説明

電源検知回路

【課題】電源検知回路において、BT劣化によって比較回路のミスマッチが増大することに起因する電源検知信号の精度の劣化を抑制する。
【解決手段】検知用比較回路104は、入力切替信号生成回路112によって、その出力の活性状態と非活性状態との切替時付近では、入力信号102と基準電圧103とを入力して、その両者の比較を行う。一方、前記切替時付近以外では、比較回路非使用時入力電圧110が検知用比較回路104に入力されて、その差動入力が同電位に固定される。従って、BT劣化による電源検知精度の経年劣化が有効に抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源を検知して信号を出力する電源検知回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、予め定められた所定電圧を基に電源を検知するようにした電源検知回路は、例えば、半導体集積回路内の演算回路に対するリセット信号生成回路として用いられている。一般に、電源電圧が所定電圧Vo以下であるときには、電源検知信号を電源は未検知であるとして出力し、それにより演算回路を停止させ、一方、電源電圧が所定電圧Voよりも高いときには、電源検知信号を電源が検知されたとして出力し、それにより演算回路を動作させ、これらにより半導体集積回路が動作するようになっている。
【0003】
以下、電源検知回路の構成を説明する。
【0004】
電源検知回路は、図8に示すように、電源端子−グランド端子間に直列に配置された2個の抵抗により電源電圧を線形分割して、該分割点での電圧である出力電圧12の信号を出力する電源分割回路11と、前記電源分割回路11の出力電圧12と基準電圧13とを互いに比較する比較回路14とにより構成される。
【0005】
比較回路14は、例えば、図10に示すような構成を有する。すなわち、閾値電圧の等しい2個のMOSトランジスタ20、21、電流源22、及び半導体素子からなるカレントミラー23を備える。前記2個のMOSトランジスタ20、21は、各々、ゲートが比較回路14の入力に接続され、ソースが共通になって電流源22に接続され、ドレインがカレントミラー23に接続され、片方のドレイン24が反転回路25に入力される。そして、前記反転回路25の出力26が比較回路14の出力となる。この比較回路14は、2個のMOSトランジスタ20、21のゲート電圧が互いに等しいとき、反転回路25の出力を反転させる。
【0006】
以下、図8に示した電源検知回路の動作を説明する。
【0007】
図8において、電源分割回路11の出力電圧12は、電源電圧を抵抗分割した電圧であるため、電源電圧に比例して変化する。
【0008】
一方、基準電圧13は、電源電圧が所定電圧Voであるときの電源分割回路11の出力電圧12に等しく定められていて、電源電圧に拘わらず常に一定である。
【0009】
比較回路14は、電源分割回路11の出力電圧12と基準電圧13とを入力とし、この二つの入力が等しくなったときに、比較回路14の出力である電源検知信号を反転させる。
【0010】
そして、図9において、比較回路14での比較結果に基づき、一般には、電源分割回路11の出力電圧12が基準電圧13以下であるときに電源電圧は所定電圧Vo以下であると見做して、電源未検知の状態を示す電源検知信号(図9ではLowレベル)を出力し、電源分割回路11の出力電圧12が基準電圧13よりも高いときには、電源電圧は所定電圧Voよりも高いと見做して、電源検知状態を示す電源検知信号15(図9ではHighレベル)を出力する。
【0011】
以上のような動作を行う電源検知回路において、比較回路14の一方の入力には電源電圧に比例して変化する電圧12が入力され、他方の入力には常に安定な基準電圧13が入力されるため、比較回路14の入力の間でバイアス印加状態に差が生じる。
【0012】
ところで、MOSトランジスタには、バイアス温度(Bias Temperature:以下、「BT」という)劣化の問題がある。これは、MOSトランジスタのゲートに正又は負のバイアスが印加されることにより発生する、MOSトランジスタの閾値電圧の変動を指す。更には、温度やバイアスをかける時間などに起因して、変動量が変化することも知られている。
【0013】
BT劣化したMOSトランジスタはアナログ回路の特性に影響を及ぼす。例えば、前記比較回路14において、入力電圧が等しいときに出力を反転するという特性は、2個のMOSトランジスタ20、21の閾値電圧が相互に等しいことを前提にしている。
【0014】
