対する長繊維フィラーの平均繊維長の比が、1.01〜1.2の範囲であることがさらに好ましく、1.02以上であることがよりさらに好ましく、1.03以上であることが特に好ましい。また、ペレットの長さに対する長繊維フィラーの平均繊維長の比が、1.15以下であることがさらに好ましく、1.1以下であることがよりさらに好ましく、1.08以下であることが特に好ましい。
本実施の形態において、ペレットの長さとは、ペレットの長さ方向の長さを意味し、例えば、円柱状ペレットの場合は、その高さを意味する。
【0021】
本実施の形態において、ペレット中の長繊維フィラーの含有量が、30〜70質量%であることが好ましい。
ペレット中の長繊維フィラーの含有量を30質量%以上とすることにより、ペレット生産時の引き取り性を向上させることができ、ペレットの生産時のストランドの粘度を適度な粘度に保つことができる。また、ペレット中の長繊維フィラーの含有量を70質量%以下とすることにより長繊維フィラー中への樹脂の浸透を向上させて濡れ性を向上させることができ、ペレットの生産時のストランドの引き取り速度を良好に制御することができる。
ペレット中の長繊維フィラーの含有量は、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましい。また、ペレット中の長繊維フィラーの含有量は、60質量%以下であることがより好ましく、55質量%以下であることがさらに好ましい。
【0022】
本実施の形態において、長繊維フィラー強化樹脂ペレットに用いられる長繊維フィラーとしては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、及びアラミド繊維等からなる群から選ばれる1種以上である長繊維フィラーが挙げられる。
本実施の形態において、長繊維フィラーとしては、本実施の形態の長繊維強化ペレットからなる成形体の強度及び剛性を高める観点から、炭素繊維及びガラス繊維から選ばれる1種以上であることが好ましく、ガラス繊維であることがより好ましい。
【0023】
本実施の形態において、長繊維フィラーの直径は、特に限定されるものではないが、5μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。また、長繊維フィラーの直径は、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、17μm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
本実施の形態において、長繊維フィラーの表面には、樹脂の濡れ性の改善、取り扱い性の向上を目的として、カップリング剤や、集束剤等を適宜付着させたものを用いてもよい。
カップリング剤としては、例えば、アミノ系、エポキシ系、クロル系、メルカプト系、及びカチオン系のシランカップリング剤等が挙げられ、アミノ系シラン系カップリング剤が好適に使用可能である。
【0025】
集束剤としては、例えば、無水マレイン酸系化合物、ウレタン系化合物、アクリル系化合物、エポキシ系化合物、及びこれら化合物の共重合体から選ばれる1種以上を含有する集束剤が挙げられ、ウレタン系化合物を含有する集束剤が好適に使用可能である。
長繊維フィラー中の集束剤の含有量は、0.1〜0.5質量%であることが好ましい。集束剤の含有量を0.1質量%以上として長繊維フィラーの表面に付着させることにより、ペレットの縦割れを防止することができ、集束剤の含有量を0.5質量%以下として長繊維フィラーの表面に付着させることにより、長繊維フィラーを樹脂中に含浸させる工程において、長繊維フィラーの解繊性を損なうことがないため、生産性の悪化を抑制することができる
集束剤の含有量は、0.15質量%以上であることがより好ましく、0.2質量%であることがさらに好ましく、0.25質量%以上であることがよりさらに好ましい。また、集束剤の含有量は、0.45質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以下であることがさらに好ましく、0.35質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0026】
(熱可塑性樹脂混合物)
本実施の形態において、長繊維フィラー強化樹脂ペレットに用いられる熱可塑性樹脂混合物は、ポリフェニレンエーテルと、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂と、からなる。
(ポリフェニレンエーテル)
本実施の形態において、ポリフェニレンエーテルが熱可塑性樹脂混合物中に存在することにより、樹脂中の溶融粘度が適度に向上し、撚りをかけられた長繊維フィラーが、成形時に極めて容易に解繊することが可能となる。
成形時の長繊維フィラーの解繊性が高まることで、長繊維フィラー配合による特性、すなわち、を樹脂成形体の、強度・剛性を最大限に高める事が可能となる。
本実施の形態において、ポリフェニレンエーテルは、下記式(1)で表される繰り返し構造単位を有する、単独重合体及び/又は共重合体である。
【0027】
【化1】

【0028】
(式中、Oは酸素原子、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、第一級若しくは第二級のC1〜C7アルキル基、フェニル基、C1〜C7ハロアルキル基、C1〜C7アミノアルキル基、C1〜C7ヒドロカルビロキシ基、又はハロヒドロカルビロキシ基(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)を表す。)
【0029】
本実施の形態において、ポリフェニレンエーテルの製造方法は、公知の方法であれば特に限定されるものではない。例えば、米国特許第3306874号明細書、米国特許第3306875号明細書、米国特許第3257357号明細書、米国特許第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報及び特公昭63−152628号公報等に開示された製造方法が挙げられる。
【0030】
ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテルの共重合体としては、例えば、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体が挙げられ、例えば、2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体が挙げられる。
【0031】
ポリフェニレンエーテルとしては、商業的な入手容易性の観点で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、又はこれらの混合物が好ましい。また、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体を使用する場合の各単量体ユニットの比率として、ポリフェニレンエーテル共重合体において10〜30質量%の2,3,6−トリメチルフェノールを構造単位として含む共重合体が好ましく、15〜25質量%であることがより好ましく、20〜25質量%であることがさらに好ましい。
【0032】
本実施の形態において、ポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:dl/g、0.5g/dl濃度のクロロホルム溶液、30℃測定)は、0.30〜0.55dl/gの範囲であることが好ましい。ポリフェニレンエーテルの還元粘度は、0.53dl/g以下であることがより好ましく、0.45dl/g以下であることがさらに好ましく、0.36dl/g以下であることがさらに好ましい。
ポリフェニレンエーテルの還元粘度が0.30dl/g以上であることにより、成形時の長繊維フィラーの解繊性に優れるペレットとすることができ、0.55dl/g以下であることにより、濡れ性を向上させることができる。
【0033】
本実施の形態において、還元粘度の異なる2種以上のポリフェニレンエーテルを混合したものも、特に限定することなく、使用することができる。例えば、還元粘度0.40dl/g程度のポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g程度のポリフェニレンエーテルとの混合物や、還元粘度0.08〜0.12dl/g程度の低分子量ポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g程度のポリフェニレンエーテルとの混合物等が挙げられる。
還元粘度の異なる2種以上のポリフェニレンエーテルを混合したものを用いる場合に、混合されたポリフェニレンエーテルの還元粘度は、0.30〜0.55dl/gの範囲であることが好ましい。
【0034】
本実施の形態において、ポリフェニレンエーテルとしては、変性剤で変性されたものであっても良く、変性剤としては、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、りんご酸、クエン酸、フマル酸等の飽和又は不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のビニル化合物等が挙げられる。
この場合、予め変性されていてもよく、樹脂を溶融押し出し製造する際に変性剤を添加して同時に変性することもできる。
ポリフェニレンエーテルとして、変性されたポリフェニレンエーテルを用いる場合、予め変性されていてもよく、樹脂を溶融押し出し製造する際に変性剤を添加して同時に変性することもできる。
【0035】
(ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂)
ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリアリールケトン、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0036】
ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂としては、好ましくは、ポリプロピレン、液晶ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリアリールケトン、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、N−フェニルマレイミドとスチレンの共重合体、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0037】
ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂として、ポリフェニレンエーテルと比較的親和性の低い熱可塑性樹脂であるポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、液晶ポリエステル等のポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリアリールケトン、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる1種を用いる場合、樹脂中のポリフェニレンエーテルの含有量が、1〜50質量%の範囲であることが好ましい。樹脂中にポリフェニレンエーテルの含有量は、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、15質量%であることがよりさらに好ましい。また、樹脂中にポリフェニレンエーテルの含有量は、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、35質量%であることがよりさらに好ましい。
ポリフェニレンエーテルの含有量が1質量%以上とすることにより、得られる樹脂の耐熱性を高めることができ好ましい。また、長繊維フィラーとの濡れ性の悪化を抑制する観点より、ポリフェニレンエーテルの含有量は50質量%以下であることが好ましい。
【0038】
ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂として、ポリフェニレンエーテルと比較的親和性の高い熱可塑性樹脂であるホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、N−フェニルマレイミドとスチレンの共重合体、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる1種以上であるポリスチレン系樹脂を用いる場合、樹脂中のポリフェニレンエーテルの含有量が、10〜90質量%の範囲であることが好ましい。樹脂中にポリフェニレンエーテルの含有量は、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%であることがさらに好ましい。また、樹脂中にポリフェニレンエーテルの含有量は、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0039】
(スチレン系樹脂)
本実施の形態において、スチレン系樹脂としては、例えば、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(一般にハイインパクトポリスチレンと称されているもの)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体及び/又はその水素添加物、スチレンとラジカル共重合可能なビニル単量体との共重合体などが挙げられる。
【0040】
スチレンとラジカル共重合可能なビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、アクリル酸、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、及びメタクリル酸エチルヘキシル等のビニルカルボン酸及びそのエステル、無水マレイン酸及びN−フェニルマレイミド等の不飽和ジカルボン酸無水物及びその誘導体、並びにブタジエン及びイソプレン等のジエン化合物等が挙げられ、2種以上を組み合わせて共重合することも可能である。
スチレン系樹脂としては、商業的な入手容易性の観点で、好ましくは、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、N−フェニルマレイミドとスチレンの共重合体、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
ホモポリスチレン及びゴム変性ポリスチレンとしては、得られる熱可塑性樹脂混合物の、流動性と機械的強度のバランスの維持の観点で還元粘度(30℃トルエン溶液中で0.5g/100mlの濃度で測定)が0.5〜2.0dl/gの範囲であるホモポリスチレン及びゴム変性ポリスチレンが好ましい。ホモポリスチレン及びゴム変性ポリスチレンの還元粘度が0.7dl/g以上であることがより好ましく、0.8dl/g以上であることがさらに好ましい。また、ホモポリスチレン及びゴム変性ポリスチレンの還元粘度が1.5dl/g以下であることが好ましく、1.2dl/g以下であることがより好ましい。
【0042】
アクリロニトリル−スチレン共重合体としては、得られる熱可塑性樹脂混合物の耐薬品性と耐熱性の観点で、アクリロニトリル−スチレン共重合体中で3〜30質量%のアクリロニトリルを構造単位として含有する共重合体が好ましい。
アクリロニトリルの含有量は、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることがさらに好ましい。また、アクリロニトリルの含有量は、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
アクリロニトリル−スチレン共重合体は、アクリロニトリル−スチレン共重合体100質量部に対して30質量部以下のブタジエンをさらに共重合させた共重合体であってもよい。
【0043】
N−フェニルマレイミドとスチレンの共重合体としては、得られる熱可塑性樹脂混合物の耐熱性とポリフェニレンエーテルへの親和性の観点で、N−フェニルマレイミドとスチレンの共重合体中で15〜70質量%のN−フェニルマレイミドを構造単位として含有する共重合体が好ましい。N−フェニルマレイミドの含有量は、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。また、N−フェニルマレイミドの含有量は、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。
N−フェニルマレイミドとスチレンの共重合体は、N−フェニルマレイミドとスチレンの共重合体100質量部に対して30質量部以下のアクリロニトリルをさらに共重合させた共重合体であってもよい。
N−フェニルマレイミドとスチレンの共重合体のガラス転移温度は、得られる熱可塑性樹脂混合物の耐熱性維持の観点で、140℃〜220℃の範囲であることが好ましい。
本実施の形態におけるガラス転移温度とは、例えば、DSC測定装置で、20℃/分の昇温速度で測定した際に観察できるガラス転移温度である。
【0044】
(オレフィン系樹脂)
本実施の形態において、オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとα−オレフィンの共重合体、及びエチレンとアクリレート類との共重合体等が挙げられ、ポリプロピレン(以下、単に「PP」と略記する場合がある。)が好ましい。
【0045】
本実施の形態において、ポリプロピレンとしては、結晶性プロピレンホモポリマー、重合の第一工程で得られる結晶性プロピレンホモポリマー部分と重合の第二工程以降でプロピレン、エチレン及び/又は少なくとも1種の他のα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン等)を共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を有する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体が挙げられる。ポリプロピレンとしては、結晶性プロピレンホモポリマーと結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体の混合物であってもよい。
【0046】
ポリプロピレンは、通常、三塩化チタン触媒又は塩化マグネシウム等の担体に担持したハロゲン化チタン触媒等とアルキルアルミニウム化合物の存在下に、重合温度0〜100℃の範囲で、重合圧力3〜100気圧の範囲で重合して得られる。この際、重合体の分子量を調整するために水素等の連鎖移動剤を添加することも可能である。重合方法としては、バッチ式、連続式いずれの方法でも可能で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の溶媒下での溶液重合、スラリー重合等の方法も選択でき、さらには無溶媒下モノマー中での塊状重合、ガス状モノマー中での気相重合方法等が適用できる。
【0047】
ポリプロピレンのアイソタクティシティ及び重合活性を高めるため、第三成分として電子供与性化合物を内部ドナー成分又は外部ドナー成分として用いることができる。これらの電子供与性化合物としては公知のものが使用でき、例えば、ε−カプロラクトン、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチル等のエステル化合物、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチル等の亜リン酸エステル、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等のリン酸誘導体等、アルコキシエステル化合物、芳香族モノカルボン酸エステル及び/又は芳香族アルキルアルコキシシラン、脂肪族炭化水素アルコキシシラン、各種エーテル化合物、並びに各種アルコール類及び/又は各種フェノール類等が挙げられる。
【0048】
本実施の形態において、ポリプロピレンのプロピレン重合体部分の密度は、通常、0.90g/cm以上であり、0.90〜0.93g/cmであることが好ましく、0.90〜0.92g/cmであることがより好ましい。
プロピレン重合体部分の密度の測定方法は、JIS K−7112水中置換法によって、容易に求めることができる。また、ポリプロピレンがプロピレンを主成分としたα−オレフィンとの共重合体である場合は、ポリプロピレンをヘキサン等の溶媒を用いて共重合成分を抽出し、残ったプロピレン重合体部分の密度を上記のJIS K−7112水中置換法によって、容易に求めることができる。
【0049】
本実施の形態において、公知の結晶核剤を添加し、ポリプロピレンの密度を高くすることも有効である。結晶核剤としてはポリプロピレンの結晶性を向上させるものなら特に限定されるものではないが、例えば、芳香族カルボン酸の金属塩、ソルビトール系誘導体、有機リン酸塩、芳香族アミド化合物等の有機系核剤、及びタルク等の無機系核剤を挙げることができる。
【0050】
本実施の形態において、ポリプロピレンのMFR(JIS K−6758に準拠:230℃,21.2N荷重)は、長繊維フィラーの熱可塑性樹脂混合物への濡れ性を向上させる観点から、10g/10分以上であることが好ましく、20〜50g/10分であることがより好ましく、25〜40g/10分であることがさらに好ましく、30〜40g/10分であることがよりさらに好ましい。
【0051】
(ポリエステル)
本実施の形態において、ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、及び液晶ポリエステル類が挙げられ、これらの中でも、液晶ポリエステル類が好ましい。
【0052】
本実施の形態において、液晶ポリエステルとは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルである。サーモトロピック液晶ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、アルキレングリコール、及びテレフタル酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸及び4,4’−ジヒドロキシビフェニルならびにテレフタル酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル等が挙げられる。
本実施の形態で使用される液晶ポリエステルとしては、下記構造単位(イ)、(ロ)、及び必要に応じて(ハ)及び/又は(ニ)からなるものが好ましく用いられる。
【0053】
【化2】

【0054】
【化3】

【0055】
【化4】

【0056】
【化5】

【0057】
構造単位(イ)及び(ロ)はそれぞれ、p−ヒドロキシ安息香酸から生成したポリエステルの構造単位と、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸から生成した構造単位である。
構造単位(イ)及び(ロ)を使用することで、優れた耐熱性、流動性や剛性などの機械的特性のバランスに優れた樹脂を得ることができる。
構造単位(ハ)及び(ニ)中のXは、下記群からそれぞれ任意に1種又は2種以上を選択される基である。
【0058】
【化6】

【0059】
構造単位(ハ)は、エチレングリコール、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、及びビスフェノールA等から生成した構造単位であることが好ましく、エチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、及びハイドロキノンから生成した構造単位であることがより好ましく、エチレングリコール及び4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位であることがさらに好ましい。
構造単位(ニ)はそれぞれ、テレフタル酸、イソフタル酸、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等から生成した構造単位であることが好ましく、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸から生成した構造単位であることがより好ましい。
【0060】
構造単位(ハ)及び構造単位(ニ)は、上述した構造単位を少なくとも1種又は2種以上を併用することができる。2種以上を併用する場合、例えば、構造単位(ハ)においては、エチレングリコールから生成した構造単位及びハイドロキノンから生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位及び4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、並びにハイドロキノンから生成した構造単位及び4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位等が挙げられる。また、構造単位(ニ)においては、テレフタル酸から生成した構造単位/イソフタル酸から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位/2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位等が挙げられる。
【0061】
液晶ポリエステル中の構造単位(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の使用割合は特に限定されないが、構造単位(ハ)と(ニ)は基本的に、ほぼ等モル量であることが好ましい。
構造単位(ハ)と(ニ)からなる下記構造単位(ホ)を、液晶ポリエステル中の構造単位として使用することもできる。
【0062】
【化7】

