説明

電子コントロールされる駐車・ブレーキ・システム

本発明は、乗り物のための駐車・ブレーキ・システムに関し、前記駐車・ブレーキ・システムは、駐車・ブレーキECU(20)を通じて電子コントロールされ、前記乗り物のユーザが前記駐車・ブレーキの付勢の程度をコントロールすることが可能な駐車・ブレーキ入力デバイス(10)から受信された信号に従って比例ブレーキング効果を達成し、前記駐車・ブレーキ入力デバイス(10)が、前記ユーザが、第1の位置と第2の位置の間においてベース(12)に関して変位させて、前記駐車・ブレーキの付勢の程度をコントロールすることが可能な操作部材(14)と、前記第1の位置と前記第2の位置の間における前記ベース(12)に関する前記操作部材(14)の瞬時位置を決定する少なくとも1つのセンサ(16)と、前記ユーザによって要求される前記駐車・ブレーキの付勢の程度を示すデジタル信号を生成するため、およびこのデジタル信号を少なくとも前記駐車・ブレーキECU(20)に伝達(19,22)するためのコントローラ回路(18)とを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子的にコントロールされる乗り物駐車・ブレーキ・システムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、特にトラック等の商用の乗り物に適した電子的にコントロールされる乗り物駐車・ブレーキ・システムを記述している。この文献においては、ばねバイアスされた空気圧利用駐車・ブレーキ・アクチュエータを包含することが可能な駐車・ブレーキ・システムについて述べられている。駐車・ブレーキ・アクチュエータは、たとえばディスク・ブレーキまたはドラム・ブレーキなどの可能な駐車・ブレーキ・デバイスに力を印加する。アクチュエータによって印加される力は、一方における駐車・ブレーキを作動させる傾向を有するばねの力と、他方におけるばねの力を打ち消すシリンダ内の空気圧によって作用される力の間のバランスである。空気圧利用シリンダ内の圧力をコントロールすることによって、シリンダ内に圧力がないときに、ばねによって生成される力が完全にブレーキ・デバイスに印加され、それによって駐車・ブレーキが完全に付勢されるか否か、またはシリンダ内の空気圧の力がばねの力を超えるときに、ブレーキ・デバイスに力が印加されず、それにより駐車・ブレーキが完全に消勢されるか否かをコントロールすることが可能である。
【0003】
特許文献2は、駐車・ブレーキ作動モジュールをコントロールするECUがマイクロスイッチによって、またはポテンショメータ等のリニア・センサによって位置が監視される操作部材を包含する入力デバイスから情報を受信する、電子コントロールされる乗り物駐車・ブレーキ・システムを開示している。この入力デバイスは電気コネクタを包含し、それを通じてマイクロスイッチまたはセンサがECUに接続されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1406805号明細書
【特許文献2】国際公開第2003/097423号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、乗り物上における駐車・ブレーキ入力デバイスの取り付けが容易かつ信頼できる改良された電子コントロールされる乗り物駐車・ブレーキ・システムを提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的に鑑み、本発明は、乗り物のための駐車・ブレーキ・システムを提供し、それにおいては当該駐車・ブレーキ・システムが駐車・ブレーキECUを通じて電子コントロールされ、乗り物のユーザが駐車・ブレーキの付勢の程度をコントロールすることが可能な駐車・ブレーキ入力デバイスから受信された信号に従って比例ブレーキング効果を達成し、駐車・ブレーキ入力デバイス(10)が、
‐ユーザが、第1と第2の位置の間においてベースに関して変位させて、駐車・ブレーキの付勢の程度をコントロールすることが可能な操作部材と、
‐第1の位置と第2の位置の間におけるベースに関する操作部材の瞬時位置を決定する少なくとも1つのセンサと、
‐ユーザによって要求される駐車・ブレーキの付勢の程度を示すデジタル信号を生成するため、およびこのデジタル信号を少なくとも駐車・ブレーキECUに伝達するためのコントローラ回路を包含することを特徴とする。
【0007】
さらに、可能性のある補足的特徴によれば、
‐コントローラ回路が、駐車・ブレーキ入力デバイスと一体化されることができる。
‐コントローラ回路が、駐車・ブレーキ入力デバイスのベース上に取り付けられることができる。
‐コントローラ回路が、入力デバイスの動作状態の診断を実行し、入力デバイスの構成要素のうちの1つに不調がある場合にはデジタル・デフォルト信号を送信するべくプログラムされることができる。
‐操作部材が中立位置へ自動的に戻るべく機械的にバイアスされ、操作部材の理論的な中立位置と操作部材の事実上の中立位置の間における偏差の分析を実行するべく、および駐車・ブレーキの付勢の程度を示すデジタル信号の生成および/または通信を行なうときに偏差を補償するべくコントローラ回路がプログラムされることができる。
‐コントローラ回路が、少なくとも1つの操作部材位置センサからアナログ信号を受信することができる。
‐駐車・ブレーキECUが、駐車・ブレーキ入力デバイスから離れており、コントローラ回路がデジタル・データ・バスを通じて駐車・ブレーキECUと通信することができる。
‐コントローラ回路が、多重通信デジタル・データ・バスを通じて駐車・ブレーキECUと通信することができる。
‐ベースに関して操作部材の瞬時位置を決定するセンサが磁気抵抗センサを包含することができる。
‐駐車・ブレーキ入力デバイスが、操作部材の少なくとも1つの、第1および第2の位置の間を構成する範囲外の追加の位置を識別し、当該位置について定義済みのデジタル信号が駐車・ブレーキECUに伝達されることができる。
‐駐車・ブレーキ入力デバイスが、操作部材の少なくとも第3の位置を識別し、当該位置について駐車・ブレーキECUが駐車・ブレーキの消勢をコントロールすることができる。
‐駐車・ブレーキ入力デバイスが、操作部材の少なくとも第4の位置を識別し、当該位置について駐車・ブレーキECUがブレーキ取り付けテストを実行することができる。
‐駐車・ブレーキ入力デバイスが、ベースに関節接続されたレバーの形式の操作部材を包含することができる。
‐駐車・ブレーキECUが、駐車・ブレーキ・アクチュエータを電子的にコントロールして駐車・ブレーキ・デバイスに印加されるべき比例する力を作り出し、比例ブレーキング効果を達成することができる。
