説明

電子部品とその製造方法

【課題】電子素子片とベース基板とを接合して構成される電子部品の外部電極への配線引出しと、両者の封止とを同時に一括作業で実現できるようにした電子部品とその製造方法を提供する。
【解決手段】ベース基板24は、電子素子片22に対向する位置に形成された貫通孔32と、貫通孔32を封止する封止部材30とを有すると共に、封止部材30が、貫通孔32の電子素子片22に対向する側の開口面を貫通して凸部30Aを形成する。電子素子片22は、電子素子片22の貫通孔32に対向する主面に導電膜28を有し、凸部30Aと導電膜28とを接触させることによって接続しつつ、電子素子片22とベース基板30をその周囲でロウ材26により接合する。ロウ材26は予めその高さを貫通電極凸部30Aより高くしておき、貫通電極30が素子側電極28に接触するまでリフローによりロウ材26を溶融し結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品とその製造方法に係り、ウェハーとウェハー保持部材とをロウ材を用いて接合されてなる圧電振動子のような電子部品であって、ウェハーの端子電極と保持部材の端子との電気的接続の信頼性を向上させる構造を有する電子部品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子として、振動片を形成する電子素子片とその保護部材とを積層構造として薄型化した構造のものが知られている。特許文献1には、従来例として、図17にされるように、振動子用水晶1と保持用水晶2a、2bとを直接接合した構造の圧電振動子が提示されている。直接接合は鏡面研磨された水晶の主面を親水化(OH基化)して当接し、熱処理により原子間的結合で接合するようにしている。振動子用水晶1は平板として両主面に励振電極3a、3bを有すると共に、両端外周部に引出電極4a、4bを延出し、保持用水晶2a、2bは一部が振動子用水晶の両主面に対してそれぞれ対向する凹部を有するとともに、保持用水晶2a、2bの各々の前記凹部の薄肉部には貫通孔5a、5bを有し、当該貫通孔5a、5bに半田6などを埋設して封止するとともに、引出電極4a、4bに接続してこれを外表面に導出する構造が示されている。
【0003】
しかし、特許文献1に示すような振動子用水晶1と保持用水晶2a、2bとを直接接合する構造のものでは、接合面を鏡面研磨して親水化処理する必要があるため生産効率が悪いという欠点がある。これを改善するために、特許文献2に示されるような圧電振動子が提案されている。
【0004】
図18−19は特許文献2に提示されている圧電振動子の断面図と分解斜視図である。振動子用水晶1の両主面側に保持用水晶2a、2bを接合してなる三層構造の水晶振動子である。振動子用水晶1は中央領域の振動部8の周辺を厚肉の保持部9とし、保持部9の両端側には表裏面を貫く貫通孔10a、10bを形成する。振動部8の両主面には励振電極3a、3bを形成し、保持部9側に引出電極4a、4bを延出し、さらに貫通孔10a、10bの内周を経てそれぞれ反対面に延出する。両主面(保持部9)の外周には接合用下地電極11a、11bを形成する。これらは、クロム(Cr)を下地層として最表面層を金(Au)層とし、一体的に形成される。そして、保持部9の両主面の引出電極4a、4b及び接合用下地電極11a、11b上にはシリコン(Si)及び金をスパッタしてSi−Auの共晶合金を形成する。引出電極4a、4b部の共晶合金を第1電極接続部12a、12bとし、接合用下地電極11a、11bの共晶合金を第1接合部13a、13bとしている。
【0005】
振動子用水晶の両主面外周の下地電極(Cr−Au)と、前記保持用水晶の対向する面の外周の下地電極(Cr−Au)とに形成した共晶合金(Si−Au)13a、13b、13c、13dからなる接合部同士を当接させる。そして、前記共晶合金を385℃(水晶α−β転移温度573℃より低い温度)にて加熱溶融することにより接合する構造としたものである。下面側の保持用水晶2bには、振動子用水晶1の下面側の2箇所の第1電極接続部12bに対応する両端側に貫通孔14a、14bを設け、この上面、内部、底面及び側面にクロム及び金の下地電極15を形成し、例えば溶融ガラス16を埋設して封止する。また、貫通孔14a、14bの上面側には、第1電極接続部12bに対応してSi−Auの共晶合金を設けて、第2電極接続部12c、12dとする。そして、側面及び底面の下地電極15には、例えば金メッキをかけて実装電極7a、7bとした構造とされている。
