説明

露光装置

【課題】移動方向に直交する方向に複数個の露光対象領域が設けられた露光対象基材を一方向に連続的に供給して露光する露光装置において、露光対象基材がその移動方向に直交する方向に伸縮した場合に、マスクの位置を精度よく補正できる露光装置を提供する。
【解決手段】フィルム2には、その移動方向に直交する方向に複数の露光対象領域4が設けられている。光源から出射された露光光は、フィルム移動方向に直交する方向に複数枚配列されたマスク3のパターンを介してフィルムに照射される。フィルム2の露光対象領域間及び両端部には、伸縮確認用マーク2cが設けられており、この伸縮確認用マーク2cをマスクアライメントマークと共にカメラ51により観察し、制御部7は、伸縮確認用マーク2cがフィルム移動方向に直交する方向にずれたときに、駆動部6により、このずれに応じてマスク3の位置を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動方向に直交する方向に複数個の露光対象領域が設けられたフィルム等の露光対象基材を一方向に連続的に供給して露光する露光装置に関し、特に、露光対象基材がその移動方向に直交する方向に伸縮した場合に、マスクの位置を精度よく補正できる露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶表示装置等のガラス基板の表面に貼付される偏光フィルムは、図4に示すような露光装置により製造される。この図4に示す露光装置においては、表面に所定の露光材料が塗布された露光対象領域4が設けられたフィルム2が白矢印方向に連続的に供給され、図4における紙面手前方向から出射された露光光を複数本のスリット31が設けられたマスク3に透過させて、フィルム2上の露光材料に露光光をスキャンすることにより、フィルム移動方向に延びるように、帯状の露光領域を形成する(例えば、特許文献1)。この図4に示す例においては、露光対象領域4はフィルム移動方向に直交する方向に2領域設けられており、露光対象領域4間には、偏光フィルムとして使用されない領域が残されている。
【0003】
マスク3は、フィルム移動方向の上流側及び下流側に、夫々フィルム移動方向に直交する方向に複数枚が適長間隔をおいて配置されてマスク列が構成されており、フィルム移動方向からみたときに、上流側のマスク列の隣接するマスク間に下流側のマスクが配置され、複数枚のマスクが千鳥状に配置されている。そして、図4(a)における左右夫々3枚のマスク3が、図4における左右の各露光対象領域4に対応している。各マスク3には、露光光を透過させるスリット31とマスクアライメントマークとが設けられている。マスクアライメントマークは、例えばフィルム移動方向に直交する方向に延びるスリット32である。そして、露光開始時のマスク3の初期位置は、例えばフィルム2の先端に設けられた露光位置決定用マーク2bにより決定される。即ち、図4(b)に示すように、各マスク3の上方には、スリット32及び露光位置決定用マーク2bを検出するカメラ51が設けられており、各カメラ51による検出画像は制御部7に送信される。そして、制御部7は、例えばマスクアライメントマークとしてのスリット32を介して検出される露光位置決定用マーク2bの位置が、スリット32の中央に位置するように、例えばアクチュエータ等の駆動部6を制御する。これにより、露光開始時のマスク3の初期位置が決定される。
【0004】
また、フィルム移動方向における上流側には、アライメントマーカ8が設けられており、フィルム2の側部に蛇行検出用マーク2aを形成する。そして、フィルム2の側部付近における上方には、フィルム移動方向に直交する方向に配列されたマスク列と並ぶように、カメラ52が設けられており、フィルム2の側部に形成された蛇行検出用マーク2aを検出するように構成されている。
【0005】
マスク3の各スリット31は、フィルム2上への露光光照射領域が例えば液晶表示装置の1画素に対応する幅になるようにフィルム移動方向に延び、フィルム移動方向に直交する方向にスリット幅と同一ピッチで複数本設けられてスリット列が構成されており、1枚のマスク3につき2列のスリット列がフィルム移動方向に配置され、各スリット列には、相互に偏光方向が異なる露光光が照射される。そして、このスリット列の各スリット31は、フィルム移動方向からみたときに、相互に他方のスリット列のスリット31間に位置し、全てのスリット31が隣接するように配置されている。また、フィルム移動方向からみたときに、各マスク3のフィルム移動方向に直交する方向における一端部のスリット31は、フィルム移動方向に隣接する他のマスク3の他端部のスリットと隣接するように配置されている。
【0006】
