説明

電子部品用接着剤及び電子部品用接着剤の製造方法

【課題】半導体パッケージの更なる小型化、高集積化に向けて、電子部品用接着剤を更に薄膜化した場合でも、冷熱サイクルの繰返しに対し、線膨張率が低く、寸法安定性に優れる電子部品用接着剤を提供する
【解決手段】エポキシ化合物と、硬化剤と、無機フィラーとを含有する電子部品用接着剤であって、前記無機フィラーの平均粒子径が100nm以下、最大粒子径が200nm未満であり、かつ、前記無機フィラーの含有量が30重量%以上である電子部品用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に半導体チップ等の電子部品を接着する用途に適した電子部品用接着剤に関し、より詳細には、線膨張率が低く、温度変化が与えられた場合であっても、寸法安定性に優れる電子部品用接着剤及び該電子部品用接着剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品用接着剤には、電子部品パッケージの製造から製造後の稼動過程において繰り返される冷熱サイクルに対し、半導体チップ及び基板と同等の寸法安定性を有することが必要である。この寸法安定性が不足していると、電子部品用接着剤と半導体チップ及び基板との伸び率の相違を原因として生ずる応力により、接着面に剥がれが発生したり、半導体チップに反りが発生したりすることがある。このため、近年では、電子部品用接着剤に無機フィラーを多く配合させることで、電子部品用接着剤の線膨張率を低減させ、冷熱サイクルの繰返しにより、上記起こりうる不具合に対し信頼性を向上させる試みがなされてきている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、最近では、ユーティリティ向上を狙いとして、半導体パッケージの更なる小型化、高集積化に向けた競争が激化している中で、構成基板や部品・部材には、更なる小型化、薄型化に向けた要望が高まってきている。必然的に、電子部品用接着剤にも更なる薄膜化が要求されているところであるが、現状では、薄膜化した場合に、冷熱サイクルの繰返しに対し、充分な寸法安定性を保持できる程の低線膨張率を有する電子部品用接着剤は得られていない。
【特許文献1】特開2005−200444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑み、半導体パッケージの更なる小型化、高集積化に向けて、電子部品用接着剤を更に薄膜化した場合でも、冷熱サイクルの繰返しに対し線膨張率が低く、寸法安定性に優れる電子部品用接着剤及び該電子部品用接着剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エポキシ化合物と、硬化剤と、無機フィラーとを含有する電子部品用接着剤であって、前記無機フィラーの平均粒子径が100nm以下、最大粒子径が200nm未満であり、かつ、前記無機フィラーの含有量が30重量%以上である電子部品用接着剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、エポキシ化合物と硬化剤に無機フィラーを配合した電子部品用接着剤において、特定の一次粒子径を有する無機フィラーの大半が一次粒子の状態で分散しており、かつ、全体の平均粒子径が特定の範囲内である場合には、接着剤層が薄膜化した場合でも線膨張率の低い電子部品用接着剤とすることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
上記エポキシ化合物としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等のような芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及びこれらの変性物、水添化物等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0008】
上記エポキシ化合物は、25℃におけるE型粘度測定法で測定した場合の10rpm粘度の好ましい下限は0.1Pa・s、好ましい上限は20Pa・sである。0.1Pa・s未満であると、電子部品用接着剤(以下、「接着剤」という。)が流動しやすく、塗布後に接着剤が必要塗布面以外に流出、すなわちブリードしてしまう傾向がある。20Pa・sを超えると、接着剤の流動性が低いため、塗布時のハンドリング性が悪く、薄膜化ないしは微細な隙間へのアンダーフィル化ができなくなる傾向がある。より好ましい下限は15Pa・s、より好ましい上限は10Pa・sである。
なお、このような粘度のエポキシ化合物は、エポキシ化合物としてレゾルシノール型エポキシ等を選択することで得ることができる。
【0009】
上記エポキシ化合物は、ポリエーテル骨格及び/又はベンゼン環を含有することが好ましい。ポリエーテル骨格を含有するエポキシ樹脂を用いることにより、得られる接着剤は、粘度が低くかつ柔軟になるので、薄膜化ないしは微細な隙間へのアンダーフィル化が容易となる。また、ベンゼン環を含有するエポキシ樹脂を用いることにより、樹脂の耐熱性が向上し、硬化速度を速くすることができる。
【0010】