【0006】
このような特許文献2に記載の振動子では、振動子用水晶の両主面外周と保持用水晶の対向する面の外周に共晶合金を形成して、加熱溶融によってこれらを接合したので、生産性が良好となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−119263号
【特許文献2】特開2001−119264号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、先行文献1,2に開示の技術には、次のような問題があった。特許文献1に記載の技術では、外周部の直接接合部の接合と、貫通電極と引出電極4との接合とを同時に実施するため、接合信頼性を確保することは技術的に困難であるという問題があった。
【0009】
特許文献2に記載の発明では、引出電極の電極接続部12も共晶合金であるため、引出電極4への流れ込みが起こり、電極接続部12において十分な接合強度が得られない問題があった。また、引出電極4の電極接続部12と外周の接合用下地電極11の第1接合部13との高さが同じであるため、どちらかが接合不良となる可能性があるという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであって、接合型の圧電振動子のような電子機器において、積層される一方のウェハーと他方のウェハーとの間で貫通電極と引出電極との接合するに当たって、十分な接合強度が得られる構造を実現することを目的とする。また、ウェハー同士の接合と電極接続を一括加熱接合することで生産効率を向上させることができる電子機器の構造とその製造方法を提供することを目的とする。さらに、接合後、貫通電極とこれに接続される電極との接続信頼性の高い電子機器の構造とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
[適用例1] 電子素子片をベース基板上に搭載して形成される電子部品であって、前記ベース基板は、前記電子素子片に対向する位置に形成された貫通孔を有し、前記電子素子片は、前記電子素子片の前記貫通孔に対向する主面に導電膜を有し、前記貫通孔は封止部材により封止されると共に、当該封止部材が、前記貫通孔の前記電子素子片に対向する開口面を貫通して凸部を形成し、前記凸部と前記導電膜とが接触していることを特徴とする電子部品。
【0012】
上記構成によれば、電子素子片をベース基板に搭載するに当たって、ベース基板に形成した貫通孔の封止部材凸部が電子素子片の導電膜に接触して外部端子に導くことができる。したがって、ベース基板に電子素子片を接合するだけで電子素子片の導電膜を外部端子へ引出すことができるので、外部端子への配線引き回しを接合と同時に行なわせることができるため、製造作業効率を向上させることができる。
【0013】
[適用例2] 電子素子片の周縁部とベース基板の周縁部とをロウ材により接合したことを特徴とする適用例1に記載の電子部品。
この構成により、電子素子片とベース基板の接合後に、ロウ材の溶着後部分で両者同士が密着するように引っ張られるので、貫通孔の封止部材凸部は素子側導電膜に圧接され、電気的接続の信頼性が高い構造となる。
【0014】
[適用例3] 電子素子片とベース基板との間に凸部の高さに相当するギャップを有していることを特徴とする適用例1または2に記載の電子部品。
ギャップの存在により、ウェハー同士の接合後に、ロウ材の溶着後部分でウェハー同士が密着するように引っ張られ、貫通電極凸部は素子側電極に圧接されて電気的接続の信頼性が向上する。
【0015】
[適用例4] 前記貫通孔は電子素子片側の開口面の面積が他方の開口面に比べて大きくなるように断面がテーパー形状とされていることを特徴とする適用例1乃至3のいずれか1項に記載の電子部品。
【0016】
貫通電極にテーパーを付すことにより、貫通孔の封止部材と素子側導電膜同士の接触で楔作用が働き、貫通孔の封止部材がベース基板から離脱分離することが防止されるので製品信頼性の高い構造とすることができる。素子側導電膜に接触される凸部を金バンプなどにより形成した場合でも、ロウ材の溶着力で金バンプ部分での接触状態を確保でき、電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0017】
