説明

電気自動車

【課題】 車輪用軸受、モータ、減速機等の異常に対して、適切な車両の駆動が行えて、車輪用軸受、モータ、減速機等の信頼性確保が行える電気自動車を提供する。
【解決手段】 ECU21およびインバータ装置22を備えた電気自動車において、トルク変動量推定手段37をインバータ装置22に設ける。トルク変動量推定手段37は、車輪回転数を検出する回転センサ24もしくはモータ6の角度センサ36から得られる回転数の変動量、荷重センサ41が検出する路面・タイヤ間の車両進行方向の荷重の変動量、またはモータ電流の変動量から、車輪用軸受4、モータ6、または減速機7に起因するトルク変動を含むトルク変動量を、定められた規則により推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車輪を駆動するモータを備えたバッテリ駆動、燃料電池駆動等のインホイールモータ車両等となる電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車では、車両駆動のためのモータや、このモータの回転を減速する減速機、および車輪用軸受の性能低下や故障は、走行性、安全性に大きく影響する。特に、インホイールモータ駆動装置では、コンパクト化を図る結果、減速機、およびモータの高速回転化を伴うため、これらの信頼性確保が重要な課題となる。
【0003】
インホイールモータ駆動装置において、信頼性確保のために、車輪用軸受、減速機、およびモータ等の温度を測定して過負荷を監視し、温度測定値に応じてモータの駆動電流の制限や、モータ回転数を低下させるものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−168790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気自動車における車輪用軸受、減速機、およびモータは、経年使用の間に、異常摩耗や、電源系統の不具合などの故障、性能低下が生じる恐れがある。特許文献1に記載のように、温度測定値に応じてモータの駆動軽減を行うことは、過負荷に対応した最適な状態での車両の駆動のために優れたものとなる。しかし、温度測定に応じた制御では、環境変化等の温度変化の要因が種々あり、また異常の影響が直ぐには現れないため、車輪用軸受、減速機、およびモータの異常に対応する制御としては、今一つ十分ではない。
【0006】
この発明の目的は、車輪用軸受、モータ、減速機等の異常に対して、適切な車両の駆動が行えて、車輪用軸受、モータ、減速機等の信頼性確保が行える電気自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の電気自動車は、車輪2を駆動するモータ6と、車両全般を制御する電気制御ユニットであるECU21と、バッテリ19の直流電力を前記モータ6の駆動に用いる交流電力に変換するインバータ31、および前記ECU21の制御に従って少なくとも前記インバータ31を制御するモータコントロール部29を有するインバータ装置22とを備えた電気自動車において、
車輪回転数を検出する回転センサ24もしくは前記モータ6の回転角を検出する角度センサ36から得られる回転数の変動量、車輪用軸受4に設けられた荷重センサ41が検出する路面・タイヤ間の車両進行方向の荷重の変動量、または前記モータ6の電流の検出手段35が検出するモータ電流の変動量から、車輪用軸受4、モータ6、またはモータ6と車輪2間に介在した減速機7に起因するトルク変動を含むトルク変動量を、定められた規則により推定するトルク変動量推定手段37を、前記インバータ装置22に設けたことを特徴とする。
【0008】
車両を一定速度で走行させる場合であっても、また加速や減速を行う場合においても、実際には、車輪回転数、モータ回転数などの回転数は、ある程度の周波数の上下変動を繰り返し、この上下変動が、基本的な回転数の変化曲線に対して重畳する変動成分となる。路面・タイヤ間に作用する車両進行方向の荷重も、走行時は常に増減変動を繰り返す。モータ電流も、走行時は常に、僅かな増減変動を繰り返す。
これらの回転数や、路面・タイヤ間の荷重、およびモータ電流における上記の増減変動の繰り返しによる変動成分は、車輪用軸受4や、減速機7、モータ6等に起因するトルク変動よるものが大きい。例えば、車輪用軸受4や減速機7において、回転による転がり接触や滑り接触する部分の異常摩耗等による摩擦増大部分があれば、その部分の1回転に1回のトルク増が発生し、上記車輪回転数、モータ回転数、車両進行方向の荷重の変動成分となる。また、上記異常摩耗はモータ電流にも影響する。
【0009】
上記トルク変動量推定手段37は、上記のようにして生じる回転数や車両進行方向の荷重、モータ電流の変動量から、車輪用軸受4、モータ6、または減速機7に起因するトルク変動を含むトルク変動量を、定められた規則により推定する。ここで言う「定められた規則」は、シミュレーション等により、適宜に定めればよい。なお、上記回転数や車両進行方向の荷重、モータ電流の変動量には、トルク変動以外の要因でよっても生じる変動量を含むが、トルク変動が要因となるものが多い。そのため、トルク変動以外の要因によるものが含まれていても、推定されたトルク変動量からの異常判断では、余分に異常と判定される場合が生じるだけで、トルク変動とみなしても信頼性の面からは問題がない。
