説明

電源装置および画像形成装置

【課題】 本発明は、極性切替を行う電源装置において、回路を複雑化させることなく、極性切替の応答性を高めた電源装置を提供することにある。
【解決手段】 異なる極性の出力電圧を出力する第1の電源回路および第2の電源回路(100a,100b)と、入力切替信号に基づいて前記第1および第2の電源回路の出力を切替えて駆動する駆動制御手段(10、11、20、21)と、前記入力切替信号に応答して切替え時に出力電圧が所定値より大きくなるように制御する割込制御手段(28)と、を具備する電源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機等の画像形成装置は、感光体を帯電装置で一様に帯電し、露光装置により静電潜像を形成する。感光体の表面に形成された静電潜像を現像装置で現像し、現像されたトナー像を転写装置で用紙に転写する。さらに、用紙への転写後、剥離装置で用紙を感光体又は転写装置等から剥離し画像を出力する。
【0003】
例えば、カラー印刷装置においては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色ごとに、感光体、帯電装置、現像器、転写装置のいわゆる画像形成ユニットを構成し、これらの各々を動作させてカラー印刷を行なう。
【0004】
電子写真方式のプリンタ・複写機等は、帯電装置、現像器、転写装置等の負荷に対して規定電圧もしくは電流を与えるための高圧電源を備えている。電圧もしくは電流は、帯電、現像、転写、剥離、清掃等の処理のために供給される。昨今のプリンタ・複写機等は市場での高機能要求を背景に、カラー化、高速化が進んでいる。その要求に対応するべく、感光体、および、帯電、現像、転写機能を含むブロックを各色(例えばYMCK色)毎に用意し、ペーパーを1パスで印字するタンデム型エンジンが主流になりつつある。タンデム型の利点は一度に多色(例えばYMCK色の4色)を印字できるため、白黒機と同様のスピードパフォーマンスを実現できる。
【0005】
転写装置として、例えば、−極性のトナー画像が形成された中間転写ベルトから用紙にトナー画像を転写する二次転写装置では、中間転写ベルトを挟んで接地された二次転写ロールと対向するバックアップロールにバイアスが高圧電源としての電源装置により印加される。―バイアスの場合には、マイナス極性であるトナーは反発し転写ロール側へすなわち用紙へ転写される。+バイアスの場合には、クリーニング(CLN)バイアスとなる。このクリーニングバイアスは、トナー画像間に形成された濃度制御用のパッチで二次転写ロールが汚れないように中間転写ベルトにバッチを残すようにするために印加される。
【0006】
このように異なる極性の電圧を印加する電源装置には、正負出力用の2つのコンバーター(電源回路)を直列に接続するものと、正負出力用の2つのコンバーター(電源回路)を並列にスイッチを介して接続するものとがある。
【0007】
正負出力用の第1の電源回路および第2の電源回路の出力をバイアス抵抗で直列に接続し、異なる極性の第1および第2の電源回路を選択して出力するものとしては、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されるものがある。
【0008】
上述の転写装置は、高速極性切替応答性が特に要求されるタンデム構成の画像形成装置では、例えば、図4に示すように、一次転写器で形成された中間転写体上の画像などのトナー像を用紙等のシート状記録媒体に転写する二次転写器として使用される。
【0009】
上述のような転写装置で、バックアップロールにバイアスを印加する場合、用紙などのシート状の記録媒体にトナーを転写する転写バイアス(−)と、非転写時に濃度制御用パッチが2次転写器としての転写ロールに付着しないようクリーニング(CLN)バイアス(+)との2つの電源回路出力をバイアス抵抗で直列に接続し、極性の異なる出力を持つ第1および第2の電源回路を選択して切替えることにより、負荷としてのバックアップロールに供給している。
【0010】
高速化に伴い、極性切替え時間の要求が厳しくなり、従来技術の装置では要求をみたすのが困難であることが分かった。−から+への極性切替えが遅れると、転写ロールにパッチを形成するトナーが付着し用紙の裏面が汚れる。転写ロールはクリーニング装置を具備しているが、付着したパッチ濃度が高いとクリーニングしきれない。+から−への極性切替えが遅れると用紙への転写不良による画質欠陥を引き起こしてしまう。
【0011】