[適用例5] 前記ロウ材の受け側メタライズ面積をロウ材面積より広く形成してなることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
ロウ材の受け側の溶着面積をロウ材面積よりも大きくすることができるため、ロウ材溶着力が増大し、接合強度を確保できる上、導電膜接触部の電気的接続信頼性を高めることができる。
【0018】
[適用例6] 前記凸部と電子素子片側電極との接触面には導電性接続層を介在させてなることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【0019】
[適用例7] 電子素子片に導電膜を形成する工程と、ベース基板に貫通電極を形成する工程と、前記ベース基板の片面をエッチングすることにより前記貫通電極の他端側に電極凸部を露出形成する工程と、前記電子素子片またはベース基板の一方に接合用ロウ材を形成する工程と、前記電子素子片とベース基板とを接合して加熱し前記貫通電極を素子側導電膜に接触させた状態でロウ材を加圧溶着させる工程と、を含む電子部品の製造方法。
【0020】
上記構成によれば、電子素子片とベース基板との積層構造に対し、ロウ材による封止と外部端子への引出しとを一括での加熱加圧接合により、同時に実現できるので、製造作業効率が向上する。
【0021】
[適用例8] 前記ロウ材を形成する際、前記貫通電極凸部より高さを高く形成することを特徴とする適用例7に記載の電子部品の製造方法。
ロウ材の加熱を行なう際に、貫通電極凸部が素子側電極に突き当たるまで加圧すれば良く、過剰加圧がなく、ロウ材の余分な流出を防止できる。
【0022】
[適用例9] 前記ロウ材の受け側には予めロウ材面積より広いメタライズ層を形成する工程を含むことを特徴とする適用例7に記載の電子部品の製造方法。
メタライズ層が広いため、ロウ材のフィレット面積を大きくでき、溶着力を確保することができる。これにより貫通電極凸部と素子側導電膜との接合強度を高く保つことができ、接続信頼性が増すものとなる。
【0023】
[適用例10] 電子素子片に導電膜を形成する工程と、ベース基板に貫通電極を形成する工程と、前記貫通電極の他端側に前記電子素子片側導電膜に対面する内部導電膜を形成するとともにこの内部導電膜にバンプを形成する工程と、前記電子素子片またはベース基板の一方に接合用ロウ材を形成する工程と、前記電子素子片とベース基板とを接合して加熱し前記バンプを素子側導電膜に接触させた状態でロウ材を加圧溶着させる工程と、を含む電子部品の製造方法。
【0024】
貫通電極の位置と素子側電極の位置とが平面で変位していても、一括リフロー処理によりロウ材による封止と外部端子への配線引出しを同時に実現でき、製造作業効率を高くすることができる。
【0025】
[適用例11] 前記ロウ材を形成する際、前記バンプ高さより高く形成してなることを特徴とする適用例10に記載の電子部品の製造方法。
当該構成により、バンプが素子側電極に突き当たるまで加圧すればよく、ロウ材の余分な流出が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子部品の積層前の状態を示す断面図である。
【図2】同第1実施形態に係る電子部品の積層工程を示す断面図である。
【図3】同第1実施形態のメタライズ部分の変形例に係る電子部品の積層工程を示す断面図である。
【図4】同第1実施形態のメタライズ部分のその他の変形例に係る電子部品の積層工程を示す断面図である。
【図5】本発明を適用した第2実施形態に係る三層積層型圧電振動子の積層前の状態を示す断面図である。
【図6】同第2実施形態に係る三層積層型電子部品の積層後の状態を示す断面図である。
【図7】第2実施形態に係る三層積層型圧電振動子の斜め上方から見た分解斜視図である。
【図8】第2実施形態に係る三層積層型圧電振動子の斜め下方から見た分解斜視図である。
【図9】第2実施形態に係る三層積層型圧電振動子の製造工程の説明図であり、第2カバーウェハーの製造工程である。
【図10】同第1カバーウェハーの製造工程である。
【図11】同振動子の製造工程とこれに続くカバーウェハーの積層工程である。
【図12】本発明をSAW振動子に適用した第3実施形態に係る電子部品の断面図である。