また、上記のトルク変動量推定手段37は、ECU21の制御下で機能するインバータ装置22に設けたため、ECU21に設ける場合に比べて、異常発生時に即座にモータ駆動の安全のため制御が行える。なお、トルク変動量推定手段37が出力するトルク変動量は、必ずしもトルクの単位でなくても良く、トルク変動として扱うための値であれば良く、回転数等の単位でも良い。
このように、上記のトルク変動量推定手段37を設けることで、車輪用軸受4、モータ6、減速機7等の異常に対して、適切な車両の駆動が行えて、車輪用軸受4、モータ6、減速機7等の信頼性確保を行うことができる。
【0010】
この発明において、前記トルク変動量推定手段37で推定したトルク変動量が閾値を超えるか否かを監視し、超えたと判定したきに、前記インバータ装置22の出力するモータトルク指令またはモータ電流に制限を与える異常対応モータ駆動制限手段38を前記インバータ装置22に設けるのが良い。前記閾値は適宜定める。
トルク変動量推定手段37で推定したトルク変動量が閾値を超える場合は、車輪用軸受4や、減速機7、モータ6等に何らかの障害が発生している場合が多いと考えられる。そのため、インバータ装置31の出力するモータトルク指令またはモータ電流に制限を与えることで、安全性が高められる。モータトルク指令またはモータ電流の制限は、例えば定められた割合で低下させるようにしても良く、また上限を規制する制御であっても良い。

【0011】
前記異常対応モータ駆動制限手段38を設けた場合に、前記異常対応モータ駆動制限手段38により、前記トルク変動量が閾値を超えたと判定した時に、前記ECU21に異常発生情報を出力する異常報告手段39を前記インバータ装置22に設けるのが良い。
インバータ装置22に設けられた異常対応モータ駆動制限手段38でモータトルク指令やモータ電流に制限を与えた場合、車両の他の部分にも影響が生じる。ECU21は、車両全般を統括して制御する装置であるため、インバータ装置22における異常対応モータ駆動制限手段38により、前記トルク変動量が閾値を超えたと判定したときは、ECU21に異常発生情報を出力することで、ECU21により車両全体の適切な制御が行える。また、ECU21はインバータ装置22に駆動の指令を与える上位制御手段であり、インバータ装置22による応急的な制御の後、ECU21により、その後の駆動のより適切な制御を行うことも可能となる。
【0012】
この発明において、前記モータ6は、一部または全体が車輪2内に配置されて前記モータ6と車輪用軸受4と減速機7とを含むインホイールモータ駆動装置8を構成するものであっても良い。インホイールモータ駆動装置8の場合、コンパクト化を図る結果、車輪用軸受4、減速機7、およびモータ6の高速回転化を伴うため、これらの信頼性確保が重要な課題となる。そのため、前記トルク変動量推定手段38を設けたことによる信頼性確保が、より効果的となる。
【0013】
この発明において、前記モータ6の回転を減速する減速機7を備え、この減速機7が、1/6以上の高減速比を有するものであっても良い。高減速比の場合、モータ6の小型化が図れるが、モータ6の発生トルクを減速機で増大してタイヤに伝達するため、特にモータ6の異常の影響は大きい。そのため、この発明による信頼性確保が、より効果的となる。
また、この発明において、前記モータ6の回転を減速する減速機7を備え、前記減速機7がサイクロイド減速機であっても良い。サイクロイド減速機は、高減速比で滑らかな回転が得られるが、局部摩耗等の影響が大きい。そのため、この発明による信頼性確保が、より効果的となる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の電気自動車は、車輪を駆動するモータと、車両全般を制御する電気制御ユニットであるECUと、バッテリの直流電力を前記モータの駆動に用いる交流電力に変換するインバータおよび前記ECUの制御に従って少なくとも前記インバータを制御するモータコントロール部を有するインバータ装置とを備えた電気自動車において、車輪回転数を検出する回転センサもしくは前記モータの回転角を検出する角度センサから得られる回転数の変動量、車輪用軸受に設けられた荷重センサが検出する路面・タイヤ間の車両進行方向の荷重の変動量、または前記モータの電流の検出手段が検出するモータ電流の変動量から、車輪用軸受、モータ、またはモータと車輪間に介在した減速機に起因するトルク変動を含むトルク変動量を、定められた規則により推定するトルク変動量推定手段を、前記インバータ装置に設けたため、車輪用軸受、モータ、減速機等の異常に対して、適切な車両の駆動が行えて、車輪用軸受、モータ、減速機等の信頼性確保が行えるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態に係る電気自動車を平面図で示す概念構成のブロック図である。
【図2】同電気自動車のインバータ装置の概念構成のブロック図である。
【図3】同インバータ装置に設けたトルク変動量推定手段および異常対応モータ駆動制御手段のブロック図である。
【図4】車輪回転数の変動例をグラフで示す説明図である。
