電気光学装置の製造方法、エッチング方法
【課題】フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)との混酸を用いたエッチング方法では、この混酸を供給し続けている個所のエッチングレートが低下する傾向が見られ、基板の表面または裏面のポリシリコン膜を、均一に除去することは困難である。
【解決手段】フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸、およびフッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸の少なくとも2種類の薬剤をそれぞれの種類ごとに供給するので、マザー基板110の一方の面110fに形成されたポリシリコン膜180f、および他方の面110rに形成されたポリシリコン膜180rが残ることなく、マザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180f、および他方の面110rのポリシリコン膜180rを除去することができる。
【解決手段】フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸、およびフッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸の少なくとも2種類の薬剤をそれぞれの種類ごとに供給するので、マザー基板110の一方の面110fに形成されたポリシリコン膜180f、および他方の面110rに形成されたポリシリコン膜180rが残ることなく、マザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180f、および他方の面110rのポリシリコン膜180rを除去することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する基板上に薬剤を供給して基板上の導電膜を除去する電気光学装置の製造方法およびエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置の一例である液晶装置は、対向して配置された素子基板、対向基板と、素子基板および対向基板の間に封入された液晶とを有して構成される。素子基板には、たとえば複数の薄膜トランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)を含む回路素子層が形成され、対向基板には、たとえば対向電極等が形成される。素子基板、対向基板は、それぞれ独立した工程により製造される。
【0003】
素子基板、対向基板の製造工程では、素子基板、対向基板の基体となる基板を静電チャックにより固定するために、基板の表裏に導電性のポリシリコン膜が形成される場合がある。このポリシリコン膜は、工程のいずれかの段階でエッチングにより除去される。
【0004】
ここで、エッチング方法に関連して、浸漬法により基板の表面および裏面を含む全面をエッチングする方法が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。また、スピン装置に基板を載置して、回転する基板の表面を、フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)との混酸により、エッチングする方法が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−144798号公報(2頁〜3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のフッ酸(HF)と硝酸(HNO3)との混酸を用いたエッチング方法では、この混酸を供給し続けている個所のエッチングレートが低下する傾向が見られ、基板の表面または裏面のシリコン膜を、均一に除去することは困難である。また、基板として石英基板またはガラス基板を用いた場合には、基板自体がエッチングされてしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例により実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる電気光学装置の製造方法は、素子基板を製造する工程Aと、対向基板を製造する工程Bと、前記素子基板と前記対向基板とを貼り合わせ、前記素子基板と前記対向基板との間に電気光学物質を封入する工程と、を有する電気光学装置の製造方法であって、前記工程Aまたは前記工程Bにおいて、基板の一方の面、および他方の面に導電膜を形成する導電膜形成工程と、前記基板の前記一方の面の前記導電膜を除去する第1の導電膜除去工程と、前記基板の前記一方の面に、薄膜を層状に形成する薄膜形成工程と、前記薄膜を形成した後に、前記基板の前記他方の面の前記導電膜を除去する第2の導電膜除去工程とを備え、前記第1の導電膜除去工程または前記第2の導電膜除去工程は、前記基板上に第1の薬剤を供給し、前記導電膜をエッチングする工程Cと、前記基板上に第2の薬剤を供給し、前記工程Cにより酸化された前記導電膜をエッチングする工程Dとを有することを要旨とする。
【0009】
これによれば、第1の薬剤によりエッチングした後、第1の薬剤とは異なる第2の薬剤によりエッチングを行うため、1種類の薬剤によるエッチングを続けることに起因するエッチングレートの低下を抑制することができる。これにより、基板の表面の導電膜、または基板の裏面の導電膜を、均一に除去することができる。つまり、基板の表面または裏面に導電膜が残ることなく、かつ、基板にダメージを与えることなく、基板の表面または裏面から導電膜を除去することができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかる電気光学装置の製造方法において、前記第1の薬剤は、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸であり、前記第2の薬剤は、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸であることが好ましい。
【0011】
これによれば、第1の薬剤である混酸を供給し、その後第2の薬剤であるバッファードフッ化水素酸を供給するので、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸だけを供給して基板の導電膜を除去する場合においてエッチングレートが低下することを無くすことができる。これにより、基板の表面の導電膜、または基板の裏面の導電膜を、均一に除去することができる。つまり、基板の表面または裏面に導電膜が残ることなく、基板の表面または裏面から導電膜を除去することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかる電気光学装置の製造方法において、前記工程Cと前記工程Dとの間に、純水による洗浄工程を有することが好ましい。
【0013】
これによれば、供給された混酸や、エッチングにより生じた異物が、基板上から除去されるので、その後に供給する第2の薬剤であるバッファードフッ化水素酸によるエッチングがより効果的となる。
【0014】
[適用例4]上記適用例にかかる電気光学装置の製造方法において、前記第1の導電膜除去工程および前記第2の導電膜除去工程の少なくとも一方を、2回以上繰返し実施することが好ましい。
【0015】
これによれば、導電膜を除去する際に、上記工程C,Dを2回以上繰返し実施するので、導電膜が基板の表面または裏面に残ることなく、基板の表面または裏面から導電膜を除去することが、より確実になる。
【0016】
[適用例5]本適用例にかかるエッチング方法は、導電膜が形成された基板を回転させる工程と、前記基板を回転させた状態で、前記基板に、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸を供給して前記導電膜をエッチングする工程と、前記基板を回転させた状態で、前記基板に、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸を供給して酸化された前記導電膜をエッチングする工程とを有していることを要旨とする。
【0017】
これによれば、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸によりエッチングした後、バッファードフッ化水素酸によりエッチングを行うため、混酸だけによるエッチングを続けることに起因するエッチングレートの低下を抑制することができる。これにより、基板の表面の導電膜、または基板の裏面の導電膜を、均一に除去することができる。つまり、基板の表面または裏面に導電膜が残ることなく、基板の表面または裏面から導電膜を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
ここで、以下に示す実施の形態において電気光学装置は、液晶装置を例に挙げて説明する。また、液晶装置において対向して配置される2枚の基板のうち、一方の基板は素子基板(以下、「TFT基板」と記す)として説明する。そして、他方の基板はTFT基板に対向する対向基板として説明する。
(実施形態)
【0019】
まず、本実施形態の製造方法にかかる液晶装置の全体の構成について、図1から図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかる液晶装置の概略平面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、一つの画素に着目した図1の液晶装置の模式的断面図である。
【0020】
図1および図2に示すように、液晶装置100は、TFT基板10と、対向基板20と、液晶50と、シール材52とを備えている。TFT基板10と対向基板20とは、対向して配置され、シール材52によって貼り合わされている。TFT基板10と対向基板20との間の内部空間に、電気光学物質である液晶50を介在させて構成される。
そして、TFT基板10および対向基板20は、たとえば石英またはガラスなどからなる。
【0021】
TFT基板10の基板上の液晶50と接する一方の面10f側に、液晶装置100の表示領域40を構成するTFT基板10の表示領域10hが構成されている。また、表示領域10hに、画素を構成する対向電極21とともに液晶50に駆動電圧を印加する電極である画素電極(ITO)9aがマトリクス状に配置されている。
【0022】
そして、対向基板20の基板上の液晶50と接する一方の面20fの全面に、液晶50に画素電極9aとともに駆動電圧を印加する電極である対向電極(ITO)21が設けられている。そして、対向電極21のTFT基板10の表示領域10hに対向する位置の液晶50と接する一方の面20f側に、液晶装置100の表示領域40を構成する対向基板20の表示領域20hが構成されている。
【0023】
TFT基板10の画素電極9a上に、ラビング処理が施された配向膜16が設けられており、また、対向基板20上の全面にわたって形成された対向電極21上にも、ラビング処理が施された配向膜26が設けられている。各配向膜16,26は、たとえば、ポリイミド膜などの透明な有機膜からなる。
【0024】
また、TFT基板10の表示領域10hにおいては、複数本の走査線11a(図3参照)と複数本のデータ線6a(図3参照)とが交差するように配線され、走査線11aとデータ線6aとで区画された領域に画素電極9aがマトリクス状に配置される。そして、走査線11aとデータ線6aとの各交差部分に対応してスイッチング素子である薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す)30(図3参照)が設けられ、このTFT30毎に画素電極9aが電気的に接続されている。
【0025】
TFT30は走査線11aのON信号によってオンとなり、これにより、データ線6aに供給された画像信号が画素電極9aに供給される。この画素電極9aと対向基板20に設けられた対向電極21との間の電圧が液晶50に印加される。
【0026】
また、画素電極9aと並列に、蓄積容量70(図3参照)が設けられており、蓄積容量70によって、画素電極9aの電圧は、ソース電圧が印加された時間よりもたとえば3桁も長い時間の保持が可能となる。また、蓄積容量70によって、電圧保持特性が改善され、コントラスト比の高い画像表示が可能となる。
