説明

電極及びその形成方法、半導体デバイス

【課題】Siや金属層の種類が限定されずSiの酸化膜除去処理によっても金属層が剥離することのない電極及びその形成方法、並びに前記電極を備える半導体デバイスを提供する。
【解決手段】表面に活性化処理されたSiを有する基板11上に、第1の末端にCH基、CH基、CH基のいずれかを有し、第2の末端にアミノ基、メルカプト基、フェニル基、カルボキシル基のいずれかを有する有機分子の薄膜(有機分子膜)12aを形成する有機分子膜形成工程と、前記有機分子膜12a表面に触媒金属12bを付与する触媒化工程と、前記有機分子膜12aに触媒金属12bを付与した密着層12表面に無電解めっき法により金属層13を形成する無電解めっき工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板などのSi上に無電解めっきにより形成されてなる電極及びその形成方法、並びに該電極を備える半導体デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体回路作製のプロセスにおいて真空蒸着法やスパッタリング法による金属層の形成に合わせ、フォトリソグラフィ法により前記金属層のパターニングを行っている。このフォトリソグラフィ法は、例えば、感光性材料などを用いたフォトレジスト材料を金属層の形成された基板上に塗布後、露光工程、現像工程、洗浄工程、金属層のエッチング工程およびフォトレジストの剥離工程が施され、金属層の所望のパターンを得る方法である。
【0003】
また、薄膜トランジスタ(TFT)などの半導体デバイスで使用される単結晶Siウエハ、poly(多結晶)-Si膜、a(アモルファス)-Si膜表面への電極形成は、上記スパッタリングや真空蒸着法などの真空プロセスを用いる方法がある。
【0004】
それ以外にも、Siウエハに下地となる金属を真空プロセスで形成したのちに電解めっきによって電極を形成する方法、あるいはフッ酸、あるいはフッ化アンモニウムでSi表面を洗浄した後、無電解めっきの触媒となる例えばPdなどの触媒を塩化パラジウム溶液によりSi表面に付与し、無電解めっきで金属層を形成する方法、前記方法の問題点を解決する方法(特許文献1)、さらにSi基板表面上の自然酸化膜、あるいは熱酸化膜、真空プロセスで形成されたSiO2膜などを利用し、シランカップリング剤で表面を修飾した後、上記触媒付与を行い無電解めっきで金属層を形成する方法が知られている。
【0005】
また、アルカリ性のNiめっき液により、直接Si上にNiを析出させる方法(特許文献2)、希フッ酸溶液などでSi表面の自然酸化膜を除去した後、直接無電解めっき液(例えば、(株)ワールドメタル製:商品名リンデンBSM−1)に浸漬することでp型あるいはn型のSi上にNi−P膜を成膜する方法がある。
【0006】
【特許文献1】特開2005−336600号公報
【特許文献2】特開昭50−10734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記無電解めっきによりSi上へシランカップリング剤とパラジウムなど無電解めっきの触媒となる金属を用いて金属層を形成する方法では、シランカップリング剤がシロキサン結合によりSiと結合するためその後のプロセスで希フッ酸やフッ化アンモニウムなどによる酸化膜除去処理が入ると、シランカップリング剤ごと金属層が剥離してしまうことがあった。また、上記Siに直接無電解めっきが可能なめっき液を用いた場合は、電極として使用する際は熱処理によりシリサイドの形成も可能であるためオーミック特性を得やすいが、形成できる金属層の種類が限られていた。さらに、アンドープのSi上へは無電解めっきによる金属膜の形成が困難であった。
【0008】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、Siや金属層の種類が限定されずSiの酸化膜除去処理によっても金属層が剥離することのない電極及びその形成方法、並びに前記電極を備える半導体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために提供する本発明は以下の通りである。
〔1〕 表面に活性化処理されたSiを有する基板と、第1の末端にCH基、CH基、CH基のいずれかを有し、第2の末端にアミノ基、メルカプト基、フェニル基、カルボキシル基のいずれかを有する有機分子の薄膜(有機分子膜)が前記基板表面に設けられ、該有機分子膜の表面に触媒金属を付与してなる密着層と、前記密着層上に無電解めっき法により形成されてなる金属層と、を備える電極。
