説明

電子デバイス及びその製造方法

【課題】電子デバイス及びその製造において、直接的に最適なアライメント位置を検出する。
【解決手段】
電子デバイス100は、第1基板Wf1と、第1基板Wf1を搭載し且つ少なくとも一つの所定領域において第1基板Wf1と電気的に接続された第2基板Wf2とを備える。所定領域は、第1基板Wf1を貫通する少なくとも一つの貫通ビア110と、第1基板Wf1に、所定領域の一部を囲み且つ両端が接するのを避けて設けられた第1の配線111と、第1基板Wf1上に設けられ、第1の配線の両端にそれぞれ電気的に接続する一対の端子パッドと、第2基板Wf2上に設けられ、貫通ビア110と接続された少なくとも一つの導電部223とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置等の電子デバイス及びその製造方法に関し、特に、半導体装置等を複数重ねることにより構成される3次元電子デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の高集積化、高機能化が要求されると共に、小型化、薄型化も要求されてきている。このような要求を満たすために、半導体の実装密度を高めた、3次元半導体装置が提案されている。3次元半導体装置は、複数の半導体チップや素子を積層して接続することにより、高密度実装を実現する技術である。
【0003】
ここで、半導体チップを複数積層していく場合、一般に次のようなアライメント手法がとられている。つまり、下になる半導体チップに形成された端子(貫通電極)等の位置を光学的に認識することにより位置決めを行う。続いて、積層する(つまり、上になる)半導体チップについても同様に位置を認識して位置決めを行い、2つの半導体チップを接合する。
【0004】
しかしながら、この手法の場合、接合する際に発生する位置ずれを認識することはできない。そのため、実際にずれて接合してしまうと、2つの半導体チップ間の電気接続ができない。このように、歩留まりの低下を招く短所を有している。
【0005】
そこで、特許文献1に示すようなアライメント手法が提案されている。以下、図13を参照しながら、半導体チップの接合における位置ずれを低減したアライメント手法について説明する。
【0006】
特許文献1の手法によると、図13に示すように、基板1における半導体チップの実装領域に貫通電極10aを形成すると共に、基板1における半導体チップの非実装領域に、貫通電極10aと同一の構造であるアライメントマーク20aを形成する。
【0007】
続いて、積層する(上になる)半導体チップ30には、基板1における貫通電極10aに対応する位置に貫通電極15を形成する。このようにすると、基板1に積層する各半導体チップの位置合わせの際に、同一の基準(アライメントマーク20a)を用いて行うことができ、正確に位置制御することができる。
【特許文献1】特開2005−175263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この手法により位置精度は向上すると思われるが、この手法も間接的なアライメント手法である。そのため、実際に最適なアライメント位置が取れているかどうかは分からない。
【0009】
今後、更なる半導体集積回路の高集積化、高機能化が要求されるにつれて、小型化、薄型化についても一層要求されることが予想される。そのため、3次元半導体装置に用いる複数の半導体チップや素子に関しても更に微細化・高密度化を実現する必要があり、貫通電極も小さくなると想定される。従来の手法及び特許文献1に示す手法は、いずれも間接的なアライメント手法であり、微細化に対して限界がある。
【0010】
また、特許文献1の手法は、基板にアライメントマークを形成し、それに合わせてチップを配置するものであるため、ウェハ上にチップを積層する場合は対応できるが、ウェハとウェハ、チップとチップの積層には対応できない。
【0011】
以上に鑑み、本発明は、3次元半導体装置及びその製造方法において、アラインメント位置を直接検出することにより位置精度を向上すること、及び、ウェハとウェハ、チップとチップの積層についても適用可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するため、本発明に係る第1の電子デバイスは、第1基板と、第1基板を搭載し且つ少なくとも一つの所定領域において第1基板と電気的に接続された第2基板とを備え、所定領域は、第1基板を貫通する少なくとも一つの貫通ビアと、第1基板に、所定領域の一部を囲み且つ両端が接するのを避けて設けられた第1の配線と、第1基板上に設けられ、第1の配線の両端にそれぞれ電気的に接続する一対の端子パッドと、第2基板上に設けられ、貫通ビアと接続された少なくとも一つの導電部とを有する。
【0013】
本発明の第1の電子デバイスは、後に説明する通り、第1基板と第2基板との位置合わせを直接計測して積層されているため、従来よりも正確で且つ信頼性の高い電子デバイスとなっている。
【0014】
尚、貫通ビアのうちの少なくとも一つは、第1の配線の外側に位置していても良い。また、貫通ビアのうちの少なくとも一つは、第1の配線の内側に位置していても良い。
【0015】
このように、貫通ビアは第1の配線の外側及び内側のどちらに位置していても良いし、複数の貫通ビアを備える場合には外側と内側との両方に位置していても良い。但し、貫通ビアが第1の配線の内側に位置している場合の方が、位置合わせが正確になる効果がより顕著に発揮されるため望ましい。
【0016】
また、所定領域は、第1の配線を囲み且つ両端が接するのを避けて設けられた第2の配線を更に有することが好ましい。
【0017】
このようにすると、第1基板と第2基板とがより確実に位置合わせされた電子デバイスとなる。
【0018】
また、本発明の第2の電子デバイスは、第1基板と、第1基板を搭載し且つ少なくとも一つの所定領域において第1基板と電気的に接続された第2基板とを備え、所定領域は、第1基板を貫通する少なくとも一つの貫通ビアと、第1基板における貫通ビアの上方に設けられたインダクタと、第2基板上に設けられ、貫通ビアと接続された少なくとも一つの導電部とを有する。
【0019】
また、本発明の第3の電子デバイスは、第1基板と、第1基板を搭載し且つ少なくとも一つの所定領域において第1基板と電気的に接続された第2基板とを備え、所定領域は、第1基板を貫通する少なくとも一つの貫通ビアと、第1基板に設けられ、所定領域に、貫通ビアの延びる方向に磁界を生じさせる手段と、第2基板上に設けられ、貫通ビアと接続された少なくとも一つの導電部とを有する。
【0020】
このような本発明の第2、第3の電子デバイスについても、従来よりも正確で且つ信頼性の高い電子デバイスとなっている。
【0021】
また、本発明の第1〜第3の電子デバイスにおいて、複数の所定領域において、第1基板と第2基板とが電気的に接続されていることが好ましい。
【0022】
このようにすると、第1基板と第2基板とがより確実に位置合わせされた電子デバイスとなる。
【0023】
また、貫通ビアは、Cuを主成分とする材料からなっていてもよい。
【0024】
また、貫通ビアは、強磁性体を含む材料からなることが好ましい。
【0025】
また、導電部は、強磁性体を含む材料からなることが好ましい。
【0026】
また、導電部は、Cu膜と、Cu膜上に形成され且つ強磁性体を含む材料からなるキャップ膜とを備える積層構造を有していても良い。
【0027】