【図13】本発明を圧力センサーに適用した第4実施形態に係る電子部品の断面図である。
【図14】本発明を絶対圧検出センサーに適用した第5実施形態に係る電子部品の断面図である。
【図15】本発明を圧力センサーに適用した第6実施形態に係る電子部品の断面図である。
【図16】電子素子片とベース基板との電気的接続をバンプにより接合する構造の電子部品に適用した電子機器の断面図である。
【図17】従来例に係る積層型圧電振動子の断面図である。
【図18】他の従来例に係る積層型圧電振動子の断面模式図である。
【図19】図12に示した従来例の積層型圧電振動子の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る実施形態につき、図面を参照して、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本願発明の要旨を逸脱しない範囲でそれらの構成要素を変更可能である。
【0028】
図1〜2に本発明の原理図を示す。図は、本発明に係る電子部品の第1実施形態である積層型圧電振動子の接合部の要部断面図を示している。この例は、振動片を構成する電子素子片である素子ウェハーと、保護部材としてのベース基板であるカバーウェハーを積層した積層型圧電振動子として構成したものである。
【0029】
図示のように、実施形態に係る積層型圧電振動子20は、いずれも水晶からなる素子ウェハー22とカバーウェハー24を有し、カバーウェハー24の周縁の枠部に形成された接合枠部にメタライズ層25を形成した上で、そのメタライズ層25に共晶合金からなるロウ材26を設け、積層状態で加圧しつつ加熱することにより、このロウ材26を融かしてウェハー同士を溶着接合するものとしている。これにより、カバーウェハー24が薄い素子ウェハー22の保護部材として機能する。
【0030】
一方、素子ウェハー22の表面部には、振動片部分を発振させるための励振電極に接続された導電膜としての引出し電極28が延在し、カバーウェハー24側にはカバーウェハー24を貫通し上記引出し電極28と電気的接続をなすと共に、カバーウェハー24に設けた外部電極と電気的に接続された貫通電極30が形成されている。貫通電極30はカバーウェハー24に穿設したスルーホール32を封止するための封止部材であり、導電材料を埋め込んで形成している。この実施形態では、特に、カバーウェハー24の片面(素子ウェハー22との対面部側)を全体的にエッチングすることにより、カバーウェハー24の一方の主面より突出した貫通電極凸部30Aを形成している。そして、図2に示しているように、この貫通電極凸部30Aの先端を素子ウェハー22の引出し電極28に突き当てるように接触させ(図2(b))、加圧加熱処理することによりウェハー22、24同士をロウ材26で溶着するのである(図2(c))。
【0031】
また、ロウ材26は貫通電極30の周囲に配置されるが、接合前のロウ材26の高さ寸法Hは、前記貫通電極凸部30Aの高さhよりも、高く設定している。これにより、ウェハー22,24を積層して加熱しつつ加圧することで、ロウ材26が融けるが、貫通電極凸部30Aが引出し電極28に当接することによりストッパーの役割をなさせるようにしている(図2(c))。したがって、貫通電極30の材料はロウ材26の溶融温度では融けない材料を用いる。なお、ロウ材はAu−Snなどの共晶金属で形成することができ、当該ロウ材は箔状であってもよい。
【0032】
また、カバーウェハー24の周縁の接合枠部には、前述したように、メタライズ層25が形成されており、当該メタライズ層25は、カバーウェハー24との密着層となる下地層をCr或いはTiで形成し、前記下地層の表面にロウ材との密着性に優れた密着層をAuで形成した積層構造となっている。更に、前記下地層と前記密着層との間に拡散防止層としてPt、Pd或いはNi、又はそれらの複合膜を形成すると下地層と密着層との拡散を防止することができる。
【0033】
一方、前記ロウ材26に対面している素子ウェハー22のロウ材受け部にはメタライズ層34が形成されている。このメタライズ層34の面積は、前記ロウ材26の断面積よりも広く形成している。これによりメタライズ層34の領域までロウ材26がフィレットを形成して接着面積が拡大した状態で溶着できるようにしている。
【0034】
