説明

高分子化硬化剤及びその製造方法、樹脂組成物、半導体用接着剤並びに半導体装置

【課題】材料選択の自由度を向上させることが可能であると共に、高温加熱プロセスを必要とする半導体装置の作製においてボイドの発生を抑制することが可能な高分子化硬化剤及びその製造方法、樹脂組成物、半導体用接着剤並びに半導体装置を提供する。
【解決手段】本発明の高分子化硬化剤は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の反応により得られ、本発明の高分子化硬化剤の熱重量減少量は、(A)エポキシ樹脂又は(B)硬化剤の少なくとも一方の熱重量減少量が10%より大きくなる温度において10%以下である。本発明の高分子化硬化剤の製造方法は、高分子化硬化剤の熱重量減少量が、(A)エポキシ樹脂又は(B)硬化剤の少なくとも一方の熱重量減少量が10%より大きくなる温度において10%以下となるように、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化硬化剤及びその製造方法、樹脂組成物、半導体用接着剤並びに半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な用途において、硬化を必要とする材料の硬化を促進するためには、当該材料の硬化温度又はそれ以上の温度が必要となる。この場合、材料の含有成分単体が気化温度(沸点)を超えて加熱されると、硬化スピードに関わらず材料が発泡してしまいボイドが発生することとなる。ボイドは材料の外観を低下させるだけでなく、硬化物の強度を低下させる等して材料を劣化させ、材料の信頼性に大きな影響を与える。例えば電子材料分野の半導体用接着剤では、ボイドが発生すると絶縁信頼性試験、温度サイクル試験、リフロー試験等において信頼性が大きく低下することとなるため、ボイドの発生は懸念されている。
【0003】
ボイドの発生には様々な要因があるが、先に述べたように材料の発泡や含有成分の揮発によるボイドだけでなく、その他、例えば、凹凸部分の埋め込み不足(充填不足)による巻き込みボイド、圧着時に空気等の気体を巻き込んで圧着した場合に生じる巻込みボイド、フリップチップ接続方式で比較的生じやすい基板や接続部金属の弾性変形や樹脂の硬化不足によって発生するスプリングバックボイドがある。上述のいずれの要因でボイドが発生しても、ボイドは材料を劣化させ、材料の信頼性に大きな影響を与えることとなる(例えば、下記特許文献1〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−188573号公報
【特許文献2】国際公開2004/111148号パンフレット
【特許文献3】特開2006−054226号公報
【特許文献4】特開2007−092083号公報
【特許文献5】特開2009−117811号公報
【特許文献6】特開2009−26033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フリップチップ接続によるパッケージの製造工程は、例えば240℃以上の高温が半導体用接着剤(半導体封止用接着剤)にかかる工程(高温加熱プロセス)として接続工程やリフロー工程等のプロセスを一般的に有している。フリップチップ接続では半導体用接着剤を介して被接着体同士を圧着するため、接続温度がそのまま半導体封止用接着剤にかかることから、上述したような高温加熱プロセスでは半導体用接着剤が発泡しやすくボイドが多発する場合がある。
【0006】
そのため、半導体用接着剤の含有成分単体が信頼性等で有用な特性を発揮しても、上述したような高温加熱プロセスにおいて当該含有成分が揮発しボイド発生の原因となる場合には、半導体用接着剤の含有成分として使用することを避ける傾向がある。一方、ボイドの発生を抑制する観点では、半導体用接着剤の含有成分として熱重量減少量が低いものを用いることも考えられるが、半導体用接着剤の材料組成を設定する際に選択範囲が狭まることとなる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、材料選択の自由度を向上させることが可能であると共に、高温加熱プロセスを必要とする半導体装置の作製においてボイドの発生を抑制することが可能な高分子化硬化剤及びその製造方法、樹脂組成物、半導体用接着剤並びに半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、これらの課題を解決するために本発明者らが検討した結果、接続工程やリフロー工程等の高温加熱プロセスを必要とする半導体装置の製造において、半導体用接着剤の含有成分の配合前に揮発成分をプレ高分子化し、高分子化硬化剤の熱重量減少量を低下させることを見出してなされたものである。さらに、本発明は、揮発成分となり得る硬化剤とエポキシ樹脂とを事前に反応させてプレ高分子化し、得られた高分子化硬化剤を用いることにより、高温加熱プロセスを必要とする半導体装置の製造においてボイドの発生を抑制することができることを見出してなされたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の反応により得られる高分子化硬化剤であって、高分子化硬化剤の熱重量減少量が、(A)成分又は(B)成分の少なくとも一方の熱重量減少量が10%より大きくなる温度において10%以下である、高分子化硬化剤を提供する。