一方、正負コンバーターを並列にスイッチを介して接続する構成の電源装置としては、特許文献3に開示されるものがある。このような並列接続型では、スイッチによる出力切換え時にノイズが発生し、装置及び周辺装置への対策が必要となる。また、切替え装置とノイズ対策のため装置が大型化し、さらに切替えスピードが限定される。
【0012】
【特許文献1】特開2000−232729号公報
【特許文献2】特公平02−016659号公報
【特許文献3】特開平05−224541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、極性切替を行う電源装置において、回路を複雑化させることなく、極性切替の応答性を高めた電源装置およびそれを適用した画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、異なる極性の出力電圧を出力する第1の電源回路および第2の電源回路と、入力切替信号に基づいて前記第1および第2の電源回路の出力を切替えて駆動する駆動制御手段と、前記入力切替信号に応答して切替え時に出力電圧が所定値より大きくなるように制御する割込制御手段とを備えている。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記割込制御手段が、前記切替え時に出力電圧が所定値より大きくなるように制御する時間を、所定の極性切替え時間以下となるように制御している。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第1および第2の電源回路は、1次巻線に接続された前記駆動制御手段により駆動され二次巻線に昇圧した電圧を出力するトランスと、該トランスの2次巻に接続される整流平滑手段と、前記2次巻線に並列に接続され、かつ相互に直列に接続される第1および第2のバイパス抵抗とを備え、前記割込制御手段が、第1および第2の電源回路の出力電圧に対応した値を示す入力制御信号に対して割込みをかける。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第1および第2の電源回路の出力がオフのときに、該オフに対応する第1および第2のバイアス抵抗を該バイパス抵抗の抵抗値より低い抵抗値でバイパスするバイパス手段を備えている。
【0018】
請求項5記載の発明は、異なる極性の出力電圧を出力する第1の電源回路および第2の電源回路と、入力切替信号に基づいて前記第1および第2の電源回路の出力を切替えて駆動する駆動制御手段と、前記入力切替信号に応答して切替え時に出力電圧が所定値より大きくなるように制御する割込制御手段と、画像を形成する画像形成手段と、前記複数の電源回路から出力される電源出力に基づいて、画像形成手段形成された画像を記録媒体に転写する転写手段とを備えている。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記画像形成手段は、複数色の画像を中間転写体に形成するタンデム画像形成手段であり、前記転写手段は、前記中間転写体に形成された画像を記録媒体に転写する2次転写手段である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、極性切替時の応答性が高めることができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、極性切替え時間内に極性切替えを行なうことができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、出力電圧のオーバシュートの影響による負荷に対するノイズを低減させることができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、バイパス抵抗による電力損失を低減させることができる。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、極性切替え時の応答性が高めることができる。高速性が要求される画像形成の場合にも、記録媒体の汚れや画質欠陥を低減させることができる。
【0025】
請求項6記載の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、高速極性切替応答性が要求される画像形成装置の場合にも、極性切替えを高速に行なことができ、記録媒体の汚れや画質欠陥を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の最良の実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例】
