説明

電子・電気部品用防湿コーティング組成物および防湿コーティング膜の形成方法

【課題】電子・電気部品用防湿コーティングにおける塗装作業性が良好で、被塗物を侵さず、環境にも優しく、しかも防湿性だけでなく、耐薬品性、電気絶縁性、耐候性、耐久性に優れた塗膜を形成できる電子・電気部品用防湿コーティング組成物を提供する。
【解決手段】フッ素樹脂とフッ素系溶剤とからなり、該フッ素樹脂が1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン100gに1g以上溶解するフッ化ビニリデン系重合体を含み、かつ該フッ素系溶剤が不燃性であるコーティング組成物であって、電子・電気部品の防湿コーティング被膜の形成に使用するコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子・電気部品用防湿コーティングにおける塗装作業性(たとえば塗工性や速乾性など)が良好で、被塗物を侵さず、環境にも優しく、しかも防湿性だけでなく、耐薬品性、電気絶縁性、耐候性、耐久性に優れた塗膜を形成できる電子・電気部品用防湿コーティング組成物および防湿コーティング被膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外の電子・電気機器(たとえば電話、信号機、エアコン室外機、配電盤、柱上コンデンサー、携帯電話、携帯中継アンテナ、自動車電子機器、船の電子機器、自動販売機、モバイルパソコンなど)の制御のために、電子・電気回路基板が取り付けられることが進んでいる。そこでは雨や湿気、ほこり、虫などによる酸や塩などで金属配線が腐蝕され、回路が破壊される場合があり、問題となっている。そこで近年、電子・電気部品を装着した後に、回路基板表面にコーティングを施し防湿性を上げることが一般的に行なわれている。
【0003】
こうした防湿コーティングは、撥水撥油剤を塗布する方法と樹脂コーティング膜を形成させる方法とに大別される。
【0004】
前者は、膜形成能に劣る低分子量のシリコーン系やフッ素系の化合物(パーフルオロポリエーテルオリゴマーなど)を溶剤に溶解して回路基板にスプレー塗装するものであり(特許文献1)、したがって、回路基板表面にはコーティングが形成されず、また、経時的にその効果も低下していく。
【0005】
後者の樹脂を使用する方法においては、樹脂としてアクリル樹脂やウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが使用されていたが、これらの樹脂は耐酸性や耐候性に優れているとはいえず、また、これらの樹脂を溶かす溶剤は吸湿性があるため、残存溶剤の影響により樹脂の吸湿性が損なわれることもあった。
【0006】
そこで吸湿性の低いフッ素樹脂を使用することも提案されている(特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
【0007】
特許文献2や3に記載されているフッ素樹脂はフルオロアルキルアクリレートの重合体であり、分子中にエステル基という親水性基を含んでいるため、フッ素原子を導入しているにも拘らず、その防湿効果はわずかな向上に止まっているほか、耐候性の点からも改善が必要となっている。
【0008】
特許文献4にはフッ化ビニリデン(VdF)系重合体を樹脂成分として用いる電子部品用防湿コーティング剤が記載されており、VdF系重合体が防湿性に優れることも明らかにしている。この文献では、VdF系重合体を溶解する溶剤としてアセトンやメチルエチルケトンなどのケトン系溶剤やエステル系溶剤といった溶解力の強い極性溶剤を用いることが示されている。しかし、これらの有機溶剤は溶解力が強いため回路基板を構成する樹脂を膨潤したり溶解したりすることがあるほか、引火点が低く可燃性であり、適用できる範囲が制限される。
【0009】
そこで不燃性のフッ素系溶剤を使用するフッ素樹脂系の防湿コーティング剤を提案しているのが特許文献5であるが、フッ素樹脂として含フッ素脂肪族環構造を有する特殊な樹脂を用い、しかもかかる特殊なフッ素樹脂を溶解する溶剤として、パーフルオロトリブチルアミンなどのパーフルオロ溶剤や、炭素数が8以上と大きな部分フッ素化溶剤といった特定のフッ素系溶剤しか例示されていない。
【0010】
【特許文献1】特許第3122443号明細書
【特許文献2】特開昭61−189693号公報
【特許文献3】特開平1−17492号公報
【特許文献4】特開平2−115253号公報
【特許文献5】特開平6−120001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、コーティング作業性や環境性に優れ、被塗物を侵さず、しかも防湿性だけでなく、耐薬品性、電気絶縁性、耐候性、耐久性に優れた塗膜を形成できる電子・電気部品用防湿コーティング組成物を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の別の目的は、その防湿コーティング膜の特性を最大限に発揮することができる防湿コーティング被膜の形成方法をも提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明は、フッ素樹脂とフッ素系溶剤とからなり、該フッ素樹脂が1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365)100gに1g以上溶解するVdF系重合体を含み、かつ該フッ素系溶剤が不燃性であるコーティング組成物であって、電子・電気部品の防湿コーティング被膜の形成に使用するコーティング組成物に関する。