以上のように構成された複数枚のマスク3及び各マスクのスリット31により、露光の際には、図5に示すように、各スリット31に対応するように帯状の露光領域21が複数本相互に隣接するように形成されていく。そして、偏光方向が相互に異なる露光光が照射されることにより、隣接する露光領域21間では、例えば配向方向が相互に異なる配向膜が形成されていく。このような露光装置においては、露光時にフィルム2が蛇行すると、これに伴い、露光光の照射位置が変化するため、例えば図5(b)に示すように、カメラ52により検出した蛇行検出用マーク2aの位置に基づいて、制御部7は、駆動部6により、マスク3の位置をフィルム2の蛇行量に合わせてアライメントする。このように、図4及び図5に示す従来の露光装置においては、フィルム2の先端に設けられた露光位置決定用マーク2bにより、マスク3の初期位置を決定し、露光時においては、フィルム2の蛇行量に合わせてマスク位置をアライメントしている。
【0007】
特許文献2には、ステージ上に載置された基板を露光する露光装置が開示されており、ステージに設けられたアライメントマークをその上方に配置したカメラで検出し、また、ステージ位置をレーザ測定器で検出して、双方の検出結果を比較することにより、マスク位置のずれを検出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/113933号
【特許文献2】特開第2004−259870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の露光装置においては、図6に示すように、例えばフィルム等の露光対象基材が露光時に局所的に伸縮(収縮、膨張)した場合には、マスク3に対する露光対象領域4の相対的位置が変化するが、これを補正することができない。即ち、従来の露光装置においては、フィルム2の先端に設けられた露光位置決定用マーク2bにより、マスク3の初期位置を決定し、露光時には、フィルム2の蛇行量を補正するように全てのマスク3をフィルム2の蛇行量だけ移動させている。よって、露光時にフィルム等の露光対象基材が局所的に伸縮した場合においては、この伸縮に起因するマスク3と露光対象領域4との相対的位置ずれを補正できない。よって、例えばフィルム移動方向及び/又はフィルム移動方向に直交する方向に配置された複数枚のマスク3により1の露光対象領域4を露光する場合においては、フィルム移動方向及び/又はフィルム移動方向に直交する方向に隣接するマスク3間のフィルム移動方向に直交する方向における距離が変化し、これにより、未露光又は過露光の領域が生じる露光不良となる。
【0010】
特許文献2に開示された露光装置は、連続的に供給されるフィルム等の露光対象基材を露光するものではない。よって、図4乃至図6に示すような露光装置に特許文献2の技術を適用することはできない。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、移動方向に直交する方向に複数個の露光対象領域が設けられた露光対象基材を一方向に連続的に供給して露光する露光装置において、露光対象基材がその移動方向に直交する方向に伸縮した場合に、マスクの位置を精度よく補正できる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る露光装置は、露光対象基材を第1方向に連続的に搬送しつつ前記第1方向に直交する第2方向に設けられた露光パターンを露光する露光装置において、
露光光を出射する光源と、
第2方向に関して分割され全体で前記露光パターンを構成する分割パターンが夫々形成された複数個のマスクと、
前記マスクに設けられたマスクアライメントマーク及び前記露光対象基材に設けられた伸縮確認用マークを検出する検出部と、
前記マスクを前記第2方向に駆動する駆動部と、
前記検出部の検出結果を基に前記駆動部を制御する制御部と、
を有し、
前記伸縮確認用マークは、前記露光対象基材の前記第2方向に並ぶ複数個の露光対象領域間及び前記第2方向の両端部に設けられており、