【0027】
図1は、本発明の実施例に係る電源装置の構成例を示す回路図である。図2は図1の電源装置を備えた本発明の実施例に係る画像形成装置の構成図である。なお、図3は従来の電源装置(特許文献1参照)に対応した構成図であり、本実施例の構成図との相違点を中心に後述する。
【0028】
図2の画像形成装置は、タンデム型プリンタの構成例を示す。本実施例では、高圧電源を各色YMCKの画像形成ユニット個々に対応して設定した構成例であるが、高圧電源は各画像形成ユニットに対して共通化して設ける構成も可能である。
【0029】
図2のタンデム型プリンタの構成および動作について説明する。各感光体2101の周囲には、帯電ロールを備えた帯電器2102が備えられ、帯電器2102により感光体2101が一様に帯電された後、感光体ドラム上に図示しない露光装置により露光され、静電潜像が形成される。静電潜像が現像器2103により現像され、感光体2101上のトナー像は、一次転写器2104により中間転写体2107上に転写される。これらの処理をYMCKそれぞれ連続して行なった後、二次転写器2106により用紙(ペーパー)などのシート状の記録媒体上に転写され、剥離器2105で用紙を剥離し出力する。
【0030】
ここで、二次転写器2106は、接地される転写ロール2106aと、中間転写体を挟んで対向するバックアップロール2106bを含んで構成される。負荷としてのバックアップロール2106bにバイアスが印加される。図2では、省略されているが、二次転写器2106の転写ロール2106aには、転写ロールに付着したトナーを回収するクリーニング装置が設けられ、二次転写位置より下流側には、中間転写体(例えば、中間転写ベルト)2107に付着したトナーを回収するクリーニング装置が設けられる。
【0031】
次に、このようなタンデム型の画像形成装置の二次転写器2106に対応して設けられる高圧電源としての電源装置の構成について、図1を参照して説明する。
【0032】
本実施例の電源装置は、図1に示すように、負荷に対して転写バイアスを与える−出力の第1の電源回路100aと、負荷に対して非転写バイアス、すなわちクリーニング(CLN)バイアスを与える+出力の第2の電源回路101aを備える。入力電源電圧Vcc(例えば24V)は、共通に電源回路100a、101aに与えられる。
【0033】
−出力の電源回路100aは、制御部10、トランジスタ11、トランス12、および整流平滑回路13を備えて構成される。また、整流平滑回路13と出力端の間の出力ラインに挿入される出力抵抗14a、整流平滑回路13に並列に接続されるバイパス抵抗14b、カソードが出力端側に接続され、アノードが抵抗15bを介して−出力電圧検出回路15の入力に接続されるダイオード15a、抵抗15b、および−出力電圧検出回路15を備える。点線で示す領域は、トランス12の二次側で、樹脂封止などが行われる高圧トランスパック部16である。
【0034】
制御部10は、トランジスタ11をスイッチングして駆動するものであり、−出力電圧検出回路15で検出された−出力電圧により定電圧制御する定電圧制御回路10a、後述する−出力電流検出回路27で検出された−出力電流により定電流制御する定電流制御回路10bを備える。これらの定電圧制御回路10aおよび定電流制御回路10bは、定電圧/定電流選択入力信号(図示せず)により選択される。
【0035】
トランジスタ11は電界効果トランジスタで、そのドレインは、トランス12の一次巻線12aを介して入力電源Vccに直列接続されると共に、そのソースは接地される。さらに、そのゲートには、制御部10の出力が接続される。なおトランジスタ11は、バイポーラトランジスタで構成してもよい。
【0036】
整流平滑回路13は、トランス12の2次巻線12bと並列に接続される。整流平滑回路13は、カソードが2次巻線12bの一端に接続されるダイオード13aと、アノードが2次巻線12bの一端に接続されるダイオード13bとを含む。さらに整流平滑回路13は、一端がダイオード13aのアノードに接続され、他端が2次巻線12bの他端に接続されるコンデンサ13cと、一端が2次巻線12bの他端に接続され、他端がダイオード13bに接続されるコンデンサ13dとを含んで構成される。
【0037】
−出力電圧検出回路15は、直列接続されるダイオード15aおよび抵抗15bを介して−出力電圧を検出する。
【0038】
+出力の電源回路101aは、制御部20、トランジスタ21、トランス22、+出力電圧検出回路23、および整流平滑回路24を備えて構成される。また、整流平滑回路24に並列に接続されると共にバイパス抵抗14bと直列に接続されるバイパス抵抗25a、バイパス抵抗25aと並列に接続されるバイパススイッチ26、およびバイパス抵抗25aとアースとの間に直列に接続される−出力電流検出回路27を備える。
