説明

電力伝送システムおよび車両用給電装置

【課題】非接触給電による電力伝送における漏洩電磁界を低減可能な電力伝送システム、およびそれを用いた車両用給電装置を提供する。
【解決手段】電力伝送システムは、高周波電源を構成する交流電源210および高周波電力ドライバ220と、一次自己共振コイル240と、二次自己共振コイル110とを含む。二次自己共振コイル110は、磁場の共鳴によって一次自己共振コイル240と磁気的に結合されることにより、一次自己共振コイル240から高周波電力を受ける。一次自己共振コイル240から二次自己共振コイル110への高周波電力の伝送時に、一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110のコイルが偶モードで共鳴する。すなわち一次自己共振コイル240と、二次自己共振コイル110に互いに逆向きの電流が流れる状態でそれら2つのコイルが共鳴する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力伝送システムおよびそれを用いた車両用給電装置に関し、特に共鳴法による非接触給電に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源コードや送電ケーブルを用いずに電力を供給する非接触給電が注目されている。非接触給電の有力な方式として、電磁誘導を用いた給電、電波を用いた給電、および電磁場の共鳴を利用して給電する共鳴法が知られている。
【0003】
電磁誘導を利用した給電システムは、たとえば特開2002−272134号公報(特許文献1)、特開平7−337035号(特許文献2)、特開平8−175232号公報(特許文献3)、特開2003−250233号公報(特許文献4)、および特開平11−225401号公報(特許文献5)等に開示される。一方、共鳴法を用いた給電システムは、たとえば特開2009−106136号公報(特許文献6)に開示される。
【0004】
特許文献6では、蓄電装置を備える電動車両、およびその蓄電装置に電力を供給するための車両給電装置が開示される。車両用給電装置は、高周波電力ドライバと、一次コイルと、一次自己共振コイルとを備え、車両は二次自己共振コイルを備える。高周波電力ドライバは、電源から受ける電力を高周波電力へと変換する。一次コイルは電力ドライバから高周波電力を受ける。一次自己共振コイルは磁場の共鳴によって二次自己共振コイルと磁気的に結合される。そして一次自己共振コイルは一次コイルから受けた高周波電力を二次自己共振コイルへ送電する。二次自己共振コイルが受けた電力は、車両に搭載された二次コイルおよび整流器を通じて蓄電装置に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−272134号公報
【特許文献2】特開平7−337035号
【特許文献3】特開平8−175232号公報
【特許文献4】特開2003−250233号公報
【特許文献5】特開平11−225401号公報
【特許文献6】特開2009−106136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非接触給電においては漏洩電磁界をできるだけ小さくすることが望まれる。しかしながら上記の特許文献1〜特許文献5に開示された電磁誘導方式の場合、漏洩電磁界を低減するにはユニットのサイズを大きくする必要がある。一方、特許文献6には、漏洩電磁界を低減させるために、一次自己共振コイルから生じる磁束を反射させるための反射壁を設けることが説明されている。しかし給電装置を構成する部品の数が増えることによりコストが上昇する。また給電装置の大型化を招くことも考えられる。これらの点から、非接触給電において漏洩電磁界を低減させるための方法については、さらなる検討が必要となる。
【0007】
この発明は上述の課題を解決するためのものであって、その目的は、非接触給電による電力伝送における漏洩電磁界を低減可能な電力伝送システム、およびそれを用いた車両用給電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に係る電力伝送システムは、高周波電力を発生させる高周波電源と、高周波電源により発生された高周波電力を受ける第1のコイルと、磁場の共鳴によって第1のコイルと磁気的に結合されることにより、第1のコイルから高周波電力を受ける第2のコイルとを備える。第1のコイルから第2のコイルへの高周波電力の伝送時に、第1および第2のコイルに互いに逆向きの電流が流れる状態で第1および第2のコイルが共鳴するように、高周波電力の周波数と、第1および第2のコイルに関するパラメータとが選ばれる。
【0009】
好ましくは、電力伝送システムは、第1のコイルに流れる第1の電流の向きを検出可能に構成された第1の電流センサと、第2のコイルに流れる第2の電流の向きを検出可能に構成された第2の電流センサと、制御装置とをさらに備える。制御装置は、第1の電流センサによって検出された第1の電流の向きと、第2の電流センサによって検出された第2の電流の向きとが互いに逆となるように、高周波電力の周波数およびパラメータの少なくとも一方を変化させる。
【0010】
好ましくは、第1および第2のコイルのうちの少なくとも1つのコイルは、その容量値を変更可能に構成される。パラメータは、少なくとも1つのコイルの容量値を含む。制御装置は、容量値を変更する。
【0011】
好ましくは、高周波電源は、高周波電力の周波数を変更可能に構成される。制御装置は、高周波電力の周波数が変化するように、高周波電源を制御する。
【0012】
この発明の他の局面に係る車両用給電装置は、車両に搭載された蓄電装置に電力を供給するための車両用給電装置であって、上記のいずれかに記載の電力伝送システムを備える。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、非接触給電による電力伝送を行なう給電装置において、大型化を回避しつつ漏洩電磁界を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態による電力伝送システムを含む充電システムの基本的な構成を示した図である。
【図2】共鳴法による送電の原理を説明するための図である。
