説明

顕微鏡装置及び観察位置再現方法

【課題】円形標本の観察位置を高精度に再現する。
【解決手段】顕微鏡装置は、円形標本103の撮像画像に基づいて当該円形標本103の中心位置の座標を算出する中心位置算出部201と、円形標本103の撮像画像から、当該円形標本103の中心位置の座標に基づいて所定領域のパターン画像を認識するパターン認識部202と、第1の期間に得られた円形標本103の撮像画像からパターン認識部202により認識された第1のパターン画像と第1の期間よりも後の第2の期間に得られた円形標本103の撮像画像からパターン認識部202により認識された第2のパターン画像との間の回転ずれ角を算出する回転ずれ角算出部204と、回転ずれ角に基づいて円形標本103の回転ずれを補正し、第1の期間における円形標本103の位置を再現する位置再現部205とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標本の観察位置を再現する機能を備えた顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡観察において標本の観察部位の位置合わせ(位置再現)はユーザの手動操作によって行われている。この手動操作は、例えば次のようにして行われる。まず、倍率を低倍率にし、標本の観察部位が概ねの位置(例えば観察像の中央)に来るように接眼レンズの視野に設けられた目印を利用する等してステージを移動させる。次に、倍率を高倍率に切り換えて同様の操作を行う。これにより、観察部位の位置合わせが行われる。ところが、このようなユーザの手動操作による位置合わせは、多大な手間がかかり作業効率が悪いだけでなく、誤差が大きく、位置再現性も低かった。
【0003】
そこで、このような課題を解決するために、ステージ位置再現機能を備えた顕微鏡装置が開発されている。その一例としては、磁気目盛、光学目盛、レーザ干渉を利用した測長器をステージに取り付け、測長器からの信号を制御部にフィードバックすることでステージの移動量や現在位置を把握する機能を備えた電動ステージ顕微鏡が挙げられる。
【0004】
しかしながら、このような電動ステージ顕微鏡において、標本をステージから一旦取り外し、再度ステージに固定する際、標本の置き方によっては、標本の回転ずれや向きの違いにより、観察位置の再現ができなくなるという課題がある。
【0005】
そこで、このような課題を解決するため、特許文献1には、標本自体にマーカ等のパターンを取り付け、パターン画像認識を利用することによって高精度に観察位置を再現する顕微鏡装置が提案されている。この顕微鏡装置では、標本に視認度の高いパターンが取り付けられ、そのパターンを認識する認識手段によって位置情報が計測され、その位置情報に基づいて移動手段により標本が所定位置へ移動させられる。この顕微鏡装置によれば、標本を一旦脱着しても観察位置を再現することが可能であり、また鏡筒のずれにも影響がない。さらに測長器に依存しないので、安価な装置でも位置再現ができるという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-205366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案されている顕微鏡装置には、位置再現方法に関して2つの課題がある。一つは、標本にパターンを付加する手間が発生する、ということである。もう一つは、標本が円形標本である場合、標本の置き方によっては、標本に付加されたパターンが回転ずれを起こし、位置再現が難しい、ということである。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑み、円形標本の観察位置を高精度に再現することができる、顕微鏡装置及び観察位置再現方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る顕微鏡装置は、観察像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により得られた円形標本の画像に基づいて当該円形標本の中心位置の座標を算出する中心
位置算出手段と、前記撮像手段により得られた前記円形標本の画像から、前記中心位置算出手段により算出された中心位置の座標に基づいて所定領域のパターン画像を認識する認識手段と、前記認識手段により認識されたパターン画像を記憶する記憶手段と、第1の期間に前記撮像手段により得られた前記円形標本の画像から前記認識手段により認識された第1のパターン画像と前記第1の期間よりも後の第2の期間に前記撮像手段により得られた前記円形標本の画像から前記認識手段により認識された第2のパターン画像との間の回転ずれ角を算出する回転ずれ角算出手段と、前記回転ずれ角算出手段により算出された回転ずれ角に基づいて前記円形標本の回転ずれを補正し、前記第1の期間における前記円形標本の位置を再現する位置再現手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様に係る顕微鏡装置は、上記第1の態様において、前記中心位置算出手段は、前記撮像手段により得られた前記円形標本の画像から、当該円形標本の複数のエッジ点を検出し、当該複数のエッジ点に基づいて当該円形標本の中心位置の座標を算出する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様に係る顕微鏡装置は、上記第1の態様において、前記中心位置算出手段は、前記撮像手段により得られた前記円形標本の画像から手動操作により得られた当該円形標本の複数のエッジ点に基づいて当該円形標本の中心位置の座標を算出する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様に係る顕微鏡装置は、上記第2又は3の態様において、前記中心位置算出手段は、前記複数のエッジ点を用いて円弧近似を行い、前記円形標本の中心位置の座標を算出する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様に係る顕微鏡装置は、上記第1乃至4の何れか一つの態様において、前記回転ずれ角算出手段は、前記第1のパターン画像と第2のパターン画像との間の回転ずれ角を、パターンマッチングを行って算出する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の態様に係る顕微鏡装置は、上記第1乃至5の何れか一つの態様において、前記回転ずれ角算出手段は、前記第2のパターン画像から特定領域のパターン画像を所定条件の下に検出し、前記第2のパターン画像の画像中心を回転中心として前記特定領域のパターン画像を回転させ、前記第1のパターン画像から前記特定領域のパターン画像と同一のパターン画像が検出されたときの前記特定領域のパターン画像の回転角から、前記第1のパターン画像と前記第2のパターン画像との間の回転ずれ角を算出する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第7の態様に係る顕微鏡装置は、上記第1乃至6の何れか一つの態様において、前記所定領域は、前記撮像手段の撮像領域と前記中心位置算出手段により算出された中心位置の座標とに基づいて決定される、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第8の態様に係る顕微鏡装置は、上記第1乃至7の何れか一つの態様において、前記位置再現手段は、前記回転ずれ角算出手段により算出された回転ずれ角に基づいて、前記中心位置算出手段により算出された中心位置の座標を原点として、前記円形標本を回転させることにより当該円形標本の回転ずれを補正し、前記第1の期間における前記円形標本の位置を再現する、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第9の態様に係る顕微鏡装置は、上記第1乃至7の何れか一つの態様において、前記撮像手段を回転させる回転手段を更に備え、前記位置再現手段は、前記回転ずれ角算出手段により算出された回転ずれ角に基づいて前記回転手段に前記撮像手段を回転させることより前記円形標本の回転ずれを補正し、前記第1の期間における前記円形標本の位
置を再現する、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第10の態様に係る顕微鏡装置は、上記第1乃至7の何れか一つの態様において、表示手段に表示させる画像を回転させる表示画像回転手段を更に備え、前記位置再現手段は、前記回転ずれ角算出手段により算出された回転ずれ角に基づいて前記表示画像回転手段に前記表示手段に表示させる画像を回転させることより前記円形標本の回転ずれを補正し、前記第1の期間における前記円形標本の位置を再現する、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の第11の態様に係る顕微鏡装置は、上記第6の態様において、前記撮像手段により得られた画像から、光学系及び又は前記撮像手段の影響により生じる不要パターン領域を検出する不要パターン領域検出手段を更に備え、前記回転ずれ角算出手段は、前記第1のパターン画像と前記第2のパターン画像との間の回転ずれ角を算出する際に、前記第2のパターン画像から前記不要パターン領域検出手段により検出された不要パターン領域を除外して処理を行う、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の第12の態様に係る顕微鏡装置は、上記第1乃至11の何れか一つの態様において、前記第1のパターン画像は、前記第1の期間に前記撮像手段により得られた前記円形標本の底面の画像から前記認識手段により認識されたものであり、前記第2のパターン画像は、前記第2の期間に前記撮像手段により得られた前記円形標本の底面の画像から前記認識手段により認識されたものである、ことを特徴とする。
【0021】
本発明の第13の態様に係る観察位置再現方法は、第1の期間に、円形標本を撮像し、得られた画像に基づいて当該円形標本の第1の中心位置の座標を算出し、前記円形標本を撮像し、得られた画像から、前記円形標本の第1の中心位置の座標に基づいて所定領域の第1のパターン画像を認識し、前記第1の期間よりも後の第2の期間に、前記円形標本を撮像し、得られた画像に基づいて当該円形標本の第2の中心位置の座標を算出し、前記円形標本を撮像し、得られた画像から、前記円形標本の第2の中心位置の座標に基づいて所定領域の第2のパターン画像を認識し、前記第1の期間に認識された前記第1のパターン画像と前記第2の期間に認識された前記第2のパターン画像との間の回転ずれ角を算出し、前記回転ずれ角に基づいて前記円形標本の回転ずれを補正し、前記第1の期間における前記円形標本の位置を再現する、ことを特徴とする。
【0022】
本発明の第14の態様に係る観察位置再現プログラムは、コンピュータに以下の方法を実行させるためのプログラムであって、第1の期間に、円形標本を撮像し、得られた画像に基づいて当該円形標本の第1の中心位置の座標を算出し、前記円形標本を撮像し、得られた画像から、前記円形標本の第1の中心位置の座標に基づいて所定領域の第1のパターン画像を認識し、前記第1の期間よりも後の第2の期間に、前記円形標本を撮像し、得られた画像に基づいて当該円形標本の第2の中心位置の座標を算出し、前記円形標本を撮像し、得られた画像から、前記円形標本の第2の中心位置の座標に基づいて所定領域の第2のパターン画像を認識し、前記第1の期間に認識された前記第1のパターン画像と前記第2の期間に認識された前記第2のパターン画像との間の回転ずれ角を算出し、前記回転ずれ角に基づいて前記円形標本の回転ずれを補正し、前記第1の期間における前記円形標本の位置を再現する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、円形標本の観察位置を高精度に再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施例に係る顕微鏡装置の全体構成を模式的に示す図である。
【図2】一実施例に係る顕微鏡装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】表示部に表示されるGUI画面の一例を模式的に示す図である。
【図4】算出された特性データのグラフを示す図である。
【図5】円形標本の中心位置の座標を算出する動作(S4)を詳細に示すフローチャートである。
【図6】S43で行われるエッジ点の検出処理を説明する図である。
【図7】S44で行われる中心位置の座標を算出する処理を説明する図である。
【図8】円形標本のエッジ点の検出が手動で行われるように構成された場合の動作例を説明する図である。
【図9】S6で行われる標本IDの新規登録を説明する図である。
【図10】円形標本の底面の画像から基準パターン画像として認識される所定領域の画像の一例を示す図である。
【図11】原点の変更を説明する図である。
【図12】観察位置のXY座標が極座標により表現された例を示す図である。
【図13】観察位置の画像の取得が2回行われた時点のGUI画面の一例を示す図である。
【図14】新規登録された標本IDに関連付けされて位置再現情報記憶部208に記憶される画像及び情報のフォルダ構造を示す図である。
【図15】ユーザが円形標本の標本IDを入力する際に表示部に表示されるダイアログを示す図である。
【図16】パターンマッチングによる回転ずれ角の算出例を示す図である。
【図17】変形例1に係る顕微鏡装置の全体構成を模式的に示す図である。
【図18】変形例2に係る顕微鏡装置の全体構成を模式的に示す図である。
【図19】変形例3に係る動作を示すフローチャートである。
【図20】変形例4において、XYZθ電動顕微鏡ステージの回転に伴って回転しない領域をライブ画像から検出する際の領域検出を説明する図である。
【図21】変形例5に係るパターンマッチングによる回転ずれ角の算出例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る顕微鏡装置の全体構成を模式的に示す図である。
同図に示したように、本実施例に係る顕微鏡装置は、顕微鏡100、制御部200、表示部300、及び入力部400を含み、顕微鏡100、表示部300、及び入力部400は、それぞれ制御部200と電気的に接続されている。
【0026】
顕微鏡100は、倒立型顕微鏡であって、光源101、コンデンサ102、円形標本103が載置されるXYZθ電動ステージ104、レボルバ105、撮像部106、対物レンズ107、Z軸フォーカスハンドル108、及びXYθハンドル109を含む。
【0027】
なお、本実施例では、円形標本103として、生細胞を培養する為に用いられる培養ディッシュ(シャーレ、ペトリディッシュ等とも言う)を用いることにする。そのため、本実施例では、対物レンズ107のWD(Working Distance:作動距離)及び焦点距離の観点と衛生的な観点から、顕微鏡100として、培養ディッシュ観察時に一般的に用いられる倒立型の顕微鏡を採用することにするが、正立型の顕微鏡を採用することも勿論可能である。
【0028】
円形標本103は、例えばポリエチレンやガラス製等の培養ディッシュであって、例えば35mm又は60mm等の直径を有する。但し、円形標本103は、これらの材質及び直径に限定されるものではない。この円形標本103は、XYZθ電動ステージ104上にセット(設置、固定)される。円形標本103は、XYZθ電動ステージ104上から脱着可能であり、ユーザは任意の円形標本103をXYZθ電動ステージ104上にセットすることができる。
【0029】
XYZθ電動ステージ104は、例えばリニアモータ、ステッピングモータ、ピエゾ、又は超音波モータ等をアクチュエータとして、制御部200の制御の下に、XY方向(同図紙面に対して垂直方向)及びZ方向(同図紙面の上下方向)に移動可能であり、また、θ方向(Z方向に平行な軸を回転軸とする回転方向)にも回転可能に構成されている。これにより、ユーザは入力部400を介して例えばXYZ座標を指定することにより、XYZθ電動ステージ104を所望のXYZ座標位置へ自動的に移動させることができる。また、XYZθ電動ステージ104は、ユーザがZ軸フォーカスハンドル108及びXYθハンドル109を操作することによって、手動によっても、XY方向とZ方向への移動及びθ方向への回転が可能なように構成されている。
【0030】
撮像部106は、観察像を撮像する撮像手段の一例である。この撮像部106としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ、ビデオカメラ、及び光増倍管等の公知の光検出器を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
レボルバ105には、明視野用対物レンズや位相差用対物レンズ等の複数の対物レンズ107が取り付けられている。
また、顕微鏡100において、図示はしないが、位相差観察時には、コンデンサ102において更に位相板を光路に挿入することができる。また、微分干渉観察時には、コンデンサ102とレボルバ105において更にDIC(Differential Interference Contrast)プリズムと偏光板を光路に挿入することができる。
【0032】
このような構成の顕微鏡100では、光源101から光が出射すると、その出射光は、コンデンサ102を通り、XYZθ電動ステージ104上にセットされた円形標本103に照射される。そして、円形標本103を透過した光は、対物レンズ107を通り、図示しない結像レンズを介して、撮像部106に観察像として結像する。結像した観察像は、撮像部106により撮像され(デジタル画像処理が施され)、デジタル信号として制御部200へ送られる。制御部200へ送られたデジタル信号は、その後、例えば表示部30
0に画像として表示される。
【0033】
制御部200は、CPUとメモリ200aを含み、CPUがメモリ200aに格納されている制御プログラムを読み出し実行することにより、当該顕微鏡装置全体の動作を制御する。また、制御部200は、CPUがメモリ200aに格納されている制御プログラムを実行することにより、中心位置算出部201、パターン認識部202、回転ずれ角算出部204、位置再現部205、顕微鏡制御部206、及びフォーカス調整部207を実現する。ここで、中心位置算出部201は、撮像部106により得られた円形標本103の画像に基づいて当該円形標本103の中心位置の座標を算出する中心位置算出手段の一例である。なお、円形標本103の中心位置の座標とは、円形標本103の円中心位置の座標であって、Z座標を含まないXY平面上の座標を指すものとする。パターン認識部202は、撮像部106により得られた円形標本103の画像から、中心位置算出部201により算出された中心位置の座標に基づいて所定領域のパターン画像を認識する認識手段の一例である。回転ずれ角算出部204は、第1の期間に撮像部106により得られた円形標本103の画像からパターン認識部202により認識された第1のパターン画像と、その第1の期間よりも後の第2の期間に撮像部106により得られた円形標本103の画像からパターン認識部202により認識された第2のパターン画像との間の回転ずれ角を算出する回転ずれ角算出手段の一例である。位置再現部205は、回転ずれ角算出部204により算出された回転ずれ角に基づいて円形標本103の回転ずれを補正し、上記の第1の期間における円形標本103の位置を再現する位置再現手段の一例である。顕微鏡制御部206は、顕微鏡100を制御する手段の一例であって、顕微鏡100との間でデータの送受(制御信号の送信や撮像部106からのデジタル信号の受信等)を行う。なお、顕微鏡制御部206は、制御部200内の他のユニット(例えば中心位置算出部201、位置再現部205、フォーカス調整部207等)の制御の下に動作することも可能である。フォーカス調整部207は、フォーカス調整を行う手段の一例であって、フォーカス調整値の算出等を行う。
【0034】
また、制御部200は、パターン記憶部203と位置再現情報記憶部208とを更に含む。パターン記憶部203は記憶手段の一例であって、これには、パターン認識部202により認識されたパターン画像が記憶される。位置再現情報記憶部208には、位置再現に関するデータや円形標本103の観察データ等が記憶される。
【0035】
入力部400は、ユーザからの各種の指示や設定等を受け付ける。表示部300は、後述のGUI(Graphical User Interface)画面や各種のダイアログ等を表示する。
例えば、ユーザが入力部400を介してパラメータを設定すると、設定されたパラメータ(変更後のパラメータ)の値が表示部300に表示されると共に、そのパラメータの値に応じた制御信号が、制御部200の顕微鏡制御部206から顕微鏡100へ出力される。これにより、ユーザは入力部400を介して顕微鏡100を操作することができる。
【0036】
なお、ユーザが入力部400を介して操作可能な顕微鏡100の操作としては、例えば、次のような操作が挙げられる。
・光源101の電圧調整
・XYZθ電動ステージ104の駆動
・撮像部106からの画像の取り込み
・対物レンズ107の倍率切り替え
・観察法(検鏡法とも言う)の切り換え(コンデンサ102、レボルバ105、対物レンズ107の変更)
但し、全ての操作を電動でしか操作できないわけではなく、例えば、XYZθ電動ステージ104の操作においては、上述のとおり、Z軸フォーカスハンドル108及びXYθハンドル109を用いることにより手動操作も可能である。
【0037】
本実施例に係る顕微鏡装置では、撮像部106をCCDカメラとし、制御部200をPC(Personal Computer)とし、表示部300をディスプレイ等の出力装置とし、入力部400をキーボードやマウス等の入力装置とし、制御部200と、表示部300及び入力部400とがバスやインターフェースを介して接続されるものとするが、このような実装に限定されるものではない。また、本実施例に係る顕微鏡装置では、顕微鏡制御部206が制御部200内に含まれる構成であるが、これを制御部200から独立して設けるように構成することも可能である。この場合は、例えば、制御部200としてのPCとは別に、顕微鏡制御部206としてのコントロールボックスを設けることができる。
【0038】
次に、本実施例に係る顕微鏡装置の動作について詳細に説明する。
本実施例に係る顕微鏡装置の動作は、基本的な動作として、次のような動作を含む。
まず、第1の期間に、円形標本103を撮像し、得られた画像に基づいて円形標本103の第1の中心位置の座標を算出し、また、円形標本103を撮像し、得られた画像から、円形標本103の第1の中心位置の座標に基づいて所定領域の第1のパターン画像を認識する。次に、第1の期間よりも後の第2の期間に、円形標本103を撮像し、得られた画像に基づいて円形標本103の第2の中心位置の座標を算出し、また、円形標本103を撮像し、得られた画像から、円形標本103の第2の中心位置の座標に基づいて所定領域の第2のパターン画像を認識する。そして、第1の期間に認識された第1のパターン画像と第2の期間に認識された第2のパターン画像との間の回転ずれ角を算出し、その回転ずれ角に基づいて円形標本103の回転ずれを補正し、第1の期間における円形標本103の位置を再現する。
【0039】
ここでは、本実施例に係る顕微鏡装置の動作の一例として、ユーザが円形標本(培養ディッシュ)を用いて生細胞の培養と経時変化観察(タイムラプス観察とも言う)を行う場合の顕微鏡装置の動作を説明する。なお、このような場合において、生細胞を培養するにはインキュベータ等の特定の培養環境内に培養ディッシュを十分に静置しなければならない。そのため、培養ディッシュは、観察時に培養環境から取り出され、観察が終了したら再び培養環境に戻される。この際、ユーザは手作業で培養ディッシュをXYZθ電動ステージ104上にセットすることになる。このような手作業を繰り返した場合において、毎回、培養ディッシュを同じ位置で且つ同じ向きにセットすることは難しい。そこで、本実施例に係る顕微鏡装置では、このような手作業を繰り返しながら培養ディッシュを複数回観察する際に起こり得る観察位置のずれを、詳しくは下記に説明するような動作により、補正するようにしている。
