説明

電気機械装置およびそれを用いたアクチュエーター、モーター、ロボット、ロボットハンド。

【課題】電気機械装置を小型化する技術を提供する。
【解決手段】中心軸110と、前記中心軸の外周に沿って配置されたローター磁石123を有し、前記中心軸と前記ローター磁石との間において少なくとも前記中心軸の軸方向の一方に開口した収納空間を有するローター121と、前記ローターの外周に配置されたステーター122と、前記収納空間に配置され、前記ローターと一体に構成された回転数変換機構130と、前記ステーターの内側に配置され、前記回転数変換機構と回転負荷とを接続する負荷接続部133と、前記ステーターと前記負荷接続部との間に設けられたクロスローラーベアリング137とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気機械装置およびそれを用いたアクチュエーター、モーター、ロボット、ロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの関節部位を駆動する動力源としては、通常、モーターが用いられる(下記特許文献1等)。モーターは、一般に、モーターの回転速度やトルクを調整する減速機などの回転機構と接続されて用いられる。ロボットを小型化するためには、モーターやそれに接続される回転機構によって構成される電力と動力とを変換する電気機械装置が、よりコンパクトに構成されることが望ましい。また、ロボットは、物を掴んだり、運んだりするので、ロボットのアームには重力負荷が掛かる。ここで、ロボットのアームは様々な方向を向くため、ロボット用のモーターは、あらゆる方向の荷重負荷に耐えられる高剛性を備えることが望ましい。しかし、これまで、こうした要求に対して十分な工夫がなされてこなかったのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−159847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電気機械装置を小型化、高剛性化する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
電気機械装置であって、中心軸と、前記中心軸の外周に沿って配置されたローター磁石を有し、前記中心軸と前記ローター磁石との間において少なくとも前記中心軸の軸方向の一方に開口した収納空間を有するローターと、前記ローターの外周に配置されたステーターと、前記収納空間に配置され、前記ローターと一体に構成された回転数変換機構と、前記ステーターの内側に配置され、前記回転数変換機構と回転負荷とを接続する負荷接続部と、前記ステーターと前記負荷接続部との間に設けられたクロスローラーベアリングと、を備える、電気機械装置。
この電気機械装置によれば、回転数変換機構の少なくとも一部がローターの収容空間に収容されて、回転を発生させるローターと、それを伝達する回転変換機構とが一体的に構成されるとともに、ステーターと負荷接続部との間にクロスローラーベアリングが設けられているので、電気機械発生装置の小型化、高剛性化が可能となる。
【0007】
[適用例2]
適用例1に記載の電気機械装置であって、前記中心軸は、前記中心軸の軸方向に延びる貫通孔を有し、前記貫通孔には、前記ローターの回転を制御するための電気を送信する導電線が挿通されている、電気機械装置。
この電気機械装置によれば、ローターの回転を制御するための導電線が、中心軸の内部に挿通されるため、導電線の外部への露出が抑制され、導電線の保護性や配設性が向上する。また、電気機械装置が搭載される機器の意匠性が、導電線の露出によって低下してしまうことが抑制される。
【0008】
[適用例3]
適用例2に記載の電気機械装置であって、前記負荷接続部は、前記導電線を案内するハーネスガイドを有する、電気機械装置。
この適用例によれば、負荷接続部がハーネスガイドを有しているので、導電線の摩耗を抑制できる。
【0009】
[適用例4]
適用例1〜3のいずれか1つの適用例に記載の電気機械装置であって、前記回転数変換機構は、前記回転数変換機構の中心部に配置されたサンギアと、前記回転数変換機構の外周部に配置されたアウターギアと、前記サンギアと前記アウターギアとの間に配置されたプラネタリーギアと、前記プラネタリーギアが接続されたプラネタリーキャリアと、を有する遊星ギアを含み、前記回転数変換機構は、前記サンギアと前記アウターギアと前記プラネタリーキャリアの3つのうちの1つが前記ローター磁石と接続または一体に形成される入力部であり、残り2つのうちの1つが前記ステーターと接続または一体に形成される固定部であり、残りの1つが前記負荷接続部と接続または一体に形成される出力部である、電気機械装置。
この電気機械装置によれば、遊星ギアとローターとが一体的に構成されるため、電気機械装置が小型化される。
【0010】
[適用例5]
適用例1〜3のいずれか1つの適用例に記載の電気機械装置であって、前記回転数変換機構は、前記回転数変換機構の中心部に配置されたウェーブジェネレーターと、前記回転数変換機構の外周部に配置されたサーキュラスプラインと、前記ウェーブジェネレーターと前記サーキュラスプラインとの間に配置されたフレックススプラインと、を有するハーモニックドライブ機構(「ハーモニックドライブ」は登録商標)を含み、前記回転数変換機構は、前記ウェーブジェネレーターと、前記サーキュラスプラインと、前記フレックススプラインの3つのうちの1つが前記ローター磁石と接続または一体に形成される入力部であり、残り2つのうちの1つが前記ステーターと接続または一体に形成される固定部であり、残りの1つが前記負荷接続部と接続または一体に形成される出力部である、電気機械装置。
この電気機械装置によれば、ハーモニックドライブ(登録商標)機構とローターとが一体的に構成されるため、電気機械装置が小型化される。
【0011】
[適用例6]
適用例1〜3のいずれか1つの適用例に記載の電気機械装置であって、前記回転数変換機構は、外縁にエピトコロイド平行曲線形状を有し中心に形成された第1の孔と前記第1の孔の周りに形成された複数の第2の孔とを有する曲線板と、前記曲線板の前記エピトコロイド平行曲線と接するように配置される外ピンと、前記第2の孔の中に配置される内ピンと、前記第1の孔の中に配置される偏心体と、を有するサイクロ機構を含み、前記偏心体と前記外ピンと前記内ピンの3つのうちの1つが前記ローター磁石と接続または一体に形成される入力部であり、残り2つのうちの1つが前記ステーターと接続または一体に形成される固定部であり、残りの1つが前記負荷接続部に接続または一体に形成される出力部である、電気機械装置。
この電気機械装置によれば、サイクロ機構とローターとが一体的に構成されるため、電気機械装置が小型化される。
【0012】
[適用例7]
適用例1〜6のいずれか一つに記載の電気機械装置において、さらに、ローターと一体に形成されたエンコーダーを備える、電気機械装置。
この電気機械装置によれば、エンコーダーとローターとが一体的に構成されるため、電気機械装置が小型化される。
【0013】
[適用例8]
アクチュエーターであって、適用例1〜7のいずれか一つに記載の電気機械装置を備える、アクチュエーター。
このアクチュエーターによれば、駆動源として小型化された電気機械装置を用いるため、よりコンパクトな構成とすることが可能である。
【0014】
[適用例9]
モーターであって、中心軸と、前記中心軸の外周に沿って配置されたローター磁石を有し、前記中心軸と前記ローター磁石との間において少なくとも前記中心軸の軸方向の一方に開口した収納空間を有するローターと、前記ローターの外周に配置されたステーターと、
前記収納空間に配置され、前記ローターに接続された回転数変換機構と、前記ステーターの内側に配置され、前記回転数変換機構と回転負荷とを接続する負荷接続部と、前記ステーターと前記負荷接続部との間に設けられたクロスローラーベアリングと、を備える、モーター。
このモーターであれば、ローターと回転機構とをよりコンパクトに一体的化して構成するとともにモーターの高剛性化が可能である。
【0015】
[適用例10]
ロボットであって、基部と、前記基部を移動させるための駆動部と、を備え、前記駆動部は、適用例1〜7のいずれか一つに記載の電気機械装置を含む、ロボット。
【0016】
[適用例11]
ロボットであって、基部と、前記基部に対して相対的に運動する運動部と、前記運動部を前記基部に対して運動させる駆動部と、を備え、前記駆動部は、適用例1〜7のいずれか一つに記載の電気機械装置を含む、ロボット。
【0017】
[適用例12]
ロボットハンドであって、基部と、前記基部に配置され、対象物を把持する把持部と、前記把持部を駆動して前記把持部に対して前記対象物を把持させる駆動部と、を備え、前記駆動部は、請求項8に記載のアクチュエーターを含む、ロボットハンド。
【0018】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、モーターや発電装置などの電気機械装置、それを用いたアクチュエーターやロボット、ロボットアーム、移動体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施例におけるロボットアームの構成を示す概略図。
【図2】参考例としてのロボットアームの構成を示す概略図。
【図3】第1実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略断面図。
【図4】第1実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略分解断面図。
【図5A】第1実施例の動力発生装置の内部において回転駆動力が伝達される機構を説明するための模式図。