上記ポリエーテル骨格を含有するエポキシ化合物としては、例えば、両末端グリシジルエーテル変性ポリエチレングリコール、両末端グリシジルエーテル変性ポリプロピレングリコール、両末端グリシジルエーテル変性ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。これらの市販品としては、例えば、EX−931(ナガセケムテックス社製)、PTMG−DEP(四日市合成社製)等が挙げられる。
【0011】
ポリエーテル骨格を含有するエポキシ化合物の中では、得られる接着剤の耐湿性が向上するために、プロピレングリコール骨格及び/又はポリテトラメチレンエーテルグリコール骨格を有するエポキシ化合物が好ましい。
【0012】
ベンゼン環を有するエポキシ化合物の中では、得られる接着剤が、より低粘度となり、かつ、より柔軟になることから、レゾルシノール型エポキシ化合物が好ましい。レゾルシノール型エポキシ化合物の市販品としては、例えば、EX−201(ナガセケムテック社製)等が挙げられる。
【0013】
上記硬化剤としては特に限定されず、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系硬化剤、メルカプタン系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記硬化剤の中でも、得られる接着剤の接合信頼性が向上するために、酸無水物系硬化剤が好ましい。上記酸無水物硬化剤としては特に限定されず、例えば、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、アルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体、テトラメチレン無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水クロレンド酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等が挙げられる。
【0015】
上記硬化剤の配合量としては特に限定されないが、上記エポキシ化合物の官能基と等量反応する硬化剤を用いる場合には、エポキシ化合物100重量部に対する
好ましい下限が10重量部、好ましい上限が150重量部である。10重量部未満であると、充分に硬化しないことがあり、150重量部を超えて加えてもそれ以上の効果は得られない。
また、上記硬化剤が触媒として機能する硬化剤である場合には、エポキシ化合物100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。1重量部未満であると、充分に硬化しないことがあり、20重量部を超えて加えてもそれ以上の効果は得られない。
【0016】
本発明の接着剤は、原料配合後の接着剤組成物の硬化速度や得られる接着剤の物性等を調整するために、硬化剤に加えて硬化促進剤が添加されてもよい。
上記硬化促進剤としては特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。これらの硬化促進剤は単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なかでも、反応制御により原料配合後の接着剤組成物の硬化速度や得られる接着剤の物性等の調整がしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好適に用いられる。上記イミダゾール系硬化促進剤としては特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールや、イソシアヌル酸で塩基性を保護したもの(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0017】
上記硬化促進剤の配合量としては特に限定されず、エポキシ化合物100重量部に対する好ましい下限は1重量部、好ましい上限は10重量部である。1重量部未満であると、充分な効果が得られないことがあり、10重量部を超えて加えてもそれ以上の効果は得られない。
【0018】
上記無機フィラーは、平均粒子径の上限が100nmである。100nmを超えると、無機フィラーと樹脂成分との接触する表面積が充分に確保できず、その結果、線膨張率が充分に低くならない場合がある。また、無機フィラーが均一に分散されていない状態となり、結果として、線膨張率の低い接着剤が得られない。また、薄膜化したときに、無機フィラーが接着剤から露出してしまうことがあり、無機フィラーが半導体チップを損傷してしまうことがある。好ましい上限は50nmである。
平均粒子径の下限については特に限定されないが、原料としての無機フィラーの製造上の実質的な限界、及び、接着剤中への無機フィラーのミクロ的な高分散の実質的な限界を考慮すると、10nm程度が限界である。
なお、本明細書における平均粒子径とは、レーザー式粒度分布計による測定の結果得られる平均粒子径を意味する。
【0019】
上記無機フィラーは、最大粒子径が200nm未満である。このことは無機フィラーの大半が所望の粒子径を有する一次粒子状態で分散していること意味しており、これにより、表面積が著しく大きくなり、その結果、線膨張率を充分低下させることができ、接着剤層が薄型化しても充分に反りを低減することができる。200nmを超えると、小さすぎる粒子や大きすぎる粒子を含むこととなり、線膨張率が大きくなる他、大きすぎる無機フィラーがボンディング時の半導体チップを損傷したり、微細な隙間へのアンダーフィル性が低下したりすることがある。