【図3】図1に示した電動車両100のパワートレーンの全体構成を示す機能ブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態に係る電力伝送システムの解析モデルを説明するための図である。
【図5】図4に示したポート1から見た入力インピーダンスZinの実部と虚部とを示す図である。
【図6】入力ポートと出力ポートとに流れる電流I,Iの周波数特性を示した図である。
【図7】奇モードおよび偶モードにおける電気ダイポールを説明するための図である。
【図8】送受信アンテナを貫く磁束の向きと共鳴モードとの関係を説明するための図である。
【図9】電力伝送効率の周波数特性を示した図である。
【図10】奇モードおよび偶モードにおける利得を示した図である。
【図11】図4に示した電力伝送システムの送信側および受信側のヘリカル構造の等価回路モデルを説明するための図である。
【図12】容量値が可変である二次自己共振コイルの1つの構成例を示した図である。
【図13】容量値が可変である二次自己共振コイルの別の構成例を示した図である。
【図14】一次自己共振コイルの容量値を変化させる構成の例を説明した図である。
【図15】高周波電力の周波数を変化させる構成の例を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0016】
図1は、この発明の実施の形態による電力伝送システムを含む充電システムの基本的な構成を示した図である。図1を参照して、この充電システムは、電動車両100と、給電装置200とを備える。
【0017】
電動車両100は、二次自己共振コイル110と、二次コイル120と、整流器130と、蓄電装置140とを含む。また、電動車両100は、パワーコントロールユニット(以下「PCU(Power Control Unit)」とも称する。)150と、モータ160と、電流センサ182と、通信装置190とをさらに含む。
【0018】
二次自己共振コイル110は、車体下部に配設される。この二次自己共振コイル110は、両端がオープン(非接続)のLC共振コイルであり、給電装置200の一次自己共振コイル240(後述)と磁場の共鳴により磁気的に結合され、一次自己共振コイル240から電力を受電可能に構成される。
【0019】
具体的には、二次自己共振コイル110は、蓄電装置140の電圧や、一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110との間の距離、一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110との共鳴周波数等に基づいて、一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110との共鳴強度を示すQ値およびその結合度を示すκ等が大きくなるようにその巻数が適宜設定される。
【0020】
二次コイル120は、電磁誘導によって二次自己共振コイル110から受電可能に構成され、好ましくは二次自己共振コイル110と同軸上に配設される。そして、二次コイル120は、二次自己共振コイル110から受電した電力を整流器130へ出力する。整流器130は、二次コイル120から受ける高周波の交流電力を整流して蓄電装置140へ出力する。なお、整流器130に代えて、二次コイル120から受ける高周波の交流電力を蓄電装置140の電圧レベルに変換するAC/DCコンバータを用いてもよい。
【0021】
蓄電装置140は、充放電可能な直流電源であり、たとえばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池から成る。蓄電装置140の電圧は、たとえば200V程度である。蓄電装置140は、整流器130から供給される電力を蓄えるほか、後述のようにモータ160によって発電された電力も蓄える。そして、蓄電装置140は、その蓄えた電力をPCU150へ供給する。
【0022】
なお、蓄電装置140として、大容量のキャパシタも採用可能であり、整流器130やモータ160からの電力を一時的に蓄え、その蓄えた電力をPCU150へ供給可能な電力バッファであれば如何なるものでもよい。
【0023】
PCU150は、蓄電装置140から供給される電力を交流電圧に変換してモータ160へ出力し、モータ160を駆動する。また、PCU150は、モータ160により発電された電力を整流して蓄電装置140へ出力し、蓄電装置140を充電する。
【0024】
モータ160は、PCU150を介して蓄電装置140から供給される電力を受けて車両駆動力を発生し、その発生した駆動力を車輪へ出力する。また、モータ160は、車輪や図示されないエンジンから受ける運動エネルギーを受けて発電し、その発電した電力をPCU150へ出力する。
【0025】
電流センサ182は、二次自己共振コイル110に流れる電流の向きおよび大きさを検出する。たとえば、二次自己共振コイル110にある一方の向きに電流が流れる場合、電流センサ182はその電流の値を正の値として出力する。一方、二次自己共振コイル110に上記の向きと逆向きの電流が流れる場合、電流センサ182はその電流の値を負の値として出力する。
【0026】
通信装置190は、給電装置200に設けられる通信装置250と無線通信を行なうための通信インターフェースである。
【0027】
一方、給電装置200は、交流電源210と、高周波電力ドライバ220と、一次コイル230と、一次自己共振コイル240と、電流センサ242と、通信装置250とを含む。
【0028】
交流電源210は、車両外部の電源であり、たとえば系統電源である。高周波電力ドライバ220は、交流電源210から受ける電力を、磁場を共鳴させて一次自己共振コイル240から車両側の二次自己共振コイル110へ送電可能な高周波の電力に変換し、その変換した高周波電力を一次コイル230へ供給する。交流電源210および高周波電力ドライバ220は、高周波電力を発生させる高周波電源として機能する。
【0029】
一次コイル230は、電磁誘導によって一次自己共振コイル240へ送電可能に構成され、好ましくは一次自己共振コイル240と同軸上に配設される。そして、一次コイル230は、高周波電力ドライバ220から受電した電力を一次自己共振コイル240へ出力する。
