説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】液晶装置等の電気光学装置において、ガラス基板上に形成されたタングステン膜の剥がれを防止し、高品位な画像を表示可能とする。
【解決手段】電気光学装置は、ガラス基板(10)上に、複数の画素電極(9a)と、該複数の画素電極を駆動するための配線又は電極の少なくとも一部を構成するタングステン膜(11a)と、前記ガラス基板及び前記タングステン膜間に設けられると共にチタンナイトライド又はタングステンナイトライドからなり、前記ガラス基板及び前記タングステン膜を相互に接着する接着層(200)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた、例えば液晶プロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置は、ガラス基板上に、画素電極と、該画素電極の選択的な駆動を行うための走査線、データ線、及び画素スイッチング用素子としてのTFT(Thin Film Transistor)とを備え、アクティブマトリクス駆動可能に構成される。そして、ガラス基板上には、これら走査線やデータ線、TFT等を夫々構成する導電膜や半導体膜等の各種機能膜が積層された積層構造が形成される。この積層構造における例えば最上層に画素電極が配置される。また、高コントラスト化等を目的として、TFTと画素電極との間に蓄積容量が設けられることがある。更に、この種の電気光学装置では、TFTを構成する半導体膜に光が入射すると、光リーク電流が発生し、表示品質が低下してしまうことから、電気光学装置の耐光性を高めるために該半導体膜の周囲に遮光膜としてタングステン膜が設けられることがある。このようなタングステン膜は、ガラス基板上の積層構造における最下層に(ガラス基板の直上に)形成されることが多い。タングステン膜は、融点が比較的高く、タングステン膜を形成した後に高温プロセスを行うことによって溶融されにくいので、積層構造における最下層に設けられる遮光膜として適している。即ち、例えば、遮光膜としてタングステン膜を形成した後にTFTを形成する場合において、TFTを構成する半導体膜を、減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の比較的高温な環境下で行われるプロセスで形成する際に、遮光膜が溶融してしまうこと防止できる。
【0003】
例えば特許文献1では、電界発光素子において、密着性の低い2層間に接着層を設けて接合状態の改善を行う技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−191000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したようにガラス基板の直上にタングステン膜を形成する場合、タングステン膜を形成した後の高温プロセスによって、タングステン膜がガラス基板から剥がれてしまうおそれがあるという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、ガラス基板上に形成されたタングステン膜の剥がれを防止でき、高品位な画像を表示可能な電気光学装置及び該電気光学装置を具備してなる電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、ガラス基板上に、複数の画素電極と、該複数の画素電極を駆動するための配線又は電極の少なくとも一部を構成するタングステン膜と、前記ガラス基板及び前記タングステン膜間に設けられると共にチタンナイトライド又はタングステンナイトライドからなり、前記ガラス基板及び前記タングステン膜を相互に接着する接着層とを備えたことを特徴とする電気光学装置。
【0008】
本発明に係る電気光学装置によれば、その動作時には、例えばデータ線から画素電極へ画像信号が制御され、例えばアクティブマトリクス方式による画像表示が可能となる。尚、画像信号は、例えばデータ線及び画素電極間に電気的に接続されたトランジスタがオンオフされることによって、所定のタイミングでデータ線からトランジスタを介して画素電極に供給される。画素電極は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料からなる透明電極であり、例えば、データ線及び走査線の交差に対応して、基板上において表示領域となるべき領域にマトリクス状に複数設けられている。
【0009】
本発明では、タングステン(W)膜は、複数の画素電極を駆動するための配線又は電極の少なくとも一部を構成するように形成されている。ここで、「複数の画素電極を駆動するための配線」は、例えばデータ線、走査線など、例えば画像信号、走査信号等の電気信号を供給する機能を有する配線のほか、電気信号を供給する機能を有さなくても、当該電気光学装置に入射する光を遮る機能を有する配線(即ち、遮光配線)を含む趣旨である。また、「複数の画素電極を駆動するための電極」は、例えば、高コントラスト化等を目的として画素電極に電気的に接続された蓄積容量を構成する容量電極が該当する。
【0010】
本発明では特に、タングステン膜は、例えば石英(SiO2)ガラス等からなるガラス基板上に、チタンナイトライド(TiN)又はタングステンナイトライド(WN)からなる接着層によって接着されている。よって、ガラス基板とタングステン膜との密着性が低いことに起因して、ガラス基板からタングステン膜が剥離(即ちピーリング)してしまうことを低減或いは防止できる。即ち、ガラス基板及びタングステン膜のいずれとも密着性の高いチタンナイトライド又はタングステンナイトライドからなる接着層によって、ガラス基板とタングステン膜とを互いに確実に接着させることができる。従って、例えば、タングステン膜を形成した後にトランジスタを形成する場合において、トランジスタを構成する半導体膜を、減圧CVD法等の比較的高温な環境下で行われるプロセスで形成する際に、タングステン膜が剥離してしまうことを低減或いは防止できる。これにより、例えば、タングステン膜が剥離してしまい、タングステンが配線又は電極として機能しなくなることを低減或いは防止できる。この結果、当該電気光学装置の動作に不具合が生じるのを防止でき、高品位な画像表示が可能となる。