なお、本明細書において最大粒子径とは、レーザー式粒度分布計による測定の結果得られる最大粒子径を意味する。
【0020】
上記無機フィラーの含有量の下限は30重量%である。30重量%未満であると、線膨張率の低い接着剤が得られない。また、接着剤が流動しやすく、塗布後に接着剤が必要塗布面以外に流出、すなわちブリードしてしまう。好ましい下限は40重量%である。
無機フィラーの含有量の上限は特に限定されないが、好ましい上限は60重量%である。60重量%を超えると、線膨張率はより低くなる一方で、接着性、微細な隙間へのアンダーフィル性が低下することがある。
【0021】
上記無機フィラーの材質としては特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。なかでも、より低い線膨張率が得られることから、シリカが好適である。
【0022】
本発明の接着剤は、本発明の目的を阻害しない範囲内で必要に応じて、他の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては特に限定されず、例えば、脂肪族水酸基含有化合物、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、揺変剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、脱水剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、防黴剤等が挙げられる。これらの添加剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
本発明の接着剤は、一次粒子径が100nm以下の無機フィラーをエポキシ化合物に分散させる工程と、一次粒子径が100nm以下の無機フィラーを硬化剤に分散させる工程と、前記無機フィラーが分散されたエポキシ化合物と前記無機フィラーが分散された硬化剤とを混合する工程とを有する製造方法により製造することができる。
このような電子部品用接着剤の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0024】
エポキシ化合物及び硬化剤それぞれに予め分散させる上記無機フィラーは、一次粒子径の上限が100nmである。100nmを超えると、得られる接着剤中における無機フィラーの平均粒子径を100nm以下にすることはできない。接着剤製造の過程で無機フィラー同士が凝集する可能性があることから、好ましい一次粒子径の上限は50nmである。一次粒子径の好ましい下限については特に限定されないが、原料としての無機フィラーの製造上、1nm程度、より好ましくは5nm程度が下限である。なお、本明細書における一次粒子径とは、凝集していない単一粒子の粒子径を意味し、一次粒子径は、透過型電子顕微鏡観察により求めることができる。
【0025】
本発明の電子部品用接着剤の製造方法においては、一次粒子径が100nm以下の無機フィラーをエポキシ化合物に分散させる工程を行う。
上記無機フィラーのエポキシ化合物及び硬化剤への分散方法としては特に限定されないが、例えば、エポキシ化合物に所定量の無機フィラーを添加した後、回転式撹拌機、振動式撹拌機、遊星式撹拌機、ボールミル等を用いて撹拌させる方法が挙げられる。
【0026】
本発明の電子部品用接着剤の製造方法においては、一次粒子径が100nm以下の無機フィラーを硬化剤に分散させる工程を行う。
硬化剤として酸無水物硬化剤を用いる場合、無機フィラーを水分散液の状態で硬化剤中に分散させようとすると、水と酸無水物とが反応して酸無水物が開環してしまい硬化剤としての役割を果たせなくなる。従って、無機フィラーは非水系の溶剤に分散した分散液の状態で硬化剤に分散させる必要がある。具体的には、例えば、無機フィラーの非水系分散液を硬化剤に加え、回転式撹拌機、振動式撹拌機、遊星式撹拌機、ボールミル等を用いて撹拌させる方法が挙げられる。
上記非水系の溶剤としては、硬化剤と反応しにくく沸点が比較的低いものであればよく、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0027】
本発明の電子部品用接着剤の製造方法においては、次いで、得られた無機フィラーが分散されたエポキシ化合物と無機フィラーが分散された硬化剤とを混合する工程を行う。混合には、回転式撹拌機、振動式撹拌機、遊星式撹拌機、ボールミル等を用いて撹拌させる方法を用いることができる。
【0028】
本発明の接着剤は、例えば、一の半導体チップを他の半導体チップ又は基板に積層するための接着剤として使用される。積層方法としては、例えば、上記半導体チップ又は基板に、本発明の接着剤を塗布して接着剤層を形成する塗布工程(1)、上記接着剤層を介して上記一の半導体チップを積層する半導体チップ積層工程(2)、及び、上記一の半導体チップと、上記他の半導体チップ又は基板との間の接着剤層を硬化させる硬化工程(3)を有する方法が好適に用いられる。本発明の半導体チップの積層方法は、必要に応じて、塗布工程(1)後に、溶剤乾燥、又は、Bステージ化してもよい。
【0029】
上記塗布工程(1)において、上記半導体チップ又は基板に、本発明の接着剤を塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、ディスペンス法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法及びグラビア印刷法等従来公知のコーティング法や印刷法等が挙げられる。
