説明

電子装置及びその製造方法

【課題】 半導体装置を回路基板に実装する電子装置の製造において環境負荷を軽減するとともに、電子装置の耐衝撃性及び接続信頼性を確保する。
【解決手段】 電子装置の製造方法は、回路基板110上に加熱により発泡する第1の樹脂部141’を形成する工程と、第1の樹脂部の上方に第2の樹脂部142’を形成する工程と、第2の樹脂部の上方に、接合材132を備える半導体装置120を配置する工程とを有する。この製造方法は更に、接合材132と回路基板110とを接合し、回路基板110と半導体装置120とを電気的に接続する端子130を形成する工程を有する。端子130を形成する工程における加熱により、気泡141bを内包した第1の樹脂部141が形成されるとともに、第1の樹脂部の膨張に伴う第2の樹脂部142’の移動により、端子130の周囲を覆う第2の樹脂部142が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板上に電子部品を搭載した電子装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板などの回路基板に半導体装置などの電子部品を高密度で実装し、電子装置の小型化を実現する1つの技術として、ボール・グリッド・アレイ(BGA)タイプの電子部品を使用する技術が知られている。BGAタイプの電子部品においては、電極として当該電子部品の裏面に複数のはんだボール(バンプ)が格子状に配置され、これらはんだボールが回路基板上の所定のパッド(フットパターン)に電気的に接続される。
【0003】
マザーボードなどの実装用回路基板上での表面実装技術(SMT)においては、電子装置の全体又は一部の回路を構成するよう、BGAタイプを含み得る1つ以上の半導体集積回路(IC)装置とともに各種電子部品などが実装される。その際、一般的に、一括実装が行われている。すなわち、マザーボード上に形成されたフットパターン上にはんだペーストが塗布され、対応する半導体素子及び各種電子部品が搭載された後、一括加熱はんだ付けが行われる。
【0004】
近年、環境保護の観点から、RoHS指令などに見られるような世界的な流れとして、はんだの鉛フリー化が進められている。故に、半導体ICパッケージの外部端子などの接合材も、鉛を含むものから鉛を含まない代替材料へと変更されてきている。鉛フリーハンダには、SnBi系はんだなどの低融点(例えば、140℃程度)のものから、SnAgCu系(SAC)はんだなどの高融点(例えば、220℃程度)のものまである。低融点はんだの場合、一般に機械的強度に劣り、ボール接合部の強度及び/又は信頼性を低下させることがある。高融点はんだの場合、含鉛はんだの場合と比較して実装温度が数十℃上昇されている(例えば240℃−260℃の実装温度)。このような実装温度の高温化は、電子部品(低耐熱性部品を含み得る)などへの熱ストレスを増大させ、やはり、ボール接合部の強度及び/又は信頼性を低下させ得る。この熱ストレスの影響はパッケージの大型化に伴って大きくなり得る。また、例えば携帯電話及び携帯情報端末などの携帯型電子機器では高い耐衝撃性が要求されるが、電子機器の高性能化や小型化に伴う電極の微細化により、何らかの補強手段を用いることなくボール接合部の耐衝撃性を確保することは困難である。
【0005】
バンプ接合部の補強などを目的として、電子部品と回路基板との間の隙間にアンダーフィル樹脂を充填することが広く行われている。アンダーフィル樹脂は、電子部品及び回路基板のボール接合部に集中するせん断応力を分散させ、接続信頼性を向上させることができる。
【0006】
図1に、回路基板10上に半導体装置20を実装する典型的な実装方法を示す。先ず、回路基板10上にBGAタイプの半導体装置20を搭載する(図1(a))。回路基板10は、絶縁基板11と、基板11の表面に形成されたパッド12と、パッド12上に開口部を有するソルダーレジスト13とを有し、ソルダーレジスト13の開口部、すなわち、パッド12上にはんだペースト31が印刷されている。半導体装置20は、半導体素子を内包した外囲器21と、外囲器21から少なくとも一部が露出した電極パッド22とを有している。半導体装置20はまた、電極パッド22上に形成されたはんだボール32を備えている。はんだボール32のパターンと回路基板パッド12のパターンとは互いに対応しており、半導体装置20は、はんだボール32が回路基板パッド12上のはんだペースト31に接触するようにして回路基板10上に搭載される。次いで、はんだリフローを行い、はんだボール32及びはんだペースト31による接続端子30を介して、回路基板パッド12と半導体装置パッド22とを接続する(図1(b))。そして、回路基板10と半導体装置20との間の隙間にアンダーフィル樹脂40を充填した後、加熱によりアンダーフィル樹脂40を硬化させる(図1(c))。
