説明

電力マネージメントシステム及び電力マネージメント方法

【課題】電力を効率的に利用することができ、ひいては燃料消費量を低減する。
【解決手段】目的地までの走行経路を走行している他の複数の車両によって収集された情報を集約した集約情報を取得し、取得された集約情報に基づき、走行経路を走行することで消費される消費電力を予測し、予測された消費電力に基づき、目的地までの走行に必要な高圧バッテリ14のSOCである目標SOCを算出し、算出された目標SOCに近似するように、高圧バッテリ14の実際のSOCを管理することで実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両(HEV:Hybrid Electric Vehicles)に搭載されたバッテリの電力を管理する電力マネージメントシステム及び電力マネージメント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両において、燃料消費量の低減を目的として、設定された経路の走行データ、走行環境情報に基づいて走行パターンを予測し、この予測された走行パターンに基づいてエンジン及びモータの運転スケジュールを設定し、設定した運転スケジュールに従ってエンジン及びモータを制御するようにした技術が考案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この特許文献1では、走行環境情報として天気予報によって予報された天候を用いることが開示されており、また上述した制御において、バッテリのSOC(State Of Charge)を制御するための運転スケジュールを設定することについても開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−248455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、走行環境情報として不確定要素を含んだ天気予報によって予報された天候を用いて、走行パターンを予測しているため、実際の走行環境とは異なる走行パターンとなってしまう虞があり、このような走行パターンに基づいてバッテリのSOCを制御する運転スケジュールを設定した場合、電力の利用が非効率的となり、ひいては燃料消費量を増大させてしまうといった問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、ハイブリット車両において、電力を効率的に利用することができ、ひいては燃料消費量を低減することができる電力マネージメントシステム及び電力マネージメント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ハイブリッド車両に搭載されたバッテリの電力を管理する電力マネージメントシステムにおいて、目的地までの走行経路を走行している他の複数の車両によって収集された情報を集約した集約情報を取得する。そして、取得された前記集約情報に基づき、前記走行経路を走行することで消費される消費電力を予測し、予測された前記消費電力に基づき、目的地までの走行に必要な前記バッテリのSOCである目標SOCを算出する。そして、この算出された目標SOCに近似するように、前記バッテリの実際のSOCを管理する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力を効率的に利用することができ、ひいては燃料消費量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、図1を用いて、本発明の実施の形態として示す電力マネージメントシステムについて説明をする。図1に示すように、本発明の実施の形態として示す電力マネージメントシステムは、ハイブリッド車両1と、センタ装置30と、VICS(Vehicle Information and Communication System)センタ40と、ハイブリッド車両1以外の他の複数の車両である車両50とを備えており、ハイブリッド車両1を制御対象として、制御対象であるハイブリッド車両1の電力マネージメントを実行する。
【0010】
なお、車両50は、ハイブリッド車両1のようなハイブリッド車両であってもよいし、それ以外の車両であってもよい。車両50をハイブリッド車両とした場合には、この車両50も電力マネージメントシステムの制御対象となる。
【0011】
ハイブリッド車両1、車両50は、複数の車両から収集した情報を集約し提供する、いわゆるプローブカーシステムにおけるプローブカーとしての機能を有し、無線通信によってセンタ装置30にプローブ情報を送信することができる。また、電力マネージメントシステムの制御対象となっているハイブリッド車両1は、センタ装置30によってプローブ情報を集約した集約情報を無線通信により提供され、この集約情報に基づいて、電力マネージメントを実行することになる。また、車両50をハイブリッド車両とした場合には、ハイブリッド車両1と同様に、センタ装置30によって集約された集約情報が、車両50に対して無線通信により提供され、この集約情報に基づいて、電力マネージメントが実行されることになる。
【0012】
ハイブリッド車両1は、駆動方式として、エンジンを発電のみに使用し、モータを車軸の駆動と回生のみに使用するいわゆるシリーズ方式となっている。さらに、本発明の実施の形態として示すハイブリッド車両1は、単相交流である家庭用電源から充電することが可能なプラグイン機能を搭載している。なお、本発明は、このようなシリーズ方式のハイブリッド車両1に限定されるものではなく、駆動方式としてパラレル方式、スプリット方式などを用いたハイブリッド車両にも適用することができる。
【0013】
センタ装置30は、無線通信によりハイブリッド車両1、車両50から提供されるプローブ情報を集約し、ハイブリッド車両1に集約した集約情報を無線通信により送信する。センタ装置30から送信される集約情報は、例えば、走行経路上における渋滞箇所や渋滞の程度などを示す渋滞情報、走行経路上の路面状態などを示す道路情報、走行経路上の天候などを示す環境情報などである。
