説明

電子制御装置

【課題】負荷の駆動を制御すると共に、その制御が正常に行われない異常状態であるか否かを判定して、異常状態と判定した場合には負荷を強制的に所定の待避状態にさせるよう構成された電子制御装置において、異常状態との判定によって負荷を待避状態にさせた後は、その待避状態を確実に保持できるようにすることを目的とする。
【解決手段】第1判定回路10及び第2判定回路20のいずれも、マイコン2からの判定用データが不合格データならばそれぞれ閉塞信号をHレベルにセットする。これによりモータドライバ3への第3閉塞信号はHレベルにセットされ、モータ5は強制的に停止される。その後、マイコン2の異常によって意図しないリセットコマンドが受信されると、第1閉塞信号はLレベルにクリアされてしまうが、第2閉塞信号はHレベルのまま保持され、よって第3閉塞信号もHレベルのまま保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷の駆動を制御する電子制御装置に関し、特にその制御が正常に行われない異常状態であるか否かを判定可能に構成された電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の電子制御装置として、車両の内燃機関の吸気系に設けられたスロットル弁をモータにより駆動するいわゆる電子スロットルシステムにおける、モータの駆動を制御するものが知られている。
【0003】
この電子制御装置では、マイコンが、アクセルの操作量(踏み込み量)に応じてスロットル弁の目標開度を演算し、その目標開度に応じた制御信号をモータドライバへ出力することにより、モータを制御する。モータドライバは、マイコンからの制御信号に応じてモータを通電駆動し、これによりスロットル弁の開度が目標開度となるように制御される。
【0004】
ところで、電子スロットルシステムは、アクセルペダルとスロットル弁がアクセルワイヤを介して繋がれた従来の機械式スロットルとは異なり、スロットル弁の開度がマイコンにより制御されるため、何らかの原因でマイコンによる制御が正常に行われないような異常状態になるとモータを正常に制御できなくなり、延いてはスロットル弁の開度が正常に制御できなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、電子スロットルシステムにおける電子制御装置は、上記のようにマイコンがモータドライバを介してモータを制御するという構成を基本としつつ、更に、フェイルセーフのために、マイコンによるモータの制御(延いてはスロットル弁の制御)が正常に行われない異常状態であるか否かを判定する判定回路が設けられ、異常状態と判定された場合にはモータの駆動を強制的に停止させるように構成されることが一般的である(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0006】
このようなフェイルセーフ機能を備えた電子スロットルシステムの具体例を、図4に示す。図4に示す電子スロットルシステムは、車両における内燃機関の吸気通路7に設けられたスロットル弁6がモータ5により駆動(開閉)されるものであって、モータ5の駆動、延いてはスロットル弁6の駆動を制御する電子制御装置(以下「ECU」と称す)100を備えている。
【0007】
スロットル弁6は、図示しないリターンスプリングによって常に閉塞(閉弁)方向に付勢されており、モータ5への通電がなされずにその駆動が停止されている間は強制的に閉塞状態となる。なお、閉塞状態とは、従来の機械式スロットルにおいてアクセルペダルが操作されていないときの状態と同じであって、内燃機関の燃焼室へ供給可能な空気量が最も少なくなる状態である。
【0008】
ECU100は、モータ5の駆動を制御するマイコン102と、このマイコン102からの制御信号に従ってモータ5への通電を行うことによりモータ5を駆動するモータドライバ3と、マイコン102によるモータ5の制御が正常に行われない異常状態であるか否かを判定してその判定結果に応じた閉塞信号をモータドライバ3へ出力する判定IC103と、を備えている。
【0009】
マイコン102は、図示しないアクセルセンサからの信号に基づいてアクセルの操作量を検出し、その検出したアクセルの操作量に応じてスロットル弁6の目標開度を演算して、その目標開度に応じた制御信号をモータドライバ3へ出力する。更に、マイコン102は、判定IC103との間でデータ通信可能に構成されている。具体的には、マイコン102は、その動作開始後、後述するように、まずリセットコマンドを送信し、その後、予め決められた出力タイミングで所定の判定用データを送信する。
【0010】
判定IC103は、マイコン102との間でデータ通信を行うための通信インタフェース(IF)116と、この通信IF116にて受信された各種データに基づいて上記異常状態であるか否かの判定等を行う判定回路110とを備えている。また、判定回路110は、判定ブロック111と、立上りエッジ検出保持回路112と、OR回路114と、データフリップフロップ(以下「DFF」と言う)113と、を備えている。
【0011】
判定ブロック111は、マイコン102から受信された判定用データに基づいて異常状態であるか否かを判定し、判定用データが合格データ(即ち、異常状態ではなくマイコン102がモータ5を正常に制御できる状態であることを示すデータ)であればLレベルの判定信号を出力し、判定用データが不合格データ(即ち、異常状態であることを示すデータ)であればHレベルの判定信号を出力する。
【0012】
なお、異常状態とは、マイコン102そのものが異常である場合を示しているのはもちろんであるが、マイコン102は正常であっても、例えば図示しないアクセルセンサやスロットルセンサの異常など、マイコン102以外の何らかの原因によって、結果としてモータ5の制御を正常に行うことができない状態となっている場合も含む。
【0013】
また、判定ブロック111は、マイコン102からリセットコマンドを受信した場合にも判定信号をHレベルとする。更に、判定ブロック111は、車両のイグニションスイッチ(IGSW)がオンされて判定IC103への電源供給が開始されるとパワーオンリセットされるが、そのパワーオンリセット時にもHレベルの判定信号を出力する。
【0014】
立上りエッジ検出保持回路112は、判定ブロック111からの判定信号がLレベルからHレベルに立ち上がった時にその立ち上がりエッジを検出してHレベルの検出信号を出力する。そして、一旦Hレベルの検出信号を出力すると、その後判定ブロック111からの判定信号がLレベルに転じても検出信号をHレベルに保持する。但し、マイコン102からリセットコマンドを受信した場合は、検出信号はLレベルとなる。また、クリア端子112aには、通常はHレベルの信号が入力されるが、パワーオンリセット時にはLレベルの信号が入力され、これにより検出信号も強制的にLレベルとなる。
【0015】
OR回路114には、判定ブロック111からの判定信号と立上りエッジ検出保持回路112からの検出信号が入力され、これら両者の論理和がDFF113のデータ入力端子に入力される。
