説明

電極アッセンブリ

【課題】基板を処理するためのプラズマ処理システムの処理の均一性を改善する。
【解決手段】プラズマ処理システムは、処理チャンバを備え、処理チャンバ内では、処理のためにプラズマが点火および維持される。プラズマ処理システムは、さらに、処理チャンバの下端に配置された電極152を備える。電極152は、処理チャンバ内に電界を発生させるよう構成されている。プラズマ処理システムは、さらに、電極とプラズマとの間のインピーダンスを制御するための要素を備える。インピーダンスは、電界に影響を与えることにより、基板の表面にわたって処理の均一性を改善するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICの製造や、フラットパネルディスプレイに用いるパネル(例えば、ガラス、プラスチックなど)に使用する半導体基板のような基板を処理するための装置および方法に関する。特に、本発明は、基板表面の全体にわたって高度な処理均一性を保ちつつ基板処理を行うことができる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたって、誘導結合プラズマ発生源、電子サイクロトロン共鳴(ECR)発生源、容量性の発生源などを用いるプラズマ処理システムが、程度の差こそあれ、半導体基板やディスプレイパネルの処理に導入され、用いられてきた。これらの製品の製造においては、複数の蒸着および/またはエッチングの工程を用いることができる。蒸着工程では、(ガラスパネルもしくはウエハの表面などの)基板表面に材料を蒸着する。例えば、シリコン、二酸化シリコン、窒化シリコンなど様々な形態の蒸着層を、基板の表面に形成することができる。エッチング工程では、基板表面の所定の領域から選択的に材料を除去する。例えば、ビア、コンタクト、トレンチなどのエッチング形状を、基板の層に形成することができる。
【0003】
図1によると、従来のプラズマ処理システム10が示されている。基板を処理するために、処理チャンバ16内部の基板台14に基板12が設置され、処理チャンバ16内にプロセスガスが供給される。さらに、処理チャンバ16内でプラズマ18を点火するために、プロセスガスにエネルギが供給される。プラズマが点火されると、追加のエネルギによってプラズマが維持される。そのエネルギは、様々な周知の方法(例えば、静電結合、誘導結合、マイクロ波など)で、プラズマに結合される。次いで、プラズマは、例えば、基板12の薄膜のエッチングや蒸着などの処理に用いられる。ほとんどの場合、基板表面付近にシース電圧(電位)20が形成され、基板12に向かってプラズマのイオンを加速させる。基板において、イオンは、あるいは他の反応物質と共に、処理反応を活性化する。シース電圧は、基板台14とプラズマ18との間の電位に関係する。
【0004】
しかしながら、残念なことに、基板台14とプラズマ18との間の電気的結合は、不均一である傾向があり、その結果として、基板12の表面にわたって処理結果にばらつきが生じる。特に、基板中央部の処理と、基板縁部の処理との間に違いが生じる傾向があるため、中央部の歩留まりと縁部の歩留まりとに差が生じる。したがって、基板の縁部は一般に、ICの製造に用いられず、すなわち、その結果として、製造業者のコストが高くなっている。さらに、より大きい基板が求められてきたことにより、基板の縁部における処理の均一性を改善することがますます重要になっている。
【0005】
以上の点から、基板の表面における処理の均一性を向上させるための方法および装置の改良が望まれている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、一実施形態においては、基板を処理するためのプラズマ処理システムに関する。プラズマ処理システムは、処理チャンバを備え、処理チャンバ内では、処理のためにプラズマが点火および維持される。処理チャンバは、上端と下端とを有する。プラズマ処理システムは、さらに、処理チャンバの下端に配置された電極を備える。電極は、処理チャンバ内に電界を発生させるよう構成されている。プラズマ処理チャンバは、さらに、電極とプラズマとの間のインピーダンスを制御するための要素を備えている。インピーダンスは、電界に影響を与えることにより、基板の表面にわたって処理の均一性を改善するよう構成されている。
【0007】