【0030】
上記半導体チップ積層工程(2)としては、例えば、積層する上記一の半導体チップにより、上記接着剤層に押圧を加えることにより行われる。
【0031】
上記硬化工程(3)としては、その手法は特に限定されず、例えば、上記接着剤層を加熱する方法等が挙げられる。
【0032】
上記積層方法により、2以上の半導体チップを多層に積層し、封止剤等で封止することにより半導体装置を作製することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、半導体パッケージの更なる小型化、高集積化に向けて、電子部品用接着剤を更に薄膜化した場合でも、冷熱サイクルの繰返しに対し、線膨張率が低く、寸法安定性に優れる電子部品用接着剤及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0035】
(シリカ分散液の作製)
(1)ナノシリカ分散液1の作製
レゾルシンジグリシジルエーテル(EX−201:ナガセケムテックス社製)60gにナノシリカ30wt%分散メチルエチルケトンスラリー(平均粒子径45nm:アドマテックス社製)200gを加え、攪拌後、メチルエチルケトンを蒸発させナノシリカ50wt%分散液1を得た。
【0036】
(2)ナノシリカ分散液2の作製
ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(エポゴーセーPT:四日市合成社製)54gにナノシリカ30wt%分散メチルエチルケトンスラリー(平均粒子径45nm:アドマテックス社製)120gを加え、攪拌後、メチルエチルケトンを蒸発させナノシリカ40wt%分散液2を得た。
【0037】
(3)ナノシリカ分散液3の作製
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(YL−980:ジャパンエポキシレジン社製)54gにナノシリカ30wt%分散メチルエチルケトンスラリー(平均粒子径45nm:アドマテックス社製)120gを加え、攪拌後、メチルエチルケトンを蒸発させナノシリカ40wt%分散液3を得た。
【0038】
(4)ナノシリカ分散液4の作製
メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸(YH−306:ジャパンエポキシレジン社製)60gにナノシリカ30wt%分散メチルエチルケトンスラリー(平均粒子径45nm:アドマテックス社製)200gを加え、攪拌後、メチルエチルケトンを蒸発させナノシリカ50wt%分散液4を得た。
【0039】
(実施例1〜3及び比較例1〜4)
表1に記載した組成に従って、下記に示す各材料をホモディスパーを用いて攪拌混合し電子部品接合用接着剤を調製した。
【0040】
(1)エポキシ樹脂
レゾルシンジグリシジルエーテル(EX−201:ナガセケムテックス社製)
ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(エポゴーセーPT:四日市合成社製)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(YL−980:ジャパンエポキシレジン社製)
(2)硬化剤
メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸(YH−306:ジャパンエポキシレジン社製)
(3)硬化促進剤
イミダゾール系硬化促進剤(2MA−OK:四国化成社製)
(4)ナノシリカフィラー
ヒュームドシリカ(QS−9:トクヤマ社製)
(5)ミクロンシリカフィラー
表面エポキシ変性シリカ(SE−4050−SEE:アドマテックス社製)
【0041】
(評価)
実施例及び比較例で調製した電子部品用接着剤について、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0042】
(1)線膨張率の測定
実施例及び比較例で調製した電子部品用接着剤を3mm×25mm角に切り出したものを200℃のオーブンで1時間硬化させて作製したテストサンプルをTMA装置(TMA/SS6000、セイコーインストロメント社製)にて、10℃毎分で320℃まで1回昇温した後、−45℃から130℃まで10℃毎分で昇温した時の温度−TMA直線の傾きを測定し、その逆数を線膨張係数として算出した。ガラス転移点より低い温度での線膨張係数の結果を示した。
【0043】
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
粘弾性測定機(アイティー計測制御社製)を用い、実施例及び比較例で調製した電子部品用接着剤を170℃、15分で硬化させた硬化物の25℃及び175℃における貯蔵弾性率を、昇温速度5℃/min、引っ張り、つかみ幅24mm、10Hzで測定したときのTanδのピーク時の温度をガラス転移点とした。
【0044】
(3)粘度の測定
E型粘度測定装置(商品名:VISCOMETER TV−22、TOKI SANGYO CO.LTD社製、使用ローター:φ15mm、設定温度:25℃及び80℃)を用いて回転数10rpmにおける粘度を測定した。
【0045】
(4)平均粒子径、最大粒子径の測定
得られた電子部品用接着剤の粒度分布測定には堀場製作所製レーザー散乱粒度分布計LA−910を用いて、相対屈性率1.2として測定した。
