説明

電子部品用樹脂組成物及び電子部品装置

【課題】狭ギャップでの流動性が良好であり、ゲルタイムを速くすることで硬化温度の低温化を可能にし、チップにかかる熱応力を低減させ、さらに成形時のボイド発生が抑制された電子部品用液状樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、硬化促進剤として、下記一般式(I)で表される化合物群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有する組成物。


(式中、Lは、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成されるm価の基、又はm価の炭化水素基を示す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は1価の炭化水素基を示す。Rは炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される1価の基、炭素原子、水素原子及び窒素原子から構成される1価の基、又は1価の炭化水素基を示す。mは2〜6の整数を示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用樹脂組成物及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC等の電子部品装置の素子封止の分野では生産性、コストなどの面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂組成物が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が作業性、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性などの諸特性にバランスがとれているためである。COB(Chip on Board)、COG(Chip on Glass)、TCP(Tape Carrier Package)等のベアチップ実装した半導体装置においては電子部品用液状樹脂組成物が封止材として広く使用されている。また、半導体素子をセラミック、ガラス/エポキシ樹脂、ガラス/イミド樹脂またはポリイミドフィルムなどを基板とする配線基板上に直接バンプ接続してなる半導体装置(フリップチップ)では、バンプ接続した半導体素子と配線基板の間隙(ギャップ)を充填するアンダーフィル材として電子部品用液状樹脂組成物が使用されている。これらの電子部品用液状樹脂組成物は電子部品を温湿度や機械的な外力から保護するために重要な役割を果たしている。
【0003】
フリップチップ実装を行なう場合、素子と基板はそれぞれ熱膨張係数が異なるため、接合部に熱応力が発生することから、接続信頼性の確保が重要な課題である。また、ベアチップは回路形成面が充分に保護されていないため、水分やイオン性不純物が浸入し易く耐湿信頼性の確保も重要な課題である。また、チップ保護のために、チップ側面にフィレットを形成するが、アンダーフィル材とチップとの熱膨張差に起因した熱応力によって、樹脂がクラックを生じ、その結果として最悪の場合、チップを破壊する恐れがある。アンダーフィル材の選定によっては温度サイクル試験などで繰り返し熱衝撃を受ける場合に接続部の保護が不充分なため、低サイクルで接合部が疲労破壊することがある。また、アンダーフィル材中にボイドが存在すると、バンプの保護が不充分なため、同様に低サイクルで接合部が疲労破壊することがある。
【0004】
上記状況の下、耐湿接着力、低応力性に優れた封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれにより封止された素子を備えた信頼性(耐湿性、耐熱衝撃性)の高い電子部品装置を提供するため、(A)液状エポキシ樹脂、(B)液状芳香族アミンを含む硬化剤、(C)エラストマー、(D)界面活性剤を含有してなる封止用エポキシ樹脂組成物、及びこの封止用エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3716237号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近の素子の高集積度化、多機能化に伴いチップサイズが大きくなってきている一方、多ピン化によってバンプの小径化、狭ピッチ化、狭ギャップ化が、また、搭載機器の小型化に伴いチップ厚の薄型化が行なわれており、エラストマーと界面活性剤を添加したのみでは、電子部品装置の高い信頼性を確保することがますます難しくなってきている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、狭ギャップでの流動性が良好であり、ゲルタイムを速くすることで硬化温度の低温化を可能にし、チップにかかる熱応力が低減され、さらに成形時のボイド発生が抑制された電子部品用液状樹脂組成物、及びこれにより封止された信頼性(耐湿性、耐温度サイクル性)の高い電子部品装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の硬化剤と硬化促進剤を含有する電子部品用液状樹脂組成物を見出した。より詳しくは、本発明は、以下に関する。
<1> エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、硬化促進剤として、下記一般式(I)で表される化合物群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含有する電子部品用液状樹脂組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Lは、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18のm価の基、又は炭素数1〜18のm価の炭化水素基を示す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す。Rは炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、炭素原子、水素原子及び窒素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す。mは2〜6の整数を示す)
【0011】
<2> 前記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表される化合物である、前記<1>に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0012】
【化2】



【0013】
(式中、L21は、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の2価の基、又は炭素数1〜18の2価の炭化水素基を示す。R21〜R26はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す。R27及びR28はそれぞれ独立に、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、炭素原子、水素原子及び窒素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す)
【0014】
<3> 前記硬化促進剤は、カルボキシ基を1つだけ有する化合物の少なくとも1種と、ビニルエーテル基を少なくとも2つ有する化合物の少なくとも1種とを付加反応させて得られる反応生成物である、前記<1>又は<2>に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0015】
<4> 前記エポキシ樹脂は液状エポキシ樹脂である、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0016】
<5> 前記芳香族アミン化合物は液状芳香族アミン化合物である、前記<1>〜<4>のいずれか1に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0017】
<6> さらに無機充填材を含有し、前記無機充填剤の含有量が電子部品用液状樹脂組成物全体の50質量%以上80質量%以下の範囲である、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0018】
