説明

電気駆動式車両

【課題】車両に新たな遮音手段を搭載することなく、車両に生じるノイズ又は振動を低減することができる電気駆動式車両を提供する。
【解決手段】脱着可能な発電装置11Aを搭載する電気駆動式車両1Aにおいて、電気駆動式車両1A内の車両側ECU30が、電気駆動式車両1Aに生じるノイズ又は振動と逆位相のノイズ又は振動を発生させるように、発電装置11Aの運転状態(例えば、エンジンの回転数、エンジンの出力及び発電機の発電電力のうち少なくとも1つ)を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気駆動式車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンで発電する発電機を搭載し、車両の停車時にバッテリに電力を充電する電気駆動式車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−117404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の車両では、ノイズや振動が少なからず存在する。特に、発電装置を搭載する電気駆動式車両では、発電装置が発するノイズや振動が車両本体に伝播することがある。このため、ノイズや振動の対策として、電気駆動式車両に遮音材が搭載される場合がある。しかし、この場合、遮音材の分だけ電気駆動式車両の製造コストが上昇してしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、新たな遮音手段を搭載することなく、電気駆動式車両に生じるノイズ又は振動を低減することができる電気駆動式車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、電気駆動式車両は、脱着可能な発電装置を搭載する電気駆動式車両であって、前記電気駆動式車両に生じるノイズ又は振動と逆位相のノイズ又は振動を発生させるように、前記発電装置の運転状態を制御する制御手段を備えることを特徴とする。かかる構成によれば、電気駆動式車両に生じるノイズ又は振動が発電装置のノイズ又は振動で相殺されるので、新たな遮音手段を搭載することなしに、電気駆動式車両に生じるノイズ又は振動を低減することができる。
【0007】
好ましくは、前記発電装置は、エンジン及び当該エンジンによって発電される発電機を備え、前記発電装置の運転状態は、前記エンジンの回転数、前記エンジンの出力及び前記発電機の発電電力のうち少なくとも1つであることを特徴とする。かかる構成によれば、発電装置内のエンジンや発電機を制御することにより、容易に電気駆動式車両に生じるノイズ又は振動を低減することができる。
【0008】
好ましくは、前記電気駆動式車両は前記発電装置を複数備えることを特徴とする。かかる構成によれば、複数の発電装置を用いて電気駆動式車両に生じるノイズ又は振動を低減することができる。
【0009】
より好ましくは、前記制御手段は、前記複数の発電装置に含まれる一方のエンジンの回転位相を他方のエンジンの回転位相で相殺するように、少なくとも1つのエンジンの回転数を調整することを特徴とする。かかる構成によれば、複数のエンジンで生じるノイズ又は振動を互いに相殺することで、電気駆動式車両に生じるノイズ又は振動を低減することができる。
【0010】
より好ましくは、電気駆動式車両は、前記複数の発電装置に含まれる複数のエンジンから排出される排気は同一の排気系を介して車外へ排出され、前記複数のエンジンの吸気弁又は排気弁の少なくとも一方を開閉駆動するカム軸の位相を調整する位相調整手段を備えることを特徴とする。かかる構成によれば、カム軸の位相を調整することにより、排気系における排気干渉を抑制することができる。
【0011】
好ましくは、前記制御手段は、前記電気駆動式車両に搭載されている電動モータが発するノイズ音の音圧を前記エンジンが発する音の音圧で相殺するように、前記エンジンの回転数を制御することを特徴とする。かかる構成によれば、電動モータが発するノイズ音を低減することができる。
【0012】