【図5】モータ電流および車両進行方向荷重の変動例をグラフで示す説明図ある。
【図6】同電気自動車におけるインホイールモータ駆動装置の破断正面図である。
【図7】図6のVII-VII 線断面図である。
【図8】図7の部分拡大断面図である。
【図9】同電気自動車における車輪用軸受の外方部材の側面図と荷重検出用の信号処理ユニットとを組み合わせた図である。
【図10】同電気自動車におけるセンサユニットの拡大平面図である。
【図11】同センサユニットの断面図である。
【図12】同電気自動車における回転検出器の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の一実施形態を図1ないし図12と共に説明する。この電気自動車は、車体1の左右の後輪となる車輪2が駆動輪とされ、左右の前輪となる車輪3が従動輪での操舵輪とされた4輪の自動車である。駆動輪および従動輪となる車輪2,3は、いずれもタイヤを有し、それぞれ車輪用軸受4,5を介して車体1に支持されている。車輪用軸受4,5は、図1ではハブベアリングの略称「H/B」を付してある。駆動輪となる左右の車輪2,2は、それぞれ独立の走行用のモータ6,6により駆動される。モータ6の回転は、減速機7および車輪用軸受4を介して車輪2に伝達される。これらモータ6、減速機7、および車輪用軸受4は、互いに一つの組立部品であるインホイールモータ駆動装置8を構成しており、インホイールモータ駆動装置8は、一部または全体が車輪2内に配置される。インホイールモータ駆動装置8は、インホイールモータユニットとも称される。モータ6は、減速機7を介さずに直接に車輪2を回転駆動するものであっても良い。各車輪2,3には、電動式のブレーキ9,10が設けられている。
【0017】
左右の前輪となる操舵輪である車輪3,3は、転舵機構11を介して転舵可能であり、操舵機構12により操舵される。転舵機構11は、タイロッド11aを左右移動させることで、車輪用軸受5を保持した左右のナックルアーム11bの角度を変える機構であり、EPS(電動パワーステアリング)モータ13により、回転・直線運動変換機構(図示せず)を介して左右移動させられる。操舵機構12は、タイロッド11aと機械的に連結されていないステアリングホイール14の操舵角を操舵角センサ15で検出し、その検出した操舵角である旋回指令によりEPSモータ13に駆動指令を与えられるステアバイワイヤ式とされている。
【0018】
制御系を説明する。自動車全般の制御を行う電気制御ユニットであるECU21と、このECU21の指令に従って走行用のモータ6の制御を行うインバータ装置22と、ブレーキコントローラ23とが、車体1に搭載されている。ECU21は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、並びに各種の電子回路等で構成される。
【0019】
ECU21は、機能別に大別すると駆動制御部21aと一般制御部21bとに分けられる。駆動制御部21aは、アクセル操作部16の出力する加速指令と、ブレーキ操作部17の出力する減速指令と、操舵角センサ15の出力する旋回指令とから、左右輪の走行用モータ6,6に与える加速・減速指令を生成し、インバータ装置22へ出力する。駆動制御部21aは、上記の他に、出力する加速・減速指令を、各車輪2,3の車輪用軸受4,5に設けられた回転センサ24から得られるタイヤ回転数の情報や、車載の各センサの情報を用いて補正する機能を有していても良い。アクセル操作部16は、アクセルペダルとその踏み込み量を検出して前記加速指令を出力するセンサ16aとでなる。ブレーキ操作部17は、ブレーキペダルとその踏み込み量を検出して前記減速指令を出力するセンサ17aとでなる。
【0020】
ECU21の一般制御部21bは、前記ブレーキ操作部17の出力する減速指令をブレーキコントローラ23へ出力する機能、各種の補機システム25を制御する機能、コンソールの操作パネル26からの入力指令を処理する機能、表示手段27に表示を行う機能などを有する。前記補機システム25は、例えば、エアコン、ライト、ワイパー、GPS、アエバッグ等であり、ここでは代表して一つのブロックとして示す。
【0021】
ブレーキコントローラ23は、ECU21から出力される減速指令に従って、各車輪2,3のブレーキ9,10に制動指令を与える手段である。ECU21から出力される制動指令には、ブレーキ操作部17の出力する減速指令によって生成される指令の他に、ECU21の持つ安全性向上のための手段によって生成される指令がある。ブレーキコントローラ23は、この他にアンチロックブレーキシステムを備える。ブレーキコントローラ23は、電子回路やマイコン等により構成される。
【0022】
インバータ装置22は、各モータ6に対して設けられたパワー回路部28と、このパワー回路部28を制御するモータコントール部29とで構成される。モータコントール部29は、各パワー回路部28に対して共通して設けられていても、別々に設けられていても良いが、共通して設けられた場合であっても、各パワー回路部28を、例えば互いにモータトルクが異なるように独立して制御可能なものとされる。モータコントール部29は、このモータコントール部29が持つインホイールモータ8に関する各検出値や制御値等の各情報(「IWMシステム情報」と称す)をECUに出力する機能を有する。