しかし、電源検知回路における比較回路14では、入力の間でバイアス印加状態に差が生じるため、ゲートが入力に接続される2個のMOSトランジスタ20、21で発生するBT劣化による閾値電圧の変動量に差が生じ、その結果、当該2個のMOSトランジスタ20、21間の閾値電圧に差が生じるため、比較回路14が出力を反転させるのは入力信号が等しいときではなくなる、つまり、電源検知をしたい所定電圧Voにズレが生じることを意味する。
【0015】
従って、BT劣化に起因して、電源検知回路の電源検知精度が劣化するという問題がある。
【0016】
この問題への対策は、例えば、特許文献1のように、回路が非動作状態のときに、BT劣化からの保護対象となるMOSトランジスタのゲートをソースと同電位にクランプすることにより、BT劣化しない構成にすることが知られている。この構成を図11に示す。同図において、BT劣化からの保護対象となるのはMOSトランジスタ30、31であり、回路が非動作状態のとき半導体素子32、33を導通させ、上記MOSトランジスタ30、31のゲートとソースとを同電位にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−172796号公報(第1頁、第2図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献1にて提案されているBT劣化対策は、回路が非動作状態であることを想定しているため、常時動作が必要な電源検知回路には適用できないという欠点があった。
【0019】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電源検知回路において、電源分割回路の出力電圧と基準電圧とを比較回路で比較することにより電源を検知して信号を出力するように構成する場合に、BT劣化対策を施しつつ、常時動作を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の目的を達成すべく、本発明では、比較回路を、所定電圧Voを検知する検知用比較回路と、電源電圧が所定電圧Vo付近にあるかどうかを検知する補助比較回路とに分け、電源電圧が所定電圧Vo付近にあるときのみ検知用比較回路を動作させ、電源電圧が所定電圧Vo付近にないときには検知用比較回路の2つの入力に同一の電圧を与えることにした。
【0021】
つまり、電源電圧が所定電圧Vo付近にあるときは検知用比較回路が動作するが、2つの入力間のバイアス印加状態の差異が小さいので、BT劣化による閾値電圧変動量の差も小さく、そのため、電源検知精度の劣化が小さい。
【0022】
一方、電源電圧が所定電圧Vo付近にないときには、検知用比較回路の2つの入力に同一の電圧が与えられ、2つの入力のBT劣化が同一速度で進行するので、閾値電圧変動量の差は拡大せず、電源検知精度の劣化は発生しない。
【0023】
これによって、所定電圧Voを検知する検知用比較回路にBT劣化対策を施すことができ、かつ、検知用比較回路と補助比較回路とを組合せることによって、電源検知回路として常時動作可能となる。
【0024】
また、一般に、比較回路の入力電圧が等しいとき、その出力は不定となる。通常の電源検知回路においては、比較回路の入力電圧が等しくなる時間が短いためにこの現象は問題となり難いが、本発明の電源検知回路においては、電源電圧が所定電圧Vo付近にないときには検知用比較回路の入力に同一の電圧が与えられるため、長期間にわたって検知用比較回路の出力が不定となる。この不定が電源検知信号まで伝搬すると、正確な電源検知信号が得られなくなるため、本発明の電源検知回路は、検知用比較回路の後段に、電源電圧が所定電圧Vo付近にないときに出力を一定電圧に固定する手段を設ける。
【0025】
具体的に、請求項1記載の発明の電源検知回路は、電源の電圧を分割する電源分割回路と、前記電源分割回路の第1の電源分割回路出力電圧と基準電圧とを比較する検知用比較回路と、前記第1の電源分割回路出力電圧より高電圧である前記電源分割回路の第2の電源分割回路出力電圧と前記基準電圧とを比較する高電圧側補助比較回路と、前記第1の電源分割回路出力電圧より低電圧である前記電源分割回路の第3の電源分割回路出力電圧と前記基準電圧とを比較する低電圧側補助比較回路と、前記高電圧側補助比較回路の出力と前記低電圧側補助比較回路の出力とに基づいて入力切替信号を生成する入力切替信号生成手段と、前記入力切替信号により、前記検知用比較回路の入力を、前記基準電圧及び前記第1の電源分割回路出力電圧から、比較回路非使用時入力電圧に切り替える入力切替手段と、前記入力切替手段が前記比較回路非使用時入力電圧に切り替えた時に前記検知用比較回路の出力を一定電圧に固定する信号固定手段と、前記低電圧側補助比較回路の出力と前記信号固定手段の出力から電源検知信号を生成する電源検知信号生成手段とを備えたことを特徴とする。