【図5B】クロスローラーベアリングの構成を示す説明図。
【図6A】第1実施例の他の構成例としての動力発生装置の構成を示す概略図。
【図6B】第1実施例の他の構成例としての動力発生装置の構成を示す概略図。
【図7A】第1実施例の他の構成例としての動力発生装置の構成を示す概略図。
【図7B】第1実施例の他の構成例としての動力発生装置の構成を示す概略図。
【図8A】第1実施例の他の構成例としての動力発生装置の構成を示す概略図。
【図8B】第1実施例の他の構成例としての動力発生装置の構成を示す概略図。
【図9】第2実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略断面図。
【図10】第2実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略分解断面図。
【図11】第2実施例の動力発生装置の二段式の遊星ギアにおいて、回転駆動力が伝達される機構を説明するための模式図。
【図12】第3実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略断面図。
【図13】第3実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略分解断面図。
【図14】第3実施例の動力発生装置の内部において回転駆動力が伝達される機構を説明するための模式図。
【図15】第4実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略断面図。
【図16】第4実施例の動力発生装置の内部構成を示す概略分解断面図。
【図17】第4実施例の動力発生装置の内部において回転駆動力が伝達される機構を説明するための模式図。
【図18】第5実施例の動力発生装置の構成を示す概略断面図。
【図19】第5実施例の動力発生装置に取り付けられる回転軸の種類を例示する概略図。
【図20】本発明の第6実施例としての動力発生装置100Eの内部構成を示す概略断面図である。
【図21】動力発生装置100Eの各構成部を分解して示す概略分解断面図である。
【図22】サイクロ機構を模式的に示す説明図である。
【図23】第6の実施例の変形例としての動力発生装置100Fの構成を示す概略図である。
【図24】第7の実施例としての動力発生装置100Gの構成を示す概略図である。
【図25】永久磁石と電磁コイル群の構成を示す説明図である。
【図26】第8の実施例としての動力発生装置100Hの構成を示す概略図である。
【図27】エンコーダーの構成の一例を示す説明図である。
【図28】エンコーダーの構成の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施例:
図1(A),(B)は本発明の一実施例としてのロボットアーム10(「ロボットハンド」とも呼ぶ。)の構成を示す概略図である。図1(A)は、ロボットアーム10の変形態様を示す模式図であり、変形前のロボットアーム10と、変形後のロボットアーム10とが図示されている。なお、図1(A)には、互いに直交する3次元矢印x,y,zが図示されている。
【0021】
ロボットアーム10は、4つの基体部11〜14を備える。4つの基体部11〜14はそれぞれ、第1〜第3の関節部J1〜J3を介して、互いに直列に連結されている。以後、ロボットアーム10において、第1の基体部11側を「後端側」と呼び、第4の基体部14側を「先端側」と呼ぶ。
【0022】
ロボットアーム10は、各関節部J1〜J3における回動により、各基体部11〜14の連結角度が変わり、全体として湾曲状の形態に変形する。なお、図1(A)では、ロボットアーム10の変形後の態様として、ロボットアーム10が紙面上側に向かって湾曲した状態が図示されている。
【0023】
図1(B)は、ロボットアーム10の内部構成を示す概略断面図である。なお、図1(B)には、図1(A)と対応するように三次元矢印x,y,zが図示されている。各基体部11〜14の内部は中空であり、各関節部J1〜J3の動力源である動力発生装置100と、動力発生装置100からの駆動力が伝達される2つのベベルギア(かさ歯車)21,22と、が収容されている。以下では、第1と第2の基体部11,12を連結する第1の関節部J1の構成について説明する。なお、第2と第3の基体部12,13を連結する第2の関節部J2および第3と第4の基体部13,14を連結する第3の関節部J3の構成は、第1の関節部J1の構成と同様であるため、その説明は省略する。
【0024】
動力発生装置100は、電磁力により回転駆動力を発生するモーターを有している。動力発生装置100の詳細な内部構成については後述する。動力発生装置100は、第1の基体部11の先端側に配置されており、第1のベベルギア21の回転軸と接続されている。第1のベベルギア21は、その回転軸が第1と第2の基体部11,12の境界を貫通するように配置され、回転軸の先端に設けられた歯車部(ギア部)が第2の基体部12内に配置されている。
【0025】
第2のベベルギア22は、第2の基体部12の後端側において、そのギア部が第1のベベルギア21のギア部と連結するように、第2の基体部12の内壁面に固定的に取り付けられている。動力発生装置100から伝達された回転駆動力によって、第1のベベルギア21が回転する。第1のベベルギア21の回転により、第2のベベルギア22が回転し、第2の基体部12が回動する。
【0026】
ところで、ロボットアーム10の内部には、各動力発生装置100に電力や制御信号を送信するための導電線の束である導電線束25が挿通されている。具体的には、導電線束25は、後端側から第1の基体部11の内部に挿通され、その一部の導電線が分岐して第1の基体部11内の動力発生装置100の接続部に接続される。そして、残りの導電線束25は、動力発生装置100の中央を通る貫通孔(後述)と、第1のベベルギア21の中心軸を貫通する貫通孔(図示は省略)とを通って、第2の基体部12へと延びる。
【0027】
導電線束25は、第2の基体部12においても、同様に配設されている。即ち、第2の基体部12内部に挿通された導電線束25は、その一部が動力発生装置100に接続され、残りが、動力発生装置100および第1のベベルギア21の内部を通って、第3の基体部13へと挿通される。そして、第3の基体部13に挿通された導電線束25は、動力発生装置100に接続される。
【0028】
図2(A),(B)は、本実施例の参考例としてのロボットアーム10cfを示す概略図である。図2(A),(B)は、導電線束25が動力発生装置100および第1のベベルギア21の外部に配線されている点以外は、図1(A),(B)とほぼ同じである。
【0029】
この参考例のロボットアーム10cfでは、導電線束25が各関節部J1〜J3において外部に露出されている。そのため、ロボットアーム10cfの変形に伴って、各関節部J1〜J3において、導電線束25が各基体部11〜14に挟まれるなどして劣化してしまう可能性がある。また、導電線束25が外部に露出していることにより、ロボットアーム10cfの意匠性を低下させてしまう可能性がある。しかし、本実施例のロボットアーム10であれば、導電線束25の外部に露出していないため、こうした不具合の発生が抑制されている。
【0030】
図3は、動力発生装置100の内部構成を示す概略断面図であり、図4は、動力発生装置100の各構成部を分解して示す概略分解断面図である。なお、図3および図4には、動力発生装置100に接続される第1のベベルギア21の回転軸が破線で図示されている。動力発生装置100は、中心軸110と、モーター部120と、回転機構部130(「回転数変換機構部」とも呼ぶ。)と、を備える。
【0031】
モーター部120と回転機構部130とは、後述するように、互いに勘合して一体化するように配置され、中心軸110は、一体化されたモーター部120と回転機構部130の中央を貫通するように配置される。中心軸110は、軸方向に延びる貫通孔111を有しており、貫通孔111には、導電線束25(ハーネス)が挿通されている。
【0032】
モーター部120は、ローター121と、ステーターとして機能するケーシング122とを備える。モーター部120は、以下に説明するように、ラジアルギャップ型の構成を有している。ローター121の本体部は略円盤形状を有しており、その本体部の側壁の外周面には、永久磁石123(ローター磁石)が円筒形に配列されている。永久磁石123の磁束の方向は、放射方向である。なお、永久磁石123の裏側の面(ローター121の側壁側の面)には、磁力効率を向上させるための磁石バックヨーク125が配置されている。
【0033】
ローター121は、その中央に中心軸110を挿通させるための貫通孔1211を有している。なお、貫通孔1211の内壁面と、中心軸110の外周面との間には、ローター121が中心軸110を中心に回転可能とするための軸受け部112が配置されている。軸受け部112は、例えば、ボールベアリングによって構成することができる。
【0034】
ローター121の回転機構部130と対向する側の面には、貫通孔1211を中心とする略円環状の溝として形成された凹部1212が設けられている。凹部1212の内側は回転機構部130の少なくとも一部を収納するための収納空間となっている。貫通孔1211と凹部1212とを隔てる略円筒状の隔壁1213の外側(凹部1212側)の壁面には、ギア歯121tが形成されている。以後、このローター121の中央に設けられたギア歯121tを有する隔壁1213を「ローターギア1213」と呼ぶ。後述するように、本実施例におけるローターギア1213は、遊星ギアのサンギアとして機能する。
【0035】
