説明

電磁弁の駆動装置

【課題】電磁弁のコイルに直列に接続される電界効果トランジスタと、前記コイルに並列に接続される還流ダイオードとを備える電磁弁の駆動装置において、電界効果トランジスタの断線故障を検知する手段とは別に還流ダイオードの断線故障を検知する専用の手段を設けることを不要とし、コスト低減を可能としつつ還流ダイオードの断線故障を検知可能とする。
【解決手段】電界効果トランジスタ46の断線故障は断線故障検知手段52で検知され、電磁弁が非制御状態にあるときに実行される診断時に通電制御手段51は通常のデューテイ制御時よりも高い周波数で電界効果トランジスタ46のデューテイ制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オン・オフを切換可能であるとともにオン・オフ間の中間値の電流での半開制御をも可能とした電磁弁のコイルに直列に接続される電界効果トランジスタと、前記コイルに並列に接続される還流ダイオードと、前記半開制御時には前記電界効果トランジスタの通電・遮断状態をデューテイ制御するようにして該電界効果トランジスタの通電状態を制御する通電制御手段とを備える電磁弁の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁弁のコイルに電界効果トランジスタが直列に接続され、コイルへの通電停止時にコイルに流れる電流を緩やかに低下させることにより半開制御実行時の中間電流値を安定化させるようにした還流ダイオードが前記コイルに並列に接続される構成とした電磁弁の駆動装置が、たとえば特許文献1で知られている。
【特許文献1】特表平10−504259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような駆動装置において、電界効果トランジスタの断線故障が生じたときには、電磁弁の作動制御が困難となるので、電界効果トランジスタの断線故障を検知し得る構成としておく必要があり、電界効果トランジスタの断線故障を検知する手段を設けておくのが一般的である。一方、コイルに並列接続される還流ダイオードも断線故障する可能性があり、そのような還流ダイオードの断線故障を検知するために、電界効果トランジスタの断線故障を検知する手段とは別に還流ダイオードの断線故障を検知する手段を特別に設けるのでは、コストの増加を招くことになる。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、電界効果トランジスタの断線故障を検知する手段とは別に還流ダイオードの断線故障を検知する専用の手段を設けることを不要とし、コスト低減を可能としつつ還流ダイオードの断線故障を検知し得るようにした電磁弁の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、オン・オフを切換可能であるとともにオン・オフ間の中間値の電流での半開制御をも可能とした電磁弁のコイルに直列に接続される電界効果トランジスタと、前記コイルに並列に接続される還流ダイオードと、前記半開制御時には前記電界効果トランジスタの通電・遮断状態をデューテイ制御するようにして該電界効果トランジスタの通電状態を制御する通電制御手段とを備える電磁弁の駆動装置において、前記電界効果トランジスタの断線故障を検知する断線故障検知手段を含み、前記電磁弁が非制御状態にあるときに実行される診断時に前記通電制御手段は通常のデューテイ制御時よりも高い周波数で前記電界効果トランジスタのデューテイ制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の上記構成によれば、通常のデューテイ制御時よりも高い周波数での電界効果トランジスタのデューティ制御を行うと、還流ダイオードが正常の状態では電界効果トランジスタの熱負荷の増大は抑えられるが、還流ダイオードが断線故障した状態では電界効果トランジスタの熱負荷が増大して熱破壊するので、それを断線故障検知手段で検知することができ、還流ダイオード専用の断線故障検知手段を設けることを不要とし、コスト低減を可能としつつ還流ダイオードの断線故障を検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0008】
