説明

電子部品用冷却装置及びその製造方法

【課題】電子部品の冷却効率を十分に高めることが可能な電子部品用冷却装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】金属パイプ50と、金属パイプ50の外面上に配置された金属箔20と、金属パイプ50の外面と金属箔20とを接着する熱硬化した樹脂層10と、を有する電子部品用冷却装置100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用冷却装置に関し、特に、電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド電気自動車等に搭載されるインバータ内のパワー半導体等の自動車用電子部品の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関に代わり、電気を駆動力として用いる電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド電気自動車等が注目されている。これらの自動車では、バッテリに蓄えられた電気エネルギーを用いて、インバータを介してモータを駆動し、動力を得ている。これらのインバータには大電流が流れるため、インバータを構成しているIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等のパワー半導体と呼ばれる電子部品の発熱が大きくなる。したがって、電子部品を冷却するための冷却能力の大きな冷却装置が必要とされている。
【0003】
特許文献1(特開2008−221951号公報)には、金属パイプからなる冷却装置上に直接電子部品(インバータ10)を固定し、該冷却装置の金属パイプ内に冷却液を流して電子部品を冷却する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−221951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属パイプの表面には、金属パイプの製造時等に形成されるうねり等の細かな凹凸がある場合が多く、金属パイプの表面に直接、金属パイプとは電気絶縁機能を有する電子部品を固定しても電子部品と金属パイプとの表面との間の凹凸を吸収することができず微少なボイドが発生し、電子部品の冷却効率が十分でない。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、電子部品の冷却効率を十分に高めることが可能な電子部品用冷却装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属パイプと、前記金属パイプの外面上に配置された金属箔と、前記金属パイプの外面と前記金属箔とを接着する熱硬化した樹脂層と、を有する電子部品用冷却装置を提供する。
【0008】
本発明によれば以下のような作用がある。まず、熱硬化前の樹脂の柔軟性を利用することにより、表面に凹凸がある金属パイプの外面と、金属箔とをボイドが少ない状態で接着することが容易である。この金属箔上に電子部品を半田等によりボイドが少ない状態で接着させることにより、最終的に、電子部品と金属パイプの外面との間のボイドを十分少なくしてこれらに電気絶縁機能をもたせた状態で熱的に接触させることができ、電子部品の冷却効率を高くできる。
【0009】
ここで、前記熱硬化した樹脂層は、セラミックス粒子を含むことが好ましい。セラミックス粒子は、樹脂よりも熱伝導性がよいので、より一層冷却効率を高められる。
【0010】
本発明に係る電子部品用冷却装置の製造方法は、金属パイプと、金属パイプ外面上に積層されたBステージの熱硬化性樹脂シートと、樹脂シート上に積層された金属箔と、を有する構造体を、可撓性の容器内に収容する収容工程と、可撓性の容器内を減圧する減圧工程と、減圧された状態の可撓性の容器を、外側からガスにより加圧する加圧工程と、減圧及び加圧がなされた状態で、樹脂シートを加熱する加熱工程と、を含む。
【0011】
上記方法によれば、Bステージの熱硬化性樹脂シート及び金属箔が積層された金属パイプを可撓性の容器内に収容し、可撓性の容器内を減圧することにより、可撓性の容器が金属パイプに押しつけられて、金属箔が樹脂シートに密着し、樹脂シートが金属パイプに密着することにより、金属箔と樹脂シートとの間及び樹脂シートと金属パイプとの間の両接着界面間のボイドが除去される。さらに、容器内を減圧しつつ、外側から可撓性の容器を加圧することにより、より一層金属箔と樹脂シート及び樹脂シートと金属パイプが密着し、両接着界面間の微小なボイドまでもがさらに除去される。その後、減圧及び加圧した状態のまま樹脂シートを加熱することにより、金属箔と樹脂シート及び樹脂シートと金属パイプが密着した状態のまま、すなわち、ボイドが除去された状態のまま、熱硬化性樹脂が硬化される。このようにして、金属パイプと樹脂シートとの間及び樹脂シートと金属パイプとの間の両接着界面間に存在するボイドが低減された冷却装置を容易に得ることができる。