ケーシング122は、回転機構部130と対向する側の面が開放された略円筒形状の中空容体であり、ローター121と、回転機構部130の少なくとも一部と、を収容する。ケーシング122は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP;carbon fiber reinforced plastics)などの樹脂材料によって構成されるものとしても良い。これによって、動力発生装置100の軽量化が可能である。
【0036】
ケーシング122の底面の中央には、中心軸110を挿通するための貫通孔1221が形成されている。中心軸110とケーシング122とは互いに固定的に取り付けられる。なお、中心軸110に沿った方向のケーシング122の外側には、中心軸110の保持性を向上させるための軸受けリング113が勘合的に取り付けられている。
【0037】
ケーシング122の内周面には、電磁コイル124が、ローター121の永久磁石123と間隔を有しつつ対向するように円筒形に配列されている。即ち、モーター部120では、電磁コイル124がステーターとして機能し、中心軸110を中心としてローター121を回転させる。なお、電磁コイル124とケーシング122との間には、磁力効率を向上させるためのコイルバックヨーク128が配置されている。
【0038】
ケーシング122の底面には、永久磁石123の位置を検出する位置検出部126と、ローター121の回転を制御するための回転制御回路127が設けられている。位置検出部126は、例えば、ホール素子によって構成され、永久磁石123の周回軌道の位置に対応するように配置されている。位置検出部126は、回転制御回路127と信号線を介して接続されている。なお、位置検出部126は、温度補償機能を有していることが好ましい。
【0039】
回転制御回路127には、導電線束25から分岐した導電線が接続されている。また、回転制御回路127は、電磁コイル124と電気的に接続されている。回転制御回路127は、位置検出部126が出力する検出信号を動力発生装置100の駆動を制御する制御部(図示せず)に送信する。また、回転制御回路127は、制御部からの制御信号に従って、電磁コイル124に電力を供給して磁界を発生させ、ローター121を回転させる。
【0040】
本実施例では、回転機構部130は、ローター121のローターギア1213をサンギアとする遊星ギアを構成しており、減速機として機能する。回転機構部130は、ギア固定部131と、プラネタリーギア132と、負荷接続部133とを備える。プラネタリーギア132の数は、N個(Nは2以上の整数)であり、中心軸110を中心としたN回回転対称位置に配置されている。なお、図3および図4では便宜上、2個のプラネタリーギア132を図示してある。プラネタリーギア132は、回転軸132sと、ギア歯132tと、を有する。
【0041】
ギア固定部131は、内壁面にギア歯131tが設けられた略円環状のギアであるアウターギア1311と、アウターギア1311の外周に突出した鍔部1312とを有している。ギア固定部131は、鍔部1312と、モーター部120のケーシング122の側壁端面とを固定用ボルト114によって締結することにより、モーター部120に固定的に取り付けられる。アウターギア1311は、遊星ギアのアウターギアとして機能する。
【0042】
ギア固定部131のアウターギア1311は、ローター121の凹部1212に収容される。また、アウターギア1311の内周面と、ローターギア1213の外周面との間には、N個のプラネタリーギア132が、ローターギア1213の外周に沿って、ほぼ等間隔で配置される。なお、プラネタリーギア132のギア歯132tと、アウターギア1311のギア歯131tおよびローターギア1213のギア歯121tとが互いに噛み合うことにより、これら3種のギア1213,132,1311は連結される。
【0043】
負荷接続部133は、プラネタリーギア132の回転軸132sと接続されており、プラネタリーキャリアとして機能する略円筒形状の部材である。すなわち、負荷接続部133は、プラネタリーギア132の公転運動を、負荷接続部133自身の回転運動に変換する。負荷接続部133の底面の中央には、貫通孔1331が設けられている。本実施例では、中心軸110の回転機構130側(図面左側)は、貫通孔1331に中心軸110の一部のみが重なる程度に短く形成されており、中心軸110の当該端部には、中心軸110の保持性を向上させるための軸受けリング113が締められている。
【0044】
ここで、ギア固定部131の中央部には、アウターギア1311の内周空間に連通する略円形形状の開口部1313が形成されており、負荷接続部133は、その開口部1313に配置される。本実施例では、開口部1313と、負荷接続部133と、の間には、クロスローラーベアリング137が配置されている。クロスローラーベアリング137は、外輪1371と、内輪1372と、円筒コロ1373と、を備える。クロスローラーベアリング137の構成については、後述する。クロスローラーベアリング137の外輪1371は、穴あき円盤部材1374と固定用ボルト114により、ギア固定部131に固定されている。クロスローラーベアリング137の内輪1372は、穴あき円盤部材1375と固定用ボルト114により負荷接続部133に固定されている。なお、クロスローラーベアリング137の内輪1372と穴あき円盤部材1375との間には、スペーサー1376が設けられている。また、固定用ボルト114は、第1のベベルギア21の回転軸も固定している。穴あき円盤部材1375は、その中心部にハーネスガイド1375aを有しており、導電線束25は、ハーネスガイド1375aを貫通している。ハーネスガイド1375aは、負荷接続部133とともに回転するので、ハーネスガイド1375aを備えることにより、導電線束25(ハーネス)と中心軸110とが擦れたりしない、摩耗が少ない構造を実現できる。なお、穴あき円盤部材1375は、導電線束25を通すための貫通孔を有していれば、ハーネスガイド1375aを有さない構成であってもよい。負荷接続部133のモーター部120側(図3および図4の紙面右側)の底面には、ローター121の凹部1212に収容されたプラネタリーギア132の回転軸132sを回転可能に保持するための軸孔1332が形成されている。
【0045】
図5Aは、動力発生装置100の内部において回転駆動力が伝達される機構を説明するための模式図である。図5Aには、中心軸110の軸方向に沿って動力発生装置100を見たときの、ローターギア1213と、3個のプラネタリーギア132と、アウターギア1311と、負荷接続部133とが模式的に図示されている。なお、図5では、便宜上、各ギア(ローターギア1213、プラネタリーギア132、アウターギア1311)のギア歯(121t、132t、131t)の図示は省略されている。また、プラネタリーギア132の数を3個としたのも便宜上である。
【0046】
ここで、動力発生装置100において、ローター121の回転にともなってサンギアであるローターギア1213が、一点鎖線の矢印で図示する方向に回転する場合を想定する。上述したとおり、アウターギア1311は固定配置されているため、ローターギア1213の回転に伴って、各プラネタリーギア132が、自身の回転軸132sを中心に実線矢印で図示する方向に回転(「自転」とも呼ぶ。)しつつ、ローターギア1213の周りを二点鎖線の矢印で示す方向に周回移動(「公転」とも呼ぶ。)する。各プラネタリーギア132の周回移動に伴って、負荷接続部133が回転し、負荷接続部133に接続された回転負荷(以下、単に「負荷」とも呼ぶ。)である第1のベベルギア21(図1)が回転する。
【0047】
図5Bは、クロスローラーベアリングの構成を示す説明図である。クロスローラーベアリング137は、外輪1371と、内輪1372と、円筒コロ1373と、を備える。外輪1371と内輪1372は、それぞれ、90°のV溝1371a、1372aを有している。円筒コロ1373は、直径と高さが同じ大きさの円筒形をしており、V溝1371a、1372aに、90°の互い違いに配置されている。このような構成をとることにより、外輪1371、内輪1372と、円筒コロ1373との接触が点ではなく、線となるため、強い回転力を伝えることができるとともに、大きな荷重にも耐えられるようになる。例えば、軸の曲げ力(曲げモーメント荷重)、軸スラスト力(軸の長手方向の荷重)のいずれの方向に対しても強い高い剛性を実現することが可能となる。
【0048】
ところで、通常のモーターでは、モーターの応答性を向上させるために、ローターの径を縮小し、そのイナーシャ(モーターイナーシャ)を低減させ、イナーシャ特性を向上させることが好ましい。これに対し、本実施例のモーター部120では、ローター121の径は、回転機構部130を収容可能な程度に拡大されており、モーターイナーシャが増大されている。しかし、本発明の発明者は、本実施例のように、ローター121を大径化し、モーターイナーシャが増大した場合であっても、動力発生装置100の制御に対する過渡応答性の低下は抑制されることを見出した。この理由は、以下のためである。
【0049】
即ち、本実施例の動力発生装置100では、ローター121の径の大型化に伴い、モーター部120において発生するトルクが増大されており、ローター121の回転開始時、回転方向の切り替え時において、回転機構部130に伝達されるトルクが増大されている。従って、動力発生装置100では、モーター部120の回転の変化に対して即応的に回転機構部130を追従させることができ、動力発生装置100の過渡応答性の低下が抑制される。即ち、動力発生装置100では、モーター部120におけるイナーシャ特性の低下が、ローター121の大径化に伴うトルク特性の向上によって補償されている。
【0050】