【0014】
また本発明は、かかるコーティング組成物から形成された電子・電気部品用の防湿コーティング被膜、さらにはかかる防湿コーティング被膜を有する電子・電気部品にも関する。
【0015】
本発明はまた、本発明の防湿コーティング組成物を電子・電気部品に塗布して防湿コーティング被膜を形成する方法であって、吸水率が1質量%以下の電子・電気部品に該防湿コーティング組成物を塗布することを特徴とする電子・電気部品の防湿コーティング被膜の形成方法にも関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子・電気部品用防湿コーティングにおいて、塗装作業性(たとえば塗工性や速乾性など)が良好で、被塗物を侵さず、環境にも優しく、しかも防湿性だけでなく、耐薬品性、電気絶縁性、耐候性、耐久性に優れた塗膜を形成できる電子・電気部品用防湿コーティング組成物を提供することができる。さらに、その防湿コーティング膜の特性を最大限に発揮することができる塗膜形成方法をも提供することができる。
【0017】
その結果、塗装された電子部品の信頼性を大きく高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の防湿コーティング組成物は、前記のとおり、フッ素樹脂とフッ素系溶剤とからなり、該フッ素樹脂が100gのHFC−365に1g以上溶解するVdF系重合体を含み、かつ該フッ素系溶剤が不燃性であるコーティング組成物であって、電子・電気部品の防湿コーティング被膜の形成に使用することを特徴とする。
【0019】
以下、各成分について説明する。
(1)フッ素樹脂
本発明において、フッ素樹脂は、100gのHFC−365に1g以上溶解するフッ化ビニリデン(VdF)系重合体を含んでいればよく、その特定のVdF系重合体の単独使用でもよいし、他の含フッ素重合体とのブレンド物でもよいし、これらと非フッ素系の樹脂とのブレンド物でもよい。
【0020】
フッ素樹脂の必須の重合体であるVdF系重合体は、HFC−365を良溶媒とするものであり、具体的には100gのHFC−365に1g以上、好ましくは5g以上、さらに好ましくは10g以上、特に好ましくは20g以上溶解するVdF系重合体である。
【0021】
ここで「溶解する」とは、攪拌後30分間静置しても沈殿が生じないことをいい、またこの場合温めて攪拌しても良い。若干の白濁状態であっても、本発明の目的であるコーティングには支障はない。
【0022】
HFC−365への溶解性をVdF系重合体の特定要素とする理由は、後述するように、本発明の防湿コーティング組成物を調製する際に使用する一般的でオゾン破壊係数を持たない溶剤として有力なフッ素系溶剤であるからであり、HFC−365に溶解するVdF系重合体は優れた防湿効果をもつ被膜を形成するからでもある。
【0023】
この要件を満たすVdF系重合体は、このHCF−365への溶解実験を行なうことによって容易に特定できる。
【0024】
また、このVdF系重合体は、結晶化度が60%以下、好ましくは50%以下、特に40%以下であることが、HFC−365への溶解性に優れていることから好ましい。
【0025】
具体的には、VdFと他の含フッ素単量体、特にフルオロオレフィン、またさらに要すれば非フッ素系単量体との共重合体であって、水分を包摂しやすい親水性基(たとえば水酸基、カルボキシル基、エステル基、ケトン基、アミノ基、アミド基など)を有さないものが好ましい。
【0026】
より具体的には、VdF単位を50〜95モル%含み、他の構造単位が、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレン、フッ化ビニルなどのフルオロオレフィン類に由来する単位であるVdF系共重合体が、HFC−365への溶解性が良好な点から好ましく例示できる。
【0027】
VdF単位を50〜95モル%含むVdF系共重合体としては、たとえばVdF−TFE共重合体、VdF−CTFE共重合体、VdF−TFE−CTFE共重合体、VdF−TFE−HFP共重合体、VdF−HFP共重合体などがHFC−365への溶解性が良好な点から好ましく、さらに形成される被膜の表面タック性が低いことから、VdF−TFE−CTFE共重合体、VdF−TFE−HFP共重合体が好ましい。
【0028】
他の共重合可能なフッ素系単量体としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)やパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)などのパーフルオロビニルエーテル、ヘキサフルオロアセトンなどがあげられ、また非フッ素系単量体としてはたとえばビニルブチラート、ビニルアセテートなどのビニルエステル類;メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのクロロオレフィン類などのほか、エチレン、プロピレン、スチレン、メチルメタクリレート、ブチルアクリレートなどがあげられ、これらはHFC−365への溶解性および防湿性を損なわない範囲であれば、共重合してもよい。
【0029】