【0040】
図2は、本実施例に係る顕微鏡装置の動作を示すフローチャートである。
但し、同図に示したフローチャートは、説明の便宜のため、ユーザの動作と顕微鏡装置の動作とを併せて示している。顕微鏡装置の動作は、制御部200のCPUがメモリ200aに格納されている制御プログラムを読み出し実行することによって行われるものである。
【0041】
同図に示したフローチャートは、初回目の観察時の動作と2回目以降の観察時の動作とを含む。初回目の観察時の動作において主要な動作は、ステップ(以下単に「S」という)6乃至S8の動作である。また、2回目以降の観察時の動作において主要な動作は、S11乃至S16の動作である。
【0042】
はじめに、初回目の観察時の動作を説明する。
同図において、まず、S1では、当該顕微鏡装置の立ち上げが行われる。これは、ユーザが、当該顕微鏡装置の顕微鏡100、制御部200、及び表示部300等の各ユニットの電源を投入したことに応じて制御部200の制御の下に行われる。この立ち上げでは、
当該顕微鏡装置の初期動作として、例えば、最小倍率の対物レンズ107が光路に挿入されと共に、XYZθ電動ステージ104が予め定められた初期位置に移動する。また、表示部300には、当該顕微鏡装置に対する操作を可能にするGUI画面が表示される。これにより、ユーザは、表示部300に表示されているGUI画面を入力部400介して操作することにより、当該顕微鏡装置に対する各種の操作(上述の顕微鏡100に対する操作を含む)を行うことができる。
【0043】
図3は、このときに表示部300に表示されるGUI画面の一例を模式的に示す図である。
同図に示したように、GUI画面は、カメラ制御領域310、ステージ制御領域320、対物レンズ制御領域330、画像表示領域340、全体マップ画像領域350、及び、取り込み制御領域360を含む。
【0044】
カメラ制御領域310は、撮像部106を制御するための操作領域であって、円形標本103に対する焦点位置合わせを行わせるためのAF(Auto Focus)ボタン311と、撮像部106により撮像された円形標本103のリアルタイム画像を画像表示領域340に表示させるためのLIVEボタン312と、撮像部106により撮像された円形標本103のスナップ画像を取得するためのSNAPボタン313を含む。
【0045】
ステージ制御領域320は、XYZθ電動ステージ104を制御するための操作領域であって、XYZθ電動ステージ104をXY方向に移動させるためのXY方向ボタン321と、XYZθ電動ステージ104をZ方向に移動させるためのZ方向ボタン322及びZ方向スライドバー323と、XYZθ電動ステージ104を所定位置へ退避させるための退避ボタン324と、XYZθ電動ステージ104を所望のXYZ位置へ移動させるためのXYZ座標値が入力される数値入力部325を含む。
【0046】
対物レンズ制御領域330は、光路中の対物レンズ107を切り換えるための操作領域であって、光路中の対物レンズ107を、4×、10×、20×、40×、60×の何れかの対物レンズへ切り換えるための対物レンズボタン331、332、333、334、335を含む。なお、対物レンズ107の切り換え倍率は、それぞれ所望の倍率を備えた対物レンズを適宜選択してレボルバ105に装着することで、適宜変更することが可能である。
【0047】
画像表示領域340は、ライブ画像等が表示される領域である。全体マップ画像領域350は、円形標本103の全体が模式的に表示されると共に、観察画像の取得位置が模式的に表示される領域である。
【0048】
取り込み制御領域360は、円形標本103の新規登録や登録済み円形標本103に関する情報の読み出し等を行うための操作領域であって、円形標本103の新規登録を行うための登録ボタン361と、登録済み円形標本103に関する情報を読み出すための読み出しボタン362と、円形標本103の中心位置の座標を算出するための中心位置算出ボタン363と、円形標本103の識別子である標本IDが表示される標本ID表示欄364と、観察画像撮像時の撮像条件等の情報がリストとして表示されるリスト領域365を含む。
【0049】
なお、このGUI画面は、入力部400を介して特定の操作を行うことにより、当該GUI画面上の一部の領域を、他の操作(例えば光源101の電圧調整や観察法の切り換え等)を行うための操作領域へ切り換えることも可能である。
【0050】
このようにして図2のS1が終了すると、次に、S2では、ユーザが円形標本(培養デ
ィッシュ)103をインキュベータ等の特定の培養環境内から取り出してXYZθ電動ステージ104上にセットする。
【0051】
なお、本実施例では、上述のとおり、顕微鏡100として倒立型の顕微鏡を採用しているが、例えば正立型の顕微鏡を採用した場合には、円形標本103を電動ステージ上にセットする際に、電動ステージを対物レンズから退避させる必要がある。この場合は、ユーザがGUI画面上の退避ボタン324を押下することにより電動ステージを退避させることができる。すなわち、ユーザが退避ボタン324を押下することに応じて、制御部200の制御の下に、電動ステージが対物レンズから一定距離退避する。なお、この一定距離は、ユーザが任意に設定可能であり、初期設定では電動ステージの可動範囲の限界値に応じた距離となる。また、この一定距離は、制御部200の図示しないメモリに格納されている。もちろん、電動ステージを退避させる場合に、ユーザがZ軸フォーカスハンドル108を用いて手動操作により退避させることも可能である。
【0052】
また、このS2では、円形標本103がXYZθ電動ステージ104上にセットされた後に、円形標本103のリアルタイム画像がGUI画面上の画像表示領域340にライブ画像として表示される。これは、ユーザがGUI画面上のLIVEボタン312を押下したことに応じて、制御部200の制御の下に行われる。
【0053】
次に、S3では、円形標本103への焦点位置合わせの処理(フォーカス調整(AF)処理)が行われる。これは、ユーザがGUI画面上のAFボタン311を押下したことに応じて、制御部200の制御の下に行われる処理である。この処理では、Z方向の各位置におけるフォーカス値が取得され、それに基づいてZ方向の位置とフォーカス値との関係を示す特性データのグラフが算出される。そして、その特性データのグラフに基づいて観察面の最適なZ方向の位置が算出され、そのZ方向の位置へXYZθ電動ステージ104が移動する。ここで、Z方向の各位置におけるフォーカス値は、フォーカス調整部207の制御の下に、XYZθ電動ステージ104の位置をZ方向に一定間隔で移動させながら、そのZ方向の各位置において、撮像部105による画像の取り込み及び取り込まれた画像の所定領域からのフォーカス値の算出が行われることによって、得られるものである。ここでは、上記の所定領域の一例として、取り込まれた画像の略30%の領域(但し、所定領域の中心位置は、取り込まれた画像の中心位置と同じであるとする)を用いると共に、上記のフォーカス値の一例としてコントラスト値を用いるが、これらに限定されるものではない。このようにして算出された特性データのグラフは、制御部200の不図示の内部メモリに格納される。
【0054】
図4は、このようにして算出された特性データのグラフを示す図である。同図において、右側には、その特性データのグラフを示す。ここで、横軸はフォーカス値に対応し、縦軸はXYZθ電動ステージ104のZ方向の位置に対応する。また、左側には、円形標本103の上面及び断面を模式的に示す。ここでは、円形標本103と共に、培養中の細胞107aも併せて示している。また、同図では、右側のグラフと左側の円形標本103の断面を示す部分との間で、Z方向の位置の対応を点線により模式的に示している。
【0055】
同図右側のグラフに示されるように、フォーカス値が高くなるZ方向の位置は2つ存在し、一方は細胞103aを観察する観察面(同図右側「観察面」参照)となり、もう一方は円形標本103の底面(同図右側「標本底面」参照)となる。この2つの位置において、倒立型の顕微鏡100ではXYZθ電動ステージ104とレボルバ105との相対距離が短い方が円形標本103の底面なので、この2つの位置の何れが観察面(又は円形標本103の底面)の位置であるかを特定することができる。このようにして観察面の位置が特定されると、その位置へXYZθ電動ステージ104が移動し、これにより、その位置に焦点が合わせられる。
【0056】
なお、図2のS3では、このようにして円形標本103の焦点位置が自動で合わせられるが、これを、Z軸フォーカスハンドル108を用いて手動により行うこともできる。或いは、GUI画面上のZ方向ボタン322又はZ方向スライドバー323を用いて行うこともできる。
【0057】
次に、S4では、XYZθ電動ステージ104上にセットされている円形標本103の中心位置の座標が算出される。ここで算出される中心位置の座標は、後に取得される観察位置の原点(XY平面上の原点)とされる。但し、このS4での中心位置の座標の算出自体は、XYZθ電動ステージ104が保有するXY座標を用いて行われる。
【0058】
なお、このような円形標本103の中心位置の座標を算出する目的は、次のような目的による。
1.算出された中心位置の座標の付近に、後述のパターン画像として認識される所定領域を設定することで、後述のパターンマッチングの際のパターン検出効率を上げることができるからである。
2.算出された中心位置の座標を原点とすることで、極座標を用いて観察位置を再現することができるからである。
【0059】
円形標本103がXYZθ電動ステージ104上にセットされたとき、XYZθ電動ステージ104の回転中心位置と円形標本103の中心位置とが同じであれば、円形標本103の中心位置は決定されるが、それが同じでない場合や回転しない電動ステージが採用された場合には、円形標本103の中心位置の座標を算出する必要がある。本実施例では、XYZθ電動ステージ104の回転中心位置と円形標本103の中心位置とが同じでない場合を想定し、円形標本103の中心位置の座標が算出される。
【0060】
図5は、その円形標本103の中心位置の座標を算出する動作(S4)を詳細に示すフローチャートである。
同図に示したように、まず、S41では、XYZθ電動顕微鏡ステージ104をZ方向の特定の位置へ移動させる処理が行われる。これは、ユーザがGUI画面上の中心位置算出ボタン363を押下したことに応じて、制御部200の制御の下に行われる処理である。この特定の位置への移動は、円形標本103の外形のエッジを強調するために行われるものであり、その特定の位置とは、図2のS3で得られた特性データのグラフ(図4右側参照)において、フォーカス値が最大となる値の50%のフォーカス値が得られているZ方向の位置(図4右側の「エッジ検出面」参照)である。但し、この場合において、その50%のフォーカス値が得られる位置が複数存在した場合には、その複数の位置のうち、観察面(図4右側の「観察面」参照)の上側に存在する位置が、その特定の位置とされる。なお、ここでは、特定の位置を、フォーカス値が最大となる値の50%のフォーカス値としたが、その割合は50%に限定されるものではない。また、その割合を、ユーザが任意に設定できるように構成することも可能である。或いは、このようにして特定の位置を求めるのではなく、例えば円形標本103の底面の位置とエッジ検出面とする位置との間の距離を制御部200の図示しないメモリに予め記憶させておき、その距離と、図2のS3で得られた特性データのグラフ(図4右側参照)により特定される円形標本103の底面の位置(図4右側の「標本底面」参照)とから、特定の位置を求める、というように、相対距離から特定の位置を求めるようにすることも可能である。
【0061】
