説明

電子部品の実装状態検査方法

【課題】熱硬化型接着剤が硬化した樹脂部を検査対象とする場合において、樹脂部の分布状態の良否を適正に判定することができる樹脂部の分布状態の良否を適正に判定することができる電子部品の実装状態検査方法を提供する。
【解決手段】基板3の電極3a上に端子4aを有するチップ型電子部品4を半田粒子入りの熱硬化型接着剤を介して搭載した後、この基板3を加熱することにより半田粒子を溶融させて端子4aと電極3aとを接合する半田部15aを形成するとともに、熱硬化型接着剤を硬化させて樹脂部15bを形成した状態の実装済基板において、基板3に実装されたチップ型電子部品4を撮像して画像データを取得し、この画像データに基づき基板3上におけるチップ型電子部品4の装着状態を検査するとともに樹脂部15bのチップ型電子部品4の周囲における分布状態を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に実装されたチップ型電子部品を含む電子部品の実装状態を検査する電子部品の実装状態検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品が実装された実装基板は、外観検査ラインにて実装状態検査の対象となる。この実装状態検査においては、実装基板を撮像して得られた画像データを認識処理し、画像中から特定の検査対象部位を検出して良否判定基準データと比較することにより行われる(特許文献1、2、3)。特許文献1に示す先行技術においては、半田付け工程後の基板を対象として、半田付け状態の良否を判定するようにしている。特許文献2では、クリーム半田が印刷されて電子部品が実装された後の基板を対象として、半田印刷状態と電子部品実装状態とを同時に検査するようにしている。そして特許文献3では、実装された部品の一部または全部が基板から浮いた状態にある姿勢不良を検出するための検査用データを、良品基板の画像データを用いて作成する例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−273346号公報
【特許文献2】特開平6−160037号公報
【特許文献3】特開平11−271234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品を基板に実装する形態として、半田粒子を熱硬化型接着剤に含有させた接合材料を用いる実装工法が採用されるようになっている。この実装工法では、接合材料供給後に電子部品が搭載された基板を加熱することにより、電子部品の外部接合用の端子を基板の電極に半田接合して導通させるとともに、熱硬化型接着剤の樹脂成分を硬化させることによって樹脂部を形成する。この樹脂部は、電子部品を基板に接着して固定保持するとともに、半田接合部の周囲を覆って保護する機能を併せ有している。
【0005】
近年部品実装形態の変遷により、上述の接合材料を用いる実装工法における樹脂部に求められる機能も従来と比較して多面的となっている。例えば、予め半導体チップなどの部品が実装された内層基板に表裏両面の配線層を積層した構成の多層部品内蔵基板では、部品実装状態の内層基板は積層工程や表面層への部品実装工程などにおいて再度の加熱過程を経る。これらの加熱工程においては、内層基板で部品の端子を基板の電極に接合する半田接合部の半田は再度溶融して流動可能な状態となる。このとき、半田の流動が規制されてないと溶融半田が流動して短絡する不具合が生じるおそれがある。このような不具合を有効に防止するためには、半田接合部の周囲を樹脂部が完全に包囲して覆っていることが求められる。
【0006】
また実装対象の基板が薄くて撓みやすい樹脂製のフレキシブル基板であるような場合には、実装後の基板は組み立て過程において折り曲げられ、部品実装部位には屈曲による外力が作用する。このとき、フレキシブル基板は剛性に乏しいため半田接合部が曲げ外力によって破断する不具合を生じやすい。このような不具合を防止するためには、樹脂部が半田接合部の周囲のみならず部品の周囲に十分な広がり範囲で形成されて、曲げ外力に対する補強効果が確保されていることが求められる。
【0007】