図1〜図7は本発明の一実施例を示すものであり、図1は乗用車両のブレーキ装置のブレーキ液圧回路図、図2は常開型電磁弁の縦断面図、図3は弁軸のストローク変化に対する吸引力変化を示す図、図4は常開型電磁弁の駆動装置の構成を示す図、図5は常開型電磁弁への指令信号の一例を示す図、図6は電界効果トランジスタの駆動信号、電圧、作動電流および温度の時間経過の一例を示す図、図7は電界効果トランジスタの作動保証範囲を示す図である。
【0009】
先ず図1において、タンデム型のマスタシリンダMは、車両運転者がブレーキペダルPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生する第1および第2出力ポート1,2を備えており、第1出力ポート1に接続された第1出力液圧路3と、左前輪用車輪ブレーキBAおよび右後輪用車輪ブレーキBBとの間に液圧制御弁手段VA,VBがそれぞれ介設され、第2出力ポート2に接続された第2出力液圧路4と、右前輪用車輪ブレーキBCおよび左後輪用車輪ブレーキBDとの間に液圧制御弁手段VC,VDがそれぞれ介設される。
【0010】
各液圧制御弁手段VA〜VDは、左前輪用車輪ブレーキBA、右後輪用車輪ブレーキBB、右前輪用車輪ブレーキBCおよび左後輪用車輪ブレーキBDに個別に対応した常開型電磁弁5A〜5Dと、各常開型電磁弁5A〜5Dにそれぞれ並列に接続されるチェック弁7A〜7Dと、前記各車輪ブレーキBA〜BDに個別に対応した常閉型電磁弁6A〜6Dとを備える。
【0011】
第1出力液圧路3に対応した常開型電磁弁5A,5Bは、第1出力液圧路3と、左前輪用車輪ブレーキBAおよび右後輪用車輪ブレーキBBとの間に介設される。また第1出力液圧路3に対応した常閉型電磁弁6A,6Bは、第1出力液圧路3に対応した単一の第1リザーバ8Aと、左前輪用車輪ブレーキBAおよび右後輪用車輪ブレーキBBとの間に介設される。第1リザーバ8Aには、第1リザーバ8Aからブレーキ液を汲上げ得る第1ポンプ10Aの吸入側が第1吸入弁9Aを介して接続され、第1ポンプ10Aの吐出側が第1吐出弁11Aおよび第1ダンパ12Aを介して第1出力液圧路3に接続される。
【0012】
また第2出力液圧路4に対応した常開型電磁弁5C,5Dは、第2出力液圧路4と、右前輪用車輪ブレーキBCおよび左後輪用車輪ブレーキBDとの間に介設される。また第2出力液圧路4に対応した常閉型電磁弁6C,6Dは、第2出力液圧路4に対応した単一の第2リザーバ8Bと、右前輪用車輪ブレーキBCおよび左後輪用車輪ブレーキBDとの間に介設される。第2リザーバ8Bには、第2リザーバ8Bからブレーキ液を汲上げ得る第2ポンプ10Bの吸入側が第2吸入弁9Bを介して接続され、第2ポンプ10Bの吐出側が第2吐出弁11Bおよび第2ダンパ12Bを介して第2出力液圧路4に接続される。
【0013】
また各チェック弁7A〜7Dは、対応する車輪ブレーキBA〜BDからマスタシリンダMへのブレーキ液の流れを許容するようにして、各常開型電磁弁5A〜5Dに並列に接続される。
【0014】
前記各液圧制御弁手段VA〜VDの作動すなわち各常開型電磁弁5A〜5Dおよび各常閉型電磁弁6A〜6Dの作動と、第1および第2ポンプ10A,10Bの作動とは、コントローラCで制御される。
【0015】
上記各液圧制御弁手段VA〜VDは、各車輪がロックを生じる可能性のない通常ブレーキ時には、コントローラCにより、マスタシリンダMおよび車輪ブレーキBA〜BD間を連通するとともに車輪ブレーキBA〜BDおよびリザーバ8A,8B間を遮断する状態に制御される。すなわち各常閉型電磁弁6A〜6Aが非通電による閉弁状態とされるとともに、各常開型電磁弁5A〜5Aが非通電による開弁状態とされ、マスタシリンダMの第1出力ポート1から出力されるブレーキ液圧は、常開型電磁弁5Aを介して左前輪用車輪ブレーキBAに作用するとともに、常開型電磁弁5Bを介して右後輪用車輪ブレーキBBに作用する。またマスタシリンダMの第2出力ポート2から出力されるブレーキ液圧は、常開型電磁弁5Cを介して右前輪用車輪ブレーキBCに作用するとともに、常開型電磁弁5Dを介して左後輪用車輪ブレーキBDに作用する。