【0039】
制御部20は、トランジスタ21をスイッチングして駆動するものであり、+出力電圧検出回路23で検出された+出力電圧により定電圧制御する定電圧制御回路20aを備える。
【0040】
トランジスタ21は電界効果トランジスタで、そのドレインは、トランス22の一次巻線12aを介して入力電源Vccに直列接続されると共に、そのソースは接地される。さらに、そのゲートには、制御部20の出力が接続される。なおトランジスタ11は、バイポーラトランジスタで構成してもよい。
【0041】
+出力電圧検出回路23は、トランス22の検出巻線(図示せず)に励起する電圧を+出力電圧に対応した電圧として検出する。
【0042】
整流平滑回路24は、トランス22の2次巻線22bと並列に接続される。整流平滑回路24は、コンデンサ24a、ダイオード24b、24c、コンデンサ24dを含んで構成される。ダイオード24bのカソードとダイオード24cのアノードとの接続点と、2次巻線22bの一端との間にコンデンサ24aが接続される。また、2次巻線22bの他端に接続されたダイオード24bのアノードと、ダイオード24cのカソードとの間にコンデンサ24dが接続される。
【0043】
電源回路100a、101aの出力がオフのときの電力損失を低減するために、バイパススイッチ26を設けている。バイパススイッチ26は、+出力をオフさせる時に、バイパス抵抗25aを、バイパス抵抗25aの抵抗値より低い抵抗値でバイパスするバイパス手段である。図1に示す例では、バイパススイッチ26を電界効果トランジスタで構成しているが、バイパス抵抗25aの抵抗値より低い抵抗値を持つ抵抗と直列接続のスイッチで実現してもよい。本実施例では、−出力電流検出回路27の検出結果に基づいてバイパススイッチ26を切り替えている。
【0044】
以上の本実施例に係る電源装置の電源回路100a、101aの構成は、図3に示す従来の電源装置の電源回路100、101と同様な部分である。以下に相違部分の構成を中心に述べる。
【0045】
本実施例に係る電源装置の電源回路100a、101aは、それぞれ−出力PWM信号、+出力PWM信号が入力端子17b、17cから入力されるD/A変換部18、29を備える点では、従来の電源装置の電源回路100、101と同様であるが、割込信号発生部28を備える点で異なる。D/A変換部18、29は、各PWM信号をアナログ値に変換して各制御部10、20に転送する。
【0046】
−+出力切替部19は入力端子17aから入力される−+出力切替信号を制御部10、20に転送すると共に、割込信号発生部28に転送する。
【0047】
割込信号発生部28は、−+出力切替時、−出力から+出力に切替えるタイミングで起動され、+出力電圧波形の立ち上がり時にオーバシュートするように、所定時間だけ、通常のアナログ値(直流電圧)を大きくするために、D/A変換部29で変換された通常のアナログ値より大きな直流電圧を出力するものである。この所定時間は、図4に示すように、転写バイアス(−出力)からクリーニング(CLN)バイアス(+出力)に切替え時に、画像の終端の切替点から2つのパッチが現れる始点までの極性の切替期間内に設定される。本実施例の場合には、例えば10msである。
【0048】
次に、以上のように構成された本実施例に係る電源装置の動作を説明する。
【0049】
まず、転写時について説明する。転写時には、転写信号(−出力選択信号)を選択する選択信号が入力端子17aに入力される。転写信号は、−+出力切替部19に入力される。転写信号の選択信号を入力した−+出力切替部19は、定電圧/定電流選択信号(図示せず)に基づいて、駆動信号を、定電圧制御回路10a又は定電流制御回路10bに出力し、定電圧制御回路10a及び定電流制御回路10bのいずれか一方を駆動させる。定電圧制御する場合には、定電圧制御回路10aが駆動する。この際、入力端子17bを介してD/A変換部18に−出力PWM信号が入力される。−出力PWM信号は、D/A変換部18でアナログ値に変換され、制御部10の定電圧制御回路10aに入力される。定電圧制御回路10aは、入力されたアナログ値に対応した−出力電圧になるように、−出力電圧検出回路15で検出された電圧をモニタし、トランジスタ11を駆動する。これにより、−出力電圧が入力されたアナログ値が示す目標値となるように定電圧制御され、トランス12及び整流平滑回路13を介して、マイナス出力が2次側に発生する。
