説明

除塵装置及び除塵方法

【課題】被除塵体に付着した塵埃を確実に除去することのできる除塵装置及び除塵方法を提供すること。
【解決手段】外周面が接着力を有するピックアップローラ12と、このピックアップローラ12に接着した塵埃を除去する転着ローラ13と、当該転着ローラ13を介してピックアップローラ12を回転させる駆動手段15と、ピックアップローラ12の両側に配置された第1及び第2の除電手段16、17とを備えて防塵装置10が構成されている。被除塵体となるテーブルTは第1の除電手段16により除電された後にピックアップローラ12により塵埃が除去され、その後に、第2の除電手段17により更に除電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は除塵装置及び除塵方法に係り、特に、半導体製造装置における除塵装置及び除塵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と称する)は、その回路面形成側に保護用の接着シートを貼付して裏面研削等、種々の処理を施すものとされている。
半導体製造工程においては、このような接着シートを貼付する際に、ウエハや接着シート、又は、ウエハと接着シートとの間等に塵埃が付着しない環境に保つことが要求される。
特許文献1には、帯状のシートに除塵ローラを接触させて除塵を行うとともに、除塵ローラに対してシート繰出方向下流側に除電器を設置する構成が示唆されている。これによれば、シートが帯電した場合であっても静電気を除去して塵埃の付着を回避とすることが期待される。
【0003】
【特許文献1】特開2000−288483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された構成にあっては、除塵ローラを通過した後のシートに静電気が帯電した場合に除電可能となるが、除塵ローラにシートを供給する前の段階で、当該シートに帯電した静電気を除電する構成とはなっていない。そのため、静電気によってシートに強固に付着した塵埃を確実に除去することができない、という不都合を招来する。
また、シートの繰り出しを停止している状態では、除塵ローラは停止する構成であるため、その間は、除塵ローラに付着した塵埃のクリーニングは行われないものとなり、これが塵埃の確実な除去を妨げる要因ともなる。
【0005】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、静電気によって被除塵体に塵埃が強く付着していても、確実に除塵を行うことのできる除塵装置及び除塵方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、被除塵体に付着した塵埃を接着により除塵するピックアップローラのクリーニングを継続的に行うことのできる除塵装置及び除塵方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、外周面が接着力を有するピックアップローラと、当該ピックアップローラの外周面に接着した塵埃を転着させる転着ローラとを含み、前記ピックアップローラの外周面と被除塵体とを接触させることで被除塵体に付着した塵埃を除去する除塵装置において、前記ピックアップローラと被除塵体とを接触させる前に、被除塵体の除電を行う第1の除電手段と、前記ピックアップローラと被除塵体とを接触させた後に、被除塵体の除電を更に行う第2の除電手段とを設ける、という構成を採っている。
【0007】
また、本発明は、外周面が接着力を有するピックアップローラと、当該ピックアップローラの外周面に接着した塵埃を転着させる転着ローラとを含み、前記ピックアップローラの外周面と半導体ウエハを載置するテーブルとを接触させることで前記テーブルに付着した塵埃を除去する除塵装置において、前記ピックアップローラとテーブルとを接触させる前に、テーブルの除電を行う第1の除電手段と、前記ピックアップローラとテーブルとを接触させた後に、テーブルの除電を更に行う第2の除電手段とを設ける、という構成を採っている。
【0008】
更に、本発明は、前記ピックアップローラと転着ローラとは駆動手段を介して回転可能に設けられる、という構成を採っている。
【0009】
また、本発明は、外周面が接着力を有するピックアップローラを被除塵体に接触させることで当該被除塵体に付着した塵埃を除去する除塵方法において、前記被除塵体をピックアップローラに接触させる前に被除塵体の除電を行っておき、ピックアップローラを被除塵体に接触させて除塵した後、被除塵体を更に除電する、という手法を採っている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ピックアップローラによる除塵を行う前の段階で被除塵体の除電を行うため、被除塵体に塵埃が強く付着していても、ピックアップローラで容易且つ確実に除塵を行うことができ、その上、ピックアップローラが被除塵体の塵埃を除塵した後にも被除塵体の除電を行う構成であるため、被除塵体に対する塵埃の再付着を防止することができる。