【0026】
請求項2記載の発明の電源検知回路は、電源の電圧を分割する電源分割回路と、前記電源分割回路の第1の電源分割回路出力電圧と基準電圧とを比較する検知用比較回路と、前記第1の電源分割回路出力電圧より高電圧である前記電源分割回路の第2の電源分割回路出力電圧と前記基準電圧とを比較する高電圧側補助比較回路と、前記高電圧側補助比較回路の出力により、前記検知用比較回路の入力を、前記基準電圧及び前記第1の電源分割回路出力電圧から、比較回路非使用時入力電圧に切り替える入力切替手段と、前記入力切替手段が前記比較回路非使用時入力電圧に切り替えた時に前記検知用比較回路の出力を一定電圧に固定する信号固定手段とを備えたことを特徴とする。
【0027】
請求項3記載の発明の電源検知回路は、電源の電圧を分割する電源分割回路と、前記電源分割回路の第1の電源分割回路出力電圧と基準電圧とを比較する検知用比較回路と、前記第1の電源分割回路出力電圧より低電圧である前記電源分割回路の第2の電源分割回路出力電圧と前記基準電圧とを比較する低電圧側補助比較回路と、前記低電圧側補助比較回路の出力により、前記検知用比較回路の入力を、前記基準電圧及び前記第1の電源分割回路出力電圧から、比較回路非使用時入力電圧に切り替える入力切替手段と、前記入力切替手段が前記比較回路非使用時入力電圧に切り替えた時に前記検知用比較回路の出力を一定電圧に固定する信号固定手段と、前記低電圧側補助比較回路の出力と前記信号固定手段の出力から電源検知信号を生成する電源検知信号生成手段とを備えたことを特徴とする。
【0028】
請求項4記載の発明は、前記請求項1〜3の何れか1項に記載の電源検知回路において、前記高電圧側補助比較回路又は前記低電圧側補助比較回路の比較精度を前記検知用比較回路の比較精度よりも低く抑えたことを特徴とする。
【0029】
請求項5記載の発明は、前記請求項1〜3の何れか1項に記載の電源検知回路において、前記信号固定手段は、セレクタ回路で構成されることを特徴とする。
【0030】
請求項6記載の発明は、前記請求項1〜3の何れか1項に記載の電源検知回路において、更に、前記入力切替手段が前記検知用比較回路の入力として前記比較回路非使用時入力電圧を選択しているときに、前記検知用比較回路の電源を遮断する電源遮断手段を備えたことを特徴とする。
【0031】
以上により、請求項1〜6記載の発明では、検知用比較回路の差動入力トランジスタにおいて、BT劣化による閾値電圧変動量の差の拡大が抑制されるので、電源検知精度の劣化を抑制できる。
【0032】
特に、請求項4記載の発明では、補助比較回路の面積を小さくできるので、回路面積削減の効果を得ることができる。この効果が得られる理由は、半導体装置は同一の回路に関して面積を小さくするほど製造プロセス上のバラツキの影響で精度が低下する傾向にあるが、補助比較回路の精度は検知用比較回路の精度ほど必要とされないからである。
【0033】
更に、請求項5記載の発明では、信号固定手段にセレクタ回路を用いるので、入力切替手段が検知用比較回路の入力として比較回路非使用時の入力電圧を選択しているときでの検知用比較回路の不定出力の伝搬を比較的小面積で防ぐことができる。
【0034】
加えて、請求項6記載の発明では、入力切替手段が検知用比較回路の入力として比較回路非使用時の入力電圧を選択しているときに、検知用比較回路に電流が流れなくなるので、消費電力を抑制できる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明の電源検知回路によれば、検知用比較回路の出力の活性状態と非活性状態との切替時付近を除いて、検知用比較回路の差動入力を同電位に固定する回路構成を備えたので、BT劣化による電源検知精度の劣化を抑制できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態1における電源検知回路の構成図である。
【図2】(a)は同実施形態1における検知用比較回路の入力波形、高電圧側補助比較回路の入力波形及び出力波形、並びに低電圧側補助比較回路の入力波形及び出力波形を示す図、同図(b)は入力切替回路への入力切替信号波形を示す図、同図(c)は検知用比較回路の出力信号波形を示す図、同図(d)は信号固定回路の出力波形を示す図、同図(e)は電源検知信号波形を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2における電源検知回路の構成図である。