【0027】
対向基板20に、TFT基板10の表示領域10hおよび対向基板20の表示領域20hの外周を、画素領域において規定し区画することにより、表示領域40を規定する額縁としての遮光膜53が設けられている。
【0028】
液晶50がTFT基板10と対向基板20との間の空間に、既知の液晶注入方式で注入される場合、シール材52は、シール材52の一辺の一部において欠落して塗布されている。
【0029】
シール材52の欠落した箇所は、この欠落した箇所から貼り合わされたTFT基板10および対向基板20との間に液晶50を注入するための液晶注入口108を構成している。液晶注入口108は、液晶注入後、封止材109で封止される。
【0030】
シール材52の外側の領域に、TFT基板10の図示しないデータ線に画像信号を所定のタイミングで供給して、このデータ線を駆動するドライバであるデータ線駆動回路101および外部回路との接続のための外部接続端子102が、TFT基板10の一辺に沿って設けられている。
【0031】
この一辺に隣接する二つの辺に沿った、TFT基板10の走査線11aおよびゲート電極3a(図3参照)に、走査信号を所定のタイミングで供給することにより、ゲート電極3aを駆動するドライバである走査線駆動回路103,104が設けられている。走査線駆動回路103,104は、シール材52の内側の遮光膜53に対向する位置において、TFT基板10上に形成されている。
【0032】
また、TFT基板10上に、データ線駆動回路101、走査線駆動回路103,104、外部接続端子102、および上下導通端子107を接続する配線105が、遮光膜53の三辺に対向して設けられている。
【0033】
上下導通端子107は、シール材52のコーナー部の4箇所のTFT基板10上に形成されている。そして、TFT基板10と対向基板20相互間に、下端が上下導通端子107に接触し上端が対向電極21に接触する上下導通材106が設けられており、この上下導通材106によって、TFT基板10と対向基板20との間で電気的な導通がとられている。
【0034】
また、図3に示すように、各薄膜を形成する前の、石英基板、ガラス基板などのTFT基板10を構成する一方の基板の一方の面上に、TFT30や画素電極9aのほか、これらを含む各種の構成が層状の積層構造をなして備えられている。なお、この積層構造、および積層された各層の機能は周知であるため、概略的に説明する。
【0035】
この積層構造は、複数の薄膜である第1層〜第6層に構成されている。基板の一方の面から順に、走査線11aを含む第1層(成膜層)、ゲート電極3aを具備するTFT30などを含む第2層、蓄積容量70を含む第3層、データ線6aなどを含む第4層、シールド層400などを含む第5層、画素電極9aおよび配向膜16などを含む第6層(最上層)からなる。また、第1層〜第6層、それぞれの層との間には、層間絶縁膜がそれぞれ設けられており、走査線11a、ゲート電極3a、蓄積容量70、データ線6a、シールド層400、および画素電極9aのいずれかが短絡することを防止している。
【0036】
第1層に、たとえば、タングステンシリサイドからなる走査線11aが、平面形状がストライプ状となるようパターニングされて成膜されている。また、走査線11aは、TFT30に下側から入射しようとする光を遮る遮光機能をも有している。走査線11a上に、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜などからなる下地絶縁膜12が、たとえば、常圧または減圧CVD法などにより成膜されている。
【0037】
第2層に、ゲート電極3aを含むTFT30が設けられている。TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、たとえばポリシリコン膜などの結晶化シリコン膜からなる半導体層1と、ゲート電極3aと、ゲート電極3aと半導体層1とを絶縁するゲート絶縁膜2とから主要部が構成されている。
【0038】
半導体層1は、ゲート電極3aからの電界によりチャネルが形成されるチャネル領域1aと、低濃度ソース領域1bと、低濃度ドレイン領域1cと、高濃度ソース領域1dと、高濃度ドレイン領域1eとを備えている。そして、第2層に、ゲート電極3aと同一膜として中継電極719が形成されている。
【0039】
下地絶縁膜12を、平面的に見て、半導体層1の両脇に、データ線6aに沿って延びる半導体層1のチャネル長と同じ幅の溝(コンタクトホール)12cvが掘られている。このコンタクトホール12cvにより、同一行の走査線11aとゲート電極3aとは、同電位となる。
【0040】
第3層に、容量部である蓄積容量70が設けられている。蓄積容量70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1eおよび画素電極9aに電気的に接続された下部電極71と、容量電極300とが、容量となる誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。
【0041】
TFT30からゲート電極3aおよび中継電極719の上、かつ、蓄積容量70の下に、たとえば、窒化シリコン膜または酸化シリコン膜などからなる第1層間絶縁膜41が形成されている。
【0042】
第1層間絶縁膜41に、TFT30の高濃度ソース領域1dとデータ線6aとを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール81が、第2層間絶縁膜42を貫通して開孔されている。
【0043】
また、第1層間絶縁膜41に、TFT30の高濃度ドレイン領域1eと蓄積容量70を構成する下部電極71とを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール83が開孔されている。
【0044】
さらに、この第1層間絶縁膜41に、下部電極71と中継電極719とを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール881が開孔されている。さらに加えて、第1層間絶縁膜41に、中継電極719と第2中継層6a2とを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール882が、第2層間絶縁膜42を貫通して開孔されている。
【0045】
第4層に、データ線6aが設けられている。このデータ線6aは、下層より順に、アルミニウム層41A、窒化チタン層41TN、窒化シリコン膜層401の三層構造を有する膜として形成されている。
【0046】
また、この第4層に、データ線6aと同一膜として、シールド層用中継層6a1および第2中継層6a2が形成されている。また、第2層間絶縁膜42に、シールド層用中継層6a1と容量電極300とを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール801が開孔されている。
【0047】
第5層に、シールド層400が形成されている。また、第5層に、このようなシールド層400と同一膜として、中継層としての第3中継電極402が形成されている。
【0048】
第3層間絶縁膜43に、シールド層400とシールド層用中継層6a1とを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール803、および第3中継電極402と第2中継層6a2とを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール804がそれぞれ開孔されている。
【0049】
第6層に、画素電極9aがマトリクス状に形成され、この画素電極9a上に配向膜16が形成されている。そして、この画素電極9a下に、第4層間絶縁膜44が形成されている。また、第4層間絶縁膜44に、画素電極9aおよび第3中継電極402間を電気的に接続するために介在されたコンタクトホール89が開孔されている。
【0050】
以下、本実施形態の液晶装置の製造方法について、図4〜図12を参照して説明する。液晶装置100の製造方法は、素子基板としてのTFT基板10を製造する工程(工程A)と、対向基板20を製造する工程(工程B)と、TFT基板10と対向基板20とを貼り合わせ、TFT基板10と対向基板20との間に液晶50を封入する工程とを有している。
以下、液晶装置100の製造方法は、TFT基板10の製造方法を一例に挙げて説明する。また、各薄膜を形成する前のTFT基板10を構成する基板は、石英から構成された大板の基板に複数構成されている。すなわち、大板の基板の一部が、TFT基板10を構成する基板として説明する。
【0051】
まず、素子基板としてのTFT基板の製造工程(工程A)について説明する。図4は、TFT基板の製造方法の一部を示すフローチャートである。図5は、大板の基板の一方の面または他方の面を、洗浄および乾燥するとともに、大板の基板の一方の面または他方の面から導電膜を除去するスピン装置を示す図である。図6は、図5に示すスピン装置のスピンベースおよび静電チャックピンを示す上面図である。図7は、図5に示すスピン装置を用いて、大板の基板の一方の面または他方の面を、洗浄および乾燥する工程を示す図である。図8は、図7に示す大板の基板の一方の面および他方の面および端面に薄膜を形成した状態を示す図である。図9は、図5に示すスピン装置を用いて、図8に示す大板の基板の一方の面および端面の薄膜を除去する工程を示す図である。図10は、図9に示す大板の基板の一方の面のTFT基板を構成する複数の領域に、それぞれ複数の薄膜を積層して形成した状態を示す図である。図11は、図5に示すスピン装置を用いて、図10に示す大板の基板の他方の面の薄膜を除去する工程を示す図である。図12は、図4の一部を示すフローチャートである。
【0052】
まず、図4に示すステップS1において、図5に示すスピン装置150を用いて、石英から構成された大板の基板(以下、「マザー基板」と記す)110に、洗浄処理を施す。その後、アニール処理または乾燥処理を施す。
【0053】
ここで、スピン装置150の構成を簡単に説明する。
スピン装置150は、図5および図6に示すように、たとえば円板状のステージ台である回転自在なスピンベース151と、このスピンベース151の外周に、たとえば等間隔に8個固定された大板の基板保持用の静電チャックピン152と、スピンベース151と平面上略同じ大きさを有する円板状の回転自在なシールド板153とにより主要部が構成されている。このような構成を有するスピン装置150としては、大日本スクリーン製造株式会社のMP3000が一例として挙げられる。
【0054】
スピンベース151の回転中心に、8個の静電チャックピン152に保持されたマザー基板110の他方の面110rに、薬剤としての各液体を供給する液体供給管路161の供給口161kが開口されている。ここで、液体供給管路161の供給口161kからは、50%濃度のフッ酸(HF)と、60%濃度の硝酸(HNO3)とを体積比1:60で混合した薬液である混酸、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸(以下、「BHF」と記す)、および純水(H2O)を供給することができる。
【0055】
シールド板153の回転中心に、8個の静電チャックピン152に保持されたマザー基板110の一方の面110fに、上述の各液体を供給する液体供給管路162の供給口162kが開口されている。
【0056】
8個の静電チャックピン152は、スピンベース151の外周から、上方に延出するよう、スピンベース151の外周に固定されている。そして、スピンベース151が回転した際、8個の静電チャックピン152は、スピンベース151と一緒に回転する。ここで、静電チャックピン152の個数は8個に限定されず、適宜決定することができる。
【0057】
そして、8個の静電チャックピン152の上方への延出端部の近傍に、スピンベース151の内周方向に突出する載置部152tがそれぞれ形成されている。8個の載置部152tの各上面に、マザー基板110の他方の面110rの外周部位が当接されることにより、マザー基板110は、8個の静電チャックピン152の各載置部152tに載置されている。
【0058】