【0010】
本発明の高分子化硬化剤では、(A)エポキシ樹脂又は(B)硬化剤の熱重量減少量が10%より高い場合であっても、高温加熱プロセスを必要とする半導体装置の作製においてボイドの発生を抑制することができる。これにより、材料選択の自由度を向上させることができると共に、ボイドの発生を抑制することができる。また、プレ高分子化することで、含有成分の反応性が低下するため、保存安定性の向上も期待できる。
【0011】
本発明の高分子化硬化剤は、半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置における半導体チップ及び配線回路基板の間、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置における複数の半導体チップの間に配置される半導体用接着剤に用いられ、半導体用接着剤が240℃以上で加熱されてもよい。
【0012】
高分子化硬化剤の240℃における熱重量減少量は10%以下であることが好ましい。この場合、ボイドの発生を更に抑制することができる。
【0013】
ところで、高温加熱プロセスを有するフリップチップ接続では、硬化促進剤や硬化剤として非共有電子対を有する窒素原子含有化合物が頻繁に用いられるが、熱重量減少量が10%以下のものは少なく、当該窒素原子含有化合物を用いた際にボイドの発生を抑制することが望まれている。これに対し、本発明の高分子化硬化剤では、(B)成分が、非共有電子対を有する窒素原子含有化合物であることが好ましく、イミダゾール類であることがより好ましい。この場合、高温加熱プロセスを必要とする半導体装置の作製においてボイドの発生を抑制しつつ、非共有電子対を有する窒素原子含有化合物を用いることができる。
【0014】
本発明は、上記高分子化硬化剤と、(C)分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、を含む、樹脂組成物を提供する。また、本発明は、上記樹脂組成物を含有する、半導体用接着剤を提供する。本発明の半導体用接着剤は、フィルム状とすることができる。さらに、本発明は、上記半導体用接着剤を用いた半導体装置を提供する。
【0015】
本発明は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を反応させる高分子化硬化剤の製造方法であって、高分子化硬化剤の熱重量減少量が、(A)成分又は(B)成分の少なくとも一方の熱重量減少量が10%より大きくなる温度において10%以下となるように、(A)成分及び(B)成分を反応させる、高分子化硬化剤の製造方法を提供する。本発明の高分子化硬化剤の製造方法では、材料選択の自由度を向上させることができると共に、高温加熱プロセスを必要とする半導体装置の作製においてボイドの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、材料選択の自由度を向上させることができると共に、高温加熱プロセスを必要とする半導体装置の作製においてボイドの発生を抑制することができる。本発明によれば、高温加熱プロセスを必要とする半導体装置の作製に対して有効なボイド低減方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。
【図3】ボイド発生率の評価用サンプルを示す模式断面図である。
【図4】圧着後のフィルム状接着剤の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本実施形態の半導体用接着剤は、本実施形態の樹脂組成物を含有する。本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の高分子化硬化剤を含む。
【0019】
[高分子化硬化剤]
本実施形態の高分子化硬化剤は、(A)エポキシ樹脂Aと、(B)硬化剤Aとから合成される。本実施形態の高分子化硬化剤の熱重量減少量は、エポキシ樹脂A又は硬化剤Aの少なくとも一方の熱重量減少量が10%より大きくなる温度において10%以下である。
【0020】
(エポキシ樹脂A)
