説明

長鎖多価不飽和脂肪酸由来のオキシリピンならびにその作製およびその使用方法

本明細書においてドコサノイドおよびエイコサノイドと称する、それぞれC22多価不飽和脂肪酸およびC20多価不飽和脂肪酸に由来する新規オキシリピン、ならびにそのようなオキシリピンの作製および使用方法を開示する。新規オキシピリンの産生用基質としてのドコサペンタエン酸(C22:5n-6)(DPAn-6)、ドコサペンタエン酸(C22:5n-3)(DPAn-3)、およびドコサテトラエン酸(DTAn-6:C22:4n-6)、ドコサトリエン酸(C22:3n-3)(DTrAn-3)、ドコサジエン酸(C22:2n-6)(DDAn-6)、エイコサトリエン酸(C20:3n-3)(ETrAn-3) エイコサペンタエン酸、およびアラキドン酸の使用、ならびにそれらによって産生されるオキシリピンについても開示する。治療および栄養または化粧用用途における、特に抗炎症化合物または抗神経変性化合物としての、DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、および/もしくはそれら由来のオキシリピン、ならびに/またはC22脂肪酸の構造由来の新規ドコサノイドの使用についても開示する。本発明はまた、強化量かつ有効量の長鎖多価不飽和酸(LCPUFA)由来オキシリピン、特にドコサノイドを含有する、長鎖多価不飽和酸(LCPUFA)に富んだ油および組成物を産生する新規な方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み入れられる、2005年11月21日に出願した米国特許出願第60/890,701号を相互参照する。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に、新規オキシピリンの産生用基質としてのドコサペンタエン酸(C22:5n-6)(DPAn-6)、ドコサペンタエン酸(C22:5n-3)(DPAn-3)、ドコサテトラエン酸(DTAn-6:C22:4n-6)、ドコサトリエン酸(C22:3n-3)(DTrAn-3、別名DTRAn-3)、ドコサジエン酸(C22:2n-6)(DDAn-6)、エイコサトリエン酸(C20:3n-3)(ETrAn-3)、およびエイコサトリエン酸(C20:3n-9)(ETrAn-9)の使用、ならびにそれらによって産生されるオキシリピンに関する。本発明はさらに、特に抗炎症化合物としてのDHA、DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DTrAn-3、DDAn-6、ETrAn-3、ETrAn-9、ARA、EPA、および/またはそれら由来のオキシリピンの使用に関する。本発明はまた、強化量かつ有効量の長鎖多価不飽和酸(LCPUFA)由来オキシリピン、特にドコサノイドおよびエイコサノイドを含有する、長鎖多価不飽和酸(LCPUFA)に富んだ油および組成物を産生する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
1990年代の研究者らは、大型藻類(海草)中にいくつかの脂肪酸のヒドロキシ誘導体を同定し、生物体での創傷治癒および細胞シグナル伝達におけるこれら化合物の果たし得る役割について記載した(Gerwick & Bernart 1993;Gerwick et al 1993;Gerwick 1994)。彼らは、これらの化合物が、リポキシゲナーゼ経路を介して人体で産生されるものと類似していることを認めた。彼らはまた、紅藻、褐藻、および緑藻類においてC18脂肪酸(リノール酸、リノレン酸)およびアラキドン酸(C20:4n-6)(ARA)からエイコサノイドおよび関連オキシリピンを産生させるために、これら海草の細胞懸濁培養液を開発することを試みた。しかしながら、これらの培養系における海草バイオマスの産生は非常に乏しいことが判明し(例えば、15日後に約0.6〜1.0 g/L海草バイオマス(Rorrer et al. 1996))、重要な脂肪酸を培養液に直接添加しても、オキシリピンの産生は対照よりも最小限に増加するにすぎなかった(Rorrer et al. 1997)。さらに、場合によっては、添加した遊離脂肪酸が培養物に対して毒性があることが判明した(Rorrer et al. 1997)。そのため、これらの系はこれらの脂肪酸の酸化型の産生に関する学術的興味として留まるのみであり、研究はこれら海草中のC18およびC20オキシリピンに対して継続されている(例えば、Bouarab et al. 2004)。
【0004】
長鎖ω-6(n-6またはω-6またはN6)脂肪酸、ARA由来のオキシリピンは十分に研究されており、一般にヒトにおいて炎症誘発性であると見なされている。しかしながら、長鎖ω-3(n-3またはω-3またはN3)脂肪酸由来のオキシリピンは一般に、抗炎症性であることが判明している。2000年代初期に、Serhanら研究者は、2つの長鎖ω-3多価不飽和脂肪酸(ω-3 LCPUFA)(すなわち、エイコサペンタエン酸(C20:5、n-3)(EPA)およびドコサヘキサエン酸(C22:6、n-3)(DHA))の水酸化型が人体内で作製されることを発見した(Serhan et al. 2004a、b(非特許文献8);Bannenberg et al. 2005a、b)。彼らは、ω-3(n-3またはω-3) LUCPUFA、EPAおよびDHAがシクロオキシゲナーゼ、アセチル化シクロオキシゲナーゼ-2、またはリポキシゲナーゼ酵素により処理されて、結果としてこれら脂肪酸の新規なモノヒドロキシ、ジヒドロキシ、およびトリヒドロキシ誘導体が生じる経路を同定した。結果として生じた化合物は「レゾルビン(resolvin)」(急性炎症の回復期に関与するため)またはドコサトリエン(docosatriene)(ドコサヘキサエン酸から作製され、共役二重結合を含むため)と命名され、強力な抗炎症特性(Arita et al. 2005a、b、c;Flower & Perretti 2005;Hong et al. 2003;Marcjeselli et al. 2003;Ariel et al. 2005)、抗増殖特性、および神経保護特性(Bazan 2005a、b;Bazan et al. 2005;Belayev et al. 2005;Butovich et al. 2005;Chen & Bazan 2005;Lukiw et al. 2005;Mukherjee et al 2004)を有することが決定された。これらの化合物はまた、他の種類のエイコサノイドと比較して、人体内でより長い半減期を有することが指摘された。
【0005】
この数年間で、様々な特許および特許出願公開が、ARA、DHA、およびEPAのあるヒドロキシ誘導体の類似体、それらが形成される経路、有機合成手段によるまたはシクロオキシゲナーゼもしくはリポキシゲナーゼ酵素を用いた生合成による実験室でのそれらの合成方法、ならびに炎症性疾患の治療用の薬学的化合物としてのこれらヒドロキシ誘導体の使用について記載している。
【0006】
米国特許第4,560,514号(特許文献1)は、アラキドン酸(ARA)由来の炎症誘発性(LX-A)および抗炎症性(LX-B)トリヒドロキシリポキシンの産生について記載している。炎症の研究および予防におけるこれら化合物の使用(薬学的化合物として)もまた記載されている。
【0007】
米国特許出願公開第2003/0166716号(特許文献2)は、喘息および炎症性気道疾患の治療におけるリポキシン(ARA由来)およびアスピリン誘発性リポキシンの使用について記載している。種々の抗炎症性リポキシン類似体の化学構造もまた教示されている。
【0008】
米国特許出願公開第2003/0236423号(特許文献3)は、トリヒドロキシ多価不飽和エイコサノイドおよびそれらの構造類似体を調製する有機化学に基づく合成法を、これらの化合物の誘導体を調製する方法も含め、開示している。炎症状態または望ましくない細胞増殖の治療におけるこれらの化合物およびそれらの誘導体の使用もまた考察されている。
【0009】
PCT公開第WO 2004/078143号(特許文献4)は、ジヒドロキシおよびトリヒドロキシEPAレゾルビン類似体と相互作用する受容体を同定する方法に関する。
【0010】
米国特許出願公開第2004/0116408A1号(特許文献5)は、人体内のEPAまたはDHAとシクロオキシゲナーゼ-II(COX2)およびアスピリンなどの鎮痛剤との相互作用が、炎症に関して有益な効果を有するジヒドロキシおよびトリヒドロキシEPAまたはDHA化合物の形成をもたらすことを開示している。この出願公開はまた、これら化合物の使用方法および調製方法も教示している。
【0011】
米国特許出願公開第2005/0075398A1号(特許文献6)は、ドコサトリエン、10,17S-ドコサトリエン(ニューロプロテクチンD1)が、人体内で神経保護効果を有するらしいことを開示している。
【0012】
PCT公開第WO 2005/089744A2号(特許文献7)は、EPAおよびDHAのジヒドロキシおよびトリヒドロキシレゾルビン誘導体、ならびにそれらの安定な類似体が、気道疾患および喘息の治療において有益であることを教示している。
【0013】
上記の参考文献はARA由来のリポキシンならびにDHAおよびEPA由来のドコサトリエンおよびレゾルビンに加え、そのような化合物の種々の適用について記載しているが、消費者にLCPUFA油とアスピリンの組み合わせを提供することによるか、またはこれらの誘導体もしくはそれらの類似体を化学合成することによる以外の、これらLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイド)の抗炎症性利点および他の利点を消費者にもたらす別の方法の必要性が、当技術分野において残っている。
【0014】
さらに、上記の参考文献はいずれも、細菌培養物または植物においてこれら特定の化合物を作製する方法について記載しておらず、食用油中のこれらの有益なヒロドキシ脂肪酸誘導体の含量を増大させる方法についても記載していない。さらに、これらの参考文献はいずれも、他のLCPUFA由来のヒドロキシ誘導体について記載しておらず、ARA、DHA、およびEPA以外のLCPUFAのヒドロキシ誘導体に有益な役割があり得ることも示唆していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第4,560,514号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0166716号
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0236423号
【特許文献4】PCT公開第WO 2004/078143号
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0116408A1号
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0075398A1号
【特許文献7】PCT公開第WO 2005/089744A2号
【発明の概要】
【0016】
本発明の1つの態様は一般に、ドコサペンタエン酸(DPAn-6)の単離されたドコサノイドに関する。そのようなドコサノイドには、これらに限定されないが、DPAn-6のモノヒドロキシ誘導体、DPAn-6のジヒドロキシ誘導体、およびDPAn-6のトリヒドロキシ誘導体から選択されるドコサノイドのRまたはSエピマーが含まれ得る。そのようなドコサノイドには、より詳細には、これらに限定されないが、7-ヒドロキシDPAn-6;8-ヒドロキシDPAn-6;10-ヒドロキシDPAn-6;11-ヒドロキシDPAn-6;13-ヒドロキシDPAn-6;14-ヒドロキシDPAn-6;17-ヒドロキシDPAn-6;7,17-ジヒドロキシDPAn-6;10,17-ジヒドロキシDPAn-6;13,17-ジヒドロキシDPAn-6;7,14-ジヒドロキシDPAn-6;8,14-ジヒドロキシDPAn-6;16,17-ジヒドロキシDPAn-6;4,5-ジヒドロキシDPAn-6;7,16,17-トリヒドロキシDPAn-6;および4,5,17-トリヒドロキシDPAn-6から選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー;またはその類似体、誘導体、もしくは塩が含まれ得る。
【0017】
本発明の別の態様は、ドコサペンタエン酸(DPAn-3)の単離されたドコサノイドに関する。そのようなドコサノイドには、これらに限定されないが、DPAn-3のモノヒドロキシ誘導体、DPAn-3のジヒドロキシ誘導体、およびDPAn-3のトリヒドロキシ誘導体から選択されるドコサノイドのRまたはSエピマーが含まれ得る。そのようなドコサノイドには、より詳細には、これらに限定されないが、7-ヒドロキシDPAn-3;10-ヒドロキシDPAn-3;11-ヒドロキシDPAn-3;13-ヒドロキシDPAn-3;14-ヒドロキシDPAn-3;16-ヒドロキシDPAn-3;17-ヒドロキシDPAn-3;7,17-ジヒドロキシDPAn-3;10,17-ジヒドロキシDPAn-3;8,14-ジヒドロキシDPAn-3;16,17-ジヒドロキシDPAn-3;13,20-ジヒドロキシDPAn-3;10,20-ジヒドロキシDPAn-3;および7,16,17-トリヒドロキシDPAn-3から選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー;またはその類似体、誘導体、もしくは塩が含まれ得る。
【0018】
本発明のさらなる別の態様は、ドコサテトラエン酸(DTAn-6)の単離されたドコサノイドに関する。そのようなドコサノイドには、これらに限定されないが、DTAn-6のモノヒドロキシ誘導体、DTAn-6のジヒドロキシ誘導体、およびDTAn-6のトリヒドロキシ誘導体から選択されるドコサノイドのRまたはSエピマーが含まれ得る。そのようなドコサノイドには、より詳細には、これらに限定されないが、7-ヒドロキシDTAn-6;10-ヒドロキシDTAn-6;13-ヒドロキシDTAn-6;17-ヒドロキシDTAn-6;7,17-ジヒドロキシDTAn-6;10,17-ジヒドロキシDTAn-6;16,17-ジヒドロキシDTAn-6;および7,16,17-トリヒドロキシDTAn-6から選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー;またはその類似体、誘導体、もしくは塩が含まれ得る。
【0019】
本発明の別の態様は、C22多価不飽和脂肪酸の単離されたドコサノイドに関する。このようなドコサノイドには、これらに限定されないが、4,5-エポキシ-17-ヒドロキシDPA;7,8-エポキシDHA;10,11-エポキシDHA;13,14-エポキシDHA;19,20-エポキシDHA;13,14-ジヒドロキシDHA;16,17-ジヒドロキシDTAn-6;7,16,17-トリヒドロキシDTAn-6;4,5,17-トリヒドロキシDTAn-6;7,16,17-トリヒドロキシDTAn-3;16,17-ジヒドロキシDTAn-3;16,17-ジヒドロキシDTRAn-6;7,16,17-トリヒドロキシDTRAn-6;4,5-ジヒドロキシDTAn-6;および10,16,17-トリヒドロキシDTRAn-6;13-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);17-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);20-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);15,16-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);13,16-ジヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6)から選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー;またはその類似体、誘導体、もしくは塩が含まれ得る。
【0020】
本発明の別の態様は、エイコサトリエン酸(n-3またはn-9)の単離されたエイコサノイドに関する。このようなエイコサノイドには、これらに限定されないが、5-ヒドロキシエイコサトリエン酸;6-ヒドロキシエイコサトリエン酸;8-ヒドロキシエイコサトリエン酸;11-ヒドロキシエイコサトリエン酸;15-ヒドロキシエイコサトリエン酸;18-ヒドロキシエイコサトリエン酸;6,12-ジヒドロキシエイコサン酸 11,18-ジヒドロキシ-エイコサトリエン酸;8,15-ジヒドロキシエイコサン酸;5,15-エイコサペンタエン酸、8,15-エイコサペンタナエン酸(eicosapentanaenoic acid)、5,15 エイコサテトラエン酸;5,15-エイコサテトラアエン酸(eicosatetraaenoic acid)、およびその類似体、誘導体、または塩が含まれ得る。
【0021】
本発明の別の態様は、上記オキシリピン(ドコサノイドまたはエイコサノイド)のいずれかを少なくとも1つ含む組成物に関する。組成物には、これらに限定されないが、治療組成物、栄養組成物、または化粧用組成物が含まれる。1つの局面において、組成物はアスピリンをさらに含む。別の局面において、組成物は、DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DHA、EPA、ETrA、DDA、DTrA、DHAのオキシリピン誘導体、およびEPAのオキシリピン誘導体から選択される化合物をさらに含む。別の局面において、組成物は、スタチン、非ステロイド性抗炎症薬、抗酸化剤、および神経保護薬から選択される少なくとも1つの薬剤をさらに含む。別の局面において、組成物は薬学的に許容される担体をさらに含む。さらなる別の局面において、組成物は、細菌油、植物種子油、および水生動物油から選択される油を含む。
【0022】
本発明のさらなる別の態様は、油1グラム当たり少なくとも約10μgのドコサノイドまたはエイコサノイドを含む油に関する。他の態様は、油1グラム当たり少なくとも約20μgのドコサノイドもしくはエイコサノイド、油1グラム当たり少なくとも約50μgのドコサノイドもしくはエイコサノイド、または油1グラム当たり少なくとも約100μgのドコサノイドもしくはエイコサノイドを含む油を含む。1つの局面において、上記油中のドコサノイドまたはエイコサノイドは、ドコサテトラエン酸(DTAn-6)、ドコサペンタエン酸(DPAn-6)、ドコサペンタエン酸(DPAn-3)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサジエン酸(DDA)、ドコサトリエン酸(DTrA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、およびエイコサトリエン酸(ETrA)から選択される多価不飽和脂肪酸である。別の局面において、ドコサノイドは、ドコサテトラエン酸(DTAn-6)、ドコサペンタエン酸(DPAn-6)、およびドコサペンタエン酸(DPAn-3)から選択される多価不飽和脂肪酸に由来する。1つの局面において、ドコサノイドは上記ドコサノイドのいずれかである。油には、これらに限定されないが、細菌油、植物種子油、および水生動物油が含まれ得る。
【0023】
本発明の別の態様は、これらに限定されないが治療組成物、栄養組成物、または化粧用組成物を含み得る、上記油のいずれかを含む組成物を含む。
【0024】
本発明のさらなる別の態様は、DPAn-6、DPAn-3、およびDTAn-6から選択される長鎖多価不飽和脂肪酸、ならびに薬学的または栄養学的に許容される担体を含む組成物に関する。1つの局面において、組成物はアスピリンをさらに含む。別の局面において、組成物は、DPAn-6、DTAn-6、またはDPAn-3からのドコサノイドの産生を触媒する酵素をさらに含む。
【0025】
本発明の別の態様は、個体における炎症または神経変性の少なくとも1つの症状を予防または軽減する方法に関する。本方法は、個体における炎症または神経変性の少なくとも1つの症状を軽減するために、炎症もしくは神経変性またはそれらに関連する状態もしくは疾患を有するリスクがある、それらを有すると診断された、またはそれらを有すると疑われる個体に、DPAn-6、DPAn-3、DPAn-6のオキシリピン誘導体、およびDPAn-3のオキシリピン誘導体からなる群より選択される薬剤を投与する段階を含む。1つの局面において、薬剤は、Tリンパ球による腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の産生を減少させるのに有効である。別の局面において、薬剤は、炎症部位への好中球およびマクロファージの遊走を減少させるのに有効である。別の局面において、薬剤は、個体におけるインターロイキン-1β(IL-1β)産生を減少させるのに有効である。さらなる別の局面において、薬剤は、個体におけるマクロファージ走化性タンパク質-1(MCP-1)を減少させるのに有効である。本発明で使用するオキシリピン誘導体は、本発明の上記ドコサノイドのいずれかを含み得る。1つの好ましい態様において、薬剤は、17-ヒドロキシDPAn-6および10,17-ジヒドロキシDPAn-6、またはそれらの誘導体もしくは類似体もしくは塩から選択される。別の態様において、薬剤はDPAn-6およびDPAn-3から選択される。
【0026】
1つの局面において、本方法は、少なくとも1つの長鎖ω-3脂肪酸および/またはそのオキシリピン誘導体を個体に投与する段階をさらに含む。そのようなω-3脂肪酸には、これらに限定されないがDHAおよび/またはEPAが含まれ得る。
【0027】
1つの局面において、DPAn-6またはDPAn-3は、以下の形態:DPAn-6またはDPAn-3を含有するトリグリセリド、DPAn-6またはDPAn-3を含有するリン脂質、遊離脂肪酸、DPAn-6またはDPAn-3のエチルまたはメチルエステルの1つとして提供される。
【0028】
別の局面において、DPAn-6もしくはDPAn-3またはそれらのオキシリピン誘導体は、細菌油、動物油、または長鎖多価不飽和脂肪酸を産生するように遺伝子改変された油糧種子植物に由来する植物油の形態で提供される。別の局面において、オキシリピン誘導体は、DPAn-6またはDPAn-3からそのオキシリピン誘導体への酵素変換により産生される。さらなる別の態様において、オキシリピン誘導体は新たに化学合成される。
【0029】
本発明のこの方法の上記局面のいずれにおいても、本方法は、個体にアスピリンを投与する段階をさらに含み得る。1つの局面において、本方法は、スタチン、非ステロイド性抗炎症薬、抗酸化剤、および神経保護薬から選択される少なくとも1つの薬剤を投与する段階をさらに含む。
【0030】
本発明の別の態様は、本発明の上記ドコサノイドのいずれかを化学合成する段階を含む、ドコサノイドを産生する方法に関する。
【0031】
本発明のさらなる別の態様は、DPAn-6基質、DTAn-6基質、またはDPAn-3基質をそのようなDPAn-6基質、DTAn-6基質、またはDPAn-3基質からのドコサノイドの産生を触媒する酵素と接触させることにより、ドコサノイドを触媒的に産生する段階を含む、ドコサノイドを産生する方法に関する。
【0032】
本発明のさらなる別の態様は、ドコサノイドを産生させるために、22炭素長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)からのドコサノイドの産生を触媒する酵素を過剰発現するように遺伝子改変されたLCPUFA産生微生物を培養するか、またはそのように遺伝子改変されたLCPUFA産生植物を栽培する段階を含む、ドコサノイドを産生する方法に関する。
【0033】
本発明の別の方法は、長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)産生微生物、LCPUFA産生植物、またはLCPUFA産生動物によって産生されるLCPUFAを、そのようなLCPUFAのドコサノイドへの変換を触媒する酵素と接触させる段階を含む、ドコサノイドを産生する方法に関する。
【0034】
ドコサノイドを産生するための上記方法の1つの局面において、酵素は、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、およびシトクロムP450酵素からなる群より選択される。例えば、そのような酵素には、これらに限定されないが、12-リポキシゲナーゼ、5-リポキシゲナーゼ、15-リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2、ヘモグロビンα1、ヘモグロビンβ、ヘモグロビンγA、CYP4A11、CYP4B1、CYP4F11、CYP4F12、CYP4F2、CYP4F3、CYP4F8、CYP4V2、CYP4X1、CYP41、CYP2J2、CYP2C8、トロンボキサンA合成酵素1、プロスタグランジンI2合成酵素、およびプロスタサイクリン合成酵素が含まれる。1つの局面において、LCPUFAはDPAn-6、DTAn-6、およびDPAn-3から選択される。
【0035】
上記方法の1つの局面において、LCPUFA産生微生物またはLCPUFA産生植物は、LCPUFAを産生するように遺伝子改変されている。別の局面において、LCPUFA産生微生物はLCPUFAを内因的に産生する(例えば、トラウストキトリド(Thraustochytrid))。
【0036】
本発明のさらなる別の態様は、LCPUFA由来の少なくとも1つのオキシリピンの存在に関して油を強化するか、または油中のそのようなオキシリピンを安定化する方法に関する。本方法は、LCPUFA産生微生物を、LCPUFAのオキシリピンへの変換を触媒する酵素の酵素活性を増強する化合物と共に培養する段階を含む。1つの局面において、化合物は酵素の発現を促進する。別の局面において、化合物はLCPUFAの自動酸化を増強または惹起する。1つの好ましい局面において、化合物はアセトサリチル酸(acetosalicylic acid)である。
【0037】
本発明の別の局面は、LCPUFA由来の少なくとも1つのオキシリピンの存在に関して油を強化するか、または油中のそのようなオキシリピンを安定化する方法に関する。本方法は、LCPUFAのオキシリピンへの変換を触媒する酵素の存在下で、少なくとも1つのLCPUFAを産生する細菌または植物油糧種子を破裂させる段階を含む。
【0038】
上記方法の1つの局面において、酵素は、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、およびシトクロムP450酵素からなる群より選択される。別の局面において、本方法は、オキシリピンを回収および精製する段階をさらに含む。この局面において、オキシリピンはまた、さらに処理されてオキシリピンの誘導体またはその塩として回収され得る。
【0039】
本発明の別の態様は、以下の段階を含む、LCPUFAのオキシリピン誘導体を含有する油を処理する方法に関する:(a) 細菌、植物、または動物源によって産生されたLCPUFAのオキシリピン誘導体を含有する油を回収する段階;および(b) LCPUFAのオキシリピン誘導体を保持する油を産生するために、油からの遊離脂肪酸の除去を最小限に抑える工程を用いて油を純化する段階。1つの局面において、動物は、これらに限定されないが魚を含む水生動物である。1つの局面において、植物は油糧種子植物である。1つの局面において、細菌源はトラウストキトリドである。
【0040】
上記方法では1つの局面において、純化段階は、アルコール、アルコール:水混合液、または有機溶媒による油の抽出を含む。別の局面において、純化段階は、非極性有機溶媒による油の抽出を含む。さらなる別の局面において、純化段階は、アルコールまたはアルコール:水混合液による油の抽出を含む。
【0041】
上記方法において、純化段階は、油を冷却濾過する段階、漂白する段階、さらに冷却濾過する段階、および脱臭する段階をさらに含み得る。1つの局面において、純化段階は、冷却濾過段階なしで、油を漂白する段階および脱臭する段階をさらに含む。別の局面において、純化段階は、冷却濾過段階も漂白段階もなしで、油を脱臭する段階をさらに含む。
【0042】
上記方法において、本方法は、抗酸化剤を油に添加する段階をさらに含み得る。
【0043】
上記方法において、純化段階は、油を乳濁液として調製する段階を含み得る。
【0044】
上記方法の1つの局面において、油は、LCPUFAのオキシリピンへの変換を触媒する酵素と接触させることによりさらに処理される。そのような酵素には、これらに限定されないが、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、およびシトクロムP450酵素が含まれ得る。1つの局面において、酵素は基体上に固定化されている。
【0045】
上記の方法は、クロマトグラフィーを含むがこれに限定されない技法により、油中のLCPUFAからLCPUFAオキシリピン誘導体を分離する段階をさらに含み得る。この分離段階は、このような分離されたLCPUFAオキシリピンを油または組成物に添加する段階をさらに含み得る。
【0046】
本発明のさらなる別の態様は、以下の段階を含む、LCPUFAのオキシリピン誘導体を含有する油を処理する方法に関する:(a) 細菌、植物、または動物源によって産生されたLCPUFAのオキシリピン誘導体を含有する油を回収する段階;(b) 油を純化する段階;および(c) 油中のLCPUFAからLCPUFAオキシリピンを分離する段階。1つの局面において、本方法は、段階(c)の前に、化学的または生物学的工程により油中のLCPUFAをLCPUFAオキシリピンに変換する段階をさらに含む。1つの局面において、本方法は、そのような分離されたLCPUFAオキシリピンを生成物に添加する段階をさらに含む。
【0047】
本発明の別の態様は、個体における炎症または神経変性の少なくとも1つの症状を予防または軽減する方法であって、個体における炎症または神経変性の少なくとも1つの症状を軽減するために、炎症もしくは神経変性またはそれらに関連する状態もしくは疾患を有するリスクがある、それらを有すると診断された、またはそれらを有すると疑われる患者に、DTAn-6、DDAn-6、DTrA-n-3、ETrAn-3、ETrAn-9、およびこれら脂肪酸のいずれかのオキシリピン誘導体から選択される薬剤を投与する段階を含む方法に関する。1つの局面において、薬剤は、これら脂肪酸のいずれかのモノヒドロキシ誘導体、これら脂肪酸のいずれかのジヒドロキシ誘導体、およびこれら脂肪酸のいずれかのトリヒドロキシ誘導体からなる群より選択されるドコサノイドのRまたはSエピマーである。別の局面において、薬剤は、DTAn-6、DDAn-6、DTrA-n-3、ETrAn-3、もしくはETrAN-9由来の上記オキシリピンのいずれかのRもしくはSエピマー、またはその類似体、誘導体、もしくは塩である。
【0048】
本発明の別の態様は、LCPUFAをオキシリピンに変換する酵素を発現するように遺伝的に形質転換された、PUFA PKS経路を含む生物に関する。1つの局面において、生物は植物および微生物からなる群より選択される。別の局面において、生物は、PUFA PKS経路を発現して長鎖多価不飽和脂肪酸を産生するように遺伝子改変された油糧種子植物である。さらなる別の局面において、生物は、これに限定されないが、内因性PUFA PKS経路を含む微生物を含む微生物である。1つの局面において、酵素は、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、およびシトクロムP450酵素からなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】DHA、DPAn-6、およびDPAn-3との15-リポキシゲナーゼ反応の反応速度を示すグラフである。
【図2A】DHAの15-リポキシゲナーゼ生成物の構造を示す。
【図2B】17-ヒドロキシDHAの質量スペクトル解析である。
【図2C】10,17-ジヒドロキシDHAの質量スペクトル解析である。
【図2D】7,17-ジヒドロキシDHAの質量スペクトル解析である。
【図3A】DPAn-6の15-リポキシゲナーゼ生成物の構造を示す。
【図3B】17-ヒドロキシDPAn-6の質量スペクトル解析である。
【図3C】10,17-ジヒドロキシDPAn-6の質量スペクトル解析である。
【図3D】7,17-ジヒドロキシDPAn-6の質量スペクトル解析である。
【図4A】DPAn-3の15-リポキシゲナーゼ生成物の構造を示す。
【図4B】17-ヒドロキシDPAn-3の質量スペクトル解析である。