【0030】
一次自己共振コイル240は、地面近傍に配設される。この一次自己共振コイル240は、両端がオープンのLC共振コイルであり、電動車両100の二次自己共振コイル110と磁場の共鳴により磁気的に結合され、二次自己共振コイル110へ電力を送電可能に構成される。具体的には、一次自己共振コイル240は、一次自己共振コイル240から送電される電力によって充電される蓄電装置140の電圧や、一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110との間の距離、一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110との共鳴周波数等に基づいて、Q値および結合度を示すκ等が大きくなるようにその巻数が適宜設定される。
【0031】
電流センサ242は、一次自己共振コイル240に流れる電流の向きおよび大きさを検出する。一次自己共振コイル240に流れる電流の向きが二次自己共振コイル110に流れる電流の向きと同じである場合、電流センサ242から出力される電流値の符号が電流センサ182の電流値の符号と一致する。一次自己共振コイル240に流れる電流の向きが二次自己共振コイル110に流れる電流の向きと逆向きである場合には、電流センサ242から出力される電流値の符号と電流センサ182の電流値の符号とは互いに逆の関係となる。
【0032】
通信装置250は、電動車両100に設けられる通信装置190と無線通信を行なうための通信インターフェースである。通信装置190は、電流センサ182の検出値を通信装置250に送信する。一方、通信装置250は、電流センサ242の検出値を通信装置190に送信する。これにより、電動車両100および給電装置200の両方が、電流センサ182および電流センサ242の各々の検出値を把握することができる。
【0033】
図2は、共鳴法による送電の原理を説明するための図である。図2を参照して、この共鳴法は、2つの音叉が共鳴するのと同様に、同じ固有振動数を有する2つのLC共振コイルが磁場を介して共鳴することによって、一方のコイルから他方のコイルへワイヤレス(非接触)で電力が伝送される。
【0034】
高周波電源310によって一次コイル320に高周波電力が流されると、一次コイル320に磁界が発生し、電磁誘導により一次自己共振コイル330に高周波電力が発生する。一次自己共振コイル330は、コイル自身のインダクタンスと導線間の浮遊容量とによるLC共振器として機能し、かつ、一次自己共振コイル330と同じ共振周波数を有する二次自己共振コイル340と磁場共鳴により磁気的に結合することによって、二次自己共振コイル340へ電力を伝送する。
【0035】
そして、一次自己共振コイル330からの受電により二次自己共振コイル340に発生する磁界によって二次コイル350には電磁誘導による高周波電力が発生し、負荷360に電力が供給される。
【0036】
なお、図1との対応関係について説明すると、図1の交流電源210および高周波電力ドライバ220は、図2の高周波電源310に相当する。また、図1の一次コイル230および一次自己共振コイル240は、それぞれ図2の一次コイル320および一次自己共振コイル330に相当し、図1の二次自己共振コイル110および二次コイル120は、それぞれ図2の二次自己共振コイル340および二次コイル350に相当する。そして、図1の整流器130および蓄電装置140は、図2の負荷360に相当する。
【0037】
図3は、図1に示した電動車両100のパワートレーンの全体構成を示す機能ブロック図である。図3を参照して、電動車両100は、蓄電装置140と、システムメインリレーSMR1と、昇圧コンバータ152と、インバータ154,156と、平滑コンデンサC1,C2と、モータジェネレータ162,164と、エンジン170と、動力分割機構172と、駆動輪174と、車両ECU(Electronic Control Unit)180とを含む。また、電動車両100は、二次自己共振コイル110と、二次コイル120と、整流器130と、システムメインリレーSMR2とをさらに含む。
【0038】
この電動車両100は、動力源としてエンジン170およびモータジェネレータ164を搭載したハイブリッド車両である。エンジン170およびモータジェネレータ162,164は、動力分割機構172に連結される。そして、電動車両100は、エンジン170およびモータジェネレータ164の少なくとも一方が発生する駆動力によって走行する。エンジン170が発生する動力は、動力分割機構172によって2経路に分割される。すなわち、一方は駆動輪174へ伝達される経路であり、もう一方はモータジェネレータ162へ伝達される経路である。
【0039】
モータジェネレータ162は、交流回転電機であり、たとえばロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機から成る。モータジェネレータ162は、動力分割機構172によって分割されたエンジン170の運動エネルギーを用いて発電する。たとえば、蓄電装置140の充電状態(以下「SOC(State Of Charge)」とも称する。)が予め定められた値よりも低くなると、エンジン170が始動してモータジェネレータ162により発電が行なわれ、蓄電装置140が充電される。
【0040】
モータジェネレータ164も、交流回転電機であり、モータジェネレータ162と同様に、たとえばロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機から成る。モータジェネレータ164は、蓄電装置140に蓄えられた電力およびモータジェネレータ162により発電された電力の少なくとも一方を用いて駆動力を発生する。そして、モータジェネレータ164の駆動力は駆動輪174に伝達される。
【0041】
また、車両の制動時や下り斜面での加速度低減時には、運動エネルギーや位置エネルギーとして車両に蓄えられた力学的エネルギーが駆動輪174を介してモータジェネレータ164の回転駆動に用いられ、モータジェネレータ164が発電機として作動する。これにより、モータジェネレータ164は、走行エネルギーを電力に変換して制動力を発生する回生ブレーキとして作動する。そして、モータジェネレータ164により発電された電力は、蓄電装置140に蓄えられる。なお、モータジェネレータ162,164は、図1におけるモータ160に相当する。