本発明で使用するフッ素樹脂は、前記のとおり、特定のVdF系重合体と他の含フッ素重合体とのブレンド物でもよい。他の含フッ素重合体としては、たとえば炭素数3〜10のパーフルオロアルキル基を持ったアクリレートの共重合体などが例示でき、これらはHFC−365への溶解性および防湿性を損なわない範囲でブレンドしてもよい。
【0030】
さらに非フッ素系の樹脂をブレンドしてもよい。非フッ素系の樹脂としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル樹脂などが例示できる。これらのなかでもアクリル系樹脂がフッ素樹脂との相溶性が良好な点から好ましい。
【0031】
アクリル系樹脂としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリレートまたはメタクリレート類;トリアルコキシプロピルメタクリレートなどの(メタ)アクリルシリコーン類;(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどの官能基含有(メタ)アクリレート類の単独または共重合体のほか、これらとスチレンやアクリロニトリルとの共重合体などが好ましくあげられる。特に透湿性を小さくでき、またフッ素樹脂との相溶性が良好な点から、メチルメタクリレート単位を30モル%以上含むアクリル系樹脂が好ましい。
【0032】
アクリル系樹脂の配合量は、HFC−365への溶解性および防湿性を損なわない範囲であり、通常、特定のVdF系重合体100質量部に対して100質量部以下、好ましくは50質量部以下、特に20質量部以下である。配合する場合の好ましい下限は5質量部である。
【0033】
さらにシランカップリング剤をブレンドしてもよく、フッ素樹脂やアクリル樹脂と基材との密着性が改善され、耐塩水性が向上する。シランカップリング剤としては、アミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、アルキルシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、(メタ)アクリルシランカップリング剤などが例示できる。これらのなかでもアミノシランカップリング剤またはエポキシシランカップリング剤の1種または2種以上がフッ素樹脂やアクリル樹脂と基材との密着性が良好な点、耐塩水性が大幅に向上する点から好ましい。
【0034】
アミノシランカップリング剤としては、たとえばγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどが例示できる。エポキシシランカップリング剤としては、たとえばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどがあげられる。
【0035】
シランカップリング剤の配合量は、HFC−365への溶解性および防湿性を損なわない範囲であり、通常、特定のVdF系重合体とアクリル樹脂の合計100質量部に対して30質量部以下、好ましくは20質量部以下、特に10質量部以下である。配合する場合の好ましい下限は1質量部である。
【0036】
また本発明で用いるフッ素樹脂は、加熱硬化(架橋)型の樹脂ではなく、全体として常温乾燥によって固化する(被膜を形成する)樹脂(常温乾燥型樹脂)であるか、または光などの活性エネルギー線を照射して架橋する(硬化する)樹脂(光硬化型樹脂)であることが、電子・電気部品といった熱に敏感な基材に塗布して被膜を形成する必要があることから重要である。
【0037】
(2)不燃性のフッ素系溶剤
不燃性のフッ素系溶剤は、前記フッ素樹脂、特に特定のVdF系重合体を溶解するものである。
【0038】
本発明で「不燃性」とは、JIS K−2265に準拠する引火点測定で溶剤が沸騰しなくなる温度まで測定し引火点が存在しないことをいう。不燃性であることにより、コーティング組成物の安全性が高まるほか、輸送、容器選定などの面で有利である。
【0039】
また、用いるフッ素系溶剤は、オゾン破壊係数(ODP)がゼロであることが望ましい。さらには地球温暖化係数(GWP C02=1、100年値)が2000以下であることが望ましい。
【0040】
さらに組成物の調製および塗工性が容易であるためには、常温(25℃)で溶剤(混合溶剤も含む)が液状を呈するものが望ましく、この観点から、溶剤(混合溶剤も含む)の凝固点が25℃以下、さらには20℃以下、特に0℃以下であることが好ましい。
【0041】
また速乾性が要求される場合は沸点は低い方が好ましいが、低すぎると被膜の形成が不充分となることから、溶剤(混合溶剤も含む)の沸点は30℃以上であるのが望ましい。一方、沸点が高くなると速乾性が損なわれ、また溶剤除去にかかるエネルギーが多くなるので、沸点の上限は140℃程度が望ましい。
【0042】
別の観点からは、環境に対する影響が少ない点で塩素原子を含まないことが望ましい。
【0043】
さらに、コーティングする対象基材を化学的に変質させないことも重要である。
【0044】
以上の各点を考慮して、好ましい不燃性フッ素系溶剤を例示すると、ハイドロフルオロカーボン(HFC)またはハイドロフルオロエーテル(HFE)があげられる。
【0045】
HFCやHFEとしては、特開平10−303536号公報に記載されているものが例示できる。
【0046】
より具体的には、以下のものが好ましくあげられる。
(2−1)ハイドロフルオロカーボン(HFC)
鎖状のHFCの炭素数は2〜12、さらには2〜7、特に2〜5の直鎖状または分岐鎖状の飽和HFC、または炭素数が4以上、特に4〜8の環状の飽和HFCが好ましい。
