説明

電池パックの制御装置

【課題】複数の電池パックを用いたシステムにおいて、電流値に基づいて充電させるべき電池パックを適切に選択することによって安全性を確保することが可能な電池パックの制御装置を提供する。
【解決手段】電池パックの制御装置は、第1の電池パック及び第2の電池パックを充電させるための制御を行う。この場合、第1の電池パックはエネルギー密度が高く、第2の電池パックはエネルギー密度が低いが熱的に安定している。電池パックの制御装置は、電流値に基づいて、第1の電池パック及び第2の電池パックのいずれかに対して電流を供給する。具体的には、電流値が所定値以上である場合には第2の電池パックに対して電流を供給し、電流値が所定値未満である場合には第1の電池パックに対して前記電流を供給する。これにより、第1の電池パックが熱的に不安定になることを防止して安全性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックを充電させるための制御を行う電池パックの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば電気自動車やハイブリッド車両などに用いられる電池システムにおいて、電池の充電状態に基づいて当該電池に対する充電を制御する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、少なくともニッケル系正極を用いた電池から構成される電池パックの制御装置において、充電状態に基づいて、電池パックを充電させるための電流を調整する技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−354702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された技術では、充電状態が過充電付近の状態にある際に充電させた場合に、電池パックが熱的に不安定になる可能性があった。これは、過充電状態にある電池パックに対して高電流を流したためであると考えられる。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、複数の電池パックを用いたシステムにおいて、電流値に基づいて充電させるべき電池パックを適切に選択することによって安全性を確保することが可能な電池パックの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点では、エネルギー密度が高い電池で構成された第1の電池パック、及び前記第1の電池パックよりもエネルギー密度が低く、且つ前記第1の電池パックよりも熱的に安定している電池で構成された第2の電池パックに対して、充電させるための制御を行う電池パックの制御装置は、充電させるべき電流の電流値を取得する電流値取得手段と、前記電流値に基づいて前記第1の電池パック及び前記第2の電池パックのいずれかに対して前記電流を供給して充電させる制御を行い、前記電流値が所定値以上である場合には、前記第2の電池パックに対して前記電流を供給し、前記電流値が前記所定値未満である場合には、前記第1の電池パックに対して前記電流を供給する充電制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の電池パックの制御装置は、第1の電池パック及び第2の電池パックに対して、充電させるための制御を行う。この場合、第1の電池パックはエネルギー密度が高い電池で構成され、第2の電池パックは第1の電池パックよりもエネルギー密度が低いが、第1の電池パックよりも熱的に安定している電池で構成される。電池パックの制御装置は、充電させるべき電流の電流値に基づいて、第1の電池パック及び第2の電池パックのいずれかに対して電流を供給して充電させる制御を行う。具体的には、電流値が所定値以上である場合には、第2の電池パックに対して電流を供給し、電流値が所定値未満である場合には、第1の電池パックに対して電流を供給する。これにより、電流値に基づいて電流を供給すべき電池パックを適切に選択するため、第1の電池パックが熱的に不安定になることを防止することができる。つまり、第1の電池パックが満充電状態に突入した場合にも、第1の電池パックの安全性を確保することが可能となる。また、第1の電池パックの充電状態を検出するセンサが故障等していた場合にも、第1の電池パックの安全性を確実に確保することができる。
【0008】
上記の電池パックの一態様では、前記第1の電池パックの充電状態を取得する充電状態取得手段を更に備え、前記充電制御手段は、前記電流値及び前記第1の電池パックの充電状態に基づいて、前記第1の電池パック及び前記第2の電池パックのいずれかに対して前記電流を供給する。
【0009】