〔2〕 前記有機分子の分子長は、10nm以下である前記〔1〕に記載の電極。
〔3〕 前記有機分子膜は、前記有機分子の単分子膜である前記〔1〕または〔2〕に記載の電極。
〔4〕 表面に活性化処理されたSiを有する基板と、第1の末端にCH基、CH基、CH基のいずれかを有し、第2の末端にアミノ基、メルカプト基、フェニル基、カルボキシル基のいずれかを有する有機分子の薄膜が前記基板表面に設けられ、該薄膜の表面に触媒金属を付与してなる密着層と、前記密着層上に無電解めっき法により形成されてなる金属層と、を有する電極を備える半導体デバイス。
〔5〕 表面に活性化処理されたSiを有する基板上に、第1の末端にCH基、CH基、CH基のいずれかを有し、第2の末端にアミノ基、メルカプト基、フェニル基、カルボキシル基のいずれかを有する有機分子の薄膜を形成する有機分子膜形成工程と、前記有機分子膜表面に触媒金属を付与する触媒化工程と、前記有機分子膜に触媒金属を付与した密着層表面に無電解めっき法により金属層を形成する無電解めっき工程と、を有する電極の形成方法。
〔6〕 前記有機分子の分子長は、10nm以下である前記〔5〕に記載の電極の形成方法。
〔7〕 前記有機分子膜は、前記有機分子の単分子膜である前記〔5〕または〔6〕に記載の電極の形成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電極によれば、前記有機分子膜における有機分子の第1の末端の官能基が前記基板とSi−C結合し、前記触媒金属が前記有機分子の第2の末端の官能基に吸着するので、希フッ酸やフッ化アンモニウムなどによる酸化膜除去処理を行っても、金属層が剥離することがない。また、Siや金属層の種類が限定されない。
また本発明の半導体デバイスによれば、その後のプロセスで希フッ酸やフッ化アンモニウムなどによる酸化膜除去処理を行っても、金属層が剥離することがない密着性良好な電極を備える。
また本発明の電極の形成方法によれば、基板を構成するSiの種類や金属層の金属の種類を限定することなく金属層の良好な密着性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係る電極及びその形成方法、並びに前記電極を備える半導体デバイスの一実施の形態における構成について図面を参照して説明する。なお、本発明を図面に示した実施形態をもって説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、実施の態様に応じて適宜変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0012】
本発明に係る電極は、表面に活性化処理されたSiを有する基板と、第1の末端に≡CH基、=CH基、−CH基のいずれかを有し、第2の末端にアミノ基(−NH)、メルカプト基(−SH)、フェニル基(−Ph)、カルボキシル基(−COOH)のいずれかを有する有機分子の薄膜(有機分子膜)が前記基板表面に設けられ、該有機分子膜の表面に触媒金属を付与してなる密着層と、前記密着層上に無電解めっき法により形成されてなる金属層と、を備えるものである。
【0013】
ここで、基板は、表面にSiを有していれば、単結晶のSiウエハ、poly(多結晶)−Si薄膜、a(アモルファス)−Si薄膜など結晶状態を選ばず、バルク・薄膜のいずれでもよい。またアンドープされた高抵抗なSi表面、あるいは不純物ドーピングされた低抵抗なSi表面であってもよい。なお、基板上に後述の有機分子が良好に結合するために表面が所定の処理により自然酸化膜が除去されてSi−Hの状態(撥水状態)となったものとしておくとよい。
【0014】
また、有機分子膜を構成する有機分子は、化学構造として、第1の末端にCH基、CH基、CH基のいずれかを有し、第2の末端にアミノ基(−NH)、メルカプト基(−SH)、フェニル基(−Ph)、カルボキシル基(−COOH)のいずれかを有する。
【0015】
有機分子のうち、第1の末端の官能基が前記基板とSi−C結合し、酸素を介さない直接結合となるため、酸化膜除去処理などによってもその結合が切られることはない。また、第2の末端の官能基に触媒金属(後述)が吸着する。なお、触媒金属との結合力は、(大)メルカプト基(−SH)>アミノ基(−NH)>フェニル基(−Ph>、カルボキシル基(−COOH)(小)の順で変化するが、金属槽の密着が確保できればいずれの末端基でも使用可能である。
【0016】