また、8個の静電チャックピン152は、スピンベース151の外周から、上方に延出するよう固定されているため、8個の静電チャックピン152の各載置部152tに載置されたマザー基板110は、スピンベース151から、たとえば5mm程度上方に離間して位置している。
【0059】
さらに、8個の静電チャックピン152は、スピンベース151の径方向に移動自在となるよう、スピンベース151に固定されている。このようにして、8個の載置部152tにマザー基板110が載置された後、8個の静電チャックピン152をスピンベース151の内周方向に移動させることにより、8個の載置部152tに載置されたマザー基板110の端面を8個の静電チャックピン152の各内周面で挟持することができる。そして、静電チャックピン152は、確実にマザー基板110を固定して保持することができる。
【0060】
このように構成されたスピン装置150を用いて、図7に示すようにマザー基板110の洗浄処理および乾燥処理を施す。具体的には、マザー基板110を、スピン装置150の8個の静電チャックピン152に固定し、その後、スピンベース151を、たとえば2500rpmで回転させて、マザー基板110を回転させる。この際、シールド板153も回転させる。
【0061】
そして、各液体供給管路161,162の各供給口から液体を供給しない状態で、スピンベース151を、たとえば2500rpmで回転させることにより、洗浄処理後のマザー基板110をスピン乾燥する乾燥処理を施す。このとき、乾燥処理条件は、たとえば60℃で30minとする。ここで、この洗浄処理および乾燥処理は、スピン装置150以外の装置を用いて施してもよい。
【0062】
その後、マザー基板110を、スピン装置150から取り外した後、マザー基板110の歪みを防止するため、マザー基板110に対して、たとえば1000℃の環境下において、300sec程度、N2(窒素)ガスを用いてアニール処理を施す。
【0063】
次に、図4に示すステップS2において、たとえば、既知のバッチ式の縦型のLP−CVD装置などを用いて、図8に示すように、マザー基板110の一方の面110fの全面と他方の面110rの全面に、導電膜であるポリシリコン膜180を、たとえば100nm〜500nmの膜厚に形成する導電膜形成工程を行う。その後、形成されたポリシリコン膜180の膜厚を測定する。
【0064】
このLP−CVD装置を用いたポリシリコン膜180の形成は、たとえば、620℃の環境下において、モノシラン(SiH4)ガスを、LP−CVD装置内に導入することにより行われる。また、マザー基板110の端面110tにも、ポリシリコン膜180が形成される。
【0065】
以下、ポリシリコン膜180について、マザー基板110の一方の面110fに形成されたポリシリコン膜には、符号180fを付与する。そして、他方の面110rに形成されたポリシリコン膜には、符号180rを付与する。さらに、端面110tに形成されたポリシリコン膜には、符号180tを付与する。
【0066】
さらに、ポリシリコン膜180の膜厚は、マザー基板110の他方の面110rに接触傷などが形成されないよう保護するために必要な膜厚、およびマザー基板110を、枚葉式の成膜装置、ドライエッチング装置の各ステージに、静電チャックを用いて固定する際、固定に十分な静電力を発生させるのに必要な膜厚に形成される。
【0067】
LP−CVD装置を用いたマザー基板110に対するポリシリコン膜の形成は、同時に、数枚のマザー基板110に対して行ってもよい。さらに、マザー基板110の一方の面110f、他方の面110rに形成する導電膜は、ポリシリコン膜に限定されず、たとえばリン(P)をドープしたポリシリコンまたはアモルファスシリコンなどの導電膜であってもよい。
【0068】
次に、図4に示すステップS3において、マザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180fを、スピン方式にて除去する第1の導電膜除去工程である第1の導電膜除去工程を行う。ステップS3は、さらに図12のフローチャートに示すステップP1からステップP5を含んでいる。以下、図12に沿って説明する。
【0069】
ステップP1では、フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)とを混合した薬液である混酸によるエッチングを行う。ステップP1は、工程Cに対応する。混酸は、第1の薬剤に対応する。ステップP1では、まずマザー基板110を、スピン装置150の8個の静電チャックピン152に載置して固定する。その後、たとえば2500rpmで、スピンベース151を回転させて、マザー基板110を回転させる。この際、シールド板153も回転させる。
【0070】
その後、図9に示すように、回転するマザー基板110のポリシリコン膜180fの回転中心に、上方から、すなわち、液体供給管路162の供給口162kから、薬剤として、50%濃度のフッ酸(HF)と、60%濃度の硝酸(HNO3)とを体積比1:60で混ぜた薬液である混酸を、23℃の環境下において供給する。混酸の供給時間は、たとえば40secとすることができる。これにより、マザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180fを、ウェットエッチングにより除去する。ここで、ポリシリコン膜180fのエッチングレートは経時的に低下する。これは、硝酸によりポリシリコン膜180fを酸化させてシリコン酸化膜を生成し、フッ酸によりこのシリコン酸化膜をエッチングする際、シリコン酸化膜の生成速度にフッ酸のエッチングが追いつかないためであると考えられる。なお、ステップP1では、ポリシリコン膜180fが完全に除去されなくてもよい。
【0071】
ステップP2では、純水(H2O)による洗浄を行う。ステップP2は、マザー基板110を回転させた状態で、マザー基板110のポリシリコン膜180fの回転中心に、上方から、すなわち、液体供給管路162の供給口162kから純水を供給することによって行う。この工程により、ステップP1において供給された混酸や、エッチングにより生じた異物がマザー基板110上から除去される。
【0072】
ステップP3では、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸(BHF)によるエッチングを行う。ステップP3は、工程Dに対応する。BHFは、第2の薬剤に対応する。より詳しくは、ステップP3では、マザー基板110を回転させた状態で、マザー基板110のポリシリコン膜180fの回転中心に、上方から、すなわち、液体供給管路162の供給口162kから、薬剤として、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸との混合液である薬剤としてのバッファードフッ化水素酸(BHF)を、23℃の環境下において供給する。BHFの供給時間は、たとえば20secとすることができる。これにより、先のステップP1で除去しきれなかったマザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180fを、ウェットエッチングにより除去することができる。すなわち、バッファードフッ化水素酸は、マザー基板110とのエッチング選択性をもって、シリコン酸化膜をエッチングするため、マザー基板110にダメージを与える事が無い。
【0073】
ステップP4では、純水(H2O)による洗浄を行う。より詳しくは、ステップP4では、回転するマザー基板110の一方の面110fおよび他方の面110rの各回転中心に、液体供給管路162の供給口162kおよび液体供給管路161の供給口161kから、純水(H2O)を、たとえば60sec供給し、マザー基板110の一方の面110fおよび他方の面110rの洗浄処理を施す。この際、マザー基板110は、たとえば2500rpmで回転しているため、一方の面110fおよび他方の面110rの全面に、純水(H2O)は供給される。この工程により、ステップP3において供給されたBHFや、エッチングにより生じた異物がマザー基板110上から除去される。
【0074】
ステップP5では、マザー基板110を乾燥処理する。より詳しくは、各液体供給管路161,162の各供給口から液体を供給しない状態で、スピンベース151を、たとえば2500rpmで回転させることにより、洗浄処理後のマザー基板110をスピン乾燥する乾燥処理を施す。このとき、乾燥処理条件は、たとえば60℃で30minとする。ここで、この洗浄処理および乾燥処理は、スピン装置150以外の装置を用いて施してもよい。
【0075】
以上のステップP1からP5を経て、図4におけるステップS3が終了する。
【0076】
なお、ステップP1およびP3においては、マザー基板110は、たとえば2500rpmで回転しているため、ポリシリコン膜180fの全面に、薬液は供給される。そして、一方の面110fに供給された薬液は、端面110tにも液垂れするため、端面110tのポリシリコン膜180tは除去される。ここで、薬液の供給量を増減させることにより、マザー基板110の一方の面110f、端面110tから除去するポリシリコン膜180f,180tの量を可変させることができる。
【0077】
ここで、回転するマザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180fの回転中心に、液体供給管路162の供給口162kから薬液を供給すると略同時に、図9に示すように、回転するマザー基板110の導電膜を除去する面と反対側の面である他方の面110rのポリシリコン膜180rの回転中心に、下方から、すなわち、液体供給管路161の供給口161kから、乾燥ガスであるN2ガスを、たとえば100リットル/分量吐出する。ここで、乾燥ガスは、N2ガスに限らず、単なるエア(Air)であってもよい。また、N2ガスを、マザー基板110の他方の面110rのポリシリコン膜180rに供給する際は、供給口161kの配置または向きなどを適宜設定することにより、マザー基板110全面にN2ガスが広がるように回転中心以外に供給してもよい。
【0078】
このことにより、他方の面110rに吐出されたN2ガスにより、マザー基板110の一方の面110fに供給された薬液が、端面110tより他方の面110r側に回り込んでしまうことを防ぐ。すなわち、一方の面110fのポリシリコン膜180fを除去するに際し、他方の面110rのポリシリコン膜180rが除去されてしまうことを防ぐ。
【0079】
また、ステップP1からP4において、薬剤または純水を、マザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180fに供給する際は、供給口162kの配置または向きなどを適宜設定することにより、マザー基板110全面に薬液または純水が広がるように回転中心以外に供給してもよい。
【0080】
また、ステップP2の洗浄工程は、必要に応じて省略してもよい。
【0081】
第1の導電膜除去工程の後、マザー基板110は、他方の面110rの全面のみに、ポリシリコン膜180rが形成されることになる。ここで、マザー基板110の他方の面110rの全面に、ポリシリコン膜180rを形成したのは、製造工程中、マザー基板110の他方の面110rに接触傷などが形成されてしまうことを形成されたポリシリコン膜180rにより防止するためである。
【0082】
さらに、マザー基板110の他方の面110rの全面に、ポリシリコン膜180rを形成したのは、静電チャックを用いてマザー基板110の他方の面110rを枚葉式の成膜装置、またはエッチング装置の各ステージに載置して、この各ステージにマザー基板110を固定する際、ポリシリコン膜180rにより、マザー基板110とステージとの間に静電力を発生させ、確実にマザー基板110をステージに固定するためである。
【0083】
また、マザー基板110の他方の面110rの全面に、ポリシリコン膜180rを形成したのは、マザー基板110を加熱する際、ポリシリコン膜180rにより、マザー基板110における熱の伝導を均一化させるためである。
【0084】
次に、図4に示すステップS4において、複数の薄膜を積層して層状に形成する薄膜形成工程を行う。図10に示すように、マザー基板110の一方の面110fに、複数のTFT基板10を構成するため、TFT基板10毎に、成膜装置、およびエッチング装置を用いて、図3に示した、複数の薄膜である第1層〜第6層を形成する。この段階で、第6層の配向膜16は形成していない。