この態様では、充電制御手段は、電流値だけでなく第1の電池パックの充電状態も考慮に入れて、電流を供給する電池パックを切り替える。これにより、第1の電池パックが熱的に不安定になることを防止しつつ、電流を供給すべき電池パックを適切に選択することができる。
【0010】
上記の電池パックの制御装置において好適には、前記充電制御手段は、前記電流値が前記所定値未満である場合、又は、前記第1の電池パックの充電状態が所定の値未満である場合、前記第1の電池パックに対して前記電流を供給し、前記電流値が前記所定値以上であり、且つ前記第1の電池パックの充電状態が所定の値以上である場合、前記第2の電池パックに対して前記電流を供給することができる。
【0011】
好適には、前記第1の電池パックは、酸化物系正極を用いた電池で構成され、前記第2の電池パックは、ポリアニオン系正極を用いた電池で構成される。
【0012】
また、好適には、前記第1の電池パックは、供給される電流によって駆動する駆動部を駆動させるための電流を出力し、前記第2の電池パックは、前記第1の電池パックに対して電流を出力する。即ち、第1の電池パックをメインの電池パックとして用い、第2の電池パックを補助的な電池パックとして用いる。
【0013】
この場合、第1の電池パックには、第2の電池パックから、所定値未満の電流値の電流が供給される。これにより、第1の電池パックには、第2の電池パックを介して、電流値が低減された電流(詳しくは、電流値が所定値未満となった電流)が供給されることとなる。したがって、第1の電池パックに対して、高電流がそのまま供給されることを防止することができる。
【0014】
上記の電池パックの制御装置において好適には、前記第1の電池パック及び前記第2の電池パックは、ハイブリッド車両用のバッテリとして用いられ、前記充電制御手段は、前記ハイブリッド車両が有するモータが発電した電流を、前記第1の電池パック及び前記第2の電池パックのいずれかに対して供給して充電させる制御を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0016】
[全体構成]
図1は、本実施形態に係る電池パックの制御装置が適用されたシステムの概略構成を示す。本システムは、主に、回生ユニット1と、電流値検出部2と、スイッチ3と、電池パックユニット15(一点鎖線で示す)と、SOCセンサ7と、コントローラ10と、を有する。なお、図1では、電池パックの制御装置をハイブリッド車両に適用したシステムを示している。
【0017】
回生ユニット1は、発電機として構成されており、発電した電流を電流値検出部2に供給する。例えば、回生ユニット1は、モータジェネレータ又はオルタネータなどで構成される。この場合、モータジェネレータは、ブレーキ(回生ブレーキ)による回生エネルギーを電気エネルギーに変換する。また、オルタネータは、エンジンから運動エネルギーが伝達され、このエネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0018】
電流値検出部2は、回生ユニット1から供給される電流の電流値を検出するセンサである。電流値検出部2は、検出した電流値に対応する検出信号S2をコントローラ10に対して供給する。スイッチ3は、後述する酸化物系正極を用いた電池パック4、及びポリアニオン系正極を用いた電池パック5のいずれかに対して電流が供給されるように、切り替え可能に構成されている。この場合、スイッチ3は、コントローラ10から供給される制御信号S3によって、切り替えが制御される。
【0019】
電池パックユニット15は、酸化物系正極を用いた電池パック4と、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5と、DC−DCコンバータ6と、を有する。なお、酸化物系正極を用いた電池パック4及びポリアニオン系正極を用いた電池パック5を区別しないで用いる場合には、これらを単に「電池パック」とも呼ぶ。電池パックユニット15は、コントローラ10によって電流を供給すべき電池パックが選択され、選択された電池パックに対して電流を供給する制御が行われることにより、充電される。
【0020】
