説明

電源回路、及び電子機器

【課題】FET内で発生するオン抵抗の上昇を抑制することで、使用するFETの耐性を下げ、以ってコストを低減する
【解決手段】FETをオン・オフするためのゲート電圧を所定タイミングで供給するゲートドライブ回路と、第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路との間に介在して、第一入力ラインに供給されるゲートドライブ電圧の電圧値が一定の値になった場合に第一入力ラインとゲートドライブ回路とを導通させる第一のスイッチ回路と、スタート信号が前記FETのスイッチング動作をオフにすることを示すローレベルに変化した場合に、この信号変化に応じて第一入力ラインからゲートドライブ回路へのゲートドライブ電圧の供給を遮断する第二のスイッチ回路と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FETを用いてスイッチング動作を行う電源回路、及び上記電源回路を使用した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FET(Field-Effect Transistor)によるスイッチング動作により所望の電源を生成する電源回路が知られている。その一例として、電源回路は、ゲートドライブ回路により、回路外部から供給されるゲートドライブ電圧を所定タイミングでFETのゲートに出力することで、入力された電源を変換して出力する(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
FETは、ベースに印加されるベース電圧がある値(以下、しきい値電圧と記載する。)に達することで、コレクター/エミッター間が導通する。このとき、電源回路の起動開始時及び起動停止時において、ベースに印加されるゲートドライブ電圧の値がしきい値電圧に達する(を下回る)までは、所定の時間を有する(以下、この所定の時間をターンオン時間/ターンオフ時間と記載する)。そのため、FETのターンオン時間/ターンオフ時間が長くなると、FET内部のオン抵抗が増加して発熱温度が上昇し、場合によってはFETを破壊してしまうこともある。
【0004】
FET内部のオン抵抗を低減させる構成として、FETのゲートに印加される電圧を監視し、監視された電圧が所定の値を下回る場合は、上記電圧以外の所定の電圧を印加することで、FETのオン抵抗を低減させる技術が開示されている(例えば、特許文献3−5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−054963号公報
【特許文献2】特開2006−121863号公報
【特許文献3】特開2006−115422号公報
【特許文献4】特開2005−304226号公報
【特許文献5】再表2005ー071838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記引用文献に開示されたように、FETのゲートに印加される電圧を監視して、ターンオン時間を短くするための補助となる電圧を印加する場合、当然電圧を監視するための回路や、新たな電圧を印加するための回路が必要となり、回路規模を増大させ、且つコストを増加させる要因となる。一方、オン抵抗を低減させることはできないものの、チャンネル温度に十分な余裕があるFETを使用することで、発熱温度に対する耐性を上げ、FETの破壊を予防する方法も存在する。しかしながら、耐性の強いFETを使用する場合、それだけFETのコストが高くなり、電源回路全体でのコストを増加させる要因となる。
【0007】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、FET内で発生するオン抵抗の上昇を抑制することで、使用するFETの耐性を下げ、以ってコストを低減することが可能な電源回路、及び上記電源回路を使用した電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、スイッチング動作によりトランスの二次側に電源を生成する電源回路において、前記トランスの一次側に接続されて、スイッチング動作を行うFETと、前記FETをオン・オフするためのゲート電圧を所定タイミングで供給するゲートドライブ回路と、前記ゲートドライブ回路を作動させるためのゲートドライブ電圧を、前記ゲートドライブ回路に供給する第一入力ラインと、前記ゲートドライブ電圧を前記第一入力ラインに供給するためのスタート信号の供給を受け付ける第二入力ラインと、前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路との間に介在して、前記第一入力ラインに供給されるゲートドライブ電圧の電圧値が一定の値になった場合に前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路とを導通させる第一のスイッチ回路と、前記スタート信号が前記FETのスイッチング動作をオフにすることを示すローレベルに変化した場合に、この信号変化に応じて前記第一入力ラインから前記ゲートドライブ回路への前記ゲートドライブ電圧の供給を遮断する第二のスイッチ回路と、を有する構成としてある。
【0009】
上記のように構成された発明では、ゲートドライブ電圧が第一入力ラインに供給される初期状態において、ゲートドライブ電圧の電圧値が所定の値まで達しない間は、第一のスイッチ回路は、第一入力ラインとゲートドライブ回路とを導通させず、ゲートドライブ電圧の電圧値が安定化した(所定の電圧値まで達した)後、第一入力ラインとゲートドライブ回路とを導通させ、ゲートドライブ電圧をゲートドライブ回路に供給する。その結果、ゲートドライブ回路からFETのゲートへ供給されるゲート電圧の立ち上がり波形は急峻となり、ターンオン時間が短くなるため、FETのオン抵抗を増加させない。
一方、FETのスイッチング動作をオフする(電源回路の駆動を停止する)際は、スタート信号は、FETのスイッチング動作をオフにすることを示すローレベルに変化するが、第二のスイッチ回路は、この信号変化に応じて第一入力ラインからゲートドライブ回路へのゲートドライブ電圧の供給を遮断する。その結果、FETのスイッチング動作をオフする際、ゲートドライブ回路からFETのゲートへ供給されるゲート電圧は瞬時にしきい値電圧を下回るため、FETのオン抵抗を増加させない。
【0010】
ここで、「急峻にする」とは、ゲートドライブ電圧の立ち上がり/立ち上がり波形の傾きが、従来の電源回路におけるゲートドライブ電圧の立ち上がり/立下り波形の傾きに比べて大きくなることを意味する。
更に、「ゲートドライブ電圧」と「ゲート電圧」とは、厳密には共通の電圧を元とする電圧であるが、本明細書中では、ゲートドライブ回路に供給される電圧を「ゲートドライブ電圧」と記載し、この「ゲートドライブ電圧」により駆動したゲートドライブ回路からFETのゲートに供給される電圧を「ゲート電圧」と記載する。
【0011】
また、第一のスイッチ回路の具体的な構成の一例として、前記第一のスイッチ回路は、前記第一入力ラインに接続されたツェナーダイオードを有し、前記ゲートドライブ電圧が所定の値に達することでツェナーダイオードから降伏電流が出力された際、この降伏電流に基づいて第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路との導通をオンする。
上記のように構成された発明では、第一入力ラインを流れるゲートドライブ電圧の電圧値をツェナーダイオードが流す降伏電流により判断するため、簡易な構成により第一のスイッチ回路を実現することで、回路規模を小さくすることができる。
【0012】
そして、ゲートドライブ電圧の立ち上がり波形が緩やか原因としては、当該電源回路へゲートドライブ電圧を供給する元となる回路の動作や、当該回路を構成する素子の特徴に起因する。そのため、上記原因の一つとして、前記ゲートドライブ回路は、前記第一入力ラインにゲートドライブ電圧が供給された際、このゲートドライブ電圧を起動電圧として前記FETを作動させるためのパルス波を出力するコントロールICを有し、前記第一入力ラインは、前記コントロールICに前記起動電圧が供給される接続点の前段に同起動電圧の電圧値を安定化させるためのコンデンサーが接続されている。
上記のように構成された発明では、コントロールICによりFETのスイッチング動作が他励制御される電源回路において、本発明をより効果的に適用することができる。
【0013】
さらに、第二のスイッチ回路の具体的な構成の一例として、前記第二のスイッチ回路は、前記スタート信号がローレベルに変化した場合に、この信号変化に応じて前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路との導通をオフにするトランジスターを有する構成としてもよい。
上記のように構成された発明では、スタート信号の変化をトランジスターのスイッチング動作により検出し、導通状態を切り替えるため、簡易な構成で第二のスイッチ回路を実現することがで、回路規模を小さくすることができる。