このようにして図5のS41が終了すると、次に、S42では、円形標本103の外形のエッジを含む画像が取り込まれる。この取り込みは、次のようにして行われる。まず、ユーザが、GUI画面上の画像表示領域340に表示されているライブ画像を見ながら、GUI画面上のステージ制御領域320を操作してXYZθ顕微鏡ステージ104をXY
方向に移動させ、円形標本103の左端のエッジを含む領域を画像表示領域340にライブ画像として表示させたところで、GUI画面上のSNAPボタン313を押下する。これにより、制御部200の制御の下に円形標本103の左端のエッジを含む領域の画像がスナップ画像として取り込まれる。引き続き、ユーザは、GUI画面上のステージ制御領域320を操作してXYZθ顕微鏡ステージ104をX方向(ここでは、円形標本103の左右方向をX方向としている)のみに移動させ、同様にして、円形標本103の右端のエッジを含む領域を画像表示領域340にライブ画像として表示させたところで、SNAPボタン313を押下する。これにより、制御部200の制御の下に円形標本103の右端のエッジを含む領域の画像がスナップ画像として取り込まれる。
【0062】
なお、ここで取り込まれる2つの画像の取り込み順は、これに限定されるものではない。また、その2つの画像を取り込む際に、ユーザは、所望の領域の画像が取り込まれるように、GUI画面上の対物レンズ制御領域330を操作して光路中の対物レンズ107を切り換える(例えば最小倍率の対物レンズ107へ切り換える)ようにすることも可能である。但し、この場合、その2つの画像を取り込む際の光路中の対物レンズ107は同一であるとする。或いは、ユーザがGUI画面上の中心位置算出ボタン363を押下したときに、光路中の対物レンズ107が、後述のS43にて行われるエッジ点の検出に適した領域の画像が取り込まれるような倍率の対物レンズ107(例えば最小倍率の対物レンズ107)に自動的に切り換わるように構成することも可能である。ここで、自動的に切り換わる(光路に挿入される)対物レンズは、使用する円形標本103の直径等に基づいて予め設定しておくように構成することも可能であるし、ユーザが任意に設定できるように構成することも可能である。
【0063】
このようにしてS42が終了すると、次に、S43では、制御部200の制御の下に、S42で取り込まれた2つの画像からエッジ点を検出する処理が行われる。
図6は、そのS43で行われるエッジ点の検出処理を説明する図である。
【0064】
同図において、画像501及び502は、S42で取り込まれた2つの画像であり、画像501は、円形標本103の左端のエッジを含む領域の画像であり、画像502は、円形標本103の右端のエッジを含む領域の画像である。なお、画像501及び502には、円形標本103をXYZθ電動顕微鏡ステージ104上に固定するための標本固定部材104aの一部が撮像された領域も含まれている。
【0065】
エッジ点の検出は、取り込まれた画像を微分フィルタによってフィルタリングし、その出力の絶対値が大きくなる位置をエッジ点とすることにより、行われる。なお、微分フィルタとしては、例えばラプラシアンフィルタを用いることができる。このようにしてエッジ点が検出されると、検出されたエッジ点の中から、更に円形標本103のエッジ点が検出される。本実施例では、円形標本103の左端のエッジを含む領域の画像501において、最も上側で且つ最も右側に位置するエッジ点501aと最も下側で且つ最も右側に位置するエッジ点501bが円形標本103のエッジ点として検出される。また、円形標本103の右端のエッジを含む領域の画像502においては、最も上側で且つ最も左側に位置するエッジ点502aと、最も下側で且つ最も左側に位置するエッジ点502bが円形標本103のエッジ点として検出される。
【0066】
このようにして図5のS43が終了すると、次に、S44では、制御部200の制御の下に、その検出されたエッジ点から、例えば最小二乗法等の手法を用いて、円形標本103の中心位置の座標を算出する処理が行われる。
【0067】
図7は、そのS44で行われる中心位置の座標を算出する処理を説明する図である。ここでは、その一例として、簡易な処理方法を説明する。
同図に示したように、この処理例では、少なくとも4点のエッジ点から円形標本103の中心位置の座標が算出される。ここでは、円形標本103の左端側のエッジ点として検出されたエッジ点を501c及び501dとし、右端側のエッジ点として検出されたエッジ点を502c及び502dとする。なお、これらの4つのエッジ点は、図6に示した4つのエッジ点(501a、501b、502a、及び502b)と位置関係が異なるが、いずれの場合であっても、ここで説明する処理方法により、同様にして、中心位置を算出することができる。
【0068】
この処理例では、まず、図7の左側に示したように、左端側のエッジ点501c及び501dと、右端側のエッジ点502c及び502dとが比較され、Y座標が同じエッジ点同士が対にされる。そして、対にされた2つのエッジ点を結ぶ線分の中点が全て検出され、その中点を結ぶ直線(近似直線)X=aが求められる。次に、同図の右側に示したように、全てのエッジ点が、X=aの直線までの距離が同じになるように、Y=bの直線(近似直線)が求められる。これにより、円形標本103の中心位置の座標(a、b)が求められ、更に、その中心位置の座標(a,b)とエッジ点から、円形標本103の半径rが求められる。
【0069】
なお、ここでは、上記のような簡易な処理方法を説明したが、円形標本103の中心位置の座標を算出する処理は、これに限定されるものではなく、例えば、特開平7−225843号公報に記載の円中心位置測定方法のように、複数のエッジ点を用いて円弧近似を行って算出するようにすることも可能である。
【0070】
このような処理方法を採用することにより、円形標本103をXYZθ電動顕微鏡ステージ104上にセットした際に、円形標本103の画像を実際に円として取り込めなくても、円形標本103の中心位置の座標を算出することができる。
【0071】
このようにして算出された円形標本103の中心位置の座標は、制御部200の図示しないメモリに格納され、保持される。
このようにして図5のS44が終了すると、次に、S45では、制御部200の制御の下に、円形標本103の中心位置が撮像部106による撮像範囲の中心位置と一致するように、S44で算出された円形標本103の中心位置の座標に基づいて、XYZθ電動顕微鏡ステージ104がXY方向に移動すると共に、上記のS3で焦点位置が合わせられた観察面の位置(図4右側の「観察面」参照)に戻るように、XYZθ電動顕微鏡ステージ104がZ方向に移動する。
【0072】
なお、このようにして行われる図2のS4(図5のフローチャート)では、図6等を用いて説明したように、円形標本103のエッジ点の検出が自動で行われるものであったが、これを手動によっても行うことができるように構成することも可能である。
【0073】
図8は、そのように構成された場合の動作例を説明する図である。
同図に示したように、この場合は、上述の図5のS42において、ユーザがGUI画面上の中心位置算出ボタン363を押下すると、これに応じて「エッジ検出を自動算出しますか?」というダイアログ371が表示部300に表示される。このダイアログ371において、ユーザが入力部400を介して「はい」を選択した場合には、上述のようにして円形標本103のエッジ点の検出が自動で行われる。一方、「いいえ」を選択した場合には、ダイアログ371が、「標本のエッジをLive画面上でクリックして下さい。」というダイアログ372に切り換わる。ここで、ユーザは、GUI画面上のステージ制御領域320を操作してXYZθ電動顕微鏡ステージ104を移動させ、GUI画面上の画像表示領域340に円形標本103のエッジを含む領域をライブ画像として表示させる。そして、そのライブ画像上において、ユーザが円形標本103のエッジ点とする位置を入力
部400を介して指定する(例えばマウスでクリックする)と、その位置がエッジ点として検出される。また、そのライブ画像上でユーザが指定したエッジ点には、視覚的に確認可能なように、マーク(本例では旗のアイコン)が付加される。同図に示した例では、円形標本103のエッジ点として、ライブ画像上に4つのエッジ点が指定されたことを示している。そして、このようにしてユーザが円形標本103の中心位置座標算出に必要なエッジ点を指定した後、更に、入力部400を介してダイアログ372の「次へ」を選択した場合には、その指定されたエッジ点に基づいて、円形標本103の中心位置座標算出処理(図5のS44)が開始されると共に、ダイアログ372が、「円形標本中心位置を算出しています。」というダイアログ373に切り換わる。なお、ダイアログ372又は373が表示されているときに、入力部400を介して「キャンセル」が選択されると、その時点の処理がキャンセルされる。
【0074】
このようにして図2のS4が終了すると、次に、S5では、XYZθ電動顕微鏡ステージ104上にセットされている円形標本103が、初めて観察する円形標本103であるか否かの判定が行われる。これは、制御部200の制御の下に、例えば、その旨をユーザに問い合わせるためのダイアログを表示部300に表示させ、そのダイアログ上の「はい」又は「いいえ」をユーザが入力部400を介して選択することによって行われる。この判定において、ユーザが「はい」を選択した場合には当該判定がYesとなってS6へ進み、「いいえ」を選択した場合には当該判定がNoとなってS11へ進む。
【0075】
S5の判定がYesの場合、次に、S6では、標本IDの新規登録が行われる。これは、ユーザがGUI画面上の登録ボタン361を押下したことに応じて、制御部200の制御の下に行われる。この新規登録では、XYZθ電動顕微鏡ステージ104上にセットされている円形標本103の標本IDをユーザから受け付けるためのダイアログが表示部300に表示される。そして、このダイアログにユーザが所望の標本IDを入力部400を介して入力すると、その標本IDがGUI画面上の標本ID表示欄364に表示されると共に、位置再現情報記憶部208に記憶される。
【0076】
図9は、このS6で行われる標本IDの新規登録を説明する図である。同図に示したように、ユーザがGUI画面上の登録ボタン361を押下すると、表示部300には、標本IDの入力をユーザから受け付けるためのダイアログ376が表示される。なお、本実施例では、標本IDをファイル名として受け付けるものとし、同図に示した例では、標本IDとして"test1.xxx"が入力された例を示している。そして、ユーザが入力部400を介してダイアログ376上の「保存(S)」を選択することによって、入力された標本IDがGUI画面上の標本ID表示欄364に表示されると共に、位置再現情報記憶部208に記憶される。一方、ユーザが入力部400を介してダイアログ376上の「キャンセル」を選択した場合には、この時点の標本IDの新規登録がキャンセルされる。そして、ダイアログ376上の「保存(S)」又は「キャンセル」が選択された後は、ダイアログ376が表示部300に表示されなくなる。
【0077】
なお、本実施例では、新規登録する標本IDをユーザが入力するものとするが、これを自動入力するように構成することも可能である。この場合、自動で新規登録する標本IDを、例えば「ユーザのログインID名-日付-新規登録のトータル回数.xxx」とすることも可能である。或いは、新規登録する標本IDをユーザ入力とするか又は自動入力とするかを、ユーザが任意に変更できるように構成することも可能である。
【0078】
このようにして図2のS6が終了すると、次に、S7では、制御部200の制御の下に、基準パターン画像(上記の第1のパターン画像の一例)の取得が行われる。ここで取得される基準パターン画像は、円形標本103の底面の画像における所定領域の画像であって、次のようにして取得される。まずは、上記のS4で算出された円形標本103の中心