【図4】(a)は同実施形態2における検知用比較回路の入力波形、並びに高電圧側補助比較回路の入力波形及び出力波形を示す図、同図(b)は検知用比較回路の出力信号波形を示す図、同図(c)は電源検知信号波形を示す図である。
【図5】本発明の実施形態3における電源検知回路の構成図である。
【図6】(a)は同実施形態3における検知用比較回路の入力波形、並びに低電圧側補助比較回路の入力波形及び出力波形を示す図、同図(b)は検知用比較回路の出力信号波形を示す図、同図(c)は信号固定回路の出力波形を示す図、同図(d)は電源検知信号波形を示す図である。
【図7】本発明の変形例における電源検知回路の構成図である。
【図8】従来における電源検知回路の構成の一例を示す図である。
【図9】同従来における電源検知回路の波形図である。
【図10】同従来の電源検知回路に備える比較回路の構成図である。
【図11】他の従来の比較回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、実施形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0038】
(実施形態1)
図1は、本実施形態における電源検知回路の回路構成図である。また、図2は、その波形図である。
【0039】
図1において、電源検知回路は、電源100の電圧を分割する電源分割回路101と、前記電源分割回路101の第1の電源分割回路出力電圧102と基準電圧103とを比較する検知用比較回路104と、前記第1の電源分割回路出力電圧102よりも高電圧である前記電源分割回路101の第2の電源分割回路出力電圧106と前記基準電圧103とを比較する高電圧側補助比較回路107と、前記第1の電源分割回路出力電圧102よりも低電圧である前記電源分割回路101の第3の電源分割回路出力電圧108と前記基準電圧103とを比較する低電圧側補助比較回路109とを備える。
【0040】
更に、図1の電源検知回路は、前記高電圧側補助比較回路107の出力と前記低電圧側補助比較回路109の出力とから入力切替信号113を生成する入力切替信号生成回路(入力切替信号生成手段)112と、前記入力切替信号113が非活性状態のときに、前記検知用比較回路104の入力を、前記基準電圧103及び前記第1の電源分割回路出力電圧102の組合せから、比較回路非使用時入力電圧110に切り替える入力切替回路(入力切替手段)111と、前記入力切替信号113が非活性状態のときに、前記検知用比較回路104の出力を一定電圧に固定する信号固定回路(信号固定手段)115と、前記低電圧側補助比較回路109の出力と前記信号固定回路115の出力とから電源検知信号105を生成する電源検知信号生成回路(電源検知信号生成手段)117とを有する。
【0041】
続いて、図1の電源検知回路の詳細な構成及び動作を説明する。
【0042】
電源100は、本電源検知回路が検知対象とする電源である。前記電源分割回路101は前記電源100を例えば抵抗によって分割し、前記検知用比較回路104に対する前記電源分割回路出力電圧102と、前記高電圧側補助比較回路107に対する前記電源分割回路出力電圧106と、前記低電圧側補助比較回路109に対する前記電源分割回路出力電圧108とを生成する。
【0043】
前記検知用比較回路104は、前記入力切替回路111を介して前記電源分割回路出力電圧102と基準電圧103とを受け取り、図2(a)に示すように、前記電源分割回路出力電圧102と前記基準電圧103とを比較して、その比較した結果、前記電源分割回路出力電圧102の方が大きければ出力114を活性状態とする。
【0044】
また、前記高電圧側補助比較回路107は、前記電源分割回路出力電圧106を受け取り、前記電源分割回路出力電圧106と前記基準電圧103とを比較し、比較した結果、前記電源分割回路出力電圧106の方が大きければ、その出力を活性状態とする。
【0045】
更に、前記低電圧側補助比較回路109は、前記電源分割回路出力電圧108を受け取り、前記電源分割回路出力電圧108と前記基準電圧103とを比較し、比較した結果、前記電源分割回路出力電圧108の方が大きければ、その出力を活性状態とする。
【0046】
前記入力切替信号生成回路112は、例えばゲート回路から構成され、前記低電圧側補助比較回路109の出力の反転信号と前記高電圧側補助比較回路107の出力との論理積をとり、図2(b)にも示すように、前記入力切替回路111を制御する入力切替信号113を生成する。前記入力切替回路111は、前記入力切替信号113が活性状態のときに、前記電源分割回路出力電圧102と前記基準電圧103とを前記検知用比較回路104の入力に接続し、前記入力切替信号113が非活性状態のときに前記比較回路非使用時入力電圧110を前記検知用比較回路104の入力に接続する。