‐駐車・ブレーキ・アクチュエータが、ばねバイアスされた空気圧利用シリンダであり、それにおいては当該ばねが、駐車・ブレーキ・デバイスに印加される力を作り出し、シリンダ内の空気圧がばねの力を打ち消して駐車・ブレーキ・デバイスに事実上印加される力をコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による駐車・ブレーキ・システム内における電子入力デバイスの可能性のある統合を表わした概略図である。
【図2】本発明による駐車・ブレーキ・システム内における電子入力デバイスの統合の別の可能性のある変形を示した概略図である。
【図3】本発明による入力デバイスのためのコントローラ回路の実施態様を図解した概略図である。
【図4】A〜Dは本発明による入力デバイスの可能性のある実施態様の操作部材の4つの主要な位置を図解した概略図である。
【図5】本発明による駐車・ブレーキ・システムの付勢をコントロールするための方法のメイン・ステップを図式表現したフローチャートである。
【図6】本発明による駐車・ブレーキ・システムの消勢をコントロールするための方法のメイン・ステップを図式表現したフローチャートである。
【図7】本発明による駐車・ブレーキ・システムの消勢をコントロールするためのさらに精密にした方法のメイン・ステップを図式表現したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、駐車・ブレーキ・システム、たとえば最大総重量が7.5トンから120トンに至る大型トラック等の商用の乗り物に取り付けることができる駐車・ブレーキ・システムに関する。
【0010】
その種の乗り物には、しばしば空気圧利用ブレーキ・システムが装備され、それにおいては加圧空気がタンク内に貯蔵され、乗り物の減速に必要とされるブレーキング力を提供する常用ブレーキ・アクチュエータへ送られる。
【0011】
その種のブレーキ・システムは、通常、少なくとも1つの駐車・ブレーキ・アクチュエータを備え、当該アクチュエータは、駐車・ブレーキ・デバイスを通じて乗り物を停止させて維持するブレーキング作用力を生成することができる。
【0012】
多くの場合においては、駐車・ブレーキ・アクチュエータが常用ブレーキ・アクチュエータと異なるが、しばしば共通のハードウエア構成要素内に統合され、また多くの場合に両方のアクチュエータが、同一のディスク・ブレーキまたはドラム・ブレーキといったブレーキ・デバイスに作用する。それにもかかわらず、駐車・ブレーキおよび常用ブレーキ両方の機能を実行するアクチュエータを有するシステムにおいて、あるいは駐車・ブレーキ・デバイスおよび常用ブレーキ・デバイスを別々に有するシステムにおいて本発明を適用することが可能である。
【0013】
満足のゆく駐車・ブレーキ動作の達成に必要とされる作用力は、通常、常用ブレーキ動作の達成に必要とされるそれより小さい。これに対して、駐車・ブレーキ作用力は、長い時間期間にわたって印加されたままとされなければならず、これは、乗り物の動力伝達機構が動作していない場合でさえもそのように維持されなければならない。したがって、その種のブレーキ・システムのための駐車・ブレーキ・アクチュエータは、しばしば、ばねバイアスされるアクチュエータとして組立てられ、それにおいてはばねがブレーキ作用力を提供し、ばねによって提供される作用力は、アクチュエータ内において、アクチュエータの圧力チャンバ内の流体圧力の印加を許すことによって打ち消すことができる。流体圧力は、ばねによって提供される作用力を完全に打ち消し、駐車・ブレーキを完全に消勢することができる。その種のアクチュエータを用いれば、単純にアクチュエータの圧力チャンバから空気を逃がすことによって駐車・ブレーキが適用される。圧力チャンバを通気させること、すなわち大気圧に開放すること、または残留圧力を非常にわずかにすることによって、駐車・ブレーキが適用されたまま維持される。駐車・ブレーキは、この場合、適用された状態にロックされていると考えることができる。そのほかのタイプの駐車・ブレーキ・アクチュエータは、駐車・ブレーキをそれが適用された状態でロックして維持するために特別なメカニズムを必要とすることがある。
【0014】
本発明による駐車・ブレーキ・システムにおいては、駐車・ブレーキ・アクチュエータが電子的にコントロールされる。言換えると、駐車・ブレーキ・アクチュエータによって駐車・ブレーキ・デバイスに提供される作用力の量が、少なくとも1つの駐車・ブレーキECU(電子コントロール・ユニット)を通じてコントロールされる。駐車・ブレーキECUは、以下に表わされているとおり、専用ECUとすることが可能であるか、またはそのほかのコントロール機能を実行する多機能ECU内に埋め込むことができる。断片化されたECUとして実装することも可能であり、それにおいては、それぞれがコントロール・タスクの部分を実行するいくつかのECUの使用を通じて駐車・ブレーキ・コントロールが達成される。ここで注意されるものとするが、特にヘビーデューティ・トラックの場合には、駐車・ブレーキECUが、駐車・ブレーキ・アクチュエータのコントロールだけでなく、トレーラまたはセミトレーラのブレーキ、または特定の場合においては常用ブレーキさえもコントロールして駐車・ブレーキ機能を達成するべく設計されることがある。
【0015】
以下、空気圧利用システムを装備した乗り物に関して本発明を説明するが、それにおいては、駐車・ブレーキ・システムが、たとえばディスク・ブレーキ・デバイスまたはドラム・ブレーキ・デバイス等の駐車・ブレーキ・デバイスに作用するばねバイアスされた空気圧利用アクチュエータとするアクチュエータを包含する。
【0016】
システムは、乗り物のエンジンによって、あるいは電気機械によって作動可能なエア・コンプレッサを包含できる。コンプレッサから引渡される圧縮された空気は、空気圧管理デバイスへ引渡すことができ、当該デバイスは、空気乾燥機、メイン空気圧レギュレータ、および当該空気圧管理デバイスの異なる出力に関連付けされたいくつかの二次的空気圧レギュレータを包含できる。デバイスの各出力は、第1および第2の常用ブレーキ空気回路、駐車・ブレーキ空気回路、空気懸架回路、トレーラ・ブレーキ回路、補助回路等を包含することができる空気消費回路へ接続されることになる。各種の空気消費回路へ引渡された加圧空気は、少なくとも最小および最大圧力レベルまでコントロールされ、多様な一次および二次レギュレータが、1つの消費回路内における漏れが乗り物の空気圧利用回路全体に漏れることを防止する保護システムを形成する。多様なレギュレータは、漏れている回路を、継続的に動作できるほかの回路から遮断するべくコントロールされる。
【0017】