本発明は、別の実施形態においては、基板を処理するためのプラズマ処理システムに関する。プラズマ処理システムは、処理チャンバを備え、処理チャンバ内では、処理のためにプラズマが点火および維持される。プラズマ処理システムは、さらに、処理チャンバの内部に配置された電極を備える。電極は、プラズマと電極との間に電界を発生させるよう構成されている。プラズマ処理システムは、さらに、電極の上方に配置されたチャックを備える。チャックは、処理中に基板を保持するよう構成されている。電界は、チャックの領域における電極とプラズマとの間の第1のインピーダンスを有する。プラズマ処理システムは、さらに、電極の上方にチャックに近接して配置されたエッジリングを備える。エッジリングは、少なくとも電極をプラズマから保護するよう構成されている。プラズマ処理システムは、さらに、エッジリングと電極との間に配置されたインピーダンスマッチング層を備える。インピーダンスマッチング層は、エッジリングの領域における電極とプラズマとの間の第2のインピーダンスを制御するよう構成されている。第2のインピーダンスは、処理のために基板をチャックに配置した際に基板の表面におけるプラズマと電極との間の電界が実質的に均一になるように、第1のインピーダンスと実質的に等しくなるよう構成されている。
【0008】
本発明は、別の実施形態においては、プラズマで基板を処理するための基板台に関する。基板台は、基板の上方に電界を発生させるための電極を備える。電極は、基板の外周よりも大きい外周を有する。基板台は、さらに、処理中に基板を保持するためのチャックを備える。チャックは、電極の上面に配置されている。基板台は、さらに、電極とチャックをプラズマから保護するためのエッジリングを備える。エッジリングは、電極の上方に配置されている。エッジリングは、第1の部分と第2の部分とを有する。第1の部分は、処理のために基板がチャックによって保持された際に、基板の縁を取り囲むよう構成されている。第2の部分は、処理中に第2の部分が電極と基板との間に配置された際に、チャックの縁を取り囲むよう構成されている。基板台は、さらに、エッジリングと電極との間に配置されたインピーダンスマッチング層を備える。インピーダンスマッチング層は、チャック、エッジリング、および基板を通して、電界のインピーダンスを制御するよう構成されている。インピーダンスは、電界に影響を与えることにより、基板の表面にわたって処理の均一性を改善するよう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来のプラズマ処理システムの側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に従ったプラズマリアクタの側断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に従った均一基板台の側断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に従った均一基板台の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
基板を処理するにあたって、工程技師が改善に努める最も重要なパラメータのひとつは、処理の均一性である。本明細書においては、処理の均一性という用語は、基板の表面にわたる処理全体の均一性を意味する。例えば、処理が非常に均一である場合には、基板上の異なる位置での処理速度が実質的に等しくなる傾向がある。この場合には、基板の一領域が過度に処理され、他の領域が十分に処理されないという事態は起こりにくい。
【0011】
したがって、本発明は、基板を処理するための改良方法および装置に関する。特に、本発明は、基板表面にわたって高度な処理均一性を実現可能な基板台に関する。基板台は、基板の縁部の付近で通例見られる電気的および熱的な不連続性を低減するよう構成されている。これらの不連続性を低減することにより、基板の中央部と縁部との間に見られる処理のばらつきがかなり低減される。結果として、より多くの基板をICの製造に使用できるようになるため、素子の歩留まりが増大される。
【0012】
本発明の実施形態については、図2〜4を参照して以下で説明する。しかしながら、本発明は、これらの限定された実施形態に縛られることはなく、当業者は、これらの図面に関連して本明細書でなされた詳細な説明が、例示的なものであることを容易に理解するだろう。
【0013】
好ましい実施形態において、本発明は、カリフォルニア州フリモント市所在のラムリサーチ・コーポレーションから入手可能な静電結合プラズマリアクタのようなプラズマリアクタで実施される。静電結合プラズマリアクタについて図示および説明しているが、本発明は、誘導結合もしくはECRリアクタなど、プラズマの形成に適した任意のプラズマで実施可能であることに注意すべきである。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態に従ったプラズマリアクタ100を示す。プラズマ処理リアクタ100は、一般に、処理チャンバ102を備え、処理チャンバ102内では、処理のためにプラズマ103が点火(生成)および維持される。チャンバ102内には、一般に、上部電極104が配置されている。上部電極104は、マッチング回路(簡単のため図示せず)を介して第1のRF電源106に接続することができる。第1のRF電源106は、一般に、RFエネルギによって上部電極104に電力供給するよう構成されている。ガス状のソース材料(例えば、エッチャントソースガス)を、上部電極104と基板110との間の活性領域に放出するために、ガス吸気口108が、上部電極104内に設けられている。ガス状のソース材料は、チャンバ自体の壁に設けられたポートから放出されてもよい。