酸化物系正極を用いた電池パック4は、エネルギー密度が高い電池によって構成されており、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5は、内部抵抗が高く、酸化物系正極を用いた電池パック4よりもエネルギー密度が低い電池で構成されている。また、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5は、酸化物系正極を用いた電池パック4よりも熱的に安定した電池で構成されている。酸化物系正極を用いた電池パック4は、インバータ(不図示)などを介して、モータジェネレータなどの駆動部(不図示)に対して電流を出力する。ポリアニオン系正極を用いた電池パック5は、DC−DCコンバータ6を介して、酸化物系正極を用いた電池パック4に対して電流を出力する。即ち、本システムにおいては、酸化物系正極を用いた電池パック4をメインの電池パックとして用い、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5を補助的な電池パックとして用いる。このように、酸化物系正極を用いた電池パック4及びポリアニオン系正極を用いた電池パック5は、それぞれ、本発明における第1の電池パック及び第2の電池パックに相当する。
【0021】
例えば、酸化物系正極を用いた電池パック4は、ニッケル系正極を用いた電池で構成され、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5は、オリビン系正極を用いた電池で構成される。一例としては、ニッケル系正極を用いた電池は、正極に「LiNiO2」を用い、負極に「Li4Ti5O12」を用い、電解液に「EC:DMC:EMC/LiPF6」を用いた電池で構成される。また、オリビン系正極を用いた電池は、正極に「LiFePO4」を用い、負極に「Li4Ti5O12」を用い、電解液に「EC:DMC:EMC/LiPF6」を用いた電池で構成される。
【0022】
DC−DCコンバータ6は、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5から電流が供給され、この電流を酸化物系正極を用いた電池パック4に対して出力する。この場合、DC−DCコンバータ6は、電圧を昇圧して、電流値を小さくした電流を、酸化物系正極を用いた電池パック4に対して出力する。より詳しくは、DC−DCコンバータ6は、所定値未満にまで電流値を低減させた電流を、酸化物系正極を用いた電池パック4に対して供給する。
【0023】
SOCセンサ7は、酸化物系正極を用いた電池パック4の充電状態(以下、「SOC(State Of Charge)」とも呼ぶ。)を検出することが可能に構成されたセンサである。SOCセンサ7は、検出したSOCに対応する検出信号S7をコントローラ10に対して供給する。
【0024】
コントローラ10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、A/D変換器及び入出力インターフェースなどを含んで構成される。本実施形態では、コントローラ10は、酸化物系正極を用いた電池パック4及びポリアニオン系正極を用いた電池パック5のいずれかに対して電流を供給して充電させるための制御を行う。この場合、コントローラ10は、電流値検出部2が検出した電流値、及びSOCセンサ7が検出した酸化物系正極を用いた電池パック4のSOC(充電状態)に基づいて、スイッチ3を切り替える制御を行う。より詳しくは、コントローラ10は、電流値が所定値未満である場合、又は、酸化物系正極を用いた電池パック4のSOCが所定の値未満である場合、酸化物系正極を用いた電池パック4に対して電流を供給する制御を行う。これに対して、電流値が所定値以上であり、且つ酸化物系正極を用いた電池パック4のSOCが所定の値以上である場合には、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5に対して電流を供給する。
【0025】
このように、コントローラ10は、本発明における電流値取得手段、充電状態取得手段、及び充電制御手段として機能する。なお、本システムをハイブリッド車両に搭載した場合には、ハイブリッド車両内のECU(Electronic Control Unit)が、上記したコントローラ10が行う制御を実行することができる。
【0026】
[充電制御方法]
次に、上記したコントローラ10が行う充電制御方法について説明する。
【0027】
本実施形態では、コントローラ10は、回生ユニット1から供給される電流の電流値(電流値検出部2が検出した電流値)及び酸化物系正極を用いた電池パック4のSOC(SOCセンサ7が検出した充電状態)に基づいて、酸化物系正極を用いた電池パック4及びポリアニオン系正極を用いた電池パック5のいずれかに対して電流を供給して充電させる制御を行う。より詳しくは、コントローラ10は、回生ユニット1から供給される電流の電流値が所定値以上であり、且つ酸化物系正極を用いた電池パック4のSOCが所定の値以上である場合には、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5に対して電流を供給する。これに対して、コントローラ10は、電流値が所定値未満である場合、又は、酸化物系正極を用いた電池パック4のSOCが所定の値未満である場合、酸化物系正極を用いた電池パック4に対して電流を供給する制御を行う。このように電流を供給する電池パックを切り替えるのは、酸化物系正極を用いた電池パック4が熱的に不安定になることを防止するためである。