【0047】
前記入力切替回路111が以上の動作を行うことにより、前記検知用比較回路104の2つの入力には、前記高電圧側補助比較回路107の出力が活性状態であると同時に前記低電圧側補助比較回路109の出力が非活性状態にあるときだけ、異なる入力電圧がかかる状態になり、この状態において、検知用比較器104は、図2(c)に示すように、電源分割回路出力電圧102が基準電圧103よりも高い状態のときにその出力を活性状態とする。
【0048】
前記高電圧側補助比較回路107の出力が非活性状態であるか、前記低電圧側補助比較回路109の出力が活性状態にあるときには、前記検知用比較回路104の2つの入力は何れも前記比較回路非使用時入力電圧110に接続されるので、この間は前記検知用比較回路104の2つの入力のBT劣化進行状態に差が生じない。検知用比較回路104の2つの入力のBT劣化進行状態に差が生じなければ、2つの入力間のBT劣化による閾値電圧変動量の差は拡大しないので、電源検知精度の劣化を抑制することができる。
【0049】
前記信号固定回路115は、セレクタ回路で構成され、このセレクタ回路の一方の入力に検知用比較回路104の出力114が、他方の入力に固定電圧(接地電圧)が接続される。これにより、図2(d)に示すように、入力切替回路111が前記検知用比較回路104の入力として比較回路非使用時入力電圧110を選択しているときに、前記検知用比較回路104の出力を一定電圧(接地電圧)に固定して、前記検知用比較回路104から出力される不定が前記電源検知信号105に伝搬することを比較的小面積で防ぐことができる。
【0050】
前記電源検知信号生成回路117は、前記信号固定回路115の出力と前記低電圧側補助比較回路109の出力の論理和をとることにより、図2(e)に示すように、前記電源分割回路出力電圧102が前記基準電圧103よりも高いときに、前記電源検知信号105が常にHighとなるようにする。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、前記検知用比較回路104の2つの入力に異なる入力電圧がかかる時間を制限したので、BT劣化による電源検知精度の劣化を抑制することができる。
【0052】
尚、本実施形態では、入力切替信号113が活性状態のときに電源分割回路出力電圧102を選択するとしたが、非活性状態のときに電源分割回路出力電圧102を選択してもよい。
【0053】
(実施形態2)
図3は、本実施形態における電源検知回路の回路構成図である。また、図4は、その波形図である。
【0054】
図3において、電源検知回路は、電源100の電圧を分割する電源分割回路101と、前記電源分割回路101の第1の電源分割回路出力電圧102と基準電圧103とを比較する検知用比較回路104と、前記第1の電源分割回路出力電圧102より高電圧である前記電源分割回路101の第2の電源分割回路出力電圧106と前記基準電圧103とを比較する高電圧側補助比較回路107とを備える。
【0055】
更に、前記電源検知回路は、前記高電圧側補助比較回路107の出力が非活性状態のときに前記検知用比較回路104の入力を前記基準電圧103及び前記第1の電源分割回路出力電圧102の組合せから比較回路非使用時入力電圧110に切り替える入力切替回路111と、前記高電圧側補助比較回路107の出力が非活性状態のときに前記検知用比較回路104の出力を一定電圧に固定する信号固定回路115とを備える。
【0056】
次に、前記電源検知回路の詳細な構成及び動作を説明する。
【0057】
前記電源分割回路101は前記電源100を例えば抵抗によって分割し、前記検知用比較回路104に対する前記電源分割回路出力電圧102と、前記高電圧側補助比較回路107に対する前記電源分割回路出力電圧106を生成する。
【0058】
前記検知用比較回路104は、前記入力切替回路111を介して前記電源分割回路出力電圧102と基準電圧103とを受け取り、図4(a)に示すように、前記電源分割回路出力電圧102と前記基準電圧103とを比較して、その比較した結果、前記電源分割回路出力電圧102の方が大きければ出力114を活性状態とする。
【0059】
前記入力切替回路111は、前記高電圧側補助比較回路107の出力が活性状態のときに前記電源分割回路出力電圧102と前記基準電圧103を前記検知用比較回路104の入力に接続し、前記入力切替信号113が非活性状態のときに前記比較回路非使用時入力電圧110を前記検知用比較回路104の入力に接続する。
