説明

電子部品封止用のシート状エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた電子部品装置

【課題】シート封止に必要な可撓性を確保しつつ、難燃性、接着性、ボイド生成抑制にも優れた電子部品封止用のシート状エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた電子部品装置を提供する。
【解決手段】金属水酸化物およびホスファゼン化合物の合計含有量が、シート状エポキシ樹脂組成物全体の70〜90重量%であるシート状エポキシ樹脂組成物である。そして、上記シート状エポキシ樹脂組成物を用いた電子部品装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子、コンデンサおよび抵抗素子等の電子部品封止用のシート状エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた電子部品装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、実装基板上の半導体素子、コンデンサおよび抵抗素子等の電子部品の封止は、粉末状エポキシ樹脂組成物によるトランスファー封止や、液状エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂等によるポッティング、ディスペンス、印刷等によって行われているが、近年、より安価で簡便な封止方法としてシート状エポキシ樹脂組成物を用いたシート封止が提案されている。(特許文献1〜3)
また、最近では安全性の観点から、電子部品装置および実装基板に難燃性が求められる場合が多くなっている。(特許文献4〜6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−327623号公報
【特許文献2】特開2003−17979号公報
【特許文献3】特開2006−19714号公報
【特許文献4】特開2003−192876号公報
【特許文献5】特開2006−131653号公報
【特許文献6】特開2007−284461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記シート状エポキシ樹脂組成物は、シート封止に必要な可撓性を得るために、エラストマー等の非難燃性の可撓性付与剤を多量に添加する必要があり、難燃性を高めることは困難であった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、難燃性のみならず、接着性、ボイド生成抑制にも優れた電子部品封止用のシート状エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた電子部品装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の電子部品封止用のシート状エポキシ樹脂組成物は、下記A〜F成分を含有し、E成分およびF成分の合計含有量が、シート状エポキシ樹脂組成物全体の70〜90重量%であることを特徴とする。
A:エポキシ樹脂
B:フェノール樹脂
C:エラストマー
D:硬化促進剤
E:金属水酸化物
F:式(1)または式(2)で表されるホスファゼン化合物
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
また、本発明の電子部品装置は、上記シート状エポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子部品封止用のシート状エポキシ樹脂組成物は、シート封止用の樹脂組成物として求められる可撓性を有しつつ、接着性、ボイド生成抑制および難燃性にも優れた効果を発揮する。また、本発明の電子部品封止用のシート状エポキシ樹脂組成物を用いると、高い難燃性を有する電子部品装置を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電子部品装置の厚み方向における断面図の一例を示す。
【図2】本発明の電子部品装置の厚み方向における断面図の別の態様の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0013】
本発明の電子部品封止用のシート状エポキシ樹脂組成物は、下記A〜F成分を含有し、かつE成分およびF成分の合計含有量がシート状エポキシ樹脂組成物全体の70〜90重量%である。
A:エポキシ樹脂
B:フェノール樹脂
C:エラストマー
D:硬化促進剤
E:金属水酸化物
F:式(1)または式(2)で表されるホスファゼン化合物
【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
エポキシ樹脂(A成分)としては、特に限定されるものではない。例えば、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を用いることができる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。エポキシ樹脂の硬化後の靭性及びエポキシ樹脂の反応性を確保する観点からは、エポキシ当量150〜250、軟化点もしくは融点が50〜130℃の常温で固形のものが好ましく、中でも、信頼性の観点から、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。また、低応力性の観点から、アセタール基やポリオキシアルキレン基等の柔軟性骨格を有する変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく、アセタール基を有する変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、液体状で取り扱いが良いであることから、特に好適に用いることができる。