【図4C】10,17-ジヒドロキシDPAn-3の質量スペクトル解析である。
【図4D】7,17-ジヒドロキシDPAn-3の質量スペクトル解析である。
【図5A】DTAn-6の15-リポキシゲナーゼ生成物の構造を示す。
【図5B】17-ヒドロキシDTAn-6の質量スペクトル解析である。
【図5C】7,17-ジヒドロキシDTAn-6の質量スペクトル解析である。
【図6】15-リポキシゲナーゼおよびその後のヘモグロビンによる順次的処置後の、DPAn-6の主要なオキシリピン生成物を示す。
【図7】DHAの主要な5-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【図8】DPAn-6の主要な5-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【図9】DPAn-3の主要な15-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【図10】DHAの主要な5-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【図11】DPAn-6の主要な5-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【図12】DPAn-3の主要な5-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【図13】EPA由来オキシリピンの構造を示す。
【図14A】DHA由来オキシリピンの構造を示す。
【図14B】DHA由来オキシリピンの構造を示す。
【図15】DPAn-6由来オキシリピンの構造を示す。
【図16】DPAn-3由来オキシリピンの構造を示す。
【図17】DTAn-6由来オキシリピンの構造を示す。
【図18A】藻類DHA+DPAn-6油中のDHAおよびDPAn-6のモノヒドロキシおよびジヒドロキシ誘導体の質量スペクトル全イオンクロマトグラフである。
【図18B】藻類DHA+DPAn-6油中のモノヒドロキシDPAn-6誘導体のMS/MSスペクトルを示す。
【図18C】藻類DHA+DPAn-6油中のジヒドロキシDPAn-6誘導体のMS/MSスペクトルを示す。
【図19】ラットの肢浮腫に及ぼす給餌LCPUFA油の効果を示すグラフである。
【図20A】炎症のマウス背部空気嚢モデルにおける、DHAおよびDPAn-6由来ドコサノイド投与後の、空気嚢への全細胞遊走を示すグラフである。
【図20B】炎症のマウス背部空気嚢モデルにおける、DHAおよびDPAn-6由来ドコサノイド投与後の、空気嚢進出液中のIL-1β濃度を示すグラフである。
【図20C】炎症のマウス背部空気嚢モデルにおける、DHAおよびDPAn-6由来ドコサノイドの投与後の、空気嚢進出液中のマクロファージ走化性タンパク質1(MCP-1)濃度を示すグラフである。
【図21】ヒトグリア細胞におけるTNFα誘導性IL-1β産生に及ぼすドコサノイドの効果を示すグラフである。
【図22】ヒトTリンパ球によるTNFα分泌に及ぼすドコサノイドの効果を示すグラフである。
【図23】さらなる新規C22-PUFA由来オキシリピンの構造を示す。
【図24】ドコサトリエン酸(DTrAn-3)の主要な15-リポキシゲナーゼ生成物の構造を示す。
【図25】ドコサトリエン酸由来オキシリピンの構造を示す。
【図26】ドコサトリエン酸の主要な12-リポキシゲナーゼ生成物および5-リポキシゲナーゼ生成物の構造を示す。
【図27】ドコサジエン酸(DDAn-6)の主要な15-リポキシゲナーゼ生成物の構造を示す。
【図28】ドコサジエン酸の主要な12-リポキシゲナーゼ生成物の構造を示す。
【図29】5Z,8Z,11Zエイコサトリエン酸(ETrAn-9)の主要な12-リポキシゲナーゼ生成物の構造を示す。
【図30】5Z,8Z,11Zエイコサトリエン酸(ETrAn-9)の主要な15-リポキシゲナーゼ生成物および5-リポキシゲナーゼ生成物の構造を示す。
【図31】5Z,8Z,11Zエイコサトリエン酸(ETrAn-3)の主要な5-リポキシゲナーゼ生成物の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
発明の説明
新規な抗炎症化合物に関する、ならびに上記のリポキシン、レゾルビン、およびドコサトリエンなどの公知の抗炎症化合物を提供する別の方法に関する当技術分野における必要性を認識して、本発明者らは、抗炎症用途において使用するための新規な抗炎症試薬および改良組成物の提供をもたらす、いくつかの相互に関係のある発見をした。
【0051】
第一に、本発明は、長鎖ω-6脂肪酸、ドコサペンタエン酸(DPAn-6;C22:5n-6)、ドコサテトラエン酸(DTAn-6;C22:4n-6)(アドレン酸(adrenic acid)とも称される)、およびドコサジエン酸(DDAn-6;C22:n-6)、ならびにDPAn-6のω-3対応物、ドコサペンタエン酸(DPAn-3;C22:5n-3)、およびまたドコサトリエン酸(DTrAn-3;C22:3n-3)が、本明細書において一般にLCPUFAオキシリピンと称する、より詳細にはドコサノイド(そのようなドコサノイドのモノヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ、およびペンタヒドロキシ誘導体を含む)と称する新規化合物を産生するための基質であるという、本発明者らによる発見に関する。本発明はまた、長鎖ω-3脂肪酸、エイコサトリエン酸(ETAn-3;C20:3n-3)が、より詳細にはエイコサノイド(そのようなエイコサノイドのモノヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ、およびペンタヒドロキシ誘導体を含む)と称する、新規LCPUFAオキシリピンを産生するための基質であるという、本発明者らによる発見に関する。本明細書で用いる「オキシリピン」、「ドコサノイド」、および「エイコサノイド」という用語は、以下に定義し詳述する。本発明者らは、DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、およびETrAn-3、ならびにそれらのオキシリピン誘導体が、長鎖ω-3脂肪酸DHAおよびEPAならびにそれらのオキシリピン誘導体と同様に、強力な抗炎症薬となり得ることを発見した。したがって、本発明は1つの局面において、ω-6脂肪酸DPAn-6、DTAn-6、およびDDA n-6、ならびに/またはω-3脂肪酸DPAn-3、DTrAn-3、ETrAn-9、およびETrAn-3由来の新規オキシリピン、ならびにそれらの誘導体および類似体、さらにそのようなオキシリピンの抗炎症化合物および栄養/健康補助剤としての産生および使用方法を提供する。本発明はまた、これらのLCPUFA(DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、およびETrAn-3)自体の、新規抗炎症化合物として(例えば、オキシリピンの前駆体として、または内因的抗炎症活性を有する薬剤として)の使用も提供する。
【0052】
最初に、本発明者らは、DHA油中にDPAn-6が存在することにより、任意の他の脂肪酸を含まないDHA油と比較して、患者における炎症の軽減が実質的に強化される(例えば、炎症誘発性サイトカインの産生およびエイコサノイドの産生などの、炎症の指標またはメディエータの減少が増強される)ことを認めた。この発見により本発明者らは、DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、およびETrAn-3の独特の構造により、これらのLCPUFAが、DHAをドコサトリエンまたはレゾルビンに変換する酵素反応と類似した酵素反応における基質となり得ることを発見し、結果としてDPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、およびETrAn-3、ならびにそれらのオキシリピン誘導体が新規で強力な抗炎症薬であるという驚くべき発見に至った。
【0053】
本発明よりも前には、長鎖ω-6脂肪酸、DPAn-6が、EPAおよびDHAに由来する以前に記載されたドコサトリエンおよびレゾルビンの抗炎症特性と同等であるか、またはそれを上回る抗炎症特性を有する新規オキシリピンを産生するための基質となり得ることは知られていなかった。本発明よりも前の証拠からは、油中にDPAn-6が存在することにより、炎症誘発性化合物が産生され、そのためDHA含有油の全体的な抗炎症効果が減少すると示唆されていた。例えば、DPAn-6はアラキドン酸(ARA)に容易に逆変換し得、ARAは、ロイコトリエンB4およびプロスタグランジンE2を含む種々の非常に強力な炎症誘発性エイコサノイドの前駆体であることから、一般に炎症誘発性であると見なされている。実際に、ω-6脂肪酸ARAに由来するエイコサノイドの大部分が炎症誘発性であり(Gilroy et al, 2004;Meydani et all, 1900;Simopoulos 2002)、ARAの消費によりDHAの抗炎症効果が逆転する(例えば、以下の実施例14を参照されたい)。したがって本発明よりも前には、DPAn-6は、ARA代謝経路に入るために炎症誘発性であると一般に信じられていた。さらに、ドコサペンタエン酸(DPAn-6;C22:5n-6)がその独特の構造から新規オキシリピンの産生の重要な基質であることも、新規オキシリピンがまたドコサペンタエン酸(DPAn-3;C22:5n-3)およびドコサテトラエン酸(DTAn-6;C22:4n-6)に由来し得ることも、本発明よりも前には認識されていなかった。実際に本発明者らは、DPAn-6およびDPAn-3がDHAと比較してオキシリピン生成反応における優れた基質であることを見出し、DTAn-6もまたオキシリピン生成反応における基質であることを見出した。このことは、以下の実施例1において、15-リポキシゲナーゼによるDHA、DPAn-6、およびDPAn-3のそれぞれの変換に関して実証されている。したがって、DPAn-6およびDPAn-3からのドコサノイドの産生は、DHAからのドコサノイドの産生よりも効率的であり、より高いオキシリピン生成物レベルをもたらす。
【0054】
加えて、DPAn-6およびDPAn-3から合成されるオキシリピンが、特に炎症に関して独特の特性を有することも認識されていなかった。特に、理論に縛られることはないが、本発明者らは、DPAn-6およびDPAn-3ならびにそれらのオキシリピン誘導体、特にDPAn-6およびそのオキシリピン誘導体が、DHA、EPA、またはそのようなLCPUFAのオキシリピン誘導体と同等であるか、またはそれらよりもさらに強力な抗炎症化合物であると考えている。理論に縛られることはないが、本発明者らはまた、DTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、およびETrAn-3、ならびにそのオキシリピン誘導体が抗炎症特性を有すると予想している。実際に、DPAn-6およびDPAn-3ならびに/またはそれらのオキシリピン誘導体、特にDPAn-6および/またはそのオキシリピン誘導体と、DHAもしくはEPAおよび/またはそれらのオキシリピン誘導体(特に、DHAおよび/またはそのオキシリピン誘導体)とを組み合わせることで、栄養用途(例えば、個体の健康を維持する、安定化する、増強する、強化する、もしくは改善するための栄養分および栄養剤の提供、または機能、成長、および維持のために生物が食物および液体を同化および使用する有機的工程に関する、栄養補給用途を含む本発明の任意の用途)、治療用途(例えば、個体の健康からの逸脱である疾患または状態の予防、処置、管理、治療、緩和、および/または治癒に関する本発明の任意の用途)、ならびにDHA、EPA、および/またはそれらのオキシリピン誘導体のみによって提供される以外の用途(例えば、化粧用)においてより優れた利点が提供される。
【0055】
より詳細には、本発明者らは、ω-3脂肪酸、DHAに加えてDPAn-6を含有する油を消費することにより、炎症性サイトカインの産生が>90%まで減少するのに対し、油中のDHAのみの消費では、DHAがDHA+DPAn-6油中よりも約3倍高い場合でも、炎症性サイトカインの産生の約13〜29%の減少しか促進されないことを発見した。炎症性エイコサノイドの分泌もまた、DHA単独と比較してDPAn-6により有意に減少した。したがって本発明者らは、DPAn-6およびそのオキシリピン誘導体を含有する油が、顕著な抗炎症特性を有することを発見した。さらに本発明者らは、DPAn-6および長鎖ω-3脂肪酸(例えば、DHA)、またはまとめてドコサノイドとして知られるそれらのオキシリピン誘導体が組み合わせて存在することにより、相補的な抗炎症活性を有するドコサノイド(以下に定義する)が産生されることを提示する。したがって、DHAなどの長鎖ω-3脂肪酸およびDPAn-6またはそれらのオキシリピンを両方含有する製剤は、ω-3脂肪酸のみを含有する製剤よりも有意に強力な抗炎症製剤である。さらに、DPAn-6およびそのオキシリピン誘導体は、単独で、または種々の他の薬剤と組み合わせて使用するための新規な抗炎症薬である。DPAn-3およびそのオキシリピン誘導体ならびに/またはDTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、および/もしくはETrAn-3ならびに/またはそのオキシリピン誘導体もまた、DHAのみの使用を上回る利点を提供し得る。
【0056】
本発明者らは、DPAn-6が抗炎症特性を有し、DHAなどの長鎖ω-3脂肪酸の抗炎症効果を増強することを初めて認識した。より詳細には、本発明者らは、DHAにおける炭素19と20の間の最も遠位のn-3結合が生物学的に重要なドコサトリエンまたは17S-レゾルビンの形成に関与しておらず、そのためDPAn-6においてこの二重結合が欠如しても、この脂肪酸の、リポキシゲナーゼなどの生体酵素による類似のオキシリピンへの代謝的変換が妨げられないことを認識した。本発明者らはさらに、DHAのオキシリピンへの、特にレゾルビンとして知られる化合物への酵素変換の大部分に関与する二重結合(すなわち、DHAにおける炭素7と8、炭素10と11、炭素13と14、および炭素16と17の間の二重結合)が、DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、およびETrAn-3にも存在し、オキシリピン産生用の基質としてそれらの使用が促進されることを認識した。理論に縛られることはないが、このことが、DHA単独と比較してDHAおよびDPAn-6を含有する油を用いた研究において、本発明者らによって認められたデータの差の説明となると考えられる。本発明者らは、DHAをドコサノイドまたは17S-レゾルビンに変換する酵素と同じ酵素が、任意の(n-3)または(n-6) C22 PUFAを認識することをここに実証した。したがって、DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、およびETrAn-3はDHAと同様に、強力な抗炎症分子として機能し得る新規オキシリピンの基質である。さらに、これらの知見から、炭素7と8、炭素10と11、炭素13と14、および炭素16と17の間に位置する二重結合を有する24またはそれ以上の炭素のLCPUFAもまた、新規オキシリピン産生用の基質となり、本出願において概説する方法を用いて種々の油および組成物において産生または強化され得ることも示唆される。
【0057】
したがって本発明者らは、以前に記載されたDHA由来のドコサトリエンおよびレゾルビンなどのオキシリピンを形成する酵素が、(n-6)および(n-3) 22炭素脂肪酸の同じ位置に特定の二重結合が存在することから、これらの分子を基質として識別しないことを初めて認識した。実際に本発明者らは、C22n-6脂肪酸がこれらの酵素の好ましい基質であることを初めて発見した。本発明者らはまた、DPAn-6由来のオキシリピンが強力な抗炎症活性を有すること、およびDHAとDPAn-6由来のオキシリピンの組み合わせが、DHAのみの場合を上回る抗炎症性利点を有することを初めて認めた。
【0058】
本発明の別の態様において、本発明者らはまた、本発明の新規オキシリピンおよび以前に記載されたオキシリピンを含む、増強量かつ有効量のLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイド)を含有する、LCPUFAに富んだ油を産生する新規な方法を発見した。これらのLCPUFAに富んだ油は、栄養(栄養補給を含む)、化粧用、および/または薬学的(治療を含む)用途において使用して、LCPUFA自体の固有の長期利点と共に、ヒドロキシ-LCPUFA誘導体の迅速な抗炎症/神経保護作用を送達することができる。
【0059】
本発明者らはまた、藻類油および魚油などのLCPUFAの従来の供給源が、LCPUFAのヒドロキシ誘導体、したがってLCPUFAオキシリピン、特にドコサノイドを極めて少量しか有さないことを発見した(例えば、約1 ng/g油〜約10μg/g油)。これは一部に、産生生物(例えば、藻類、魚)と関連した遺伝的および環境的要因が原因であり、またこれら生物からLCPUFA油を処理するために使用する方法に起因する。LCPUFAオキシリピンが強化された油を提供することが、ヒトの栄養および健康にとって非常に有益であり、化学合成されたオキシリピン類似体の提供または不十分な量のLCPUFAオキシリピンを含有する油の代替を提供することになることを認識して、本発明者らは、LCPUFAオキシリピン(ドコサノイドおよびエイコサノイドを含むが、それらに限定されない)が強化されるようにこれらのLCPUFA油を産生する別法、ならびに油のLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイド)含量をさらに強化および増強するようにLCPUFA油を処理し、それによってそれらのLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイド)レベルを従来法で産生/処理されたLCPUFA油で認められるレベルを超えて有意に増強する別法を発見した。
【0060】
さらに本発明者らは、DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DTrAn-3、DDAn-6、ETrAn-9、およびETrAn-3から産生されるオキシリピン、ならびにEPAおよびARAから産生される新規オキシリピン、ならびにこれらのオキシリピンが化学的または生物学的に産生され、種々の組成物および製剤において粗製、半純粋、もしくは純粋な化合物として使用され得るか、またはLCPUFAもしくはLCPUFAオキシリピン含有油などの油に添加されて、そのような油中で天然オキシリピンを強化するもしくは補い得ることを発見した。そのような化合物はまた、栄養剤および治療薬を設計および産生する上で、これらのオキシリピンのさらなる活性類似体を産生するためのリード化合物となり得る。
【0061】
一般的定義
本出願の目的のため、長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を、3つまたはそれ以上の二重結合を含む、18またはそれ以上の炭素鎖長の脂肪酸、好ましくは20またはそれ以上の炭素鎖長の脂肪酸と定義する。ω-6系のLCPUFAには、これらに限定されないが、ジ-ホモ-ガンマリノール酸(C20:3n-6)、アラキドン酸(C20:4n-6)、ドコサテトラエン酸またはアドレン酸(C22:4n-6)、ドコサペンタエン酸(C22:5n-6)、およびドコサジエン酸(C22:2n-6)が含まれる。ω-3系のLCPUFAには、これらに限定されないが、エイコサトリエン酸(C20:3n-3)、エイコサテトラエン酸(C20:4n-3)、エイコサペンタエン酸(C20:5n-3)、ドコサトリエン酸(C22:3n-3)、ドコサペンタエン酸(C22:5n-3)、およびドコサヘキサエン酸(C22:6n-3)が含まれる。LCPUFAには、これらに限定されないがC24:6(n-3)およびC28:8(n-3)をはじめとする、22個を超える炭素および4つまたはそれ以上の二重結合を有する脂肪酸もまた含まれる。
【0062】
「多価不飽和脂肪酸」および「PUFA」という用語には、遊離脂肪酸型のみならず、トリアシルグリセロール(TAG)型、リン脂質(PL)型、および他のエステル型などのその他の形態も同様に含まれる。
【0063】
本明細書で用いる「脂質」という用語には、リン脂質;遊離脂肪酸;脂肪酸のエステル;トリアシルグリセロール;ジアシルグリセリド;モノアシルグリセリド;リゾリン脂質;セッケン;ホスファチド;ステロールおよびステロールエステル;カロテノイド;キサントフィル(例えば、オキシカロテノイド);炭化水素;ならびに当業者に公知であるその他の脂質が含まれる。
【0064】
本出願の目的のため、「オキシリピン」を、多価不飽和脂肪酸の酸化的代謝によって形成される、多価不飽和脂肪酸の生物活性のある酸化誘導体と定義する。リポキシゲナーゼ経路を介して形成されるオキシリピンは、リポキシンと称される。シクロオキシゲナーゼ経路を介して形成されるオキシリピンは、プロスタノイドと称される。20炭素脂肪酸(例えば、アラキドン酸、エイコサトリエン酸およびエイコサペンタエン酸)から形成されるオキシリピンは、エイコサノイドと称される。エイコサノイドには、プロスタグランジン、ロイコトリエン、およびトロンボキサンが含まれる。これらは、リポキシゲナーゼ経路を介して(ロイコトリエン)、またはシクロオキシゲナーゼ経路を介して(プロスタグランジン、プロスタサイクリン、トロンボキサン)形成される。22炭素脂肪酸(例えば、ドコサペンタエン酸(n-6またはn-3)、ドコサヘキサエン酸、ドコサジエノン酸、ドコサトリエノン酸、およびドコサテトラエン酸)から形成されるオキシリピンは、ドコサノイドと称される。これらの化合物の特定の例を以下に記載する。本明細書に記載するオキシリピンへの一般的言及は、特定のオキシリピン化合物の誘導体および類似体も包含することが意図される。
【0065】
本明細書で用いる「類似体」という用語は、別の化合物と構造的に類似しているが、わずかに組成が異なる化合物を指す(1つの原子の、異なる元素の原子によるかもしくは特定の官能基の存在下における置換、または1つの官能基の別の官能基による置換など)(以下の本発明の類似体の詳細な考察を参照されたい)。
【0066】
本明細書で用いる「誘導体」という用語は、本発明の化合物を説明するために使用する場合、非置換化合物に結合している少なくとも1つの水素が、異なる原子または化学成分により置換されることを意味する(以下の本発明の誘導体の詳細な考察を参照されたい)。
【0067】
一般に「生物活性のある」という用語は、化合物が、インビボで(すなわち、天然の生理的環境において)またはインビトロで(すなわち、実験室条件下において)測定または観察される、細胞または生物の代謝工程またはその他の工程に影響する少なくとも1つの検出可能な活性を有することを示す。
【0068】
長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)の酸化誘導体には、LCPUFAのモノヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ、およびペンタヒドロキシ誘導体が含まれ、これらの誘導体の遊離型、エステル型、過酸化型、およびエポキシ型もまた含まれる。LCPUFAのこれらのモノヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ、およびペンタヒドロキシ誘導体とは、一般にそのうちの少なくとも2つが共役した3つ、4つ、またはそれ以上の二重結合、および1つまたは複数の非カルボキシヒドロキシル基を含む誘導体である。これらの誘導体は、4〜6つの二重結合および少なくとも1〜3つの非カルボキシヒドロキシル基を含むことが好ましく、より好ましくは2つまたはそれ以上の非カルボキシヒドロキシル基を含む。
【0069】
リポキシゲナーゼ酵素、またはシクロオキシゲナーゼ2(COX2)のアセチル化型を含むシクロオキシゲナーゼ酵素によって触媒された、炎症過程を減少または回復させ得る、ω-3脂肪酸EPAおよびDHAの酸化誘導体は一般に「レゾルビン」と称され、これは実際に有効な造語(新語)である。「ドコサトリエン」とは、DHA由来のオキシリピンのサブクラスであり、3つの共役二重結合を含む。「プロテクチン(protectin)」とは、神経保護効果を有する、ω-3脂肪酸DHAのヒドロキシ誘導体の別の造語である。
【0070】
本発明によると、「ドコサノイド」という用語は、具体的に、任意の22炭素LCPUFA(例えば、DHA、DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、またはDTrAn-3)の任意の酸化誘導体(オキシリピン)を指す。このような誘導体の構造を以下に詳述する。本発明者らは、DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、またはDTrAn-3に由来する本発明の新規オキシリピン誘導体(ドコサノイド)もまた、そのようなオキシリピンの類似の機能特性に基づいて「レゾルビン」または「プロテクチン」と見なされ得ると認識しているが、本発明の目的のためには、本発明の新規オキシリピンを、そのような化合物の明確な構造定義を提供する「ドコサノイド」という用語を用いて一般に参照することが好ましいことに留意されたい。DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、またはDTrAn-3由来のドコサノイドは、本発明者らの知る限りでは、これまでに記載されたことはない。
【0071】
本発明によると、「エイコサノイド」という用語は、具体的に、任意の20炭素LCPUFA(例えば、EPA、ETrAn-9、ETrAn-3、またはARA)の任意の酸化誘導体(オキシリピン)を指す。このような誘導体のいくつかの構造を以下に詳述する。本発明者らは、これらの20炭素LCPUFAに由来する本発明の新規エイコサノイドオキシリピン誘導体もまた、そのようなオキシリピンの類似の機能特性に基づいて「レゾルビン」または「プロテクチン」と見なされ得ると認識しているが、本発明の目的のためには、本発明のそのような新規オキシリピンを、そのような化合物の明確な構造定義を提供する「エイコサノイド」という用語を用いて一般に参照することが好ましいことに留意されたい。本明細書に記載するETrAn-9またはETrAn-3由来のエイコサノイドは、本発明者らの知る限りでは、これまでに記載されたことはない。
【0072】
本発明において有用なオキシリピン
本発明の1つの態様は、DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、またはETrAn-3由来の新規オキシリピン、およびそのようなオキシリピンの任意の類似体または誘導体、加えてそのようなオキシリピンまたはその類似体もしくは誘導体を含有する任意の組成物または製剤または生成物、ならびに任意のLCPUFAオキシリピンまたはその類似体もしくは誘導体、詳細にはDHA、EPA、DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、またはETrAn-3由来の任意のオキシリピンが任意の方法により強化された油またはその他の組成物もしくは製剤もしくは生成物に関する。本発明はまた、油もしくは組成物中のオキシリピンの質、量、もしくは安定性を改善するため、ならびに/または油もしくは組成物中に含まれるオキシリピンの吸収、生物学的利用能、および/もしくは有効性を改善するために、そのようなオキシリピン(任意のドコサノイドまたはエイコサノイド、より詳細には、DHA、EPA、DPAn-6、DPAn-3、またはDTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、またはETrAn-3由来の任意のオキシリピン)が油または組成物中で安定化または維持された任意の油またはその他の組成物もしくは製剤もしくは生成物に関する。
【0073】
上記したように、抗炎症活性、抗増殖活性、抗酸化活性、神経保護または血管調節活性(Ye et al, 2002)を有する種々のDHA由来およびEPA由来オキシリピンが知られており、これらはより一般的にはレゾルビンまたはプロテクチンと呼ばれている。このようなオキシリピンは、本発明により、特にこのようなオキシリピンが好ましくは本発明の方法および処理段階を用いて油および組成物中で強化される態様において包含されるものとして参照される。さらに本発明は、DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、およびETrAn-3由来の新規オキシリピン、加えてその類似体または誘導体を提供するが、これらも同様に本明細書に記載の任意の治療、栄養(栄養補給を含む)、化粧用、またはその他の用途のために、好ましくは本発明の方法および工程を用いて種々の油および組成物中で強化され得、または新規産生を含む種々の生物学的もしくは化学的方法により産生され得、また必要に応じて単離もしくは精製され得る。したがって本発明は、本明細書に記載の単離された、半精製された、および精製されたオキシリピン、ならびに合成源および天然源(例えば、油または植物およびそれらの一部)を含むオキシリピンの供給源を包含し、遺伝学的、生物学的、もしくは化学的方法により、または本明細書に記載の処理段階により、本発明において有用なオキシリピンの存在に関して強化された任意の供給源を含む。
【0074】
一般に、オキシリピンは炎症誘発特性または抗炎症特性を有し得る。本発明によれば、炎症誘発特性とは、細胞、組織、または生物の炎症を増強する特性(特徴、活性、機能)であり、抗炎症特性とはそのような炎症を阻害する特性である。細胞、組織、および/または生物における炎症は、「炎症誘発性」サイトカイン(例えば、インターロイキン-1α(IL-1α)、IL-1β、腫瘍壊死因子-α(TNFα)、IL-6、IL-8、IL-12、マクロファージ炎症性タンパク質-1α(MIP-1α)、マクロファージ走化性タンパク質-1(MCP-1;マクロファージ/単球走化性・活性化因子または単球走化性タンパク質-1としても知られる)、およびインターフェロン-γ(IFN-γ))の産生、エイコサノイド産生、ヒスタミン産生、ブラジキニン産生、プロスタグランジン産生、ロイコトリエン産生、発熱、浮腫またはその他の腫脹、および炎症部位における細胞メディエータ(例えば、好中球、マクロファージ、リンパ球など)の蓄積を含むがこれらに限定されない種々の特徴によって同定され得る。
【0075】
1つの態様において、本発明において有用なオキシリピンは、抗炎症特性を有するオキシリピン、例えばそのような特性を有するDHA、EPA、DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、またはETrAn-3由来のオキシリピンである。オキシリピンのその他の重要な生理活性特性には、これらに限定されないが、抗増殖活性、抗酸化活性、神経保護および/または血管調節活性が含まれる。これらの特性もまた、本発明において有用なオキシリピンの好ましい特性であり、DHA、EPA、DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、またはETrAn-3由来のオキシリピンの好ましい特徴である。別の態様においては、本発明のオキシリピンには、オキシリピンの特定の機能特性かかわらず、DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、またはETrAn-3由来の任意のオキシリピンが含まれる。本発明の好ましいオキシリピンには、栄養および/または治療的利点を提供する、より好ましくは抗炎症活性、抗増殖活性、抗酸化活性、および/または神経保護活性を有するオキシリピンが含まれる。
【0076】
本発明において有用なオキシリピンには、5,15-ジヒドロキシエイコサテトラエン酸などのARA由来オキシリピンもまた含まれる。さらなる例示的な有用オキシリピンを、本明細書において記載する。
【0077】
エイコサペンタエン酸(EPA)由来オキシリピン