【0016】
上記ブレーキ中に車輪がロック状態に入りそうになったときに、各液圧制御弁手段VA〜VDのうちロック状態に入りそうになった車輪に対応する液圧制御弁手段は、コントローラCにより、マスタシリンダMおよび車輪ブレーキBA〜BD間を遮断するとともに車輪ブレーキBA〜BDおよびリザーバ8A,8B間を連通する状態に制御される。すなわち各常開型電磁弁5A〜5Dのうちロック状態に入りそうになった車輪に対応する常開型電磁弁が通電によって閉弁状態とされるとともに、各常閉型電磁弁6A〜6Dのうち上記車輪に対応する常閉型電磁弁が通電によって開弁される。これにより、ロック状態に入りそうになった車輪のブレーキ液圧の一部が第1リザーバ8Aまたは第2リザーバ8Bに吸収され、ロック状態に入りそうになった車輪のブレーキ液圧が減圧されることになる。
【0017】
またブレーキ液圧を一定に保持する際には、各液圧制御弁手段VA〜VDは、コントローラCにより、車輪ブレーキBA〜BDをマスタシリンダMおよびリザーバ8A,8Bから遮断する状態に制御される。すなわち常開型電磁弁5A〜5Dが通電により閉弁されるとともに、常閉型電磁弁6A〜6Dが非通電により閉弁されることになる。さらにブレーキ液圧を増圧する際には、常閉型電磁弁6A〜6Dが非通電により閉弁状態とされるとともに、常開型電磁弁5A〜5Dは、該常開型電磁弁5A〜5Dへの付与電流の制御によりそれらの常開型電磁弁5A〜5Dの下流側の液圧を前記付与電流に応じてリニアに制御することになる。
【0018】
ところで、第1および第2ポンプ10A,10Bは、上記アンチロックブレーキ制御時に作動するようにコントローラCで制御されるものであり、第1および第2リザーバ8A,8Bのブレーキ液は第1および第2ポンプ10A,10BでマスタシリンダM側に還流されることになる。このようなブレーキ液の還流によって、第1および第2リザーバ8A,8Bへのブレーキ液の吸収によるブレーキペダルPの踏込み量の増加を防止することができる。しかも第1および第2ポンプ10A,10Bの吐出圧の脈動は第1および第2ダンパ12A,12Bで吸収されるので、上記還流によってブレーキペダルPの操作フィーリングは阻害されることはない。
【0019】
このようにしてアンチロックブレーキ制御時には、常閉型電磁弁6A〜6DがコントローラCでオン・オフ制御されるのに対し、各常開型電磁弁5A〜5Dは、オン・オフ制御されるとともにオン・オフ間の中間値の電流でも制御されるものであり、そのような中間値の付与電流に応じて各車輪ブレーキBA〜BD側の液圧をリニアに変化させるべく構成される常開型電磁弁5A〜5Dのうち、常開型電磁弁5Aの構成について図2を参照しながら以下に説明する。
【0020】
図2において、常開型電磁弁5Aは、電磁力を発揮するソレノイド部14と、該ソレノイド部14で駆動される弁部15とで構成されるものであり、固定の支持ブロック16の一面16aに開口するようにして該支持ブロッック16に設けられる装着孔17に弁部15が収容され、ソレノイド部14は支持ブロック16の一面16aから突出する。
【0021】
弁部15は、磁性金属により段付きの円筒状に形成される弁ハウジング18を備えるものであり、この弁ハウジング18は、支持ブロック16の装着孔17に嵌合される。装着孔17の開口端寄り内面には弁ハウジング18に係合して該弁ハウジング18の装着孔17からの離脱を阻止する止め輪19が嵌着される。また弁ハウジング18の外面の軸方向に間隔をあけた2個所には環状のシール部材20,21が装着されており、それらのシール部材20,21間で支持ブロック16および弁ハウジング18間には環状室22が形成される。
【0022】
弁ハウジング18には円筒状の弁座部材23が圧入、固着される。また弁ハウジング18には、非磁性材料製の弁軸24が摺動可能に嵌合されており、弁軸24の一端および弁座部材23間に出力室25が形成され、出力室25に臨んで弁座部材23に形成される弁座23aに着座可能な球状の弁体26が弁軸24の一端に固着される。しかも弁軸24の一端および弁座部材23間には、弁軸24すなわち弁体26を弁座部材23から離反する方向に付勢する戻しばね27が設けられる。
【0023】