【0007】
このように、通常、アンダーフィルの形成は所謂“後入れ”方式で行われている。すなわち、アンダーフィル樹脂40の充填は、回路基板10上への半導体装置20の搭載後に行われ、アンダーフィル樹脂40の熱硬化は、はんだリフロー加熱の後に行われる。後入れ方式は、特に大型電子部品において、アンダーフィル充填に時間を要し、生産スループットを低下させてしまう。さらに、後入れ方式は、はんだリフロー加熱と樹脂硬化加熱という二回の熱工程を要することで消費電力が大きく、環境負荷及び生産コストの点でも好ましくない。
【0008】
以上の問題を軽減することに関連し得る種々の手法が知られている。
【0009】
例えば、回路基板のパッド上に印刷するはんだペーストに樹脂を含有させることにより、この樹脂によってはんだボールと回路基板パッドとの接合部を補強する手法が提案されている。
【0010】
また、半導体素子の搭載に先立って、緩衝材を内包する封止材を基板上に設けておくことにより、加圧下での半導体素子のフリップチップ接続時に緩衝材を弾性変形させ、バンプ接合時の衝撃を低減する手法が提案されている。
【0011】
さらに、異方性導電ペーストを用いた実装において、一連の熱工程で、導電ペースト内で気泡を発生させて導電粒子を半導体素子パッド及び回路基板パッドの間又はそれらの側壁に自己集合させ、且つ導電ペーストの樹脂を硬化させる手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−135515号公報
【特許文献2】特開2004−221293号公報
【特許文献3】特許第4084834号公報
【特許文献4】特許第4084835号公報
【特許文献5】特許第4294722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、はんだペーストに樹脂を含有させておく手法は、接合部の根元部分を補強するのみであり、必要な接続信頼性及び耐衝撃性を確保するためには、依然としてその後のアンダーフィル充填を必要とする。特に、低融点はんだを用いる場合や、携帯型機器に使用する場合などに適用することは困難である。
【0014】
また、緩衝材を内包する封止材を基板上に設けておく手法は、実装時に荷重によって緩衝材を変形させる必要があり、無荷重条件での実装に適用することができない。故に、SMTマウンタを用いた一括実装に適用することができず、電子装置の製造プロセスにおいて追加の工程又はスループットの低下を生じさせ得る。
【0015】
さらに、異方性導電ペースト内で気泡を発生させて導電粒子を自己集合させる手法は、良好な接続強度及び/又は接続信頼性を安定して得ることが困難である。すなわち、半導体素子パッドと回路基板パッドとの間で気泡が発生したり、気泡と半導体素子又は回路基板との間に導電粒子が残存したりすることを完全に回避することが困難であり、接続不良や隣接端子間でのショートを生じさせ得る。また、このような接続問題を抑制するためには何らかの荷重制御を必要とし、やはり無荷重条件での実装に適用することができない。
【0016】
故に、半導体装置の回路基板への実装において、環境負荷を軽減し、且つ耐衝撃性及び接続信頼性を確保し得る技術が依然として望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一観点によれば、電子装置の製造方法が提供される。当該製造方法は、回路基板の上方に、加熱により発泡する第1の樹脂部を形成する工程と、第1の樹脂部の上方に第2の樹脂部を形成する工程と、第2の樹脂部の上方に、接合材を備える半導体装置を配置する工程とを有する。当該製造方法は更に、前記接合材と前記回路基板とを接合し、前記回路基板と前記半導体装置とを電気的に接続する端子を形成する工程を有する。この端子を形成する工程において、第2の樹脂部は、加熱による第1の樹脂部の発泡により移動され、前記端子を覆う。