【0012】
また、加熱工程の後に、可撓性の容器内から構造体を取り出して、樹脂シートを加熱工程よりさらに高い温度で加熱するアニーリング工程、をさらに含むことが好ましい。これによって、樹脂シートの硬化をより一層進めることができ、より強固に金属パイプと金属箔とを接着することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電気絶縁機能を有する冷却効率の高い電子部品用冷却装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品用冷却装置を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1のA−A断面図である。図2(b)は、図1の金属パイプ50の変形例を示す断面図である。
【図3】図3(a)は、図1の電子部品用冷却装置の製造方法の第1例を示す斜視図である。図3(b)は、図1の電子部品用冷却装置の製造方法の第1例を示す図3(a)に続く斜視図である
【図4】図4は、図1の電子部品用冷却装置の製造方法の第1例を示す図3(b)に続く断面図である。
【図5】図5は、図1の電子部品用冷却装置の製造方法の第2例を示す斜視図である。
【図6】図6(a)は、図1の電子部品用冷却装置にパワー半導体300を実装した、電子部品用冷却装置の使用例を示す斜視図である。図6(b)は、図6(a)のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0016】
<電子部品用冷却装置の第1実施形態>
図1は、本発明に係る実施形態の一例にかかる電子部品用冷却装置100の基本構成を示す斜視図である。図2(a)は、図1の電子部品用冷却装置100のA−A断面図である。
【0017】
本実施形態に係る電子部品用冷却装置100は、図1に示すように、主として、金属パイプ50と、金属パイプ50の外面の一部50a上に配置された金属箔20と、金属パイプ50と金属箔20とを接着する樹脂層10と、を有する。
【0018】
(金属パイプ)
金属パイプ50は、上面及び下面が平行な平板状であり、両側面が丸みを帯びており、全体として筒状をなしている。金属パイプ50の大きさは特に限定されないが、例えば、軸方向(Y方向)の長さを100〜400mm、高さ(Z方向)を10〜30mm、幅(X方向)を30〜60mmとすることができる。
【0019】
筒状の金属パイプ50の軸方向両端には、それぞれ、拡径パイプ51を介して、冷却液の流入又は流出用のノズル52がそれぞれ設けられており、金属パイプ50の内に冷却液を流通できるようになっている。
【0020】
金属パイプ50、拡径部51、ノズル52を形成する金属としては、例えば、銅及びアルミニウム並びにこれらの金属の合金等を用いることができるが、加工がしやすく、熱伝導率が高いことから、銅又は銅合金が特に好ましい。金属の板の厚みは、例えば、0.5〜2mmとすることができる。
【0021】
なお、金属パイプ50は、図2(b)に示すように、上面及び下面が平行な平板状でなくてもよく、幅方向(X方向)及び/又は長さ方向(Y方向)に微少な丸みを帯びた凸形状であってもよい。
【0022】
また、金属パイプ50は、図2(a)以外の形態として、内管を収容したものでもよい。内管の数は限定しない。
【0023】
(電気絶縁性樹脂層)
図1に戻って、金属パイプ50の外面上には、金属パイプの外面50と金属箔20とを接着する樹脂層10が積層されている。樹脂層10の形状は特に限定されないが、本実施形態では矩形状である。樹脂層10の数も特に限定されないが、本実施形態では、金属パイプ50の外面上に軸方向に沿って1枚1層ずつ一列に整列している。1枚の樹脂層10の大きさも特に限定されないが、金属箔20と金属パイプ50との沿面耐圧の関係から、樹脂層10の上部に貼り合わせられる金属箔20の大きさよりも大きくする必要がある。金属箔20と金属パイプ50との沿面距離は、実装される電子部品の電流や電圧の関係で決定される。また、樹脂層10の厚さも特に限定されないが、電子部品に要求される耐電圧性能を満足する厚みであることが好ましい。
【0024】