弁ハウジング18には、第1出力液圧路3に連なって支持ブロック16に設けられた液圧路28と、弁座部材23との間に介在するようにしてフィルタ29が装着される。また環状室22に臨む部分で弁ハウジング18の外周にはフィルタ30が装着されており、該フィルタ30を介して出力室25を環状室22に通じさせるための通路31が弁ハウジング18に設けられる。前記環状室22は車輪ブレーキBAに通じるものであり、支持ブロック16には環状室22を車輪ブレーキBAに通じさせる液圧路32が設けられる。さらに弁座部材23およびフィルタ29間で弁ハウジング18には、液圧路28の圧力が環状室22よりも低下したときに開弁して環状室22のブレーキ液を液圧路28側に還流させるチェック弁7Aが配設される。
【0024】
ソレノイド部14は、固定コア35と、前記弁部15における弁軸24の他端に同軸に連接されて固定コア35に対向するアーマチュア36と、固定コア35に対するアーマチュア36の近接・離反移動を案内するガイド筒37と、ガイド筒37を囲繞するボビン38と、該ボビン38に巻装されるコイル39と、コイル39を囲繞する磁路枠40と、磁路枠40およびボビン38間に介装されるコイル状のばね41とを備える。
【0025】
固定コア35は円筒状に形成されており、前記弁ハウジング18の一端中央部に同軸にかつ一体に連設される。ガイド筒37は、非磁性材料たとえばステンレス鋼により一端を半球状の閉塞端とした薄肉の有底円筒状に形成されるものであり、該ガイド筒37の他端に前記固定コア35の先端部が嵌合され、たとえば溶接によりガイド筒37の他端が固定コア35に固着される。しかも弁ハウジング18の装着孔17への装着状態でガイド筒37は支持ブロック16の一面16aから突出されている。
【0026】
ボビン38は、ガイド筒37を挿通させる中心孔38aを有して合成樹脂により形成されるものであり、該ボビン38にコイル39が巻装される。
【0027】
磁路枠40は、ボビン38およびコイル39を囲繞する磁路筒42を備える。この磁路筒42の一端には、ガイド筒37の閉塞端部を中央部から突出させるようにしてボビン38に当接するリング板状の磁路板43がかしめ係合される。
【0028】
一方、磁路筒42の他端には、固定コア35の周囲で弁ハウジング18の一端に当接するリング板状の当接板部42aが一体に連設されており、この当接板部42aの内周に、固定コア35の基部が嵌合される。また一端を当接板部42aに当接せしめたコイル状のばね41の他端は、ボビン38に当接される。
【0029】
ガイド筒37内には、固定コア35に対して近接・離反することが可能なアーマチュア36が収納されており、固定コア35を移動自在に貫通する前記弁軸24の一端がアーマチュア36に同軸に当接される。ところで、弁軸24は、戻しばね27のばね力により弁体26を弁座部材23から離反する方向に付勢されており、弁軸24の他端はアーマチュア36に常時当接されており、アーマチュア36の軸方向移動に応じて弁軸24すなわち弁体26も軸方向に移動することになる。
【0030】
すなわちアーマチュア36に固定コア35側への磁気吸引力が作用していない状態で、該アーマチュア36は戻しばね27のばね力によりガイド筒37の一端閉塞部で受けられるまで後退した位置に在り、この際、弁体26は弁座部材23から離反しており、常開型電磁弁5Aは開弁状態にある。また弁体26が弁座部材23に着座するまで固定コア35側にアーマチュア36を磁気吸引させると、常開型電磁弁5Aが閉弁状態となる。
【0031】
ところで、弁軸24の一端には、出力室25の液圧により液圧力と、戻しばね27のばね力との合力が作用するのに対し、弁軸24の他端には、アーマチュア36を固定コア35側に吸引する磁気吸引力が作用するものであり、弁軸24は、液圧力およびばね力の合力と、磁気吸引力とが均衡するようにストローク作動することになる。そこでコイル39への通電量を、たとえばデューティ制御によってオン・オフ間の中間値となるようにコントローラCで制御することにより、アーマチュア36を固定コア35側に吸引する磁気吸引力を変化させる。
【0032】
一方、固定コア35およびアーマチュア36の対向面35a,36aは、出力室25から離反するにつれて大径となるテーパ面に形成される。