しかしながら、上述の特許文献例を含め従来技術においては、このような樹脂部は検査対象とされていなかった。このため、従来技術は上述のような機能が求められる樹脂部の形成状態の良否を適正に判定する機能は有しておらず、近年採用されている実装工法には、従来の実装状態検査方法を適用することができなかった。
【0008】
そこで本発明は、熱硬化型接着剤が硬化した樹脂部を検査対象とする場合において、樹脂部の分布状態の良否を適正に判定することができる電子部品の実装状態検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子部品の実装状態検査方法は、基板に実装されたチップ型電子部品を含む電子部品の実装状態を検査する電子部品の実装状態検査方法であって、前記チップ型電子部品の両端に形成された外部接続用の端子を、前記基板の電極上に半田粒子入りの熱硬化型接着剤を介して搭載した後、この基板を加熱することにより前記半田粒子を溶融させて前記端子と前記電極とを接合する半田部を形成するとともに、熱硬化型接着剤を硬化させて樹脂部を形成した状態の実装済基板において、前記基板の上方から光を照射した状態で、この基板に実装されたチップ型電子部品をカメラで撮像して画像データを取得する撮像工程と、前記撮像工程で取得した画像データに基づき前記基板上における前記チップ型電子部品の装着状態を検査する装着状態検査工程と、前記撮像工程で取得した画像データに基づき前記樹脂部のチップ型電子部品の周囲における分布状態を検査する樹脂部検査工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板の電極上に半田粒子入りの熱硬化型接着剤を介して搭載した後、この基板を加熱することにより半田粒子を溶融させて端子と電極とを接合する半田部を形成するとともに、熱硬化型接着剤を硬化させて樹脂部を形成した状態の実装済基板において、基板の上方から光を照射した状態でこの基板に実装されたチップ型電子部品をカメラで撮像して画像データを取得し、この画像データに基づき基板上におけるチップ型電子部品の装着状態を検査するとともに樹脂部のチップ型電子部品の周囲における分布状態を検査することにより、熱硬化型接着剤が硬化した樹脂部を検査対象とする場合において、樹脂部の分布状態の良否を適正に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態の電子部品の実装状態検査装置の構成説明図
【図2】本発明の一実施の形態の電子部品の実装状態検査装置の制御系の構成を示すブロック図
【図3】本発明の一実施の形態の電子部品の実装状態検査装置の検査対象となるチップ型電子部品の実装状態の説明図
【図4】本発明の一実施の形態の電子部品の実装状態検査装置の検査対象となるチップ型電子部品の実装状態の説明図
【図5】本発明の一実施の形態の電子部品の実装状態検査処理を示すフロー図
【図6】本発明の一実施の形態の電子部品の実装状態検査処理を示すフロー図
【図7】本発明の一実施の形態の電子部品の実装状態検査方法における樹脂部検査の説明図
【図8】本発明の一実施の形態の電子部品の実装状態検査方法における樹脂部検査の説明図
【図9】本発明の一実施の形態の電子部品の実装状態検査方法における樹脂部検査の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1を参照して実装状態検査装置1の構成について説明する。図1において、XYテーブルによって水平方向に移動自在な基板保持ステージ2上には、電子部品が実装された検査対象物である実装済基板3(以下、単に「基板3」と略記。)が保持されている。基板3にはチップ型電子部品4を含む複数の電子部品が実装される。なお本実施の形態においては、基板3が多層部品内蔵基板を構成する内層基板である例を示しており、ここでは内層部品としてチップ型電子部品4のみが実装された例を示している。
【0013】