【0023】
図2は、インバータ装置22の概念構成を示すブロック図である。パワー回路部28は、バッテリ19の直流電力をモータ6の駆動に用いる3相の交流電力に変換するインバータ31と、このインバータ31を制御するPWMドライバ32とで構成される。モータ6は3相の同期モータ等からなる。インバータ31は、複数の半導体スイッチング素子(図示せず)で構成され、PWMドライバ32は、入力された電流指令をパルス幅変調し、前記各半導体スイッチング素子にオンオフ指令を与える。
【0024】
モータコントール部29は、コンピュータとこれに実行されるプログラム、および電子回路により構成され、その基本となる制御部としてモータ駆動制御部33を有している。モータ駆動制御部33は、上位制御手段であるECUから与えられるトルク指令等による加速・減速指令に従い、電流指令に変換して、パワー回路部28のPWMドライバ32に電流指令を与える手段である。モータ駆動制御部33は、インバータ31からモータ6に流すモータ電流値を電流検出手段35から得て、電流フィードバック制御を行う。また、モータ駆動制御部33は、モータ6のロータの回転角を角度センサ36から得て、ベクトル制御を行う。
【0025】
この実施形態では、上記構成のモータコントール部29に、次のトルク変動量推定手段37と、異常対応モータ駆動制御手段38と、異常報告手段39とを設けている。
【0026】
トルク変動量推定手段37は、モータ6ので駆動される車輪2の車輪回転数を検出する前記回転センサ24もしくは前記モータ6の回転角を検出する角度センサ36から得られる回転数の変動量、車輪用軸受4に設けられた荷重センサ41が検出する路面・タイヤ間の車両進行方向の荷重Fx の変動量、またはモータ6の電流検出手段35が検出するモータ電流の変動量から、車輪用軸受4、モータ6、または減速機7に起因するトルク変動を含むトルク変動量Δτを、定められた規則により推定する手段である。
【0027】
異常対応モータ駆動制御手段38は、トルク変動量推定手段37で推定したトルク変動量Δτが閾値Δτ0 を超えるか否かを監視して、超えたと判定したきに、インバータ装置22から出力するモータトルク指令またはモータ電流に制限を与える手段である。この制限は、例えば、モータ駆動制御部33からPWMドライバ32に与える電流指令を、モータ駆動制御部33の出力部で制限することで行う。上記制限は、モータ駆動制御部33内における、電流指令に変換するよりも前の、モータトルク指令の処理の段階で制限を行うようにしても良い。
【0028】
前記異常報告手段39は、異常対応モータ駆動制限手段38により、前記トルク変動量Δτが閾値Δτ0 を超えたと判定した時に、前記ECUに異常発生情報を出力する手段である。
【0029】
図3は、トルク変動量推定手段37と異常対応モータ駆動制御手段38の具体例を示す。この例は、回転センサ24の回転数の変動量からトルク変動量Δτを推定する場合の例である。トルク変動量推定手段37は、回転センサ24の出力する回転数信号を通過させるハイパスフィルタ37aと、ハイパスフィルタ37aを通過した回転数信号の振幅を検出する振幅検出回路37bとで構成され、振幅検出回路37bの検出する振幅値を、推定値となるトルク変動量Δτとする。ハイパスフィルタ37aのカット周波数は、インホイールモータ駆動装置8等の構成やその回転数に応じて適宜設定され、例えば10Hz、または100Hz等とされる。
【0030】
異常対応モータ駆動制御手段38は、異常検出部38aと、モータ駆動制限部38bとでなる。異常検出部38aは、前記閾値Δτ0 を設定した閾値設定手段38abと、比較手段38aaとを有する。比較手段38aaは、トルク変動量推定手段37の出力するトルク変動量Δτと閾値Δτ0 を比較し、トルク変動量Δτが閾値Δτ0 を超えた否かを判定する。
モータ駆動制御部38bは、比較手段38aaが閾値Δτ0 を超えたことを示す信号の出力に応答して、インバータ装置22の出力するモータトルク指令またはモータ電流に制限を与える。このモータトルク指令またはモータ電流の制限は、例えば定められた割合で低下させるようにしても良く、また上限を規制する制御であっても良い。
【0031】
上記構成によるトルク変動の推定、およびその推定に応じた制御につき説明する。
車両を一定速度で走行させる場合であっても、また加速や減速を行う場合においても、実際には、車輪回転数、モータ回転数などの回転数は、ある程度の周波数の増減変動を繰り返す。例えば図4に示すように、実際の回転数の変化曲線aは、基本的な回転数の変化曲線bに対して、増減変動の繰り返し成分cが重畳した曲線となる。
図5に曲線dで示すように、路面・タイヤ間に作用する車両進行方向の荷重も、走行時は常に増減変動を繰り返す。同図に曲線eで示すように、モータ電流も、走行時は常に僅かな増減変動を繰り返す。
【0032】
これらの回転数や、路面・タイヤ間の荷重、およびモータ電流における上記の増減変動の繰り返しに成分は、車輪用軸受4や、減速機7、モータ6等に起因するトルク変動よるものが大きい。例えば、車輪用軸受4や減速機7において、回転による転がり接触や滑り接触する部分の異常摩耗等による摩擦増大部分があれば、その部分の1回転の1回のトルク増が発生し、上記車輪回転数、モータ回転数、車両進行方向の荷重の変動成分となる。また、上記異常摩耗はモータ電流にも影響する。