また、強磁性体は、Fe、Co、Ni及びGdの少なくとも一つであることが好ましい。
【0028】
貫通ビア及び導電部について、それぞれ以上のような材料及び構造となっていると、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0029】
前記の目的を達成するため、本発明に係る第1の電子デバイスの製造方法は、第1基板の所定領域に、第1基板を貫通する少なくとも一つの貫通ビアを形成する工程(a)と、第1基板に、所定領域の一部を囲み且つ両端が接するのを避けるように第1の配線を形成する工程(b)と、工程(a)及び(b)の後に、第1基板上に、第1の配線の両端にそれぞれ電気的に接続する一対の端子パッドを形成する工程(c)と、第2基板上に、貫通ビアと電気的に接続するための少なくとも一つの導電部を形成する工程(d)と、工程(c)及び(d)の後に、第2基板上に第1基板を搭載すると共に、導電部と貫通ビアとを電気的に接続する工程(e)とを備える。
【0030】
尚、工程(e)において、一対の端子パッドを介して第1の配線に電流を流すことにより貫通ビアに磁力を与え、貫通ビアと導電部との間に働く引力による変位を観測しながら、第2基板上に第1基板を搭載することが好ましい。
【0031】
第1の電子デバイスの製造方法によると、位置合わせを直接計測しながら第1基板を第2基板に搭載することができ、従来よりも正確で且つ確実に位置合わせされた電子デバイスを製造することができる。このため、電子デバイス製造の歩留りも向上する。更に、第1基板及び第2基板がいずれもチップである場合、いずれもウェハである場合、チップとウェハである場合等、様々な場合に適用することができる。
【0032】
つまり、工程(e)において、第1の配線に電流を流すことによって磁力を与えられた貫通ビアと、導電部との間に引力が働く。該引力によって生じる第1基板と第2基板との相対的な位置の変位を観測することにより、第1基板と第2基板との位置合わせを直接観測することができ、間接的な方法よりも位置ずれを抑制して搭載を行なうことができる。
【0033】
また、本発明に係る第2の電子デバイスの製造方法は、第1基板の所定領域に、第1基板を貫通する少なくとも一つの貫通ビアを形成する工程(a)と、工程(a)の後に、第1基板における貫通ビアの上方にインダクタを形成する工程(b)と、第2基板上に、貫通ビアと接続するための少なくとも一つの導電部を形成する工程(c)と、工程(b)及び(c)の後に、第2基板上に第1基板を搭載すると共に、導電部と貫通ビアとを電気的に接続する工程(d)とを備える。
【0034】
尚、工程(d)において、インダクタに電流を流すことにより貫通ビアに磁力を与え、貫通ビアと導電部との間に働く引力による変位を観測しながら、第2基板上に第1基板を搭載することが好ましい。
【0035】
第2の電子デバイスの製造方法においても、位置合わせが正確になり製造歩留りが向上する等の第1の電子デバイスの製造方法と同様の効果が実現する。
【0036】
また、第1及び第2の電子デバイスの製造方法において、貫通ビアは、Cuを主成分とする材料により形成することが好ましい。
【0037】
貫通ビアの材料として、このようなものを用いることができる。
【0038】
また、貫通ビアは、強磁性体を含む材料により形成することが好ましい。
【0039】
このようにすると、より確実に貫通ビアに磁力を生じさせることができる。
【0040】
また、導電部は、強磁性体を含む材料により形成することが好ましい。
【0041】
このようにすると、貫通ビアに生じた磁力による導電部に対する引力がより確実に作用する。
【0042】
また、強磁性体は、Fe、Co、Ni及びGdの少なくとも一つであることが好ましい。
【0043】
強磁性体の具体的元素として、以上のものを例示することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る電子デバイス及びその製造方法によると、最も位置ずれが小さくなる最適な箇所を直接的に観測しながら接合することができるため、電子デバイスの製造歩留まりを向上することができる。また、ウェハとウェハ、チップとチップ等、多様な素子の接合に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る電子デバイスとその製造方法について、図面を参照しながら説明する。但し、以下に示す各図、種々の構成要素の形状、材料、寸法等はいずれも望ましい例を挙げるものであり、示した内容には限定されない。発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、記載内容に限定されることなく適宜変更可能である。
【0046】
図1に、本実施形態の電子デバイス100の要部の模式的な断面図を示す。電子デバイス100は、第1のウェハWf1と、第1のウェハWf1を搭載する第2のウェハWf2とを有する。これらは第1のウェハWf1を上側、第2のウェハWf2を下側として積層されており、接着剤301によって互いに貼り付けられている。また、所定領域において、第1のウェハWf1と第2のウェハWf2とが電気的に接続されている。より具体的には、第1のウェハWf1の半導体基板101を前記所定領域において貫通する貫通ビア110が設けられており、該貫通ビア110を介して第1のウェハWf1と第2のウェハWf2とが電気的に接続されている。更に、貫通ビア110を囲むように、第1のウェハWf1には囲み配線111が設けられている。
【0047】
尚、実施形態中の各図において、ウェハのうちの一つのチップ領域が示されているものと考える。このチップ領域を、所定領域と考えることが可能である。チップ領域とは、ウェハを分割することにより個々のチップとなる領域であり、各チップ領域において、半導体基板101には複数のMOS素子等が形成されている。
【0048】
以下に、第1のウェハWf1及び第2のウェハWf2のより詳しい構造及び形成方法について説明する。
【0049】
図2(a)〜(g)は、電子デバイス100において上側に位置する第1のウェハWf1の構造及び形成方法を説明するための模式的な断面図である。また、図3(a)及び(b)は、第1のウェハWf1の平面図である。図2(g)におけるIIIa-IIIa'線による断面が図3(a)に、図3(a)IIg-IIg'線による断面が図2(g)に示されている。図2(a)〜(f)は、図2(g)の構造を形成する工程を示す。図3(a)及び(b)に示されている内容については、後に更に説明する。
【0050】
第1のウェハWf1を形成するため、始めに、図2(a)の工程を行なう。ここでは、例えば略円形の平面形状を有する薄板である半導体基板101を用意する。半導体基板101は、例えばn型又はp型のシリコン単結晶からなる基板である。
【0051】
半導体基板101に対し、素子分離102を形成する。これは、リソグラフィ法とドライエッチング法により半導体基板101上面に溝を形成し、該溝に例えばCVD(Chemical Vapor Deposition )法によりシリコン酸化膜(SiO2 )を埋め込むことにより形成する。
【0052】
次に、半導体基板101における素子分離102に囲まれた活性領域内に、例えばMOS(Metal Oxide Semiconductor )素子を形成する。ソース及びドレイン用の半導体領域103、ゲート電極104等を有している。
【0053】