このように、導電材料を埋め込んでなる貫通電極30が形成されたカバーウェハー24において、片側の主面のみにフォトリソ・エッチング加工などを用いて、貫通電極30の一部を突出させて凸部30Aを形成する。そして、カバーウェハー24の外枠部のメタライズである接合面に形成されたロウ材26を受ける側である素子ウェハー22に形成すべきメタライズ層34の面積は、ロウ材26の断面積より広くしている。このような構成により、ウェハー同士の接合時に、ロウ材26は融けて広がるとともに、ロウ材26の高さは低くなるが、貫通電極凸部30Aが素子ウェハー22の貫通電極受け側のメタライズ層34と接触したところで、前記凸部30Aがストッパーの役目をするので、ロウ材26の高さは凸部30Aの高さと同等になった時点で留まることになる。
【0035】
したがって、この第1実施形態では、ウェハー22,24を一括して加熱加圧接合することにより、積層ウェハーの接合と外部端子への電極引出しとを同時に実現できるので、製造作業効率を向上させることができる。
【0036】
また、貫通電極凸部30Aの高さhに相当するギャップをウェハー22,24間に形成されている構成となっているため、ウェハー22,24同士の接合後に、ロウ材26の溶着部分でウェハー同士が密着するように引っ張られた状態となるので、貫通電極凸部30Aを引出し電極28に突き当てた状態で電気的接続を図っても、貫通電極凸部30Aは引出し電極28に圧接され、電気的接続の信頼性が高い構造となる。
【0037】
更に、メタライズ層が広いため、ロウ材のフィレット面積を大きくでき、溶着力を確保することができる。これにより貫通電極凸部と素子側電極との接合強度を高く保つことができ、接続信頼性が増すものとなる。
【0038】
ここで、カバーウェハー24の外枠部のメタライズ層25の幅:Lp、素子ウェハー22に形成すべきメタライズ層34の幅:Ls、ロウ材の幅:Laとしたとき、これらの関係が図2に示す実施形態では、Lp<Ls、La<Ls、La≦Lpの関係を満足するように構成することによって、素子ウェハー22のメタライズ層34の領域一杯までロウ材26がフィレットを形成して接着面積が拡大した状態で溶着できるが、図3に示す実施形態のように、Ls<Lp、La<Lp、La≦Lsの関係を満足するように構成しても良いし、図4に示す実施形態のように、La<Ls、La<Lpの関係を満足するように構成しても良い。
【0039】
図5−8には、本発明に係る電子部品の第2実施形態を示している。なお、図5−6と図7−8とは電子部品の上下が反対に示されている。この第2実施形態は、三層積層型圧電振動子40に適用したもので、中央に素子ウェハー42を配置し、これを一対の第1カバーウェハー44Aおよび第2カバーウェハー44Bにより挟み込み、振動片部分を内包させている。ウェハー42,44はいずれも水晶から形成されている。素子ウェハー42は、図7−8に示されるように、中央領域に圧電振動片46を形成し、その周囲を矩形枠部48にて取り囲むように形成されている。圧電振動片46は矩形枠部48と一対の脚部50を介して連結された薄肉片であり、両面に励振電極52A,52Bが設けられている。そして、励振電極52A,52Bの引出し配線54A,54Bが脚部50,枠部48を利用して引き回され、図8に示されるように、裏面側における矩形枠部48の対角線上の一対のコーナー部分の引出し電極56A,56Bまでそれぞれ延在させている。
【0040】
一方、素子ウェハー42に積層される第1カバーウェハー44Aと、第2カバーウェハー44Bは素子ウェハー42と同サイズの矩形に形成された水晶ウェハーであり、素子ウェハー42の矩形枠部48との対面部に封止用の共晶金属からなるロウ材58をメッキしている。素子ウェハー42の矩形枠部48側には、メタライズ層60が形成され、ロウ材58との溶着性を確保している。このとき、メタライズ層60の面積は、図1に示した第1実施形態の場合と同様に、ロウ材58の面積より大きく形成しておき、溶着後の結合強度が大きくなるように調整している。
【0041】