【0033】
図2のトルク変動量推定手段37は、上記のようにして生じる回転数や車両進行方向の荷重、モータ電流の変動量から、車輪用軸受4、モータ6、またはモータ6と車輪2間に介在した減速機7に起因するトルク変動を含むトルク変動量Δτを、定められた規則により推定する。ここで言う「定められた規則」は、シミュレーション等により、適宜に定めればよい。なお、上記回転数や車両進行方向の荷重、モータ電流の変動量には、トルク変動以外の要因によって生じる変動量を含むが、トルク変動が要因となるものが多い。トルク変動以外の要因によるものが含まれていても、異常と判定される場合が余分に生じるだけで、トルク変動とみなしても信頼性の面からは問題がない。
なお、トルク変動量推定手段33が出力するトルク変動量は、必ずしもトルクの単位でなくても良く、トルク変動として扱うための値であれば良く、回転数等の単位でも良い。
【0034】
異常対応モータ駆動制御手段38は、この推定されたトルク変動量が閾値を超えるか否かを監視し、超えたと判定したきに、インバータ装置22の出力するモータトルク指令またはモータ電流に制限を与える。上記のようにトルク変動量推定手段37で推定したトルク変動量が閾値を超える場合は、車輪用軸受4や、減速機7、モータ6等に何らかの障害が発生している場合が多いと考えられる。そのため、インバータ装置22の出力するモータトルク指令またはモータ電流に制限を与えることで、安全性が高められる。モータトルク指令またはモータ電流の制限は、例えば定められた割合で低下させるか、または上限を規制する制御である。
【0035】
図3の具体例で説明すると、トルク変動量推定手段37は、回転センサ24の出力する回転数信号をハイパスフィルタ37aに通し、低周波数となる図4の基本的な回転数の変化曲線bを除去して、上下変動の繰りし成分cを抽出する。このように抽出された増減変動の繰りし成分cの振幅を振幅検出回路37で検出される。検出された振幅値を、トルク変動量Δτとする。異常対応モータ駆動制御手段38は、異常検出部38aで、上記のトルク変動量の推定値Δτを閾値Δτ0 と比較し、トルク変動量の推定値Δτが閾値Δτ0 を超えた否かを判定する。モータ駆動制限部38bは、閾値Δτ0 を超えたとされる判定結果に応答し、インバータ装置22の出力するモータトルク指令またはモータ電流に制限を与える。
【0036】
このように、トルク変動量推定手段37および異常対応モータ駆動制御手段38を設けることで、車輪用軸受4、モータ6、減速機7等の異常に対して、適切な車両の駆動が行えて、これら車輪用軸受4、モータ6、減速機7等の信頼性確保を行うことができる。
インホイールモータ駆動装置8の場合、コンパクト化を図る結果、車輪用軸受4、減速機7、およびモータ6は、材料使用量の削減、モータ6の高速回転化を伴うため、これらの信頼性確保が重要な課題となる。そのため、前記トルク変動量推定手段37や異常対応モータ駆動制御手段38を設けたことによる信頼性確保が、より効果的となる。
特に、減速7が1/6以上の高減速比を有するものである場合や、サイクロイド減速機である場合は、モータ6の小型化が図れるが、モータ6の発生トルクを減速機が増大してタイヤに伝達するため、特にモータ6の異常の影響は大きい。そのため、この実施形態による信頼性確保が、より効果的となる。
また、上記のトルク変動量推定手段37および異常対応モータ駆動制御手段38は、ECU21の制御下で機能するインバータ装置22に設けたため、ECU21に設ける場合に比べて、異常発生時に即座にモータ駆動の安全のため制御が行える。
【0037】
異常報告手段39は、異常対応モータ駆動制限手段38により、前記トルク変動量が閾値を超えたと判定した時に、ECU21に異常発生情報を出力する。
インバータ装置22に設けられた異常対応モータ駆動制限手段38でモータトルク指令やモータ電流に制限を与えた場合、車両の他の部分にも影響が生じる。ECU22は、車両全般を統括して制御する装置であるため、インバータ装置22における異常対応モータ駆動制限手段38により、前記トルク変動量が閾値を超えたと判定したときは、ECU21に異常発生情報を出力することで、ECU21により車両全体の適切な制御が行える。また、ECU21はインバータ装置22に駆動の指令を与える上位制御手段であり、インバータ装置22による応急的な制御の後、ECU21により、その後の駆動のより適切な制御を行うことも可能となる。ECU21は、上記異常報告手段39から異常の報告を受けた場合、例えば、表示装置27の画面に異常の旨の表示を行って運転者に知らせるようにするのが良い。
【0038】
次に、図6〜図8と共に、前記インホイールモータ駆動装置8の具体例を示す。このインホイールモータ駆動装置8は、車輪用軸受4とモータ6との間に減速機7を介在させ、車輪用軸受4で支持される駆動輪である車輪2のハブとモータ6の回転出力軸74とを同軸心上で連結してある。減速機7は、サイクロイド減速機であって、モータ6の回転出力軸74に同軸に連結される回転入力軸82に偏心部82a,82bを形成し、偏心部82a,82bにそれぞれ軸受85を介して曲線板84a,84bを装着し、曲線板84a,84bの偏心運動を車輪用軸受4へ回転運動として伝達する構成である。なお、この明細書において、車両に取り付けた状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。
