説明

露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法

【課題】ステージを正確に2次元駆動する。
【解決手段】 XエンコーダとYエンコーダとを少なくとも各1つ含む3つのエンコーダを用いて、ステージWSTの移動面内の位置情報を計測する。ステージWSTの位置計測値に基づいて、位置計測に用いるエンコーダを、エンコーダEnc1,Enc2及びEnc3から、エンコーダEnc4,Enc2及びEnc3に切り換える。切り換えの際、座標つなぎ法又は位相つなぎ法を適宜切り換えて適用して、新たに使用するエンコーダEnc4の初期値を設定する。それにより、ステージWSTの位置計測に用いるエンコーダが逐次切り換えられるにもかかわらず、切り換えの前後でステージの位置計測値が保存され、ステージを正確に2次元駆動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法に係り、さらに詳しくは、投影光学系を介して基板を露光する露光装置及び露光方法、並びに露光装置及び露光方法を利用したデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子、液晶表示素子等のマイクロデバイス(電子デバイスなど)の製造におけるリソグラフィ工程では、ステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置(いわゆるステッパ)、ステップ・アンド・スキャン方式の走査型投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが比較的多く用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、ウエハ又はガラスプレートなどの基板(以下、ウエハと総称する)上の複数のショット領域にレチクル(又はマスク)のパターンを転写するために、ウエハを保持するウエハステージは2次元方向に例えばリニアモータ等により駆動される。ウエハステージ等の位置計測は、長期に渡って計測値の安定性が良好で、高分解能なレーザ干渉計を用いて行われるのが、一般的であった。
【0004】
しかるに、半導体素子の高集積化に伴う、パターンの微細化により、より高精度なステージの位置制御性能が要求されるようになり、今や、レーザ干渉計のビーム路上の雰囲気の温度変化や温度勾配の影響で発生する空気揺らぎに起因する計測値の短期的な変動がオーバレイバジェット中の大きなウエイトを占めるようになっている。
【0005】
一方、ステージの位置計測に使用されるレーザ干渉計以外の計測装置として、エンコーダがあるが、エンコーダは、スケールを使用するため、そのスケールの機械的な長期安定性(格子ピッチのドリフト、固定位置ドリフト、熱膨張等)に欠け、このためレーザ干渉計に比べて、計測値のリニアリティに欠け、長期安定性に劣るという欠点を有している。
【0006】
上述のレーザ干渉計とエンコーダとの欠点に鑑みて、レーザ干渉計とエンコーダ(回折格子を用いる位置検出センサ)とを併用して、ステージの位置を計測する装置が、種々提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
また、従来のエンコーダの計測分解能は、干渉計に比べて劣っていたが、最近では、計測分解能が、レーザ干渉計と同程度以上のエンコーダが出現しており(例えば、特許文献2参照)、上述のレーザ干渉計とエンコーダとを組み合わせる技術が、注目されるようになってきた。
【0008】
例えば露光装置で、エンコーダを用いてスケール(グレーティング)が設けられたウエハステージの移動面内の位置計測を行う場合には、広範囲なウエハステージの移動範囲をカバーするため、複数のヘッドを所定間隔で2次元面内に配置することが考えられる。しかるに、このような配置の複数ヘッドを用いる場合、制御に用いるヘッドの切り換えを、ウエハステージの円滑な動作を妨げることなく、行うことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−151405号公報
【特許文献2】特開2005−308592号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の観点からすると、投影光学系を介して基板を露光する露光装置であって、前記基板を保持する基板ステージと、前記基板ステージを駆動する駆動システムと、前記投影光学系の光軸と直交する所定面と実質的に平行に配置される格子部に対して、それぞれ前記所定面と交差する方向から計測ビームを照射する複数のヘッドを有し、前記所定面内で互いに直交する第1、第2方向に関する前記基板ステージの位置情報を計測する計測システムと、前記計測システムで計測される位置情報に基づいて前記駆動システムによる前記基板ステージの駆動を制御するとともに、前記複数のヘッドのうち前記格子部と対向する3つのヘッドを用いる前記基板ステージの駆動制御を、前記3つのヘッドの1つの代わりに、前記3つのヘッドと異なる別のヘッドを含む3つのヘッドを用いる前記基板ステージの駆動制御に切り換えるために、その切換前に用いられる前記3つのヘッドによって計測される位置情報に基づいて、前記別のヘッドによって計測される位置情報を決定する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記駆動制御の切換のための前記位置情報の決定を、前記別のヘッドにおける計数値と位相オフセットのうち、前記計数値を再設定する第1決定法と、前記位相オフセットを再設定する第2決定法とを切り替えて実行可能である露光装置である。
【0011】
これによれば、第1決定法と第2決定法とを適宜切り替えて実行することで、複数のヘッドのうちの格子部と対向する3つのヘッドを用いる基板ステージの駆動制御を逐次切り換えても、基板ステージを正確に2次元駆動することが可能となる。
【0012】
本発明は、第2の観点からすると、投影光学系を介して基板を露光する露光方法であって、前記投影光学系の光軸と直交する所定面と実質的に平行に配置される格子部に対して、それぞれ前記所定面と交差する方向から計測ビームを照射する複数のヘッドを有する計測システムによって、前記所定面内で互いに直交する第1、第2方向に関する位置情報が計測される基板ステージで前記基板を保持することと、前記基板ステージで保持される前記基板を移動するために、前記計測システムで計測される位置情報に基づいて前記基板ステージの駆動を制御することと、前記複数のヘッドのうち前記格子部と対向する3つのヘッドを用いる前記基板ステージの駆動制御を、前記3つのヘッドの1つの代わりに、前記3つのヘッドと異なる別のヘッドを含む3つのヘッドを用いる前記基板ステージの駆動制御に切り換えるために、その切換前に用いられる前記3つのヘッドによって計測される位置情報に基づいて、前記別のヘッドによって計測される位置情報を決定することと、を含み、前記駆動制御の切換のための前記位置情報の決定では、前記別のヘッドにおける計数値と位相オフセットのうち、前記計数値を再設定する第1決定法と、前記位相オフセットを再設定する第2決定法とが切り替えられて用いられる露光方法である。
【0013】
これによれば、第1決定法と第2決定法とを適宜切り替えて実行することで、複数のヘッドのうちの格子部と対向する3つのヘッドを用いる基板ステージの駆動制御を逐次切り換えても、基板ステージを正確に2次元駆動することが可能となる。
【0014】
本発明は、第3の観点からすると、本発明の露光装置を用いて基板を露光することと、前記露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法である。
【0015】
本発明は、第4の観点からすると、本発明の露光方法を用いて基板を露光することと、前記露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1のステージ装置を示す平面図である。
【図3】図1の露光装置が備える各種計測装置(エンコーダ、アライメント系、多点AF系、Zヘッドなど)の配置を示す平面図である。
【図4】図4(A)はウエハステージを示す平面図、図4(B)はウエハステージWSTを示す一部断面した概略側面図である。
【図5】図5(A)は計測ステージを示す平面図、図5(B)は計測ステージを示す一部断面した概略側面図である。
【図6】一実施形態に係る露光装置の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。
【図7】図7(A)は、エンコーダの構成の一例を示す図、図7(B)は、検出光として回折格子RGの周期方向に長く延びる断面形状のレーザビームLBが用いられた場合を示す図である。
【図8】ウエハに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われているときのウエハステージ及び計測ステージの状態を示す図である。
【図9】ウエハのアンローディング時におけるウエハステージ及び計測ステージの状態を示す図である。
【図10】ウエハのローディング時におけるウエハステージ及び計測ステージの状態を示す図である。
【図11】干渉計によるステージサーボ制御からエンコーダによるステージサーボ制御への切り換え時における、ウエハステージ及び計測ステージの状態、並びにエンコーダヘッドの配置を示す図である。
【図12】ウエハアライメント時におけるウエハステージ及び計測ステージの状態を説明するための図である。
【図13】図13(A)は、移動面によって散乱される光が受けるドップラー効果を示す図、図13(B)は、エンコーダヘッド部分の構成を示す図である。
【図14】図14(A)は、エンコーダのヘッドとスケールとの間に非計測方向の相対運動が生じた場合であっても計測値が変化しないケースを示す図、図14(B)は、エンコーダのヘッドとスケールとの間に非計測方向の相対運動が生じた場合に計測値が変化するケースの一例を示す図である。
【図15】図15(A)〜図15(D)は、ヘッドとスケールとの間に非計測方向の相対運動が生じた場合において、エンコーダの計測値が変化する場合と計測値が変化しない場合とを説明するための図である。
【図16】図16(A)及び図16(B)は、エンコーダの計測値をウエハステージWSTの位置に変換する具体的方法を説明するための図である。
【図17】図17(A)及び図17(B)は、アレイ状に配置された複数のヘッドから構成されるエンコーダによる、ウエハテーブルのXY平面内の位置計測及びヘッド間の切り換えを説明するための図である。
【図18】図18(A)〜図18(E)は、エンコーダ切り換えの手順を説明するための図である。
【図19】ウエハステージのXY平面内の位置制御に用いられるエンコーダの切り換え処理を説明するための図である。
【図20】ウエハステージの位置制御、エンコーダの計測値の取り込み、及びエンコーダ切り換えのタイミングを概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図20に基づいて説明する。
【0018】
図1には、一実施形態の露光装置100の構成が概略的に示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、すなわちいわゆるスキャナである。後述するように本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0019】
露光装置100は、照明系10、該照明系10からの露光用照明光(以下、照明光、又は露光光と呼ぶ)ILにより照明されるレチクルRを保持するレチクルステージRST、レチクルRから射出された照明光ILをウエハW上に投射する投影光学系PLを含む投影ユニットPU、ウエハステージWST及び計測ステージMSTを有するステージ装置50、及びこれらの制御系等を備えている。ウエハステージWST上には、ウエハWが載置されている。
【0020】
照明系10は、例えば特開2001−313250号公報(対応する米国特許出願公開第2003/0025890号明細書)などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。この照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステム)で規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。また、オプティカルインテグレータとしては、例えばフライアイレンズ、ロッドインテグレータ(内面反射型インテグレータ)あるいは回折光学素子などを用いることができる。
【0021】
レチクルステージRST上には、回路パターンなどがそのパターン面(図1における下面)に形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図6参照)によって、XY平面内で微少駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
【0022】
レチクルステージRSTのXY平面(移動面)内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)116によって、移動鏡15(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(あるいは、レトロリフレクタ)とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計116の計測値は、主制御装置20(図1では不図示、図6参照)に送られる。主制御装置20は、レチクル干渉計116の計測値に基づいてレチクルステージRSTのX軸方向、Y軸方向及びθz方向の位置を算出するとともに、この算出結果に基づいてレチクルステージ駆動系11を制御することで、レチクルステージRSTの位置(及び速度)を制御する。なお、移動鏡15に代えて、レチクルステージRSTの端面を鏡面加工して反射面(移動鏡15の反射面に相当)を形成することとしても良い。また、レチクル干渉計116はZ軸、θx及びθy方向の少なくとも1つに関するレチクルステージRSTの位置情報も計測可能としても良い。
【0023】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に所定の位置関係で保持された複数の光学素子を有する投影光学系PLとを含む。投影光学系PLとしては、例えばZ軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数のレンズ(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10からの照明光ILによって照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、その第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、レチクルR及び投影光学系PLによってウエハW上にパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0024】
なお、不図示ではあるが、投影ユニットPUは、防振機構を介して3本の支柱で支持される鏡筒定盤に搭載されている。ただし、これに限らず、例えば国際公開第2006/038952号に開示されているように、投影ユニットPUの上方に配置される不図示のメインフレーム部材、あるいはレチクルステージRSTが配置されるベース部材などに対して投影ユニットPUを吊り下げ支持しても良い。
【0025】
なお、本実施形態の露光装置100では、液浸法を適用した露光が行われるため、投影光学系PLの開口数NAが実質的に増大することに伴いレチクル側の開口が大きくなる。そこで、ペッツヴァルの条件を満足させ、かつ投影光学系の大型化を避けるために、ミラーとレンズとを含んで構成される反射屈折系(カタディ・オプトリック系)を投影光学系として採用しても良い。また、ウエハWには感応層だけでなく、例えばウエハ又は感応層を保護する保護膜(トップコート膜)などを形成しても良い。
【0026】
また、本実施形態の露光装置100では、液浸法を適用した露光を行うため、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子、ここではレンズ(以下、「先端レンズ」ともいう)191を保持する鏡筒40の下端部周囲を取り囲むように、局所液浸装置8の一部を構成するノズルユニット32が設けられている。本実施形態では、ノズルユニット32は、図1に示されるように、その下端面が先端レンズ191の下端面とほぼ同一面に設定されている。また、ノズルユニット32は、液体Lqの供給口及び回収口と、ウエハWが対向して配置され、かつ回収口が設けられる下面と、液体供給管31A及び液体回収管31Bとそれぞれ接続される供給流路及び回収流路とを備えている。液体供給管31Aと液体回収管31Bとは、図3に示されるように、平面視(上方から見て)でX軸方向及びY軸方向に対してほぼ45°傾斜し、投影ユニットPUの中心(投影光学系PLの光軸AX、本実施形態では前述の露光領域IAの中心とも一致)を通りかつY軸と平行な直線(基準軸)LVに関して対称な配置となっている。
【0027】
液体供給管31Aには、その一端が液体供給装置5(図1では不図示、図6参照)に接続された不図示の供給管の他端が接続されており、液体回収管31Bには、その一端が液体回収装置6(図1では不図示、図6参照)に接続された不図示の回収管の他端が接続されている。
【0028】
液体供給装置5は、液体を供給するためのタンク、加圧ポンプ、温度制御装置、並びに液体供給管31Aに対する液体の供給・停止を制御するためのバルブ等を含んでいる。バルブとしては、例えば液体の供給・停止のみならず、流量の調整も可能となるように、流量制御弁を用いることが望ましい。前記温度制御装置は、タンク内の液体の温度を、例えば露光装置が収納されているチャンバ(不図示)内の温度と同程度の温度に調整する。なお、タンク、加圧ポンプ、温度制御装置、バルブなどは、そのすべてを露光装置100で備えている必要はなく、少なくとも一部を露光装置100が設置される工場などの設備で代替することもできる。
【0029】
液体回収装置6は、液体を回収するためのタンク及び吸引ポンプ、並びに液体回収管31Bを介した液体の回収・停止を制御するためのバルブ等を含んでいる。バルブとしては、液体供給装置5のバルブと同様に流量制御弁を用いることが望ましい。なお、タンク、吸引ポンプ、バルブなどは、そのすべてを露光装置100で備えている必要はなく、少なくとも一部を露光装置100が設置される工場などの設備で代替することもできる。
【0030】
本実施形態では、上記の液体として、ArFエキシマレーザ光(波長193nmの光)が透過する純水(以下、特に必要な場合を除いて、単に「水」と記述する)を用いるものとする。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できると共に、ウエハ上のフォトレジスト及び光学レンズ等に対する悪影響がないという利点がある。
【0031】
ArFエキシマレーザ光に対する水の屈折率nは、ほぼ1.44である。この水の中では、照明光ILの波長は、193nm×1/n=約134nmに短波長化される。
【0032】