ここで、半導体領域103は、半導体基板101に対し、所定の不純物(nチャネル形であれば例えばリン(P)又はヒ素、pチャネル形であれば例えばホウ素(B))を添加することにより形成する。また、ゲート電極104は、半導体基板101上に例えばシリコン酸化膜(SiO2 )からなるゲート絶縁膜を介し、ポリシリコンからなる電極として形成する。
【0054】
次に、半導体基板101上を覆うように、例えばシリコン酸化膜等の絶縁膜105を堆積する。その後、ゲート電極104上に堆積された余分なシリコン酸化膜を、CMP(Chemical Mechanical Polishing )より除去し、平坦化する。続いて、絶縁膜105に埋め込むように、半導体領域103及びゲート電極104に接続すると共に、後の工程にて形成する配線と電気的に接続するプラグ106を形成する(但し、図ではゲート電極104に接続するプラグは図示していない)。該プラグ106は、例えばタングステン(W)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等の金属により形成する。
【0055】
次に、図2(b)の工程を行なう。まず、プラグ106上を及び絶縁膜105上を覆うように、全面に亘ってライナー膜107を堆積する。これは、例えば、CVD法による膜厚30nm程度のシリコン窒化膜(SiN)として形成する。また、シリコン窒化膜に代えて、シリコン酸化膜を用いても良い。
【0056】
その後、リソグラフィ法とドライエッチング法とを用い、貫通ビア孔108を形成する。これは、ライナー膜107及び絶縁膜105を貫通し、更に、半導体基板101を例えば7分の1〜8分の1程度まで彫り込む深さに形成する。例えば、半導体基板101の厚さが750μmであったとすると、これに対して100μmの深さとなる。
【0057】
次に、図2(c)に示す工程を行なう。まず、貫通ビア孔108にレジスト(図示せず)を埋め込んだ後、ライナー膜107上にまではみ出した部分の前記レジストをドライエッチング法、CMP法等により除去し、貫通ビア孔108内にレジストプラグ(図示せず)を形成する。
【0058】
続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、ライナー膜107及び絶縁膜105に対し、レジストプラグの形成された領域(図2(c)においては、貫通ビア孔108の形成された領域と見てもよい)を囲むように、囲み配線溝109を形成する。貫通ビア孔108、囲み配線溝109等の平面配置については、図3(a)を用いて後に更に説明する。
【0059】
この後、例えばドライエッチング法及び洗浄処理により、貫通ビア孔108内に埋め込まれたレジストプラグを除去する。
【0060】
次に、図2(d)の工程を行なう。まず、スパッタ法及びめっき法を用い、貫通ビア孔108及び囲み配線溝109を埋め込み且つライナー膜107上を覆うように、タンタル(Ta)/窒化タンタル(TaN)からなるバリア膜と、銅(Cu)膜とを順次堆積する。その後、CMP法を用い、ライナー膜107上にまではみ出た部分の前記バリア膜及び銅膜を除去することにより、貫通ビア孔108内及び囲み配線溝109内をそれぞれ埋め込むように、貫通ビア110及び囲み配線111を形成する。
【0061】
尚、ここではバリア膜としてTa膜とTaN膜との積層膜を用いたが、Ta膜、TaN膜のいずれか一方のみからなるバリア膜としても良い。また、貫通ビア孔108及び囲み配線溝109を埋め込む導電膜の材料として銅を用いたが、この他に、銀(Ag)、アルミニウム(Al)又はこれら合金等を用いることもできる。
【0062】
また、貫通ビア孔108の側壁には、バリア膜を形成するよりも前に、絶縁性膜を形成しておくことが好ましい。又は、前記絶縁性膜を形成する代わりに、貫通ビア110の周囲を絶縁物質によって囲むようにしても良い。
【0063】
次に、図2(e)の工程を行なう。ここでは、配線113を形成する。このためには、まず、貫通ビア110及び囲み配線111上及びライナー膜107上を覆うように、例えば、CVD法による膜厚200nmのシリコン酸化膜からなる絶縁膜112を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、絶縁膜112及びライナー膜107を共に貫通するように、互いに間隔をおいて複数の配線溝を形成する。
【0064】
次に、スパッタ法及びめっき法により、前記配線溝を埋め込み且つ絶縁膜112を覆うように、タンタル(Ta)/窒化タンタル(TaN)からなるバリア膜及び銅(Cu)膜を順次堆積する。
【0065】
その後、CMP法を用い、絶縁膜112上にまではみ出した部分の不要なバリア膜及び銅膜を除去することにより、配線溝を埋め込むバリア膜及び銅膜からなる配線113を形成する。尚、配線溝の位置を設定することにより、必要に応じて貫通ビア110、囲み配線111等の上に接続する配線113とすることもできる。
【0066】
ここでも、バリア膜としてはTa膜/TaN膜からなる積層構造には限らず、単体のTa膜又はTaN膜等であっても良い。また、銅膜に代えて、銀、アルミニウム又はこれらの合金からなる膜を用いても良い。
【0067】
次に、図2(f)の工程を行なう。ここでは、複数積層される絶縁膜114、117及び120と、その中に埋め込まれる配線構造(ビア115、118及び121と、配線116、119及び122)とを形成する。尚、囲み配線111とは異なり、配線116、119及び122については、貫通ビア110を囲むような平面形状を有する必要は無い。
【0068】
まず、配線113上を含む絶縁膜112上を覆うように、例えば、CVD法による膜厚400nmのシリコン酸化膜からなる絶縁膜114を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、絶縁膜114に、複数のビア孔と、該複数のビア孔上接続する配線溝とを形成する。
【0069】
次に、スパッタ法及びめっき法により、前記ビア孔及び配線溝を埋め込み且つ絶縁膜114を覆うように、タンタル(Ta)/窒化タンタル(TaN)からなるバリア膜及び銅(Cu)膜を順次堆積する。
【0070】
その後、CMP法を用い、絶縁膜114上にまではみ出した部分の不要なバリア膜及び銅膜を除去することにより、ビア孔及び配線溝をバリア膜及び銅膜が埋め込んだ構造を有するビア115及び配線116を形成する。尚、ビア孔の位置を必要に合わせて設定することにより、配線113の所望の箇所に接続するビア115を形成することができる。
【0071】
更に、同様の工程を繰り返すことにより、絶縁膜114上に形成される絶縁膜117とそこに埋め込まれるビア118及び配線119、絶縁膜117上に形成される絶縁膜120とそこに埋め込まれるビア121及び配線122を形成し、多層配線構造を形成する。ここでは配線総数が4層であるが、これは一例であり、特に限定されることはない。
【0072】
尚、本実施形態においては、各絶縁膜114、117及び120について、シリコン酸化膜の単層構造とした。しかし、この他に、他の材料からなる単層構造でも良いし、シリコン酸化膜/シリコン窒化膜等の積層膜を用いても良い。また、バリア膜としてはTa膜/TaN膜からなる積層構造には限らず、単体のTa膜又はTaN膜等であっても良い。更に、銅膜に代えて、銀、アルミニウム又はこれらの合金からなる膜を用いても良い。
【0073】
次に、図2(g)の工程を行なう。ここでは、半導体基板101に対して裏面から薄型化処理を施し、半導体基板101の裏面側に、貫通ビア110の下端部分を貫通ビア底123として露出させる。
【0074】