【0063】
構造単位(ホ)においてXは、上述したとおりである。
構造単位(ホ)としては、具体的には、エチレングリコールから生成した構造単位及びテレフタル酸から生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位及びテレフタル酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位及びテレフタル酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位及びイソフタル酸から生成した構造単位、ビスフェノールAから生成した構造単位及びテレフタル酸から生成した構造単位、並びにハイドロキノンから生成した構造単位及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0064】
本実施の形態において、液晶ポリエステルには、本実施の形態の特徴と効果を損なわない程度の少量の範囲で、必要に応じて、他の芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸から生成する構造単位を導入することができる。
本実施の形態において、液晶ポリエステルの溶融時での液晶状態を示し始める温度(以下、液晶開始温度という)は、150〜350℃であることが好ましく、180〜320℃であることがさらに好ましい。液晶開始温度をこの範囲にすることは、得られる樹脂を好ましい色調と耐熱性と成形加工性バランスの良いものとすることができる。
本実施の形態における液晶開始温度の測定方法としては、具体的には、加熱ステージを有する偏光顕微鏡を用いて、上記液晶ポリエステルを1℃/分の昇温速度で加熱しながら、偏光下で観察して、異方性溶融相が観察される温度である。
【0065】
本実施の形態において、液晶ポリエステルの25℃、1MHzにおける誘電正接(tanδ)は、0.03以下であることが好ましく、0.025以下であることがさらに好ましい。
本実施の形態において、誘電正接とは、JIS−K6911に準拠した試験方法により決定される値である。誘電正接の値が小さければ小さいほど、誘電損失は小さくなり、樹脂を電気・電子部品の原料として用いる時、発生する電気的ノイズが抑制され好ましい。特に25℃、高周波数領域下、すなわち1〜10GHz領域において、誘電正接(tanδ)は、0.03以下であることが好ましく、0.025以下であることがより好ましい。
【0066】
本実施の形態において、液晶ポリエステルの見かけの溶融粘度(液晶開始温度+30℃でせん断速度100/秒)は、10〜3,000Pa・sであることが好ましく、10〜2,000Pa・sであることがより好ましく、10〜1,000Pa・sであることがさらに好ましい。見かけの溶融粘度をこの範囲にすることにより、樹脂の流動性を好ましいものとすることができる。
本実施の形態における見かけの溶融粘度の測定方法としては、具体的には、キャピラリーレオメーターを用いて、せん断速度における粘度を測定する方法が挙げられる。せん断速度100sec−1における300℃の溶融粘度は、キャピラリー式のレオメータによって測定でき、例えば、キャピログラフ((株)東洋精機製作所製)を用い、キャピラリーは、キャピラリー長=10mm、キャピラリー径=1mmを用いて、温度300℃、せん断速度100sec−1にて測定することができる。
【0067】
(ポリアミド)
本実施の形態において、ポリアミドとしては、ポリマーの繰り返し構造中にアミド結合{−NH−C(=O)−}を有するものであれば、特に限定されるものではない。
ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではないが、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合等の方法が挙げられる。
本実施の形態において、ジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、及び芳香族ジアミンが挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0068】
本実施の形態において、ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びダイマー酸等が挙げられる。
本実施の形態において、ラクタム類としては、例えば、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、及びω−ラウロラクタム等が挙げられる。
本実施の形態において、アミノカルボン酸としては、例えば、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、及び13−アミノトリデカン酸等が挙げられる。
【0069】
本実施の形態において、ポリアミドとしては、ラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、及び/又はω−アミノカルボン酸を、単独又は二種以上の混合物にして重縮合を行って得られる共重合ポリアミド類を使用することができる。また、ラクタム類、ジアミン、ジカルボン酸、及び/又はω−アミノカルボン酸を重合反応機内で低分子量のオリゴマーの段階まで重合し、その後、押出機等で高分子量化した共重合ポリアミドも好適に使用することができる。
【0070】
本実施の形態において、ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミドMXD(m−キシリレンジアミン)・6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6/6T/6I、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミド6/12/6T、ポリアミド66/12/6T、ポリアミド6/12/6I、ポリアミド66/12/6I、ポリアミド9T等のポリアミド樹脂を好適に使用することができる(例えば、ポリアミド6Iは、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の重合ポリアミド樹脂を意味し、ポリアミド6/6Tは、ε−アミノカプロン酸、ヘキサメチレンジアミン、及びテレフタル酸の共重合ポリアミド樹脂を意味する。)。また、これらのポリアミド樹脂を2種類以上用いて、押出機等でさらに共重合化したポリアミド類も使用することができる。
【0071】
本実施の形態において、ポリアミドとしては、得られる長繊維フィラー強化ペレットからなる成形体の耐熱性を向上させる観点で、繰り返し構造単位中に芳香環を有するポリアミドであることが好ましい。具体的には、ポリアミドMXD(m−キシリレンジアミン)・6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6/6T/6I、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミド6/12/6T、ポリアミド66/12/6T、ポリアミド6/12/6I、ポリアミド66/12/6I、ポリアミド9T等が挙げられ、ポリアミド6T/6I、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミド9Tがより好ましく、ポリアミド9Tがさらに好ましい。上記好ましいポリアミドの混合物であってもよい。
【0072】
本実施の形態において、ポリアミドの粘度は、ISO307に従い96%硫酸中で測定した粘度が70〜160ml/gの範囲であることが好ましく、80〜150ml/gの範囲であることがより好ましい。
ポリアミドの粘度が、70ml/g以上であることにより、ペレットの生産時のストランドの引き取り性を良好に制御することができ、160ml/g以下であることにより、長繊維フィラーと樹脂の濡れ性を良好に制御することができる。
【0073】
本実施の形態において、ポリアミドとしては、ポリアミドの種類は同一であるが粘度数の異なる2種以上のポリアミドの混合物を用いることができる。ポリアミドの混合物としては、例えば、粘度数170ml/gのポリアミドと粘度数80ml/gのポリアミドの混合物、粘度数120ml/gのポリアミドと粘度数115ml/gのポリアミドの混合物等が挙げられる。
ポリアミドの混合物の粘度は、ポリアミドの混合物を96%硫酸に溶解して、ISO307に従い粘度を測定することができ、上述した範囲にあることが好ましい。
【0074】
本実施の形態において、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶性を向上させるために、ポリアミドの末端アミノ基濃度が5μmol/g以上であることが好ましく、10μmol/g以上であることがより好ましく、12μmol/g以上であることがさらに好ましく、15μmol/g以上であることがよりさらに好ましい。長繊維フィラーと樹脂との濡れ性を良好に制御するために、ポリアミドの末端アミノ基濃度が45μmol/g以下であることが好ましく、40μmol/g以下であることがより好ましく、35μmol/g以下であることがさらに好ましく、30μmol/g以下であることがよりさらに好ましい。
【0075】
本実施の形態において、ポリアミドの末端カルボキシル基濃度は、樹脂の流動性や剛性等の機械特性の観点で、20μmol/g以上であることが好ましく、30μmol/g以上であることがより好ましく、150μmol/g以下であることが好ましく、100μmol/g以下であることがより好ましく、80μmol/g以下であることがさらに好ましい。
【0076】
本実施の形態において、ポリアミドの末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の比(末端アミノ基濃度/末端カルボキシル基濃度)は、特に限定されないが、機械的特性の観点で、1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.8以下であることがさらに好ましく、0.7以下であることがよりさらに好ましい。また、ポリアミドの末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の比を0.1以上とすることにより、ペレットを安定的に得ることができる。
【0077】
本実施の形態において、ポリアミドの末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の調整方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるように、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類等の末端調整剤を添加する方法が挙げられる。
【0078】
末端アミノ基と反応する末端調整剤としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、並びにこれらから任意に選ばれる複数の混合物等を挙げることができる。これらモノカルボン酸化合物としては、反応性、封止末端の安定性、価格等の点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及び安息香酸が好ましく、安息香酸がより好ましい。
【0079】
末端カルボキシル基と反応する末端調整剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、及びジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン及びこれらから任意に選ばれる複数の混合物等を挙げることができる。これらモノアミン化合物としては、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格等の点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、及びアニリンが好ましい。
【0080】
本実施の形態において、ポリアミドの末端アミノ基及び末端カルボキシル基の濃度は、H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めるのが精度、簡便さの点で好ましく、例えば、特開平7−228775号公報に開示された方法に従うことができる。測定溶媒としては、重トリフルオロ酢酸が好適に用いられる。H−NMRの積算回数は、充分な分解能を有する機器で測定した際においても、少なくとも300スキャンすることが好ましい。
ポリアミドの末端アミノ基及び末端カルボキシル基の濃度を測定する方法としては、特開2003−055549号公報に開示されているような滴定による測定方法に従って行うこともできる。
混在する添加剤・潤滑剤等影響をなくすために、H−NMRにより定量することがより好ましい。
【0081】
本実施の形態において、末端封止剤を用いて末端アミノ基及び/又は末端カルボキシル基を調節すると、活性末端が封止された状態となる。末端封止剤として、例えば、モノカルボン酸である安息香酸を用いると、フェニル基末端で封止された末端基が生じる。
本実施の形態において、ポリアミドの封止された末端基の濃度は、、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、45%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることがよりさらに好ましい。また、ポリアミドの封止された末端基の濃度は、85%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、75%であることがさらに好ましい。
【0082】
本実施の形態において、ポリアミドの末端封止率は、ポリアミドに存在する末端カルボキシル基、末端アミノ基及び末端封止剤によって封止された末端基の数をそれぞれ測定し、下記計算式に従って求めることができる
末端封止率(%)=[(α−β)/α]×100
(式中、αは分子鎖の末端基の総数(これは通常、ポリアミド分子の数の2倍に等しい)を表し、βは封止されずに残った末端カルボキシル基及び末端アミノ基の合計数を表す。)
【0083】
本実施の形態において、ポリアミドの含水率は、500〜3000ppmの範囲であることが好ましく、500〜2000ppmの範囲であることがより好ましい。
ポリアミドの含水率を500ppm以上とすることにより、色調の良好なペレットを得ることができ、3000ppm以下とすることにより、樹脂の大幅な粘度低下を抑制することができる。
本実施の形態における含水率の測定方法としては、具体的には、ISO15512のB法に準拠した水分気化法である。
【0084】
(ポリアリーレンスルフィド)
本実施の形態において、ポリアリーレンスルフィドとしては、下記式で示されるアリーレンスルフィドの繰返し単位を通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む重合体である。
[−Ar−S−]
(式中、Arは、アリーレン基を表す。)
本実施の形態において、アリーレン基としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルホン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、及びナフチレン基等が挙げられ、置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、及びフェニル基が挙げられる。
【0085】
本実施の形態において、ポリアリーレンスルフィドとしては、構成単位であるアリーレン基が1種であるホモポリマーであってもよく、加工性や耐熱性の観点から、2種以上の異なるアリーレン基を混合して用いて得られるコポリマーであってもよい。ポリアリーレンスルフィドとしては、アリーレン基がフェニレン基であるポリフェニレンスルフィドであることが好ましく、主構成要素としてp−フェニレンスルフィドの繰り返し単位を有するポリフェニレンスルフィド(以下、単に「PPS」と略称する場合がある。)が、加工性、耐熱性に優れ、かつ、工業的に入手が容易なことからより好ましい。
【0086】
本実施の形態において、ポリアリーレンスルフィドの製造方法は、ハロゲン置換芳香族化合物、例えば、p−ジクロルベンゼンを硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中で硫化ナトリウムあるいは硫化水素ナトリウムと水酸化ナトリウム又は硫化水素と水酸化ナトリウム若しくはナトリウムアミノアルカノエートの存在下で重合させる方法、p−クロロチオフェノールの自己縮合等の方法が挙げられるが、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンを反応させる方法が好適に用いられる。
本実施の形態において、ポリアリーレンスルフィドの分子鎖に分岐構造をもたらすために必要に応じてトリクロロベンゼンを分岐剤として使用することもできる。
【0087】
本実施の形態において、ポリアリーレンスルフィドの製造方法は、公知の方法であれば特に限定されるものではない。例えば、米国特許第2513188号明細書、特公昭44−27671号公報、特公昭45−3368号公報、特公昭52−12240号公報、特開昭61−225217号、米国特許第3274165号明細書、特公昭46−27255号公報、ベルギー特許第29437号明細書、及び特開平5−222196号公報等に開示された方法やこれら特許等に例示された先行技術の方法が挙げられる。
本実施の形態において、上記公知の重合方法により得られるPPSは、通常リニア型PPSである。
【0088】
本実施の形態において、リニア型PPSを重合した後に、さらに酸素の存在下でPPSの融点以下の温度(例えば、200〜250℃)で加熱処理し酸化架橋を促進してポリマー分子量、粘度を適度に高めることにより架橋型PPSを得ることができる。架橋型PPSには、架橋程度を微少に留めた半架橋PPSも含まれる。
PPSは、リニア型PPS、架橋型PPSのいずれか1種又は2種を併用して用いることができる。リニア型PPSと架橋型PPSとを併用することは、ポリフェニレンエーテル分散相の粒子径を小さくできるといった効果を発現するので好ましい。
【0089】
本実施の形態において、PPSに起因する成形時におけるペレットの白化、モールドデポジットを低減させるには、PPS中のPPSに含まれるオリゴマーの含有量が0.7質量%以下であることが好ましい。
本実施の形態において、PPSに含まれるオリゴマーとは、PPSを塩化メチレンにより抽出した場合に、塩化メチレン溶液中に抽出される物質を意味する。一般に、PPSに含まれるオリゴマーは、PPSの不純物として知られている物質であり、オリゴマーの含有量は、具体的には、以下の方法により測定することができる。
PPS粉末5gを塩化メチレン80mlに加え、6時間ソクスレー抽出を実施した後、室温まで冷却し、抽出後の塩化メチレン溶液を秤量瓶に移す。次いで、上記抽出に使用した容器を塩化メチレン合計60mlを用いて、3回に分けて洗浄し、該洗浄液を上記秤量瓶中に回収する。次に、約80℃に加熱して、該秤量瓶中の塩化メチレンを蒸発させて除去し、残渣を秤量し、この残渣量より塩化メチレンによる抽出量、すなわちPPS中に存在するオリゴマー量の割合を求めることができる。
【0090】
本実施の形態において、ポリアリーレンスルフィドのせん断速度100sec−1における300℃の溶融粘度が、10〜150Pa・sであることが好ましく、10〜100Pa・sであることがより好ましく、10〜80Pa・sであることがさらに好ましい。
ポリアリーレンスルフィドのせん断速度100sec−1における300℃の溶融粘度が、10Pa・s以上であることにより、樹脂に優れた機械的特性を与え、150Pa・s以下であることにより、長繊維フィラーへの樹脂の含浸性が改善される。
【0091】
本実施の形態において、ポリアリーレンスルフィドのせん断速度100sec−1における300℃の溶融粘度は、キャピラリー式のレオメータによって測定でき、例えば、キャピログラフ((株)東洋精機製作所製)を用い、キャピラリーは、キャピラリー長=10mm、キャピラリー径=1mmを用いて、温度300℃、せん断速度100sec−1にて測定することができる。
【0092】
(ポリアリレート)
本実施の形態において、ポリアリレートとしては、構造単位に、芳香環とエステル結合を含むポリマーであり、ポリアリールエステルとも言われる。ポリアリレートとしては、例えば、ビスフェノールAとテレフタル酸及び/又はイソフタル酸からなる、下記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアリレートが好適に用いられる。
本実施の形態において、テレフタル酸とイソフタル酸のモル比が約1:1であるポリアリレートが、成形体における耐熱性、及び樹脂の靱性の観点から好適である。
【0093】
【化8】

【0094】
本実施の形態において、ポリアリレートとしては、市販品を用いることもでき、例えば、ユニチカ社製の商品名「Uポリマー」等を用いることができる。
ポリアリレートの分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量が、5000〜300000であることが好ましく、10000〜300000であることがより好ましく、10000〜100000であることがさらに好ましい。ポリアリレートの数平均分子量が5000以上であると、成形体の耐熱性が良好になると共に、樹脂の機械的強度が高くなる傾向にあり、300000以下であると、樹脂の流動性が良好になり、ポリエーテルフェノールの分散相がより微分散化し易くなる傾向がある。
本実施の形態におけるポリスチレン換算の数平均分子量の測定方法としては、具体的には、GPCを用いて、溶媒としてクロロホルムを用い、カラム温度40℃条件で、予め同条件で測定された標準ポリスチレンの検出時間−分子量の曲線より方法である。このとき、ポリアリレートのクロロホルム溶液の濃度は、1g/リットルの濃度である。また、検出器は、紫外線吸収検出器を用いて280nm程度で測定することが好ましい。
【0095】
(ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン)
本実施の形態で使用可能なポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォンは、公知の非晶性スーパーエンジニアリングプラスチック群の中から、適宜使用することができる。
ポリエーテルサルフォンの具体的な製品では、例えば、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のレーデルA(登録商標)、レーデルR(登録商標)、三井化学社製のMITSUI PES、BASFジャパン社製のウルトラゾーンE(登録商標)等が挙げられる。
ポリエーテルイミドの具体的な製品では、例えば、SABIC イノベーティブプラスチックス社製のウルテム(登録商標)等が挙げられる。
ポリサルフォンの具体的な製品では、例えば、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のユーデル(登録商標)、ミンデル(登録商標)、BASFジャパン社製のウルトラゾーンS(登録商標)等が挙げられる。
【0096】
(ポリアリールケトン)
本実施の形態において、ポリアリールケトンとは、その構造単位に、芳香環と、エーテル結合及びケトン結合と、を含む熱可塑性樹脂であり、例えば、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等が挙げられる。
本実施の形態において、下記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトンが好適に用いられる。
【0097】
【化9】