【0016】
DFF113は、一般によく知られたデータフリップフロップ回路であり、その出力が閉塞信号としてモータドライバ3へ出力される。DFF113は、プリセット端子113aを備えており、通常動作時はこのプリセット端子113aにはHレベルの信号が入力されるが、パワーオンリセット時にはLレベルの信号が入力され、これにより閉塞信号も強制的にHレベルとなる。
【0017】
そして、モータドライバ3は、判定回路110から入力される閉塞信号がLレベルの場合は、マイコン102からの制御信号に従ってモータ5への通電を行うが、閉塞信号がHレベルにセットされている間は、モータ5を強制的に待避状態に保持する。即ち、モータ5への通電を強制的に停止する。そのため、閉塞信号がHレベルにセットされている間は、マイコン102からの制御信号にかかわらず、スロットル弁6は強制的に閉塞状態にされる。
【0018】
このように構成されたECU100の動作例について、図5を用いて説明する。図5に示すように、時刻t1にてIGSWがオンされると、ECU100全体がパワーオンリセットされ、これにより、判定回路110内の判定ブロック111からの判定信号はHレベルになり、立上りエッジ検出保持回路112からの検出信号はLレベルになって、DFF113からの出力信号である閉塞信号はHレベルにセットされる。
【0019】
パワーオンリセットが解除されてECU100の動作が開始されると、マイコン102は、判定IC103に対し、まずリセットコマンドを送信する。マイコン102からのリセットコマンドが受信されると、時刻t2にてそのリセットコマンドが通信IF116から判定回路110へ入力される。更に、マイコン102は、リセットコマンドを送信した以後は、既述の通り、所定の出力タイミングで(例えば定期的に)判定用データを送信する。
【0020】
このとき、マイコン102等に異常がなくてモータ5の制御が正常に行われる状態である限り、判定IC103がマイコン102から受信する判定用データは合格データである。そのため、時刻t3でその判定用データが判定ブロック111に入力されると、判定ブロック111では合格データと判定され、判定ブロック111からの判定信号はLレベルとなって、そのLレベルの判定信号が立上りエッジ検出保持回路112及びOR回路114に入力される。そのため、DFF113の出力である閉塞信号はLレベルにクリアされ、マイコン102によるモータ5の駆動制御が可能な状態となる。
【0021】
なお、立上りエッジ検出保持回路112がパワーオンリセット時にLレベルの検出信号を出力するように構成されているのは一例であって、逆にパワーオンリセット時にはHレベルの検出信号を出力するように構成されたものであってもよい。このような構成であっても、時刻t2にてリセットコマンドが入力されることにより検出信号はLレベルにされるため、次に合格データが受信されると閉塞信号はLレベルにクリアされることとなる。
【0022】
一方、異常状態が発生したことによりマイコン102からの判定用データが不合格データとなって、その不合格データが判定ブロック111に入力されると(時刻t4)、判定ブロック111にて不合格データと判定され、判定ブロック111からの判定信号はLレベルからHレベルに立ち上がる。これにより、立上りエッジ検出保持回路112からの検出信号もHレベルとなり、DFF113から出力される閉塞信号はHレベルにセットされる。これにより、モータ5は強制的に待避状態とされ(即ち通電が停止され)、スロットル弁6は強制的に閉塞状態となる。
【0023】
このように閉塞信号がHレベルにセットされると、以後は、受信した判定用データが合格データであっても、閉塞信号のHレベル状態は保持される。即ち、時刻t5にて判定ブロック111に合格データが入力されると、判定ブロック111からの判定信号はLレベルとなるが、立上りエッジ検出保持回路112からの検出信号はHレベルのままであるため、DFF113への入力信号(OR回路114からの出力信号)もHレベルのままであり、よってDFF113からの閉塞信号もHレベルに保持されるのである。
【0024】
立上りエッジ検出保持回路112からの検出信号がLレベルになるのは、パワーオンリセット時か若しくはリセットコマンドが入力された場合である。しかし、IGSWがオンされてECU100が動作している間は、通常、パワーオンリセット解除後の最初のリセットコマンドを除き、マイコン102からリセットコマンドが送信されることはない。そのため、判定ブロック111からの判定信号が一旦Hレベルに立ち上がると、以後はたとえ合格データが受信されても閉塞信号はHレベルに保持されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2003−343326号公報
【特許文献2】特開2007−2760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、従来のECU100では、マイコン102からのリセットコマンド送信によって判定IC103からの閉塞信号をLレベルにクリア可能に構成されているが故に、次のような問題が生じる。
【0027】
上記の通り、IGSWがオンされてECU100が動作している間は、マイコン102からリセットコマンドが出力されるのはパワーオンリセット解除後の一回のみである(図5の時刻t2参照)。但し、ECU100に要求される仕様によっては、それ以外にも所定の条件下でリセットコマンドを送信するようにされることも考えられるが、基本的には、閉塞信号が一旦Hレベルにセットされた後は、少なくともIGSWがオンされている限りそのHレベル状態は保持される。
【0028】
しかし、不合格データの受信によって閉塞信号がHレベルにセットされた後、マイコン102に異常が生じて、リセットコマンドを送信してしまい且つその後に合格データを送信してしまうような異常状態に陥ると、判定IC103からの閉塞信号はLレベルにクリアされてしまう。
【0029】
図5を用いて具体的に説明すると、時刻t5で判定IC103内の判定回路110に合格データが入力された後、マイコン102に異常が生じて、本来送信されるはずのないリセットコマンドが送信されてしまうと、判定ブロック111からの判定信号がHレベルになると共に立上りエッジ検出保持回路112からの検出信号はLレベルになってしまう(時刻t6)。つまり、検出信号のHレベル保持状態がクリアされてしまう。
【0030】
そのため、その後マイコン102から判定用データとして合格データが送信されてしまうと、判定ブロック111からの判定信号はLレベルとなり、これによりDFF113から出力される閉塞信号はLレベルにクリアされて、モータ5の待避状態(非通電状態)は解除され、スロットル弁6の強制閉塞状態は解除されてしまう(時刻t7)。
【0031】
つまり、マイコン102が異常状態であるにも拘わらず、閉塞信号がLレベルにクリアされ、その異常状態のマイコン102からの制御信号によってモータ5が駆動されることになる。そのため、内燃機関への吸気量を適正に制御できなくなるおそれがある。