薄型化処理としては、例えば、まず所望の厚さになるまで半導体基板101の裏面を研削し、その後、CMP法のような機械的な要素と化学的な要素を併せ持つ研磨処理を施す。この時点では、貫通ビア底123は露出させないようにする。その後、ウェットエッチング法により半導体基板101の裏面をエッチングし、貫通ビア底123を露出させる。
【0075】
薄型化処理の他の例としては、研削を行なうこと無くCMP法及びウェットエッチング法を用いても良い。更には、CMP法のみ、又はウェットエッチング法のみによって薄型化処理を行なっても良い。
【0076】
以上のようにして、電子デバイス100の上側に位置する第1のウェハWf1が形成される。
【0077】
次に、貫通ビア110及び囲み配線111(更には、貫通ビア孔108及び囲み配線溝109)の平面配置について説明する。
【0078】
図3(a)に、図2(g)におけるIIIa-IIIa'線による断面として、囲み配線111及び貫通ビア110の平面形状の一例を示している。但し、ゲート電極104、プラグ106等については図示を省略している。また、図3(a)には、一つのチップ領域131について示されている。
【0079】
図3(a)の場合、チップ領域131内において複数の貫通ビア110が配置され、また、チップ領域131の一部分を囲むように(ここでは、複数の貫通ビア110の全てを囲むように)囲み配線111が配置されている。尚、囲み配線111は、連続してほぼ一周し、輪になるような形状であるが、その両端(端部111a及び111b)が接するのを避けて形成されている。
【0080】
また、図3(b)は、第1のウェハWf1の上面から囲み配線111に電流を流すための経路を説明する平面図であり、各絶縁膜114、117、120等を透視して示している。ここに示される通り、囲み配線111の端部111a及び111bそれぞれの上方において、配線113、116、119及び122と、ビア115、118及び121とが積層構造を構成し、最上層の絶縁膜120上にまで電気的経路が確保されている。最上層の配線122は、囲み配線111に電流を流すための端子パッドとして機能する。
【0081】
この際、経路を最短にするために、図3(b)に示す通り、端部111a及び111bの真上に延びるように前記積層構造が設けられているのが良い。
【0082】
図3(b)において、他の構成要素は図示を省略している。特に、端部111a及び111b上方を除く囲み配線111上方、及び、囲み配線111内の領域上方について、配線113、116、119及び122と、ビア115、118及び121とは任意のパターンに配置されていて良い。
【0083】
尚、図2(g)において、Aの部分が囲み配線111の端部111b上に電気的経路が構成された様子を示し、Bの部分は囲み配線111の端部以外の部分について示していることになる。
【0084】
次に、図4(a)〜(d)は、電子デバイス100において下側に位置する第2のウェハWf2の構造及び形成方法を説明するための模式的な断面図である。
【0085】
まず、図4(a)に示す構造を形成する。これは、第1のウェハWf1について図2(a)に示す構造と同様であり、符号のみが異なっている。つまり、半導体基板201上に素子分離202によって活性領域が区画され、該活性領域に、半導体領域203、ゲート絶縁膜(図示せず)及びゲート電極204を含むMOS素子が形成されている。該MOS素子上を含む半導体基板101上を覆うように絶縁膜205が形成され、絶縁膜205を貫通して半導体領域203等に達するようにプラグ206が形成されている。これらは、いずれも第1のウェハWf1について説明したのと同様にして形成すればよい。但し、このように第2のウェハWf2が第1のウェハWf1と同様の構造を有していることは必須ではなく、別の構造であっても良い。
【0086】
次に、図4(b)に示す工程を行なう。まず、プラグ206上及び絶縁膜205上を覆うように、例えば、CVD法により膜厚が200nmのシリコン酸化膜からなる絶縁膜207を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、絶縁膜207に、互いに間隔をおいて複数の配線溝を形成する。
【0087】
その後、スパッタ法及びめっき法により、前記配線溝を埋め込み且つ絶縁膜207上を覆うように、タンタル(Ta)/窒化タンタル(TaN)からなるバリア膜及び銅(Cu)膜を順次堆積する。
【0088】
その後、CMP法を用い、絶縁膜207上にまではみ出した部分の不要なバリア膜及び銅膜を除去することにより、配線溝を埋め込むバリア膜及び銅膜からなる配線213を形成する。尚、配線溝の位置を設定することにより、例えばプラグ206上に接続する等、任意の位置に配線213を配置することができる。
【0089】
ここでも、バリア膜としてはTa膜/TaN膜からなる積層構造には限らず、単体のTa膜又はTaN膜等であっても良い。また、銅膜に代えて、銀、アルミニウム又はこれらの合金からなる膜を用いても良い。
【0090】
次に、図4(c)に示す工程を行なう。ここでは、複数積層される絶縁膜214、217及び220と、その中に埋め込まれる配線構造(ビア215、218及び221と、配線216、219及び222)とを形成する。
【0091】
これらについては、例えば、第1のウェハWf1について図2(f)において説明したのと同様の方法により形成することができる。但し、別の方法であっても良い。
【0092】
また、最上層に位置する配線222については、第1のウェハWf1における貫通ビア底123と接続する必要があるため、それに応じた位置に形成する。他の層の配線216及び219と、各層の配線を接続するビア215、218及び221については、任意に配置することができる。
【0093】
次に、図4(d)に示すように、最上層の配線222の表面に、キャップ膜223を無電解メッキ法等により形成する。ここで、キャップ膜223としては、強磁性体の性質を有する材料を用いる。例えば、強磁性体である金属として鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)又はガドリニウム(Gd)の単体、これらFe、Co、Ni及びGdの少なくとも一つを含む合金、Fe、Co、Ni及びGdの酸化物の少なくとも一つを含む材料等を用いることができる。
【0094】
尚、本実施形態において、最上層の配線222は、配線溝に銅、銀、アルミニウム又はこれらの合金等を埋め込んだ構造を有する。この場合、強磁性体である材料からなるキャップ膜223を設ける。
【0095】
これに対し、最上層の配線222について、先にキャップ膜223の材料として挙げた材料(Fe、Co、Ni、Gd等)を配線溝に埋め込むことにより形成しても良い。この場合、キャップ膜223を形成する必要はない。
【0096】
以上のようにして、電子デバイス100の下側に位置する第2のウェハWf2が形成される。
【0097】
この後、第1のウェハWf1を第2のウェハWf2上に位置を合わせて搭載し、両ウェハを貼り合せる。以下に、この貼り合せ工程について説明する。
【0098】
図5(a)及び(b)は、第1のウェハWf1と第2のウェハWf2とを貼り合せる工程について、位置合わせの方法を説明する断面図及び平面図である。
【0099】
まず、下側の第2のウェハWf2を準備した後、その上に、上側の第1のウェハWf1を、その裏面が第2のウェハWf2の主面に対向するように配置する。
【0100】