図3(a)、(b)に示すように、チップ型電子部品4は、矩形体の本体ボディ4bの両端部に外部接続用の端子4aが形成された構造となっており、チップ型電子部品4の基板3への実装に際しては、まず熱硬化性樹脂に半田粒子を含有させた構成の熱硬化型接着剤15が予め基板3に形成された電極3aに供給される。そして端子4aを熱硬化型接着剤15を介して電極3aに着地させてチップ型電子部品4を搭載する。その後基板3をリフロー工程に送って加熱することにより、熱硬化型接着剤15中の半田粒子を溶融させて端子4aと電極3aを接合する半田部15aを形成するとともに、熱硬化型接着剤15を硬化させてチップ型電子部品4を周囲から包んで補強する樹脂部15bを形成する。本実施の形態に示す実装状態検査装置1は、実装状態検査において従来は検査対象となっていなかった樹脂部15bを検査対象とすることを特徴的構成としている。
【0014】
基板保持ステージ2の上方には、カメラ5が撮像方向を下向きにして配設されており、カメラ5と基板保持ステージ2の間には、照明部6が配設されている。カメラ5は、照明部6によって照明された状態の基板3上のチップ型電子部品4を撮像する。照明部6は同軸照明光源部8および多段照明光源部9を備えており、カメラ5による撮像に際し、基板3に実装されたチップ型電子部品4へ撮像用の照明光を照射する。同軸照明光源部8から水平方向に照射された照明光は、カメラ5の下方に配置されたハーフミラー7によって下方に反射され、基板3に対してカメラ5の撮像光軸と同軸方向から照射される。多段照明光源部9はそれぞれ高さが異なる上段光源部9a、中段光源部9b、下段光源部9cを備えており、これらの複数の光源部を選択的に点灯することにより、撮像対象に対して異なる照明方向から照明光を照射することができる。カメラ5による撮像に際しては、同軸照明光源部8、多段照明光源部9の複数の光源部からの照明光を組み合わせた最適な照明条件が設定される。
【0015】
図2を参照して、制御系の構成を説明する。図2において制御部10には、カメラ5、照明部6、基板保持ステージ2、表示部13、操作・入力部14が接続されている。制御部10がカメラ5を制御することにより、基板3上のチップ型電子部品4を撮像して画像を取り込む撮像動作が実行される。このとき、制御部10が照明部6を制御して複数の光源部を選択的に点灯させることにより、取得する画像に求められる特性に応じた照明光が、基板3に対して照射される。またこの撮像時に制御部10が基板保持ステージ2を制御することにより、基板3上の所望の撮像対象部位をカメラ5による撮像視野内に位置させることができる。表示部13は液晶パネルなどの表示パネルであり、カメラ5によって取得された撮像画面を表示するほか、制御部10に対する操作指示入力やデータ入力時などの案内画面を表示する。操作・入力部14はキーボードや表示部13に設けられたタッチパネルスイッチなどの入力装置であり、操作指示入力やデータ入力を行う。
【0016】
制御部10は、実装状態検査部11およびワークデータ記憶部12を内蔵している。ワークデータ記憶部12は、実装状態検査部11による検査処理における基板3の検査対象部位、検査順序など、検査対象となるワークについてのデータを記憶する。実装状態検査部11の機能について説明する。実装状態検査部11は第1の装着状態検査部11a、第2の装着状態検査部11b、第1の半田付け状態検査部11c、第2の半田付け状態検査部11d、樹脂部検査部11eより構成される。第1の装着状態検査部11a、第2の装着状態検査部11bは、電子部品の装着状態検査、すなわち基板3の正規実装位置における電子部品の有無や位置ずれ、装着方向(極性)の正否などを検査する機能であり、第1の装着状態検査部11aはBGA(Ball Grid Array)やリード付電子部品などチップ型電子部品4以外の電子部品を対象として、また第2の装着状態検査部11bはチップ型電子部品4を対象として、それぞれ装着状態検査を行う。
【0017】
第1の半田付け状態検査部11c、第2の半田付け状態検査部11dは、半田付け状態の検査、すなわち電子部品の外部接続用の端子と基板3の電極とを接続する半田接合部の形状や面積などを基準判定データと比較することにより、半田付け状態の良否を検査する機能である。第1の半田付け状態検査部11cはリード付電子部品などチップ型電子部品4以外の電子部品を対象として半田付け状態の検査を行い、また第2の半田付け状態検査部11dはチップ型電子部品4を対象として、端子4aと電極3aとを接続する半田部15aの検査を行う。そして樹脂部検査部11eは、半田部15aを補強するためにチップ型電子部品4の周囲に形成される樹脂部15bの状態を検査する。ここでは、樹脂部15bのチップ型電子部品4の周囲における分布状態を検出することにより、樹脂部15bの良否を判定する。