【0042】
動力分割機構172は、サンギヤと、ピニオンギヤと、キャリアと、リングギヤとを含む遊星歯車から成る。ピニオンギヤは、サンギヤおよびリングギヤと係合する。キャリアは、ピニオンギヤを自転可能に支持するとともに、エンジン170のクランクシャフトに連結される。サンギヤは、モータジェネレータ162の回転軸に連結される。リングギヤはモータジェネレータ164の回転軸および駆動輪174に連結される。
【0043】
システムメインリレーSMR1は、蓄電装置140と昇圧コンバータ152との間に配設される。システムメインリレーSMR1は、車両ECU180からの信号SE1が活性化されると、蓄電装置140を昇圧コンバータ152と電気的に接続し、信号SE1が非活性化されると、蓄電装置140と昇圧コンバータ152との間の電路を遮断する。
【0044】
昇圧コンバータ152は、車両ECU180からの信号PWCに基づいて、蓄電装置140から出力される電圧を昇圧して正極線PL2へ出力する。なお、この昇圧コンバータ152は、たとえば直流チョッパ回路から成る。
【0045】
インバータ154,156は、それぞれモータジェネレータ162,164に対応して設けられる。インバータ154は、車両ECU180からの信号PWI1に基づいてモータジェネレータ162を駆動し、インバータ156は、車両ECU180からの信号PWI2に基づいてモータジェネレータ164を駆動する。なお、インバータ154,156は、たとえば三相ブリッジ回路から成る。なお、昇圧コンバータ152およびインバータ154,156は、図1におけるPCU150に相当する。
【0046】
二次自己共振コイル110、二次コイル120および整流器130は、図1で説明したとおりである。システムメインリレーSMR2は、整流器130と蓄電装置140との間に配設される。システムメインリレーSMR2は、車両ECU180からの信号SE2が活性化されると、蓄電装置140を整流器130と電気的に接続し、信号SE2が非活性化されると、蓄電装置140と整流器130との間の電路を遮断する。
【0047】
車両ECU180は、アクセル開度や車両速度、その他各センサからの信号に基づいて、昇圧コンバータ152およびモータジェネレータ162,164をそれぞれ駆動するための信号PWC,PWI1,PWI2を生成し、その生成した信号PWC,PWI1,PWI2をそれぞれ昇圧コンバータ152およびインバータ154,156へ出力する。
【0048】
また、車両ECU180は、車両の走行時、信号SE1を活性化してシステムメインリレーSMR1をオンさせるとともに、信号SE2を非活性化してシステムメインリレーSMR2をオフさせる。
【0049】
一方、二次自己共振コイル110、二次コイル120および整流器130を用いて車両外部の交流電源210(図1)から蓄電装置140の充電時、車両ECU180は、信号SE1を非活性化してシステムメインリレーSMR1をオフさせるとともに、信号SE2を活性化してシステムメインリレーSMR2をオンさせる。
【0050】
通信装置190は、電流センサ242により検出された電流値(一次自己共振コイル240に流れる電流Iaの値)を受けて、その検出値(Ia)を車両ECU180に送信する。通信装置190は、電流センサ182により検出された電流値(二次自己共振コイル110に流れる電流Ibの値)を受けて、その検出値(電流Ib)を車両ECU180および給電装置200の通信装置250に送信する。
【0051】
この電動車両100においては、車両外部の交流電源210(図1)から蓄電装置140の充電時、システムメインリレーSMR1,SMR2がそれぞれオフ,オンされる。そして、給電装置200の一次自己共振コイル240(図1)と磁場の共鳴により磁気的に結合された二次自己共振コイル110によって受電された高周波の充電電力が電磁誘導によって二次コイル120へ伝送され、整流器130により整流されて蓄電装置140へ供給される。
【0052】
この発明の実施の形態に係る電力伝送システムは、少なくとも高周波電源を構成する交流電源210および高周波電力ドライバ220と、一次自己共振コイル240と、二次自己共振コイル110とを含む。より好ましくは、電力伝送システムは、さらに、電流センサ242と、電流センサ182と、車両ECU180とを含む。さらに好ましくは、電力伝送システムは、一次コイル230および二次コイル120を含む。また、この発明の実施の形態に係る車両用給電装置は、上記の電力伝送システムを含み、電動車両100に設けられた蓄電装置140に電力を供給する。
【0053】
この発明の実施の形態では、一次自己共振コイル240から二次自己共振コイル110への高周波電力の伝送時には、一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110に、互いに逆向きの電流が流れる状態で一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110のコイルが共鳴する。これにより、漏洩電磁界(以下の説明では「遠方界放射」と呼ぶこともある)を低減することができる。一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110のコイルが上記の状態で共鳴するために、高周波電力の周波数およびコイル(一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110の少なくとも一方のコイル)のパラメータが選ばれる。
【0054】
漏洩電磁界が低減することによって漏洩電磁界を遮蔽するための構造を簡素化できるので、給電装置の大型化を防ぐことができる。さらに、漏洩電磁界を遮蔽するための部材(反射壁など)に要するコストを低減させることができる。従って本実施の形態によれば大型化を回避しつつ漏洩電磁界を低減可能な電力伝送システムを実現できる。
【0055】
次に、一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110との共鳴モードについてより詳しく説明する。