【0032】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、負荷の駆動を制御すると共に、その制御が正常に行われない異常状態であるか否かを判定して、異常状態と判定した場合には負荷を強制的に所定の待避状態にさせるよう構成された電子制御装置において、異常状態との判定によって負荷を待避状態にさせた後は、その待避状態を確実に保持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、負荷の駆動を制御すると共に予め決められた出力タイミング毎に所定の判定用データを出力する制御手段と、この制御手段から出力された判定用データに基づいて、制御手段が負荷の駆動を正常に制御できない異常状態であるか否かを判定する第1異常判定を行い、その第1異常判定により異常状態と判定された場合には負荷を予め決められた待避状態に強制的に保持させるための強制待避信号を出力する第1異常判定手段と、を備えた電子制御装置であり、制御手段は、第1異常判定手段からの強制待避信号の出力を停止させるための所定の解除動作を行うことが可能に構成され、第1異常判定手段は、強制待避信号の出力後は、その出力後に行う第1異常判定の結果に拘わらず強制待避信号の出力を継続する一方、制御手段により解除動作がなされた場合には強制待避信号の出力を停止するよう構成されており、少なくとも第1異常判定手段から強制待避信号が出力されている間は、制御手段による制御内容に関係なく負荷を強制的に待避状態に保持させるよう構成されている。
【0034】
そして、本発明(請求項1)では更に、第1異常判定手段とは別に設けられた第2異常判定手段を備えている。この第2異常判定手段は、制御手段が負荷の駆動を正常に制御できない異常状態であるか否かを判定する第2異常判定を行い、その第2異常判定により異常状態と判定された場合には強制待避信号を出力し、その強制待避信号の出力後は、その出力後に行う第2異常判定の結果に拘わらず強制待避信号の出力を継続すると共に、制御手段による解除動作がなされても強制待避信号の出力を継続する。
【0035】
そして、当該電子制御装置は、記第1異常判定手段及び第2異常判定手段のうち少なくとも何れか一方から強制待避信号が出力されている間は、制御手段による制御内容に関係なく負荷を強制的に待避状態に保持させるよう構成されている。
【0036】
このように構成された電子制御装置では、第1異常判定手段が第1異常判定を行い、異常状態と判定された場合には強制待避信号を出力して負荷を強制的に待避状態に保持させる。そして、一旦待避状態に保持させた後は、その後たとえ第1異常判定によって異常状態ではないとの判定がなされたとしても、強制待避信号の出力は継続する。
【0037】
第1異常判定手段からの強制待避信号は、制御手段による解除動作によってその出力を停止させることが可能であるものの、その出力後は、たとえ第1異常判定によって異常状態ではないとの判定がなされたとしてもその出力は継続される。
【0038】
しかし、制御手段による解除動作によって第1異常判定手段からの強制待避信号の出力を停止させることが可能に構成されているが故に、その強制待避信号の出力後、制御手段に異常が生じて本来行うべきでないタイミングで解除動作が行われてしまうと、継続されるべき強制待避信号の出力がその異常な解除動作によって停止されてしまう。
【0039】
そこで本発明の電子制御装置は、第1異常判定手段とは別に、第2異常判定手段を備えている。この第2異常判定手段は、異常状態であると判定した場合に強制待避信号を出力するという点では第1異常判定手段と同じであるが、強制待避信号を出力した後は制御手段による解除動作がなされてもその出力を継続するという点で、第1異常判定手段とは異なる。
【0040】
このような構成により、仮に、各異常判定手段からそれぞれ強制待避信号が出力されているときに制御手段の異常によって解除動作が行われてしまったとしても、第1異常判定手段からの強制待避信号は停止されるものの、第2異常判定手段からの強制待避信号の出力は継続され、負荷の待避状態も継続される。
【0041】
従って、請求項1に記載の電子制御装置によれば、異常状態と判断されて各異常判定手段から強制待避信号が出力された後は、制御手段に異常が生じても少なくとも第2異常判定手段からの強制待避信号の出力は継続されるため、負荷を確実に待避状態に保持させることができる。
【0042】
次に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子制御装置であって、第1異常判定手段は、当該第1異常判定手段へ動作用電源が供給されて動作を開始したときには強制待避信号を出力し、制御手段は、第1異常判定手段の動作開始後、所定の解除タイミングにて解除動作を行う。
【0043】
即ち、第1異常判定手段は、その動作を開始したときは、第1異常判定を行う前にまず強制待避信号を出力して、負荷を待避状態に保持させる。これは、動作開始直後に制御手段の異常等によって負荷の制御が異常になされてしまうのを未然に防ぐためである。この動作開始時の強制待避信号は、制御手段から解除動作がなされることによって停止され、以後は異常状態と判定されない限り制御手段によるモータの制御がなされることとなる。
【0044】
従って、請求項2に記載の電子制御装置によれば、電源供給により動作が開始された後、解除タイミングにて制御手段により解除動作がなされるまでの間は、負荷は強制的に待避状態に保持されることとなるため、動作開始直後に制御手段に異常等が発生してもそれによって負荷の駆動に悪影響が生じるのを防ぐことができる。
【0045】
次に、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電子制御装置であって、第2異常判定手段は、制御手段から出力された判定用データに基づいて第2異常判定を行う。
【0046】
即ち、第2異常判定手段が何に基づいて第2異常判定を行うかは適宜設定することができるが、第1異常判定手段と同じく制御手段からの判定用データに基づいて第2異常判定を行うのである。換言すれば、制御手段から出力される同じ判定用データに対して各異常判定手段がそれぞれ異常判定を行うのである。
【0047】
そのため、各異常判定手段による異常判定がそれぞれ異なる方法で行われる場合に比べ、各異常判定手段による異常判定をより簡易的且つ効率的に実現することが可能となる。
次に、請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子制御装置であって、制御手段は、第1異常判定手段及び第2異常判定手段の何れかから強制待避信号が出力されているか否かを監視可能に構成されている。
【0048】
このように構成された請求項4に記載の電子制御装置によれば、制御手段は、強制待避信号が出力されているか否かに応じて適宜必要な処理を行うことができる。例えば、強制待避信号が出力されている場合には制御手段自身も負荷を待避状態に保持させるよう制御するようにすることができ、その場合、異常状態が発生したときのフェイルセーフ機能をより高めることが可能となる。