【0060】
前記入力切替回路111が以上の動作を行うことにより、前記検知用比較回路104の2つの入力には、前記高電圧側補助比較回路107の出力が活性状態にあるときだけ、異なる入力電圧がかかる状態になり、この状態において、検知用比較器104は、図4(b)に示すように、電源分割回路出力電圧102が基準電圧103よりも高い状態のときにその出力を活性状態とする。
【0061】
前記高電圧側補助比較回路107の出力が非活性状態にあるときには、前記検知用比較回路104の2つの入力は何れも前記比較回路非使用時入力電圧110に接続されるので、この間は前記検知用比較回路104の2つの入力のBT劣化進行状態に差が生じない。検知用比較回路104の2つの入力のBT劣化進行状態に差が生じなければ、2つの入力間のBT劣化による閾値電圧変動量の差は拡大しないので、BT劣化による電源検知精度劣化を抑制することができる。
【0062】
前記信号固定回路115は、図4(c)に示すように、前記入力切替回路111が前記比較回路非使用時入力電圧110に切り替えている時に前記検知用比較回路104の出力を一定電圧に固定することにより、前記検知用比較回路104から出力される不定が前記電源検知信号105に伝搬することを防ぐ。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、前記検知用比較回路104の2つの入力に異なる入力電圧がかかる時間を制限したので、BT劣化による電源検知精度の劣化を抑制することができる。
【0064】
尚、本実施形態では、高電圧側補助比較回路107の出力が活性状態のときに電源分割回路出力電圧102を選択するとしたが、非活性状態のときに電源分割回路出力電圧102を選択してもよい。
【0065】
(実施形態3)
図5は、本実施形態における電源検知回路の回路構成図である。また、図6は、その波形図である。
【0066】
図5において、電源検知回路は、電源100の電圧を分割する電源分割回路101と、前記電源分割回路101の第1の電源分割回路出力電圧102と基準電圧103とを比較する検知用比較回路104と、前記第1の電源分割回路出力電圧102より低電圧である前記電源分割回路101の第2の電源分割回路出力電圧108と前記基準電圧103とを比較する低電圧側補助比較回路109とを備える。
【0067】
更に、前記電源検知回路は、前記低電圧側補助比較回路109の出力が活性状態のときに前記検知用比較回路104の入力を、前記基準電圧103と前記第1の電源分割回路出力電圧102との組合せから比較回路非使用時入力電圧110に切り替える入力切替回路111と、前記低電圧側補助比較回路109の出力が活性状態のときに前記検知用比較回路104の出力を一定電圧に固定する信号固定回路115と、前記低電圧側補助比較回路109の出力と前記信号固定回路115の出力から電源検知信号105を生成する電源検知信号生成回路117とを備える。
【0068】
次に、前記電源検知回路の詳細な構成及び動作を説明する。
【0069】
前記電源分割回路101は前記電源100を例えば抵抗によって分割し、前記検知用比較回路104に対する前記電源分割回路出力電圧102と、前記低電圧側補助比較回路109に対する前記電源分割回路出力電圧108とを生成する。
【0070】
前記検知用比較回路104は、前記入力切替回路111を介して前記電源分割回路出力電圧102と基準電圧103とを受け取り、図6(a)に示すように、前記電源分割回路出力電圧102と前記基準電圧103とを比較して、その比較した結果、前記電源分割回路出力電圧102の方が大きければ出力114を活性状態とする。
【0071】
前記入力切替回路111は、前記低電圧側補助比較回路109の出力が非活性状態のときに前記電源分割回路出力電圧102と前記基準電圧103とを前記検知用比較回路104の入力に接続し、前記低電圧側補助比較回路109の出力が活性状態のときに前記比較回路非使用時入力電圧110を前記検知用比較回路104の入力に接続する。
【0072】
前記入力切替回路111が以上の動作を行うことにより、前記検知用比較回路104の2つの入力には、前記低電圧側補助比較回路109の出力が非活性状態にあるときだけ、異なる入力電圧がかかることになり、この状態において、検知用比較器104は、図6(b)に示すように、電源分割回路出力電圧102が基準電圧103よりも高い状態のときにその出力114を活性状態とする。
【0073】