【0056】
<共鳴モード>
1.解析モデル
図4は、この発明の実施の形態に係る電力伝送システムの解析モデルを説明するための図である。図4(A)は解析モデルを示し、図4(B)は、解析モデル中の構造パラメータの具体的な値を例示する。なお、図4(B)に示したパラメータの値によってこの発明が限定されるものではない。
【0057】
図4を参照して、送信側および受信側ともに1個のループ構造と1個のヘリカル構造により構成される。図4(A)と図1との対応関係が分かりやすくなるように、図4(A)では送信側のループ構造およびヘリカル構造にそれぞれ符号230,240が付され、受信側のループ構造およびヘリカル構造にそれぞれ符号120,110が付されている。
【0058】
ループ構造は端子を有し、この端子から送信側では電力を供給し、受信側では電力を取り出す。ループ構造は使用周波数帯において波長に対して十分小さいので微小ループとみなすことができ、それ自身は鋭い周波数特性を持たない。ループ構造とヘリカル構造とは電気的に絶縁されており、電磁誘導により電力をやり取りする。ヘリカル構造は両方が開放端となっており、ヘリカルによるインダクタンスと巻線間のキャパシタンスにより共鳴周波数が決定される。2つのヘリカル構造の間では電磁共鳴現象により電力がやり取りされる。
【0059】
図4(B)に示した構造パラメータは以下の通りである。Dsは、受信側のヘリカル構造とループ構造との間の間隔、Dは送信側のヘリカル構造と受信側のヘリカル構造との間の間隔、Ddは、送信側のヘリカル構造とループ構造との間の間隔、Hsは送信側ヘリカル構造の高さ(Z方向の長さを高さと呼ぶ。以下同様)、Hdは送信側ヘリカル構造の高さ、Raは送信側ループ構造の半径、Rbは受信側ループ構造の半径、Rsは送信側ヘリカル構造の半径、Rdは受信側ヘリカル構造の半径である。
【0060】
上記電動車両を含む任意のアプリケーションにこの電力伝送システムを応用するためには、指定された使用周波数において伝送効率を最大にするための構造パラメータを求める方法を確立することが必要となる。そのためには、この構造において、共鳴周波数が決定されるメカニズムを明らかにすることが有用である。このためモーメント法を用いて構造の解析を行なった。送信側のループに設けたポートをPort1とし、この送信ポートに1Vの電圧源を接続した。受信側のループに設けたポートをPort2として、この受信ポートを50Ωで終端した。すべてのループとヘリカル構造とは完全導体(RFC)としてモデル化したため、導体損は考慮されていない。
【0061】
2.入力インピーダンス
まず、共鳴周波数を求めるために、入力インピーダンスを計算した。図5は、図4に示したポート1から見た入力インピーダンスZinの実部と虚部とを示す。細線は、図4に示す電力伝送システムの計算値を示し、太線は、図4に示したモデルから、共鳴機構であるヘリカル構造を取り除いてループ構造のみにした場合の計算値である。太線と細線とを比較することによって、ヘリカル構造の入力インピーダンスへの寄与が明らかとなる。
【0062】
ループ構造のみの場合には、入力インピーダンスの実部はほぼ0Ωであり、虚部は緩やかな周波数特性を持っていることが分かる。一方、ヘリカル構造が付加されることにより、11.25MHzより低周波数側、12.5MHzより高周波数側ではループのみの場合に漸近していくものの、その間に2つの共振が発生していることがわかる。11.4MHzと12.3MHzにおいて、実際の電力伝送システムの入力インピーダンスの実部が極大値を持ち、その値は、それぞれ525Ω、219Ωである。これらの抵抗値は放射抵抗に相当するものであると考えられる。また、これらの周波数では、ヘリカル構造がある場合とない場合とで、入力インピーダンスの虚部の値が一致していることが分かる。このことから、これらの周波数で、ヘリカル構造が寄与するリアクタンス成分が0となり、送受信のヘリカル構造の間で共鳴が発生していることが分かる。
【0063】
3.ポート電流
2つの共鳴がどのようなモードであるかを調べるために、ポート電流を計算した。図6に、入力ポートと出力ポートとに流れる電流I,Iの周波数特性を示す。図6を参照して、入力ポートの電流の実部は、11.4MHz、12.3MHzでともに正の極大値を持っている。一方、出力ポート電流の実部は、11.4MHzで正の極大値を持っているのに対して12.3MHzでは負の極大値を持っている。さらにポート電流の虚部に注目すると、11.4MHz付近では、ポート1、ポート2ともに同じような周波数特性を持っているのに対し、12.3MHz付近では、ポート1とポート2とで逆の周波数特性を持っていることが分かる。このことから、11.4MHzの共鳴モードと12.3MHzの共鳴モードとは、出力ポートに流れる電流が互いに反対の共鳴モードであることが分かる。
【0064】
4.磁界分布と等価ダイポールモデル
共鳴が発生するメカニズムを理解するために、磁界分布を計算した。11.4MHzの場合は、送受信アンテナの間で磁界強度が最大になる。一方、12.3MHzの場合には、送受信アンテナの間で磁界強度が最低になる。微小磁気ループと微小電気ダイポールの双対称性を考慮すると、これら2つの共鳴は、図7に示すような電気ダイポールとして表わすことができる。それぞれの周波数におけるポート電流の向きを考えることにより、電気ダイポールの極性が説明でき、電気ダイポールのつくる電気力線を考えると、磁界分布の大きさと向きが説明できる。
【0065】
11.4MHzでは、送受信ポートに同じ向きの電流が流れるため、電荷分布は対称となる。このため、本明細書ではこの周波数の共鳴モードを「奇モード」と呼ぶ。12.3MHzでは、送受信ポートに反対向きの電流が流れるため、電荷分布は反対称となる。このため、本明細書ではこの周波数の共鳴モードを「偶モード」と呼ぶ。図7(A)は奇モードでの等価ダイポールモデルを示し、図7(B)は偶モードでの等価ダイポールモデルを示している。
【0066】
奇モードおよび偶モードは、送受信アンテナ(コイル)を貫く磁束の向きによっても説明することができる。
【0067】