【0017】
エポキシ樹脂(A成分)の含有量は、シート状エポキシ樹脂組成物全体に対して1〜10重量%の範囲に設定することが好ましい。
【0018】
フェノール樹脂(B成分)は、エポキシ樹脂(A成分)との間で硬化反応を生起するものであれば特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、レゾール樹脂、等が用いられる。これらフェノール樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。そして、フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂(A成分)との反応性の観点から、水酸基当量が70〜250、軟化点が50〜110℃のものを用いることが好ましく、中でも硬化反応性が高いという観点から、フェノールノボラック樹脂を好適に用いることができる。また、信頼性の観点から、フェノールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂のような低吸湿性のものも好適に用いることができる。
【0019】
そして、エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)の配合割合は、硬化反応性という観点から、エポキシ樹脂(A成分)中のエポキシ基1当量に対して、フェノール樹脂(B成分)中の水酸基の合計が0.7〜1.5当量となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2当量である。
【0020】
エポキシ樹脂(A成分)およびフェノール樹脂(B成分)とともに用いられるエラストマー(C成分)は、シート封止に必要な可撓性をエポキシ樹脂組成物に付与するものであり、このような作用を奏するものであれば特にその構造を限定するものではない。例えば、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリル系共重合体、スチレンアクリレート系共重合体、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム等のゴム質重合体を用いることができる。中でも、エポキシ樹脂(A成分)へ分散させやすく、またエポキシ樹脂(A成分)との反応性も高いために、得られるエポキシ樹脂組成物の耐熱性や強度を向上させることができるという観点から、アクリル系共重合体を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。なお、アクリル系共重合体は、例えば、所定の混合比にしたアクリルモノマー混合物を、定法によってラジカル重合することにより合成することができる。ラジカル重合の方法としては、有機溶剤を溶媒に行う溶液重合法や、水中に原料モノマーを分散させながら重合を行う懸濁重合法が用いられる。
【0021】
エラストマー(C成分)の含有量は、シート状エポキシ樹脂組成物全体の10〜25重量%の範囲に設定することが好ましい。すなわち、エラストマー(C成分)の含有量が10重量%未満では、シート封止に十分な可撓性を得ることが困難となる。また、含有量が25重量%を越えると、シート状エポキシ樹脂組成物の難燃性を得ることが困難となるとともに、シート状エポキシ樹脂組成物の硬化物の強度も低下する傾向がみられ、電子部品装置の信頼性を損なうおそれがある。
【0022】
硬化促進剤(D成分)は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の硬化を進行させるものであれば特に限定されるものではないが、硬化性と保存性の観点から、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機リン系化合物や、イミダゾール系化合物が好適に用いられる。これら硬化促進剤は、単独で用いても良いし、他の硬化促進剤と併用しても構わない。
【0023】
金属水酸化物(E成分)は難燃剤として使用する。金属水酸化物(E成分)としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄、水酸化カルシウム、水酸化スズ、複合化金属水酸化物等の各種金属水酸化物を用いることができる。比較的少ない添加量で難燃性を発揮できる点や、コスト的な観点から水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを用いることが好ましく、水酸化アルミニウムを用いることが特に好ましい。金属水酸化物(E成分)の平均粒径としては、シート状エポキシ樹脂組成物を加熱した際に適当な流動性を確保するという観点から、平均粒径が1〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは2〜5μmである。金属水酸化物(E成分)の平均粒径が1μm未満では、シート状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散させることが困難となるとともに、シート状エポキシ樹脂組成物の加熱時における流動性が十分に得られない傾向がある。また、平均粒径が10μmを超えると、金属水酸化物(E成分)の添加量あたりの表面積が小さくなるため、難燃効果が低下する傾向がみられる。