前記低電圧側補助比較回路109の出力が活性状態にあるときには、前記検知用比較回路104の2つの入力は何れも前記比較回路非使用時入力電圧110に接続されるので、この間は前記検知用比較回路104の2つの入力のBT劣化進行状態に差が生じない。検知用比較回路104の2つの入力のBT劣化進行状態に差が生じなければ、2つの入力間のBT劣化による閾値電圧変動量の差は拡大しないので、BT劣化による電源検知精度劣化を抑制することができる。
【0074】
前記信号固定回路115は、図6(c)に示すように、前記入力切替回路111が前記比較回路非使用時入力電圧110に切り替えている時に前記検知用比較回路104の出力を一定電圧(接地電圧)に固定することにより、前記検知用比較回路104から出力される不定が前記電源検知信号105に伝搬することを防ぐ。
【0075】
前記電源検知信号生成回路117は、前記信号固定回路115の出力と前記低電圧側補助比較回路109の出力の論理和をとることにより、図6(d)に示すように、前記電源分割回路出力電圧102が前記基準電圧103よりも高いときに、前記電源検知信号105が常にHighとなるようにする。
【0076】
以上のように、本実施形態によれば、前記検知用比較回路104の2つの入力に異なる入力電圧がかかる時間を制限したことにより、BT劣化による電源検知精度の劣化を抑制することができる。
【0077】
尚、本実施形態では、低電圧側補助比較回路109の出力が非活性状態のときに電源分割回路出力電圧102を選択するとしたが、活性状態のときに電源分割回路出力電圧102を選択してもよい。
(実施形態4)
半導体装置は同一の回路に関して面積を小さくするほど製造プロセス上のバラつきの影響で精度が低下する傾向にあるが、前記実施形態1〜3の電源検知回路において、電源検知信号105の精度は検知用比較回路104の比較精度によって決定されているので、高電圧側補助比較回路107又は低電圧側補助比較回路109を前記検知用比較回路104よりも比較精度が低いもので構成しても、前記電源検知信号105の精度低下には直結しない。
【0078】
従って、前記高電圧側補助比較回路107又は前記低電圧側補助比較回路109の比較精度を前記検知用比較回路104の比較精度よりも低く抑えることにより、回路面積を削減することができる。
【0079】
(変形例)
図7は、前記実施形態1の変形例である電源検知回路の回路構成図である。
【0080】
前記実施形態1の電源検知回路において、入力切替回路111が検知用比較回路104の入力として比較回路非使用時入力電圧110を選択しているときに、前記検知用比較回路104の電源を遮断する電源遮断回路(電源遮断手段)122を更に備える点が新しい。これにより、この間に前記検知用比較回路104には電流が流れなくなる。
【0081】
この構成の採用によって、入力切替回路111が前記検知用比較回路104の入力として比較回路非使用時入力電圧110を選択しているときの検知用比較回路104の消費電力を低減させることができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれ等の実施形態や変形例に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明にかかる電源検知回路は、BT劣化による電源検知精度の劣化を抑制することが可能であるので、電池やバッテリーを使用する電子装置の電源検知精度劣化対策として有用である。
【符号の説明】
【0084】
100 電源
101 電源分割回路
102 検知用比較回路に対する電源分割回路出力電圧
103 基準電圧
104 検知用比較回路
105 電源検知信号
106 高電圧側補助比較回路に対する電源分割回路出力電圧
107 高電圧側補助比較回路
108 低電圧側補助比較回路に対する電源分割回路出力電圧
109 低電圧側補助比較回路
110 比較回路非使用時入力電圧
111 入力切替回路(入力切替手段)
112 入力切替信号生成回路(入力切替信号生成手段)
113 入力切替信号
114 検知用比較回路の出力
115 信号固定回路(信号固定手段)
116 信号固定回路の出力
117 電源検知信号生成回路(電源検知信号生成手段)
122 電源遮断回路(電源遮断手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源(100)の電圧を分割する電源分割回路(101)と、
前記電源分割回路(101)の第1の電源分割回路出力電圧(102)と基準電圧(103)とを比較する検知用比較回路(104)と、
前記第1の電源分割回路出力電圧(102)より高電圧である前記電源分割回路(101)の第2の電源分割回路出力電圧(106)と前記基準電圧(103)とを比較する高電圧側補助比較回路(107)と、