図8は、送受信アンテナを貫く磁束の向きと共鳴モードとの関係を説明するための図である。図8(A)は、奇モードでの磁束の向きを示し、図8(B)は、偶モードでの磁束の向きを示している。図8を参照して、奇モードでは、コイル240を貫く磁束F1の向きとコイル110を貫く磁束F2の向きとが同じである。このためコイル110に流れる電流Iaの向きと、コイル240に流れる電流Ibの向きとは同じである。この結果、送信ポート(ポート1)および受信ポート(ポート2)に同じ向きの電流が流れる。一方、偶モードでは、コイル240を貫く磁束F1の向きとコイル110を貫く磁束F2の向きとが互いに逆である。このためコイル110,240には逆向きに電流が流れる。この結果、送信ポートおよび受信ポートに逆向きの電流が流れる。
【0068】
5.伝送効率
電力伝送効率は、以下の式(1)に従って計算される。
【0069】
【数1】

【0070】
ここでIとVとは、それぞれポート1の電流と電圧とである。また、ZとIとは、それぞれポート2に接続した負荷の抵抗値と、ポート2の電流である。
【0071】
図9に、電力伝送効率の周波数特性を示す。偶モードと奇モードとで、最大の電力伝送効率は、それぞれ−0.115dBと−0.003dBであった。ただしこの解析では導体損を考慮していないため、この効率を達成することは困難であると考えられる。また電圧源をポート1に接続した状態で解析しており、インピーダンスマッチングは考慮されていない。
【0072】
各モードで、効率が最大となる周波数が2つ存在することが分かる。これは入力インピーダンス(図5参照)が、ヘリカル構造によるものに、ループ構造によるものが加わっているため、共鳴が起こる(ヘリカル構造によるリアクタンスが0になる)周波数と、入力から見たリアクタンスが0になる共振周波数とが互いにずれているためと考えられる。なお、この解析ではインピーダンスマッチングは考慮されていないが、複素共役整合をとることによって、共鳴周波数と共振周波数とを一致させることが可能である。
【0073】
送信アンテナ・受信アンテナを取り囲む球を考え、その体積V、表面Sにポインチング定理を適用すると、この構造における電力の収支は以下の式(2)〜式(7)に従って表わすことができる。
【0074】
【数2】

【0075】
ここでPinは、送信ポートに供給した電力、Poutは、受信ポートから取り出した電力、Pは遠方界放射電力、Pは領域内の蓄積電力、Pは領域内の損失電力を示す。遠方界で使用する通常のアンテナはPを遠方界放射電力Pに変換するものであるといえるが、無線電力伝送においては、遠方界放射電力Pは損失となる。
【0076】
6.遠方界放射
通常のアンテナでは、遠方界放射を最大化する。すなわち、アンテナとしての利得を最大化することが求められている。一方、無線電力伝送システムにおいては、遠方界放射は電力の伝送損失となるばかりでなく、不要放射として他のシステムへの干渉を引き起こすため、遠方界放射を最小化することが求められる。
【0077】
したがって、この発明の実施の形態では、遠方界放射を最小化する。まず、受信アンテナを送信アンテナの近傍に配置された抵抗で終端された寄生素子とみなして、アンテナとしての利得を求めた。
【0078】
図10に、奇モードおよび偶モードにおける利得を示す。奇モードおよび偶モードにおける利得の最大値は、それぞれ−13.8dBi,−31.8dBiであり、偶モードでの最大値が奇モードでの最大値よりも18dB低いことが分かる。奇モードでは、同相励振された微小ダイポールが近接して配置されていると考えられるため、それぞれの微小ダイポールによって発生する遠方界は互いに強めあう。一方、偶モードでは、逆相励振された微小ダイポールが近接して配置されていると考えられるため、遠方界は互いに打ち消しあうと考えられる。
【0079】
遠方界放射が少ないということは漏洩電磁界が小さいということを意味する。奇モードと偶モードとでは、偶モードのほうが遠方界放射が小さくなる。遠方界放射の大きさを考慮すると偶モードのほうが無線電力伝送に適していると考えられる。そこでこの発明の実施の形態では、共鳴モードとして偶モードを選択する。2つのコイルを偶モードで共鳴させることにより、それら2つのコイル間に電力が伝送されるときの漏洩電磁界を小さくすることができる。
【0080】
<共鳴周波数>
1.等価回路モデル
図11は、図4に示した電力伝送システムの送信側および受信側のヘリカル構造の等価回路モデルを説明するための図である。図11を参照して、送信側、受信側ともに同一の構造とし、Lはヘリカル構造の自己インダクタンス、Cはヘリカル構造の巻線間容量、Mは送受信ヘリカル構造官の相互インダクタンスを示す。R,Rはそれぞれ送信側、受信側の誘電体損・導体損に対応する抵抗値を示す。また、Zは負荷抵抗である。I,Iは、それぞれ送信側、受信側のヘリカル構造に流れこむ電流を示す。なお、この等価回路においては、ヘリカル構造のみを考慮しており、ループ構造は考慮していない。
【0081】
この等価回路において、送信側ヘリカル構造が単独で存在し、受信側の結合がない場合の共振周波数をfとすると、共振周波数fは、以下の式(8)によって表わされる。
【0082】
【数3】

【0083】
一方、送信側、受信側のヘリカル構造が相互インダクタンスMで結合し、共鳴しているときの共鳴周波数をfodd,fevenとすると、奇モードの共鳴周波数foddおよび偶モードのfevenは以下の式(9)、式(10)によってそれぞれ表わされる。
【0084】
【数4】

【0085】
式(9)から、奇モードは、送信側、受信側に同じ向きの電流が流れるため、自己インダクタンスに相互インダクタンスが加わって全体のインダクタンスが大きくなり、送信側と受信側との結合がない場合よりも共鳴周波数が低くなると説明できる。送信側と受信側とで電流の向きが同じであることは、ポート電流(図6参照)からも確認でき、その結果、遠方界では同相で加算されて放射が大きくなることが図10から確認できる。また、偶モードでは、送信側、受信側に互いに逆向きの電流が流れるため、自己インダクタンスから相互インダクタンスが差し引かれて全体のインダクタンスが小さくなり、送信側と受信側との結合がない場合よりも共鳴周波数が高くなる。
【0086】
送受信ヘリカル構造(すなわち、図1に示す一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110)の結合の強さを示す結合係数を上記のようにκと示す。結合係数κは、以下の式(11)に示すように定義される。