【0047】
(2−1a)炭素数4の鎖状のHFCの具体例:
CF3CF2CF2CH2F、CF3CF2CH2CF3、CHF2CF2CF2CHF2、CHF2CHFCF2CHF2、CF3CH2CF2CHF2、CF3CHFCH2CF3、CHF2CHFCHFCHF2、CF3CH2CF2CH3、CF3CF2CH2CH3、CF3CHFCF2CH3、CHF2CH2CF2CH3
【0048】
(2−1b)炭素数5の鎖状のHFCの具体例:
CF3CF2CF2CHFCF3、CHF2CF2CF2CF2CF3、CHF2CF2CF2CF2CHF2、CF3CH(CF3)CH2CF3、CF3CHFCF2CH2CF3、CF3CF(CF3)CH2CHF2、CHF2CHFCF2CHFCHF2、CF3CH2CF2CH2CF3、CHF2CF2CF2CHFCH3、CHF2CH2CF2CH2CHF2、CF3CH2CH2CH2CF3、CF3CHFCHFCF2CF3
【0049】
(2−1c)炭素数6の鎖状のHFCの具体例:
CF3CF2CF2CF2CF2CHF2、CF3CF2CF2CF2CF2CH2F、CF3CH(CF3)CHFCF2CF3、CHF2CF2CF2CF2CF2CHF2、CF3CF2CH2CH(CF3)CF3、CF3CF2CH2CH2CF2CF3、CF3CH2CF2CF2CH2CF3、CF3CF2CF2CF2CH2CF3、CF3CH(CF3)CH2CH2CF3、CHF2CF2CH2CH2CF2CHF2、CF3CF2CF2CH2CH2CH3
(2−1d)炭素数7以上の鎖状のHFCの具体例:
CF3CF2CF2CF2CF2CF2CHF2、CF3(CF27CH2CH3
【0050】
(2−1e)環状のHFCの具体例:
【0051】
【化1】

【0052】
(2−2)ハイドロフルオロエーテル(HFE)
環状であっても鎖状であってもよく環状のものが入手しやすいことから好ましい。またHFEの炭素数は3〜12、さらには3〜7、特に3〜5であるものが好ましい。HFEも飽和のHFEが好ましい。
【0053】
(2−2a)HFEの具体例:
CH2FCF2OCHF2、CF3CF2CF2OCH2F、CHF2CF2CH2OCH3、CF3CF2CH2OCHF2、CHF2CF2CH2OCF3、CHF2CF2OCH2CHF2、CF3CH2OCF2CH2F、CF3CF2OCH2CHF2、CF3CF2CF2OCH2CH3、CF3CF2CF2OCH2CHF2、CF3CF2CF2OCH2CF3、CF3CF2CH2OCF2CHF2、CHF2CF2CH2OCF2CF3、CF3CF2CH2OCF2CF3、(CF32CHCF2OCH3、CF3CF2CF2CH2OCH3、CF3CHFCF2CH2OCHF2、CF3CHFCF2CH2OCF3、CF3CF2CF2OCH2CF2CHF2、CF3CF2CF2OCH2CF2CF3、CF3CF2CF2CF2OCH3、CF3CF2CF2CF2OCH2CH3
これらのフッ素系溶剤は単独または混合して使用できる。
【0054】
好ましい不燃性フッ素系溶剤としては、CF3CH2CF2CH3(1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン:HFC−365)、CF3CHFCHFCF2CF3(2,3−ジヒドロデカフルオロペンタン)などの炭素数4〜5の直鎖状HFC;
【0055】
【化2】

【0056】
(1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン)、
などの炭素数5〜6の環状HFC;CF3CF2CF2OCH3、CF3CF2CF2OCH2CH3、CF3CF2CF2CF2OCH3(パーフルオロn−ブチルメチルエーテル)、CF3CF2CF2CF2OCH2CH3(パーフルオロn−ブチルエチルエーテル)などの炭素数4〜6のHFEの単独溶剤または混合溶剤があげられる。
【0057】
この不燃性フッ素系溶剤には、不燃性を損なわず、基板や部品に使われる樹脂を劣化させない範囲で、HFCおよびHFE以外のフッ素系溶剤や非フッ素系有機溶剤を混合してもよい。通常、特定のフッ素系溶剤の100質量%以下で混合することが望ましい。
【0058】
非フッ素系有機溶剤としては、たとえばアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン系溶剤;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤などのほか、グリコール系溶剤、エステル系溶剤、芳香族系溶剤などが例示できる。
【0059】
HFCおよびHFE以外のフッ素系溶剤としては、メタキシレンフルオライド、フルオロベンゼン、p−クロロトリフルオロベンゼンなどのフッ素化芳香族系溶剤;ジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−225)、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)などのハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC);1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(CFC−113)などのクロロフルオロカーボン(CFC)などが例示できる。
【0060】