前記制御部は、前記検出部により検出される前記伸縮確認用マークの位置が前記第2方向にずれて前記伸縮確認用マークの間隔が変動したときに、前記マスクの位置を前記伸縮確認用マークのずれに応じて移動させるように前記駆動部を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る露光装置においては、例えば、前記露光対象基材の前記第2方向の一端部に設けられた伸縮確認用マークは、前記露光対象基材の蛇行検出用マークとしても機能する。この場合に、例えば、前記制御部は、前記検出部により検出される全ての前記伸縮確認用マークの位置が前記第2方向に同一量ずれて相互間の間隔が一定のときに、全ての前記マスクの位置を前記第2方向に同一量ずらせて、前記露光対象基材の蛇行を補正するように前記駆動部を制御する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る露光装置は、露光対象基材の露光対象領域間及び第2方向の両端部に設けられた伸縮確認用マークを、検出部によりマスクアライメントマークと共に検出し、制御部は、検出部により検出される伸縮確認用マークの位置が第2方向にずれたときには、第2方向に複数枚配列されたマスクの位置を伸縮確認用マークのずれに応じて移動させるように駆動部を制御する。これにより、露光対象基材が第2方向に伸縮した場合においても、これを精度よく補正することができ、露光不良の発生を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a),(b)は、フィルムが伸縮した場合にマスク位置を補正する工程を示す図である。
【図2】(a),(b)は、本発明の実施形態に係る露光装置を示す図である。
【図3】(a),(b)は、本発明の実施形態に係る露光装置において、フィルムの蛇行を補正する工程を示す図である。
【図4】(a),(b)は、従来の露光装置において、マスクの初期位置を決定する工程を示す図である。
【図5】(a)は、従来の露光装置による露光によりフィルムに形成される露光領域を示す図、(b)はフィルムの蛇行を補正する工程を示す図である。
【図6】フィルムの伸縮を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図2(a),図2(b)は、本発明の実施形態に係る露光装置を示す図である。図2に示すように、本実施形態に係る露光装置には、図4に示す従来の露光装置と同様に、表面に所定の露光材料(例えば配向膜材料)が塗布されて2つの露光対象領域4が設けられたフィルム2が図2の紙面手前方向に連続的に供給され、図2における上方から光源により出射された露光光を、複数本のスリット31が設けられたマスク3に透過させて、フィルム2上の露光材料に露光光をスキャンすることにより、フィルム移動方向に延びるように、帯状の露光領域を形成する。また、図2に示すように、露光対象領域4間には、偏光フィルムとして使用されない領域が残されている。
【0017】
マスク3は、フィルム移動方向の上流側及び下流側に、夫々フィルム移動方向に直交する方向に3枚が適長間隔をおいて配置されてマスク列が構成されており、フィルム移動方向からみたときに、上流側のマスク列の隣接するマスク間に下流側のマスクが配置され、6枚のマスク3が千鳥状に配置されている。そして、フィルム移動方向に直交する方向における一端部側の3枚のマスク3が図2における右側の露光対象領域4に対応し、他端部側の3枚のマスク3が左側の露光対象領域4に対応している。各マスク3には、露光光が透過されるスリット31と、例えばフィルム移動方向に直交する方向に延びるマスクアライメントマークとしてのスリット32とが設けられている。そして、露光開始時においては、図4乃至図6に示す従来の露光装置と同様に、マスク3の初期位置は、例えばフィルム2の先端に設けられた露光位置決定用マーク2bにより決定される。図2に示すように、各マスク3の上方には、例えば2焦点型のカメラ51が設けられており、焦点位置がフィルム2の表面及びマスク3の表面の位置になるように調節されている。各カメラ51による検出画像は制御部7に送信される。そして、制御部7は、例えばマスクアライメントマークのスリット32を介して検出される露光位置決定用マーク2bの位置が、フィルム移動方向に直交する方向において、スリット32の中心に位置するように、例えばアクチュエータ等の駆動部6を制御する。これにより、露光開始時のマスク3の初期位置が決定される。
【0018】
フィルム移動方向における上流側には、図4及び図5に示す従来の露光装置と同様に、アライメントマーカ8が設けられており、フィルム2の側部に蛇行検出用マーク2aを形成する。そして、フィルム2の側部付近における上方には、フィルム移動方向に直交する方向に配列されたマスク列と並ぶように、カメラ52が設けられており、フィルム2の側部に形成された蛇行検出用マーク2aを検出するように構成されている。
【0019】
本実施形態においては、フィルム移動方向における上流側には、上記アライメントマーカ8に加えて、3台の第2アライメントマーカ9が設けられており、各第2アライメントマーカにより、フィルム2の露光対象領域4間及びフィルム移動方向に直交する方向における端部に伸縮確認用マーク2cを形成できるように構成されている。そして、前記カメラ51により、伸縮確認用マーク2cを検出し、検出画像は、制御部7に送信されるように構成されている。そして、図1(a)に示すように、カメラ51により検出される伸縮確認用マーク2cの位置がフィルム移動方向に直交する方向にずれたときには、制御部7は、図1(b)に示すように、駆動部6により、マスク3をフィルム移動方向に直交する方向に駆動できるように構成されている。