本発明において有用なEPA由来のオキシリピンには、これらに限定されないが、5,15-ジヒドロキシエイコサペンタエン酸(EPA)、8,15-ジヒドロキシエイコサペンタエン酸(EPA)、15-エピ-リポキシンA4(5S,6R,15R-トリヒドロキシエイコサテトラエン酸)およびその中間体15R-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(15R-HEPE);レゾルビンE1(5,12,18-トリヒドロキシEPA)、ならびにその中間体5,6-エポキシ,18R-ヒドロキシ-EPE、および5S-ヒドロ(ペルオキシ),18R-ヒドロキシ-EPE、および18R-ヒドロキシ-EPE(18R-HEPE);ならびにレゾルビンE2(5S,18R-ジヒドロキシ-EPEまたは5S,18R-ジHEPE)およびその中間体が含まれる。これらのEPA誘導体の構造については、図13を参照されたい。EPA由来オキシリピンはSerhan (2005)に詳述されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0078】
エイコサトリエン酸(ETrA)由来オキシリピン
本発明において有用なエイコサトリエン酸由来のオキシリピンには、これらに限定されないが、6-ヒドロキシエイコサトリエン酸;6,12-ジヒドロキシエイコサン酸 11,18-ジヒドロキシ-エイコサトリエン酸、およびその類似体、誘導体、または塩が含まれる。これらのエイコサノイドの構造については、以下の図29〜31を参照されたい。エイコサトリエン酸に由来し、かつ本発明において有用なさらなるエイコサノイドには、これらに限定されないが、5-ヒドロキシエイコサトリエン酸;6-ヒドロキシエイコサトリエン酸;8-ヒドロキシエイコサトリエン酸;11-ヒドロキシエイコサトリエン酸;15-ヒドロキシエイコサトリエン酸;18-ヒドロキシエイコサトリエン酸;6,12-ジヒドロキシエイコサン酸 11,18-ジヒドロキシ-エイコサトリエン酸;8,15-ジヒドロキシエイコサン酸;およびその類似体、誘導体、または塩が含まれる。
【0079】
DHA由来オキシリピン
本発明において有用なDHA由来のオキシリピンには、これらに限定されないが、レゾルビンD1(7,8,17R-トリヒドロキシDHA)およびレゾルビンD2(7,16,17R-トリヒドロキシDHA)、加えてそれらのSエピマー、ならびに17S/R-ヒドロペルオキシDHA、および7S-ヒドロペルオキシ,17S/R-OH-DHA、および7(8)-エポキシ-17S/R-OH-DHAを含むそれらの中間体;レゾルビンD4(4,5,17R-トリヒドロキシDHA)およびレゾルビンD3(4,11,17RトリヒドロキシDHA)、加えてそれらのSエピマー、ならびに17S/R-ヒドロペルオキシDHA、および4S-ヒドロペルオキシ,17S/R-OH DHA、および4(5)-エポキシ-17S/R-OH DHAを含むそれらの中間体;ならびにニューロプロテクチンD1(10,17S-ドコサトリエン、プロテクチンD1)、加えてそのRエピマー、ならびにジヒドロキシ生成物16,17-エポキシ-ドコサトリエン(16,17-エポキシ-DT)およびヒドロペルオキシ生成物17S-ヒドロペルオキシDHAを含むそれらの中間体;レゾルビンD5(7S,17S-ジヒドロキシDHA)およびレゾルビンD6ならびにそれらのヒドロキシル含有中間体;ならびにエポキシド誘導体7,8エポキシDPA、10,11-エポキシDPA、13,14-エポキシDPA、および19,20-エポキシDPA、ならびにジヒドロキシ誘導体13,14-ジヒドロキシドコサペンタエン酸;7-ヒドロキシDHA、10-ヒドロキシDHA、11-ヒドロキシDHA、13-ヒドロキシDHA、14-ヒドロキシDHA、16-ヒドロキシDHA、および17-ヒドロキシDHAのRおよびSエピマーを含むその他のモノヒドロキシDHA誘導体;ならびに10,20-ジヒドロキシDHA、7,14-ジヒドロキシDHA、および8,14-ジヒドロキシDHAのRおよびSエピマーを含むその他のジヒドロキシDHA誘導体が含まれる。これらのDHA誘導体の説明および構造については、以下の実施例2、7、および10、ならびに図2A〜2D、図7、図10、および図14AおよびBを参照されたい。DHA由来オキシリピンはSerhan (2005)およびYe et al (2002)に詳述されており、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0080】
DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、およびDTrAn-3由来オキシリピン、ならびにC22脂肪酸由来のその他の新規ドコサノイド
本発明の1つの態様は、DPAn-6、DTAn-6、DPA-n-3、DDAn-6、および/またはDTrAn-3に由来する新規オキシリピンに関する。本発明の別の態様は、C22 PUFAに由来し得る新規ドコサノイドに関する。具体的には、本発明者らは本明細書において、その構造がC22脂肪酸構造から新たに設計された新規ドコサノイドについて記載する。本発明により包含されるオキシリピンには、DTrAn-3、DDAn-6、DPAn-6、DTAn-6、もしくはDPAn-3に由来するか、または一般にC22脂肪酸に由来し、より詳細には本明細書においてドコサノイドと記載される任意のオキシリピンが含まれる。新規ドコサノイドには、DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3の任意の酸化誘導体、またはC22脂肪酸の任意の他の新規酸化誘導体(例えば、図23を参照されたい)、加えてそれらの任意の誘導体または類似体が含まれる。詳細には、本発明のドコサノイドには、これらに限定されないが、DPAn-6、DTAn-6、DDAn-6、DPAn-3、DTrAn-3、または任意の他のC22脂肪酸のいずれかの任意のモノヒドロキシ、ジヒドロキシ、またはトリヒドロキシ誘導体の任意のRもしくはSエピマーまたはR/SもしくはS/Rエピマー(またはそれらの他の組み合わせ)が含まれ、このドコサノイドは、参照LCPUFA中の炭素-炭素二重結合を形成する任意の炭素において誘導体化を含み得る。本発明のドコサノイドには、DPAn-6、DTAn-6、DDAn-6、DPAn-3、またはDTrAn-3を基質として使用し、かつこれらに限定されないが、表1に記載するような(以下を参照されたい)リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、シトクロムP450酵素、およびその他のヘム含有酵素を含むオキシリピン生成酵素によって触媒される酵素反応の任意の生成物もまた含まれる。表1に、酵素の正式名称、正式記号、別名、生物、および/または配列データベースアクセッション番号を含め、列挙した公知の酵素を同定するのに十分な情報を提供する。
【0081】
(表1)本明細書に記載の方法によりヒドロキシ脂肪酸誘導体を産生する目的でLCPUFA油および脂肪酸を処理するために用いられ得るリポキシゲナーゼ(LOX)、シクロオキシゲナーゼ(COX)、シトクロムP450(CYP)酵素、およびその他のヘム含有酵素。






【0082】
a) DPAn-6由来オキシリピン
DPAn-6由来オキシリピン(DPAn-6由来のオキシリピン、またはより詳細にはDPAn-6由来のドコサノイドとも称する)には、これらに限定されないが、DPAn-6の任意のモノヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、または多ヒドロキシ誘導体の任意のRもしくはSエピマーまたはR/SもしくはS/Rエピマー(またはそれらの他の組み合わせ)が含まれ、このオキシリピンは、DPAn-6中の炭素-炭素二重結合を形成する任意の炭素においてヒドロキシ誘導体化を含み得る。本発明のいくつかの例示的な新規DPAn-6由来オキシリピンには、これらに限定されないが、7-ヒドロキシDPAn-6、8-ヒドロキシDPAn-6、10-ヒドロキシDPAn-6、11-ヒドロキシDPAn-6、13-ヒドロキシDPAn-6、14-ヒドロキシDPAn-6、および17-ヒドロキシDPAn-6(特に17-ヒドロキシDPAn-6)を含む、DPAn-6のモノヒドロキシ生成物のRおよびSエピマー、R/SまたはS/Rエピマー(またはそれらの他の組み合わせ);7,17-ジヒドロキシDPAn-6、10,17-ジヒドロキシDPAn-6、13,17-ジヒドロキシDPAn-6、7,14-ジヒドロキシDPAn-6、8,14-ジヒドロキシDPAn-6、16,17-ジヒドロキシDPAn-6、および4,5-ジヒドロキシDPAn-6(特に10,17-ヒドロキシDPAn-6)を含む、DPAn-6のジヒドロキシ誘導体のRおよびSエピマー;ならびに7,16,17-トリヒドロキシDPAn-6および4,5,17-トリヒドロキシDPAn-6のRおよびSエピマーを含む、DPAn-6のトリヒドロキシ誘導体が含まれる。DPAn-6オキシリピンの構造を、実施例3、6、8、および11、ならびに図3A〜3D、図6、図8、図11、および図15に記載および/または表示する。
【0083】
DPAn-6の酵素(15-リポキシゲナーゼ、5-リポキシゲナーゼ、12-リポキシゲナーゼ、およびヘモグロビン)変換の種々のドコサノイド生成物の構造を、実施例3、6、8、および11に示す。これらのDPAn-6誘導体は、同じ酵素を使用した場合にDHA(実施例2、7、および10)およびDPAn-3(実施例4、9、および12)から産生される誘導体と構造的に類似している。
【0084】
実施例3〜12は、DPAn-6、およびDHA、DPAn-3、DTAn-6からのドコサノイド生成物の産生を実証しており、実施例13は、DHA/DPAn-6 LCPUFA油中に認められるオキシリピン(ドコサノイド)生成物について記載している。
【0085】
b) DPAn-3由来オキシリピン
DPAn-3由来オキシリピン(DPAn-3由来のオキシリピン、またはより詳細にはDPAn-3由来のドコサノイドとも称する)には、これらに限定されないが、DPAn-3の任意のモノヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、または多ヒドロキシ誘導体の任意のRもしくはSエピマーまたはR/SもしくはS/Rエピマー(またはそれらの他の組み合わせ)が含まれ、このオキシリピンは、DPAn-3中の炭素-炭素二重結合を形成する任意の炭素においてヒドロキシ誘導体化を含み得る。本発明のいくつかの例示的な新規DPAn-3由来オキシリピンには、これらに限定されないが、7-ヒドロキシDPAn-3、10-ヒドロキシDPAn-3、11-ヒドロキシDPAn-3、13-ヒドロキシDPAn-3、14-ヒドロキシDPAn-3、16-ヒドロキシDPAn-3、および17-ヒドロキシDPAn-3を含む、DPAn-3のモノヒドロキシ生成物のRおよびSエピマー;7,17-ジヒドロキシDPAn-3、10,17-ジヒドロキシDPAn-3、8,14-ジヒドロキシDPAn-3、16,17-ジヒドロキシDPAn-3、13,20-ジヒドロキシDPAn-3、および10,20-ジヒドロキシDPAn-3を含む、DPAn-3のジヒドロキシ誘導体のRおよびSエピマー;ならびに7,16,17-トリヒドロキシDPAn-3のRおよびSエピマーを含む、DPAn-3のトリヒドロキシ誘導体が含まれる。DPAn-3オキシリピンの構造を、実施例4、9、および12、ならびに図4A〜4D、図9、図12、および図16に記載および/または表示する。
【0086】
c) DTAn-6由来オキシリピン
DTAn-6由来オキシリピン(DTAn-6由来のオキシリピン、またはより詳細にはDTAn-6由来のドコサノイドとも称する)には、これらに限定されないが、DTAn-6の任意のモノヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、または多ヒドロキシ誘導体の任意のRもしくはSエピマーまたはR/SもしくはS/Rエピマー(またはそれらの他の組み合わせ)が含まれ、このオキシリピンは、DTAn-6中の炭素-炭素二重結合を形成する任意の炭素においてヒドロキシ誘導体化を含み得る。本発明のいくつかの例示的な新規DTAn-6由来オキシリピンには、これらに限定されないが、7-ヒドロキシDTAn-6、10-ヒドロキシDTAn-6、13-ヒドロキシDTAn-6、および17-ヒドロキシDTAn-6を含む、DTAn-6のモノヒドロキシ生成物のRおよびSエピマー;7,17-ジヒドロキシDTAn-6、10,17-ジヒドロキシDTAn-6、および16,17-ジヒドロキシDTAn-6を含む、DTAn-6のジヒドロキシ誘導体のRおよびSエピマー;ならびに7,16,17-トリヒドロキシDTAn-6のRおよびSエピマーを含む、DTAn-6のトリヒドロキシ誘導体が含まれる。DTAn-6オキシリピンの構造を、実施例5、ならびに図5A〜5Cおよび図17に記載および/または表示する。
【0087】
d) DTrAn-3由来オキシリピン
ドコサトリエン酸由来オキシリピン(ドコサトリエン酸由来のオキシリピン、またはより詳細にはドコサトリエン酸由来のドコサノイドとも称する)には、これらに限定されないが、ドコサトリエン酸の任意のモノヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、または多ヒドロキシ誘導体の任意のRもしくはSエピマーまたは任意のR/SもしくはS/Rエピマー(またはそれらの他の組み合わせ)が含まれ、このオキシリピンは、ドコサトリエン酸の炭素-炭素二重結合を形成する任意の炭素においてヒドロキシ誘導体化を含み得る。本発明のいくつかの例示的な新規ドコサトリエン酸由来オキシリピンには、これらに限定されないが、13-ヒドロキシドコサトリエン酸:17-ヒドロキシドコサトリエン酸:20-ヒドロキシドコサトリエン酸、および13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサトリエン酸を含む、ドコサトリエン酸のモノヒドロキシ生成物のRおよびSエピマーが含まれる。ドコサトリエン酸オキシリピンの構造を、実施例18〜20および図24〜26に記載および/または表示する。
【0088】
e) DDAn-6由来オキシリピン
ドコサジエン酸由来オキシリピン(ドコサジエン酸由来のオキシリピン、またはより詳細にはドコサジエン酸由来のドコサノイドとも称する)には、これらに限定されないが、ドコサジエン酸の任意のモノヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、または多ヒドロキシ誘導体の任意のRもしくはSエピマーまたはR/SもしくはS/Rエピマー(またはそれらの他の組み合わせ)が含まれ、このオキシリピンは、ドコサジエン酸の炭素-炭素二重結合を形成する任意の炭素においてヒドロキシ誘導体化を含み得る。本発明のいくつかの例示的な新規ドコサジエン酸由来オキシリピンには、これらに限定されないが、17-ヒドロキシドコサジエン酸;13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸、15,16-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸を含む、ドコサジエン酸のモノヒドロキシ生成物のRおよびSエピマー;および13,16-ジヒドロキシドコサジエン酸が含まれる。DDAn-3オキシリピンの構造を、実施例21〜22および図27〜28に記載および/または表示する。
【0089】
f) さらなるC22-PUFA由来オキシリピン
その他のC22-PUFA由来オキシリピン(C22-PUFA由来のオキシリピン、またはより詳細にはC22-PUFA由来のドコサノイドとも称する)には、これらに限定されないが、C22-PUFAの任意のモノヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、または多ヒドロキシ誘導体の任意のRもしくはSエピマーまたはR/SもしくはS/Rエピマー(またはそれらの他の組み合わせ)が含まれ、このオキシリピンは、C22-PUFA中の炭素-炭素二重結合を形成する任意の炭素においてヒドロキシ誘導体化を含み得る。本発明により包含されるいくつかの例示的な新規ドコサノイドには、これらに限定されないが、4,5-エポキシ-17-ヒドロキシDPA、7,8-エポキシDHA、10,11-エポキシDHA、13,14-エポキシDHA、19,20-エポキシDHA、13,14-ジヒドロキシDHA、16,17-ジヒドロキシDTAn-6、7,16,17-トリヒドロキシDTAn-6、4,5,17-トリヒドロキシDTAn-6、7,16,17-トリヒドロキシDTAn-3、16,17-ジヒドロキシDTAn-3、16,17-ジヒドロキシDTRAn-6、7,16,17-トリヒドロキシDTRAn-6、4,5-ジヒドロキシDTAn-6、および10,16,17-トリヒドロキシDTRAn-6が含まれる。これらのC22-PUFA由来ドコサノイドの構造を図23に示す。
【0090】
本発明のDPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DtrAn-3、ETrAn-9、またはETrAn-3由来オキシリピン、またはその他のC22-PUFA由来およびC20-PUFA由来オキシリピン、ならびに本発明のそのようなオキシリピンのいずれかの類似体または誘導体は、新規合成または基質の酵素変換を含む化学合成または生物学的合成により産生され得る。または、そのようなオキシリピンは、天然源を元にした単離、強化、および/または基質の変換により産生され得る(以下に記載する)。本発明によれば、例えば「DPAn-6由来オキシリピン」または「DPAn-6オキシリピン誘導体」もしくは「DPAn-6オキシリピン類似体」などの特定のLCPUFA「由来の」オキシリピンとは、DPAn-6を基質として用いて産生され得るオキシリピンの構造の知見を使用して、任意の方法によって産生されたオキシリピンを指す。そのようなオキシリピンは、酵素反応または生物系により産生される必要はなく、上記したように、その代わりとして新たに化学合成することができる。さらに、天然DPAn-6オキシリピンの類似体または誘導体を、天然DPAn-6オキシリピンの構造に基づいて設計することができるが、これらは天然DPAn-6オキシリピンと少なくとも1つの修飾ぶんだけ異なる。このような類似体もまた、化学合成法を用いて新たに合成され得るか、または生物学的産生法(例えば、酵素反応)の修飾により合成され得る。このようなオキシリピンの天然源を強化する方法および基質の酵素変換による方法を含め、本発明によるオキシリピンの産生方法を、本明細書に記載する。オキシリピンなどの化合物の化学合成法もまた当技術分野において公知であり、本発明の新規オキシリピン化合物に容易に適用することができる。そのような方法もまた本明細書に記載する。
【0091】
本発明によれば、「ドコサノイド様化合物」または「ドコサノイド類似体」または「ドコサノイド誘導体」という用語は、少なくとも2つのオレフィン基(炭素-炭素二重結合)を有するC22脂肪酸を含む本発明の新規ドコサノイドのいずれかをはじめとする、本明細書に記載の任意のドコサノイドの類似体を含むことが意図される。同様に、「エイコサノイド様化合物」または「エイコサノイド類似体」または「エイコサノイド誘導体」という用語は、少なくとも3つのオレフィン基(炭素-炭素二重結合)を有するC20脂肪酸を含む本発明の新規エイコサノイドのいずれかをはじめとする、本明細書に記載の任意のドコサノイドの類似体を含むことが意図される。同様の用語を用いて、本明細書に記載の任意のオキシリピンの類似体および誘導体をより一般的に説明することもできる(例えば、オキシリピン様化合物、オキシリピン類似体、オキシリピン誘導体)。
【0092】
本明細書で用いる「類似体」という用語は、別の化合物と構造的に類似しているが、わずかに組成が異なる化合物を指す(1つの原子の、異なる元素の原子によるかもしくは特定の官能基の存在下における置換、または1つの官能基の別の官能基による置換など)。したがって、類似体とは、参照化合物と機能および様相は類似しているまたは匹敵するが、構造または起源に関してはそうではない化合物である。例えば、参照化合物は、DHA、DPAn-6、DPAn-3、またはDTAn-6由来の任意のドコサノイドのような参照ドコサノイドであってよく、類似体は、参照ドコサノイドと類似の化学構造または化学的特性を有する物質である。
【0093】
「置換された」、「置換誘導体」、および「誘導体」という用語は、本発明の化合物を説明するために用いる場合、非置換化合物に結合している少なくとも1つの水素が、異なる原子または化学部分により置換されることを意味する。置換基の例には、これらに限定されないが、ヒドロキシ、アルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、複素環、アリール、ヘテロアリール、アミノ、アミド、エステル、エーテル、カルボン酸、チオール、チオエステル、チオエーテル、スルホキシド、スルホン、カルバメート、ぺプチジル、PO3H2、およびこれらの混合物が含まれる。
【0094】
誘導体は親化合物と類似の物理的構造を有するが、誘導体は親化合物とは異なる化学的および/または生物学的特性を有し得る。このような特性には、これらに限定されないが、親化合物の活性の増強もしくは減少、親化合物と比較した場合の新規活性、生物学的利用能の増強もしくは減少、有効性の増強もしくは減少、インビトロおよび/もしくはインビボにおける安定性の増強もしくは減少、ならびに/または吸収特性の増強もしくは減少が含まれ得る。
【0095】
当業者であれば、キラル中心を有する本発明の化合物が、光学活性体およびラセミ体として存在し得るおよび単離され得ることを理解するであろう。いくつかの化合物は多形を示し得る。本発明が、本明細書に記載の有用な特性を有する、本発明の化合物の任意のラセミ体、光学活性体、多形体、もしくは立体異性体、またはこれらの混合物を包含することが理解されるべきであり、光学活性体を調製する方法(例えば、再結晶技法によるラセミ体の分割、光学活性な出発材料からの合成、キラル合成、またはキラル固定相を用いるクロマトグラフィー分離による)、および例えば本明細書に記載の標準的な試験を用いて、または当技術分野で周知であるその他の同様の試験を用いて抗炎症活性を決定する方法については、当技術分野において周知である。したがって、本発明は、任意のRエピマー、Sエピマー、ならびに、これらに限定されないがR/Sエピマー、S/Rエピマー、R/Rエピマー、およびS/Sエピマーを含む、2つの不斉中心を有する任意の化合物を含む。RエピマーまたはSエピマーへの一般的参照は、非対称性および対称性のキラル中心のすべての組み合わせを網羅することが意図される。
【0096】
本明細書に記載のオキシリピンのいずれか、詳細には本明細書に記載のドコサノイドまたはエイコサノイドのいずれか、さらにより詳細には例えば図2A〜2D、3A〜3D、4A〜4D、5A〜5C、6〜17、18A〜18C、および23〜31のいずれかに示すような任意の特定のドコサノイドまたはエイコサノイドのプロドラッグは、当技術分野において公知の慣用的技法を用いて同定され得る。種々の形態のプロドラッグが、当技術分野において公知である。そのようなプロドラッグ誘導体の例については、例えば、a) Design of Prodrugs、H. Bundgaard編、(Elsevier, 1985)、およびMethods in Enzymology, Vol. 42, p. 309-396、K. Widder, et al.編 (Academic Press, 1985);b) A Textbook of Drug Design and Development、Krogsgaard-Larsen and H. Bundgaard編、Chapter 5 「Design and Application of Prodrugs,」H. Bundgaard p. 113-191 (1991);c) H. Bundgaard, Advanced Drug Delivery Reviews, 8, 1-38 (1992);d) H. Bundgaard, et al., Journal of Pharmaceutical Sciences, 77:285 (1988);およびe) N. Kakeya, et al., Chem. Pharm. Bull., 32: 692 (1984)を参照されたい(それぞれ参照により本明細書に明確に組み入れられる)。
【0097】
さらに本発明は、本明細書に記載のオキシリピンのいずれか、詳細には本明細書に記載のドコサノイドまたはエイコサノイドのいずれか、さらにより詳細には例えば図2A〜2D、3A〜3D、4A〜4D、5A〜5C、6〜17、18A〜18C、および23〜31のいずれかに示すような任意の特定のドコサノイドまたはエイコサノイドの溶媒和物、代謝産物、および塩(好ましくは、薬学的に許容される塩)もまた含む。
【0098】
「溶媒和物」という用語は、分子と1つまたは複数の溶媒分子との凝集体を指す。「代謝産物」とは、特定の化合物またはその塩の、体内または生物内におけるインビボ代謝により産生された薬理学的活性のある生成物である。そのような生成物は、例えば、投与または産生された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素切断などにより生じ得る。したがって本発明は、本明細書に記載のオキシリピンのいずれか、詳細には本明細書に記載のドコサノイドまたはエイコサノイドのいずれか、さらにより詳細には例えば図2A〜2D、3A〜3D、4A〜4D、5A〜5C、6〜17、18A〜18C、および23〜31のいずれかに示すような任意の特定のドコサノイドまたはエイコサノイドの化合物の代謝産物、加えて本発明の化合物と生物をその代謝産物が生じるのに十分な時間接触させる段階を含む工程によって産生された化合物を含む。
【0099】
本明細書で用いる「薬学的に許容される塩」または「塩」には、特定の化合物の遊離酸および遊離塩基の生物学的有効性を保持し、かつ生物学的にまたはその他の点で有害でない塩が含まれる。本発明の化合物は、十分な酸性官能基、十分な塩基性官能基、またはそれら両官能基を有し得、したがって多くの無機または有機塩基、ならびに無機および有機酸のいずれかと反応して、薬学的に許容される塩を形成し得る。薬学的に許容される塩の例には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオン酸塩、ヘキシン-1,6-ジオン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、およびマンデル酸塩を含む塩などの、本発明の化合物と無機もしくは有機酸または無機塩基との反応により調製された塩が含まれる。本発明の単一化合物は1つを超える酸性または塩基性部分を含み得るため、本発明の化合物は、単一化合物中にモノ塩、ジ塩、またはトリ塩を含み得る。
【0100】
本発明の化合物が塩基である場合、所望の薬学的に許容される塩は、当技術分野において利用可能な任意の適切な方法、例えば酸性化合物、特に塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸による、または酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸などの有機酸、グルクロン酸もしくはガラクツロン酸などのピラノシド酸、クエン酸もしくは酒石酸などのアルファヒドロキシ酸、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸もしくはケイ皮酸などの芳香族酸、p-トルエンスルホン酸もしくはエタンスルホン酸などのスルホン酸などによる遊離塩基の処置によって調製され得る。
【0101】
本発明の化合物が酸である場合、所望の薬学的に許容される塩は、任意の適切な方法、例えば無機または有機塩基による遊離酸の処置によって調製され得る。好ましい無機塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、バリウム、およびカルシウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属により形成されるものである。好ましい有機塩基塩には、例えば、アンモニウム、ジベンジルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、2-ヒドロキシエチルアンモニウム、ビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム、フェニルエチルベンジルアミン、ジベンジルエチレンジアミンなどの塩が含まれる。酸性部分の他の塩には、例えば、プロカイン、キニーネ、およびN-メチルグルソアミンにより形成される塩、さらにグリシン、オルニチン、ヒスチジン、フェニルグリシン、リジン、およびアルギニンなどの塩基性アミノ酸により形成される塩が含まれ得る。
【0102】
DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、もしくはETrAn-3、他のC22-LCPUFA、他のLCPUFA、および/またはそれら由来のオキシリピンを含有する油、組成物、製剤、または生成物
本発明は、本明細書に記載のLCPUFAおよび/またはLCPUFAオキシリピンを含む油、組成物、製剤、および生成物を含む。本発明によれば、「生成物」という用語は、本発明の任意の油、組成物、または製剤を一般的にまたは総称して説明するために用い得るが、生成物の使用の状況に応じて1つの用語は別の用語よりも好ましいと考えられる。本発明の1つの態様において、油、組成物、および製剤は、少なくともDPAn-6、DTAn-6、もしくはDPAn-3、またはそれら由来のオキシリピン、またはそれらの組み合わせを含み、任意の他のLCPUFAおよび/またはそれ由来の任意のオキシリピンをさらに含んでもよい。そのようなオキシリピンは、新規合成、任意の供給源からの酵素変換(例えば、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、シトクロムP450酵素、および他のヘム含有酵素を含む酵素による)、任意の供給源からの精製、および任意の生物学的供給源(例えば、細菌、植物、動物源)からの産生を含む、任意の化学的または生物学的(生体)方法により産生され得る。
【0103】
本発明の1つの態様において、油は任意のLCPUFA由来オキシリピン(LCPUFAオキシリピンとしても知られる)の存在に関して強化され、このオキシリピンには、DHA、EPA、DPAn-6、DTAn-6、および/またはDPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、またはETrAn-3由来の任意のオキシリピンが含まれるが、DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、またはETrAn-3由来のオキシリピンが特に好ましい。別の態様において、任意のLCPUFA由来オキシリピンを含有する油、組成物、または製剤は、油、組成物、または製剤中のLCPUFAオキシリピンの安定性、吸収、生物活性、生物学的利用能、または有効性を保持および/または改善するように産生、処理、または処置される。油、組成物、または製剤を産生、処理、および補充する種々の方法を以下に記載する。
【0104】
本発明において使用するためのLCPUFAおよびLCPUFA由来オキシリピンの供給源
例えば、動物(無脊椎動物および脊椎動物)、植物、および細菌源を含むLCPUFAの任意の供給源を用いて、本発明のLCPUFA、オキシリピン、油、組成物、または製剤を生成することができる。
【0105】
動物源の例には、水生動物(例えば、魚類、海洋哺乳動物、ならびにオキアミおよびその他のオキアミ目などの甲殻類)および動物組織(例えば、脳、肝臓、眼など)から抽出された脂質が含まれる。
【0106】
より好ましい供給源には、微生物および植物が含まれる。LCPUFAの好ましい細菌源には、藻類、菌類(酵母およびモルティエレラ(Mortierella)属の糸状菌を含む)、原生生物、およびバクテリアが含まれる。藻類などの微生物源の使用は官能的利点を提供し得、すなわち微生物源由来の脂肪酸は魚臭い味がせず、魚を供給源とする脂肪酸が有する傾向のある臭いがしないと考えられる。しかしながら、魚油もまた本発明に含まれる。魚油は、そのような魚油に悪臭および嫌な味を付与するアルデヒドおよびケトンを生じる酸化過程を自然に起こし得るが、本発明では、特定の化合物の「指向性」または「標的化」酸化を活用して、魚油をはじめとするそのようなドコサノイドを含有する油に有益な質を提供するドコサノイドまたはドコサノイド混合物を産生する。好ましい態様においては、DHAおよび/またはEPA、ならびにDPAn-6、DTAn-6、および/またはDPAn-3を含有する魚油が本発明において用いられる。バクテリア源の例には、シェワネラ(Shewanella)属およびビブリオ(Vibrio)属のメンバーなどの海洋バクテリア源が含まれる。
【0107】