【0014】
センタ装置30は、走行経路上の天候を、走行経路を走行している他の複数の車両からプローブ情報として提供された電装品の動作状態を示す情報を集約して判定する。例えば、プローブ情報として提供される電装品であるエアコン、ヘッドライト、フォグランプ、ワイパー、デフォッガなどの動作状態を示す情報を集約して現在の天候を判定し、集約情報としてハイブリッド車両1に提供する。
【0015】
このような、集約情報は、VICSセンタ40から提供されるVICS情報と比較して、実際に走行経路上を走行している車両から提供されたプローブ情報に基づいているため、リアルタイム性が非常に高く、極めて信頼性の高い情報となっている。
【0016】
VICSセンタ40は、FM多重放送、電波ビーコン、光ビーコンにより、VICS情報をハイブリッド車両1に提供する。VICSセンタ40が提供するVICS情報は、渋滞情報、所要時間、事故・故障車・工事情報、速度規制・車線規制情報、駐車場の位置、駐車場・サービスエリア・パーキングエリアの満車・空車情報、気象庁による天気予報によって予報された天候を示す情報などである。
【0017】
[ハイブリッド車両1の構成]
続いて、図1を用いて、ハイブリッド車両1の構成について説明をする。図1に示すように、ハイブリッド車両1は、パワートレイン10と、このパワートレイン10を制御する車載コントローラ20とを備えている。また、図1に示すハイブリッド車両1は、家庭用電源から電力を充電するための電源プラグ17と、充電回路18とを備えている。
【0018】
まず、パワートレイン10について説明をする。パワートレイン10は、燃料を消費することで回転するエンジン11と、発電モータ12と、駆動モータ13と、駆動モータ13からの動力を伝えるドライブシャフトDS1と、左右の駆動輪DWの回転差を吸収する機構であるディファレンシャルギアDFと、ディファレンシャルギアDFからの動力を左右の駆動輪DWに伝えるドライブシャフトDS2と、高圧バッテリ14と、インバータ15と、インバータ16とを備えている。
【0019】
発電モータ12は、エンジン11に直結され、燃料を消費することで回転するエンジンの回転力により電力を発電する。発電モータ12によって発電された電力は、図示しないコンバータにより交流電力から直流電力へと変換されて高圧バッテリ14に蓄えられる。また、発電モータ12は、エンジン11のスタータモータとしても機能する。
【0020】
駆動モータ13は、高圧バッテリ14から供給されインバータ16によって直流電力から変換された交流電力によって回転し、その回転力をドライブシャフトDS1に伝えることで、ディファレンシャルギアDF、ドライブシャフトDS2を介して駆動輪DWを駆動させる。また、駆動モータ13は、ハイブリッド車両1の制動時に回生発電により電力を発電する。駆動モータ13によって回生発電された電力は、図示しないコンバータにより交流電力から直流電力へと変換されて高圧バッテリ14に蓄えられる。
【0021】
高圧バッテリ14は、発電モータ12で発電された電力、駆動モータ13で回生発電された電力を蓄える。また、高圧バッテリ14は、家庭用電源に接続された電源プラグ17を介して供給され、充電回路18によって交流電力から変換された直流電力を蓄える。
【0022】
高圧バッテリ14に蓄えられた電力は、エンジン11のスタータモータとして機能する発電モータ12、駆動輪DWを駆動させる駆動モータ13に供給される。また、高圧バッテリ14に蓄えられた電力は、ハイブリッド車両1に搭載されているあらゆる電装品に供給される。
【0023】
続いて、車載コントローラ20について説明をする。車載コントローラ20は、モータ・ジェネレータコントローラ21と、エンジンコントローラ22と、バッテリコントローラ23と、車両電装品制御ユニット24と、ナビゲーションコントローラユニット25と、統合制御コントローラ26とを備え、ハイブリッド車両1の各種機能を制御する。車載コントローラ20の各コントローラ間は、高速通信を可能とする高速通信網にて接続されているため、各コントローラ間において大容量データを容易に送受信することができる。
【0024】
モータ・ジェネレータコントローラ21は、発電モータ12、駆動モータ13に関する制御部であり、インバータ15、16を制御することで、発電モータ12、駆動モータ13の各入出力トルクを制御する。
【0025】
エンジンコントローラ22は、エンジン11に関する制御部であり、エンジン11の吸入空気量、点火タイミング、燃料噴射量などを操作することでエンジン11の出力トルクを制御する。
【0026】
バッテリコントローラ23は、高圧バッテリ14に関する制御部であり、高圧バッテリ14の充電状態であるSOC(State Of Charge)や入出力可能パワーなどの内部状態量を推定したり、過充電、過放電などから高圧バッテリ14を保護するよう制御する。
【0027】
車両電装品制御ユニット24は、ハイブリッド車両1に搭載されている電装品に関する制御部であり、例えば、エアコン、ヘッドライト、フォグランプ、ワイパー、デフォッガなど、各電装品の現在の動作状態を検出し、検出された動作状態に応じた各電装品の消費電力を算出する。車両電装品制御ユニット24によって算出された各電装品の消費電力は、各電装品の動作状態を示す動作状態情報とともに、統合制御コントローラ26に出力される。
【0028】
車両電装品制御ユニット24は、ハイブリッド車両1における各電装品の追加、削除、交換を定期的に監視することで、ハイブリッド車両1に搭載されている最新の電装品を常に把握することができる。
【0029】