【0018】
他の一観点によれば、回路基板と、前記回路基板に電気的に接続される端子と、前記端子に電気的に接続される半導体装置とを有する電子装置が提供される。当該電子装置は更に、第1の樹脂部と第2の樹脂部とを有し、第1の樹脂部は気泡を有し且つ前記回路基板と前記半導体装置との間に設けられ、第2の樹脂部は前記端子と第1の樹脂部とを覆う。
【発明の効果】
【0019】
気泡を有する第1の樹脂部と端子を覆う第2の樹脂部とによって耐衝撃性及び接続強度が向上し、接続信頼性を高めることができる。また、回路基板と半導体装置との間での端子接続及び樹脂硬化を一回の熱工程で実現することにより、製造プロセスにおける消費電力を低減して環境負荷を軽減し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】回路基板に半導体装置を実装する典型的な方法を示す断面図である。
【図2】一実施形態に従った電子装置を示す断面図である。
【図3】第1及び第2の樹脂部の平面パターンの一例を示す図である。
【図4】図2の電子装置の製造方法を例示する断面図である。
【図5】図2の電子装置の製造方法を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。なお、図面において、種々の構成要素は必ずしも同一の尺度で描かれていない。また、図面全体を通して、同一あるいは対応する構成要素には同一又は類似の参照符号を付する。
【0022】
先ず、図2及び3を参照して、一実施形態に従った電子装置100を説明する。電子装置100は、回路基板110、半導体装置120、及び回路基板110と半導体装置120とを電気的に接続する複数の端子130を有している。
【0023】
回路基板110は、絶縁基板111と、基板111の表面に形成されたパッド112と、ソルダーレジストなどの絶縁膜113とを有している。絶縁膜113(以下、ソルダーレジストとする)は、パッド112上に開口部を有している。図2においては回路基板110のうち、2つのパッド112を含む部分のみを示しているが、回路基板110は一般的に、半導体装置120を実装するための、あるいは1つ又は複数の電子部品を実装するための、多数のパッド112を有している。また、回路基板110は両面回路基板又は多層回路基板などの種々の形態を有し得る。
【0024】
半導体装置120は、例えば、BGAタイプの半導体集積回路装置であり、半導体素子を内包する外囲器121と、外囲器121から少なくとも一部が露出した複数の電極パッド122とを有している。パッド122は、回路基板110の半導体装置120を実装する部分のパッド112のパターンと対応するパターンを有している。半導体装置120は一般的に多数のパッド122を有している。
【0025】
各端子130は、その両端で、1つの回路基板パッド112と1つの半導体装置パッド122とに接合し、これらパッド間での信号伝達又は電源接続を可能にしている。端子130は典型的に、主として、半導体装置パッド122上に形成されたはんだボールから形成される。例えば、端子130は、半導体装置パッド122上に形成されたはんだボール(図5(b)の132参照)と、回路基板パッド112上に形成されたはんだペースト(図4(c)の131参照)とを熱工程を介して接合したものとし得る。好ましくは、後述のように、はんだペーストは、SnBi系、SnZn系又はIn系などの低融点鉛フリーはんだの粒子を含む。はんだボールは、例えば、SACはんだなどの高融点鉛フリーはんだ、又は低融点鉛フリーはんだとし得る。
【0026】
電子装置100は更に、回路基板110と半導体装置120との間に介在する第1の樹脂部141及び第2の樹脂部142を有している。第1の樹脂部141は、回路基板上のソルダーレジスト113及び半導体装置の外囲器121のうちの一方又は双方に接触している。第2の樹脂部142は、回路基板110と半導体装置120との間に存在する空隙を充填しており、特に、端子130の周囲を覆っている。
【0027】