【0050】
なお、転写信号は制御部20の定電圧制御回路20aにも入力され、これにより、定電圧制御回路20aは駆動し、所定の+出力電圧となるように定電圧制御を行い、トランス22の二次側に+出力電圧が発生している。しかし、転写電流バイパス用のスイッチ26がオンしているため、短絡状態になっており、負荷側には供給されない。
【0051】
トランス12の2次側にマイナス出力が発生すると、点線の矢印で示すように、上記抵抗14a、13d、25aに電流が流れようとし、この電流は、−出力電流検出回路27により検出され、その検出信号が転写電流バイパス用のバイパススイッチ26に入力されて、このバイパススイッチ26がオンして、バイパス抵抗25aが短絡(バイパス)する。よって、バイパス抵抗25aには、転写時には電流が流れない。トランス12の2次側にマイナス出力が発生すると、2次側の電圧が−出力電圧検出回路15により検出される。−出力電圧検出回路15で検出される検出信号が、定電圧制御回路10aに入力される。又、マイナス出力に伴う電流が−出力電流検出回路27より検出される。この検出信号が低電圧制御回路10aに入力され、定電圧/定電流選択信号により定まる定電圧制御部10a及び定電流制御回路10bの何れかが各々有する基準値と比較して、トランス12をスイッチング制御する。
【0052】
次に、非転写時(クリーニング時)について説明する。非転写時には、クリーニング信号(+出力選択信号)が出力されるように、入力端子17aを介して−+出力切替部19に、非転写(クリーニング信号)の選択信号が入力される。この結果、−+出力切替部19はクリーニング信号として駆動信号を制御部20および割込信号発生部28に入力する。なお、この場合、−+出力切替部19は、制御部10の定電圧制御回路10a及び定電流制御回路10bには、駆動信号を出力しない。よって、これらは駆動しない。一方、クリーニング信号が入力された制御部20の定電圧制御回路20aは、定電圧制御を開始する。この際、入力端子17cを介してD/A変換部29に+出力PWM信号が入力される。+出力PWM信号は、D/A変換部29でアナログ値に変換されて制御部20の定電圧制御回路20aに入力される。このとき、クリーニング信号が入力された割込信号発生部28は、極性切替の立ち上がりのタイミングで上記アナログ値(直流電圧)より大きな直流電圧(オーバシュート電圧)を所定時間だけ発生させる。定電圧制御回路20aは、入力されたアナログ値、すなわち、オーバシュート電圧に対応した+出力電圧になるように、+出力電圧検出回路23で検出された電圧をモニタし、トランジスタ21を駆動する。これにより、トランス22および整流平滑回路24は、2次側にプラス出力を発生させる。このとき、2次側電圧の大きさを+出力電圧検出部23が検出し、この検出値に基づいて、定電圧制御回路20aは、2次側出力が所定電圧(クリーニング可能な電圧)となるように1次側入力を制御する。トランス22の2次側にプラス出力が発生すると、これに伴って電流が、実線の矢印に示すように、抵抗14a、13d、25aに流れる。この電流は、−出力電流検出回路27により検出され、転写時とは、電流の向きが逆なので、その検出信号が転写電流バイパス用のスイッチ26に入力されて、このスイッチ26がオフし、スイッチは開放される。従って、電流はバイパス抵抗25aを流れることになる。
【0053】
図5(A)は、図3で示す従来の電源装置の出力波形を示すグラフであり、図5(B)は、本発明の実施例に係る電源装置の出力波形を示すグラフである。図5(B)の出力波形では−出力電圧(例えば−8.5KV)、すなわち転写バイアスが、+出力電圧(例えば+710V)、すなわちクリーニング(CLN)バイアスに切替えた時に割込信号発生部28により+出力波形にオーバシュートが出るように制御した時のものである。図6は、その時の切替え時間を示すものである。なお、図5における出力波形の測定点は、上側の+出力電圧波形が電源回路101aの出力点であるA点であり、下側の出力電圧波形は、電源回路100aの出力端、すなわち負荷の+側のB点である。
【0054】
分かり易い例で、オーバシュートの制御について説明する。+出力PWM信号が100%のデューティのとき、1kV、70%のデューティのとき、700Vとすると、D/A変換部29は、例えば、前者のデューティのときには、5V、後者のデューティのときには、3.5Vの直流電圧を出力する。従って、割込信号発生部28は、電源回路101aのA点でオーバシュートが出るように、所定値3.5Vに増加分だけ大きい値の直流電圧を出力している。
【0055】