【0018】
すなわち実装状態検査部11は、カメラ5によって撮像した基板3の画像に基づいてチップ型電子部品4の実装状態を検査する機能を有している。さらに本実施の形態においては、実装状態検査部11が、基板3上のチップ型電子部品4の装着状態を検査する第2の装着状態検査部11bと、基板3上のチップ型電子部品4の端子4aと基板3の電極3aとを接続する半田部15aの状態を検査する第2の半田付け状態検査部11dと、半田部15aを補強するために形成される樹脂部15bのチップ型電子部品4の周囲における分布状態を検査する樹脂部検査部11eを含む形態となっている。
【0019】
なおチップ型電子部品4を基板3に実装する際に用いられる実装用接合材料としては半田粒子入りの熱硬化型接着剤15には限定されず、フラックス成分に半田粒子を含有させたクリーム半田を用いる場合もある。このような場合には、樹脂部15bは形成されないことから樹脂部検査部11eによる樹脂検査は不要となり、第2の装着状態検査部11bによる装着状態検査とともに、第2の半田付け状態検査部11dによる半田部検査を行う。これに対し、本実施の形態に示すように、半田粒子入りの熱硬化型接着剤15を用いる場合には、第2の装着状態検査部11bによる装着状態検査と樹脂部検査部11eによる樹脂部検査とを実行すれば、半田部15aの良否を判定する半田部検査は必ずしも必須項目ではなく省略することが可能である。すなわち本実施の形態において、実装状態検査部11は、チップ型電子部品4の実装用接合材料として半田粒子入りの熱硬化型接着剤15を使用している場合は、少なくとも、第2の装着状態検査部11bと樹脂部検査部11eによる検査を実行するようにしている。
【0020】
ここで、チップ型電子部品4の基板3への実装形態および樹脂部検査部11eによって実行される樹脂部検査における良否判定について、図3,図4を参照して説明する。図3は、チップ型電子部品4が基板3に正常に実装された状態を示しており、図3(a)はチップ型電子部品4の実装状態における長手方向の断面形状を示している。図3(a)に示すように、基板3に実装されたチップ型電子部品4は、端子4aと電極3aとのコーナ部にフレット形状の半田部15aが形成されることにより基板3に接続される。半田部15aは、熱硬化型接着剤15中の熱硬化性樹脂が硬化して形成された樹脂部15bによって覆われて補強されている。
【0021】
これとともに、樹脂部15bはチップ型電子部品4の本体ボディ4bの下面と基板3の上面3bとの間の隙間を充填する形で形成され、これにより本体ボディ4bがチップ型電子部品4に強固に固着される。このとき、樹脂部15bが基板3の上面3bとの間の隙間を完全に充填した状態となることにより、内層基板である基板3が後工程において再加熱された場合にあっても、半田部15aが再溶融した半田は樹脂部15bによって閉じ込められ、溶融状態の半田が流動することによる電極3a間の短絡などの不具合が発生しない。
【0022】
また図3(b)は、基板3に実装されたチップ型電子部品4をカメラ5によって撮像した画像5aを示しており、画像5a内には平面視したチップ型電子部品4の実装状態が示されている。画像5a内における背景画像には、基板3の上面3bが基板3の材質などに応じた色で表示される。基板3に形成された電極3aは、相当部分が半田部15a、樹脂部15bによって覆われるが、露呈した部分は材質として銅系の金属などを用いている場合には赤みが強い色で表れる。これに対して、チップ型電子部品4の端子4aは照明光を反射する金属光沢を有していることから、最も輝度の高い明像部分として表れる。そして電極3aと端子4aとを接合する半田部15aは、端子4aと明瞭に区別可能な暗い部分として表れる。そしてチップ型電子部品4の本体ボディ4bの部分は材質に応じた色で表れ、チップ型電子部品4の周囲には、樹脂部15bが分布して広がった状態が示される。
【0023】