【0087】
【数5】

【0088】
式(11)から、共鳴周波数fodd,fevenは以下の式(12)、式(13)に従ってそれぞれ表わすことができる。
【0089】
【数6】

【0090】
式(12)、式(13)から、奇モード、偶モードの共鳴周波数の違いは結合係数に依存することが分かる。
【0091】
<偶モードの共鳴による電力伝送>
図4に示した送受信ヘリカル構造の位置関係、すなわち図1に示した一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110との間の位置関係は常に同じであるとは限らない。使用環境によって結合係数κが変化した場合には、共鳴周波数が変化する可能性がある。
【0092】
特にこの発明の実施の形態では、二次自己共振コイル110が車両に搭載される。車両の充電の際には、電動車両100が給電装置200の場所まで移動しなければならない。したがって電動車両100が給電装置200の位置で停車するたびに、一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110との間の位置関係が変化する可能性が高い。
【0093】
また、車両の積載状況やタイヤの空気圧等によっても給電装置と車両との間の距離が変化する。給電装置の一次自己共振コイルと車両の二次自己共振コイルとの間の距離の変化は一次自己共振コイルおよび二次自己共振コイルの共鳴周波数に変化をもたらす。
【0094】
そこでこの発明の実施の形態では、給電装置の一次自己共振コイルと車両の二次自己共振コイルとが偶モードで共鳴するように、電力伝送システムが制御される。
【0095】
1.使用周波数が固定される場合
電力伝送システムに使用される周波数が種々の理由により固定されることが考えられる。たとえば日本の場合、電波法での規制により使用周波数が1つに限られることが想定される。
【0096】
このような場合には共鳴周波数を変えずに電力を伝送することが必要となる。そこで使用周波数が固定される場合には、一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110の少なくとも一方の容量値が可変となるように一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110が構成される。以下では、二次自己共振コイル110の容量値が可変である場合について代表的に説明する。
【0097】
図12は、容量値が可変である二次自己共振コイルの1つの構成例を示した図である。図12を参照して、この二次自己共振コイル110は、導線間に接続される可変コンデンサ(一般的に「バリコン」とも称される。)112を有する。可変コンデンサ112は、車両ECU180からの制御信号に基づいて容量可変であり、その容量を変更することによって二次自己共振コイル110の容量を可変にする。すなわち、可変コンデンサ112が設けられていない場合には、二次自己共振コイルの容量は、導線間の浮遊容量によって定まるところ、この二次自己共振コイル110では、導線間に接続された可変コンデンサ112の容量を変更することによって二次自己共振コイル110の容量を変更することができる。
【0098】
図13は、容量値が可変である二次自己共振コイルの別の構成例を示した図である。この二次自己共振コイル110は、導線間に接続される可変容量ダイオード114を有する。可変容量ダイオード114は、車両ECU180からの制御信号に基づいて容量可変であり、可変コンデンサ112と同様に、その容量を変更することによって二次自己共振コイル110の容量を可変にする。
【0099】
車両ECU180は、二次自己共振コイル110の容量を変更するとともに、電流センサによって検出された電流Ia,Ibの値の符号が互いに逆であるか否かを判定する。電流Ia,Ibの検出値の符号が互いに逆となるように車両ECU180は、二次自己共振コイル110の容量を変化させる。
【0100】
式(10)に示されるように、偶モードの共鳴周波数fevenは、2つのコイルの自己インダクタンス、およびそれらの相互インダクタンス、ならびに、それらの容量に基づいて定まる。一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110との間の位置関係が変化することで、相互インダクタンスMが変化する可能性がある。一方で、上記のように偶モードの共鳴周波数fevenは、電力伝送システムの使用周波数であるので1つに限られる。また、一次自己共振コイルおよび二次自己共振コイルの各々の自己インダクタンスLは、単位長さあたりの巻数、コイルの長さ、断面積、材質の透磁率などによって予め定められる。
【0101】
したがってコイルの容量Cを変化させることで、一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110との間の位置関係が変化し、その結果、結合係数κが変化する場合でも、一次自己共振コイル240と二次自己共振コイル110とを偶モードで共鳴させることができる。
【0102】
また、二次自己共振コイル110の容量値が固定であり、一次自己共振コイル240の容量値が可変であってもよい。この場合、たとえば以下に説明するように電力伝送システムが構成される。まず、図12および図13に示すように、一次自己共振コイル240は、導線間に接続される可変コンデンサ112あるいは可変容量ダイオード114を備える。
【0103】
さらに図14に示すように、給電装置200は、通信装置250から受ける電流値Ia,Ibに基づいて、一次自己共振コイル240の容量を変更可能なECU260を備える。ECU260は、電流Ia,Ibの検出値の符号が互いに逆となるように一次自己共振コイル240の容量を変化させる。
【0104】
また、一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110の各々が、その容量を可変に構成されていてもよい。この場合、車両ECU180および給電装置200側のECU260によって、各コイルの容量値を変化させることができる。
【0105】
2.コイルのパラメータが固定される場合