本発明で特に好ましい不燃性フッ素系溶剤としては、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365)または1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを含む単独溶剤または混合溶剤、さらにはこれらに他のフッ素系溶剤または非フッ素系有機溶剤を混合した混合溶剤があげられる。
【0061】
より具体的には、つぎのものが例示できるが、これらのみに限定されるものではない。
(i)HFC−365の単独溶剤
(ii) 1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの単独溶剤
(iii)HFC−365と1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンの混合溶剤(99/1〜1/99、好ましくは1/99〜50/50:質量比)
(iv)HFC−365とメタキシレンフルオライドの混合溶剤(99/1〜50/50:質量比)
(v) 1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンとメタキシレンフルオライドの混合溶剤(99/1〜50/50:質量比)
(vi) 1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンとパーフルオロn−ブチルメチルエーテルの混合溶剤(99/1〜50/50:質量比)
【0062】
本発明の防湿コーティング組成物は、特定のVdF系重合体を含むフッ素樹脂を前記不燃性フッ素系溶剤に溶解させることによって調製できる。溶解は周囲温度(約10〜35℃)で行なってもよいし、凝固点が高い場合は若干加熱して約30〜100℃で溶解させてもよい。
【0063】
コーティング組成物中のフッ素樹脂の固形分濃度は、通常1質量%以上、さらには5質量%以上、特に10質量%以上が好ましい。上限は溶剤の溶解能やフッ素樹脂の溶解性によって適宜決定すればよいが、通常60質量%、さらには50質量%、特に40質量%が好ましい。
【0064】
本発明の防湿コーティング組成物には、必要に応じて各種の添加剤を加えてもよい。そうした添加剤としては、たとえば紫外線吸収剤、シリコーン系などのカップリング剤、顔料、色素、光開始剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、顔料・色素分散剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、PTFEなどのスリップ剤などがあげられる。
【0065】
本発明はまた、前記の防湿コーティング組成物から形成される防湿コーティング被膜に関する。
【0066】
本発明の防湿コーティング被膜は、透湿性および吸湿性が低く、基材の膨張収縮に追随できる柔軟性を有しており、耐候性にもすぐれた被膜である。
【0067】
また本発明は、かかる防湿コーティング被膜を有する電子・電気部品にも関する。
【0068】
本発明の防湿コーティング組成物を塗布する対象は、屋外・屋内を問わず、湿気に曝される場所に配置される電子・電気部品であって、回路が設けられかつ各種の素子が装着された実装電子・電気部品である。これらの部品は精密な回路やデバイスが装着されているため、その被覆には万全の配慮が要求される。
【0069】
電子部品としては、各種のプリント配線基板(電子回路基板)、ハイブリッドICなどが例示できるが、これらのみに限定されるものではない。
【0070】
そうした電子部品の基板材料としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、BTレジン、ポリイミド、ガラス基布(繊維)、アルミニウムなどが使用されており、さらに回路材料として銅、銀、金、白金などの金属、またハンダが基板上に点在している。本発明の防湿コーティング組成物はこれらの材料を変質させないものである。
【0071】
また電気部品としては、上記の電子部品を内蔵した各種の電気装置のほか、配電盤などが例示できる。具体的には、エアコンディショナーの室外機、携帯電話、カーナビゲーション、太陽電池パネル、照明、信号機、携帯中継アンテナ、自動車電子機器、自動販売機、モバイルパソコン、無人アンテナ局、無線機、船舶機器、時計などが例示できる。
【0072】
さらに本発明は、電子・電気部品に防湿コーティング被膜を形成する方法にも関する。
【0073】
電子回路基板に防湿コーティング被膜を形成する一般的な方法は、つぎのとおりである。
【0074】
回路を形成した基板には、通常、各種素子(半導体チップ、抵抗器、コンデンサーなど)のハンダ付けを容易にするためのフラックスが全面に付着している。この基板に各種の素子をハンダ付けして装着し、実装電子回路基板が作製される。
【0075】
そして通常、フラックスをつけたまま防湿コーティング組成物を刷け塗り法やディッピング法、スプレー法、ロールコート法、ポッティング法、キャスト法などで塗布し、周囲環境に静置して溶剤を揮散させてコーティング被膜を形成する。
【0076】
本発明において、防湿コーティング被膜は防湿コーティング組成物から作製したフィルム、たとえばキャストフィルムであってもよい。このフィルムは、電子・電気部品をラッピングすることで防湿効果が得られる。
【0077】
また、従来の防湿コーティング被膜の形成法では、基板に付着または吸湿されている水分も同時に閉じ込めることがあり、また、塗布時にも周囲からの湿気により基板側に水分が移行したり、さらには被膜形成時に周囲からの水分が浸入したりすることがあった。