<7> 前記芳香族アミン化合物は、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン及びジエチルトルエンジアミンから選ばれる少なくとも一方を含有する、前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0019】
<8> 半導体素子の回路形成面と無機又は有機基板の回路形成面とを対向させ、前記半導体素子の電極と前記基板の回路とがバンプを介して電気的に接続され、前記半導体素子と前記基板との隙間に前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物を封止してなる電子部品装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、狭ギャップでの流動性が良好であり、ゲルタイムを速くすることで硬化温度の低温化を可能にし、チップにかかる熱応力を低減され、さらに成形時のボイド発生が抑制された電子部品用液状樹脂組成物、及びこれにより封止された信頼性(耐湿性、耐温度サイクル性)の高い電子部品装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
さらに組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0022】
本発明の電子部品用液状樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂の少なくとも1種と、(B)芳香族アミン化合物少なくとも1種と、(C)硬化促進剤として、下記一般式(I)で表される化合物群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含有することを特徴とする。
【0023】
【化3】

【0024】
式中、Lは、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18のm価の基、又は炭素数1〜18のm価の炭化水素基を示す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す。Rは炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、炭素原子、水素原子及び窒素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す。mは2〜12の整数を示す。
【0025】
特定構造の硬化促進剤を用いることにより、成形時のボイドの発生を抑制するとともに、ゲルタイムが短縮され、硬化温度の低温化を可能にする。また、形成される硬化物は、吸湿による各種基材との接着力の低下が小さく、吸湿後においても各種基材との接着力が高い。よって、この電子部品用液状樹脂組成物を用いて電子部品を封止すれば、成形性、信頼性の高い電子部品装置を得ることができるので、その工業的価値は大である。
【0026】
これは例えば以下のように考えることができる。特定硬化促進化合物においては、硬化促進作用を有するカルボキシ基にビニル基が付加してブロックされた状態であるため、保存安定性及び各種の信頼性に優れる。さらに硬化時には加熱によりビニル基が速やかに脱離するため、ゲルタイムが短縮され、硬化温度の低温化が図れるものと考えることができる。
【0027】
尚、本発明における液状とは、常温(25℃)において液状であることを意味する。具体的には、25℃において、E型粘度計で測定される粘度が1000Pa・s以下であることを意味する。
但し、本発明の電子部品用液状樹脂組成物が、反応などにより硬化した場合は、常温においても固体となる場合もある。
【0028】
(A)エポキシ樹脂
本発明で用いるエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限されない。中でも、常温において液状である液状エポキシ樹脂であることが好ましい。
エポキシ樹脂としては、電子部品用液状樹脂組成物で一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができる。本発明で使用できるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、水添ビスフェノールA等のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を代表とするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、p―アミノフェノール、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のアミン化合物とエピクロルヒドリンを縮合又は共縮合させて得られる反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸により酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、流動性の観点からは液状ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、耐熱性、接着性及び流動性の観点から液状グリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0029】
前記液状エポキシ樹脂(好ましくは、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂及び液状グリシジルアミン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種)は、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。液状エポキシ樹脂の含有率は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中において、合わせて20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上とすることがさらに好ましい。
【0030】
また、前記電子部品用液状樹脂組成物は、本発明の効果が達成される範囲内であれば固形エポキシ樹脂を含んでいてもよい。固形エポキシ樹脂の含有率は、成形時の流動性の観点から、エポキシ樹脂全量中において20質量%以下とすることが好ましい。
【0031】
前記電子部品用液状樹脂組成物の全量中におけるエポキシ樹脂の含有量は特に制限されない。例えば20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、25質量%以上75質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に制限されない。中でも、50以上5000以下であることが好ましく、70以上1000以下であることがより好ましく、70以上500以下であることがさらに好ましい。
【0033】
さらに、これらのエポキシ樹脂の純度、特に加水分解性塩素量はICなど素子上のアルミ配線腐食に係わるため少ない方が好ましく、耐湿性の優れた電子部品用液状樹脂組成物を得るためには500ppm以下であることが好ましい。ここで、加水分解性塩素量とは試料のエポキシ樹脂1gをジオキサン30mlに溶解し、1M−KOHメタノール溶液5mlを添加して30分間、加熱還流後、電位差滴定により求めた値を尺度としたものである。
【0034】
(B)芳香族アミン化合物
本発明に用いられる芳香族アミン化合物は、芳香環を有するアミンを含むものであれば特に制限はない。中でも常温で液状の芳香族アミン化合物であることが好ましい。電子部品用液状樹脂組成物において、芳香族アミン化合物は、例えば硬化剤として機能する。
芳香族アミン化合物を例示すれば、ジエチルトルエンジアミン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
これらの芳香族アミン化合物は、例えば、市販品として、jERキュアW(三菱化学株式会社製、商品名)、カヤハードA−A、カヤハードA−B、カヤハードA−S(日本化薬株式会社製、商品名)、トートアミンHM−205(東都化成株式会社製、商品名)、アデカハードナーEH−101(旭電化工業株式会社製、商品名)、エポミックQ−640、エポミックQ−643(三井化学株式会社製、商品名)、DETDA80(Lonza社製、商品名)などが入手可能である。