樹脂層10は、熱硬化性樹脂を硬化することにより形成される電気絶縁性の樹脂層であり、金属パイプ50と接着するとともに、金属箔20とも接着している。樹脂層10を形成するための熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂等の公知の種々の熱硬化性樹脂を使用できる。
【0025】
樹脂層10を形成する熱硬化性樹脂は、架橋により硬化した樹脂成分に加えて、電気絶縁性のセラミックス粒子を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂がセラミックス粒子を含む場合、セラミックス粒子が樹脂よりも熱伝導性がよいことから、より一層電子部品の冷却効率を高くできる。このようなセラミックス粒子としては、例えば、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子等が挙げられる。これらの粒子の粒径は特に限定されない。また、セラミックス粒子の含有量は特に限定されない。
【0026】
(金属箔)
各樹脂層10には、金属箔20が1枚接着されている。金属箔20の大きさや形状は特に限定されず、固定されるべき電子部品の形状に合わせて適宜設定できるが、樹脂層10よりも面積が小さいことが好ましい。金属箔20の厚さも特に限定されないが、電子部品を駆動できる電流容量を許容できる厚みと面積を有していることが好ましい。金属箔20は、圧延法等により製造されたものを使用できる。
【0027】
金属箔20を形成する金属としては、例えば、銅、銅合金、アルミ等を用いることができ、この中でも電気伝導度の大きいことから、銅が好ましい。
【0028】
本実施形態に係る電子部品用冷却装置100によれば、熱硬化性樹脂を硬化して形成される樹脂層10は、熱硬化前の樹脂の柔軟性を利用することにより、表面に凹凸がある金属パイプ50の外面と、金属箔20とをボイドが少ない状態で接着させることが容易である。次いで、電子部品と金属箔20とを半田等によりボイドが少ない状態で接着させることにより、電子部品と金属パイプ50の外面との間のボイドが十分少なくなりこれらが電気絶縁機能を有した状態で熱的に接触することができ、電子部品の冷却効率を高くできる。
【0029】
<電子部品用冷却装置の製造方法の第1例>
次に、上記実施形態にかかる電子部品用冷却装置100の製造方法の第1例について図2〜図4を用いて説明する。
【0030】
まず、図3(a)に示すように軸方向両端に拡径部51とノズル52が設けられた金属パイプ50を用意する。
【0031】
続いて、図3(a)に示す、矩形状の、Bステージの熱硬化性樹脂シート10bを用意する。
【0032】
ここで、熱硬化性樹脂のAステージ、Bステージ、Cステージについて説明する。
【0033】
Aステージとは、熱硬化性樹脂の硬化反応の初期の状態であり、溶剤に溶け、また、加熱すると溶融し、シート形状を維持することは困難である。
【0034】
Bステージとは、熱硬化性樹脂の硬化反応における中間段階であり、溶媒に完全には溶解せず、樹脂を加熱しても完全には溶融せず、また、さらなる硬化が可能でありかつシート形状を維持できる状態である。
【0035】
Cステージとは、熱硬化性樹脂の硬化反応の最終段階であり、樹脂が溶媒にも不溶であり、加熱しても不融である状態をいう。
【0036】
Bステージの熱硬化性樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂を任意好適に選択できるがエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、エポキシ基を有するプレポリマー成分と、硬化剤とを含む。この熱硬化性樹脂は、前述のように電気絶縁性のセラミックス粒子を含むことが好ましい。
【0037】
このようなBステージの熱硬化性樹脂シート10bは、例えば、板状の基材上に、溶剤を含有するAステージのエポキシ樹脂を塗布した後、加熱して、ある程度まで溶剤を気化させて熱硬化性樹脂分子の架橋を起こさせる(半硬化)ことにより形成できる。
【0038】
そして、このようなBステージの熱硬化性樹脂シート10bを金属パイプ50の外面の一部50a上に積層する。積層されたBステージの熱硬化性樹脂シート10bの上に、矩形状の金属箔20をさらに積層する。このようにして、金属パイプ50と、金属パイプ50の外面上に積層されたBステージの熱硬化性樹脂シート10bと、樹脂シート10b上に積層された金属箔20と、を有する構造体200を作製する。なお、構造体200を作製するには、予めBステージの熱硬化性樹脂シート10b上に矩形状の金属箔20を積層した積層体30を、積層体30の熱硬化性樹脂シート側が金属パイプ50の外面の一部50aに接するように積層してもよい。