【0039】
車輪用軸受4は、内周に複列の転走面53を形成した外方部材51と、これら各転走面53に対向する転走面54を外周に形成した内方部材52と、これら外方部材51および内方部材52の転走面53,54間に介在した複列の転動体55とで構成される。内方部材52は、駆動輪を取り付けるハブを兼用する。この車輪用軸受4は、複列のアンギュラ玉軸受とされていて、転動体55はボールからなり、各列毎に保持器56で保持されている。上記転走面53,54は断面円弧状であり、各転走面53,54は接触角が背面合わせとなるように形成されている。外方部材51と内方部材52との間の軸受空間のアウトボード側端は、シール部材57でシールされている。
【0040】
外方部材51は静止側軌道輪となるものであって、減速機7のアウトボード側のハウジング83bに取り付けるフランジ51aを有し、全体が一体の部品とされている。フランジ51aには、周方向の複数箇所にボルト挿通孔64が設けられている。また、ハウジング83bには,ボルト挿通孔64に対応する位置に、内周にねじが切られたボルト螺着孔94が設けられている。ボルト挿通孔94に挿通した取付ボルト65をボルト螺着孔94に螺着させることにより、外方部材51がハウジング83bに取り付けられる。
【0041】
内方部材52は回転側軌道輪となるものであって、車輪取付用のハブフランジ59aを有するアウトボード側材59と、このアウトボード側材59の内周にアウトボード側が嵌合して加締めによってアウトボード側材59に一体化されたインボード側材60とでなる。これらアウトボード側材59およびインボード側材60に、前記各列の転走面54が形成されている。インボード側材60の中心には貫通孔61が設けられている。ハブフランジ59aには、周方向複数箇所にハブボルト66の圧入孔67が設けられている。アウトボード側材59のハブフランジ59aの根元部付近には、駆動輪および制動部品(図示せず)を案内する円筒状のパイロット部63がアウトボード側に突出している。このパイロット部63の内周には、前記貫通孔61のアウトボード側端を塞ぐキャップ68が取り付けられている。
【0042】
減速機7は、上記したようにサイクロイド減速機であり、図7のように外形がなだらかな波状のトロコイド曲線で形成された2枚の曲線板84a,84bが、それぞれ軸受85を介して回転入力軸82の各偏心部82a,82bに装着してある。これら各曲線板84a,84bの偏心運動を外周側で案内する複数の外ピン86を、それぞれハウジング83bに差し渡して設け、内方部材2のインボード側材60に取り付けた複数の内ピン88を、各曲線板84a,84bの内部に設けられた複数の円形の貫通孔89に挿入状態に係合させてある。回転入力軸82は、モータ6の回転出力軸74とスプライン結合されて一体に回転する。なお、回転入力軸82はインボード側のハウジング83aと内方部材52のインボード側材60の内径面とに2つの軸受90で両持ち支持されている。
【0043】
モータ6の回転出力軸74が回転すると、これと一体回転する回転入力軸82に取り付けられた各曲線板84a,84bが偏心運動を行う。この各曲線板84a,84bの偏心運動が、内ピン88と貫通孔89との係合によって、内方部材52に回転運動として伝達される。回転出力軸74の回転に対して内方部材52の回転は減速されたものとなる。例えば、1段のサイクロイド減速機で1/10以上の減速比を得ることができる。
【0044】
前記2枚の曲線板84a,84bは、互いに偏心運動が打ち消されるように180°位相をずらして回転入力軸82の各偏心部82a,82bに装着され、各偏心部82a,82bの両側には、各曲線板84a,84bの偏心運動による振動を打ち消すように、各偏心部82a,82bの偏心方向と逆方向へ偏心させたカウンターウエイト91が装着されている。
【0045】
図8に拡大して示すように、前記各外ピン86と内ピン88には軸受92,93が装着され、これらの軸受92,93の外輪92a,93aが、それぞれ各曲線板84a,84bの外周と各貫通孔89の内周とに転接するようになっている。したがって、外ピン86と各曲線板84a,84bの外周との接触抵抗、および内ピン88と各貫通孔89の内周との接触抵抗を低減し、各曲線板84a,84bの偏心運動をスムーズに内方部材52に回転運動として伝達することができる。
【0046】
図6において、モータ6は、円筒状のモータハウジング72に固定したモータステータ73と、回転出力軸74に取り付けたモータロータ75との間にラジアルギャップを設けたラジアルギャップ型のIPMモータである。回転出力軸74は、減速機7のインボード側のハウジング83aの筒部に2つの軸受76で片持ち支持されている。また、モータハウジング72の周壁部には冷却液流路95が設けられている。この冷却液流路95に潤滑油もしくは水溶性の冷却剤を流すことにより、モータステータ73の冷却が行われる。
【0047】