【0024】
ホスファゼン化合物(F成分)は、式(1)または式(2)で表されるホスファゼン化合物である。
【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
上記式(1)または式(2)で表されるホスファゼン化合物(F成分)は、上記金属水酸化物(E成分)とともに難燃剤として使用する。このホスファゼン化合物(F成分)は、SPR−100、SA−100、SP−100(以上、大塚化学株式会社)、FP−100、FP−110(以上、株式会社伏見製薬所)等が市販品として入手可能である。少量でも難燃効果を発揮するという観点から、式(1)または式(2)で表されるホスファゼン化合物に含まれるリン元素の含有率は、12重量%以上であることが好ましい。また、安定性およびボイドの生成抑制という観点から、式(3)で表される環状ホスファゼンオリゴマーを用いることが好ましい。式(3)で表される環状ホスファゼンオリゴマーは、FP−100、FP−110(以上、株式会社伏見製薬所)等が市販品として入手可能である。
【0028】
【化7】

【0029】
なお、上記金属水酸化物(E成分)およびホスファゼン化合物(F成分)を併用することにより、シート封止に必要な可撓性を確保しつつ、難燃性に優れたシート状エポキシ樹脂組成物を得ることが可能となる。すなわち、難燃剤として金属水酸化物(E成分)のみを用いた場合は、十分な可撓性を得ることが困難となり、ホスファゼン化合物(F成分)のみを用いた場合は、十分な難燃性を得ることが困難となる。
【0030】
金属水酸化物(E成分)およびホスファゼン化合物(F成分)の含有量は、両成分の合計量が、シート状エポキシ樹脂組成物全体の70〜90重量%であり、好ましくは75〜85重量%である。すなわち、合計量が70重量%未満では、シート状エポキシ樹脂組成物の十分な難燃性が得ることが困難となり、90重量%を超えると、シート状エポキシ樹脂組成物の被着体への接着性が低下し、ボイドが発生する傾向がみられる。
【0031】
また、ホスファゼン化合物(F成分)の含有量が、シート状エポキシ樹脂組成物中に含まれる、エポキシ樹脂(A成分)、フェノール樹脂(B成分)、エラストマー(C成分)、硬化促進剤(D成分)およびホスファゼン化合物(F成分)を含む有機成分全体の10〜30重量%であることが好ましい。すなわち、ホスファゼン化合物(F成分)の含有量が、有機成分全体の10重量%未満では、シート状エポキシ樹脂組成物の難燃性が低下するとともに、被着体に対する凹凸追従性が低下し、ボイドが発生する傾向がみられる。含有量が有機成分全体の30重量%を超えると、シート状エポキシ樹脂組成物の表面にタックが生じやすくなり、シート状エポキシ樹脂組成物を被着体に位置合わせしにくくなる等作業性が低下する傾向がみられる。
【0032】
なお、本発明のシート状エポキシ樹脂組成物では、上記の各成分以外に必要に応じて、シリカ粉末をはじめとする金属水酸化物(E成分)以外の無機充填剤、カーボンブラックをはじめとする顔料等、他の添加剤を適宜配合することができる。
【0033】
上記金属水酸化物(E成分)以外の無機充填剤としては、特に限定されるものではなく従来公知の各種充填剤を用いることができる。例えば、石英ガラス粉末、タルク、シリカ粉末(溶融シリカ粉末や結晶性シリカ粉末等)、アルミナ粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ケイ素粉末等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。中でも、コストの観点および得られる硬化体の熱線膨張係数を低下させて内部応力を低減できるという観点から、シリカ粉末を用いることが好ましく、上記シリカ粉末の中でも溶融シリカ粉末を用いることが、高充填性および高流動性という点から特に好ましい。上記溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末が挙げられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが特に好ましい。中でも、平均粒径が0.1〜30μmの範囲のものを用いることが好ましく、0.3〜15μmの範囲のものを用いることが特に好ましい。なお、上記平均粒径は、例えば、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導き出すことができる。
【0034】
また、本発明のシート状エポキシ樹脂組成物は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0035】
まず、各配合成分を混合することによりエポキシ樹脂組成物を調製するが、各配合成分が均一に分散混合される方法であれば特に限定するものではない。例えば、各配合成分を有機溶剤等に溶解または分散したワニスを塗工してシート状に形成する。あるいは、各配合成分を直接ニーダー等で混練することにより固形樹脂組成物を調製し、このようにして得られた固形樹脂組成物を押し出してシート状に形成してもよい。中でも、簡便に均一な厚みのシートを得ることができるという点から、上記ワニス塗工を好適に用いることができる。
【0036】