【0020】
マスク3の各スリット31は、フィルム2上への露光光照射領域が例えば液晶表示装置の1画素に対応する幅になるようにフィルム移動方向に延び、フィルム移動方向に直交する方向にスリット幅と同一ピッチで複数本設けられてスリット列が構成されており、1枚のマスク3につき2列のスリット列がフィルム移動方向に配置され、各スリット列には、相互に偏光方向が異なる露光光が照射される。そして、このスリット列の各スリット31は、フィルム移動方向からみたときに、相互に他方のスリット列のスリット31間に位置し、全てのスリット31が隣接するように配置されている。また、フィルム移動方向からみたときに、1の露光対象領域4に対応する3枚のマスク3は、各マスク3のフィルム移動方向に直交する方向における一端部のスリット31が、フィルム移動方向に隣接する他のマスク3の他端部のスリット31と隣接するように配置されている。
【0021】
このように構成された複数枚のマスク3及び各マスクのスリット31により、露光の際には、図5に示すように、各スリット31に対応するように帯状の露光領域21を複数本、相互に隣接するように形成する。そして、露光時にフィルム2が蛇行した場合においては、カメラ52により検出した蛇行検出用マーク2aの位置に基づいて、制御部7は、駆動部6により、マスク3の位置をフィルム2の蛇行量に合わせてアライメントするように構成されている。
【0022】
次に、本実施形態に係る露光装置の動作について説明する。露光対象のフィルム2は、例えば供給リールにロール状に巻き取られた状態から、露光装置内に供給される。フィルム2の先端には、マスク3の初期位置を決定する露光位置決定用マーク2bが予め設けられているか、又は露光装置に供給された後で付される。フィルム2の側部には、アライメントマーカ8により、蛇行検出用マーク2aが付され、フィルム2の露光対象領域4間及びフィルム移動方向に直交する方向における端部には、第2アライメントマーカ9により、伸縮確認用マーク2cが付される。蛇行検出用マーク2a及び伸縮確認用マーク2cが付されたフィルム2は、搬送により、フィルム移動方向における上流側のマスク3の下方に到達する。
【0023】
そして、フィルム2の先端に付された露光位置決定用マーク2bがスリット32の下方に到達したときに、カメラ51は、露光位置決定用マーク2bを例えばマスクアライメントマークのスリット32を介して検出し、これらのマークの検出画像が制御部7に送信される。このとき、例えば露光位置決定用マーク2bの位置が、フィルム移動方向に直交する方向において、スリット32の中心に位置する場合においては、制御部7は駆動部6によるマスク位置の調節を行わない。一方、露光位置決定用マーク2bの位置が、フィルム移動方向に直交する方向において、スリット32の中心からずれている場合においては、制御部7は、駆動部6を制御してマスク3をフィルム移動方向に直交する方向に移動させることにより、スリット32の中心を露光位置決定用マーク2bの位置に合わせる。これにより、露光開始時のマスク3の初期位置が決定される。
【0024】
その後、フィルム2は、搬送により、上流側マスク3のスリット31の下方に到達し、露光が開始される。先ず、マスク3のフィルム移動方向上流側のスリット列に透過された露光光の照射により、フィルム2の表面の配向材料膜が照射された露光光の偏光方向に応じて光配向して配向膜が形成され、帯状の露光領域21が例えば表示装置の画素幅と同一の幅で、また、表示装置の画素幅と同一の幅ずつ離隔して形成されていく。そして、この露光領域間の未露光の領域には、マスク3のフィルム移動方向下流側のスリット列に透過された露光光が照射されて露光される。この露光光は、前記上流側のスリット列に透過された露光光とは偏光方向が異なるため、隣接する露光領域間で配向方向が異なる配向膜が交互に形成される。
【0025】