【0015】
基板110は、チャンバ102に導入され、基板台112に配置される。基板台112は、チャックおよび下部電極として機能する。基板台112は、一般にRFエネルギによって基板台112に電力供給するよう構成されている第2のRF電源114によって(通例は、マッチング回路を介して)バイアスをかけられることが好ましい。基板台112のチャック部分は、例えば、静電力によってチャックの表面に基板110を固定するESC(静電)チャックでよい。しかしながら、機械式のチャックを用いてもよいことを理解すべきである。基板台112に関しては、以下で詳細に説明する。さらに、基板110は、処理を施される対象物であり、例えば、エッチング、蒸着、もしくはその他の処理を施される半導体基板や、フラットパネルディスプレイに加工されるガラス板などでよい。また、処理中に形成される副生成ガスを排気するための排気ポート116は、一般に、処理チャンバ102のチャンバ壁とチャック112との間に配置される。ほとんどの実施形態では、排気ポート116は、処理チャンバ102内の圧力を適切に維持するためのポンプ(図示せず)に接続されている。さらに、基板110上方のプラズマ103を閉じ込めるために、閉じ込めリング120が、処理チャンバ102内部の上部電極104と基板台112との間に配置されてもよい。
【0016】
基板台112をRF電源114に接続するものとして図示および説明しているが、異なる処理チャンバに対応するため、もしくは、エネルギの結合に必要なほかの外部要因に適合するために、他の構成を用いてもよいことが理解されるだろう。例えば、いくつかの単一周波数プラズマリアクタでは、基板台をアースに接続してもよい。
【0017】
プラズマ103を生成するために、ガス吸気口108を通して処理チャンバ102にプロセスガスが送り込まれる。次いで、RF電源の一方もしくは両方に電圧が加えられると、強い電界が、一方もしくは両方の電極104、112を介して処理チャンバ内に結合される。電界は、チャンバ102内にある少数の電子を励起し、プロセスガスのガス分子と衝突させる。その結果、ガス分子は、電子を失い、正イオンとなる。自由電子の発生率が消失率を上回るとすぐに、プラズマが点火する。次いで、プラズマ103は、例えば、基板110の薄膜のエッチングや蒸着などの処理に用いられる。ほとんどの場合、基板表面122付近にシース電圧121が形成され、基板110に向かってプラズマ103のイオンを加速させる。基板110において、イオンは、あるいは他の反応物質と共に、処理反応を活性化する。
【0018】
プラズマリアクタ100について詳細に説明したが、本発明自体は、どの種類の基板処理装置にも限定されず、化学蒸着(CVD)、プラズマ化学蒸着(PECVD)、およびスパッタリングなどの物理蒸着(PVD)を含む蒸着処理に適合した処理装置を含み、それらに限定されない周知の基板処理システムのいずれにおいても使用可能であることに注意すべきである。さらに、本発明は、ドライエッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング(RIE)、マグネトロン型反応イオンエッチング、電子サイクロトロン共鳴(ECR)などに適合した処理を含む数多くの適切な周知のエッチング処理で用いることができる。さらにまた、本発明は、上述のリアクタはもちろん、その他の適切なプラズマ処理リアクタでも実施できるよう意図されている。プラズマへのエネルギが、直流プラズマ発生源、静電結合平行電極板、ECRマイクロ波プラズマ発生源、またはヘリコン、ヘリカル共振器、RFアンテナ(平板型もしくは非平板型)などの誘導結合RF発生源のいずれを通して供給されるかに関わらず、上述のことが当てはまることはいうまでもない。
【0019】
本発明の一態様によると、基板表面にわたって高度な処理均一性を実現可能な均一基板台が提供される。特に、均一基板台は、均一な電界を生成するよう構成されている。図3は、本発明の一実施形態に従った均一基板台130を示す。均一基板台130はそれぞれ、図2に示された基板台112に一致してもよい。
【0020】