【0039】
(収容工程)
次に、上述の構造体200を、図3(a)に示すように、可撓性の容器60に収容する。ここで、可撓性の容器60は筒状であり、両端部60eが開かれた容器となっており、一方の端部60eから構造体200を挿入し、もう一方の端部60eから金属パイプ50の一方の末端に設けられた拡径部51及びノズル52が出るまで通すことにより、構造体200を可撓性の容器60で覆うように収容できる。可撓性容器60のY軸周りの内周の長さを、金属パイプ50のY軸周りの外周の長さよりも長くし、構造体200を幅方向に空間に余裕をもって収容できる大きさとすることが好ましい。このような大きさとすることで、積層したBステージの熱硬化性樹脂シート10b及び金属箔20とが、構造体200を可撓性の容器60に挿入する際に、金属パイプ50の積層した位置50aからずれたり、剥がれたりすることを抑制できる。また、可撓性の容器60は、筒状の側面部に真空引き用の側管60cを有している。
【0040】
可撓性の容器60が熱硬化性樹脂シート10bと金属箔20との積層体30を覆うように、可撓性の容器60内に構造体200を収容すればよく、可撓性の容器60が金属パイプ50の両端に設けられた拡径部51及びノズル52を覆わないようにすることが好ましい。拡径部51及びノズル52も含めて、構造体200の全体を可撓性の容器60で覆って収容すると、後述する減圧工程及び加圧工程を経る際に可撓性の容器60全体に均一に圧力がかかってしまい、熱硬化性樹脂シート10b及び金属箔20に、ボイドを除去するのに必要な圧力がかかりにくくなる上に、構造体200が圧力で潰れてしまう可能性があるからである。したがって、筒状の可撓性容器60の軸方向(Y軸方向)の長さを、金属パイプ50の軸方向の長さ以下とすることが好ましい。
【0041】
可撓性の容器60は、例えば、シリコンゴム、ポリイミド、ポリアミドイミド等の可撓性のある材質で形成されており、容器60内を減圧すると容易に変形して金属パイプ50等に密着できるようになっている。
【0042】
構造体200を可撓性の容器60に収容した後、可撓性の容器60の両端部60eと、金属パイプ50の外面とを、空気が漏れないように密着させて封止する。封止するために、テープ等を用いてもよい。
【0043】
(減圧工程)
続いて、側管60cから、可撓性の容器60内を真空引きし、容器60内を減圧する。これにより、図3の(b)に示すように、可撓性の容器60が金属パイプ50に密着する。減圧時の容器60内の圧力は特に限定されないが、絶対圧で、500Torr(0.07MPa)以下とすることが好ましく、400Torr(0.05MPa)以下とすることがより好ましい。
【0044】
(加圧工程)
このようにして構造体200を収容した可撓性容器60を減圧した後、その減圧した状態のまま、可撓性容器60をさらに外側からガスにより加圧する。加圧時のガスの圧力も特に限定されない。
【0045】
(加熱工程)
続いて、可撓性の容器60内を減圧し、外側からガスで加圧した状態のまま、Bステージの熱硬化性樹脂シート10bの加熱を開始する。ここで、可撓性の容器60への加圧力がゲージ圧で1MPa〜5MPaになった状態で加熱を開始することが、Bステージの熱硬化性樹脂シート10bを金属パイプ50に十分に押しつけてボイドを低減できた状態で接着できることから好ましい。また、加熱温度、加熱時間は、使用する樹脂の特性により選択できる。
【0046】
なお、この減圧、加圧、及び、加熱工程は、例えばオートクレーブ内で順次行うことができる。図4は、オートクレーブ80内で、真空ラインL1により可撓性容器60の側管60cから真空引きすることにより可撓性の容器60内を減圧しつつ、ポンプ80Pによって可撓性の容器60を外側から加圧し、さらに、ヒータ80hにより樹脂シート10bを加熱している様子を示す図である。可撓性の容器60内を減圧し、さらに外側からガスで加圧することにより樹脂シート10b及び金属箔20が積層された金属パイプ50に押しつけられ、その状態で加熱されることにより、熱硬化性樹脂シート10bの硬化が十分に進み、接着が行われる。
【0047】
次に、加熱を終了して冷却すると同時に、可撓性の容器の内外の圧力解放も行い、減圧、加圧、及び、加熱を終了する。そして、可撓性容器60の中から構造体200を取り出すことにより、上記実施形態にかかる電子部品用冷却装置100が得られる。
【0048】
(アニーリング工程)