【0014】
また、電源回路のより具体的な構成の一例として、当該電源回路は、液晶表示装置におけるバックライトを駆動するための電源を生成するインバーター回路であってもよい。
【0015】
そして、本発明は、当該電源回路のみならず、この電源回路を用いた電子機器に対しても応用することができる。そのため、本発明の他の局面として、スイッチング動作によりトランスの二次側に電源を生成するインバーター回路と、前記生成された電源によりバックライトを駆動させて、所定の画像を表示する電子機器において、前記インバーター回路は、前記トランスの一次側に接続されて、スイッチング動作を行うFETと、前記FETをオン・オフするためのゲート電圧を所定タイミングで供給するゲートドライブ回路と、前記ゲートドライブ回路を作動させるためのゲートドライブ電圧を、前記ゲートドライブ回路に供給する第一入力ラインと、前記ゲートドライブ電圧を前記第一入力ラインに供給するためのスタート信号の供給を受け付ける第二入力ラインと、前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路との間に介在して、前記第一入力ラインに供給されるゲートドライブ電圧の電圧値が一定の値になった場合に前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路とを導通させる第一のスイッチ回路と、前記スタート信号が前記FETのスイッチング動作をオフにすることを示すローレベルに変化した場合に、この信号変化に応じて前記第一入力ラインから前記ゲートドライブ回路への前記ゲートドライブ電圧の供給を遮断する第二のスイッチ回路と、を有する構成としてもよい。
【0016】
さらに、上記電機機器の具体的な構成の一例として、前記第一のスイッチ回路は、前記第一入力ラインに接続されたツェナーダイオードを有し、前記ゲートドライブ電圧が所定の値に達することでツェナーダイオードから降伏電流が出力された際、この降伏電流により前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路との導通を切り替え、前記ゲートドライブ回路は、前記第一入力ラインにゲートドライブ電圧が供給された際、このゲートドライブ電圧を起動電圧として前記FETを作動させるためのパルス波を出力するコントロールICを有し、前記第一入力ラインは、前記コントロールICに前記起動電圧が供給される接続点の前段に同起動電圧の電圧値を安定化させるためのコンデンサーが接続され、前記第二のスイッチ回路は、前記スタート信号がローレベルに変化した場合に、前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路との導通をオフにするトランジスターを有する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、FET内で発生するオン抵抗の上昇を抑制することで、使用するFETの耐性を下げることができ、以ってコストを低減する。
また請求項2にかかる発明によれば、簡易な構成により第一のスイッチ回路を実現することで、回路規模を小さくすることができる。
そして請求項3にかかる発明によれば、コントロールICによりFETのスイッチング動作が他励制御される電源回路において、本発明をより効果的に適用することができる。
さらに請求項4にかかる発明によれば、簡易な構成で第二のスイッチ回路を実現することがで、回路規模を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る表示装置100を説明するためのブロック構成図である。
【図2】インバーター回路80の構成を説明するためのクレーム対応図である。
【図3】本実施形態に係るインバーター回路を説明するための回路図である。
【図4】従来のインバーター回路80の各部に流れる信号の波形を示す波形図である。
【図5】本実施形態に係るインバーター回路80の各部に流れる信号の波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を参照しつつ下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
1.第一の実施形態:
2.第二の実施形態:
3.その他の実施形態:
【0020】
1.第一の実施形態:
以下、図を参照して、この発明に係る電子機器を具体化した第1の実施の形態について説明する。なお、第一の実施形態では、電子機器として表示装置を例に説明を行う。図1は、本実施形態に係る表示装置100を説明するためのブロック構成図である。また、図1に示す表示装置100は、バックライトを用いた液晶表示型の表示装置であり、本発明に係る電源回路は、このバックライトを点灯させるための電源を供給するインバーター回路80として実現される。
【0021】
表示装置100は、以下の要部を備えて構成されている。表示パネル99は、バックライト98と、このバックライト98から照射される光の透過率を変化させて映像を表示する表示部97とを備えて構成されている。また、メインコントローラー96は、図示しないリモコン装置から送信された赤外線信号を受信し、この赤外線信号に応じて、表示装置100の駆動の開始又は停止を制御する。デジタル回路95は、チューナー部等の入力IF94を介して受信されたビデオ信号に所定の信号処理を施した後、ビデオ信号を表示部97に出力する。そして、メイン電源回路93は、商用電源等から電源の供給を受けて、表示装置100の各部を駆動するために必要な安定化電源を生成し、同各部に生成した電源を供給する。更に、インバーター回路80は、メイン電源回路93から供給されたインバーター入力電源、及びベースドライブ信号を用いて、バックライト98を駆動させるためのバックライト駆動電圧を生成する。
【0022】
上記構成の表示装置100では、ユーザーがリモコン装置を操作してメイン電源回路93をオンする信号を表示装置100に送信すると、メインコントローラー96はこの信号を受信し、メイン電源回路93及びインバーター回路80に対してP−on信号を送信する。メイン電源回路93は、P−on信号を受信すると、商用電源から供給された電源を整流及び平滑化した後、インバーター回路80を含む各部が駆動するのに必要な電源を生成して、供給する。具体的には、インバーター回路80に対して、バックライト98を駆動するための電源の元となるインバーター入力電源や、インバーター回路80をスイッチングさせるためのゲートドライブ電圧を生成し、同インバーター回路80に供給する。インバーター回路80は、P−on信号を受信すると、メイン電源回路93から供給されるインバーター入力電圧及びゲートドライブ電圧を用いてバックライト98を駆動するためのバックライト駆動電源を生成し、バックライト98を駆動する。また、表示部97は、デジタル回路95から供給されたビデオ信号に応じてバックライト98から照射される光の透過率を変化させ、映像を表示する。
【0023】
本実施形態に係るインバーター回路80は、ゲートドライブ電圧により、所定タイミングでFETをオン・オフさせて、インバーター入力電圧を交流に変換する。このとき、FETをオン・オフするためには、ゲート電圧の電圧値をしきい値電圧以上/以下に変化させる必要があるが、ゲート電圧の立ち上がり/立下りが急峻でないと、FET82,83のターンオン時間及びターンオフ時間が長くなり、FET82,83のオン抵抗を増加させる原因となる。その結果、FET82,83の発熱温度を増加させてしまう。
【0024】
そのため、本実施形態に係るインバーター回路80では、ゲート電圧の元となるゲートドライブ電圧の立ち上がり及び立下りを急峻とすることで、FETのターンオン時間及びターンオフ時間を短縮させ、以って、FET82,83のオン抵抗の増大を抑制し、発熱温度の上昇を抑制する。また、上記機能を構成する回路を簡易な回路構成で実現することにより、コストを低減させる。以下、本実施形態に係るインバーター回路80の構成についてより詳細に説明する。
【0025】
図2は、インバーター回路80の構成を説明するためのクレーム対応図である。図2に示すように、インバーター回路80は、入力電圧ライン81を通じてメイン電源回路93から入力されたインバーター入力電圧を、1対のFET82,83を交互に駆動させて交流電圧を生成し、トランス84の二次側にバックライト駆動電圧を発生させる。このとき、各FET82,83は、ゲートドライブ回路70の制御により、所定タイミングでこのFET82,83のゲート電極に供給されるゲート電圧によりその駆動を制御される。
【0026】
また、本実施形態に係るインバーター回路80は、ドライブ電圧入力ライン(第一入力ライン)85とゲートドライブ回路70とは、第一のスイッチ回路60によりその導通が切り替え可能に接続されており、ドライブ電圧入力ライン85に供給されたゲートドライブ電圧の電圧値が所定の値を上回った場合にのみ、第一のスイッチ回路60がゲートドライブ電圧をゲートドライブ回路70に供給する。更に、切り替えライン(第二入力ライン)51を流れるP−on信号がoffした場合は、第二のスイッチ回路50がドライブ電圧入力ライン85に流れるゲートドライブ電圧の供給を遮断する。