【0028】
より詳しく説明すると、以下の通りである。酸化物系正極を用いた電池パック4は、満充電状態(SOCが所定の値以上である状態)にある際に高電流(電流値が所定値以上である電流)が流された場合、熱的に不安定になる可能性が高い。これに対して、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5は、満充電状態にある際に高電流が流されても、熱的に不安定になる可能性は低い。したがって、本実施形態では、回生ユニット1から供給される電流の電流値が所定値以上であり、且つ酸化物系正極を用いた電池パック4のSOCが所定の値以上である場合には、酸化物系正極を用いた電池パック4に対して電流を供給することを禁止し、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5に対して電流を供給する。この場合、酸化物系正極を用いた電池パック4には、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5及びDC−DCコンバータ6を介して、電流値が低減された電流(詳しくは、電流値が所定値未満となった電流)が供給されることとなる。したがって、満充電状態にある酸化物系正極を用いた電池パック4に対して、高電流がそのまま供給されることを防止することができる。よって、酸化物系正極を用いた電池パック4が熱的に不安定になることを防止することが可能となる。つまり、酸化物系正極を用いた電池パック4が満充電状態に突入した場合にも、酸化物系正極を用いた電池パック4の安全性を確保することが可能となる。
【0029】
なお、酸化物系正極を用いた電池パック4が熱的に不安定になり、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5が熱的に安定している理由は以下の通りである。酸化物系正極を用いた電池パック4は、満充電状態である際に高電流が供給されると、結晶性が崩れて酸素を放出する傾向にある。このように酸素が放出された場合、酸化物系正極を用いた電池パック4が発熱し得る。つまり、熱的に不安定になると言える。これに対して、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5は、結晶性が安定しているため、満充電状態である際に高電流が供給されても、酸素はほとんど放出されない。したがって、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5は、熱的に安定していると言える。
【0030】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る充電制御処理について説明する。図2は、充電制御処理を示すフローチャートである。この処理は、コントローラ10によって、繰り返し実行される。
【0031】
まず、ステップS101では、コントローラ10は、酸化物系正極を用いた電池パック4のSOC(充電状態)が所定の値以上であるか否かを判定する。この場合、コントローラ10は、SOCセンサ7から取得されるSOCに基づいて判定を行う。SOCが所定の値未満である場合には(ステップS101;No)、処理はステップS103に進む。この場合には、酸化物系正極を用いた電池パック4が熱的に不安定になる可能性はかなり低いと言える。よって、ステップS103では、コントローラ10は、酸化物系正極を用いた電池パック4に電流が流れるようにスイッチ3を制御する。そして、処理は当該フローを抜ける。なお、上記した判定で用いる「所定の値」は、酸化物系正極を用いた電池パック4が概ね満充電状態にあるときのSOCに対応する。
【0032】
一方、SOCが所定の値以上である場合には(ステップS101;Yes)、処理はステップS102に進む。ステップS102では、コントローラ10は、回生ユニット1から供給される電流の電流値が所定値以上であるか否かを判定する。この場合、コントローラ10は、電流値検出部2から取得される電流値に基づいて判定を行う。電流値が所定値未満である場合(ステップS102;No)、処理はステップS103に進む。この場合、酸化物系正極を用いた電池パック4は満充電状態にあるが、電流値が比較的低いため、熱的に不安定になる可能性はかなり低いと言える。よって、ステップS103では、コントローラ10は、酸化物系正極を用いた電池パック4に電流が流れるようにスイッチ3を制御する。そして、処理は当該フローを抜ける。
【0033】