好ましくは、前記制御手段は、前記電気駆動式車両に搭載されている電動モータに供給される電力量を制御することにより、前記エンジンの回転変動又はトルク変動を減少させることを特徴とする。かかる構成によれば、エンジンで生じるノイズ又は振動が減少するので、電気駆動式車両に生じるノイズ又は振動を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新たな遮音手段を搭載することなく、電気駆動式車両に生じるノイズ又は振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電気駆動式車両1Aを模式的に示す図である。
【図2】発電装置11Aを模式的に示す図である。
【図3】車両側ECU30の構成を示す図である。
【図4】電気駆動式車両1Aの変形例を模式的に示す図である。
【図5】電気駆動式車両1Aの排気管の搭載例を示す図である。
【図6】エンジン111の概略構成図である。
【図7】第1のノイズ・振動低減処理を示すフローチャートである。
【図8】車両側ECU30のROM31Bが備える第1のテーブル情報の一例を示す図である。
【図9】第2のノイズ・振動低減処理を示すフローチャートである。
【図10】エンジン回転数の調整前後の両エンジンの回転位相と時間との関係を示す図である。
【図11】排気干渉抑制処理を示すフローチャートである。
【図12】車両側ECU30のROM31Bが備える第2のテーブル情報の一例を示す図である。
【図13】電動モータ13が発するノイズ音の低減処理を示すフローチャートである。
【図14】車両側ECU30のROM31Bが備える第3のテーブル情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【0016】
図1は、電気駆動式車両1Aを模式的に示す図である。図1に示すように、電気駆動式車両1Aは、発電装置11Aと、バッテリ12と、電動モータ13とを備えている。電気駆動式車両1Aは、発電装置11Aを脱着可能に搭載している。発電装置11Aを脱着可能に搭載した電気駆動式車両1Aは、発電装置11Aを搭載していない状態で、且つ発電装置11Aとの電気的な接続が切り離された状態でも運転が可能になっている。電気駆動式車両1Aのうち、脱着可能に搭載される発電装置11A以外の部分は、車両本体を構成している。発電装置11Aはエンジン駆動式の発電装置である。
【0017】
図2は、発電装置11Aを模式的に示す図である。図2に示すように、発電装置11Aは、エンジン111と、発電機112と、発電装置側ECU(Electronic control unit:電子制御装置)113Aと、運転スイッチ114とを備えている。発電機112は例えば、オルタネータである。
【0018】
エンジン111は発電機112を駆動し、駆動された発電機112は交流を発生させる。そして発生した交流は、バッテリ12に充電される前に図示しない整流回路(例えば、発電機112に内蔵されている、又は電気駆動式車両1Aに搭載されている)によって直流に整流される。発電装置側ECU113Aは主にエンジン111を制御するために設けられている。また、発電装置側ECU113Aは、発電装置11Aの発電状態を検出し、当該発電状態を調整又は変更することができる。発電装置11Aの発電状態とは、エンジン111の回転数、エンジン111の出力、及び発電機112の発電電力の少なくとも1つである。運転スイッチ114は、発電装置11Aを運転又は停止するために設けられている。具体的には運転スイッチ114は車両本体との電気的な接続が切り離された状態において、発電装置11Aを単体で運転又は停止することが可能なスイッチとなっている。運転スイッチ114は発電装置側ECU113Aに電気的に接続されている。また、発電装置側ECU113Aは、接続信号を後述する車両側ECU30に定期的に送信する。車両側ECU30は、接続信号を発電装置側ECU113Aから受信することにより発電装置113Aが電気駆動式車両1Aに搭載されたことを認識する。また、発電装置側ECU113Aは、車両側ECU30から応答信号を受信することにより、車両側ECU30と接続したことを認識する。
【0019】