また前記有機分子は、電極としてのコンタクト性(電子のトンネリング)を考えるとCが少ないほうがよい。すなわち、密着層(有機分子膜)により形成されるトンネル障壁の幅となる分子長が重要であり、できるだけ短いほうがよい。本発明では、有機分子の分子長は、10nm以下がよく、好ましくは5nm以下、より好ましくは2nm以下である。また有機分子膜は、前記有機分子の単分子膜であることが好ましい。これにより、基板表面のSiに強固に結合した有機分子のみが密着層を形成するとともに、該密着層の表面が前記第2の末端の官能基で構成された状態となっている。
【0017】
本発明では有機分子として、例えばつぎのものを用いることが好ましい。なお、●印の有機分子は=CH結合を有するものである。
(1)アミノ基を有するもの
1−エチニルシクロヘキシルアミン(C13N),2−エチニルアニリン(CN),3−エチニルアニリン(CN),4−エチニルアニリン(CN)プロパルギルアミン(CN),●アクリルアミド(CNO),●アリルアミン(CN),●1−アリル−2−チオ尿素(CS),●N−アリルアニリン(C11N),●4−アミノスチレン(CN),●2−ビニル−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン(C),フェニルアセチレン(C)。
【0018】
(2)フェニル基を有するもの
エチニルベンゼン(C),1−フェニル−2−プロピン−1−オール(CO),4−フェニル−1−ブチン(C1010),●アリルベンジルエーテル(C1012O),●アリルフェニルスルフィド(C10S),●アリルフェニルスルホン(C10S),●アリルジフェニルホスフィンオキシド(C1515OP),●2−アリルオキシベンズアルデヒド(C1010),●安息香酸ビニル(C),2−イソプロペニルトルエン(C1012),●2−イソプロペニルナフタレン(C1312),●メタクリル酸ベンジル(C1112),●4−フェニル−1−ブテン(C1012),●アリルベンゼン(C10),●フェニルビニルスルホキシド(COS),●フェニル酢酸アリル(C1112),●フェニルビニルスルホン(CS),●スチレン(C),●トリフェニルビニルシラン(C2018Si)。
【0019】
(3)メルカプト基を有するもの
●アリルメルカプタン(CS)。
【0020】
(4)カルボキシル基を有するもの
プロピオール酸(C),アクリル酸(C)。
【0021】
前記有機分子膜の形成に当たっては、例えば減圧気相法によればよい。これにより単分子膜を容易に形成することができる。
【0022】
密着層は、前記有機分子膜に触媒金属が付与されて形成される。触媒金属は、Pd,Ag,Ptなどから、無電解めっき法により形成される金属層を構成する金属に触媒として適切に選択される金属である。密着層への触媒金属の付与は従来公知の方法(例えば、触媒薬液への基板の浸漬)によればよい。
【0023】
金属層は、無電解めっき法により形成され電極として機能するものである。該金属層を構成する金属としては、電極材料であればとくに限定されず、例えばNi,Cu,Co,Au,Ptなどが挙げられる。
【0024】
以上のように本発明の電極によれば、前記有機分子膜の第1の末端の官能基が前記基板とOを介さずSi−C結合により強固に結合しており、かつ前記有機分子膜の第2の末端の官能基に吸着した前記触媒金属を介して金属層が無電解めっき法により形成されているので、希フッ酸やフッ化アンモニウムなどによる酸化膜除去処理を行っても、密着層、ひいては金属層が剥離することがなく良好な密着性が維持されることになる。
【0025】
つぎに、本発明に係る電極の形成方法として、その基本的プロセスについて、図1,図2を参照しながら説明する。なお、図1は基板11としてSiウエハを用いる場合、図2は基板11としてガラスなどの下地基板11a上に下地保護膜11bを介してSi薄膜11cが形成されたものを用いる場合を示している。
【0026】
(S11) 表面にSiを有する基板11の表面について活性化処理して自然酸化膜を除去する(自然酸化膜除去工程、図1(a),図2(a))。活性化処理は、例えば希フッ酸あるいはフッ化アンモニウムで基板11表面を洗浄するなどして行う。
(S12) つぎに、自然酸化膜を除去した基板11に前記有機分子を用いて該有機分子の単分子膜である有機分子膜12aを形成する(有機分子膜形成工程、図1(b),図2(b))。例えば、有機分子として、アミノ基を有する4−エチニルアニリン(商品名・シグマ-アルドリッチ社製)を用いる場合、この材料は室温では粉末であり、融点が100℃程度であるため、基板11上への単分子膜の形成として減圧気相法を用いるとよい。もちろん、Siに対しSi−C結合が可能でアミノ基、メルカプト基、フェニル基、カルボキシル基などを有する有機分子であれば有機分子の種類、成膜方法はこれに限ったものではない。