【0098】
本実施の形態において、ポリエーテルエーテルケトンとしては、市販品を用いることができ、例えば、VICTREX社製の商品名「PEEK151G」、「PEEK90G」、「PEEK381G」、「PEEK450G」、「PEK」(登録商標)、BASF社製の商品名「Ultrapek」(PEKEKK)(登録商標)等を用いることができ、VICTREX社製の商品名「PEEK」(登録商標)が好適に用いられる。
ポリアリールケトンは、1種を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
本実施の形態において、ポリアリールケトンの分子量としては、溶融粘度を指標とすることができ、溶融粘度が50〜5000Pa・s(500〜50000Poise)の範囲であることが好ましく、70〜3000Pa・sであることがより好ましく、100〜2500Pa・sであることがさらに好ましく、200〜1000Pa・sであるがよりさらに好ましい。
ポリアリールケトンの溶融粘度が50Pa・s以上であると、樹脂の機械的強度が良好となる傾向にあり、5000Pa・s以下であると、樹脂の成形加工性が良好となる傾向にある。
本実施の形態において、ポリアリールケトンの溶融粘度は、400℃に加熱されたポリアリールケトンを、内径1mm、長さ10mmのノズルから、負荷荷重100kgで押し出すときに測定される見掛けの溶融粘度である。
【0100】
(相溶化剤)
本実施の形態において、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂として、ポリフェニレンエーテルと比較的親和性の低い樹脂であるオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリアリールケトン、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる1種を用いる場合においては、ポリフェニレンエーテルとポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂との相溶化剤を含むことが好ましい。
【0101】
ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂である場合には、ポリフェニレンエーテルとオレフィン系樹脂は本質的に非相溶性であるため相溶化剤を用いることが好ましい。オレフィン系樹脂とポリフェニレンエーテルとからなる熱可塑性樹脂混合物は、オレフィン系樹脂連続相中にポリフェニレンエーテルが分散した構造を示し、ポリフェニレンエーテルは、オレフィン系樹脂の非晶部分のガラス転移温度以上での耐熱性を補強する上で重要な役割を示す。
【0102】
両者の相溶性を改善のために、オレフィン系樹脂と相溶性の高いセグメント鎖とポリフェニレンエーテルと相溶性の高いセグメント鎖を有する共重合体を相溶化剤として利用することができる。この相溶性を有する共重合体としては例えば、ポリスチレン鎖−ポリオレフィン鎖を有する共重合体が挙げられる。
本実施の形態において、オレフィン系樹脂とポリフェニレンエーテルの相溶化剤としては、ポリフェニレンエーテル鎖−ポリオレフィン鎖を有する共重合体、芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも2個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなる水素添加ブロック共重合体等も挙げられ、水素添加ブロック共重合体が好ましい。
【0103】
オレフィン系樹脂とポリフェニレンエーテルの相溶化剤としての、水素添加ブロック共重合体としては、例えば、A−B−A、A−B−A−B、(A−B−)−Si、A−B−A−B−A等の構造を有するブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体等が挙げられる。Aは芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを意味し、Bは共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックを意味する。
重合体ブロックAにおける芳香族ビニル化合物の含有量及び、重合体ブロックBにおける共役ジエン化合物の含有量は、それぞれ少なくとも70質量%であることが好ましい。
水素添加ブロック共重合体とは芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物からなるブロック共重合体中の共役ジエン化合物に由来するオレフィン性不飽和結合を50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下まで水素添加反応により低減化したブロック共重合体であることが好ましい。
【0104】
本実施の形態において、オレフィン系樹脂とポリフェニレンエーテルの相溶化剤として有用なブロック共重合体は、後述する衝撃改良剤としてのブロック共重合体と、同じであり、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂としてオレフィン系樹脂を用いる場合には、該ブロック共重合体は、相溶化剤としての機能と、衝撃改良剤としての機能の両方の機能を有する。後述する衝撃改良剤としてのブロック共重合体の中でも、ポリフェニレンエーテルとPPの相溶化剤としてより好適に使用可能なものは、共役ジエン化合物である、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合量が、50%から90%である、いわゆるハイビニルタイプのブロック共重合体を好適に用いることができる。
【0105】
ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂がポリアミドである場合、相溶化剤としては、特開平8−48869号公報及び特開平9−124926号公報等に詳細に開示されている相溶化剤を挙げることができる。これら公知の相溶化剤はすべて使用可能であり、併用使用も可能である。
本実施の形態において、上記相溶化剤の中でも、例えば、マレイン酸又はその誘導体、クエン酸又はその誘導体、及びフマル酸又はその誘導体が好ましい。
【0106】
本実施の形態における相溶化剤の含有量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの混合物100質量部に対して0.01〜25質量部であることが好ましく、0.05〜10質量部であることがより好ましく、0.1〜5質量部であることがさらに好ましい。
本実施の形態において、ポリフェニレンエーテル粒子がポリアミド連続相中に、平均粒子径0.1〜5μmの分散相として存在することが好ましく、平均粒子径が0.3〜3μmの範囲であることがより好ましく、0.5〜2μmの範囲であることがさらに好ましい。
本実施の形態において、後述する衝撃改良剤は、ポリフェニレンエーテル分散相中に存在することが好ましい。
【0107】
ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂がポリアリーレンスルフィドである場合、ポリアリーレンスルフィドとポリフェニレンエーテルからなる熱可塑性樹脂混合物は、ポリアリーレンスルフィドマトリックス中にポリフェニレンエーテルが分散した構造を呈することが好ましく、ポリフェニレンエーテルは、その高いガラス転移温度を活かして、ポリアリーレンスルフィドの非晶部分のガラス転移温度以上での耐熱性を補強する上で重要な役割を示す。
ポリアリーレンスルフィドとポリフェニレンエーテルとは非相溶であり、相溶性を向上させるには、エポキシ基及び/又はオキサゾリル基を含有する化合物の共重合体が有用である。
本実施の形態において、相溶化剤を用いることにより、ペレットで成形した際に、成形体のバリ発生を顕著に低減化する効果を奏する。
しかしながら、これらの効果を期待しない場合には、相溶化剤を必要としない場合もある。
【0108】
本実施の形態において、ポリアリーレンスルフィドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤としては、エポキシ基及び/又はオキサゾリル基を有する不飽和モノマーとスチレンを主たる成分とするモノマーとの共重合体を好適に利用することができる。
スチレンを主たる成分とするモノマーとは、スチレンを65質量%以上、より好ましくは75〜95質量%含むスチレンと共重合可能なモノマーを含むモノマーであり、例えば、エポキシ基を有する不飽和モノマー及び/又はオキサゾリル基を有する不飽和モノマーと、スチレンの共重合体、エポキシ基を有する不飽和モノマー及び/又はオキサゾリル基を有する不飽和モノマーと、スチレン/アクリロニトリル=90〜75質量%/10〜25質量%の共重合体等が挙げられる。
【0109】
上記エポキシ基を有する不飽和モノマーとしては、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルグリシジルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、グリシジルイタコネート等が挙げられ、グリシジルメタアクリレートが好ましい。
上記オキサゾリル基を有する不飽和モノマーとしては、ビニルオキサゾリン化合物が挙げられ、例えば、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手でき好適に使用できる。
【0110】
エポキシ基及び/又はオキサゾリル基を有する不飽和モノマーと共重合する他のモノマーとしては、スチレン等の他に、共重合成分としてアクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
エポキシ基を有する不飽和モノマー及び/又はオキサゾリル基を有する不飽和モノマーの構造単位を共重合体中に0.3〜20質量%含有することが好ましく、1〜15質量%含有することがより好ましく、3〜10質量%含有することがさらに好ましい。
エポキシ基を有する不飽和モノマー及び/又はオキサゾリル基を有する不飽和モノマーの含有量が、0.3〜20質量%の範囲のものを用いることにより、PPSとポリフェニレンエーテルとの相溶性を高く維持できるようになり、これにより得られたペレットを用いて成形した成形体のバリ発生を大きく抑制することができる他に、耐熱性及び靱性(衝撃強度)と機械的強度のバランスに優れた効果をもたらす。
【0111】
上記共重合体としては、例えば、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン−アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。
【0112】
本実施の形態において、相溶化剤の好ましい配合量は、ポリフェニレンエーテルとポリアリーレンスルフィドの合計100質量部に対して、0.5〜5質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましく、1〜3質量部であることがさらに好ましい。
相溶化剤の配合量が0.5質量部以上であれば、ポリアリーレンスルフィドとポリフェニレンエーテルとの相溶性が良くなり、5質量部以下であれば、分散相を形成するポリフェニレンエーテルの平均粒子径が10μm以下となり、得られたペレットを用いて成形した成形体のバリ発生を大きく抑制することができる他に、耐熱性(衝撃強度)及び靱性と機械的強度のバランスに優れた効果をもたらす。相溶化剤を使用しない場合においては、高い耐熱性と耐衝撃性を有する成形体を与える。
【0113】
この時、ポリフェニレンエーテル粒子がポリアリーレンスルフィド連続相中に、平均粒子径10μm以下の分散相として存在することが好ましく、8μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。得られるペレットの外観悪化や、剥離現象を防止するためには、分散平均粒子径が10μmを超えないことが有効である。このとき、後述する衝撃改良剤は、ポリフェニレンエーテル分散相中に存在することが望ましい。
【0114】
ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂がポリエステルである場合、相溶化剤としては、エポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基、酸無水物基を有する化合物が好ましく、エポキシ基を有する化合物がより好ましい。
具体例としては、グリシジルメタクリレート/スチレン共重合体、グリシジルメタクリレート/スチレン/メチルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート/スチレン/メチルメタクリレート/メタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート/スチレン/アクリロニトリル共重合体、ビニルオキサゾリン/スチレン共重合体、N−フェニルマレイミド/スチレン共重合体、N−フェニルマレイミド/スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。また、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体とポリスチレンのグラフト共重合体のようなグラフト共重合体でもよい。
【0115】
本実施の形態において、ポリエステルとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤としては、グリシジルメタクリレート/スチレン共重合体、ビニルオキサゾリン/スチレン共重合体、N−フェニルマレイミド/スチレン共重合体、N−フェニルマレイミド/スチレン/無水マレイン酸共重合体等が好ましく、グリシジルメタクリレート/スチレン共重合体がさらに好ましい。
これら共重合体中のモノマーであるエポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基、酸無水物基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物とスチレン系化合物の比率は、特に限定されるものではないが、射出成形時のシルバーの発生や押出加工時のメヤニの観点から、エポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基、酸無水物基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物が50質量%以下であることが好ましい。
【0116】
本実施の形態において、ポリエステルとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤の添加量としては、ポリフェニレンエーテルとポリエステルの合計100質量部に対し、ペレットの引張り強度の観点から0.1質量部以上であることが好ましく、ペレットの難燃性の観点から10質量部以下であることが好ましく、1〜7質量部であることがより好ましく、3.5〜6質量部であることがさらに好ましい。
相溶化剤の添加方法については特に限定されるものではないが、ポリフェニレンエーテルとともに添加するか、ポリエステルとを予め溶融混練してマスターバッチを製造した後、このマスターバッチをポリフェニレンエーテルに添加する方法が好ましい。
【0117】
この時、ポリフェニレンエーテルが分散相、ポリエステルが連続相を形成することが必要である。ポリエステルが連続相を形成することにより、ペレットの耐薬品性、樹脂の剛性に優れる。これら分散形態については、例えば透過型顕微鏡を用いて観察することにより容易に判断することができる。好ましいポリフェニレンエーテルの分散粒子径は、40μm以下である。より好ましくは20μm以下である。
本実施の形態において、後述する衝撃改良剤を配合する場合、衝撃改良剤はポリフェニレンエーテル分散相中に存在することが好ましい。また、製造方法により、分散相であるポリフェニレンエーテル相中に、更にポリエステルが存在する海島湖構造を採らせることも、本実施の形態における熱可塑性樹脂組成物としては有用である。海島湖構造とさせるための具体的な方法の一例を挙げると、押出機途中に1カ所以上の供給口を有する押出機を用いて、押出機供給口よりポリフェニレンエーテルとポリエステルの一部及び、必要により両者の相溶化剤を供給し、さらに押出機途中の供給口より残りのポリエステルを供給する方法が挙げられる。
【0118】
ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂が、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリアリールケトンである熱硬化性樹脂である場合、相溶化剤としては、ポリプロピレン、ポリアミド、PPS、及び液晶ポリマーと、ポリフェニレンエーテルの上述した相溶化剤はすべて使用可能である。これらの樹脂は一般的に加工温度が高いため、末端官能基が反応より不活性化されているものが多く、何らかの反応(熱や、過酸化物等による分子鎖の切断反応等)を起こさせた後に、上述の相溶化剤を適宜選択して使用することが好ましい。
こういった反応を起こさせずに、相溶化させることもできる。具体的には、ポリフェニレンエーテルとポリアリールケトンの相溶化剤として、ポリアリレートを少量添加する事は、両者の相溶性を高める上で、非常に有用である。
本実施の形態において、ポリフェニレンエーテルとポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂との相溶化剤としては、無機金属酸化物を用いることもでき、例えば、亜鉛、チタン、カルシウム、マグネシウム、及びケイ素よりなる群から選ばれる1種以上の金属の酸化物が挙げられ、これらの中では、酸化亜鉛が好ましい。
【0119】
(安定剤)
本実施の形態において、ポリフェニレンエーテル及び又はポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂の安定化のために公知の各種安定剤も好適に使用することができる。
安定剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の金属系安定剤、立体障害フェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等の酸化防止剤、立体障害アミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の有機安定剤が挙げられる。
これら各種安定剤の好ましい配合量は、樹脂混合物100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましい。
本実施の形態において、安定剤としては、立体障害フェノール系酸化防止剤が好ましい。
具体的には、チバスペシャルティーケミカルズから入手可能なイルガノックス(登録商標)1098又はイルガノックス(登録商標)1076等が挙げられる。
【0120】
本実施の形態においては、長繊維フィラーを熱可塑性樹脂混合物中に含浸させる工程においては、大気中の酸素にさらされる可能性が高いため、立体障害フェノール系酸化防止剤を配合することにより、得られるペレットの変色等を防止することができる。
本実施の形態において、立体障害フェノール系酸化防止剤の含有量は、熱可塑性樹脂混合物100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましい。また、立体障害フェノール系酸化防止剤の含有量は、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましい。
【0121】
(難燃剤)
本実施の形態において、難燃性を付与する目的で、有機、無機の難燃剤を含有することができる。難燃剤としては、ハロゲン含有化合物、アンチモン化合物、リン系難燃剤、環状窒素化合物、ケイ素化合物、金属水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、難燃性と同時に、低比重性を付与する観点で、リン系難燃剤、環状窒素化合物、ケイ素化合物が好ましい。
リン系難燃剤としては、赤リン、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸塩類、ホスフォン酸塩類、ホスホルアミド化合物等が挙げられる。
有機リン酸エステル化合物としては、例えば、トリフェニルホスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニルビス(3,5,5’−トリメチルヘキシルホスフェート)、エチルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジフェニルホスフェート)、ジフェニル(3−ヒドロキシフェニル)ホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジキシレニルホスフェート)、2−ナフチルジフェニルホスフェート、1−ナフチルジフェニルホスフェート、ジ(2−ナフチル)フェニルホスフェート等が挙げられる。
有機リン酸エステル化合物としては、下記式(4)又は式(5)で表される芳香族系縮合リン酸エステル化合物等も挙げられる。
【0122】
【化10】

【0123】
【化11】

【0124】
(式中、Q1、Q2、Q3、Q4は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1、R2は、メチル基を表し、R3、R4は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。nは1以上の整数を表し、n1、n2は、それぞれ独立して、0から2の整数を表し、m1、m2、m3、m4は、それぞれ独立して、1から3の整数を表す。)
【0125】
芳香族系縮合リン酸エステル化合物は、一般にnが1〜3の整数を表す化合物が90%以上の混合物であり、nが4以上である多量体やその他の副生成物からなる混合物として入手できる。
例えば、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル化合物(大八化学(株)製、CR741)やビスフェノールA−ビス(ジキシレニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル化合物等のビスフェノールA類の芳香族系縮合リン酸エステル、レゾルシン−ビス(ジキシレニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル化合物(大八化学(株)製、PX200)やレゾルシン−ビス(ジフェニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル化合物(大八化学(株)製、CR−733S)等のレゾルシン類の芳香族系縮合リン酸エステルが挙げられる。レゾルシン類及びビスフェノールA類の芳香族系リン酸エステル化合物は、揮発性、耐熱性面において好ましく、酸価が0.5以下、好ましくは0.1以下であるレゾルシン類及びビスフェノールA類の芳香族縮合リン酸エステル化合物が耐水性及び電気特性面からより好ましく、ビスフェノールA類の芳香族縮合リン酸エステル化合物がさらに好ましい。
【0126】
ホスファゼン化合物としては、下記式(6)で表される環状及び直鎖状の構造を有する化合物が挙げられるが、環状構造を有する化合物が好ましく、n=3及び4の6員環及び8員環のフェノキシホスファゼン化合物がより好ましい。
【0127】
【化12】

【0128】
(式中、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜20の脂肪族基又は芳香族基を表し、nは3以上の整数を表す。)
上記化合物は、フェニレン基、ビフェニレン基及び下記式(7)で表される基からなる群より選ばれる架橋基によって架橋されていても良い。
【0129】
【化13】