液体供給装置5及び液体回収装置6は、それぞれコントローラを具備しており、それぞれのコントローラは、主制御装置20によって制御される(図6参照)。液体供給装置5のコントローラは、主制御装置20からの指示に応じ、液体供給管31Aに接続されたバルブを所定開度で開き、液体供給管31A、供給流路、及び供給口を介して先端レンズ191とウエハWとの間に液体(水)を供給する。また、このとき、液体回収装置6のコントローラは、主制御装置20からの指示に応じ、液体回収管31Bに接続されたバルブを所定開度で開き、回収口、回収流路、及び液体回収管31Bを介して、先端レンズ191とウエハWとの間から液体回収装置6(液体のタンク)の内部に液体(水)を回収する。このとき、主制御装置20は、先端レンズ191とウエハWとの間に供給される水の量と、回収される水の量とが常に等しくなるように、液体供給装置5のコントローラ、液体回収装置6のコントローラに対して指令を与える。従って、先端レンズ191とウエハWとの間に、一定量の液体(水)Lq(図1参照)が保持される。この場合、先端レンズ191とウエハWとの間に保持された液体(水)Lqは、常に入れ替わっている。
【0033】
上記の説明から明らかなように、本実施形態では、ノズルユニット32、液体供給装置5、液体回収装置6、液体供給管31A及び液体回収管31B等を含み、局所液浸装置8が構成されている。なお、局所液浸装置8の一部、例えば少なくともノズルユニット32は、投影ユニットPUを保持するメインフレーム(前述の鏡筒定盤を含む)に吊り下げ支持されても良いし、メインフレームとは別のフレーム部材に設けても良い。あるいは、前述の如く投影ユニットPUが吊り下げ支持される場合は、投影ユニットPUと一体にノズルユニット32を吊り下げ支持しても良いが、本実施形態では投影ユニットPUとは独立に吊り下げ支持される計測フレームにノズルユニット32を設けている。この場合、投影ユニットPUを吊り下げ支持していなくても良い。
【0034】
なお、投影ユニットPU下方に計測ステージMSTが位置する場合にも、上記と同様に後述する計測テーブルと先端レンズ191との間に水を満たすことが可能である。
【0035】
なお、上記の説明では、一例として液体供給管(ノズル)と液体回収管(ノズル)とがそれぞれ1つずつ設けられているものとしたが、これに限らず、周囲の部材との関係を考慮しても配置が可能であれば、例えば、国際公開第99/49504号に開示されるように、ノズルを多数有する構成を採用することとしても良い。要は、投影光学系PLを構成する最下端の光学部材(先端レンズ)191とウエハWとの間に液体を供給することができるのであれば、その構成はいかなるものであっても良い。例えば、国際公開第2004/053955号に開示されている液浸機構、あるいは欧州特許出願公開第1420298号明細書に開示されている液浸機構なども本実施形態の露光装置に適用することができる。
【0036】
図1に戻り、ステージ装置50は、ベース盤12の上方に配置されたウエハステージWST及び計測ステージMST、これらのステージWST,MSTの位置情報を計測する計測システム200(図6参照)、及び両ステージWST,MSTを駆動するステージ駆動系124(図6参照)などを備えている。計測システム200は、図6に示されるように、干渉計システム118及びエンコーダシステム150などを含む。干渉計システム118は、図2に示されるように、ウエハステージWSTの位置計測用のY干渉計16、X干渉計126、127、128、及びZ干渉計43A,43B並びに計測ステージMSTの位置計測用のY干渉計18及びX干渉計130等を含む。なお、干渉計システムの構成等については、後に詳述する。
【0037】
図1に戻り、ウエハステージWST及び計測ステージMSTそれぞれの底面には、不図示の非接触軸受、例えば真空予圧型空気静圧軸受(以下、「エアパッド」と呼ぶ)が複数ヶ所に設けられており、これらのエアパッドからベース盤12の上面に向けて噴出された加圧空気の静圧により、ベース盤12の上方にウエハステージWST及び計測ステージMSTが数μm程度のクリアランスを介して非接触で支持されている。また、両ステージWST,MSTは、リニアモータ等を含むステージ駆動系124(図6参照)によって、Y軸方向(図1における紙面内左右方向)及びX軸方向(図1における紙面直交方向)に独立して駆動可能である。
【0038】
ウエハステージWSTは、ステージ本体91と、ステージ本体91上に搭載されたウエハテーブルWTBとを含む。ウエハテーブルWTB及びステージ本体91は、リニアモータ及びZ・レベリング機構(例えばボイスコイルモータなどを含む)を含む駆動系によって、ベース盤12に対し、6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)に駆動可能に構成されている。
【0039】
ウエハテーブルWTB上には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。ウエハホルダはウエハテーブルWTBと一体に形成しても良いが、本実施形態ではウエハホルダとウエハテーブルWTBとを別々に構成し、例えば真空吸着などによってウエハホルダをウエハテーブルWTBの凹部内に固定している。また、ウエハテーブルWTBの上面には、ウエハホルダ上に載置されるウエハWの表面とほぼ同一面となる、液体Lqに対して撥液化処理された表面(撥液面)を有し、かつ外形(輪郭)が矩形でその中央部にウエハホルダ(ウエハの載置領域)よりも一回り大きな円形の開口が形成されたプレート(撥液板)28が設けられている。プレート28は、低熱膨張率の材料、例えばガラス又はセラミックス(例えばショット社のゼロデュア(商品名)、AlあるいはTiCなど)から成り、その表面には、例えばフッ素樹脂材料、ポリ四フッ化エチレン(テフロン(登録商標))等のフッ素系樹脂材料、アクリル系樹脂材料あるいはシリコン系樹脂材料などにより撥液膜が形成される。さらにプレート28は、図4(A)のウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)の平面図に示されるように、円形の開口を囲む、外形(輪郭)が矩形の第1撥液領域28aと、第1撥液領域28aの周囲に配置される矩形枠状(環状)の第2撥液領域28bとを有する。第1撥液領域28aは、例えば露光動作時、ウエハの表面からはみ出す液浸領域14(図8参照)の少なくとも一部が形成され、第2撥液領域28bは、後述のエンコーダシステムのためのスケールが形成される。なお、プレート28はその表面の少なくとも一部がウエハの表面と同一面となっていなくても良い、すなわち異なる高さであっても良い。また、プレート28は単一のプレートでも良いが、本実施形態では複数のプレート、例えば第1及び第2撥液領域28a、28bにそれぞれ対応する第1及び第2撥液板を組み合わせて構成する。本実施形態では、前述の如く液体Lqとして水を用いるので、以下では第1及び第2撥液領域28a、28bをそれぞれ第1及び第2撥水板28a、28bとも呼ぶ。
【0040】
この場合、内側の第1撥水板28aには、露光光ILが照射されるのに対し、外側の第2撥水板28bには、露光光ILが殆ど照射されない。このことを考慮して、本実施形態では、第1撥水板28aの表面には、露光光IL(この場合、真空紫外域の光)に対する耐性が十分にある撥水コートが施された第1撥液領域が形成され、第2撥水板28bには、その表面に第1撥液領域に比べて露光光ILに対する耐性が劣る撥水コートが施された第2撥液領域が形成されている。一般にガラス板には、露光光IL(この場合、真空紫外域の光)に対する耐性が十分にある撥水コートを施し難いので、このように第1撥水板28aとその周囲の第2撥水板28bとの2部分に分離することは効果的である。なお、これに限らず、同一のプレートの上面に露光光ILに対する耐性が異なる2種類の撥水コートを施して、第1撥液領域、第2撥液領域を形成しても良い。また、第1及び第2撥液領域で撥水コートの種類が同一でも良い。例えば、同一のプレートに1つの撥液領域を形成するだけでも良い。
【0041】
また、図4(A)から明らかなように、第1撥水板28aの+Y側の端部には、そのX軸方向の中央部に長方形の切り欠きが形成され、この切り欠きと第2撥水板28bとで囲まれる長方形の空間の内部(切り欠きの内部)に計測プレート30が埋め込まれている。この計測プレート30の長手方向の中央(ウエハテーブルWTBのセンターラインLL上)には、基準マークFMが形成されるとともに、基準マークFMのX軸方向の一側と他側に、基準マークFMの中心に関して対称な配置で一対の空間像計測スリットパターン(スリット状の計測用パターン)SLが形成されている。各空間像計測スリットパターンSLとしては、一例として、Y軸方向とX軸方向とに沿った辺を有するL字状のスリットパターン、あるいはX軸及びY軸方向にそれぞれ延びる2つの直線状のスリットパターンなどを用いることができる。
【0042】
そして、上記各空間像計測スリットパターンSL下方のウエハステージWSTの内部には、図4(B)に示されるように、対物レンズ、ミラー、リレーレンズなどを含む光学系が収納されたL字状の筐体36が、ウエハテーブルWTBからステージ本体91の内部の一部を貫通する状態で、一部埋め込み状態で取り付けられている。筐体36は、図示は省略されているが、上記一対の空間像計測スリットパターンSLに対応して一対設けられている。
【0043】
上記筐体36内部の光学系は、空間像計測スリットパターンSLを透過した照明光ILを、L字状の経路に沿って導き、−Y方向に向けて射出する。なお、以下においては、便宜上、上記筐体36内部の光学系を筐体36と同一の符号を用いて送光系36と記述する。
【0044】
さらに、第2撥水板28bの上面には、その4辺のそれぞれに沿って所定ピッチで多数の格子線が直接形成されている。これをさらに詳述すると、第2撥水板28bのX軸方向一側と他側(図4(A)における左右両側)の領域には、Yスケール39Y1,39Y2がそれぞれ形成され、Yスケール39Y1,39Y2はそれぞれ、例えばX軸方向を長手方向とする格子線38が所定ピッチでY軸に平行な方向(Y軸方向)に沿って形成される、Y軸方向を周期方向とする反射型の格子(例えば回折格子)によって構成されている。
【0045】
同様に、第2撥水板28bのY軸方向一側と他側(図4(A)における上下両側)の領域には、Yスケール39Y1及び39Y2に挟まれた状態でXスケール39X1,39X2がそれぞれ形成され、Xスケール39X1,39X2はそれぞれ、例えばY軸方向を長手方向とする格子線37が所定ピッチでX軸に平行な方向(X軸方向)に沿って形成される、X軸方向を周期方向とする反射型の格子(例えば回折格子)によって構成されている。上記各スケールとしては、第2撥水板28bの表面に例えばホログラム等により反射型の回折格子RG(図7(A)参照)が作成されたものが用いられている。この場合、各スケールには狭いスリット又は溝等から成る格子が目盛りとして所定間隔(ピッチ)で刻まれている。各スケールに用いられる回折格子の種類は限定されるものではなく、機械的に溝等が形成されたもののみならず、例えば、感光性樹脂に干渉縞を焼き付けて作成したものであっても良い。但し、各スケールは、例えば薄板状のガラスに上記回折格子の目盛りを、例えば138nm〜4μmの間のピッチ、例えば1μmピッチで刻んで作成されている。これらスケールは前述の撥液膜(撥水膜)で覆われている。なお、図4(A)では、図示の便宜上から、格子のピッチは、実際のピッチに比べて格段に広く図示されている。その他の図においても同様である。
【0046】
このように、本実施形態では、第2撥水板28bそのものがスケールを構成するので、第2撥水板28bとして低熱膨張率のガラス板を用いることとしたものである。しかし、これに限らず、格子が形成された低熱膨張率のガラス板などから成るスケール部材を、局所的な伸縮が生じないように、例えば板ばね(又は真空吸着)等によりウエハテーブルWTBの上面に固定しても良く、この場合には、全面に同一の撥水コートが施された撥水板をプレート28に代えて用いても良い。あるいは、ウエハテーブルWTBを低熱膨張率の材料で形成することも可能であり、かかる場合には、一対のYスケールと一対のXスケールとは、そのウエハテーブルWTBの上面に直接形成しても良い。
【0047】
なお、回折格子を保護するために、撥水性(撥液性)を備えた低熱膨張率のガラス板でカバーすることも有効である。ここで、ガラス板としては、厚さがウエハと同程度、例えば厚さ1mmのもを用いることができ、そのガラス板の表面がウエハ面と同じ高さ(同一面)になるよう、ウエハテーブルWTB上面に設置される。
【0048】
なお、各スケールの端付近には、後述するエンコーダヘッドとスケール間の相対位置を決めるための、位置出しパターンがそれぞれ設けられている。この位置出しパターンは例えば反射率の異なる格子線から構成され、この位置出しパターン上をエンコーダヘッドが走査すると、エンコーダの出力信号の強度が変化する。そこで、予め閾値を定めておき、出力信号の強度がその閾値を超える位置を検出する。この検出された位置を基準に、エンコーダヘッドとスケール間の相対位置を設定する。
【0049】
計測ステージMSTは、ステージ本体92と、ステージ本体92上に搭載された計測テーブルMTBとを含んでいる。計測ステージMSTもウエハステージWSTと同様に、不図示の駆動系によりベース盤12に対し、6自由度方向(X,Y,Z,θx,θy,θz)に駆動可能に構成されている。しかしながら、これに限らず、例えば、計測テーブルMTBを、ステージ本体92に対してX軸方向、Y軸方向及びθz方向に微動可能に構成したいわゆる粗微動構造の計測ステージMSTを採用しても良いし、あるいは、計測テーブルMTBをステージ本体92上でZ,θx,θyの3自由度方向に駆動可能な構成にしても良い。
【0050】
なお、図6では、ウエハステージWSTの駆動系と計測ステージMSTの駆動系とを含んで、ステージ駆動系124として示されている。
【0051】
計測テーブルMTB(及びステージ本体92)には、各種計測用部材が設けられている。この計測用部材としては、例えば、図2及び図5(A)に示されるように、投影光学系PLの像面上で照明光ILを受光するピンホール状の受光部を有する照度むらセンサ94、投影光学系PLにより投影されるパターンの空間像(投影像)を計測する空間像計測器96、及び例えば国際公開第03/065428号などに開示されているシャック−ハルトマン(Shack-Hartman)方式の波面収差計測器98などが採用されている。波面収差計測器98としては、例えば国際公開第99/60361号(対応欧州特許第1079223号明細書)に開示されるものも用いることができる。
【0052】
照度むらセンサ94としては、例えば特開昭57−117238号公報(対応する米国特許第4,465,368号明細書)などに開示されるものと同様の構成のものを用いることができる。また、空間像計測器96としては、例えば特開2002−014005号公報(対応する米国特許出願公開第2002/0041377号明細書)などに開示されるものと同様の構成のものを用いることができる。なお、本実施形態では3つの計測用部材(94、96、98)を計測ステージMSTに設けるものとしたが、計測用部材の種類、及び/又は数などはこれに限られない。計測用部材として、例えば投影光学系PLの透過率を計測する透過率計測器、及び/又は、前述の局所液浸装置8、例えばノズルユニット32(あるいは先端レンズ191)などを観察する計測器などを用いても良い。さらに、計測用部材と異なる部材、例えばノズルユニット32、先端レンズ191などを清掃する清掃部材などを計測ステージMSTに搭載しても良い。
【0053】
本実施形態では、図5(A)からもわかるように、使用頻度の高いセンサ類、照度むらセンサ94及び空間像計測器96などは、計測ステージMSTのセンターラインCL(中心を通るY軸)上に配置されている。このため、本実施形態では、これらのセンサ類を用いた計測を、計測ステージMSTをX軸方向に移動させることなく、Y軸方向にのみ移動させて行うことができる。
【0054】
上記各センサに加え、例えば特開平11−016816号公報(対応する米国特許出願公開第2002/0061469号明細書)などに開示される、投影光学系PLの像面上で照明光ILを受光する所定面積の受光部を有する照度モニタを採用しても良く、この照度モニタもセンターライン上に配置することが望ましい。
【0055】
なお、本実施形態では、投影光学系PLと液体(水)Lqとを介して露光光(照明光)ILによりウエハWを露光する液浸露光が行われるのに対応して、照明光ILを用いる計測に使用される上記の照度むらセンサ94(及び照度モニタ)、空間像計測器96、並びに波面収差計測器98では、投影光学系PL及び水を介して照明光ILを受光することとなる。また、各センサは、例えば光学系などの一部だけが計測テーブルMTB(及びステージ本体92)に搭載されていても良いし、センサ全体を計測テーブルMTB(及びステージ本体92)に配置するようにしても良い。
【0056】
計測ステージMSTのステージ本体92には、図5(B)に示されるように、その−Y側の端面に、枠状の取付部材42が固定されている。また、ステージ本体92の−Y側の端面には、取付部材42の開口内部のX軸方向の中心位置近傍に、前述した一対の送光系36に対向し得る配置で、一対の受光系44が固定されている。各受光系44は、リレーレンズなどの光学系と、受光素子、例えばフォトマルチプライヤチューブなどと、これらを収納する筐体とによって構成されている。図4(B)及び図5(B)、並びにこれまでの説明からわかるように、本実施形態では、ウエハステージWSTと計測ステージMSTとが、Y軸方向に関して所定距離以内に近接した状態(接触状態を含む)では、計測プレート30の各空間像計測スリットパターンSLを透過した照明光ILが前述の各送光系36で案内され、各受光系44の受光素子で受光される。すなわち、計測プレート30、送光系36及び受光系44によって、前述した特開2002−014005号公報(対応する米国特許出願公開第2002/0041377号明細書)などに開示されるものと同様の、空間像計測装置45(図6参照)が構成される。
【0057】
取付部材42の上には、断面矩形の棒状部材から成るフィデューシャルバー(以下、「FDバー」と略述する)46がX軸方向に延設されている。このFDバー46は、フルキネマティックマウント構造によって、計測ステージMST上にキネマティックに支持されている。
【0058】
FDバー46は、原器(計測基準)となるため、低熱膨張率の光学ガラスセラミックス、例えば、ショット社のゼロデュア(商品名)などがその素材として採用されている。FDバー46の上面(表面)は、いわゆる基準平面板と同程度にその平坦度が高く設定されている。また、FDバー46の長手方向の一側と他側の端部近傍には、図5(A)に示されるように、Y軸方向を周期方向とする基準格子(例えば回折格子)52がそれぞれ形成されている。この一対の基準格子52は、所定距離Lを隔ててFDバー46のX軸方向の中心、すなわち前述のセンターラインCLに関して対称な配置で形成されている。
【0059】
また、FDバー46の上面には、図5(A)に示されるような配置で複数の基準マークMが形成されている。この複数の基準マークMは、同一ピッチでY軸方向に関して3行の配列で形成され、各行の配列がX軸方向に関して互いに所定距離だけずれて形成されている。各基準マークMとしては、後述するプライマリアライメント系、セカンダリアライメント系によって検出可能な寸法の2次元マークが用いられている。基準マークMはその形状(構成)が前述の基準マークFMと異なっても良いが、本実施形態では基準マークMと基準マークFMとは同一の構成であり、かつウエハWのアライメントマークとも同一の構成となっている。なお、本実施形態ではFDバー46の表面、及び計測テーブルMTB(前述の計測用部材を含んでも良い)の表面もそれぞれ撥液膜(撥水膜)で覆われている。
【0060】