(S13) つぎに、有機分子膜12aの表面に触媒金属12bを付与する(触媒化工程,図1(c),図2(c))。例えば、無電解めっきの触媒となるパラジウムを含む塩化パラジウム溶液に有機分子膜12aの成膜された基板11を浸漬することで、有機分子膜12aに触媒付与を行う。これにより、有機分子膜12aに触媒金属12bが付与された密着層12が形成される。
(S14) 最後に密着層12表面に無電解めっき法により金属層13を形成する(無電解めっき工程、図1(d),図2(d))。例えば、基板11を無電解めっき液に浸漬し、触媒金属12bの付与された部分に金属層13を形成する。なお、無電解めっきによって形成された金属層13は、焼成を行うことで抵抗値を下げることができる。
以上のプロセスにより、基板11上に密着性の良好な電極となる金属層13を形成することができる。
【0027】
なお、金属層13を所定の形状にパターニングする場合は、図3,図4に示すように、基板11の種類に応じて所定の処理を行うとよい。
すなわち、基板11がSiウエハの場合は、図3に示すように、まず基板11の表面にSiO2などの酸化膜を形成した後、フォトレジストなどを用いてパターニングを行い、SiO2のマスク11dを形成することを行う(図3(a))。そして、以降図1に示したプロセスで有機分子膜の成膜(図3(b))を行う。このとき、有機分子膜12aはマスク11dのないSiが露出した部分で該SiとSi−C結合して形成される。ついで触媒付与(図3(c))されるが、触媒金属12bは有機分子膜12aの存在する領域にのみ付与されることとなり所定のパターンで密着層12が形成される。そして、無電解めっき溶液に基板11を入れることで、密着層12が形成された部分のみ、すなわち所定のパターンで金属層13が析出される。
【0028】
また、無電解めっきの触媒となる金、銀、パラジウムなど含む微粒子インクなどを用いる場合は、各種印刷法などにより触媒層をパターニングすることにより、金属層13を所定の形状にパターニングできる。その例を図4に示す。この場合、自然酸化膜除去工程(図4(a))、有機分子膜形成工程(図4(b))までは図1,図2と同じであり、つぎに前記触媒微粒子インクを所定の形状で有機分子膜12aの表面に印刷する(触媒印刷工程、図4(c))。そして、無電解めっき溶液に基板11を入れることで、触媒層12cが形成された部分のみ、すなわち所定のパターンで金属層13が析出される(図4(d))。ついで、金属層13が形成されなかった領域の有機分子膜12aを除去する(図4(e))。なお、この形成方法は、基板11がSiウエハである場合にも適用可能である。
【0029】
つぎに、本発明に係る半導体デバイスについて説明する。
本発明に係る半導体デバイスは、表面に活性化処理されたSiを有する基板と、第1の末端にCH基、CH基、CH基のいずれかを有し、第2の末端にアミノ基、メルカプト基、フェニル基、カルボキシル基のいずれかを有する有機分子の薄膜が前記基板表面に設けられ、該薄膜の表面に触媒金属を付与してなる密着層と、前記密着層上に無電解めっき法により形成されてなる金属層と、を有する電極を備えるものである。
【0030】
図5を用いてその具体例を説明する。ここでは、トップゲート型のpoly−Si薄膜トランジスタ(TFT)のソース/ドレイン(S/D)電極として電極形成を行ったものを説明する。
プロセスは以下の通りである。まず、図5に示すようにガラス基板である基板に下地保護膜(SiO2)、Si薄膜(a−Si)を形成する(図5(a))。ついで、エキシマレーザなどを用いてSi薄膜を多結晶化してpoly−Si膜とする(図5(b))。
次に、poly−Si膜表面にSiO2層を形成した後に、チャネル部とソース・ドレイン部となるpoly−Si膜をエッチングによって加工する(図5(c))。ついで、その表面にゲート絶縁膜となるSiO2膜を形成する(図5(d))。その後、TFTのゲート電極となるAlを蒸着法あるいはスパッタ法にて基板全面に形成した(図5(e))後、フォトレジストを用いてパターニングする(図5(f))。
この後、ソース・ドレイン部にイオンインプラによってリン(P)を高濃度にドーピングする(図5(g))。次に、このドーピングされた部分をエキシマレーザによって活性化し(図5(h))、簡易的にゲート絶縁膜をエッチングしてコンタクトホールを形成する(図5(i))。後述の実施例2ではこの時ゲート絶縁膜を希フッ酸やフッ化アンモニウムを用いてエッチングした。