ハイブリッド車両1に搭載されている各電装品は、その動作状態に応じて消費電力が決まるため、車両電装品制御ユニット24は、例えば、電装品毎に、動作状態と、動作状態に応じた消費電力とを対応付けたテーブルを保持する。これにより、車両電装品制御ユニット24は、動作状態を検出することで対応する消費電力を読み出すことができる。
【0030】
また、新たに電装品が追加された場合には、電装品にデフォルトで定められている動作状態と消費電力とを対応づけたデータを取得してテーブルを更新するようにしてもよいし、新たに追加された電装品を動作させる度に消費電力を測定して動作状態と消費電力とを対応付けたデータを蓄積させてテーブルを更新するようにしてもよい。
【0031】
ナビゲーションコントローラユニット25は、移動体である当該ハイブリッド車両1に搭載され、車両の現在位置を検出し、地図データから描画された車両の現在位置に対応する地図を表示することで所望の目的値までの経路案内(ナビゲーション)をする図示しないナビゲーションシステムを統括的に制御する。
【0032】
ナビゲーションコントローラユニット25は、センタ装置30と無線通信をする通信部25Aを備えている。この通信部25Aは、センタ装置30とデータ通信するため通信インターフェースである。また、通信部25Aは、VICSセンタ40からFM多重放送、電波ビーコン、光ビーコンを介して提供される交通情報を受信するための受信機能を別途備えている。
【0033】
具体的には、ナビゲーションコントローラユニット25は、GPS衛星から送信される信号を受信することで、GPS航法による位置計測を行い絶対位置(緯度、経度)を求め、図示しない距離センサから出力された走行距離情報、方位センサから出力された進行方位情報に基づいて、自律航法による車両の相対位置を求める。そして、ナビゲーションコントローラユニット25は、絶対位置(緯度、経度)情報と、相対位置情報とから、ハイブリッド車両1の地図上における現在位置を算出する。
【0034】
ナビゲーションコントローラユニット25は、算出された現在位置情報に基づいて、対応する地図データ、道路データなど、ナビゲーションに必要となる各種データを図示しない記憶部から読み出し、ユーザによって入力される目的地と、現在位置情報とを用いて、現在位置から、目的地までの最適な走行経路を経路探索し、探索した最適な走行経路の経路案内をするルートガイダンスを行う。このとき、ナビゲーションコントローラユニット25は、経路案内する際にセンタ装置30、VICSセンタ40から取得した交通情報を利用することで、交通状況、車両の走行状況に応じた経路案内を実行することができる。
【0035】
メモリ27は、データの読み出し書き込みが自在な記憶部である。メモリ27は、統合制御コントローラ26によって読み出され実行されるアプリケーションソフトウェアや統合制御コントローラ26による制御処理で用いられる各種データを記憶する記憶部である。
【0036】
また、メモリ27は、統合制御コントローラ26の指示に応じて、ハイブリッド車両1に搭乗した運転者毎のハイブリッド車両1に搭載された電装品の過去の使用状況を使用状況データとして記憶する。この運転者毎の電装品の過去の使用状況を示す使用状況データは、統合制御コントローラ26によって、電装品の消費電力を予測する際に用いられる。電装品の使用状況データは、例えば、オーディオの設定データ(CD、ラジオなどの音量レベル)や、エアコンの設定データ(温度、風量)といった個人の嗜好性が反映されやすいデータであると共に、設定値によって電装品の消費電力を変動させる要素を含んだデータとなっている。
【0037】
統合制御コントローラ26は、車載コントローラ20の各コントローラを統括的に制御する制御部である。統合制御コントローラ26は、ナビゲーションコントローラユニット25と連携することで、ナビゲーションコントローラユニット25で経路探索された走行経路をハイブリッド車両1が走行することで消費される電装品の消費電力を、センタ装置30から送信された集約情報に基づき予測する。
【0038】
一般に、ハイブリッド車両1に搭載された電装品の消費電力は、ハイブリッド車両1が走行している走行経路の環境に大きく影響を受ける。例えば、走行経路の環境が、昼間、晴天、温暖時という条件下におけるハイブリッド車両1の消費電力を基準とすると、走行経路の環境が昼間から夜間へと変化した場合、電装品であるヘッドライトを点灯させるため消費電力が増えることになる。さらに、走行経路の環境が晴天から小雨へと変化した場合、電装品であるエアコンを弱めにかけたり、ワイパーを低速で動作させたりするため、さらに消費電力が増えることになる。さらに、また、走行経路の環境が小雨から豪雨へ、温暖から寒冷へと変化した場合、電装品であるエアコンを強めにかけたり、ワイパーを高速で動作させたりするため、さらに消費電力が増えることになる。
【0039】
このように、ハイブリッド車両1に搭載された電装品の消費電力が、ハイブリッド車両1が走行している走行経路の環境に大きく影響を受けることから、センタ装置30から送信されるリアルタイム性の高い情報である集約情報に含まれる環境情報を用いることで、ハイブリッド車両1に搭載された電装品で消費されるであろう消費電力を容易かつ確実に予測することができるようになる。
【0040】
また、統合制御コントローラ26は、センタ装置30から送信された集約情報と、ハイブリッド車両1が走行経路を走行することで消費される電装品の予測された消費電力とを考慮して、走行経路を走行し目的地に到達するまでに必要となる高圧バッテリ14の目標SOCを算出する。
【0041】
そして、統合制御コントローラ26は、エンジンコントローラ22、モータ・ジェネレータコントローラ21を制御して、高圧バッテリ14の実際のSOCである実SOCを、算出した目標SOCに近付くように、エンジン11、発電モータ12を駆動させることでハイブリッド車両1の電力マネージメントを実行する。
【0042】
また、統合制御コントローラ26は、ハイブリッド車両1に搭乗した乗員である運転者を特定するための認証処理を実行する。
【0043】