第1の樹脂部141は、例えばエポキシ樹脂に発泡剤を混入した樹脂などの熱発泡性樹脂を有し、端子130の形成時の熱工程によって発泡剤から発生した気泡141bを内包している。第1の樹脂部141はまた、発泡による膨張後に接触するソルダーレジスト113及び/又は半導体装置の外囲器121との密着性を高めるために、シランカップリング剤などの密着剤を含むことが好ましい。第2の樹脂部142は、少なくとも第1の樹脂部141の発泡時に、第1の樹脂部の粘度より小さい粘度を有する熱硬化性樹脂を有する。それにより、第2の樹脂部142は、発泡による第1の樹脂部141の膨張に伴って流動し、回路基板110と半導体装置120との間に存在する空隙を充填することができる。これらの性質に鑑み、以下、第1の樹脂部141を発泡樹脂材、第2の樹脂部142をアンダーフィル材とも称する。
【0028】
図3は、回路基板110の延在方向に平行な平面で見たときの、複数の端子130、発泡樹脂材141及びアンダーフィル材142の平面パターンの一例を示している。この例において、複数の端子130はアレイ状に配置されている。気泡141bを内包する発泡樹脂材141は、各端子130の周囲にほぼ矩形の開口部を有するように、メッシュ状に配置されている。アンダーフィル材142は、残りの空間、すなわち、各端子130と発泡樹脂材141との間の空隙を充填している。
【0029】
他の一例において、発泡樹脂材141は、各端子130の周囲にほぼ円形の開口部を有していてもよい。更なる他の例において、発泡樹脂材141は、分離された複数の部分を含むなど、種々の平面パターンで形成され得る。何れの場合においても、アンダーフィル材142は、発泡樹脂材141によって占有されない空間(各端子130の周囲を含む)を充填する。
【0030】
はんだ溶融による端子130の形成、発泡樹脂材141の発泡・膨張によるアンダーフィル材142の端子近傍への流動及び熱硬化は、一回の熱工程で行われる。そのため好ましくは、はんだペースト中のはんだ粒子の融点及び発泡樹脂材141の発泡温度がアンダーフィル材142の硬化温度より低くなるように材料を選択する。はんだ粒子の融点及び発泡樹脂材141の発泡温度は何れを高くすることも可能である。例えば、140℃程度の融点を有するはんだ粒子、140℃−160℃の分解温度を有する発泡剤、及び150℃−180℃の硬化温度を有するアンダーフィル材から、はんだ融点〜発泡温度<硬化温度となる条件で材料を選択する。一例として、SnBiはんだ(融点140℃程度)、発泡剤としてセルマイクCAP500(三協化成社製、分解温度155℃−160℃)、及びアンダーフィル材として160℃−180℃の硬化温度を有するエポキシ樹脂の組み合わせを用い得る。また、発泡樹脂材141は好ましくは、アンダーフィル材142の硬化温度範囲までの温度上昇時においても気泡141bの形状を安定に保持し得るよう、該硬化温度より高いガラス転移温度(Tg)を有するように選択される。
【0031】
電子装置100は更に、必要に応じて、端子130と回路基板パッド112との接合部を取り囲む第3の樹脂部143を有していてもよい。第3の樹脂部143は、熱硬化性樹脂を有する。はんだペーストに熱硬化性樹脂を含有させることによって、端子130などの形成のための上記熱工程を用いて第3の樹脂部143を形成することができる。第3の樹脂部143は例えばエポキシ樹脂を有する。
【0032】
電子装置100においては、端子130の周囲を覆うアンダーフィル材142によって端子130自体及びそれと回路基板110及び半導体装置120との接合部が補強される。故に、低融点の鉛フリーはんだ等の比較的強度に劣る接合材を用いた場合であっても接続信頼性を高め得る。また、気泡141bを含む発泡樹脂材141の存在により、端子130及び電子装置100の耐衝撃性を高めることができ、耐衝撃性への要求が強い携帯型機器などへの適用も可能になる。
【0033】
次に、図4及び5を参照して、電子装置100の製造方法を説明する。
【0034】
先ず、図4(a)に示すように、回路基板110を準備する。回路基板110は、上述のように、絶縁基板111、パッド112、及びソルダーレジスト113を有している。ソルダーレジスト113は、パッド112上に開口部113aを有している。
【0035】
次いで、図4(b)に示すように、ソルダーレジスト113上に、スクリーン印刷法により、発泡剤を含む第1の樹脂部(発泡樹脂材)141’を所定のパターンで形成する。スクリーン印刷後、発泡樹脂材141’を或る程度固めるよう、溶剤を気化させるための熱処理を行ってもよい。この熱処理の条件は、例えば80℃−10分などとし得る。また、発泡樹脂材141’は、スクリーン印刷に代えて、予めパターニングしたシートを貼り付けるなど、その他の方法によって形成されてもよい。