最も好ましくは、LCPUFA供給源は藻類または原生生物を含む。好ましい藻類属および原生生物属はストラメノパイル(Stramenopila)界のメンバーであり、より好ましくは藻類群:渦鞭毛藻類、珪藻類、黄藻植物、またはトラウストキトリドのメンバーである。
【0108】
好ましくは、渦鞭毛藻類はクリプテコディニウム(Crypthecodinium)属のメンバーであり、さらにより好ましくはクリプテコディニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)種のメンバーである。
【0109】
本発明によると、「トラウストキトリド」という用語は、ヤブレツボカビ科(Thraustochytriaceae)を含むヤブレツボカビ目(Thraustochytriales)の任意のメンバーを指し、「ラビリンチュリド(Labyrinthulid)」という用語は、ラビリンチュラ科(Labyrinthulaceae)を含むラビリンチュラ目(Labyrinthulales)の任意のメンバーを指す。ラビリンチュラ科のメンバーはヤブレツボカビ目のメンバーであると見なされてきたが、そのような生物の分類の改訂において、現在ではこの科はラビリンチュラ目のメンバーと見なされており、ラビリンチュラ目およびヤブレツボカビ目のいずれも、ラビリンチュラ菌門(Labyrinthulomycota)のメンバーであると見なされている。
【0110】
進展により、トラウストキトリドの分類が頻繁に改訂された。分類理論学者らは一般に、トラウストキトリドを藻類または藻類様原生生物と共に位置づけている。しかしながら、分類学上の不確かさのために、本発明に記載の株を、以下の生物を含めたトラウストキトリドと見なすことが本発明の目的にとって最良であると思われる:目:ヤブレツボカビ目;科:ヤブレツボカビ科;属:ヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)(種:種、アルジメンタレ(arudimentale)、アウレウム(aureum)、ベンチコラ(benthicola)、グロボスム(globosum)、キンネイ(kinnei)、モチブム(motivum)、ムルチルジメンタレ(multirudimentale)、パキデルマム(pachydermum)、プロリフェルム(proliferum)、ロゼウム(roseum)、ストリアツム(striatum))、ウルケニア属(Ulkenia)(以前はヤブレツボカビ属のメンバーであると見なす者もいた)(種:種、アモエボイデア(amoeboidea)、ケルグエレンシス(kerguelensis)、ミヌタ(minuta)、プロフンダ(profunda)、ラジアタ(radiata)、サイレンズ(sailens)、サルカリアナ(sarkariana)、シゾキトロプス(schizochytrops)、ビスルゲンシス(visurgensis)、およびヨーケンシス(yorkensis))、シゾキトリウム属(Schizochytrium)(種:種、アグレガツム(aggregatum)、リムナセウム(limnaceum)、マングロベイ(mangrovei)、ミヌツム(minutum)、オクトスポルム(octosporum))、ジャポノキトリウム属(Japonochytrium)(種:種、マリヌム(marinum))、アプラノキトリウム属(Aplanochytrium)(種:種、ハリオチジス(haliotidis)、ケルグエレンシス(kerguelensis)、プロフンダ(profunda)、ストッキノイ(stocchinoi))、アルソルニア属(Althornia)(種:種、クロウチイ(crouchii))、またはエリナ属(Elina)(種:種、マリサルバ(marisalba)、シノリフィカ(sinorifica))。本発明においてラビリンチュリドとして記載される株には、以下の生物が含まれる:目:ラビリンチュラ目;科:ラビリンチュラ科;属:ラビリンチュラ属(Labyrinthula)(種:種、アルゲリエンシス(algeriensis)、コエノシスティス(coenocystis)、チャットニイ(chattonii)、マクロシスティス(macrocystis)、マクロシスティス・アトランティカ(macrocystis atlantica)、マクロシスティス・マクロシスティス(macrocystis macrocystis)、マリナ(marina)、ミヌタ(minuta)、ロスコフェンシス(roscoffensis)、バルカノビイ(valkanovii)、ビテリナ(vitellina)、ビテリナ・パシフィカ(vitellina pacifica)、ビテリナ・ビテリナ(vitellina vitellina)、ゾプフィイ(zopfii))、ラビリンチュロイデス属(Labyrinthuloides)(種:種、ハリオチジス(haliotidis)、ヨーケンシス(yorkensis))、ラビリントミキサ属(Labyrinthomyxa)(種:種、マリナ(marina))、ディプロフリス属(Diplophrys)(種:種、アルケリ(archeri))、ピュロソルス属(Pyrrhosorus)(種:種、マリヌス(marinus))、ソロディプロフリス属(Sorodiplophrys)(種:種、ステルコレア(stercorea))、またはクラミドミクサ属(Chlamydomyxa)(種:種、ラビリンチュロイデス(labyrinthuloides)、モンタナ(montana))(しかし、現在のところ、ピュロソルス属、ソロディプロフリス属、およびクラミドミクサ属の分類学上の正確な位置づけに合意は得られていない)。
【0111】
本発明の時点で、トラウストキトリドの分類における改訂により、ラビリンチュロイデス属がラビリンチュラ科に位置づけられ、ヤブレツボカビ科およびラビリンチュラ科の2つの科のストラメノパイル系統内への位置づけが承認されることが認識されている。ラビリンチュラ科は場合により俗にラビリンチュリドまたはラビリンチュラ(labyrinthula)またはラビリンチュロイデス(labyrinthuloides)と称され、ヤブレツボカビ科は俗にトラウストキトリドと称されることに留意されたい。
【0112】
本発明において使用するための特に好ましいLCPUFAおよびオキシリピン供給源には、これらに限定されないが、ヤブレツボカビ科のヤブレツボカビ属、ジャポノキトリウム属、アプラノキトリウム属、エリナ属、およびシゾキトリウム属、ならびにラビリンチュラ科のラビリンチュラ属、ラビリンチュロイデス属、およびラビリントミキサ属を含む属に由来する微生物が含まれる。これらの属内の好ましい種には、これらに限定されないが以下のものが含まれる:ラビリンチュラ種、ラビリンチュラ・アルゲリエンシス(Labyrinthula algeriensis)、ラビリンチュラ・シエンコウスキイ(Labyrinthula cienkowskii)、ラビリンチュラ・チャットニイ(Labyrinthula chattonii)、ラビリンチュラ・コエノシスティス(Labyrinthula coenocystis)、ラビリンチュラ・マクロシスティス(Labyrinthula macrocystis)、ラビリンチュラ・マクロシスティス・アトランティカ(Labyrinthula macrocystis atlantica)、ラビリンチュラ・マクロシスティス・マクロシスティス(Labyrinthula macrocystis macrocystis)、ラビリンチュラ・マグニフィカ(Labyrinthula magnifica)、ラビリンチュラ・ミヌタ(Labyrinthula minuta)、ラビリンチュラ・ロスコフェンシス(Labyrinthula roscoffensis)、ラビリンチュラ・バルカノビイ(Labyrinthula valkanovii)、ラビリンチュラ・ビテリナ(Labyrinthula vitellina)、ラビリンチュラ・ビテリナ・パシフィカ(Labyrinthula vitellina pacifica)、ラビリンチュラ・ビテリナ・ビテリナ(Labyrinthula vitellina vitellina)、ラビリンチュラ・ゾプフィイ(Labyrinthula zopfii)を含むラビリンチュラ種内の任意の種;ラビリンチュロイデス種、ラビリンチュロイデス・ミヌタ(Labyrinthuloides minuta)、ラビリンチュロイデス・シゾキトロプス(Labyrinthuloides schizochytrops)を含む任意のラビリンチュロイデス種;ラビリントミキサ種、ラビリントミキサ・ポーリア(Labyrinthomyxa pohlia)、ラビリントミキサ・サウバゲアウイ(Labyrinthomyxa sauvageaui)を含む任意のラビリントミキサ種、アプラノキトリウム種およびアプラノキトリウム・ケルグエレンシス(Aplanochytrium kerguelensis)を含む任意のアプラノキトリウム種;エリナ種、エリナ・マリサルバ(Elina marisalba)、エリナ・シノリフィカ(Elina sinorifica)を含む任意のエリナ種;ジャポノキトリウム種、ジャポノキトリウム・マリヌム(Japonochytrium marinum)を含む任意のジャポノキトリウム種;シゾキトリウム種、シゾキトリウム・アグレガツム(Schizochytrium aggregatum)、シゾキトリウム・リマシヌム(Schizochytrium limacinum)、シゾキトリウム・ミヌツム(Schizochytrium minutum)、シゾキトリウム・オクトスポルム(Schizochytrium octosporum)を含む任意のシゾキトリウム種;ならびにヤブレツボカビ種、トラウストキトリウム・アグレガツム(Thraustochytrium aggregatum)、トラウストキトリウム・アルジメンタレ(Thraustochytrium arudimentale)、トラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)、トラウストキトリウム・ベンチコラ(Thraustochytrium benthicola)、トラウストキトリウム・グロボスム(Thraustochytrium globosum)、トラウストキトリウム・キンネイ(Thraustochytrium kinnei)、トラウストキトリウム・モチブム(Thraustochytrium motivum)、トラウストキトリウム・パキデルマム(Thraustochytrium pachydermum)、トラウストキトリウム・プロリフェルム(Thraustochytrium proliferum)、トラウストキトリウム・ロゼウム(Thraustochytrium roseum)、トラウストキトリウム・ストリアツム(Thraustochytrium striatum)、ウルケニア種、ウルケニア・ミヌタ(Ulkenia minuta)、ウルケニア・プロフンダ(Ulkenia profunda)、ウルケニア・ラジアテ(Ulkenia radiate)、ウルケニア・サルカリアナ(Ulkenia sarkariana)、およびウルケニア・ビスルゲンシス(Ulkenia visurgensis)を含む任意のヤブレツボカビ種。これらの属内で特に好ましい種には、これらに限定されないが以下のものが含まれる:シゾキトリウム・アグレガツム、シゾキトリウム・リマシヌム、シゾキトリウム・ミヌツムを含む任意のシゾキトリウム種;またはトラウストキトリウム・ストリアツム、トラウストキトリウム・アウレウム、トラウストキトリウム・ロゼウムを含む任意のトラウストキトリウム種(U. ビスルゲンシス、U. アモエボイダ(U. amoeboida)、U. サルカリアナ、U. プロフンダ、U. ラジアタ(U. radiata)、U. ミヌタ、およびウルケニア種BP-5601のような以前のウルケニア種を含む);および任意のジャポノキトリウム種。ヤブレツボカビ目の特に好ましい株には、これらに限定されないが以下のものが含まれる:シゾキトリウム種(S31)(ATCC 20888);シゾキトリウム種(S8)(ATCC 20889);シゾキトリウム種(LC-RM)(ATCC 18915);シゾキトリウム種(SR21);シゾキトリウム・アグレガツム(Goldstein et Belsky)(ATCC 28209);シゾキトリウム・リマシヌム(Honda et Yokochi)(IFO 32693);トラウストキトリウム種(23B)(ATCC 20892);トラウストキトリウム・ストリアツム(Schneider)(ATCC 24473);トラウストキトリウム・アウレウム(Goldstein)(ATCC 34304);トラウストキトリウム・ロゼウム(Goldstein)(ATCC 28210);ジャポノキトリウム種(L1)(ATCC 28207);トラウストキトリウム種12B(ATCC 20890);トラウストキトリウム種U42-2(ATCC 20891);およびラビリンチュラ属(ラビリンチュリド)株L59(Kumon)(IPOD AIST No. FERM P-19897)。
【0113】
1つの局面において、油の生物供給源は、LCPUFAおよび/またはLCPUFAオキシリピンの産生を増強するために遺伝子改変される。より好ましい供給源は、(発酵槽で培養できる)微生物または油糧種子作物である。例えば、微生物および植物は、LCPUFAを産生する遺伝子を発現するように遺伝子改変することができる。そのような遺伝子には、古典的脂肪酸合成酵素経路に関与するタンパク質をコードする遺伝子、またはPUFAポリケチド合成酵素(PKS)経路に関与するタンパク質をコードする遺伝子が含まれ得る。古典的脂肪酸合成系路に関与する遺伝子およびタンパク質、ならびにそのような遺伝子で形質転換された、植物などの遺伝子改変生物については、例えば、Napier and Sayanova, Proceedings of the Nutrition Society (2005), 64:387-393;Robert et al., Functional Plant Biology (2005) 32:473-479;または米国特許出願公開第2004/0172682号に記載されている。PUFA PKS経路、この経路に含まれる遺伝子およびタンパク質、ならびにPUFAの発現および産生のためにそのような遺伝子で形質転換された遺伝子改変微生物および植物は、米国特許第6,566,583号;米国特許出願公開第20020194641号、米国特許出願公開第20040235127A1号、および米国特許出願公開第20050100995A1号に詳述されており、これらはそれぞれ全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0114】
好ましい油糧種子作物には、ダイズ、トウモロコシ、ベニバナ、ヒマワリ、カノーラ、アマ、または菜種、亜麻仁、および上記のようにLCPUFAを産生するように遺伝子改変されたタバコが含まれる。より好ましくは、油糧種子作物はまた、LCPUFAをそのヒドロキシ誘導体型(すなわち、オキシリピン)に変換するための酵素系を有するか、または有するように改変され得る(例えば、遺伝子操作による)。そのような酵素は当技術分野において周知であり、例えば表1に記載される。
【0115】
微生物および植物の遺伝子形質転換技法は、当技術分野において周知である。LCPUFAをそのヒドロキシ誘導体型に変換するための任意の1つまたは複数の酵素(および、必要に応じてそのための補助因子)をコードする核酸分子を用いて、植物または微生物を形質転換し、そのような植物または微生物のオキシリピン産生能を惹起し得る、改善し得る、および/または改変し得る(修正し得る、変更し得る)ことは、本発明の態様である。微生物の形質転換技法は当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Labs Pressに記載されている。クリプテコディニウム・コーニイとの使用に適合化することのできる渦鞭毛藻類の形質転換の一般的技法は、Lohuis and Miller, The Plant Journal (1998) 13(3): 427-435に詳述されている。トラウストキトリドの遺伝子形質転換の一般的技法は、2003年9月4日に公開された米国特許出願公開第20030166207号に詳述されている。
【0116】
植物の遺伝子操作方法もまた、当技術分野において周知である。例えば、生物学的および物理学的形質転換手順を含む、植物形質転換の多くの方法が開発されている。例えば、Miki et al., 「Procedures for Introducing Foreign DNA into Plants」, Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick, B.R. and Thompson, J.E. Eds. (CRC Press, Inc., Boca Raton, 1993) pp. 67-88を参照されたい。さらに、植物細胞または組織の形質転換および植物の再生のためのベクターおよびインビトロ培養法も利用可能である。例えば、Gruber et al., 「Vectors for Plant Transformation」, Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick, B.R. and Thompson, J.E. Eds. (CRC Press, Inc., Boca Raton, 1993) pp. 89-119を参照されたい。同様に、Horsch et al., Science 227:1229 (1985);Kado, C.I., Crit. Rev. Plant. Sci. 10:1 (1991);Moloney et al., Plant Cell Reports 8:238 (1989);米国特許第4,940,838号;米国特許第5,464,763号;Sanford et al., Part. Sci. Technol. 5:27 (1987);Sanford, J.C., Trends Biotech. 6:299 (1988);Sanford, J.C., Physiol. Plant 79:206 (1990);Klein et al., Biotechnology 10:268 (1992);Zhang et al., Bio/Technology 9:996 (1991);Deshayes et al., EMBO J., 4:2731 (1985);Christou et al., Proc Natl. Acad. Sci. USA 84:3962 (1987);Hain et al., Mol. Gen. Genet. 199:161 (1985);Draper et al., Plant Cell Physiol. 23:451 (1982);Donn et al., Abstracts of VIIth International Congress on Plant Cell and Tissue Culture IAPTC, A2-38, p. 53 (1990);D'Halluin et al., Plant Cell 4:1495-1505 (1992)、およびSpencer et al., Plant Mol. Biol. 24:51-61 (1994)も参照されたい。
【0117】
好ましくは、LCPUFAおよびそれら由来のオキシリピンの供給源として有用な微生物または油糧種子植物は、C20またはそれ以上の多価不飽和脂肪酸を有するPUFAを産生する(天然にまたは遺伝子操作により)微生物または植物である。好ましくは、微生物または植物によって産生されるLCPUFAは、3つ、4つ、またはそれ以上の二重結合を有する。さらにより好ましくは、微生物または植物は、5つまたはそれ以上の二重結合を有するC20またはそれ以上のLCPUFAを産生する。さらにより好ましくは、微生物または植物は、EPA(20:5n-3)、DHA(C22:6n-3)、DPAn-3(22:5n-3)、DPAn-6(22:5n-6)、DTAn-6(22:4n-6)、DTrAn-3(22:3n-3)、DDAn-6(C22:2n-6)、ETrAn-9、およびETrAn-3(C20:3n-3)またはこれらLCPUFAの組み合わせを含むがこれらに限定されない、C20またはそれ以上のLCPUFAを産生する。
【0118】
別の態様においては、LCPUFAの微生物源または植物源は、LCPUFAをオキシリピンに(例えば、LCPUFAのヒドロキシ、ペルオキシド、またはエポキシド誘導体に)生化学的に変換するためのシクロオキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ、シトクロムP450酵素(ヒドロキシラーゼ、ペルオキシダーゼ、およびオキシゲナーゼを含む)、および/または他のヘム含有酵素などの酵素を天然に発現することが好ましい。本発明はまた、生物においてこれらの酵素を発現するように、および/またはこれらの酵素の増強された活性を有するように、天然で選択されたまたは遺伝子改変された生物(例えば、植物または微生物)を含む。生物は、LCPUFAをオキシリピンに生化学的に変換するためのシクロオキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ、シトクロムP450酵素(ヒドロキシラーゼ、ペルオキシダーゼ、およびオキシゲナーゼを含む)、および/または他のヘム含有酵素などの、LCPUFAのオキシリピンへの生化学的変換を触媒する任意の酵素を発現または標的化するように、遺伝子改変することができる。
【0119】
このような酵素の多くの例が当技術分野において公知であり、表1に列挙するが、本発明はこれらの特定の酵素に限定されない。表1の酵素は、名称、公式記号、別名、生物により、ならびに/または酵素およびそのような酵素をコードする遺伝子の配列情報を含む、米国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)におけるデータベースアクセッション番号への参照により記載してある。それぞれのデータベースアクセッション番号に含まれる情報はすべて、参照により本明細書に含まれる。これらの酵素およびそのような酵素をコードする遺伝子、またはその相同体(天然変種を含む)を用いて、LCPUFAを産生する生物を遺伝子改変し、酵素を発現させるかまたは内因型の酵素を標的化して、生物中の酵素活性を惹起する、増加させる、または増強することができる。任意には、これらの酵素を、LCPUFAを含有する区画から分離された特定の区画(例えば、植物中の色素体)に標的化して、インビボで産生されるオキシリピンの形成および分解の可能性を制御することができる。LCPUFAからのオキシリピンの産生を生物中で調節できるように、酵素(内因性または組換え体)を誘導性プロモーターの調節下に置いてもよい。例えば、オキシリピンは植物において、油糧種子が破壊され、LCPUFAとオキシゲナーゼ酵素との接触が可能になる収穫後の処理工程において形成され得る。
【0120】
本発明において有用なLCPUFAの細菌源または植物細胞源には、好ましくは、発酵槽または光バイオリアクター内で培養できる微生物または植物細胞が含まれる。より好ましくは、本発明において有用なLCPUFAの細菌源または植物細胞源には、好ましくは、発酵槽内で従属栄養培養できる微生物または植物細胞が含まれる。
【0121】
本発明によって産生される油の独特の特徴
本明細書に記載のLCPUFAのオキシリピンを含有する油は、本発明以前に記載されているような化学合成されたまたはインビトロでの酵素変換により産生されたオキシリピンと比較して、独特の特徴を有する。LCPUFAオキシリピン、特にドコサノイドは、遊離型および/またはエステル型として油中に存在する。エステル型としては、LCPUFAオキシリピン、特にドコサノイドは、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、ステロールエステル、および/またはろうエステル型として存在し得る。オキシリピンはこれまでは遊離脂肪酸型としてしか記載されていなかったため、エステル型はオキシリピンの新規な形態であり、その存在は本発明の油または組成物中で強化、安定化、または保持され得る。理論に縛られることはないが、本発明者らは、いったんLCPUFAオキシリピン、特にドコサノイドが遊離脂肪酸型として形成されると、これがエステル型の1つに再エステル化され得ると考えている。または、脂肪酸分子は、エステル型であるままオキシリピンに変換され得る。
【0122】
本発明によって記載される方法により処理されたLCPUFA油は(以下を参照されたい)、食用油に一般的に使用される標準的な純化、漂白、および脱臭工程を経たLCPUFA油中に通常認められる微量濃度よりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも200倍、少なくとも400倍、少なくとも1,000倍、または少なくとも5,000倍高い(1倍の任意の他の増分も含む、例えば、20倍、21倍、22倍など)全LCPUFAオキシリピン濃度、特に全ドコサノイドまたはエイコサノイド濃度を有する。本発明に従って概説される工程により生成されたLCPUFA油は、好ましくは、油1グラム当たり少なくとも1つまたは複数のLCPUFAオキシリピン、特にドコサノイドまたはエイコサノイドを少なくとも1μg、少なくとも5μg、少なくとも10μg、少なくとも15μg、少なくとも20μg、少なくとも30μg、少なくとも50μg、少なくとも100μg、少なくとも200μg、少なくとも500μg、少なくとも1,000μg、少なくとも2,000μg、少なくとも5,000μg、少なくとも10,000μg、または少なくとも50,000μgもしくはそれ以上含有する(0.1μg増分での任意の他の増分も含む)。油または組成物の処理および精製を通して、LCFUAオキシリピン濃度は産生段階において実際により高くなり得るが(例えば、100%に近づく)、油および組成物は典型的に、栄養、治療、または他の工程において使用される前に上記の量になるように希釈または用量設定されることに留意されたい。
【0123】
本発明により産生される油は、好ましくは、DHAおよび/またはEPAおよび/またはDPAn-3および/またはDPAn-6および/またはDTAn-6および/またはDDAn-6および/またはDTrAn-3、ETrAn-9、および/またはETrAn-3のヒドロキシル型で強化される。本発明によるLCPUFAヒドロキシ誘導体に富んだ油は、1つのLCPUFAのみに由来する(例えば、DHAまたはEPAまたはDPAn-6またはDPAn-3またはDTAn-6またはDDAn-6またはDTrAn-3 EtrAn-9、またはETrAn-3に由来する)か、またはLCPUFAの組み合わせ(例えば、DHAに加えてDPA(n-6および/またはn-3)、DTAn-6、またはEPA)に由来する誘導体を含む、LCPUFAのヒドロキシ型で強化され得る。
【0124】
DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、またはETrAn-3の油、組成物、および製剤
本発明の1つの態様は、抗炎症薬または神経保護薬としてのLCPUFA自体、特にDPAn-6および/またはDPAn-3の使用を含む(すなわち、LCPUFAは、単独でまたはそのオキシリピン代謝産物と組み合わせて提供される)。DPAn-6および/またはDPAn-3は、単独でまたは他のLCPUFA、好ましくはDHAおよび/またはEPAと組み合わせて提供され得る。抗炎症特性または神経保護特性を有するDTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、および/またはETrAn-3もまた、本発明により包含される。好ましくは、本発明において用いられるDPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、またはETrAn-3は、以下の形態:DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、および/またはETrAn-3を含有するトリグリセリド、DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、および/またはETrAn-3を含有するリン脂質、遊離脂肪酸、DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、および/またはETrAn-3のエチルまたはメチルエステルの1つとして提供される。
【0125】
好ましい態様において、DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、および/またはETrAn-3は、油、好ましくは細菌油(野生型または遺伝子改変型)、またはLCPUFAの産生を触媒する遺伝子で改変された油糧種子植物由来の植物油の形態で提供される。好ましい細菌源および油糧種子源は上記に詳述してある。好ましくは、本発明において使用するDPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、および/またはETrAn-3、加えてそのようなLCPUFAおよび/またはそれらのオキシリピン誘導体を含有する油または組成物は、以下の付加的なLCPUFAまたはそのオキシリピン誘導体の1つまたは複数を含有する:DHAまたはEPA。最も好ましくは、付加的なLCPUFAはDHAである。
【0126】
DPAn-6は、ω-6系の中で最も長い長鎖脂肪酸である。ドコサペンタエン酸(n-6)は、多くのヒト用食物およびヒトの母乳中に0.0〜2.4%のレベルで認められ(Taber et al. 1998)、それぞれ全脂肪酸の約0.1%を示す(Koletzko et al. 1992)。成人および小児の食事中のDPAn-6の主要な供給源は、家禽(肉および卵)および海産物である(Taber et al. 1998、Nichols et al. 1998)。DPAn-6は典型的に、心臓(Rocquelin et al. 1989)、脳(Svennerholm et al. 1978、O'Brien et al. 1965)、肝臓(Salem 1989)、赤血球(Sanders et al. 1978、Sanders et al. 1979)、および脂肪組織(Clandinin et al. 1981)を含む、人体の組織の成分である。
【0127】
本発明において有用である油、組成物、または製剤(または任意の生成物)は好ましくは、DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、および/またはETrAn-3を、油、製剤の組成物中の全脂質の少なくとも約2重量パーセント、または少なくとも約5重量パーセント、または少なくとも約10重量パーセント、または少なくとも約15重量パーセント、または少なくとも約20重量パーセント、または少なくとも約25重量パーセント、または少なくとも約30重量パーセント、または少なくとも約35重量パーセント、または少なくとも約40重量パーセント、または少なくとも約45重量パーセント、または少なくとも約50重量パーセントなどであって、1重量パーセント刻みで(すなわち、2、3、4、5、...)最大で約95重量パーセントもしくはそれ以上まで、または少なくとも約95重量パーセントもしくはそれ以上の量で含む。DHAおよび/またはEPAもまた、油、組成物、製剤、またはその他の生成物中の全脂質の少なくとも約2重量パーセント、または少なくとも約5重量パーセント、または少なくとも約10重量パーセント、または少なくとも約15重量パーセント、または少なくとも約20重量パーセント、または少なくとも約25重量パーセント、または少なくとも約30重量パーセント、または少なくとも約35重量パーセント、または少なくとも約40重量パーセント、または少なくとも約45重量パーセント、または少なくとも約50重量パーセントなどであって、1重量パーセント刻みで(すなわち、2、3、4、5、...)最大で約95重量パーセントもしくはそれ以上まで、または少なくとも約95重量パーセントもしくはそれ以上の量で含まれ得る。
【0128】
別の好ましい態様において、油、組成物、製剤、またはその他の生成物は、DPAn-6およびDHAの組み合わせを約30重量パーセントもしくはそれ以上、約35重量パーセントもしくはそれ以上、約40重量パーセントもしくはそれ以上、約45重量パーセントもしくはそれ以上、約50重量パーセントもしくはそれ以上、約55重量パーセントもしくはそれ以上、約60重量パーセントもしくはそれ以上、約65重量パーセントもしくはそれ以上、約70重量パーセントもしくはそれ以上、約75重量パーセントもしくはそれ以上、または約80重量パーセントもしくはそれ以上、または約85重量パーセントもしくはそれ以上、または約90重量パーセントもしくはそれ以上、または約95重量パーセントもしくはそれ以上含む。好ましくは、油、組成物、製剤、またはその他の生成物中のDHAとDPA(n-6)との比率は、約1:10〜約10:1、または1:10〜10:1の間の任意の比率である。