より具体的には、上記A〜F成分および必要に応じて他の添加剤を常法に準じて適宜混合し、有機溶剤に均一に溶解あるいは分散させ、ワニスを調製する。ついで、上記ワニスをポリエステル等の基材上に塗布し乾燥させることによりシート状エポキシ樹脂組成物を得ることができる。そして必要により、シート状エポキシ樹脂組成物の表面を保護するためにポリエステルフィルム等の剥離シートを貼り合わせてもよい。剥離シートは封止時に剥離する。
【0037】
上記有機溶剤としては、特に限定するものではなく従来公知の各種有機溶剤、例えばメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。また通常、ワニスの固形分濃度が30〜60重量%の範囲となるように有機溶剤を用いることが好ましい。
【0038】
有機溶剤乾燥後のシートの厚みは、特に制限されるものではないが、厚みの均一性と残存溶剤量の観点から、通常、5〜100μmに設定することが好ましく、より好ましくは20〜70μmである。このようにして得られたシート状エポキシ樹脂組成物は、必要により所望の厚みとなるように積層して使用してもよい。すなわち、シート状エポキシ樹脂組成物は、単層構造にて使用してもよいし、2層以上の多層構造に積層してなる積層体として使用してもよい。
【0039】
上記のようにして得られる本発明のシート状エポキシ樹脂組成物を用いると、高い難燃性を有する電子部品装置を容易に得ることができる。この電子部品装置(図1)は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0040】
まず、実装基板上に電子部品を、実装基板の接続用電極部と電子部品の接続用電極部が接続するように設置する。
【0041】
シート状エポキシ樹脂組成物を、電子部品を覆うように実装基板上に載置する。
【0042】
ついで、シート状エポキシ樹脂組成物を、温度60〜120℃、圧力100〜2000kPaでプレスすることにより、電子部品および実装基板と接着する。その際、プレス時間は0.5〜5分が好ましい。また、電子部品と実装基板による凹凸部に対するシート状エポキシ樹脂組成物の追従性および密着性を向上させるため、真空条件下で加圧することが好ましい。
【0043】
その後、シート状エポキシ樹脂組成物を、大気圧下で、温度100〜200℃で硬化することにより、その硬化体からなる封止樹脂層によって電子部品が封止された電子部品装置集合体を得る。その際、速やかに、かつ完全に熱硬化を進行させるため、加熱時間は30〜120分であることが好ましい。
【0044】
最後に、樹脂封止面にダイシングテープを貼り、電子部品装置集合体をダイシングすることにより、電子部品装置(図1)を得る。
【0045】
また、電子部品装置の別の形態として、電子部品側面を樹脂封止した電子部品装置(図2)については、例えば以下のようにして製造することができる。
【0046】
実装基板上に載置された電子部品の位置に合わせて予めパンチ等で貫通孔を設けておいたシート状エポキシ樹脂組成物を、電子部品が貫通孔の中に含まれるようにして前記実装基板上に設置する。ついで、上型が柔軟なゴム製シートからなるプレス装置を用い、それ以外は上記電子部品装置の製法と同様にして、電子部品装置(図2)を得る。
【実施例】
【0047】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0048】
まず、下記に示す各成分を準備した。
〔エポキシ樹脂a〕
変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社、EPICLON EXA−4850−150)
〔エポキシ樹脂b〕
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社、EPPN−501HY)
〔フェノール樹脂〕
ノボラック型フェノール樹脂(荒川化学工業株式会社、P−200)
〔エラストマーa〕
アクリル系共重合体(ブチルアクリレート:アクリロニトリル:グリシジルメタクリレート=85:8:7重量%からなる共重合体。重量平均分子量80万)
上記アクリル系共重合体は、以下のように合成した。ブチルアクリレート、アクリロニトリル、グリシジルメタクリレートを85:8:7の仕込み重量比率にて、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤に用い、メチルエチルケトン中で窒素気流下、70℃で5時間と80℃で1時間のラジカル重合を行うことにより、目的とするアクリル系共重合体を得た。
〔エラストマーb〕
スチレンアクリレート系共重合体(東亜合成株式会社、UG−4040)
〔硬化促進剤〕
2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社、2PHZ−PW)
〔金属水酸化物a〕
平均粒径2.7μmの水酸化アルミニウム粉末(昭和電工株式会社、HP−360)
〔金属水酸化物b〕
平均粒径1.2μmの水酸化マグネシウム(タテホ化学工業株式会社、PZ−1)
〔ホスファゼン化合物〕
下記の式(4)で表されるホスファゼン化合物(株式会社伏見製薬所、FP−100)
【0049】
【化8】

【0050】
〔ホスファゼン化合物以外の有機リン化合物a〕
下記の式(5)で表されるビフェニルリン酸エステル化合物(三光株式会社、HCA)
【0051】
【化9】

【0052】
〔ホスファゼン化合物以外の有機リン化合物b〕
下記の式(6)で表されるトリフェニルホスフェート(大八化学工業株式会社、TPP)
【0053】