これらの芳香族アミン化合物は、単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
そのなかでも保存安定性の観点から、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン及びジエチルトルエンジアミンが好ましく、芳香族アミン化合物としてこれらのいずれか又はこれらの混合物を主成分として含有することが好ましい。
ジエチルトルエンジアミンとしては、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン及び3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミンが挙げられる。これらは単独で用いても混合物で用いてもよい。
特に、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミンを全芳香族アミン化合物中に60質量%以上含むことが好ましい。
【0036】
芳香族アミン化合物の活性水素当量は特に制限されない。中でも30以上1000以下であることが好ましく、30以上500以下であることがより好ましく、30以上200以下であることが更に好ましい。
【0037】
また本発明の電子部品用液状樹脂組成物は、本発明の効果が達成される範囲内であれば上記の芳香族アミン化合物の他に、芳香族アミン化合物以外のアミン系硬化剤、フェノール性硬化剤、酸無水物等の電子部品用液状樹脂組成物で一般に使用されている硬化剤を併用することができ、固形硬化剤も併用することもできる。
他の硬化剤を併用する場合、芳香族アミン化合物の含有率は、その性能を発揮するために、硬化剤全量中において60質量%以上とすることが好ましい。
【0038】
前記エポキシ樹脂と前記芳香族アミン化合物を含む硬化剤との当量比は特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために、エポキシ樹脂1.0当量に対して硬化剤を0.7当量以上1.8当量以下の範囲に設定することが好ましく、0.8当量以上1.6当量以下がより好ましく、1.0以上1.5当量以下が更に好ましい。
【0039】
(C)硬化促進剤
本発明における硬化促進剤は、下記一般式(I)で表される化合物(以下、「特定硬化促進化合物」ともいう)群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する。
【0040】
【化4】

【0041】
式中、Lは、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18のm価の基、又は炭素数1〜18のm価の炭化水素基を示す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す。Rは炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、炭素原子、水素原子及び窒素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す。mは2〜12の整数を示す。
ここで、Rで表される炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基は、置換基としてカルボキシ基及びエステル、アミド等のカルボキシ基から誘導される置換基を有さないことが好ましい。
【0042】
炭素数1〜18のm価の炭化水素基は、炭素数1〜18の炭化水素化合物からm個の水素原子を取り除いて構成されるm価の基である。炭素数1〜18の炭化水素化合物としては、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルカン、炭素数3〜18のシクロアルカン、炭素数2〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルケン、炭素数5〜18のシクロアルケン及び炭素数6〜18の芳香族炭化水素を挙げることができる。中でも、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルカン、炭素数5〜12のシクロアルカン、炭素数5〜12の直鎖状アルカン、分岐鎖状のアルカン及びシクロアルカンの複合体、炭素数2〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルケン、炭素数5〜12のシクロアルケン及び炭素数6〜15の芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンの具体例としては、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、2,2−ジメチルプロパン、ヘキサン、2−エチルヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、オクタデカンなどを挙げることができる。
炭素数3〜18のシクロアルカンとしては、シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、及びビシクロ〔4.4.0〕デカン、などを挙げることができる。
炭素数2〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルケンとしては、エチレン、プロピレン、及びブテン、などを挙げることができる。
炭素数5〜18のシクロアルケンとしては、シクロペンテン、及びシクロヘキセン、などを挙げることができる。
炭素数6〜18の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、及びフェナントレンなどが挙げられる。
【0044】
これらの中でも、炭素数1〜18のm価の炭化水素基を構成する炭化水素化合物としては、硬化促進性と保存安定性(ポットライフ)の観点から、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルカン、シクロアルカン、直鎖状アルカンとシクロアルカンとの複合体、直鎖状又は分岐鎖状のアルケン、シクロアルケン、ベンゼン、ナフタレンが好ましく、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルカン、シクロアルカン及び直鎖状アルカンとシクロアルカンとの複合体がより好ましい。
【0045】
また炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18のm価の基の具体例としては、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ジエチレンオキシ基、ジプロピレンオキシ基、トリエチレンオキシ基、トリプロピレンオキシ基等の炭素数1〜18のアルキレンオキシ基及びオリゴアルキレンオキシ基などの2価の基や、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールから、m個の水酸基を取り除いて構成されるm価の基などが挙げられる。
中でも、ポットライフの観点から、炭素数2〜12のアルキレンオキシ基及びオリゴアルキレンオキシ基が好ましく、炭素数2〜8のアルキレンオキシ基及びオリゴアルキレンオキシ基がより好ましい。
【0046】
炭素数1〜18の1価の炭化水素基の具体例としては、炭素数1〜18のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基などが挙げられる。
中でも、ポットライフの観点から、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数2〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、炭素数3〜18のシクロアルケニル基及び炭素数6〜18のアリール基が好ましく、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数2〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基及び炭素数6〜12のアリール基がより好ましく、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がさらに好ましい。
【0047】
炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシメチル基、フェノキシ基、フェノキシメチル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、ベンゾイルフェニル基、アセチルフェニル基等の炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される置換基により置換されたアルキル基及びアリール基などが挙げられる。
中でも、ポットライフの観点から、メトキシ基、エトキシ基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、フェノキシ基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基及びアセチルフェニル基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、フェノキシ基、メトキシフェニル基及びアセチルフェニル基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基が特に好ましい。
【0048】
炭素原子、水素原子及び窒素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基の具体例としては、シアノメチル基、シアノフェニル基、アミノメチル基、アミノフェニル基、ジアミノフェニル基等の窒素を含有する基により置換されたアルキル基、アリール基などが挙げられる。
【0049】
は、硬化促進性と安定性の観点から、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンから2個若しくは3個の水素原子を取り除いて構成される2価若しくは3価の炭化水素基及び炭素数2〜18のアルキレンオキシ基若しくはオリゴアルキレンオキシ基が好ましく、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンから2個若しくは3個の水素原子を取り除いて構成される2価若しくは3価の炭化水素基がより好ましく、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンから2個の水素原子を取り除いて構成される2価の炭化水素基がさらに好ましい。
【0050】
〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基が好ましく、水素原子及び炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、水素原子及び炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がさらに好ましく、水素原子及びメチル基が特に好ましい。
【0051】
は、硬化促進性の観点から、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数3〜18のシクロアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、ベンゾイルフェニル基、アセチルフェニル基、シアノメチル基、シアノフェニル基、アミノメチル基、アミノフェニル基、及びジアミノフェニル基、が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、メトキシメチル基、アセチルフェニル基、シアノメチル基、及びシアノフェニル基、がより好ましい。
【0052】
mは2〜12の整数を示すが、2〜6の整数であることが好ましく、2〜4の整数であることがより好ましい。
mが2の場合、一般式(I)で表される化合物は下記一般式(II)で表される。
【0053】
【化5】

【0054】
式中、L21は、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の2価の基、又は炭素数1〜18の2価の炭化水素基を示す。R21〜R26はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す。R27及びR28はそれぞれ独立に、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、炭素原子、水素原子及び窒素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す。
【0055】
一般式(II)における炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の2価の基、炭素数1〜18の2価の炭化水素基、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、炭素原子、水素原子及び窒素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、及び炭素数1〜18の1価の炭化水素基は、一般式(I)におけるそれらとそれぞれ同義であり、好ましい態様も同様である。
【0056】
一般式(II)におけるL21は、硬化促進性と保存安定性の観点から、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基又は炭素数2〜18のアルキレンオキシ基及びオリゴアルキレンオキシ基が好ましく、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基がより好ましい。
【0057】
21〜R26はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基が好ましく、水素原子及び炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、水素原子及び炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がさら好ましく、水素原子及びメチル基が特に好ましい。
【0058】
27及びR28は、硬化促進性の観点から、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数3〜18のシクロアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、ベンゾイルフェニル基、アセチルフェニル基、シアノメチル基、シアノフェニル基、アミノメチル基、アミノフェニル基、及びジアミノフェニル基、が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、メトキシメチル基、アセチルフェニル基、シアノメチル基、及びシアノフェニル基、がより好ましい。
【0059】
前記特定硬化促進化合物の重量平均分子量は特に制限されない。取扱性に優れた粘度とする観点から、100〜5000であることが好ましく、150〜2000であることがより好ましく、200〜1000であることが更に好ましい。
尚、重量平均分子量は、質量分析装置又はGPCを用いた通常の方法で測定することができる。
【0060】
前記硬化促進剤は、遊離のカルボキシ基を有する化合物を含んでいてもよい。
特定硬化促進化合物における遊離のカルボキシ基の含有率は、5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましく、0.5モル%以下であることがさらに好ましい。
遊離のカルボキシ基の含有率は、13C−NMRを用いて測定することができる。具体的には例えば、試料約100mgを0.5mlの重アセトン等に溶解し、試料管に入れ、定量性の高いインバースゲートデカップリング法を用いて、繰り返し時間を30秒以上とする条件で測定し、未反応のカルボキシ基の炭素と、反応によりエステル結合を形成しているカルボキシ基の炭素の積分比を算出することで、遊離のカルボキシ基の含有率を評価することができる。
【0061】
また前記硬化促進剤は、下記一般式(IIa)で表される化合物を含んでいてもよい。下記一般式(IIa)で表される化合物は、後述するような特定硬化促進化合物の製造方法において、カルボキシ基を1つ有する化合物とジビニルエーテル化合物とから特定硬化促進剤を製造する際に副生し得る化合物の一例である。
このようなビニルエーテル基を有する化合物をさらに含むことで、保存安定性がより向上する場合がある。
【0062】
【化6】

【0063】
一般式(IIa)におけるL21及びR21〜R27は、一般式(II)におけるL21及びR21〜R27とそれぞれ同義である。