【0129】
LCPUFAおよびオキシリピンの供給の形態
本発明に従って、油、補助剤、化粧用、治療組成物、および本明細書に記載のその他の製剤または生成物中で用いられるLCPUFAおよび/またはそのオキシリピン誘導体は、種々の形態で提供される。例えば、そのような形態には、これらに限定されないが以下のものが含まれる:好ましくは本明細書に記載するように産生された、LCPUFAおよび/またはそのオキシリピン誘導体を含む藻類油;好ましくは本明細書に記載するように産生された、PUFAおよび/またはそのオキシリピン誘導体を含む植物油;PUFAを含むトリグリセリド油;PUFAを含むリン脂質;PUFAを含むタンパク質、トリグリセリド、および/またはリン脂質の組み合わせ;PUFAを含む乾燥海洋微細藻類;PUFAを含むスフィンゴ脂質;PUFAのエステル;遊離脂肪酸;PUFAと別の生理活性分子との複合体;およびこれらの組み合わせ。長鎖脂肪酸は、供給源の混合、精製、強化(例えば、培養および/または処理技法を介して)、および遺伝子操作によるなどして、脂肪酸の天然源中で生じる量または比率と異なる量および/または比率で提供され得る。生理活性分子には、これらに限定されないが、タンパク質、アミノ酸(例えば、DHA-グリシン、DHA-リジン、またはアミノ酸類似体などの天然アミノ酸)、薬物、および炭水化物を含む任意の適切な分子が含まれ得る。本明細書に概説する形態によって、高い官能的品質を有する食品、食事または栄養補助剤、および薬学的物質の製剤化における柔軟性が可能になる。
【0130】
本発明の1つの態様において、単独で、またはDHAおよび/もしくはEPAならびに/またはそれら由来のオキシリピンと組み合わせて、DPAn-6および/もしくはDPAn-6またはそれら由来のドコサノイドに富んだ油または組成物(栄養補助剤、化粧用品、治療製剤)を調製するための所望のリン脂質の供給源には、Friolex工程およびリン脂質抽出工程(PEP)(または関連の工程)などの、極性溶媒(アルコールまたはアセトンを含む)による抽出によって調製された、卵、植物油、および動物器官から精製されたリン脂質が含まれる。Friolex工程および関連工程は、2001年10月18日にWO 01/76715として公開された、2001年4月12日出願の「Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Meterials」という名称のPCT特許番号第PCT/IB01/00841号;2001年10月18日にWO 01/76385として公開された、2001年4月12日出願の「Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials Using Alcohol and Centrifugation」という名称の第PCT/IB01/00963号;および1996年2月22日にWO 96/05278として公開された、1995年8月12日出願の「Process for Extracting Native Producs Which Are Not Water-Soluble From Native Substance Mixtures By Centrifugal Force」という名称の第PCT/DE95/01065号により詳細に記載されている;これらはそれぞれ全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0131】
生物学的に許容されるあらゆる剤形およびその組み合わせが、発明の対象によって意図される。このような剤形の例には、これらに限定されないが、咀嚼錠、速溶錠、発泡錠、再構成散剤、エリキシル剤、液剤、水剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、多層錠、二層錠、カプセル剤、軟質ゼラチンカプセル剤、硬質ゼラチンカプセル剤、カプレット剤、舐剤、咀嚼舐剤、ビーズ、散剤、顆粒剤、粒子剤、微粒子剤、分散性顆粒剤、カシェ剤、圧注剤、坐剤、クリーム剤、局所剤、吸入剤、エアゾル吸入剤、パッチ剤、粒子吸入剤、埋込錠、デポー埋込錠、経口摂取物、注射剤、点滴剤、健康バー、糖剤、シリアル、シリアルコーティング剤、食品、栄養食品、機能性食品、およびその組み合わせが含まれる。上記剤形の調製物は当業者に周知である。好ましくは、所望のLCPUFAおよび/またはそのオキシリピン誘導体が強化された食物(食品)は、これらに限定されないが以下を含む群より選択される:焼いた食品およびミックス;チューインガム;朝食用シリアル;チーズ製品;ナッツおよびナッツベースの製品;ゼラチン、プディング、および詰め物;冷凍乳製品;乳製品;乳製品類似品;ハードまたはソフトキャンディー;スープおよびスープミックス;スナック食品;加工果汁;加工野菜ジュース;油脂;魚加工品;植物タンパク質製品;家禽製品;および肉製品。
【0132】
より詳細には、LCPUFAおよびそのオキシリピン誘導体、詳細には増強レベルのLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドまたはエイコサノイド)を含有する油は、油充填カプセルの形態の食事補助剤として、または食物、飲料、もしくは調製粉乳の強化を介して有用であり、これら生成物の抗炎症性利点を増強する、および/またはLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドまたはエイコサノイド)含量が低いかもしくはないLCPUFA油によって達成される場合よりもよりバランスのとれた免疫機能を促進する。例えば、LCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドまたはエイコサノイド)強化LCPUFA油カプセル、好ましくは酸化から保護するためのゼラチンカプセルは、単一の食事補助剤中のLCPUFAおよび強化LCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドまたはエイコサノイド)内容物を送達するために提供される。別の用途では、これらに限定されないが、乳製品および乳製品類似品、ベーカリー製品および菓子、加工肉および肉類似品、穀物製品およびシリアル、液体および粉末飲料(ジュースおよびジュース飲料、炭酸および加工飲料製品を含む)を含む食物および飲料、または調製粉乳は、増強レベルのLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドまたはエイコサノイド)を有するLCPUFA油で強化され、それによって、非LCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドまたはエイコサノイド)強化LCPUFA油よりもLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドまたはエイコサノイド)摂取が増加する。別の例では、LCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドまたはエイコサノイド)強化LCPUFA油は、LCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドまたはエイコサノイド)および/またはLCPUFAの酸化/分解を軽減するため、ならびに強化食物/飲料または調製粉乳製品の官能的特性および貯蔵期間を改善するために、食物、飲料、または調乳を強化する前にマイクロカプセル化され得る。別の例では、LCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドまたはエイコサノイド)強化油は、炎症を軽減するための局所適用用のクリーム剤もしくは乳剤に製剤化され得るか、またはLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドまたはエイコサノイド)強化油は、皮膚の刺激もしくは発赤、アレルギー反応、または腫脹/浮腫を軽減するための、顔クリームもしくはハンドクリーム、保湿剤、ファンデーション、アイジェルもしくはシェービングクリームなどの日焼け止めまたは化粧用品に製剤化され得る。別の例では、より高度に強化もしくは精製された形態のLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドまたはエイコサノイド)またはLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイド)強化油は、局所、全身性、慢性、もしくは急性の炎症反応または炎症過程に関連した状態または疾患の症状を予防または軽減するために、薬学的製剤において用いられ得る。
【0133】
追加成分
本発明の1つの態様においては、LCPUFAおよび/またはそのオキシリピン誘導体の供給源のいずれもが、そのようなLCPUFAまたはそのオキシリピン誘導体を含有するいずれの油または組成物または製剤も含めて、本発明の方法において有用であり得る1つまたは複数の追加成分と共に提供され得る。このような追加成分には、任意のさらなる抗炎症薬、栄養補助剤(例えば、ビタミン、ミネラル、および栄養補給剤を含むその他の栄養剤)、治療薬、または薬学的もしくは栄養的担体(例えば、薬学的(治療を含む)組成物または栄養組成物と併用され得る任意の賦形剤、希釈剤、送達媒体、または担体化合物および製剤)が含まれるが、これらに限定されない。
【0134】
1つの好ましい態様において、LCPUFAおよび/またはそのオキシリピン誘導体は、アセトサリチル酸(ASA)、またはアスピリンもしくは任意のその他の抗炎症薬と共に提供される。
【0135】
LCPUFAおよびLCPUFA由来オキシリピンを産生するおよびそれらの産生を最適化する方法
細菌技術を用いてLCPUFA含有油(DHAおよびDPAn-6を含む)を産生する方法は、当技術分野において教示されている。米国特許第5,130,242号および米国特許第5,340,594号は、シゾキトリウム種およびヤブレツボカビ種を用いた発酵により、DHAおよびDPAに富んだ脂質を産生する方法を教示している。米国特許出願公開第2003/0161866号は、推定的ウルケニア属に属する微生物を培養することにより、DHAおよびDPAn-6を含有する油を調製する工程について記載している。
【0136】
LCPUFA含有植物および植物種子油を産生する方法は、例えば、米国特許第6,566,583号;米国特許出願公開第20020194641号、米国特許出願公開第20040235127A1号、および米国特許出願公開第20050100995A1号、ならびにNapier and Sayanova, Proceedings of the Nutrition Society (2005), 64:387-393;Robert et al., Functional Plant Biology (2005) 32:473-479;または米国特許出願公開第2004/0172682号に記載されている。
【0137】
上記したように、本発明において有用なオキシリピンは、LCPUFA前駆体を使用する化学合成を介して産生され得るか、または完全に新規に合成され得る。オキシリピン化合物の化学合成法は、当技術分野において公知である(例えば、Rodriguez and Spur (2004);Rodriguez and Spur, 2005;Guilford et al. (2004)を参照されたい)。さらに、一般的な化学合成法も当技術分野において周知である。例えば、本発明の化合物は、当業者に周知である慣習的合成技法および固相合成技法の両方で調製することができる。有用な慣習的技法には、米国特許第5,569,769号および同第5,242,940号、ならびにPCT公報第WO 96/37476号に開示されている技法が含まれ、これらはすべて参照により全体として本明細書に組み入れられる。しかしながら、コンビナトリアル合成技法が、本発明の化合物の合成に特に有用であり得る。例えば、Brown, Contemporary Organic Synthesis, 1997, 216;Felder and Poppinger, Adv. Drug Res., 1997, 30, 111;Balkenhohl et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1996, 35, 2288;Hermkens et al., Tetrahedron, 1996, 52, 4527;Hermkens et al., Tetrahedron, 1997, 53, 5643;Thompson et al., Chem. Rev., 1996, 96, 555;およびNefzi et al., Chem. Rev., 1997, 2, 449-472を参照されたい。
【0138】
本発明の化合物は、容易に入手可能な出発材料から合成することができる。本発明の化合物上の種々の置換基は、出発化合物中に存在していてもよいし、置換または変換反応の公知の方法によって、中間体のいずれか1つに付加され得るか、または最終生成物の形成後に付加され得る。置換基自体が反応性である場合には、置換基自体を、当技術分野で公知の技法に従って保護することができる。種々の保護基が当技術分野で公知であり、これらを使用することができる。可能な基の多くの例は、T. W. Greenによる「Protective Groups in Organic Synthesis」、John Wiley and Sons, 1981に見出すことができ、これは全体として本明細書に組み入れられる。例えば、ニトロ基はニトロ化によって付加することができ、ニトロ基は、還元によるアミノ、ならびにアミノ基のジアゾ化およびジアゾ基のハロゲンとの置換によるハロゲンのように、他の基に変換することができる。アシル基は、フリーデル・クラフツアシル化により付加することができる。アシル基は次いで、ウォルフ・キシュナー還元およびクレメンソン(Clemmenson)還元を含む種々の方法によって対応するアルキル基に変換することができる。アミノ基はアルキル化されて、モノアルキルアミノ基およびジアルキルアミノ基を形成し得;メルカプト基およびヒドロキシ基はアルキル化されて、対応するエーテルを形成し得る。第一級アルコールは当技術分野で公知の酸化剤により酸化されて、カルボン酸またはアルデヒドを形成し得、第二級アルコールは酸化されてケトンを形成し得る。このように、置換反応または変化反応を使用して、出発材料、中間体、または単離された生成物を含む最終生成物の分子全体にわたって、種々の置換基を提供することができる。
【0139】
本発明の化合物は、必然的に存在するある種の置換基を有し得るため、各置換基の導入は当然のことながら、関与する特定の置換基およびその形成のために必要な化学に依存する。したがって、1つの置換基が、第2の置換基を形成する際の化学反応によってどのように影響を受けるかという考慮は、当業者が精通している技法を伴う。これはさらに、関与する環に依存する。
【0140】
または、オキシリピンは、LCPUFAを基質として使用して、酵素に基づく技術により触媒的に産生される。1つの態様では、表1に記載するようなリポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、シトクロムP450酵素、およびその他のヘム含有酵素(例えば、組換え体または単離/固定された酵素調製物として提供される)を、微生物バイオマスまたは植物または油糧種子または動物の抽出または収穫後処理中などに、生物によって産生されたLCPUFAとインビトロで接触させ、それによって生物によって産生されたLCPUFAをオキシリピンに変換する。LCPUFAのオキシリピン誘導体はまた、発酵槽内で微生物により産生され、使用のために回収および精製され得る。化合物の量、質、および安定性を増強すると考えられる、オキシリピンを産生および回収する好ましい方法は、以下に記載する。上記の産生技術のいずれかによって産生されたオキシリピンは、必要に応じて、回収可能性、安定性、吸収、生物学的利用能、および/または有効性に役立つように、さらに処理され、オキシリピンの誘導体またはその塩として回収され得る。さらに、本明細書に記載の技術のいずれかにより産生されたオキシリピンは、オキシリピンの他の供給源(例えば、純化されたLCPUFA油)を補充するために使用することができ、または本明細書に記載の任意の用途において使用するための任意の組成物もしくは製剤の形態で提供され得る。
【0141】
生物によって産生される油中のLCPUFAオキシリピン濃度の産生を最適化する方法
産生または発酵条件を最適化して、LCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドおよびエイコサノイド)の産生を増強すること、および/または産生された時点でそれらを安定化することができる。これらの方法は、これらの化合物を産生する酵素の活性および/または発現を増強する培養条件を選択する段階を含む。例えば、細胞濃度および/または培養物の特定の増殖速度を変更する任意の培養条件は、潜在的に細胞組成を変更し得る。微生物における代謝産物または二次代謝産物の産生を改変することが知られている培養条件には、これらに限定されないが以下のものが含まれる:低浸透圧性または高浸透圧性塩分ストレス、栄養制限ストレス(窒素、リン、炭素、および/または微量金属)、温度ストレス(慣例より高いまたは低い)、酸素および/または二酸化炭素レベルの増強もしくは減少、ならびに剪断などの物理的ストレス。さらに、細胞中の代謝産物または二次代謝産物のレベルは、増殖相(対数期 対 定常期)により、および微生物による生物変換のための種々の前駆体分子を提供することにより、変動し得る。
【0142】
これらの方法はまた、この酵素活性を増強するか、またはLCPUFAのこれら化合物への自動酸化を直接増強する、および/もしくは産生された時点でLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイド)を安定化する、有機および無機の両方の添加物の使用を含む。例えば、COX2を修飾もしくはアセチル化する化合物(アセチルサリチル酸の多くの形態の1つなど)、またはCOX2、リポキシゲナーゼ、シトクロムP450酵素(ヒドロキシラーゼ、ペルオキシダーゼ、およびオキシゲナーゼを含む)、および/もしくはその他のヘム含有酵素の発現もしくは活性を促進する化合物を、培地に添加することができる。培養物中のリポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、シトクロムP450酵素、およびその他のヘム含有酵素の発現または活性を増強し得る化合物の例には、これらに限定されないが以下のものが含まれる:ATP、サイトカイン(例えば、インターロイキン-4、インターロイキン-13、または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、ホルモン(例えば、ブラジキニンまたは1,25-ジヒドロキシビタミンD3)、カチオン金属(例えば、Ca2+)、リン脂質(例えば、ホスファチジルセリン)、脂肪酸(例えば、DHA)、前もって形成されたヒドロペルオキシド、グルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン)、非ステロイド性抗炎症化合物(例えば、アセトサリチル酸またはアスピリン)、およびシトクロムP450活性のその他の誘導剤(例えば、エタノール、フィブラート、およびその他のペルオキシソーム増殖剤、フェノバルビタール、ステロイド、ならびにリファンピシン)。さらに、これらLCPUFAのモノ〜ペンタヒドロキシ誘導体の形成をもたらす、微生物中でのLCPUFAの自動酸化を引き起こす化合物または条件もまた好ましい。例えば、そのようなLCPUFAの自動酸化を促進し得る化合物または条件には、これらに限定されないが、金属(鉄、銅、または亜鉛などの遷移金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属を含む)、ペルオキシド、脂質ラジカル、および高酸素状態が含まれる。
【0143】
LCPUFAオキシリピン含量または保持を増強する油抽出工程の改善
酵素はLCPUFAのヒドロキシ誘導体の形成において重要な役割を果たすため、これら酵素とLCPUFAとの接触を増強して、ヒドロキシ誘導体の形成を増強する好ましい方法が存在する。1つの好ましい工程においては、細菌細胞または油糧種子を破裂させ(例えば、細菌細胞をホモジナイズすることによる、または油糧種子を粉砕することによる)、得られた油およびバイオマス混合物を最適な条件下(例えば、温度、pH、残留水分活性、イオン濃度、および任意の必須補因子の存在)で一定時間インキュベートして、バイオマス中に遊離された酵素をLCPUFAと直接反応させる。同様に、自動酸化工程もこの様式で促進され得る。
【0144】
油処理条件の改良
好ましい油処理法には、油を最小限に処理することに焦点をおいた方法が含まれる。慣用的な油糧種子処理において用いられる工程は、遊離脂肪酸または遊離脂肪酸様化合物を除去し、それによって脂肪酸様のLCPUFAのヒドロキシ誘導体を除去してしまう傾向がある。特に、遊離脂肪酸の除去に焦点をおいた油の苛性処置(一般に油の純化と称される)は、回避すべきである。好ましくは、油はアルコール(例えば、イソプロピルアルコール)もしくはその他の有機溶媒(例えば、ヘキサン)、またはその混合物、または超臨界流体(例えば、二酸化炭素)を用いて抽出し、得られた油を冷却濾過し、漂白し、再度冷却濾過し、次いで脱臭する。より好ましい方法においては、冷却濾過段階を除いて、抽出後に油を単に漂白および脱臭する。さらにより好ましい方法においては、油の抽出後の唯一の処理段階は、油の脱臭に限定される。上記の抽出では、油の抽出における使用には、ヘキサンなどの有機溶媒を使用するよりもアルコールまたはアルコール水混合液が好ましい。化学的抽出の別法として、圧搾により、または第一級アルコールもしくはキャリアーオイルなどの分離処理助剤を用いた、破壊およびその後の遠心分離により、油をバイオマスから分離することができる。これらの粗製油は、上記の方法の1つまたは複数により精製および安定化され得る。
【0145】
LCPUFAオキシリピン含量を増強および/または安定化するためにLCPUFA油(細菌、植物、魚)をさらに処理する方法
1つの好ましい方法では、上記の方法により、または任意の他の適切な方法により油が抽出および処理された時点で、油中のLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドおよびエイコサノイド)の安定化を支援するために、抗酸化剤を油に添加する。別の好ましい方法では、オキシリピンおよび/またはLCPUFAの酸化的分解の可能性を最小限に抑えるために、抗酸化剤を抽出および精製工程の一つまたは複数の時点で添加し得る。さらに、オキシリピンは、より多くのヒドロキシ基が取り込まれるほどより極性の高い分子となり、極性型および極性の低い形態のLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドおよびエイコサノイド)両方の含量/溶解性/安定性を増強するために、ならびに例えば油成分形態のみの使用に利用できる食物および薬学的用途よりも幅広い種類のそれらにおける使用を容易にするために、油は乳濁液形態で調製することができる。
【0146】
好ましい下流工程では、LCPUFAに富んだ油(細菌、植物、または動物(魚を含む)に基づく)、または加水分解型もしくはけん化型の油は、油中のLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイドおよびエイコサノイド)の酵素産生を促進するために、酵素に基づく反応系(例えば、カラムまたは撹拌槽型反応器)で処理することができる。酵素は、これらの系において遊離型または固定型として存在し得る。これらの系において利用できる例示的な酵素(リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、シトクロムP450酵素、およびその他のヘム含有酵素を含む)は、表1に列挙してある。温度、pH、残留水分活性、イオン濃度、および補因子の存在などの反応条件を選択して、PUFAのリポキシンへの変換の速度および程度を最大限にすることができる。油は、油形態で、または油中のPUFA含有トリグリセリドを加水分解して、PUFAをエステル型から遊離酸型に変換することによって産生される、加水分解された遊離脂肪酸として、カラム/反応器で処理され得る。
【0147】
本発明の1つの態様では、本明細書に記載の方法のいずれかにより産生された油はいずれも、さらに処理して、油中のLCPUFAからLCPUFAオキシリピンを分離または精製することができる。この工程は、油中のLCPUFAをオキシリピン誘導体に変換するよう処置された油またはその生成物を含む、任意の純化工程によって処理された油において行うことができる。例えば、LCPUFAオキシリピンは、シリカゲル液体クロマトグラフィーを含むがこれに限定されない任意のクロマトグラフィー技法などの任意の適切な技法により、LCPUFAから分離され得る。1つの態様において、本発明の工程(本明細書に記載の産生/処理法、および/または新規合成のいずれかを含む)により産生、強化、または精製されたLCPUFAオキシリピンは、任意の方法によって産生されたLCPUFA油などの別の油に添加し直す(徐々に増量していく)ことができ、および/または任意の組成物もしくは製剤もしくはその他の生成物に添加することができる。
【0148】
油/脂肪酸はこの様式で処理された後、食物、薬学的もしくは化粧用用途において直接使用することができ、またはLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイド)の含量を強化する目的で、LCPUFAもしくは非LCPUFA含有油に添加する(混合することによる)ために使用することができる。このようにして、最終油生成物の一貫したLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイド)含量が達成され得る。
【0149】
このような類の系でリポキシゲナーゼ酵素を使用すると、標的LCPUFAの最大で100%までが、それらのヒドロキシ誘導体に変換され得る。そのような系の例は、固定化15-リポキシゲナーゼを含む固定化酵素カラムである。この系を通してDPAn-6を処理すると、DPAn-6はヒドロペルオキシド、17-ヒドロペルオキシDPAn-6および10,17-ジヒドロペルオキシDPAn-6に変換され、次いでNaBH4などの薬剤との反応後に、ヒドロキシ誘導体、17-ヒドロキシDPAn-6および10,17-ジヒドロキシDPAn-6に変換され得る。次いで、最終的な油中の所望のLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイド)含量を達成するために、この濃縮形態のLCPUFAオキシリピン(特に、ドコサノイド)を適切な食用油中に徐々に増量していくことができる。
【0150】
DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、および/もしくはETrAn-3 LCPUFAオキシリピン、ならびにDPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、および/もしくはETrAn-3、ならびに/または任意の他のLCPUFAオキシリピンを含む油または組成物の用途
本発明は、ヒトおよびその他の動物において抗炎症、抗増殖、神経保護、および/または血管調節効果を提供するための、DPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、および/もしくはETrAn-3を含むLCPUFA、ならびに/またはそのオキシリピン誘導体、ならびに/またはC20およびそれ以上のPUFAのオキシリピン誘導体、特にドコサノイドおよび/またはエイコサノイドが強化された種々の油の使用に基づく。このような効果は、個体の全般的健康を増強するのに、ならびに個体における種々の疾患および状態を治療または予防する上で有用である。例えば、本発明は、代謝不均衡、ならびにLCPUFAおよびオキシリピン、特にドコサノイド、加えて本明細書に記載の組成物および油によって提供される炎症の調節から恩恵を受け得る疾患状態を治療する方法を含む。
【0151】
本明細書に記載のLCPUFAおよび/もしくはオキシリピン含有油、組成物、または製剤(好ましくは、DPAn-6、DPAn-3、またはそのオキシリピン誘導体、および適用可能なDTAn-6、DDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、ETrAn-3またはそのオキシリピン誘導体、ならびにオキシリピン誘導体が強化された油、およびそのような油を用いて産生された生成物を含む)のいずれかの使用に関して、本発明によって包含されるさらなる用途には、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:(1) 妊娠期のRh+不適合:(2) 腸および胃腸管の炎症性疾患(例えば、クローン病、炎症性腸疾患、大腸炎、乳児の壊死性腸炎);(3) 自己免疫疾患(例えば、インスリン依存性糖尿病(I型糖尿病)、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、セリアック病、自己免疫性甲状腺炎、アジソン病、グレーブス病、およびリウマチ性心炎);(4) 炎症を含む慢性成人発症病(例えば、循環器疾患、II型糖尿病、加齢黄斑変性症、アトピー性疾患、メタボリック症候群、アルツハイマー病、嚢胞性線維症、結腸癌など);(5) 皮膚の炎症性疾患(例えば、皮膚炎(任意の形態)、湿疹、乾癬、酒さ、座瘡、壊疸性膿皮症、蕁麻疹など);(6) 眼の炎症性疾患;ならびに(7) 感染症(バクテリア、真菌、ウイルス、寄生虫など)に起因する炎症。これらの多くは、負の副作用のために、患者がステロイドまたは非特異的抗炎症薬に依存したくないと考えるであろう疾患である。
【0152】
したがって、本発明の1つの態様は以下の使用に関する:(1) 単独での、または相互におよび/もしくは他のLCPUFAおよび/もしくはそのオキシリピン誘導体(好ましくはDHAまたはEPA、最も好ましくはDHA)と組み合わせた、DPAn-6、DPAn-3、および/またはそれらのオキシリピン誘導体(ドコサノイド)、ならびにいくつかの態様においてはDDAn-6、DTrAn-3、ETrAn-9、ETrAn-3、および/もしくはDTAn-6ならびに/またはそのオキシリピン誘導体;ならびに/または(2) 含有するLCPUFAオキシリピン、好ましくはドコサノイドまたはエイコサノイドの量、質、および/もしくは安定性が強化された油、またはそのような油を用いて産生された生成物。これらの組成物の使用は典型的に、油もしくはそのような油を用いた生成物、栄養補助剤、化粧用製剤、または薬学的組成物(医用薬剤または薬)によって提供される。そのような油、補助剤、組成物、および製剤は、炎症または炎症に関連する疾患もしくは状態を有するか、またはそれを発症するリスクがある患者において炎症を軽減するために用いることができる。そのような油、補助剤、組成物、および製剤はまた、神経変性状態もしくは疾患を有するか、またはそれを発症するリスクのある患者において、神経変性または神経変性に関連した疾患に関する任意の症状を軽減するために用いることができる。特に、本発明の組成物を用いて治療しようとする患者は、エイコサノイド、および/または当技術分野において一般に「炎症誘発性」サイトカインと称するものの産生に関連した炎症を有する。そのようなサイトカインには、これらに限定されないが、インターロイキン-1α(IL-1α)、IL-1β、腫瘍壊死因子-α(TNFα)、IL-6、IL-8、IL-12、マクロファージ炎症性タンパク質-1α(MIP-1α)、マクロファージ走化性タンパク質-1(MCP-1)、およびインターフェロン-γ(IFN-γ)が含まれる。患者は、患者における炎症または神経変性の少なくとも1つの症状を軽減するのに有効な量のLCPUFAおよび/またはそのオキシリピン誘導体を含む組成物の投与を受ける。
【0153】