【0078】
そこで本発明者らは、こうした防湿コーティング被膜の形成工程において、基材側の水分や周囲環境の水分の影響を最小限に抑えることにより、防湿効果を長期間維持できる方法を見出した。
【0079】
本発明の防湿コーティング方法は、本発明の防湿コーティング組成物を電子・電気部品に塗布して防湿コーティング被膜を形成する方法であって、吸水率が1質量%以下の電子・電気部品に該防湿コーティング組成物を塗布することを特徴とする電子・電気部品の防湿コーティング被膜の形成方法に関する。
【0080】
すなわち、被塗物である電子・電気部品に内在する水分量を低減させておく方法である。部品の吸水率が多いと、防湿コーティング被膜が水分を透過させないため放散されずに被膜で覆われた部品内部に長期間保持され、防湿効果を半減させることになる。
【0081】
吸水率は少なければ少ない方がよいが、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下にしておくことにより、効果的な防湿効果が達成できる。
【0082】
さらに防湿効果を向上させるためには、つぎの方法を実施することが好ましい。
【0083】
その1つの方法は、本発明の防湿コーティング組成物を電子・電気部品に塗布して防湿コーティング被膜を形成する方法であって、防湿コーティング組成物を塗布すべき電子・電気部品に、予めハンダ付け用のフラックスの除去処理工程を施すことを特徴とする電子・電気部品の防湿コーティング被膜の形成方法である。
【0084】
フラックスは、ロジン、合成樹脂などの有機材料であり、有機溶剤で洗浄することで容易に除去できる。除去用の溶剤としては、各種の汎用溶剤が使用できるほか、ハロゲン系溶剤も使用できる。
【0085】
特に水分の吸着や吸収を最小限に抑えるためには、非極性溶剤が好ましく、さらにはハロゲン系溶剤が好ましい。この洗浄には本発明で使用するHFCやHFEなども好適に利用できる。
【0086】
好ましい洗浄用溶剤としては、たとえばHCFC−225、HFC−365、HCFC141bなどがあげられる。
【0087】
洗浄温度は高すぎると装着された電子・電気部品に悪影響を及ぼすことがあるので、通常100℃以下、好ましくは60℃以下である。下限は溶剤の凝固点以上であり、溶解能が充分に発揮できる温度であればよいが、10℃程度が作業性の観点から好ましい。
【0088】
さらに別の方法は、本発明の防湿コーティング組成物を電子・電気部品に塗布して防湿コーティング被膜を形成する方法であって、防湿コーティング組成物を塗布する環境を相対湿度80%RH以下に保つことを特徴とする電子・電気部品の防湿コーティング被膜の形成方法である。
【0089】
この方法によれば、塗布環境を乾燥状態にしておくことにより、塗布作業時においても周囲からの水分の浸入を防止できる。
【0090】
周囲環境の相対湿度は小さい方が望ましいが、70%RH以下、好ましくは60%RH以下にしておくことにより、周囲環境の水分の影響を最小限に抑えることができる。
【0091】
さらに別の方法は、本発明の防湿コーティング組成物を電子・電気部品に塗布して防湿コーティング被膜を形成する方法であって、該防湿コーティング組成物を塗布した後に相対湿度80%RH以下の環境に保持することを特徴とする電子・電気部品の防湿コーティング被膜の形成方法である。
【0092】
この方法は、コーティング組成物を塗布したのち、被膜が形成される間の周囲環境を乾燥状態に維持することを目的とし、それにより、コーティング被膜に不可避的に水分が浸入することを防ぐことができ、さらなる防湿効果が達成できる。
【0093】
周囲環境の相対湿度は小さい方が望ましいが、70%RH以下、好ましくは60%RH以下にしておくことにより、周囲環境の水分の影響を最小限に抑えることができる。
【0094】
以上の形成方法を吸水率の制御に加えて少なくとも1つ実施することにより、本発明の防湿効果は向上する。好ましくは複数の方法、特に好ましくはすべての方法を実施することにより、より一層防湿効果が持続できる。
【実施例】
【0095】
つぎに本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0096】
本発明および以下の実施例で採用している試験法および測定法はつぎのとおりである。
(1)溶剤溶解性
25℃の溶剤100gに樹脂1gを投入し、充分に攪拌した後10分間静置し、液の状態を目視で観察する。沈殿が生じない場合を「溶解」とする。若干の白濁状態であっても、明確に沈殿が生じない場合は「溶解」に分類する。
【0097】
(2)引火性
JIS K−2265に規定されている試験法に従って引火点を測定する。引火がない場合を「なし」、引火がある場合を「あり」とする。
【0098】
(3)液安定性
コーティング組成物を5℃にて24時間静置したのちの液の状態を目視で観察する。固形物が生じている場合を「固形状」、液状を維持している場合を「液状」とする。液状を維持している方が、実用上の取り扱い性が容易である。
【0099】
(4)乾燥性
コーティング組成物にアルミ板を30秒間浸漬し、引き上げた後、20℃の環境下に水平に保ち、表面に指を載せ、ベトつかなくなるまでの時間を測定する。
【0100】
(5)表面硬度
コーティング組成物をアルミニウム板に乾燥膜厚が約30μmになるように刷け塗り法で塗布し、20℃にて24時間乾燥して試験片を作製する。この試験片についてJIS K−5400に従って測定する。