エポキシ樹脂Aとしては、特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ナフタレン型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、フェノールアラルキル型、ビフェニル型、トリフェニルメタン型、ジシクロペンタジエン型、各種多官能エポキシ樹脂等を使用することができる。これらは1種類単独又は2種類以上の混合体として使用することができる。
【0021】
エポキシ樹脂Aの熱重量減少量は、特に制限されるものではなく、高分子化硬化剤の熱重量減少量が、エポキシ樹脂A又は硬化剤Aの少なくとも一方の熱重量減少量が10%より大きくなる温度において10%以下となる限り、エポキシ樹脂Aの240℃における熱重量減少量(以下、場合により「240℃熱重量減少量」という。)や270℃における熱重量減少量(以下、場合により「270℃熱重量減少量」という。)も制限されない。
【0022】
(硬化剤A)
硬化剤Aとしては、例えばフェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ホスフィン系硬化剤、及び、非共有電子対を有する窒素原子含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられ、中でも、非共有電子対を有する窒素原子含有化合物が好ましい。
【0023】
(a1)フェノール樹脂系硬化剤
フェノール樹脂系硬化剤としては、分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールナフトールホルムアルデヒド重縮合物、トリフェニルメタン型多官能フェノール樹脂、各種多官能フェノール樹脂等を使用することができる。これらは1種類単独又は2種類以上の混合体として使用することができる。
【0024】
(a2)酸無水物系硬化剤
酸無水物系硬化剤としては、例えば、メチルシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等を使用することができる。これらは1種類単独又は2種類以上の混合体として使用することができる。
【0025】
(a3)ホスフィン系硬化剤
ホスフィン系硬化剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4−メチルフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウム(4−フルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。これらは1種類単独又は2種類以上の混合体として使用することができる。
【0026】
(a4)非共有電子対を有する窒素原子含有化合物
非共有電子対を有する窒素原子含有化合物としては、非共有電子対を有する窒素原子を化合物中に含有していればどのような置換基を有していても特に問題はなく、例えば第1級アルキルアミン、第2級アルキルアミン、第3級アルキルアミン、アリールアミン、さらに複素環アミンであるピリジン類、ピロール類、キノリン類、イミダゾール類、インドール類、ピリミジン類、ピロリジン類、ピペリジン類、トリアジン類、ジアゾ化合物等が挙げられ、中でもイミダゾール類が好ましい。これらは1種類単独又は2種類以上の混合体として使用することができる。
【0027】
イミダゾール類としては、例えば、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、その他、酸とイミダゾールの付加体、エポキシ樹脂とイミダゾール類の付加体等が挙げられる。
【0028】
硬化剤Aの熱重量減少量は、特に制限されるものではなく、高分子化硬化剤の熱重量減少量が、エポキシ樹脂A又は硬化剤Aの少なくとも一方の熱重量減少量が10%より大きくなる温度において10%以下となる限り、硬化剤Aの240℃熱重量減少量や270℃熱重量減少量も制限されない。
【0029】
エポキシ樹脂Aと硬化剤Aとの含有量の比(モル比)は、エポキシ樹脂A1.0molに対して硬化剤Aが1.0〜5.0molが好ましく、1.0〜3.0molがより好ましい。エポキシ樹脂Aに対して硬化剤Aが同等又は多量であると、高分子化硬化剤の重量平均分子量(Mw)が大きくなりすぎないため好ましい。
【0030】
高分子化硬化剤は、ボイドの発生を更に抑制する観点から、室温(25℃)、1気圧で固形であることが好ましい。
【0031】