一方、電流値が所定値以上である場合(ステップS102;Yes)、処理はステップS104に進む。この場合には、酸化物系正極を用いた電池パック4は満充電状態であり、且つ電流値が所定値以上であるため、酸化物系正極を用いた電池パック4に対して当該電流を供給すると熱的に不安定になる可能性が高い。よって、ステップS104では、コントローラ10は、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5に電流が流れるようにスイッチ3を制御する。これにより、満充電状態にある酸化物系正極を用いた電池パック4に対して、高電流がそのまま供給されることを防止することができる。以上のステップS104の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
【0034】
以上の充電制御処理によれば、電流値に基づいて電流を供給すべき電池パックを適切に選択するため、酸化物系正極を用いた電池パック4が熱的に不安定になることを防止して、酸化物系正極を用いた電池パック4の安全性を確保することが可能となる。
【0035】
なお、上記した充電制御処理では、電流値及びSOCに基づいて、電流を供給する電池パックを切り替える実施形態を示したが、これに限定はされない。他の例では、電流値のみに基づいて電流を供給する電池パックを切り替えることができる。即ち、回生ユニット1から供給される電流の電流値が所定値未満である場合には、酸化物系正極を用いた電池パック4に対して電流を供給し、電流値が所定値以上である場合には、ポリアニオン系正極を用いた電池パック5に対して電流を供給する。上記の制御は、SOCセンサ7が故障等している場合に有効となる。つまり、SOCセンサ7が故障等している場合にも、酸化物系正極を用いた電池パック4の安全性を確実に確保することができる。
【0036】
[電池パックの構成例]
次に、上記した酸化物系正極を用いた電池パック4及びポリアニオン系正極を用いた電池パック5の構成例について説明する。
【0037】
図3は、酸化物系正極を用いた電池パック4及びポリアニオン系正極を用いた電池パック5を構成する電池の構造を示す概略図である。この電池は、活物質、バインダー、及び導電化材を有する正極21と、活物質、バインダー、及び導電化材を有する負極22と、溶媒、リチウム塩、及びセパレータを有する電解液23と、を備える。
【0038】
(酸化物系正極を用いた電池パックの構成例)
酸化物系正極を用いた電池パック4の構成例について具体的に説明する。
【0039】
正極21(酸化物系正極)における活物質、バインダー、及び導電化材は、それぞれ以下のような物質を用いることができる。
【0040】
・活物質:LiCoO2、LiNiO2、LiNi0.85Co0.1Al0.05O2、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4
・バインダー:PVdF、PVdF-HFP、PTFE、PEO、PAN、CMC、SBR
・導電化材:アセチレンブラック、ケッチェンブラック
負極22における活物質、バインダー、及び導電化材は、それぞれ以下のような物質を用いることができる。
【0041】
・活物質:天然黒鉛、HOPG、MCMB、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン系負極、Li金属、Li4Ti5O12、Si、Sn、Li-Al合金、ウッドメタル
・バインダー:PVdF、PVdF-HFP、PTFE、PEO、PAN、CMC、SBR
・導電化材:アセチレンブラック、ケッチェンブラック
電解液23における溶媒、リチウム塩、及びセパレータは、それぞれ以下のような物質を用いることができる。
【0042】
・溶媒:溶媒としては、以下の各種有機溶媒及びその混合物を用いることができる。
【0043】
ECやPC等の環状カーボネート系、DMCやDECやEMC等の鎖状カーボネート系、GBLやガンマバレロラクトン等の環状エステル系、DMSOやジグライム等のエーテル系、EMI-TFSI、PP13-TFSI
・リチウム塩:LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiSO3CF3、LiTFSI、LiBETI、LiTSAC、LiB(CF3COO)4
・セパレータ:PE、PP、PE/PPハイブリッド、PET不織布、Methyl Cellulose
(ポリアニオン系正極を用いた電池パックの構成例)
ポリアニオン系正極を用いた電池パック5の構成例について具体的に説明する。
【0044】
正極21(ポリアニオン系正極)における活物質、バインダー、及び導電化材は、それぞれ以下のような物質を用いることができる。
【0045】
・活物質:LiFePO4、LiVMoO6、LiCoPO4、Li3V2(PO4)3、Li3Fe(AsO4)3