空気圧利用駐車・ブレーキ回路内には、駐車・ブレーキ・アクチュエータに加圧空気の供給をコントロールするバルブまたはバルブのセットが備えられている。その種の駐車・ブレーキ・バルブ・アッセンブリは、アクチュエータの圧力チャンバ内により多くの空気を入れることによって前記アクチュエータ内の空気圧を上昇させるか、または前記アクチュエータの圧力チャンバから空気を逃がすことによって前記圧力を降下させる駐車・ブレーキ・アクチュエータ内における空気圧のコントロールを可能にする。このバルブ・アッセンブリは、運転者によって直接操作されることになる乗り物のキャビン内に取り付けられた伝統的な単純なマニュアル空気圧利用バルブであるが、本発明による駐車・ブレーキ・システムは、殆どの場合において、空気圧利用駐車・ブレーキ・アクチュエータに関して、電子的にコントロールされるバルブ・アッセンブリが駐車・ブレーキ空気回路内のいずれかの場所に備えられ、その駐車・ブレーキ・アクチュエータ内の空気圧の前記コントロールを達成することを包含する。
【0018】
特許文献1においては、駐車・ブレーキ・アクチュエータ内の圧力をコントロールするためのバルブ・アッセンブリが空気圧管理デバイス内に含められる空気圧管理デバイスが開示されている。しかしながら本発明は、たとえば駐車・ブレーキ・アクチュエータとの統合が可能であるか、または空気圧管理デバイスおよびアクチュエータとは独立とし得る電子的にコントロールされるバルブ・アッセンブリを包含する駐車・ブレーキ・システム内において実装することも可能である。ここで理解されるべきなのが、多くの場合において、電子的にコントロールされるバルブ・アッセンブリは、流体的にコントロールされるメイン・バルブを流体的に誘導する、電子的にコントロールされるパイロット・バルブ、たとえば比例電磁バルブ等を含むことである。
【0019】
本発明によるシステムにおいては、駐車・ブレーキ・システムが、乗り物の運転者によって少なくとも部分的にコントロールされることが可能である。したがって、本発明による駐車・ブレーキ・システムは駐車・ブレーキ入力デバイスを包含し、それを通じて運転者は、駐車・ブレーキを付勢または消勢する自分の意志をシステムに対して示すことができる。
【0020】
それに加えて本発明によるシステムにおいては、システムが、駐車・ブレーキ・デバイスに印加されて比例ブレーキング効果を達成する比例する力を作り出すべくコントロールされることが可能な駐車・ブレーキ・アクチュエータを包含する。比例という用語は、システムが完全な駐車・ブレーキ作用力を提供すること、ブレーキ作用力をまったく提供しないこと、およびそれらの間の中間的な少なくともいくつかのブレーキ作用力を提供するようにアクチュエータのコントロールが可能であることを意味する。またそれは、これらの中間的なブレーキ作用力が運転者の入力に応じて維持されることが可能であることも意味する。言換えると、アクチュエータの比例コントロールは、単純なオン/オフ・コントロールとはまったく異なり、またオン・モードとオフ・モードの間において与えられる遷移モードを伴うオン/オフ・コントロールとも、前記遷移が1つまたはいくつかのあらかじめ定義済みの作用力対時間曲線に従って漸進的となる場合も含めてまったく異なるものとなる。
【0021】
図1は、本発明による駐車・ブレーキ・システム内における駐車・ブレーキ入力デバイスの1つの可能性のある実装を表わした概略図である。
【0022】
本発明のこの実施態様においては、駐車・ブレーキ入力デバイス10がベース12および、ユーザがベース12に関して変位させて駐車・ブレーキの付勢の程度をコントロールすることが可能な操作部材14を包含することが示されている。この実施態様においては操作部材14が、ベース12に関節接続されるレバーを包含するが、操作部材は、スライダの形式等のほかの形式を取ることが可能である。操作部材は、少なくとも、中立位置とすることが可能な第1の位置から第2の位置までユーザが変位させることができる。以下に説明するとおり、第1の位置は、駐車・ブレーキの状態における変更がまったく要求されていないことを示すための中立位置、および/または駐車・ブレーキ・システムが比例付勢モードにあるときには、駐車・ブレーキの付勢がまったく求められていないことを示すための位置とすることが可能である。第2の位置は、完全なブレーキ効果が要求されていることを示すための位置とすることが可能である。第1および第2の位置は、両端の位置とすることが可能であるが、以下に述べる例におけるとおり、操作部材は、追加の位置を有することができる。少なくとも1つのセンサ16が提供されて、ベース12に関する操作部材14の瞬時位置を決定する。好ましくはセンサ16を非接触タイプとし、もっとも好ましくは磁気抵抗タイプとする。また、少なくとも2つのセンサ16が提供されて、入力デバイスの安全性の程度を増加する冗長性を達成することが好ましい。2つのセンサが備えられるときには、それらが好ましくは、1つのセンサだけが使用される場合より、操作部材の位置の決定においてより良好な正確度を達成するべく組合わされて取り付けられ、かつ運用される。操作部材が、ベースに関節接続されるレバーを包含するときには、1つまたは複数のセンサが関節接続の軸の近傍に好ましく取り付けられる。
【0023】
本発明によれば、駐車・ブレーキ入力デバイス10が、ユーザによって要求された駐車・ブレーキの付勢の程度を示すデジタル信号を生成するため、およびこのデジタル信号を少なくとも駐車・ブレーキECUに伝達するためのコントローラ回路18も含む。
【0024】
好ましくは、コントローラ回路18が駐車・ブレーキ入力デバイス10と一体となる。言換えると、コントローラ回路18が、駐車・ブレーキ入力デバイス10のそのほかの構成要素と、それらがあらかじめの組立てが可能であり、かつ乗り物のダッシュボードまたは乗り物のコンソール等のより大きな乗り物のサブアッセンブリ上における単一ユニットとしての取り付けが可能な共通の構造ユニットを形成するように構造的に接続される。たとえばコントローラ回路18を、駐車・ブレーキ入力デバイスのベース12上に取り付けることができる。
【0025】
好ましくは、コントローラ回路18がデジタル・データ・バスを通じて駐車・ブレーキECUと通信する。その種のデータ・バスは、シリアル通信データ・バスとすることができる。自動車産業界において広く使用されており、かつこの応用に適しているデータ・バスの例は、CANバス、LINバス、またはFLEXRAYバスとして知られるシステムである。その種のデータ・バスは、多重化を支持しており、それによって異なる情報の断片が同一の物理的な通信チャンネルを通じて伝達されることを可能にする。
【0026】
図1には、コントローラ回路18が共有データ・バス19、すなわちほかのECUおよび/またはコントローラが同一のデータ・バスを通じて接続されるところのデータ・バスを通じて駐車・ブレーキECUに接続される事例が示されている。図2には、コントローラ回路18が、専用データ・バスを通じて駐車・ブレーキECU20と接続される事例が示されている。この専用データ・バスは、たとえば、単一のワイヤ22上において動作するLINバスとする。この図2には、コントローラ回路18が電源ライン24およびグラウンド・ライン26を通じてブレーキECUとも接続可能であることが示されている。図2の例においては、駐車・ブレーキECU自体が、たとえばCANバスとすることが可能な共有データ・バス28に接続される。ここで注意しなければならないが、コントローラ回路18と駐車・ブレーキECU20の間における通信は、ワイファイ(Wi‐Fi)またはブルートゥース(Bluetooth(登録商標))接続等の無線手段を通じて実行することも可能である。