(式中、Xは、−C(CH−、−SO−、−S−又は−O−を表す。)
【0130】
上記式(6)で示されるホスファゼン化合物は、公知の化合物であり、例えば、James E. Mark, Harry R. Allcock, Robert West著、”Inorganic Polymers”Pretice−Hall International, Inc., 1992, p61−p140に記載されている。これらホスファゼン化合物を得るための合成例は、特公平3−73590号公報、特開平9−71708号公報、特開平9−183864号公報及び特開平11−181429号公報等に開示されている。例えば、非架橋環状フェノキシホスファゼン化合物の合成においては、H.R.Allcock著、“Phosphorus Nitrogen Compounds“,Academic Press,(1972)に記載の方法に準じて、ジクロルホスファゼンオリゴマー(3量体62%、4量体38%の混合物)1.0ユニットモル(115.9g)を含む20%クロルベンゼン溶液580gに、ナトリウムフェノラートのトルエン溶液を撹拌下で添加した後、110℃で4時間反応させ、精製後、非架橋環状フェノキシホスファゼン化合物が得られる。
【0131】
ホスファゼン化合物は、化合物中のリン含有量が通常のリン酸エステル化合物よりも高いため、少量の添加でも十分な難燃性を確保でき、加水分解性や熱分解性にも優れるため、その結果、熱硬化性樹脂組成物の物性低下が抑えられるので、リン系難燃剤としては好ましい化合物であり、さらに、酸価が0.5以下のホスファゼン化合物が難燃性、耐水性及び電気特性面からより好ましい。
【0132】
ホスフィン酸塩類としては、下記式(8)又は式(9)で表されるホスフィン酸塩及び/又はジホスフィン酸塩及び/又は、これらの縮合物(以下、単に「ホスフィン酸塩類」と略記する場合がある。)である。
【0133】
【化14】