図1に戻り、バッテリ12は直流バッテリであり、発電装置11Aと電気的に且つ脱着可能に接続されている。バッテリ12には、例えば定格電圧DC12Vのバッテリを直列に複数接続したものを適用できる。電動モータ13は走行駆動源であり、直流モータとなっている。電動モータ13はバッテリ12から電力の供給を受け、出力軸14を回転する。そして、その回転出力がトランスミッション15を介して駆動輪である左右一対の後輪2に伝達され、この結果、後輪2が駆動する。このように、電気駆動式車両1Aはシリーズハイブリッド方式の電気駆動式車両となっている。
【0020】
電気駆動式車両1Aは、駆動輪である左右一対の後輪2のほか、操舵輪である左右一対の前輪3と、前輪3を手動操舵するためのハンドル4と、電動モータ13のモータ回転数を変えるためのアクセルペダル5と、車両に制動を付与するためのブレーキペダル6およびブレーキユニット7と、ブレーキペダル6にワイヤ結合されているとともにブレーキユニット7に連結され、各前輪2、各後輪3にそれぞれ設けられたドラムブレーキ8とを備えている。アクセルペダル5には、アクセルペダル5の踏み込み量を検知するアクセル開度センサ25が、ブレーキベダル6には、ブレーキペダル6の踏み込みの有無を検知するブレーキスイッチ26がそれぞれ設けられている。
【0021】
さらに、電気駆動式車両1Aはキースイッチ21を備えている。キースイッチ21はON、OFF間の選択的な切換操作が可能なスイッチとなっている。キースイッチ21は、発電装置11Aおよび電動モータ13に対する運転要求をするための操作手段となっている。具体的にはキースイッチ21がONである場合には運転要求が有りの状態になる。またキースイッチ21がOFFである場合には運転要求が無しの状態になる。
【0022】
さらに電気式駆動車両1Aは車両側ECU30を備えている。図3は、車両側ECU30の構成を示す図である。尚、発電装置側ECU113Aの構成は車両側ECU30の構成と同様である。図3において、車両側ECU30は、CPU31A、ROM31B、RAM31C等を含むマイクロコンピュータ31と入出力回路32とを備えている。ROM31BはCPU31Aが実行する種々の処理が記述されたプログラムやマップデータなどを格納する。CPU31Aは、ROM31Bに格納されたプログラムに基づき、必要に応じてRAM31Cの一時記憶領域を利用しつつ処理を実行することで、車両側ECU30や発電装置側ECU113Aでは、制御手段又は位相調整手段が機能的に実現される。
【0023】
入出力回路32は、不図示のセンサやスイッチから信号を入力すると共に、電動モータ13へ駆動信号を出力する。車両側ECU30には、発電装置11A(具体的には発電装置側ECU113A)が電気的に且つ脱着可能に接続されている。車両側ECU30には電動モータ13などの各種の制御対象が電気的に接続されているほか、キースイッチ21や、アクセル開度センサ25や、ブレーキスイッチ26などの各種のセンサ・スイッチ類が電気的に接続されている。
【0024】
また、車両側ECU30は、バッテリ12から電動モータ13に供給される電力量を制御する。さらに、車両側ECU30は、発電装置11Aが電気式駆動車両1Aに搭載されている場合に、発電装置側ECU113Aを介して、発電装置11Aの発電状態を検出し、当該発電装置11Aの発電状態を調整又は変更することができる。
【0025】
キースイッチ21がOFFの場合、車両側ECU30は各種の制御動作を必要に応じて適宜実行可能な待機状態とされる。待機状態において、車両側ECU30は具体的には例えばセンサ・スイッチ類の状態検出や、電動モータ13以外の各種の制御対象の制御や、運転要求信号の出力などを行うことができる。例えばバッテリ12を構成する複数の定格電圧DC12Vのバッテリがある場合に、これらのバッテリのうちいずれか一つのバッテリは電動モータ13に電力を供給することができる。
【0026】
また、電気式駆動車両1Aは、車両のノイズ又は振動を検出するセンサ41と、電動モータ13が発するノイズ音の音圧を検出するマイク42とを備えている。センサ41及びマイク42は車両側ECU30に接続されている。尚、センサ41及びマイク42の個数は、1つに限定されず、複数のセンサ41及びマイク42が電気式駆動車両1Aに搭載されてもよい。
【0027】