【0049】
次に、請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の電子制御装置であって、第1異常判定手段及び第2異常判定手段は、1つの半導体集積回路内に構成されており、この半導体集積回路は、第1異常判定手段及び第2異常判定手段のうち少なくとも何れか一方から強制待避信号が出力されている場合にその旨を示す強制待避指令を出力する強制待避指令出力手段と、この強制待避指令出力手段からの強制待避指令を当該半導体集積回路の外部へ出力する強制待避指令出力端子と、を備えている。そして、当該電子制御装置は、強制待避指令出力端子から強制待避指令が出力されている間は、制御手段による制御内容に関係なく負荷を強制的に待避状態に保持させる。
【0050】
このように構成された請求項5に記載の電子制御装置によれば、第1異常判定手段からの強制待避信号と第2異常判定手段からの強制待避信号をそれぞれ個別にみて負荷を待避状態に保持すべきかを判断する必要はなく、単に、強制待避指令出力手段からの強制待避指令に基づいて判断すれば済む。しかも、各異常判定手段からの強制待避信号をそれぞれ個別に半導体集積回路から出力させようとするとその出力端子も2つ必要となるが、本発明(請求項5)では強制待避指令の出力用に端子を1つ設ければ済むため、半導体集積回路の端子数を低減することも可能となる。
【0051】
次に、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電子制御装置であって、半導体集積回路は、制御手段と相互に通信を行うための第1通信端子を備え、この第1通信端子を介して制御手段からの判定用データを受信すると共に、強制待避指令出力手段からの強制待避指令を第1通信端子を介して制御手段へ送信できるよう構成されている。
【0052】
また、制御手段は、半導体集積回路と上記通信を行うための第2通信端子を備え、この第2通信端子を介して半導体集積回路へ判定用データを送信すると共に、半導体集積回路から送信された強制待避指令を第2通信端子を介して受信するよう構成されている。
【0053】
このように構成された請求項6に記載の電子制御装置によれば、制御手段から半導体集積回路への判定用データの送信と、半導体集積回路から制御手段への強制待避指令の送信が、それぞれ共通の通信端子を介して行われるため、双方の通信端子の数を低減することが可能となる。しかも、制御手段は第2通信端子を介して半導体集積回路からの強制待避指令を受信可能であるため、請求項4に記載の電子制御装置が有する機能、即ち各異常判定手段からの強制待避信号の出力監視をより簡易的且つ確実に実現できる。
【0054】
次に、請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の電子制御装置であって、制御手段は、解除動作として、所定の解除指令を出力する。このように、単に解除指令を出力することで第1異常判定手段からの強制待避信号の出力を停止させることができるようにすれば、制御手段は、必要に応じて強制待避信号の出力を迅速に停止させることができる。そのため、特に請求項2に記載の電子制御装置に対しては、動作開始後に強制待避信号が出力された後、解除タイミングにおいて迅速にその強制待避信号を停止させることができ、動作開始時の初期状態から通常動作へとより迅速に移行させることができる。
【0055】
次に、請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の電子制御装置であって、負荷は、内燃機関の吸気系に設けられたスロットル弁の駆動源であるモータである。また、制御手段による制御内容に従ってモータを駆動する駆動手段を備え、この駆動手段は、第1異常判定手段及び第2異常判定手段のうち少なくとも何れか一方から強制待避信号が出力されている間、制御手段による制御内容に関係なくモータの駆動を強制的に停止させることにより上記待避状態を実現する。
【0056】
このように構成された請求項8に記載の電子制御装置によれば、異常状態の発生によってモータの駆動が強制的に停止された後は、制御手段の異常により意図しない解除動作がなされたとしても、その待避状態は確実に保持されるため、スロットル弁を駆動するモータを制御する電子制御装置としての信頼性をより高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施形態の電子スロットルシステムの概略構成を表す構成図である。
【図2】実施形態の電子スロットルシステムの動作例を表すタイムチャートである。
【図3】実施形態の電子スロットルシステムにおいてマイコンが実行する閉塞信号監視処理を表すフローチャートである。
【図4】従来の電子スロットルシステムの概略構成を表す構成図である。
【図5】従来の電子スロットルシステムの動作例を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1に、本実施形態の電子スロットルシステムの概略構成を示す。本実施形態の電子スロットルシステムは、図4に示した従来の電子スロットルシステムと同様、車両における内燃機関の吸気通路7に設けられたスロットル弁6がモータ5により駆動(開閉)されるものであって、モータ5の駆動、延いてはスロットル弁6の駆動を制御するECU1を備えている。なお、図1の電子スロットルシステムにおいて、図4に示した従来の電子スロットルシステムと同じ構成要素には図4と同じ符号を付している。
【0059】
ECU1は、モータ5の駆動を制御するマイコン2と、このマイコン2からの制御信号に従ってモータ5への通電を行うことによりモータ5を駆動するモータドライバ3と、マイコン2によるモータ5の制御が正常に行われない異常状態であるか否かを判定してその判定結果に応じた閉塞信号(詳しくは第3閉塞信号)をモータドライバ3へ出力する判定IC4と、を備えている。
【0060】
マイコン2は、図示しないアクセルセンサからの信号に基づいてアクセルの操作量を検出し、その検出したアクセルの操作量に応じてスロットル弁6の目標開度を演算して、その目標開度に応じた制御信号をモータドライバ3へ出力する。
【0061】
更に、マイコン2は、判定IC4との間でデータ通信可能に構成されている。具体的には、マイコン2は、その動作開始後、後述するように、まずリセットコマンドを送信し、その後、予め決められた出力タイミングで所定の判定用データを送信する。また、後述するように、判定IC4から送信されてくる第3閉塞信号の受信も行う。
【0062】
マイコン2による、リセットコマンド及び判定用データの送信と第3閉塞信号の受信は、いずれも同じマイコン側通信端子2bを介して行われる。なお、マイコン2には、制御信号を出力するための制御信号出力端子2aも備えられている。
【0063】