【0134】
(式中、R及びRは、同一か又は異なり、直鎖状もしくは分岐状のC1〜C6のアルキル及び/又はアリールもしくはフェニルを表し、Rは、直鎖状もしくは分岐状のC1〜C10のアルキレン、C6〜C10のアリーレン、C6〜C10のアルキルアリーレン又はC6〜C10のアリールアルキレンを表し、Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)及びプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上を表し、mは、2又は3であり、nは、1〜3の整数を表し、xは、1又は2である。)
【0135】
本実施の形態におけるホスフィン酸塩類は、欧州特許出願公開第699708号公報や特開平8−73720号公報に開示されているような、公知の方法によって製造することができる。例えば、ホスフィン酸塩は水溶液中においてホスフィン酸を金属炭酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物と反応させることにより製造することができるが、この方法に限定されるものではなく、ゾル−ゲル法等によって製造することもできる。ホスフィン酸塩類は、一般にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては縮合度が1〜3の縮合物であるポリマー性ホスフィン酸塩も含まれる。
【0136】
本実施の形態において、ホスフィン酸としては、例えば、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0137】
金属成分としては、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及び/又はプロトン化された窒素塩基から選ばれる1種以上が挙げられ、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオンから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0138】
ホスフィン酸塩類としては、例えば、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛等が挙げられる。
【0139】
本実施の形態において、ホスフィン酸塩類としては、難燃性、モールドデポジットの抑制の観点から、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛が好ましい。
【0140】
本実施の形態において、ペレットを成形して得られる成形体の機械的強度、成形品外観の観点から、ホスフィン酸塩類の平均粒子径(d50%)は、0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがさらに好ましい。また、ホスフィン酸塩類の平均粒子径は、40μm以下であることが好ましく、20μmであることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることがよりさらに好ましい。
本実施の形態において、ホスフィン酸塩類の数平均粒子径が0.5μm以上であることにより、溶融混練等の加工時において、取扱い性や押出し機等への噛み込み性が向上し好ましい樹脂を得ることができる。また、ホスフィン酸塩類の平均粒子径が40μm以下であることにより、成形体の機械的強度が発現し易くなり、かつ成形体の表面良外観が向上するといった効果が得られる。
【0141】
これらホスフィン酸塩類の粒子径分布として、粒子径の小さい方から25%の粒子径(d25%)と75%の粒子径(d75%)の比(d75%/d25%)が1.0を超え5.0以下であることが好ましい。1.2〜4.0であることがより好ましく、1.5〜3.0であることがさらに好ましい。d75%/d25%の値が1.0を超え5.0以下であるホスフィン酸塩類を使用することで、樹脂組成物の面衝撃強度を著しく向上させることが可能となる。
【0142】
本実施の形態において、平均粒子径(d50%)及び粒子径分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒子径に基づいている。また、ホスフィン酸塩類の分散媒として3%イソプロパノール水溶液を用いて測定される値である。具体的には、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910(堀場製作所(株)製)を用いて、3%イソプロパノール水溶液の分散媒でブランク測定を行った後、測定試料を規定の透過率(95%〜70%)になるように入れて測定することにより求めることができる。なお、分散媒中への試料の分散は、超音波を1分間照射することにより行う。
【0143】
本実施の形態におけるホスフィン酸塩類には、本実施の形態の効果を損なわなければ、未反応物あるいは副生成物が残存していても構わない。
本実施の形態においては、上記リン系難燃剤2種以上併用することもできる。
本実施の形態において、リン系難燃剤の含有量は、熱可塑性樹脂混合物100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、1〜40質量部であることがより好ましく、2〜30質量部であることがさらに好ましく、3〜25質量部であることがよりさらに好ましい。
リン系難燃剤の含有量が、熱可塑性樹脂混合物100質量部に対して、3質量部以上であることにより、ペレットの難燃性が良好である。また、40質量部以下であることにより、成形体の機械強度及び耐加熱変形性が良好である。
【0144】
ケイ素化合物としては、例えば、シリコーン、籠状シルセスキオキサン又はその部分開裂構造体、及びシリカ等が挙げられる。
シリコーンは、オルガノシロキサンポリマーのことで、直鎖構造のもの、架橋構造のもの又はそれらがある割合で構成された構造のものでもよく、単独又はそれらの混合物でもよいが、難燃性、流動性の観点から、直鎖構造のものが好ましい。難燃性、耐衝撃性の観点から、分子内の末端基又は側鎖基として官能基を有するものが好ましい。官能基としては、エポキシ基、アミノ基が好ましい。
具体的には、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のシリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンパウダー、信越化学工業株式会社製のストレートシリコーンオイル、反応性シリコーンオイル、非反応性シリコーンオイル、シリコーンパウダーKMPシリーズ等を用いることができる。液体状、固体状いずれのものも用いることができる。
【0145】
液体状のものは、25℃における粘度が、10〜10,000mm/sであることが好ましく、100〜8,000mm/sであることがより好ましく、500〜3,000mm/sであることがさらに好ましい。
固体状のものは、平均粒径が0.1〜100μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることがより好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。
【0146】
本実施の形態において、シリコーンは、熱可塑性樹脂混合物100質量部に対して、難燃効果の点から0.1質量部以上添加することが好ましく。剛性低下抑制のためには、10質量部以下の添加とすることが好ましい。より好ましい下限は、0.3質量部であり、さらに好ましくは、0.5質量部である。より好ましい上限は、5質量部であり、さらに好ましくは2質量部である。
【0147】
環状窒素化合物とは、窒素元素を含有する環状の有機化合物である。具体的にはメラミン誘導体である、メラミン、メレム、メロン等が好ましく用いられ、揮発性の観点から、メレム、メロンが好ましい。
環状窒素化合物は、熱可塑性樹脂混合物100質量部に対して、難燃効果の点から0.1質量部以上添加することが好ましく。剛性低下抑制のためには、10質量部以下の添加とすることが好ましい。より好ましい下限は、0.3質量部であり、さらに好ましくは、0.5質量部である。より好ましい上限は、5質量部であり、さらに好ましくは2質量部である。
【0148】
(長繊維フィラー以外のフィラー)
本実施の形態において、必要により長繊維フィラー以外のフィラーを含んでいてもよく、例えば、繊維長が3mm以下の繊維状フィラー、粒子径が1mm以下の粒状フィラーが挙げられる。繊維長が3mm以下の繊維状フィラーとしては、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、アラミド繊維等から選ばれる1種以上が挙げられ、炭素繊維、ガラス繊維から選ばれる1種以上が好ましく、ガラス繊維がより好ましい。
なお、ここでの繊維長が3mm未満の繊維状フィラーの繊維長は、本実施の形態の長繊維フィラーの平均繊維長の計算には含めない。
【0149】
粒子径が1mm以下の粒状フィラーとしては、例えば、マグネシウム及びカルシウムから選ばれる元素の水酸化物、マグネシウム、チタン、鉄、銅、亜鉛及びアルミニウムよりなる群から選ばれる元素の酸化物、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、ガラス、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びシリカよりなる群から選ばれる少なくとも1種のフィラーが挙げられる。これらの中でも、マグネシウム又はカルシウムから選ばれる元素の水酸化物、マグネシウム・チタン・亜鉛から選ばれる元素の酸化物、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、ガラス、カーボンブラック、カーボンナノチューブが好ましくカルシウムの水酸化物、チタン及び亜鉛から選ばれる元素の酸化物、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、カーボンブラックがより好ましい。
【0150】
長繊維フィラー以外のフィラーの添加量としては、長繊維フィラー強化樹脂ペレット中の20質量%以下であるように添加することが好ましく、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましい。長繊維フィラー以外のフィラーの添加量の下限に関しては特に限定されるものではないが、添加した場合の意図する効果の発現に必要な最小量であればよく、核剤的な効果を期待する場合には、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。寸法安定性の効果を期待する場合の最低量の目安としては0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。
【0151】
本実施の形態において、ウォラストナイトとしては、珪酸カルシウムを成分とする天然鉱物を精製、粉砕及び分級したものである。また、人工的に合成したものも使用可能である。ウォラストナイトの大きさとしては、平均粒子径2〜9μm、アスペクト比5以上のものが好ましく、より好ましくは平均粒子径3〜7μm、アスペクト比5以上のもの、さらに好ましくは平均粒子径3〜7μm、アスペクト比8以上30以下のものである。
【0152】
本実施の形態において、タルクとしては、珪酸マグネシウムを成分とする天然鉱物を精製、粉砕及び分級したものが好適に使用可能であり、広角X線回折によるタルクの(0 0 2)回折面の結晶子径が570Å以上であることが好ましい。
タルクの(0 0 2)回折面は、広角X線回折装置を用いて、タルクMgSi10(OH)の存在が同定され、その層間距離がタルクの(0 0 2)回折面による格子面間隔である約9.39Åに一致することにより確認できる。また、タルクの(0 0 2)回折面の結晶子径は、そのピークの半値幅から算出される。
タルクの形状としては、平均粒子径が1〜20μmの範囲であることが好ましく、粒子径の小さい方から25%の粒径(d25%)と75%の粒径(d75%)の比(d75%/d25%)が1.0〜2.5の範囲である粒径分布を有するものが好ましい。(d75%/d25%)が1.5〜2.2であることがより好ましく、平均粒子径は、1〜16μmであることがより好ましく、3〜9μmであることがさらに好ましい。
【0153】
本実施の形態において、タルクの平均粒子径及び粒子径分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒子径である。また、タルクの分散溶媒としてエタノールを用いて測定される値である。
【0154】
本実施の形態において、チタン及び亜鉛から選ばれる元素の酸化物としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられ、ニ酸化チタンが好ましい。
二酸化チタンとしては、アルミナ・シリコン化合物及び/又はポリシロキサンで表面処理された処理済みニ酸化チタンであってもよく、二酸化チタンとしての含有量は、90〜99質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは93〜98質量%の範囲である。この場合、表面処理剤は、二酸化チタン量として含めない。
二酸化チタンの平均粒子径は、0.05〜1μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜0.5μmの範囲であり、さらに好ましくは0.2μm〜0.4μmの範囲である。
【0155】
本実施の形態において、平均粒子径とは、遠心沈降法で得られた測定値であり、重量メディアン径のことを指す。このときの粒状フィラーを分散させる溶媒は、粒状フィラーの種類により適宜選択されるべきであるが、例えば、二酸化チタンの場合では、ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液を用いることが好ましい。
【0156】
本実施の形態において、必要に応じ、上述したもの以外に、各種添加剤を添加しても構わない。添加剤は、プラスチック及びゴム状重合体等の配合に一般的に配合されるものであれば特に限定はない。添加剤の例として、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)等に記載された添加剤が挙げられる。具体例として、ゴム用軟化剤として用いられるナフテン系、パラフィン系、芳香族系のプロセスオイルや脂肪酸エステル類、脂肪族2塩基酸エステル類、フタル酸エステル類、エポキシ化大豆油等の可塑剤、酸化鉄等の顔料、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアリルアミド等の滑剤、離型剤、有機ポリシロキサン、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤等である。これらの添加剤は、2種以上を混合して用いてもよい。
【0157】
(長繊維フィラー強化樹脂ペレット)
本実施の形態の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、上記長繊維フィラーと、上記熱可塑性樹脂混合物と、から構成されるペレットである。
本実施の形態において、長繊維フィラー強化樹脂ペレットの平均長さは、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、8mm以上であることがさらに好ましい。また、長繊維フィラー強化樹脂ペレットの平均長さは、50mm以下であることが好ましく、より好ましくは40mm以下であり、さらに好ましくは15mm以下である。
本実施の形態の長繊維フィラー強化樹脂ペレットを成形してなる成形体の衝撃強度を悪化させない為には、平均長さは3mm以上とすることが好ましく、また、成形機への噛み込み性を悪化させない為には平均長さは50mm以下とすることが好ましい。
本実施の形態において、ペレットの平均長さとは、任意のペレット50個を取り出し、各ペレットの長さをノギスで測定し、全ペレットの長さの平均値をとることで算出される値である。
【0158】
本実施の形態において、長繊維フィラー強化樹脂ペレットの平均直径は、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、2mm以上であることがさらに好ましい。また、長繊維フィラー強化樹脂ペレットの平均直径は、8mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、4mm以下であることがさらに好ましい。
ペレットの平均直径とは、任意のペレット50個を取り出し、各ペレットの最大径(楕円の場合は長径)と最小径(楕円の場合は短径)をノギスで測定しその平均値をとり、全ペレットの直径の平均値をとることで算出される値である。
【0159】
(樹脂ペレット混合物)
本実施の形態において、長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、長繊維フィラー強化樹脂ペレット100質量部に対して、長繊維フィラーを含まない樹脂ペレットを0.1〜150質量部の量で加えた、樹脂ペレット混合物としても利用可能である。
長繊維フィラーを含まない樹脂ペレットの含有量は、長繊維フィラー強化樹脂ペレット100質量部に対して0.5質量部以上であり、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは2質量部以上である。また、長繊維フィラーを含まない樹脂ペレットの含有量は、120質量部以下であり、好ましくは100質量部以下であり、より好ましく80質量部以下である。
樹脂ペレット混合物からなる成形体の耐衝撃性を低下させないためには上限量を超えないことが好ましく、長繊維フィラーを含まない樹脂ペレットとして、着色剤マスターバッチを用いた場合においては、その着色容易性を維持する為、下限量を下回らないことが好ましい。
【0160】
本実施の形態において、樹脂ペレット混合物中の長繊維フィラーの含有量は、樹脂ペレット混合物全量中の10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、よりさらに好ましくは25質量%で以上ある。また、樹脂ペレット混合物中の長繊維フィラーの含有量は、60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは55質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。
樹脂ペレット混合物を成形して得られる成形体の衝撃強度を低下させないためには10質量%以上とすることが好ましく、成形時の樹脂温度を抑制する観点からは、60質量%以下とすることが好ましい。
【0161】
本実施の形態において、長繊維フィラーを含まない樹脂ペレット中には、長繊維以外のフィラーを含有していてもよく、長繊維以外のフィラーとしては、粒状フィラーが挙げられる。
粒状フィラーとしては、マグネシウム及びカルシウムから選ばれる元素の水酸化物、マグネシウム、チタン、鉄、銅、亜鉛及びアルミニウムよりなる群から選ばれる元素の酸化物、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、ガラス、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びシリカから選ばれる少なくとも1種のフィラーが挙げられる。
粒状フィラーの平均粒子径は1mm以下であることが好ましく、具体的には、長繊維フィラー強化樹脂ペレットに含んでよいとした粒状フィラーを挙げることができる。
【0162】
粒状フィラーの長繊維フィラーを含まない樹脂ペレット中への添加量としては、長繊維フィラーを含まない樹脂ペレット中で50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。粒状フィラーの添加量の下限に関して特に限定されるものではないが、添加した場合の意図する効果の発現に必要な最小量であればよい。目安としては5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。
【0163】
本実施の形態における長繊維を含まない樹脂ペレットを構成する樹脂成分としては、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリアリールケトン、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる1種が挙げられ、より好ましい構成成分は、さらにポリフェニレンエーテルを含むことである。
本実施の形態において、長繊維を含まない樹脂ペレットを構成する樹脂成分としては、長繊維フィラー強化樹脂ペレットについて上述した熱可塑性樹脂混合物が好適に使用可能である。
【0164】
本実施の形態の長繊維フィラー強化樹脂ペレット及び長繊維を含まない樹脂ペレット中には、必要により衝撃改良剤を含んでもよい。ここで用いることができる衝撃改良剤に関しては特に限定はされないが、好ましく使用できるものとしては、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとからなるブロック共重合体(以下、単にブロック共重合体と略記する場合がある。)、及びエチレン/α−オレフィン共重合体の中から目的に応じて選ばれる少なくとも1種である。
【0165】
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、少なくとも50質量%以上が芳香族ビニル化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、よりさらに好ましくは90質量%以上である。
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、よりさらに好ましくは90質量%以上である。
【0166】
本実施の形態において、ブロック共重合体中には、重合体ブロックが共重合体ブロックであってもよく、ランダム共重合部分の芳香族ビニル化合物は均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。
該共重合体ブロックには、芳香族ビニル化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよく、さらに、共重合体ブロックには、芳香族ビニル化合物含有量の異なる部分が複数個共存していてもよい。この場合、例えば芳香族ビニル化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物もしくは他の化合物が結合されているブロックの場合であっても、該ブロックの50質量%が芳香族ビニル化合物より形成されていれば、芳香族ビニル化合物を主体とするブロック共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
【0167】
この芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとからなるブロック共重合体としては、一般に下記構造を有するブロック共重合体が例示される。
(A−B)、A−(B−A)−B、B−(A−B)n+1、[(A−B)k]m+1−Z、[(A−B)−A]m+1−Z、[(B−A)m+1−Z、[(B−A)−B]m+1−Z
(上式において、Zはカップリング剤の残基又は多官能有機リチウム化合物の開始剤の残基を示す。n、k及びmは1以上の整数、一般的には1〜5である。)
【0168】
これらの中でも、該ブロック共重合体の好ましい結合形式は、A−B型、A−B−A型、A−B−A−B型の中から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体であることが好ましく、A−B−A型、A−B−A−B型であることがより好ましく、A−B−A型であることがさらに好ましい。これらはもちろん混合物であっても構わない。
【0169】
本実施の形態において、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体に用いる芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等のうちから1種又は2種以上が選択でき、スチレンが好ましい。そして、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体における芳香族ビニル化合物の含有量は通常1〜70質量%の中から好適に選ぶことが可能であり、好ましくは5〜55質量%であり、より好ましくは10〜55質量%である。
芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体ブロック共重合体に用いる共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種又は2種以上が選ばれ、ブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
【0170】
本実施の形態において、ブロック共重合体は水素添加されたブロック共重合体であってもよい。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族ニ重結合の量(即ち、水素添加率)を、0を超えて100%の範囲で制御したものをいう。該水素添加されたブロック共重合体の好ましい水素添加率は50%以上であり、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは98%以上である。
【0171】
具体的な水素添加方法の例としては、炭化水素溶媒中で、水素添加触媒及び水素ガスを添加し、水素添加反応を行うことにより、ブロック共重合体中に存在する共役ジエン化合物に由来するオレフィン性不飽和結合を低減することにより、水素添加されたブロック共重合体を得ることができる。水素添加反応は、ブロック共重合体に存在する共役ジエン化合物に由来するオレフィン性不飽和結合を低減化できるものであれば、その製法において、特に限定されるものではない。
【0172】
本実施の形態において、これらブロック共重合体をさらに官能基(例えば、カルボン酸基、酸無水物基、エステル基、水酸基等)を有する不飽和化合物と反応させて得られる官能基を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体及びその水素添加物である官能基を有する水添ブロック共重合体等も使用することが可能である。