本実施形態の露光装置100では、図1では図面の錯綜を避ける観点から図示が省略されているが、実際には、図3に示されるように、前述の基準軸LV上で、投影光学系の光軸AXから−Y側に所定距離隔てた位置に検出中心を有するプライマリアライメント系AL1が配置されている。このプライマリアライメント系AL1は、支持部材54を介して不図示のメインフレームの下面に固定されている。プライマリアライメント系AL1を挟んで、X軸方向の一側と他側には、直線LVに関してほぼ対称に検出中心が配置されるセカンダリアライメント系AL21,AL22と、AL23,AL24とがそれぞれ設けられている。すなわち、5つのアライメント系AL1,AL21〜AL24はその検出中心がX軸方向に関して異なる位置に配置されている、すなわちX軸方向に沿って配置されている。
【0061】
各セカンダリアライメント系AL2n(n=1〜4)は、セカンダリアライメント系AL24について代表的に示されるように、回転中心Oを中心として図3における時計回り及び反時計回りに所定角度範囲で回動可能なアーム56n(n=1〜4)の先端(回動端)に固定されている。本実施形態では、各セカンダリアライメント系AL2nはその一部(例えば、アライメント光を検出領域に照射し、かつ検出領域内の対象マークから発生する光を受光素子に導く光学系を少なくとも含む)がアーム56nに固定され、残りの一部は投影ユニットPUを保持するメインフレームに設けられる。セカンダリアライメント系AL21〜AL24はそれぞれ、回転中心Oを中心として回動することで、X位置が調整される。すなわち、セカンダリアライメント系AL21〜AL24はその検出領域(又は検出中心)が独立にX軸方向に可動である。従って、プライマリアライメント系AL1及びセカンダリアライメント系AL21〜AL24はX軸方向に関してその検出領域の相対位置が調整可能となっている。なお、本実施形態では、アームの回動によりセカンダリアライメント系AL21〜AL24のX位置が調整されるものとしたが、これに限らず、セカンダリアライメント系AL21〜AL24をX軸方向に往復駆動する駆動機構を設けても良い。また、セカンダリアライメント系AL21〜AL24の少なくとも1つをX軸方向だけでなくY軸方向にも可動として良い。なお、各セカンダリアライメント系AL2nはその一部がアーム56nによって移動されるので、不図示のセンサ、例えば干渉計、あるいはエンコーダなどによって、アーム56nに固定されるその一部の位置情報が計測可能となっている。このセンサは、セカンダリアライメント系AL2nのX軸方向の位置情報を計測するだけでも良いが、他の方向、例えばY軸方向、及び/又は回転方向(θx及びθy方向の少なくとも一方を含む)の位置情報も計測可能として良い。
【0062】
各アーム56nの上面には、差動排気型のエアベアリングから成るバキュームパッド58n(n=1〜4、図3では不図示、図6参照)が設けられている。また、アーム56nは、例えばモータ等を含む回転駆動機構60n(n=1〜4、図3では不図示、図6参照)によって、主制御装置20の指示に応じて回動可能である。主制御装置20は、アーム56nの回転調整後に、各バキュームパッド58nを作動させて各アーム56nを不図示のメインフレームに吸着固定する。これにより、各アーム56nの回転角度調整後の状態、すなわち、プライマリアライメント系AL1及び4つのセカンダリアライメント系AL21〜AL24の所望の位置関係が維持される。
【0063】
なお、メインフレームのアーム56nに対向する部分が磁性体であるならば、バキュームパッド58に代えて電磁石を採用しても良い。
【0064】
本実施形態では、プライマリアライメント系AL1及び4つのセカンダリアライメント系AL21〜AL24のそれぞれとして、例えばウエハ上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標(各アライメント系内に設けられた指標板上の指標パターン)の像とを撮像素子(CCD等)を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。プライマリアライメント系AL1及び4つのセカンダリアライメント系AL21〜AL24のそれぞれからの撮像信号は、不図示のアライメント信号処理系を介して図6の主制御装置20に供給されるようになっている。
【0065】
なお、上記各アライメント系としては、FIA系に限らず、例えばコヒーレントな検出光を対象マークに照射し、その対象マークから発生する散乱光又は回折光を検出する、あるいはその対象マークから発生する2つの回折光(例えば同次数の回折光、あるいは同方向に回折する回折光)を干渉させて検出するアライメントセンサを単独であるいは適宜組み合わせて用いることは勿論可能である。また、本実施形態では、5つのアライメント系AL1、AL21〜AL24は、支持部材54又はアーム56nを介して投影ユニットPUを保持するメインフレームの下面に固定されるものとしたが、これに限らず、例えば前述した計測フレームに設けても良い。
【0066】
次に、ウエハステージWST及び計測ステージMSTの位置情報を計測する干渉計システム118の構成等について説明する。
【0067】
ウエハテーブルWTBの−Y端面,−X端面には、それぞれ鏡面加工が施され、図2に示される反射面17a,反射面17bが形成されている。干渉計システム118(図6参照)の一部を構成するY干渉計16及びX干渉計126、127、128(図1では、X干渉計126〜128は不図示、図2参照)は、これらの反射面17a,17bにそれぞれ測長ビームを投射して、それぞれの反射光を受光することにより、各反射面の基準位置(例えば投影ユニットPU側面に固定ミラーを配置し、そこを基準面とする)からの変位、すなわちウエハステージWSTのXY平面内の位置情報を計測し、この計測した位置情報を主制御装置20に供給する。本実施形態では、後述するように、上記各干渉計としては、一部を除いて、測長軸を複数有する多軸干渉計が用いられている。
【0068】
一方、ステージ本体91の−Y側の側面には、図4(A)及び図4(B)に示されるように、X軸方向を長手方向とする移動鏡41が、不図示のキネマティック支持機構を介して取り付けられている。移動鏡41は、直方体部材と、該直方体の一面(−Y側の面)に固着された一対の三角柱状部材とを一体化したような部材から成る。移動鏡41は、図2からわかるように、X軸方向の長さがウエハテーブルWTBの反射面17aよりも、少なくとも後述する2つのZ干渉計の間隔分、長く設計されている。
【0069】
移動鏡41の−Y側の面には鏡面加工が施され、図4(B)に示されるように、3つの反射面41b、41a、41cが形成されている。反射面41aは、移動鏡41の−Y側の端面の一部を構成し、XZ平面と平行に且つX軸方向に延びている。反射面41bは、反射面41aの+Z側に隣接する面を構成し、反射面41aに対して鈍角を成し、X軸方向に延びている。反射面41cは、反射面41aの−Z側に隣接する面を構成し、反射面41aを挟んで反射面41bと対称に設けられている。
【0070】
移動鏡41に対向して、該移動鏡41に測長ビームを照射する、干渉計システム118(図6参照)の一部を構成する一対のZ干渉計43A,43Bが設けられている(図1及び図2参照)。
【0071】
Z干渉計43A、43Bは、図1及び図2を総合するとわかるように、Y干渉計16のX軸方向の一側と他側にほぼ同一距離離れて、且つY干渉計16より幾分低い位置にそれぞれ配置されている。
【0072】
Z干渉計43A、43Bそれぞれから、図1に示されるように、Y軸方向に沿う測長ビームB1が反射面41bに向けて投射されるとともに、Y軸方向に沿う測長ビームB2が反射面41c(図4(B)参照)に向けて投射されるようになっている。本実施形態では、反射面41b及び反射面41cで順次反射された測長ビームB1と直交する反射面を有する固定鏡47B、及び反射面41c及び反射面41bで順次反射された測長ビームB2と直交する反射面を有する固定鏡47Aが、移動鏡41から−Y方向に所定距離離れた位置に測長ビームB1,B2に干渉しない状態で、それぞれX軸方向に延設されている。
【0073】
固定鏡47A、47Bは、例えば投影ユニットPUを支持するフレーム(不図示)に設けられた同一の支持体(不図示)に支持されている。
【0074】
Y干渉計16は、図8(及び図2)に示されるように、前述の基準軸LVから同一距離、−X側と+X側に離れたY軸方向の測長軸に沿って測長ビームB41,B42をウエハテーブルWTBの反射面17aに投射し、それぞれの反射光を受光することで、ウエハテーブルWTBの測長ビームB41,B42の照射点におけるY軸方向の位置(Y位置)を検出している。なお、図1では、測長ビームB41,B42が代表的に測長ビームB4として示されている。
【0075】
また、Y干渉計16は、測長ビームB41,B42との間にZ軸方向に所定間隔をあけてY軸方向の測長軸に沿って測長ビームB3を反射面41aに向けて投射し、反射面41aで反射した測長ビームB3を受光することにより、移動鏡41の反射面41a(すなわちウエハステージWST)のY位置を検出している。
【0076】
主制御装置20は、Y干渉計16の測長ビームB41,B42に対応する測長軸の計測値の平均値に基づいて反射面17a、すなわちウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)のY位置(より正しくは、Y軸方向の変位ΔY)を算出する。また、主制御装置20は、測長ビームB41,B42に対応する測長軸の計測値の差より、ウエハテーブルWTBのZ軸回りの回転方向(θz方向)の変位(ヨーイング量)Δθz(Y)を算出する。また、主制御装置20は、反射面17a及び反射面41aのY位置(Y軸方向の変位ΔY)に基づいて、ウエハステージWSTのθx方向の変位(ピッチング量)Δθxを算出する。
【0077】
また、X干渉計126は、図8及び図2に示されるように、投影光学系PLの光軸を通るX軸方向の直線(基準軸)LHに関して同一距離離れた2軸の測長軸に沿って測長ビームB51,B52をウエハテーブルWTBに投射する。主制御装置20は、測長ビームB51,B52に対応する測長軸の計測値に基づいて、ウエハテーブルWTBのX軸方向の位置(X位置、より正しくは、X軸方向の変位ΔX)を算出する。また、主制御装置20は、測長ビームB51,B52に対応する測長軸の計測値の差より、ウエハテーブルWTBのθz方向の変位(ヨーイング量)Δθz(X)を算出する。なお、X干渉計126から得られるΔθz(X)とY干渉計16から得られるΔθz(Y)は互いに等しく、ウエハテーブルWTBのθz方向への変位(ヨーイング量)Δθzを代表する。
【0078】
また、図9及び図10などに示されるように、X干渉計128から測長ビームB7が、ウエハテーブルWTB上のウエハのアンロードが行われるアンローディングポジションUPと、ウエハテーブルWTB上へのウエハのロードが行われるローディングポジションLPを結ぶX軸に平行な直線LULに沿って、ウエハテーブルWTBの反射面17bに投射される。また、図11及び図12などに示されるように、X干渉計127から測長ビームB6が、プライマリアライメント系AL1の検出中心を通るX軸に平行な直線(基準軸)LAに沿って、ウエハテーブルWTBの反射面17bに投射される。
【0079】
主制御装置20は、X干渉計127の計測値、及びX干渉計128の計測値からも、ウエハテーブルWTBのX軸方向の変位ΔXを求めることができる。ただし、3つのX干渉計126,127,128の配置がY軸方向に関して異なっており、X干渉計126は図8に示される露光時に、X干渉計127は図12に示されるウエハアライメント時に、X干渉計128は図9に示されるウエハのアンロード時及び図10に示されるウエハのロード時に使用される。
【0080】
前述のZ干渉計43A、43Bそれぞれからは、図1に示されるように、Y軸に沿う測長ビームB1、B2が、移動鏡41に向けて投射される。これらの測長ビームB1、B2は、移動鏡41の反射面41b,41cのそれぞれに所定の入射角(θ/2とする)で入射する。そして、測長ビームB1は、反射面41b,41cで順次反射されて固定鏡47Bの反射面に垂直に入射し、測長ビームB2は、反射面41c,41bで順次反射されて固定鏡47A反射面に垂直に入射する。そして、固定鏡47A,47Bの反射面で反射された測長ビームB2、B1は、再度反射面41b,41cで順次反射され、あるいは再度反射面41c,41bで順次反射されて(入射時の光路を逆向きに戻り)Z干渉計43A、43Bで受光される。
【0081】
ここで、移動鏡41(すなわちウエハステージWST)のZ軸方向への変位をΔZo、Y軸方向への変位をΔYoとすると、測長ビームB1,B2の光路長変化ΔL1,ΔL2は、それぞれ以下の式(1)、(2)で表される。
【0082】
ΔL1=ΔYo×(1+cosθ)+ΔZo×sinθ …(1)
ΔL2=ΔYo×(1+cosθ)−ΔZo×sinθ …(2)
従って、式(1)、(2)からΔZo及びΔYoは次式(3)、(4)で求められる。
【0083】
ΔZo=(ΔL1−ΔL2)/2sinθ …(3)
ΔYo=(ΔL1+ΔL2)/{2(1+cosθ)} …(4)
【0084】
上記の変位ΔZo、ΔYoは、Z干渉計43A、43Bのそれぞれで求められる。そこで、Z干渉計43Aで求められる変位をΔZoR、ΔYoRとし、Z干渉計43Bで求められる変位をΔZoL、ΔYoLとする。そして、Z干渉計43A、43Bそれぞれが投射する測長ビームB1、B2がX軸方向に離間する距離をDとする(図2参照)。かかる前提の下で、移動鏡41(すなわちウエハステージWST)のθz方向への変位(ヨーイング量)Δθz、θy方向への変位(ローリング量)Δθyは次式(5)、(6)で求められる。
【0085】
Δθz=tan−1{(ΔYoR−ΔYoL)/D} …(5)
Δθy=tan−1{(ΔZoL−ΔZoR)/D} …(6)
従って、主制御装置20は、上記式(3)〜式(6)を用いることで、Z干渉計43A、43Bの計測結果に基づいて、ウエハステージWSTの4自由度の変位ΔZo、ΔYo、Δθz、Δθyを算出することができる。
【0086】
このように、主制御装置20は、干渉計システム118の計測結果から、6自由度方向(Z、X、Y、θz、θx、θy方向)に関するウエハステージWSTの変位を求めることができる。
【0087】
なお、本実施形態では、ウエハステージWSTが、ステージ本体91と、該ステージ本体91上に搭載されたウエハテーブルWTBとを含む6自由度で移動可能な単一のステージにより構成される場合について説明したが、これに限らず、XY平面内で自在に移動可能なステージ本体と、該ステージ本体に対して少なくともZ軸方向、θx方向及びθy方向に相対的に微小駆動可能なウエハテーブルと含んで、ウエハステージWSTを構成しても良い。また、反射面17a,反射面17bの代わりに、ウエハテーブルWTBに平面ミラーから成る移動鏡を設けても良い。さらに、投影ユニットPUに設けられる固定ミラーの反射面を基準面としてウエハステージWSTの位置情報を計測するものとしたが、その基準面を配置する位置は投影ユニットPUに限られるものでないし、必ずしも固定ミラーを用いてウエハステージWSTの位置情報を計測しなくても良い。
【0088】
但し、本実施形態では、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、主として、後述するエンコーダシステムによって計測され、干渉計16,126,127の計測値は、そのエンコーダシステムの計測値の長期的変動(例えばスケールの経時的な変形などによる)を補正(較正)する場合などに補助的に用いられる。
【0089】
なお、干渉計システム118はその少なくとも一部(例えば、光学系など)が、投影ユニットPUを保持するメインフレームに設けられる、あるいは前述の如く吊り下げ支持される投影ユニットPUと一体に設けられても良いが、本実施形態では前述した計測フレームに設けられるものとする。
【0090】
また、本実施形態では、干渉計システム118によって計測されるウエハステージWSTの位置情報が、後述の露光動作やアライメント動作などでは用いられず、主としてエンコーダシステムのキャリブレーション動作(すなわち、計測値の較正)などに用いられるものとしたが、干渉計システム118の計測情報(すなわち、6自由度の方向の位置情報の少なくとも1つ)を、例えば露光動作及び/又はアライメント動作などで用いても良い。本実施形態では、エンコーダシステムはウエハステージWSTの3自由度の方向、すなわちX軸、Y軸及びθz方向の位置情報を計測する。そこで、露光動作などにおいて、干渉計システム118の計測情報のうち、エンコーダシステムによるウエハステージWSTの位置情報の計測方向(X軸、Y軸及びθz方向)と異なる方向、例えばZ軸方向、θx方向及びθy方向のうちの少なくとも1方向に関する位置情報のみを用いても良いし、その異なる方向の位置情報に加えて、エンコーダシステムの計測方向と同じ方向(すなわち、X軸、Y軸及びθz方向の少なくとも1つ)に関する位置情報を用いても良い。また、露光動作などにおいて干渉計システム118で計測されるウエハステージWSTのZ軸方向の位置情報を用いても良い。
【0091】
その他、干渉計システム118(図6参照)には、計測テーブルMTBの2次元位置座標を計測するためのY干渉計18、X干渉計130も含まれている。計測テーブルMTBの+Y端面、−X端面にも前述したウエハテーブルWTBと同様の反射面19a、19bが形成されている(図2及び図5(A)参照)。干渉計システム118のY干渉計18、X干渉計130(図1では、X干渉計130は不図示、図2参照)は、これらの反射面19a、19bに、図2に示されるように、測長ビームを投射して、それぞれの反射光を受光することにより、各反射面の基準位置からの変位を計測する。主制御装置20は、Y干渉計18、X干渉計130の計測値を受信し、計測ステージMSTの位置情報(例えば、少なくともX軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報とを含む)を算出する。
【0092】
なお、計測テーブルMTB用のY干渉計として、ウエハテーブルWTB用のY干渉計16と同様の多軸干渉計を用いることとしても良い。また、計測テーブルMTBのX干渉計として、ウエハテーブルWTB用のX干渉計126と同様の2軸干渉計を用いることとしても良い。また、計測ステージMSTのZ変位、Y変位、ヨーイング量、及びローリング量を計測するために、ウエハテーブルWTB用のZ干渉計43A,43Bと同様の干渉計を導入することも可能である。
【0093】
次に、ウエハテーブルWTBのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)を計測するエンコーダシステムの構成等について説明する。
【0094】
本実施形態の露光装置100では、図3に示されるように、前述したノズルユニット32の周囲を四方から囲む状態で、エンコーダシステムの4つのヘッドユニット62A〜62Dが配置されている。これらのヘッドユニット62A〜62Dは、図3等では図面の錯綜を避ける観点から図示が省略されているが、実際には、支持部材を介して、前述した投影ユニットPUを保持するメインフレームに吊り下げ状態で固定されている。
【0095】