ハイブリッド車両1に搭乗する運転者は、基本的にユーザ登録がなされる。このユーザ登録時において、例えば、生体認証用の認証データ、ユーザ固有の暗証番号データといった認証データ、ユーザが携帯するIDカードや携帯情報端末装置に組み込まれた認証データなどを登録しておく。これにより、統合制御コントローラ26は、ハイブリッド車両1へ運転者が搭乗した際に、認証データを要求し、認証データに基づく認証処理を実行することで運転者を特定することができる。
【0044】
統合制御コントローラ26は、運転者を特定できた場合、メモリ27に運転者毎に記憶されているハイブリッド車両1に搭載された電装品の過去の使用状況を示す使用状況データを読み出すことができる。統合制御コントローラ26は、読み出した使用状況データに基づき、運転者ごとに異なる運転者固有の電装品の消費電力を予測する。
【0045】
また、統合制御コントローラ26は、ナビゲーションコントローラユニット25の通信部25Aに替わって、センタ装置30と無線通信することで直接、集約情報を取得するような図示しない通信部を備えるようにしてもよい。これにより、目標SOCを設定する際に必要となる処理を分散できるため、ナビゲーションコントローラユニット25の処理負荷を抑えることができる。
【0046】
続いて、図2に示すフローチャートを用いて、ハイブリッド車両1の電力マネージメントを実行する際の制御処理動作について説明をする。ハイブリッド車両1の電力マネージメントは、主に、車載コントローラ20のナビゲーションコントローラユニット25、統合制御コントローラ26による制御によって特定の演算周期で実行される。
【0047】
ステップS1において、ナビゲーションコントローラユニット25は、ユーザによって目的地が入力されたことに応じて、最適な走行経路を経路探索する。そして、ナビゲーションコントローラユニット25は、あらかじめ図示しない記憶部に記憶されている地図データ、道路データなどから走行経路の高低差、制限速度といった走行経路に関する静的道路情報を取得する。
【0048】
また、ナビゲーションコントローラユニット25は、通信部25Aを介してVICSセンタ40から走行経路に関するVICS情報を取得する。このVICS情報は、例えば、走行経路における一定時間前の交通渋滞情報や天候情報などである。
【0049】
ステップS2において、統合制御コントローラ26は、ステップS1にて取得された静的道路情報、VICS情報に基づき、走行経路を走行することで消費される消費される消費電力を予測する。そして、統合制御コントローラ26は、予測した消費電力に基づき、走行経路を走行し目的地に到達するまでに必要となる高圧バッテリ14のSOCを算出する。本ステップで算出される高圧バッテリ14のSOCは、ハイブリッド車両1に搭載された電装品による消費電力を考慮していないSOC(以下、基本SOCと呼ぶ。)である。
【0050】
このとき、統合制御コントローラ26は、それぞれ高圧バッテリ14のSOCの上限である標準SOC管理上限を超えないように、下限である標準SOC管理下限を下回らないように基本SOCを算出する。
【0051】
ステップS3において、統合制御コントローラ26は、車両電装品制御ユニット24から出力されるハイブリッド車両1に搭載されている電装品の現在の動作状態を示す動作状態情報と、この動作状態情報で示される動作状態に応じた消費電力を取得する。
【0052】
ステップS4において、統合制御コントローラ26は、ハイブリッド車両1に搭乗している運転者に対してなんらかの認証データを要求し、要求した認証データを用いてあらかじめ登録されている認証データと比較することで認証処理を実行する。
【0053】
ステップS5において、統合制御コントローラ26は、ステップS4における認証処理によってハイブリッド車両1に搭乗している運転者が認証され、運転者が特定されたかどうかを判断する。統合制御コントローラ26は、運転者が特定された場合、ステップS6へと処理を進める一方、運転者が特定さない場合、ステップS7へと処理を進める。
【0054】
ステップS6において、統合制御コントローラ26は、運転者が特定されたことに応じて、メモリ27を参照し、特定された運転者に対応する使用状況データを読み出す。そして、統合制御コントローラ26は、読み出した使用状況データに基づき、運転者ごとに異なる運転者固有の電装品の消費電力を予測する。
【0055】
ステップS7において、統合制御コントローラ26は、ステップS3で取得したハイブリッド車両1の電装品の現在の動作状態を示す動作状態情報をナビゲーションコントローラユニット25の通信部25Aを介してセンタ装置30に送信するよう制御する。このとき、ナビゲーションコントローラユニット25は、ハイブリッド車両1の現在位置情報や、図示しない車速センサで検出されたハイブリッド車両1の車速などを、ハイブリッド車両1の現在の走行状態を示す走行状態情報として通信部25Aを介してセンタ装置30に送信する。本ステップにおいて、ハイブリッド車両1は、プローブカーとして機能し、センタ装置30に対してプローブ情報として動作状態情報、走行状態情報を提供する。
【0056】
ステップS8において、ナビゲーションコントローラユニット25は、通信部25Aを介してセンタ装置30から送信される走行経路上を走行している車両50といった複数の車両から送信されるプローブ情報を集約した集約情報を取得する。
【0057】
ステップS9において、統合制御コントローラ26は、ステップS3にて取得された当該ハイブリッド車両1に搭載されている電装品の消費電力に対して、ステップS8にてセンタ装置30から送信された集約情報を考慮し、走行経路を走行することで消費される電装品の消費電力を予測する。つまり、統合制御コントローラ26は、センタ装置30から送信された集約情報に基づき、ハイブリッド車両1が走行経路を走行することで消費される電装品の消費電力を予測する。
【0058】