ところで、前記素子ウェハー42に形成された引出し電極56(56A,56B)に対面する側の第2カバーウェハー44Bには、引出し電極56との対面部にスルーホール62を形成し、ここに導電性材量を埋め込んだ貫通電極64を形成している(図5−6と図7−8では第2カバーウェハー44Bは上下反対に示されている)。そして、この実施形態では、前記ロウ材58をメッキする前に貫通電極64を形成しておき、第2カバーウェハー44Bの片面を全面的にエッチングすることにより、貫通電極64の一部を突出状態としておき(貫通電極凸部64A)、その後にロウ材58を周辺部にメッキ付けするようにしている。そのとき、接合前のロウ材58の高さ寸法Hは、前記貫通電極凸部64Aの高さhよりも、高く設定している。これにより、ウェハー42,44A,44Bを積層して加熱しつつ加圧することで、ロウ材58が融けるが、貫通電極凸部64Aが引出し電極56に当接することによりストッパーの役割をなさせるようにしているのは第1実施形態の場合と同様である。
【0042】
また、第2カバーウェハー44Bの外面には、前記貫通電極64と電気的に接続される外部端子66A,66Bが形成されている。
このように素子ウェハー42,カバーウェハー44に電極や配線パターン、ロウ付けなどを行なった上で、図5に示すように、素子ウェハー42を間に挟んで上下両面からカバーウェハー44により挟み込み、加圧しながら加熱することで、ロウ材58は融けて広がるとともに、ロウ材58の高さは低くなるが、貫通電極凸部64Aが素子ウェハー42の貫通電極受け側のメタライズ層60と接触したところで、前記凸部64Aがストッパーの役目をするので、ロウ材58の高さは凸部64Aの高さと同等になった時点で留まることになる。したがって、この第2実施形態では、3枚のウェハー42,44を一括して加熱加圧接合することにより、積層ウェハーの接合と外部端子への電極引出しとを同時に実現できるので、製造作業効率を向上させることができる。
【0043】
図9−11に上記第2実施形態に係る三層積層型圧電振動子40の製造工程を示す。図9は第2カバーウェハー44Bの製造工程であり、図10は第1カバーウェハー44Aの製造工程を示している。第2カバーウェハー44Bは、素材の水晶基板を準備し(工程1)、スルーホール62を形成する(工程2)。スルーホール62はブラスト、レーザー、プラズマ、ウェットエッチングなどを用いて穿孔すればよい。また、スルーホール62はテーパー形状に形成し、ウェハーの接合時に貫通電極64が抜け落ちないように形成することが望ましい。次いで、スルーホール62の内面に下地材を設ける(工程3)。下地材としてはAu/CrやTiなどを用い、スパッタで形成すればよい。その後、スルーホール62内に導電性材料をメッキ充填し、貫通電極64を形成する(工程4)。そして、ウェハー研磨を行なった後に、貫通電極64の小径側が開口しているウェハー面に外部端子66(66A、66B)を形成する(工程5)。次に、貫通電極64の大径側が露出しているウェハー片面の全面をエッチング処理し、ウェハー表面に貫通電極凸部64Aを突出形成する(工程6)。そして、接合部となるウェハー周縁の接合枠部はメタライズを形成し、当該メタライズは、前記ウェハーとの密着層となる下地層をCr或いはTiで形成し、前記下地層の表面にロウ材との密着性に優れた密着層をAuで形成した積層構造とする。更に貫通電極凸部64Aの表面には下地膜としてCrやTi、Niなどを密着層として形成し、必要に応じて最上層に酸化防止としてAu膜を形成してもよい。Au/CrやTi等をスパッタにより下地材として膜形成する(工程7)。最終的に、ウェハー44Bの周縁部の下地層の部分に共晶金属として前述のように例えばAu/Snなどのロウ材58を電解メッキして第2ウェハー44Bとする(工程8)。一方、第1ウェハー44Aは、図8に示すように、素材水晶を準備し、その一方の面の周縁部にロウ材58をメッキすればよい(工程1,2)。もちろん、ロウ材58の形成部分には下地材を形成しておくのは第2カバーウェハー44Bと同様である。尚、ロウ材の形成にあたっては、メッキに限らず箔状のものを貼り付けても良い。
【0044】