炎症の症状には、サイトカイン産生、エイコサノイド産生、ヒスタミン産生、ブラジキニン産生、プロスタグランジン産生、ロイコトリエン産生、発熱、浮腫またはその他の腫脹、疼痛(例えば、頭痛、筋肉痛、痙攣、関節痛)、悪寒、疲労/エネルギー喪失、食欲不振、筋肉または関節の硬直、組織の発赤、体液貯留、および炎症部位における細胞メディエータ(例えば、好中球、マクロファージ、リンパ球など)の蓄積を含むがこれらに限定されない生理的および生物学的症状が含まれる。炎症に関連する疾患には、これらに限定されないが、感染体(例えば、バクテリア、ウイルス)による感染に関連した状態、ショック、虚血、心肺疾患、自己免疫疾患、神経変性状態、およびアレルギー性炎症状態、ならびに本明細書においてこれまでに詳述した種々の他の疾患が含まれる。実施例では、炎症反応の複数のパラメータによって測定される、インビボおよびインビトロでの炎症を軽減するための、本発明のドコサノイドの使用について記載する。
【0154】
神経変性に関連した症状には、神経変性、知的衰弱、行動障害、睡眠障害、一般的内科的合併症、認知症、精神病、不安、鬱病、炎症、疼痛、および嚥下障害を含むがこれらに限定されない生理的および生物学的症状が含まれる。本発明のオキシリピン誘導体および組成物を用いて治療され得る神経変性疾患には、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:統合失調症、双極性障害、失読症、統合運動障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、癲癇、自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン病、老年認知症、ペルオキシソーム増殖因子活性化障害(PPAR)、多発性硬化症、糖尿病誘発性神経障害、黄斑変性症、未熟児網膜症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、網膜色素変性症、脳性麻痺、筋ジストロフィー、癌、嚢胞性線維症、神経管欠損、鬱病、ツェルヴェーガー症候群、脳回欠損、ダウン症候群、筋・眼・脳病(Muscle-Eye-Brain Disease)、ウォーカー・ワールブルグ症候群、シャルコー・マリー・トゥース病、封入体筋炎(IBM)、および無虹彩症。
【0155】
本発明の1つの態様において、本発明の新規ドコサノイドおよび/もしくはエイコサノイド、ならびに/またはそのようなドコサノイドおよび/またはエイコサノイドを含有する油もしくは組成物は、特定の炎症誘発性サイトカイン、およびこれらのサイトカインの産生に関連した状態または疾患を選択的に標的化するために用いられる。本発明の特定のドコサノイドが特定のサイトカインを選択的に阻害し得るという本発明者らによる知見に基づいて、本発明者らは、個体のより選択的な治療を提供するため、および炎症過程のより全体的な阻害に関連し得る副作用を回避するために、そのようなドコサノイド、ならびに本明細書に記載されるエイコサノイドが特定の状態または疾患において使用され得ることを提唱する。例えば、本発明者らは、DPAn-6ドコサノイド、17-ヒドロキシDPAn-6および10,17-ジヒドロキシDPAn-6が、強力な炎症誘発性サイトカインIL-1βの分泌を有意に減少させ、10,17-ジヒドロキシDPAn-6によって生じる減少が、DHAオキシリピン誘導体または一般的な抗炎症薬、インドメタシンによって生じる減少よりも有意に大きいことを示している。さらに特筆すべきは、DPAn-6の2つの異なるオキシリピン誘導体の活性間に差が認められたことである。実施例20および21に示すように、17-HDPAn-6および10,17-ジヒドロキシDPAn-6はいずれも強力な抗炎症薬であることが実証されたが、これら2つのDPAn-6オキシリピンの活性間には、サイトカイン産生(例えば、IL-1β)に及ぼす効果に差があり、特定の用途(例えば、敗血症 対 腫脹)に関して1つの化合物がその他の化合物よりもより適切であることが示された。具体的には、17-HDPAn-6は、細胞遊走の阻害に関してDHA由来オキシリピンよりも強力であり、10,17-ジヒドロキシDPAn-6は、IL-1β分泌の減少に関してDHAオキシリピンよりも強力であった。したがって、当業者は、特定の使用に関して本発明のドコサノイドを選択することができ、より特異性の広いまたはより一般的な抗炎症薬を使用する場合と比較して治療の副作用の可能性を軽減することができる。
【0156】
本発明の組成物および方法は好ましくは、炎症または炎症に関連した状態もしくは疾患から患者を防御する。本明細書において使用する「疾患から防御する」(または症状もしくは状態から)という語句は、疾患の症状を軽減すること;疾患の発生を低下させること、および/または疾患の重症度を軽減することを指す。患者を防御するとは、本発明の栄養または治療組成物が、患者に投与された場合に、炎症の発生を予防する、ならびに/または炎症および/もしくは疾患/状態の症状、徴候、もしくは原因を治癒もしくは緩和する能力を指し得る。したがって、患者を疾患または状態から防御するということは、疾患または状態の発生を予防すること(予防的処置)、および疾患もしくは状態を有するか、または疾患もしくは状態の初期症状を経験した患者を治療すること(治療的処置)の両方を含む。「疾患」または「状態」という用語は、動物の正常な健康状態からの任意の逸脱を指し、疾患症状が存在する際の状態、および逸脱(例えば、感染、遺伝子変異、遺伝的欠陥など)は起こっているが、症状がまだ現れていない状態を含む。
【0157】
本発明によれば、本発明のオキシリピン(またはその類似体もしくは誘導体)、そのようなオキシリピンを含む組成物、および方法は、非限定的に霊長類、家畜類、および家庭用ペット(例えば、伴侶動物)を含む、脊椎動物亜門、哺乳動物綱のメンバーである個体(対象)における使用に適している。最も典型的には、個体はヒトである。本発明では、「患者」、「個体」、および「対象」という用語は互換的に使用され得、必ずしも病気であるかまたは不健康である動物または人を指すとは限らない(すなわち、この用語は、健常個体、または疾患もしくは状態の任意の症状を経験していない個体も参照し得る)。1つの態様において、本発明のオキシリピンまたは組成物または製剤または油を投与し得る個体には、炎症もしくは神経変性またはそれらに関連する状態もしくは疾患を有するリスクがある、それらを有すると診断された、またはそれらを有すると疑われる個体が含まれる。個体はまた健常個体であってもよく、その場合、本発明のオキシリピンまたは組成物は、個体の健康を増強、維持、または安定化するために用いられる。
【0158】
個体に投与するLCPUFAまたはそのオキシリピン誘導体の量は、炎症もしくは神経変性の少なくとも1つの症状を軽減するか、またはそのような炎症もしくは神経変性に関連した状態もしくは疾患から個体を防御する所望の結果を提供するのに適した任意の量であってよい。1つの態様において、DPAn-6などのLCPUFAは、個体体重1kgあたり約0.5 mg PUFA〜個体体重1kgあたり約200 mg PUFAの用量で投与されるが、用量はこれらの量に限定されない。LCPUFAオキシリピン誘導体またはオキシリピン誘導体の混合物は、個体体重1kgあたり約0.2 ugオキシリピン〜個体体重1kgあたり約50 mgオキシリピンの用量で投与されるが、用量はこれらの量に限定されない。
【0159】
本発明の組成物および製剤は局所的にまたは注射剤として投与され得るが、最も好ましい投与経路は経口投与である。好ましくは、本明細書において使用する組成物および製剤は、栄養補助剤および/または食物(食品を含む)および/または薬学的製剤および/または飲料、より好ましくは食物、飲料、および/または栄養補助剤、より好ましくは食物および飲料、より好ましくは食物の形態で対象に投与される。
【0160】
上記したように、対象に投与または提供する際には、他の抗炎症薬、ビタミン、ミネラル、担体、賦形剤、および他の治療薬などの種々の追加物質を組成物中に含めることができる。好ましい追加薬剤は、アスピリンまたは別の適した抗炎症薬である。
【0161】
本発明のオキシリピン(またはその類似体もしくは誘導体もしくは塩)、そのようなオキシリピンを含む組成物、および方法はまた、魚などの脊椎動物門またはエビなどの無脊椎動物のメンバーである任意の個体(対象)の水産養殖用途における飼料成分、栄養補助剤、または治療薬としての使用にも適している。
【0162】
以下の実験結果は説明の目的で提供するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0163】
実施例
実施例1
以下の実施例は、DPAn-6が15-リポキシゲナーゼによってモノヒドロキシジエン誘導体に完全に変換され得、DPAn-3またはDHAよりも効率的に変換されることを実証する。
【0164】
最終濃度4μg/mlのダイズ15-リポキシゲナーゼ(Sigma-Aldrich、ミズーリ州、セントルイス)を、0.05 Mホウ酸ナトリウム緩衝液、pH 9.0中のDHA、DPAn-6、またはDPAn-3(NuChek Prep、ミネソタ州、エリシアン)の100μM溶液に混合し、反応混合液を0℃でインキュベートした。脂肪酸のモノヒドロキシ共役ジエン誘導体の出現を、238 nmにおける吸光度でモニターした。共役ジエン生成物は、28,000 M-1cm-1の吸光係数を用いて定量した(Shimizu et al; Methods in Enzymology, 1990 Vol 187, 296-306)。実施例1に示すように、15-リポキシゲナーゼにより、DPAn-3の約85%およびDHAの50%がそれぞれの共役ジエン(モノヒドロキシ)誘導体に変換されたのに対し、DPAn-6の100%がこのような条件下でその共役ジエン誘導体に効率的に変換された。このような反応条件下では、ジヒドロキシ誘導体の蓄積はそれほど生じなかった。
【0165】
実施例2
以下の実施例は、DHAの主要な15-リポキシゲナーゼ生成物について記載する。
【0166】
0.05 Mホウ酸ナトリウム緩衝液、pH 9.0中で、DHA(100μM、NuChek Prep、ミネソタ州、エリシアン)を15-LOX(4μg/ml)と共に、勢いよく撹拌しながら4℃で30分間インキュベートした。反応生成物をNaBH4(0.45 mg/ml)で還元し、次いで溶出に無水エタノールを使用して、固相C-18カートリッジ(Supelco Discovery DSC-19)にて抽出した。エレクトロスプレーイオン化源を備えたEsquire 3000イオントラップ質量分析計(Bruker Daltonics、米国、マサチューセッツ州、ビルリカ)と接続されたAgilent 1100シリーズ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置(米国、カリフォルニア州、サンパウロ)を用いて、反応生成物をLC/MS/MSで解析した。HPLCは、LUNA C18(2)カラム(250 x 4.6 mm、5ミクロン、Phenomenex、米国、カリフォルニア州、トランス)にて、50分間に48〜90%と増加するアセトニトリル勾配をつけた、30%メタノール水溶液中の100 mM酢酸アンモニウムからなる移動相を用いて実施した(流速0.4 ml/分)。質量分析計は、負イオン検出モードで操作した。窒素を、噴霧器圧20 psiおよび乾燥ガス流速 7 L/分で、噴霧および乾燥ガスとして使用した。界面温度は330 Cに維持した。
【0167】
図2Aは、このDHA反応のモノヒドロキシおよびジヒドロキシ生成物の構造を示す。図2Bは、分子イオン(m/z 343)および17-ヒドロキシDHAの特徴的な断片を示す、モノヒドロキシ生成物のMS/MSスペクトルを示す。挿入図は、共役ジエンに特有の237 nmにおける予測ピークを有する、この化合物のUVスペクトルを示す。図2Cおよび2Dは、分子イオン(m/z 359)ならびに表示の10,17-ジヒドロキシDHA(2C)および7,17-ジヒドロキシDHA(2D)の特徴的な断片を有する、2つのジヒドロキシ生成物のMS/MSスペクトルを示す。UVスペクトルの挿入図は、10,17-ジヒドロキシDHAの共役トリエンに特有である270 nmにおける予測される三重ピーク、および7,17-ジヒドロキシDHAのメチレン基によって分離された2対の共役ジエンに特有である242における単一ピークを示す。
【0168】
実施例3
以下の実施例は、DPAn-6の主要な15-リポキシゲナーゼ生成物を示し、DHAから産生されるモノヒドロキシおよびジヒドロキシ誘導体(実施例2を参照されたい)と類似しているそのような誘導体の産生を実証する。
【0169】
DPAn-6を15-リポキシゲナーゼで処置し、実施例2に記載した条件下でLC/MS/MSにより解析した。図3Aは、このDPAn-6/15-LOX反応のモノヒドロキシおよびジヒドロキシ反応生成物の構造を示す。図3Bは、分子イオン(m/z 345)および17-ヒドロキシDPAn-6に特有の断片を示す、モノヒドロキシ生成物のMS/MSスペクトルを示す。挿入図は、共役ジエンに特有の237 nmにおける予測ピークを有する、この化合物のUVスペクトルを示す。図3Cおよび3Dは、分子イオン(m/z 361)ならびに表示の10,17-ヒドロキシDPAn-6(3C)および7,17-ジヒドロキシDPAn-6(3D)に特有の断片を有する、2つのジヒドロキシ生成物のMS/MSスペクトルを示す。UVスペクトルの挿入図は、10,17-ジヒドロキシDPAn-6の共役トリエンに特有である270 nmにおける予測される三重ピーク、および7,17-ジヒドロキシDPAn-6のメチレン基によって分離された2対の共役ジエンに特有である242における単一ピークを示す。
【0170】
実施例4
以下の実施例は、DPAn-3の主要な15-リポキシゲナーゼ生成物を示し、DHA(実施例2)およびDPAn-6(実施例3)から産生されるモノヒドロキシおよびジヒドロキシ誘導体と類似しているそのような誘導体の産生を実証する。
【0171】
DPAn-3を15-リポキシゲナーゼで処置し、実施例2に記載した条件下でLC/MS/MSにより解析した。図4Aは、このDPAn-3/15-LOX反応のモノヒドロキシおよびジヒドロキシ反応生成物の構造を示す。図4Bは、分子イオン(m/z 345)および17-ヒドロキシDPAn-3に特有の断片を示す、モノヒドロキシ生成物のLC/MSスペクトルを示す。挿入図は、共役ジエンに特有の237 nmにおける予測ピークを有する、この化合物のUVスペクトルを示す。図4Cおよび4Dは、分子イオン(m/z 361)ならびに表示の10,17-ヒドロキシDPAn-3(4C)および7,17-ジヒドロキシDPAn-3(4D)に特有の断片を有する、2つのジヒドロキシ生成物のMS/MSスペクトルを示す。UVスペクトルの挿入図は、10,17-ジヒドロキシDPAn-3の共役トリエンに特有である270 nmにおける予測される三重ピーク、および7,17-ジヒドロキシDPAn-3のメチレン基によって分離された2対の共役ジエンに特有である242における単一ピークを示す。
【0172】
実施例5
以下の実施例は、DTAn-6の主要な15-リポキシゲナーゼ生成物を示し、DHA(実施例2)、DPAn-6(実施例3)、およびDPAn-3(実施例4)から形成されるモノヒドロキシおよびジヒドロキシ誘導体と類似しているそのような誘導体の産生を実証する。
【0173】
DTAn-6を15-リポキシゲナーゼと混合し、実施例2に記載した条件下でLC/MS/MSにより解析した。図5Aは、モノヒドロキシ反応生成物の構造を示す。図5Bは、分子イオン(m/z 347)および17-ヒドロキシDTAn-6に特有の断片を示す、モノヒドロキシ生成物のLC/MSスペクトルを示す。挿入図は、共役ジエンに特有の237 nmにおける予測ピークを示すUVスペクトルを示す。図5Cは、分子イオン(m/z 361)ならびに表示の7,17-ヒドロキシDTAn-6に特有の断片を有する、ジヒドロキシ生成物のLC/MSスペクトルを示す。UVスペクトルの挿入図は、メチレン基によって分離された2対の共役ジエンに特有である、242における予測ピークを示す。
【0174】
実施例6
以下の実施例は、15-リポキシゲナーゼおよびその後のヘモグロビンによる順次的処置後にDPAn-6から産生された酵素オキシリピン生成物の構造を示す。
【0175】
DPAn-6(100μM濃度)をダイズ15-リポキシゲナーゼ(最終濃度20μg/ml)と4℃で勢いよく撹拌しながら混合した。生成物を直ちに、Supelco Discovery DSC-19カートリッジにて、最終溶出に無水エタノールを使用して抽出した。このようにして得られたヒドロペルオキシ誘導体を1.5 mMになるよう濃縮し、続くヘモグロビン触媒反応に使用した。ヒドロペルオキシ誘導体(最終反応濃度、30μg/ml)を、ダルベッコリン酸緩衝食塩水中でヒトヘモグロビン(300μg/ml、Sigma-Aldrich)と37℃で15分間混合した。氷酢酸を用いて反応物をpH 3になるまで酸性化し、生成物を固相抽出により精製した。反応生成物をLC-MS/MSにより解析した。図6は、質量スペクトル(表示せず)から推定される酵素反応のドコサノイド生成物を示す。
【0176】
実施例7
以下の実施例は、DHAの主要な5-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【0177】
0.05 M NaMES緩衝液、pH 6.3、100μM SDS、および0.02% C12E10中に100μM DHA(NuChek Prep、ミネソタ州、エリシアン)を含有する反応混合液10-mlに対して、10 U/μlジャガイモ5-リポキシゲナーゼ(Caymen Chemicals、ミネソタ州、ミネアポリス)を200μl添加した。反応を4℃で30分間進行させ、0.5 mg/ml NaBH4を1 ml添加することにより反応生成物を還元した。固相C-18カートリッジを用いて反応生成物を抽出し、実施例2に記載した通りにLC/MS/MSにより解析した。タンデム質量分析によって決定された主要な反応生成物を、診断分子イオンおよび断片と共に示す(図7)。
【0178】
実施例8
以下の実施例は、DPAn-6の主要な5-リポキシゲナーゼ生成物を示し、DHAの5-LOX生成物(実施例7)と類似しているモノヒドロキシ誘導体の産生を示す。
【0179】
実施例7に記載した通りに、DPAn-6(100μM)を5-リポキシゲナーゼで処置した。反応生成物を、実施例2に記載した通りにLC/MS/MSにより解析した。タンデム質量分析によって決定された主要な反応生成物を、診断分子イオンおよび断片と共に示す(図8)。
【0180】
実施例9
以下の実施例は、DPAn-3の主要な5-リポキシゲナーゼ生成物を示し、DHAの5-LOX生成物(実施例7)と類似しているモノヒドロキシおよびジヒドロキシ誘導体の産生を示す。
【0181】
実施例7に記載した通りに、DPAn-3(100μM)を5-リポキシゲナーゼで処置した。反応生成物を、実施例2に記載した通りにLC/MS/MSにより解析した。タンデム質量分析によって決定された主要な反応生成物を、診断分子イオンおよび断片と共に示す(図9)。
【0182】
実施例10
以下の実施例は、DHAの主要な12-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【0183】
酵素反応を行うため、0.75 U/μlブタ白血球由来12-リポキシゲナーゼ(Caymen Chemicals、ミネソタ州、ミネアポリス) 100μlを、0.1 M Tris-HCl、pH 7.5、5 mM EDTA、および0.03% Tween-20中に100μM DHA(NuChek Prep、ミネソタ州、エリシアン)を含有する溶液10-mlに添加した。反応を4℃で30分間継続し、0.5 mg/ml NaBH4を1 ml添加することにより反応生成物を還元した。固相C-18カートリッジを用いて反応生成物を抽出し、実施例2に記載した通りにLC/MS/MSにより解析した。タンデム質量分析によって決定された主要な反応生成物を、診断分子イオンおよび断片と共に示す(図10)。
【0184】
実施例11
以下の実施例は、DPAn-6の主要な12-リポキシゲナーゼ生成物を示し、DHA/12-LOX反応によるモノヒドロキシおよびジヒドロキシ誘導体(実施例10)と類似しているそのような誘導体の産生を示す。
【0185】
実施例10に記載した通りに、DPAn-6(100μM)を12-リポキシゲナーゼで処置した。反応生成物を、実施例2に記載した通りにLC/MS/MSにより解析した。タンデム質量分析によって決定された主要な反応生成物を、診断分子イオンおよび断片と共に示す(図11)。
【0186】
実施例12
以下の実施例は、DPAn-3の主要な12-リポキシゲナーゼ生成物を示し、DHA/12-LOX反応(実施例10)およびDPAn-6/12-LOX反応(実施例11)から産生されるモノヒドロキシおよびジヒドロキシ誘導体と類似しているそのような誘導体の産生を示す。
【0187】
実施例10に記載した通りに、DPAn-3(100μM)を12-リポキシゲナーゼで処置した。反応生成物を、実施例2に記載した通りにLC/MS/MSにより解析した。タンデム質量分析によって決定された主要な反応生成物を、診断分子イオンおよび断片と共に示す(図12)。
【0188】
実施例13
以下の実施例は、藻類DHA/DPAn-6 LCPUFA油中のオキシリピンの質量スペクトル解析について記載する。
【0189】
1.5 mlヘキサンで希釈した藻類由来DHA+DPAn-6油(0.5 g)を、ヘキサン中の酢酸エチルの増加濃度を使用して15 mm x 200 mmシリカゲルカラムに通し、種々の脂質種を溶出した。脂質を含有する画分を、移動相として石油エーテル:エチルエーテル:酢酸(80:20:1)を用いて薄層クロマトグラフィー(TLC)により同定し、次いでエレクトロスプレーイオン化(ESI)およびHewlett Packardモデル1100質量選択検出器(MSD)を備えたHewlett Packardモデル1100液体クロマトグラフでのLC/MSを用いて、モノヒドロキシおよびジヒドロオキシドコサノイド(m/z 343、345、359、または361)に関してさらにスクリーニングした。ヒドロキシルドコサノイド生成物を含有する画分をプールし、濃縮し、Applied Biosystems API QSTAR(登録商標) Pulsar i Hybridトリプル四重極飛行時間型ハイブリッドLC/MS/MS(コロラド大学質量分析施設)でのタンデム質量分析(MS/MS)によりさらに解析した。試料は、負イオン化を利用するESI源への直接注入により導入した。
【0190】
図18Aは、これらの化合物の特徴的な断片である[M-H]-H2O、[M-H]-CO2、および[M-H]-H2O/CO2に相当する断片と共に、モノヒドロキシDPA(HDPA)およびジヒドロキシDPA(ジ-HDPA)(それぞれ、[M-H] 345および361 m/z)ならびにモノヒドロキシDHA(HDHA、[M-H] 343 m/z)の存在を表す、ドコサノイド画分のMS全イオンクロマトグラフ(TIC)を示す。
【0191】
図18Bは、油中の17-HDPAn-6の存在を表すm/z 245および201断片と共に、特徴的な[M-H]-H2O、[M-H]-CO2、および[M-H]-H2O/CO2断片を示す、モノヒドロキシDPAn-6([M-H] 345 m/z)のMS/MSスペクトルを示す。
【0192】
図18Cは、[M-H]-H2O(m/z 343)、[M-H]-CO2(m/z 317)、および[M-H]-H2O/CO2(m/z 299)、[M-H]-2 H2O/CO2(m/z 281)に相当する特徴的な断片、ならびに10,17-ジヒドロキシDPAn-6の存在を表す断片(m/z 261-H2O/CO2; 153)を有する、ジヒドロキシ-DPAn-6のMS/MSを示す。
【0193】
実施例14
以下の実施例は、LCPUFAの種々の組み合わせを動物に与えたラット肢浮腫実験の結果を示す。
【0194】
成体雄Sprague Dawleyラット(n=10/処置群)に、1.2% DHA、1.2% DHA+0.44% DPAn-6、または1.2% DHA+0.46%アラキドン酸(ARA)を含むように処方した改変AIN-76食餌を4週間与えた。給餌の14日目(左肢)および28日目(右肢)に、カラゲナン(1%)を用いて後肢浮腫を誘導した。注射の3時間後に、水置換を用いてプレチスモグラフにより浮腫を測定した。28日目の平均値(±stdev)を図19に示す。14日目にも同様の結果が得られた。*p≦0.05。
【0195】
図19から、DHAとDPAn-6の組み合わせを含有する油が、DHAのみまたはDHAおよびARAよりも統計的に有意に大きな浮腫容積の減少をもたらしたことが示される。ω-6脂肪酸ARAは、このモデルにおいてDHAの抗炎症活性を逆転させた。
【0196】
実施例15
以下の実施例では、マウス背部空気嚢モデルにおいて、DPAn-6由来オキシリピン、17-ヒドロキシDPAn-6および10,17-ジヒドロキシ-DPAn-6の強力な抗炎症効果を実証する。
【0197】
純粋17R-ヒドロキシDHA(17R-HDHA)は、Caymen Chemicals(ミシガン州、アナーバー)から購入した。ドコサノイド、17-ヒドロキシ-DPAn-6(17-HDPAn-6)および10,17-ジヒドロキシDPAn-6(10,17-HDPAn-6)は、実施例2に記載したように、DPAn-6(Nuchek Prep、ミネソタ州、エリシアン)からダイズ15-リポキシゲナーゼ(Sigma-Aldrich)を用いて生体的に合成し、HPLCにより精製した。有機溶媒を蒸発させ、化合物をリン酸緩衝食塩水(PBS)に再溶解し、濾過滅菌して、モノヒドロキシおよびジヒドロキシドコサノイドそれぞれに対してモル吸光係数28,000および40,000 M-1cm-1を用いて濃度を1000 ng/mlになるように調整した。雌C57/B16マウス(n=マウス10匹/群)の背部に無菌空気を皮下注入し、背部空気嚢を惹起した。6日後、滅菌PBS0.9 mlおよびその後0.1 ml PBS中の100 ngドコサノイドまたはPBSのみを、嚢内注射により投与した。この注射の5分後以内に、0.1 ml PBS中のマウス組換え体TNFα(Peprotech, Inc.、米国、ニュージャージー州)100 ngを嚢内注射した。対照動物にはTNAαを与えなかった。陽性対照として、2 mg/kgインドメタシン(Calbiochem、カリフォルニア州、サンディエゴ)を、TNFαの投与の30分前に腹腔内投与した。TNFα投与の4時間後に、空気嚢浸出液を除去し、細胞をTurk液で染色し、計数した。浸出液は、後に市販のELISAキットを用いてサイトカイン解析を行うために凍結した。バーは、群(n=10)の平均値(±stdev)を表す。スチューデントt検定により群を比較し、p値を表示した。
【0198】
図20Aは、空気嚢浸出液への全細胞遊走を示す。17-ヒドロキシDPAn-6および10,17-ジヒドロキシDPAn-6により、好中球数およびマクロファージ数の減少に起因して(表示せず)、嚢中の全細胞数が有意に減少した。17-ヒドロキシDPAn-6は、細胞浸潤の減少において、17R-ヒドロキシDHAおよびインドメタシンよりも強力であった。
【0199】
図20Bは、空気嚢浸出液中のIL-1β濃度を示す。17-ヒドロキシDPAn-6および10,17-ジヒドロキシDPAn-6により、強力な炎症誘発性サイトカインIL-1βの分泌が有意に減少し、10,17-ジヒドロキシDPAn-6によって生じる減少は、DHAオキシリピン誘導体またはインドメタシンによって生じる減少よりも有意に大きかった。
【0200】
図20Cは、空気嚢浸出液中のマクロファージ走化性タンパク質-1(MCP-1)濃度を示す。17-ヒドロキシDPAn-6および10,17-ジヒドロキシDPAn-6により、この化学誘引サイトカインの分泌が有意に減少し、いずれの化合物もインドメタシンよりも大きなMCP-1分泌の阻害をもたらした。
【0201】
図20A〜Cから、2つのDPAn-6オキシリピン誘導体、17-ヒドロキシDPAn-6および10,17-ジヒドロキシDPAn-6が強力な抗炎症薬であり、この炎症モデルにおいて免疫細胞遊走の減少をもたらすことが示される。重要な炎症誘発性サイトカインの減少は、この抗炎症活性に寄与すると考えられる。顕著なことには、これら2つのDPAn-6オキシリピンの活性間には、サイトカイン産生(例えば、IL-1β)に及ぼす効果に差があり、特定の用途(例えば、敗血症 対 腫脹)に関して1つの化合物がその他の化合物よりもより適切であることが示される。17-ヒドロキシDPAn-6は、細胞遊走の阻害に関してDHA由来オキシリピンよりも強力であり、10,17-ジヒドロキシDPAn-6は、IL-1β分泌の減少に関してDHAオキシリピンよりも強力である。
【0202】
実施例16
以下の実施例は、細胞培養物におけるDHAおよびDPAn-6由来ドコサノイドの抗炎症効果を示す。
【0203】
グリア細胞によるTNFα誘導性IL-1β産生に及ぼすドコサノイドの効果:ヒトグリア細胞(DBGTRG-05MG、ATCC、バージニア州、マナッサス)を、補助物質および血清を含有する(ATCCによって規定される通り)RPMI培地0.2 ml中で、96ウェル培養皿(105細胞/ウェル)にて24時間培養した後、培地をドコサノイドまたは媒体(PBS)を含有する新鮮培地と置換し、その5分後以内に最終濃度100 ng/mlのヒト組換え体TNFα(Sigma-Aldrich、ミズーリ州、セントルイス)を添加した。細胞を17時間インキュベートした後、上清を除去し、細胞をPBS中の0.2% Triton-X100で溶解した。細胞溶解液を、市販のELISAキット(R&D Systems、ミネソタ州、ミネアポリス)を用いて、IL-1βについてアッセイした(図21)。バーは、平均値(n=3)±stdevを示す。両側スチューデントt検定を用いて対照と比較して*p=0.06。17-HDHA:17R-ヒドロキシDHA;17HDPAn-6:17-ヒドロキシDPAn-6;10,17-diHDPAn-6:10,17-ジヒドロキシDPAn-6。
【0204】
実施例17
以下の実施例は、培養でのヒトリンパ球に及ぼす10,17-ジヒドロキシDPAn-6の抗炎症効果をさらに例証し、抗CD3/抗CD28抗体で刺激したTリンパ球によるTNFα分泌の減少において、ジヒドロキシDPAn-6化合物がDHA類似体(10,17,ジヒドロキシDHA)よりも強力であることを実証する。
【0205】
図22A:ヒトTリンパ球によるTNFα分泌に及ぼすドコサノイドの効果。本質的にAriel et al, 2005に記載されている通りに、アッセイを行った。簡潔に説明すると、ヒト末梢血単核細胞を、Ficoll-Paque(商標) Plus(Amersham biosciences)勾配によって静脈血から単離した。ヒトT細胞濃縮カラム(R&D Systems)を製造業者の説明書に従って使用し、Tリンパ球を単離した。精製T細胞を、10%熱失活ウシ胎仔血清を含むRPMI-1640培地中の10,17-ジヒドロキシDPAn-6または10,17-ジヒドロキシDHAまたは媒体(0.05%エタノール)で37℃にて6時間処理した。次いで、リンパ球(200μl培地中200,000個細胞/ウェル)を、抗CD3抗体および抗CD28抗体でコーティングした96ウェルプレート(2μg/mlの各抗体100μlでウェルを一晩コーティング)に移し、41時間インキュベートした。TNFα濃度は、ELISA(R&D Systems)により細胞上清で測定した。群の平均値±stdev(n=4)を、スチューデントt検定により比較した。対照と比較して、*p<0.05および**p<0.01;#は、10 nM濃度の10,17-ジヒドロキシDPAn-6と10,17-ジヒドロキシDHAで処置した群間の統計的差(p=0.037)を表す。
【0206】
図22Bは、非コーティングウェルで、または抗CD3抗体のみで、抗CD28抗体のみで、もしくは2つの抗体の組み合わせでコーティングしたウェルで培養したドコサノイド非処置のリンパ球による上清中のTNFα濃度を示す。
【0207】
実施例18
以下の実施例は、ドコサトリエン酸の主要な15-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【0208】