続いて、第2のウェハWf2と第1のウェハWf1との相対的な位置を合わせる。具体的には、第2のウェハWf2における最上層の配線222(及びキャップ膜223)と、それに対応する第1のウェハWf1の裏面における貫通ビア底123との位置を合わせる。
【0101】
更に、両ウェハの対向面を近付けると共に、第2のウェハWf2の最上層の配線222と、第1のウェハWf1の貫通ビア底123とをそれぞれ接触させて電気的に接続する。これにより、第1のウェハWf1と第2のウェハWf2との電気的接続が行なわれる。
【0102】
その後、第1のウェハWf1と第2のウェハWf2との隙間に絶縁性の接着剤301を注入することにより(図1を参照)、積層された第1のウェハWf1と第2のウェハWf2とを貼り合せて機械的強度を確保する。
【0103】
このようにして第1のウェハWf1と第2のウェハWf2を貼り合せた後、両ウェハをチップ単位に切断して個々のチップ(電子デバイス100)を得る。このようにして得られた電子デバイスは、複数枚(ここでは2枚)のチップが積み重ねられた3次元構造を有する。つまり、複数のチップにそれぞれ設けられた半導体回路等同士が貫通ビアを通じて電気的に接続され、全体として一つの半導体集積回路が構成されている。
【0104】
ここで、第1のウェハWf1と第2のウェハWf2との位置合わせについて、更に説明する。
【0105】
まず光学的な位置合わせ手法等を用いてある程度の位置合わせを行なう。その後、図5(a)及び(b)に示すように、第1のウェハWf1に設けられた囲み配線111に対し、囲み配線111の端部111a及び111b上方にそれぞれ構成した配線構造を通じて電流を流すため、電源601を接続する。これには、電源601の両端の端子(図示せず)について、それぞれ最上層の配線122(この部分が端子パッドとして機能する)に接続することになる。尚、図5(a)は電気的な接続を模式的に示す。
【0106】
その後、電源601をオンにして電圧を加え、囲み配線111に電流605を流す。囲み配線111は両ウェハの電気的接続を行なう領域をほぼ一周して取り囲むように配置され、その内側に貫通ビア110が配置されている。このため、囲み配線111に電流が流れると磁界が発生し、貫通ビア110が磁力を持った磁石となる。
【0107】
この状態にて第1のウェハWf1と第2のウェハWf2とを近付けると、第2のウェハWf2の最上層の配線222上に設けられたキャップ膜223が、第1のウェハWf1における磁化した貫通ビア110の貫通ビア底123に引き付けられる。
【0108】
このため、第2のウェハWf2が第1のウェハWf1側に引き付けられ、第2のウェハWf2に垂直な方向に変位する。このような変位を観測しながら、第2のウェハWf2の主面と第1のウェハWf1の裏面との平行を維持しつつ、少しずつ平行移動又は回転移動させる。変位が最大となる位置において、両ウェハの位置が最も正確に合っている(位置合わせズレが最小である)と考えられるから、そのような位置を最適な位置として決定する。
【0109】
このような位置合わせ方法によると、最も位置合わせズレが小さくなる最適な位置を直接観測しながら両ウェハの接合を行なうことができ、間接的な位置合わせであった従来技術に比べてより正確且つ適切な位置合わせを行なうことができる。よって、電子デバイス製造の歩留りが向上する。また、このような方法は、ウェハ同士の位置合わせには限られず、チップ同士の位置合わせ、ウェハに対するチップの位置合わせ等にも対応することができる。
【0110】
(変形例)
次に、第1の実施形態について、各種変形例を説明する。
【0111】
図6(a)は、図2(g)に示す第1のウェハWf1に代わる構造を示す断面図である。図2(g)の場合、端部111a及び111b以外の部分の囲み配線111上方(Bとして示す箇所)において、囲み配線111に接続されていない配線116、119及び122が形成されている。
【0112】
これに対し、図6(a)には、端部111a及び111b以外の部分の囲み配線111上方には配線116、119及び122が形成されていない場合を示している。囲み配線111に対しては、その端部111a及び111bに対して電気的接続の経路が形成されていれば良いのであり、他の部分上方の構造については特に限定はなく、図6(a)のようになっていても良い。また、図6(a)では、Aとして示す箇所において囲み配線ではない配線116、119、122が形成され電気的接続の経路が構成された様子が示されている。しかし、ビアのみによって電気的経路が構成されていても良い。
【0113】
次に、図6(b)には、囲み配線111に代えて、貫通ビア110の形成された領域を取り囲むように形成された配線116aを備える例を示している。ここで、配線116aの平面視形状は、図3(a)及び(b)における囲み配線111の平面視形状と同様と考えればよい。配線116aの両端は接しないようになっており、両端それぞれの上に、ビアと配線とによって配線116aに電流を流すための電気的経路が構成されている。
【0114】
図2(g)等に示すような囲み配線111は、貫通ビア110を同じ層において取り囲んでいる。これに対し、図6(b)の配線116aは、貫通ビア110よりも上の層において、平面視すると貫通ビア110を取り囲んでいる。このような場合にも、配線116aに電流を流すことにより磁界を発生させ、更には貫通ビア110に磁力を持たせることが可能である。よって、この場合にも先に説明した位置合わせ方法を行なうことができる。
【0115】
また、図6(b)では、Aに示す部分において囲み配線ではない配線119及び122が形成され、配線116aに電流を流すための経路となっている。しかし、このような経路は、ビアのみによって構成されていても良い。また、図6(b)では、Bに示す部分において、配線119、122が形成されていない場合を示しているが、この部分に配線119、122のいずれかが形成されていてもよい。
【0116】
また、図2(g)等に示す囲み配線111に加えて、図6(b)に示す配線116aのように平面視すると貫通ビア110を取り囲んでいる配線も備えている構成としても良い。但し、囲み配線111を備えるのであれば、図2(g)における配線116、119、122等については貫通ビア110を取り囲んでいる平面形状ではない方が望ましい。
【0117】
また、第1の実施形態においては、図3(a)及び(b)に示す通り、一つのチップ領域において囲み配線111を一つだけ設けている。しかし、これには限らず、図7(a)及び(b)に示すようにしても良い。つまり、囲み配線111を複数設けると共に、それぞれの内側に貫通ビア110が配置されているようにしても良い。この場合、第1のウェハWf1における各囲み配線111及びその内側の貫通ビア110と、該貫通ビア110に対応する第2のウェハWf2の配線222(及びキャップ膜223)とを一組として、位置合わせ及び電気的接続を行なうこのような領域が複数設けられていると考えることができる。このように複数の領域において位置合わせを行なうことにより、より精度の良い位置合わせを行なうことができる。
【0118】
また、第1の実施形態において、囲み配線111の内側に貫通ビア110が配置されている例を説明した。しかし、図8(a)に示すように、囲み配線111の外側に貫通ビア110が配置されている構成を取ることも可能である。
【0119】
貫通ビア110に磁力を与えるという観点からは、囲み配線111の内側に貫通ビア110が配置されている場合の方が有利である。しかし、囲み配線111の外側に配置された貫通ビア110に対しても磁力を与えることは可能であり、電子デバイスの構造の都合等によっては、外側に配置することも考えられる。これは、電子デバイスの構造の自由度という観点において利点である。