次に前述した図2に示す方法で、Si表面に有機分子膜を形成(図5(j))し、触媒処理(図15(k))を行った後、無電解めっき液への浸漬および、その後の焼成によりソース・ドレイン電極(Ni)を形成した(図5(l))。なお、本実施例ではLDD構造は導入していない。
【0031】
なお、実際のトップゲート型のpoly−Si TFTの場合は、コンタクトホールを形成する前に層間絶縁膜を成膜することもある。図6に、そのプロセスを示す。
その場合は、図6(a)〜(h)は図5(a)〜(h)と同じである。ついで、層間絶縁膜を成膜(図6(i))後に、フォトレジストなどを用いてコンタクトホールをパターニングし(図6(j))、まずコンタクトホールで露出しているSi上にSi−C結合する4−エチニルアニリンなどの有機分子膜(1)を成膜し洗浄する(図6(k))。
つぎに、今度はSiO2などで形成される層間絶縁膜上にシランカップリング剤(例えばアミノシランなど)を、気相法などによって有機分子膜(2)として成膜する(図6(l))。
その後、各種印刷法によって、必要な部分にのみ触媒層を印刷し(図6(m))、ついで無電解めっき液に基板を浸漬する。そうすることによってSi上、およびSiO2上にも所定のパターンで密着力のある金属層を形成することが可能である(図6(n))。
【0032】
なお、ここではトップゲート型のpoly−Si TFTを例に示したが、これに限定されるものではなく本発明の電極の形成方法を用いて他の半導体デバイスへの応用も可能である。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の電極の形成方法の効果を検証するために行った実験について説明する。
(実施例1)
図1,図2で説明したプロセスにしたがって電極を作成した。
このときに使用した材料は次のとおりである。
・基板11;Siウエハ、並びにガラス基板11a上に下地保護膜11bを介してSi薄膜(a−Si薄膜)11cが形成されたもの
・有機分子材料;4−エチニルアニリン(商品名・シグマ-アルドリッチ社製)
【0034】
(電極形成手順)
(S21) 希フッ酸あるいはフッ化アンモニウムで基板11表面を洗浄して自然酸化膜を除去した。
(S22) つぎに、自然酸化膜を除去した基板11に前記有機分子材料を用いて該有機分子の単分子膜である有機分子膜12aを形成した。ここで、4−エチニルアニリンは室温では粉末であり、融点が100℃程度である。そこで、基板11上への単分子膜の形成として減圧気相法を用いた。すなわち、まず簡易的な真空オーブン内に、上記4-エチニルアニリンの粉末と、自然酸化膜を除去した基板11を設置した後、ロータリーポンプの到達圧力(1.325kPa以下)になるまで保持し、到達圧力に達した後、ロータリーポンプに接続されたバルブを閉じることで真空オーブン内を減圧状態とした。次に真空オーブン内をヒーターによって加熱(150℃に加熱)し、減圧下において4−エチニルアニリンを蒸発させ、基板11のSi表面上に成膜を行った。このときの成膜時間は数時間〜十数時間であった。その後真空オーブン内を室温に戻し大気開放することで基板11を取り出し、トルエン、エタノールなどの有機溶剤での超音波洗浄−純水での基板洗浄の後、乾燥させることでSiと結合しなかった有機分子を除去した。これによって、基板11上に有機分子の単分子膜(有機分子膜)12aが形成された。なお、有機分子膜12aの成膜の確認は、Si表面の水に対する静的接触角の評価をすることにより行った。また、その膜厚は原子間力顕微鏡(AFM)により測定したところ、1.5nm程度であった。
(S23) つぎに、塩化パラジウム溶液(アクチベーター(商品名・奥野製薬工業社製))に基板11を1〜3分浸漬した後、純水で洗浄、乾燥を行い、触媒金属12bとしてPdを有機分子膜12aに触媒付与し、密着層12を形成した。
(S24) 基板11をNi−Bの析出が可能な無電解めっき溶液(商品名BEL801、上村工業社製)に浸漬し、密着層12上にNi−Bを析出させた。このとき、金属層13の膜厚は無電解めっき液への浸漬時間によって200nm程度となるように制御した。ついで無電解めっき溶液に浸漬した後、基板11を純水で洗浄し、ついで乾燥N2によって乾燥させた。最後にNi−Bを析出させた基板11について、真空槽内で350℃・30〜60分の条件で焼成を行いサンプルとした。
【0035】
得られたサンプルについて、金属層13を調べたところ、低抵抗値を示した。また、サンプルを希フッ酸やフッ化アンモニウム溶液に浸漬した後に、テープ剥離テストを行ったが、Si表面(基板11)から金属層13は剥離せず、基板11がSiウエハ、ガラス基板11a上に下地保護膜11bを介してSi薄膜(a−Si薄膜)11cが形成されたもののいずれでも、良好な密着性を有することが確認された。