【0046】
(5)チップ割れ評価
得られた電子部品用接着剤を10mLシリンジ(岩下エンジニアリング社製)に充填し、シリンジ先端に精密ノズル(岩下エンジニアリング社製、ノズル先端径0.3mm)を取り付け、ディスペンサ装置(SHOT MASTER300、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、吐出圧0.4MPa、半導体チップとニードルとのギャップ200μm、塗布量5mgにてガラス基板上に塗布した。塗布量は、(接合部分の外周部への塗布量/中央部への塗布量)=4とした。
塗布を行った後、ペリフェラル状に110μmのパッド開口部を172個有する半導体チップ(チップ1)(厚さ80μm、10mm×10mm角、メッシュ状パターン、アルミ配線:厚み0.7μm、L/S=15/15、表面の窒化シリコン膜の厚み:1.0μm)をフリップチップボンダー(DB−100、澁谷工業社製)を用いて常温で0.1MPaの圧力で5秒間押圧することにより積層した。そのときにに生じたチップが割れの発生頻度から、以下の基準でチップ割れを評価した。
◎:チップ割れ発生数0/100
○:チップ割れ発生数1/100
△:チップ割れ発生数2/100
×:チップ割れ発生数3/100以上
【0047】
(6)耐リフロー性の評価
得られた電子部品用接着剤を10mLシリンジ(岩下エンジニアリング社製)に充填し、シリンジ先端に精密ノズル(岩下エンジニアリング社製、ノズル先端径0.3mm)を取り付け、ディスペンサ装置(SHOT MASTER300、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、吐出圧0.4MPa、半導体チップとニードルとのギャップ200μm、塗布量5mgにてガラス基板上に塗布した。塗布量は、(接合部分の外周部への塗布量/中央部への塗布量)=4とした。
塗布を行った後、ペリフェラル状に110μmのパッド開口部を172個有する半導体チップ(チップ1)(厚さ80μm、10mm×10mm角、メッシュ状パターン、アルミ配線:厚み0.7μm、L/S=15/15、表面の窒化シリコン膜の厚み:1.0μm)をフリップチップボンダー(DB−100、澁谷工業社製)を用いて常温で0.1MPaの圧力で5秒間押圧することにより積層した。170℃で15分間加熱を行い、電子部品用接着剤を硬化させることにより、半導体チップ接合体を作製した。作製した半導体チップ接合体を、85℃85%の恒温高湿オーブンに24時間放置したのち、230℃以上が20秒以上でかつ最高温度が260℃となるIRリフロー炉に3回投入した。投入後、半導体装置のリフロークラックの発生の有無を超音波探傷装置(SAT)により観察し、以下の基準で評価した。
◎:リフロークラック発生数0/30
○:リフロークラック発生数1/30
△:リフロークラック発生数2/30
×:リフロークラック発生数3/30
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、半導体パッケージの更なる小型化、高集積化に向けて、電子部品用接着剤を更に薄膜化した場合でも、冷熱サイクルの繰返しに対し、線膨張率が低く、寸法安定性に優れる電子部品用接着剤及びその製造方法を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物と、硬化剤と、無機フィラーとを含有する電子部品用接着剤であって、前記無機フィラーの平均粒子径が100nm以下、最大粒子径が200nm未満であり、かつ、前記無機フィラーの含有量が30重量%以上であることを特徴とする電子部品用接着剤。
【請求項2】
エポキシ化合物は、25℃におけるE型粘度測定法で測定した場合の10rpm粘度が20Pa・s以下であることを特徴とする請求項1記載の電子部品用接着剤。
【請求項3】
エポキシ化合物は、ポリエーテル骨格及び/又はベンゼン環を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品用接着剤。
【請求項4】
エポキシ化合物は、プロピレングリコール骨格及び/又はポリテトラメチレンエーテルグリコール骨格を含有することを特徴とする請求項3記載の電子部品用接着剤。
【請求項5】
エポキシ化合物は、レゾルシノール型エポキシ化合物であることを特徴とする請求項3記載の電子部品用接着剤。
【請求項6】
硬化剤は、酸無水物であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の電子部品用接着剤。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の電子部品用接着剤を製造する方法であって、
一次粒子径が100nm以下の無機フィラーをエポキシ化合物に分散させる工程と、
一次粒子径が100nm以下の無機フィラーを硬化剤に分散させる工程と、
前記無機フィラーが分散されたエポキシ化合物と前記無機フィラーが分散された硬化剤とを混合する工程とを有する
ことを特徴とする電子部品用接着剤の製造方法。


【公開番号】特開2009−185132(P2009−185132A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24562(P2008−24562)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】