【0011】
以上説明したように、本発明の電気光学装置によれば、ガラス基板上に形成されたタングステン膜が、ガラス基板から剥離してしまうのを低減或いは防止できる。この結果、高品位な画像表示が可能となる。
【0012】
本発明の電気光学装置の一態様では、前記タングステン膜よりも上層側に配置され、前記画素電極に電気的に接続されたトランジスタを備え、前記タングステン膜は、前記基板上で平面的に見て、前記トランジスタに少なくとも部分的に重なるように形成される。
【0013】
この態様によれば、画素電極に電気的に接続されたトランジスタが、タングステン膜よりも上層側に配置されており、タングステン膜は、基板上で平面的に見て、トランジスタと部分的に重なるように形成されている。よって、タングステン膜は、トランジスタに光が入射するのを低減或いは防止する遮光膜として機能することができる。従って、トランジスタに光が入射し、光リーク電流が生じてしまうことを抑制できる。これにより、例えば光リーク電流の発生に起因して生じるフリッカ等の表示不良を低減できる。即ち、装置の信頼性を高めることが可能である。
【0014】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記タングステン膜よりも上層側に配置され、前記画素電極に電気的に接続された蓄積容量を備える。
【0015】
この態様によれば、その動作時には、蓄積容量によって、画素電極に保持された電荷がリークしてしまうのを低減或いは防止できる。即ち、画素電極における電位保持特性が向上する。従って、高いコントラストで画像を表示することが可能となる。
【0016】
尚、蓄積容量を形成する際には、例えばリーク電流の発生を抑制するために、蓄積容量を構成する誘電体膜や金属膜に、比較的高温な環境下で行われる焼成処理が施される場合がある。ここで本態様では特に、タングステン膜は、ガラス基板上に、チタンナイトライド又はタングステンナイトライドからなる接着層によって接着されているので、焼成処理によって、タングステン膜が剥離するのを低減或いは防止することができる。
【0017】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置を具備する。
【0018】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、信頼性が高く、高品位な画像表示可能な、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置、電子放出装置(Field Emission Display及びConduction Electron-Emitter Display)、これら電気泳動装置、電子放出装置を用いた表示装置を実現することも可能である。
【0019】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
【0021】
<1:電気光学装置>
<1−1:電気光学装置の全体構成>
先ず、本実施形態に係る液晶装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る液晶装置の構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。
【0022】
図1及び図2において、本実施形態に係る液晶装置では、本発明に係る「ガラス基板」の一例としてのTFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0023】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
【0024】
図1において、シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0025】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0026】
TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0027】
TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。画素電極9aは、ITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明導電膜からなり、配向膜は、ポリイミド膜などの有機膜からなる。他方、対向基板20上には、格子状又はストライプ状の遮光膜23が形成された後に、その全面に亘って対向電極21が設けられており、更には最上層部分に配向膜が形成されている。対向電極21は、ITO膜などの透明導電膜からなり、配向膜は、ポリイミド膜などの有機膜からなる。このように構成され、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
【0028】
尚、ここでは図示しないが、TFTアレイ基板10上には、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104の他に、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等が形成されていてもよい。
【0029】
<1−2:画素部の電気的な構成>
次に、本実施形態に係る液晶装置の画素部における電気的な構成について、図3を参照して説明する。ここに図3は、液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【0030】