トナーを記録媒体としての用紙へ転写する転写電圧は、クリーニング(CLN)電圧と比較して大きなバイアスとなる。そのため、転写(−出力)からCLN(+出力)への極性切替え時において、整流平滑回路13、それ以降の出力ラインおよび負荷で溜まったマイナス電荷量が多く、切替え応答時間は悪い(図5(A)、図6の従来例では、15ms)。これに対応するため、上記で述べたように、+出力(CLN)電圧への切替直後、設定電圧よりも高いバイアスが出力されるよう、入力制御信号、すなわち+出力PWM信号をアナログ変換した直流電圧に割り込みをかける。所定の設定値より大きくなるように、割込信号発生部28により所定出力電圧に対応した直流電圧に対して増加出力電圧分だけ大きい直流電圧(オーバシュート電圧)が出力される。
【0056】
図5(B)の出力波形に示すように、CLNバイアス切替え直後のA点電位は設定電圧よりも高く、オーバシュート気味に立ち上がっている。その結果、負荷への供給電圧の立ち上りも従来例と比較して改善し、極性切替え時間は短縮される(図6に示すように、15msから9msに6ms短縮)。
【0057】
本実施例では、バイアス抵抗14b、25aを直列接続した構成で−+出力の極性を切替える構成で、A点にオーバシュートが出るようにしているので、オーバシュートによる負荷に対する影響は、バイパス抵抗14b、25a、抵抗14aおよび負荷の抵抗による分圧で効くので、オーバシュートによるノイズ等の影響はほとんどないという利点がある。
【0058】
以上のように、本実施例では、+出力電圧にオーバシュートをかけるために、割込信号発生部28で、オーバシュートをかける時間(以下、オーバシュート時間という)だけ、+出力電圧に所定値の増加分を加えた値の直流電圧(オーバシュート電圧)を定電圧制御回路20aに出力し、オーバシュート時間を経過した後は、D/A変換部29で変換されたされた所定のアナログ値を出力している。
【0059】
図8は、本発明の変形例に係る電源装置の構成例を示す回路図である。図1の構成との相違点について述べる。この変形例では、−+出力切替信号や+出力PWM信号を入力端子17a、17cにそれぞれ入力する外部制御部側でオーバシュートを制御する例である。図8の電源回路101cのD/A変換部29aは、+出力PWM信号の示すデューティ値等を設定する設定手段(図示せず)を持つ。
【0060】
図7のフローチャートを参照して本発明の変形例の動作を説明する。外部制御部側では、まず、入力端子17aに対して−出力から+出力に切替える信号を送る。この信号を受け取った−+切替部19は制御部20の定電圧制御回路20aを駆動状態とすると共に、D/A変換部29aを駆動状態とする。一方、制御部10は非駆動とする(スッテプS1)。これと共に、外部制御部側では、所定の出力電圧より大きい(高い)値のオーバシュート電圧に対応するデューティを持つ+出力PWM信号を入力端子17cにオーバシュート時間(ここでは、10ms)送る。この結果、D/A変換部29aは、入力デューティに対応する直流電圧値に変換し、定電圧制御回路20aは、この直流電圧に応じて、+出力電圧をオーバシュート電圧に対応したものに制御する(スッテプS2)。オーバシュート時間が経過すると、外部制御部側では、入力端子17cに所定出力電圧に対応したデューティを送る(ステップS3)。この結果、D/A変換部29aは、入力デューティに対応する直流電圧値に変換し、定電圧制御回路20aは、この直流電圧に応じて、+出力電圧を所定電圧に制御する。
【0061】
以上の実施例では、−出力から+出力の切替え時にオーバシュートをかける制御をしていたが、+出力から−出力の切替え時にオーバシュートをかける制御をしてもよい。
【0062】
以上の実施例では、スイッチ26を−出力電流検出回路27の検出結果に基づいてスイッチを駆動しているが、−出力電圧検出回路15、−+出力切替部19、定電圧制御回路10a、+出力電圧検出回路23などの極性切替えの状態が分かる構成要素に基づいてスイッチを駆動しても良い。
【0063】
また、以上述べた本発明の実施例では、電子写真などのカラーの画像を形成するタンデム型の画像形成装置で使用される高圧電源およびそのような画像形成装置で説明したが、カラーのタンデム型に限らず、白黒の画像形成装置においても、高速極性切替応答性が要求される画像形成装置で使用される高圧電源およびそのような画像形成装置などにおいて有効に利用され得る。タンデムエンジンなどエンジンの個数に限定されず、白黒機でも4サイクル機など、特に用紙と用紙の間に濃度制御用パッチを書く場合に本発明は有効に適用できる。