高分子化硬化剤の重量平均分子量(Mw)は1000〜15000が好ましく、1500〜13000がより好ましい。重量平均分子量が1000以上である場合は、高分子化硬化剤の熱重量減少量が低くなり易く、ボイドの発生を更に抑制することができる。重量平均分子量が15000より大きい場合は、後述するエポキシ樹脂Bに対して多量の高分子化硬化剤を半導体用接着剤の作製時に添加することとなり、半導体用接着剤が液状やペースト状の場合は、半導体用接着剤が増粘し流動性が低下(埋め込み性の低下等)し、半導体用接着剤がフィルム状である場合は、フィルム形成性の低下や、前述と同様に増粘し流動性が低下(埋め込み性の低下等)する傾向がある。なお、上記の重量平均分子量とは、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所社製、商品名:C−R4A)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量のことである。
【0032】
高分子化硬化剤の重量平均分子量は、適宜使用上に不都合がないように調整すればよい。高分子化硬化剤の重量平均分子量は、エポキシ樹脂Aに対して硬化剤Aの含有量を増加させれば低下する傾向があり、合成の際のNVを低くしても低下する傾向がある。また、高分子化硬化剤の重量平均分子量は、高分子化硬化剤の各含有成分の重量平均分子量や反応性、さらに反応温度や反応時間を調整することによっても制御が可能である。これにより、高分子化硬化剤の熱重量減少量の調整が可能である。
【0033】
高分子化硬化剤の熱重量減少量は、エポキシ樹脂A又は硬化剤Aの少なくとも一方の熱重量減少量が10%より大きくなる温度において、10%以下であり、ボイドの発生を更に抑制する観点から、9%以下が好ましく、8%以下がより好ましい。また、高分子化硬化剤の熱重量減少量は、エポキシ樹脂A及び硬化剤Aのいずれの熱重量減少量より小さくてもよい。なお、高分子化硬化剤の熱重量減少量は、昇温速度:10℃/分、空気流量:400mL/分、測定温度:35〜400℃の条件で行われる熱重量分析において、初期(35℃)の質量に対する35℃から所定温度までに揮発した質量の割合により算出される質量減少量である。
【0034】
また、高分子化硬化剤の240℃における熱重量減少量は10%以下であることが好ましく、ボイドの発生を更に抑制する観点から、9%以下がより好ましく、8%以下が更に好ましい。なお、「240℃における熱重量減少量」とは、昇温速度:10℃/分、空気流量:400mL/分、測定温度:35〜400℃の条件で行われる熱重量分析において、初期(35℃)の質量に対する35℃から240℃までに揮発した質量の割合により算出される質量減少量である。
【0035】
高分子化硬化剤の270℃における熱重量減少量は10%以下であることが好ましく、ボイドの発生を更に抑制する観点から、9.5%以下がより好ましく、9.0%以下が更に好ましい。なお、「270℃における熱重量減少量」とは、昇温速度:10℃/分、空気流量:400mL/分、測定温度:35〜400℃の条件で行われる熱重量分析において、初期(35℃)の質量に対する35℃から270℃までに揮発した質量の割合により算出される質量減少量である。
【0036】
[高分子化硬化剤の製造方法]
次に、エポキシ樹脂A及び硬化剤Aをプレ高分子化する高分子化硬化剤の製造方法について説明する。高分子化硬化剤の製造方法では、高分子化硬化剤の熱重量減少量が、エポキシ樹脂A又は硬化剤Aの少なくとも一方の熱重量減少量が10%より大きくなる温度において10%以下となるように、エポキシ樹脂A及び硬化剤Aを反応させる。高分子化硬化剤の製造方法では、エポキシ樹脂A及び硬化剤Aが無触媒でプレ高分子化されることが好ましい。プレ高分子化の際には、エポキシ樹脂A又は硬化剤Aの少なくとも一方が溶解する溶媒や濃度にする。溶媒としては、使用用途に不都合がないものを用いればよい。
【0037】
高分子化硬化剤の製造方法では、エポキシ樹脂A及び硬化剤Aを溶媒に添加し、スピナー等で撹拌しながら混ぜ合わせ反応させる。反応時間は30〜300分が好ましい。反応温度は、エポキシ樹脂Aと硬化剤Aが反応を開始する温度以上で行えばよい。反応開始温度は、例えば、DSC測定装置(例えばパーキンエルマー社製、DSC−7型)を用いて、サンプル量5mg、昇温速度10℃/min、25〜300℃を測定し決定してもよい。反応開始温度(onset温度:平均場近似一次転移温度)とは、縦軸熱量(W/g)−横軸温度(℃)とした場合、DSC測定による発熱ピークの立ち上がり曲線で最もピークの勾配が急になった部分の接線と温度軸の交点の温度とする。
【0038】
反応後、溶媒の乾燥又は再沈殿法により固形生成物を単離することで高分子化硬化剤が得られる。溶媒が残存する場合は、貧溶媒で洗浄し、オーブン等で乾燥してもよい。
【0039】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、上記高分子化硬化剤と、(C)エポキシ樹脂Bとを含む。
【0040】