なお、可撓性容器60の中から電子部品用冷却装置100を取り出した後、オートクレーブ80内での上記加熱工程での加熱温度よりもさらに高い温度で樹脂シート10bを加熱してもよい。これにより、樹脂シート10bがより十分に硬化され、より強固に金属箔20と金属パイプ50とを接着できるので好ましい。この加熱は、例えば、バッチ式の熱硬化炉に電子部品用冷却装置100を投入することにより行うことができる。加熱条件は特に限定されない。
【0049】
本例によれば、金属パイプ50に積層されたBステージの熱硬化性樹脂シート10bと、熱硬化性樹脂シート10b上に積層された金属箔20と、を有する構造体200を収容する可撓性の容器60内を減圧することで、可撓性の容器60が変形して可撓性容器60の内壁が金属パイプ50に押しつけられる。これにより、金属箔20がBステージの熱硬化性樹脂シート10bに押しつけられて、金属箔20と熱硬化性樹脂シート10bとの接着界面間のボイドが除去される。同様に、熱硬化性樹脂シート10bが金属パイプ50に押しつけられて、熱硬化性樹脂シート10bと金属パイプ50との接着界面間のボイドが除去される。
【0050】
さらに、可撓性の容器60内を減圧した状態のまま、外側からガスにより可撓性の容器60を加圧することにより、より強く可撓性の容器60の内壁が金属パイプ50に押しつけられ、上述のボイド除去の効果が高まる。そして、金属パイプ50と樹脂シート10bとの間及び樹脂シート10bと金属パイプ50との間の各接着界面間に存在するボイドが除去された状態で、樹脂シート10bが加熱されることにより樹脂シート10bが硬化され、これらの界面での接着が行われる。
【0051】
このようにして得られる電子部品用冷却装置100では、金属箔20と樹脂シート10bとの間及び樹脂シート10bと金属パイプ50との間の接着界面間のボイドが極めて低減されている。また、樹脂シート10bは金属パイプ50と金属箔20とを十分に接着しており、樹脂シート10bが金属パイプ50から剥離したり、金属箔20が樹脂シート10bから剥離したりしにくい。
【0052】
なお、本実施形態にかかる電子部品用冷却装置100を製造する場合に金属箔20と金属パイプ50とを熱硬化性樹脂シート10bを用いて接着する方法として、上述の方法以外にも、熱プレス機若しくは真空熱プレス機、熱ローラ機、又はトランスファー成型機等によって、金属箔20を積層した樹脂シート10bを金属パイプ50に貼り合わせる方法を用いることもできるが、ボイドを十分に低減できるという観点からは、上述の第1例にかかる製造方法が好ましい。
【0053】
<電子部品用冷却装置の製造方法の第2例>
電子部品用冷却装置の製造方法の第2例について説明する。本例では、第1例との差異点のみ説明する。第1例では、図3(a)に示したように、減圧用の可撓性の容器として、フィルム状の可撓性の容器60を使用していたが、図5に示すように、上下に分離できる一対の可撓性の型70a,70bからなる可撓性の容器70を利用することもできる。可撓性の容器70は、凹部を有する上型70aと凹部を有する下型70bとからなり、上型70aの凹部と下型70bの凹部とを向かい合わせてできる空間部70vの形状は、金属パイプ50の立体形状と対応するように形成され、金属パイプ50をちょうど収容できるようになっている。また、可撓性の容器70は、複数の構造体200の金属パイプ50を収容できるように複数の空間部70vを有している。また、容器70の複数の空間70vは図示しない連通路により互いに連通しており、上型70aには、外部と空間部70vとを連通する側管70cが設けられている。そして、側管70cから可撓性の容器70内の各空間部70vを真空引きし、減圧することにより、第1例と同様の作用効果を奏することができる。本実施形態のような容器70を用いる場合、一つの容器70を用いて複数の構造体200に対して同時に上述の減圧工程を行なうことが容易であるが、一つの構造体200のみに対して上述の減圧工程を行なってもよい。
【0054】
<電子部品用冷却装置の使用例>
以下に、本実施形態に係る電子部品用冷却装置100の一使用例について説明する。図6(a)は、電子部品用冷却装置100にパワー半導体300を実装した斜視図であり、図6(b)は、図6(a)のB−B断面図である。パワー半導体300は、その放熱面を金属箔20に半田付けすることにより、実装できる。パワー半導体300は特に限定されないが、例えば、IGBT、MOSFET、Diode等が挙げられる。
【0055】