このとき、ステップS6を経由した場合には、ステップS6にて予測された運転者ごとに異なる運転者固有の電装品の消費電力を加味する。
【0059】
ハイブリッド車両1が、走行経路を走行することで消費する消費電力のうち、ハイブリッド車両1に搭載された電装品の消費電力は、雨などの天候によって最も変動する値である。本発明の実施の形態として示す電力マネージメントシステムでは、上述したように、このような天候は、リアルタイム性が高いことから非常に信頼性の高い情報であるプローブ情報を集約した集約情報によって提供される。
【0060】
このような集約情報として提供される天候を示す情報は、目的地までの走行経路においてのみ有効なのではなく、走行経路近傍においても同様に有効となる情報である。したがって、ハイブリッド車両1が、なんらかの理由により走行経路を外れて目的地へと向かったとしても予測された消費電力が大きく変動してしまうことはない。
【0061】
ステップS10において、統合制御コントローラ26は、ステップS2で算出された基本SOCに対して、ステップS8でセンタ装置30から送信された集約情報と、ステップS9で予測されたハイブリッド車両1が走行経路を走行することで消費される電装品の消費電力とを考慮して、走行経路を走行し目的地に到達するまでに必要となる高圧バッテリ14の目標SOCを算出する。
【0062】
このとき、統合制御コントローラ26は、ステップS9で予測されたハイブリッド車両1が走行経路を走行することで消費される電装品の消費電力を考慮して、高圧バッテリ14の標準SOC管理上限、標準SOC管理下限を変更し、それぞれSOC管理上限、SOC管理上限とする。これにより、本ステップで算出される目標SOCが、SOC管理上限を超えることなく、SOC管理下限を下回ることなく最適に設定されることになる。
【0063】
ステップS11において、統合制御コントローラ26は、エンジン11を始動させて発電モータ12を発電させるかどうか判断をする。具体的には、統合制御コントローラ26は、バッテリコントローラ23によって検出される高圧バッテリ14の実際のSOCである実SOCと、ステップS10で算出した目標SOCとを比較し、目標SOCが実SOCよりも大きい場合、発電の必要があるとしてステップS12へと処理を進める一方、目標SOCが実SOC以下である場合、発電の必要がないとしてステップS17へと処理を進める。
【0064】
ステップS12において、統合制御コントローラ26は、既にエンジン11が始動済みかどうかを判断する。統合制御コントローラ26は、エンジンコントローラ22から定期的、または不定期に出力される信号に添付された情報に基づき、エンジン11が既に始動済みかどうかを判断する。統合制御コントローラ26は、既にエンジン11が始動済みの場合には、ステップS13へと処理を進める一方、まだエンジン11が始動していない場合には、ステップS15へと処理を進める。
【0065】
ステップS13において、統合制御コントローラ26は、発電モータ12を用いて、効率よく発電することができる回転数N(発電用回転数N)を目標値として、回転数フィードバック制御演算を実行し、発電モータトルク指令値を算出する。このとき算出される発電モータトルク指令値は、負値であり、高圧バッテリ14に対して充電がなされることになる。
【0066】
ステップS14において、統合制御コントローラ26は、バッテリコントローラ23によって検出される高圧バッテリ14の実SOCを、ステップS10で算出した目標SOCに一致させるように、エンジン11の出力(≒発電出力)を算出する。例えば、統合制御コントローラ26は、目標SOCと実SOCとの偏差を用いた比例制御などにより、このエンジン出力を算出する。
【0067】
統合制御コントローラ26は、上述した発電モータ12で効率よく発電することができる回転数Nを用いて、エンジントルク指令値へと換算する。
【0068】
ステップS15において、統合制御コントローラ26は、発電モータ12を用いて、エンジン11を始動するための最低回転数Ns(始動用回転数Ns)を保つように、回転数フィードバック制御演算を実行し、発電モータトルク指令値を算出する。ことのとき算出される発電モータトルク指令値は、正値であり、高圧バッテリ14を放電させることになる。
【0069】
ステップS16において、統合制御コントローラ26は、エンジン11の始動操作を実行する。統合制御コントローラ26は、エンジンコントローラ22に対して、エンジン始動要求フラグをセットして、エンジン11の始動に必要な吸入空気量、点火時期、燃料噴射量を要求する。
【0070】
ステップS17において、統合制御コントローラ26は、エンジン11、発電モータ12に対して停止を要求するエンジン停止要求フラグ、発電モータ停止要求フラグをセットする。
【0071】
ステップS18において、統合制御コントローラ26は、ステップS13、14を経由した場合、算出された発電モータトルク指令値、エンジントルク指令値をそれぞれモータ・ジェネレータコントローラ21、エンジンコントローラ22に出力する。また、統合制御コントローラ26は、ステップS15、16を経由した場合、算出された発電モータトルク指令値、エンジン始動要求フラグをそれぞれモータ・ジェネレータコントローラ21、エンジンコントローラ22に出力する。また、統合制御コントローラ26は、ステップS17を経由した場合、発電モータ停止要求フラグ、エンジン停止要求フラグをそれぞれモータ・ジェネレータコントローラ21、エンジンコントローラ22に出力する。
【0072】
このようにして、統合制御コントローラ26は、センタ装置30から提供される集約情報を用いて予測した、ハイブリッド車両1の目的地までの走行において消費される消費電力に基づき算出した目標SOCに近似するように、高圧バッテリ14の実SOCを管理することで、高圧バッテリ14に充電された電力を効率的に利用することができ、ひいてはエンジン11で消費される燃料消費量を低減することができる。
【0073】