前記第1の電源分割回路出力電圧(102)より低電圧である前記電源分割回路(101)の第3の電源分割回路出力電圧(108)と前記基準電圧(103)とを比較する低電圧側補助比較回路(109)と、
前記高電圧側補助比較回路(107)の出力と前記低電圧側補助比較回路(109)の出力とに基づいて入力切替信号(113)を生成する入力切替信号生成手段(112)と、
前記入力切替信号(113)により、前記検知用比較回路(104)の入力を、前記基準電圧(103)及び前記第1の電源分割回路出力電圧(102)から、比較回路非使用時入力電圧(110)に切り替える入力切替手段(111)と、
前記入力切替手段(111)が前記比較回路非使用時入力電圧(110)に切り替えたときに前記検知用比較回路(104)の出力を一定電圧に固定する信号固定手段(115)と、
前記低電圧側補助比較回路(109)の出力と前記信号固定手段(115)の出力から電源検知信号(105)を生成する電源検知信号生成手段(117)とを備えた
ことを特徴とする電源検知回路。
【請求項2】
電源(100)の電圧を分割する電源分割回路(101)と、
前記電源分割回路(101)の第1の電源分割回路出力電圧(102)と基準電圧(103)とを比較する検知用比較回路(104)と、
前記第1の電源分割回路出力電圧(102)より高電圧である前記電源分割回路(101)の第2の電源分割回路出力電圧(106)と前記基準電圧(103)とを比較する高電圧側補助比較回路(107)と、
前記高電圧側補助比較回路(107)の出力により、前記検知用比較回路(104)の入力を、前記基準電圧(103)及び前記第1の電源分割回路出力電圧(102)から、比較回路非使用時入力電圧(110)に切り替える入力切替手段(111)と、
前記入力切替手段(111)が前記比較回路非使用時入力電圧(110)に切り替えたときに前記検知用比較回路(104)の出力を一定電圧に固定する信号固定手段(115)とを備えた
ことを特徴とする電源検知回路。
【請求項3】
電源(100)の電圧を分割する電源分割回路(101)と、
前記電源分割回路(101)の第1の電源分割回路出力電圧(102)と基準電圧(103)とを比較する検知用比較回路(104)と、
前記第1の電源分割回路出力電圧(102)より低電圧である前記電源分割回路(101)の第2の電源分割回路出力電圧(108)と前記基準電圧(103)とを比較する低電圧側補助比較回路(109)と、
前記低電圧側補助比較回路(109)の出力により、前記検知用比較回路(104)の入力を、前記基準電圧(103)及び前記第1の電源分割回路出力電圧(102)から、比較回路非使用時入力電圧(110)に切り替える入力切替手段(111)と、
前記入力切替手段(111)が前記比較回路非使用時入力電圧(110)に切り替えたときに前記検知用比較回路(104)の出力を一定電圧に固定する信号固定手段(115)と、
前記低電圧側補助比較回路(109)の出力と前記信号固定手段(115)の出力から電源検知信号(105)を生成する電源検知信号生成手段(117)とを備えた
ことを特徴とする電源検知回路。
【請求項4】
前記請求項1〜3の何れか1項に記載の電源検知回路において、
前記高電圧側補助比較回路(107)又は前記低電圧側補助比較回路(109)の比較精度を前記検知用比較回路(104)の比較精度よりも低く抑えた
ことを特徴とする電源検知回路。
【請求項5】
前記請求項1〜3の何れか1項に記載の電源検知回路において、
前記信号固定手段(115)は、セレクタ回路で構成される
ことを特徴とする電源検知回路。
【請求項6】
前記請求項1〜3の何れか1項に記載の電源検知回路において、更に、
前記入力切替手段(111)が前記検知用比較回路(104)の入力として前記比較回路非使用時入力電圧(110)を選択しているときに、前記検知用比較回路(104)の電源を遮断する電源遮断手段(122)を備えた
ことを特徴とする電源検知回路。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図2】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−259250(P2011−259250A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132472(P2010−132472)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】