【0036】
発泡樹脂材141’の平面パターンは、該樹脂材の発泡率に基づいて、あるいは発泡による該樹脂材の膨張率に基づいて決定し得る。すなわち、熱工程時(図5(c)参照)に、発泡による膨張後の発泡樹脂材141が端子形成を妨げないように、発泡樹脂材141’はソルダーレジストの開口113aから離間して形成される。この条件が満たされている限り、図3に関連して説明したように、発泡樹脂材141’は種々の平面パターンを有し得る。例えば、印刷により形成する場合、1つの回路基板パッド112の周囲に、該パッド112を取り囲むように複数の分離された発泡樹脂材を形成してもよい。貼り付けにより形成する場合には、作業効率の観点から、半導体装置120全体に対して1枚の連続したシートとなるように形成することが好ましい。
【0037】
なお、回路基板110上に複数の電子部品が実装され、そのうちの一部の電子部品(例えば比較的小型の電子部品)が、温度上昇時の熱ストレスが比較的小さいことなどによって、十分な接続信頼性を有する場合がある。そのような場合、該一部の電子部品の実装用のパッドの周辺への発泡樹脂材141’の形成は省略してもよい。
【0038】
また、発泡樹脂材141’の厚さも、発泡率又は膨張率に基づいて決定し得る。例えば、発泡樹脂材141’は好ましくは、膨張後の発泡樹脂材141が電子部品の下面に到達して半導体装置120を押し上げることがないよう、回路基板110と半導体装置120との離間距離より小さい厚さで形成される。
【0039】
次いで、図4(c)に示すように、例えばスクリーン印刷法を用いて、ソルダーレジストの開口部113aにより露出されたパッド112上に、はんだペースト131を形成する。はんだペースト131は、好ましくは、環境保護及び熱工程時の熱ストレスの軽減の観点から、例えばSnBi系、SnZn系又はIn系などの低融点鉛フリーはんだの粒子を含む。また、はんだペースト131は、端子130と回路基板パッド112との接合部を補強するためのエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。
【0040】
続いて、図5(a)に示すように、図4(c)の構造上に第2の樹脂部(アンダーフィル材)142’を形成する。アンダーフィル材142’は、少なくとも発泡樹脂材141’の発泡時において、発泡樹脂材141’より低い粘度を有するものであれば特に限定されない。アンダーフィル材142’は例えばスプレー法によって形成することができる。
【0041】
なお、必要量のアンダーフィル材を供給するために回路基板パッド112上のアンダーフィル材の厚さを大きくすると、BGAの搭載が困難になったり、パッド112上のはんだペースト131が対流して接合信頼性が低下したりすることがある。本実施形態においては、後の加熱により膨張する発泡樹脂材141’を有するので、この段階でパッド112上に供給するアンダーフィル材の厚さを低減し、この問題を回避することができる。
【0042】
次いで、図5(b)に示すように、はんだボール132を備えた半導体装置120を回路基板110上に搭載する。半導体装置120は、上述のように、外囲器121と、はんだボール132が接合された電極パッド122とを有している。半導体装置120は、はんだボール132と回路基板パッド112上のはんだペースト131とが相対するようにして回路基板110上に搭載される。はんだボール132は、例えば、SACはんだ又はSnBi系はんだなどの低融点鉛フリーはんだを有する。
【0043】
そして、図5(c)に示すように、加熱により、はんだペースト131中のはんだ粒子を溶融させ、はんだボール132及びはんだペースト131による接続端子130を形成し、回路基板パッド112と半導体装置パッド122とを電気的に接続する。はんだボール132が低融点はんだを有する場合には、はんだボール132をも溶融させ得る。なお、図5(c)においては、はんだペースト131が熱硬化性樹脂を含有していないものとして、端子130と回路基板パッド112との接合部の補強樹脂(図2の第3の樹脂部143)は図示していない。
【0044】