図3において、画像表示領域10a(図1参照)を構成するマトリクス状に形成された複数の画素の各々には、画素電極9a及びTFT30が形成されている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、本実施形態に係る液晶装置の動作時に画素電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。尚、TFT30は、本発明に係る「トランジスタ」の一例である。また、データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0031】
TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、本実施形態に係る液晶装置は、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0032】
液晶層50(図2参照)を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。
【0033】
ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極21(図2参照)との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。蓄積容量70は、画像信号の供給に応じて各画素電極9aの電位を一時的に保持する保持容量として機能する容量素子である。蓄積容量70の一方の電極は、画素電極9aと並列してTFT30のドレインに接続され、他方の電極は、定電位となるように、電位固定の容量線300に接続されている。蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカの低減といった表示特性の向上が可能となる。
【0034】
<1−3:画素部の具体的構成>
次に、上述の動作を実現する画素部の具体的構成及び本実施形態特有の効果について、図4及び図5を参照して説明する。ここに図4は、TFTアレイ基板上の画素部に係る部分構成を表す平面図である。図5は、図4のA−A´線断面図である。尚、図5においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。図4及び図5では、説明の便宜上、画素電極9aより上側に位置する部分の図示を省略している。
【0035】
図4及び図5において、上述した画素部の各回路要素は、パターン化され、積層された導電膜としてTFTアレイ基板10上に構築されている。TFTアレイ基板10は、石英ガラス(SiO2)によって構成されており、例えばガラス基板や石英基板からなる対向基板20と対向配置されている。また、各回路要素は、下から順に、下側遮光膜11aを含む第1層、TFT30等を含む第2層、蓄積容量70等を含む第3層、データ線6a等を含む第4層、画素電極9a等を含む第5層からなる。第1層−第2層間には下地絶縁膜12、第2層−第3層間には第1層間絶縁膜41、第3層−第4層間には第2層間絶縁膜42、第4層−第5層間には第3層間絶縁膜43がそれぞれ設けられ、前述の各要素間が短絡することを防止している。
【0036】
第1層は、下側遮光膜11aで構成されている。下側遮光膜11aは、本発明に係る「タングステン膜」の一例であり、タングステン(W)から形成されている。下側遮光膜11aは、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに、格子状に設けられている(図4参照)。下側遮光膜11aは、TFTアレイ基板10上で平面的に見て、画素電極9aに対応する各画素の開口領域(即ち、各画素において、表示に実際に寄与する光が透過又は反射される領域)を囲む非開口領域内に配置されている。即ち、下側遮光膜11aは、表示の妨げとならないように、各画素の開口領域ではなく、非開口領域内に配置されている。
【0037】
尚、下側遮光膜11aは、タングステンと例えばチタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属のうちの少なくとも一つとの合金、又は、タングステンとこれら高融点金属との積層体等により形成してもよい。
【0038】
下側遮光膜11aは、TFT30の下層側に(図5参照)、チャネル領域1a´に対向する領域を含むように配置されている(図4参照)。よって、下側遮光膜11aによって、TFTアレイ基板10における裏面反射や、複板式のプロジェクタ等で他の液晶装置から発せられ合成光学系を突き抜けてくる光などの、戻り光に対してTFT30のチャネル領域1a´を殆ど或いは好ましくは完全に遮光できる。従って、液晶装置の動作時に、TFT30における光リーク電流は低減され、コントラスト比を向上させることができ、高品位の画像表示が可能となる。
【0039】
尚、下側遮光膜11aは導電性の金属であるタングステンを含んでいるため、例えば、X方向に沿ったストライプ状に形成して走査線として利用するなど、電気信号を供給する配線として利用することも可能である。
【0040】
本実施形態では特に、TFTアレイ基板10と下側遮光膜11aとは、それらの間に設けられたチタンナイトライドからなる接着層200によって相互に接着されている。接着層200を構成するチタンナイトライドは、TFTアレイ基板10を構成するガラス及び下側遮光膜11aを構成するタングステン夫々との接着力が強い。このため、製造プロセスの途中で、比較的高温な環境に装置がおかれたとしても、下側遮光膜11aがTFTアレイ基板10から剥離してしまうのを防止できる。即ち、下側遮光膜11aよりも上層側に配置されるTFT30を構成する半導体層1aを、減圧CVD法等の比較的高温な環境下で行われるプロセスで形成する際に、タングステンからなる下側遮光膜11aが剥離してしまうことを防止できる。尚、上述した接着層200は、チタンナイトライドに代えてタングステンナイトライドから構成されてもよく、その場合も本実施形態と同様の効果が得ることができる。
【0041】