【0120】
また、図8(b)に示すように、複数の囲み配線111a及び111bを設け、貫通ビア110の配置された領域を何重にも取り囲むようにしても良い。このようにすると、貫通ビア110を磁化するために有利である。
【0121】
更には、図8(c)に示すように、囲み配線111を螺旋状に形成して貫通ビア110を取り囲むこともできる。これも、貫通ビア110の磁化のために有利である。
【0122】
尚、以上のような各変形例については、互いに組み合わせることも可能である。例えば、配線116aが図8(b)のように複数本設けられている構成、囲み配線111の内側及び外側の両方に貫通ビア110が配置されている構成、図8(a)〜(c)に示すような領域が複数設けられている構成等はいずれも可能である。
【0123】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る電子デバイスとその製造方法について、図面を参照しながら説明する。本実施形態についても、以下に示す各図、種々の構成要素の形状、材料、寸法等はいずれも望ましい例を挙げるものであり、示した内容には限定されない。発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、記載内容に限定されることなく適宜変更可能である。
【0124】
本実施形態の電子デバイスは、第1の実施形態の電子デバイス100と同様に、2枚のウェハが積層された構造を有する。その下側になる第2のウェハWf2については、図1に示す第1の実施形態における第2のウェハWf2と同じ構造であり、第1の実施形態において説明したようにして製造すれば良い。
【0125】
これに対し、第2のウェハWf2上に搭載する、本実施形態における第1のウェハWf3について、その構造及び形成方法を以下に説明する。
【0126】
図9(a)〜(d)は、本実施形態における第1のウェハWf3の構造及び形成方法を説明するための模式的な断面図である。
【0127】
図9(a)に示す構造は、第1の実施形態における第1のウェハWf1の形成方法として図2(a)に示した構造と同様である。よって、半導体基板101、素子分離102、半導体領域103、ゲート電極104、絶縁膜105及びプラグ106について、既に説明したのと同様にして形成すればよい。
【0128】
次に、図9(b)の工程を行なう。ここでは、リソグラフィ法とドライエッチング法とを用い、貫通ビア孔108を形成する。これは、絶縁膜105を貫通し、更に、半導体基板101を例えば7分の1〜8分の1程度まで彫り込む深さに形成する。半導体基板101の厚さが750μmであったとすると、これに対して100μmの深さとなる。
【0129】
次に、図9(c)の工程を行なう。まず、スパッタ法及びめっき法を用い、貫通ビア孔108を埋め込み且つ絶縁膜105上を覆うように、タンタル(Ta)/窒化タンタル(TaN)からなるバリア膜と、銅(Cu)膜とを順次堆積する。その後、CMP法を用い、絶縁膜105上にまではみ出た部分の前記バリア膜及び銅膜を除去することにより、貫通ビア孔108内を埋め込むように、貫通ビア110を形成する。
【0130】
この際、バリア膜としてはTa膜/TaN膜からなる積層構造には限らず、単体のTa膜又はTaN膜等であっても良い。また、銅膜に代えて、銀、アルミニウム又はこれらの合金からなる膜を用いても良い。
【0131】
また、貫通ビア孔108の側壁には、バリア膜を形成するよりも前に、絶縁性膜を形成しておくことが好ましい。又は、前記絶縁性膜を形成する代わりに、貫通ビア110の周囲を絶縁物質によって囲むようにしても良い。
【0132】
次に、図9(d)の工程を行なう。ここでは、配線113を形成する。そのためには、まず、貫通ビア110上及び絶縁膜105上を覆うように、例えば、CVD法による膜厚200nmのシリコン酸化膜からなる絶縁膜112を堆積する。
【0133】
続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、絶縁膜112を貫通するように、互いに間隔をおいて複数の配線溝を形成する。
【0134】
次に、スパッタ法及びめっき法により、前記配線溝を埋め込み且つ絶縁膜112を覆うように、タンタル(Ta)/窒化タンタル(TaN)からなるバリア膜及び銅(Cu)膜を順次堆積する。
【0135】
その後、CMP法を用い、絶縁膜112上にまではみ出した部分の不要なバリア膜及び銅膜を除去することにより、配線溝を埋め込むバリア膜及び銅膜からなる配線113を形成する。尚、配線溝の位置を設定することにより、貫通ビア110上又はプラグ106上に接続する等、任意の位置に配線113を設けることができる。
【0136】
ここでも、バリア膜としてはTa膜/TaN膜からなる積層構造には限らず、単体のTa膜又はTaN膜等であっても良い。また、銅膜に代えて、銀、アルミニウム又はこれらの合金からなる膜を用いても良い。
【0137】
次に、図9(e)に示す工程を行なう。ここでは、複数積層される絶縁膜114、117及び120と、その中に埋め込まれる配線構造(ビア115、118及び121と、配線116、119及び122)とを形成する。
【0138】
このための方法は、第1の実施形態において図2(f)を参照して説明した方法と同様であるから、詳しい説明は省略する。
【0139】
次に、図9(f)の工程を説明する。ここでは、半導体基板101に対して裏面から薄型化処理を施し、半導体基板101の裏面側に、貫通ビア110の下端部分を貫通ビア底123として露出させる。このための方法は、第1の実施形態において図2(g)を参照して説明した方法と同様であるから、詳しい説明は省略する。
【0140】
以上のようにして、本実施形態において上側になる第1のウェハWf3が形成される。
【0141】
ここで、第1のウェハWf3における最上層の配線122により、インダクタ124が構成されている。これについて、図10(a)〜(c)により説明する。
【0142】
図10(c)は、図9(f)におけるインダクタ124の付近を拡大して詳しく示す図である。図10(a)及び(b)はインダクタ124付近の平面構成を示す図であり、それぞれ図10(c)において、絶縁膜120を通るXa-Xa'線及び絶縁膜117を通るXb-Xb'線による断面を示している。また、図10(a)及び(b)のXc-Xc'線による断面が図10(c)に対応する。
【0143】
図10(a)に示す通り、チップ領域131において、最上層の配線122aによってスパイラル状のインダクタ124が構成されている。該インダクタ124を構成する配線122aの外側の端部には、位置合わせの際に測定プローブ端子を接続するための接続パッド153が設けられている。また、内側の端部には、図10(b)及び(c)に示す下層の配線119aに対してビア121を介して接続するための接続パッド151が形成されている。配線119aは、インダクタ124の外側に設けられた接続パッド152に電気的に接続されている。
【0144】
尚、インダクタ124の下方には、少なくとも一つの貫通ビア110が配置されていることが望ましい。
【0145】
第1のウェハWf3及び第2のウェハWf2の形成を終えた後、両ウェハを位置合わせして貼り合せる。ここで、第2のウェハWf2上に第1のウェハWf3を配置し、第2のウェハWf2の最上層の配線222及びその上のキャップ膜223と、第1のウェハWf3の貫通ビア底123とをそれぞれ接触させて電気的に接続すること、更に接着剤を用いて両ウェハを貼り合せ、機械的強度を確保することについては、第1の実施形態の場合と同様である。