更に、ピックアップローラと転着ローラとは駆動手段を介して回転可能に設けられているため、除塵前の段階と除塵後の段階でもピックアップローラと転着ローラとを回転させることで、ピックアップローラを事前にクリーニングしておくことができるとともに、ピックアップローラに接着した塵埃を転着ローラに確実に転着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1には、本実施形態に係る除塵装置がシート貼付装置に併設された概略正面図が示されている。この図において、除塵装置10は、下端側が開放するケース11と、このケース11内に配置されたピックアップローラ12と、当該ピックアップローラ12の外周面に当接する転着ローラ13と、これらピックアップローラ12及び転着ローラ13を回転駆動させる駆動手段15と、ピックアップローラ12を中間位置として両側に配置された第1及び第2の除電手段16、17とを備えて構成されている。
【0013】
前記ケース11は下端側が開放した箱形形状を備え、図示しない移動手段を介して上下方向に移動可能に支持されている。
【0014】
前記ピックアップローラ12は、外周面が接着力を有する樹脂製のローラによって構成されており、外周面の一部がケース11の下端位置よりも下方に位置する状態で当該ケース11に回転可能に支持されている。
【0015】
前記転着ローラ13は、前記ピックアップローラ13の接着力よりも大きい接着力を有する外周面を備えているとともに、ピックアップローラ13よりも大径のローラにより構成されている。
【0016】
前記駆動手段15は、ケース11の上面に設けられたモータMと、このモータMの出力軸20に固定されたプーリ21と、前記転着ローラ13の回転軸22に固定されたプーリ24と、プーリ21、24間に巻装されたベルト25とを含む。この駆動手段15は、ピックアップローラ12による除塵開始前、除塵終了後の双方において駆動することで、ピックアップローラ12のクリーニングを継続的に行うようになっている。ここで、駆動手段15によるピックアップローラ12の回転速度は、後述するテーブルTの移動速度と一致するように設定され、ピックアップローラ12が除塵を行う際に、テーブルTとの間に大きな回転抵抗が生じないように保たれる。
【0017】
前記第1及び第2の除電手段16、17は、イオナイザにより構成されている。これら除塵手段16、17は、図1中紙面直交方向に沿って電極が配置されたものが採用されている。これにより、イオン放出領域が大きく確保できるようになっている。
【0018】
前記除塵装置10の下方には、被除塵体としてのテーブルTが移動手段30を介して左右方向に移動可能に設けられ、テーブルTの上部側には、シート貼付装置31が配置されている。移動手段30は、図1中紙面直交方向に一対配置されたガイドレール33と、これらガイドレール33間に位置する送りねじ軸34と、当該送りねじ軸34を回転駆動させる図示しないモータとを含む。
【0019】
前記テーブルTは、前記ガイドレール33上を移動するスライダ36と、送りねじ軸34にねじ係合するナット部材37とを下端部に備え、上面側はウエハWの吸着保持面とされている。
【0020】
前記シート貼付装置31は、剥離シートRLに接着シートSが仮着されたロール状の原反Rを支持する支持ローラ38と、剥離シートRLから接着シートSを剥離するピールプレート40と、剥離シートRLを挟み込んで原反Rに繰出力を付与する繰出手段41と、剥離シートRLを巻き取る巻取ローラ42と、接着シートSをウエハWに貼付するプレスローラ43とを含む。
【0021】
次に、前記テーブルTを被除塵体として上面側を除塵する方法について説明する。
【0022】
テーブルTが除塵装置10に向かって移動を開始し、移動手段30上の所定位置を通過したことを図示しないセンサが検出すると、除塵装置10は、ピックアップローラ12の下端位置がテーブルTの上面位置に接する高さ位置に下降する。なお、駆動手段15は予め駆動されるように設定されているため、転着ローラ13及びピックアップローラ12が回転し、ピックアップローラ12の外周面のクリーニングが事前に行われている。
【0023】
テーブルTが第1の除電装置16を通過するときには、テーブルTに帯電した静電気が除電されて当該テーブルTに付着した塵埃が除去し易い状態とされ、ピックアップローラ12がテーブルT上に接触しつつ回転することで塵埃がピックアップローラ12の外周面に接着して除去される。そして、ピックアップローラ12に接着した塵埃は、転着ローラ13に転着される。
【0024】
ピックアップローラ12を通過したテーブルTの領域には、第2の除電手段17によって除電が行われる。これにより、ピックアップローラ12とテーブルTとの接触によって当該テーブルTに静電気が帯電するようなことがあっても、速やかに除電して当該テーブルTに塵埃を引き寄せ難く保つこととなる。
【0025】
このようにしてテーブルTの除電、除塵を完了すると、除塵装置10は上昇位置に変位するとともに、テーブルT上にウエハWが載置され、シート貼付装置31のプレスローラ43の位置よりも図中右側に移動する。
【0026】
ウエハWが移載されたテーブルTがシート貼付装置31の下方位置から図中左側に移動すると、この動作に同期して、繰出手段41の駆動によって接着シートSが剥離シートRLから剥離されて繰り出され、プレスローラ43による押圧力によって接着シートSがウエハWに貼付される。なお、ピックアップローラ12は駆動手段15の駆動によって回転し続けることによって、テーブルT上を除塵しているときはもとより、除塵していないときもピックアップローラ12は転着ローラ13によってクリーニング作用を継続的に受けることとなる。このように構成することによって、極薄に研削されたウエハWに接着シートSを貼付する場合、テーブルTに付着した塵埃ごと押圧してウエハWにダメージを与えてしまうようなことを防止することができる。