この熱工程は、一連の温度上昇によって、端子130の形成に加えて、発泡樹脂材の膨張変形(141’から141へ)及びそれに伴うアンダーフィル材の流動変形(142’から142へ)と、変形後の第1及び第2の樹脂部141及び142の硬化とを達成する。この発泡樹脂材の膨張は、発泡剤による発泡樹脂材141’の発泡、すなわち、発泡樹脂材141’内での気泡141bの発生によってもたらされる。その膨張率は、混入する発泡材の種類及び量などによって決定することが可能である。そして、発泡樹脂材の膨張により、その周囲のアンダーフィル材の流動がもたらされる。発泡樹脂材は、横方向に端子130の方向へ、そして縦方向に半導体装置120の方向へ膨張するため、アンダーフィル材を端子130の近傍に流れ込ませ、端子130の周囲をアンダーフィル材142で覆うことができる。
【0045】
この熱工程は、半導体装置120に荷重を印加することを排除するものではないが、図4(b)に示した工程において発泡率に応じて発泡樹脂材141’の厚さを適切に決定することにより、無荷重条件で行うことが可能である。このことは、半導体装置120を含む各種電子部品を、SMTマウンタなどを用いて回路基板上に一括実装し得ることを意味する。
【0046】
好ましくは、上述のように、はんだペースト中のはんだ粒子の融点及び発泡樹脂材の発泡温度がアンダーフィル材の硬化温度より低くなるように材料を選択する。はんだペースト中のはんだ粒子としてSnBi系はんだ、発泡剤としてセルマイクCAP500、及びアンダーフィル材として160℃−180℃の硬化温度のエポキシ樹脂を用いる上述の組み合わせの場合、温度を180℃程度まで上昇させればよい。
【0047】
ここで説明した製造方法によれば、アンダーフィル材141’を先入れした後、一回の熱工程を行うことにより、端子130の形成と、アンダーフィル材142による端子130の補強とを行うことが可能である。故に、アンダーフィル材の充填及び熱工程に要する時間を短縮して製造スループットを向上させ得る。また、熱工程に伴う消費電力を低減し、環境負荷を軽減することができる。
【0048】
以下、幾つかの具体的な実施例を説明する。
【0049】
(実施例1)
先ず、発泡性樹脂ワニスを用意した。具体的には、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製850S、平均エポキシ当量190)50gに、硬化剤として2−エチル4−メチルイミダゾール(四国化成工業製)1g、発泡剤としてセルマイクS(分解温度158℃、ガス発生量115ml/g、三協化成製)1g、チクソ剤としてステリアリン酸アミド2g、KBM803シランカップリング剤1gを混合した。180℃/5分で硬化させた硬化物のガラス転移温度Tgは182℃である。この発泡性樹脂ワニスを、スクリーン印刷法によりメタルマスクを用いて、パッドピッチ1.27mmのFR−5配線基板の、Cuパッドの上及び周辺を除く部分に塗布した。80℃で約10分間熱処理を行い、約200μmの樹脂層を形成した。
【0050】
次いで、エポキシ樹脂(10wt%)含有SnBiペーストを、メタルマスクを用いて上記配線基板のパッド上に約200μmの厚さで塗布した。このエポキシ樹脂の組成は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂25g(大日本インキ化学工業製850S、エポキシ当量190)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂25g(大日本インキ化学工業製830LVP、エポキシ当量163)、酸無水物(YH−307)50g、KBM803シランカップリング剤1g、アジピン酸金属活性剤10g、シリカアエロジール3g(日本アイロジルR972)、イミダゾール(HX3921)3gとした。
【0051】
その後、スプレー法により、アンダーフィル樹脂を約50μmの厚さで塗布した。このアンダーフィル樹脂の組成は、ナフタリン型エポキシ樹脂75g(大日本インキ化学工業製EpiclonHP−4032、当量148)、低粘度形エポキシ樹脂25g(大日本インキ化学工業製Epiclon EXA−4880A、当量190)、フェノール樹脂108g(三井化学製ミレックスXLC−4L、OH当量170)、KBM803シランカップリング剤1g、シリカアエロジール3g(日本アイロジルR972)、トリフェニルホスフェン1gとした。