【0146】
以下には、両ウェハの位置合わせの工程について説明する。図11(a)及び(b)は、本実施形態における位置合わせの方法を説明する図である。
【0147】
まず、第1の実施形態の場合(図5(a)及び(b))と同様に、第1のウェハWf3を第2のウェハWf2上に配置し、光学的手法によってある程度の位置合わせを行なう。次に、図11(a)及び(b)に示すように、インダクタ124に電流を流すために、電源601を接続する。これには、電源601の両端の端子(図示せず)について、それぞれ接続パッド152及び153に接続する(図11(a)及び(b)においては、電源601の電気的な接続を示している)。
【0148】
その後、電源601をオンにして電圧を加え、インダクタ124に電流605を流すと、磁界が発生する。この磁界により貫通ビア110が磁力を持った磁石となり、第2のウェハWf2におけるキャップ膜223を引き付ける。
【0149】
このため、第2のウェハWf2が第1のウェハWf3側に引き付けられ、第2のウェハWf2に垂直な方向に変位する。このような変位を観測しながら、第2のウェハWf2の主面と第1のウェハWf3の裏面との平行を維持しつつ、少しずつ平行移動又は回転移動させる。変位が最大となる位置を最適な位置として決定する。
【0150】
第1の実施形態の場合と同様、最も位置合わせズレが小さくなる最適な位置を直接観測しながら両ウェハの接合を行なうことができ、間接的な位置合わせであった従来技術に比べてより正確且つ適切な位置合わせを行なうことができる。よって、電子デバイス製造の歩留りが向上する。また、このような方法は、ウェハ同士の位置合わせには限られず、チップ同士の位置合わせ、ウェハに対するチップの位置合わせ等にも対応することができる。
【0151】
(変形例)
次に、第2の実施形態について、各種変形例を説明する。
【0152】
図12(a)及び(b)に、インダクタ124に関する変形例を示す。第2の実施形態において図10(a)〜(c)に説明したインダクタ124の場合、その内側の接続パッド151から接続パッド152まで下層の配線119a等を介して電気的経路が引き出されている。これに対し、図12(a)及び(b)の場合、配線119a、接続パッド152等は設けられていない。
【0153】
この場合、位置合わせの工程においては、インダクタ124の外側の端部に設けられた接続パッド153と、内側の端部に設けられた接続パッド151とに対して電源601を接続する。これにより、図11(a)〜(c)にて説明したのと同様に、インダクタ124に電流を流して位置合わせに磁力を利用することができる。
【0154】
また、第2の実施形態において、インダクタ124は一つだけ図示されている。しかし、第1のウェハWf3におけるインダクタ124及びその下方の貫通ビア110と、該貫通ビア110に対応する第2のウェハWf2における配線222(及びキャップ膜223)とを一組として、位置合わせ及び電気的接続を行なうこのような領域が複数設けられていても良い。このように複数の領域において位置合わせを行なうことにより、より精度の良い位置合わせを行なうことができる。
【0155】
尚、第1の実施形態及び第2の実施形態において、電子デバイスとして、いずれも半導体基板にMOS素子、配線構造等が設けられた第1のウェハWf1(Wf3)及び第2のウェハWf2を貼り合せて半導体装置を製造する例を説明した。しかし、これには限定されない。例えば、導電膜を有する絶縁基板を用いている場合にも導電膜に対して問題なく適用できる。更に、囲み配線111及び貫通ビア110を有する構造をプリント基板上に位置合わせして搭載するような場合にも適用可能である。
【0156】
また、第1の実施形態にて説明した囲み配線と、第2の実施形態にて説明したインダクタとを共に備える第1のウェハを用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の電子デバイス及びその製造方法は、複数の基板が正確に確実に位置合わせされた積層構造(3次元構造)を歩留り良く実現するため、より小型化、薄型化して実装密度を高めた半導体装置としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子デバイスの構造を説明する模式的な断面図である。
【図2】図2(a)〜(g)は、本発明の第1の実施形態における第1のウェハの構造及び形成方法を説明する模式的な断面図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態における第1のウェハについて、平面構成を説明する模式的な断面図である。
【図4】図4(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態における第2のウェハの構造及び形成方法を説明する模式的な断面図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態における位置合わせの方法について説明するための模式的な断面図及び平面図である。
【図6】図6(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態の変形例における第1のウェハについて説明する模式的な断面図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態の変形例における第1のウェハについて説明する模式的な平面図である。
【図8】図8(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態の変形例における第1のウェハについて説明する模式的な平面図である。
【図9】図9(a)〜(f)は、本発明の第2の実施形態における第1のウェハの構造及び形成方法を説明する模式的な断面図である。
【図10】図10(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態における第1のウェハの構造を説明する模式的な平面図である。
【図11】図11(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態における位置合わせの方法について説明するための模式的な断面図及び平面図である。
【図12】図12(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態の変形例における第1のウェハについて説明する模式的な平面図である。
【図13】図13は、従来の位置合わせの方法について説明する模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0159】
Wf1、Wf3 第1のウェハ
Wf2 第2のウェハ
100 電子デバイス
101 半導体基板
102 素子分離
103 半導体領域
104 ゲート電極
105、112、114、117、120 絶縁膜
106 プラグ
107 ライナー膜
108 貫通ビア孔
109 囲み配線溝
110 貫通ビア
111 囲み配線
111a、111b 端部
113、116、119、122 配線
116a、119a、122a 配線
115、118、121 ビア
123 貫通ビア底
124 インダクタ
131 チップ領域
151、152、153 接続パッド