本実施の形態に示す樹脂部検査においては、樹脂部15bの分布状態が判定対象となることから、画像5a中で樹脂部15bが他部分と明瞭に識別可能なように、熱硬化型接着剤15の組成や、カメラ5による撮像時の照明方法などを組み合わせる。すなわち、熱硬化型接着剤15に用いる熱硬化性樹脂を着色して他部分と色彩を異ならせる識別方法や、樹脂部15bのエッジが照明光の照射方向によって高輝度の線として表れることを利用して、樹脂部15bの領域を抽出する方法など、各種の方法を適宜選択して採用することができる。
【0024】
ここで前述のように、樹脂部15bは本体ボディ4bの下面を良好に充填していることが求められることから、図3(b)に示すように、実装後のチップ型電子部品4を平面視した画像5aにおいて、本体ボディ4bの端子4aが形成されていない側面4cの近傍も含めて樹脂部15bに覆われているかによって、樹脂部15bの充填具合を判定する。図3(b)に示す例では、電極3aの全周囲に加えて両側面4cの全範囲に亘って樹脂部15bが検出されており、樹脂部15bがチップ型電子部品4の周囲を完全に包囲する形態となっている。これにより本体ボディ4bの下面は樹脂部15bによって充填されていると推定される。したがって、このような場合には、樹脂部15bの状態は合格であると判定される。
【0025】
これに対し、図4は本体ボディ4bの下面が樹脂部15bによって完全に充填されておらず、図4(a)に示すように、本体ボディ4bの下面に空所Vが存在している状態を示している。このような場合には、実装後の後工程に行われる再リフローにおいて、半田部15aが溶融して流動することに起因する不具合が生じるおそれがあることから、実装状態検査においてNGとして排除することが望ましい。
【0026】
このため、本実施の形態においては、図4(b)に示すように、実装後のチップ型電子部品4を平面視した画像5aにおいて、側面4cの特定範囲が樹脂部15bに覆われているかによって、樹脂部15bの充填具合を判定する。図3(b)に示す例では、両側面4cのいずれについても、樹脂部15bは連続した1繋がりとはなっておらず、樹脂部15bがチップ型電子部品4の周囲を完全に包囲するには至っていない。このような状態が検出された場合には、本体ボディ4bの下面には樹脂部15bによって充填されていない空所Vが存在すると推定される。したがって、このような場合には、樹脂部15bの状態はNGであると判定される。
【0027】
なお、図3(b)に示す状態は、画像5aにおける樹脂部15bの連続性という面から見れば、樹脂部15bが連続した単一の塊としては検出されずに、2つの電極3aの周辺を個別に包囲する2個の樹脂部15bの塊が検出されたことを意味している。したがって、チップ型電子部品4の周囲の樹脂部15bが2個以上の塊として判断されたか否かによって、樹脂部15bの状態の合否が判定可能である。さらに換言すれば、チップ型電子部品4において端子4aが形成されていない側の側面4cの中央部に樹脂部15bが存在しない範囲が存在するか否かによって、樹脂部15bの状態の良否を判定することも可能であり、両側面4cの中央部が樹脂部15bで覆われていることを以て、樹脂部15bの状態は合格であると判断するようにしてもよい。
【0028】
すなわち本実施の形態においては、実装状態検査部11の樹脂部検査部11eは、樹脂部15bがチップ型電子部品4の周囲を完全に包囲するか否かを判断し、完全に包囲していると判断した場合は、この樹脂部15bの状態を合格と判定する第1の判定アルゴリズム、チップ型電子部品4の周囲の樹脂部15bが2個以上の塊として検出されたか否かを判断し、2個以上の塊として検出されなかったと判断した場合は、この樹脂部15bの状態を合格と判定する第2の判定アルゴリズムおよびチップ型電子部品4において端子4aが形成されていない両側面4cの中央部が樹脂部15bで覆われているか否かを判断し、両側面4cが樹脂部15bで覆われていると判断した場合は、この樹脂部15bの状態を合格と判定する第3の判定アルゴリズムのいずれかを選択的に用いて、樹脂部15bの状態を検査するようにしている。
【0029】
なお、図4(c)に示すように、両側面のうち一方側の側面4cのみを樹脂部15bが覆っており、他方側の側面4cには樹脂部15bが存在しないような場合には、上述の判定アルゴリズムを単純に適用することはできない。このような場合には、当該基板3の用途や特性などを装置ユーザが個別に判断して、合格とするかNGとするかを定める。
【0030】