判定IC4は、1つの半導体集積回路として構成されており、マイコン2との間でデータ通信を行うための通信インタフェース(IF)16と、この通信IF16にて受信された各種データに基づいて上記異常状態であるか否かの判定等を行う2つの判定回路(第1判定回路10及び第2判定回路20)と、第1判定回路10から出力された第1閉塞信号と第2判定回路から出力された第2閉塞信号の論理和を演算してその演算結果である第3閉塞信号を出力するOR回路18と、を備えている。なお、マイコン2から送信されてくるデータのうち、判定用データは、第1判定回路10と第2判定回路20の双方に入力されるが、リセットコマンドは、第1判定回路10にのみ入力される。
【0064】
第1判定回路10は、第1判定ブロック11と、第1マルチプレクサ(以下「第1MUX」と言う)12と、AND回路14と、第1DFF13と、を備えている。
第1判定ブロック11は、マイコン2から受信された判定用データに基づいて異常状態であるか否かを判定し、判定用データが合格データであればLレベルの判定信号を出力し、判定用データが不合格データであればHレベルの判定信号を出力する。つまり、判定用データに基づく判定結果に対する判定信号の出力は、従来のECU100における判定ブロック111と同じである。
【0065】
なお、判定用データとは、必ずしも判定IC4における異常状態の判定のみを目的としたデータである必要はなく、結果として判定IC4にて異常状態の判定が可能である限り、その具体的なデータの内容は限定されるものではない。
【0066】
また、第1判定ブロック11は、図示しない車両のイグニションスイッチ(IGSW)がオンされて判定IC4への電源供給が開始されるとパワーオンリセットされるが、そのパワーオンリセット時にもHレベルの判定信号を出力する。但し、マイコン2からリセットコマンドを受信した場合には判定信号をLレベルとするよう構成されている。
【0067】
第1MUX12は、第1判定ブロック11からの判定信号と、第1DFF13からの出力である第1閉塞信号が入力され、これら2つの信号のうち、判定信号によって定められる何れか一方がAND回路14へ出力される。具体的には、判定信号がLレベルの場合は、2つの入力信号のうち第1閉塞信号がAND回路14へ出力され、判定信号がHレベルの場合は当該判定信号がAND回路14へ出力される。
【0068】
AND回路14には、第1MUX12からの出力信号と、マイコン2からのリセットコマンドが入力される。但し、リセットコマンドについては負論理として入力される。このAND回路14では、マイコン2から受信されたリセットコマンド(但し論理が反転されたもの)と第1MUX12との論理積が演算され、その演算結果が第1DFF13のデータ入力端子に入力される。
【0069】
第1DFF13は、一般によく知られたデータフリップフロップ回路であり、その出力は、第1閉塞信号として、OR回路18へ出力されると共に、第1MUX12の入力端子に入力される。この第1DFF13は、プリセット端子13aを備えており、通常動作時はこのプリセット端子13aにはHレベルの信号が入力されるが、パワーオンリセット時にはLレベルの信号が入力され、これにより第1閉塞信号も強制的にHレベルとなる。
【0070】
一方、第2判定回路20は、第2判定ブロック21と、第2マルチプレクサ(以下「第2MUX」と言う)22と、第2DFF23と、を備えている。
第2判定ブロック21は、マイコン2から受信された判定用データに基づいて異常状態であるか否かを判定し、判定用データが合格データであればLレベルの判定信号を出力し、判定用データが不合格データであればHレベルの判定信号を出力する。つまり、判定用データに基づく判定結果に対する判定信号の出力は、第1判定回路10内の第1判定ブロック11と同じである。
【0071】
但し、第2判定ブロック21は、パワーオンリセット時にはLレベルの判定信号を出力する。また、既述の通りマイコン2からのリセットコマンドは入力されない。
第2MUX22は、第2判定ブロック21からの判定信号と、第2DFF23からの出力である第2閉塞信号が入力され、これら2つの信号のうち、判定信号によって定められる何れか一方が第2DFF23へ出力される。具体的には、判定信号がLレベルの場合は、2つの入力信号のうち第2閉塞信号が第2DFF23へ出力され、判定信号がHレベルの場合は当該判定信号が第2DFF23へ出力される。
【0072】
第2DFF23は、第1判定回路10内の第1DFF13と同じく一般によく知られたデータフリップフロップ回路であり、その出力は、第2閉塞信号として、OR回路18へ出力されると共に、第2MUX22の入力端子に入力される。但し、この第2DFF23は、クリア端子23aを備えており、通常動作時はこのクリア端子23aにはHレベルの信号が入力されるが、パワーオンリセット時にはLレベルの信号が入力され、これにより第2閉塞信号は強制的にLレベルとなる。
【0073】
そのため、第2判定回路20からの第2閉塞信号は、パワーオンリセット後、マイコン2からの判定用データが合格データである限りLレベルとなり、不合格データを受信した場合にはHレベルとなる。そして、一旦Hレベルになると、以後、合格データを受信しても、またリセットコマンドを受信したとしても、Hレベルが保持される。
【0074】
第1判定回路10からの第1閉塞信号、及び第2判定回路20からの第2閉塞信号は、OR回路18に入力され、その論理和が第3閉塞信号として、閉塞信号出力端子4bからモータドライバ3へ出力されると共に、通信IF16を介して判定IC側通信端子4aからマイコン2へも送信される。
【0075】
なお、判定IC4とマイコン2とのデータ通信は、判定IC4においてはいずれも同じ判定IC側通信端子4aを介して行われる。
このように構成された本実施形態のECU1の動作例について、図2を用いて説明する。図2に示すように、時刻t1にてIGSWがオンされると、ECU1全体がパワーオンリセットされる。
【0076】
このパワーオンリセットにより、第1判定回路10においては、第1判定ブロック11からの判定信号はHレベルになり、第1MUX12からの出力はHレベルとなる。また、第1DFF13からの出力信号である第1閉塞信号は、Hレベルにセットされる。
【0077】
また、第2判定回路20においては、パワーオンリセットによって、第2判定ブロック21からの判定信号はLレベルとなり、第2MUX22からの出力もLレベルとなり、第2DFF23からの出力信号である第2閉塞信号もLレベルになる。
【0078】
そのため、OR回路18には、Hレベルの第1閉塞信号とLレベルの第2閉塞信号が入力され、これにより第3閉塞信号はHレベルにセットされる。つまり、パワーオンリセット時には、第1判定回路10からの第1閉塞信号を無条件にHレベルにセットすることで、まずは第3閉塞信号をHレベルにセットして、スロットル弁6を強制的に閉塞状態とするのである。
【0079】
パワーオンリセットが解除されてECU1の動作が開始されると、マイコン2は、判定IC4に対し、所定の解除タイミングにてリセットコマンドを送信する。マイコン2からのリセットコマンドが受信されると、時刻t2にてそのリセットコマンドが通信IF16から各判定回路10,20へ入力される。