・バインダー:PVdF、PVdF-HFP、PTFE、PEO、PAN、CMC、SBR
・導電化材:アセチレンブラック、ケッチェンブラック
負極22における活物質、バインダー、及び導電化材は、それぞれ以下のような物質を用いることができる。
【0046】
・活物質:天然黒鉛、HOPG、MCMB、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン系負極、Li金属、Li4Ti5O12、Si、Sn、Li-Al合金、ウッドメタル
・バインダー:PVdF、PVdF-HFP、PTFE、PEO、PAN、CMC、SBR
・導電化材:アセチレンブラック、ケッチェンブラック
電解液23における溶媒、リチウム塩、及びセパレータは、それぞれ以下のような物質を用いることができる。
【0047】
・溶媒:溶媒としては、以下の各種有機溶媒及びその混合物を用いることができる。
【0048】
ECやPC等の環状カーボネート系、DMCやDECやEMC等の鎖状カーボネート系、GBLやガンマバレロラクトン等の環状エステル系、DMSOやジグライム等のエーテル系、EMI-TFSI、PP13-TFSI
・リチウム塩:LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiSO3CF3、LiTFSI、LiBETI、LiTSAC、LiB(CF3COO)4
・セパレータ:PE、PP、PE/PPハイブリッド、PET不織布、Methyl Cellulose
[適用例]
上記した電池パックユニット15は、ハイブリッド車両に適用することができる。ここで、ハイブリッド車両への適用例を、図4を参照して説明する。
【0049】
図4は、ハイブリッド車両90の概略構成を示す図である。ハイブリッド車両90は、主に、車軸11と、車輪12と、ECU(Electronic Control Unit)100と、エンジン200と、モータMG1、MG2と、プラネタリギヤ300と、インバータ400と、バッテリ500と、SOCセンサ600と、を備える。なお、電池パックユニット15はバッテリ500に適用され、コントローラ10はECU100に適用される。
【0050】
車軸11は、エンジン200及びモータMG2の動力を車輪12に伝達する動力伝達系の一部である。車輪12は、ハイブリッド車両90の車輪であり、説明の簡略化のため、図1では左右前輪のみが表示されている。エンジン200は、ガソリンエンジンなどによって構成され、ハイブリッド車両90の主たる動力源として機能する。
【0051】
モータMG1は、主としてバッテリ500を充電するための発電機、或いはモータMG2に電力を供給するための発電機として機能するように構成されている。また、モータMG2は、主としてエンジン200の出力をアシストする電動機として機能するように構成されている。これらのモータMG1及びモータMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。プラネタリギヤ(遊星歯車機構)300は、エンジン200の出力をモータMG1及び車軸11へ分配することが可能に構成され、動力分割機構として機能する。
【0052】
インバータ400は、バッテリ500と、モータMG1及びモータMG2との間の電力の入出力を制御する直流交流変換機である。例えば、インバータ400は、バッテリ500から取り出した直流電力を交流電力に変換して、或いはモータMG1によって発電された交流電力をそれぞれモータMG2に供給すると共に、モータMG1によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ500に供給することが可能に構成されている。
【0053】
バッテリ500は、モータMG1及びモータMG2を駆動するための電源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。このバッテリ500には、前述した電池パックユニット15が適用される。即ち、バッテリ500は、前述したような酸化物系正極を用いた電池パックと、ポリアニオン系正極を用いた電池パックと、DC−DCコンバータとを有する。
【0054】
SOCセンサ600は、バッテリ500の充電状態(SOC)を検出することが可能に構成されたセンサである。詳しくは、SOCセンサ600は、バッテリ500が有する酸化物系正極を用いた電池パックのSOCを検出し、検出したSOCをECU100に供給する。
【0055】