【0027】
図3には、本発明による駐車・ブレーキ入力デバイス10に適したコントローラ回路18の一例の回路図を示している。コントローラ回路18の心臓部は、たとえばマイクロコントローラ30である。前記マイクロコントローラ30は、中央処理ユニットCPU、ROMならびにRAM、および少なくとも1つのクロックを含む集積化されたチップである。マイクロコントローラ30は、入力としてセンサ16からアナログ信号を受信する。図3に記述された事例においては、2つの磁気抵抗センサ16が操作部材の位置の決定に使用され、コントローラ回路が、それぞれが1つのセンサから2つのアナログ信号を受信する2つの差動増幅器を有する増幅段32を包含していることが観察できる。各センサに対応する増幅後の差動信号は、入力としてマイクロコントローラ30に供給され、この場合においてはそれが、集積化されたアナログ・デジタル・コンバータ段も包含する。アナログ・デジタル・コンバータは、コントローラ回路18上の別体のチップとすることも可能である。コントローラ回路はまた、マイクロコントローラ30の出力に接続されたトランシーバ34も包含し、前記トランシーバ34は、マイクロコントローラ30によって処理されたデジタル情報をデジタル・データ・バス上においてブロードキャストすることができる。本発明によれば、このようにコントローラ回路18が、ここではベース12に関する操作部材14の角度位置に関係するユーザによって要求された駐車・ブレーキの付勢の程度を示すデジタル信号を生成すること、およびこのデジタル信号を少なくとも駐車・ブレーキECU20に伝達することが可能である。
【0028】
ユーザによって要求された駐車・ブレーキの付勢の程度を示すデジタル信号は、非常に多くの方法で生成することが可能である。それは非常に単純に、決定された操作部材の位置と中立位置の間における角度差とすることができる。また、中立位置と決定された位置の間における操作部材の1つの与えられたポイントの計算された線形移動距離とすることも可能である。それに代えて、上で述べた角度または距離のいずれかを、操作部材の中立位置と完全ブレーキング位置の間における全体の角度または距離のパーセンテージによって表現することも可能である。
【0029】
駐車・ブレーキ入力デバイス内にコントローラ回路を統合することは、明確な利点を有する。実際にこれは、当然のことながら、駐車・ブレーキ入力デバイス10と駐車・ブレーキECU20の間における、アナログ情報ではなくデジタル情報の循環を可能にする。システムのこの2つの構成要素は、したがって干渉等の問題に対するデジタル通信のより大きな耐性から、それら2つの間における情報の通信に関して大きな懸念を伴うことなく乗り物内の種々の場所に配置することが可能である。また、コントローラ回路18に同一デバイス10内の操作部材14およびセンサ16を統合することは、たとえばいくつかのセンサから到来する情報をわずかに1つの信号にコンパイルすることを可能にする。これは、たとえば、入力デバイス上に複数のセンサを有することを可能にするが、入力デバイス10と駐車・ブレーキECU20の間の配線が非常に限られる。上に示されているとおり、その場合に入力デバイス10が駐車・ブレーキECU20との通信のために必要とする物理的なワイヤ22が、少なくともLINバス通信としての実装時において最少で1つだけとなり、それにもかかわらず物理的な完全性および論理的な内容の両方に関して品質ならびに信頼性の高い信号を有する。
【0030】
図4A〜Dにおいては、本発明の例示的な実施態様によるベースに関する操作部材14の多様な位置が示されている。
【0031】
図4BおよびCは、それぞれ操作部材のもっとも重要な2つの位置、すなわち中立位置および完全ブレーキング位置を図解している。
【0032】
ブレーキ・システムが比例モードで動作しているときは、操作部材14の中立位置が駐車・ブレーキの付勢がまったく要求されない位置に対応する。コントローラ回路18は、位置センサ16を通じて操作部材14が中立位置にあることを認識すると、その操作部材の状態を示す信号を駐車・ブレーキECU20に伝達し、それに従って駐車・ブレーキECU20が、駐車・ブレーキ力がまったく生成されないように駐車・アクチュエータをコントロールすることができる。他方、操作部材14は、操作部材についての休止位置または解放位置でもあるその中立位置に向けてバイアスされ、その結果、駐車・ブレーキ・システムが比例モードにない場合には、駐車・ブレーキECUによって中立位置が、現在の、印加されているかまたは消勢されているかのいずれかの状態において駐車・ブレーキ・システムを維持する要求であるとして解釈される。
【0033】
操作部材14の完全ブレーキング位置は、最大ブレーキ作用力が要求される位置に対応する。
【0034】
本発明によれば、駐車・ブレーキ入力デバイス10がこれら2つの位置を決定可能なだけでなく、これら2つの位置の間における少なくともいくつかの中間位置を決定することもでき、その後ECUが、対応するブレーキング力が生成されるように駐車・ブレーキ・アクチュエータをコントロールするために、駐車・ブレーキECU20に対してこれらの中間位置を示す信号を生成することも可能である。より精密に述べれば、駐車・ブレーキECUは、駐車・ブレーキ・アクチュエータに供給される所定の圧力をコントロールするか、駐車・ブレーキ・デバイスによって生成される所定のブレーキング・トルクをコントロールするか、または乗り物の所定の減速をコントロールするべくプログラムすることが可能である。もっとも好ましくは、入力デバイスが、中立位置と完全ブレーキング位置の間の主要範囲内において十数個の位置を、可能性としては数十の位置を決定し、通信することができる。操作部材の位置の決定に使用可能なセンサ16を理論的に無限数の位置の決定が可能となるようにアナログとすることができるが、アナログ・デジタル変換は、自動的に、中立位置と完全ブレーキング位置の間に広がる主要範囲R1内の有限数の操作部材の位置だけが決定され、駐車・ブレーキECUに伝達され得ると推論することになる。特に、入力デバイス10によって決定可能な中間位置の数を、その範囲に沿ったブレーキング作用力において知覚できる変動が運転者にとって実質的に連続して感じるようにすることが望ましい。ここで注意しなければならないが、比例モードにおいては、システムによって印加されるブレーキング力が操作部材14の瞬時位置に比例することになる。