【0052】
次いで、BGA突起電極(パッドピッチ1.27mm、φ0.76mmSACはんだボール)を配線基板パッドに位置合わせして搭載し、リフロー(最大温度180℃)を行った。
【0053】
(実施例2)
実施例1の発泡樹脂のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂に代えて、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製Epiclon HP−4700、当量160)50gを用いた。硬化物のTgは216℃である。
【0054】
(実施例3)
実施例1の発泡樹脂のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂に代えて、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製ECN、当量160)50gを用いた。硬化物のTgは208℃である。
【0055】
(実施例4)
実施例1のアンダーフィル樹脂のナフタリン型エポキシ樹脂に代えて、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製850S、平均のエポキシ当量190)75gを用いた。
【0056】
(実施例5)
実施例1の半導体素子のSACはんだボールに代えて、Sn−Biはんだボールを用いた。
【0057】
以上、実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
100 電子装置
110 回路基板
111 絶縁基板
112 パッド
113 ソルダーレジスト
113a 開口部
120 半導体装置
121 外囲器
122 パッド
130 端子
131 はんだペースト
132 接合材(はんだボール)
141 第1の樹脂部(発泡樹脂材)
141b 気泡
142 第2の樹脂部(アンダーフィル材)
143 第3の樹脂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の上方に、加熱により発泡する第1の樹脂部を形成する工程と、
前記第1の樹脂部の上方に第2の樹脂部を形成する工程と、
前記第2の樹脂部の上方に、接合材を備える半導体装置を配置する工程と、
前記接合材と前記回路基板とを接合し、前記回路基板と前記半導体装置とを電気的に接続する端子を形成する工程とを有し、
前記端子を形成する工程は、加熱による前記第1の樹脂部の発泡により前記第2の樹脂部を移動させ、前記端子を前記第2の樹脂部で覆うことを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の樹脂部が発泡する所定の温度における前記第1の樹脂部の粘度が、前記第2の樹脂部の粘度よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の電子装置の製造方法。
【請求項3】
前記端子を形成する工程は、前記半導体装置に荷重を加えることなく行われることを特徴とする請求項1又は2の何れか一項記載の電子装置の製造方法。
【請求項4】
回路基板と、
前記回路基板に電気的に接続される端子と、
前記端子に電気的に接続される半導体装置と、
前記回路基板と前記半導体装置との間に設けられ、気泡を有する第1の樹脂部と
前記端子と前記第1の樹脂部とを覆う第2の樹脂部と、
を有することを特徴とする電子装置。
【請求項5】
前記第1の樹脂部は発泡剤を含み、該発泡剤の分解温度は前記第2の樹脂部が含む樹脂の硬化温度より低いことを特徴とする請求項4記載の電子装置。
【請求項6】
前記端子は、少なくともその一部に、前記第2の樹脂部が含む樹脂の硬化温度より低い融点を有するはんだを含むことを特徴とする請求項4又は5記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−4436(P2012−4436A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139607(P2010−139607)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】