図11には素子ウェハー42の製造工程と、これにカバーウェハー44A、44Bを積層する工程を示している。すなわち、素材水晶を準備し(工程1)、圧電振動部となるように中央領域を薄肉化するエッチングを行なって逆メサを形成する(工程2)。そして素子の外形を形成すべく振動片46と矩形枠部48とを形成する(工程3)。そして、振動片46の主面部に励振電極52、引出し配線54、引出し電極56、並びにロウ材接合用のメタライズ層60を形成する(工程4)。そして、振動片46の周波数調整を行い(工程5)、図9、10の工程で形成した第1カバーウェハー44A,第2カバーウェハー44Bを積層し、加圧しつつ加熱することでロウ材58を溶融し、貫通電極凸部64Aが素子側引出し電極56A、56Bと当接させる(工程6)。このとき、第2カバーウェハー44Bの貫通電極凸部64Aと引出し電極56A、56Bとの接合性を向上させるために、貫通電極凸部64Aの表面をプラズマ活性化、UV活性化、あるいはオゾン活性化処理を予め行うようにしてもよい。また、これらの接合部に導電性接続層を介在させるようにしてもよい。このようにすることで、接続信頼性を確保することができる。そして、冷却することでロウ材58の固化を行なって製品を完成させる(工程7)。
【0045】
このように、本実施形態では、3枚接合振動子の封止部において、導電性材を埋め込んだ貫通電極付きベース基板の片側主面のみをフォトリソ・エッチング加工などを用いて、貫通電極凸部を形成し、ベース基板の接合枠部にロウ材をメッキする。ロウ材は貫通電極凸部より高く形成させる。そして、電子素子片のロウ材受け側メタライズの面積はロウ材面積よりも広くする。接合時に加熱加圧させるとロウ材が溶解し、凸部が当接して電気的接続が行われる。その後、冷却して封止と外部への配線の引き出しが同時に完了することとなる。
【0046】
このため、本実施形態によれば、封止と外部端子への配線引出とを、ウェハー一括で加熱加圧接合により、同時に実現することができるので、作業効率が上がる。そして、接合後、貫通電極凸部は常にロウ材に引っ張られた状態になるので、接続信頼性が向上する。
【0047】
図12−15には、本発明の応用例を示している。図12はSAW振動子70への応用例を示す第3実施形態に係る電子部品素子の断面図である。素子ウェハー72はその主面にIDT電極74が形成されたSAW振動片を備え、そのIDT電極形成面に対面するように、カバーウェハー76を積層した二層積層型としたものである。カバーウェハー76は第2実施形態に用いた第2カバーウェハー44Bと同様な構造とすればよい。
【0048】
図13は本発明を圧力センサー80に適用した第4実施形態に係る電子部品の断面図である。この応用例では、ダイアフラム82とカバーウェハー84とをロウ材接合する二層積層型として構成されている。ダイアフラム82とベース基板84の対面部に電極86、88を形成し、圧力を受けて撓むダイアフラムの変位を静電容量の変化として捉えるようにしたものである。内部空間に配置された電極86、88の引出し電極を外部に引き出すための貫通電極部分を本発明と同様に電極凸部と電極86との突き当たり接合構造としている。
【0049】
図14は本発明を絶対圧検出センサーに適用した第5実施形態に係る電子機器の断面図である。図13に示した二層積層型の圧力センサーを三層積層型圧力センサー90として構成したものである。図13の圧力センサーに第3のベース基板92を積層したものである。
【0050】
また、図15に示すように、感圧素子としての双音叉振動子705の2本の柱状ビームに形成した励振電極701と、前記励振電極701に接続された引き出し電極(第1引き出し電極702、第2引き出し電極703)とを有する感圧素子片772を、ダイアフラム704の受圧面704aとは反対側の内側の主面704b上に形成した支持部706に搭載された圧力センサーにも適用できる。
【0051】
図16は第7実施形態を示しており、バンプ介在型の三層積層型圧電振動子100として形成したものである。電子素子片102に形成した電極104と、ベース基板106側に形成した外部端子接続用の電極108とを設け、前記外部接続用電極108と素子側電極104とを金バンプ110を介在して突き当てによって接続している。外部接続用電極108はベース基板106に形成した貫通電極112で外部端子114に接続されているが、バンプ110と貫通電極112とは平面位置がずれており、両者を外部接続用電極108で接続している。そして、前記ウェハー102、106並びに上面ベース基板116同士をその周囲でロウ材118により接合している。
【0052】
素子側電極に突き当てられる電極を金バンプなどにより形成した場合でも、ロウ材の溶着力で金バンプ部分での突き当て状態を確保でき、電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0053】