次に、図1に示す実装済の基板3に実装されたチップ型電子部品4を含む電子部品の実装状態を検査する電子部品の実装状態検査方法について、図5のフローに則して、各図を参照しながら説明する。すなわち、ここではチップ型電子部品4の両端に形成された外部接続用の端子4aを、基板3の電極3a上に半田粒子入りの熱硬化型接着剤15を介して搭載した後、この基板3を加熱することにより半田粒子を溶融させて端子4aと電極3aとを接合する半田部15aを形成するとともに、熱硬化型接着剤15を硬化させて樹脂部15bを形成した状態の実装済みの基板3を検査対象としている。
【0031】
まず図5において、基板3の上方から照明部6によって照明光を照射した状態で、この基板3に実装されたチップ型電子部品4をカメラ5で撮像して画像データを取得する(撮像工程)(ST1)。これにより、図7(a)に示すチップ型電子部品4の画像が取得される。次いで画像上でチップ型電子部品4の端子4aをサーチする(ST2)。すなわち画像上で高輝度の部分として現れる端子4aを画像認識により検出し、その重心位置を端子基準点Pとして求める。そして認識結果に基づき、端子4aが正常に検出されたか否かを判断し(ST3)、ここで端子4aが検出されないならば、NG判定がなされる。
【0032】
(ST3)にて端子4aが検出されたならば、端子基準点Pを参照位置として本体ボディ4bが存在すべき領域内に設定された第1検査ボックスSB1内の状態をチェックする(ST4)。なおここで(ST2)、(ST4)に示す検査処理は、チップ型電子部品4が正常に装着されているか否かを検査する装着状態検査工程に相当し、この装着状態検査工程では、撮像工程で取得した画像データに基づき、基板3上におけるチップ型電子部品4の装着状態を検査する。
【0033】
そして(ST4)のチェック結果に基づいて、部品が正常に検出されたか否かを判定する(ST5)。すなわち第1検査ボックスSB1内に本体ボディ4bに相当する部分が検出されない場合には、部品が検出されなかったと判断されて、NG判定がなされる。そして第1検査ボックスSB1内に本体ボディ4bに相当する部分が検出されたならば、部品が正常に検出されたと判断され、装着状態検査は良好と判定される。
【0034】
次いでこの後、半田部検査が実行される(ST6)。すなわち、図7(b)に示すように、端子基準点Pを参照位置として半田部15aが存在すべき領域内に設定された第2検査ボックスSB2内に、半田部15aに相当する部分が検出されるか否かを判断する。ここで、第2検査ボックスSB2内に半田部15aに相当する部分が検出されない場合には、半田部15aが検出されなかったと判断されて、NG判定がなされる。そして第2検査ボックスSB2内に半田部15aに相当する部分が検出されたならば半田部15aは正常であると判断され、半田部検査は良好と判定される。なお半田部検査は必須検査工程ではなく、省略が可能である。
【0035】
この後樹脂部検査が実行される(ST8)。すなわち、図7(c)に示すように、端子基準点Pを参照位置として設定されたサーチ開始点SPを起点として、基板3の上面3bを示す背景部分と樹脂部15bとの境界線であるエッジEを輪郭検出処理によって検出し、このエッジEがチップ型電子部品4の周囲でどのような広がり状態となっているかを判定する。すなわち、ここでは、撮像工程で取得した画像データに基づき、樹脂部15bのチップ型電子部品4の周囲における分布状態を実装状態検査部11の樹脂部検査部11eによって検査する。この樹脂部検査工程においては、前述の第1の判定アルゴリズム、第2の判定アルゴリズムおよび第3の判定アルゴリズムのいずれかを選択的に用いて、樹脂部15bの状態を検査する。
【0036】
なお、図5にて(ST1)で示す撮像工程においては、同一の検査対象を照明条件を変えて複数回撮像を行う場合がある。すなわち、図6(a)に示すように、撮像工程(ST1)は複数の撮像ステップ(例えば撮像1,撮像2,撮像3の3ステップ)で構成され、この場合には、撮像工程において取得される画像データには複数の画像が含まれる。撮像1では、照明条件1(例:同軸照明+多段照明)によって画像1を取得する。この画像1は、例えば、装着状態検査、樹脂部検査のいずれにも使用される場合がある。また撮像2では、照明条件2(例:同軸照明のみ)によって画像2を取得する。この画像2は、例えば、半田検査に使用される。もちろん、1回の撮像で取得される1つの画像に基づいて必要な検査を全て実行可能であれば、撮像工程におけるカメラ5による撮像は1回のみでよい。