【0101】
(6)電子部品樹脂膨潤性
ニチコン(株)製コンデンサー(VR(M)220μF:100V耐圧)を各種コーティング組成物に浸漬し30分後外観変化を目視で確認する。外観変化のあるものを「あり」ないものを「なし」とする。
【0102】
(7)透湿性
コーティング組成物をキャスト法にて成膜し、乾燥膜厚が約70μmのフィルムを作製する。このフィルムについて、JIS Z−0208に従って40℃、90%RHの環境で透湿度(g/m2・24h)を測定する。
【0103】
(8)温冷サイクル耐性
コーティング組成物をクシ型電極(材質:CEM3、板厚:1.6mm、銅箔厚:18μm、パターン幅:0.3mm)を取り付けたガラス繊維補強エポキシ樹脂板に乾燥膜厚が約30μmになるように刷け塗り法で塗布し20℃にて24時間放置して乾燥し、試験片を作製する。この試験片を−40℃の冷凍庫内で30分間保持した後直ちに80℃の乾燥機内で30分間保持する。この冷却−加温サイクルを400回連続して行なった後に、コーティング被膜の状態(クラックの有無、剥離の有無)を目視で観察する。
【0104】
(9)防湿性
コーティング組成物をクシ型電極(材質:CEM3、板厚:1.6mm、銅箔厚:18μm、パターン幅:0.3mm)を取り付けたガラス繊維補強エポキシ樹脂板に乾燥膜厚が約30μmになるように刷け塗り法で塗布し20℃にて24時間放置して乾燥し、試験片を作製する。この試験片の表面抵抗(初期抵抗)を電気抵抗測定機にて測定する。ついで、試験片を85℃で85%RHに維持された恒温恒湿槽に1000時間入れた後、その表面抵抗(加湿試験後)を同じ方法で測定する。
【0105】
(10)耐候性
コーティング組成物をコンクリート板に乾燥膜厚が約30μmになるように刷け塗り法で塗布し、20℃にて24時間乾燥して試験片を作製する。この試験片のコーティング被膜側に0.1gの水滴を滴下し、10分間放置し、コンクリート板の表面の色の変化を調べる(水が滲み込むとコンクリートの表面が変色する)。ついで、試験片に対してJIS K5400で規定する耐候性試験機(サンシャインウェザオメータ)により耐候性試験を1000時間行なった後、上記と同様にして水の滲込み試験を行なう。
【0106】
(11)耐塩水噴霧性
コーティング組成物をクシ型電極(材質:CEM3、板厚:1.6mm、銅箔厚:18μm、パターン幅:0.3mm)を取り付けたガラス繊維補強エポキシ樹脂板に乾燥膜厚が約30μmになるように刷け塗り法で塗布し、20℃にて24時間放置して乾燥し、試験片を作製する。この試験片を塩水噴霧試験機(スガ試験機製の複合サイクル試験機ISO-3-CY・R)で塩水噴霧(35℃、湿度98%RH)を2時間、熱風乾燥(70℃)を2時間、湿潤試験(50℃、湿度98%RH)を2時間というサイクルで100時間試験を行い、クシ型基板銅線配線のさびの発生を目視確認する。判定はつぎの基準で行なう。
5:さびの発生が銅線の面積に対し0-5%
4:さびの発生が銅線の面積に対し5−15%
3:さびの発生が銅線の面積に対し16-35%
2:さびの発生が銅線の面積に対し36−60%
1:さびの発生が銅線の面積に対し61-100%
【0107】
(12)吸水率の測定
JIS C−6481に順じ、つぎの式により、吸水率を算出する。
吸水率(%)
={(試験後の基板重量−試験前の基板重量)/試験前の基板重量}×100
【0108】
実施例1(溶剤溶解性)
表1に示す樹脂の同表に示す溶剤に対する溶解性を調べた。結果を表1に示す。
【0109】
【表1】

(樹脂)
樹脂1:VdF/TFE/CTFE(=75/15/10モル比)共重合体
樹脂2:VdF/TFE/CTFE(=80/10/10モル比)共重合体
樹脂3:VdF/TFE(=80/20モル比)共重合体
樹脂4:VdF/HFP(=78/22モル比)共重合体
樹脂5:VdF/TFE/HFP(=77/17/6モル比)共重合体
樹脂6:VdF/TFE/HFP(=60/20/20モル比)共重合体
樹脂7:樹脂1+ポリメチルメタクリレート(PMMA)(=80+20質量部)ブレンド物
樹脂8:樹脂1+メチルメタクリレート(MMA)/エチルアクリレート(=70/30質量%)共重合体のブレンド物(90/10質量比)
樹脂9:CH2=CHCOOC817(17FA)/シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)(=80/20モル比)共重合体
樹脂10:17FA/BMA(=70/30モル比)共重合体
樹脂11:PMMA
樹脂12:樹脂1+MMA/メタクリル酸共重合体(酸価=2mgKOH/g)のブレンド物(80/20質量比)
(溶剤)
溶剤A:1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365)
溶剤B:1,1,2,2,3,3,4−ペンタフルオロシクロペンタン
溶剤C:溶剤A+メタキシレンフルオライド(=95/5質量比)混合溶剤
溶剤D:溶剤A+溶剤B(=10/90質量比)混合溶剤
溶剤E:メチルイソブチルケトン(MIBK)
溶剤F:ジヒドロペンタフルオロプロパン(HCFC−225)
溶剤G:1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(CFC−113)
溶剤H:メタキシレンフルオライド
【0110】
実施例2