【0080】
このリセットコマンドにより、第1判定回路10では、第1判定ブロック11からの判定信号がLレベルとなる。また、このリセットコマンドはAND回路14に対して負論理で入力されることから、AND回路14の出力はLレベルとなり、よって第1DFF13の出力である第1閉塞信号はLレベルとなる。なお、第1閉塞信号がLレベルになると、第1MUX12からの出力もLレベルとなる。
【0081】
このように、パワーオンリセット解除後にマイコン2からリセットコマンドが受信されることにより、第1閉塞信号はLレベルにクリアされるため、OR回路18からの出力である第3閉塞信号も、Lレベルにクリアされる。よって、以後はマイコン2がモータドライバを3を介してモータ5の駆動を制御でき、延いてはスロットル弁6の駆動(開閉)を制御できるようになる。
【0082】
マイコン2は、リセットコマンドを送信した以後は、所定の出力タイミングで(例えば定期的に)判定用データを送信する。
このとき、マイコン2等に異常がなくてモータ5の制御が正常に行われる状態である限り、判定IC4がマイコン2から受信する判定用データは合格データである。そのため、時刻t3でその判定用データが各判定ブロック11,21に入力されると、各判定ブロック11,21ではいずれも合格データと判定され、各判定ブロック11,21からの判定信号はLレベルのままとなって、各閉塞信号もそれぞれLレベルのまま保持される。
【0083】
一方、異常状態が発生したことによりマイコン2からの判定用データが不合格データとなって、その不合格データが各判定ブロック11,21に入力されると(時刻t4)、各判定ブロック11,21にていずれも不合格データと判定され、各判定ブロック11,21からの判定信号はいずれもHレベルとなる。
【0084】
これにより、第1判定回路10では、第1MUX12からの出力がHレベルとなり、AND回路14の出力がHレベルとなって、第1DFF13からの出力である第1閉塞信号もHレベルにセットされる。なお、第1MUX12にもこのHレベルの第1閉塞信号が入力されることとなる。
【0085】
また、第2判定回路20では、第2MUX22からの出力がHレベルとなり、よって第2DFF23からの出力である第2閉塞信号もHレベルにセットされる。なお、第2MUX22にもこのHレベルの第2閉塞信号が入力されることとなる。
【0086】
そのため、OR回路18には、いずれもHレベルの閉塞信号(第1閉塞信号及び第2閉塞信号)が入力され、よってその出力である第3閉塞信号もHレベルにセットされる。これにより、モータ5は強制的に待避状態とされ(即ちモータドライバ3からモータ5への通電が強制的に停止され)、スロットル弁6は強制的に閉塞状態となる。
【0087】
このように各閉塞信号がHレベルにセットされると、以後は、マイコン2から受信した判定用データが合格データであっても、各閉塞信号のHレベル状態は保持される。即ち、時刻t5にて各判定回路10にマイコン2からの合格データが入力された場合、第1判定回路10では、第1判定ブロック11からの判定信号はLレベルに転じるが、第1DFF13からのHレベルの第1閉塞信号は第1MUX12にも入力されていることから、そのHレベルの第1閉塞信号は第1MUX12を介してラッチされ、引き続きHレベルの状態が維持される。
【0088】
第2判定回路20についても同様であり、合格データの受信によって第2判定ブロック21からの判定信号はLレベルに転じるが、第2DFF23からのHレベルの第2閉塞信号は第2MUX22にも入力されていることから、そのHレベルの第2閉塞信号は第2MUX22を介してラッチされ、引き続きHレベルの状態が保持される。そのため、OR回路18からの出力である第3閉塞信号もHレベルの状態が保持される。
【0089】
つまり、不合格データの受信によって各閉塞信号が一旦Hレベルにセットされた後は、以後、たとえ合格データが受信されても、各閉塞信号のHレベルセット状態は保持されるのである。
【0090】
ここで、マイコン2は、既述の通り判定IC4へリセットコマンドを送信可能に構成されている。このリセットコマンドの送信は、IGSWがオンされている間は、基本的にはパワーオンリセット解除後の一回のみであり、その後はリセットコマンドが送信されることはない。
【0091】
しかし、マイコン2に異常が生じて、本来リセットコマンドを送信すべきでないタイミングでリセットコマンドを送信してしまうような異常状態に陥るおそれがある。そのような異常状態が発生した場合のECU1の動作について、引き続き図2を用いて説明する。
【0092】
マイコン2から合格データが受信された時刻t5の後、マイコン2に異常が生じたことによってリセットコマンドが送信されてしまい、そのリセットコマンドが第1判定回路10に入力されると(時刻t6)、AND回路14の出力がLレベルとなり、第1DFF13の出力である第1閉塞信号がLレベルにクリアされてしまう。なお、第1閉塞信号がLレベルにクリアされることにより、第1MUX12の出力もLレベルとなる。
【0093】
これに対し、第2判定回路20では、その動作がリセットコマンドに依存しないことから、マイコン2の異常によって意図せずリセットコマンドが送信されてしまったとしても、第2閉塞信号のHレベル状態は何ら変化しない。加えて、その後合格データのみが送信されてしまうという異常状態が発生したとしても(時刻t7以降)、既述の通り、一旦Hレベルにセットされた後はいかに合格データが受信されようともそのHレベルセット状態は保持される。
【0094】
そのため、OR回路18からの第3閉塞信号はHレベルの状態に保持され、モータ5の待避状態、更にはスロットル弁6の強制閉塞状態は、引き続き保持されることとなる。
ところで、OR回路18からの第3閉塞信号は、通信IF16を介してマイコン2にも送信され、マイコン2にてその第3閉塞信号の監視も行われる。そこで、マイコン2により実行される、第3閉塞信号に基づく処理を含む閉塞信号監視処理について、図3を用いて説明する。
【0095】
図3は、マイコン2にて実行される各種の制御処理のうち、判定IC4とのデータ通信に関わる一連の閉塞信号監視処理を示すフローチャートである。マイコン2は、IGSWのオンにより電源供給されてその動作を開始すると、この閉塞信号監視処理を実行する。
【0096】
この閉塞信号監視処理が開始されると、まずS110にて、リセットコマンドが送信される。このリセットコマンドは、図2で説明したように、パワーオンリセット解除後の所定の解除タイミングにてマイコン2が最初に判定IC4へ送信するものである。
【0097】
そして、リセットコマンドの送信後は、S120にて判定用データが送信され、続くS130にて、判定IC4からの第3閉塞信号が受信される。そして、S140にて、その受信された第3閉塞信号がHレベルにセットされているか否か、即ちスロットル弁6が強制閉塞状態にされているか否かが判断される。