【0027】
上記のように構成された発明では、ゲートドライブ電圧がドライブ電圧入力ライン85に供給される初期状態において、ゲートドライブ電圧の電圧値が所定の値まで達しない間は、第一のスイッチ回路60は、ゲートドライブ電圧をゲートドライブ回路70に供給せず、ゲートドライブ電圧の電圧値が安定化した(所定の電圧値まで達した)後、ゲートドライブ電圧をゲートドライブ回路70に供給する。その結果、ゲートドライブ回路70からFETのゲートへ供給されるゲート電圧の立ち上がり波形は急峻となるためターンオン時間が短くなり、FETのオン抵抗を増加させない。
一方、FETのスイッチング動作をオフする(電源回路の駆動を停止する)際は、P−on信号(スタート信号)は、FETのスイッチング動作をオフにすることを示すローレベルに変化するが、第二のスイッチ回路50は、この信号変化に応じてドライブ電圧入力ライン85からゲートドライブ回路70へのゲートドライブ電圧の供給を遮断する。その結果、ゲートドライブ回路70からFETのゲートへ供給されるゲート電圧の立ち下がり波形は急峻となるため、ターンオフ時間が短くなり、FETのオン抵抗を増加させない。
【0028】
以下、インバーター回路80のより具体的な構成を説明する。図3は、本実施形態に係るインバーター回路を説明するための回路図である。なお、図3に示す、インバーター回路80は、ICにより駆動する他励発振方式の回路であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
入力電圧ライン81は、入力端でメイン電源回路93の出力端に接続され、出力端でトランス84の一次側巻線84aに接続されている。また、トランス84は、一次側巻線84aで入力電圧ライン81及び一対のFET82,83に接続され、二次側巻線84bでバックライト98に接続されている。そして、一対のFET82,83は、トランス84の一次側巻線84aに接続されてプッシュプル回路を構成し、その駆動によりトランス84の一次側巻線84aに極性の異なる電流を流す。
【0030】
ドライブ電圧入力ライン85は、入力端でメイン電源回路93の出力端に接続され、出力端でゲートドライブ回路70に接続されている。更に、ドライブ電圧入力ライン85は、メインコントローラー96から出力されるP−on信号によって、同ドライブ電圧入力ライン85に供給されるよう、ドライブ電圧入力ライン85の導通を切り替えるトランジスター86a,86b、及びこのトランジスター86のオン・オフを遅延させるための時定数を発生させるCR回路87を通じて、P−on供給ライン88に接続されている。そのため、メインコントローラー96から出力されたP−on信号は、CR回路87により遅延された後、トランジスター86a,86bをオンし、ドライブ電圧入力ライン85にゲートドライブ電圧を供給する。
【0031】
本実施形態に係るゲートドライブ回路70は、FET82,83のスイッチング動作の元となるパルス波を発生させるインバーターコントロールIC71と、このインバーターコントロールIC71から出力されるパルス波によってFET82,83を交互にスイッチングさせるブリッジ回路72と、を備えて構成されている。
【0032】
インバーターコントロールIC71は、ドライブ電圧入力ライン85とスタート端子71aを介して接続され、このスタート端子71aからゲートドライブ電圧を受信することで、出力端子71b,71cからそれぞれ立ち上がり周期が異なるパルス波を出力する。更に、ドライブ電圧入力ライン85におけるスタート端子71aと接続される前段には、このスタート信号を安定化させるコンデンサー89が接続されている。そのため、ドライブ電圧入力ライン85において、このコンデンサー89の電荷が所定の値に達するまでは、ゲートドライブ電圧は安定化せず、徐助にその電圧を増加させる。
【0033】
また、ブリッジ回路72は、インバーターコントロールIC71の出力端子71bと、FET82との間に接続された第一ブリッジ部72aと、インバーターコントロールIC71の出力端子71cとFET83との間に接続された第二ブリッジ部72bと、を備えて構成されている。第一及び第二ブリッジ部72a,72bは、複数のトランジスター及び抵抗を組み合わせて構成されており、インバーターコントロールIC71から出力されるパルス波に応じて、ゲートドライブ電圧をトランジスターで増幅させてFET82,83のゲートに供給する。