ヘッドユニット62A及び62Cは、図3に示されるように、投影ユニットPUの+X側、−X側に、X軸方向を長手方向として、配置されている。ヘッドユニット62A、62Cは、X軸方向に関しての間隔WDで配置された複数(ここでは5つ)のYヘッド651〜655、641〜645をそれぞれ備えている。より詳細には、ヘッドユニット62A及び62Cは、それぞれ、投影ユニットPUの周辺を除いて、投影光学系PLの光軸AXを通りかつX軸と平行な直線(基準軸)LH上に間隔WDで配置された複数(ここでは4つ)のYヘッド(641〜644又は652〜655)と、投影ユニットPUの周辺において、基準軸LHから−Y方向に所定距離離れた位置、すなわちノズルユニット32の−Y側の位置に配置された1つのYヘッド(645又は651)とを備えている。ヘッドユニット62A、62Cは、後述する3つのZヘッドもそれぞれ備えている。以下では、必要に応じて、Yヘッド651〜655、641〜645をそれぞれ、Yヘッド65、64とも記述する。
【0096】
ヘッドユニット62Aは、前述のYスケール39Y1を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のY軸方向の位置(Y位置)を計測する多眼(ここでは、5眼)のYリニアエンコーダ(以下、適宜「Yエンコーダ」又は「エンコーダ」と略述する)70A(図6参照)を構成する。同様に、ヘッドユニット62Cは、前述のYスケール39Y2を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のY位置を計測する多眼(ここでは、5眼)のYエンコーダ70C(図6参照)を構成する。ここで、ヘッドユニット62A及び62Cがそれぞれ備える5つのYヘッド(64又は65)(すなわち、計測ビーム)のX軸方向の間隔WDは、Yスケール39Y1,39Y2のX軸方向の幅(より正確には、格子線38の長さ)より僅かに狭く設定されている。
【0097】
ヘッドユニット62Bは、図3に示されるように、ノズルユニット32(投影ユニットPU)の+Y側に配置され、上記基準軸LV上にY軸方向に沿って間隔WDで配置された複数、ここでは4個のXヘッド665〜668を備えている。また、ヘッドユニット62Dは、ノズルユニット32(投影ユニットPU)を介してヘッドユニット62Bとは反対側のプライマリアライメント系AL1の−Y側に配置され、上記基準軸LV上に間隔WDで配置された複数、ここでは4個のXヘッド661〜664を備えている。以下では、必要に応じて、Xヘッド661〜668を、Xヘッド66とも記述する。
【0098】
ヘッドユニット62Bは、前述のXスケール39X1を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のX軸方向の位置(X位置)を計測する、多眼(ここでは、4眼)のXリニアエンコーダ(以下、適宜「Xエンコーダ」又は「エンコーダ」と略述する)70B(図6参照)を構成する。また、ヘッドユニット62Dは、前述のXスケール39X2を用いて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のX位置を計測する多眼(ここでは、4眼)のXリニアエンコーダ70D(図6参照)を構成する。
【0099】
ここでヘッドユニット62B,62Dがそれぞれ備える隣接するXヘッド66(計測ビーム)の間隔は、前述のXスケール39X1,39X2のY軸方向の幅(より正確には、格子線37の長さ)よりも狭く設定されている。またヘッドユニット62Bの最も−Y側のXヘッド665とヘッドユニット62Dの最も+Y側のXヘッド664との間隔は、ウエハステージWSTのY軸方向の移動により、その2つのXヘッド間で切り換え(後述するつなぎ)が可能となるように、ウエハテーブルWTBのY軸方向の幅よりも僅かに狭く設定されている。
【0100】
本実施形態では、さらに、ヘッドユニット62A、62Cの−Y側に所定距離隔てて、ヘッドユニット62F、62Eが、それぞれ設けられている。ヘッドユニット62E及び62Fは、図3等では図面の錯綜を避ける観点から図示が省略されているが、実際には、支持部材を介して、前述した投影ユニットPUを保持するメインフレームに吊り下げ状態で固定されている。なお、ヘッドユニット62E、62F及び前述のヘッドユニット62A〜62Dは、例えば投影ユニットPUが吊り下げ支持される場合は投影ユニットPUと一体に吊り下げ支持しても良いし、あるいは前述した計測フレームに設けても良い。
【0101】
ヘッドユニット62Eは、X軸方向の位置が異なる4つのYヘッド671〜674を備えている。より詳細には、ヘッドユニット62Eは、セカンダリアライメント系AL21の−X側に前述の基準軸LA上に前述の間隔WDとほぼ同一間隔で配置された3つのYヘッド671〜673と、最も内側(+X側)のYヘッド673から+X側に所定距離(WDより幾分短い距離)離れ、かつ基準軸LAから+Y側に所定距離離れたセカンダリアライメント系AL21の+Y側の位置に配置された1つのYヘッド674とを備えている。
【0102】
ヘッドユニット62Fは、基準軸LVに関して、ヘッドユニット62Eと対称であり、上記4つのYヘッド674〜671と基準軸LVに関して対称に配置された4つのYヘッド681〜684を備えている。以下では、必要に応じて、Yヘッド671〜674、681〜684をそれぞれ、Yヘッド67、68とも記述する。後述するアライメント動作の際などには、Yスケール39Y2,39Y1にYヘッド67,68が少なくとも各1つそれぞれ対向し、このYヘッド67,68(すなわち、これらYヘッド67,68によって構成されるYエンコーダ70E、70F)によってウエハステージWSTのY位置(及びθz回転)が計測される。
【0103】
また、本実施形態では、後述するセカンダリアライメント系のベースライン計測時(Sec-BCHK(インターバル))などに、セカンダリアライメント系AL21、AL24にX軸方向で隣接するYヘッド673、682が、FDバー46の一対の基準格子52とそれぞれ対向し、その一対の基準格子52と対向するYヘッド673,682によって、FDバー46のY位置が、それぞれの基準格子52の位置で計測される。以下では、一対の基準格子52にそれぞれ対向するYヘッド673,682によって構成されるエンコーダをYリニアエンコーダ(適宜、「Yエンコーダ」又は「エンコーダ」とも略述する)70E2,70F2(図6参照)と呼ぶ。また、識別のため、上述したYスケール39Y2,39Y1にそれぞれ対向するYヘッド67,68によって構成されるYエンコーダ70E、70Fを、Yエンコーダ70E1、70F1と呼ぶ。
【0104】
上述した6つのリニアエンコーダ70A〜70Fは、例えば0.1nm程度の分解能で、ウエハステージWSTの位置座標を計測し、その計測値を主制御装置20に供給する。主制御装置20は、リニアエンコーダ70A〜70Dのうちの3つ、又は70B,70D,70E1,70F1のうちの3つの計測値に基づいて、ウエハテーブルWTBのXY平面内の位置を制御するとともに、リニアエンコーダ70E2,70F2の計測値に基づいて、FDバー46のθz方向の回転を制御する。なお、リニアエンコーダの構成等については、さらに後述する。
【0105】
本実施形態の露光装置100では、図3に示されるように、照射系90a及び受光系90bから成る、例えば特開平6−283403号公報(対応する米国特許第5,448,332号明細書)等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点焦点位置検出系(以下、「多点AF系」と略述する)が設けられている。本実施形態では、一例として、前述のヘッドユニット62Eの−X端部の+Y側に照射系90aが配置され、これに対峙する状態で、前述のヘッドユニット62Fの+X端部の+Y側に受光系90bが配置されている。
【0106】
この多点AF系(90a,90b)の複数の検出点は、被検面上でX軸方向に沿って所定間隔で配置される。本実施形態では、例えば1行M列(Mは検出点の総数)又は2行N列(Nは検出点の総数の1/2)のマトリックス状に配置される。図3中では、それぞれ検出ビームが照射される複数の検出点を、個別に図示せず、照射系90a及び受光系90bの間でX軸方向に延びる細長い検出領域(ビーム領域)AFとして示している。この検出領域AFは、X軸方向の長さがウエハWの直径と同程度に設定されているので、ウエハWをY軸方向に1回スキャンするだけで、ウエハWのほぼ全面でZ軸方向の位置情報(面位置情報)を計測できる。また、この検出領域AFは、Y軸方向に関して、液浸領域14(露光領域IA)とアライメント系(AL1、AL21〜AL24)の検出領域との間に配置されているので、多点AF系とアライメント系とでその検出動作を並行して行うことが可能となっている。多点AF系は、投影ユニットPUを保持するメインフレームなどに設けても良いが、本実施形態では前述の計測フレームに設けるものとする。
【0107】
なお、複数の検出点は1行M列又は2行N列で配置されるものとしたが、行数及び/又は列数はこれに限られない。但し、行数が2以上である場合は、異なる行の間で検出点のX軸方向の位置を異ならせることが好ましい。さらに、複数の検出点はX軸方向に沿って配置されるものとしたが、これに限らず、複数の検出点の全部又は一部をY軸方向に関して異なる位置に配置しても良い。例えば、X軸及びY軸の両方と交差する方向に沿って複数の検出点を配置しても良い。すなわち、複数の検出点は少なくともX軸方向に関して位置が異なっていれば良い。また、本実施形態では複数の検出点に検出ビームを照射するものとしたが、例えば検出領域AFの全域に検出ビームを照射しても良い。さらに、検出領域AFはX軸方向の長さがウエハWの直径と同程度でなくても良い。
【0108】
多点AF系(90a,90b)の複数の検出点のうち両端に位置する検出点の近傍、すなわち検出領域AFの両端部近傍に、基準軸LVに関して対称な配置で、各一対のZ位置計測用の面位置センサのヘッド(以下、「Zヘッド」と略述する)72a,72b、及び72c,72dが設けられている。これらのZヘッド72a〜72dは、不図示のメインフレームの下面に固定されている。なお、Zヘッド72a〜72dは前述した計測フレームなどに設けても良い。
【0109】
Zヘッド72a〜72dとしては、ウエハテーブルWTBに対し上方から光を照射し、その反射光を受光してその光の照射点におけるウエハテーブルWTB表面のXY平面に直交するZ軸方向の位置情報を計測するセンサヘッド、一例としてCDドライブ装置などで用いられる光ピックアップのような構成の光学式の変位センサのヘッド(光ピックアップ方式のセンサヘッド)が用いられている。
【0110】
本実施形態では、各Zヘッドとして、エンコーダと同じくYスケール39Y1,39Y2の回折格子面を上方(+Z方向)から観察する構成が採用される。それにより、複数のZヘッドで、ウエハテーブルWTB上面の異なる位置の面位置情報を計測することで、ウエハテーブルWTBのZ軸方向の位置とθy回転(ローリング)を計測することができる。
【0111】
さらに、前述のヘッドユニット62A,62Cは、それぞれが備えるYヘッド65j(j=3〜5),64i(i=1〜3)と同じX位置に、ただしY位置をずらして、それぞれ3つのZヘッド76j(j=3〜5),74i(i=1〜3)を備えている。ここで、ヘッドユニット62A,62Cのそれぞれに属する3つのZヘッド76j,74iは、基準軸LHから+Y方向に所定距離隔てて基準軸LHと平行に配置され、且つ互いに基準軸LVに関して対称に配置されている。なお、各Zヘッド76j,74iとしては、前述のZヘッド72a〜72dと同様の光学式変位センサのヘッドが採用される。
【0112】
ここで、Zヘッド743は、前述したZヘッド72a,72bと同一のY軸に平行な直線上にある。同様に、Zヘッド763は、前述したZヘッド72c,72dと同一のY軸に平行な直線上にある。
【0113】
上述したZヘッド72a〜72d、Zヘッド741〜743、及びZヘッド763〜765は、図6に示されるように、信号処理・選択装置170を介して主制御装置20に接続されており、主制御装置20は、信号処理・選択装置170を介してZヘッド72a〜72d、Zヘッド741〜743、及びZヘッド763〜765の中から任意のZヘッドを選択して作動状態とし、その作動状態としたZヘッドで検出した面位置情報を信号処理・選択装置170を介して受け取る。本実施形態では、Zヘッド72a〜72d、Zヘッド741〜743、及びZヘッド763〜765と、信号処理・選択装置170とを含んでウエハテーブルWTBのZ軸方向及びXY平面に対する傾斜方向の位置情報を計測する面位置計測システム180が構成されている。
【0114】
なお、図3では、計測ステージMSTの図示が省略されるとともに、その計測ステージMSTと先端レンズ191との間に保持される水Lqで形成される液浸領域が符号14で示されている。また、図3に示されるように、本実施形態では、アンローディングポジションUPと、ローディングポジションLPとは、基準軸LVに関して対称に設定されている。しかし、これに限らず、アンローディングポジションUPとローディングポジションLPとを同一位置としても良い。
【0115】
図6には、露光装置100の制御系の主要な構成が示されている。この制御系は、装置全体を統括的に制御するマイクロコンピュータ(又はワークステーション)から成る主制御装置20を中心として構成されている。この主制御装置20に接続された外部記憶装置であるメモリ34には、干渉計システム118、エンコーダシステム150(エンコーダ70A〜70F)、Zヘッド72a〜72d,741〜743,763〜765等、計測器系の補正情報が記憶されている。なお、図6においては、前述した照度むらセンサ94、空間像計測器96及び波面収差計測器98などの計測ステージMSTに設けられた各種センサが、纏めてセンサ群99として示されている。
【0116】
次に、エンコーダ70A〜70Fの構成等について、図7(A)に拡大して示されるYエンコーダ70Cを代表的に採り上げて説明する。この図7(A)には、Yスケール39Y2に検出光(計測ビーム)を照射するヘッドユニット62Cの1つのYヘッド64が示されている。
【0117】
Yヘッド64は、大別すると、照射系64a、光学系64b、及び受光系64cの3部分から構成されている。
【0118】
照射系64aは、レーザ光LBをY軸及びZ軸に対して45°を成す方向に射出する光源、例えば半導体レーザLDと、該半導体レーザLDから射出されるレーザビームLBの光路上に配置されたレンズL1とを含む。
【0119】
光学系64bは、その分離面がXZ平面と平行である偏光ビームスプリッタPBS、一対の反射ミラーR1a,R1b、レンズL2a,L2b、四分の一波長板(以下、λ/4板と記述する)WP1a,WP1b、及び反射ミラーR2a,R2b等を備えている。ここで、偏光ビームスプリッタPBSの分離面を基準にして、反射ミラーR1aと対称な位置に、反射ミラーR1bが配置されている。同様に、収束レンズL2a,L2b、λ/4板WP1a,WP1b、及び反射ミラーR2a,R2bも、偏光ビームスプリッタPBSの分離面を基準にして、互いに対称な位置に配置されている。
【0120】
前記受光系64cは、偏光子(検光子)及び光検出器等を含む。受光系64cは、偏光ビームスプリッタPBSの分離面を介したレーザ光LBの反射回折光の戻り光路上に、配置される。
【0121】
このYエンコーダ70Cにおいて、半導体レーザLDから射出されたレーザビームLBはレンズL1を介して偏光ビームスプリッタPBSに入射し、2つの光束LB1、LB2に偏光分離される。ここで、レーザビームLBのP偏光成分が、偏光ビームスプリッタPBSを透過して光束LB1を成し、S偏光成分が、偏光ビームスプリッタPBSの分離面で反射されて光束LB2を成す。光束LB,LBは、それぞれ反射ミラーR1a,R1bによって反射されて、反射型回折格子RGに入射する。
【0122】
反射型回折格子RGに光束LB,LBが照射されることにより、回折光が発生する。ここで、光束LBの照射よって発生する−1次以下の回折光のうち、例えば−1次の回折光が、収束レンズL2a及びλ/4板WP1aを透過して、反射ミラーR2aに到達する。ただし、回折光の次数の符号は、後述するように、入射光と同じ角度で反射される零次の回折光を基準に、+Y方向(−Y方向)へ回折する回折光に対して正(負)と定義する。そして、回折光は反射ミラーR2aによって反射され、往路と同じ光路を逆方向に辿って、反射型回折格子RGに到達する。ここで、往路と復路でλ/4板WP1aを2回透過することにより、回折光の偏光方向は90度回転し、S偏光に変換される。一方、光束LBの照射よって発生する+1次以上の回折光のうち、例えば+1次の回折光が、収束レンズL2b及びλ/4板WP1bを透過して、反射ミラーR2bに到達する。そして、回折光は反射ミラーR2bによって反射され、往路と同じ光路を逆方向に辿って、反射型回折格子RGに到達する。ここで、往路と復路でλ/4板WP1bを2回透過することにより、回折光の偏光方向は90度回転し、P偏光に変換される。
【0123】
反射型回折格子RGに反射ミラーR2a,R2bからの戻り回折光が照射されることにより、再び回折光が発生する。反射ミラーR2aからの戻り光に由来する回折光のうち、戻り光と同一次の回折光が反射ミラーR1aに反射されて、偏光ビームスプリッタPBSに到達する。一方、反射ミラーR2bからの戻り光に由来する回折光のうち、戻り光と同一次の回折光が反射ミラーR1bに反射されて、偏光ビームスプリッタPBSに到達する。
【0124】
偏光ビームスプリッタPBSに到達する戻り光束LB,LBは、それぞれS偏光とP偏光に変換されている。そのため、戻り光束LBは偏光ビームスプリッタPBSの分離面で反射され、戻り光束LBは偏光ビームスプリッタPBSを透過する。それにより、戻り光束LB,LBは同軸に合成されて受光系64cに入射する。
【0125】
受光系64cの内部において、2つの戻り光束LB,LBは、検光子によって偏光方向を揃えて重ね合わせられ、干渉光を形成する。この干渉光が光検出器によって検出される。ここで、Yスケール39Y2(すなわちウエハステージWST)が計測方向(この場合、Y軸方向)に移動すると、後述するように、2つの光束LB,LB間の位相差が変化し、それにより干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度変化より、Yヘッド64とYスケール39Y2間の位置関係、すなわちウエハステージWSTのY座標が算出され、Yエンコーダ70Aの計測値として出力される。
【0126】
なお、ヘッドユニット62Cのその他のYヘッド64、及びヘッドユニット62Aに属する各Yヘッド65も上述と同様に構成され、Yスケール39Y2又は39Y1に対向してYエンコーダ70C又は70Aを構成する。
【0127】
また、ヘッドユニット62B,62Dそれぞれに属する各Xヘッド66も、上述したYヘッド64と同様に構成され、Xスケール39X1又は39X2に対向してXエンコーダ70B又は70Dを構成する。
【0128】
また、ヘッドユニット62E,62Fそれぞれに属する各Yヘッド67,68も、上述したYヘッド64と同様に構成され、Yスケール39Y2又は39Y1に対向してYエンコーダ70E1又は70F1を構成する。また、Yヘッド673,682は、計測ステージMST上の一対の基準格子52にそれぞれ対向してYエンコーダ70E2,70F2を構成する。
【0129】
各エンコーダとしては、分解能が、例えば0.1nm程度のものが用いられている。なお、本実施形態のエンコーダでは、図7(B)に示されるように、検出光として回折格子RGの周期方向に長く延びる断面形状のレーザビームLBを用いても良い。図7(B)では、格子RGと比較してビームLBが誇張して大きく図示されている。
【0130】
なお、別形態として、エンコーダヘッドには光学系64bのみが含まれ、照射系64aと受光系64cが光学系64bから物理的に分離しているタイプもある。このタイプの場合、レーザ光は、これら3部分間を、光ファイバを介して引き回される。
【0131】