【0037】
また撮像工程(ST1)が複数回の撮像を含む場合において、これら複数回の撮像は必ずしも連続して実行する必要はない。例えば、装着状態検査、半田部検査、樹脂部検査のそれぞれに異なる照明条件下で撮像された個別の画像を用いる場合には、図6(b)に示すような処理実行順序となる。すなわちまず撮像1を実行して取得された画像を装着状態検査(ST2,4)に用い、次いで撮像2を実行して取得された画像を半田部検査(ST6)に用い、さらに撮像3を実行して取得された画像を樹脂部検査(ST8)に用いる。
【0038】
なお、上述の実施の形態においては、樹脂部検査の手法として、図7に示す方法を用いる例を示しているが、樹脂部検査部11eによる樹脂部検査には各種の検査方法を適用することができる。例えば、樹脂部15bの色が周囲と明確に異なっており、樹脂部15bを色の相違によって抽出可能な場合には、図8に示すように、抽出された領域の形状、塊の数などに基づいて、樹脂部15bの良否を判定するようにしてもよい。すなわち、図8(a)に示すチップ型電子部品4を撮像した画像データから樹脂部15bの領域のみを抽出し、その抽出結果に基づいて、図3,図4にて説明した判定アルゴリズムを適用することにより、同様の樹脂検査結果を得ることができる。
【0039】
図8(b)は、樹脂部15bが両側の電極3aの周囲および両側の側面4cを覆って存在し、樹脂部15bがチップ型電子部品4の周囲を完全に包囲している例を示している。ここでは、前述の第1の判定アルゴリズムにしたがって良否の判定がなされる。図8(c)は、樹脂部15bが両側の電極3aの周囲には存在するものの、両側の側面4cの中央部を覆う樹脂部15bが存在しない例を示している。ここでは、チップ型電子部品4の周囲の樹脂部15bが2個以上の塊として検出されたか否かに基づいて良否判定を行う前述の第2の判定アルゴリズム、もしくは両側面4cの中央部が樹脂部15bで覆われているか否かに基づいて良否判定を行う前述の第3の判定アルゴリズムにしたがって良否の判定がなされる。また図8(d)は、図4(c)に対応するものであり、両側面のうち一方側の側面4cのみを樹脂部15bが覆っており、他方側の側面4cには樹脂部15bが存在しない状態を示している。
【0040】
さらに図9は、上述の第3の判定アルゴリズムにしたがって良否判定するに際し、両側面4cにおける樹脂部15bの有無を直接検出するようにした例を示している。すなわちこの場合には、両側面4cの略中央部に沿って第3検査ボックスSB3を設定し、第3検査ボックスSB3内に樹脂部15bに相当する部分が検出されるか否かによって、両側面4cの中央部が樹脂部15bで覆われているか否かを判断する。なお上述の第1,第2,第3の判定アルゴリズムにしたがって樹脂部検査を行うに際しては、カメラ5によって取得した画像データに基づいて公知の画像処理手法を用いる方法であれば、上述例以外にも各種の検査手法を用いることができる。
【0041】
上記説明したように、本実施の形態に示す電子部品の実装状態検査方法は、基板3の電極3a上にチップ型電子部品4の端子4aを半田粒子入りの熱硬化型接着剤15を介して着地させてチップ型電子部品4を搭載した後、この基板3を加熱することにより半田粒子を溶融させて端子4aと電極3aとを接合する半田部15aを形成するとともに、熱硬化型接着剤を硬化させて樹脂部15bを形成した状態の基板3において、基板3の上方から光を照射した状態でこの基板3に実装されたチップ型電子部品4をカメラ5で撮像して画像データを取得し、この画像データに基づき基板3上におけるチップ型電子部品4の装着状態を検査するとともに、樹脂部15bのチップ型電子部品4の周囲における分布状態を検査するようにしたものである。
【0042】
これにより、熱硬化型接着剤15が硬化した樹脂部15bを検査対象に含む場合において、樹脂部15bの分布状態の良否を適正に判定することができ、樹脂部15bによって半田部15aを確実に覆って保護することができる。したがって、多層部品内蔵基板の内層基板のように、部品実装後に再加熱工程を経る場合にあっても、再加熱時に半田部15aが溶融した流動状態の半田は樹脂部15bによって覆われた状態を保ち、半田の短絡による不具合を防止することができる。