均一基板台130は、一般に、電極152と、チャック154と、エッジリング156と、インピーダンスマッチング層158とを備える。電極152は、チャック154と、エッジリング156と、インピーダンスマッチング層158と、基板160とを通してエネルギを結合するのに十分な強さの電界を生成するよう構成されている。例えば、電極152によって発せられたエネルギは、基板の表面とプラズマとの間にシース電圧を形成するよう構成されてもよい。シース電圧は、プラズマ内のイオンを基板の方向へ加速させるために用いられる。結合されるエネルギの量は、一般に、基板の処理に用いられるプラズマの密度とエネルギに影響を与える。例えば、結合されたエネルギが大きい場合には、イオンのエネルギが高くなる傾向があり、結合されたエネルギが小さい場合には、イオンのエネルギが低くなる傾向がある。これに対応して、高いイオンエネルギは、基板の処理にあたって比較的活動性が高い傾向を持ち、低いイオンエネルギは、基板の処理にあたって比較的活動性が低い傾向を持つ。
【0021】
さらに、電極152の上面は、エネルギの分布を均一にするために、実質的に均一、かつ、実質的に基板160に平行であるように構成されている。加えて、電極152は、一般に、アルミニウムのような適切な導電性の材料から形成される。電極152の外周は、少なくとも基板160の外縁よりも外に伸びるよう構成されている。しかしながら、一般には、電界が、その領域で失われる電力の量によって、基板160の縁部をはるかに超えて広がらないように気を付けることに注意すべきである。一実施形態では、電極152は、基板160の縁部を2mm超えてエネルギに結合するよう構成されている。基板の縁部を超えて電極を構成する1つの利点は、基板の縁部における電気的特性が、より均一になることである。すなわち、エネルギの結合は、基板の縁部付近でより均一になり、その結果、処理は、基板の表面にわたってより均一な傾向を持つようになる。
【0022】
チャック154は、電極152の上面に結合されており、基板160が処理のために均一基板台130に設置された際に、基板160の裏面を受けるよう構成されたセラミック層(例えば、Al32)を備える。一般に、チャック154は、実質的に基板160と平行である。チャック154は、例えば、静電力によってチャック表面に基板160を固定するESC(静電)チャックでよい。均一基板台130に用いることのできるESCチャック構成の例は、Kubly et al.の米国特許5,793,192号に詳細が記載されている。これは、参照により本明細書に組み込まれる。ほとんどの実施形態では、基板160が処理のために均一基板台に設置された際に、チャック154が基板160によって完全に覆われるように、チャック154の外周は基板160の外周よりも小さい。一実施例では、チャック154の外縁は、基板160の外縁から約2mmの位置で終わっている。あるいは、チャック154の外周は、基板160の外周よりも外に伸びるよう構成されてもよい。
【0023】
ある種のプラズマリアクタ(例えば、ハイパワーのリアクタ)では、基板160に隣接する表面が、プラズマによる損耗、すなわち、イオン衝撃、によって破壊されることがあり、それ故、エッジリング156が、電極の上方に配置され、電極152とチャック154とをプラズマ103から保護するよう構成される。ほとんどの実施形態では、エッジリング156は、過度に損耗すると交換される消耗品であるよう構成される。電極152とチャック154とを効果的に保護するために、エッジリング154は通常、基板160の外縁を取り囲む第1の部分162と、チャック154の外縁を取り囲む第2の部分とを有する。第2の部分164は通常、チャック154の外縁に近接し、電極152と基板160との間に配置される。図示されているように、第2の部分164は、基板160が処理のために均一チャック130に配置された際に、基板160によって覆われる。一実施例では、エッジリングの第2の部分は、約2mmだけ基板の下に伸びている。
【0024】
さらに、エッジリング156の外縁は、少なくとも電極152の外縁よりも外に伸びるよう構成されている。しかしながら、一般に、基板160の処理に必要な電力を低減するために、エッジリング156の(下面を横切って計測される)長さは、小さく保つことが好ましい。例えば、2mmから約15mmの間の長さが好ましい。伸ばされた電極と同様に、エッジリングが、基板の縁部を超えて伸びる結合領域を提供し、それによって、基板全体にわたる電気的特性が、より均一になるという利点がある。さらにまた、エッジリング156の上面(例えば、第1の部分162)は、チャックとエッジリングとの組み合わせにより、処理のために基板を受け入れるための凹型の部分が形成されるように、基板の上面よりもやや低いか、同じ高さに構成されている。しかしながら、エッジリングの上面の高さは、各プラズマ処理システムの設計によって変化してもよい(例えば、基板よりも上に伸びてもよいし、傾斜していてもよい)ことに注意すべきである。
【0025】