露光光を照射した状態で、フィルム2を連続的に供給して露光する間には、カメラ51により、フィルム2の露光対象領域4間及びフィルム移動方向に直交する方向における端部に形成された伸縮確認用マーク2cを検出し、制御部7は、この検出画像に基づいて駆動部6を制御する。例えば図1(a)に示すように、フィルム2が局所的に収縮及び/又は膨張した場合には、カメラ51により検出される伸縮確認用マーク2cの位置が移動する。制御部7は、カメラ51により検出される伸縮確認用マーク2cの位置がずれたことを検出すると、例えば伸縮確認用マーク2cの移動量に基づいて、又はこの移動量から算出されるフィルム2の膨張率に基づいて、マスク3を移動させるように駆動部6を制御する。例えば図1(a)に示すように、露光対象領域4のうち、図1(a)における右側の露光対象領域4が膨張した場合においては、この露光対象領域4に対応する2枚のマスク3の位置を補正しないと、露光対象領域4に対する相対的位置がずれて、露光不良が生じる。しかし、本実施形態においては、図1(b)に示すように、制御部7は、この膨張した露光対象領域4の外方に設けられた2本の伸縮確認用マーク2cの位置がずれたことを検出すると、駆動部6により、膨張した露光対象領域4に対応する2枚のマスク3を夫々移動させて、露光する領域を調節する。よって、フィルム2の伸縮に伴う露光不良の発生を確実に防止できる。なお、マスク3の移動量は、例えばフィルム移動方向に直交する方向におけるスリット32の中心位置の移動量をカメラ51により検出することができる。
【0026】
フィルム移動方向上流側のマスク列により帯状の露光領域21が形成されたフィルム2は、やがてフィルム移動方向下流側のマスク列の下方に到達する。この位置においても、上流側のマスク列と同様の露光が行われる。即ち、フィルム移動方向において、フィルム2の先端に付された露光位置決定用マーク2bがスリット32の下方に到達したときに、カメラ51は、露光位置決定用マーク2bを例えばマスクアライメントマークのスリット32を介して検出し、これらのマークの検出画像が制御部7に送信され、制御部7は駆動部6によるマスク位置の調節を行って露光開始時のマスク3の初期位置が決定される。その後、フィルム移動方向に配置された2列のスリット列に透過された相互に偏光方向が異なる露光光の照射により、例えば表示装置の画素幅と同一の幅で、且つ隣接する露光領域間で配向方向が異なる配向膜が交互に形成される。そして、フィルム移動方向における下流側のマスク列においても、カメラ51により、フィルム2の露光対象領域4間及びフィルム移動方向に直交する方向における端部に形成された伸縮確認用マーク2cを検出し、制御部7は、この検出画像に基づいて駆動部6を制御する。例えば、フィルム2が局所的に収縮及び/又は膨張した場合には、制御部7は、カメラ51により検出される伸縮確認用マーク2cの位置がずれたことを検出し、例えば伸縮確認用マーク2cの移動量に基づいて、又はこの移動量から算出されるフィルム2の膨張率に基づいて、マスク3を移動させるように駆動部6を制御する。マスク3の移動量は、例えばフィルム移動方向に直交する方向におけるスリット32の中心位置の移動量をカメラ51により検出することができる。よって、露光中にフィルム2が局所的に膨張及び/又は収縮した場合においても、駆動部6により、膨張及び/又は収縮した露光対象領域4に対応する2枚のマスク3を夫々移動させて、露光する領域を調節するため、フィルム2の伸縮に伴う露光不良の発生を防止できる。
【0027】
以上のような露光において、フィルム2の移動方向に直交する方向への蛇行は、マスクのスリット32及び伸縮確認用マーク2cを検出するカメラ51による検出画像と、フィルム2の側部付近における上方に設けられたカメラ52による検出画像とにより検出し、アライメントする。図3はフィルム2が蛇行した場合にマスク位置を補正する工程を示す図である。
【0028】
図3(a)に示すように、蛇行検出用マーク2aの位置がフィルム移動方向に直交する方向(第2方向)にずれた場合に、従来の露光装置においては、フィルム側部に蛇行検出用マーク2aのみしか設けられていないため、蛇行検出用マーク2aの位置ずれの原因がフィルム2の伸縮に伴って発生したか、又は蛇行により発生したかを検出できない。しかし、本実施形態においては、蛇行検出用マーク2aに加えて複数本の伸縮確認用マーク2cが設けられているので、これらのマークをカメラ51,52により検出することにより、蛇行検出用マーク2aの位置ずれがフィルム2の伸縮に伴って発生したか、又は蛇行により発生したかを検出できる。即ち、本実施形態においては、カメラ51により検出される全ての伸縮確認用マーク2cがフィルム移動方向に直交する方向に同一量ずれた場合には、フィルム2が蛇行したことを検出できる。よって、この場合においては、図3(b)に示すように、制御部7は、駆動部6により、マスク3の位置をフィルム2の蛇行量に合わせて補正する。また、複数個の伸縮確認用マーク2c同士の相対的位置関係が変化した場合には、蛇行検出用マーク2aの位置ずれは、フィルム2の伸縮により発生したことを検出できる。この場合においては、制御部7は、フィルム2の伸縮に伴うマスク位置の補正のみを行う。