このように、本実施例の動力発生装置100では、ローター121にサンギアが一体的に設けられ、ローター121に設けられた凹部1212に、プラネタリーギア132と、アウターギア1311とが収容されている。即ち、動力発生装置100は、モーターと減速機である遊星ギアとが、コンパクトに一体化された構成を有しており、この動力発生装置100を用いることにより、ロボットアーム10を小型化・軽量化することが可能である。
【0051】
また、本実施例の動力発生装置100では、ローター121の回転駆動を制御するための導電線束25が、中心軸110の内部に挿通されている。従って、この動力発生装置100を用いることにより、導電線束25の配設性が向上する。また、導電線束25が外部に露出することを回避でき、ロボットアーム10の駆動に伴う導電線束25の劣化を抑制するとともに、ロボットアーム10の意匠性の向上が可能である。また、本実施例の動力発生装置100は、ハーネスガイド1375aを備えており、導電線束25は、ハーネスガイド1375aを貫通している。ハーネスガイド1375aは、負荷接続部133とともに回転するので、ハーネスガイド1375aを備えることにより、導電線束25(ハーネス)と中心軸110とが擦れたりしない、摩耗が少ない構造を実現できる。
【0052】
また、本実施例の動力発生装置100は、開口部1313と、負荷接続部133と、の間にクロスローラーベアリング137を備えている。そのため、本実施例の動力発生装置100は、大きな荷重にも耐えられるようになる。さらに、軸の曲げ力(曲げモーメント荷重)、軸のラジアル方向の力(ラジアル荷重)、軸スラスト力(軸の長手方向の荷重)のいずれの方向に対しても強い高い剛性を実現することが可能となる。
【0053】
B.第1実施例の他の構成例:
図6Aは、第1実施例の他の構成例としての動力発生装置100aの構成を示す概略図である。図6Aに示す構成例は、回転機構部130aのクロスローラーベアリング137の凹部1212側(図面の右側)にブラシシール部140が設けられている点以外は、図3に示す構成例とほぼ同じである。ブラシシール部140は、負荷接続部133の側面と、ギア固定部131の開口部1313の内周面との間に設けられ、動力発生装置100の内部への塵芥の侵入を抑制する。これによって、動力発生装置100の劣化が抑制される。
【0054】
図6Bは、第1実施例の他の構成例としての動力発生装置100bの構成を示す概略図である。図6Bに示す構成例は、ブラシシール部140に換えて、ゴムシール部141が回転機構部130bに設けられている点以外は、図6Aに示す構成例とほぼ同じである。ゴムシール部141は、負荷接続部133の側面と、ギア固定部131の開口部1313の内周面との間に設けられ、動力発生装置100を気密にシールする。これによって、気流による動力発生装置100におけるギアやローターの回転損失を低減することができる。
【0055】
図7Aは、第1実施例の他の構成例としての動力発生装置100cの構成を示す概略図である。図7Aに示す構成例は、ケーシング122に熱交換フィン142が設けられている点以外は、図3に示す構成例とほぼ同じである。熱交換フィン142は、モーター部120のケーシング122の外表面に設けられている。これによって、電磁コイル124におけるコイル電流による発熱を効率的に冷却することができ、モーター部120の出力トルクを増大させることができる。なお、熱交換フィン142と、電磁コイル124のためのコイルバックヨーク128とを直接的に接触するように配置するものとしても良い。これによって、電磁コイル124の発熱に対する放熱効果を向上させることができる。熱交換フィン142に換えて、ケーシング122の外周に冷媒ジャケットを装着させるものとしても良い。なお、回転機構部130の構成は、図3に示す構成と同様である。
【0056】
図7Bは、第1実施例の他の構成例としての動力発生装置100dの構成を示す概略図である。図7Bに示す構成例は、ケーシング122にケーシング144が付加されている。この構成例は、ケーシング122に配置されていた回転制御回路127に換えて、ケーシング144の内部に、制御部143と、通信部143cと、ドライバ回路143dとが設けられている点以外は、図3に示す構成例とほぼ同じである。制御部143は、中央処理装置と主記憶装置とを有するマイクロコンピュータによって構成され、通信部143cと、ドライバ回路143dとを制御する。通信部143cは、外部とのコマンドの通信を実行する。ドライバ回路143dは、制御部143の指令に応じて、電磁コイル124に流す電流を制御する。即ち、この構成例では、動力発生装置100dに一体的に設けられた制御部143、通信部143c、ドライバ回路143dによって、動力発生装置100dを、外部から送信されたコマンド指令に応じて駆動させることができる。なお、回転機構部130の構成は、図3に示す構成と同様である。
【0057】
図8A,8Bは、本実施例の他の構成例としての動力発生装置100e、100fの構成を示す概略図である。図8A,8Bに示す構成例はそれぞれ、負荷接続部133に換えて、2つに分割された負荷接続部133e1、133e2あるいは負荷接続部133f1、133f2が設けられ、第1のベベルギア21の回転軸を示す破線が省略されている点以外は図3に示す構成例とほぼ同じである。図8A,8Bの構成例における動力発生装置100e、100fは、第1実施例の動力発生装置100とは異なり、ロボットアーム10とは異なる構成を有するアクチュエーターやマニピュレーターに用いられる。
【0058】
図8Aに示す構成例では、負荷接続部が負荷接続部133e1、133e2と2つに分割され、負荷接続部133e2は、ギア固定部131から突出した側壁面にギア歯133tが設けられた平歯車と一体的に構成されている点以外は、第1実施例の負荷接続部133(図3)と同様に構成されている。即ち、この構成例では、負荷接続部133e1が、プラネタリーキャリアとして機能するとともに、負荷接続部133e2外部負荷へと回転駆動力を伝達するギアとしても機能する。また、負荷接続部133e2は、固定用ボルト114により、負荷接続部133e1に固定される際に、クロスローラーベアリング137の内輪1372を、スペーサー1376を介して固定する。
【0059】
図8Bに示す構成例は、負荷接続部が負荷接続部133e1、133e2と2つに分割され、負荷接続部133f2がベベルギアと一体的に構成されている点以外は、図8Aの構成例と同様の構成である。このように、負荷接続部133f2は、種々のタイプのギアと一体的に構成することが可能である。
【0060】
C.第2実施例:
図9,図10は本発明の第2実施例としての動力発生装置100Aの構成を示す概略図である。図9は、動力発生装置100Aの内部構成を示す概略断面図であり、図10は、動力発生装置100Aの各構成部を分解して示す概略分解断面図である。この動力発生装置100Aは、遊星ギアを二段重ねた減速機とモーターとを一体化した構成を有しており、以下の点が第1実施例の動力発生装置100(図3,図4)と異なる。
【0061】
第2実施例の動力発生装置100Aは、回転機構部130Aを有している。回転機構部130Aのギア固定部131Aには、中心軸110の軸方向に並列に重ねて設けられた第1と第2のアウターギア1311a,1311bが設けられている。第1と第2のアウターギア1311a,1311bは、ギア固定部131Aがケーシング122に固定的に取り付けられたときに、ともにローター121の凹部1212に収容される。
【0062】
第1のアウターギア1311aは、ローターギア1213と第1のプラネタリーギア132aを介して連結される。即ち、ローターギア1213は、一段目の遊星ギアにおけるサンギアとして機能する。第1のプラネタリーギア132aは、プラネタリーキャリア135に回転可能に取り付けられる。
【0063】
プラネタリーキャリア135は、比較的径が大きい円筒形状の前段部1351と、比較的経の小さい円筒形状の後段部1352とが連接された回転部材である。プラネタリーキャリア135の前段部1351は、第1と第2のアウターギア1311a,1311bの間に配置され、その底面に第1のプラネタリーギア132aの回転軸132sを保持するための軸孔1354が設けられている。後段部1352は、側壁面にギア歯135tが形成されるとともに、第2のアウターギア1311bの内周空間に配置される。
【0064】
なお、プラネタリーキャリア135の中央部には、中心軸110を挿通するための貫通孔1353が、前段部1351および後段部1352をともに貫通して設けられている。貫通孔1353と中心軸110との間には、プラネタリーキャリア135を回転可能とするための軸受け部112が配置される。なお、軸受け部112同士の間には、適宜、スペーサー115が配置される。
【0065】
プラネタリーキャリア135の後段部1352と、第2のアウターギア1311bとの間には、第2のプラネタリーギア132bが配置される。即ち、後段部1352は、二段目の遊星ギアにおけるサンギアとして機能する。第2のプラネタリーギア132bは、プラネタリーキャリアとして機能する負荷接続部133に、回転可能に取り付けられる。
【0066】
負荷接続部133と、ギア固定部131Aとの間には、クロスローラーベアリング137が設けられ、負荷接続部133には、ハーネスガイド1375aを有する穴あき円盤部材1375が固定用ボルト114により固定されているのは、図3に示す構成例と同様である。
【0067】
図11(A),(B)は、動力発生装置100Aの二段式の遊星ギアにおいて回転駆動力が伝達される機構を説明するための、図5と同様な模式図である。図11(A)には、ローターギア1213と、第1のプラネタリーギア132aと、第1のアウターギア1311aと、プラネタリーキャリア135の前段部1351とで構成される一段目の遊星ギアが図示されている。一段目の遊星ギアでは、ローターギア1213の回転に伴って、第1のプラネタリーギア132aが自身の回転軸132sを中心に回転しつつ、ローターギア1213の外周を周回移動する。第1のプラネタリーギア132aの周回移動に伴って、プラネタリーキャリア135の前段部1351が回転する。