エポキシ樹脂Bとしては、エポキシ樹脂Aと同様の樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂Bは、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ナフタレン型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、フェノールアラルキル型、ビフェニル型、トリフェニルメタン型、ジシクロペンタジエン型、各種多官能エポキシ樹脂等を使用することができる。これらは1種類単独又は2種類以上の混合体として使用することができる。
【0041】
エポキシ樹脂Bとしては、例えば、上述の高温加熱プロセスが240℃である場合には、240℃熱重量減少量が10%以下であるものが好ましく、上述の高温加熱プロセスが270℃である場合には、270℃熱重量減少量が10%以下であるものが好ましい。エポキシ樹脂Bの240℃熱重量減少量や270℃熱重量減少量が10%以下であると、樹脂組成物中の揮発成分が少なくなりボイドの発生を更に抑制できる。
【0042】
また、エポキシ樹脂Bとしては、室温、1気圧で固形であるものが好ましい。エポキシ樹脂Bが固形であると、液状である場合に比べ、比較的熱重量減少量が低くなる傾向があり、ボイドの発生を更に抑制できる。
【0043】
エポキシ樹脂Bに対する高分子化硬化剤の質量比は、0.001〜0.1が好ましく、0.001〜0.05がより好ましい。質量比が0.001より小さい場合には、硬化性が低下する傾向があり、0.1を超える場合には、増粘や硬化速度の増加により、流動性の低下や接続不良が発生する傾向がある。
【0044】
[半導体用接着剤]
本実施形態の半導体用接着剤は、上記樹脂組成物を含む。半導体用接着剤としてはどのような形態でもよく、例えば、液状材料、ペースト材料、フィルム材料、粉状材料等として用いることができる。
【0045】
上記半導体用接着剤に関して、エポキシ樹脂Bと高分子化硬化剤とを含む樹脂組成物の他、高分子化硬化剤とは異なる硬化剤B、フィラ、そのほか添加剤を含有してもよい。
【0046】
硬化剤Bとしては、適宜用途に応じて種類、添加量は決定すればよく、特に制限はないが、加熱プロセス温度(例えば240℃)での熱重量減少量が10%以下であるものが好ましい。硬化剤Bとしては、以下に示す硬化剤(b1)〜(b5)が挙げられる。なお、硬化剤(b1)〜(b5)は、1種類単独又は2種類以上添加してもよい。
【0047】
(b1)フェノール樹脂系硬化剤
フェノール樹脂系硬化剤としては、分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールナフトールホルムアルデヒド重縮合物、トリフェニルメタン型多官能フェノール、各種多官能フェノール樹脂等を使用することができる。これらは1種類単独又は2種類以上の混合体として使用することができる。また、液状フェノールは高温加熱時に分解して揮発成分が発生する傾向があることから、室温、1気圧で固形のフェノール樹脂系硬化剤を用いることが好ましい。
【0048】
エポキシ樹脂Bと(b1)フェノール樹脂系硬化剤との当量比((b1)フェノール樹脂/エポキシ樹脂B)は、硬化性や接着性、保存安定性等の観点から0.3〜1.5が好ましく、0.4〜1.0がより好ましく、0.5〜1.0が更に好ましい。当量比が0.3より小さいと、硬化性が低下し、接着力が低下する傾向があり、1.5を超えると、未反応のフェノール性水酸基が過剰に残存し、吸水率が高くなり、絶縁信頼性が低下する傾向がある。フェノール性水酸基を含むと、金属表面に形成された酸化膜を除去するフラックス活性を示し、接続性、信頼性が向上する。
【0049】
(b2)酸無水物系硬化剤
酸無水物系硬化剤としては、例えば、メチルシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等を使用することができる。これらは1種類単独又は2種類以上の混合体として使用することができる。また、液状酸無水物は高温加熱時に分解して揮発成分が発生する傾向があることから、室温、1気圧で固形の酸無水物を用いることが好ましい。
【0050】
エポキシ樹脂Bと(b2)酸無水物系硬化剤との当量比((b2)酸無水物系硬化剤/エポキシ樹脂B)は、硬化性や接着性、保存安定性等の観点から0.3〜1.5が好ましく、0.4〜1.0がより好ましく、0.5〜1.0が更に好ましい。当量比が0.3より小さいと、硬化性が低下し、接着力が低下する傾向があり、1.5を超えると、未反応の酸無水物が過剰に残存し、吸水率が高くなり、絶縁信頼性が低下する傾向がある。酸無水物を含むと、金属表面に形成された酸化膜を除去するフラックス活性を示し、接続性、信頼性が向上する。
【0051】
(b3)アミン系硬化剤
アミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等を使用することができる。また、液状アミンは高温加熱時に分解して揮発成分が発生する傾向があることから、室温、1気圧で固形のアミンを用いることが好ましい。
【0052】
アミン系硬化剤としては、エポキシ樹脂Bと(b3)アミンとの当量比((b3)アミン/エポキシ樹脂B)は、硬化性や接着性、保存安定性等の観点から0.3〜1.5が好ましく、0.4〜1.0がより好ましく、0.5〜1.0が更に好ましい。当量比が0.3より小さいと、硬化性が低下し、接着力が低下する傾向があり、1.5を超えると、未反応のアミンが過剰に残存し、絶縁信頼性が低下する傾向がある。アミン類を含むと、金属表面に形成された酸化膜を除去するフラックス活性を示し、接続性、信頼性が向上する。
【0053】
(b4)イミダゾール系硬化剤
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。中でも、硬化性や保存安定性、接続信頼性の観点から、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。これらは1種類単独又は2種類以上を併用してもよい。また、これらをマイクロカプセル化して潜在性を高めたものを用いてもよい。
【0054】
(b5)ホスフィン系硬化剤
ホスフィン系硬化剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4−メチルフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウム(4−フルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。これらは1種類単独又は2種類以上を併用してもよい。
【0055】
エポキシ樹脂Bに対する硬化剤Bの質量比は、0.001〜0.1が好ましく、0.001〜0.05がより好ましい。質量比が0.001より小さい場合には、硬化性が低下する傾向があり、0.1を超える場合には、半導体装置の金属−金属の接続部が形成される前に硬化してしまい、接続不良が発生する傾向がある。
【0056】
上記半導体用接着剤のフィラは、適宜用途に応じて種類、含有量を決定すればよい。フィラとしては、例えば、絶縁性無機フィラやウィスカー、樹脂フィラを用いることができる。絶縁性無機フィラとしては、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ、窒化ホウ素等が挙げられ、その中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタン、窒化ホウ素が好ましく、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素がより好ましい。ウィスカーとしては、例えば、ホウ酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、酸化亜鉛、珪酸カルシウム、硫酸マグネシウム、窒化ホウ素等が挙げられる。樹脂フィラとしては、例えば、ポリウレタン、ポリイミド等を用いることができる。これらのフィラ及びウィスカーは1種類単独で又は2種類以上の混合体として使用することもできる。フィラの形状、粒径、及び含有量については、特に制限されない。
【0057】
上記半導体用接着剤のその他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、レベリング剤、イオントラップ剤を配合してもよい。
【0058】
上記半導体用接着剤がフィルム状等の形状を保持する必要がある場合は、重量平均分子量10000以上の高分子成分を用いてもよい。高分子成分としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、アクリルゴム等が挙げられる。
【0059】
重量平均分子量10000以上の高分子成分と、エポキシ樹脂B、高分子化硬化剤及び硬化剤Bの混合物との質量比は、特に制限されないが、フィルム状を保持するためには、重量平均分子量10000以上の高分子成分1質量部に対して、エポキシ樹脂B、高分子化硬化剤及び硬化剤Bの混合物が0.01〜4質量部であることが好ましく、0.1〜4質量部であることがより好ましく、0.1〜3質量部であることが更に好ましい。この質量比が0.01質量部より小さいと、フィルム状接着剤の硬化性が低下し、接着力が低下する傾向があり、4質量部より大きいと、フィルム形成性が低下する傾向がある。
【0060】
重量平均分子量10000以上の高分子成分としては、例えば、上述の高温加熱プロセスが240℃である場合には、240℃熱重量減少量が10%以下であるものが好ましい。重量平均分子量10000以上の高分子成分の240℃熱重量減少量が10%以下であると、半導体用接着剤中の揮発成分が少なくなりボイドの発生が更に抑制される。上述の高温加熱プロセスが270℃である場合には、同様に、270℃熱重量減少量が10%以下であるものが好ましい。