【0085】
この第1層〜第6層までの積層工程は、常圧または減圧CVD法などの、周知の方法により実施されるため、その説明は省略する。また、第1層〜第6層を積層して形成する際は、必要に応じて、マザー基板110を、枚葉式の成膜装置、ドライエッチング装置の各ステージに、このステージとマザー基板110の他方の面110rとの間に電圧印加後に発生する静電力を用いる静電チャックにより固定して行う。
【0086】
次に、図4に示すステップS5において、マザー基板110を、スピン装置150から取り外した後、形成された各薄膜の歪みを防止するため、マザー基板110に対して、たとえば300℃の環境下において、300sec程度、N2ガスを用いてアニール処理を施す。
【0087】
この際、マザー基板110の他方の面110rには、ポリシリコン膜180rが形成されているため、熱は、ポリシリコン膜180rにより、マザー基板110に均一に熱伝導される。
【0088】
次に、図4に示すステップS6において、マザー基板110の他方の面110rのポリシリコン膜180rを、スピン方式にて除去する第2の導電膜除去工程である第2の導電膜除去工程を行う。ステップS6は、マザー基板110の他方の面110rに処理を行う点を除けばステップS3と同じであるため説明は省略する。ステップS3と同様に、図12に示すステップP1からP5を含んでいる。
【0089】
ステップS6の後、画素電極9a上に上述した配向膜16を形成し、この配向膜16に既知のラビング処理を施す。その後、マザー基板110から、複数構成された各TFT基板10を、たとえばダイシングにより分断することにより、TFT基板10を複数製造する。なお、TFT基板10は、マザー基板110に1個のみ構成して、分断後、1個のみ形成してもよい。
【0090】
続いて、対向基板20の製造工程(工程B)について説明する。対向基板20の製造工程は、薄膜形成工程(ステップS4)において形成する構成要素の種類を除いて上記のTFT基板10の製造工程と同様である。このため、以下の説明においては、洗浄工程、乾燥工程、アニール処理工程などは、省略して記載する。
【0091】
まず、石英から構成されたマザー基板110の一方の面110fの全面と他方の面110rの全面とに、導電膜であるポリシリコン膜180を、たとえば100nm〜500nmの膜厚に形成する導電膜形成工程を行った後、マザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180fを、スピン装置150にて、一方の面110fの全面から除去する第1の導電膜除去工程を行う。
【0092】
マザー基板110のポリシリコン膜180fが除去された一方の面110fの全面に、対向電極21を形成する薄膜形成工程を行う。この段階では、配向膜26は形成しない。そして、マザー基板110の他方の面110rのポリシリコン膜180rを、スピン装置150にて、他方の面110rの全面から除去する第2の導電膜除去工程を行う。
【0093】
第2の導電膜除去工程の後、マザー基板110の一方の面110fの対向電極21上に上述した配向膜26を形成し、この配向膜26に既知のラビング処理を施す。その後、マザー基板110を、所定の大きさに、たとえばダイシングにより分断することにより、マザー基板110から、複数の対向基板20を分断して対向基板20を複数製造する。対向基板20は、マザー基板110に1個のみ構成して、分断後、1個のみ形成してもよい。
【0094】
このようにして製造されたTFT基板10と対向基板20とを、一方の面10fと他方の面20fとが対向するようシール材52によって貼り合わせて対向配置した後、TFT基板10と対向基板20とのシール材52で囲まれた領域に、既知の液晶注入方式により、液晶50を注入して、液晶装置100を製造する。あるいは、TFT基板10または対向基板20の一方に液晶50を滴下した後にTFT基板10と対向基板20とを貼り合わせることによって、TFT基板10と対向基板20との間に液晶50を封入してもよい。
【0095】
以上のように、本実施形態によれば、ポリシリコン膜180を除去する際に、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸によってエッチングを行った後、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸によるエッチングを行うので、1種類の薬剤によるエッチングを続けることに起因するエッチングレートの低下を抑制することができる。これにより、基板の表面の導電膜、または基板の裏面の導電膜を、均一に除去することができる。つまり、マザー基板110の一方の面110fに形成されたポリシリコン膜180f、および他方の面110rに形成されたポリシリコン膜180rが残ることなく、且つマザー基板110にダメージを与えることなく、マザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180f、および他方の面110rのポリシリコン膜180rを除去することができる。
【0096】
本実施形態によれば、供給された混酸や、エッチングにより生じた異物が、マザー基板110上から除去されるので、その後に供給する第2の薬剤であるバッファードフッ化水素酸によるエッチングがより効果的となる。
【0097】
以下、上述の実施形態における第1の導電膜除去工程および第2の導電膜除去工程に関する変形例を記載する。
(変形例1)
【0098】
変形例1が、上述の実施形態にかかる電気光学装置の製造方法に対して相違する点は、第1の導電膜除去工程および第2の導電膜除去工程の少なくともいずれかを2回以上実施することである。
【0099】
これによれば、2回以上繰返し実施するので、導電膜であるポリシリコン膜180がマザー基板110の一方の面110fおよび他方の面110rに残ることなく、マザー基板110の一方の面110fおよび他方の面110rからポリシリコン膜180を除去することが、より確実になる。さらに、端面110tに形成されたポリシリコン膜180tについても、除去することができる。
(変形例2)
【0100】
マザー基板110の一方の面110fにポリシリコン膜180を形成せず、静電チャックでマザー基板110を固定できる場合、導電膜形成工程において、他方の面110rだけにポリシリコン膜180を形成し、第1の導電膜除去工程を省略して、第2の導電膜除去工程のみを行うことができる。
(変形例3)
【0101】
ステップS3およびS6において用いるエッチング方法は、電子機器の製造工程に限らず半導体装置の製造工程などに用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
液晶装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、上記課題の少なくとも一部を解決できる範囲での変形、改良などは前述の実施形態に含まれるものである。
たとえば、上述した液晶装置は、TFT(薄膜トランジスタ)などのアクティブ素子(能動素子)を用いたアクティブマトリクス方式の液晶表示モジュールを例に挙げて説明したが、これに限らず、TFD(薄膜ダイオード)などのアクティブ素子(能動素子)を用いたアクティブマトリクス方式の液晶表示モジュールであってもよい。
【0103】
さらに、本実施の形態においては、電気光学装置は、液晶装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、エレクトロルミネッセンス装置、特に、有機エレクトロルミネッセンス装置、無機エレクトロルミネッセンス装置などや、プラズマディスプレイ装置、FED(Field Emission Display)装置、SED(Surface-Conduction Electron-Emitter Display)装置、LED(発光ダイオード)表示装置、電気泳動表示装置、薄型のブラウン管または液晶シャッターなどを用いた表示装置などの各種電気光学装置に適用できる。
【0104】
また、電気光学装置は、半導体基板に素子を形成する表示用デバイス、たとえばLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などであってもよい。LCOSでは、素子基板として単結晶シリコン基板を用い、画素や周辺回路に用いるスイッチング素子としてトランジスタを単結晶シリコン基板に形成する。また、画素には、反射型の画素電極を用い、画素電極の下層に画素の各素子を形成する。
【0105】
また、電気光学装置は、片側の基板の同一層に、一対の電極が形成される表示用デバイス、たとえばIPS(In-Plane Switching)や、片側の基板において、絶縁膜を介して一対の電極が形成される表示用デバイスFFS(Fringe Field Switching)などであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本実施形態にかかる液晶装置の概略平面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】一つの画素に着目した図1の液晶装置の模式的断面図。
【図4】TFT基板の製造方法の一部を示すフローチャート。
【図5】大板の基板の表面または裏面を、洗浄および乾燥するとともに、大板の基板の表面または裏面から導電膜を除去するスピン装置を示す図。
【図6】図5に示すスピン装置のスピンベースおよび静電チャックピンを示す上面図。
【図7】図5に示すスピン装置を用いて、大板の基板の表面または裏面を、洗浄および乾燥する工程を示す図。
【図8】図7に示す大板の基板の表面および裏面および端面に薄膜を形成した状態を示す図。
【図9】図5に示すスピン装置を用いて、図8に示す大板の基板の表面および端面の薄膜を除去する工程を示す図。
【図10】図9に示す大板の基板の表面のTFT基板を構成する複数の領域に、それぞれ複数の薄膜を積層して形成した状態を示す図。
【図11】図5に示すスピン装置を用いて、図10の大板の基板の裏面の薄膜を除去する工程を示す図。
【図12】図4の一部を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0107】
9a…画素電極、10…TFT基板、10f…TFT基板の表面、20…対向基板、21…対向電極、30…TFT、40…表示領域、50…液晶、52…シール材、100…液晶装置、110…マザー基板、110f…マザー基板の表面、110r…マザー基板の裏面、110t…マザー基板の端面、180…ポリシリコン膜、180f…表面のポリシリコン膜、180r…裏面のポリシリコン膜、180t…端面のポリシリコン膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する基板上に薬剤を供給して基板上の導電膜を除去する電気光学装置の製造方法およびエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置の一例である液晶装置は、対向して配置された素子基板、対向基板と、素子基板および対向基板の間に封入された液晶とを有して構成される。素子基板には、たとえば複数の薄膜トランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)を含む回路素子層が形成され、対向基板には、たとえば対向電極等が形成される。素子基板、対向基板は、それぞれ独立した工程により製造される。
【0003】
素子基板、対向基板の製造工程では、素子基板、対向基板の基体となる基板を静電チャックにより固定するために、基板の表裏に導電性のポリシリコン膜が形成される場合がある。このポリシリコン膜は、工程のいずれかの段階でエッチングにより除去される。
【0004】