ところで、上述した図2に示すフローチャートでは、ステップS11にて、統合制御コントローラ26が、バッテリコントローラ23によって検出される高圧バッテリ14の実際のSOCである実SOCと、ステップS10で算出した目標SOCとを比較し、目標SOCが実SOCよりも大きい場合、発電の必要があるとして、ステップS12にて、エンジン11を始動させて発電モータ12を発電させるかどうか判断するようになっている。このとき、統合制御コントローラ26は、目標SOCと実SOCとの乖離が大きく、走行経路の条件などによっては、エンジン11を駆動しただけでは必要な電力を高圧バッテリ14に充電できない場合、ハイブリッド車両1を走行させることを優先させ、走行に必要のない電装品の消費電力を抑制するように制御する。
【0074】
例えば、ハイブリッド車両1が、走行経路に存在する連続した急勾配を登坂走行する際、現在、ハイブリッド車両1全体で消費される消費電力では、登坂走行に必要な駆動力を得るための電力を確保することができない場合、統合制御コントローラ26は、オーディオといった走行に必要のない電装品を強制的に停止させるなどして消費電力を抑制するように制御する。
【0075】
これにより、走行経路を走行するために必要なハイブリッド車両1の走行性能を確実に確保することができる。
【0076】
このように、統合制御コントローラ26は、自動的にハイブリッド車両1の走行を優先させるようにしてもよいし、ユーザによる手動設定により、上述したような走行を優先させる走行優先モードへと切り替えるようにしてもよい。また、このような走行優先モードに対して、燃費を優先させる燃費優先モード、電装品の動作を優先させる電装品優先モードなどを用意し、ユーザの手動操作によって各モードを切り替えるようにすることで、高圧バッテリ14に蓄えられる電力をユーザの要求に応じて最適に利用できるように制御することもできる。
【0077】
続いて、上述した図2のフローチャートを用いて説明した本発明の実施の形態として示す電力マネージメントシステムのナビゲーションコントローラユニット25、統合制御コントローラ26によるハイブリッド車両1の電力マネージメントについて、具体的な例を用いて、従来の電力マネージメントと比較しなが説明をする。
【0078】
まず、ナビゲーションコントローラユニット25によって経路探索された目的地までの走行経路に関し、取得された静的道路情報から、図3(a)に示すような高低差の走行経路であることが分かったものとする。図3(a)に示すように、この走行経路は、r0〜r1区間が平坦路、r1〜r2区間がある程度の勾配を有する登り坂、r2〜r3区間がr1〜r2区間と同等の勾配を有する下り坂、r3〜r4区間が急激な勾配を有する登り坂、r4以降が平坦路となっている。
【0079】
図3(b)は、統合制御コントローラ26によって、ハイブリッド車両1に搭載された電装品の消費電力を考慮せずに、図3(a)に示したような高低差の走行経路であることのみを考慮して算出された高圧バッテリ14の目標SOCに、実SOCが近似するようにエンジン11の駆動を制御した場合のエンジン11の回転数、燃料消費量と、高圧バッテリ14の実SOCとを示した図である。なお、図3(b)に示すSOCMAXは、高圧バッテリ14のSOCの上限である標準SOC管理上限である。
【0080】
図3(b)に示すように、統合制御コントローラ26は、r0〜r1区間において、燃費優先させながらエンジン11を回転させ、発電モータ12による発電を行い、高圧バッテリ14へ電力を充電させる。
【0081】
また、統合制御コントローラ26は、r1〜r3区間において、エンジン11を停止させる。このとき、r1〜r2区間は、登り坂であるため高圧バッテリ14の消費電力が増加し高圧バッテリ14のSOCを低下させる。r2〜r3区間は、下り坂であるため発電モータ12の回生発電により高圧バッテリ14へ充電がなされSOCを上昇させる。
【0082】
また、統合制御コントローラ26は、r3〜r41区間においても、エンジン11を停止させる。このとき、r3〜r4区間は、登り坂であるため消費電力が増加し高圧バッテリ14のSOCを低下させる。r4〜r41区間は、平坦路であるが、エンジン11を停止させているため電力の消費により、r3〜r4区間ほどではないが、高圧バッテリ14のSOCを徐々に低下させる。
【0083】
また、統合制御コントローラ26は、r41以降、燃費優先させながらエンジン11を回転させ、発電モータ12による発電を行い、高圧バッテリ14へ電力を充電させる。
【0084】
図4(a)は、図3(a)に高低差を示した走行経路と同じ走行経路である。図4(b)は、統合制御コントローラ26によって、ハイブリッド車両1に搭載された電装品の消費電力を考慮して算出された高圧バッテリ14の目標SOCに、実SOCが近似するようにエンジン11の駆動を制御した場合のエンジン11の回転数、燃料消費量と、高圧バッテリ14の実SOCとを示した図である。このとき、図4(a)に示す走行経路のr1〜r2区間では雨が降り、r2〜r3区間では曇りとなる。なお、図4(b)に示すSOCMAXは、高圧バッテリ14のSOCの上限である標準SOC管理上限である。
【0085】
図4(b)に示すように、統合制御コントローラ26は、r0〜r1区間において、燃費優先させながらエンジン11を回転させ、発電モータ12による発電を行い、高圧バッテリ14へ電力を充電させる。
【0086】
また、統合制御コントローラ26は、r1〜r11区間において、エンジン11を停止させ、r11〜r2区間において、発電優先となるようにエンジン11を回転させ、発電モータ12による発電を行い、図4(b)のAに示すように、高圧バッテリ14へ電力を充電させる。
【0087】