【0068】
なお、図11(A)では、ローターギア1213の回転方向を一点鎖線の矢印で図示し、第1のプラネタリーギア132aの回転方向を実線の矢印で図示してある。また、第1のプラネタリーギア132aの周回移動の方向、即ち、プラネタリーキャリア135の回転方向を二点鎖線の矢印で図示してある。
【0069】
図11(B)には、プラネタリーキャリア135の後段部1352と、第2のプラネタリーギア132bと、第2のアウターギア1311bと、負荷接続部133で構成される二段目の遊星ギアが図示されている。二段目の遊星ギアでは、プラネタリーキャリア135の後段部1352の回転に伴って、第2のプラネタリーギア132bが自身の回転軸132sを中心に回転しつつ、プラネタリーキャリア135の後段部1352の外周を周回移動する。第2のプラネタリーギア132bの周回移動に伴って、負荷接続部133が回転し、負荷接続部133に接続された外部負荷に回転駆動力が伝達される。
【0070】
なお、図11(B)では、プラネタリーキャリア135の後段部1352の回転方向を二点鎖線の矢印で図示し、第2のプラネタリーギア132bの回転方向を実線の矢印で図示してある。また、第2のプラネタリーギア132bの周回移動の方向、即ち、負荷接続部133の回転方向を破線の矢印で図示してある。
【0071】
このように、第2実施例の動力発生装置100Aは、より高トルクの回転駆動力の出力が可能な減速機として二段式の遊星ギアを、ローター121の凹部1212に収容し、小型化されている。この動力発生装置100Aをロボットアーム10(図1)に適用すれば、第1実施例の場合より高いトルクで、第1〜第3の関節部J1〜J3を回動させることができる。なお、動力発生装置100Aでは、さらに多くの段数を有する遊星ギアが構成されるものとしても良い。
【0072】
D.第3実施例:
図12,図13は、本発明の第3実施例としての動力発生装置100Bの構成を示す概略図である。図12は、動力発生装置100Bの内部構成を示す概略断面図であり、図13は、動力発生装置100Bの各構成部を分解して示す概略分解断面図である。この動力発生装置100Bは、増速機として機能する遊星ギアとモーターとを一体化した構成を有しており、ベベルギア21に回転駆動力を伝達する。ベベルギア21は外部負荷となる。動力発生装置100Bは、以下の点が第1実施例の動力発生装置100(図3,図4)と異なる。
【0073】
第3実施例のモーター部120Bは、ローター121Bを備える。ローター121Bは、中央に設けられた隔壁1213の外表面のギア歯121tが省略され、ローター121Bの側壁の内周面にギア歯121tBが設けられている点以外は、第1実施例で説明したローター121の構成と同様の構成を有する。第3実施例の動力発生装置100Bでは、ローター121Bがアウターギアとして機能する。
【0074】
動力発生装置100Bの回転機構部130Bは、サンギア136を備える。サンギア136は、中央に中心軸110を挿通するための貫通孔1361が設けられた略円筒状の部材であり、側壁面にギア歯136tが形成されている。貫通孔1361は、ローター121Bの中央の隔壁1213を、空隙を残しつつ収容可能な前段部1361aと、中心軸110と固定的に接続される後段部1361bとを有する。
【0075】
プラネタリーギア132は、ローター121Bの凹部1212に配置され、サンギア136とアウターギアであるローター121Bとを連結する。プラネタリーギア132は、プラネタリーキャリアとして機能する負荷接続部133に回転可能に取り付けられる。負荷接続部133には、ベベルギア21の回転軸(二点破線で図示)が固定用ボルト114によって取り付けられている。
【0076】
図14は、動力発生装置100Bの内部において回転駆動力が伝達される機構を説明するための図11と同様な模式図である。サンギア136は中心軸110に固定されているため、アウターギアであるローター121Bの回転に伴って、プラネタリーギア132は、自身の回転軸132sを中心に回転するとともに、サンギア136の外周を周回移動する。プラネタリーギア132の周回移動に伴って、プラネタリーキャリアである負荷接続部133が回転する。
【0077】
なお、図14では、ローター121Bの回転方向が一点鎖線の矢印で図示され、プラネタリーギア132の回転方向が実線の矢印で図示されている。また、図14では、プラネタリーギア132の周回移動の方向、即ち、負荷接続部133の回転方向が、二点鎖線の矢印で図示されている。
【0078】
このように、第3実施例の動力発生装置100Bであれば、増速機として機能する遊星ギアがモーター部120のローター121Bの凹部1212に収容され、小型化されている。従って、この動力発生装置100Bを用いれば、高速な回転駆動力を要するアクチュエーターやマニピュレーターを、よりコンパクトに構成することが可能である。
【0079】
上記の第1の実施例では、遊星ギアを減速機として機能させ、第3の実施例では、遊星ギアを増速機として機能させている。遊星ギアにおいては、サンギア(SG)とアウターギア(OG)とプラネタリーキャリア(PC)の3つのうちの1つを入力部とし(ローター121と一体的に設けられ、あるいは接続され)、残り2つのうちの1つを出力部とし(負荷接続部133と一体的に設けられ、あるいは接続され)、残りの1つを固定部としても(ステーター(ケーシング122)と一体に設けられ、あるいは接続されても)よい。遊星ギアでは、サンギア(SG)とアウターギア(OG)とプラネタリーキャリア(PC)とを、入力部と固定部と出力部と、のどれに割り当てるかにより、遊星ギアを減速機あるいは増速機として用いることが決めることが出来る。逆に言えば、遊星ギアを、減速機あるいは、増速機として用いるかにより、入力部、固定部、出力部をどれにするかを決定することになる。また、そのときの減速比(増速比)は、サンギア(SG)とアウターギア(OG)の歯数により決定することが出来る。
【0080】
サンギアの歯数をZa、アウターギアの歯数をZcとすると、各状態における減速比及び入力部の回転方向に対する出力部の回転方向は、以下のように示される。
SG OG PC 減速比 増減速 回転方向
入力部 固定部 出力部 Za/(Za+Zc) 減速 同方向
固定部 入力部 出力部 Zc/(Za+Zc) 減速 同方向
固定部 出力部 入力部 (Za+Zc)/Zc 増速 同方向
出力部 固定部 入力部 (Za+Zc)/Za 増速 同方向
入力部 出力部 固定部 −Za/Zc 減速 逆方向
出力部 入力部 固定部 −Zc/Za 増速 逆方向
【0081】
E.第4実施例:
図15,図16は、本発明の第3実施例としての動力発生装置100Cの構成を示す概略図である。図15は、動力発生装置100Cの内部構成を示す概略断面図であり、図16は、動力発生装置100Cの各構成部を分解して示す概略分解断面図である。この動力発生装置100Cは、ハーモニックドライブ機構(「ハーモニックドライブ」は登録商標)とモーターとを一体化した構成を有しており、ベベルギア21に回転駆動力を伝達する。動力発生装置100Cは、以下の点が第1実施例の動力発生装置100(図3,図4)と異なる。なお、クロスローラーベアリング137を有している点は第1実施例の動力発生装置100と同様である。
【0082】
この動力発生装置100Cでは、ローター121の凹部1212に、回転機構部130Cとして、ハーモニックドライブ機構を構成するウェーブジェネレーター160と、フレックススプライン162と、サーキュラスプライン165とが収容される。ウェーブジェネレーター160は、底面が略長円形形状を有する略楕円筒形状の部材である。
【0083】
ウェーブジェネレーター160には、その中心軸方向(紙面左右方向)に貫通する貫通孔1601が設けられており、貫通孔1601の内壁面には、ギア歯160tが形成されている。ウェーブジェネレーター160は、貫通孔1601にローターギア1213を勘合的に収容した状態で、締結ボルトFBによってローター121と締結される。これによって、ウェーブジェネレーター160は、ローター121の回転に伴って回転する。
【0084】
ところで、ウェーブジェネレーター160の両端部には、外周方向に突出した鍔部1602が設けられている。この鍔部1602は、ウェーブジェネレーター160の外周に配置されるフレックススプライン162の脱落を防止するためのものである。なお、図16では、フレックススプライン162の取り付けのために、一方の鍔部1602が分離された状態が図示されている。分離された鍔部1602は、フレックススプライン162が配置された後に、締結ボルトFBによって固定される。
【0085】
フレックススプライン162は、ウェーブジェネレーター160の回転に合わせて変形可能なたわみを有する環状部材であり、その外周面にはギア歯162tが形成されている。また、フレックススプライン162の内周面には、ウェーブジェネレーター160の回転を円滑にするためのベアリング161が配置されている。
【0086】
サーキュラスプライン165は、ローター121の凹部1212に収容されるとともに、内側にフレックススプライン162を収容する前段部1651と、中心軸110が挿通されるとともに、ベベルギア21の回転軸が接続される後段部1652とを有している。前段部1651は、内周面にフレックススプライン162のギア歯162tと噛み合うギア歯165tが形成されている。後段部1652には、中心軸110との間に、サーキュラスプライン165を回動可能とするための軸受け部112が配置される。