【0064】
硬化促進剤に含まれる一般式(IIa)で表される化合物の含有率は、特に制限されない。硬化促進性と保存安定性の観点から、硬化促進剤の総量中に75質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
【0065】
一般式(I)で表される化合物(特定硬化促進化合物)は、例えば、カルボキシ基を1つだけ有する化合物とビニルエーテル基を少なくとも2つ有する化合物(以下、単に「ビニルエーテル化合物」ともいう)とを付加反応させることで得ることができる。
付加反応の反応条件は特に制限されない。例えば、50℃〜150℃の温度範囲で10分〜24時間程度反応させることによって得ることができる。また付加反応は窒素雰囲気下で行うこともできる。
さらに付加反応には、キシレン等の溶媒を用いてもよい。また付加反応は酸性リン酸エステル等の酸触媒により促進することもできる。
尚、付加反応の反応終点は、残存するカルボキシ基を例えば、水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定することにより決定できる。
【0066】
カルボキシ基を有する化合物とビニルエーテル化合物とを付加反応させる際の仕込みモル比は、カルボキシ基を有する化合物及びビニルエーテル化合物の構造に応じて適宜選択することができる。
具体的には一般式(I)で表される化合物は、カルボキシ基を1つ有する化合物と、ビニルエーテル基をm個有する化合物とを付加反応させて得られる。ビニルエーテル基をm個有する化合物に対するカルボキシ基を1つ有する化合物の仕込み比(カルボキシ基を1つ有する化合物/ビニルエーテル基をm個有する化合物)は、m倍モル以下であればよい。中でも0.25m〜m倍モルであることが好ましく、0.40m〜0.95m倍モルであることがより好ましい。
【0067】
また特定硬化促進化合物が一般式(II)で表される化合物である場合、カルボキシ基を1つ有する化合物に、ビニルエーテル基を有する化合物としてビニルエーテル基を2つ有する化合物(以下、「ビスビニルエーテル化合物」ともいう)を付加反応させることで、一般式(II)で表される化合物を得ることができる。ビスビニルエーテル化合物に対するカルボキシ基を1つ有する化合物の仕込み量比(を1つ有する化合物/ビスビニルエーテル化合物カルボキシ基)は、例えば2.0倍モル以下であればよい。中でも0.5〜2.0倍モルであることが好ましく、0.8〜1.9倍モルであることがより好ましく、1.0〜1.8倍モルであることがさらに好ましい。
【0068】
さらにまたビニルエーテル化合物を過剰に含むことによって、ビニルエーテル化合物が脱離しても平衡反応によりカルボキシ基がブロックされ、保存安定性に優れる。また、過剰なビニルエーテル化合物により適切な分子量で重合反応が停止するため、粘度を所望の範囲内とすることも可能である。また、残存カルボン酸率を下げるために、ジカルボン酸類とビニルエーテル化合物が充分に反応できるように、充分な反応時間で反応させることが好ましい。
【0069】
カルボキシ基を1つ有する化合物としては、例えば、酢酸、フェニル酢酸、ジフェニル酢酸、トリフェニル酢酸、メトキシ酢酸、フェノキシ酢酸、ピルビン酸、安息香酸、トルイル酸、メトキシ安息香酸、ジメトキシ安息香酸、ベンゾイル安息香酸、アセチル安息香酸、シアノ安息香酸、アセチルサリチル酸などが挙げられる。そのなかでも硬化促進性及び保存安定性の観点から、メトキシ酢酸、安息香酸、ジフェニル安息香酸、トルイル酸、アセチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸、アセチルサリチル酸が好ましい。
【0070】
またビニルエーテル基を2つ有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ヘプタエチレングリコールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,2−ブタンジオールジビニルエーテル、2,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1−メチル−1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、2−メチル−1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、2−メチル−1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,5−ペンタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジオールジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジビニルエーテル、p−キシレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、3−ビニロキシプロピルビニルエーテル、3,9−ジオキサ−1,10−ウンデカジエン、10−ビニロキシデシルビニルエーテル、12−ビニロキシオクタデシルビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、レゾルシノールジビニルエーテル、m−フェニレンビス(エチレングリコール)ジビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル等のビニルエーテル基を2つ有する脂肪族ビニルエーテル化合物、脂環式ビニルエーテル化合物及び芳香族ビニルエーテル化合物などが挙げられる。
【0071】
またビニルエーテル基を3つ以上有する化合物としては、例えば、グリセロールトリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジグリセロールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどを挙げることができる。
【0072】
そのなかでも保存安定性の観点から、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ヘプタエチレングリコールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,2−ブタンジオールジビニルエーテル、2,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1−メチル−1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、2−メチル−1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、2−メチル−1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,5−ペンタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジオールジビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジビニルエーテル、p−キシレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテルが好ましく、1,4−ブタンジオールジビニルエーテルが最も好ましい。
【0073】
また、本発明の電子部品用液状樹脂組成物には、本発明の効果が達成される範囲内であれば(C)成分は、さらに従来公知の硬化促進剤も併用することができる。これらを例示すれば1,8−ジアザ−ビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ〔4.3.0〕ノネン、5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−ヒドロキシイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン等のジアルキルアリールホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等のアルキルジアリールホスフィン、トリフェニルホスフィン、アルキル基置換トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類、及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、及びこれらの誘導体などが挙げられ、さらには2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のフェニルボロン塩などが挙げられる。また、潜在性を有する硬化促進剤として、常温固体のアミノ基を有する化合物をコアとして、常温固体のエポキシ化合物のシェルを被覆してなるコア−シェル粒子が挙げられ、市販品としてアミキュア(味の素株式会社製、商品名)や、マイクロカプセル化されたアミンをビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に分散させたノバキュア(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名)などが使用できる。