ここで、エッチング方法に関連して、浸漬法により基板の表面および裏面を含む全面をエッチングする方法が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。また、スピン装置に基板を載置して、回転する基板の表面を、フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)との混酸により、エッチングする方法が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−144798号公報(2頁〜3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のフッ酸(HF)と硝酸(HNO3)との混酸を用いたエッチング方法では、この混酸を供給し続けている個所のエッチングレートが低下する傾向が見られ、基板の表面または裏面のシリコン膜を、均一に除去することは困難である。また、基板として石英基板またはガラス基板を用いた場合には、基板自体がエッチングされてしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例により実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる電気光学装置の製造方法は、素子基板を製造する工程Aと、対向基板を製造する工程Bと、前記素子基板と前記対向基板とを貼り合わせ、前記素子基板と前記対向基板との間に電気光学物質を封入する工程と、を有する電気光学装置の製造方法であって、前記工程Aまたは前記工程Bにおいて、基板の一方の面、および他方の面に導電膜を形成する導電膜形成工程と、前記基板の前記一方の面の前記導電膜を除去する第1の導電膜除去工程と、前記基板の前記一方の面に、薄膜を層状に形成する薄膜形成工程と、前記薄膜を形成した後に、前記基板の前記他方の面の前記導電膜を除去する第2の導電膜除去工程とを備え、前記第1の導電膜除去工程または前記第2の導電膜除去工程は、前記基板上に第1の薬剤を供給し、前記導電膜をエッチングする工程Cと、前記基板上に第2の薬剤を供給し、前記工程Cにより酸化された前記導電膜をエッチングする工程Dとを有することを要旨とする。
【0009】
これによれば、第1の薬剤によりエッチングした後、第1の薬剤とは異なる第2の薬剤によりエッチングを行うため、1種類の薬剤によるエッチングを続けることに起因するエッチングレートの低下を抑制することができる。これにより、基板の表面の導電膜、または基板の裏面の導電膜を、均一に除去することができる。つまり、基板の表面または裏面に導電膜が残ることなく、かつ、基板にダメージを与えることなく、基板の表面または裏面から導電膜を除去することができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかる電気光学装置の製造方法において、前記第1の薬剤は、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸であり、前記第2の薬剤は、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸であることが好ましい。
【0011】
これによれば、第1の薬剤である混酸を供給し、その後第2の薬剤であるバッファードフッ化水素酸を供給するので、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸だけを供給して基板の導電膜を除去する場合においてエッチングレートが低下することを無くすことができる。これにより、基板の表面の導電膜、または基板の裏面の導電膜を、均一に除去することができる。つまり、基板の表面または裏面に導電膜が残ることなく、基板の表面または裏面から導電膜を除去することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかる電気光学装置の製造方法において、前記工程Cと前記工程Dとの間に、純水による洗浄工程を有することが好ましい。
【0013】
これによれば、供給された混酸や、エッチングにより生じた異物が、基板上から除去されるので、その後に供給する第2の薬剤であるバッファードフッ化水素酸によるエッチングがより効果的となる。
【0014】
[適用例4]上記適用例にかかる電気光学装置の製造方法において、前記第1の導電膜除去工程および前記第2の導電膜除去工程の少なくとも一方を、2回以上繰返し実施することが好ましい。
【0015】
これによれば、導電膜を除去する際に、上記工程C,Dを2回以上繰返し実施するので、導電膜が基板の表面または裏面に残ることなく、基板の表面または裏面から導電膜を除去することが、より確実になる。
【0016】
[適用例5]本適用例にかかるエッチング方法は、導電膜が形成された基板を回転させる工程と、前記基板を回転させた状態で、前記基板に、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸を供給して前記導電膜をエッチングする工程と、前記基板を回転させた状態で、前記基板に、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸を供給して酸化された前記導電膜をエッチングする工程とを有していることを要旨とする。
【0017】
これによれば、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸によりエッチングした後、バッファードフッ化水素酸によりエッチングを行うため、混酸だけによるエッチングを続けることに起因するエッチングレートの低下を抑制することができる。これにより、基板の表面の導電膜、または基板の裏面の導電膜を、均一に除去することができる。つまり、基板の表面または裏面に導電膜が残ることなく、基板の表面または裏面から導電膜を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
ここで、以下に示す実施の形態において電気光学装置は、液晶装置を例に挙げて説明する。また、液晶装置において対向して配置される2枚の基板のうち、一方の基板は素子基板(以下、「TFT基板」と記す)として説明する。そして、他方の基板はTFT基板に対向する対向基板として説明する。
(実施形態)
【0019】
まず、本実施形態の製造方法にかかる液晶装置の全体の構成について、図1から図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかる液晶装置の概略平面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、一つの画素に着目した図1の液晶装置の模式的断面図である。
【0020】
図1および図2に示すように、液晶装置100は、TFT基板10と、対向基板20と、液晶50と、シール材52とを備えている。TFT基板10と対向基板20とは、対向して配置され、シール材52によって貼り合わされている。TFT基板10と対向基板20との間の内部空間に、電気光学物質である液晶50を介在させて構成される。
そして、TFT基板10および対向基板20は、たとえば石英またはガラスなどからなる。
【0021】
TFT基板10の基板上の液晶50と接する一方の面10f側に、液晶装置100の表示領域40を構成するTFT基板10の表示領域10hが構成されている。また、表示領域10hに、画素を構成する対向電極21とともに液晶50に駆動電圧を印加する電極である画素電極(ITO)9aがマトリクス状に配置されている。
【0022】
そして、対向基板20の基板上の液晶50と接する一方の面20fの全面に、液晶50に画素電極9aとともに駆動電圧を印加する電極である対向電極(ITO)21が設けられている。そして、対向電極21のTFT基板10の表示領域10hに対向する位置の液晶50と接する一方の面20f側に、液晶装置100の表示領域40を構成する対向基板20の表示領域20hが構成されている。
【0023】
TFT基板10の画素電極9a上に、ラビング処理が施された配向膜16が設けられており、また、対向基板20上の全面にわたって形成された対向電極21上にも、ラビング処理が施された配向膜26が設けられている。各配向膜16,26は、たとえば、ポリイミド膜などの透明な有機膜からなる。
【0024】
また、TFT基板10の表示領域10hにおいては、複数本の走査線11a(図3参照)と複数本のデータ線6a(図3参照)とが交差するように配線され、走査線11aとデータ線6aとで区画された領域に画素電極9aがマトリクス状に配置される。そして、走査線11aとデータ線6aとの各交差部分に対応してスイッチング素子である薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す)30(図3参照)が設けられ、このTFT30毎に画素電極9aが電気的に接続されている。
【0025】
TFT30は走査線11aのON信号によってオンとなり、これにより、データ線6aに供給された画像信号が画素電極9aに供給される。この画素電極9aと対向基板20に設けられた対向電極21との間の電圧が液晶50に印加される。
【0026】
また、画素電極9aと並列に、蓄積容量70(図3参照)が設けられており、蓄積容量70によって、画素電極9aの電圧は、ソース電圧が印加された時間よりもたとえば3桁も長い時間の保持が可能となる。また、蓄積容量70によって、電圧保持特性が改善され、コントラスト比の高い画像表示が可能となる。
【0027】
対向基板20に、TFT基板10の表示領域10hおよび対向基板20の表示領域20hの外周を、画素領域において規定し区画することにより、表示領域40を規定する額縁としての遮光膜53が設けられている。
【0028】
液晶50がTFT基板10と対向基板20との間の空間に、既知の液晶注入方式で注入される場合、シール材52は、シール材52の一辺の一部において欠落して塗布されている。
【0029】
シール材52の欠落した箇所は、この欠落した箇所から貼り合わされたTFT基板10および対向基板20との間に液晶50を注入するための液晶注入口108を構成している。液晶注入口108は、液晶注入後、封止材109で封止される。
【0030】
シール材52の外側の領域に、TFT基板10の図示しないデータ線に画像信号を所定のタイミングで供給して、このデータ線を駆動するドライバであるデータ線駆動回路101および外部回路との接続のための外部接続端子102が、TFT基板10の一辺に沿って設けられている。
【0031】
この一辺に隣接する二つの辺に沿った、TFT基板10の走査線11aおよびゲート電極3a(図3参照)に、走査信号を所定のタイミングで供給することにより、ゲート電極3aを駆動するドライバである走査線駆動回路103,104が設けられている。走査線駆動回路103,104は、シール材52の内側の遮光膜53に対向する位置において、TFT基板10上に形成されている。
【0032】
また、TFT基板10上に、データ線駆動回路101、走査線駆動回路103,104、外部接続端子102、および上下導通端子107を接続する配線105が、遮光膜53の三辺に対向して設けられている。
【0033】
上下導通端子107は、シール材52のコーナー部の4箇所のTFT基板10上に形成されている。そして、TFT基板10と対向基板20相互間に、下端が上下導通端子107に接触し上端が対向電極21に接触する上下導通材106が設けられており、この上下導通材106によって、TFT基板10と対向基板20との間で電気的な導通がとられている。
【0034】
また、図3に示すように、各薄膜を形成する前の、石英基板、ガラス基板などのTFT基板10を構成する一方の基板の一方の面上に、TFT30や画素電極9aのほか、これらを含む各種の構成が層状の積層構造をなして備えられている。なお、この積層構造、および積層された各層の機能は周知であるため、概略的に説明する。
【0035】
この積層構造は、複数の薄膜である第1層〜第6層に構成されている。基板の一方の面から順に、走査線11aを含む第1層(成膜層)、ゲート電極3aを具備するTFT30などを含む第2層、蓄積容量70を含む第3層、データ線6aなどを含む第4層、シールド層400などを含む第5層、画素電極9aおよび配向膜16などを含む第6層(最上層)からなる。また、第1層〜第6層、それぞれの層との間には、層間絶縁膜がそれぞれ設けられており、走査線11a、ゲート電極3a、蓄積容量70、データ線6a、シールド層400、および画素電極9aのいずれかが短絡することを防止している。
【0036】
第1層に、たとえば、タングステンシリサイドからなる走査線11aが、平面形状がストライプ状となるようパターニングされて成膜されている。また、走査線11aは、TFT30に下側から入射しようとする光を遮る遮光機能をも有している。走査線11a上に、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜などからなる下地絶縁膜12が、たとえば、常圧または減圧CVD法などにより成膜されている。