【0087】
図17は、動力発生装置100Cの内部において回転駆動力が伝達される機構を説明するための、図14と同様な模式図である。なお、図17では、フレックススプライン162の内側に設けられたベアリング161については、図示が省略されている。動力発生装置100Cでは、ローターギア1213の回転(一点鎖線の矢印で図示)にともなって、ウェーブジェネレーター160が回転する(実線の矢印で図示)。
【0088】
ウェーブジェネレーター160は、その長円方向において、フレックススプライン162をサーキュラスプライン165側に押圧し、フレックススプライン162とサーキュラスプライン165とを接触させる。これによって、ウェーブジェネレーター160の長円方向において、フレックススプライン162のギア歯162t(図示は省略)と、サーキュラスプライン165のギア歯165t(図示は省略)とが互いに噛み合うこととなる。なお、ウェーブジェネレーター160の短円方向においては、フレックススプライン162と、サーキュラスプライン165とは非接触の状態である。
【0089】
ウェーブジェネレーター160の長円方向におけるフレックススプライン162とサーキュラスプライン165との連結により、ウェーブジェネレーター160の回転が、サーキュラスプライン165へと伝達される。なお、図17では、サーキュラスプライン165の回転方向を二点鎖線の矢印で図示してある。
【0090】
ハーモニックドライブ機構は、一般に、バックラッシュを省略可能であるため、高精度な回転の伝達が可能である。第3実施例の動力発生装置100Cであれば、ハーモニックドライブ機構を構成する回転機構部130Cが、ローター121の凹部1212に一体的に収容されている。そのため、この動力発生装置100Cによれば、コンパクトで動作精度の高いアクチュエーターやマニピュレーターを構成することが可能である。
【0091】
ハーモニックドライブ機構においても、遊星ギアと同様に、ウェーブジェネレーター160、フレックススプライン162、サーキュラスプライン165の3つのうちのいずれか1つを入力部とし、残り2つのうちの1つを固定部とし、残る1つを出力部としてもよい。これにより、ハーモニックドライブ機構を、減速機あるいは増速機として用いることが可能となる。また、フレックススプライン162にダイヤフラムを接続し、フレックススプライン162の代わりにダイヤフラム入力部、固定部、出力部としてもよい。
【0092】
F.第5実施例:
図18は、本発明の第5実施例としての動力発生装置100Dの構成を示す概略断面図である。図18に示す構成は、回転機構部130に替えて、回転軸170が設けられている点以外は、図3に示す構成とほぼ同じである。この動力発生装置100Dでは、ローター121のローターギア1213に回転軸170が交換可能に取り付けられている。
【0093】
回転軸170は、中心軸110を軸方向に挿通する貫通孔171を有している。貫通孔171のローター121側の内壁面には、ローターギア1213が勘合的に収容されるようにギア歯が設けられている。また、貫通孔171のローター121とは反対の側には、軸受け部112や、軸受けリング113、スペーサー115が配置されている。この構成によって、回転軸170は、ローター121とともに回転する。
【0094】
図19(A)〜(C)は、動力発生装置100Dにおいて、回転軸170に換えてローター121に取り付けられる回転軸の種類を例示する概略図である。図19(A)の回転軸170aは、先端側(紙面左側)の外表面に直線状のギア歯170taが設けられており、スパーギア(平歯車)として機能する。図19(B)の回転軸170bは、先端側に螺旋状に延びるギア歯170tbが設けられており、スクリューギア(螺旋歯車)として機能する。図19(C)の回転軸170cは、先端側にテーパー状のギア歯170tcが設けられており、ベベルギアとして機能する。
【0095】
このように、第5実施例の動力発生装置100Dでは、モーター部120のローター121に、種々の回転軸170,170a〜170cが交換可能に取り付けられる。そのため、動力発生装置100Dは、その汎用性が向上されている。なお、動力発生装置100Dに用いられる回転軸170,170a〜170cは、その一部がローター121の凹部1212に収容されている。即ち、動力発生装置100Dは、その分だけ小型化されている。
【0096】
G.第6の実施例:
図20,図21は、本発明の第6実施例としての動力発生装置100Eの構成を示す概略図である。図20は、動力発生装置100Eの内部構成を示す概略断面図であり、図21は、動力発生装置100Eの各構成部を分解して示す概略分解断面図である。この動力発生装置100Eは、サイクロ機構とモーターとを一体化した構成を有しており、負荷接続部133Eに回転駆動力を伝達する。動力発生装置100Eは、以下の点が第1実施例の動力発生装置100(図3,図4)と異なる。すなわち、この動力発生装置100Eは、ローター121の凹部1212に、回転機構部130Eとして、サイクロ機構を備えている。なお、クロスローラーベアリング137を有している点は第1実施例の動力発生装置100と同様である。
【0097】
図22は、サイクロ機構を模式的に示す説明図である。サイクロ機構は、偏心体180、185と、曲線板181と、外ピン182と、内ピン183と、ベアリング1814と、を備える。曲線板181は、略円盤形状を有しており、中心部に中心孔1810を有し、中心孔1810の周りに8個の内ピン孔1811を有する。内ピン孔1811は、円周上に45度間隔で配置されている。曲線板181の外周は、エピトコロイド平行線形状を有している。本実施例では、エピトコロイド平行線形状の山の数は9個であり、40度回転させるとエピトコロイド平行線形状が重なる。なお、本実施例では、図20に示すように、サイクロ機構は曲線板181を2つ備えており、180度ずれている。その結果、一方の曲線板181のエピトコロイド平行線形状の凸部が、他方の曲線板181のエピトコロイド平行線形状の凹部に位置する。なお、図22では、図面が見難くなるため、一方の曲線板181のみを記載している。
【0098】
外ピン182は、曲線板181側が略円形に形成されている部材である。外ピン182は、円柱形の棒であってもよい。外ピン182は、本実施例では、10本あり、円周上に36度(=360度/10本)の等間隔で配置されている。また、外ピン182は、曲線板181の外周に接するように配置されている。ここで、外ピン182のうちの外ピン1821が曲線板181のエピトコロイド平行線形状の凸部の頂点に接しているとき、外ピン1821の対称位置にある外ピン1822は、曲線板181のエピトコロイド平行線形状の凹部の底に接している。図20、図21では、外ピン1822と曲線板181をギア歯の凹凸として接触した図として記載している。
【0099】
内ピン183は、円柱形の棒である。内ピン183は、内ピン孔1811の数と同じ数(8本)あり、円周上に45度(=360度/8本)の等間隔で配置されている。内ピン183の太さは内ピン孔1811の大きさよりも細く形成されており、内ピン183は内ピン孔1811の中に挿入されている。なお、内ピン183が配置される円周と、内ピン孔1811が配置される円周は、同じ大きさである。
【0100】
偏心体180、185は、それぞれ円柱形状を有している。偏心体180の中心1801は、偏心体180の回転中心1802とずれている。偏心体185の中心1851は、偏心体185の回転中心1852とずれている。なお、偏心体180の回転中心1802と偏心体185の回転中心1852は同じ点(軸)である。そして、偏心体180の中心1801と、偏心体185の中心1851の重心の位置に偏心体180の回転中心1802(偏心体185の回転中心1852)が位置している。偏心体180、185の太さは中心孔1810の大きさよりも細く形成されており、中心孔1810の中に挿入されている。中心孔1810と偏心体180、185との間には、中心孔1810と偏心体180、185との接触を滑らかにするためのベアリング1814が配置されている。偏心体180、185は、中心1801から見て回転中心1802、1852と反対側において、中心孔1810に配置されたベアリング1814と接触している。この点を接触点1803、1853と呼ぶ。
【0101】
図20に戻り、第6の実施例におけるサイクロ機構の接続関係について説明する。第6の実施例では、偏心体180、185は、ローター121と一体に形成されている。外ピン182は、ステーター(ケーシング122)と一体に形成されている。内ピン183は、負荷接続部133と一体に形成されている。すなわち、偏心体180が入力部であり、外ピン182が固定部であり、内ピン183が出力部である。
【0102】
図22を用いて、図20に示すように、サイクロ機構が接続されている場合の動作について説明する。ローター121(図20)が回転すると、偏心体180も回転する。このとき偏心体180は、回転中心1802を中心に回転する。例えば、図22に示すように、偏心体180が時計回りに回転したとする。このとき、接触点1803の位置も時計回りに回転する。すると、曲線板181は、偏心体180よりベアリング1814を介して力を受けて、外ピン182が配置された円周に沿って反時計回りに公転すると共に、自転する。曲線板181が自転すると、内ピン孔1811の位置が、公転する。内ピン孔1811が公転すると、内ピン183を押すため、内ピン183は内ピン183が配置された円周に沿って公転する。本実施例では、偏心体180が一回転すると、曲線板181が1/9回転する。例えば、曲線板181のエピトコロイド平行線形状の凸部の数をn個、外ピンの数を(n+1)本とすると、偏心体180が一回転すると、曲線板181が1/n回転する。したがって、極めて大きな減速比を得ることが出来る。また、外ピン182によって滑り接触が転がり接触に変換されるので、機械的損失が非常に小さく、極めて高いギア効率を得ることが可能となる。