本実施の形態においては、ブロック共重合体は、水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体の混合物としても問題なく使用可能である。
本実施の形態においては、国際公開第02/094936号公報に記載されているような、全部又は一部が変性されたブロック共重合体や、オイルがあらかじめ混合されたブロック共重合体も好適に使用することができる。
【0173】
本実施の形態において、エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンの少なくとも1種以上との共重合体であり、上記の炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも、炭素数3〜12のα−オレフィンを用いた共重合体が好ましい。
エチレン/α−オレフィン系共重合体は、α−オレフィンの含有量が好ましくは1〜30モル%であり、より好ましくは2〜25モル%であり、さらに好ましくは3〜20モル%である。
【0174】
本実施の形態において、さらに1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−エチル−2,5−ノルボルナジエン、5−(1’−プロペニル)−2−ノルボルネン等の非共役ジエンの少なくとも1種が共重合されていてもよい。
【0175】
エチレン/α−オレフィン共重合体は、一般に、これらエチレン/α−オレフィン共重合体をさらに官能基(例えば、カルボン酸基、酸無水物基、エステル基、水酸基等)を有する不飽和化合物と反応させて得られる官能基を有するエチレン/α−オレフィン共重合体や、エチレンと官能基含有(例えば、エポキシ基、カルボン酸基、酸無水物基、エステル基、水酸基等)モノマーとの共重合体及びエチレン/α−オレフィン/官能基含有モノマーの共重合体等としても使用できる。
【0176】
本実施の形態において、衝撃改良剤を配合する際の好ましい含有量は、ポリフェニレンエーテルとポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂の合計100質量部に対して、1〜15質量部であり、より好ましくは3〜12質量部である。
含有量が1質量部以上であれば、長繊維フィラー強化ペレットを成形してなる成形体の靱性が向上し、含有量が15質量部以下において、機械的強度及び耐熱性に優れる。
【0177】
本実施の形態の長繊維フィラー強化樹脂ペレット、長繊維を含まない樹脂ペレット、又は樹脂ペレット混合物においては、さらに、導電用炭素系フィラーを含んでもよい。
導電用炭素系フィラーとしては、導電用カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等が挙げられる。
導電用カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラックインターナショナル社から入手可能なケッチェンブラック(EC,EC−600JD)等が挙げられる。
カーボンナノチューブとしては、例えば、ハイペリオンキャタリシスインターナショナル社から入手可能なカーボンフィブリル(BNフィブリル)等が挙げられる。カーボンフィブリルの中でも、特に国際公開第94/23433号公報に開示されているようなカーボンフィブリルが好ましい。
【0178】
本実施の形態において、導電用炭素系フィラーの添加方法に関して、特に制限はないが、次の方法が挙げられる。
(1)長繊維フィラー強化樹脂ペレットを製造する際に、導電用炭素系フィラーを熱可塑性樹脂混合物と予め混合する方法。
(2)長繊維フィラーを含まない樹脂ペレットを製造する際に、導電用炭素系フィラーを樹脂成分と予め混合する方法。
(3)樹脂ペレット混合物を製造する際に、長繊維フィラー強化樹脂ペレット、必要により長繊維を含まない樹脂ペレット及び導電用炭素系フィラーがあらかじめポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂中に配合されたマスターバッチを添加する方法。
【0179】
上述の、(1)の方法及び(2)の方法においても、導電用炭素系フィラーは、あらかじめポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂中に配合されたマスターバッチの形態で添加する方法が好ましい。マスターバッチ中で導電用炭素系フィラーが導電用カーボンブラックの場合は、含有量が5〜15質量%であることが好ましく、他の導電用炭素系フィラーである場合は、含有量が10〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは、導電用炭素系フィラーが導電用カーボンブラックの場合は、含有量が7〜12質量%であり、他の導電用炭素系フィラーである場合は、含有量が15〜25質量%である。
【0180】
導電用炭素系フィラーがあらかじめポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂中に配合されたマスターバッチとしては、例えば該熱可塑性樹脂としてポリアミドの場合の技術の例を挙げると、特開平2−201811号公報に開示されているように、導電用カーボンブラックを予めポリアミド中に均一分散させたマスターバッチ、あるいは、本出願人より出願されている米国特許第6942823号明細書に記載されているような、導電用カーボンブラックがポリアミド中に適度に不均一分散しているマスターバッチ、もしくは、ハイペリオンキャタリストインターナショナル社から入手可能なポリアミド66/カーボンフィブリルマスターバッチ(商品名:Polyamide66 with Fibril TM Nanotubes RMB4620−00:カーボンフィブリル量20%)等のカーボンフィブリルマスターバッチ等が挙げられる。これらは、ポリアミド以外の熱可塑性樹脂においても同様のマスターバッチを挙げることができる。
本実施の形態において、マスターバッチとしては、導電用カーボンブラックが熱可塑性樹脂中に適度に不均一分散しているマスターバッチが好ましい。
【0181】
適度な不均一分散とは、具体的には、光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、導電用カーボンブラックの少なくとも一部が、長径20〜100μmの凝集粒子として、1〜100個存在するマスターバッチが好ましい。より好ましくは、光学顕微鏡を用いて連続した3mmの面を観察した際に、長径が20〜100μmの導電性導電用カーボンブラックの凝集粒子が、2〜30個存在するマスターバッチである。
マスターバッチ中の導電用カーボンブラックの凝集粒子の観察は、米国特許第6942823号明細書に開示されている方法を使用することができる。
【0182】
(長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法)
本実施の形態の長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法としては、(1)溶融状態の熱可塑性樹脂混合物を、押出機を用いて、製造する工程、(2)長繊維フィラーを溶融状態の熱可塑性樹脂混合物中に含浸させる工程、(3)撚りをかけながら引き取って、樹脂ストランドにする工程、(4)樹脂ストランドをカットしてペレット形状にする工程を、含む方法である。
本実施の形態において、工程(1)〜(4)をこの順に連続して含むことが好ましい。
本実施の形態において、好ましい設備としては、特開2003−175512号公報に開示されているような、樹脂を溶融混練する押出機、次いでその下流部に設置された長繊維強化材への樹脂を含浸させる為の浸漬用バス、及び樹脂が含浸された樹脂ストランドを撚るための撚りローラーを含む設備を用いることが好ましい。
【0183】
本実施の形態において、長繊維フィラーに撚りをかけることにより、樹脂を長繊維フィラーに含浸させやすくするという効果が得られうる。また、この工程により、長繊維フィラーの繊維間に存在する気泡をストランド断面の外部に追い出す効果もある。
撚りを付与する方法としては、含浸ダイの出口をモーターでストランドの軸周りに回転させる方法、ストランドを引き取る際、ストランドの引き取り方向を軸にストランドを回転させる撚り機を用いる方法が例示できる。
【0184】
本実施の形態において、撚り機とは、例えば、互いのローラー軸の角度をずらして対向させて配置した回転しているローラーを持つもので、撚り機のローラーに樹脂が含浸した長繊維フィラーを通過させることで、撚りを付与することができる。また、撚り機は、水浴とペレタイザーの間に配置することが好ましい。
【0185】
上記工程(1)における、樹脂の溶融混練に用いられる押出機としては単軸押出機、二軸押出機、ニーダ−のいずれを用いてもよいが、二軸押出機が好ましい。
具体的な溶融状態の熱可塑性樹脂混合物の製法としては、(1A)予め、ポリフェニレンエーテル及びポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂を溶融混練して作成しておいた熱可塑性樹脂混合物を押出機に供給して、再度、溶融する方法、(1B)ポリフェニレンエーテル及びポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂をそれぞれ同時に同じ押出機の供給口より供給して溶融混練する方法、(1C)ポリフェニレンエーテル及びポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂を異なる供給口より供給して溶融混練する方法等が挙げられるが、いずれの方法を用いてもよい。これらの中でも、上記(1B)又は(1C)の方法がより好ましい。
【0186】
上記(1B)、(1C)の製法のいずれの製法が好ましいかは、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂として何を使用するかにより、好ましい製法は異なるが、例えば、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂として、ポリフェニレンエーテルと相溶性の高い樹脂を使用する場合には、一般的に、(1B)の製法でよい。一方、ポリフェニレンエーテルと相溶性の低い樹脂の場合は、一般的に(1C)の製法が好ましい。具体的には、押出機の供給口より、ポリフェニレンエーテルと相溶化剤を投入し、ポリフェニレンエーテルの官能化工程を経た後、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂を後段の別の供給口より添加して、混練する方法や、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂の一部とポリフェニレンエーテルとの混合物を押出機の供給口より投入し、後段の供給口より残りのポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂を投入する方法等が挙げられる。いずれにしても、ポリフェニレンエーテルと相溶性の低い熱可塑性樹脂を使用する場合においては、公知の相溶化に有効な製造方法を採用することができる。
【0187】
本実施の形態において、押出機を用いて溶融状態の熱可塑性樹脂を製造する工程において、ポリフェニレンエーテルと、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂とを混合して熱硬化性樹脂混合物を製造する工程(5)を含むことが好ましい。
本実施の形態の、長繊維フィラー強化樹脂ペレットに、長繊維フィラー以外のフィラーを含ませる場合の、該フィラーの供給位置には特に限定されるものではなく、樹脂と同じく最も上流側に位置するフィード口より供給してもいいし、樹脂が溶融状態に到達した後に位置する供給口より供給してもいい。押出機後段に複数の供給口を有する押出機が、好適に使用可能である。
【0188】
本実施の形態における、上記工程(2)における、含浸用バスの設定温度としては、せん断速度1000sec−1における溶融粘度が10〜200Pa・sの範囲内となる温度に設定することが好ましい。熱可塑性樹脂混合物の溶融粘度は、20Pa・s以上であることがより好ましく、30Pa・s以上であることがさらに好ましく、40Pa・s以上であることがよりさらに好ましい。熱可塑性樹脂混合物の溶融粘度は、180Pa・s以下であることがより好ましく、150Pa・s以下であることがさらに好ましく、100Pa・sであることがよりさらに好ましい。
熱可塑性樹脂混合物の溶融粘度は、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂の種類や、それぞれの樹脂成分の粘度、相溶化剤の有無や量により変化するが、含浸用バスの設定温度を適宜設定して、所望の樹脂の溶融粘度に調整する方法が非常に効果的である。
【0189】
長繊維フィラーを溶融状態の熱可塑性樹脂混合物中に含浸させる工程における含浸用バスの設定温度としては、溶融状態の熱可塑性樹脂混合物を製造する工程における押出機の設定温度よりも20℃以上高い温度に設定することが好ましい。この温度は、溶融樹脂の粘度を上述した粘度範囲内にするためにも有用な方法である。より好ましくは、含浸用バスの設定温度としては、溶融状態の熱可塑性樹脂混合物を製造する工程における押出機の設定温度よりも30℃以上高い温度である。含浸用バスの設定温度としては、上限は特に限定されないが、樹脂の分解を避ける為、50℃を一つの目安とすることができる。
熱可塑性樹脂混合物のせん断速度1000sec−1における溶融粘度を10〜200Pa・sとなるような温度は、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂が、例えば、PPSである場合を例示すると、280〜350℃の範囲であり、目安としては310℃におけるせん断速度1000sec−1の溶融粘度を10〜200Pa・sとなるような熱可塑性樹脂混合物に調製することが望まれる。
本実施の形態において、含浸浴の中には長繊維フィラーを解繊し、含浸の促進を目的とする数個のローラーが設置されることが好ましい。
【0190】
本実施の形態のペレットの製造方法において、上記工程(3)における、樹脂ストランドの引き取り速度は、10〜150m/分であることが好ましく、20m/分以上であることがより好ましく、35m/分であることがさらに好ましい。また、樹脂ストランドの引き取り速度は、100m/分以下であることがより好ましく、80m/分であることがさらに好ましい。
工程(3)においては、樹脂ストランドの引き取り速度を10〜150m/分と一般的な速度より高めることにより、粘度の非ニュートン性の特性を有効に利用でき、樹脂の長繊維フィラーへの含浸をよくするという効果を得ることができる。
【0191】
本実施の形態における樹脂ペレット混合物を構成することが可能な長繊維フィラーを含まない樹脂ペレットの製法は、公知の製法であれば、特に限定はされないが、単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー、ニーダ−のいずれの装置を用いることができる。
本実施の形態の長繊維フィラー強化樹脂ペレットを含む樹脂ペレット混合物の製造方法は、特に制限はないが、所望量の長繊維フィラー強化樹脂ペレットと長繊維フィラーを含まない樹脂ペレットをタンブラー、スクリューブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合撹拌装置を用いて、製造する方法が好ましい。
【0192】
(成形体)
本実施の形態の成形体は、上記長繊維フィラー強化樹脂ペレットを溶融成形して得られる成形体、及び上記樹脂ペレット混合物を溶融成形して得られる成形体である。
本実施の形態における成形体とは、射出成形で製造されるバルク状成形体、押出成形やインフレーション成形で成形されるフィルム・シート状成形体や異形押出で成形される成形体を包含する。
【0193】
上記ペレット及び/又は上記樹脂ペレット混合物を溶融成形して得られる成形体は、各種部品として産業的に使用可能である。例えば、ICトレー材料、各種ディスクプレーヤー等のシャーシー、キャビネット等の電気・電子部品、各種コンピューター及びその周辺機器等のOA部品や機械部品、さらにはオートバイのカウルや、自動車のフェンダー・ドアーパネル・フロントパネル・リアパネル・ロッカーパネル・リアバンパーパネル・バックドアガーニッシュ・エンブレムガーニッシュ・燃料注入口パネル・オーバーフェンダー・アウタードアハンドル・ドアミラーハウジング・ボンネンットエアインテーク・バンパー・バンパーガード・ルーフレール・ルーフレールレッグ・ピラー・ピラーカバー・ホイールカバー・スポイラー等に代表される各種エアロパーツ・各種モール・エンブレムといった外装部品や、インストゥルメントパネル・コンソールボックス・トリム等に代表される内装部品等に好適に使用できる。
本実施の形態において、導電用炭素系フィラーを含んで導電化された成形体は、静電気による誤作動防止が必要な機構部品、導電性が要求される内外装部品として好適に利用可能である。
【0194】
本実施の形態において、長繊維フィラー強化樹脂ペレット等を射出成形する際には、長繊維フィラー用のスクリューを備えた射出成形機で行うことが、成形体中の繊維状フィラー繊維長を長く保つ観点より好ましい。成形体中の繊維状フィラーの重量平均繊維長としては、1mm〜7mmの範囲内であることが好ましい。より好ましい下限値は1.2mmである。また、より好ましい上限値は5mmである。得られる成形体の異方性抑制と面衝撃性向上の観点より、下限値を1mmとすることが望ましく、成形体外観の悪化抑制の観点より、上限値を7mmとする事が好ましい。
【実施例】
【0195】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられる評価方法及び測定方法は以下のとおりである。
【0196】
[使用した樹脂]
ポリフェニレンエーテル
ポリフェニレンエーテル(PPE−1):
還元粘度ηsp/c:0.51dl/g
2,6−ジメチルフェノールから構成される重合体
ポリフェニレンエーテル(PPE−2):
還元粘度ηsp/c:0.42dl/g
2,6−ジメチルフェノールから構成される重合体
ポリフェニレンエーテル(PPE−3):特公昭60−34571号公報に従い重合したポリフェニレンエーテル
還元粘度ηsp/c:0.32dl/g
2,6−ジメチルフェノールから構成される重合体
ポリフェニレンエーテル共重合体(PPE−4):特開昭64−33131号公報に従い重合したポリフェニレンエーテル共重合体
還元粘度ηsp/c:0.53dl/g
2,6−ジメチルフェノール(75%)と、2,3,6−トリメチルフェノール(25%)から構成される重合体
【0197】
ポリフェニレンエーテル以外の樹脂
スチレン系樹脂
ホモポリスチレン(PS−1):PSジャパン(株)より入手したポリスチレン 680
ホモポリスチレン(PS−2):ダウケミカル社(米国)より入手したスタイロン(登録商標)685
ハイインパクトポリスチレン(PS−3):PSジャパン(株)より入手したハイインパクトポリスチレン
ゴム含有量:8%
【0198】
オレフィン系樹脂
ポリプロピレン(PP−1):ホモポリプロピレン
密度=0.90g/cm、MFR=35g/10分(230℃,21.2N荷重)
ポリプロピレン(PP−2):ホモポリプロピレン
密度=0.91g/cm、MFR=40g/10分(230℃,21.2N荷重)
ポリプロピレン(PP−3):ホモポリプロピレン
密度=0.90g/cm、MFR=1.2g/10分(230℃,21.2N荷重)
【0199】
ポリエステル
液晶ポリエステル(LCP):調製例1に従い調整した液晶ポリエステル
融点(DSC法):319℃
溶融粘度(330℃,せん断速度100秒−1):18Pa・s
ポリアミド
ポリアミド6,6(PA66):ソルーシアインク社(米国)より入手したバイダイン(登録商標)48BX
ポリアミド9,T(PA9T):調製例2に従い調製したポリアミド9T
末端アミノ基濃度:20μmol/g
末端カルボキシル基濃度:65μmol/g
【0200】
ポリアリーレンスルフィド
ポリフェニレンスルフィド(PPS−1):架橋タイプポリ(p−フェニレンスルフィド)
溶融粘度:130Pa・s(せん断速度100秒−1、300℃)、オリゴマー量:0.6質量%
ポリフェニレンスルフィド(PPS−2):半架橋タイプポリ(p−フェニレンスルフィド)
溶融粘度:140Pa・s(せん断速度100秒−1、300℃)、オリゴマー量:0.5質量%
ポリフェニレンスルフィド(PPS−3):リニアタイプポリ(p−フェニレンスルフィド)
溶融粘度:110Pa・s(せん断速度100秒−1、300℃)、オリゴマー量:0.3質量%
ポリフェニレンスルフィド(PPS−4):リニアタイプポリ(p−フェニレンスルフィド)
溶融粘度:75Pa・s(せん断速度100秒−1、300℃)、オリゴマー量:0.3質量%
ポリフェニレンスルフィド(PPS−5):リニアタイプポリ(p−フェニレンスルフィド)
溶融粘度:38Pa・s(せん断速度100秒−1、300℃)、オリゴマー量:0.5質量%
ポリフェニレンスルフィド(PPS−6):リニアタイプポリ(p−フェニレンスルフィド)
溶融粘度:14Pa・s(せん断速度100秒−1、300℃)、オリゴマー量:0.5質量%
ポリフェニレンスルフィド(PPS−7):半架橋タイプポリ(p−フェニレンスルフィド)
溶融粘度:180Pa・s(せん断速度100秒−1、300℃)、オリゴマー量:0.5質量%
ポリフェニレンスルフィド(PPS−8):架橋タイプポリ(p−フェニレンスルフィド)
溶融粘度:240Pa・s(せん断速度100秒−1、300℃)、オリゴマー量:0.5質量%
ポリフェニレンスルフィド(PPS−9):半架橋タイプポリ(p−フェニレンスルフィド)
溶融粘度:310Pa・s(せん断速度100秒−1、300℃)、オリゴマー量:0.4質量%
【0201】
ポリアリレート
ポリアリレート(PAR):ユニチカ(株)より入手した U−ポリマー(登録商標) U−100
ポリアリールケトン
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK):ビクトレックス社より入手した VICTREX PEEK(登録商標) 151G
【0202】
衝撃改良剤(PPへの使用の場合は、相溶化剤としての機能も有する)
ポリスチレンブロック−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンブロック(SEBS−1)
結合スチレン量:43%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合量:75%、
ポリスチレン鎖の数平均分子量:15000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.8%
ポリスチレンブロック−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンブロック(SEBS−2)
結合スチレン量:60%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合量:80%、
ポリスチレン鎖の数平均分子量:24000、ポリブタジエン部の水素添加率が99.2%
ポリスチレンブロック−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンブロック(SEBS−3)
結合スチレン量:33%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合量:47%
ポリスチレン鎖の数平均分子量:29000、ポリブタジエン部の水素添加率:99.8%
ポリスチレンブロック−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンブロック(SEBS−4)
結合スチレン量:60%、ポリブタジエン部分の1,2−ビニル結合量:55%
ポリスチレン鎖の数平均分子量:24000、ポリブタジエン部の水素添加率:99.2%
【0203】
難燃剤
リン酸エステル系難燃剤(FR−1):大八化学株式会社より入手した CR−741
ホスフィン酸アルミニウム(FR−2):クラリアント社より入手したエクソリットOP930
【0204】
長繊維フィラー
ガラス繊維ロービング(LGF):日本電気硝子(株)より入手したER2400T−448N
繊維直径17μmの2400TEXロービング状ガラス繊維束フィラメント
【0205】
相溶化剤
無水マレイン酸(MAH):日本油脂(株)製のクリスタルMAN−AB
スチレン/グリシジルメタクリレート共重合体(SG−C)
グリシジルメタクリレートを5質量%含有
重量平均分子量:110,000
スチレン−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合体(SO−C)
2−イソプロペニル−2−オキサゾリンを5質量%含有
重量平均分子量:146,000
安定剤
立体障害フェノール系酸化防止剤(Irg1098)
チバスペシャルティケミカルズから入手したイルガノックス1098
【0206】
[調製例1]<LCPの製造>
攪拌翼と留出管を備えた2リットルの重合容器に、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、ハイドロキノン、2,6−ナフタレンジカルボン酸、無水酢酸を仕込み、以下の手順で脱酢酸重縮合を行った。原材料を仕込んだ反応容器を窒素ガス雰囲気下で40℃から3時間かけて190℃まで昇温し、190℃で1時間保った後、さらに325℃まで2時間かけて昇温し、10分間反応させた。次に325℃、20分間、20mmHgまでに減圧し、さらに5分間反応させ、重縮合を完結させた。重合の結果、ほぼ理論量の酢酸が留出し、下記式(7)で表される理論構造式を有する液晶ポリエステルを得た。
DSCによる融点は319℃であった。キャピラリーレオメーターを用いて溶融粘度を測定した結果、330℃における、せん断速度1000秒−1において18Pa・sであった。なお組成の成分比はモル比を表す。
【0207】
【化15】