次に、本実施形態の露光装置100における、ウエハステージWSTと計測ステージMSTとを用いた並行処理動作について、図8〜図11に基づいて説明する。なお、以下の動作中、主制御装置20によって、局所液浸装置8の液体供給装置5及び液体回収装置6の各バルブの開閉制御が前述したようにして行われ、投影光学系PLの先端レンズ191の射出面側には常時水が満たされている。しかし、以下では、説明を分かり易くするため、液体供給装置5及び液体回収装置6の制御に関する説明は省略する。また、以後の動作説明は、多数の図面を用いて行うが、図面毎に同一の部材に符号が付されていたり、付されていなかったりしている。すなわち、図面毎に、記載している符号が異なっているが、それら図面は符号の有無に関わらず、同一構成である。これまでに説明に用いた、各図面についても同様である。
【0132】
図8には、ウエハステージWST上に載置されたウエハWに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われている状態が示されている。この露光は、開始前に行われるウエハアライメント(例えばEGA:Enhanced Global Alignment)等の結果に基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための走査開始位置(加速開始位置)へウエハステージWSTを移動するショット間移動と、各ショット領域に対してレチクルRに形成されたパターンを走査露光方式で転写する走査露光と、を交互に繰り返すことにより行われる。また、露光は、ウエハW上の−Y側に位置するショット領域から+Y側に位置するショット領域の順で行われる。なお、投影ユニットPUとウエハWとの間に液浸領域14が形成された状態で行われる。
【0133】
上述の露光中、主制御装置20により、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のXY平面内の位置(θz方向の回転を含む)は、2つのYエンコーダ70A,70Cと、2つのXエンコーダ70B,70Dの一方との合計3つのエンコーダの計測結果に基づいて制御されている。ここで、2つのXエンコーダ70B,70Dは、Xスケール39X1,39X2のそれぞれに対向する2つのXヘッド66によって構成され、2つのYエンコーダ70A,70Cは、Yスケール39Y1,39Y2のそれぞれに対向するYヘッド65、64により構成される。また、ウエハステージWSTのZ位置とθy方向の回転(ローリング)は、ウエハテーブルWTB表面のX軸方向一側と他側の端部にそれぞれ対向する一対のZヘッド74i,76jの計測結果に基づいて制御されている。ウエハステージWSTのθx回転(ピッチング)は、Y干渉計16の計測結果に基づいて制御されている。なお、ウエハテーブルWTBのZ軸方向の位置、θy方向の回転、及びθx方向の回転の制御(すなわちウエハWのフォーカス・レベリング制御)は、事前に行われるフォーカスマッピングの結果に基づいて行われている。
【0134】
図8に示される、ウエハステージWSTの位置では、Xスケール39X1にはXヘッド665(図8中に丸で囲んで示されている)が対向するが、Xスケール39X2に対向するXヘッド66はない。そのため、主制御装置20は、1つのXエンコーダ70Bと2つのYエンコーダ70A,70Cを用いて、ウエハステージWSTの位置(X,Y,θz)制御を実行している。ここで、図8に示される位置からウエハステージWSTが−Y方向に移動すると、Xヘッド665はXスケール39X1から外れ(対向しなくなり)、代わりにXヘッド664(図8中に破線の丸で囲んで示されている)がXスケール39X2に対向する。そこで、主制御装置20は、1つのXエンコーダ70Dと2つのYエンコーダ70A,70Cを用いるステージ制御に切り換える。
【0135】
このように、主制御装置20は、ウエハステージWSTの位置座標に応じて、使用するエンコーダを絶えず切り換えて、ステージ制御を実行している。
【0136】
なお、上述のエンコーダを用いたウエハステージWSTの位置計測と独立に、干渉計システム118を用いたウエハステージWSTの位置(X,Y,Z,θx,θy,θz)計測が、常時、行われている。ここで、干渉計システム118を構成するX干渉計126,127,又は128を用いてウエハステージWSTのX位置とθz回転(ヨーイング)が、Y干渉計16を用いてY位置、θx回転、及びθz回転が、Z干渉計43A,43B(図8では不図示、図1又は図2を参照)を用いてY位置、Z位置、θy回転、及びθz回転が計測される。X干渉計126,127,及び128は、ウエハステージWSTのY位置に応じて、いずれか1つが使用される。露光中は、図8に示されるように、X干渉計126が使用される。X、Y、θz方向の3自由度方向に関しては、干渉計システム118の計測結果は、補助的に、ウエハステージWSTの位置制御に利用される。
【0137】
ウエハWの露光が終了すると、主制御装置20は、ウエハステージWSTをアンローディングポジションUPに向けて駆動する。その際、露光中には互いに離れていたウエハステージWSTと計測ステージMSTとが、接触あるいは300μm程度の離間距離を挟んで近接して、スクラム状態に移行する。ここで、計測テーブルMTB上のCDバー46の−Y側面とウエハテーブルWTBの+Y側面とが接触あるいは近接する。このスクラム状態を保って、両ステージWST,MSTが−Y方向に移動することにより、投影ユニットPUの下に形成される液浸領域14は、計測ステージMST上に移動する。例えば図9、図10には、移動後の状態が示されている。
【0138】
ウエハステージWSTが、更に−Y方向へ移動して有効ストローク領域(ウエハステージWSTが露光及びウエハアライメント時に移動する領域)から外れると、エンコーダ70A〜70Dを構成する全てのXヘッド、Yヘッド及び全てのZヘッドが、ウエハテーブルWTB上の対応するスケールから外れる。そのため、エンコーダ70A〜70D及びZヘッドの計測結果に基づくステージ制御が不可能になる。その直前に、主制御装置20は、干渉計システム118の計測結果に基づくステージ制御に切り換える。ここで、3つのX干渉計126,127,128のうちX干渉計128が使用される。
【0139】
その後、図9に示されるように、ウエハステージWSTは、計測ステージMSTとのスクラム状態を解除し、アンローディングポジションUPに移動する。移動後、主制御装置20は、ウエハテーブルWTB上のウエハWをアンロードする。そして、図10に示されるように、ウエハステージWSTを+X方向に駆動してローディングポジションLPに移動させ、ウエハテーブルWTB上に次のウエハWをロードする。
【0140】
これらの動作と平行して、主制御装置20は、計測ステージMSTに支持されたFDバー46のXY平面内での位置調整と、4つのセカンダリアライメント系AL21〜AL24のベースライン計測と、を行うSec-BCHK(セカンダリ・ベースライン・チェック)を実行する。Sec-BCHKはウエハ交換毎にインターバル的に行う。ここで、XY平面内の位置(θz回転)を計測するために、前述のYエンコーダ70E2,70F2が使用される。
【0141】
次に、主制御装置20は、図11に示されるように、ウエハステージWSTを駆動し、計測プレート30上の基準マークFMをプライマリアライメント系AL1の検出視野内に位置決めし、アライメント系AL1,AL21〜AL24のベースライン計測の基準位置を決定するPri-BCHK(プライマリ・ベースライン・チェック)の前半の処理を行う。
【0142】
このとき、図11に示されるように、2つのYヘッド682,673と1つのXヘッド661(図中に丸で囲んで示されている)が、それぞれYスケール39Y1,39Y2とXスケール39X2に対向するようになる。そこで、主制御装置20は、干渉計システム118からエンコーダシステム150(エンコーダ70A,70C,70D)を用いたステージ制御へ切り換える。干渉計システム118は、再び補助的に使用される。なお、3つのX干渉計126,127,128のうちX干渉計127が使用される。
【0143】
その後、主制御装置20は、プライマリアライメント系AL1とセカンダリアライメント系AL21〜AL24を用いて、ウエハアライメント(EGA)を実行する(図12中の星マーク参照)。
【0144】
なお、本実施形態では、図12に示されるように、ウエハアライメントを開始するまでに、ウエハステージWSTと計測ステージMSTはスクラム状態へ移行している。主制御装置20は、スクラム状態を保ちながら、両ステージWST,MSTを+Y方向に駆動する。その後、液浸領域14の水は、計測テーブルMTB上からウエハテーブルWTB上に移動する。
【0145】
ウエハアライメント(EGA)と平行して、主制御装置20は、Zヘッド(70a〜70d)と多点AF系(90a,90b)とを用いたフォーカスキャリブレーションとフォーカスマッピング、さらに空間像計測装置45を用いたウエハテーブルWTBのXY位置に対する投影像の強度分布を計測するPri-BCHK後半の処理を実行する。
【0146】
以上の作業が終了すると、主制御装置20は、両ステージWST,MSTのスクラム状態を解除する。そして、図8に示されるように、ステップ・アンド・スキャン方式の露光を行い、新しいウエハW上にレチクルパターンを転写する。以降、同様の動作が繰り返し実行される。
【0147】
次に、エンコーダの計測原理を、図7(A)に示されるYエンコーダ70Cを例にして、詳細に説明する。まず、2つの戻り光束LB,LBから合成される干渉光の強度と、Yスケール39Y2の変位(Yヘッド64との相対変位)の関係を導出する。
【0148】
2つの光束LB,LBは、移動する反射型回折格子RGに散乱されると、ドップラー効果による周波数のシフト、すなわちドップラーシフトを受ける。図13(A)に、移動する反射面DSによる光の散乱を示す。ただし、図中のベクトルk,kはYZ面に対し平行、反射面DSはY軸に対し平行でZ軸に対し垂直とする。
【0149】
反射面DSは速度ベクトルv=vy+vz、すなわち+Y方向に速度Vy(=|vy|)かつ+Z方向に速度Vz(=|vz|)で移動しているとする。この反射面に対し、波数ベクトルkの光が角度θで入射し、波数ベクトルkの光が角度θで散乱される。ただし、|k|=|k|=Kとする。入射光kが受けるドップラーシフト(散乱光kと入射光kの周波数の差)fは、次式(7)で与えられる。
【0150】
2πf=(k−k)・v
=2KVycos[(θ−θ)/2]cosθ
+2KVzcos[(θ−θ)/2]sinθ …(7)
ここで、θ=π/2−(θ+θ)/2なので、上式(7)を変形して、次式(8)を得る。
【0151】
2πf=KVy(sinθ+sinθ)+KVz(cosθ+cosθ) …(8)
【0152】
反射面DSは、時間Δtの間に、変位ベクトルvΔt、すなわち+Y方向に距離ΔY=VyΔt、+Z方向に距離ΔZ=VzΔt変位する。それに伴って散乱光kの位相はφ=2πfΔtシフトする。式(8)を代入すると、位相シフトφは、次式(9)のように求められる。
【0153】
φ=KΔY(sinθ+sinθ)+KΔZ(cosθ+cosθ
…(9)
ここで、入射角θと散乱角θには次式(10)の関係(回折条件)が成立する。
【0154】
sinθ+sinθ=nλ/p …(10)
ただし、λは光の波長、pは回折格子のピッチ、nは回折次数である。なお、回折次数nは、散乱角−θの零次回折光を基準にして、+Y方向に散乱される回折光に対して正、−Y方向に散乱される回折光に対し負となる。式(10)を式(9)に代入すると、位相シフトφは、次式(11)のように書き換えられる。
【0155】
φ=2πnΔY/p+KΔZ(cosθ+cosθ) …(11)
上式(11)より明らかなように、反射面DSが停止していれば、すなわちΔY=ΔZ=0ならば、位相シフトφも零となる。
【0156】
式(11)を用いて、2つの光束LB,LBの位相シフトを求める。まず、光束LBの位相シフトを考える。図13(B)において、反射鏡R1aで反射された光束LBは、反射型回折格子RGに角θa0で入射し、n次回折光が角θa1で散乱するとする。この時、回折光が受ける位相シフトは式(11)の右辺と同じ形となる。そして、反射鏡R2aによって反射され復路を辿る戻り光束は、反射型回折格子RGに角θa1で入射する。そして再度、回折光が発生する。ここで、角θa0で散乱し、元の光路を辿って反射鏡R1aに向かう回折光は、往路において発生した回折光と同一次のn次回折光である。従って、光束LBが復路で被る位相シフトは、往路で被る位相シフトに等しい。従って、光束LBが被る全位相シフトは、次式(12)のように求められる。
【0157】
φ=4πnΔY/p+2KΔZ(cosθa1+cosθa0
…(12)
ただし、回折条件を、次式(13)で与えた。
【0158】
sinθa1+sinθa0=nλ/p …(13)
一方、光束LBは角θb0で反射型回折格子RGに入射し、n次回折光が角θb1で散乱される。この回折光が、反射鏡R2bによって反射され、同じ光路を辿って反射鏡R1bに戻るとする。光束LBが被る全位相シフトは、式(12)と同様に、次式(14)のように求められる。
【0159】
φ=4πnΔY/p+2KΔZ(cosθb1+cosθb0
…(14)
ただし、回折条件を、次式(15)で与えた。
【0160】
sinθb1+sinθb0=nλ/p …(15)
【0161】
2つの戻り光束LB,LBから合成される干渉光の強度Iは、光検出器の受光位置における2つの戻り光束LB,LB間の位相の差φに、I∝1+cosφと依存する。ただし、2つの光束LB,LBの強度は互いに等しいとした。ここで、位相差φは、2つの光束LB,LBのそれぞれの反射型回折格子RGのY,Z変位に起因する位相シフトの差(すなわちφ−φ)と、2つの光束LB,LBの光路差ΔLに起因する位相差(KΔL)との和として、次式(16)のように求められる。
【0162】
φ=KΔL+4π(n−n)ΔY/p
+2KΔZf(θa0,θa1,θb0,θb1)+φ …(16)
ここで、式(12)、(14)を用いた。なお、反射鏡R1a,R1b,R2a,R2bの配置と回折条件とから定まる幾何学的因子を、次式(17)のように表記した。
【0163】
f(θa0,θa1,θb0,θb1
=cosθb1+cosθb0−cosθa1−cosθa0 …(17)
また、その他の要因(例えば、変位ΔL,ΔY,ΔZの基準位置の定義など)より定まる定位相項をφと表記した。
【0164】
ここで、エンコーダは、光路差ΔL=0及び次式(18)で示される対称性を満たすように、構成されているとする。
【0165】
θa0=θb0,θa1=θb1 …(18)
その場合、式(16)の右辺第3項の括弧内は零になり、同時にn=−n(=n)を満たすので、次式(19)が得られる。
【0166】
φsym(ΔY)=2πΔY/(p/4n)+φ …(19)
上式(19)より、位相差φsymは光の波長λに依存しないことがわかる。そして、干渉光の強度Iは、変位ΔYが計測単位(計測ピッチとも呼ぶ)p/4n増加あるいは減少する毎に、強弱を繰り返すことがわかる。そこで、予め定められた基準位置からの変位ΔYに伴う干渉光の強度の強弱の回数を計測する。そして、その計数値(カウント値)cΔYより、変位ΔYの計測値CΔYが、次式(20)のように求められる。
【0167】
ΔY=(p/4n)×cΔY …(20)
さらに、内挿器(インターポレータ)を用いて干渉光の正弦的な強度変化を分割することにより、その位相φ’(=φsym%2π)を計測することができる。その場合、変位ΔYの計測値CΔYは、次式(21)より算出される。
【0168】
ΔY=(p/4n)×{cΔY+(φ’−φ)/2π} …(21)
ここで、定位相項φを位相オフセット(ただし、0≦φ<2πと定義する)とし、変位ΔYの基準位置での位相φsym(ΔY=0)を保持することとする。
【0169】
以上の説明よりわかるように、内挿器を併用することにより、変位ΔYを、計測単位(p/4n)以下の計測分解能で計測することができる。ここで、計測分解能は、位相φ’の分割単位から定まる離散化誤差(量子化誤差とも呼ぶ)、変位ΔYによる干渉光の強度変化I(ΔY)=I(φsym(ΔY))の理想的な正弦波形からのずれに起因する内挿誤差等、から決まる。なお、変位ΔYの離散化単位は、例えば計測単位(p/4n)の数1000分の1で、約0.1nmと十分小さいので、特に断らない限り、エンコーダの計測値CΔYを連続量とみなす。
【0170】
ウエハステージWSTがY軸方向とは異なる方向に移動し、Yヘッド64とYスケール39Y2の間に計測方向以外の相対変位が生じると、Yエンコーダ70Cに計測誤差が生じる。以下、上述のエンコーダの計測原理に基づいて、計測誤差の発生機構を考えてみる。
【0171】
簡単な例として、図14(A)及び図14(B)に示される2つのケースにおいて、上式(16)で示される位相差φの変化を考えてみる。まず、図14(A)のケースでは、ヘッド64の光軸がZ軸方向に一致している(ヘッド64が傾いていない)。ここで、ウエハステージWSTがZ軸方向に変位したとする(ΔZ≠0,ΔY=0)。この場合、光路差ΔLに変化はないので、式(16)右辺第1項に変化はない。第2項は、仮定ΔY=0より、零となる。そして、第3項は、式(18)の対称性を満たしているので、零となる。従って、位相差φに変化は生じず、また干渉光の強度変化も生じない。結果として、エンコーダの計測値も変化しない。
【0172】
一方、図14(B)のケースでは、ヘッド64の光軸がZ軸に対して傾いている(ヘッド64が傾いている)。この状態から、ウエハステージWSTがZ軸方向に変位したとする(ΔZ≠0,ΔY=0)。この場合も、光路差ΔLに変化は生じないので、式(16)右辺第1項に変化はない。そして第2項は、仮定ΔY=0より、零となる。しかし、ヘッドが傾いていることにより式(18)の対称性が破れるので、第3項は零にならず、Z変位ΔZに比例して変化する。従って、位相差φに変化が生じ、結果として、計測値が変化する。
【0173】
また、図示は省略するが、計測方向(Y軸方向)と光軸方向(Z軸方向)とに垂直な方向にウエハステージWSTが変位する場合(ΔX≠0,ΔY=0,ΔZ=0)、回折格子RGの格子線の向く方向が計測方向と直交している限り計測値は変化しないが、直交していなければ角度に比例したゲインで感度が発生する。
【0174】
次に、図15(A)〜図15(D)を用いて、ウエハステージWSTが回転(傾斜が変化)するケースを考えてみる。まず、図15(A)では、ヘッド64の光軸がZ軸方向に一致している(ヘッド64が傾いていない)。この状態から、ウエハステージWSTが+Z方向に変位して図15(B)の状態になっても、先の図14(A)と同じケースなので、エンコーダの計測値は変化しない。
【0175】
次に、図15(B)の状態から、ウエハステージWSTがX軸回りに回転して図15(C)の状態になるとする。この場合、ヘッドとスケールが相対運動していない、すなわちΔY=ΔZ=0であるにもかかわらず、ウエハステージWSTの回転により光路差ΔLに変化が生じるため、エンコーダの計測値が変化する。
【0176】
次に、図15(C)の状態から、ウエハステージWSTが下方に移動して図15(D)の状態になるとする。この場合、ウエハステージWSTは回転しないので、光路差ΔLに変化は生じない。しかし、式(18)の対称性が破れているため、式(16)の右辺第3項を通じてZ変位ΔZによって位相差φが変化する。それにより、エンコーダの計測値が変化する。
【0177】