このとき、r1〜r2区間は、登り坂であるため消費電力が増加し高圧バッテリ14のSOCを低下させる。特に、r1〜r11区間では、雨が降ったために電装品であるワイパー、エアコン、ライト類を動作させたことで消費電力が急激に増大し、高圧バッテリ14のSOCが大幅に低下してしまう。このとき、統合制御コントローラ26は、雨が降っていることの情報を取得できていないため、高圧バッテリ14のSOCの大幅な低下を検出したことに応じて、r11〜r2区間にて、発電優先となるようにエンジン11を回転させ、発電モータ12による発電を行い高圧バッテリ14へ電力を充電させるように制御することになる。
【0088】
また、統合制御コントローラ26は、r2〜r3区間において、エンジン11を停止させる。r2〜r3区間は、下り坂であるため発電モータ12の回生発電により高圧バッテリ14への充電がなされSOCを上昇させる。
【0089】
また、統合制御コントローラ26は、r3〜r41区間においても、エンジン11を停止させる。このとき、r3〜r4区間は、登り坂であるため消費電力が増加し高圧バッテリ14のSOCを低下させる。r4〜r41区間は、平坦路であるが、エンジン11を停止させているため電力の消費により、r3〜r4区間ほどではないが、高圧バッテリ14のSOCを徐々に低下させる。
【0090】
また、統合制御コントローラ26は、r41以降、燃費優先させながらエンジン11を回転させ、発電モータ12による発電を行い、高圧バッテリ14へ電力を充電させる。
【0091】
このように、統合制御コントローラ26は、雨が降っていることの情報を取得できていないことから、高圧バッテリ14のSOCの大幅な低下を検出したことに応じて、r11〜r2区間にて、発電優先となるようにエンジン11を回転させ、発電モータ12による発電を行い高圧バッテリ14へ電力を充電させるように制御するため、エンジン11によって消費される燃料消費量が増加してしまうといった弊害を招来してしまう。
【0092】
図5(a)は、図3(a)に高低差を示した走行経路と同じ走行経路である。図5(b)は、統合制御コントローラ26によって、VICSセンタ40から提供されるVICS情報の天候情報(降水確率50%)に基づき算出された高圧バッテリ14の目標SOCに、実SOCが近似するようにエンジン11の駆動を制御した場合のエンジン11の回転数、燃料消費量と、高圧バッテリ14の実SOCとを示した図である。このとき、図5(a)に示す走行経路のr1〜r2区間では雨が降り、r2〜r3区間では曇りとなる。なお、図5(b)に示すSOCMAXは、高圧バッテリ14のSOCの上限である標準SOC管理上限である。
【0093】
図5(b)に示すように、統合制御コントローラ26は、r0〜r1区間において、燃費優先させながらエンジン11を回転させ、発電モータ12による発電を行い、高圧バッテリ14へ電力を充電させる。
【0094】
また、統合制御コントローラ26は、r1〜r21区間においても、燃費優先させながらエンジン11を回転させ、発電モータ12による発電を行い、高圧バッテリ14へ電力を充電させる。
【0095】
このとき、r1〜r2区間は、登り坂であるため消費電力が増加し高圧バッテリ14のSOCを低下させる。r2〜r3区間は、下り坂であるため発電モータ12の回生発電により高圧バッテリ14へ充電がなされSOCを上昇させる。
【0096】
図5(b)に示すように、統合制御コントローラ26は、VICSセンタ40から提供されるVICS情報の天候情報により、r1〜r3区間では降水確率が50%であるということが分かっているため、電装品であるワイパー、エアコン、ライト類によって消費される電力分を考慮し、高圧バッテリ14の目標SOCを全体的に高めに設定する。
【0097】
また、統合制御コントローラ26は、r21以降、エンジン11を停止させる。図5(b)に示すように、r21〜r3区間は、下り坂であるため発電モータ12の回生発電により高圧バッテリ14へ充電がなされSOCを上昇させる。しかしながら、上述したように、VICS情報に基づき、高圧バッテリ14の目標SOCは、全体的に高めに設定されているため、r22〜r3区間において、標準SOC管理上限を超えてしまう。このように、目標SOC管理上限を超えてしまう場合、回生によるエンジンブレーキを使用することができず、目標SOCに基づき高圧バッテリ14への充電を実行することができないといった問題がある。
【0098】
また、統合制御コントローラ26は、高圧バッテリ14の目標SOCを全体的に高めに設定することから、この目標SOCを維持するために、エンジン11で消費される燃料消費量が多くなってしまうといった問題がある。
【0099】
そこで、本発明の実施の形態として示す電力マネージメントシステムでは、上述した図2に示すフローチャートのようにして、統合制御コントローラ26が、ナビゲーションコントローラユニット25との連携によりセンタ装置30から提供される集約情報に基づき、電力マネージメントを実行する。
【0100】
図6(a)は、図3(a)に高低差を示した走行経路と同じ走行経路である。図6(b)は、統合制御コントローラ26によって、センタ装置30から提供される集約情報に基づき算出された高圧バッテリ14の目標SOCに、実SOCが近似するようにエンジン11の駆動を制御した場合のエンジン11の回転数、燃料消費量と、高圧バッテリ14の実SOCとを示した図である。このとき、図6(a)に示す走行経路のr1〜r2区間では雨が降り、r2〜r3区間では曇りとなる
図6(b)に示すように、統合制御コントローラ26は、r0〜r1区間において、燃費優先させながらエンジン11を回転させ、発電モータ12による発電を行い、高圧バッテリ14へ電力を充電させる。
【0101】
このとき、統合制御コントローラ26は、センタ装置30から提供される集約情報に基づき、r1〜r2区間において雨であることを把握しているため、電装品であるワイパー、エアコン、ライト類の動作により消費電力の増加を予想する。
【0102】
これに応じて、統合制御コントローラ26は、高圧バッテリ14の目標SOCを、電装品の消費電力の増加分を考慮して設定する。また、図6(b)に示す高圧バッテリ14のSOCの上限であるSOCMAXも、高圧バッテリ14の目標SOCが、電装品の消費電力の増加を考慮していることを受けて、消費電力の増加を考慮したSOC管理上限となる。