【0208】
[調製例2]<芳香族ポリアミド(ポリアミド9T)の製造>
特開2000−103847号公報の実施例に記載されている方法に従い、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジアミン成分として1,9−ノナメチレンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン、末端封止剤としてオクチルアミン又は安息香酸、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物、及び蒸留水を、オートクレーブに入れ密閉した(反応系における水分量25質量%)。オートクレーブを充分、窒素置換した後、撹拌しながら2時間かけて、内部温度を260℃まで昇温し、そのまま反応させた。この時の内部圧力は46気圧を示した。
次に、上記反応物を、反応容器内の温度を260℃、水分量を25質量%に保った状態で、反応容器の下部のノズル(6mm径)から3分間かけて窒素雰囲気下、常温、常圧の容器に取り出した後、120℃で乾燥して、非発泡粉末状の一次重縮合物を得た。
ついで、この粉末状一次重縮合物を、窒素雰囲気下で、攪拌しながら2時間かけて250℃まで昇温し、更にそのまま所定時間、固相重合を行った。
得られた芳香族ポリアミドの末端封止率と末端基濃度の測定は、特開平7−228689号公報の実施例に記載されている末端封止率の測定に従い実施し、リン元素の定量はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618(nm)で実施した。末端アミノ基濃度は20μmol/gであり、末端カルボキシル基濃度は65μmol/gであり、末端封止率は55%であった。
得られた樹脂ペレット及びストランドを用いて、以下に示した評価項目を実施した。結果は表1に記載した。
【0209】
[評価項目]
(樹脂の溶融粘度)
キャピログラフ((株)東洋精機製作所製)を用い、キャピラリー長=10mm、キャピラリー径=1mmのキャピラリーを用いて、それぞれ個別に記載している温度における、せん断速度1000秒−1をはさむ2つのせん断速度での見かけの溶融粘度を測定し、1000秒−1へ外挿することにより求めた。
(繊維状フィラーのスパイラルのリード)
長繊維フィラー強化組成物の押出中のストランドを約30cm採取し、内部に包含されているガラス繊維の撚りが、ストランド表面に浮き出た模様が、ストランド表面を一周するのに要する長さを実測した。
【0210】
(ペレットの長さに対する長繊維フィラーの長さ比)
ペレットの平均長を測定した後、該ペレットを650℃に設定した電気炉にて、樹脂成分を焼却し、得られたガラス繊維のうち、長さが3mmを超えるものについてのみ、長さを画像解析装置で実測し、下式に従い、重量平均繊維長を測定した。なお、少なくともも500本以上について測定を実施した。
Lw=Σ(Li×Ni)/Σ(Li×Ni)
ここで、Lwは重量平均繊維長、Liは、各グループの代表繊維長、Niは各グループの長繊維フィラーの本数を表す。ここで、0.1mmの刻みでグループ分けし、その繊維長範囲の中間の繊維長を、そのグループの代表繊維長とした。具体例としては、3mmを超え3.1mm以下の繊維長をもつ長繊維フィラー(ガラス繊維)を1つのグループとし、その代表繊維長を3.05mmとするということである。
(長繊維フィラー含有量)
樹脂ペレットを650℃に設定した電気炉にて、樹脂成分を焼却し、その残渣重量から、含まれる長繊維フィラー含有量を測定した。
【0211】
(樹脂の長繊維フィラーへの含浸性)
呈色指示薬であるメチルレッドのプロピルアルコール溶液(メチルレッドのプロピルアルコール飽和溶液50cmに塩酸1cmを添加してpHを調製し、メチルレッドの発色性を向上させたもの)を準備し、任意に選んだ10本のストランドの破断面から1cmの部分まで、該溶液中に約30分間浸した。その後、取り出し、ストランドの長さ方向における呈色指示薬の浸透状況を確認した。呈色指示薬の、ストランドの破断面からの浸透状況により樹脂の長繊維フィラーへの含浸性を評価した。10本のストランドの浸透距離を平均して、平均浸透長さが5mm以下のものを○、5mm〜10mmまでを△、10mm以上浸透しているものを×と判定した。
【0212】
(ペレット断面のコア部分の断面積比率)
ミクロトームでペレットの太さ方向に切削し、平滑な断面とし、光学顕微鏡を用いて、反射光で観察し、撮影し、ペレット断面のコア部分の断面積比率を画像解析により計算した。
(ペレットの表面外観)
ペレットの表面外観を目視にて観察した。充分な光沢を有するものをAと評価し、ペレットの一部に光沢がないところがあるものをBと評価し、ペレットの大半が光沢を有さないものをCと評価した。
(ペレットの縦割れ)
ペレット100個を無作為に選択し、容量50cmの金属製容器に入れ密封し、振幅50mm、振動数60往復/分で、振とうさせた後、内部のペレットを取り出し、縦割れを起こしているペレットの数を実測した。
(長繊維フィラーの脱離)
ペレットの縦割れ評価の際に、金属容器の壁面に付着したガラス繊維の量を目視で判断した。
【0213】
(長繊維フィラーの解繊性)
得られた長繊維強化ペレットを、圧縮比の小さい長繊維フィラー強化ペレットを成形するに適したスクリューを備えたIS100GN(東芝機械株式会社製)を用いて、ISO294−1に準拠した4mm厚みの多目的試験片を成形した。得られた多目的試験片を、電気炉中で650℃で樹脂成分を焼却し、徐令した後、静かに取り出し、灰分の形状保持性(多目的試験片の形状を長繊維フィラーのネットエアークで保持しているか否か)を評価した。なお、長繊維フィラーの解繊性が良ければ、成形時に長繊維フィラーがネットワークを形成しやすくなり、形状保持性が増す。逆に、成形時の解繊性が悪ければ、ネットワーク成形が不充分となり、形状保持性は大きく劣る事となる。よって、形状保持性により、長繊維フィラーの解繊性を評価した。
形状保持性の評価基準を以下に示す。
AA:多目的試験片の形状をほぼ維持している。
A :ゲート付近を除いて形状を保持している。
B :流動末端部のみが形状を保持している。
C :形状を保持していない。
【0214】
(成形片の面衝撃強度)
例で得られた長繊維フィラー強化樹脂ペレットを、圧縮比の小さい長繊維フィラー強化ペレットを成形するに適したスクリューを備えたIS100GN(東芝機械株式会社製)を用いて、50×90×2.5mmの平板状試験片を成形した。得られた試験片を用いて、グラフィックインパクトテスター(東洋精機社製)を用いて、ホルダ径φ40mm、ストライカー径12.7mm、ストライカー質量6.5kgを使用し、高さ128cmから衝撃試験を行い、全吸収エネルギーを23℃温度条件下で測定した。
【0215】
(成形片のDTUL)
面衝撃強度測定用試験片を成形したものと同じ成形機を用いて、ISO294−1に準拠した4mm厚みの多目的試験片を成形した。
得られた多目的試験片を用いてISO75に準拠し、0.45MPa、及び/または1.8MPa荷重で、フラットワイズでの荷重たわみ温度を測定した。
(成形片のシャルピー衝撃強度)
面衝撃強度測定用試験片を成形したものと同じ成形機を用いて、ISO294−1に準拠した4mm厚みの多目的試験片を成形し、得られた試験片を用いて、ISO179に準じて、23℃下ノッチ付きのシャルピー衝撃強度を測定した。
(成形片の曲げ強度)
シャルピー衝撃強度試験片と同様にして得られた多目的試験片を用い、ISO178に準拠し、曲げ強度を測定した。
【0216】
<PS/PPE1の製造>
上流側に1箇所、下流側に1箇所の供給口を設けた、L/D=42の同方向回転二軸押出機[ZSK25:コペリオン社製]の最高シリンダー温度を320℃に設定し、上流側供給口より、PPE−1を20質量部、及びPS−1を20質量部のそれぞれを、押出機に供給し、下流側供給口よりPS−1を60質量部供給し、下流側供給口の後の設けたベント口から減圧脱揮しながら溶融混練、ストランドを水冷・引き取りカットしてPS/PPE1を得た。なお、このときのスクリュー回転数は300rpmとした。得られたPS/PPE1の溶融粘度を、キャピラリーレオメーターを用いて測定した結果、せん断速度1000秒−1において20〜100Pa・sとなる温度は約300℃であった。
【0217】
<PS/PPE2の製造>
上流側供給口より、PPE−1を50質量部、及びPS−1を20質量部のそれぞれを、押出機に供給し、下流側供給口よりPS−2を30質量部供給した以外は、すべてPS/PPE1の製造と同様に実施し、PS/PPE2を製造した。得られたPS/PPE2の溶融粘度を、キャピラリーレオメーターを用いて測定した結果、せん断速度1000秒−1における粘度200Pa・sを得る温度は320℃を超えていた。
【0218】
<PS/PPE3の製造>
上流側供給口より、PPE−2を40質量部、及PS−1を10質量部のそれぞれを押出機に供給し、下流側供給口よりPS−1を50質量部供給した以外は、すべてPS/PPE1の製造と同様に実施し、PS/PPE3を得た。得られたPS/PPE3の溶融粘度を、キャピラリーレオメーターを用いて測定した結果、せん断速度1000秒−1において20〜100Pa・sとなる温度は約310℃であった。
【0219】
<PS/PPE4の製造>
上流側供給口より供給するPPEをPPE−3に変更した以外はすべてPS/PPE1と同様に実施し、PS/PPE4を得た。得られたPS/PPE4の溶融粘度を、キャピラリーレオメーターを用いて測定した結果、せん断速度1000秒−1において20〜100Pa・sとなる温度は約280℃であった。
【0220】
<PS/PPE5の製造>
上流側供給口より供給するPPEをPPE−4に変更した以外はすべてPS/PPE1と同様に実施し、PS/PPE5を得た。得られたPS/PPE5の溶融粘度を、キャピラリーレオメーターを用いて測定した結果、せん断速度1000秒−1において20〜100Pa・sとなる温度は約330℃であった。
【0221】
<PS/PPE6の製造>
上流側供給口より、PPE−1を55質量部、PS−2を45質量部のそれぞれを、押出機に供給し、下流側供給口より何も添加しなかったことを除いて、すべて、PS/PPE1の製造と同様に実施し、PS/PPE6を得た。
このPS/PPE6は、長繊維フィラー強化ペレットと混合し、成形品の特性を測定する際に使用した。
【0222】
<PA/PPE1の製造>
上流側に1箇所、1箇所の下流側供給口を設けた、L/D=48の同方向回転二軸押出機[ZSK40MC:コペリオン社製,12の温度調節ブロック(1ブロックあたりのL/Dは4)とオートスクリーンチェンジャーブロックを有し、上流側供給口:第1ブロック、下流側供給口:第6ブロック、減圧吸引で揮発成分除去を行う為のベントポート:第5ブロック及び第10ブロック]の最高シリンダー温度を320℃に設定し、上流側供給口より、PPE−1を35質量部、MAHを0.1質量部、SEBSを10質量部及びPS−3を5質量部のそれぞれを、押出機に供給し、溶融混練し、引き続き、下流側供給口よりPA66を50質量部供給し、溶融混練を実施し、PA/PPE1を得た。なお、このときのスクリュー回転数は450rpmであった。得られたPA/PPE1のせん断速度1000秒−1での溶融粘度が15〜100Pa・sとなる温度を測定したところ300℃であった。また、280℃における溶融粘度を確認したところ220Pa・sであった。
【0223】
<PA/PPE2の製造>
PA/PPE1の製造と同じ押出機を使用し、上流側供給口より、PPE−2を40質量部、MAHを0.4質量部をドライブレンドしたものを、押出機に供給し、溶融混練し、引き続き、下流側供給口よりPA9Tを60質量部供給し、溶融混練を実施し、PA/PPE2を得た。他の条件は、すべて、PA/PPE1の製造と同じである。得られたPA/PPE2のせん断速度1000秒−1での溶融粘度が15〜100Pa・sとなる温度を測定したところ330℃であった。
【0224】
<PA/PPE3の製造>
ポリフェニレンエーテルをPPE−3に変更した以外は、すべて、PA/PPE1の製造と同様に実施してPA/PPE3を得た。
【0225】
<PA/PPE4の製造>
ポリフェニレンエーテルをPPE−4に変更した以外は、すべて、PA/PPE1の製造と同様に実施ししてPA/PPE4を得た。
【0226】
<PP/PPE1〜PP/PPE5の製造>
PA/PPE1で用いた押出機のシリンダー温度を290〜310℃に設定し、押出機の上流側供給口より表1に記載の割合で混合した樹脂混合物を供給し、溶融混練し、2箇所に設置した真空ベント口より、真空度:絶対真空圧95kPa以下で脱気して溶融混練し、PP/PPE1〜PP/PPE5の5種の樹脂混合物を製造した。ここでの、SEBSの役割は、PPとポリフェニレンエーテルの相溶化剤としての機能と、衝撃改良剤としての機能の両者を有する。得られた樹脂混合物の280℃と300℃条件下での1000秒−1のせん断速度における溶融粘度を測定し、表1に併記した。
【0227】
<PPS/PPE1〜PPS/PPE16の製造>
PA/PPE1で用いた押出機のシリンダー温度を290〜310℃に設定し、押出機の上流側供給口より表2に記載の割合で混合した樹脂混合物を供給し、溶融混練し、2箇所に設置した真空ベント口より、真空度:絶対真空圧95kPa以下で脱気して溶融混練し、PPS/PPE1〜PPS/PPE16の16種の樹脂混合物を製造した。また、得られた樹脂混合物の300℃、1000秒−1における溶融粘度を測定し、表2に記載した。
【0228】
<LCP/PPE1の製造>
PS/PPE1の製造で用いた押出機の最高シリンダー温度を330℃に設定し、上流側供給口より、PPE−2を30質量部、及びLCPを15質量部、SG−Cを5質量部のそれぞれを、押出機に供給し、下流側供給口よりLCPを55質量部供給し、下流側供給口の後の設けたベント口から減圧脱揮しながら溶融混練、ストランドを水冷・引き取りカットしてLCP/PPE1を得た。なお、このときのスクリュー回転数は300rpmとした。得られたLCP/PPE1の溶融粘度を、キャピラリーレオメーターを用いて測定した結果、せん断速度1000秒−1において20〜100Pa・sとなる温度は約330℃であった。
【0229】
<LCP/PPE2の製造>
上流側供給口より、PPE−1を55質量部、及びLCPを15質量部、SG−Cを5質量部のそれぞれを供給し、下流側供給口よりLCPを30質量部供給した以外はすべて、LCP/PPE1と同様に実施し、LCP/PPE2を得た。得られたLCP/PPE2の溶融粘度を、キャピラリーレオメーターを用いて測定した結果、せん断速度1000秒−1における粘度200Pa・sを得る温度は330℃を超えていた。
【0230】
<LCP/PPE3の製造>
上流側供給口より、PPE−2を40質量部、及びLCPを30質量部、SG−Cを5質量部のそれぞれを押出機に供給、溶融混練し、引き続き、下流側供給口よりLCPを30質量部供給し、さらに下流側の液添ノズルより、FR−1を7質量部供給した以外は、LCP/PPE1の製造と同様に実施し、LCP/PPE3得た。得られたLCP/PPE3の溶融粘度を、キャピラリーレオメーターを用いて測定した結果、せん断速度1000秒−1において20〜100Pa・sとなる温度は約320℃であった。
【0231】
<LCP/PPE4の製造>
上流側供給口より供給するポリフェニレンエーテルをPPE−3に変更した以外は、すべてLCP/PPE2の製造と同様に実施し、LCP/PPE4を得た。
【0232】
<PEEK/PPEの製造>
PS/PPE1の製造で用いた押出機の最高シリンダー温度を355℃に設定し、上流側供給口より、PPE−2を30質量部、及びPEEKを15質量部、PARを5質量部のそれぞれを、押出機に供給し、下流側供給口よりPEEKを55質量部供給し、下流側供給口の後に設けたベント口から減圧脱揮しながら溶融混練、ストランドを水冷・引き取りカットしてPEEK/PPEを得た。なお、このときのスクリュー回転数は300rpmとした。得られたPEEK/PPEの溶融粘度を、キャピラリーレオメーターを用いて測定した結果、せん断速度1000秒−1において20〜100Pa・sとなる温度は約380℃であった。
【0233】
[例1〜例5](実施例及び比較例)
上流側に1カ所の供給口を備えた同方向回転二軸押出機(ZSK25:コペリオン社製)の先端部に樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バス(株式会社神戸製鋼所製)を設置した長繊維強化樹脂製造装置の押出機シリンダー温度を320℃に設定し、押出機供給口よりPS/PPE1を供給し、スクリュー回転数300rpmで溶融させ、樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バスに充満させた。一方、フィラメント径17μmのロービング状ガラス繊維束(ER2400T−448N:日本電気硝子株式会社製)2本をロービング台より樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バス中へ導入した。浸漬用バス中の溶融樹脂をロービング状ガラス繊維束中に含浸させ、浸漬用バスのノズル(直径3.2mm)部分より、15m/分の引き取り速度で連続的に引き抜き、1本のストランド状とし、水冷バス中で冷却固化させた後、撚りローラーを通して、樹脂ストランドに、種々のリード幅の撚りができるように、様々な撚りをかけたのちペレタイザーにてペレット長10mm長さにカットした。なお、このときの浸漬用バスの設定温度は300℃とした。また、このとき、ガラス繊維含有量が約50質量%となるよう押出機の吐出量を調整した。
例1〜例5は、ストランドにかけた撚りの強さのみが異なっているのみで、あとはすべて同じである。
得られた樹脂ペレット及びストランドを用いて、各種評価を実施した。結果は表3に記載した。なお、このとき、シャルピー衝撃強度、曲げ強度、高荷重DTULの測定は、得られた長繊維強化ペレット60質量部とPS/PPE6のペレット40質量部とを乾式混合し、シリンダー温度310℃、金型温度90℃の条件下で成形し、評価に供した。結果は、表3に記載した。
【0234】
[例6](実施例)
PS/PPE1の代わりにPS/PPE2にした以外は、すべて例3と同様に行い、長繊維フィラー強化樹脂ペレットを得て、評価を行った。結果は、表3に記載した。
【0235】
[例7](比較例)
フィラメント径17μm、繊維長3mmのチョップドストランドガラス繊維(ロービングガラス繊維と同様の化合物で表面処理)を用い、PS/PPE−1を28質量%、PS/PPE−6を42質量%およびチョップドストランドガラス繊維を30質量%からなる組成物ペレットを調整した。その際、PS/PPE1を調製する際に用いた押出機を使用し、シリンダーの最高設定温度300℃にて、樹脂成分を上流側供給口より、チョップドストランドガラス繊維を下流側供給口より供給して溶融押出し、ストランドをカットして長さ約3mm、直径約3mmの組成物ペレットを得た。
シャルピー衝撃強度、曲げ強度および高荷重DTULの測定結果を表3に記載した。
【0236】
[例8](実施例)
例1〜例5と同じ長繊維強化樹脂製造装置の押出機シリンダー温度を330℃に設定し、押出機供給口よりPS/PPE3を供給し、スクリュー回転数300rpmで溶融させ、樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バスに充満させた。例1〜5と同様にロービング状ガラス繊維束を樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バス中へ導入し、浸漬用バス中の溶融樹脂をロービング状ガラス繊維束中に含浸させ、浸漬用バスのノズル部分より、23m/分の引き取り速度で連続的に引き抜き、1本のストランド状とし、水冷バス中で冷却固化させた後、撚りローラーを通して、樹脂ストランドに、30mmのリード幅の撚りができるように撚りをかけたのち、ペレタイザーにて、ペレット長10mm長さにカットした。なお、このときの浸漬用バスの設定温度は320℃とした。
このとき、ガラス繊維含有量が約50質量%となるよう押出機の吐出量を調整した。後に灰分を測定することにより求めたガラス繊維量は52.5質量%であった。
得られた樹脂ペレット及びストランドを用いて、例1〜例5と同様の評価項目を実施した。その際、成形片の衝撃強度とDTULについては本例で得られた長繊維フィラー強化樹脂ペレットを57質量部とPS/PPE6を43質量部とをガラス繊維含有量が30質量%となるようにペレット混合し、同様に特性を測定した。結果は表3に記載した。
【0237】
[例9](実施例)
例8における押出機のシリンダー温度を280℃、スクリュー回転数150rpm、浸漬用バスの温度を280℃に設定した以外は同様の操作により、長繊維フィラー強化樹脂ペレットを得て、例8と同様の評価を実施した。結果は、表3に記載した。
【0238】
[例10〜例12](実施例及び比較例)
PS/PPE樹脂混合物の種類を、表3に記載したように、PS/PPE4、PS/PPE5、またはポリフェニレンエーテルを含まないPS−1のみとした以外はすべて、例3と同様に実施し、評価した。結果は表3に併記した。なお、例12に関しては、ポリフェニレンエーテルを含まない組成での評価とするため、得られた長繊維強化ペレット60質量部をPS−1のペレット40質量部と混合し、シリンダー温度210℃、金型温度80℃の条件下で成形したものを、評価に供した。結果は、表3に記載した。
【0239】
表3の結果から、実施例の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、いずれも優れた濡れ性を有しており、ペレット輸送時の縦割れや、長繊維フィラーのペレットからの脱離が極度に抑制され、ペレットの外観に優れ、さらに、成形時の長繊維フィラーの解繊性にも優れるため、極めて高い耐熱性と耐衝撃性とを有する成形体を成形可能な長繊維フィラー強化樹脂ペレットであった。
一方、スパイラルのリードが20mm〜80mmの範囲外にある例1及び例5の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、長繊維フィラーの解繊性の比較において、流動末端部のみが形状を保持しているにすぎず、解繊性が十分なものではなかった。
また、スパイラルのリードが100mmの例5では、長繊維フィラーの脱離が多数生じていた。
長繊維フィラーではなく、チョップドストランドガラス繊維を使用した例7においては、成形体中のガラス繊維長が充分ではないため、衝撃性、曲げ強度、耐熱性において不充分であった。
また、ポリフェニレンエーテルを含有しない例12の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、解繊性が十分なものではなく、成形体においても曲げ強度等において十分は強度を有するものではなかった。
【0240】
[例13〜例23](実施例及び比較例)
例1と同じ押出機を用いて、シリンダー設定温度を230〜300℃に、浸漬用バスの設定温度を220℃、280℃または300℃に設定し、二軸押出機供給口からPP/PPE1〜PP/PPE5、PP−1をそれぞれ供給し、280℃または300℃に温度調整した浸漬用バス中でロービング状ガラス繊維束に含浸させ、浸漬用バスの出口ノズルより、20m/分の引き取り速度で連続的にストランドとして引き抜き、撚りをかけたのちペレタイザーにてペレット長10mm長さにカットした。このとき、長繊維で強化されたポリマーアロイ中のガラス繊維含有量が39質量%となるように押出機の吐出量を調整した。
得られた樹脂ペレット及びストランドを用いて、評価を実施した。結果は表4に記載した。なお、ここでは、例1で行ったような、長繊維フィラー強化ペレットと、長繊維フィラーを含まないペレットとの混合は行わず、長繊維フィラー強化ペレット単独を射出成形し、その特性を評価した。
【0241】
表4の結果から、実施例の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、いずれも優れた濡れ性を有しており、ペレット輸送時の縦割れや、長繊維フィラーのペレットからの脱離が極度に抑制され、ペレットの外観に優れ、さらに、成形時の長繊維フィラーの解繊性にも優れるため、極めて高い耐熱性と耐衝撃性とを有する成形体を成形可能な長繊維フィラー強化樹脂ペレットであった。
一方、コア部分の断面積が、ペレット断面積の70%を超える例21及び22の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、縦割れが多数のペレットで生じており、また、長繊維フィラーの脱離が多数生じるものであった。さらに、解繊性も十分なものではなく、ペレット表面の外観特性においても光沢を有さないものであった。
また、ポリフェニレンエーテルを含有しない例23の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、縦割れが多数のペレットで生じており、また、解繊性も十分なものではなく、ペレット表面の外観特性においても光沢を有さないものであった。さらに、成形体においても耐衝撃性等において十分な強度を有するものではなかった。
【0242】
[例24〜例29](実施例及び比較例)
例1と同じ長繊維強化樹脂製造装置のシリンダー温度を280℃に設定し、押出機供給口よりPA/PPE1を供給し、スクリュー回転数300rpmで溶融させ、樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バスに充満させた。一方、繊維直径17μmの2400TEXロービング状ガラス繊維束(ER2400T−448N:日本電気硝子株式会社製)2本をロービング台より樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バス中へ導入した浸漬用バス中の溶融樹脂をロービング状ガラス繊維束中に含浸させ、浸漬用バスのノズル部分より、15m/分の引き取り速度で連続的に引き抜き、1本のストランド状とし、水冷バス中で冷却固化させた後、撚りローラーを通して、樹脂ストランドに、種々のリード幅の撚りができるように、様々な撚りをかけたのち、ペレタイザーにて、ペレット長10mm長さにカットした。なお、このときの浸漬用バスの設定温度は300℃とした。
このとき、ガラス繊維含有量が約50質量%となるよう押出機の吐出量を調整した。後に灰分を測定することにより求めたガラス繊維量は54質量%であった。
例24〜29は、ストランドにかけた撚りの強さのみが異なっているのみで、あとはすべて同じである。
得られた樹脂ペレット及びストランドを用いて、評価を実施した。結果は表5に記載した。なお、ここでは、例1で行ったような、長繊維フィラー強化ペレットと、長繊維フィラーを含まないペレットとの混合は行わず、長繊維フィラー強化ペレット単独を射出成形し、その特性を評価した。
【0243】
[例30](実施例)
浸漬用バスの設定温度を280℃とした以外は、すべて例26と同様に実施した。結果は、表5に記載した。
[例31〜例33](実施例及び比較例)
例1と同じ長繊維強化樹脂製造装置の押出機シリンダー温度を320℃に設定し、押出機供給口よりPA/PPE2を供給し、スクリュー回転数300rpmで溶融させ、樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バスに充満させた。例24〜例29と同様にロービング状ガラス繊維束を樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バス中へ導入し、浸漬用バス中の溶融樹脂をロービング状ガラス繊維束中に含浸させ、浸漬用バスのノズル部分より、23m/分の引き取り速度で連続的に引き抜き、1本のストランド状とし、水冷バス中で冷却固化させた後、撚りローラーを通して、樹脂ストランドに、種々のリード幅の撚りができるように、様々な撚りをかけたのち、ペレタイザーにて、ペレット長10mm長さにカットした。なお、このときの浸漬用バスの設定温度は330℃とした。
このとき、ガラス繊維含有量が約50質量%となるよう押出機の吐出量を調整した。後に灰分を測定することにより求めたガラス繊維量は47質量%であった。
例31〜例33は、ストランドにかけた撚りの強さが異なっているのみで、あとはすべて同じである。
得られた樹脂ペレット及びストランドを用いて、例24〜例29と同様の評価項目を実施した。結果は表5に記載した。
[例34〜例36](実施例及び比較例)
押出機供給口より供給する樹脂を、表5記載のものに変えた以外は、すべて、例26と同様に実施し、評価した。結果は表5に併記した。
【0244】
表5の結果から、実施例の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、いずれも優れた濡れ性を有しており、ペレット輸送時の縦割れや、長繊維フィラーのペレットからの脱離が極度に抑制され、ペレットの外観に優れ、さらに、成形時の長繊維フィラーの解繊性にも優れるため、極めて高い耐熱性と耐衝撃性とを有する成形体を成形可能な長繊維フィラー強化樹脂ペレットであった。
一方、スパイラルのリードが20mm〜80mmの範囲外にある例24、28、31、33及び撚りをかけていない例29の長繊維フィラー強化樹脂ペレットはいずれも、ペレットの縦割れ、脱離、外観、解繊性のすべてにバランスのよいペレットではなかった。
ポリフェニレンエーテルを含有しない例36の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、解繊性が十分なものではなく、成形体においても耐衝撃性において十分な強度を有するものではなかった。
【0245】
[例37〜例53](実施例及び比較例)
例1と同じ長繊維強化樹脂製造装置のシリンダー温度を290〜310℃に設定し、押出機供給口よりPPS/PPE1〜PPS/PPE16を表6及び表7に記載のように供給し、スクリュー回転数300rpmで溶融させ、樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バスに充満させた。一方、繊維直径17μmの2400TEXロービング状ガラス繊維束(ER2400T−448N:日本電気硝子株式会社製)2本をロービング台より樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バス中へ導入した浸漬用バス中の溶融樹脂をロービング状ガラス繊維束中に含浸させ、浸漬用バスのノズル部分より、20m/分の引き取り速度で連続的に引き抜き、1本のストランド状とし、水冷バス中で冷却固化させた後、撚りローラーを通して、樹脂ストランドに、種々のリード幅の撚りができるように、様々な撚りをかけたのち、ペレタイザーにて、ペレット長10mm長さにカットした。なお、このときの浸漬用バスの設定温度は310℃とした。
このとき、ガラス繊維含有量が約40質量%となるよう押出機の吐出量を調整した。後に灰分を測定することにより求めたガラス繊維量は39質量%であった。
得られた樹脂ペレット及びストランドを用いて、表6及び表7に示した評価項目を実施した。結果は表6及び表7に記載した。なお、ここでは、例1で行ったような、長繊維フィラー強化ペレットと、長繊維フィラーを含まないペレットとの混合は行わず、長繊維フィラー強化ペレット単独を射出成形し、その特性を評価した。
【0246】
表6及び表7の結果から、実施例の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、いずれも優れた濡れ性を有しており、ペレット輸送時の縦割れや、長繊維フィラーのペレットからの脱離が極度に抑制され、ペレットの外観に優れ、さらに、成形時の長繊維フィラーの解繊性にも優れるため、極めて高い耐熱性と耐衝撃性とを有する成形体を成形可能な長繊維フィラー強化樹脂ペレットであった。
一方、スパイラルのリードが20mm〜80mmの範囲外にある例43及び44、並びにコア部分の断面積が、ペレット断面積の70%を超える例50〜52の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、長繊維フィラー強化樹脂ペレットはいずれも、ペレットの脱離が多数生じるものであり、また、縦割れが多数のペレットで生じており、ペレット表面の外観特性においても光沢を有さないものであった。
ポリフェニレンエーテルを含有しない例53の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、解繊性が十分なものではなく、成形体においても耐衝撃性等において十分な強度を有するものではなかった。
【0247】
[例54〜例58](実施例及び比較例)
例1と同じ長繊維強化樹脂製造装置のシリンダー温度を330℃に設定し、押出機供給口よりLCP/PPE1を供給し、スクリュー回転数300rpmで溶融させ、樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バスに充満させた。一方、繊維直径17μmの2400TEXロービング状ガラス繊維束(ER2400T−448N:日本電気硝子株式会社製)2本をロービング台より樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バス中へ導入した浸漬用バス中の溶融樹脂をロービング状ガラス繊維束中に含浸させ、浸漬用バスのノズル部分より、22m/分の引き取り速度で連続的に引き抜き、1本のストランド状とし、水冷バス中で冷却固化させた後、撚りローラーを通して、樹脂ストランドに、種々のリード幅の撚りができるように、様々な撚りをかけたのち、ペレタイザーにて、ペレット長10mm長さにカットした。なお、このときの浸漬用バスの設定温度は330℃とした。
このとき、ガラス繊維含有量が約50質量%となるよう押出機の吐出量を調整した。
得られた樹脂ペレット及びストランドを用いて、各種評価を実施した。結果は表7に記載した。なお、このとき、シャルピー衝撃強度、曲げ強度、高荷重DTULの測定は、得られた長繊維強化ペレット60質量部とLCP/PPE1のペレット40質量部とを乾式混合し、シリンダー温度330℃、金型温度110℃の条件下で成形し、評価に供した。結果は、表8に記載した。
【0248】
[例59](実施例)
LCP/PPE1に替えてLCP/PPE2を用い、例55と同様の操作によりにして実施し、長繊維フィラー強化樹脂ペレットを得た。また、得られた長繊維強化ペレット60質量部とLCP/PPE1のペレット40質量部とを乾式混合し、シリンダー温度330℃、金型温度110℃の条件下で成形し、成形片特性の評価に供した。結果は、表8に記載した。
【0249】
[例60](比較例)
フィラメント径17μm、繊維長3mmのチョップドストランドガラス繊維(長繊維ガラス繊維と同様の化合物で表面処理)を用い、樹脂成分の比率は、LCP/PPE1と同様にし、チョップドストランドガラス繊維を30質量%からなる組成物ペレットを調製した。その際、LCP/PPE1を調製する際に用いた押出機を使用し、シリンダーの最高設定温度330℃にて、樹脂成分を上流側供給口より、チョップドストランドガラス繊維を下流側供給口より供給して溶融押出し、ストランドをカットして長さ約3mm、直径約3mmの組成物ペレットを得た。
例54〜例58の成形品特性を測定した試験片と同一組成の組成物ペレットを作成し、シャルピー衝撃強度、曲げ強度および高荷重DTULを測定した。結果は、表8に記載した。
【0250】
[例61](実施例)
例54〜例58と同じ長繊維強化樹脂製造装置の押出機シリンダー温度を330℃に設定し、押出機供給口よりLCP/PPE3を供給し、スクリュー回転数300rpmで溶融させ、樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バスに充満させた。例54〜例58と同様にロービング状ガラス繊維束を樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バス中へ導入し、浸漬用バス中の溶融樹脂をロービング状ガラス繊維束中に含浸させ、浸漬用バスのノズル部分より、15m/分の引き取り速度で連続的に引き抜き、1本のストランド状とし、水冷バス中で冷却固化させた後、撚りローラーを通して、樹脂ストランドに、30mmのリード幅の撚りをかけたのち、ペレタイザーにて、ペレット長10mm長さにカットした。なお、このときの浸漬用バスの設定温度は320℃とした。
このとき、ガラス繊維含有量が約50質量%となるよう押出機の吐出量を調整した。後に灰分を測定することにより求めたガラス繊維量は52.5質量%であった。
得られた樹脂ペレット及びストランドを用いて、例54〜例58と同様の評価項目を実施した。その際、成形片の衝撃強度とDTULについては、本例で得られた長繊維フィラー強化樹脂ペレットを57質量部とLCP/PPE3ペレット43質量部とをガラス繊維含有量が30質量%となるようにペレット混合し成形し、同様に特性を測定した。結果は表8に記載した。
【0251】
[例62](実施例)
押出機シリンダー温度を300℃、スクリュー回転数150rpm、浸漬用バスの温度を290℃に設定した以外は例61と、同様に実施し、長繊維フィラー強化樹脂ペレットを得た。結果は、表8に記載した。
[例63](実施例)
例56において、LCP/PPE1の代わりにLCP/PPE4を用いたこと以外は、例56と同様に実施した。得られた樹脂ペレット及びストランドを用いて、上記評価項目について評価を実施した。結果は表8に記載した。
[例64](実施例)
例56において、LCP/PPE1の代わりにPEEK/PPEを用いたことと、浸漬用バスの設定温度を380℃にしたこと以外は、例56と同様に実施した。得られた樹脂ペレット及びストランドを用いて、上記評価項目について評価を実施した。結果は表8に記載した。
【0252】
表8の結果から、実施例の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、いずれも優れた濡れ性を有しており、ペレット輸送時の縦割れや、長繊維フィラーのペレットからの脱離が極度に抑制され、ペレットの外観に優れ、さらに、成形時の長繊維フィラーの解繊性にも優れるため、極めて高い耐熱性と耐衝撃性とを有する成形体を成形可能な長繊維フィラー強化樹脂ペレットであった。
一方、スパイラルのリードが20mm〜80mmの範囲外にある例54及び58の長繊維フィラー強化樹脂ペレットは、ペレットの表面外観において光沢を有さないものであった。
長繊維フィラーではなく、チョップドストランドガラス繊維を使用した例60においては、成形品の特性である、衝撃強度、曲げ強度及び耐熱性が大幅に劣り、不充分であることが判る。
【0253】
[例65](比較例)
例56において、LCP/PPE1の代わりに、LCP−1のみを用いたこと以外は、例56と同様に実施した。得られた樹脂ペレットを用いて、シャルピー衝撃値を測定したが、平均値は16(J)であった(N数=10)。しかしながら、ばらつきは、平均値に対し、プラスマイナス4(J)程度(12J〜20J)であった。それに対し、例56のばらつきは平均値に対し、プラスマイナス2であった。
さらに、成形片焼却後の観察においても,ほとんどのガラス繊維が、未解繊の束状で存在しており、形状保持性はまったく良くなかった。
上述した各実施例・比較例の対比から、本発明において、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂に、ポリフェニレンエーテルを配合することにより、長繊維フィラーの解繊性が非常に向上し、さらには、物性の品質安定性が大幅に向上するという効果が得られる事がわかる。このことは、本発明の樹脂組成物が、ポリフェニレンエーテルがアロイされたことにより、無機フィラーの解繊性がよくなって、品質安定性につながった結果といえる。
【0254】
[例66](実施例)
上流側に1カ所と下流側に1カ所の供給口を備えた同方向回転二軸押出機(ZSK25:コペリオン社製)の先端部に樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バス(株式会社神戸製鋼所製)を設置した長繊維強化樹脂製造装置の押出機シリンダー温度を320℃に設定し、表8に記載の割合で、押出機上流側供給口より、PS/PPE4を100質量部に対して、Irg1098を1.0質量部及び、白着色剤としての硫化亜鉛1質量部を混合したものを供給し、下流側供給口よりFR−2を、100質量部のPS/PPE4に対し、13質量部の量で供給し、スクリュー回転数300rpmで溶融混合させ、樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バスに溶融樹脂を充満させた。一方、フィラメント径17μm、2400TEXロービング状ガラス繊維束(集束剤としてウレタン系樹脂を使用)2本をロービング台より樹脂含浸用ローラーを有した浸漬用バス中へ導入した浸漬用バス中の溶融樹脂をロービング状ガラス繊維束中に含浸させ、浸漬用バスのノズル(直径3.2mm)部分より、40m/分の引き取り速度で連続的に引き抜き、1本のストランド状とし、水冷バス中で冷却固化させた後、撚りローラーを通して、樹脂ストランドに、30mmのリード幅の撚りをかけたのち樹脂ストランドとして得た。このとき、ガラス繊維含有量が約40質量%となるよう押出機の吐出量を調整した。
得られた長繊維フィラー強化樹脂ストランドの、難燃性及び色調を観察した。なお、表9には、Irg1098及びFr−2を配合しないときの、難燃性及び色調を比較の為に併記した。なお、ここで、長繊維フィラー強化樹脂ストランドの難燃性は、10cmにカットした樹脂ストランドに、UL94の垂直試験で規定される炎を5秒間接炎し、炎を取り去ったあと、自己消火するか否かで判定した。自己消火したものは、その消火までの時間を計測した。色調は、色目の目視判定である。結果を表9に記載した。
【0255】
[例67〜例70](実施例)
例66のPS/PPE4を、それぞれ、PP/PPE2、PA/PPE3、PPS/PPE6、LCP/PPE4に全量変えたものをそれぞれ、例67〜例70として実施した。このときの押出機及び浸漬バスの温度は、表9に記載した。得られたストランドに対して、例66と同様に難燃性及び色調を評価した。結果を表9に記載した。
表9には、例66〜70で得られた長繊維フィラー強化樹脂ペレット及びストランドの性状を示した。また、効果をより明確にするために、ストランドの性状の対比として、安定剤と難燃剤を含まない組成での性状を下欄に記載した。これにより、難燃剤と安定剤を含有させることにより、同一条件で実施したにも関わらず、難燃性が向上し、更に、色調まで改善されることが判る。
【0256】
【表1】