さらに、エッジリング156は、電気的に浮動していてもよいし、電気的にDCアース(すなわち、RFアースの必要はない)に結合されていてもよい。加えて、エッジリングは、一般に、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、石英などの適切な誘電材料から形成される。例えば、シリコン、特に、単結晶シリコンから形成されたエッジリングが好ましい。
【0026】
基板台130は、さらに、エッジリング156と電極152との間に配置されたインピーダンスマッチング層158を備える。インピーダンスマッチング層158は、電極152によって基板表面全体にわたって生成される電界のインピーダンスを制御するよう構成されることが好ましい。より詳細には、インピーダンスマッチング層158は、基板160の縁部付近に生成される電界のインピーダンスを変化させるよう構成されることが好ましい。インピーダンスを変化させることにより、より均一なエネルギの結合が基板表面にわたって実現される。その結果、基板の中央部における処理速度が、基板の縁部における処理速度と実質的に等しくなるような処理の均一性を実現できる。したがって、基板の縁部をICの形成に用いることができるようになり、歩留まりが増大する。いくつかの場合では、本発明により、基板の最後の3mmを用いることが可能となる。
【0027】
図3に示されているように、インピーダンスマッチング層158は、エッジリング156と電極152との間に挟まれている。一実施形態では、インピーダンスマッチング層158は、電極152の上面に結合されている。別の実施形態では、インピーダンスマッチング層158は、エッジリング156の下面に結合されている。いずれの実施形態においても、インピーダンスマッチング層158と、対応する表面との結合は、任意の適切な方法で行えばよい。しかしながら、好ましい実施形態では、インピーダンスマッチング層は、対応する表面(例えば、エッジリングもしくは電極)に接合されており、より良好な熱的および電気的な接合が実現されている。例えば、シリコンエラストマのような接合処理が好ましい。
【0028】
さらに、電極とプラズマとの間のインピーダンスを効果的に制御するためには、用いられる材料の厚さと種類が重要な要素となる。一般に、インピーダンスマッチング層の厚さは、約0.10mmから約10mmでよく、インピーダンスマッチング層は、誘電性の半導体もしくは導電性の材料のような適切な材料から形成されてよい。例えば、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、石英、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、酸化アルミニウムのようなアルミニウムセラミックなどの材料が好ましい。
【0029】
電極とプラズマとの間のインピーダンスを効果的に制御するためには、インピーダンスマッチング層の長さ(もしくは被覆量)も重要な要素である。一実施形態では、インピーダンスマッチング層の長さは、(例えば、エッジリングの下面を横切る)エッジリングの長さと等しい。別の実施形態では、インピーダンスマッチング層の長さは、エッジリングの長さよりも小さい。この実施形態では、その小さいインピーダンスマッチング層は、エッジリングの内周もしくはエッジリングの外周に向かって配置されてもよいし、エッジリングの中央に配置されてもよい。例えば、インピーダンスマッチング層は、基板の領域においてのみエッジリングと電極との間に配置されるよう構成されてもよい。
【0030】
エネルギの結合を達成できる程度は通常、プラズマと電極との間の単位面積あたりの全インピーダンスの因子である。当業者に周知のとおり、インピーダンスは、一般に、回路を通る電荷または電流の流れに対する抵抗の計測値として定義される。基板全体にわたってインピーダンスの高い領域と低い領域とを有する基板においては、基板全体にわたって与えられた電力に対して、基板の低インピーダンス領域では、結合されるエネルギが高く、基板の高インピーダンス領域では、結合されるエネルギが低いと、一般に考えられている。したがって、エネルギの均一な結合は、均一基板台のインピーダンスに大きく依存する。
【0031】
一般に、単位面積あたりの全インピーダンスは、基板の単位面積あたりのインピーダンスと、チャックの単位面積あたりのインピーダンスと、エッジリングの単位面積あたりのインピーダンスと、インピーダンスマッチング層の単位面積あたりのインピーダンスと、それらの間に見られるすべての隙間または境界部分の単位面積あたりのインピーダンスとの関数である。しかし、残念ながら、基板の中央部においてチャックおよび基板によって生み出されるインピーダンスは通常、基板の縁部においてチャック、エッジリング、および基板によって生み出されるインピーダンスとは異なる。何故なら、基板の縁部における前述の部品の間に空隙と境界が存在し、チャックとエッジリングの材料が異なるからである。その結果、基板の縁部におけるエネルギの結合は、一般に、基板の中央部におけるエネルギの結合とは異なる(例えば、不均一)。