【0098】
S140の判断にて、第3閉塞信号がLレベルならば、S120に戻る。つまり、第3閉塞信号がLレベルである限り、S120〜S140の処理が繰り返される。
一方、S140の判断にて、第3閉塞信号がHレベルならば、S150にて、モータ5の駆動を停止させるための駆動停止処理が行われる。具体的には、モータドライバ3からモータ5への通電を停止させるための制御信号を出力する。
【0099】
判定IC4からの第3閉塞信号がHレベルにセットされている場合は、それによってモータドライバ3からモータ5への通電は強制的に停止され、モータは待避状態(回転停止状態)となるため、これに加えてさらにマイコン2が駆動停止処理を行う必要は必ずしもない。そもそも、マイコン2自身の異常によって第3閉塞信号がHレベルにセットされている場合は、マイコン2は図3の閉塞信号監視処理自体を正常に実行できない状態になっている可能性もある。
【0100】
しかし、第3閉塞信号がHレベルにセットされるのは必ずしもマイコン2自身の異常に限るものではなく、マイコン2から駆動停止信号を出力できるのであれば、第3閉塞信号のHレベルセットによる直接的且つ強制的なモータ通電停止に加えて、マイコン2自身からも駆動停止信号を出力させるのがより好ましい。
【0101】
そのため、本実施形態では、判定IC4からの第3閉塞信号がHレベルにセットされた場合には、マイコン2自身もモータドライバ3によるモータ5への通電を停止するよう制御することで、モータ5の強制的な待避状態への移行、延いてはスロットル弁6の強制的な閉塞状態への移行がより確実になされるようにしているのである。
【0102】
以上説明したように、本実施形態のECU1は、異常状態であるか否かの判定を行う判定回路として、第1判定回路10と第2判定回路20の2つを並列的に備えており、何れか一方からの閉塞信号がHレベルにセットされている限り、モータドライバ3への第3閉塞信号もHレベルにセットされて、スロットル弁6は強制閉塞状態が保持される。
【0103】
そして、2つの判定回路10,20のうち一方の第1判定回路10は、システムの仕様上、マイコン2からのリセットコマンドによって第1閉塞信号をLレベルにクリアできるように構成されている。これに対し、他方の第2判定回路20は、第2閉塞信号が一旦Hレベルにセットされた後は、その後合格データが受信された場合はもちろん、マイコン2からリセットコマンドが受信された場合であっても、Hレベルセット状態を保持する。
【0104】
そのため、本実施形態のECU1によれば、マイコン2が、本来送信すべきでないタイミングでリセットコマンドを送信してしまうような異常状態や、更にその後合格データのみを送信してしまうような異常状態に陥ったとしても、少なくとも第2判定回路20からの第2閉塞信号はHレベルの状態が継続されるため、モータ5を確実に強制停止させることができ、スロットル弁6を確実に強制閉塞状態にすることができる。
【0105】
そのため、電子スロットルシステムを構成するECU1として、その信頼性やフェイルセーフ機能の充実度をより高めることが可能となる。
また、IGSWのオンによるパワーオンリセット時から、マイコン2からのリセットコマンドが受信されるまでは(図2の時刻t1〜t2)、第1判定回路10からの第1閉塞信号はHレベルにセットされ、少なくともその間はモータ5は強制的に停止される。そのため、IGSWオン直後に異常状態になったとしても(或いはIGSWオン直後に既に異常状態となっていたとしても)、モータ5の駆動状態(延いてはスロットル弁6の駆動状態)が異常な状態となってしまうのを防止できる。
【0106】
また、各判定回路10,20による異常状態であるか否かの判定は、いずれも、マイコン2から受信される同じ判定用データを基に行われる。そのため、各判定回路10,20による上記判定がそれぞれ異なる方法で行われる場合に比べ、各判定回路10,20による上記判定をより簡易的且つ効率的に実現することが可能となる。
【0107】
また、判定IC4からの第3閉塞信号は、マイコン2にも送信され、マイコン2は、その第3閉塞信号に基づいて自らモータドライバ3を強制的に待避状態(非通電状態)に制御することができる。そのため、異常状態の発生に対するフェイルセーフ機能のより優れたECU1の提供が可能となる。
【0108】
また、判定IC4は、その内部にOR回路18を備え、各判定回路10.20からの各閉塞信号の論理和が、第3閉塞信号として閉塞信号出力端子4bから出力されるよう構成されている。そのため、第1閉塞信号と第2閉塞信号を個別に判定IC4から出力する構成に比べ、判定IC4の端子数を低減することが可能となる。
【0109】
更に加えて、判定IC4からマイコン2への第3閉塞信号の出力も、それ専用の端子を設けることなく、マイコン2と判定IC4とのデータ通信用の端子を介してマイコン2へ送信するようにしている。そのため、判定IC4の端子数を更に低減することが可能となる。
【0110】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素の対応関係を明らかにする。本実施形態において、マイコン2は本発明の制御手段に相当し、第1判定回路10は本発明の第1異常判定手段に相当し、第2判定回路20は本発明の第2異常判定手段に相当し、各判定回路10,20からの各閉塞信号は本発明の強制待避信号に相当し、OR回路18は本発明の強制待避指令出力手段に相当し、OR回路18からの第3閉塞信号は本発明の強制待避指令に相当し、閉塞信号出力端子4bは本発明の強制待避指令出力端子に相当し、判定IC側通信端子4aは本発明の第1通信端子に相当し、マイコン側通信端子2bは本発明の第2通信端子に相当し、リセットコマンドは本発明の解除指令に相当する。
【0111】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0112】
例えば、図1に示した第1判定回路10及び第2判定回路20の回路構成はあくまでも一例であって、それぞれ同様の動作をする回路である限り、その具体的回路構成は特に限定されるものではない。
【0113】
つまり、第1判定回路10としては、少なくとも、マイコン2からの判定用データに基づいて異常状態であるかの判定が可能であると共に、異常状態と判定した場合には第1閉塞信号をHレベルにセットして、以後は合格データを受信してもそのHレベル状態を保持でき、更に、マイコン2からリセットコマンドが受信された場合には、その受信をもってすぐに或いはその後合格データを受信した場合に、第1閉塞信号をLレベルにクリアできるような構成であれば、どのような回路構成であってもよい。
【0114】
第2判定回路20としては、少なくとも、マイコン2からの判定用データに基づいて異常状態であるかの判定が可能であると共に、異常状態と判定した場合には第2閉塞信号をHレベルにセットして、以後は合格データを受信してもそのHレベル状態を保持でき、更に、マイコン2からリセットコマンドが受信されても第2閉塞信号のHレベル状態を保持可能な構成であれば、どのような回路構成であってもよい。