【0257】
【表2】

【0258】
【表3】

【0259】
【表4】

【0260】
【表5】

【0261】
【表6】

【0262】
【表7】

【0263】
【表8】

【0264】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0265】
本発明により、市場が待望していた、極めて取り扱い性に優れ、高い熱的特性と機械的特性を有する成形片を成形可能な長繊維フィラー強化樹脂ペレットを安定的に供給することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長繊維フィラーと熱可塑性樹脂混合物とから構成されるペレットであって、
前記長繊維フィラーが、前記ペレット中に、前記ペレットの長さ方向を中心軸方向として、ペレット中にスパイラル状に配されており、かつ、
前記ペレットが、長繊維フィラー含有量の少ないスキン層部分と長繊維フィラー含有量の多いコア部分とを有し、前記コア部分の断面積が、前記ペレット断面積の30%〜70%の範囲であり、
前記熱可塑性樹脂混合物が、ポリフェニレンエーテルと、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂からなる、長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項2】
前記長繊維フィラー強化樹脂ペレットの長さに対する、前記長繊維フィラーの平均繊維長の比が1.0を超える、請求項1に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項3】
前記長繊維フィラー強化樹脂ペレット中に占める前記長繊維フィラーの割合が、30〜70質量%である、請求項1又は2に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項4】
前記長繊維フィラーがガラス繊維である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項5】
前記ポリフェニレンエーテルの還元粘度(0.5g/dl濃度のクロロホルム溶液、30℃測定)が、0.30〜0.55dl/gの範囲である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項6】
前記ポリフェニレンエーテルが、2,3,6−トリメチルフェノールを含む共重合体であり、前記ポリフェニレンエーテル中に占める2,3,6−トリメチルフェノールユニットの割合が10〜30質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項7】
前記ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン及びポリアリールケトンよりなる群から選ばれる1種以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項8】
前記ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂が、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体及びN−フェニルマレイミドとスチレンの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂混合物中に占めるポリフェニレンエーテルの割合が、10〜90質量%である、請求項8に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項10】
前記ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、液晶ポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン及びポリアリールケトンよりなる群から選ばれる1種以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂混合物中に占めるポリフェニレンエーテルの割合が、1〜50質量%である、請求項10に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項12】
さらに相溶化剤を含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項13】
前記相溶化剤が、エポキシ基、オキサゾリル基、イミド基、カルボン酸基及び酸無水物基よりなる群から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物である請求項12に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項14】
さらに立体障害フェノール系酸化防止剤を、前記熱可塑性樹脂混合物100質量部に対して0.1〜5質量部含む請求項1〜13のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項15】
さらに、ハロゲンを含まない難燃剤を、前記熱可塑性樹脂混合物100質量部に対して5〜50質量部含む請求項1〜14のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項16】
さらに、長繊維フィラー以外のフィラーを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレット100質量部と、長繊維フィラーを含まない樹脂ペレット0.5〜150質量部と、を含有する樹脂ペレット混合物。
【請求項18】
前記樹脂ペレット混合物中に占める前記長繊維フィラーの割合が、10〜60質量%である、請求項17に記載の樹脂ペレット混合物
【請求項19】
前記長繊維フィラーを含まない樹脂ペレットが、長繊維フィラー以外のフィラーを含む、請求項17又は18に記載の樹脂ペレット混合物。
【請求項20】
前記長繊維フィラー以外のフィラーが、マグネシウム及びカルシウムから選ばれる元素の水酸化物、マグネシウム、チタン、鉄、銅、亜鉛及びアルミニウムよりなる群から選ばれる元素の酸化物、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、ガラス、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びシリカよりなる群から選ばれる少なくとも1種のフィラーであり、かつ、前記長繊維フィラー以外のフィラーの平均粒子径が1mm以下である、請求項19に記載の樹脂ペレット混合物。
【請求項21】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の長繊維強化樹脂ペレット、または請求項17〜20のいずれか1項に記載の樹脂ペレット混合物を溶融成形して得られる成形体。
【請求項22】
長繊維フィラーと熱可塑性樹脂混合物から構成されるペレットであって、
前記長繊維フィラーが、前記ペレット中に、前記ペレットの長さ方向を中心軸方向として、ペレット中にスパイラル状に配されており、かつ、
前記ペレットが、長繊維フィラー含有量の少ないスキン層部分と長繊維フィラー含有量の多いコア部分とを有し、前記コア部分の断面積が、前記ペレット断面積の30%〜70%の範囲であり、
前記熱可塑性樹脂混合物が、ポリフェニレンエーテルと、ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂からなる、長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法であって、
(1)溶融状態の前記熱可塑性樹脂混合物を、押出機を用いて製造する工程、
(2)前記長繊維フィラーを前記溶融状態の熱可塑性混合物中に含浸させる工程、
(3)撚りをかけながら引き取って、樹脂ストランドにする工程、
(4)前記樹脂ストランドをカットしてペレット形状にする工程、
を含む長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法。
【請求項23】
請求項22に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法であって、ここで、工程(1)〜(4)をこの順に連続して含む、請求項22に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法。
【請求項24】
前記工程(1)において、前記ポリフェニレンエーテルと、前記ポリフェニレンエーテル以外の熱可塑性樹脂と、を混合して溶融状態の前記熱可塑性樹脂混合物を製造する工程をさらに含む、請求項22または23に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法。
【請求項25】
前記工程(2)における前記長繊維フィラーを溶融状態の前記熱可塑性樹脂混合物中に含浸させる浸漬用バスの設定温度が、前記工程(1)おける押出機の設定温度よりも20℃以上高い温度である、請求項22〜24のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法。
【請求項26】
前記工程(3)における引き取り速度が、10〜150m/分の範囲である、請求項22〜25のいずれか1項に記載の長繊維フィラー強化樹脂ペレットの製造方法。

【公開番号】特開2009−74043(P2009−74043A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87156(P2008−87156)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】