【0032】
好ましい実施形態では、インピーダンスマッチング層は、基板の縁部におけるインピーダンスが基板の中央部におけるインピーダンスと等しくなるように、基板の縁部におけるインピーダンス(例えば、シース電圧)を調整するよう構成されている。このように、基板の表面にわたるエネルギの結合を、より均一にすることによって、処理の均一性を実現できる。
【0033】
一実施例では、所望の結合の効果を実現するために、エッジリングの厚さとインピーダンスマッチング層の厚さが最適化されている。例えば、エッジリングの厚さの減少/増加と、インピーダンスマッチング層の厚さの増加/減少によって、基板のエッジにおけるインピーダンスを減少/増加させることが可能である。別の実施例では、基板の縁部におけるインピーダンスを基板の中央部におけるインピーダンスに合わせるために、インピーダンスマッチング層の材料の特性(例えば、誘電率)を調整してもよい。例えば、誘電率の値の減少/増加によって、基板の縁部におけるインピーダンスを減少/増加させることが可能である。また別の実施例では、所望の結合の効果を実現するために、インピーダンスマッチング層の長さと位置を最適化してもよい。例えば、インピーダンスマッチング層の長さの減少/増加によって、基板の縁部におけるインピーダンスを減少/増加させることが可能である。さらに、エッジリングの縁部に対してのインピーダンスマッチング層の位置によっても、基板の縁部におけるインピーダンスを減少/増加させることが可能である。
【0034】
したがって、基板の縁部におけるインピーダンスを基板の中央部におけるインピーダンスに合わせるために、インピーダンスマッチング層の厚さおよびエッジリングの厚さと、インピーダンスマッチング層の材料の特性と、インピーダンスマッチング層の長さおよび位置とを用いることができる。
【0035】
ある特定の実施形態では、エッジリングの第2の部分(例えば、基板の下に伸びる部分)の厚さは約1mmであり、インピーダンスマッチング層の厚さは約1mmである。さらに、エッジリングは、チャックのセラミック層と同じ誘電率を持ち、インピーダンスマッチング層は、エッジリングの誘電率よりも大きい誘電率を持つ。この例では、チャックのセラミック部分の縁部に存在する(例えば、インピーダンスが増加された)エポキシを補償するために、誘電率がより大きくなっている。エポキシは、一般に、局所的な電界(例えば、アーク放電)からチャックを保護するために用いられる。
【0036】
基板台は、均一な電界を生成するものとして図示および説明されているが、基板台は、不均一な電界を生成して、不均一なプラズマ密度のような他の処理の不均一性を補償するよう構成されてもよいことがわかるだろう。上述のように、インピーダンスの量は、一般に、結合されるエネルギの量に影響を与え、結合されるエネルギの量は、一般に、基板の処理に用いられるプラズマの密度およびエネルギに影響を与える。したがって、システム全体の処理の均一性は、電極によって生成される電界にばらつきを引き起こすことのできる基板台を意図的に設計することにより改善可能である。ある特定の実施形態では、インピーダンスマッチング層は、基板台のインピーダンスを変化させることにより基板の表面にわたって電界のばらつきを与えるよう構成されている。
【0037】
電気的な結合に加えて、電極とエッジリングとの間の熱的接触はもちろん、基板とチャックとの間の熱的接触も、一般に、処理中に発生する熱を分散するには不適当である。当業者に周知のとおり、基板の処理(例えば、イオンの衝突)により、基板と、基板に近接する表面との温度が上昇する傾向がある。温度が上昇すると、局所的な温度差が、表面全体にわたって形成され、それによって、ウエハの面積やガスの流速にばらつきが生じる。その結果、これらのばらつきにより、局所的にプラズマの密度が高い領域と低い領域が生じて、処理の均一性(例えば、処理速度)に影響を与える。さらに、基板の温度が、許容不可能なレベルまで上昇することもある。
【0038】
したがって、本発明の別の実施形態によると、処理中に基板およびエッジリングの温度を制御するために、熱伝達システムが設けられている。熱伝達システムは、一般に、熱媒体を基板/チャックの境界およびエッジリング/電極の境界に分配するよう構成されている。
【0039】
この実施形態の議論を容易にするために、図4は、均一基板台130内部に配置された熱伝達システム200を示している。上述のように、均一基板台130は、基板160を支持するよう構成され、一般に、電極152と、チャック154と、エッジリング156と、インピーダンスマッチング層158とを備える。熱伝達システム200は、一般に、複数のチャック伝達路204および複数のエッジリング伝達路206に熱媒体を分配するための主伝達路202を備える。チャック伝達路204は、チャック154と基板160の背面との間の第1の隙間208に熱媒体を分配するよう構成されている。エッジリング伝達路206は、電極152とエッジリング156の背面との間の第2の隙間210に熱媒体を分配するよう構成されている。