モータステータ73は、軟質磁性体からなるステータコア部77とコイル78とでなる。ステータコア部77は、その外周面がモータハウジング72の内周面に嵌合して、モータハウジング72に保持されている。モータロータ75は、モータステータ73と同心に回転出力軸74に外嵌するロータコア部79と、このロータコア部79に内蔵される複数の永久磁石80とでなる。
【0048】
モータ6には、モータステータ73とモータロータ75の間の相対回転角度を検出する複数(ここでは2つ)の角度センサ36A,36Bが設けられる。これら角度センサ36A,36Bは、図1,図2における角度センサ36である。各角度センサ36A,36Bは、モータステータ73とモータロータ75の間の相対回転角度を表す信号を検出して出力する角度センサ本体70と、この角度センサ本体70の出力する信号から角度を演算する角度演算回路71とを有する。角度センサ本体70は、回転出力軸74の外周面に設けられる被検出部70aと、モータハウジング72に設けられ前記被検出部70aに例えば径方向に対向して近接配置される検出部70bとでなる。被検出部70aと検出部70bは軸方向に対向して近接配置されるものであっても良い。ここでは、各角度センサ36A,36Bとして、互いに種類の異なるものが用いられている。すなわち、例えば一方の角度センサ36Aとして、その角度センサ本体70の被検出部70aが磁気エンコーダからなるものが用いられ、他方の角度センサ36Bとしてレゾルバが用いられる。モータ6の回転制御は上記モータコントール部29(図1,2)により行われる。このモータ6では、その効率を最大にするため、角度センサ36A,36Bの検出するモータステータ73とモータロータ75の間の相対回転角度に基づき、モータステータ73のコイル78へ流す交流電流の各波の各相の印加タイミングを、モータコントール部29のモータ駆動制御部33によってコントロールするようにされている。
なお、インホイールモータ駆動装置8のモータ電流の配線や各種センサ系,指令系の配線は、モータハウジング72等に設けられたコネクタ99により纏めて行われる。
【0049】
図2に示す前記荷重センサ24は、例えば図9に示す複数のセンサユニット120と、これらセンサユニット120の出力信号を処理する信号処理ユニット130とで構成される。センサユニット120は、車輪用軸受4における静止側軌道輪である外方部材51の外径面の4か所に設けられる。図9は、外方部材1をアウトボード側から見た正面図を示す。ここでは、これらのセンサユニット120が、タイヤ接地面に対して上下位置および左右位置となる外方部材51における外径面の上面部、下面部、右面部、および左面部に設けられている。信号処理ユニット130は、外方部材51に設けられていても良く、まインバータ装置22のモータコントロール部29に設けられていても良い。
【0050】
信号処理ユニット130は、上記4箇所のセンサユニット120の出力を比較し、定められた演算式に従って、車輪用軸受4に作用する各荷重、具体的には、車輪2の路面・タイヤ間で作用荷重となる直方向荷重Fz 、駆動力や制動力となる車両進行方向荷重Fx 、および軸方向荷重Fy を演算し、出力する。前記センサユニット120を4つ設け、各センサユニット120を、タイヤ接地面に対して上下位置および左右位置となる外方部材51の外径面の上面部、下面部、右面部、および左面部に円周方向90度の位相差で等配しているので、車輪用軸受4に作用する垂直方向荷重Fz 、車両進行方向荷重Fx 、軸方向荷重Fy を精度良く推定することができる。垂直方向荷重Fz は、上下2つのセンサユニット120の出力を比較することで得られ、車両進行方向荷重Fx は、前後2つのセンサユニット120の出力を比較することで得られる。軸方向荷重Fy は、4つのセンサユニット120の出力を比較することで得られる。信号処理ユニット130による上記各荷重Fx ,Fy ,Fz の演算は、試験やシミュレーションで求められた値を基に、演算式やパラメータを設定しておくことで、精度良く行うことができる。なお、より具体的には、上記の演算には各種の補正を行うが、補正については説明を省略する。
【0051】
上記各センサユニット120は、例えば、図10および図11に拡大平面図および拡大断面図で示すように、歪み発生部材121と、この歪み発生部材121に取り付けられて歪み発生部材121の歪みを検出する歪みセンサ122とでなる。歪み発生部材121は、鋼材等の弾性変形可能な金属製の厚さ3mm以下の薄板材からなり、平面概形が全長にわたり均一幅の帯状で中央の両側辺部に切欠き部121bを有する。また、歪み発生部材121は、外輪1の外径面にスペーサ123を介して接触固定される2つの接触固定部121aを両端部に有する。歪みセンサ122は、歪み発生部材121における各方向の荷重に対して歪みが大きくなる箇所に貼り付けられる。ここでは、その箇所として、歪み発生部材121の外面側で両側辺部の切欠き部121bで挟まれる中央部位が選ばれており、歪みセンサ122は切欠き部121bの周辺の周方向の歪みを検出する。
【0052】