0.05 Mホウ酸ナトリウム緩衝液、pH 9.0中で、ドコサトリエン酸(100μM、Cayman Chemical、ミシガン州、アナーバー)を100 ugの15-LOX(Sigma-Aldrich、ミズーリ州、セントルイス)と共に、勢いよく撹拌しながら4℃でインキュベートした。反応生成物を1M NaOH中のNaBH4の5 mg/ml溶液(反応混合液中の最終濃度は0.45 mg/mlであった)で還元し、続いて酢酸で中和し、溶出に無水メタノールを使用して、固相C-18カートリッジ(Supelco Discovery DSC-19)にて抽出した。エレクトロスプレーイオン化源を備えたEsquire 3000イオントラップ質量分析計(Bruker Daltonics、米国、マサチューセッツ州、ビルリカ)と接続されたAgilent 1100シリーズ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置(米国、カリフォルニア州、サンパウロ)を用いて、反応生成物をLC/MS/DADにより解析した。HPLCは、LUNA C18(2)カラム(250 x 4.6 mm、5ミクロン、Phenomenex、米国、カリフォルニア州、トランス)にて、50分間に48〜90%と増加するアセトニトリル勾配をつけた、30%メタノール水溶液中の25 mM酢酸アンモニウムからなる移動相を用いて実施した(流速0.4 ml/分)。質量分析計は、負イオン検出モードで操作した。窒素を、噴霧器圧20 psiおよび乾燥ガス流速 7 L/分で、噴霧および乾燥ガスとして使用した。界面温度は330 Cに維持した。
【0209】
図24は、このドコサトリエン酸反応の主要な生成物の構造を示す。17-ヒドロキシ生成物のMSスペクトルは、分子イオン(m/z 349)および特徴的な断片(331、279、251)を示し、UVスペクトルは共役ジエンを示す236 nmにおいてピークを示した。13-ヒドロキシ生成物のMSスペクトルは、分子イオン(m/z 349)および特徴的な断片(331、227、121)を示し、UVスペクトルは共役ジエンに特有の236 nmにおいてピークを示した。
【0210】
実施例19
以下の実施例は、ドコサトリエン酸の主要な12-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【0211】
30 ug/mlドコサトリエン酸(Cayman Chemical、ミシガン州、アナーバー)、0.1 M TRIS-HCl、pH 7.5、50 mM EDTA、および0.1% Tween(登録商標) 20を含有する反応混合液10 mlに対して、76 Uの2-リポキシゲナーゼ(12-LOX)(Cayman Chemical、ミシガン州、アナーバー)を添加した。反応混合液を室温(〜23℃)で30分間撹拌し、0.5 mg/ml NaBH4(1 M NAOH中5 mg/ml)を1 ml添加することによって反応生成物を還元した。続いて反応物を酢酸で酸性化し、固相C18 SPEカートリッジを用いて生成物を抽出し、メタノールで溶出した。反応混合液をUV-VIS分光光度法により解析し、実施例18に記載した通りに、反応生成物をLC-MS-DADを用いてさらに特徴づけた。
【0212】
主要な反応生成物、17-ヒドロキシドコサトリエン酸、13-ヒドロキシドコサトリエン酸、および13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸をLC-MSおよびDADデータによって特徴づけ、図25に示す。17-ヒドロキシ生成物のMSスペクトルは、分子イオン(m/z 349)および特徴的な断片(331、279、251)を示し、UVスペクトルは、共役ジエンを示す236 nmにおいてピークを示した。13-ヒドロキシ誘導体は、分子イオン(m/z 349)および断片(331、227)、ならびに共役ジエンを示す236 nmにおけるピークを有するUVスペクトルを示した。13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸のMSスペクトルは、親イオン(m/z 365)および特徴的な断片(227、249)を示した。
実施例20
以下の実施例は、ドコサトリエン酸の主要な5-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【0213】
200μMドコサトリエン酸(Cayman Chemical、ミシガン州、アナーバー)、0.1 Mリン酸緩衝液、pH 6.3、および5 mM EDTAを含有する反応混合液5 mlに対して、420 Uのジャガイモ5-リポキシゲナーゼ(5LOX)(Caymen Chemicals、ミシガン州、アナーバー)を添加した。反応混合液を室温(〜23℃)で30分間撹拌し、0.5 mg/ml NaBH4(1 M NAOH中5 mg/ml)を1 ml添加することによって反応生成物を還元した。続いて反応物を酢酸で酸性化し、固相C18 SPEカートリッジを用いて生成物を抽出し、メタノールで溶出した。反応生成物を固相C18 SPEカートリッジを用いて抽出し、メタノールで溶出した。反応混合液をUV-VIS分光光度法により解析し、実施例18に記載した通りに、反応生成物をLC-MS-DADを用いてさらに特徴づけた。主要な反応生成物、13-ヒドロキシドコサトリエン酸および20-ヒドロキシドコサトリエン酸を図26に示す。13-ヒドロキシドコサトリエン酸のMSスペクトルは、分子イオン(m/z 349)および特徴的な断片(331、305、291)を示し、UVスペクトルは、共役ジエンを示す236 nmにおいてピークを示した。20-ヒドロキシドコサトリエン酸のMSスペクトルは、親イオン(m/z 349)および特徴的な断片(331、305、227、121)を示した。
【0214】
実施例21
以下の実施例は、ドコサジエン酸(n-6)の主要な15-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【0215】
0.05 Mホウ酸ナトリウム緩衝液、pH 9.0中で、ドコサジエン酸(100μM)(Nu-Chek Prep、ミネソタ州、エリシアン)を100 ugの15-LOX(Sigma-Aldrich、ミズーリ州、セントルイス)と共に、勢いよく撹拌しながら4℃でインキュベートした。反応生成物を1 M NaOH中のNaBH4の5 mg/ml溶液(反応混合液中の最終濃度は0.45 mg/mlであった)で還元し、続いて酢酸で中和し、溶出に無水メタノールを使用して、固相C-18カートリッジ(Supelco Discovery DSC-19)にて抽出した。反応混合液をUV-VIS分光光度法により解析し、実施例18に記載した通りに、反応生成物をLC-MS-DADを用いてさらに特徴づけた。モノヒドロキシ誘導体反応生成物、17-ヒドロキシドコサジエン酸を図27に示す。MSスペクトルは、親イオン(m/z 351)および特徴的な断片333、251を示した。UVスペクトルは、共役ジエンを示す236 nmにおいてピークを示した。
【0216】
実施例22
以下の実施例は、ドコサジエン酸(n-6)の主要な12-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【0217】
ドコサジエン酸(30μg/ml)(Nu-Chek Prep、ミネソタ州、エリシアン)を、0.1 M TRIS-HCL、pH 7.5、50 mM EDTA、0.1% Tween 20中の76 Uのブタ12-LOX(Cayman Chemical、ミシガン州、アナーバー)と共に、勢いよく撹拌しながら室温(〜23℃)で30分間インキュベートした。反応生成物をNaBH4(0.45 mg/ml)で還元し、次いで溶出に無水メタノールを使用して、固相C-18カートリッジ(Supelco Discovery DSC-19)にて抽出した。反応混合液をUV-VIS分光光度法により解析し、実施例18に記載した通りに、反応生成物をLC-MS-DADを用いてさらに特徴づけた。エポキシ,モノヒドロキシ誘導体である13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサセン酸(docosasenoic acid)および15,16-エポキシ,17-ヒドロキシドコセン酸、ならびにジヒドロキシ誘導体である13,16-ジヒドロキシドコサジエン酸を図28に示す。
【0218】
実施例23
以下の実施例は、5Z,8Z,11Zエイコサトリエン酸の主要な12-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【0219】
5Z,8Z,11Zエイコサトリエン酸(30μg/ml)(Cayman Chemicals、ミシガン州、アナーバー)を、0.1 M TRIS-HCL、pH 7.5、50 mM EDTA、0.1% Tween(登録商標) 20中の76 Uのブタ12-LOX(Cayman Chemical、ミシガン州、アナーバー)と共に、勢いよく撹拌しながら室温(〜23℃)で30分間インキュベートした。反応生成物をNaBH4(0.45 mg/ml)で還元し、次いで溶出に無水メタノールを使用して、固相C-18カートリッジ(Supelco Discovery DSC-19)にて抽出した。反応混合液をUV-VIS分光光度法により解析し、実施例18に記載した通りに、反応生成物をLC-MS-DADを用いてさらに特徴づけた。ジヒドロキシ誘導体生成物、6,12-ジヒドロキシエイコサトリエン酸を図29に示す。MSスペクトルは、親イオン(m/z 337)および特徴的な断片(319、195、127)を示した。
【0220】
実施例24
以下の実施例は、5Z,8Z,11Zエイコサトリエン酸の主要な15-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【0221】
0.05 Mホウ酸ナトリウム緩衝液、pH 9.0中で、5Z,8Z,11Zエイコサトリエン酸(100μM)(Nu-Chek Prep、ミネソタ州、エリシアン)を100 ugの15-LOX(Sigma-Aldrich、ミズーリ州、セントルイス)と共に、勢いよく撹拌しながら4℃でインキュベートした。反応生成物を1M NaOH中のNaBH4の5 mg/ml溶液(反応混合液中の最終濃度は0.45 mg/mlであった)で還元し、続いて酢酸で中和し、溶出に無水メタノールを使用して、固相C-18カートリッジ(Supelco Discovery DSC-19)にて抽出した。反応混合液をUV-VIS分光光度法により解析し、実施例18に記載した通りに、反応生成物をLC-MS-DADを用いてさらに特徴づけた。実施例18に記載した通りに、反応生成物をLC-MS-DADを用いてさらに特徴づけた。モノヒドロキシ誘導体生成物、6-ヒドロキシエイコサトリエン酸を図30に示す。MSスペクトルは、親イオン(m/z 321)および特徴的な断片、127を示した。
【0222】
実施例25
以下の実施例は、11Z,14Z,17Zエイコサトリエン酸(n-3)の主要な5-リポキシゲナーゼ生成物を示す。
【0223】
0.1 Mリン酸緩衝液、pH 6.3および5 mM EDTA中に200μM 11Z,14Z,17Zエイコサトリエン酸(Cayman Chemicals、ミシガン州、アナーバー)を含有する反応混合液5 mlに対して、420 Uのジャガイモ5-リポキシゲナーゼ(5LOX)(Caymen Chemicals、ミシガン州、アナーバー)を添加した。反応混合液を室温(〜23℃)で30分間撹拌し、0.5 mg/ml NaBH4(1 M NAOH中5 mg/ml)を1 ml添加することによって反応生成物を還元した。続いて反応物を酢酸で酸性化し、固相C18 SPEカートリッジを用いて生成物を抽出し、メタノールで溶出した。反応生成物を固相C18 SPEカートリッジを用いて抽出し、メタノールで溶出した。反応混合液をUV-VIS分光光度法により解析し、実施例18に記載した通りに、反応生成物をLC-MS-DADを用いてさらに特徴づけた。診断分子イオン337および断片(319、301、279、199、137)を伴う質量分析により、主要な反応生成物、11,18-ジヒドロキシエイコサトリエン酸(図31に表示)が決定された。UVスペクトルは、共役トリエンに特有の、260 nmおよび280 nmに肩を有する270 nmの位置に特徴的なピークを示した。
【0224】
参考文献




【0225】
本明細書において記載または引用した参考文献はそれぞれ、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0226】
本発明の様々な態様について詳述してきたが、当業者には、それらの態様の変更および適合が行われると考えられることは明らかである。しかしながら、そのような変更および適合は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内であることが明確に理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドコサペンタエン酸(DPAn-6)、ドコサペンタエン酸(DPAn-3)、ドコサテトラエン酸(DTAn-6)、ドコサトリエン酸(DTrAn-3)、またはドコサジエン酸(DDAn-6)の単離されたドコサノイド。
【請求項2】
DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DTrAn-3、およびDDAn-6のモノヒドロキシ誘導体、DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DTrAn-3、およびDDAn-6のジヒドロキシ誘導体、ならびにDPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DTrAn-3、およびDDAn-6のトリヒドロキシ誘導体からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/S、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせである、請求項1記載の単離されたドコサノイド。
【請求項3】
7-ヒドロキシDPAn-6;8-ヒドロキシDPAn-6;10-ヒドロキシDPAn-6;11-ヒドロキシDPAn-6;13-ヒドロキシDPAn-6;14-ヒドロキシDPAn-6;17-ヒドロキシDPAn-6;7,17-ジヒドロキシDPAn-6;10,17-ジヒドロキシDPAn-6;13,17-ジヒドロキシDPAn-6;7,14-ジヒドロキシDPAn-6;8,14-ジヒドロキシDPAn-6;16,17-ジヒドロキシDPAn-6;4,5-ジヒドロキシDPAn-6;7,16,17-トリヒドロキシDPAn-6;および4,5,17-トリヒドロキシDPAn-6からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、請求項1記載の単離されたドコサノイド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載の少なくとも1つのドコサノイドを含む組成物。
【請求項5】
治療組成物、栄養組成物、または化粧用組成物である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
アスピリンをさらに含む、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
DPAn-6、DPAn-3、DTAn-6、DHA、EPA、DTrAn-3、DDAn-6、ETrAn-9、ETrAn-3、DHAのオキシリピン誘導体、およびEPAのオキシリピン誘導体からなる群より選択される化合物をさらに含む、請求項4記載の組成物。
【請求項8】
スタチン、非ステロイド性抗炎症薬、抗酸化剤、および神経保護薬からなる群より選択される少なくとも1つの薬剤をさらに含む、請求項4記載の組成物。
【請求項9】
細菌油、植物種子油、および水生動物油からなる群より選択される油を含む、請求項4記載の組成物。
【請求項10】
ドコサペンタエン酸(DPAn-3)の単離されたドコサノイド。
【請求項11】
DPAn-3のモノヒドロキシ誘導体、DPAn-3のジヒドロキシ誘導体、およびDPAn-3のトリヒドロキシ誘導体からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、請求項10記載の単離されたドコサノイド。
【請求項12】
7-ヒドロキシDPAn-3;10-ヒドロキシDPAn-3;11-ヒドロキシDPAn-3;13-ヒドロキシDPAn-3;14-ヒドロキシDPAn-3;16-ヒドロキシDPAn-3;17-ヒドロキシDPAn-3;7,17-ジヒドロキシDPAn-3;10,17-ジヒドロキシDPAn-3;8,14-ジヒドロキシDPAn-3;16,17-ジヒドロキシDPAn-3;13,20-ジヒドロキシDPAn-3;10,20-ジヒドロキシDPAn-3;および7,16,17-トリヒドロキシDPAn-3からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、請求項10記載の単離されたドコサノイド。
【請求項13】
請求項10記載の少なくとも1つのドコサノイドを含む組成物。
【請求項14】
ドコサテトラエン酸(DTAn-6)の単離されたドコサノイド。
【請求項15】
DTAn-6のモノヒドロキシ誘導体、DTAn-6のジヒドロキシ誘導体、およびDTAn-6のトリヒドロキシ誘導体からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせである、請求項14記載の単離されたドコサノイド。
【請求項16】
7-ヒドロキシDTAn-6;10-ヒドロキシDTAn-6;13-ヒドロキシDTAn-6;17-ヒドロキシDTAn-6;7,17-ジヒドロキシDTAn-6;10,17-ジヒドロキシDTAn-6;16,17-ジヒドロキシDTAn-6;および7,16,17-トリヒドロキシDTAn-6;またはその類似体、誘導体、もしくは塩からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせである、請求項14記載の単離されたドコサノイド。
【請求項17】
請求項16記載の少なくとも1つのドコサノイドを含む組成物。
【請求項18】
4,5-エポキシ-17-ヒドロキシDPA;7,8-エポキシDHA;10,11-エポキシDHA;13,14-エポキシDHA;19,20-エポキシDHA;13,14-ジヒドロキシDHA;16,17-ジヒドロキシDTAn-6;7,16,17-トリヒドロキシDTAn-6;4,5,17-トリヒドロキシDTAn-6;7,16,17-トリヒドロキシDTAn-3;16,17-ジヒドロキシDTAn-3;16,17-ジヒドロキシDTRAn-6;7,16,17-トリヒドロキシDTRAn-6;4,5-ジヒドロキシDTAn-6;および10,16,17-トリヒドロキシDTRAn-6;13-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);17-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);20-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);15,16-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);13,16-ジヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6)からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、C22多価不飽和脂肪酸の単離されたドコサノイド。
【請求項19】
請求項18記載の少なくとも1つのドコサノイドを含む組成物。
【請求項20】
油1グラム当たり少なくとも約10μgのドコサノイドを含む油。
【請求項21】
油1グラム当たり少なくとも約20μgのドコサノイドを含む、請求項20記載の油。
【請求項22】
油1グラム当たり少なくとも約50μgのドコサノイドを含む、請求項20記載の油。
【請求項23】
油1グラム当たり少なくとも約100μgのドコサノイドを含む、請求項20記載の油。
【請求項24】
ドコサノイドが、ドコサテトラエン酸(DTAn-6)、ドコサペンタエン酸(DPAn-6)、ドコサペンタエン酸(DPAn-3)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサトリエン酸(DTrAn-3)、およびドコサジエン酸(DDAn-6)からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸に由来する、請求項20記載の油。
【請求項25】
ドコサノイドが、ドコサテトラエン酸(DTAn-6)、ドコサペンタエン酸(DPAn-6)、およびドコサペンタエン酸(DPAn-3)からなる群より選択される多価不飽和脂肪酸に由来する、請求項20記載の油。
【請求項26】
ドコサノイドがドコサペンタエン酸(DPAn-6)に由来する、請求項20記載の油。
【請求項27】
ドコサノイドが、DPAn-6のモノヒドロキシ誘導体、DPAn-6のジヒドロキシ誘導体、およびDPAn-6のトリヒドロキシ誘導体からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせである、請求項26記載の油。
【請求項28】
ドコサノイドが、7-ヒドロキシDPAn-6;8-ヒドロキシDPAn-6;10-ヒドロキシDPAn-6;11-ヒドロキシDPAn-6;13-ヒドロキシDPAn-6;14-ヒドロキシDPAn-6;17-ヒドロキシDPAn-6;7,17-ジヒドロキシDPAn-6;10,17-ジヒドロキシDPAn-6;13,17-ジヒドロキシDPAn-6;7,14-ジヒドロキシDPAn-6;8,14-ジヒドロキシDPAn-6;16,17-ジヒドロキシDPAn-6;4,5-ジヒドロキシDPAn-6;7,16,17-トリヒドロキシDPAn-6;および4,5,17-トリヒドロキシDPAn-6からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、請求項26記載の油。
【請求項29】
ドコサノイドがドコサペンタエン酸(DPAn-3)に由来する、請求項20記載の油。
【請求項30】
ドコサノイドが、DPAn-3のモノヒドロキシ誘導体、DPAn-3のジヒドロキシ誘導体、およびDPAn-3のトリヒドロキシ誘導体からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせである、請求項29記載の油。
【請求項31】
ドコサノイドが、7-ヒドロキシDPAn-3;10-ヒドロキシDPAn-3;11-ヒドロキシDPAn-3;13-ヒドロキシDPAn-3;14-ヒドロキシDPAn-3;16-ヒドロキシDPAn-3;17-ヒドロキシDPAn-3;7,17-ジヒドロキシDPAn-3;10,17-ジヒドロキシDPAn-3;8,14-ジヒドロキシDPAn-3;16,17-ジヒドロキシDPAn-3;13,20-ジヒドロキシDPAn-3;10,20-ジヒドロキシDPAn-3;および7,16,17-トリヒドロキシDPAn-3からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、請求項29記載の油。
【請求項32】
ドコサノイドがドコサテトラエン酸(DTAn-6)に由来する、請求項20記載の油。
【請求項33】
ドコサノイドが、DTAn-6のモノヒドロキシ誘導体、DTAn-6のジヒドロキシ誘導体、およびDTAn-6のトリヒドロキシ誘導体からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせである、請求項32記載の油。
【請求項34】
ドコサノイドが、7-ヒドロキシDTAn-6;10-ヒドロキシDTAn-6;13-ヒドロキシDTAn-6;17-ヒドロキシDTAn-6;7,17-ジヒドロキシDTAn-6;10,17-ジヒドロキシDTAn-6;16,17-ジヒドロキシDTAn-6;および7,16,17-トリヒドロキシDTAn-6からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、請求項32記載の油。
【請求項35】
ドコサノイドがドコサトリエン酸(DTrAn-3)に由来する、請求項20記載の油。
【請求項36】
ドコサノイドが、13-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);17-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);20-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);および13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3)からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、請求項35記載の油。
【請求項37】
ドコサノイドがドコサジエン酸(DDAn-6)に由来する、請求項20記載の油。
【請求項38】
ドコサノイドが、17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);15,16-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);および13,16-ジヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6)からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、請求項35記載の油。
【請求項39】
細菌油、植物種子油、および水生動物油からなる群より選択される、請求項20〜38のいずれか一項記載の油。
【請求項40】
請求項20〜39のいずれか一項記載の油を含む組成物。
【請求項41】
治療組成物である、請求項40記載の組成物。
【請求項42】
栄養組成物である、請求項40記載の組成物。
【請求項43】
化粧用組成物である、請求項40記載の組成物。
【請求項44】
DPAn-6、DPAn-3、およびDTAn-6からなる群より選択される長鎖多価不飽和脂肪酸、ならびに薬学的または栄養学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項45】
アスピリンをさらに含む、請求項44記載の組成物。
【請求項46】
DPAn-6、DTAn-6、またはDPAn-3からのドコサノイドの産生を触媒する酵素をさらに含む、請求項44記載の組成物。
【請求項47】
個体における炎症または神経変性の少なくとも1つの症状を予防または軽減する方法であって、個体における炎症または神経変性の少なくとも1つの症状を軽減するために、炎症もしくは神経変性またはそれらに関連する状態もしくは疾患を有するリスクがある、それらを有すると診断された、またはそれらを有すると疑われる個体に、DPAn-6、DPAn-3、ドコサトリエン酸(DTrAn-3);ドコサジエン酸(DDAn-6)、DPAn-6のオキシリピン誘導体、DPAn-3のオキシリピン誘導体、ドコサトリエン酸(DTrAn-3)のオキシリピン誘導体、およびドコサジエン酸(DDAn-6)のオキシリピン誘導体からなる群より選択される薬剤を投与する段階を含む方法。
【請求項48】
薬剤が、Tリンパ球による腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の産生を減少させるのに有効である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
薬剤が、炎症部位への好中球およびマクロファージの遊走を減少させるのに有効である、請求項47記載の方法。
【請求項50】
薬剤が、個体におけるインターロイキン-1β(IL-1β)産生を減少させるのに有効である、請求項47記載の方法。
【請求項51】
薬剤が、個体におけるマクロファージ走化性タンパク質-1(MCP-1)を減少させるのに有効である、請求項47記載の方法。
【請求項52】
少なくとも1つの長鎖ω-3脂肪酸および/またはそのオキシリピン誘導体を個体に投与する段階をさらに含む、請求項47記載の方法。
【請求項53】
ω-3脂肪酸がDHAおよびEPAからなる群より選択される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
DPAn-6、DPAn-3、ドコサトリエン酸(DTrAn-3)、またはドコサジエン酸(DDAn-6)が、以下の形態:DPAn-6、DPAn-3、ドコサトリエン酸(DTrAn-3)、もしくはドコサジエン酸(DDAn-6)を含有するトリグリセリド;DPAn-6、DPAn-3、ドコサトリエン酸(DTrAn-3)、もしくはドコサジエン酸(DDAn-6)を含有するリン脂質;遊離脂肪酸;および/またはDPAn-6、DPAn-3、ドコサトリエン酸(DTrAn-3)、もしくはドコサジエン酸(DDAn-6)のエチルもしくはメチルエステルの1つとして提供される、請求項47記載の方法。
【請求項55】
DPAn-6、DPAn-3、ドコサトリエン酸(DTrAn-3)、ドコサジエン酸(DDAn-6)、またはそれらのオキシリピン誘導体が、細菌油、動物油の形態で、または長鎖多価不飽和脂肪酸を産生するように遺伝子改変された油糧種子植物に由来する植物油から提供される、請求項47記載の方法。
【請求項56】
オキシリピン誘導体が、DPAn-6、DPAn-3、ドコサトリエン酸(DTrAn-3)、またはドコサジエン酸(DDAn-6)からそのオキシリピン誘導体への酵素変換により産生される、請求項47記載の方法。
【請求項57】
オキシリピン誘導体が新規に化学合成される、請求項47記載の方法。
【請求項58】
オキシリピン誘導体が、DPAn-6のモノヒドロキシ生成物のRエピマー、DPAn-6のモノヒドロキシ生成物のSエピマー、DPAn-3のモノヒドロキシ生成物のRエピマー、DPAn-3のモノヒドロキシ生成物のSエピマー、DTrAn-3のモノヒドロキシ生成物のRエピマー、DTrAn-3のモノヒドロキシ生成物のSエピマー、DDAn-6のモノヒドロキシ生成物のRエピマー、DDAn-6のモノヒドロキシ生成物のSエピマー、DPAn-6のジヒドロキシ生成物のRエピマー、DPAn-6のジヒドロキシ生成物のSエピマー、DPAn-3のジヒドロキシ生成物のRエピマー、DPAn-3のジヒドロキシ生成物のSエピマー、DTrAn-3のジヒドロキシ生成物のRエピマー、DTrAn-3のジヒドロキシ生成物のSエピマー、DDAn-6のジヒドロキシ生成物のRエピマー、DDAn-6のジヒドロキシ生成物のSエピマー、DPAn-6のトリヒドロキシ生成物のRエピマー、DPAn-6のトリヒドロキシ生成物のSエピマー、DPAn-3のトリヒドロキシ生成物のRエピマー、DPAn-3のトリヒドロキシ生成物のSエピマー、DTrAn-3のトリヒドロキシ生成物のRエピマー、DTrAn-3のトリヒドロキシ生成物のSエピマー、DDAn-6のトリヒドロキシ生成物のRエピマー、DDAn-6のトリヒドロキシ生成物のSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、もしくはそれらの他の組み合わせからなる群より選択される、請求項47記載の方法。
【請求項59】
オキシリピン誘導体が、7-ヒドロキシDPAn-6;8-ヒドロキシDPAn-6;10-ヒドロキシDPAn-6;11-ヒドロキシDPAn-6;13-ヒドロキシDPAn-6;14-ヒドロキシDPAn-6;17-ヒドロキシDPAn-6;7,17-ジヒドロキシDPAn-6;10,17-ジヒドロキシDPAn-6;13,17-ジヒドロキシDPAn-6;7,14-ジヒドロキシDPAn-6;8,14-ジヒドロキシDPAn-6;16,17-ジヒドロキシDPAn-6;4,5-ジヒドロキシDPAn-6;7,16,17-トリヒドロキシDPAn-6;4,5,17-トリヒドロキシDPAn-6;13-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);17-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);20-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);15,16-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);13,16-ジヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6)からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、請求項47記載の方法。
【請求項60】