【0027】
従って、このような実施形態によれば、テーブルTから塵埃を確実に除去することができ、半導体製造装置に要求される除塵対策を効果的に講ずることができる。
【0028】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、材料、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それら形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0029】
例えば、前記実施形態では、テーブルTを被除塵体とした場合を図示、説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ウエハWをも被除塵体とし、当該ウエハWをテーブルTに移載した状態で、前述と同様の作用を介してウエハWの除塵、除電を行い、その後に、接着シートSを貼付するようにしたり、ウエハWに貼付された接着シートS上の除塵を行うように構成してもよい。要するに、被除塵体は、静電気等の作用によって付着した塵埃を除去する必要のある有体物であれば、除塵の対象とすることができる。
【0030】
また、前記テーブルTは移動手段30を介して除塵装置10の下方を通過する構成としたが、除塵装置10を適宜な移動手段に支持させてテーブルT上で図中左右方向に移動させるようにしてもよいし、テーブルTと除塵装置10の両方を移動させるように構成してもよい。
【0031】
また、前記実施形態では、駆動手段15を介してピックアップローラ12が回転する構成としたが、駆動手段15を省略することも可能である。この場合、ピックアップローラ12は、テーブルTとの接触抵抗によって回転することとなる。但し、駆動手段15を設けた構成では、ピックアップローラ12の事前クリーニングと、事後クリーニングの双方を行えるため、常に、ピックアップローラ12の外周面を綺麗に保つことができる点で有利となるほか、回転抵抗によってウエハWがテーブルT上で移動してしまうようなことも防止することができる。
【0032】
更に、前記実施形態では、駆動手段15によって転着ローラ13を回転させて、ピックアップローラ12を間接的に回転させる構成としたが、駆動手段15によってピックアップローラ12を回転させて、転着ローラ13を間接的に回転させてもよいし、各ローラ12、13両方を回転させるように構成してもよい。
【0033】
また、除塵装置10に、プラス、マイナスのどちらに帯電しているのかを検知する検知手段を設け、イオナイザから放射されるイオンの極性を制御するように構成してもよい。
【0034】
更に、第1、第2の除電手段16、17は、イオナイザ以外に、地面と導体で接続して除電を行うアース方式等の除電装置であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態における除塵装置がシート貼付装置に併設された概略正面図。
【符号の説明】
【0036】
10 除塵装置
12 ピックアップローラ
13 転着ローラ
15 駆動手段
16 第1の除電手段
17 第2の除電手段
T テーブル(被除塵体)
W 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面が接着力を有するピックアップローラと、当該ピックアップローラの外周面に接着した塵埃を転着させる転着ローラとを含み、前記ピックアップローラの外周面と被除塵体とを接触させることで被除塵体に付着した塵埃を除去する除塵装置において、
前記ピックアップローラと被除塵体とを接触させる前に、被除塵体の除電を行う第1の除電手段と、前記ピックアップローラと被除塵体とを接触させた後に、被除塵体の除電を更に行う第2の除電手段とを設けたことを特徴とする除塵装置。
【請求項2】
外周面が接着力を有するピックアップローラと、当該ピックアップローラの外周面に接着した塵埃を転着させる転着ローラとを含み、前記ピックアップローラの外周面と半導体ウエハを載置するテーブルとを接触させることで前記テーブルに付着した塵埃を除去する除塵装置において、
前記ピックアップローラとテーブルとを接触させる前に、テーブルの除電を行う第1の除電手段と、前記ピックアップローラとテーブルとを接触させた後に、テーブルの除電を更に行う第2の除電手段とを設けたことを特徴とする除塵装置。
【請求項3】
前記ピックアップローラと転着ローラとは駆動手段を介して回転可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の除塵装置。
【請求項4】
外周面が接着力を有するピックアップローラを被除塵体に接触させることで当該被除塵体に付着した塵埃を除去する除塵方法において、
前記被除塵体をピックアップローラに接触させる前に被除塵体の除電を行っておき、ピックアップローラを被除塵体に接触させて除塵した後、被除塵体を更に除電することを特徴とする除塵方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−140982(P2009−140982A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313124(P2007−313124)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】