位置の座標(上記の第1の中心位置の座標の一例)に基づいて、円形標本103の中心位置が撮像部106による撮像領域の中心位置に一致するように、XYZθ電動顕微鏡ステージ104がXY方向に移動する。また、S3で得られた特性データのグラフ(図4右側参照)により特定される円形標本103の底面の位置(図4右側の「標本底面」参照)に来るように、XYZθ電動顕微鏡ステージ104がZ方向に移動する。これにより、焦点位置は、円形標本13の底面の位置に合わせられる。また、所定倍率(例えば最小倍率)の対物レンズ107が光路に挿入されるように、必要に応じて対物レンズ107の切り換えが行われる。そして、撮像部106による撮像により、画像の中心位置が円形標本103の中心位置となる、円形標本103の底面の画像が取得される。
【0079】
なお、焦点位置が、実際に観察対象とされる観察面の位置ではなく円形標本103の底面の位置に合わせられる理由は、仮に、実際に観察対象とされる観察面の位置に焦点位置が合わせられて画像が取得された場合には、観察対象が生細胞であることから、生細胞の形態変化や増殖によって経時的に取得画像のパターンが変化する可能性があり、後に行われるパターンマッチングに使用される画像として適さないからである。
【0080】
また、その円形標本103の底面の画像を取得する際には、実際に観察対象とされる観察面の画像を取得する際の撮像条件とは異なる撮像条件により撮像が行われる。このようにする理由は、円形標本103の底面における特徴のあるパターンや傷等を、より明確に撮像するためであり、これらが撮像された部分の領域(画像上の領域)が、後に行われるパターンマッチングに使用されるからである。例えば、観察面の画像を取得する際に、観察法として位相差観察法が設定されているために撮像条件として位相差観察法に応じた撮像条件が設定されていたとしても、円形標本103の底面の画像を取得する際には、観察法が明視野観察法に変更されることにより撮像条件が明視野観察法に応じた撮像条件に変更される。或いは、例えば、観察面の画像を取得する際に、観察法として微分干渉観察法が設定されているために撮像条件として微分干渉観察法に応じた撮像条件が設定されていたとしても、円形標本103の底面の画像を取得する際には、観察法が位相差観察法に変更されることにより撮像条件が位相差観察法に応じた撮像条件に変更される。なお、このような観察法(撮像条件を含む)の変更は自動で行われるものであるが、例えば、ユーザが任意に変更可能なように構成することも可能である。そして、円形標本103の底面の画像が取得された後は、観察法(撮像条件を含む)が、実際に観察対象とされる観察面の画像を取得する際の観察法に戻される。
【0081】
このようにして、円形標本103の底面の画像が取得されると、次に、その画像における所定領域の画像が基準パターン画像として認識され取得される。ここで、所定領域は、撮像部106の撮像領域とS4で算出された円形標本103の中心位置の座標とに基づいて決定されるものであり、本実施例では、取得されている円形標本103の底面の画像において、当該画像の中心を円中心とし、且つ、当該中心から画像端までの長さが最短となる長さを半径とする、円内の領域とする。
【0082】
図10は、円形標本103の底面の画像から基準パターン画像として認識される所定領域の画像の一例を示す図である。
同図に示したように、円形標本103の底面の画像511から基準パターン画像として認識される所定領域の画像は、その底面の画像511の中心511aを円中心とし、且つ、当該中心511aから画像端までの長さが最短となる長さ(本例では、中心511aから画像511の上端又は下端までの長さ)を半径とする、円内の領域511bの画像となる。
【0083】
なお、同図の例において、領域511bの直径は、撮像部106のCCDの垂直ピクセル数に対応する。また、円形標本103の中心103bは、画像511の中心511aに
対応する。また、円内の領域511bの画像には、円形標本103の底面に存在するキズが撮像されたパターン511cも含まれている。
【0084】
このような円内の領域の画像を基準パターン画像とする理由は、2回目以降の観察時においてXYZθ電動ステージ104上に円形標本103をセットしたときに円形標本103の回転ずれが生じた場合、円内の領域以外に含まれていたパターン、すなわち、円外の領域に含まれていたパターンが、2回目以降の観察時に取得される円形標本103の底面の画像の外側に移動することとなり、後述のパターンマッチングを行うことができない虞があるからである。
【0085】
なお、円形標本103の底面の画像から基準パターン画像として認識される所定領域の画像は、ユーザが任意に設定可能なように構成することもできる。但し、その所定領域は、上記のような虞がないように、円形標本103の底面の画像の中心を円中心とし、且つ、当該中心から画像端までの長さが最短となる長さよりも短い長さを半径とする、円内の領域とする。
【0086】
このようにして基準パターン画像が取得されると、その基準パターン画像と、その基準パターン画像が撮像された時の撮像条件及びXYZθ電動顕微鏡ステージ104のZ方向の位置等の情報とが、S6で新規登録された標本IDに関連付けされて位置再現情報記憶部208に記憶される。ここで、基準パターン画像が撮像された時の撮像条件とは、その基準パターン画像を含む円形標本103の底面の画像が撮像された時の撮像条件のことでもある。また、その撮像条件は、対物レンズ107の倍率、観察法、露光時間、及び画像サイズ等を含む。
【0087】
なお、ここで記憶された基準パターン画像、撮像条件、及びZ方向の位置等の情報は、後の2回目以降の観察時の動作において使用される。
このようにして図2のS7が終了すると、次に、S8では、円形標本103において実際に観察対象とされる観察位置の画像が取得されると共に、観察位置の座標及び画像取得時の撮像条件等も取得される。但し、取得される観察位置の座標については、そのXY座標が、XYZθ電動ステージ104が保有する座標系を用いて表現されるのではなく、上記のS4で算出された円形標本103の中心位置の座標を原点とする座標系を用いて表現される。すなわち、XY座標の原点が、XYZθ電動ステージ104が保有する座標系における原点から、上記のS4で算出された円形標本103の中心位置へ変更されて、観察位置のXY座標が表現される。
【0088】
図11は、このような原点の変更を説明する図である。
同図に示したように、XY座標の原点が、XYZθ電動ステージ104が保有する座標系における原点104bから、円形標本103の中心位置103bへ変更される。ここで、XYZθ電動ステージ104が保有する座標系において、円形標本103の中心位置103bのXY座標は、(Δx,Δy)である。
【0089】
なお、このようにXY座標の原点を変更する理由は、次のような理由による。円形標本103の脱着を繰り返すと、円形標本103の中心を常にXYZθ電動ステージ104上の同じ位置に設置できるとは限らない。そのため、初回目の観察時に記憶した観察位置を2回目以降の観察時に再現するためには、観察位置のXY座標として、円形標本103の中心を原点とする相対座標を用いた方が都合が良いからである。
【0090】
また、その際には、2回目以降の観察時にXYZθ電動ステージ104上にセットされる円形標本103の回転ずれを加味し、その相対座標として、円形標本103の中心を原点とする極座標が用いられる。
【0091】
図12は、観察位置のXY座標が極座標により表現された例を示す図である。
同図に示した例の場合、観察位置PのXY座標は、円形標本103の中心位置103bを原点Oとする極座標系を用いて(R1,θ1)と表現される。ここで、R1は原点Oと観察位置Pとの間の距離であり、θ1は原点Oを通る水平線(同図左右方向の直線)と線分OPとの成す角度である。なお、観察位置Pの座標は、円形標本103の中心位置103bを原点OとするXY座標系によって、(R1cosθ1,R1sinθ1)とも表現することが可能である。
【0092】
このように、観察位置のXY座標を極座標により表現して記憶しておくことにより、2回目以降の観察時において観察位置を再現する際には、その観察位置の座標と、2回目以降の観察時に取得される円形標本103の中心位置の座標とから、観察位置の再現が可能となる。
【0093】
図2のS8において、観察位置の画像等の取得は、具体的には、次のようにして行われる。
まず、ユーザが、GUI画面上の画像表示領域340に表示されている円形標本103のライブ画像を確認しながら、所望の観察領域が画像表示領域340に表示されるように、GUI画面上のステージ制御領域320や対物レンズ制御領域330を必要に応じて操作する。そして、所望の観察領域が画像表示領域340に表示されたところで、ユーザがGUI画面上のSNAPボタン313を押下する。これにより、制御部200の制御の下に、画像表示領域340に表示されている領域の画像が撮像部106による撮像により取得され、撮像時の座標及び撮像条件等の情報と共に、S6で新規登録された標本IDに関連付けされて位置再現情報記憶部208に記憶される。
【0094】
なお、撮像時の座標は、取得された画像の中心位置の座標であって、上述のとおり、相対座標によって表現される。また、撮像時の撮像条件は、撮像時の対物レンズ107の倍率、観察法、露光時間、及び画像サイズ等が含まれる。
【0095】
また、撮像時の座標及び撮像条件等の情報は、GUI画面上のリスト領域365にリストとして表示される。また、取得された画像が円形標本103の何れの位置で取得されたものであるかをユーザが確認できるように、その位置(取得された画像の中心位置に対応)が、GUI画面上の全体マップ画像領域350に模式的に表示される。
【0096】
図13は、このようにして観察位置の画像の取得が2回行われた時点のGUI画面の一例を示す図である。
同図に示したように、それぞれの観察位置の画像が取得された際の撮像時の座標及び撮像条件が、リスト領域365にリストとして表示されると共に、それぞれの観察位置が、全体マップ画像領域350に旗のアイコンとして模式的に表示される。
【0097】
なお、リスト領域365において、「X」、「Y」、及び「Z」は観察位置の座標を示す。上述のとおり、観察位置のXY座標は極座標により表現されて記憶されるものであるが、リスト領域365に表示される際にはXY座標により表現されて表示される。もちろん、極座標で表現されている座標がそのままリスト領域365に表示されるように構成することも可能である。また、リスト領域365において、「M」は対物レンズ107の倍率を示し、「OM」は観察法を示す。なお、このようなリスト領域365に表示される項目は、これらに限定されず、ユーザが任意に選択できるように構成することも可能である。
【0098】
このようにして図2のS8が終了すると、次に、S9では、ユーザが円形標本103を
XYZθ電動ステージ104上から取り外し、再びインキュベータ等の特定の培養環境内に保管する。
【0099】
次に、S10では、別の円形標本103の観察に移行するか否かの判定が行われる。これは、ユーザが入力部400を介して所定の操作を行うことによって行われるものである。例えば、ユーザが別の円形標本103の観察に移行するための操作を行った場合には当該判定がYesとなってS2へ戻る。一方、ユーザが本動作を終了するための操作(別の円形標本103の観察に移行しないための操作)を行った場合には当該判定がNoとなって本動作が終了する。
【0100】
このようにして、初回目の観察時の動作が行われることによって、位置再現情報記憶部208には、S7で取得された基準パターン画像と、その基準パターン画像が撮像された時の撮像条件及びXYZθ電動顕微鏡ステージ104のZ方向の位置等の情報と、S8で取得された観察位置の画像と、その画像が撮像された時の観察位置の座標及び撮像条件等の情報とが、S6で新規登録された標本IDに関連付けされて記憶される。
【0101】
図14は、新規登録された標本IDに関連付けされて位置再現情報記憶部208に記憶される画像及び情報のフォルダ構造を示す図である。