【化10】

【0054】
〔無機充填材〕
平均粒径7μmの球状溶融シリカ粉末(電気化学工業株式会社、FB−7SDC)
〔実施例1〜7、比較例1〜4〕
〔シート状エポキシ樹脂組成物の作製〕
表1〜表3に示す割合で各成分を分散混合し、これに各成分の合計量と同量のメチルエチルケトンを加えて、塗工用ワニスを調製した。
【0055】
つぎに、上記ワニスを、厚さ38μmのポリエステルフィルム(三菱樹脂株式会社、MRF−38)の剥離処理面上にコンマコーターにて塗工し、乾燥することにより厚みが50μmのシート状エポキシ樹脂組成物を得た。
【0056】
ついで、別途用意したポリエステルフィルムの剥離処理面を、シート状エポキシ樹脂組成物に貼り合わせて巻き取った。その後、ポリエステルフィルムを適宜剥離しながら、ロールラミネーターにより上記シート状エポキシ樹脂組成物を3枚積層することにより、厚さ150μmのシート状エポキシ樹脂組成物を得た。
〔電子部品装置集合体の作製〕
電子部品として積層セラミックコンデンサ(コンデンサ厚み500μm)を碁盤目状に1万個配列載置した縦150mm、横150mm、厚み300μmのガラス−エポキシ(FR−4)基板を準備し、得られたシート状エポキシ樹脂組成物を基板上の全ての電子部品を覆うように配置した。配置したシート状エポキシ樹脂組成物を、真空下(0.1kPa)、温度80℃、圧力300kPaでプレスすることにより、電子部品および実装基板と接着した。ついで、大気圧下でシート状エポキシ樹脂組成物を熱硬化(150℃、1時間)させて電子部品を封止し、常温まで自然冷却させることにより電子部品装置集合体を得た。最後に、樹脂封止面にダイシングテープを貼り、前記電子部品装置集合体をダイシングすることにより、電子部品装置を得た。
〔難燃性〕
得られたシート状エポキシ樹脂組成物の難燃性を以下のように評価した。
【0057】
シート状エポキシ樹脂組成物を、熱硬化(条件:150℃、1時間加熱)させて硬化物を作製し、得られた硬化物についてUL94V−0規格に従って評価し、UL94V−0規格に合格したものを○、不合格のものを×とした。
〔表面タック〕
得られたシート状エポキシ樹脂組成物の表面タックの有無を、指触テストにて判定した。
〔内部ボイドの有無〕
得られた電子部品装置中の内部ボイド有無について、高速フーリエ変換型超音波顕微鏡(C−SAM D6000、日本バーンズ株式会社)を用いて確認を行った。50μm以下の微小な内部ボイドが0だったものを○、1〜50個だったものを△、51個以上だったものを×とした。
〔接続信頼性〕
得られた電子部品装置を、半田リフロー時の条件下(260℃で10秒間の加熱を3回反復)にさらした。ついで、封止樹脂層と実装基板や電子部品との剥離の有無を、前記高速フーリエ変換型超音波顕微鏡にて観察し、剥離がなかったものを○、あったものを×とした。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
その結果、実施例品は、難燃性および接続信頼性に優れていることがわかる。特に、ホスファゼン化合物(F成分)の含有量が、有機成分全体の10〜30重量%である実施例1〜5は、ボイド生成抑制および表面タック生成抑制にも優れていることがわかる。
【0062】
これに対して、金属水酸化物(E成分)およびホスファゼン化合物(F成分)の合計含有量が、シート状エポキシ樹脂組成物全体の70〜90重量%の範囲から外れる比較例1および2は、難燃性または接続信頼性に劣るものであった。また、ホスファゼン化合物F成分以外の有機リン系の難燃剤を用いた比較例3および4では、十分な難燃性が得られないことがわかる。金属水酸化物ではなく球状溶融シリカ粉末を用いた比較例5についても、十分な難燃性が得られないことがわかる。
【符号の説明】
【0063】
1 電子部品
2 実装基板
3 電子部品の接続用電極部
4 封止樹脂層
5 貫通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A〜F成分を含有する電子部品封止用のシート状エポキシ樹脂組成物であって、E成分およびF成分の合計含有量が、シート状エポキシ樹脂組成物全体の70〜90重量%であるシート状エポキシ樹脂組成物。
A:エポキシ樹脂
B:フェノール樹脂
C:エラストマー
D:硬化促進剤
E:金属水酸化物
F:式(1)または式(2)で表されるホスファゼン化合物
【化1】

【化2】

【請求項2】
E成分が、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムである、請求項1に記載のシート状エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
F成分の含有量が、前記シート状エポキシ樹脂組成物に含まれる有機成分全体の10〜30重量%である、請求項1または2に記載のシート状エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のシート状エポキシ樹脂組成物を用いて電子部品を封止してなる電子部品装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−32436(P2011−32436A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182614(P2009−182614)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】