ECU100は、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを備え、ハイブリッド車両90の動作全体を制御する電子制御ユニットである。具体的には、ECU100は、前述したコントローラ10と同様の処理を行うことができる。つまり、ECU100は、バッテリ500に対して前述した充電制御を実行する。詳しくは、ECU100は、バッテリ500が有する酸化物系正極を用いた電池パック及びポリアニオン系正極を用いた電池パックのいずれかに対して電流を供給して充電させる制御を行う。この場合、ECU100は、バッテリ500に対して供給される電流値、及びSOCセンサ600が検出したSOCに基づいて、電流を供給する電池パックを切り替える。これにより、バッテリ500内の酸化物系正極を用いた電池パックが熱的に不安定になることを防止して、バッテリ500の安全性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施形態に係る電池パックの制御装置が適用されたシステムの概略構成を示す。
【図2】充電制御処理を示すフローチャートである。
【図3】電池パックを構成する電池の構造を示す概略図である。
【図4】ハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 回生ユニット
2 電流値検出部
3 スイッチ
4 酸化物系正極を用いた電池パック
5 ポリアニオン系正極を用いた電池パック
6 DC−DCコンバータ
7 SOCセンサ
10 コントローラ
15 電池パックユニット
90 ハイブリッド車両
100 ECU
500 バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー密度が高い電池で構成された第1の電池パック、及び前記第1の電池パックよりもエネルギー密度が低く、且つ前記第1の電池パックよりも熱的に安定している電池で構成された第2の電池パックに対して、充電させるための制御を行う電池パックの制御装置において、
充電させるべき電流の電流値を取得する電流値取得手段と、
前記電流値に基づいて前記第1の電池パック及び前記第2の電池パックのいずれかに対して前記電流を供給して充電させる制御を行い、前記電流値が所定値以上である場合には、前記第2の電池パックに対して前記電流を供給し、前記電流値が前記所定値未満である場合には、前記第1の電池パックに対して前記電流を供給する充電制御手段と、を備えることを特徴とする電池パックの制御装置。
【請求項2】
前記第1の電池パックの充電状態を取得する充電状態取得手段を更に備え、
前記充電制御手段は、前記電流値及び前記第1の電池パックの充電状態に基づいて、前記第1の電池パック及び前記第2の電池パックのいずれかに対して前記電流を供給することを特徴とする請求項1に記載の電池パックの制御装置。
【請求項3】
前記充電制御手段は、
前記電流値が前記所定値未満である場合、又は、前記第1の電池パックの充電状態が所定の値未満である場合、前記第1の電池パックに対して前記電流を供給し、
前記電流値が前記所定値以上であり、且つ前記第1の電池パックの充電状態が所定の値以上である場合、前記第2の電池パックに対して前記電流を供給することを特徴とする請求項2に記載の電池パックの制御装置。
【請求項4】
前記第1の電池パックは、酸化物系正極を用いた電池で構成され、
前記第2の電池パックは、ポリアニオン系正極を用いた電池で構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電池パックの制御装置。
【請求項5】
前記第1の電池パックは、供給される電流によって駆動する駆動部を駆動させるための電流を出力し、
前記第2の電池パックは、前記第1の電池パックに対して電流を出力することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電池パックの制御装置。
【請求項6】
前記第1の電池パックには、前記第2の電池パックから、前記所定値未満の電流値の電流が供給されることを特徴とする請求項5に記載の電池パックの制御装置。
【請求項7】
前記第1の電池パック及び前記第2の電池パックは、ハイブリッド車両用のバッテリとして用いられ、
前記充電制御手段は、前記ハイブリッド車両が有するモータが発電した電流を、前記第1の電池パック及び前記第2の電池パックのいずれかに対して供給して充電させる制御を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電池パックの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−199767(P2008−199767A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31870(P2007−31870)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】