比例という用語は、印加されるブレーキング力が、操作部材の位置の変動とともに、その位置を追随して漸進的に変化することを意味する。他方、たとえば低いブレーキング要求に対するコントロールの正確度を向上させるためにブレーキング力が主要範囲の第1の部分においてゆっくりと変化し、主要範囲の第2の部分においてより迅速に変化することが好ましいとし得ることから、この比例性が線形である必要はない。基本的に比例性は、検出された操作部材の位置に対して事実上のブレーキング力をリンクするブレーキング曲線によって定義されると考えることができる。その種のブレーキング曲線は、操作部材の物理的な設計または乗り物のタイプに応じたそれぞれの応用に対して特別に調整することが可能である。また、たとえば乗り物の速度、乗り物の重量といった乗り物のいくつかの動作パラメータ(1つまたは複数)に応じていくつかのブレーキング曲線が所定の乗り物のために実装してもよいと規定することもできる。さらに、乗り物のユーザが個人的な好みに基づいていくつかのブレーキング曲線または曲線のセットのうちの1つを選択できると規定してもよい。
【0035】
図4Aには、操作部材が完全ブレーキング位置に向かう主要な移動方向とは反対側の方向に沿って、それの中立位置から駐車・ブレーキ消勢位置に向かって変位できることが示されている。駐車・ブレーキ消勢位置は、操作部材のエンド・ストップによって実体化することが可能である。本発明による入力デバイス10は、当然のことながら、位置R2のこの反対側の範囲に沿って操作部材14の多数の中間位置を決定すること、およびそれらの位置を駐車・ブレーキECU20へ伝達することが技術的に可能である。しかしながら、この反対側の範囲に沿って擬似連続的に操作部材の位置を決定可能であるという事実にかかわらず、単純なオン/オフ方法においてECU20によって駐車・ブレーキの消勢がコントロールされること、すなわち、この反対側の位置の範囲内のスレッショルド位置に操作部材が到達した後はアクチュエータの消勢状態にそれが直接コントロールされることを選択できる。スレッショルド位置は、この範囲の端の位置とすること、または中間の位置とすることが可能である。ここで注意しなければならないのは、ECUは、多様な方法で駐車・ブレーキの消勢をコントロールすることができる。たとえば、スレッショルド位置に到達した後にユーザによって操作部材が解放された場合に限って消勢を開始することが可能である。また、同時に、またはその後に続いてそのほかの条件が満たされた場合に限って消勢が実行されることも規定できる。後者の場合においては、消勢要求をECUが記憶することが可能である。
【0036】
図4Dには、操作部材がそれの主要方向において、完全ブレーキング位置より先のテスト位置に向かって変位できることが示されている。実際に、完全積載のトレーラまたはセミトレーラが結合されているときにおいてさえ、トレーラのブレーキの故障の場合に乗り物の駐車・ブレーキ・システムが乗り物を保持できること、またはトレーラまたはセミトレーラのブレーキが動作することをテストする、いわゆる『トレーラ・テスト』位置を駐車・ブレーキ・コントロール・システム内に組み込むことは知られている。テスト位置は、操作部材のエンド・ストップによって実体化することが可能であり、完全ブレーキング位置は、その完全ブレーキング位置周囲における操作部材の変位の抵抗の増加によって、たとえばいわゆる『堅いポイント』によって実体化することが可能である。完全ブレーキング位置からテスト位置まで拡張された位置の範囲R3に沿って、本発明による入力デバイスは、当然のことながら多数の中間位置を決定すること、およびそれらの位置を駐車・ブレーキECUへ伝達することが技術的に可能である。しかしながら、この拡張された範囲に沿って擬似連続的に操作部材の位置を決定可能であるという事実にかかわらず、操作部材が拡張された位置の範囲内のスレッショルド位置に到達した後に『トレーラ・テスト』を実行することができる。スレッショルド位置は、この拡張された範囲の端の位置とすること、または中間の位置とすることが可能である。
【0037】
多重化された通信データ・バスを有することは、そのほかの情報の断片がコントローラ回路から駐車・ブレーキECUへ伝達されることを可能にできる。たとえば、コントローラ回路が、上で定義した4つの位置のうちのいずれかといったあらかじめ決定済みの位置に操作ハンドルが到達したときに関係する特定の情報を駐車・ブレーキECUに送信することを規定できる。また、範囲R1、R2、またはR3等のあらかじめ定義済みの位置の範囲内に操作ハンドルがあるか否かに関する特定の情報がECUに提供されることも規定できる。
【0038】
入力デバイスと統合されるコントローラ回路を有する追加の利点は、駐車・ブレーキECU20との通信チャンネルの上流において入力デバイス10の自動較正および/または自動診断を実行できることである。
【0039】
たとえば、初期段階において、または入力デバイスの使用に起因して操作部材の事実上の物理的位置が理論的位置と対応していないことを検出するべくコントローラ回路18をプログラムすることが可能である。その種のオフセットは、たとえば、入力デバイスの構成要素およびそれの組立てに関する機械的許容誤差に起因するものとすること、あるいは別の例として、それらが構成要素の摩損の結果としてもたらされるものとすること、または動作温度に起因するものとすることができる。たとえば、操作部材の事実上の休止位置および/または事実上の端の位置を詳細に調べるべくコントローラ回路18をプログラムすることが可能である。それが、期待される値と比較されるオフセットを伴ってその種の位置が反復的かつ矛盾なく決定されたことを検出した場合には、コントローラが、検出されたオフセットによって1つまたは複数のセンサによる測定値を補償することが可能であり、補償後のデジタル信号を駐車・ブレーキECUに送信することが可能である。たとえば、入力デバイスに、中立位置と完全ブレーキング位置の間における操作部材の位置を比例的に示す0から100までの間の値を構成する信号を送信することが期待されており、後者がエンド・ストップ位置または移動抵抗の増加に対応する位置のいずれかであるとき、自動較正プロセスは、たとえば機械的な理由のために操作部材がそれの理論的な中立位置まで完全に戻らない場合、および/または理論的な完全ブレーキング位置に完全に到達しない場合であってさえ、有効な値の範囲が0から100までの全範囲にわたることを確実にすることができる。
【0040】