第2層は、TFT30で構成されている。TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造とされ、ゲート電極3b、半導体層1a、ゲート電極3bと半導体層1aを絶縁するゲート絶縁膜を含んだ絶縁膜2(具体的には絶縁膜2a及び2b)を備えている。ゲート電極3bは、走査線3aの一部として形成されており、例えば導電性ポリシリコンから形成されている。走査線3aは、X方向に沿って延びるように形成されている。走査線3aのうちチャネル領域1a´と重なる部分がゲート電極3bとして機能する。ゲート電極3b及び半導体層1a間は、ゲート絶縁膜2によって絶縁されている。半導体層1aは、例えばポリシリコンからなり、チャネル領域1a´、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eからなる。尚、TFT30は、LDD構造を有することが好ましいが、低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cに不純物打ち込みを行わないオフセット構造であってもよいし、ゲート電極3bをマスクとして不純物を高濃度に打ち込んで高濃度ソース領域及び高濃度ドレイン領域を形成する自己整合型であってもよい。
【0042】
下地絶縁膜12は、例えばシリコン酸化膜等からなり、第1層と第2層の層間絶縁機能の他、TFTアレイ基板10の全面に形成されることで、基板表面の研磨による荒れや汚れ等が惹き起こすTFT30の素子特性の変化を防止する機能を有している。
【0043】
尚、本実施形態に係るTFT30は、トップゲート型であるが、ボトムゲート型であってもよい。
【0044】
第3層は、蓄積容量70で構成されている。蓄積容量70は、下側電極71と容量電極300aが誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。
【0045】
容量電極300aは、容量線300の一部として形成されている。容量線300は、画素電極9aが配置された画像表示領域10aからその周囲に延設されている。容量電極300aは、容量線300を介して定電位源と電気的に接続され、固定電位に維持された固定電位側容量電極である。容量電極300a及び下側電極71は、例えばAl(アルミニウム)、Ag(銀)等の金属又は合金を含んだ非透明な金属膜から形成されており、TFT30を遮光する上側遮光膜(内蔵遮光膜)としても機能する。尚、下側電極71は、第1層間絶縁膜41及びゲート絶縁膜2を貫通して開孔されたコンタクトホール83を介して、ソースドレイン領域1eと互いに電気的に接続されている。
【0046】
誘電体膜75は、図5に示すように、TFTアレイ基板10上で平面的に見て画素毎の開口領域の間隙に位置する非開口領域に形成されている、即ち、開口領域に殆ど形成されていない。誘電体膜75は、透過率を考慮せず、誘電率が高いシリコン窒化膜等から形成されている。尚、誘電体膜としては、シリコン窒化膜の他、例えば、酸化ハフニュウム(HfO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化タンタル(Ta2O5)等の単層膜又は多層膜を用いてもよい。
【0047】
上述した蓄積容量70の製造工程においては、下側電極71上に誘電体膜75を積層した後に、誘電体膜75を焼成する焼成処理を施し、誘電体膜の緻密さを向上させることにより、蓄積容量の耐圧を高めるという工程が行われる場合がある。焼成処理は、例えば摂氏1000度を超えるような高温で行われるため、既に配置されているTFTアレイ基板10及び下側遮光膜11a等には、熱による膨張や熔解等が発生する。よって、熱を加えない場合と比較して、積層された下側遮光膜11aがTFTアレイ基板10から剥離する可能性が高くなってしまう。従って、このような高温の熱処理が行われる場合には特に、接着層200の効果が顕著に発揮される。
【0048】
第1層間絶縁膜41は、例えばNSG(ノンシリケートガラス)によって形成されている。その他、第1層間絶縁膜41には、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等を用いることができる。
【0049】
第4層は、データ線6a及び中継層93で構成されている。データ線6a及び中継層93は、蓄積容量70よりも第2層間絶縁膜42を介して上層側に配置されている。第1層間絶縁膜41及び42間には、部分的に絶縁膜49が介在している。
【0050】
データ線6aは、下から順にアルミニウム(Al)、窒化チタン、窒化シリコンの3層膜として形成されている。データ線6aは、TFT30のチャネル領域1a´を部分的に覆うように形成されている。このため、チャネル領域1a´に近接配置可能なデータ線6aによって、上層側からの入射光に対して、TFT30のチャネル領域1a´を遮光できる。また、データ線6aは、第2層間絶縁膜42、絶縁膜49及び第1層間絶縁膜41を貫通するコンタクトホール81を介して、TFT30の高濃度ソース領域1dと電気的に接続されている。
【0051】
中継層93は、データ線6aと同一膜として形成されている。尚、中継層93とデータ線6aとは、夫々が分断されるように形成されている。中継層93は、第2層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール84を介して、下側電極71の延在部と電気的に接続されている。
【0052】
第2層間絶縁膜42は、例えばNSGによって形成されている。その他、第2層間絶縁膜42には、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等を用いることができる。第2層間絶縁膜42の表面は、化学的研磨処理(Chemical Mechanical Polishing:CMP)や研磨処理、スピンコート処理、凹への埋め込み処理等の平坦化処理がなされている。よって、下層側のこれらの要素に起因した凹凸が除去され、第2層間絶縁層42の表面は平坦化されている。尚、このような平坦化処理は、他の層間絶縁膜の表面に対して行ってもよい。