【0103】
図23は、第6の実施例の変形例としての動力発生装置100Fの構成を示す概略図である。図20に示す動力発生装置100Eでは、偏心体180をローター121と一体に設けることにより入力部とし、外ピン182をステーター(ケーシング122)と一体に設けることにより固定部とし、内ピン183を負荷接続部133と一体に設けることにより出力部としていた。この動力発生装置100Fでは、内ピン183をステーター(ケーシング122)と一体に設けることにより固定部に変更し、外ピン182を負荷接続部133と一体に設けることにより出力部に変更している。このように構成しても減速機を構成することができる。
【0104】
またサイクロ機構では、外ピン182または内ピン183の一方を入力部、他方を固定部とし、偏心体180を出力部とすることにより、増速機としても機能させることが出来る。このように、サイクロ機構では、偏心体180、外ピン182、内ピン183の3つのうちの1つを入力部、残る2つのうちの1つを固定部、残る1つを出力部とすることで、サイクロ機構を、減速機あるいは増速機として機能させることが出来る。
【0105】
本実施例では、サイクロ機構は曲線板181を2枚備えているが、曲線板181の数は1枚でもよく、3枚以上であってもよい。例えば曲線板181がm枚の場合、各曲線板181は360/m度ずれるように配置される。また、このとき偏心体180は曲線板181と同数のm個あり、m個の円柱が接続された形状を有している。各円柱の中心1801と回転中心1802を結ぶ線分は、360/m度ずれており、各円柱の中心1801の重心に回転中心1802が位置する。
【0106】
H.第7の実施例:
図24は、第7の実施例としての動力発生装置100Gの構成を示す概略図である。第1の実施例で説明した動力発生装置100は、モーター部120がラジアルギャップ型モーターで構成されていたが、第7の実施例の動力発生装置100Gでは、モーター部120Gがアキシャルギャップ型モーターで構成されている点で異なっている。モーター部120Gは、永久磁石123と、電磁コイル群1240とを備える。
【0107】
図25は、永久磁石と電磁コイル群の構成を示す説明図である。図25(A)は、永久磁石の構成を示す説明図である。永久磁石123は、扇形をした複数の永久磁石1231が円盤形状に並べられて構成されている。各永久磁石1231の磁束の方向は、円盤形状の法線方向である。永久磁石123は2つあり、電磁コイル群1240を挟んでいる。
【0108】
図25(B)は電磁コイル群の断面図の一部を示す説明図である。電磁コイル群1240は、A相電磁コイル1240Aと、B相電磁コイル1240Bと、回路基板1241と、を備える。回路基板1241は、A相電磁コイル1240Aと、B相電磁コイル1240Bとに挟まれるように配置されている。A相電磁コイル1240Aと、B相電磁コイル1240Bとは、それぞれ、永久磁石123と対向するように配置されている。
【0109】
図25(C)は、A相電磁コイルの平面図の一部を示す説明図である。図25(D)は、B相電磁コイルの平面図の一部を示す説明図である。A相電磁コイル1240Aと、B相電磁コイル1240Bとは同じ構造をしているので、A相電磁コイル1240Aを例に取り説明する。A相電磁コイル1240Aは、複数の電磁コイル1242Aを備える。各電磁コイル1242Aは、扇形に巻かれており、円盤形状に並べられている。なお、電磁コイル1242AとB相の電磁コイル1242Bとは、電気角でπ/2だけずれて配置されている。電磁コイル1242Aのうち1つの電磁コイルには、永久磁石123の磁束を検知するための磁気センサー126Bが配置されている。この磁気センサー126Bの出力は、電磁コイル1242Aを駆動制御するために用いられる。同様に、電磁コイル1242Bのうち1つの電磁コイルには、永久磁石123の磁束を検知するための磁気センサー126Aが配置され、この磁気センサー126Aの出力は、電磁コイル1242Bを駆動制御するために用いられる。
【0110】
このように、動力発生装置は、モーター部として、ラジアルギャップ型モーターの他、アキシャルギャップ型モーターを用いることが可能である。また、第7の実施例の動力発生装置100Gでは、回転機構部130Gとして、遊星ギアを用いているが、遊星ギアの代わりに、ハーモニックドライブ機構や、サイクロ機構を採用してもよい。
【0111】
I.第8の実施例
図26は、第8の実施例としての動力発生装置100Hの構成を示す概略図である。図27は、エンコーダーの構成の一例を示す説明図である。第8の実施例の動力発生装置100Hは、第1の実施例の動力発生装置100に加えて、エンコーダー190を備えている。エンコーダー190は、発光部191と、受光部192と、反射板193と、エンコーダー回路194と、を備える。発光部191と、受光部192と、エンコーダー回路194とは、ステーター(ケーシング122)に配置され、反射板193は、ローター121に配置されている。発光部191から照射された光は、反射板193で反射し、受光部192で検知される。ここで、エンコーダー190は反射板193を回転方向の円周に沿って複数列備え、各列の反射板193からの反射光が2進数を示し、ローター121回転に伴って1つずつ該2進数が増加ないし減少するように構成されている。反射板193をこのように構成することにより、エンコーダー回路194は、ローター121の回転位置を正確に判断することができる。
【0112】
図28は、エンコーダーの構成の変形例を示す説明図である。この変形例では、エンコーダー190は、発光部191と、受光部192と、孔195とを備える。発光部191と受光部192は、ステーター(ケーシング122)に配置されている。ここで、発光部191と受光部192は、ローター121を挟んでいる。ローター121の発光部191と受光部192の間には、孔195が形成されている。孔195は、反射板193と同様に、ローター121の回転方向の円周に沿って複数列設けられており、各列の孔195の透過した光が2進数を示し、ローター121回転に伴って1つずつ該2進数が増加ないし減少するように構成されている。このように、反射型ではなく透過型のエンコーダーを用いてもよい。なお、透過型エンコーダーの場合には、ローター121の強度を維持するために、孔195の代わりに、光透過可能な材料を用いて孔195を埋めてもよい。図27に示した第8の実施例、あるいは図28に示した第8の実施例の変形例において、発光部191と受光部192とを2組備えることにより、二相エンコーダーを実現してもよい。なおこの二相エンコーダーを実現する場合、各エンコーダーの出力は、電気角でπの整数倍と異なる位相差であることが好ましい。各エンコーダーの出力が電気角でπの整数倍である場合には、エンコーダーの出力から回転方向を検知することが難しい場合があるからである。また、図27に示した第8の実施例では、反射板193を用いたが、反射板193の代わりに光を屈折させる屈折材を用いてもよい。
【0113】
J.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0114】
J1.変形例1:
上記第1実施例では、動力発生装置100は、ロボットアーム10の関節部J1〜J3の動力源として用いられていた。しかし、第1実施例の動力発生装置100や、他の実施例の動力発生装置100A〜100Hは、他のアクチュエーターやマニピュレーターの動力源、あるいは、移動体の動力源などに用いられるものとしても良い。
【0115】
J2.変形例2:
上記実施例では、動力発生装置100,100A〜Hは、モーター部120で発生した回転駆動力を外部負荷へと伝達していた。しかし、動力発生装置100,100A〜Hは外部負荷から伝達された回転駆動力により、モーター部120に電力を発生させる発電装置として機能するものとしても良い。このように、本発明は、電磁力を利用して動力を発生させる動力発生装置に限らず、ローターおよびステーター、回転機構を用いて動力と電力とを変換する電気機械装置に適用することが可能である。
【0116】
J3.変形例3:
上記実施例では、ローター121の凹部1212に、遊星ギアや、ハーモニックドライブ機構、サイクロ機構などの回転機構の全部または一部が収容されていた。即ち、中心軸110に対して垂直な方向に見たときに、ローター121と回転機構の全部または一部が重なるように構成されていた。しかし、ローター121の凹部1212には、他の回転機構の全部または一部が収容されるものとしても良い。例えば、ローター121の凹部1212には、ローター121の回転をチェーンやベルトの回転を用いて伝達する回転機構が収容されるものとしても良い。
【0117】
J4.変形例4:
上記実施例では、中心軸110の貫通孔111に導電線束25が挿通されていた。しかし、中心軸110の貫通孔111は省略されるものとしても良く、導電線束25は、動力発生装置100,100A〜100Hの外部に配設されるものとしても良い。
【0118】
J5.変形例5:
上記実施例では、ローター121は、回転機構を収容するための収容空間として略円環状の溝として形成された凹部1212を有していた。しかし、ローター121は、回転機構を収容するための収容空間として、他の構成の空間を有するものとしても良い。例えば、ローター121を、円筒形状を有するかご型の骨組みを有する構成とし、その骨組みで囲まれた空間を、回転機構の収容空間とするものとしても良い。
【0119】
J6.変形例6