【0034】
本実施形態に係る第一のスイッチ回路60は、ドライブ電圧入力ライン85と、ゲートドライブ回路70と、を自己バイアスによりオン・オフする第一トランジスター61と、ドライブ電圧入力ライン85に供給されたゲートドライブ電圧の電圧値に応じて降伏電流を出力するツェナーダイオード62と、降伏電流の出力に応じて、第一トランジスター61のオン・オフを切り替える第二トランジスター63と、を備えて構成されている。
第一トランジスター61のコレクターは、ドライブ電圧入力ライン85に接続され、エミッターはゲートドライブ回路70に接続され、ベースは、抵抗を介して第二トランジスター63のコレクターに接続されている。また、ツェナーダイオード62のアノードは、ドライブ電圧入力ライン85における第一トランジスター61との接続点より前段で接続され、カソードは、第二トランジスター63のベースに接続されている。更に、第二トランジスターのエミッターは接地されている。
【0035】
本実施形態に係る第二のスイッチ回路50は、P−on供給ライン88と並列接続された切り替えライン51と、この切り替えライン51に接続された第二トランジスター63とを備えて構成されている。即ち、第二のスイッチ回路50は、第一のスイッチ回路60の一部を流用している。また、P−on供給ライン88におけるCR回路87との接続点の前段で並列接続された切り替えライン51は、第二トランジスター63のベースに接続されている。
【0036】
以下、このインバーター回路80の動作を説明する。図4は、従来のインバーター回路80の各部に流れる信号の波形を示す波形図である。また、図5は、本実施形態に係るインバーター回路80の各部に流れる信号の波形を示す波形図である。
【0037】
まずは、P−on信号入力時(起動時)におけるインバーター回路80の動作を説明する。メインコントローラー96からメイン電源回路93及びインバーター回路80にP−on信号が出力されると、CR回路87の時定数により遅延されたP−on信号は、トランジスター86a,86bをオンし、ゲートドライブ電圧をドライブ電圧入力ライン85に供給する。すると、インバーターコントロールICのスタート端子71aに起動電圧:Vccが供給され、出力端子71b,71cからパルス波を出力する。
【0038】
ドライブ電圧入力ライン85に供給された電圧は、コンデンサー89等の影響により初期状態では、15ボルトに達しておらず、緩やかに15ボルト付近まで増加していく(図4:t1〜t2)。そのため、従来のインバーター回路80(第一及び第二のスイッチ回路を有していない回路)では、初期状態(t0〜t1)において、ドライブ電圧入力ライン85には、15ボルトに達していないゲートドライブ電圧が供給されるため、FET82,83のターンオン時間が長くなる(ゲート電圧の立ち上がり波形の傾きが急峻ではない)。
【0039】
一方、本実施形態に係るインバーター回路80では、ドライブ電圧入力ライン85に供給された電圧が15ボルト付近に達しない場合は、ツェナーダイオード62を降伏せず、第二トランジスター63のベースには切り替えライン51を通じて供給されたP−on信号によるバイアス電流のみが流れる。そのため、第二トランジスター63はオンせず、第一トランジスター61はオフ状態を維持する。
【0040】
その後、一定の期間が経過すると、ドライブ電圧入力ライン85に供給された電圧は15ボルト付近で安定し(図5:t1’〜t2’)、ツェナーダイオード62を降伏する。そのため、第二トランジスター63のゲートには、上記したバイアス電流と、ツェナーダイオード62から流れる降伏電流とが合成された電流が流れ、第二トランジスター63をオンする。結果、第一トランジスター61のベースには、自己バイアスによるベース電流が流れ、第一トランジスター61をオンする。そして、15ボルトで安定したゲートバイアス電圧は、ドライブ電圧入力ライン85を通じてゲートドライブ回路70の第一ブリッジ回路72a及び第二ブリッジ回路72bに供給され、FET82,83のゲートにゲート電圧を印加する。
【0041】
次に、起動停止時におけるインバーター回路80の動作を説明する。メインコントローラー96から出力されるP−on信号がローレベルに変化すると、トランジスター86のベースに供給されるP−on信号の波形変化は、CR回路87で遅延されるため、CR回路87で設定される時定数の経過後にトランジスター86a,86bはオフされる。そのため、従来のインバーター回路80(第一及び第二のスイッチ回路を有していない回路)では、ドライブ電圧入力ライン85は、所定期間遅延された後、ゲートドライブ回路70との導通が遮断されるため、ゲートドライブ回路70に供給されるゲートドライブ電圧の電圧値は緩やかにしきい値電圧以下まで減少する(図4:t3〜t4)