また、たとえばセンサがデフォルトにあることを検出できるように、入力デバイス10の自動診断を実行するべくコントローラ回路18をプログラムすることが可能である。たとえば、2つのセンサから受信された値の間に明確な不一致がある場合、または1つのセンサからの信号が、明確に異常である場合に、もっとも信頼性のある情報だけを送信するべく、および/または駐車・ブレーキ入力デバイス10の不調を示すデフォルトの信号を駐車・ブレーキECU20へ送信するべくコントローラ回路をプログラムすることが可能である。当然のことながら、デフォルトの危険な状態を決定し、対応する信号を駐車・ブレーキECUへ送信するべくコントローラ回路をプログラムすることも可能である。別の自動診断機能を自動較正プロセスとリンクさせることができる。たとえば、操作部材の事実上の位置および理論的に与えられた位置の間において検出されたオフセットが特定のスレッショルドを超える場合には、このオフセットが補償されるべきでないか、かつ/または対応するデフォルトの信号が駐車・ブレーキECUへ送信されるべきであると診断されることが可能である。当然のことながら、ユーザによって要求される駐車・ブレーキの付勢の程度を示す信号の他に、入力デバイス10によって駐車・ブレーキECU20に、同じデジタル通信チャンネルを通じてデフォルトの信号を送信することが、多重化によって可能である。
【0041】
入力デバイス自体によって実行される入力デバイスの自動較正および/または自動診断は、それにコントローラ回路が組み込まれているために、離れたところにあるECUにおいて診断および/または較正が実行されることになった場合の入力デバイスと対応するECUの間に必要となる通信チャンネルによる擾乱があり得ないことから、それらのルーチンをより正確に、かつより信頼性をもって行なうことが可能である。
【0042】
図5は、駐車・ブレーキ・システムのコントロール方法の1つの態様の例、特に駐車・ブレーキ・システムの付勢をコントロールするための方法を示している。その種の方法は、上で述べたシステムを使用して有利に実行することが可能である。
【0043】
この方法は、ステップ100において、運転者が駐車・ブレーキ入力デバイスの操作部材を、それの中立位置から完全ブレーキング位置に向かって引いたことを検出することによって開始する。これが駐車・ブレーキ付勢シーケンスを起動する。続いてシステムがステップ110において比例モードに入り、それにおいてブレーキング作用力が、駐車・ブレーキ・システムによって、操作部材の位置と比例させて生成される。その後、シーケンス起動時の乗り物の速度に応じて2つのサブルーチンが選択できる。ステップ120において調べたときに乗り物の速度Vが第1のスレッショルドV1より低い場合には、乗り物が停止しているか、または殆ど停止していると決定される。その後ステップ130において、操作部材が解放される前に完全ブレーキングが要求されたか否かがチェックされる。それが肯定であれば、駐車・ブレーキ・システムが、それが適用された状態でロックされる。ステップ130において操作部材が完全ブレーキング位置まで移動されていないことが検出された場合には、操作部材が解放されるまで駐車・ブレーキ・システムが比例モードにとどまり、ステップ210において、操作部材の解放時に駐車・ブレーキ・システムが消勢される。
【0044】
ステップ120のチェックにおいて、このシーケンスの起動時の乗り物の速度がスレッショルドV1より高い場合には、比例モードにとどまりつつ、ステップ200において、乗り物の速度が第2のスレッショルドV2より低くなる前に操作部材が解放されたか否かをチェックする。それが肯定であれば、ステップ210において、操作部材の解放時に駐車・ブレーキ・システムが消勢される。それが否定であれば、乗り物が停止したか、または停止しつつあるか、または擬似的な停止であると決定され、上で述べたとおりのステップ130に進む。
【0045】
この種の方法を適用するとき、駐車・ブレーキ付勢シーケンスの起動時における乗り物の速度が第1のスレッショルド速度より低かった場合、または駐車・ブレーキ付勢シーケンスの終了時において第2のスレッショルド速度より低かった場合に、シーケンスの終了時に駐車・ブレーキが適用状態でロックされる。これに対して、駐車・ブレーキ付勢シーケンスの起動時における乗り物の速度が第1のスレッショルド速度より高く、かつ駐車・ブレーキ付勢シーケンスの終了時において第2のスレッショルド速度より高かった場合には、ブレーキング・シーケンスの終了時に駐車・ブレーキが解放される。
【0046】
上で述べた方法において、2つのスレッショルド速度V1およびV2が等しいとすることが可能である。また、入力デバイスの完全ブレーキング位置の後にさらに駐車・ブレーキ・ロッキング位置を定義できると規定することも可能である。その場合にその種の駐車・ブレーキ・ロッキング位置を、適用された状態で駐車・ブレーキ・システムをロックすることを可能にするためのトリガを上で述べたとおりの完全ブレーキング位置とする代わりに、それのためのトリガとすることができる。完全ブレーキング位置および駐車・ブレーキ・ロッキング位置は、両方の位置がシステムのユーザによって明確に検知されることが可能となるように入力デバイスの移動において『堅いポイント』によって『分ける』ことが可能である。
【0047】
図6は、電子的にコントロールされる駐車・ブレーキ・システムを作動するためコントロール方法の1つの態様の例、特に駐車・ブレーキの消勢をコントロールするための方法を表わしている。その種の方法は、システムが駐車・ブレーキの適用を比例コントロールできることを必要としないが、それにもかかわらず上で述べたとおりの駐車・ブレーキ・システムを用いてそれを実装することが可能である。この方法の態様は、当然のことながら図5に関連して述べた方法の態様と互換性がある。
【0048】
図6の方法は、駐車・ブレーキが適用された状態に駐車・ブレーキ・システムがあるときに動作し、事実上、ステップ300においてユーザ、たとえば乗り物の運転者が駐車・ブレーキ入力デバイスを通じて消勢要求を開始することによって消勢シーケンスを起動する。上で述べた駐車・ブレーキ・システムの状況においては、運転者が操作部材を駐車・ブレーキ消勢位置に向けて、少なくともスレッショルド位置まで押すことによって消勢要求を開始することが可能である。
【0049】
その後、ステップ310において、その要求が少なくとも時間期間T1にわたって維持されているか否かがチェックされる。この第1の時間期間は、要求の開始から計算することができる。その種の第1の時間期間T1は、たとえば1秒台とすることができる。その間にわたって維持されていなければ、消勢要求は無効であると見なされて、消勢シーケンスが中止される。駐車・ブレーキは、消勢されない。この方法のこのステップ310は、運転者が要求を維持しているか否かを、時間期間にわたって頻繁な時間間隔でチェックすることを含む。この例においては、これが、操作ハンドルが中立位置からスレッショルド位置に等しいか、またはそれより遠くの位置にその時間期間にわたって維持されていることの単純なチェックを含むことができる。
【0050】