【0103】
統合制御コントローラ26は、r1〜r2区間において、燃費優先させながらエンジン11を回転させ、発電モータ12による発電を行い、高圧バッテリ14へ電力を充電させる。そして、統合制御コントローラ26は、r2以降、エンジン11を停止させる。
【0104】
これにより、統合制御コントローラ26は、センタ装置30から提供される走行経路を走行している他の車両より提供されるプローブ情報を集約したリアルタイム性の高い集約情報に基づき、高圧バッテリ14の最適な目標SOCを設定し、高圧バッテリ14の実SOCを設定した目標SOCに近似するように、燃費優先でエンジン11の駆動を制御するため、高圧バッテリ14に充電された電力を効率的に利用することができ、ひいてはエンジン11で消費される燃料消費量を低減することができる。
【0105】
また、ハイブリッド車両1のように、プラグイン機能を搭載している車両では、充電可能な目的地に到着した際に、高圧バッテリ14の実SOCがゼロとなるように統合制御コントローラ26により発電制御をすることで、より効率的な電力マネージメントを実行することができる。
【0106】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施の形態として示す電力マネージメントシステムの構成について説明するための図である。
【図2】前記電力マネージメントシステムの制御処理動作について説明するためのフローチャートである。
【図3】(a)は、一例として示す走行経路の高低差を示した図であり、(b)は、(a)で示した走行経路をハイブリッド車両で走行した際に、搭載された電装品の消費電力を考慮せずに算出された目標SOCに、実SOCが近似するようにエンジン11の駆動を制御した様子を示した図である。
【図4】(a)は、一例として示す降雨を伴った走行経路の高低差を示した図であり(b)は、(a)で示した走行経路をハイブリッド車両で走行した際に、搭載された電装品の消費電力を考慮して算出された目標SOCに、実SOCが近似するようにエンジン11の駆動を制御した様子を示した図である。
【図5】(a)は、一例として示す降雨を伴った走行経路の高低差を示した図であり、(b)は、(a)で示した走行経路をハイブリッド車両で走行した際に、VICS情報に基づき算出された目標SOCに、実SOCが近似するようにエンジン11の駆動を制御した様子を示した図である。
【図6】(a)は、一例として示す降雨を伴った走行経路の高低差を示した図であり、(b)は、(a)で示した走行経路をハイブリッド車両で走行した際に、集約情報に基づき算出された目標SOCに、実SOCが近似するようにエンジン11の駆動を制御した様子を示した図である。
【符号の説明】
【0108】
1 ハイブリッド車両
10 パワートレイン
11 エンジン
12 発電モータ
13 駆動モータ
14 高圧バッテリ
20 車載コントローラ
21 モータ・ジェネレータコントローラ
22 エンジンコントローラ
23 バッテリコントローラ
24 車両電装品制御ユニット
25 ナビゲーションコントローラユニット
25A 通信部
26 統合制御コントローラ
27 メモリ
30 センタ装置
50 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両に搭載されたバッテリの電力を管理する電力マネージメントシステムにおいて、
目的地までの走行経路を走行している他の複数の車両によって収集された情報を集約した集約情報を取得する集約報取得手段と、
前記集約情報取得手段によって取得された集約情報に基づき、前記走行経路を走行することで消費される消費電力を予測する消費電力予測手段と、
前記消費電力予測手段によって予測された消費電力に基づき、目的地までの走行に必要な前記バッテリのSOCである目標SOCを算出する目標SOC算出手段と、
前記目標SOC算出手段によって算出された目標SOCに近似するように、前記バッテリの実際のSOCを管理するSOC管理手段とを備えること
を特徴とする電力マネージメントシステム。
【請求項2】
自車両に乗車している乗員を特定する乗員特定手段と、
前記自車両に乗車した乗員ごとに、前記自車両に搭載された電装品の使用状況を反映した設定値を対応付けて記憶する記憶手段と、
前記乗員特定手段によって乗員が特定されたことに応じて、特定された乗員に対応付けられた電装品の設定値を前記記憶手段から読み出す設定値読み出し手段とを備え、
前記消費電力予測手段は、前記設定値読み出し手段によって読み出された設定値に基づき走行経路の走行中における電装品の消費電力を予測し、前記走行経路を走行することで消費される消費電力に加味すること
を特徴とする請求項1記載の電力マネージメントシステム。
【請求項3】
ハイブリッド車両に搭載されたバッテリの電力を管理する電力マネージメントシステムの電力マネージメント方法であって、
目的地までの走行経路を走行している他の複数の車両によって収集された情報を集約した集約情報を取得し、
取得された前記集約情報に基づき、前記走行経路を走行することで消費される消費電力を予測し、
予測された前記消費電力に基づき、目的地までの走行に必要な前記バッテリのSOCである目標SOCを算出し、
算出された前記目標SOCに近似するように、前記バッテリの実際のSOCを管理すること
を特徴とする電力マネージメント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−137340(P2009−137340A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313311(P2007−313311)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】