【0042】
一方、本実施形態に係るインバーター回路80では、P−on信号がローレベルに変化すると同時に、切り替えライン51を流れるP−on信号がローレベルに変化し、第二トランジスター63に流れるゲート電圧をローレベルに変化させる。そのため、第二トランジスター63がオフし、ドライブ電圧入力ライン85とゲートドライブ回路70間の導通を遮断し、ゲートドライブ回路70に供給されるゲートドライブ電圧の供給を遮断する(図5:t3’〜t4’)。その結果、FET82,83に供給されるゲート電圧の電圧値は急峻にしきい値電圧以下まで減少する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態では、ゲートドライブ回路70に供給されるゲートドライブ電圧は、ツェナーダイオード62を降伏可能な所定の値に達しており(15ボルト)、FETのターンオン時間を短くすることができる。また、インバーター回路80の起動をオフにする場面では、P−on信号の波形変化に応じてゲートドライブ電圧の供給を瞬時に遮断するため、FETのターンオフ時間を短くすることができる。また、各回路は、トランジスターやダイオードを用いた簡易な構成であるため、回路規模を小さくし又、コストを下げることができる。
【0044】
2.第二の実施形態:
起動停止時にFET82,83に供給されるゲートドライブ電圧の立下りを急峻にする構成としては、ゲートドライブ回路70に供給されるゲートドライブ電圧を遮断することに限定されない。即ち、P−on信号の波形変化に応じて、インバーターコントロールIC71に供給される起動電圧:Vccを遮断するトランジスターを備える構成としてもよい。
【0045】
3.その他の実施形態:
第二のスイッチ回路50が第一のスイッチ回路60の一部であるトランジスターを流用することは一例であり、第一及び第二のスイッチ回路がそれぞれ別々に構成されるものであってもよい。
また、電子機器として表示装置を示すことは一例であり、本発明に係る電源回路を使用するものであれば何にでも本発明を適用することができる。
【0046】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0047】
50…第二のスイッチ回路、51…切り替えライン、60…第一のスイッチ回路、61…第一トランジスター、62…ツェナーダイオード、63…第二トランジスター、70…ゲートドライブ回路、71…インバーターコントロールIC、71a…スタート端子、71b,71c…出力端子、72…ブリッジ回路、72a…第一ブリッジ部、72a…第二ブリッジ部、80…インバーター回路、81…入力電圧ライン、82,83…FET、84…トランス、85…ドライブ電圧入力ライン、86…トランジスター、87…CR回路、88…P−on供給ライン、89…コンデンサー、93…メイン電源回路、95…デジタル回路、96…メインコントローラー、97…表示部、98…バックライト、99…表示パネル、100…表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング動作によりトランスの二次側に電源を生成する電源回路において、
前記トランスの一次側に接続されて、スイッチング動作を行うFETと、
前記FETをオン・オフするためのゲート電圧を所定タイミングで供給するゲートドライブ回路と、
前記ゲートドライブ回路を作動させるためのゲートドライブ電圧を、前記ゲートドライブ回路に供給する第一入力ラインと、
前記ゲートドライブ電圧を前記第一入力ラインに供給するためのスタート信号の供給を受け付ける第二入力ラインと、
前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路との間に介在して、前記第一入力ラインに供給されるゲートドライブ電圧の電圧値が一定の値になった場合に前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路とを導通させる第一のスイッチ回路と、