表2に示すコーティング組成物を調製し、各組成物について引火点および液安定性を調べた。結果を表2に示す。
【0111】
【表2】

【0112】
実施例3
実施例2で調製したコーティング組成物について、乾燥性、表面硬度、樹脂膨潤性、透湿性、温冷サイクル耐性、防湿性、耐候性および耐塩水性を調べた。結果を表3に示す。
【0113】
【表3】

【0114】
実施例4
添加剤としてシランカップリング剤を配合して、表4に示すコーティング組成物を調製し、各組成物について引火点および液安定性を調べた。結果を表4に示す。
【0115】
【表4】

【0116】
実施例5
実施例4で調製したコーティング組成物について、乾燥性、表面硬度、樹脂膨潤性、透湿性、温冷サイクル耐性、防湿性、耐候性および耐塩水性を調べた。結果を表5に示す。
【0117】
【表5】

【0118】
実施例6
実施例2の実験例2−1の防湿コーティング組成物を用いて、実装電子回路基板の防湿コーティングをつぎの方法で形成した。
【0119】
エアコンディショナーの制御用電子回路基板(ガラス繊維強化エポキシ樹脂基板)をHFC−365で洗浄して付着しているフラックスを除去し、50℃にて1時間乾燥した。乾燥後の回路基板の吸水率は0.09質量%であった。
【0120】
この回路基板を温度が15〜23℃で相対湿度が30〜50%RHの範囲に維持された作業室内で防湿コーティング組成物中に30秒間浸漬し、引き出した後、温度が15〜23℃で相対湿度が30〜50%RHの範囲に維持された乾燥室内にて24時間静置して、防湿コーティング被膜を有する電子回路基板を作製した。
【0121】
この防湿コーティング処理された電子回路基板について、温冷サイクル耐性、防湿性および耐候性を調べたところ、以下のとおりであった。
温冷サイクル耐性:
クラックおよび剥離ともになし。
耐候性:
初期:なし
1000時間後:なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂とフッ素系溶剤とからなり、該フッ素樹脂が1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン100gに1g以上溶解するフッ化ビニリデン系重合体を含み、かつ該フッ素系溶剤が不燃性であるコーティング組成物であって、電子・電気部品の防湿コーティング被膜の形成に使用するコーティング組成物。
【請求項2】
前記フッ素系溶剤が、炭素数2〜12のハイドロフルオロカーボンおよび/または炭素数3〜12のハイドロフルオロエーテルを含む請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記フッ素系溶剤が、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、2,3−ジヒドロデカフルオロペンタン、パーフルオロn−ブチルメチルエーテルおよびパーフルオロn−ブチルエチルエーテルよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む請求項1または2記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記フッ素樹脂が、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン100gに1g以上溶解するフッ化ビニリデン系重合体の単独、または該特定のフッ化ビニリデン系重合体と他の塗膜形成性樹脂のブレンド物である請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項5】
他の塗膜形成性樹脂がアクリル系樹脂である請求項4記載のコーティング組成物。
【請求項6】
さらにシランカップリング剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項7】
シランカップリング剤がアミノシランカップリング剤および/またはエポキシシランカップリング剤である請求項6記載のコーティング組成物。
【請求項8】
電気・電子部品が電子回路基板である請求項1〜7のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項9】
電子・電気部品が電子回路基板を内蔵する電子・電気部品である請求項1〜7のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載のコーティング組成物から形成された防湿コーティング被膜。
【請求項11】
請求項10記載の防湿コーティング被膜を有する電子回路基板。
【請求項12】
請求項10記載の防湿コーティング被膜を有し、電子回路基板を内蔵する電子・電気部品。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の防湿コーティング組成物を電子・電気部品に塗布して防湿コーティング被膜を形成する方法であって、吸水率が1質量%以下の電子・電気部品に該防湿コーティング組成物を塗布することを特徴とする電子・電気部品の防湿コーティング被膜の形成方法。

【公開番号】特開2006−307147(P2006−307147A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332020(P2005−332020)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】