【0074】
硬化促進剤の含有量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではないが、全エポキシ樹脂の質量に対して0.2質量%〜30質量%の範囲が好ましく、0.5質量%〜25質量%の範囲がより好ましく、6質量%〜20質量%の範囲がさらに好ましい。0.2質量%以上含有することで硬化促進剤の添加効果が充分に発揮することができ、結果として成形時のボイドの発生を抑制や、反り低減効果を充分に得られやすくなる。30質量%以下であることで保存安定性に優れる。
【0075】
(D)無機充填材
本発明の電子部品用液状樹脂組成物は更に、熱膨張係数の低減などの観点から無機充填剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミ、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニアなどがあり、これらの粉体、又はこれらを球形化したビーズの他、ガラス繊維などが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも溶融シリカが好ましく、電子部品用液状樹脂組成物の微細間隙への流動性・浸透性の観点からは球形シリカがより好ましい。
【0076】
無機充填剤の体積平均粒径は、特に球形シリカの場合、0.1μm以上10μm以下の範囲が好ましく、体積平均粒径0.3μm以上5μm以下の範囲がより好ましく、0.5μm以上3μm以下の範囲がさらに好ましい。体積平均粒径が0.1μm以上とすることで液状樹脂への分散性に優れ、電子部品用液状樹脂組成物にチキソトロピック性が付与されにくく、流動特性に優れる効果が得られる。10μm以下とすることで、電子部品用液状樹脂組成物中での無機充填剤の沈降を低減でき、電子部品用液状樹脂組成物としての微細間隙への浸透性・流動性が向上してボイド・未充填を防止できる傾向がある。
【0077】
無機充填剤の含有量は、電子部品用液状樹脂組成物全体の50質量%以上80質量%以下の範囲に設定することが好ましい。無機充填剤の含有量を55質量%以上75質量%以下の範囲に設定することが好ましく、さらに好ましくは60質量%以上70質量%以下である。含有量が50質量%以上とすることで熱膨張係数の低減効果が得られやすく、80質量%を以下とすることで電子部品用液状樹脂組成物の粘度が上昇を防ぎ、流動性・浸透性及びディスペンス性が良好となる。
【0078】
(E)その他添加剤
本発明の電子部品用液状樹脂組成物には耐熱衝撃性向上、半導体素子への応力低減などの観点から各種可撓剤を配合することができる。可撓剤としては、特に制限は無いがゴム粒子が好ましく、それらを例示すればスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム(UR)、アクリルゴム(AR)等のゴム粒子が挙げられる。なかでも耐熱性、耐湿性の観点からアクリルゴムからなるゴム粒子が好ましく、コアシェル型アクリル系重合体、すなわちコアシェル型アクリルゴム粒子がより好ましい。
【0079】
また、上記以外のゴム粒子としてシリコーンゴム粒子も好適に用いることができ、それらを例示すれば、直鎖状のポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のポリオルガノシロキサンを架橋したシリコーンゴム粒子、シリコーンゴム粒子の表面をシリコーンレジンで被覆したもの、シリコーンゴム粒子の表面をエポキシ基で修飾したもの、乳化重合などで得られる固形シリコーン粒子のコアとアクリル樹脂等の有機重合体のシェルからなるコア−シェル重合体粒子などが挙げられる。
【0080】
これらのシリコーンゴム粒子の形状は無定形であっても球形であっても使用することができるが、電子部品用液状樹脂組成物の成形性に関わる粘度を低く抑えるためには球形のものを用いることが好ましい。これらのシリコーンゴム粒子は東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、信越化学工業株式会社などから市販品が入手可能である。
【0081】
シリコーンゴム粒子の体積平均粒径は、耐熱衝撃性向上、半導体素子への応力低減などの観点から、0.001μm以上100μm以下であることが好ましく、0.01μm以上50μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上10μm以下であることが更に好ましい。
【0082】
また、必要に応じ、界面活性剤としての効果を持つシリコーン変性エポキシ樹脂を添加することが好ましい。シリコーン変性エポキシ樹脂は、エポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンとエポキシ樹脂との反応物として得ることができる。このシリコーン変性エポキシ樹脂は、常温で液状であることが好ましい。エポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンを例示すれば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基等の官能基を1分子中に1個以上有するジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサンなどが挙げられる。該オルガノシロキサンの質量平均分子量としては500以上5000以下の範囲が好ましい。この理由としては、500以上5000以下とすることで樹脂系との相溶性が適度であるためである。重量平均分子量が500以上であると、樹脂系と適度に相溶し、添加剤としての効果が適切に発揮される。重量平均分子量が5000以下であると、樹脂系に非相溶となるのが抑えられシリコーン変性エポキシ樹脂が成形時に分離したり染み出したりするのを抑制し、接着性や外観に優れるためである。
【0083】
前記シリコーン変性エポキシ樹脂を得るためのエポキシ樹脂としては電子部品用液状樹脂組成物の樹脂系に相溶するものであれば特に制限は無く、電子部品用液状樹脂組成物に一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができ、たとえば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等のフェノール類とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、常温液状のものが好ましい。
【0084】
シリコーン変性エポキシ樹脂の添加量は電子部品用液状樹脂組成物全体に対して、0.01質量%以上1.5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量%以下がより好ましい。0.01質量%以上とすることで充分な添加効果が得られ、1.5質量%以下とすることで硬化時に硬化物表面からの染み出しの発生を防止し、接着力の低下を防止できる。本発明の効果が得られる範囲であれば、シリコーン変性エポキシ樹脂以外にも、界面活性剤としての効果を持つ添加剤を添加することができる。
【0085】
本発明の電子部品用液状樹脂組成物には必要に応じて、樹脂と無機充填剤或いは樹脂と電子部品の構成部材との界面接着を強固にする目的でカップリング剤を使用することが好ましい。これらのカップリング剤には特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、たとえば、1級及び/又は2級及び/又は3級アミノ基を有するシラン化合物、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などが挙げられる。これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