このような電子部品用冷却装置100において、発熱するパワー半導体300を冷却する際には、一方のノズル52から冷却液を流入させる。冷却液は、ノズル52から拡径部51を経て、金属パイプ50に流れ、もう一方の拡径部51に流れ、ノズル52から流出する。一方、パワー半導体300からの熱は、半田層310を介して金属箔20へと伝熱され、金属箔20から伝熱性の樹脂層10へと伝熱される。さらに、樹脂層10から伝わった熱が、金属パイプ50の管壁全体へ熱伝導により広がり、金属パイプ50を流れる冷却液によって冷却される。
【0056】
本実施形態にかかる電子部品用冷却装置100は、金属箔20と樹脂シート10bとの間及び樹脂シート10bと金属パイプ50との間の接着界面間に存在するボイドが微小なボイドも含めて低減可能であるので、接着界面間に存在するボイドが多い場合よりも伝熱面積が上昇し、パワー半導体等の電子部品を、電子部品との電気絶縁機能を有した状態で、効率よく冷却できる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態では、金属パイプ50が内管を有していない態様について説明したが、金属パイプ50内に内管を設けてもよい。内管の数が多ければ、伝熱面積がその分上昇するので、冷却効率がさらに高くなる。
【0059】
また、上記実施形態では、金属パイプ50の両側面が丸みを帯びている態様について説明したが、両側面は丸みを帯びていなくてもよく、角張っていてもよい。また、金属パイプ50は屈曲していてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、樹脂層10と金属箔20との積層体が一つの金属パイプ50に複数個積層された態様について説明したが、金属パイプ50に積層する樹脂層10と金属箔20との積層体の数は、複数個でなくてもよく、1個であってもよい。
【0061】
また、上記使用例では、本発明をパワー半導体300の冷却装置として用いた場合について説明したが、本発明の電子部品用冷却装置は、電子部品はパワー半導体に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の電子部品用冷却装置によれば、電子部品の冷却効率を十分に高めることができ、そのため、冷却装置の小型化、軽量化が図れる。したがって、電気自動車や燃料電池自動車、ハイブリッド電気自動車等の、搭載する装置の小型化、軽量化が求められる分野において有利に使用できる。
【符号の説明】
【0063】
10…樹脂層、10b…樹脂シート、20…金属箔、30…積層体、50…金属パイプ、50a…金属パイプ50の樹脂層が積層される部分、51…拡径部、52…ノズル、60、70…可撓性の容器、60c、70c…側管、60e…可撓性の容器60の端部、70a…上型、70b…下型、80…オートクレーブ、80h…ヒータ、80P…ポンプ、100、110…電子部品用冷却装置、300…パワー半導体、310…半田層、L1…真空ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属パイプと、前記金属パイプの外面上に配置された金属箔と、前記金属パイプの外面と前記金属箔とを接着する熱硬化した樹脂層と、を有する電子部品用冷却装置。
【請求項2】
前記熱硬化した樹脂層は、セラミックス粒子を含む請求項1記載の電子部品用冷却装置。
【請求項3】
金属パイプと、前記金属パイプ外面上に積層されたBステージの熱硬化性樹脂シートと、前記樹脂シート上に積層された金属箔と、を有する構造体を、可撓性の容器内に収容する収容工程と、
前記可撓性の容器内を減圧する減圧工程と、
減圧された状態の前記可撓性の容器を、外側からガスにより加圧する加圧工程と、
前記減圧及び前記加圧がなされた状態で、前記樹脂シートを加熱する加熱工程と、
を含む、電子部品用冷却装置の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程の後に、前記可撓性の容器内から前記構造体を取り出して、前記樹脂シートを前記加熱工程よりさらに高い温度で加熱するアニーリング工程、をさらに含む、請求項3に記載の電子部品用冷却装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−119475(P2012−119475A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267509(P2010−267509)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000241496)豊田鉄工株式会社 (104)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】