要求が少なくとも時間期間T1にわたって維持されている場合には、単純に、消勢要求が有効であると見なされ、それが駐車・ブレーキ・システムの消勢をトリガすることができる。その種の消勢は、当然のことながら、そのほかの動作条件が満たされることに従属させることができる。
【0051】
しかしながら、この実施態様においては、さらに安全な方法を開示する。実際、要求が少なくとも時間期間T1にわたって維持されていれば、ステップ320においてさらに、消勢要求が、第1の期間より後に満了する第2の時間期間T2より前に終了されるか否かをチェックする。それに該当しない場合、すなわち第2の時間期間の満了の後も要求が維持されている場合には、消勢要求が無効であると見なされ、消勢シーケンスが中止される。時間期間T2もまた、消勢要求の開始から計算することが可能であり、3乃至5秒台の持続時間を有することが可能である。これに対して、要求が第2の時間期間T2の満了前に終了した場合には、消勢要求が有効であると見なされ、この方法は、駐車・ブレーキ・システムの消勢に進むことができる。有効な消勢要求が受取られたことを認める情報信号を運転者に送信し、かつ駐車・ブレーキが事実上消勢されることになる警告を運転者に対して発することができる。その種の情報信号は、たとえば、聴覚、視覚、または触覚信号とすることができる。
【0052】
まとめると、この方法によれば、駐車・ブレーキ消勢要求が少なくとも第1の時間期間にわたって維持され、かつ当該第1の時間期間の後に満了する第2の時間期間の前に終了される場合に駐車・ブレーキが消勢される。
【0053】
この方法により、人または物体と駐車・ブレーキ入力デバイスの不本意な衝突があるときに起こり得る駐車・ブレーキ・システムの望まれていない消勢の多くを回避することが可能である。実際、その種の衝突が非常に短いか、または長すぎる場合には、駐車・ブレーキ・システムがそれを有効な駐車・ブレーキ消勢要求であると見なさない。
【0054】
図7は、駐車・ブレーキ・システムの消勢をコントロールするためのさらに精密にした方法の例を表わしている。この方法は、以前に述べたコアの方法を取入れているが、駐車・ブレーキ・デバイスを事実上消勢するため、またはこの消勢を中止するための追加のコントロール条件を提供する。
【0055】
この方法は、たとえば、ギアボックスを機能的に作用させているといった何らかの先行条件を必須とすることができる。マニュアル・ギアボックスの場合においては、たとえばこれが、ギアボックスが1のギア比を係合させていることのチェックを含むことが可能である。自動化された機械式ギアボックスにおいては、これが、ギアボックスのセレクタが『後退』または『ドライブ』位置にあることのチェックを含むことが可能である。従来的な自動ギアボックスにおいては、これが、ギアボックスのセレクタが『駐車』位置にないことのチェックを包含可能である。
【0056】
ユーザがステップ400において消勢要求を開始したとき、ステップ402において、ユーザが乗り物の加速を要求しているか否かをチェックする。たとえば、これは、加速ペダルが押下げられているか否かのチェックを含むことができる。それに該当する場合には、この方法が駐車・ブレーキを直接消勢できる。それにもかかわらずステップ430において、常用ブレーキが作動されていることの検証等のそのほかの動作条件をチェックすることができるが、このステップをオプションとすること、または方法の開始時等のこの方法の中の別の瞬間において実行されるとすることが可能である。
【0057】
ステップ402において、ユーザによる加速の要求がない場合には、方法がステップ410に進み、そこで以前の方法のステップ310におけるチェックと同じチェックが実行される。消勢要求が持続時間T1を超える期間にわたって維持される場合には、オプションとして、図6の方法のステップ320と類似のステップ420において、時間期間T2の終了の前に消勢要求が終了されたか否かをチェックすることができる。それに該当する場合には、上で述べたとおり、そのほかの動作条件がオプションのステップ430においてチェックされることを前提として駐車・ブレーキを消勢することができる。
【0058】
ステップ410において、消勢要求が第1の時間期間T1の満了前に終了されたことを検出すると、消勢シーケンスが系統的に終了されない。実際、ステップ415において、第3の時間期間T3の満了前に運転者が乗り物の加速を要求したか否かをチェックする。それに該当する場合には、上で述べたとおり、そのほかの動作条件がオプションのステップ430においてチェックされることを前提として駐車・ブレーキを消勢することができる。該当しない場合には、消勢シーケンスを中止できる。この第3の時間期間T3は、第1の時間期間T1の後、またはそれと同時に好ましく満了する。
【0059】
この方法の変形においては、ステップ420が実装される場合に、それぞれの持続時間T2およびT3に応じて、ステップ415における否定応答が、最初にステップ420を導き(T2>T3の場合)、ステップ420における否定応答がステップ415を導くこと(T3>T2の場合)ができる。
【0060】
まとめると、図7の方法においては、図6の方法における場合と同様に、駐車・ブレーキ消勢要求が少なくとも第1の時間期間にわたって維持されると駐車・ブレーキを消勢することができるが、それに加えて、駐車・ブレーキ消勢要求が開始され、かつユーザが第3の時間期間の満了前に加速入力デバイスを通じて乗り物の加速を要求した場合に駐車・ブレーキを消勢することができる。前記加速要求が、駐車・ブレーキ消勢要求に先行するか、またはそれと同時に起動された場合には、直ちにブレーキ消勢を実行することができる。より遅くにそれが開始されるが、第3の時間期間内であれば、加速要求の後に直ちにブレーキ消勢を実行することが可能である。
【0061】
すべての場合において、図6の方法または図7の方法のいずれであっても、ブレーキ消勢を、常用ブレーキが機能的に作用していることおよび/またはギアボックス比が係合していることといったそのほかの動作条件が満たされることに従属させることができる。その種の動作条件は、方法の中の多様なポイントでチェックすることができる。
【0062】
1つまたは全部の時間期間T1、T2、T3は、駐車・ブレーキ消勢要求の開始から計算することができる。
【0063】
以上、本発明を空気圧利用駐車・ブレーキ・システムに関連して説明してきたが、駐車・ブレーキ作用力を生成するアクチュエータが電子的にコントロールされる任意の駐車・ブレーキ・システム、たとえば液圧を伴う駐車・ブレーキ・システムまたは電子的にコントロールされることが可能な電磁アクチュエータを伴う駐車・ブレーキ・システム等にそれを適用可能であることが理解されるものとする。
【符号の説明】
【0064】
10 駐車・ブレーキ入力デバイス、入力デバイス
12 ベース
14 操作部材
16 センサ、磁気抵抗センサ
18 コントローラ回路
19 共有データ・バス