前記スタート信号が前記FETのスイッチング動作をオフにすることを示すローレベルに変化した場合に、この信号変化に応じて前記第一入力ラインから前記ゲートドライブ回路への前記ゲートドライブ電圧の供給を遮断する第二のスイッチ回路と、を有することを特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記第一のスイッチ回路は、前記第一入力ラインに接続されたツェナーダイオードを有し、前記ゲートドライブ電圧が所定の値に達することでツェナーダイオードから降伏電流が出力された際、この降伏電流に基づいて前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路の導通を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記ゲートドライブ回路は、前記第一入力ラインにゲートドライブ電圧が供給された際、このゲートドライブ電圧を起動電圧として前記FETを作動させるためのパルス波を出力するコントロールICを有し、
前記第一入力ラインは、前記コントロールICに前記起動電圧が供給される接続点の前段に同起動電圧の電圧値を安定化させるためのコンデンサーが接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電源回路。
【請求項4】
前記第二のスイッチ回路は、前記スタート信号がローレベルに変化した場合に、この信号変化に応じて前記第一のスイッチ回路をオフにするトランジスターを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電源回路。
【請求項5】
当該電源回路は、液晶表示装置におけるバックライトを駆動するための電源を生成するインバーター回路であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電源回路。
【請求項6】
スイッチング動作によりトランスの二次側に電源を生成するインバーター回路と、前記生成された電源によりバックライトを駆動させて、所定の画像を表示する電子機器において、
前記インバーター回路は、
前記トランスの一次側に接続されて、スイッチング動作を行うFETと、
前記FETをオン・オフするためのゲート電圧を所定タイミングで供給するゲートドライブ回路と、
前記ゲートドライブ回路を作動させるためのゲートドライブ電圧を、前記ゲートドライブ回路に供給する第一入力ラインと、
前記ゲートドライブ電圧を前記第一入力ラインに供給するためのスタート信号の供給を受け付ける第二入力ラインと、
前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路との間に介在して、前記第一入力ラインに供給されるゲートドライブ電圧の電圧値が一定の値になった場合に前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路とを導通させる第一のスイッチ回路と、
前記スタート信号が前記FETのスイッチング動作をオフにすることを示すローレベルに変化した場合に、この信号変化に応じて前記第一入力ラインから前記ゲートドライブ回路への前記ゲートドライブ電圧の供給を遮断する第二のスイッチ回路と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項7】
前記第一のスイッチ回路は、前記第一入力ラインに接続されたツェナーダイオードを有し、前記ゲートドライブ電圧が所定の値に達することでツェナーダイオードから降伏電流が出力された際、この降伏電流に基づいて前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路との導通を切り替え、
前記ゲートドライブ回路は、前記第一入力ラインにゲートドライブ電圧が供給された際、このゲートドライブ電圧を起動電圧として前記FETを作動させるためのパルス波を出力するコントロールICを有し、
前記第一入力ラインは、前記コントロールICに前記起動電圧が供給される接続点の前段に同起動電圧の電圧値を安定化させるためのコンデンサーが接続され、
前記第二のスイッチ回路は、前記スタート信号がローレベルに変化した場合に、前記第一入力ラインと前記ゲートドライブ回路との導通をオフにするトランジスターを有する、ことを特徴とする請求項6に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−15073(P2011−15073A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156120(P2009−156120)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】