また、上述した実施例では、バックアップロールにバイアスを印加したが、転写ロールにバイアスを印加してもよい。この場合、転写バイアスはプラス(+)、クリーニグバイアスはマイナス(−)となる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例に係る電源装置の構成例を示す回路図である。
【図2】図1の電源装置が適用される本実施例に係る画像形成装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】従来の電源装置の構成例を示す回路図である。
【図4】中間転写体上に形成された画像とパッチに対する転写バイアスとクリーニンバイアスの切替関係を示す説明図である。
【図5】本発明に係る実施例と従来例の極性切替え時における出力波形を示すグラフである。
【図6】本発明に係る実施例と従来例の極性切替え時間を示す表である。
【図7】本発明に係る変形例における極性切替え時の制御処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る変形例における電源装置の構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0065】
100、100a:第1の電源回路
101、101a、101b、101c:第2の電源回路
10、20:制御部
11、21:トランジスタ
12、22:トランス
13、24:整流平滑回路
14b、25a:バイパス抵抗
15:−出力電圧検出回路
16:高圧トランスパック
18、29、29a:D/A変換部
19:−+出力切替部
23:+電圧検出回路
26:スイッチ
27:−出力電流検出回路
28、28a:割込信号発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる極性の出力電圧を出力する第1の電源回路および第2の電源回路と、
入力切替信号に基づいて前記第1および第2の電源回路の出力を切替えて駆動する駆動制御手段と、
前記入力切替信号に応答して切替え時に出力電圧が所定値より大きくなるように制御する割込制御手段と、
を具備することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記割込制御手段が、前記切替え時に出力電圧が所定値より大きくなるように制御する時間を、所定の極性切替え時間以下となるように制御することを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第1および第2の電源回路は、1次巻線に接続された前記駆動制御手段により駆動され二次巻線に昇圧した電圧を出力するトランスと、該トランスの2次巻に接続される整流平滑手段と、前記2次巻線に並列に接続され、かつ相互に直列に接続される第1および第2のバイパス抵抗とを備え、前記割込制御手段が、第1および第2の電源回路の出力電圧に対応した値を示す入力制御信号に対して割込みをかけることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記第1および第2の電源回路の出力がオフのときに、該オフに対応する第1および第2のバイアス抵抗を該バイパス抵抗の抵抗値より低い抵抗値でバイパスするバイパス手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
異なる極性の出力電圧を出力する第1の電源回路および第2の電源回路と、
入力切替信号に基づいて前記第1および第2の電源回路の出力を切替えて駆動する駆動制御手段と、
前記入力切替信号に応答して切替え時に出力電圧が所定値より大きくなるように制御する割込制御手段と、
画像を形成する画像形成手段と、
前記複数の電源回路から出力される電源出力に基づいて、画像形成手段形成された画像を記録媒体に転写する転写手段と、
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成手段は、複数色の画像を中間転写体に形成するタンデム画像形成手段であり、前記転写手段は、前記中間転写体に形成された画像を記録媒体に転写する2次転写手段であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−74956(P2010−74956A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239859(P2008−239859)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】