同図に示したように、そのフォルダ構造は、最上位の第1階層から最下位の第4階層までの4層の階層構造からなる。第1階層のフォルダは、新規登録された標本ID毎に設けられる標本IDフォルダである。ここで、標本IDフォルダには、図2のS6で新規登録された標本ID(新規登録時に標本IDとして入力されたファイル名のファイル)が含まれる。図14では、新規登録された1つの標本IDに対して設けられた標本IDフォルダを「円形標本1」フォルダとして示している。各標本IDフォルダは、第2階層のフォルダとして「基準パターンデータ」フォルダと「標本再現位置情報」フォルダとを含む。ここで、「基準パターンデータ」フォルダには、図2のS7で取得された基準パターン画像と、その基準パターン画像が撮像された時の撮像条件及びXYZθ電動顕微鏡ステージ104のZ方向の位置等の情報とが含まれる。各「標本再現位置情報」フォルダは、第3階層のフォルダとして、観察位置毎に設けられる観察位置フォルダを含む。ここで、各観察位置フォルダには、S8で取得された観察位置の画像が撮像された時の観察位置の座標及び撮像条件等の情報が含まれる。図14では、観察位置1、観察位置2、及び観察位置3の各々に対して設けられた観察位置フォルダを「観察位置1」フォルダ、「観察位置2」フォルダ、及び「観察位置3」フォルダとして示している。各観察位置フォルダは、第4階層のフォルダとして、各回の観察毎に設けられる観察画像フォルダを含む。同図では、「観察位置1」フォルダに含まれる、初回目、2回目、及び3回目の各々の観察に対して設けられた観察画像フォルダを、「初回目」フォルダ、「2回目」フォルダ、及び「3回目」フォルダとして示している。ここで、「初回目」フォルダには、S8で取得された観察位置の画像が含まれる。
【0102】
なお、新規登録された標本IDに関連付けされて位置再現情報記憶部208に記憶される画像及び情報のフォルダ構造は、図14に示したフォルダ構造に限定されるものではない。
【0103】
次に、2回目以降の観察時の動作を説明する。
この動作では、まず、初回目の観察時の動作と同様にして図2のS1が行われた後、又は、S10の判定結果がYesとなった後に、初回目の観察時の動作と同様にしてS2乃至S5が行われる。但し、このときのS2においてXYZθ電動顕微鏡ステージ104上にセットされる円形標本103は、観察が2回目以降となる円形標本103である。
【0104】
そして、S5の判定では、XYZθ電動顕微鏡ステージ104上にセットされている円
形標本103が初めて観察する円形標本であるか否かを問い合わせる上述のダイアログにおいて、ユーザが入力部400を介して「いいえ」を選択することにより、判定結果がNoとなり、S11へ進む。
【0105】
S11では、XYZθ電動顕微鏡ステージ104上にセットされている円形標本103の初回目の観察時に取得された基準パターン画像が撮像された時の撮像条件及びXYZθ電動顕微鏡ステージ104のZ方向の位置等の情報が位置再現情報記憶部208(図14の「基準パターンデータ」フォルダ)から読み出され、その情報に基づいて、基準パターン画像が撮像された時の撮像条件及びXYZθ電動顕微鏡ステージ104のZ方向の位置等が顕微鏡100に再現される。また、その初回目の観察時に取得された基準パターン画像が位置再現情報記憶部208(図14の「基準パターンデータ」フォルダ)から読み出され、パターン記憶部112に記憶される。これらは、ユーザがGUI画面上の読み出しボタン362を押下し、XYZθ電動顕微鏡ステージ104上にセットされている円形標本103の標本IDを入力部400を介して入力したことに応じて、制御部200の制御の下に行われる。なお、ユーザが円形標本103の標本IDを入力する操作は、次のようにして行われる。
【0106】
図15は、ユーザが円形標本103の標本IDを入力する際に表示部300に表示されるダイアログを示す図である。
同図に示したように、ユーザがGUI画面上の読み出しボタン362を押下すると、これに応じて、制御部200の制御の下に、標本IDを入力するためのダイアログ377が表示される。このダイアログ377には、位置再現情報記憶部200から読み出された全ての標本IDが、これまでに新規登録されている標本IDの一覧として表示される。同図に示した例では、標本IDとして、「test1.xxx」、「test2.xxx」、及び「test3.xxx」の3つの標本IDが表示されている。そして、ユーザが入力部400を介して、一覧表示されている標本IDの中からXYZθ電動顕微鏡ステージ104上にセットされている円形標本103の標本IDを選択するか、或いは、その標本IDを直接入力し、更にダイアログ377上の「開く(O)」を選択することによって、標本IDの入力が行われる。また、このときに入力された標本IDは、標本ID表示欄364に表示される。一方、ユーザが入力部400を介してダイアログ377上の「キャンセル」を選択した場合には、この時点における標本IDの入力がキャンセルされる。そして、ダイアログ377上の「開く(O)」又は「キャンセル」が選択された後は、ダイアログ377が表示部300に表示されなくなる。
【0107】
なお、この図2のS11において、入力された標本IDに応じて、対応する撮像条件及びZ方向の位置等を顕微鏡100に再現することができない場合には、制御部200の制御の下に、表示部300にエラーメッセージが表示されるように構成することも可能である。また、この場合に、更に、標本IDの新規登録を行うか否かをユーザに問い合わせるためのダイアログが表示され、そのダイアログ上で「はい」が選択された場合には、S6へ移行するように構成することも可能である。
【0108】
このようにしてS11が終了すると、次に、S12では、制御部200の制御の下に、上記のS11で読み出された基準パターン画像との間でパターンマッチングが行われるパターン画像(上記の第2のパターン画像の一例)の取得が行われる。具体的には、まず、XYZθ電動顕微鏡ステージ104上にセットされている円形標本103に対して上記のS4にて算出された円形標本103の中心位置の座標に基づいて、円形標本103の中心位置が撮像部106による撮像領域の中心位置に一致するように、XYZθ電動顕微鏡ステージ104がXY方向に移動する。なお、XYZθ電動顕微鏡ステージ104のZ方向については、上記のS11にて既に基準パターン画像撮像時の位置へ移動済みである。そして、撮像部106による撮像により、画像の中心位置が円形標本103の中心位置とな
る、円形標本103の底面の画像が取得される。
【0109】
このようにして、円形標本103の底面の画像が取得されると、次に、基準パターン画像取得時と同様に、その底面の画像における所定領域の画像がパターン画像として認識され取得される。ここで、所定領域も、基準パターン画像取得時と同様に、撮像部106の撮像領域と上記のS4で算出された円形標本103の中心位置の座標とに基づいて決定されるものであり、本実施例では、取得されている円形標本103の底面の画像において、当該画像の中心を円中心とし、且つ、当該中心から画像端までの長さが最短となる長さを半径とする、円内の領域とする。なお、これによりパターン画像と基準パターン画像のサイズは等しくなる。このようにして取得されたパターン画像は、パターン記憶部203に記憶される。
【0110】
このようにしてS12が終了すると、次に、S13では、制御部200の制御の下に、上記のS11でパターン記憶部203に記憶された基準パターン画像と、上記のS12でパターン記憶部203に記憶されたパターン画像との間でパターンマッチングが行われ、基準パターン画像とパターン画像との間の回転ずれ角(回転ずれ量)が算出される。ここで、パターンマッチングによる回転ずれ角の算出は、例えばアフィン変換等の公知技術を利用して、行うことができる。
【0111】
図16は、パターンマッチングによる回転ずれ角の算出例を示す図である。
同図に示した例は、パターン画像522aの中から注目領域522bを検出し、その注目領域522bを基準パターン画像521aの中から検出する、という方法でパターンマッチングを行うことにより、回転ずれ角を算出するようにした簡易的な算出例である。
【0112】
なお、同図において、画像521は、XYZθ電動顕微鏡ステージ104上にセットされている円形標本103に対して初回目の観察時に上記のS7が行われたときの、基準パターン画像521aを含む円形標本103の底面の画像を示す。また、点521bは、基準パターン画像521aの中心位置(画像521の中心位置でもある)を示す。
【0113】
また、画像522は、XYZθ電動顕微鏡ステージ104上にセットされている円形標本103に対して上記のS12が行われたときの、パターン画像522aを含む円形標本103の底面の画像を示す。また、点522cは、パターン画像522aの中心位置(画像522の中心位置でもある)を示す。
【0114】
パターン画像522aの中からの注目領域522bの検出は、例えば、パターン画像522aの中から、輝度値の低い画素の集合体として最も大きい領域を検出することにより、行われる。この場合、予め輝度値の閾値を設けておき、その閾値よりも低い輝度値の画素からなる集合体をパターン画像522aの中から検出し、その集合体に含まれる画素数が最も多い領域が注目領域として検出される。なお、この場合に、輝度値の閾値は、ユーザが任意に変更可能なように構成することも可能である。
【0115】
基準パターン画像521aの中からの注目領域522bの検出は、例えば、パターン画像522aの中心位置522cと注目領域522bとの間の相対距離は算出可能であることから、中心位置522cに対して注目領域522bを回転させ、注目領域522bの特徴点(例えばエッジの座標等)が全て一致する領域を基準パターン画像521aの中から検出することにより、行われる。
【0116】
そして、基準パターン画像521aの中から、注目領域522bの特徴点が全て一致する領域が検出されたときの回転角度が、基準パターン画像521aとパターン画像522aとの間の回転ずれ角として算出される。
【0117】
このように、本例では、基準パターン画像521aとパターン画像522aとの間で行うパターンマッチングとして、基準パターン画像521aとパターン画像522aの注目領域522bとの間で行うパターンマッチングを行ったが、これに限定されるものではない。
【0118】
このようにして図2のS13が終了すると、次に、S14では、制御部200の制御の下に、S13で算出された回転ずれ角が0度になるようにXYZθ電動ステージ104がθ方向に回転する。これにより、初回目の観察時と2回目以降の観察時との間の円形標本103の回転ずれが補正される。
【0119】
次に、S15では、制御部200の制御の下に、S11で入力された標本IDの円形標本103に対して取得されている、各観察位置の座標及び各観察位置での撮像条件が位置再現情報記憶部208(図14の各観察位置フォルダ)から読み出される。そして、読み出された各観察位置の座標に基づいて、各観察位置がGUI画面上の全体マップ画像領域350に旗のアイコンとして模式的に表示される。また、読み出された各観察位置での撮像条件がGUI画面上のリスト領域365に表示される。
【0120】
次に、S16では、制御部200の制御の下に、S15で位置再現情報記憶部208から読み出された、各観察位置の座標及び各観察位置での撮像条件に基づいて、各観察位置での撮像部106による撮像が行われて各観察位置の画像が自動的に取得される。なお、この場合に、各観察位置では、対応する座標及び撮像条件に基づいて、その座標へXYZθ電動ステージ104が移動すると共に、その撮像条件が顕微鏡100に再現された上で、撮像部106による撮像が行われる。
【0121】
そして、各観察位置で取得された画像は、S11で入力された標本IDに関連付けされて、2回目以降の観察時に得られた画像として、位置再現情報記憶部208(図14の観察画像フォルダ)に記憶される。
【0122】
このようにしてS16が終了するとS9へ戻り、以下、S10がNoになるまで、同様にして本動作が繰り返される。