その他の計測誤差の発生要因として、ビーム光路上の雰囲気の温度揺らぎ(空気揺らぎ)が考えられる。2つの戻り光束LB,LB間の位相差φは、式(16)右辺第1項より、2つの光束の光路差ΔLに依存する。ここで、空気揺らぎによって、光の波長λがλ+Δλに変化したとする。この波長の微小変化Δλによって、位相差は微小量Δφ=2πΔLΔλ/λ変化する。ここで、仮に、光の波長λ=1μm、微小変化Δλ=1nmとすると、光路差ΔL=1mmに対して、位相変化Δφ=2πとなる。この位相変化は、エンコーダのカウント値に換算すると1に相当する。また、変位に換算すると、p/2(n−n)に相当する。従って、n=−n=1とすれば、p=1μmの場合、0.25μmの計測誤差が生ずることになる。
【0178】
実際のエンコーダでは、干渉させる2つの光束の光路長が極短いため、空気揺らぎによる波長変化Δλは非常に小さい。さらに、光路差ΔLは、光軸が反射面に対して直交する理想状態において、ほぼ零になるよう設計されている。そのため、空気揺らぎに起因する計測誤差はほぼ無視できる。干渉計と比較しても格段に小さく、短期安定性に優れている。
【0179】
エンコーダの計測誤差の主要な要因として、スケール表面の凹凸、あるいは回折格子の機械的な変形等に起因する誤差がある。エンコーダのスケールは、使用時間の経過と共に熱膨張等により、表面が変形したり、回折格子のピッチが部分的又は全体的に変化したりする。そのため、エンコーダは、使用時間の経過とともに、計測誤差が大きくなる傾向があり、長期安定性に欠ける。
【0180】
そこで、予め、これらの主要な誤差を補正するための前処理を行った後、実際のロットの処理中などに実行されるウエハステージWSTの位置計測に、エンコーダが使用される。
【0181】
主制御装置20は、ウエハステージWSTの有効ストローク範囲では、必ず、エンコーダ70A及び70C、並びにエンコーダ70B及び70Dの少なくとも一方の少なくとも合計3個のエンコーダの計測値を監視し、ウエハステージWSTの位置座標を算出している。そして、算出された位置座標に従って、ステージ駆動系124を構成する各モータを制御することにより、ウエハステージWSTを高精度に駆動することができる。
【0182】
ここで、図16(A)及び図16(B)を用いて、監視している3つのエンコーダの計測値から、ウエハステージWSTの位置座標を算出する方法を説明する。ここでは、簡単のため、ウエハステージWSTの移動の自由度は3つ(X,Y,θz)とする。
【0183】
図16(A)には、ウエハステージWSTが座標原点(X,Y、θz)=(0,0,0)にある基準状態が示されている。この基準状態から、エンコーダ(Yヘッド)Enc1,Enc2及びエンコーダ(Xヘッド)Enc3のいずれもが、それぞれが対向するスケール39Y1,39Y2及び39X1の走査領域から外れない範囲内で、ウエハステージWSTを駆動する。このようにして、ウエハステージWSTが位置(X,Y,θz)に移動した状態が、図16(B)に示されている。ただし、XY座標系における、エンコーダEnc1,Enc2,Enc3の設置位置(X,Y)をそれぞれ(p1,q1)、(p2,q2)、(p3,q3)とする。
【0184】
XヘッドとYヘッドは、それぞれ、ウエハステージWSTの中心軸LLとLWからの相対距離を計測する。従って、XヘッドとYヘッドの計測値C,Cは、それぞれ、次式(22a)、(22b)で表すことができる。
【0185】
=r’・ex’ …(22a)
=r’・ey’ …(22b)
ここで、ex’,ey’は、ウエハステージWSTにのった相対座標系(X’,Y’,θz’)におけるX’,Y’単位ベクトルで、基準座標系(X,Y,θz)におけるX,Y単位ベクトルex,eyと、次式(23)の関係がある。
【0186】
【数1】

また、r’は相対座標系におけるエンコーダの位置ベクトルで、基準座標系における位置ベクトルr=(p,q)を用いて、r’=r−(O’−O)と与えられる。従って、式(22a),(22b)は、次式(24a),(24b)のように書き換えられる。
【0187】
= (p−X)cosθz+(q−Y)sinθz …(24a)
=−(p−X)sinθz+(q−Y)cosθz …(24b)
【0188】
従って、図16(B)に示されるように、ウエハステージWSTが座標(X,Y,θz)に位置する場合、3つのエンコーダの計測値は、理論上、次式(25a)〜(25c)で表すことができる。
【0189】
1=−(p1−X)sinθz+(q1−Y)cosθz …(25a)
2=−(p2−X)sinθz+(q2−Y)cosθz …(25b)
3= (p3−X)cosθz+(q3−Y)sinθz …(25c)
【0190】
なお、図16(A)の基準状態では、連立方程式(25a)〜(25c)より、C1=q1,C2=q2,C3=p3となる。従って、基準状態において、3つのエンコーダEnc1、Enc2、Enc3の計測値を、それぞれq1,q2,p3と初期設定すれば、以降ウエハステージWSTの変位(X,Y,θz)に対して、3つのエンコーダは式(25a)〜(25c)で与えられる理論値を提示することになる。
【0191】
連立方程式(25a)〜(25c)では、変数が3つ(X,Y,θz)に対して3つの式が与えられている。従って、逆に、連立方程式(25a)〜(25c)における従属変数C1,C2,C3が与えられれば、変数X,Y,θzを求めることができる。ここで、近似sinθz≒θzを適用すると、あるいはより高次の近似を適用しても、容易に方程式を解くことができる。従って、エンコーダの計測値C1,C2,C3よりウエハステージWSTの位置(X,Y,θz)を算出することができる。
【0192】
本実施形態の露光装置100では、図17(A)及び図17(B)などに例示されるように、ウエハステージWSTの有効ストローク範囲(アライメント及び露光動作のために移動する範囲)では、必ず、Yスケール39Y1,39Y2それぞれに、少なくとも1個のYヘッド(65、64、68又は67)が対向するように、YスケールとYヘッドが配置されている。そして、Xスケール39X1,39X2のうちの少なくとも一方に、少なくとも1個のXヘッド66が対向するように、XスケールとXヘッドが配置されている。従って、少なくとも3個のヘッドが、対応するXスケール又はYスケールに、同時に対向するように配置されている。なお、図17(A)及び図17(B)中では、対応するXスケール又はYスケールに対向したヘッドが丸で囲んで示されている。
【0193】
ここで、主制御装置20は、図17(A)に白抜き矢印で示されるように、ウエハステージWSTを+X方向に駆動する場合、Yヘッド64を、例えば同図中に矢印e1で示されるように、実線の丸で囲まれるYヘッド643から点線の丸で囲まれるヘッド644へと切り換える。そのように、Yヘッド64は、ウエハステージWSTのX軸方向への移動に伴い、順次、隣のヘッドに切り換えられていく。なお、エンコーダでは相対変位が検出されるので、絶対変位(すなわち位置)を算出するために、基準となる位置を設定しなければならない。そこで、ヘッドの切り換え時に、作動するヘッドの位置が算出され、基準位置として初期設定される。初期設定については、後で詳細に説明する。
【0194】
また、主制御装置20は、図17(B)に白抜き矢印で示されるように、ウエハステージWSTを+Y方向に駆動する場合、Xヘッド66を、例えば、矢印eで示されるように、実線の丸で囲まれるヘッド665から点線の丸で囲まれるヘッド666へと切り換える。そのように、Xヘッド66は、ウエハステージWSTのY軸方向への移動に伴い、順次、隣のヘッドに切り換えられていく。このヘッド切り換え時に、作動するヘッドの位置が算出され、基準位置として初期設定される。
【0195】
ここで、図17(A)中に矢印e1で示されるYヘッド64から64への切り換えを例に、エンコーダヘッドの切り換え手順を、図18(A)〜図18(E)に基づいて説明する。
【0196】
図18(A)には、切り換え前の状態が示されている。この状態では、Yスケール39Y上の走査領域(回折格子が設けられている領域)に対向しているYヘッド64が作動していて、走査領域から外れているYヘッド64は停止している。ここで、作動しているヘッドを黒抜き丸、停止しているヘッドを白抜き丸で表した。そして、主制御装置20は、作動中のYヘッド64の計測値を監視している。ここで、計測値が監視されているヘッドを、2重の矩形枠で表した。
【0197】
ここで、ウエハステージWSTが+X方向に移動すると、Yスケール39Yが右方向に変位する。ここで、本実施形態では、前述の如く、Yヘッドの相互の間隔は、Yスケール39Y2のX軸方向の有効幅(走査領域の幅)よりも狭く設定されている。そのため、図18(B)に示されるように、両Yヘッド64,64がYスケール39Y2の走査領域に対向する状態がある。そこで、主制御装置20は、作動中のYヘッド64とともに、停止中のYヘッド64が走査領域に対向したのを確認して、Yヘッド64を復帰させる。ただし、主制御装置20は、この時点では、まだ、計測値の監視を開始しない。
【0198】
次に、図18(C)に示されるように、後に停止されるYヘッド64が走査領域に対向している間に、主制御装置20は、Yヘッド64を含む作動中のエンコーダヘッドの計測値より、復帰したYヘッド64の基準位置を算出する。そして、主制御装置20は、その基準位置を、Yヘッド64の計測値の初期値として設定する。なお、基準位置の算出と初期値の設定に関しては、後で詳細に説明する。
【0199】
主制御装置20は、上記の初期値の設定と同時に、計測値を監視するエンコーダヘッドを、Yヘッド64から64へ切り換える。切り換え終了後、主制御装置20は、図18(D)に示されるように、Yヘッド64を、走査領域から外れる前に停止する。以上でエンコーダヘッドの切り換えの全作業が終了し、以降、図18(E)に示されるように、Yヘッド64の計測値が主制御装置20により監視される。
【0200】
本実施形態では、ヘッドユニット62A,62Cがそれぞれ備える隣接するYヘッド65相互,64相互の間隔はともに例えば70mm(一部例外あり)と、Yスケール39Y1,39Y2の走査領域のX軸方向の有効幅(例えば76mm)よりも狭く設定されている。また、同様に、ヘッドユニット62B,62Dがそれぞれ備える隣接するXヘッド66相互の間隔は例えば70mm(一部例外あり)と、Xスケール39X1,39X2の走査領域のY軸方向の有効幅(例えば76mm)よりも狭く設定されている。これにより、上述のように、Yヘッド65又は64、及びXヘッド66の切り換えを円滑に実行することができる。
【0201】
なお、隣接する両ヘッドがスケールに対向する範囲、すなわち、図18(B)に示される状態から図18(D)に示される状態までのウエハステージWSTの移動距離が例えば6mmある。その中央、すなわち、図18(C)に示されるウエハステージWSTの位置で、計測値を監視するヘッドが切り換えられる。この切り換え作業は、停止されるヘッドが走査領域から外れるまでに、すなわち、ウエハステージWSTが図18(C)に示される状態から図18(D)に示される状態までの距離3mmの領域を移動する間に、完了する。例えば、ステージの移動速度1m/secの場合、3msecの時間内に、ヘッドの切り換え作業が完了することになる。
【0202】
次に、エンコーダヘッドの切り換え時におけるつなぎ処理、すなわち計測値の初期設定について、主制御装置20の動作を中心として説明する。
【0203】
本実施形態では、前述の如く、ウエハステージWSTの有効ストローク範囲では、XY平面内でのウエハステージWSTの位置情報を検出するために、常に3つのエンコーダ(Xヘッド及びYヘッド)がステージの動きを観測している。従って、エンコーダの切り換え処理を行う際には、図19に示されるように、4つめのエンコーダ(Yヘッド)Enc4を加えた、4つのエンコーダEnc1〜Enc4でウエハステージWSTを観測していることとなる。
【0204】
図19に示されるエンコーダの切り換え状態では、エンコーダEnc1、Enc2、Enc3、及びEnc4が、それぞれスケール39Y1,39Y2,39X1,39Y1の上に位置している。一見すると、エンコーダEnc1からエンコーダEnc4に切り換えられるように見える。しかし、エンコーダEnc1とエンコーダEnc4とではそれらの計測方向であるY軸方向の位置が異なることからも明らかなように、切り換えを行うタイミングにおいてエンコーダEnc1の計測値をそのままエンコーダEnc4の計測値の初期値として設定しても何の意味もない。
【0205】
そこで、本実施形態では、主制御装置20が、図19に示されるように、3つのエンコーダEnc1、Enc2、及びEnc3によるウエハステージWSTの位置計測から、3つのエンコーダEnc2、Enc3、及びEnc4による位置計測に、切り換えるようになっている。この切り換え方式はあるヘッドから別のヘッドに切り換えるのではなく、3つのヘッド(エンコーダ)の組み合わせ(組)から、別の3つのヘッド(エンコーダ)の組み合わせ(組)に切り換えるものである。
【0206】
その際、主制御装置20は、まず、エンコーダEnc1、Enc2、及びEnc3の計測値C,C,Cを用いて連立方程式(25a)〜(25c)を解き、ウエハステージWSTのXY平面内の位置座標(X,Y,θz)を算出する。次に、ここで算出された位置座標を用いて、エンコーダ(Yヘッド)Enc4の計測値が従う次の理論式(25d)より、理論値Cを求める。
【0207】
4=−(p4−X)sinθz+(q4−Y)cosθz …(25d)
ここで、p4、q4は、エンコーダEnc4のX,Y設置位置である。そして、理論値C4をエンコーダEnc4の初期値として設定する。ただし、式(19)の下で説明したように、エンコーダの計測値は離散化されるので、理論値C4は計測単位δ(=p/4n)を単位とする離散値、すなわちカウント値c4=int(C4/δ)に換算されて、エンコーダEnc4の初期値として設定される。ただし、int(x/y)=[x−x%y]/yである。剰余C%δの取り扱いは、後述する。
【0208】
以上のつなぎ処理により、ウエハステージWSTの位置計測の結果(X,Y,θz)を維持したまま、エンコーダの切り換え作業が完了する。それ以降は、切り換え後に使用するエンコーダEnc2、Enc3、及びEnc4の計測値C,C,Cを用いて、次の連立方程式(25b)〜(25d)を解いて、ウエハステージWSTの位置座標(X,Y,θz)を算出する。
【0209】
2=−(p2−X)sinθz+(q2−Y)cosθz …(25b)
3= (p3−X)cosθz+(q3−Y)sinθz …(25c)
4=−(p4−X)sinθz+(q4−Y)cosθz …(25d)
【0210】
なお、4つめのエンコーダがXヘッドの場合には、理論式(25d)の代わりに次の理論式(25e)を用いた連立方程式(25b)(25c)(25e)を用いれば良い。
【0211】
4= (p4−X)cosθz+(q4−Y)sinθz …(25e)
【0212】
ただし、実際のエンコーダの計測値(生計測値)には、各種の計測誤差が含まれている。そこで、主制御装置20は、誤差補正した値を計測値C4として提示する。従って、上述のつなぎ処理において、主制御装置20は、ステージ位置起因誤差補正情報及び/又はスケールの格子ピッチの補正情報(及び格子変形の補正情報)等を用いて、式(25d)又は式(25e)から求まる理論値C4を逆補正し、補正前の生値C4’を算出し、その生値C4’をエンコーダEnc4の測定値の初期値として設定する。
【0213】
エンコーダのつなぎ処理、すなわち第4のエンコーダの初期値C4の算出と設定において、誤差が発生し得る。ここで、実際にウエハ上の全ショット領域の露光を行うと、エンコーダの切り換えを、例えば100回程度実行することになる。従って、1回のつなぎ処理で発生する誤差が無視できるほど小さくても、切り換えを何度も繰り返すことにより、誤差が累積され、許容範囲を超えてしまう恐れがある。なお、誤差はランダムに発生するとして、100回の切り換えによって発生する累積誤差は、1回当たりに発生する誤差の10倍程度である。従って、つなぎ処理の精度を最大限向上しなければならない。
【0214】
そこで、次の2つのつなぎ法、すなわち座標つなぎ法と位相つなぎ法を導入する。
【0215】
座標つなぎ法では、まず、切り換え前の3つのエンコーダEnc1,Enc2,Enc3の計測値C,C,Cから、連立方程式(25a)〜(25c)を介して、ウエハステージWSTの位置座標(X,Y,θz)を算出する。この位置座標から、式(25d)(又は式(25e))を介して、第4のエンコーダEnc4の計測値Cを予測する。この予測値Cを、計測単位δの離散値、すなわちδ×c(ここで、cはカウント値)に変換する。そして、この離散値と微小量dCの和δ×c+dCを、式(25d)(又は式(25e))の左辺のCに代入し、連立方程式(25b)〜(25d)(又は連立方程式(25b)(25c)(25e))を解いて、位置座標を逆算する。ただし、計測値C,Cは、先と共通である。ここで求まる位置座標(X’,Y’,θz’)が、先に求められた位置座標(X,Y,θz)に一致するように、微小量dCを決定する。そして、第4のエンコーダEnc4に対し、離散値δ×c(カウント値c)を初期値として設定する。それと同時に、位相φ’を微小量dCに相当する位相2πdC/δに補正するために、位相オフセットをφ=φ’−2πdC/δと設定する。ここで、微小量dCは、連立方程式(25b)〜(25d)(又は連立方程式(25b)(25c)(25e))を用いたウエハステージWSTの位置座標の算出誤差などにより、剰余C4%δと異なり得る。
【0216】
座標つなぎ法では、その原理より、算出されるウエハステージWSTの位置座標は、エンコーダの切り換え前後で、必ず保存される。しかし、つなぎ処理を繰り返す度に、誤差が累積されてしまうことに変わりはない。
【0217】
本実施形態では、図18(A)〜図18(E)に基づいて詳述したように、同じヘッドユニット内の隣接する2つのエンコーダ間で切り換え処理が行われる場合には、それらが同時に同じスケールに対向している間に、切り換え処理が実行される。ここで、図18(B)に示されるように、新たに使用するYヘッド64がYスケール39Yに対向した状態から、図18(D)に示されるように、後に停止されるYヘッド64がYスケール39Yから外れる状態まで、隣接する2つのヘッドが同じスケールに対向する区間が約6mmある。ここで、ウエハステージWSTの最高移動速度は、例えば、1m/secなので、隣接する2つのヘッドが同じスケールに対向する時間は約6msec以上ある。そこで、上述の例のように、準備が整い次第、直ちにつなぎ処理を実行するのではなく、短くとも約6msecの切り換え時間を利用して、十分なつなぎ精度を確保した上で、つなぎ処理を実行することを考える。
【0218】
その手順を、図18(A)〜図18(E)の例を交えて説明する。ただし、図中のYヘッド64が後に停止される第1ヘッド(第1エンコーダ)Enc1、Yヘッド64が新たに使用する第4ヘッド(第4エンコーダ)Enc4に対応する。図18(B)に示されるように、第4エンコーダEnc4(64)がスケール(39Y)に対向すると、主制御装置20は、直ちに第4エンコーダEnc4(64)を復帰させる。そして、主制御装置20は、上述の手順に従い、第4エンコーダEnc4(64)の計測値Cを予測し、図18(C)に示される状態、すなわち両隣接エンコーダ(64,64)の中心がスケール(39Y)の中央に位置するタイミングで、予測値Cから決まる初期値(cとφ)を仮設定する。
【0219】