【0040】
一実施形態では、熱伝達システムに(例えば、一実施形態では約20Torrで)加圧してヘリウム冷却ガスを送り込み、処理中の基板およびエッジリングの温度を正確に制御するための熱媒体として働かせ、均一かつ反復可能な処理結果を実現する。別の実施形態では、エッジリング156は、第2の隙間における熱媒体の放出に対して十分な間隔を保ちつつエッジリングを保持するために、ボルト250で電極に連結されている。それに加えて、もしくは、それに代えて、さらに温度を制御するために、基板台の内部にヒータを配置してもよい。
【0041】
以上の説明からわかるように、本発明は、従来技術に勝る数々の利点を提供する。例えば、本発明は、基板表面の全体にわたって高度な処理均一性を保ちつつ基板処理を行うことができる。特に、基板台は、基板台のインピーダンスを制御することにより、基板台を通じて結合される電界を制御することができるインピーダンスマッチング層を提供する。ある構成では、インピーダンスマッチング層は、基板台が処理チャンバ内部に均一な電界を生成するように構成されている。その結果、基板の処理に用いるイオンの密度とイオンのエネルギとを、より均一にすることによって、処理の均一性を実現できる。別の構成では、インピーダンスマッチング層は、基板台が、変化する電界を生成することによって他の不均一性(例えば、不均一なプラズマ密度)を補償するように構成されている。その結果、処理の均一性を改善することができる。さらに、本発明は、処理中に基板およびエッジリングの両方を冷却するよう構成されている基板台を提供し、それによって、処理における不均一性を引き起こす温度、圧力、および伝導性のばらつきを低減する。したがって、本発明は、基板縁部の除外を低減し、基板の歩留まりを改善する。
【0042】
以上では、本発明をいくつかの好ましい実施形態の形で説明したが、本発明の範囲内で、種々の改良物、置換物、および等価物が存在し得る。また、本発明による方法および装置を実現する代替の方法が数多く存在することにも注意が必要である。したがって、添付した特許請求の範囲は、このような改良物、置換物、および等価物の全てを、本発明の真の趣旨および範囲内に含むものとして解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するためのプラズマ処理システムであって、
上端と下端とを有すると共に、前記処理のために内部でプラズマが点火および維持される処理チャンバと、
前記処理チャンバの内部に電界を発生させるよう構成されると共に、前記処理チャンバの前記下端に配置された電極と、
前記電極と前記プラズマとの間のインピーダンスを制御するための要素とを備え、前記インピーダンスは、前記電界に影響を与えることにより、前記基板の表面にわたって処理の均一性を改善するよう構成されているシステム。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理システムにおいて、前記インピーダンスは、前記電界のばらつきを低減するよう構成されているシステム。
【請求項3】
請求項1記載のプラズマ処理システムにおいて、前記インピーダンスは、前記電界のばらつきを生成するよう構成されているシステム。
【請求項4】
請求項1記載のプラズマ処理システムにおいて、前記電界は、前記基板が処理のために前記処理チャンバ内に配置された際に、前記基板の前記表面と前記プラズマとの間にシース電圧を生成するシステム。
【請求項5】
請求項1記載のプラズマ処理システムはさらに、前記電極の上方に配置されたエッジリングを備え、前記要素は前記エッジリングと前記電極との間に配置されているシステム。
【請求項6】
請求項1記載のプラズマ処理システムにおいて、前記要素は、前記基板の縁部における前記電極と前記プラズマとの間の前記インピーダンスを制御するよう構成されているシステム。
【請求項7】
請求項6記載のプラズマ処理システムにおいて、前記要素は、前記基板が処理のために前記処理チャンバ内に配置された際に、前記基板と前記電極との間に配置される部分を有するシステム。
【請求項8】
基板を処理するためのプラズマ処理システムであって、
処理のために内部でプラズマが点火および維持される処理チャンバと、
前記プラズマと前記電極との間に電界を発生させるよう構成されると共に、前記処理チャンバの内部に配置された電極と、
処理中に前記基板を保持するよう構成されると共に、前記電極の上方に配置されているチャックと、前記電界は前記チャックの領域における前記電極と前記プラズマとの間の第1のインピーダンスを有することと、