以上、本実施例に係る顕微鏡装置によれば、円形標本103の観察が複数回行われたときに初回目の観察時と2回目以降の観察時との間で起こり得る円形標本103の回転ずれを補正することができるので、初回目の観察時の観察位置を、2回目以降の観察時においても高精度に再現することができ、正確な経過観察が可能になる。
【0123】
なお、本実施例に係る顕微鏡装置は、各種の変形が可能である。
例えば、変形例1として、次のような変形が可能である。
本変形例は、図2のS14で行われる回転ずれの補正を、XYZθ電動顕微鏡ステージ104を回転させることにより行うのではなく、撮像部106を回転させることにより行うようにものである。
【0124】
図17は、本変形例に係る顕微鏡装置の全体構成を模式的に示す図である。
同図に示したように、本変形例に係る顕微鏡装置は、顕微鏡100が回転部110を更に含む。回転部110は、制御部200の制御の下に、撮像部106を、その撮像面の中心を通る光軸を回転軸として、回転させる。
【0125】
本変形例に係る顕微鏡装置では、図2のS14において、制御部200の制御の下に、S13で算出された回転ずれ角が0度になるように、回転部110が撮像部106を回転させる。これにより、初回目の観察時に得られた円形標本103の画像と、2回目以降の
観察時に得られた円形標本103の画像との間の回転ずれが補正される。
【0126】
本変形例では、このように撮像部106を自動で回転させるものであるが、撮像部106を手動で回転させるように構成することも可能である。この場合は、回転部110が手動ハンドルを備え、その手動ハンドルをユーザが操作することにより撮像部106が回転するように構成される。また、図2のS13で算出された回転ずれ角が表示部300(GUI画面上でも良い)に表示されると共に、その表示されている回転ずれ角が撮像部106の回転角度に応じて変化するように構成される。これにより、ユーザは、表示部300に表示されている回転ずれ角が0度になるように回転部110の手動ハンドルを操作することによって、円形標本103の画像の回転ずれを補正することができる。
【0127】
このように、本変形例によれば、初回目の観察時と2回目以降の観察時との間で回転ずれのない円形標本103の画像を取得及び表示部300に表示させることができ、上述の実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0128】
また、本実施例に係る顕微鏡装置は、例えば、変形例2として、次のような変形も可能である。
本変形例は、図2のS14で行われる回転ずれの補正を、XYZθ電動顕微鏡ステージ104を回転させることにより行うのではなく、GUI画面上の画像表示領域340に表示させる画像(表示部300に表示させる画像)を回転させることにより行うようにしたものである。
【0129】
図18は、本変形例に係る顕微鏡装置の全体構成を模式的に示す図である。
同図に示したように、本変形例に係る顕微鏡装置は、制御部200が表示画像回転部209を更に含む。表示画像回転部209は、GUI画面上の画像表示領域340に表示させる画像を、その画像中心を回転中心として、回転させる。
【0130】
本変形例に係る顕微鏡装置では、図2のS14において、制御部200の制御の下に、S13で算出された回転ずれ角が0度になるように、表示画像回転部209がGUI画面上の画像表示領域340に表示させる円形標本103の画像を回転させる。これにより、初回目の観察時に表示部300に表示された円形標本103の画像と、2回目以降の観察時に表示部300に表示される円形標本103の画像との間の回転ずれが補正される。
【0131】
なお、表示画像回転部209による画像の回転は、例えばアフィン変換等の公知の画像処理を用いて行うことができる。
このように、本変形例によれば、変形例1と同様に、初回目の観察時と2回目以降の観察時との間で、回転ずれのない円形標本103の画像を表示部300に表示させることができ、上述の実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0132】
また、本実施例に係る顕微鏡装置は、例えば、変形例3として、次のような変形も可能である。
本変形例は、2回目以降の観察時に観察位置の追加又は削除を行うことができるようにしたものである。これにより、2回目以降の観察時において、ユーザは、新たな観察位置を追加したり、不要と判断した観察位置を削除したり、することができる。
【0133】
図19は、本変形例に係る動作を示すフローチャートである。
同図に示したように、本変形例に係る動作は、S16とS9との間にS21及びS22を更に含む。
【0134】
S21では、観察位置の追加又は削除を行うか否かの判定が行われる。これは、制御部
200の制御の下に、例えば、その旨をユーザに問い合わせるためのダイアログを表示部300に表示させ、そのダイアログ上の「はい」又は「いいえ」をユーザが入力部400を介して選択することによって行われる。この判定において、ユーザが「はい」を選択した場合には当該判定がYesとなってS22へ進み、「いいえ」を選択した場合には当該判定がNoとなってS9へ進む。
【0135】
S22では、観察位置の追加又は削除が行われる。これは、制御部200の制御の下に、例えば、観察位置の追加又は削除の何れを行うかをユーザに問い合わせるためのダイアログを表示部300に表示させ、そのダイアログ上の「追加」又は「削除」をユーザが入力部400を介して選択することによって行われる。
【0136】
ここで、ユーザが「追加」を選択した場合には、制御部200の制御の下に、S8と同様にして、追加する観察位置での画像取得や、その観察位置の座標及び画像取得時の撮像条件等の取得が行われる。これにより、以降の観察時においては、ここで追加された観察位置に対しても画像等の自動取得が行われるようになる。
【0137】
一方、ユーザが「削除」を選択した場合には、制御部200の制御の下に、削除する観察位置の選択が行われる。これは、GUI画面上の全体マップ画像領域350に表示されている旗のアイコンの中から、削除する観察位置の旗のアイコンを、ユーザが入力部400を介して選択することによって行われる。このようにして削除する観察位置が選択されると、選択された観察位置は無効とされ、以降の観察時において画像等の自動取得は行われないようになる。
【0138】
このように、本変形例によれば、2回目以降の観察時において、ユーザは容易に観察位置の追加又は削除を行うことができる。
また、本実施例に係る顕微鏡装置は、例えば、変形例4として、次のような変形も可能である。
【0139】
本変形例は、図2のS13において、S12で取得されたパターン画像から、円形標本103から得られたものではない部分の領域(不要パターン領域ともいう)を除外して、処理を行うようにしたものである。これにより、S13では、パターン画像から注目領域(図16参照)を検出する際に、円形標本103から得られたものではない部分の領域を注目領域として検出しないようにしている。なお、円形標本103から得られたものではない部分の領域とは、例えば、光学系中のゴミや撮像部106の画素欠陥等の影響により生じた部分の領域である。
【0140】
本変形例に係る動作では、S13において、パターン画像から注目領域を検出する前に、まず、制御部200の制御の下に、撮像部106により円形標本103のライブ画像を取り込みながらXYZθ電動顕微鏡ステージ104をθ方向に回転させる。このとき、XYZθ電動顕微鏡ステージ104の回転に伴って回転しない領域をライブ画像から検出し、その領域を、円形標本103から得られたものではない部分の領域としてみなす。
【0141】
図20は、このようにして行われる領域検出を説明する図である。
同図の上側に示す画像523は、XYZθ電動顕微鏡ステージ104を回転させる前に撮像部106により取り込まれた円形標本103のライブ画像である。このライブ画像523は、円形標本103の一部に対応する部分領域523aと、光学系中のゴミが撮像された領域である部分領域523bとを含むとする。
【0142】
なお、このライブ画像523取り込み時のXYZθ電動顕微鏡ステージ104の位置や撮像条件等は、図2のS12でパターン画像を取得したときのものと同じであり、ライブ
画像523の中心位置523cは円形標本103の中心位置に対応する。
【0143】
図20の下側に示す画像523´は、XYZθ電動顕微鏡ステージ104を回転させた後に撮像部106により取り込まれた円形標本103のライブ画像である。ここで、そのライブ画像523´中の部分領域523a´及び523b´は、XYZθ電動顕微鏡ステージ104を回転させた後の2つの部分領域523a及び523bである。
【0144】
このように、円形標本103の一部に対応する部分領域523aは、XYZθ電動顕微鏡ステージ104の回転に伴って一緒に回転するが、光学系中のゴミが撮像された領域である部分領域523bは、XYZθ電動顕微鏡ステージ104の回転に伴って回転しない。従って、このような場合には、XYZθ電動顕微鏡ステージ104の回転に伴って回転しない領域として部分領域523が検出され、これが円形標本103から得られたものではない部分の領域としてみなされる。
【0145】
このようにして、XYZθ電動顕微鏡ステージ104の回転に伴って回転しない領域が、円形標本103から得られたものではない部分の領域としてみなされると、その領域が、パターン画像から注目領域を検出する際に除外されて処理が行われる。これにより、円形標本103から得られたものではない部分の領域としてみなされた領域は、注目領域として検出されないようになる。
【0146】
このように、本変形例によれば、光学系中のゴミや撮像部106の画素欠陥等の影響を受けることなく、注目領域として適切な領域をパターン画像から検出することができる。
なお、本変形例において、円形標本103から得られたものではない部分の領域としてみなされた領域は、その後、GUI画面上の画像表示領域340に画像を表示する際に、色別する等して他と区別可能に表示することも可能である。
【0147】
また、本変形例では、XYZθ電動顕微鏡ステージ104の回転に伴って回転しない領域を検出するものであったが、XYZθ電動顕微鏡ステージ104を回転させる代わりに、撮像部106を回転させるように構成することも可能である。この場合は、例えば、変形例1に適用した構成を組み合わせ、撮像部106の回転に伴って回転しない領域をライブ画像から検出するように構成される。これにより、少なくとも撮像部106の画素欠陥の影響により生じた領域が注目領域として検出されないようにすることができる。或いは、XYZθ電動顕微鏡ステージ104を回転させる代わりに、ユーザが手動で円形標本を回転させるようにすることも可能である。この場合は、ユーザの手動による円形標本の回転に伴って回転しない領域をライブ画像から検出するように構成される。
【0148】
また、本実施例に係る顕微鏡装置は、例えば、変形例5として、次のような変形も可能である。
図2のS13において、本実施例では、図16を用いて説明したように、パターン画像(図16の522a参照)の中から検出された注目領域(図16の522b)を基準パターン画像(図16の521a)の中から検出することによって、パターンマッチングが行われていた。これに対し、本変形例は、パターン画像自体を基準パターン画像から検出することによって、パターンマッチングを行うようにしたものである。
【0149】
図21は、本変形例に係るパターンマッチングによる回転ずれ角の算出例を示す図である。
同図に示した例は、パターン画像525aを基準パターン画像524aから検出する、という方法でパターンマッチングを行うことにより、回転ずれ角を算出するようにした簡易的な算出例である。
【0150】
なお、同図において、画像524は、XYZθ電動顕微鏡ステージ104上にセットされている円形標本103に対して初回目の観察時に上記のS7が行われたときの、基準パターン画像524aを含む円形標本103の底面の画像を示す。また、点524bは、基準パターン画像524aの中心位置(画像524の中心位置でもある)を示す。