使用周波数の変更が可能であり、かつ一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110の両方のパラメータ(容量等)が固定される場合には、高周波電力の周波数を変化させることによって、偶モードでの共鳴を実現できる。
【0106】
図15を参照して、給電装置200は、ECU260Aおよび高周波電力ドライバ220Aを備える。なお、給電装置200の他の部分の構成は、図1に示した構成と同様である。高周波電力ドライバ220Aは、高周波電力の周波数を変更可能に構成される。ECU260Aは、通信装置190,250を通じて、電流センサ242が検出した一次自己共振コイル240の電流値(Ia)および電流センサ182が検出した二次自己共振コイル110の電流値(Ib)を受ける。そしてECU260Aは高周波電力ドライバ220Aを制御することによって、電流Ia,Ibの検出値の符号が互いに逆となるように高周波電力の周波数を変化させる。
【0107】
なお、使用周波数およびコイルのパラメータ(容量値)の両方ともに可変である場合には、上記の2種類の制御を組み合わせることができる。この場合にも、一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110を偶モードで共鳴させることができる。
【0108】
以上のように、この発明の実施の形態では、一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110に、互いに逆向きの電流が流れる状態で一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110のコイルを共鳴させる。すなわち、一次自己共振コイル240および二次自己共振コイル110の共鳴モードとして偶モードが選択される。それら2つのコイルを偶モードで共鳴させて電力を伝送することにより、漏洩電磁界を低減することができる。このため、磁気漏洩を遮断するための構造を簡素化できるので、電力伝送システムの大型化を回避することができる。
【0109】
なお、上記の実施の形態では、電力伝送システムの適用例として電動車両を充電するためのシステムを説明した。ただし、この発明の用途は上記のように限定されるものではなく、この発明は共鳴法を用いた非接触給電が利用可能な任意のアプリケーションに適用できる。したがって、たとえば一般的な電気製品にもこの発明を適用できる。
【0110】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
100 電動車両、110 二次自己共振コイル、112 可変コンデンサ、114 可変容量ダイオード、120 二次コイル、130 整流器、140 蓄電装置、152 昇圧コンバータ、154,156 インバータ、160 モータ、162,164 モータジェネレータ、170 エンジン、172 動力分割機構、174 駆動輪、180 車両ECU、182,242 電流センサ、190,250 通信装置、200 給電装置、210 交流電源、220,220A 高周波電力ドライバ、230 一次コイル、240 一次自己共振コイル、260,260A ECU、310 高周波電源、320 一次コイル、330 一次自己共振コイル、340 二次自己共振コイル、350 二次コイル、360 負荷、C1,C2 平滑コンデンサ、F1,F2 磁束、PL2 正極線、SMR1,SMR2 システムメインリレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電力を発生させる高周波電源と、
前記高周波電源により発生された前記高周波電力を受ける第1のコイルと、
磁場の共鳴によって前記第1のコイルと磁気的に結合されることにより、前記第1のコイルから前記高周波電力を受ける第2のコイルとを備え、
前記第1のコイルから前記第2のコイルへの前記高周波電力の伝送時に、前記第1および第2のコイルに互いに逆向きの電流が流れる状態で前記第1および第2のコイルが共鳴するように、前記高周波電力の周波数と、前記第1および第2のコイルに関するパラメータとが選ばれる、電力伝送システム。
【請求項2】
前記電力伝送システムは、
前記第1のコイルに流れる第1の電流の向きを検出可能に構成された第1の電流センサと、
前記第2のコイルに流れる第2の電流の向きを検出可能に構成された第2の電流センサと、
前記第1の電流センサによって検出された前記第1の電流の向きと、前記第2の電流センサによって検出された前記第2の電流の向きとが互いに逆となるように、前記高周波電力の前記周波数および前記パラメータの少なくとも一方を変化させる制御装置とをさらに備える、請求項1に記載の電力伝送システム。
【請求項3】
前記第1および第2のコイルのうちの少なくとも1つのコイルは、その容量値を変更可能に構成され、
前記パラメータは、前記少なくとも1つのコイルの前記容量値を含み、
前記制御装置は、前記容量値を変更する、請求項2に記載の電力伝送システム。
【請求項4】
前記高周波電源は、前記高周波電力の前記周波数を変更可能に構成され、
前記制御装置は、前記高周波電力の前記周波数が変化するように、前記高周波電源を制御する、請求項2に記載の電力伝送システム。
【請求項5】
車両に搭載された蓄電装置に電力を供給するための車両用給電装置であって、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電力伝送システムを備える、車両用給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−147213(P2011−147213A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3998(P2010−3998)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年 8月27日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告 Vol.109 No.183 アンテナ・伝播」に発表
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】