図4は、電気駆動式車両1Aの変形例を模式的に示す図である。図4に示すように、電気駆動式車両1Aは、発電装置11Aに加えて発電装置11Bを備えている。このように、電気駆動式車両1Aは、1つ以上の発電装置を備えることができる。発電装置11Bの構成は、発電装置11Aの構成と同様である。この場合、バッテリ12は、発電装置11A及び11Bの一方又は両方から電力を充電することができる。
【0028】
図5は、電気駆動式車両1Aの排気管の搭載例を示す図である。図5に示すように、発電装置11A及び11Bを搭載する電気駆動式車両1Aでは、搭載性及び触媒低減のため、車両側に設置されている複数の排気管が排気管50として1本の排気系にまとめられている。排気管50は、発電装置11A及び11B内のエンジン111から出力される排気ガスを外部へ排出する。尚、車両側ECU30は、発電装置11A及び/又は11Bの発電装置側ECU113Aと通信することにより、発電装置11A及び/又は11Bの発電状態(即ち、エンジン111の回転数、エンジン111の出力、及び発電機112の発電電力の少なくとも1つ)を検出し、当該発電装置11A及び/又は11Bの発電状態を調整又は変更することができる。
【0029】
図6は、エンジン111の概略構成図である。図6に示すように、エンジン111は、各気筒を開閉する吸気弁121及び排気弁122と、吸気弁121及び排気弁122をそれぞれ開閉駆動するカム軸123及び124と、カム軸123を回転駆動するモータ125と、カム軸124を回転駆動するモータ126とを備えている。さらに、エンジン111は、ピストン127と、ピストン127を上下動するクランク128と、クランク軸129の回転角を検出する回転センサ130と、クランク軸129を回転する動力源131を備えている。
【0030】
発電装置側ECU113Aは、モータ125及び126と、回転センサ130と、動力源131とに接続されている。発電装置側ECU113Aは、モータ125の動作を制御することにより、カム軸123の位相を調整する。また、発電装置側ECU113Aは、モータ126の動作を制御することにより、カム軸124の位相を調整する。発電装置側ECU113Aは、回転センサ130からの信号に従って吸気弁121及び/又は排気弁122の作動タイミングを制御する。また、発電装置側ECU113Aは、クランク軸129を回転する動力源131を制御することにより、ピストン127の上下運動を制御する。
【0031】
尚、車両側ECU30が、発電装置側ECU113Aを介してモータ125の動作を制御することにより、カム軸123の位相を調整してもよい。同様に、車両側ECU30が、発電装置側ECU113Aを介してモータ126の動作を制御することにより、カム軸124の位相を調整してもよい。また、車両側ECU30が、発電装置側ECU113Aを介して回転センサ130からの信号を受信し、その受信した信号に従って吸気弁121及び/又は排気弁122の作動タイミングを制御してもよい。さらに、車両側ECU30は、発電装置側ECU113Aを介してクランク軸129を回転する動力源131を制御することにより、ピストン127の上下運動を制御してもよい。
【0032】
図7は、車両側ECU30で実行される第1のノイズ・振動低減処理を示すフローチャートである。まず、車両側ECU30は、発電装置側ECU113Aから接続信号を受信したか否かを判別する(ステップS1)。発電装置側ECU113Aから接続信号を受信していない場合には(ステップS1でNO)、電気駆動式車両1Aは、発電装置11A及び/又は11Bを搭載していないので、本処理を終了する。一方、発電装置側ECU113Aから接続信号を受信した場合には(ステップS1でYES)、車両側ECU30は、センサ41で検出された車両のノイズ又は振動の値を取得する(ステップS2)。車両側ECU30は、発電装置11A及び/又は11Bがセンサ41で検出されたノイズ又は振動の位相と逆位相のノイズ又は振動を発生するように、発電装置11A及び/又は11Bの運転状態(即ち、エンジン111の回転数、エンジン111の出力、及び発電機112の発電電力の少なくとも1つ)を制御する(ステップS3)。これにより、センサ41で検出されたノイズ又は振動の位相がエンジンの回転振動の逆位相により相殺されるので、センサ41で検出されたノイズ又は振動は低減する。