20 駐車・ブレーキECU、ECU
22 ワイヤ
28 共有データ・バス
30 マイクロコントローラ
32 増幅段
34 トランシーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物のための駐車・ブレーキ・システムであって、前記駐車・ブレーキ・システムは、駐車・ブレーキECU(20)を通じて電子コントロールされ、前記乗り物のユーザが前記駐車・ブレーキの付勢の程度をコントロールすることが可能な駐車・ブレーキ入力デバイス(10)から受信された信号に従って比例ブレーキング効果を達成し、
前記駐車・ブレーキ入力デバイス(10)が、
‐前記ユーザが、第1の位置と第2の位置の間においてベース(12)に関して変位させて、前記駐車・ブレーキの付勢の程度をコントロールすることが可能な操作部材(14)と、
‐前記第1の位置と前記第2の位置の間における前記ベース(12)に関する前記操作部材(14)の瞬時位置を決定する少なくとも1つのセンサ(16)と、
‐前記ユーザによって要求される前記駐車・ブレーキの付勢の程度を示すデジタル信号を生成するため、およびこのデジタル信号を少なくとも前記駐車・ブレーキECU(20)に伝達(19,22)するためのコントローラ回路(18)とを包含することを特徴とする駐車・ブレーキ・システム。
【請求項2】
前記コントローラ回路(18)が前記駐車・ブレーキ入力デバイス(10)と一体化されることを特徴とする、請求項1に記載の駐車・ブレーキ・システム。
【請求項3】
前記コントローラ回路(18)が前記駐車・ブレーキ入力デバイス(10)の前記ベース(12)上に取り付けられることを特徴とする、請求項1または2に記載の駐車・ブレーキ・システム。
【請求項4】
前記コントローラ回路(18)が、前記入力デバイス(10)の動作状態の診断を実行し、前記入力デバイス(10)の構成要素のうちの1つに不調がある場合にはデジタル・デフォルト信号を送信するべくプログラムされることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の駐車・ブレーキ・システム。
【請求項5】
前記操作部材(14)が、自動的に中立位置へ戻るべく機械的にバイアスされていること、および前記コントローラ回路が、前記操作部材の理論的な中立位置と前記操作部材の事実上の中立位置の間における偏差の分析を実行し、かつ偏差があれば前記駐車・ブレーキの付勢の程度を示すデジタル信号の生成および/または通信を行なうときに補償を行なうべくプログラムされることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の駐車・ブレーキ・システム。
【請求項6】
前記コントローラ回路(18)が、前記少なくとも1つの操作部材位置センサ(16)からアナログ信号を受信することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の駐車・ブレーキ・システム。
【請求項7】
前記駐車・ブレーキECU(20)が、前記駐車・ブレーキ入力デバイス(10)から離れていること、および前記コントローラ回路(18)が、デジタル・データ・バス(19,22)を通じて前記駐車・ブレーキECU(20)と通信することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の駐車・ブレーキ・システム。
【請求項8】
前記コントローラ回路が、多重通信デジタル・データ・バス(19,22)を通じて前記駐車・ブレーキECU(20)と通信することを特徴とする、請求項7に記載の駐車・ブレーキ・システム。
【請求項9】
前記ベース(12)に関して前記操作部材(14)の瞬時位置を決定する前記センサ(16)が、磁気抵抗センサを包含することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の駐車・ブレーキ・システム。
【請求項10】
前記駐車・ブレーキ入力デバイス(10)が、前記操作部材(14)の少なくとも1つの、前記第1の位置および第2の位置の間を構成する範囲外の追加の位置を識別可能であり、前記位置についての定義済みのデジタル信号が前記駐車・ブレーキECU(20)に伝達されることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の駐車・ブレーキ・システム。
【請求項11】
前記駐車・ブレーキ入力デバイス(10)が、前記操作部材(14)の少なくとも第3の位置を識別可能であり、その位置について前記駐車・ブレーキECU(20)が、前記駐車・ブレーキの消勢をコントロールできることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の駐車・ブレーキ・システム。
【請求項12】
前記駐車・ブレーキ入力デバイス(10)が、前記操作部材(14)の少なくとも第4の位置を識別可能であり、その位置について前記駐車・ブレーキECU(20)が、ブレーキ取り付けテストを実行することを特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載の駐車・ブレーキ・システム。
【請求項13】
前記駐車・ブレーキ入力デバイス(10)が、前記ベース(12)に関節接続されたレバー(14)の形式の操作部材を包含することを特徴とする、請求項1乃至12のいずれかに記載の駐車・ブレーキ・システム。
【請求項14】
前記駐車・ブレーキECU(20)が、駐車・ブレーキ・アクチュエータを電子的にコントロールして駐車・ブレーキ・デバイスに印加されるべき比例する力を作り出し、比例ブレーキング効果を達成することを特徴とする、請求項1乃至13のいずれかに記載の駐車・ブレーキ・システム。
【請求項15】
前記駐車・ブレーキ・アクチュエータが、ばねバイアスされた空気圧利用シリンダであり、前記ばねが、前記駐車・ブレーキ・デバイスに印加される力を作り出すこと、および前記シリンダ内の空気圧が前記ばねの力を打ち消して前記駐車・ブレーキ・デバイスに事実上印加される力をコントロールすることを特徴とする、請求項14に記載の駐車・ブレーキ・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−505875(P2013−505875A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531505(P2012−531505)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007183
【国際公開番号】WO2011/039556
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(506273102)ルノー・トラックス (33)
【Fターム(参考)】