【0033】
このように固定コア35およびアーマチュア36の対向面35a,36aがテーパ面に形成されると、アーマチュア36の軸方向ストローク量に比べて固定コア35およびアーマチュア36の対向距離(テーパ面に直角な方向の距離)の変化を小さくすることができ、対向面35a,36a間に発生する吸引力の変化が軸方向ストロークの変化に対して小さくなる。しかも実際に軸方向に作用する吸引力は対向面35a,36a間に発生する吸引力のSin成分であり、テーパ面の角度が鋭角になるほど対向面35a,36a間の吸引力の変化に対して軸方向の吸引力の変化が小さくなる。
【0034】
これにより、図3の実線で示すように、固定コア35およびアーマチュア36間の吸引力が、弁部15における全閉および全開間の実用範囲ではほぼフラットになるようにすることができる。これに対し、固定コア35およびアーマチュア36の対向面を軸方向に直角な平坦面としたときには、弁軸24の軸方向ストロークに応じて固定コア35およびアーマチュア36の対向距離が比例的に変化するので、図3の鎖線で示すように、固定コア35およびアーマチュア36間の吸引力は実用範囲でも大きく変化してしまう。
【0035】
このようにして常開型電磁弁5Aは、オン・オフ制御されるとともに車輪ブレーキBA側の液圧をリニアに変化させるべくオン・オフ間の中間値の電流でも制御可能であり、他の常開型電磁弁5B〜5Dも上記常開型制御弁5Aと同様に構成される。一方、常閉型電磁弁6A〜6Dはオン・オフ制御されるだけである。
【0036】
図4において、常開型電磁弁5Aを駆動するために、コイル39の一端は電源45に接続され、コイル39の他端および接地間には、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor 、以下、FETと言う)46が介設される。またコイル39には、還流ダイオード47が並列に接続されており、前記FET46のドレインおよびゲート間にはダイオード48およびツェナーダイオード49が直列に接続され、FET46のゲートはツェナーダイオード50を介して接地される。
【0037】
コントローラCは、前記FET46のゲートに接続される通電制御手段51と、前記コイル39および還流ダイオード47から成る並列回路と電源45との間に接続される断線故障検知手段52とを備える。
【0038】
通電制御手段51は、FET46のゲートに接続されるものであり、常開型電磁弁5Aをオン・オフ制御するとともにオン・オフ間の間の中間の電流による半開制御を実行すべく、FET46の通電・遮断を制御する。而してアンチロックブレーキ制御時に、常開型電磁弁5Aを開閉駆動するための指令信号は、たとえば図5で示すように変化し、デューティ保持時にはオン状態のときよりも低い一定電流をコイル39に流すように一定となり、またデューティ増圧時にはオン状態のときよりも低い電流をコイル39に付与すべく所定の幅内での増減を繰り返すものであり、通電制御手段51は、前記デューティ保持およびデューティ増圧時には、前記FET46の通電・遮断をパルス幅変調によるパルス信号によって制御する。
【0039】
また断線故障検知手段52は、コイル39および電源45間の電圧を検知しており、電界トランジスタ46の断線故障が生じたときの前記検知電圧の変化によってFET46の断線故障が生じたと判断するものである。
【0040】
ところで、FET46を通電・遮断するための駆動信号が図6(a)で示すように変化するときに、FET46の電圧、作動電流および温度は、図6(b),(c),(d)で示すように変化するものであり、FET46が遮断する時刻t1,t2には、コイル39による逆起電圧がFET46にかかるものであり、その逆起電圧による発熱によってFET46の温度が上昇し、前記逆起電圧は、通電停止時にコイル39を流れる電流の低下が急激になるほど大きくなる。そこで、コイル39への通電停止時にコイル39に流れる電流を緩やかに低下させるために、還流ダイオード46が、コイル39に並列に接続されているのである。しかるに還流ダイオード46の断線故障が生じると、還流ダイオード46の機能が無効となり、通電停止時にはコイル39に流れる電流が急激に低下して、逆起電圧による発熱が大きくなる。