第1の実施例では、第4の基体部14は、関節部J3を中心に第3の基体部13に対して相対的に回動しているが、第3の基体部13に,第3の基体部13に対して相対的に動かない第5の基体部を備え、第4の基体部14と第5の基体部とで物を把持する把持部を形成してもよい。すなわち、ロボットアームの先端部に物を掴むための把持部を設け、当該把持部の駆動に第1実施例の動力発生装置100や、他の実施例の動力発生装置100A〜100Hを用いてもよい。また、ロボットアーム10全体を移動させるモーター、駆動部として、第1実施例の動力発生装置100や、他の実施例の動力発生装置100A〜100Hを用いてもよい。
【0120】
上記各実施例では、負荷接続部133にベベルギア21が接続されるとして説明しているが、負荷接続部133に外部負荷が接続されればよく、外部負荷の形状はベベルギア21に限られない。
【符号の説明】
【0121】
10,10cf…ロボットアーム
11…第1の基体部
12…第2の基体部
13…第3の基体部
14…第4の基体部
21…第1のベベルギア
22…第2のベベルギア
25…導電線束
100,100A〜100H,100a〜100e…動力発生装置
110…中心軸
111…貫通孔
112…軸受け部
113…軸受けリング
114…固定用ボルト
115…スペーサー
120,120B、120G…モーター部
121,121B…ローター
1211…貫通孔
1212…凹部
1213…隔壁(ローターギア)
121t,121tB…ギア歯
122…ケーシング
1221…貫通孔
123…永久磁石
124…電磁コイル
125…磁石バックヨーク
126…位置検出部
127…回転制御回路
128…コイルバックヨーク
130,130A,130B…回転機構部
131,131A…ギア固定部
1311…アウターギア
1311a,1311b…第1と第2のアウターギア
1312…鍔部
1313…開口部
131t…ギア歯
132…プラネタリーギア
132a,132b…第1と第2のプラネタリーギア
132s…回転軸
132t…ギア歯
133,133e…負荷接続部
1331…貫通孔
1332…軸孔
133t…ギア歯
135…プラネタリーキャリア
1351…前段部
1352…後段部
1353…貫通孔
1354…軸孔
135t…ギア歯
136…サンギア
1361…貫通孔
1361a…前段部
1361b…後段部
136t…ギア歯
137…クロスローラーベアリング
1371…外輪
1372…内輪
1373…円筒コロ
1374、1375…穴あき円盤部材
1375a…ハーネスガイド
140…ブラシシール部
141…ゴムシール部
142…熱交換フィン
143…制御部
143c…通信部
143d…ドライバ回路
144…ケーシング
160…ウェーブジェネレーター
1601…貫通孔
1602…鍔部
160t…ギア歯
161…ベアリング
162…フレックススプライン
162t…ギア歯
165…サーキュラスプライン
1651…前段部
1652…後段部
165t…ギア歯
170,170a〜170c…回転軸
170ta,170tb,170tc…ギア歯
171…貫通孔
180、185…偏心体
181…曲線板
182、1821、1822…外ピン
183…内ピン
190…エンコーダー
191…発光部
192…受光部
193…反射板
194…エンコーダー回路
195…孔
1801、1851…中心
1802、1852…回転中心
1803…接触点
1810…中心孔
1811…内ピン孔
1814…ベアリング
FB…締結ボルト
J1〜J3…第1〜第3の関節部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械装置であって、
中心軸と、
前記中心軸の外周に沿って配置されたローター磁石を有し、前記中心軸と前記ローター磁石との間において少なくとも前記中心軸の軸方向の一方に開口した収納空間を有するローターと、
前記ローターの外周に配置されたステーターと、
前記収納空間に配置され、前記ローターと一体に構成された回転数変換機構と、
前記ステーターの内側に配置され、前記回転数変換機構と回転負荷とを接続する負荷接続部と、
前記ステーターと前記負荷接続部との間に設けられたクロスローラーベアリングと、
を備える、電気機械装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械装置であって、
前記中心軸は、前記中心軸の軸方向に延びる貫通孔を有し、
前記貫通孔には、前記ローターの回転を制御するための電気を送信する導電線が挿通されている、電気機械装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気機械装置であって、
前記負荷接続部は、前記導電線を案内するハーネスガイドを有する、電気機械装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気機械装置において、
前記回転数変換機構は、
前記回転数変換機構の中心部に配置されたサンギアと、
前記回転数変換機構の外周部に配置されたアウターギアと、
前記サンギアと前記アウターギアとの間に配置されたプラネタリーギアと、
前記プラネタリーギアが接続されたプラネタリーキャリアと、を有する遊星ギアを含み、
前記回転数変換機構は、前記サンギアと前記アウターギアと前記プラネタリーキャリアの3つのうちの1つが前記ローター磁石と接続または一体に形成される入力部であり、残り2つのうちの1つが前記ステーターと接続または一体に形成される固定部であり、残りの1つが前記負荷接続部と接続または一体に形成される出力部である、電気機械装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気機械装置であって、
前記回転数変換機構は、
前記回転数変換機構の中心部に配置されたウェーブジェネレーターと、
前記回転数変換機構の外周部に配置されたサーキュラスプラインと、
前記ウェーブジェネレーターと前記サーキュラスプラインとの間に配置されたフレックススプラインと、を有するハーモニックドライブ機構(「ハーモニックドライブ」は登録商標)を含み、
前記回転数変換機構は、前記ウェーブジェネレーターと、前記サーキュラスプラインと、前記フレックススプラインの3つのうちの1つが前記ローター磁石と接続または一体に形成される入力部であり、残り2つのうちの1つが前記ステーターと接続または一体に形成される固定部であり、残りの1つが前記負荷接続部と接続または一体に形成される出力部である、電気機械装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気機械装置であって、
前記回転数変換機構は、
外縁にエピトコロイド平行曲線形状を有し中心に形成された第1の孔と前記第1の孔の周りに形成された複数の第2の孔とを有する曲線板と、
前記曲線板の前記エピトコロイド平行曲線と接するように配置される外ピンと、
前記第2の孔の中に配置される内ピンと、
前記第1の孔の中に配置される偏心体と、を有するサイクロ機構を含み、
前記偏心体と前記外ピンと前記内ピンの3つのうちの1つが前記ローター磁石と接続または一体に形成される入力部であり、残り2つのうちの1つが前記ステーターと接続または一体に形成される固定部であり、残りの1つが前記負荷接続部と接続または一体に形成される出力部である、電気機械装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気機械装置において、さらに、
ローターと一体に形成されたエンコーダーを備える、電気機械装置。
【請求項8】
アクチュエーターであって、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気機械装置を備える、アクチュエーター。
【請求項9】
モーターであって、
中心軸と、
前記中心軸の外周に沿って配置されたローター磁石を有し、前記中心軸と前記ローター磁石との間において少なくとも前記中心軸の軸方向の一方に開口した収納空間を有するローターと、
前記ローターの外周に配置されたステーターと、
前記収納空間に配置され、前記ローターに接続された回転数変換機構と、
前記ステーターの内側に配置され、前記回転数変換機構と回転負荷とを接続する負荷接続部と、
前記ステーターと前記負荷接続部との間に設けられたクロスローラーベアリングと、
を備える、モーター。
【請求項10】
ロボットであって、
基部と、
前記基部を移動させるための駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気機械装置を含む、ロボット。
【請求項11】
ロボットであって、
基部と、
前記基部に対して相対的に運動する運動部と、
前記運動部を前記基部に対して運動させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気機械装置を含む、ロボット。
【請求項12】
ロボットハンドであって、
基部と、
前記基部に配置され、対象物を把持する把持部と、
前記把持部を駆動して前記把持部に対して前記対象物を把持させる駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、請求項8に記載のアクチュエーターを含む、ロボットハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−99191(P2013−99191A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242057(P2011−242057)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サイクロ
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】