また、本発明の電子部品用液状樹脂組成物には、必要に応じて下記一般式(1)又は(2)で表されるイオントラップ剤をIC等の半導体素子の耐マイグレーション性、耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から含有することが好ましい。
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO ・・・(1)
(0<x≦0.5、mは正の数)
BiO(OH)(NO ・・・(2)
(0.9≦x≦1.1、 0.6≦y≦0.8、 0.2≦z≦0.4)
【0087】
これらイオントラップ剤の添加量としては0.1質量%以上3.0質量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.3質量%以上1.5質量%以下である。イオントラップ剤の体積平均粒径は0.1μm以上3.0μm以下が好ましく、最大粒径は10μm以下が好ましい。なお、一般式(1)の化合物は市販品として協和化学工業株式会社製商品名DHT−4Aとして入手可能である。また、一般式(2)の化合物は市販品としてIXE500(東亞合成製商品名)として入手可能である。また必要に応じてその他の陰イオン交換体を添加することもできる。陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。たとえば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン等の元素の含水酸化物などが挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
本発明の電子部品用液状樹脂組成物には、その他の添加剤として、染料、カーボンブラック等の着色剤、希釈剤、レベリング剤、消泡剤などを必要に応じて配合することができる。
【0089】
本発明の電子部品用液状樹脂組成物は、上記各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の成分を秤量し、らいかい機、ミキシングロール、プラネタリミキサなどを用いて混合、混練し、必要に応じて脱泡することによって得ることができる。
【0090】
本発明の電子部品用液状樹脂組成物の25℃における粘度は、0.01Pa・s〜1000Pa・sであることが好ましく、0.1Pa・s〜200Pa・sであることがより好ましく、1Pa・s〜50Pa・sであることが更に好ましい。
電子部品用液状樹脂組成物の25℃における粘度は、E型粘度計(コーン角度3°、回転数5rpm)を用いて測定する。
【0091】
本発明の電子部品用液状樹脂組成物は、半導体素子と基板の隙間を封止するのに用いることができる。具体的には、本発明の電子部品用液状樹脂組成物を用いた電子部品装置は、半導体素子の回路形成面と無機又は有機基板の回路形成面とを対向させ、前記半導体素子の電極と前記基板の回路とがバンプを介して電気的に接続され、前記半導体素子と前記基板の隙間に本発明の電子部品用液状樹脂組成物を封止してなる。
【0092】
本発明の電子部品用液状樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、例えば、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式などが挙げられる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0094】
(実施例1〜16、比較例1〜7)
液状エポキシ樹脂として、ビスフェノールFをエポキシ化して得られるエポキシ当量160の液状ジエポキシ樹脂(液状エポキシ1;三菱化学株式会社製、商品名jER806)、アミノフェノールをエポキシ化して得られるエポキシ当量95の3官能液状エポキシ樹脂(液状エポキシ2;三菱化学株式会社製、商品名jER630)、硬化剤として活性水素当量45のジエチルトルエンジアミン(液状アミン1;三菱化学株式会社製、商品名jERキュアW)、活性水素当量63のジエチルジアミノジフェニルメタン(液状アミン2;日本化薬株式会社製、商品名カヤハードA−A)、活性水素当量63のテトラメチルジアミノジフェニルメタン(固形アミン;日本化薬株式会社製、商品名カヤボンドC−200S)、酸無水物当量168の液状酸無水物(酸無水物;日立化成工業株式会社製、商品名HN5500)、水酸基当量141のアリル化フェノールノボラック樹脂(フェノール樹脂;明和化成株式会社製、商品名MEH−8000H)、硬化促進剤として、2−フェニル−4−メチル−ヒドロキシイミダゾール(硬化促進剤5)、無機充填剤として体積平均粒径1μmの球状溶融シリカ(シリカ)、その他に、ジメチル型固形シリコーンゴム粒子の表面がエポキシ基で修飾された体積平均粒径2μmの球状のシリコーン粒子、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、カーボンブラック(三菱化学製、商品名MA−100)、ビスマス系イオントラップ剤(東亞合成製、商品名IXE−500)を用意した。
【0095】
(硬化促進剤1の調製)
フラスコに34.3gの安息香酸と24.0gの1,4−ブタンジオールジビニルエーテルを仕込み(安息香酸と1,4−ブタンジオールジビニルエーテルのモル比は5:3)、100℃で2時間反応させることにより、一般式(I)で表される硬化促進剤1を得た。
【0096】
(硬化促進剤2の調製)
フラスコに25.3gのメトキシ酢酸と24.0gの1,4−ブタンジオールジビニルエーテルを仕込み(メトキシ酢酸と1,4−ブタンジオールジビニルエーテルのモル比は5:3)、100℃で2時間反応させることにより、一般式(I)で表される硬化促進剤2を得た。
【0097】
(硬化促進剤3の調製)
フラスコに50.7gのアセチルサリチル酸と24.0gの1,4−ブタンジオールジビニルエーテルを仕込み(アセチルサリチル酸と1,4−ブタンジオールジビニルエーテルのモル比は5:3)、100℃で2時間反応させることにより、一般式(I)で表される硬化促進剤3を得た。
【0098】
(硬化促進剤4の調製)
フラスコに41.4gの4−シアノ安息香酸と24.0gの1,4−ブタンジオールジビニルエーテルを仕込み(4−シアノ安息香酸と1,4−ブタンジオールジビニルエーテルのモル比は5:3)、100℃で2時間反応させることにより、一般式(I)で表される硬化促進剤4を得た。
【0099】
下記表1に示す組成となるように各成分を配合し、三本ロール及び真空擂潰機にて混練分散した後、実施例1〜16及び比較例1〜7の電子部品用液状樹脂組成物を作製した。なお表1中の配合単位は特に記載のない限り質量部である。
【0100】

【表1】



【0101】
得られた電子部品用液状樹脂組成物の評価結果について表2に示す。特性試験の試験方法を以下に説明する。なお、使用した電子部品用液状樹脂組成物の諸特性及び含浸時間、ボイドの観察、各種信頼性の評価は以下の方法及び条件で行った。
信頼性の評価に使用した半導体装置の諸元は、チップサイズ20×20×0.55tmm(回路:アルミのデイジーチェーン接続、パッシベーション:ポリイミド膜HD4000、日立化成デュポンマイクロシステムズ製、商品名)、バンプ:はんだボール(Sn−Ag−Cu、直径80μm、7,744pin、)、バンプピッチ:190μm、基板:FR−5(ソルダーレジストSR7200、日立化成工業製、商品名、60×60×0.8tmm)、チップ/基板間のギャップ:50μmである。
【0102】
半導体装置は、電子部品用液状樹脂組成物をディスペンス方式でアンダーフィルし、130℃または165℃の硬化温度で、2時間硬化することで作製した。また、各種試験片の硬化条件も同様な条件で行った。
【0103】
(1)粘度(初期粘度)
電子部品用液状樹脂組成物を調製してから2時間以内に、25℃における粘度をE型粘度計(コーン角度3°、回転数5rpm)を用いて測定した。
【0104】
(2)ポットライフ
電子部品用液状樹脂組成物を25℃で24時間放置後、25℃における粘度をE型粘度計(コーン角度3°、回転数5rpm)を用いて測定した(放置後粘度)。ポットライフ(%)は、((放置後粘度)−(初期粘度))/(初期粘度)×100で算出した。
【0105】
(3)ゲルタイム