【0151】
また、画像525は、XYZθ電動顕微鏡ステージ104上にセットされている円形標本103に対して上記のS12が行われたときの、パターン画像525aを含む円形標本103の底面の画像を示す。また、点525bは、パターン画像525aの中心位置(画像525の中心位置でもある)を示す。
【0152】
基準パターン画像524aからのパターン画像525aの検出は、例えば、中心位置525bに対してパターン画像525aを回転させ、パターン画像525aの全ての特徴点(例えばエッジの座標等)が基準パターン画像524aと一致することを検出することにより、行われる。
【0153】
そして、それが検出されたときの回転角度が、基準パターン画像524aとパターン画像525aとの間の回転ずれ角として算出される。
このように、本変形例によれば、基準パターン画像とパターン画像との間で比較される特徴点の数が多くなることから、より高精度のパターンマッチングが可能となり、より正確な回転ずれ角の算出が可能になる。
【0154】
また、本実施例に係る顕微鏡装置は、上述の変形例1乃至5を組み合わせて適用することも可能である。
また、本実施例に係る顕微鏡装置では、円形標本103として、生物系における培養ディッシュを用いたが、例えば、工業系におけるディスクや円形基板等を用いることも可能である。
【0155】
また、本実施例に係る顕微鏡装置では、顕微鏡100として、デジタルマイクロスコープやタイムラプス観察顕微鏡等の顕微鏡を適用することも可能である。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上述した実施例に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【符号の説明】
【0156】
100 顕微鏡
101 光源
102 コンデンサ
103 円形標本
103a 細胞
103b 円形標本の中心位置
104 XYZθ電動ステージ
104a 標本固定部材
104b XYZθ電動ステージが保有する座標系における原点
104b ステージの原点
105 レボルバ
106 撮像部
107 対物レンズ
108 Z軸フォーカスハンドル
109 XYθハンドル
110 回転部
200 制御部
200a メモリ
201 中心位置算出部
202 パターン認識部
203 パターン記憶部
204 回転ずれ角算出部
205 位置再現部
206 顕微鏡制御部
207 フォーカス調整部
208 位置再現情報記憶部
209 表示画像回転部
300 表示部
310 カメラ制御領域
311 AF(Auto Focus)ボタン
312 LIVEボタン
313 SNAPボタン
320 ステージ制御領域
321 XY方向ボタン
322 Z方向ボタン
323 Z方向スライドバー
324 退避ボタン
325 数値入力部
330 対物レンズ制御領域
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350 全体マップ画像領域
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361 登録ボタン
362 読み出しボタン
363 中心位置算出ボタン
364 標本ID表示欄
365 リスト領域
371、372、373 ダイアログ
376、377 ダイアログ
400 入力部
501 円形標本の左端のエッジを含む領域の画像
501a、501b、501c、501d エッジ点
502 円形標本の右端のエッジを含む領域の画像
502a、502b、502c、502d エッジ点
511 円形標本の底面の画像
511a 中心
511b 領域
511c パターン
521 基準パターン画像を含む円形標本の底面の画像
521a 基準パターン画像
521b 基準パターン画像の中心位置
522 パターン画像を含む円形標本の底面の画像
522a パターン画像
522b 注目領域
522c パターン画像の中心位置
523、523´ ライブ画像
523a、523a´、523b、523b´ ライブ画像中の部分領域
523c ライブ画像の中心位置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた円形標本の画像に基づいて当該円形標本の中心位置の座標を算出する中心位置算出手段と、
前記撮像手段により得られた前記円形標本の画像から、前記中心位置算出手段により算出された中心位置の座標に基づいて所定領域のパターン画像を認識する認識手段と、
前記認識手段により認識されたパターン画像を記憶する記憶手段と、
第1の期間に前記撮像手段により得られた前記円形標本の画像から前記認識手段により認識された第1のパターン画像と前記第1の期間よりも後の第2の期間に前記撮像手段により得られた前記円形標本の画像から前記認識手段により認識された第2のパターン画像との間の回転ずれ角を算出する回転ずれ角算出手段と、
前記回転ずれ角算出手段により算出された回転ずれ角に基づいて前記円形標本の回転ずれを補正し、前記第1の期間における前記円形標本の位置を再現する位置再現手段と、
を備えることを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
前記中心位置算出手段は、前記撮像手段により得られた前記円形標本の画像から、当該円形標本の複数のエッジ点を検出し、当該複数のエッジ点に基づいて当該円形標本の中心位置の座標を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記中心位置算出手段は、前記撮像手段により得られた前記円形標本の画像から手動操作により得られた当該円形標本の複数のエッジ点に基づいて当該円形標本の中心位置の座標を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記中心位置算出手段は、前記複数のエッジ点を用いて円弧近似を行い、前記円形標本の中心位置の座標を算出する、
ことを特徴とする請求項2又は3記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記回転ずれ角算出手段は、前記第1のパターン画像と第2のパターン画像との間の回転ずれ角を、パターンマッチングを行って算出する、
ことを特徴とする請求項1乃至4何れか一項記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記回転ずれ角算出手段は、前記第2のパターン画像から特定領域のパターン画像を所定条件の下に検出し、前記第2のパターン画像の画像中心を回転中心として前記特定領域のパターン画像を回転させ、前記第1のパターン画像から前記特定領域のパターン画像と同一のパターン画像が検出されたときの前記特定領域のパターン画像の回転角から、前記第1のパターン画像と前記第2のパターン画像との間の回転ずれ角を算出する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項記載の顕微鏡装置。
【請求項7】
前記所定領域は、前記撮像手段の撮像領域と前記中心位置算出手段により算出された中心位置の座標とに基づいて決定される、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項記載の顕微鏡装置。
【請求項8】
前記位置再現手段は、前記回転ずれ角算出手段により算出された回転ずれ角に基づいて、前記中心位置算出手段により算出された中心位置の座標を原点として、前記円形標本を回転させることにより当該円形標本の回転ずれを補正し、前記第1の期間における前記円形標本の位置を再現する、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項記載の顕微鏡装置。
【請求項9】
前記撮像手段を回転させる回転手段を更に備え、
前記位置再現手段は、前記回転ずれ角算出手段により算出された回転ずれ角に基づいて前記回転手段に前記撮像手段を回転させることより前記円形標本の回転ずれを補正し、前記第1の期間における前記円形標本の位置を再現する、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項記載の顕微鏡装置。
【請求項10】
表示手段に表示させる画像を回転させる表示画像回転手段を更に備え、
前記位置再現手段は、前記回転ずれ角算出手段により算出された回転ずれ角に基づいて前記表示画像回転手段に前記表示手段に表示させる画像を回転させることより前記円形標本の回転ずれを補正し、前記第1の期間における前記円形標本の位置を再現する、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項記載の顕微鏡装置。
【請求項11】
前記撮像手段により得られた画像から、光学系及び又は前記撮像手段の影響により生じる不要パターン領域を検出する不要パターン領域検出手段を更に備え、
前記回転ずれ角算出手段は、前記第1のパターン画像と前記第2のパターン画像との間の回転ずれ角を算出する際に、前記第2のパターン画像から前記不要パターン領域検出手段により検出された不要パターン領域を除外して処理を行う、
ことを特徴とする請求項6記載の顕微鏡装置。
【請求項12】
前記第1のパターン画像は、前記第1の期間に前記撮像手段により得られた前記円形標本の底面の画像から前記認識手段により認識されたものであり、
前記第2のパターン画像は、前記第2の期間に前記撮像手段により得られた前記円形標本の底面の画像から前記認識手段により認識されたものである、
ことを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項記載の顕微鏡装置。
【請求項13】
第1の期間に、
円形標本を撮像し、得られた画像に基づいて当該円形標本の第1の中心位置の座標を算出し、
前記円形標本を撮像し、得られた画像から、前記円形標本の第1の中心位置の座標に基づいて所定領域の第1のパターン画像を認識し、
前記第1の期間よりも後の第2の期間に、
前記円形標本を撮像し、得られた画像に基づいて当該円形標本の第2の中心位置の座標を算出し、
前記円形標本を撮像し、得られた画像から、前記円形標本の第2の中心位置の座標に基づいて所定領域の第2のパターン画像を認識し、
前記第1の期間に認識された前記第1のパターン画像と前記第2の期間に認識された前記第2のパターン画像との間の回転ずれ角を算出し、
前記回転ずれ角に基づいて前記円形標本の回転ずれを補正し、前記第1の期間における前記円形標本の位置を再現する、
ことを特徴とする観察位置再現方法。
【請求項14】
コンピュータに以下の方法を実行させるためのプログラムであって、
第1の期間に、
円形標本を撮像し、得られた画像に基づいて当該円形標本の第1の中心位置の座標を算出し、
前記円形標本を撮像し、得られた画像から、前記円形標本の第1の中心位置の座標に基づいて所定領域の第1のパターン画像を認識し、
前記第1の期間よりも後の第2の期間に、
前記円形標本を撮像し、得られた画像に基づいて当該円形標本の第2の中心位置の座
標を算出し、
前記円形標本を撮像し、得られた画像から、前記円形標本の第2の中心位置の座標に基づいて所定領域の第2のパターン画像を認識し、
前記第1の期間に認識された前記第1のパターン画像と前記第2の期間に認識された前記第2のパターン画像との間の回転ずれ角を算出し、
前記回転ずれ角に基づいて前記円形標本の回転ずれを補正し、前記第1の期間における前記円形標本の位置を再現する、
ことを特徴とする観察位置再現プログラム。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−180538(P2011−180538A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47179(P2010−47179)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】