ここで、前述の例では、初期値の設定(つなぎ処理の実行)後、直ちにウエハステージWSTの位置座標を算出するために計測値を監視するエンコーダを、第1の組み合わせEnc1,Enc2,Enc3から第2の組み合わせEnc2,Enc3,Enc4に切り換えた。しかし、ここではまだ切り換え処理を行わず、引き続き、第4エンコーダEnc4の計測値Cの予測を続ける。そして、主制御装置20は、その予測値と仮設定状態での第4エンコーダEnc4の実測値の差ΔCを求め、その差を、実際に第4エンコーダEnc4の初期値を本設定するまで、時間平均する。なお、後述するように、本実施形態では、所定の時間間隔毎にエンコーダシステムの計測結果を監視しているので、所定数の監視結果を移動平均することになる。
【0220】
第4エンコーダEnc4の計測値Cの予測値と仮設定状態での実測値の差ΔCは、理想的には零値を取るが、実際には様々の誤差要因により非零となる。さらに、ほとんどの誤差要因は時間に対しランダムに発生するため、時間の経過に対して差ΔCの値もランダムに揺らぐ。ここで、差ΔCの時間平均を取ることにより、誤差成分が平均化され、ランダムな揺らぎは小さくなる。そこで、主制御装置20は、約6msec以上の切り換え時間をかけて、差ΔCを時間平均する。そして、主制御装置20は、揺らぎが十分許容できる程度に十分小さくなるのを確認して、差ΔCを先の仮予測値Cに加算し、予測値C+ΔCから決まる初期値(cとφ)を、第4エンコーダEnc4の計測値として本設定する。本設定が終了した後、主制御装置20は、ウエハステージWSTの位置座標を算出するために使用するエンコーダを第2の組み合わせEnc2,Enc3,Enc4に切り換える。そして、主制御装置20は、第1エンコーダEnc1を、対応するスケールから外れる際に停止する。これにより、切り換え処理が完了する。
【0221】
もう1つの位相つなぎ法の場合、その基本手順は先の座標つなぎ法と同じであるが、位相オフセットの取り扱いが異なる。座標つなぎ法では、エンコーダの切り換え前後で、算出されるウエハステージWSTの位置座標が完全に一致するように、第4のエンコーダに対する位相オフセットを再設定した。位相つなぎ法では、位相オフセットを再設定せず、すでに設定されている位相オフセットを引き続き使用する。すなわち、位相つなぎ法では、カウント値のみを再設定する。この場合、エンコーダの切り換え前後で、算出されるウエハステージWSTの位置座標は不連続となり得る。しかし、位相オフセットが正確に設定されている場合には、カウント値の設定ミスが生じない限り、誤差は発生しない。従って、つなぎ処理の繰り返しによる誤差の累積も生じない。なお、前述のカウント値の設定手順に従う限り、その設定ミスが生ずる可能性は極めて低い。
【0222】
ただし、位相オフセットは、一度正確に設定したとしても、エンコーダヘッドの設置位置のずれ等が生じて、正確さを失うことがあり得る。そこで、露光装置100の起動後、初回のつなぎ処理時に座標つなぎ法を適用して位相オフセットを設定し、以降のつなぎ処理時には位相つなぎ法を適用する。そして、露光装置100のアイドル中又はロット先頭時等に、適宜、座標つなぎ法を実行して、位相オフセットを最新値に更新すると良い。
【0223】
ここで、ウエハステージWSTを加速駆動するとスケールが歪み、それによってエンコーダの計測誤差が発生することが、発明者等の研究の結果、最近になって判明した。すなわち、ウエハステージWSTが加速移動している際に、座標つなぎ法を適用して位相オフセットを設定すると、つなぎ誤差が発生し、位相オフセットの正確さが損なわれてしまう。従って、ウエハステージWSTが加速移動している際に発生するつなぎ処理時に、座標つなぎ法を適用して位相オフセットを設定することは、好ましくない。そこで、例えば露光装置100の起動時又はアイドル中、あるいはロット先頭時等に、全ての又は一部のエンコーダ(ヘッド)に対する位相オフセットを更新するためのシーケンスを実行することとする。ただし、このシーケンスでは、必ず、ウエハステージWSTを等速駆動する又はつなぎ位置に位置決めしたうえで、座標つなぎ法を実行して、正確な位相オフセットを設定する。そして、露光時及びアライメント計測時には、位相つなぎ法を適用してエンコーダを切り換えることにより、常に、高精度なウエハステージWSTの位置計測を保障することが可能になる。
【0224】
ところで、本実施形態では、ウエハステージWSTの位置座標は、主制御装置20により、例えば96μsecの時間間隔で制御されている。この制御サンプリング間隔毎に、位置サーボ制御系(主制御装置20の一部)が、ウエハステージWSTの現在位置を更新し、目標位置に位置決めするための推力指令値などを演算し、出力している。前述のように、ウエハステージWSTの現在位置は、干渉計又はエンコーダの計測値より、算出される。
【0225】
ここで、先に説明したように、干渉計とエンコーダとは干渉光の強度を計測する。その計測値は主制御装置20に転送される。主制御装置20は、干渉光の強度変化の回数(すなわち干渉光のフリンジの数)を数える。その計数値(カウント値)より、ウエハステージWSTの位置を算出する。従って、フリンジを見失わないよう、制御サンプリング間隔よりはるかに短い時間間隔(計測サンプリング間隔)で、干渉計とエンコーダの計測値を監視している。
【0226】
そこで、本実施形態では、主制御装置20は、ウエハステージWSTが有効ストローク範囲にいる間は常に、スケールの走査領域に対向しているすべてのエンコーダ(3つとは限らない)から、計測値を垂れ流しで受け取り続ける。そして、主制御装置20は、上述したエンコーダの切り換え動作(複数のエンコーダ間のつなぎ動作)を、制御サンプリング間隔毎に行われるウエハステージWSTの位置制御と同期して行っている。このようにすることで、電気的に高速なエンコーダの切り換え動作が不要となり、また、そのような高速な切り換え動作を実現するための高価なハードウェアを必ずしも設けなくても良いことになる。
【0227】
図20には、本実施形態における、ウエハステージWSTの位置制御、エンコーダの計測値の取り込み、及びエンコーダ切り換えのタイミングが概念的に示されている。図中の符号CSCKは、ウエハステージWSTの位置制御のサンプリングクロック(制御クロック)の発生タイミングを示し、符号MSCKは、エンコーダ(及び干渉計)の計測のサンプリングクロック(計測クロック)の発生タイミングを示す。また、符号CHは、図18(A)〜図18(E)で詳細に説明したエンコーダの切り換え(つなぎ)処理を模式的に示す。
【0228】
主制御装置20は、エンコーダ(ヘッド)の切り換え手順を、エンコーダの復帰とつなぎ処理の2段階に分けて実行する。図20に示される例に従って説明すると、まず、第1制御クロック時に作動しているエンコーダは、第1の組み合わせEnc1,Enc2,及びEnc3の3つとする。主制御装置20は、これらのエンコーダの計測値を監視し、ウエハステージWSTの位置座標(X,Y,θz)を算出している。次に、主制御装置20は、ウエハステージWSTの位置座標より、Xスケール及びYスケールの走査領域上にあるすべてのエンコーダを確認する。その中から、復帰を要するエンコーダEnc4を特定し、第2制御クロック時に復帰させる。この時点で、作動しているエンコーダは4つとなる。そして、作動しているエンコーダの中から、次の制御クロック時にウエハステージWSTの位置座標を算出するために計測値を監視するエンコーダを、ウエハステージWSTの位置座標に従って特定する。ここで、第2の組み合わせEnc2,Enc3,及びEnc4が特定されたとする。この特定された組み合わせが、前制御クロック時にウエハステージWSTの位置座標を算出するために使用されていた組み合わせと一致しているか確認する。この例では、第1の組み合わせの中のエンコーダEnc1と第2の組み合わせの中のエンコーダEnc4が異なる。そこで、第3制御クロック時に第2の組み合わせへのつなぎ処理CHを実行する。以降、主制御装置20は、第2の組み合わせEnc2,Enc3,及びEnc4の計測値を監視し、ウエハステージWSTの位置座標(X,Y,θz)を算出する。もちろん、組み合わせの変更がなければ、つなぎ処理CHは実行しない。監視対象から外れたエンコーダEnc1は、スケール上の走査領域から外れる第4制御クロック時に、停止される。
【0229】
主制御装置20は、ショットマップ(露光マップ)毎にエンコーダ切り換え処理をスケジューリングし、その結果をメモリ34に記憶している。従って、リトライ(やり直し)がなければ、ショットマップ毎に一定のスケジュール内容となる。しかし、実際にはリトライを考慮しなければならないので、主制御装置20は、露光動作を行いながら少し先のスケジュールを常に更新していくことが望ましい。
【0230】
なお、これまで、本実施形態におけるウエハステージWSTの位置制御に用いるエンコーダの切り換え方式の原理を説明するために、4つのエンコーダ(ヘッド)Enc1,Enc2,Enc3,及びEnc4を取り上げたが、エンコーダEnc1,Enc2はヘッドユニット62A,62CのYヘッド65,64、及びヘッドユニット62E,62FのYヘッド67,68のいずれかを、エンコーダEnc3はヘッドユニット62B,62DのXヘッド66を、エンコーダEnc4はYヘッド65,64,67,68、又はXヘッド66のいずれかを、代表的に示したものである。
【0231】
なお、これまでの説明では、説明を簡略化するために、主制御装置20が、ステージの制御、干渉計システム、エンコーダシステム及びそのヘッドの切り換え(つなぎ)などを含め、露光装置の構成各部の制御を行うものとしたが、これに限らず、上記の主制御装置20が行う制御の少なくとも一部を、複数の制御装置で分担して行っても良いことは勿論である。例えば、ステージの制御、干渉計システム、エンコーダシステム及びそのヘッドの切り換え(つなぎ)などを行なうステージ制御装置を、主制御装置20の配下に設けても良い。
【0232】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る露光装置100によると、エンコーダシステムのXエンコーダとYエンコーダとを少なくとも各1つ含む3つのエンコーダ(ヘッド)を用いて、ウエハステージWSTのXY平面(移動面)内における位置(θz回転を含む)が計測される。そして、主制御装置20により、ウエハステージWSTの移動に従って、ウエハステージWSTの位置計測に用いられるエンコーダ(ヘッド)が、前記3つのエンコーダからなる第1の組み合わせから、前記3つのエンコーダのうちの少なくとも1つが別のエンコーダに入れ替わった3つのエンコーダからなる第2の組み合わせに、切り換えられる。そして、この切り換えに際し、主制御装置20により、座標つなぎ法及び/又は位相つなぎ法を適用して、新たに使用されるエンコーダ(ヘッド)の計測値が初期設定される(計測値の初期値が設定される)。これにより、エンコーダ(ヘッド)の切り換えの前後で、初期値の設定に際しての計測単位以下の誤差を考慮しないレベルで見れば、エンコーダシステムの計測値より算出されるウエハステージWSTの位置座標が保存される。このように、ウエハステージWSTの移動に伴い、ウエハステージWSTの位置計測に用いられるエンコーダ(ヘッド)が絶えず切り換えられるにもかかわらず、切り換えの前後でウエハステージWSTの位置座標の正確なつなぎが可能になる。これにより、複数のエンコーダを切り換えながら、ウエハステージWSTを正確に2次元移動させることが可能になる。
【0233】
特に、主制御装置20が、座標つなぎ法を用いて新たに使用されるエンコーダ(ヘッド)の計測値の初期値を設定する場合には、エンコーダの切り換え(つなぎ)の前後でウエハステージの位置座標を保存することができる。
【0234】
一方、主制御装置20が、位相つなぎ法を用いて新たに使用されるエンコーダ(ヘッド)の計測値の初期値を設定する場合には、つなぎ処理を繰り返しても誤差の累積を防止することができる。そこで、露光装置100の起動時又はアイドル中、あるいはロット先頭時等に、全ての又は一部のエンコーダ(ヘッド)に対する位相オフセットを更新するためのシーケンスを実行する。ただし、このシーケンスでは、必ず、ウエハステージWSTを等速駆動する又はつなぎ位置に位置決めしたうえで、座標つなぎ法を実行して、正確な位相オフセットを設定する。そして、露光時及びアライメント計測時には、位相つなぎ法を適用してエンコーダを切り換えることにより、常に、高精度なウエハステージWSTの位置計測を保障することが可能になる。
【0235】
また、本実施形態に係る露光装置100によると、上述した手法により、複数のエンコーダを切り換えながら、精度良く駆動されるウエハステージWST上に載置されたウエハW上の複数のショット領域それぞれにレチクルRのパターンが転写形成されるので、そのウエハW上の各ショット領域に精度良くパターンを形成することが可能になる。特に、本実施形態では、レチクルR及び投影光学系PLを介してウエハWに照射される照明光ILとウエハWとの相対移動のために、上述した手法により、複数のエンコーダを切り換えながら、ウエハステージWSTが精度良く駆動される。従って、走査露光により、ウエハW上に精度良くパターンを形成することが可能になる。
【0236】
なお、上記実施形態で説明したエンコーダシステムなどの各計測装置の構成は一例に過ぎず、本発明がこれに限定されないことは勿論である。例えば、上記実施形態では、ウエハテーブル(ウエハステージ)上に格子部(Yスケール、Xスケール)を設け、これに対向してXヘッド、Yヘッドをウエハステージの外部に配置する構成のエンコーダシステムを採用した場合について例示したが、これに限らず、例えば米国特許出願公開第2006/0227309号明細書などに開示されているように、ウエハステージにエンコーダヘッドを設け、これに対向してウエハステージの外部に格子部(例えば2次元格子又は2次元に配置された1次元の格子部)を配置する構成のエンコーダシステムを採用しても良い。この場合において、Zヘッドもウエハステージに設け、その格子部の面を、Zヘッドの計測ビームが照射される反射面としても良い。
【0237】
また、上記実施形態では、例えばヘッドユニット62A,62Cの内部にエンコーダヘッドとZヘッドとが、別々に設けられている場合について説明したが、エンコーダヘッドとZヘッドとの機能を備えた単一のヘッドを、エンコーダヘッドとZヘッドの組に代えて用いても良い。
【0238】
なお、上記実施形態では、エンコーダとして、回折干渉方式の光学エンコーダを用いる場合について例示したが、本発明に係る移動体駆動方法及び移動体駆動システムは、かかる方式以外のエンコーダを用いる場合にも適用できることは勿論である。例えば、磁気エンコーダを用いても良い。
【0239】
また、上記実施形態では、ウエハステージWSTの位置計測が、干渉計システム及びエンコーダシステムで行なわれる場合について説明したが、これに限らず、計測ステージは勿論、レチクルステージRSTが2次元移動する場合、前述のエンコーダシステムと同様の構成のエンコーダシステムをさらに設けてレチクルステージRSTの位置情報を計測するとともに、必要に応じて前述の座標つなぎ及び/又は位相つなぎなどを用いて、ヘッドの切り換え、つなぎを前述と同様の手順で行なうようにしても良い。
【0240】
なお、上記実施形態ではノズルユニット32の下面と投影光学系PLの先端光学素子の下端面とがほぼ面一であるものとしたが、これに限らず、例えばノズルユニット32の下面を、先端光学素子の射出面よりも投影光学系PLの像面(すなわちウエハ)の近くに配置しても良い。すなわち、局所液浸装置8は上述の構造に限られず、例えば、欧州特許出願公開第1420298号明細書、国際公開第2004/055803号、国際公開第2004/057590号、国際公開第2005/029559号(対応米国特許出願公開第2006/0231206号明細書)、国際公開第2004/086468号(対応米国特許出願公開第2005/0280791号明細書)、特開2004−289126号公報(対応する米国特許第6,952,253号明細書)などに記載されているものを用いることができる。また、例えば国際公開第2004/019128号(対応米国特許出願公開第2005/0248856号明細書)に開示されているように、先端光学素子の像面側の光路に加えて、先端光学素子の物体面側の光路も液体で満たすようにしても良い。さらに、先端光学素子の表面の一部(少なくとも液体との接触面を含む)又は全部に、親液性及び/又は溶解防止機能を有する薄膜を形成しても良い。なお、石英は液体との親和性が高く、かつ溶解防止膜も不要であるが、蛍石は少なくとも溶解防止膜を形成することが好ましい。
【0241】
なお、上記実施形態では、液体として純水(水)を用いるものとしたが、本発明がこれに限定されないことは勿論である。液体としては、化学的に安定で、照明光ILの透過率が高く安全な液体、例えばフッ素系不活性液体を使用しても良い。このフッ素系不活性液体としては、例えばフロリナート(米国スリーエム社の商品名)が使用できる。このフッ素系不活性液体は冷却効果の点でも優れている。また、液体として、照明光ILに対する屈折率が、純水(屈折率は1.44程度)よりも高い、例えば1.5以上の液体を用いても良い。この液体としては、例えば、屈折率が約1.50のイソプロパノール、屈折率が約1.61のグリセロール(グリセリン)といったC−H結合あるいはO−H結合を持つ所定液体、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の所定液体(有機溶剤)、あるいは屈折率が約1.60のデカリン(Decalin: Decahydronaphthalene)などが挙げられる。あるいは、これら液体のうち任意の2種類以上の液体が混合されたものであっても良いし、純水にこれら液体の少なくとも1つが添加(混合)されたものであっても良い。あるいは、液体としては、純水に、H+、Cs+、K+、Cl−、SO42−、PO42−等の塩基又は酸を添加(混合)したものであっても良い。更には、純水にAl酸化物等の微粒子を添加(混合)したものであっても良い。これら液体は、ArFエキシマレーザ光を透過可能である。また、液体としては、光の吸収係数が小さく、温度依存性が少なく、投影光学系(先端の光学部材)、及び/又はウエハの表面に塗布されている感応材(又は保護膜(トップコート膜)あるいは反射防止膜など)に対して安定なものであることが好ましい。また、F2レーザを光源とする場合は、フォンブリンオイルを選択すれば良い。さらに、液体としては、純水よりも照明光ILに対する屈折率が高い液体、例えば屈折率が1.6〜1.8程度のものを使用しても良い。液体として、超臨界流体を用いることも可能である。また、投影光学系PLの先端光学素子を、例えば石英(シリカ)、あるいは、フッ化カルシウム(蛍石)、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化リチウム、及びフッ化ナトリウム等のフッ化化合物の単結晶材料で形成しても良いし、石英や蛍石よりも屈折率が高い(例えば1.6以上)材料で形成しても良い。屈折率が1.6以上の材料としては、例えば、国際公開第2005/059617号に開示される、サファイア、二酸化ゲルマニウム等、あるいは、国際公開第2005/059618号に開示される、塩化カリウム(屈折率は約1.75)等を用いることができる。
【0242】
また、上記実施形態で、回収された液体を再利用するようにしても良く、この場合は回収された液体から不純物を除去するフィルタを液体回収装置、又は回収管等に設けておくことが望ましい。
【0243】
なお、上記実施形態では、露光装置が液浸型の露光装置である場合について説明したが、これに限られるものではなく、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置にも採用することができる。
【0244】