【0037】
第2層に、ゲート電極3aを含むTFT30が設けられている。TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、たとえばポリシリコン膜などの結晶化シリコン膜からなる半導体層1と、ゲート電極3aと、ゲート電極3aと半導体層1とを絶縁するゲート絶縁膜2とから主要部が構成されている。
【0038】
半導体層1は、ゲート電極3aからの電界によりチャネルが形成されるチャネル領域1aと、低濃度ソース領域1bと、低濃度ドレイン領域1cと、高濃度ソース領域1dと、高濃度ドレイン領域1eとを備えている。そして、第2層に、ゲート電極3aと同一膜として中継電極719が形成されている。
【0039】
下地絶縁膜12を、平面的に見て、半導体層1の両脇に、データ線6aに沿って延びる半導体層1のチャネル長と同じ幅の溝(コンタクトホール)12cvが掘られている。このコンタクトホール12cvにより、同一行の走査線11aとゲート電極3aとは、同電位となる。
【0040】
第3層に、容量部である蓄積容量70が設けられている。蓄積容量70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1eおよび画素電極9aに電気的に接続された下部電極71と、容量電極300とが、容量となる誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。
【0041】
TFT30からゲート電極3aおよび中継電極719の上、かつ、蓄積容量70の下に、たとえば、窒化シリコン膜または酸化シリコン膜などからなる第1層間絶縁膜41が形成されている。
【0042】
第1層間絶縁膜41に、TFT30の高濃度ソース領域1dとデータ線6aとを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール81が、第2層間絶縁膜42を貫通して開孔されている。
【0043】
また、第1層間絶縁膜41に、TFT30の高濃度ドレイン領域1eと蓄積容量70を構成する下部電極71とを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール83が開孔されている。
【0044】
さらに、この第1層間絶縁膜41に、下部電極71と中継電極719とを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール881が開孔されている。さらに加えて、第1層間絶縁膜41に、中継電極719と第2中継層6a2とを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール882が、第2層間絶縁膜42を貫通して開孔されている。
【0045】
第4層に、データ線6aが設けられている。このデータ線6aは、下層より順に、アルミニウム層41A、窒化チタン層41TN、窒化シリコン膜層401の三層構造を有する膜として形成されている。
【0046】
また、この第4層に、データ線6aと同一膜として、シールド層用中継層6a1および第2中継層6a2が形成されている。また、第2層間絶縁膜42に、シールド層用中継層6a1と容量電極300とを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール801が開孔されている。
【0047】
第5層に、シールド層400が形成されている。また、第5層に、このようなシールド層400と同一膜として、中継層としての第3中継電極402が形成されている。
【0048】
第3層間絶縁膜43に、シールド層400とシールド層用中継層6a1とを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール803、および第3中継電極402と第2中継層6a2とを電気的に接続するために介在されるコンタクトホール804がそれぞれ開孔されている。
【0049】
第6層に、画素電極9aがマトリクス状に形成され、この画素電極9a上に配向膜16が形成されている。そして、この画素電極9a下に、第4層間絶縁膜44が形成されている。また、第4層間絶縁膜44に、画素電極9aおよび第3中継電極402間を電気的に接続するために介在されたコンタクトホール89が開孔されている。
【0050】
以下、本実施形態の液晶装置の製造方法について、図4〜図12を参照して説明する。液晶装置100の製造方法は、素子基板としてのTFT基板10を製造する工程(工程A)と、対向基板20を製造する工程(工程B)と、TFT基板10と対向基板20とを貼り合わせ、TFT基板10と対向基板20との間に液晶50を封入する工程とを有している。
以下、液晶装置100の製造方法は、TFT基板10の製造方法を一例に挙げて説明する。また、各薄膜を形成する前のTFT基板10を構成する基板は、石英から構成された大板の基板に複数構成されている。すなわち、大板の基板の一部が、TFT基板10を構成する基板として説明する。
【0051】
まず、素子基板としてのTFT基板の製造工程(工程A)について説明する。図4は、TFT基板の製造方法の一部を示すフローチャートである。図5は、大板の基板の一方の面または他方の面を、洗浄および乾燥するとともに、大板の基板の一方の面または他方の面から導電膜を除去するスピン装置を示す図である。図6は、図5に示すスピン装置のスピンベースおよび静電チャックピンを示す上面図である。図7は、図5に示すスピン装置を用いて、大板の基板の一方の面または他方の面を、洗浄および乾燥する工程を示す図である。図8は、図7に示す大板の基板の一方の面および他方の面および端面に薄膜を形成した状態を示す図である。図9は、図5に示すスピン装置を用いて、図8に示す大板の基板の一方の面および端面の薄膜を除去する工程を示す図である。図10は、図9に示す大板の基板の一方の面のTFT基板を構成する複数の領域に、それぞれ複数の薄膜を積層して形成した状態を示す図である。図11は、図5に示すスピン装置を用いて、図10に示す大板の基板の他方の面の薄膜を除去する工程を示す図である。図12は、図4の一部を示すフローチャートである。
【0052】
まず、図4に示すステップS1において、図5に示すスピン装置150を用いて、石英から構成された大板の基板(以下、「マザー基板」と記す)110に、洗浄処理を施す。その後、アニール処理または乾燥処理を施す。
【0053】
ここで、スピン装置150の構成を簡単に説明する。
スピン装置150は、図5および図6に示すように、たとえば円板状のステージ台である回転自在なスピンベース151と、このスピンベース151の外周に、たとえば等間隔に8個固定された大板の基板保持用の静電チャックピン152と、スピンベース151と平面上略同じ大きさを有する円板状の回転自在なシールド板153とにより主要部が構成されている。このような構成を有するスピン装置150としては、大日本スクリーン製造株式会社のMP3000が一例として挙げられる。
【0054】
スピンベース151の回転中心に、8個の静電チャックピン152に保持されたマザー基板110の他方の面110rに、薬剤としての各液体を供給する液体供給管路161の供給口161kが開口されている。ここで、液体供給管路161の供給口161kからは、50%濃度のフッ酸(HF)と、60%濃度の硝酸(HNO3)とを体積比1:60で混合した薬液である混酸、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸(以下、「BHF」と記す)、および純水(H2O)を供給することができる。
【0055】
シールド板153の回転中心に、8個の静電チャックピン152に保持されたマザー基板110の一方の面110fに、上述の各液体を供給する液体供給管路162の供給口162kが開口されている。
【0056】
8個の静電チャックピン152は、スピンベース151の外周から、上方に延出するよう、スピンベース151の外周に固定されている。そして、スピンベース151が回転した際、8個の静電チャックピン152は、スピンベース151と一緒に回転する。ここで、静電チャックピン152の個数は8個に限定されず、適宜決定することができる。
【0057】
そして、8個の静電チャックピン152の上方への延出端部の近傍に、スピンベース151の内周方向に突出する載置部152tがそれぞれ形成されている。8個の載置部152tの各上面に、マザー基板110の他方の面110rの外周部位が当接されることにより、マザー基板110は、8個の静電チャックピン152の各載置部152tに載置されている。
【0058】
また、8個の静電チャックピン152は、スピンベース151の外周から、上方に延出するよう固定されているため、8個の静電チャックピン152の各載置部152tに載置されたマザー基板110は、スピンベース151から、たとえば5mm程度上方に離間して位置している。
【0059】
さらに、8個の静電チャックピン152は、スピンベース151の径方向に移動自在となるよう、スピンベース151に固定されている。このようにして、8個の載置部152tにマザー基板110が載置された後、8個の静電チャックピン152をスピンベース151の内周方向に移動させることにより、8個の載置部152tに載置されたマザー基板110の端面を8個の静電チャックピン152の各内周面で挟持することができる。そして、静電チャックピン152は、確実にマザー基板110を固定して保持することができる。
【0060】
このように構成されたスピン装置150を用いて、図7に示すようにマザー基板110の洗浄処理および乾燥処理を施す。具体的には、マザー基板110を、スピン装置150の8個の静電チャックピン152に固定し、その後、スピンベース151を、たとえば2500rpmで回転させて、マザー基板110を回転させる。この際、シールド板153も回転させる。
【0061】
そして、各液体供給管路161,162の各供給口から液体を供給しない状態で、スピンベース151を、たとえば2500rpmで回転させることにより、洗浄処理後のマザー基板110をスピン乾燥する乾燥処理を施す。このとき、乾燥処理条件は、たとえば60℃で30minとする。ここで、この洗浄処理および乾燥処理は、スピン装置150以外の装置を用いて施してもよい。
【0062】
その後、マザー基板110を、スピン装置150から取り外した後、マザー基板110の歪みを防止するため、マザー基板110に対して、たとえば1000℃の環境下において、300sec程度、N2(窒素)ガスを用いてアニール処理を施す。
【0063】
次に、図4に示すステップS2において、たとえば、既知のバッチ式の縦型のLP−CVD装置などを用いて、図8に示すように、マザー基板110の一方の面110fの全面と他方の面110rの全面に、導電膜であるポリシリコン膜180を、たとえば100nm〜500nmの膜厚に形成する導電膜形成工程を行う。その後、形成されたポリシリコン膜180の膜厚を測定する。
【0064】
このLP−CVD装置を用いたポリシリコン膜180の形成は、たとえば、620℃の環境下において、モノシラン(SiH4)ガスを、LP−CVD装置内に導入することにより行われる。また、マザー基板110の端面110tにも、ポリシリコン膜180が形成される。
【0065】
以下、ポリシリコン膜180について、マザー基板110の一方の面110fに形成されたポリシリコン膜には、符号180fを付与する。そして、他方の面110rに形成されたポリシリコン膜には、符号180rを付与する。さらに、端面110tに形成されたポリシリコン膜には、符号180tを付与する。
【0066】
さらに、ポリシリコン膜180の膜厚は、マザー基板110の他方の面110rに接触傷などが形成されないよう保護するために必要な膜厚、およびマザー基板110を、枚葉式の成膜装置、ドライエッチング装置の各ステージに、静電チャックを用いて固定する際、固定に十分な静電力を発生させるのに必要な膜厚に形成される。
【0067】
LP−CVD装置を用いたマザー基板110に対するポリシリコン膜の形成は、同時に、数枚のマザー基板110に対して行ってもよい。さらに、マザー基板110の一方の面110f、他方の面110rに形成する導電膜は、ポリシリコン膜に限定されず、たとえばリン(P)をドープしたポリシリコンまたはアモルファスシリコンなどの導電膜であってもよい。