【0041】
FET46の作動保証範囲は、図7で示すように、オン抵抗による制限ラインL1、電流制限(電流による発熱)に基づく制限ラインL2、熱破壊(電流×電圧)に基づく制限ラインL3、ならびに過電圧による制限ラインL4によって定まるものである。
【0042】
而して本発明に従えば、通電制御手段51は、常開型電磁弁5Aが非制御状態にあるときに実行される診断時、たとえばエンジン始動直後の初期診断時に、通常のデューテイ制御時よりも高い周波数でFET46のデューテイ制御を実行するものであり、たとえば通常のデューテイ制御時の周波数が数kHzであるのに対し、断線故障検知時に通電制御手段51は数十kHzの周波数でFET46のデューテイ制御を実行する。
【0043】
他の常開型電磁弁5B,5C,5Dについても、上記常開型電磁弁5Aと同様に構成される。
【0044】
次にこの実施例の作用について説明すると、常開型電磁弁5A〜5Dのコイル39に直列に接続されるFET46の断線故障は断線故障検知手段52で検知されるのであるが、診断時に通電制御手段51は通常のデューテイ制御時よりも高い周波数でFET46のデューテイ制御を実行する。而して通常のデューテイ制御時よりも高い周波数でのFET46のデューティ制御を行うと、還流ダイオード47が正常の状態ではFET46の熱負荷の増大は抑えられるが、還流ダイオード47が断線故障した状態ではFET46の熱負荷が増大して熱破壊することになる。
【0045】
これは、断線故障検知手段52にとってはFET46の断線故障と同一の事象であるので、還流ダイオード47の断線故障に基づくFET46の熱破壊を断線故障検知手段52が検知することができる。したがって還流ダイオード47専用の断線故障検知手段を設けることを不要とし、コスト低減を可能としつつ還流ダイオード47の断線故障を検知することが可能となる。
【0046】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】乗用車両のブレーキ装置のブレーキ液圧回路図である。
【図2】常開型電磁弁の縦断面図である。
【図3】弁軸のストローク変化に対する吸引力変化を示す図である。
【図4】常開型電磁弁の駆動装置の構成を示す図である。
【図5】常開型電磁弁への指令信号の一例を示す図である。
【図6】電界効果トランジスタの駆動信号、電圧、作動電流および温度の時間経過の一例を示す図である。
【図7】電界効果トランジスタの作動保証範囲を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
5A〜5D・・・電磁弁
39・・・コイル
46・・・電界効果トランジスタ
47・・・還流ダイオード
51・・・通電制御手段
52・・・断線故障検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オン・オフを切換可能であるとともにオン・オフ間の中間値の電流での半開制御をも可能とした電磁弁(5A〜5D)のコイル(39)に直列に接続される電界効果トランジスタ(46)と、前記コイル(39)に並列に接続される還流ダイオード(47)と、前記半開制御時には前記電界効果トランジスタ(46)の通電・遮断状態をデューテイ制御するようにして該電界効果トランジスタ(46)の通電状態を制御する通電制御手段(51)とを備える電磁弁の駆動装置において、前記電界効果トランジスタ(46)の断線故障を検知する断線故障検知手段(52)を含み、前記電磁弁(5A〜5D)が非制御状態にあるときに実行される診断時に前記通電制御手段(51)は通常のデューテイ制御時よりも高い周波数で前記電界効果トランジスタ(46)のデューテイ制御を実行することを特徴とする電磁弁の駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−77832(P2006−77832A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260597(P2004−260597)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】