少なくとも前記電極を前記プラズマから保護するよう構成されると共に、前記電極の上方で前記チャックに近接して配置されているエッジリングと、
前記エッジリングの前記領域における前記電極と前記プラズマとの間の第2のインピーダンスを制御するよう構成されていると共に、前記エッジリングと前記電極との間に配置されたインピーダンスマッチング層と、前記第2のインピーダンスは、前記基板が処理のために前記チャックに配置された際に、前記基板の前記表面における前記プラズマと前記電極との間の前記電界が実質的に均一になるように、前記第1のインピーダンスと実質的に等しくなるよう構成されていることを備えるシステム。
【請求項9】
請求項8記載のプラズマ処理システムにおいて、前記チャックは前記電極に接続されているシステム。
【請求項10】
請求項8記載のプラズマ処理システムにおいて、前記チャックは静電チャックであるシステム。
【請求項11】
請求項8記載のプラズマ処理システムにおいて、前記インピーダンスマッチング層は、前記エッジリングに接合されているシステム。
【請求項12】
請求項8記載のプラズマ処理システムにおいて、前記インピーダンスマッチング層は、前記電極に接合されているシステム。
【請求項13】
請求項8記載のプラズマ処理システムにおいて、前記エッジリングに対する前記インピーダンスマッチング層の長さおよび位置は、前記第2のインピーダンスを制御するために調整されるシステム。
【請求項14】
請求項8記載のプラズマ処理システムにおいて、前記インピーダンスマッチング層は、ある誘電率を有する材料から形成されており、前記誘電率は、前記第2のインピーダンスを制御するために調整されるシステム。
【請求項15】
請求項8記載のプラズマ処理システムにおいて、前記インピーダンスマッチング層の厚さは、前記第2のインピーダンスを制御するために調整されるシステム。
【請求項16】
請求項8に記載のプラズマ処理システムにおいて、前記電極は、前記基板が処理のために前記チャックに配置された際に、前記基板の外周以上の外周を有するシステム。
【請求項17】
請求項8記載のプラズマ処理システムにおいて、前記電界は、前記基板が処理のために前記チャックに配置された際に、前記基板の前記表面において均一なシース電圧を生成するシステム。
【請求項18】
請求項8記載のプラズマ処理システムはさらに、前記電極に接続されたRF電源を備え、前記RF電源は、前記電極にRFエネルギを供給するよう構成されているシステム。
【請求項19】
請求項8記載のプラズマ処理システムはさらに、処理中に前記基板および前記エッジリングの温度を制御するための熱伝達システムを備え、前記熱伝達システムは、前記電極を通って前記チャックと前記基板との間の境界に伸びる第1の伝達路と、前記電極を通って前記電極と前記エッジリングとの間の境界に伸びる第2の伝達路とを有すると共に、前記各伝達路に熱媒体を供給するよう構成されているシステム。
【請求項20】
請求項19記載のプラズマ処理システムにおいて、前記熱媒体はヘリウムガスであるシステム。
【請求項21】
プラズマで基板を処理するための基板台であって、
前記基板の外周よりも大きい外周を有すると共に、前記基板の上方に電界を発生させるための電極と、
前記電極の上面に配置されると共に、処理中に前記基板を保持するためのチャックと、
前記電極と前記チャックとを前記プラズマから保護するためのエッジリングであって、前記電極の上方に配置されると共に、第1の部分と第2の部分とを有するエッジリングと、前記第1の部分は前記基板が処理のために前記チャックによって保持された際に、前記基板の前記縁部を取り囲むよう構成され、前記第2の部分は前記チャックの前記縁部取り囲むよう構成されると共に、処理中に前記電極と前記基板との間に配置されることと、
前記エッジリングと前記電極との間に配置されたインピーダンスマッチング層であって、前記チャックと、前記エッジリングと、前記基板とを通して、前記電界のインピーダンスを制御するよう構成されるインピーダンスマッチング層と、前記インピーダンスは、前記基板の前記表面にわたって処理の均一性を改善するために前記電界に影響を与えるよう構成されている基板台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−186497(P2012−186497A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−113622(P2012−113622)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2001−550777(P2001−550777)の分割
【原出願日】平成12年12月22日(2000.12.22)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】