前記センサユニット120は、その歪み発生部材121の2つの接触固定部121aが、外輪1の軸方向に同寸法の位置で、かつ両接触固定部121aが互いに円周方向に離れた位置に来るように配置され、これら接触固定部121aがそれぞれスペーサ123を介してボルト124により外輪1の外径面に固定される。前記各ボルト124は、それぞれ接触固定部121aに設けられた径方向に貫通するボルト挿通孔125からスペーサ123のボルト挿通孔126に挿通し、外方部材51の外周部に設けられたねじ孔127に螺合させる。このように、スペーサ123を介して外方部材51の外径面に接触固定部121aを固定することにより、薄板状である歪み発生部材121における切欠き部121bを有する中央部位が外輪1の外径面から離れた状態となり、切欠き部121bの周辺の歪み変形が容易となる。接触固定部121aが配置される軸方向位置として、ここでは外方部材51のアウトボード側列の転走面53の周辺となる軸方向位置が選ばれる。ここでいうアウトボード側列の転走面53の周辺とは、インボード側列およびアウトボード側列の転走面53の中間位置からアウトボード側列の転走面53の形成部までの範囲である。外方部材51の外径面における前記スペーサ123が接触固定される箇所には平坦部1bが形成される。
【0053】
歪みセンサ122としては、種々のものを使用することができる。例えば、歪みセンサ122を金属箔ストレインゲージで構成することができる。その場合、通常、歪み発生部材121に対しては接着による固定が行われる。また、歪みセンサ122を歪み発生部材121上に厚膜抵抗体にて形成することができる。
【0054】
図12は、図1,図2の回転センサ24の一例を示す。この回転センサ24は、車輪用軸受4における内方部材52の外周に設けられた磁気エンコーダ24aと、この磁気エンコーダ24aに対向して外方部材51に設けられた磁気センサ24bとでなる。磁気エンーダ24aは、円周方向に磁極N,Sを交互に着磁したリング状の部材である。この例では、回転センサ24は両列の転動体55,55間に配置しているが、車輪用軸受4の端部に設置しても良い。
【符号の説明】
【0055】
1…車体
2,3…車輪
4,5…車輪用軸受
6…モータ
7…減速機
8…インホイールモータ駆動装置
9,10…電動式のブレーキ
11…転舵機構
12…操舵機構
19…バッテリ
21…ECU
22…インバータ装置
24…回転センサ
28…パワー回路部
29…モータコントール部
31…インバータ
32…PWMドライバ
33…モータ駆動制御部
35…電流検出手段
36…角度センサ
37…トルク変動量推定手段
38…異常対応モータ駆動制御手段
39…異常報告手段
41…荷重センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を駆動するモータと、車両全般を制御する電気制御ユニットであるECUと、バッテリの直流電力を前記モータの駆動に用いる交流電力に変換するインバータを含むパワータ回路部および前記ECUの制御に従って少なくとも前記パワー回路部を制御するモータコントロール部を有するインバータ装置とを備えた電気自動車において、
車輪回転数を検出する回転センサもしくは前記モータの回転角を検出する角度センサから得られる回転数の変動量、車輪用軸受に設けられた荷重センサが検出する路面・タイヤ間の車両進行方向の荷重の変動量、または前記モータの電流の検出手段が検出するモータ電流の変動量から、車輪用軸受、モータ、またはモータと車輪間に介在した減速機に起因するトルク変動を含むトルク変動量を、定められた規則により推定するトルク変動量推定手段を、前記インバータ装置に設けたことを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
請求項1において、前記トルク変動量推定手段で推定したトルク変動量が閾値を超えるか否かを監視し、超えたと判定したきに、前記インバータ装置の出力するモータトルク指令またはモータ電流に制限を与える異常対応モータ駆動制限手段を前記インバータ装置に設けた電気自動車。
【請求項3】
請求項2において、前記異常対応モータ駆動制限手段により、前記トルク変動量が閾値を超えたと判定した時に、前記ECUに異常発生情報を出力する異常報告手段を前記インバータ装置に設けた電気自動車。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記モータは、一部または全体が車輪内に配置されて前記モータと車輪用軸受と減速機とを含むインホイールモータ駆動装置を構成する電気自動車。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記モータの回転を減速する減速機を備え、この減速機は、1/6以上の高減速比を有する電気自動車。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記モータの回転を減速する減速機を備え、前記減速機はサイクロイド減速機である電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−178903(P2012−178903A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39411(P2011−39411)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】