【0033】
車両側ECU30のROM31Bが、図8に示すような、検出されたノイズ又は振動の値と、制御後のエンジン111の回転数と、制御後のエンジン111の出力と、制御後の発電機112の発電電力との関係を示す第1のテーブル情報を備えていてもよい。この場合、ステップS3では、車両側ECU30は、センサ41で検出されたノイズ又は振動の値と図8の第1のテーブル情報とに基づいて、発電装置11Aの運転状態(即ち、エンジン111の回転数、エンジン111の出力、及び発電機112の発電電力の少なくとも1つ)を制御する。尚、図8の第1のテーブル情報は、これに限定されるものではなく、検出されたノイズ又は振動の値と、制御後のエンジン111の回転数、制御後のエンジン111の出力、及び制御後の発電機112の発電電力の少なくとも1つとの関係を示せばよい。また、図8において、x1〜x3、y1〜y3、z1〜z3及びw1〜w3の値は、電気駆動式車両1Aや発電装置11A及び/又は11Bの種類や仕様によって定まる値である。
【0034】
図7の第1のノイズ・振動低減処理によれば、センサ41で検出されたノイズ又は振動がエンジンの回転振動により相殺されるので、新たな遮音手段を搭載することなく、電気駆動式車両1Aに生じるノイズ又は振動を低減することができる。
【0035】
図9は、車両側ECU30で実行される第2のノイズ・振動低減処理を示すフローチャートである。まず、車両側ECU30は、発電装置11A及び11Bの両方の発電装置側ECU113Aから接続信号を受信したか否かを判別する(ステップS11)。両方の発電装置側ECU113Aから接続信号を受信していない場合には(ステップS11でNO)、当該判別を繰り返す。両方の発電装置側ECU113Aから接続信号を受信した場合には(ステップS11でYES)、車両側ECU30は、発電装置11A及び11Bの両方のエンジンを稼働する制御信号を入力したか否かを判別する(ステップS12)。尚、車両側ECU30は、エンジンを稼働する制御信号を発電装置11A及び11Bの両方の発電装置側ECU113Aから入力してもよいし、又はユーザが操作する入力装置(不図示)から入力してもよい。両方のエンジンを稼働する制御信号を入力していない場合には(ステップS12でNO)、当該判別を繰り返す。両方のエンジンを稼働する制御信号を入力した場合には(ステップS12でYES)、車両側ECU30は、両方のエンジンが備える回転センサ130から、両方の発電装置側ECU113Aを介してクランク軸129の回転角を取得する(ステップS13)。車両側ECU30は、クランク軸129の回転角を取得することにより、エンジンの回転位相又はピストン運動の位相を把握することができる。車両側ECU30は、取得したクランク軸129の回転角に基づいて一方のエンジンの回転位相を他方のエンジンの回転位相で相殺するように、即ち、一方のエンジンのピストン運動の位相が他方のエンジンのピストン運動の位相と逆になるように、少なくとも1つのエンジンの回転数を調整する(ステップS14)。図10に、エンジン回転数の調整前後の両エンジンの回転位相と時間との関係を示す。
【0036】
図9の第2のノイズ・振動低減処理によれば、少なくとも1つのエンジンの回転数を調整することによりエンジン駆動で生じる両発電装置の振動を互いに相殺するので、新たな遮音手段を搭載することなく、電気駆動式車両1Aに生じるノイズ又は振動を低減することができる。電気駆動式車両1Aが発電装置を搭載しないで走行する場合と、電気駆動式車両1Aが2つのエンジンを駆動して走行する場合とで、エンジン駆動による車両の振動に大きな差違は生じなくなる。
【0037】