【0115】
そのため、第1判定回路10としては、例えば、図4に示した従来のECU100における判定回路110を用いてもよい。
また、上記実施形態では、第1判定回路10及び第2判定回路20をそれぞれ1つ有するECU1について説明したが、これら両者はそれぞれ複数並列的に設けるようにしてもよい。
【0116】
また、第1判定回路10及び第2判定回路20の機能を、それぞれソフトウェアによって実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1,100…電子制御装置(ECU)、2,102…マイコン、2a…制御信号出力端子、2b…マイコン側通信端子、3…モータドライバ、4,103…判定IC、4a…判定IC側通信端子、4b…閉塞信号出力端子、5…モータ、6…スロットル弁、7…吸気通路、10…第1判定回路、11…第1判定ブロック、12…第1MUX、13…第1DFF、13a…プリセット端子、14…AND回路、16,116…通信IF、18,114…OR回路、20…第2判定回路、21…第2判定ブロック、22…第2MUX、23…第2DFF、23a…クリア端子、110…判定回路、111…判定ブロック、112…立上りエッジ検出保持回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷の駆動を制御すると共に予め決められた出力タイミング毎に所定の判定用データを出力する制御手段と、
前記制御手段から出力された前記判定用データに基づいて、該制御手段が前記負荷の駆動を正常に制御できない異常状態であるか否かを判定する第1異常判定を行い、該第1異常判定により前記異常状態と判定された場合には前記負荷を予め決められた待避状態に強制的に保持させるための強制待避信号を出力する第1異常判定手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1異常判定手段からの前記強制待避信号の出力を停止させるための所定の解除動作を行うことが可能に構成されており、
前記第1異常判定手段は、前記強制待避信号の出力後は、該出力後に行う前記第1異常判定の結果に拘わらず該強制待避信号の出力を継続する一方、前記制御手段により前記解除動作がなされた場合には前記強制待避信号の出力を停止するよう構成されており、
少なくとも前記第1異常判定手段から前記強制待避信号が出力されている間は、前記制御手段による制御内容に関係なく前記負荷を強制的に前記待避状態に保持させるよう構成された電子制御装置において、
前記第1異常判定手段とは別に設けられ、前記異常状態であるか否かを判定する第2異常判定を行い、該第2異常判定により前記異常状態と判定された場合には前記強制待避信号を出力し、該強制待避信号の出力後は、該出力後に行う前記第2異常判定の結果に拘わらず該強制待避信号の出力を継続すると共に、前記制御手段による前記解除動作がなされても該強制待避信号の出力を継続するよう構成された第2異常判定手段を備え、
前記第1異常判定手段及び前記第2異常判定手段のうち少なくとも何れか一方から前記強制待避信号が出力されている間は、前記制御手段による制御内容に関係なく前記負荷を強制的に前記待避状態に保持させるよう構成されている
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子制御装置であって、
前記第1異常判定手段は、当該第1異常判定手段へ動作用電源が供給されて動作を開始したときには前記強制待避信号を出力し、
前記制御手段は、前記第1異常判定手段の動作開始後、所定の解除タイミングにて前記解除動作を行う
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子制御装置であって、
前記第2異常判定手段は、前記制御手段から出力された前記判定用データに基づいて前記第2異常判定を行う
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子制御装置であって、
前記制御手段は、前記第1異常判定手段及び前記第2異常判定手段の何れかから前記強制待避信号が出力されているか否かを監視可能に構成されている
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の電子制御装置であって、
前記第1異常判定手段及び前記第2異常判定手段は、1つの半導体集積回路内に構成されており、
前記半導体集積回路は、
前記第1異常判定手段及び前記第2異常判定手段のうち少なくとも何れか一方から前記強制待避信号が出力されている場合にその旨を示す強制待避指令を出力する強制待避指令出力手段と、
前記強制待避指令出力手段からの前記強制待避指令を当該半導体集積回路の外部へ出力する強制待避指令出力端子と、
を備え、
前記強制待避指令出力端子から前記強制待避指令が出力されている間は、前記制御手段による制御内容に関係なく前記負荷を強制的に前記待避状態に保持させる
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電子制御装置であって、
前記半導体集積回路は、前記制御手段と相互に通信を行うための第1通信端子を備え、該第1通信端子を介して前記制御手段からの前記判定用データを受信すると共に、前記強制待避指令出力手段からの前記強制待避指令を前記第1通信端子を介して前記制御手段へ送信できるよう構成されており、
前記制御手段は、前記半導体集積回路と前記通信を行うための第2通信端子を備え、該第2通信端子を介して前記半導体集積回路へ前記判定用データを送信すると共に、前記半導体集積回路から送信された前記強制待避指令を前記第2通信端子を介して受信するよう構成されている
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の電子制御装置であって、
前記制御手段は、前記解除動作として、所定の解除指令を出力する
ことを特徴とする電子制御装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の電子制御装置であって、
前記負荷は、内燃機関の吸気系に設けられたスロットル弁の駆動源であるモータであり、
前記制御手段による制御内容に従って前記モータを駆動する駆動手段を備え、
前記駆動手段は、第1異常判定手段及び前記第2異常判定手段のうち少なくとも何れか一方から前記強制待避信号が出力されている間、前記制御手段による制御内容に関係なく前記モータの駆動を強制的に停止させることにより前記待避状態を実現する
ことを特徴とする電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−127546(P2011−127546A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287939(P2009−287939)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】