【0068】
次に、図4に示すステップS3において、マザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180fを、スピン方式にて除去する第1の導電膜除去工程である第1の導電膜除去工程を行う。ステップS3は、さらに図12のフローチャートに示すステップP1からステップP5を含んでいる。以下、図12に沿って説明する。
【0069】
ステップP1では、フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)とを混合した薬液である混酸によるエッチングを行う。ステップP1は、工程Cに対応する。混酸は、第1の薬剤に対応する。ステップP1では、まずマザー基板110を、スピン装置150の8個の静電チャックピン152に載置して固定する。その後、たとえば2500rpmで、スピンベース151を回転させて、マザー基板110を回転させる。この際、シールド板153も回転させる。
【0070】
その後、図9に示すように、回転するマザー基板110のポリシリコン膜180fの回転中心に、上方から、すなわち、液体供給管路162の供給口162kから、薬剤として、50%濃度のフッ酸(HF)と、60%濃度の硝酸(HNO3)とを体積比1:60で混ぜた薬液である混酸を、23℃の環境下において供給する。混酸の供給時間は、たとえば40secとすることができる。これにより、マザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180fを、ウェットエッチングにより除去する。ここで、ポリシリコン膜180fのエッチングレートは経時的に低下する。これは、硝酸によりポリシリコン膜180fを酸化させてシリコン酸化膜を生成し、フッ酸によりこのシリコン酸化膜をエッチングする際、シリコン酸化膜の生成速度にフッ酸のエッチングが追いつかないためであると考えられる。なお、ステップP1では、ポリシリコン膜180fが完全に除去されなくてもよい。
【0071】
ステップP2では、純水(H2O)による洗浄を行う。ステップP2は、マザー基板110を回転させた状態で、マザー基板110のポリシリコン膜180fの回転中心に、上方から、すなわち、液体供給管路162の供給口162kから純水を供給することによって行う。この工程により、ステップP1において供給された混酸や、エッチングにより生じた異物がマザー基板110上から除去される。
【0072】
ステップP3では、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸(BHF)によるエッチングを行う。ステップP3は、工程Dに対応する。BHFは、第2の薬剤に対応する。より詳しくは、ステップP3では、マザー基板110を回転させた状態で、マザー基板110のポリシリコン膜180fの回転中心に、上方から、すなわち、液体供給管路162の供給口162kから、薬剤として、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸との混合液である薬剤としてのバッファードフッ化水素酸(BHF)を、23℃の環境下において供給する。BHFの供給時間は、たとえば20secとすることができる。これにより、先のステップP1で除去しきれなかったマザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180fを、ウェットエッチングにより除去することができる。すなわち、バッファードフッ化水素酸は、マザー基板110とのエッチング選択性をもって、シリコン酸化膜をエッチングするため、マザー基板110にダメージを与える事が無い。
【0073】
ステップP4では、純水(H2O)による洗浄を行う。より詳しくは、ステップP4では、回転するマザー基板110の一方の面110fおよび他方の面110rの各回転中心に、液体供給管路162の供給口162kおよび液体供給管路161の供給口161kから、純水(H2O)を、たとえば60sec供給し、マザー基板110の一方の面110fおよび他方の面110rの洗浄処理を施す。この際、マザー基板110は、たとえば2500rpmで回転しているため、一方の面110fおよび他方の面110rの全面に、純水(H2O)は供給される。この工程により、ステップP3において供給されたBHFや、エッチングにより生じた異物がマザー基板110上から除去される。
【0074】
ステップP5では、マザー基板110を乾燥処理する。より詳しくは、各液体供給管路161,162の各供給口から液体を供給しない状態で、スピンベース151を、たとえば2500rpmで回転させることにより、洗浄処理後のマザー基板110をスピン乾燥する乾燥処理を施す。このとき、乾燥処理条件は、たとえば60℃で30minとする。ここで、この洗浄処理および乾燥処理は、スピン装置150以外の装置を用いて施してもよい。
【0075】
以上のステップP1からP5を経て、図4におけるステップS3が終了する。
【0076】
なお、ステップP1およびP3においては、マザー基板110は、たとえば2500rpmで回転しているため、ポリシリコン膜180fの全面に、薬液は供給される。そして、一方の面110fに供給された薬液は、端面110tにも液垂れするため、端面110tのポリシリコン膜180tは除去される。ここで、薬液の供給量を増減させることにより、マザー基板110の一方の面110f、端面110tから除去するポリシリコン膜180f,180tの量を可変させることができる。
【0077】
ここで、回転するマザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180fの回転中心に、液体供給管路162の供給口162kから薬液を供給すると略同時に、図9に示すように、回転するマザー基板110の導電膜を除去する面と反対側の面である他方の面110rのポリシリコン膜180rの回転中心に、下方から、すなわち、液体供給管路161の供給口161kから、乾燥ガスであるN2ガスを、たとえば100リットル/分量吐出する。ここで、乾燥ガスは、N2ガスに限らず、単なるエア(Air)であってもよい。また、N2ガスを、マザー基板110の他方の面110rのポリシリコン膜180rに供給する際は、供給口161kの配置または向きなどを適宜設定することにより、マザー基板110全面にN2ガスが広がるように回転中心以外に供給してもよい。
【0078】
このことにより、他方の面110rに吐出されたN2ガスにより、マザー基板110の一方の面110fに供給された薬液が、端面110tより他方の面110r側に回り込んでしまうことを防ぐ。すなわち、一方の面110fのポリシリコン膜180fを除去するに際し、他方の面110rのポリシリコン膜180rが除去されてしまうことを防ぐ。
【0079】
また、ステップP1からP4において、薬剤または純水を、マザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180fに供給する際は、供給口162kの配置または向きなどを適宜設定することにより、マザー基板110全面に薬液または純水が広がるように回転中心以外に供給してもよい。
【0080】
また、ステップP2の洗浄工程は、必要に応じて省略してもよい。
【0081】
第1の導電膜除去工程の後、マザー基板110は、他方の面110rの全面のみに、ポリシリコン膜180rが形成されることになる。ここで、マザー基板110の他方の面110rの全面に、ポリシリコン膜180rを形成したのは、製造工程中、マザー基板110の他方の面110rに接触傷などが形成されてしまうことを形成されたポリシリコン膜180rにより防止するためである。
【0082】
さらに、マザー基板110の他方の面110rの全面に、ポリシリコン膜180rを形成したのは、静電チャックを用いてマザー基板110の他方の面110rを枚葉式の成膜装置、またはエッチング装置の各ステージに載置して、この各ステージにマザー基板110を固定する際、ポリシリコン膜180rにより、マザー基板110とステージとの間に静電力を発生させ、確実にマザー基板110をステージに固定するためである。
【0083】
また、マザー基板110の他方の面110rの全面に、ポリシリコン膜180rを形成したのは、マザー基板110を加熱する際、ポリシリコン膜180rにより、マザー基板110における熱の伝導を均一化させるためである。
【0084】
次に、図4に示すステップS4において、複数の薄膜を積層して層状に形成する薄膜形成工程を行う。図10に示すように、マザー基板110の一方の面110fに、複数のTFT基板10を構成するため、TFT基板10毎に、成膜装置、およびエッチング装置を用いて、図3に示した、複数の薄膜である第1層〜第6層を形成する。この段階で、第6層の配向膜16は形成していない。
【0085】
この第1層〜第6層までの積層工程は、常圧または減圧CVD法などの、周知の方法により実施されるため、その説明は省略する。また、第1層〜第6層を積層して形成する際は、必要に応じて、マザー基板110を、枚葉式の成膜装置、ドライエッチング装置の各ステージに、このステージとマザー基板110の他方の面110rとの間に電圧印加後に発生する静電力を用いる静電チャックにより固定して行う。
【0086】
次に、図4に示すステップS5において、マザー基板110を、スピン装置150から取り外した後、形成された各薄膜の歪みを防止するため、マザー基板110に対して、たとえば300℃の環境下において、300sec程度、N2ガスを用いてアニール処理を施す。
【0087】
この際、マザー基板110の他方の面110rには、ポリシリコン膜180rが形成されているため、熱は、ポリシリコン膜180rにより、マザー基板110に均一に熱伝導される。
【0088】
次に、図4に示すステップS6において、マザー基板110の他方の面110rのポリシリコン膜180rを、スピン方式にて除去する第2の導電膜除去工程である第2の導電膜除去工程を行う。ステップS6は、マザー基板110の他方の面110rに処理を行う点を除けばステップS3と同じであるため説明は省略する。ステップS3と同様に、図12に示すステップP1からP5を含んでいる。
【0089】
ステップS6の後、画素電極9a上に上述した配向膜16を形成し、この配向膜16に既知のラビング処理を施す。その後、マザー基板110から、複数構成された各TFT基板10を、たとえばダイシングにより分断することにより、TFT基板10を複数製造する。なお、TFT基板10は、マザー基板110に1個のみ構成して、分断後、1個のみ形成してもよい。
【0090】
続いて、対向基板20の製造工程(工程B)について説明する。対向基板20の製造工程は、薄膜形成工程(ステップS4)において形成する構成要素の種類を除いて上記のTFT基板10の製造工程と同様である。このため、以下の説明においては、洗浄工程、乾燥工程、アニール処理工程などは、省略して記載する。
【0091】
まず、石英から構成されたマザー基板110の一方の面110fの全面と他方の面110rの全面とに、導電膜であるポリシリコン膜180を、たとえば100nm〜500nmの膜厚に形成する導電膜形成工程を行った後、マザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180fを、スピン装置150にて、一方の面110fの全面から除去する第1の導電膜除去工程を行う。
【0092】
マザー基板110のポリシリコン膜180fが除去された一方の面110fの全面に、対向電極21を形成する薄膜形成工程を行う。この段階では、配向膜26は形成しない。そして、マザー基板110の他方の面110rのポリシリコン膜180rを、スピン装置150にて、他方の面110rの全面から除去する第2の導電膜除去工程を行う。
【0093】
第2の導電膜除去工程の後、マザー基板110の一方の面110fの対向電極21上に上述した配向膜26を形成し、この配向膜26に既知のラビング処理を施す。その後、マザー基板110を、所定の大きさに、たとえばダイシングにより分断することにより、マザー基板110から、複数の対向基板20を分断して対向基板20を複数製造する。対向基板20は、マザー基板110に1個のみ構成して、分断後、1個のみ形成してもよい。
【0094】