ゲル化試験機を用い、配合した電子部品用液状樹脂組成物を165℃または130℃の熱板上に適量(約3ml)滴下した後、目視で観察し、流動性を失ってゲル状態になるまでの時間を測定した。
【0106】
(4)ガラス転移温度(Tg)
所定条件で硬化した試験片(3mm×3mm×20mm)を熱機械分析装置TMAQ400(ティー・エイ・インスツルメント製)を用い、荷重15g、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0107】
(5)接着力
・SiN接着力
P−SiN付きウェハー(住友商事九州株式会社製)の表面に電子部品用液状樹脂組成物を直径3mm高さ3mmに成形した試験片を作製し、ボンドテスターDS100型(DAGE製)を用いて、ヘッドスピード50μm/sec、25℃の条件でせん断応力をかけ、成形品がP−SiN付ウェハーから剥離する強度を測定した。この測定は、試験片成形直後、及び130℃、85%RHのHAST(Highly Accelerated Temperature and Humidity Stress Test)条件下で200h処理後に行った。
・PI接着力
感光性ポリイミドHD4100(日立化成デュポンマイクロシステムズ製、商品名)の表面に電子部品用液状樹脂組成物を直径3mm高さ3mmに成形した試験片を作製し、ボンドテスターDS100型(DAGE製)を用いて、ヘッドスピード50μm/sec、25℃の条件においてせん断応力をかけ、成形品が感光性ポリイミドから剥離する強度を測定した。この測定は、試験片成形直後、及び130℃、85%RHのHAST条件下で200h処理後に行った。
【0108】
(6)含浸時間
半導体装置を110℃に加熱したホットプレート上に置き、デイスペンサーを用いて電子部品用液状樹脂組成物の所定量(約1ml)をチップの側面(1辺)に滴下し、樹脂組成物が対向する側面に浸透するまでの時間を測定した。
【0109】
(7)ボイド観察
電子部品用液状樹脂組成物をアンダーフィルして作製した半導体装置の内部を超音波探傷装置AT−5500(日立建機製)で観察し、ボイドの有無を調べた。
【0110】
(8)チップ反り
電子部品用液状樹脂組成物をアンダーフィルして作製した半導体装置のチップ対角線上の反り量(μm)を室温にて表面粗さ測定器サーフコーダSE−2300(小坂研究所製)を用いて測定した。
【0111】
(9)耐温度サイクル性
電子部品用液状樹脂組成物をアンダーフィルして作製した半導体装置を−55℃〜125℃、各30分のヒートサイクルで2000サイクル処理し、1000サイクルごとに導通試験を行いアルミ配線及びパッドの断線不良を調べ、不良パッケージ数/評価パッケージ数で評価した。
【0112】
(10)耐湿信頼性
電子部品用液状樹脂組成物をアンダーフィルして作製した半導体装置を130℃、85%RHのHAST条件下で200h処理後、アルミ配線及びパッドの断線有無を導通試験より確認し、不良パッケージ数/評価パッケージ数で評価した。
【0113】
【表2】



【0114】
本発明における(C)成分である硬化促進剤を含まない比較例1〜3では、ゲルタイムが長く、またボイドが発生した。更に、130℃硬化において、硬化物の接着力が低いために、耐温度サイクル性及び耐湿信頼性に劣り、特に耐温度サイクル性が著しく劣っていた。
(B)成分が固形アミンである比較例4では、粘度が高く、未充填で半導体装置を作製することができなかった。
また(B)成分が酸無水物である比較例6では、ゲルタイムは短くなるものの、HAST処理後の接着力が低下し、耐湿性が著しく低下した。(B)成分が酸無水物であるフェノール樹脂である比較例7では、同様にゲルタイムは短くなるもののTgが低下したために温度サイクル性が著しく低下した。
また(C)成分が硬化促進剤5である比較例5では、ゲルタイムが短くなるものの、硬化物のTg及びHAST処理後の接着力が低下し、耐湿性が著しく低下した。
これに対して、実施例1〜16は、比較例1〜3と比較してゲルタイムが短縮し、ボイドが発生せず、硬化物の接着力も向上し、耐温度サイクル性や耐湿性が向上した。特に、130℃硬化での接着力が向上し、耐温度サイクル性や耐湿性が向上しており、硬化温度を低く設定することでとチップ反り量が小さくすることも可能となった。また、比較例5と比較すると、HAST処理後の接着力が向上し、耐湿性に優れた半導体装置が得られており、比較例1〜7と比較して、成形性、信頼性においてバランスの良い半導体装置が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、芳香族アミン化合物と、硬化促進剤として、下記一般式(I)で表される化合物群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含有する電子部品用液状樹脂組成物。
【化1】


(式中、Lは、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18のm価の基、又は炭素数1〜18のm価の炭化水素基を示す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す。Rは炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、炭素原子、水素原子及び窒素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す。mは2〜6の整数を示す)
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表される化合物である、請求項1に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【化2】



(式中、L21は、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の2価の基、又は炭素数1〜18の2価の炭化水素基を示す。R21〜R26はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す。R27及びR28はそれぞれ独立に、炭素原子、水素原子及び酸素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、炭素原子、水素原子及び窒素原子から構成される炭素数1〜18の1価の基、又は炭素数1〜18の1価の炭化水素基を示す)
【請求項3】
前記硬化促進剤は、カルボキシ基を1つだけ有する化合物の少なくとも1種と、ビニルエーテル基を少なくとも2つ有する化合物の少なくとも1種とを付加反応させて得られる反応生成物である、請求項1又は請求項2に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂は液状エポキシ樹脂である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項5】
前記芳香族アミン化合物は液状芳香族アミン化合物である、請求項1〜請求項4のいずれか1に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項6】
さらに無機充填材を含有し、前記無機充填剤の含有量が電子部品用液状樹脂組成物全体の50質量%以上80質量%以下の範囲である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項7】
前記芳香族アミン化合物は、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン及びジエチルトルエンジアミンから選ばれる少なくとも一方を含有する、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項8】
半導体素子の回路形成面と無機又は有機基板の回路形成面とを対向させ、前記半導体素子の電極と前記基板の回路とがバンプを介して電気的に接続され、前記半導体素子と前記基板との隙間に請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物を封止してなる電子部品装置。


【公開番号】特開2013−1811(P2013−1811A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134536(P2011−134536)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】