また、上記実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式等の走査型露光装置に本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置をエンコーダで計測することにより、同様に、空気揺らぎに起因する位置計測誤差の発生を殆ど零にすることができる。この場合、エンコーダの計測値の短期変動を干渉計の計測値を用いて補正する補正情報とエンコーダの計測値とに基づいて、ステージを高精度に位置決めすることが可能になり、結果的に高精度なレチクルパターンの物体上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置、プロキシミティー方式の露光装置、又はミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明は適用することができる。さらに、例えば特開平10−163099号公報及び特開平10−214783号公報(対応する米国特許第6,590,634号明細書)、特表2000−505958号公報(対応米国特許第5,969,441号明細書)、米国特許第6,208,407号明細書などに開示されているように、複数のウエハステージを備えたマルチステージ型の露光装置にも本発明を適用できる。
【0245】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。さらに、投影光学系PLを介して照明光ILが照射される露光領域IAは、投影光学系PLの視野内で光軸AXを含むオンアクシス領域であるが、例えば国際公開第2004/107011号に開示されるように、複数の反射面を有しかつ中間像を少なくとも1回形成する光学系(反射系又は反屈系)がその一部に設けられ、かつ単一の光軸を有する、いわゆるインライン型の反射屈折系と同様に、その露光領域は光軸AXを含まないオフアクシス領域でも良い。また、前述の照明領域及び露光領域はその形状が矩形であるものとしたが、これに限らず、例えば円弧、台形、あるいは平行四辺形などでも良い。
【0246】
なお、上記実施形態の露光装置の光源は、ArFエキシマレーザに限らず、KrFエキシマレーザ(出力波長248nm)、F2レーザ(出力波長157nm)、Ar2レーザ(出力波長126nm)、Kr2レーザ(出力波長146nm)などのパルスレーザ光源、あるいはg線(波長436nm)、i線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプなどを用いることも可能である。また、YAGレーザの高調波発生装置などを用いることもできる。この他、例えば国際公開第99/46835号(対応する米国特許第7,023,610号明細書)に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0247】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、近年、70nm以下のパターンを露光するために、SOR又はプラズマレーザを光源として、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を発生させるとともに、その露光波長(例えば13.5nm)の下で設計されたオール反射縮小光学系、及び反射型マスクを用いたEUV露光装置の開発が行われている。この装置においては、円弧照明を用いてマスクとウエハを同期走査してスキャン露光する構成が考えられるので、かかる装置にも本発明を好適に適用することができる。この他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
【0248】
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。
【0249】
また、例えば国際公開第01/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハ上に形成することによって、ウエハ上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0250】
さらに、例えば特表2004−519850号公報(対応する米国特許第6,611,316号明細書)に開示されているように、2つのレチクルパターンを投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0251】
また、物体上にパターンを形成する装置は、前述の露光装置(リソグラフィシステム)に限られず、例えばインクジェット方式にて物体上にパターンを形成する装置にも本発明を適用することができる。
【0252】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものではなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。
【0253】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0254】
なお、本発明の移動体駆動方法及び移動体駆動システムは、露光装置に限らず、その他の基板の処理装置(例えば、レーザリペア装置、基板検査装置その他)、あるいはその他の精密機械における試料の位置決め装置、ワイヤーボンディング装置等の平面内で移動するステージ等の移動体を備えた装置にも広く適用できる。
【0255】
なお、上記実施形態で引用した露光装置などに関する全ての公報、国際公開、米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書の開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【0256】
半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、シリコン材料からウエハを形成するステップ、前述した実施形態の露光装置(パターン形成装置)によりレチクル(マスク)に形成されたパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、及び検査ステップ等を経て製造される。
【産業上の利用可能性】
【0257】
以上説明したように、本発明の露光方法及び装置、並びにデバイス製造方法は、半導体素子又は液晶表示素子などの電子デバイスを製造するのに適している。
【符号の説明】
【0258】
10…照明系、11…レチクルステージ駆動系、20…主制御装置、39Y1,39Y2…Yスケール、39X1,39X2…Xスケール、64…Yヘッド、66…Xヘッド、67,68…Yヘッド、70A〜70F…エンコーダ、100…露光装置、150…エンコーダシステム、R…レチクル、RST…レチクルステージ、W…ウエハ、WST…ウエハステージ、WTB…ウエハテーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光学系を介して基板を露光する露光装置であって、
前記基板を保持する基板ステージと、
前記基板ステージを駆動する駆動システムと、
前記投影光学系の光軸と直交する所定面と実質的に平行に配置される格子部に対して、それぞれ前記所定面と交差する方向から計測ビームを照射する複数のヘッドを有し、前記所定面内で互いに直交する第1、第2方向に関する前記基板ステージの位置情報を計測する計測システムと、
前記計測システムで計測される位置情報に基づいて前記駆動システムによる前記基板ステージの駆動を制御するとともに、前記複数のヘッドのうち前記格子部と対向する3つのヘッドを用いる前記基板ステージの駆動制御を、前記3つのヘッドの1つの代わりに、前記3つのヘッドと異なる別のヘッドを含む3つのヘッドを用いる前記基板ステージの駆動制御に切り換えるために、その切換前に用いられる前記3つのヘッドによって計測される位置情報に基づいて、前記別のヘッドによって計測される位置情報を決定する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記駆動制御の切換のための前記位置情報の決定を、前記別のヘッドにおける計数値と位相オフセットのうち、前記計数値を再設定する第1決定法と、前記位相オフセットを再設定する第2決定法とを切り替えて実行可能である露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記基板ステージの移動によって繰り返して行う前記駆動制御の切換のために前記第1決定法を用いて前記位置情報を決定するとともに、前記第1決定法を用いる前記駆動制御の切換の前後の少なくとも一方で、前記駆動制御の切換のために前記第2決定法を用いて前記位置情報を決定する露光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の露光装置において、
前記第1決定法では、前記位相オフセットが前記切換前から引き続き使用され、
前記制御装置は、前記第1決定法を用いる前記駆動制御の切換に続いて前記第2決定法を用いる前記駆動制御の切換を行って、前記別のヘッドにおける前記位相オフセットを更新する露光装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記基板の露光動作において前記駆動制御の切換のために前記第1決定法を用いて前記位置情報を決定し、前記露光動作以外で前記駆動制御の切換のために前記第2決定法を用いて前記位置情報を決定する露光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の露光装置において、
前記基板のマークを検出するマーク検出系を、さらに備え、
前記制御装置は、前記マークの検出動作において前記駆動制御の切換のために前記第1決定法を用いて前記位置情報を決定する露光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記基板ステージの加速度が実質的に零の状態で、前記第2決定法を用いて前記駆動制御の切換のための前記位置情報の決定を行う露光装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記第1決定法では、前記位相オフセットが前記切換前から引き続き使用され、
前記第2決定法では、前記駆動制御の切換前後で前記位置情報が実質的に維持されるように前記位相オフセットが再設定される露光装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記別のヘッドによって計測される位置情報は、前記切換前に用いられる前記1つのヘッドと、前記切換後に用いられる前記別のヘッドとの両方が前記格子部と対向した状態で決定される露光装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記別のヘッドによって計測される位置情報は、前記切換前に用いられる前記1つのヘッドによる前記位置情報の計測が切れる前に決定される露光装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記別のヘッドによって計測される位置情報は、前記切換前に用いられる前記1つのヘッドの計測ビームが前記格子部から外れる前に決定される露光装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記駆動制御は、前記切換前に用いられる前記3つのヘッドと、前記切換後に用いられる前記別のヘッドとが前記格子部と対向した状態で切り換えられる露光装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記格子部は、それぞれ反射型の格子が形成される4つのスケールを含み、
前記別のヘッドによって計測される位置情報は、前記切換前に用いられる前記3つのヘッドと、前記切換後に用いられる前記別のヘッドとの4つがそれぞれ前記4つのスケールと対向した状態で決定される露光装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記複数のヘッドと前記格子部とは一方が前記基板ステージに設けられ、他方が前記基板ステージの外部に設けられ、前記基板ステージの移動によって前記複数のヘッドと前記格子部との位置関係が変化する露光装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記基板ステージが対向して配置される下面側に回収口を有するノズルユニットを含み、前記ノズルユニットを介して供給される液体によって前記投影光学系の下に形成される液浸領域から、前記回収口を介して液体を回収する局所液浸装置を、さらに備え、
前記ノズルユニットは、前記液浸領域の液体と接する、前記投影光学系の光学素子を取り囲むように設けられ、前記計測システムは、前記ノズルユニットの周囲に配置され、
前記基板は、前記投影光学系と前記液浸領域の液体とを介して露光される露光装置。
【請求項15】
投影光学系を介して基板を露光する露光方法であって、
前記投影光学系の光軸と直交する所定面と実質的に平行に配置される格子部に対して、それぞれ前記所定面と交差する方向から計測ビームを照射する複数のヘッドを有する計測システムによって、前記所定面内で互いに直交する第1、第2方向に関する位置情報が計測される基板ステージで前記基板を保持することと、
前記基板ステージで保持される前記基板を移動するために、前記計測システムで計測される位置情報に基づいて前記基板ステージの駆動を制御することと、
前記複数のヘッドのうち前記格子部と対向する3つのヘッドを用いる前記基板ステージの駆動制御を、前記3つのヘッドの1つの代わりに、前記3つのヘッドと異なる別のヘッドを含む3つのヘッドを用いる前記基板ステージの駆動制御に切り換えるために、その切換前に用いられる前記3つのヘッドによって計測される位置情報に基づいて、前記別のヘッドによって計測される位置情報を決定することと、を含み、
前記駆動制御の切換のための前記位置情報の決定では、前記別のヘッドにおける計数値と位相オフセットのうち、前記計数値を再設定する第1決定法と、前記位相オフセットを再設定する第2決定法とが切り替えられて用いられる露光方法。
【請求項16】
請求項15に記載の露光方法において、
前記基板ステージの移動によって繰り返して行われる前記駆動制御の切換のために前記第1決定法を用いて前記位置情報が決定されるとともに、前記第1決定法が用いられる前記駆動制御の切換の前後の少なくとも一方で、前記駆動制御の切換のために前記第2決定法を用いて前記位置情報が決定される露光方法。
【請求項17】
請求項16に記載の露光方法において、
前記第1決定法では、前記位相オフセットが前記切換前から引き続き使用され、
前記第1決定法を用いる前記駆動制御の切換に続いて前記第2決定法を用いる前記駆動制御の切換が行われて、前記別のヘッドにおける前記位相オフセットが更新される露光方法。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記基板の露光動作では、前記駆動制御の切換のために前記第1決定法を用いて前記位置情報が決定され、前記露光動作以外で前記駆動制御の切換のために前記第2決定法を用いて前記位置情報が決定される露光方法。
【請求項19】
請求項18に記載の露光方法において、
前記基板のマークの検出動作では、前記駆動制御の切換のために前記第1決定法を用いて前記位置情報が決定される露光方法。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記基板ステージの加速度が実質的に零の状態で、前記第2決定法を用いて前記駆動制御の切換のための前記位置情報の決定が行われる露光方法。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記第1決定法では、前記位相オフセットが前記切換前から引き続き使用され、
前記第2決定法では、前記駆動制御の切換前後で前記位置情報が実質的に維持されるように前記位相オフセットが再設定される露光方法。
【請求項22】
請求項15〜21のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記別のヘッドによって計測される位置情報は、前記切換前に用いられる前記1つのヘッドと、前記切換後に用いられる前記別のヘッドとの両方が前記格子部と対向した状態で決定される露光方法。
【請求項23】
請求項15〜22のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記別のヘッドによって計測される位置情報は、前記切換前に用いられる前記1つのヘッドによる前記位置情報の計測が切れる前に決定される露光方法。
【請求項24】
請求項15〜23のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記別のヘッドによって計測される位置情報は、前記切換前に用いられる前記1つのヘッドの計測ビームが前記格子部から外れる前に決定される露光方法。
【請求項25】
請求項15〜24のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記駆動制御は、前記切換前に用いられる前記3つのヘッドと、前記切換後に用いられる前記別のヘッドとが前記格子部と対向した状態で切り換えられる露光方法。
【請求項26】
請求項15〜25のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記格子部は、それぞれ反射型の格子が形成される4つのスケールを含み、
前記別のヘッドによって計測される位置情報は、前記切換前に用いられる前記3つのヘッドと、前記切換後に用いられる前記別のヘッドとの4つがそれぞれ前記4つのスケールと対向した状態で決定される露光方法。
【請求項27】
請求項15〜26のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記複数のヘッドと前記格子部とは一方が前記基板ステージに設けられ、他方が前記基板ステージの外部に設けられ、前記基板ステージの移動によって前記複数のヘッドと前記格子部との位置関係が変化する露光方法。
【請求項28】
請求項15〜27のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記基板ステージが対向して配置される下面側に回収口を有するノズルユニットを介して供給される液体によって前記投影光学系の下に液浸領域を形成するとともに、前記回収口を介して前記液浸領域から液体を回収し、
前記ノズルユニットは、前記液浸領域の液体と接する、前記投影光学系の光学素子を取り囲むように設けられ、前記計測システムは、前記ノズルユニットの周囲に配置され、
前記基板は、前記投影光学系と前記液浸領域の液体とを介して露光される露光方法。
【請求項29】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
前記露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項30】
請求項15〜28のいずれか一項に記載の露光方法を用いて基板を露光することと、
前記露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−58796(P2013−58796A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−258155(P2012−258155)
【出願日】平成24年11月27日(2012.11.27)
【分割の表示】特願2009−524397(P2009−524397)の分割
【原出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】