【0036】
(実施例2)
図5に示した手順で作製した半導体デバイス(poly−Si薄膜トランジスタ(TFT))について、ドレイン電圧(Vd)−ドレイン電流(Id)の関係を調べた結果を図7に示す。図7(a)が本実施例サンプル、図7(b)は比較例サンプルの結果を示す。
なお、このときのサンプルの条件は次のとおりとした。
・TFT構成;トップゲート型poly-Si TFT(L=10μm×2、W=50μmのダブルゲートタイプ)
・ゲート絶縁膜;SiO2(厚さ100nm)
・ゲート電極;Al(厚さ300nm)
・ソース/ドレイン電極;実施例1の条件と同じ(厚さ100nm)
また、比較例として、ゲート電極はAl、ソース/ドレイン電極について実施例の条件に代えてAlからなるものとした。
評価の結果、本実施例のTFTのドレイン電圧(Vd)−ドレイン電流(Id)特性は、密着層12が影響することなく、ドレイン電流が低く抑えられ良好なものであった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る電極の形成方法の基本的製造プロセス(1)を示す工程図である。
【図2】本発明に係る電極の形成方法の基本的製造プロセス(2)を示す工程図である。
【図3】本発明に係る電極の形成方法における所定パターンの金属層を形成する製造プロセス(1)を示す工程図である。
【図4】本発明に係る電極の形成方法における所定パターンの金属層を形成する製造プロセス(2)を示す工程図である。
【図5】本発明に係る半導体デバイスの製造プロセス(1)を示す工程図である。
【図6】本発明に係る半導体デバイスの製造プロセス(2)を示す工程図である。
【図7】実施例2のドレイン電圧(Vd)−ドレイン電流(Id)特性を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
11・・・基板、11a・・・下地基板、11b・・・下地保護層、11c・・・Si薄膜、11d・・・マスク、12・・・密着層、12a・・・有機分子膜、12b・・・触媒金属、12c・・・触媒層、13・・・金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に活性化処理されたSiを有する基板と、
第1の末端にCH基、CH基、CH基のいずれかを有し、第2の末端にアミノ基、メルカプト基、フェニル基、カルボキシル基のいずれかを有する有機分子の薄膜(有機分子膜)が前記基板表面に設けられ、該有機分子膜の表面に触媒金属を付与してなる密着層と、
前記密着層上に無電解めっき法により形成されてなる金属層と、
を備える電極。
【請求項2】
前記有機分子の分子長は、10nm以下である請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記有機分子膜は、前記有機分子の単分子膜である請求項1または2に記載の電極。
【請求項4】
表面に活性化処理されたSiを有する基板と、
第1の末端にCH基、CH基、CH基のいずれかを有し、第2の末端にアミノ基、メルカプト基、フェニル基、カルボキシル基のいずれかを有する有機分子の薄膜が前記基板表面に設けられ、該薄膜の表面に触媒金属を付与してなる密着層と、
前記密着層上に無電解めっき法により形成されてなる金属層と、
を有する電極を備える半導体デバイス。
【請求項5】
表面に活性化処理されたSiを有する基板上に、第1の末端にCH基、CH基、CH基のいずれかを有し、第2の末端にアミノ基、メルカプト基、フェニル基、カルボキシル基のいずれかを有する有機分子の薄膜を形成する有機分子膜形成工程と、
前記有機分子膜表面に触媒金属を付与する触媒化工程と、
前記有機分子膜に触媒金属を付与した密着層表面に無電解めっき法により金属層を形成する無電解めっき工程と、
を有する電極の形成方法。
【請求項6】
前記有機分子の分子長は、10nm以下である請求項5に記載の電極の形成方法。
【請求項7】
前記有機分子膜は、前記有機分子の単分子膜である請求項5または6に記載の電極の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−293082(P2009−293082A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147717(P2008−147717)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】