図11は、車両側ECU30で実行される排気干渉抑制処理を示すフローチャートである。まず、車両側ECU30は、各発電装置側ECU113Aと通信し、電気駆動式車両1Aに搭載されたエンジン111の台数と場所を把握する(ステップS21)。ここでは、電気駆動式車両1Aに複数の発電装置、即ち複数のエンジン111が搭載されているものとする。その後、車両側ECU30は、各発電装置側ECU113Aを介して、エンジンのバルブタイミングを制御する(ステップS22)。具体的には、車両側ECU30は、複数の発電装置側ECU113Aを介して、モータ125又は126の少なくとも一方の動作を制御することにより、複数のエンジンに含まれる、吸気弁121を開閉駆動するカム軸123又は排気弁122を開閉駆動するカム軸124の少なくとも一方の位相を調整する。尚、車両側ECU30は、複数の発電装置側ECU113Aにモータ125又は126の少なくとも一方の動作を制御する動作制御信号を出力し、複数の発電装置側ECU113Aの各々が当該動作制御信号に応じて、エンジンの吸気弁121を開閉駆動するカム軸123又は排気弁122を開閉駆動するカム軸124の少なくとも一方の位相を調整してもよい。
【0038】
例えば、車両側ECU30は、一方のエンジンの排気弁122の開期間が他方のエンジンの排気弁122の開期間と一致しないように、一方のエンジンのカム軸124の位相を調整する。これにより、一方のエンジンから排出された排気ガスの圧力が、他方のエンジンからの排気の邪魔をしないようになる、即ち、排気干渉が抑制される。同様の効果は、一方のエンジンの吸気弁121の開期間が他方のエンジンの吸気弁121の開期間と一致しないように一方のエンジンのカム軸123の位相が調整された場合でも得られる。
【0039】
図11の排気干渉抑制処理によれば、複数のエンジンに含まれる、カム軸123又はカム軸124の少なくとも一方の位相が調整されるので、排気干渉が抑制される。
【0040】
図12は、車両側ECU30のROM31Bが備える第2のテーブル情報を示す図である。図12の第2のテーブル情報は、測定音圧と、目標音圧と、エンジン111の回転数と、エンジン111の出力との関係を示す。測定音圧の欄は、電動モータ13が発するノイズ音の音圧を示す。目標音圧の欄は、測定音圧の値を減少させる場合の目標値を示す。エンジン111の回転数の欄は、目標音圧を達成するエンジン111の回転数の値を示す。エンジン111の出力の欄は、目標音圧を達成するエンジン111の出力の値を示す。目標音圧は、エンジン111から発する音の音圧で電動モータ13が発するノイズ音の音圧を相殺することにより達成される。尚、図12の第2のテーブル情報は、これに限定されるものではなく、測定音圧と、目標音圧と、エンジン111の回転数及びエンジン111の出力の少なくとも1つとの関係を示せばよい。また、図12において、M1〜M2、N1〜N3、O1〜O3及びP1〜P3の値は、電動モータ13や発電装置11A及び/又は11Bの種類や仕様によって定まる値である。
【0041】
図13は、車両側ECU30で実行される電動モータ13が発するノイズ音の低減処理を示すフローチャートである。まず、車両側ECU30は、マイク42を使って、電動モータ13が発するノイズ音の音圧を測定する(ステップS31)。次に、車両側ECU30は、測定されたノイズ音の音圧と、図12の第2のテーブル情報とに基づいて、目標音圧と、エンジン111の回転数又は出力とを決定する(ステップS32)。それから、車両側ECU30は、決定されたエンジン111の回転数又は出力に応じて、発電装置11A及び/又は11Bを介してエンジン111の回転数又は出力を調整する(ステップS33)。尚、車両側ECU30は、決定されたエンジン111の回転数又は出力を示す信号を発電装置11A及び/又は11Bに出力し、発電装置11A及び/又は11Bの発電装置側ECU113Aがエンジン111の回転数又は出力を示す信号に応じて、エンジン111の回転数又は出力を調整してもよい。
【0042】
図13のノイズ音の低減処理によれば、エンジン111の回転数又は出力を調整することによりエンジン111から発する音の音圧で電動モータ13が発するノイズ音の音圧を相殺するので、電動モータ13が発するノイズ音を低減することができる。
【0043】