201 半導体基板
202 素子分離
203 半導体領域
204 ゲート電極
205、207、214、217、220 絶縁膜
206 プラグ
213、216、219、222 配線
215、218、221 ビア
223 キャップ膜

301 接着剤
601 電源
605 電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、前記第1基板を搭載し且つ少なくとも一つの所定領域において前記第1基板と電気的に接続された第2基板とを備え、
前記所定領域は、
前記第1基板を貫通する少なくとも一つの貫通ビアと、
前記第1基板に、前記所定領域の一部を囲み且つ両端が接するのを避けて設けられた第1の配線と、
前記第1基板上に設けられ、前記第1の配線の両端にそれぞれ電気的に接続する一対の端子パッドと、
前記第2基板上に設けられ、前記貫通ビアと接続された少なくとも一つの導電部とを有することを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記貫通ビアのうちの少なくとも一つは、前記第1の配線の外側に位置していることを特徴とする電子デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記貫通ビアのうちの少なくとも一つは、前記第1の配線の内側に位置していることを特徴とする電子デバイス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つにおいて、
前記所定領域は、前記第1の配線を囲み且つ両端が接するのを避けて設けられた第2の配線を更に有することを特徴とする電子デバイス。
【請求項5】
第1基板と、前記第1基板を搭載し且つ少なくとも一つの所定領域において前記第1基板と電気的に接続された第2基板とを備え、
前記所定領域は、
前記第1基板を貫通する少なくとも一つの貫通ビアと、
前記第1基板における前記貫通ビアの上方に設けられたインダクタと、
前記第2基板上に設けられ、前記貫通ビアと接続された少なくとも一つの導電部とを有することを特徴とする電子デバイス。
【請求項6】
第1基板と、前記第1基板を搭載し且つ少なくとも一つの所定領域において前記第1基板と電気的に接続された第2基板とを備え、
前記所定領域は、
前記第1基板を貫通する少なくとも一つの貫通ビアと、
前記第1基板に設けられ、前記所定領域に、前記貫通ビアの延びる方向に磁界を生じさせる手段と、
前記第2基板上に設けられ、前記貫通ビアと接続された少なくとも一つの導電部とを有することを特徴とする電子デバイス。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つにおいて、
複数の前記所定領域において、
前記第1基板と前記第2基板とが電気的に接続されていることを特徴とする電子デバイス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つにおいて、
前記貫通ビアは、Cuを主成分とする材料からなることを特徴とする電子デバイス。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つにおいて、
前記貫通ビアは、強磁性体を含む材料からなることを特徴とする電子デバイス。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一つにおいて、
前記導電部は、強磁性体を含む材料からなることを特徴とする電子デバイス。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一つにおいて、
前記導電部は、Cu膜と、前記Cu膜上に形成され且つ強磁性体を含む材料からなるキャップ膜とを備える積層構造を有することを特徴とする電子デバイス。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一つにおいて、
前記強磁性体は、Fe、Co、Ni及びGdの少なくとも一つであることを特徴とする電子デバイス。
【請求項13】
第1基板の所定領域に、前記第1基板を貫通する少なくとも一つの貫通ビアを形成する工程(a)と、
前記第1基板に、前記所定領域の一部を囲み且つ両端が接するのを避けるように第1の配線を形成する工程(b)と、
前記工程(a)及び(b)の後に、前記第1基板上に、前記第1の配線の両端にそれぞれ電気的に接続する一対の端子パッドを形成する工程(c)と、
第2基板上に、前記貫通ビアと電気的に接続するための少なくとも一つの導電部を形成する工程(d)と、
前記工程(c)及び(d)の後に、前記第2基板上に前記第1基板を搭載すると共に、前記導電部と前記貫通ビアとを電気的に接続する工程(e)とを備えることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記工程(e)において、前記一対の端子パッドを介して前記第1の配線に電流を流すことにより前記貫通ビアに磁力を与え、前記貫通ビアと前記導電部との間に働く引力による変位を観測しながら、前記第2基板上に前記第1基板を搭載することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項15】
第1基板の所定領域に、前記第1基板を貫通する少なくとも一つの貫通ビアを形成する工程(a)と、
前記工程(a)の後に、前記第1基板における前記貫通ビアの上方にインダクタを形成する工程(b)と、
第2基板上に、前記貫通ビアと接続するための少なくとも一つの導電部を形成する工程(c)と、
前記工程(b)及び(c)の後に、前記第2基板上に前記第1基板を搭載すると共に、前記導電部と前記貫通ビアとを電気的に接続する工程(d)とを備えることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項16】
請求項15において、
前記工程(d)において、前記インダクタに電流を流すことにより前記貫通ビアに磁力を与え、前記貫通ビアと前記導電部との間に働く引力による変位を観測しながら、前記第2基板上に前記第1基板を搭載することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか一つにおいて、
前記貫通ビアは、Cuを主成分とする材料により形成することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項18】
請求項13〜17のいずれか一つにおいて、
前記貫通ビアは、強磁性体を含む材料により形成することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項19】
請求項13〜18のいずれか一つにおいて、
前記導電部は、強磁性体を含む材料により形成することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
請求項18又は19において、
前記強磁性体は、Fe、Co、Ni及びGdの少なくとも一つであることを特徴とする電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−80781(P2010−80781A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248998(P2008−248998)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】