オキシリピン誘導体が、7-ヒドロキシDPAn-3;10-ヒドロキシDPAn-3;11-ヒドロキシDPAn-3;13-ヒドロキシDPAn-3;14-ヒドロキシDPAn-3;16-ヒドロキシDPAn-3;17-ヒドロキシDPAn-3;7,17-ジヒドロキシDPAn-3;10,17-ジヒドロキシDPAn-3;8,14-ジヒドロキシDPAn-3;16,17-ジヒドロキシDPAn-3;13,20-ジヒドロキシDPAn-3;10,20-ジヒドロキシDPAn-3;および7,16,17-トリヒドロキシDPAn-3からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、請求項47記載の方法。
【請求項61】
薬剤が、17-ヒドロキシDPAn-6および10,17-ジヒドロキシDPAn-6、またはそれらの誘導体もしくは類似体からなる群より選択される、請求項47記載の方法。
【請求項62】
薬剤が17-ヒドロキシDPAn-6またはその誘導体もしくは類似体である、請求項47記載の方法。
【請求項63】
薬剤が10,17-ジヒドロキシDPAn-6またはその誘導体もしくは類似体である、請求項47記載の方法。
【請求項64】
薬剤がDPAn-6である、請求項47記載の方法。
【請求項65】
薬剤がDPAn-3である、請求項47記載の方法。
【請求項66】
個体にアスピリンを投与する段階をさらに含む、請求項47記載の方法。
【請求項67】
スタチン、非ステロイド性抗炎症薬、抗酸化剤、および神経保護薬からなる群より選択される少なくとも1つの薬剤を投与する段階をさらに含む、請求項47記載の方法。
【請求項68】
ドコサペンタエン酸(DPAn-6)のドコサノイド、ドコサペンタエン酸(DPAn-3)のドコサノイド、ドコサテトラエン酸(DTAn-6)のドコサノイド、ドコサジエン酸(DDAn-6)のドコサノイド、ドコサトリエン酸(DTrAn-3)のドコサノイド、またはC22多価不飽和脂肪酸のドコサノイドを化学合成する段階を含む、ドコサノイドを産生する方法であって、ドコサノイドが、4,5-エポキシ-17-ヒドロキシDPA;7,8-エポキシDHA;10,11-エポキシDHA;13,14-エポキシDHA;19,20-エポキシDHA;13,14-ジヒドロキシDHA;16,17-ジヒドロキシDTAn-6;7,16,17-トリヒドロキシDTAn-6;4,5,17-トリヒドロキシDTAn-6;7,16,17-トリヒドロキシDTAn-3;16,17-ジヒドロキシDTAn-3;16,17-ジヒドロキシDTRAn-6;7,16,17-トリヒドロキシDTRAn-6;4,5-ジヒドロキシDTAn-6;10,16,17-トリヒドロキシDTRAn-6;13-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);17-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);20-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);15,16-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);13,16-ジヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6)からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である方法。
【請求項69】
DPAn-6基質、DTAn-6基質、DPAn-3基質、ドコサトリエン酸(DTrAn-3)基質、またはドコサジエン酸(DDAn-6)基質を、該DPAn-6基質、該DTAn-6基質、該DPAn-3基質、該ドコサトリエン酸(DTrAn-3)基質、または該ドコサジエン酸(DDAn-6)基質からのドコサノイドの産生を触媒する酵素と接触させることにより、ドコサノイドを触媒的に産生する段階を含む、ドコサノイドを産生する方法。
【請求項70】
酵素が、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、およびシトクロムP450酵素からなる群より選択される、請求項69記載の方法。
【請求項71】
酵素が、12-リポキシゲナーゼ、5-リポキシゲナーゼ、15-リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2、ヘモグロビンα1、ヘモグロビンβ、ヘモグロビンγA、CYP4A11、CYP4B1、CYP4F11、CYP4F12、CYP4F2、CYP4F3、CYP4F8、CYP4V2、CYP4X1、CYP41、CYP2J2、CYP2C8、トロンボキサンA合成酵素1、プロスタグランジンI2合成酵素、およびプロスタサイクリン合成酵素からなる群より選択される、請求項69記載の方法。
【請求項72】
ドコサノイドを産生させるために、22炭素長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)からのドコサノイドの産生を触媒する酵素を過剰発現するように遺伝子改変された長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)産生微生物を培養するか、またはそのように遺伝子改変されたLCPUFA産生植物を栽培する段階を含む、ドコサノイドを産生する方法。
【請求項73】
酵素が、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、およびシトクロムP450酵素からなる群より選択される、請求項72記載の方法。
【請求項74】
酵素が、12-リポキシゲナーゼ、5-リポキシゲナーゼ、15-リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2、ヘモグロビンα1、ヘモグロビンβ、ヘモグロビンγA、CYP4A11、CYP4B1、CYP4F11、CYP4F12、CYP4F2、CYP4F3、CYP4F8、CYP4V2、CYP4X1、CYP41、CYP2J2、CYP2C8、トロンボキサンA合成酵素1、プロスタグランジンI2合成酵素、およびプロスタサイクリン合成酵素からなる群より選択される、請求項72記載の方法。
【請求項75】
LCPUFAがDPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、およびDTrAn-3からなる群より選択される、請求項72記載の方法。
【請求項76】
LCPUFA産生微生物またはLCPUFA産生植物が、LCPUFAを産生するように遺伝子改変されている、請求項72記載の方法。
【請求項77】
LCPUFA産生微生物がLCPUFAを内因的に産生する、請求項72記載の方法。
【請求項78】
LCPUFA産生微生物がトラウストキトリド(Thraustochytrid)である、請求項77記載の方法。
【請求項79】
長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)産生微生物、LCPUFA産生植物、またはLCPUFA産生動物によって産生される長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を、該LCPUFAのドコサノイドへの変換を触媒する酵素と接触させる段階を含む、ドコサノイドを産生する方法。
【請求項80】
酵素が、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、およびシトクロムP450酵素からなる群より選択される、請求項79記載の方法。
【請求項81】
酵素が、12-リポキシゲナーゼ、5-リポキシゲナーゼ、15-リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2、ヘモグロビンα1、ヘモグロビンβ、ヘモグロビンγA、CYP4A11、CYP4B1、CYP4F11、CYP4F12、CYP4F2、CYP4F3、CYP4F8、CYP4V2、CYP4X1、CYP41、CYP2J2、CYP2C8、トロンボキサンA合成酵素1、プロスタグランジンI2合成酵素、およびプロスタサイクリン合成酵素からなる群より選択される、請求項79記載の方法。
【請求項82】
LCPUFAがDPAn-6、DTAn-6、DPAn-3、DDAn-6、およびDTrAn-3からなる群より選択される、請求項79記載の方法。
【請求項83】
LCPUFA産生微生物またはLCPUFA産生植物が、LCPUFAを産生するように遺伝子改変されている、請求項79記載の方法。
【請求項84】
LCPUFA産生微生物がLCPUFAを内因的に産生する、請求項79記載の方法。
【請求項85】
LCPUFA産生微生物がトラウストキトリドである、請求項84記載の方法。
【請求項86】
LCPUFA由来の少なくとも1つのオキシリピンの存在に関して油を強化するか、または油中の該オキシリピンを安定化する方法であって、LCPUFA産生微生物を、LCPUFAのオキシリピンへの変換を触媒する酵素の酵素活性を増強する化合物と共に培養する段階を含む方法。
【請求項87】
化合物が酵素の発現を促進する、請求項86記載の方法。
【請求項88】
化合物がLCPUFAの自動酸化を増強または惹起する、請求項86記載の方法。
【請求項89】
化合物がアセトサリチル酸(acetosalicylic acid)である、請求項86記載の方法。
【請求項90】
オキシリピンを回収および精製する段階をさらに含む、請求項86記載の方法。
【請求項91】
オキシリピンがさらに処理され、オキシリピンの誘導体またはその塩として回収される、請求項86記載の方法。
【請求項92】
LCPUFAのオキシリピンへの変換を触媒する酵素の存在下で、細菌または植物油糧種子を破裂させる段階であって、細菌および植物油糧種子が少なくとも1つのLCPUFAを産生する段階を含む、LCPUFA由来の少なくとも1つのオキシリピンの存在に関して油を強化するか、または油中の該オキシリピンを安定化する方法。
【請求項93】
酵素が、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、およびシトクロムP450酵素からなる群より選択される、請求項92記載の方法。
【請求項94】
オキシリピンを回収および精製する段階をさらに含む、請求項92記載の方法。
【請求項95】
オキシリピンがさらに処理され、オキシリピンの誘導体またはその塩として回収される、請求項94記載の方法。
【請求項96】
以下の段階を含む、LCPUFAのオキシリピン誘導体を含有する油を処理する方法:
a) 細菌、植物、または動物源によって産生されたLCPUFAのオキシリピン誘導体を含有する油を回収する段階;および
b) LCPUFAのオキシリピン誘導体を保持する油を産生するために、油からの遊離脂肪酸の除去を最小限に抑える工程を用いて油を純化する段階。
【請求項97】
動物が水生動物である、請求項96記載の方法。
【請求項98】
動物が魚である、請求項96記載の方法。
【請求項99】
植物が油糧種子植物である、請求項96記載の方法。
【請求項100】
細菌源がトラウストキトリドである、請求項96記載の方法。
【請求項101】
純化段階がアルコール、アルコール:水混合液、または有機溶媒による油の抽出を含む、請求項96記載の方法。
【請求項102】
純化段階が非極性有機溶媒での油の抽出を含む、請求項96記載の方法。
【請求項103】
純化段階がアルコールまたはアルコール:水混合液での油の抽出を含む、請求項96記載の方法。
【請求項104】
純化段階が、油を冷却濾過する段階、漂白する段階、さらに冷却濾過する段階、および脱臭する段階をさらに含む、請求項96記載の方法。
【請求項105】
純化段階が、冷却濾過段階なしで、油を漂白する段階および脱臭する段階をさらに含む、請求項96記載の方法。
【請求項106】
純化段階が、冷却濾過段階または漂白段階なしで、油を脱臭する段階をさらに含む、請求項96記載の方法。
【請求項107】
抗酸化剤を油に添加する段階をさらに含む、請求項96記載の方法。
【請求項108】
純化段階が油を乳濁液として調製する段階を含む、請求項96記載の方法。
【請求項109】
油が、LCPUFAのオキシリピンへの変換を触媒する酵素と接触させることによりさらに処理される、請求項96記載の方法。
【請求項110】
酵素が、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、およびシトクロムP450酵素からなる群より選択される、請求項109記載の方法。
【請求項111】
酵素が基体(substrate)上に固定化されている、請求項109記載の方法。
【請求項112】
油中のLCPUFAからLCPUFAオキシリピン誘導体を分離する段階をさらに含む、請求項96記載の方法。
【請求項113】
分離段階がクロマトグラフィーによる、請求項112記載の方法。
【請求項114】
分離されたLCPUFAオキシリピンを油または組成物に添加する段階をさらに含む、請求項112記載の方法。
【請求項115】
以下の段階を含む、LCPUFAのオキシリピン誘導体を含有する油を処理する方法:
a) 細菌、植物、または動物源によって産生されたLCPUFAのオキシリピン誘導体を含有する油を回収する段階;
b) 油を純化する段階;および
c) 油中のLCPUFAからLCPUFAオキシリピンを分離する段階。
【請求項116】
段階(c)の前に、化学的または生物学的工程により油中のLCPUFAをLCPUFAオキシリピンに変換する段階をさらに含む、請求項115記載の方法。
【請求項117】
分離されたLCPUFAオキシリピンを生成物に添加する段階をさらに含む、請求項115記載の方法。
【請求項118】
個体における炎症または神経変性の少なくとも1つの症状を予防または軽減する方法であって、個体における炎症または神経変性の少なくとも1つの症状を軽減するために、炎症もしくは神経変性またはそれらに関連する状態もしくは疾患を有するリスクがある、それらを有すると診断された、またはそれらを有すると疑われる患者に、DTAn-6、DTAn-6のオキシリピン誘導体、DDAn-6、DDAn-6のオキシリピン誘導体、DTrAn-3、およびDTrAn-3のオキシリピン誘導体からなる群より選択される薬剤を投与する段階を含む方法。
【請求項119】
薬剤が、DTAn-6のモノヒドロキシ誘導体、DTAn-6のジヒドロキシ誘導体、DTAn-6のトリヒドロキシ誘導体、DDAn-6のモノヒドロキシ誘導体、DDAn-6のジヒドロキシ誘導体、DDAn-6のトリヒドロキシ誘導体、DTrAn-3のモノヒドロキシ誘導体、DTrAn-3のジヒドロキシ誘導体、およびDTrAn-3のトリヒドロキシ誘導体からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせである、請求項118記載の方法。
【請求項120】
薬剤が、7-ヒドロキシDTAn-6;10-ヒドロキシDTAn-6;13-ヒドロキシDTAn-6;17-ヒドロキシDTAn-6;7,17-ジヒドロキシDTAn-6;10,17-ジヒドロキシDTAn-6;16,17-ジヒドロキシDTAn-6;および7,16,17-トリヒドロキシDTAn-6;13-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);17-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);20-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサトリエン酸(DTrAn-3);17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);13,14-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);15,16-エポキシ,17-ヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6);13,16-ジヒドロキシドコサジエン酸(DDAn-6)からなる群より選択されるドコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、請求項114記載の方法。
【請求項121】
LCPUFAをオキシリピンに変換する酵素を発現するように遺伝的に形質転換された、PUFA PKS経路を含む生物。
【請求項122】
植物および微生物からなる群より選択される、請求項121記載の生物。
【請求項123】
PUFA PKS経路を発現して長鎖多価不飽和脂肪酸を産生するように遺伝子改変された油糧種子植物である、請求項121記載の生物。
【請求項124】
微生物である、請求項121記載の生物。
【請求項125】
微生物が内因性PUFA PKS経路を含む、請求項124記載の生物
【請求項126】
酵素が、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、およびシトクロムP450酵素からなる群より選択される、請求項121記載の生物。
【請求項127】
6-ヒドロキシエイコサトリエン酸;6,12-ジヒドロキシエイコサトリエン酸 11,18-ジヒドロキシ-エイコサトリエン酸からなる群より選択されるエイコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ、またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、C20多価不飽和脂肪酸の単離されたエイコサノイド。
【請求項128】
請求項127記載の少なくとも1つのエイコサノイドを含む組成物。
【請求項129】
油1グラム当たり少なくとも約10μgのエイコサノイドを含む油。
【請求項130】
油1グラム当たり少なくとも約20μgのエイコサノイドを含む、請求項127記載の油。
【請求項131】
油1グラム当たり少なくとも約50μgのエイコサノイドを含む、請求項127記載の油。
【請求項132】
油1グラム当たり少なくとも約100μgのエイコサノイドを含む、請求項127記載の油。
【請求項133】
エイコサノイドが、エイコサトリエン酸、エイコサペンタエン酸(eicosapentanoic acid)、またはアラキドン酸から選択される、請求項127記載の油。
【請求項134】
エイコサノイドが、エイコサトリエン酸、エイコサペンタエン酸、およびアラキドン酸のモノヒドロキシ誘導体;エイコサトリエン酸、エイコサペンタエン酸、およびアラキドン酸のジヒドロキシ誘導体;ならびにエイコサトリエン酸、エイコサペンタエン酸、およびアラキドン酸のトリヒドロキシ誘導体からなる群より選択されるエイコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせである、請求項133記載の油。
【請求項135】
エイコサノイドが、6-ヒドロキシエイコサトリエン酸;6,12-ジヒドロキシエイコサン酸 11,18-ジヒドロキシ-エイコサトリエン酸からなる群より選択されるエイコサノイドのRもしくはSエピマー、またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、請求項133記載の油。
【請求項136】
細菌油、植物種子油、および水生動物油からなる群より選択される、請求項129記載の油。
【請求項137】
請求項129記載の油を含む組成物。
【請求項138】
治療組成物である、請求項137記載の組成物。
【請求項139】
栄養組成物である、請求項137記載の組成物。
【請求項140】
化粧用組成物である、請求項137記載の組成物。
【請求項141】
個体における炎症または神経変性の少なくとも1つの症状を予防または軽減する方法であって、個体における炎症または神経変性の少なくとも1つの症状を軽減するために、炎症もしくは神経変性またはそれらに関連する状態もしくは疾患を有するリスクがある、それらを有すると診断された、またはそれらを有すると疑われる個体に、エイコサトリエン酸、エイコサトリエン酸のオキシリピン誘導体、エイコサペンタエン酸のオキシリピン誘導体、およびアラキドン酸のオキシリピン誘導体からなる群より選択される薬剤を投与する段階を含む方法。
【請求項142】
薬剤が、Tリンパ球による腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の産生を減少させるのに有効である、請求項141記載の方法。
【請求項143】
薬剤が、炎症部位への好中球およびマクロファージの遊走を減少させるのに有効である、請求項141記載の方法。
【請求項144】
薬剤が、個体におけるインターロイキン-1β(IL-1β)産生を減少させるのに有効である、請求項141記載の方法。
【請求項145】
薬剤が、個体におけるマクロファージ走化性タンパク質-1(MCP-1)を減少させるのに有効である、請求項141記載の方法。
【請求項146】
少なくとも1つの長鎖ω-3脂肪酸および/またはそのオキシリピン誘導体を個体に投与する段階をさらに含む、請求項141記載の方法。
【請求項147】
ω-3脂肪酸がDHAおよびEPAからなる群より選択される、請求項146記載の方法。
【請求項148】
エイコサトリエン酸が、以下の形態:エイコサトリエン酸を含有するトリグリセリド、エイコサトリエン酸を含有するリン脂質、遊離脂肪酸、またはエイコサトリエン酸のエチルもしくはメチルエステルの1つとして提供される、請求項141記載の方法。
【請求項149】
エイコサトリエン酸またはそのオキシリピン誘導体が、細菌油、動物油の形態で、または長鎖多価不飽和脂肪酸を産生するように遺伝子改変された油糧種子植物に由来する植物油から提供される、請求項141記載の方法。
【請求項150】
オキシリピン誘導体が、エイコサトリエン酸、エイコサペンタエン酸、またはアラキドン酸からそのオキシリピン誘導体への酵素変換により産生される、請求項141記載の方法。
【請求項151】
オキシリピン誘導体が新規に化学合成される、請求項141記載の方法。
【請求項152】
オキシリピン誘導体が、エイコサトリエン酸のモノヒドロキシ生成物のRエピマー;エイコサトリエン酸のモノヒドロキシ生成物のSエピマー;エイコサペンタエン酸のモノヒドロキシ生成物のRエピマー;エイコサペンタエン酸のモノヒドロキシ生成物のSエピマー;アラキドン酸のモノヒドロキシ生成物のRエピマー;アラキドン酸のモノヒドロキシ生成物のSエピマー;エイコサトリエン酸のジヒドロキシ生成物のRエピマー;エイコサトリエン酸のジヒドロキシ生成物のSエピマー;エイコサペンタエン酸のジヒドロキシ生成物のRエピマー;エイコサペンタエン酸のジヒドロキシ生成物のSエピマー;アラキドン酸のジヒドロキシ生成物のRエピマー;アラキドン酸のジヒドロキシ生成物のSエピマー;エイコサトリエン酸のトリヒドロキシ生成物のRエピマー、エイコサペンタエン酸のトリヒドロキシ生成物のSエピマー;エイコサペンタエン酸のトリヒドロキシ生成物のRエピマー、エイコサペンタエン酸のトリヒドロキシ生成物のSエピマー;アラキドン酸のトリヒドロキシ生成物のRエピマー、アラキドン酸のトリヒドロキシ生成物のSエピマーからなる群より選択される、請求項141記載の方法。
【請求項153】
オキシリピン誘導体が、5-ヒドロキシエイコサトリエン酸;6-ヒドロキシエイコサトリエン酸;8-ヒドロキシエイコサトリエン酸;11-ヒドロキシエイコサトリエン酸;15-ヒドロキシエイコサトリエン酸;18-ヒドロキシエイコサトリエン酸;6,12-ジヒドロキシエイコサン酸 11,18-ジヒドロキシ-エイコサトリエン酸;8,15-ジヒドロキシエイコサン酸;5,15-エイコサペンタエン酸、8,15-エイコサペンタエン酸、5,15 エイコサテトラエン酸;5,15-エイコサテトラエン酸からなる群より選択されるエイコサノイドのRもしくはSエピマー;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である、請求項141記載の方法。
【請求項154】
個体にアスピリンを投与する段階をさらに含む、請求項141記載の方法。
【請求項155】
スタチン、非ステロイド性抗炎症薬、抗酸化剤、および神経保護薬からなる群より選択される少なくとも1つの薬剤を投与する段階をさらに含む、請求項141記載の方法。
【請求項156】
エイコサトリエン酸のエイコサノイド、エイコサペンタエン酸のエイコサノイド、アラキドン酸のエイコサノイド、またはC20多価不飽和脂肪酸のエイコサノイドを化学合成する段階を含む、エイコサノイドを産生する方法であって、エイコサノイドが、5-ヒドロキシエイコサトリエン酸;6-ヒドロキシエイコサトリエン酸;8-ヒドロキシエイコサトリエン酸;11-ヒドロキシエイコサトリエン酸;15-ヒドロキシエイコサトリエン酸;18-ヒドロキシエイコサトリエン酸;6,12-ジヒドロキシエイコサン酸 11,18-ジヒドロキシエイコサトリエン酸;8,15-ジヒドロキシエイコサン酸;5,15-エイコサペンタエン酸、8,15-エイコサペンタエン酸、5,15 エイコサテトラエン酸;5,15-エイコサテトラエン酸のRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせ;またはその類似体、誘導体、もしくは塩である方法。
【請求項157】
エイコサトリエン酸基質、エイコサペンタエン酸基質、またはアラキドン酸基質を、該エイコサトリエン酸基質、該エイコサペンタエン酸基質、または該アラキドン酸基質からのエイコサノイドの産生を触媒する酵素と接触させることにより、エイコサノイドを触媒的に産生する段階を含む、エイコサノイドを産生する方法。
【請求項158】
酵素が、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、およびシトクロムP450酵素からなる群より選択される、請求項157記載の方法。
【請求項159】
酵素が、12-リポキシゲナーゼ、5-リポキシゲナーゼ、15-リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2、ヘモグロビンα1、ヘモグロビンβ、ヘモグロビンγA、CYP4A11、CYP4B1、CYP4F11、CYP4F12、CYP4F2、CYP4F3、CYP4F8、CYP4V2、CYP4X1、CYP41、CYP2J2、CYP2C8、トロンボキサンA合成酵素1、プロスタグランジンI2合成酵素、およびプロスタサイクリン合成酵素からなる群より選択される、請求項157記載の方法。
【請求項160】
エイコサノイドを産生させるために、20炭素長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)からのエイコサノイドの産生を触媒する酵素を過剰発現するように遺伝子改変された長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)産生微生物を培養するか、またはそのように遺伝子改変されたLCPUFA産生植物を栽培する段階を含む、エイコサノイドを産生する方法。
【請求項161】
酵素が、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、およびシトクロムP450酵素からなる群より選択される、請求項160載の方法。
【請求項162】
酵素が、12-リポキシゲナーゼ、5-リポキシゲナーゼ、15-リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2、ヘモグロビンα1、ヘモグロビンβ、ヘモグロビンγA、CYP4A11、CYP4B1、CYP4F11、CYP4F12、CYP4F2、CYP4F3、CYP4F8、CYP4V2、CYP4X1、CYP41、CYP2J2、CYP2C8、トロンボキサンA合成酵素1、プロスタグランジンI2合成酵素、およびプロスタサイクリン合成酵素からなる群より選択される、請求項160記載の方法。
【請求項163】
LCPUFAがエイコサトリエン酸である、請求項160記載の方法。
【請求項164】
LCPUFA産生微生物またはLCPUFA産生植物が、LCPUFAを産生するように遺伝子改変されている、請求項160記載の方法。
【請求項165】
LCPUFA産生微生物がLCPUFAを内因的に産生する、請求項160記載の方法。
【請求項166】
LCPUFA産生微生物がトラウストキトリドである、請求項165記載の方法。
【請求項167】
長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)産生微生物、LCPUFA産生植物、またはLCPUFA産生動物によって産生される長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を、該LCPUFAのエイコサノイドへの変換を触媒する酵素と接触させる段階を含む、エイコサノイドを産生する方法。
【請求項168】
酵素が、リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、およびシトクロムP450酵素からなる群より選択される、請求項167記載の方法。
【請求項169】
酵素が、12-リポキシゲナーゼ、5-リポキシゲナーゼ、15-リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2、ヘモグロビンα1、ヘモグロビンβ、ヘモグロビンγA、CYP4A11、CYP4B1、CYP4F11、CYP4F12、CYP4F2、CYP4F3、CYP4F8、CYP4V2、CYP4X1、CYP41、CYP2J2、CYP2C8、トロンボキサンA合成酵素1、プロスタグランジンI2合成酵素、およびプロスタサイクリン合成酵素からなる群より選択される、請求項167記載の方法。
【請求項170】
LCPUFAがエイコサトリエン酸、エイコサペンタエン酸、およびアラキドン酸からなる群より選択される、請求項167載の方法。
【請求項171】
LCPUFA産生微生物またはLCPUFA産生植物が、LCPUFAを産生するように遺伝子改変されている、請求項167記載の方法。
【請求項172】
LCPUFA産生微生物がLCPUFAを内因的に産生する、請求項167記載の方法。
【請求項173】
LCPUFA産生微生物がトラウストキトリドである、請求項172記載の方法。
【請求項174】
個体における炎症または神経変性の少なくとも1つの症状を予防または軽減する方法であって、個体における炎症または神経変性の少なくとも1つの症状を軽減するために、炎症もしくは神経変性またはそれらに関連する状態もしくは疾患を有するリスクがある、それらを有すると診断された、またはそれらを有すると疑われる個体に、エイコサトリエン酸のオキシリピン誘導体、エイコサペンタエン酸のオキシリピン誘導体、またはアラキドン酸のオキシリピン誘導体からなる群より選択される薬剤を投与する段階を含む方法。
【請求項175】
薬剤が、エイコサトリエン酸のモノヒドロキシ誘導体、エイコサトリエン酸のジヒドロキシ誘導体、およびエイコサトリエン酸のトリヒドロキシ誘導体からなる群より選択されるエイコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせである、請求項174記載の方法。
【請求項176】
薬剤が、5-ヒドロキシエイコサトリエン酸;6-ヒドロキシエイコサトリエン酸;8-ヒドロキシエイコサトリエン酸;11-ヒドロキシエイコサトリエン酸;15-ヒドロキシエイコサトリエン酸;18-ヒドロキシエイコサトリエン酸;6,12-ジヒドロキシエイコサン酸 11,18-ジヒドロキシ-エイコサトリエン酸;8,15-ジヒドロキシエイコサン酸;5,15-エイコサペンタエン酸、8,15-エイコサペンタエン酸、5,15 エイコサテトラエン酸;5,15-エイコサテトラエン酸およびその類似体、誘導体、または塩からなる群より選択されるエイコサノイドのRもしくはSエピマー、またはR/Sエピマー、S/Rエピマー、またはそれらの他の組み合わせである、請求項174記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公表番号】特表2010−519311(P2010−519311A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550992(P2009−550992)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/054456
【国際公開番号】WO2008/103753
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(508004410)マーテック バイオサイエンシーズ コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】