このようにして製造されたTFT基板10と対向基板20とを、一方の面10fと他方の面20fとが対向するようシール材52によって貼り合わせて対向配置した後、TFT基板10と対向基板20とのシール材52で囲まれた領域に、既知の液晶注入方式により、液晶50を注入して、液晶装置100を製造する。あるいは、TFT基板10または対向基板20の一方に液晶50を滴下した後にTFT基板10と対向基板20とを貼り合わせることによって、TFT基板10と対向基板20との間に液晶50を封入してもよい。
【0095】
以上のように、本実施形態によれば、ポリシリコン膜180を除去する際に、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸によってエッチングを行った後、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸によるエッチングを行うので、1種類の薬剤によるエッチングを続けることに起因するエッチングレートの低下を抑制することができる。これにより、基板の表面の導電膜、または基板の裏面の導電膜を、均一に除去することができる。つまり、マザー基板110の一方の面110fに形成されたポリシリコン膜180f、および他方の面110rに形成されたポリシリコン膜180rが残ることなく、且つマザー基板110にダメージを与えることなく、マザー基板110の一方の面110fのポリシリコン膜180f、および他方の面110rのポリシリコン膜180rを除去することができる。
【0096】
本実施形態によれば、供給された混酸や、エッチングにより生じた異物が、マザー基板110上から除去されるので、その後に供給する第2の薬剤であるバッファードフッ化水素酸によるエッチングがより効果的となる。
【0097】
以下、上述の実施形態における第1の導電膜除去工程および第2の導電膜除去工程に関する変形例を記載する。
(変形例1)
【0098】
変形例1が、上述の実施形態にかかる電気光学装置の製造方法に対して相違する点は、第1の導電膜除去工程および第2の導電膜除去工程の少なくともいずれかを2回以上実施することである。
【0099】
これによれば、2回以上繰返し実施するので、導電膜であるポリシリコン膜180がマザー基板110の一方の面110fおよび他方の面110rに残ることなく、マザー基板110の一方の面110fおよび他方の面110rからポリシリコン膜180を除去することが、より確実になる。さらに、端面110tに形成されたポリシリコン膜180tについても、除去することができる。
(変形例2)
【0100】
マザー基板110の一方の面110fにポリシリコン膜180を形成せず、静電チャックでマザー基板110を固定できる場合、導電膜形成工程において、他方の面110rだけにポリシリコン膜180を形成し、第1の導電膜除去工程を省略して、第2の導電膜除去工程のみを行うことができる。
(変形例3)
【0101】
ステップS3およびS6において用いるエッチング方法は、電子機器の製造工程に限らず半導体装置の製造工程などに用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
液晶装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、上記課題の少なくとも一部を解決できる範囲での変形、改良などは前述の実施形態に含まれるものである。
たとえば、上述した液晶装置は、TFT(薄膜トランジスタ)などのアクティブ素子(能動素子)を用いたアクティブマトリクス方式の液晶表示モジュールを例に挙げて説明したが、これに限らず、TFD(薄膜ダイオード)などのアクティブ素子(能動素子)を用いたアクティブマトリクス方式の液晶表示モジュールであってもよい。
【0103】
さらに、本実施の形態においては、電気光学装置は、液晶装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、エレクトロルミネッセンス装置、特に、有機エレクトロルミネッセンス装置、無機エレクトロルミネッセンス装置などや、プラズマディスプレイ装置、FED(Field Emission Display)装置、SED(Surface-Conduction Electron-Emitter Display)装置、LED(発光ダイオード)表示装置、電気泳動表示装置、薄型のブラウン管または液晶シャッターなどを用いた表示装置などの各種電気光学装置に適用できる。
【0104】
また、電気光学装置は、半導体基板に素子を形成する表示用デバイス、たとえばLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などであってもよい。LCOSでは、素子基板として単結晶シリコン基板を用い、画素や周辺回路に用いるスイッチング素子としてトランジスタを単結晶シリコン基板に形成する。また、画素には、反射型の画素電極を用い、画素電極の下層に画素の各素子を形成する。
【0105】
また、電気光学装置は、片側の基板の同一層に、一対の電極が形成される表示用デバイス、たとえばIPS(In-Plane Switching)や、片側の基板において、絶縁膜を介して一対の電極が形成される表示用デバイスFFS(Fringe Field Switching)などであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本実施形態にかかる液晶装置の概略平面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】一つの画素に着目した図1の液晶装置の模式的断面図。
【図4】TFT基板の製造方法の一部を示すフローチャート。
【図5】大板の基板の表面または裏面を、洗浄および乾燥するとともに、大板の基板の表面または裏面から導電膜を除去するスピン装置を示す図。
【図6】図5に示すスピン装置のスピンベースおよび静電チャックピンを示す上面図。
【図7】図5に示すスピン装置を用いて、大板の基板の表面または裏面を、洗浄および乾燥する工程を示す図。
【図8】図7に示す大板の基板の表面および裏面および端面に薄膜を形成した状態を示す図。
【図9】図5に示すスピン装置を用いて、図8に示す大板の基板の表面および端面の薄膜を除去する工程を示す図。
【図10】図9に示す大板の基板の表面のTFT基板を構成する複数の領域に、それぞれ複数の薄膜を積層して形成した状態を示す図。
【図11】図5に示すスピン装置を用いて、図10の大板の基板の裏面の薄膜を除去する工程を示す図。
【図12】図4の一部を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0107】
9a…画素電極、10…TFT基板、10f…TFT基板の表面、20…対向基板、21…対向電極、30…TFT、40…表示領域、50…液晶、52…シール材、100…液晶装置、110…マザー基板、110f…マザー基板の表面、110r…マザー基板の裏面、110t…マザー基板の端面、180…ポリシリコン膜、180f…表面のポリシリコン膜、180r…裏面のポリシリコン膜、180t…端面のポリシリコン膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子基板を製造する工程Aと、
対向基板を製造する工程Bと、
前記素子基板と前記対向基板とを貼り合わせ、前記素子基板と前記対向基板との間に電気光学物質を封入する工程と、を有する電気光学装置の製造方法であって、
前記工程Aまたは前記工程Bにおいて、
基板の一方の面、および他方の面に導電膜を形成する導電膜形成工程と、
前記基板の前記一方の面の前記導電膜を除去する第1の導電膜除去工程と、
前記基板の前記一方の面に、薄膜を層状に形成する薄膜形成工程と、
前記薄膜を形成した後に、前記基板の前記他方の面の前記導電膜を除去する第2の導電膜除去工程とを備え、
前記第1の導電膜除去工程または前記第2の導電膜除去工程は、
前記基板上に第1の薬剤を供給し、前記導電膜をエッチングする工程Cと、
前記基板上に第2の薬剤を供給し、前記工程Cにより酸化された前記導電膜をエッチングする工程Dとを有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置の製造方法において、
前記第1の薬剤は、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸であり、
前記第2の薬剤は、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気光学装置の製造方法において、
前記工程Cと前記工程Dとの間に、純水による洗浄工程を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法において、
前記第1の導電膜除去工程および前記第2の導電膜除去工程の少なくとも一方を、2回以上繰返し実施することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
導電膜が形成された基板を回転させる工程と、
前記基板を回転させた状態で、前記基板に、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸を供給して前記導電膜をエッチングする工程と、
前記基板を回転させた状態で、前記基板に、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸を供給して酸化された前記導電膜をエッチングする工程とを有していることを特徴とするエッチング方法。
【請求項1】
素子基板を製造する工程Aと、
対向基板を製造する工程Bと、
前記素子基板と前記対向基板とを貼り合わせ、前記素子基板と前記対向基板との間に電気光学物質を封入する工程と、を有する電気光学装置の製造方法であって、
前記工程Aまたは前記工程Bにおいて、
基板の一方の面、および他方の面に導電膜を形成する導電膜形成工程と、
前記基板の前記一方の面の前記導電膜を除去する第1の導電膜除去工程と、
前記基板の前記一方の面に、薄膜を層状に形成する薄膜形成工程と、
前記薄膜を形成した後に、前記基板の前記他方の面の前記導電膜を除去する第2の導電膜除去工程とを備え、
前記第1の導電膜除去工程または前記第2の導電膜除去工程は、
前記基板上に第1の薬剤を供給し、前記導電膜をエッチングする工程Cと、
前記基板上に第2の薬剤を供給し、前記工程Cにより酸化された前記導電膜をエッチングする工程Dとを有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置の製造方法において、
前記第1の薬剤は、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸であり、
前記第2の薬剤は、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気光学装置の製造方法において、
前記工程Cと前記工程Dとの間に、純水による洗浄工程を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法において、
前記第1の導電膜除去工程および前記第2の導電膜除去工程の少なくとも一方を、2回以上繰返し実施することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
導電膜が形成された基板を回転させる工程と、
前記基板を回転させた状態で、前記基板に、フッ酸と硝酸とを混合した薬液である混酸を供給して前記導電膜をエッチングする工程と、
前記基板を回転させた状態で、前記基板に、フッ化アンモニウムとフッ化水素酸とを混合した薬液であるバッファードフッ化水素酸を供給して酸化された前記導電膜をエッチングする工程とを有していることを特徴とするエッチング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−75501(P2009−75501A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246674(P2007−246674)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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