20………積層型圧電振動子、22………電子素子片、24………ベース基板、26………ロウ材、28………引出し電極、30………貫通電極、30A………貫通電極凸部、32………スルーホール、34………メタライズ層、40………三層積層型圧電振動子、42………電子素子片、44A、44B………第1、第2ベース基板、46………圧電振動片、48………矩形枠部、50………脚部、52A、52B………励振電極、54A、54B………引出し配線、56A、56B………引出し電極、58………ロウ材、60………メタライズ層、62………スルーホール、64………貫通電極、64A………貫通電極凸部、66A、66B………外部端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子素子片をベース基板上に搭載して形成される電子部品であって、
前記ベース基板は、前記電子素子片に対向する位置に形成された貫通孔を有し、
前記電子素子片は、前記電子素子片の前記貫通孔に対向する主面に導電膜を有し、
前記貫通孔は封止部材により封止されると共に、当該封止部材が、前記貫通孔の前記電子素子片に対向する開口面を貫通して凸部を形成し、
前記凸部と前記導電膜とが接触していることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
電子素子片の周縁部とベース基板の周縁部とをロウ材により接合したことを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
電子素子片とベース基板との間に凸部の高さに相当するギャップを有していることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記貫通孔は電子素子片側の開口面の面積が他方の開口面に比べて大きくなるように断面がテーパー形状とされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記ロウ材の受け側メタライズ面積をロウ材面積より広く形成してなることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記凸部と電子素子片側電極との接触面には導電性接続層を介在させてなることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項7】
電子素子片に導電膜を形成する工程と、ベース基板に貫通電極を形成する工程と、前記ベース基板の片面をエッチングすることにより前記貫通電極の他端側に電極凸部を露出形成する工程と、前記電子素子片またはベース基板の一方に接合用ロウ材を形成する工程と、前記電子素子片とベース基板とを接合して加熱し前記貫通電極を素子側導電膜に接触させた状態でロウ材を加圧溶着させる工程と、を含む電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記ロウ材を形成する際、前記貫通電極凸部より高さを高く形成することを特徴とする請求項7に記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記ロウ材の受け側には予めロウ材面積より広いメタライズ層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
電子素子片に導電膜を形成する工程と、ベース基板に貫通電極を形成する工程と、前記貫通電極の他端側に前記電子素子片側導電膜に対面する内部導電膜を形成するとともにこの内部導電膜にバンプを形成する工程と、前記電子素子片またはベース基板の一方に接合用ロウ材を形成する工程と、前記電子素子片とベース基板とを接合して加熱し前記バンプを素子側導電膜に接触させた状態でロウ材を加圧溶着させる工程と、を含む電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記ロウ材を形成する際、前記バンプ高さより高く形成してなることを特徴とする請求項10に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−263114(P2010−263114A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113557(P2009−113557)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】