更に、複数本の伸縮確認用マーク2c同士の相対的位置関係及び蛇行検出用マーク2aと伸縮確認用マーク2cとの相対的位置関係の双方が変化した場合には、フィルム2の伸縮及び蛇行が発生したことを検出できる。この場合には、制御部7は、フィルム2の伸縮に伴うマスク位置の補正及び蛇行に伴うマスク位置の補正の双方を行う。この場合にいずれの補正を先行して行ってもよく、両補正を並行して行ってもよい。いずれの場合においても、マスク位置の補正は、例えばフィルム移動方向に直交する方向におけるスリット32の中心位置を基準に行うことができる。このように、本実施形態の露光装置によれば、フィルム2がその移動方向に直交する方向に蛇行及び/又は伸縮した場合においても、マスク3の位置を高精度で調節でき、露光不良の発生を確実に防止できる。
【0029】
なお、本実施形態においては、露光対象領域4がフィルム2の移動方向に直交する方向に2領域設けられている場合を述べたが、本発明は、露光対象領域4はフィルム2の移動方向に直交する方向に3領域以上設けられていてもよい。
【0030】
また、本実施形態においては、フィルム2の側部には、蛇行検出用マーク2aと伸縮確認用マーク2cの双方が設けられている場合について説明したが、フィルム移動方向に直交する方向における端部に設けられた伸縮確認用マーク2cは、蛇行検出用マークとしても機能するものであってもよい。
【0031】
更に、本実施形態においては、マスクアライメントマークがフィルム移動方向に直交する方向に延びるスリット32である場合について説明したが、カメラ51等の検出部により検出でき、マスク位置を特定できるものであれば、マスクアライメントマークの態様は限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、1方向に供給されるフィルム等の露光対象基材をその移動方向に直交する方向に分割して連続的に露光する露光装置において、露光対象基材が局所的に伸縮しても、マスクの位置を精度よく補正することができ、例えば液晶表示装置等の表面に貼付される偏光フィルム等、伸縮性を有する露光対象基材の露光に好適である。
【符号の説明】
【0033】
2:フィルム、2a:蛇行検出用マーク、2b:露光位置決定用マーク、2c:伸縮確認用マーク、3:マスク、31:スリット、32:スリット、4:露光対象領域、51,52:カメラ、6:駆動部、7:制御部、8:アライメントマーカ、9:第2アライメントマーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光対象基材を第1方向に連続的に搬送しつつ前記第1方向に直交する第2方向に設けられた露光パターンを露光する露光装置において、
露光光を出射する光源と、
第2方向に関して分割され全体で前記露光パターンを構成する分割パターンが夫々形成された複数個のマスクと、
前記マスクに設けられたマスクアライメントマーク及び前記露光対象基材に設けられた伸縮確認用マークを検出する検出部と、
前記マスクを前記第2方向に駆動する駆動部と、
前記検出部の検出結果を基に前記駆動部を制御する制御部と、
を有し、
前記伸縮確認用マークは、前記露光対象基材の前記第2方向に並ぶ複数個の露光対象領域間及び前記第2方向の両端部に設けられており、
前記制御部は、前記検出部により検出される前記伸縮確認用マークの位置が前記第2方向にずれて前記伸縮確認用マークの間隔が変動したときに、前記マスクの位置を前記伸縮確認用マークのずれに応じて移動させるように前記駆動部を制御することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記露光対象基材の前記第2方向の一端部に設けられた伸縮確認用マークは、前記露光対象基材の蛇行検出用マークとしても機能することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検出部により検出される全ての前記伸縮確認用マークの位置が前記第2方向に同一量ずれて相互間の間隔が一定のときに、全ての前記マスクの位置を前記第2方向に同一量ずらせて、前記露光対象基材の蛇行を補正するように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項2に記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−97203(P2013−97203A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240602(P2011−240602)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】