【0043】
また本実施の形態に示す実装状態検査を適用することにより、実装対象の基板が薄くて撓みやすい樹脂製のフレキシブル基板であって、実装後の曲げ外力に対して補強を要する場合にあっても、実装後の電子部品は、周囲に必要十分な広がり範囲で形成された樹脂部によって、曲げ外力に対して有効に補強される。これにより、実装後の基板が組み立て過程において折り曲げられ、部品実装部位に屈曲による外力が作用した場合にあっても、半田接合部が曲げ外力によって破断する不具合を生じない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の電子部品の実装状態検査方法は、熱硬化型接着剤が硬化した樹脂部を検査対象とする場合において、樹脂部の分布状態の良否を適正に判定することができるという効果を有し、基板に実装されたチップ型電子部品を含む電子部品の実装状態を検査する分野において有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 実装状態検査装置
2 基板保持ステージ
3 基板
3a 電極
4 チップ型電子部品
4a 端子
4b 本体ボディ
4c 側面
5 カメラ
6 照明部
8 同軸照明光源部
9 多段照明光源部
15 熱硬化型接着剤
15a 半田部
15b 樹脂部
V 空所
P 端子基準点
SP サーチ開始点
SB1 第1検査ボックス
SB2 第2検査ボックス
SB3 第3検査ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装されたチップ型電子部品を含む電子部品の実装状態を検査する電子部品の実装状態検査方法であって、
前記チップ型電子部品の両端に形成された外部接続用の端子を、前記基板の電極上に半田粒子入りの熱硬化型接着剤を介して搭載した後、この基板を加熱することにより前記半田粒子を溶融させて前記端子と前記電極とを接合する半田部を形成するとともに、熱硬化型接着剤を硬化させて樹脂部を形成した状態の実装済基板において、
前記基板の上方から光を照射した状態で、この基板に実装されたチップ型電子部品をカメラで撮像して画像データを取得する撮像工程と、
前記撮像工程で取得した画像データに基づき前記基板上における前記チップ型電子部品の装着状態を検査する装着状態検査工程と、
前記撮像工程で取得した画像データに基づき前記樹脂部のチップ型電子部品の周囲における分布状態を検査する樹脂部検査工程とを含むことを特徴とする電子部品の実装状態検査方法。
【請求項2】
前記樹脂部検査工程において、前記樹脂部がチップ型電子部品の周囲を完全に包囲するか否かを判断し、完全に包囲していると判断した場合は、この樹脂部の状態を合格と判定することを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装状態検査方法。
【請求項3】
前記樹脂部検査工程において、前記チップ型電子部品の周囲の樹脂部が2個以上の塊として検出されたか否かを判断し、2個以上の塊として検出されなかったと判断した場合は、この樹脂部の状態を合格と判定することを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装状態検査方法。
【請求項4】
前記樹脂部検査工程において、前記チップ型電子部品において端子が形成されていない両側面の中央部が樹脂部で覆われているか否かを判断し、両側面が樹脂部で覆われていると判断した場合は、この樹脂部の状態を合格と判定することを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装状態検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−37256(P2012−37256A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175017(P2010−175017)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】