【0053】
第4層の全面には第3層間絶縁膜43が形成され、更にその上に、第5層として画素電極9aが形成されている。画素電極9a(図4中、破線9a´で輪郭が示されている)は、マトリクス状に複数設けられている。画素電極9aの縦横の境界にそれぞれ沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。第3層間絶縁膜43は、例えばNSGによって形成されている。その他、第3層間絶縁膜43には、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等を用いることができる。第3層間絶縁膜43の表面は、第2層間絶縁膜42と同様にCMP等の平坦化処理がなされている。画素電極9aは、第3層間絶縁膜43を貫通するコンタクトホール85を介して、中継層93と電気的に接続されている。画素電極9aの上側表面には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜が設けられている。
【0054】
以上に説明した画素部の構成は、図4に示すように、各画素部に共通である。画像表示領域10a(図1参照)には、かかる画素部が周期的に形成されている。
【0055】
尚、本実施形態では、下側遮光膜11aを本発明の「タングステン膜」の一例として説明したが、「タングステン膜」はこれ以外の遮光膜、或いは配線や電極等として設けられてもよい。即ち、TFTアレイ基板10の直上に接着層200を介して設けられるものであればよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る液晶装置によれば、ガラス基板上に形成されたタングステン膜が、ガラス基板から剥離してしまうのを低減或いは防止できる。この結果、高品位な画像表示が可能となる。
【0057】
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。図6は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。
【0058】
図6に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
【0059】
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0060】
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0061】
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
【0062】
尚、図6を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0063】
また本発明は、上述の実施形態で説明した液晶装置以外にも、シリコン基板上に素子を形成する反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
【0064】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置及び電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態に係る液晶装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】本実施形態に係る液晶装置の画素における各種素子等の等価回路図である。
【図4】本実施形態に係る電気光学装置の画素部の平面図である。
【図5】図4のA−A´線断面図である。
【図6】電気光学装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクタの構成を示す平面図である。である。
【符号の説明】
【0066】
3a…走査線、6a…データ線、9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、11a…下側遮光膜、20…対向基板、21…対向電極、23…遮光膜、30…TFT、50…液晶層、70…蓄積容量、71…下側電極、75…誘電体膜、200…接着層、300a…容量電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に、
複数の画素電極と、
該複数の画素電極を駆動するための配線又は電極の少なくとも一部を構成するタングステン膜と、
前記ガラス基板及び前記タングステン膜間に設けられると共にチタンナイトライド又はタングステンナイトライドからなり、前記ガラス基板及び前記タングステン膜を相互に接着する接着層と
を備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記タングステン膜よりも上層側に配置され、前記画素電極に電気的に接続されたトランジスタを備え、
前記タングステン膜は、前記基板上で平面的に見て、前記トランジスタに少なくとも部分的に重なるように形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記タングステン膜よりも上層側に配置され、前記画素電極に電気的に接続された蓄積容量を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置を具備してなることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−225034(P2008−225034A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62976(P2007−62976)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】