ところで、エンジン111の回転変動又はトルク変動が大きくなると、発電装置11A及び/又は11Bの発電効率は悪化する。そこで、車両側ECU30は、電動モータ13に供給される電力量を制御することにより、エンジン111の回転変動又はトルク変動を減少させるようにしてもよい(以下、回転変動又はトルク変動の低減処理という)。これにより、電気駆動式車両1Aに生じるノイズ又は振動を低減することができる。また、この場合、車両側ECU30のROM31Bが、図14に示すような、エンジン111の回転変動又はトルク変動と電動モータ13に供給される電力量との関係を示す第3のテーブル情報を有し、車両側ECU30は、第3のテーブル情報と、実際の検出されたエンジン111の回転変動又はトルク変動とに基づいて電動モータ13に供給される電力量を制御する。エンジン111の回転変動は、回転センサ130からの出力によって検出される。また、エンジン111のトルク変動は、エンジン111にトルクセンサを装着することによって(具体的には、発電装置側ECU113Aにトルクセンサを接続する)、トルクセンサからの出力によって検出される。
【0044】
車両側ECU30は、図7の第1のノイズ・振動低減処理、図9の2のノイズ・振動低減処理、図11の排気干渉抑制処理、図13のノイズ音の低減処理、及び上述した回転変動又はトルク変動の低減処理を適宜組み合わせて実行してもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、センサ41で検出されたノイズ又は振動をエンジン111の回転振動により相殺するので、新たな遮音手段を搭載することなしに、電気駆動式車両1Aに生じるノイズ又は振動を低減することができる。
【0046】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0047】
1A 電気駆動式車両
11A 発電装置
12 バッテリ
13 電動モータ
30 車両側ECU
31 マイクロコンピュータ
32 入出力回路
41 センサ
42 マイク
111 エンジン
112 発電機
113A 発電装置側ECU
121 吸気弁
122 排気弁
123,124 カム軸
125,126 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱着可能な発電装置を搭載する電気駆動式車両であって、
前記電気駆動式車両に生じるノイズ又は振動と逆位相のノイズ又は振動を発生させるように、前記発電装置の運転状態を制御する制御手段を備えることを特徴とする電気駆動式車両。
【請求項2】
前記発電装置は、エンジン及び当該エンジンによって発電される発電機を備え、
前記発電装置の運転状態は、前記エンジンの回転数、前記エンジンの出力及び前記発電機の発電電力のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の電気駆動式車両。
【請求項3】
前記電気駆動式車両は前記発電装置を複数備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気駆動式車両。
【請求項4】
前記制御手段は、前記複数の発電装置に含まれる一方のエンジンの回転位相を他方のエンジンの回転位相で相殺するように、少なくとも1つのエンジンの回転数を調整することを特徴とする請求項3に記載の電気駆動式車両。
【請求項5】
前記複数の発電装置に含まれる複数のエンジンから排出される排気は同一の排気系を介して車外へ排出され、
前記複数のエンジンの吸気弁又は排気弁の少なくとも一方を開閉駆動するカム軸の位相を調整する位相調整手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の電気駆動式車両。
【請求項6】
前記制御手段は、前記電気駆動式車両に搭載されている電動モータが発するノイズ音の音圧を前記エンジンが発する音の音圧で相殺するように、前記エンジンの回転数を制御することを特徴とする請求項2に記載の電気駆動式車両。
【請求項7】
前記制御手段は、前記電気駆動式車両に搭載されている電動モータに供給される電力量を制御することにより、前記エンジンの回転変動又はトルク変動を減少させることを特徴とする請求項2に記載の電気駆動式車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−131803(P2011−131803A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294437(P2009−294437)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】