【0061】
また、カルボン酸は有機酸であり、はんだや銅表面の酸化膜や不純物を取り除くフラックス活性を示すため、接続性向上の観点から半導体用接着剤に添加されてもよい。さらに、カルボン酸は他の有機酸と異なり、エポキシ樹脂と容易に反応するため、系中に単体として残りにくいため、耐HAST性(絶縁信頼性)を劣化させない。カルボン酸としては、特に制限はないが、例えば、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸等の脂式飽和カルボン酸。オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸等の脂式不飽和カルボン酸。シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の脂式ジカルボン酸。安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、ペンタンカルボン酸、メシン酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0062】
[半導体装置]
本実施形態の半導体装置は、上記半導体用接着剤を用いている。以下、本実施形態の半導体装置について、図1,2を用いて更に説明する。図1は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図1(a)に示すように、半導体装置100は、互いに対向する半導体チップ10及び基板(配線回路基板)20と、半導体チップ10及び基板20の互いに対向する面にそれぞれ配置された配線(接続部)15と、半導体チップ10及び基板20の配線15を互いに電気的に接続する接続バンプ30と、半導体チップ10及び基板20間の空隙に隙間なく充填されて配置された接着剤組成物(樹脂組成物)40とを有している。半導体チップ10及び基板20は、配線15及び接続バンプ30によりフリップチップ接続されている。接着剤組成物40は、上記半導体用接着剤の硬化物である。配線15及び接続バンプ30は、接着剤組成物40により封止されており外部環境から遮断されている。
【0063】
図1(b)に示すように、半導体装置200は、2つの半導体チップ10が配線15及び接続バンプ30によりフリップチップ接続されている点を除き、半導体装置100と同様である。
【0064】
半導体チップ10としては、特に制限はなく、シリコン、ゲルマニウム等の同一種類の元素から構成される元素半導体、ガリウムヒ素、インジウムリン等の化合物半導体等、各種半導体を用いることができる。
【0065】
配線15は、主成分として金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えばスズ−銀、スズ−鉛、スズ−ビスマス、スズ−銅)、ニッケル、スズ、鉛等を含有しており、複数の金属を含有していてもよい。
【0066】
基板20としては、特に制限はなく、主な成分として、ガラスエポキシ、ポリイミド、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン、ポリイミド等を主な成分とする絶縁基板の表面に、金属膜の不要な個所をエッチング除去して形成された配線(配線パターン)を有する回路基板、上記絶縁基板の表面に金属めっき等によって配線が形成された回路基板、上記絶縁基板の表面に導電性物質を印刷して配線が形成された回路基板等を用いることができる。
【0067】
また、本実施形態の半導体装置は、半導体装置100,200に示すような構造(パッケージ)が複数積層されていてもよい。この場合、半導体装置100,200は、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えばスズ−銀、スズ−鉛、スズ−ビスマス、スズ−銅)、スズ、ニッケル等を含むバンプや配線で互いに電気的に接続されていてもよい。半導体装置を複数積層する手法としては、例えばTSV(Through-Silicon Via)技術が挙げられる。
【0068】
[半導体装置の製造方法]
半導体装置の製造方法(半導体装置組立方式)は、エポキシ樹脂A又は硬化剤Aの少なくとも一方の熱重量減少量が10%より大きくなる温度の高温加熱プロセスを備える。高温加熱プロセスの温度としては、例えば240℃以上である。本実施形態の半導体装置の製造方法では、上記接着剤組成物を半導体チップ及び配線回路基板の間、又は、複数の半導体チップ間に介在させた状態で接続部同士を電気的に接続する。上記接続部同士は、例えば圧着温度240〜270℃、圧着圧力0.1MPa、圧着時間10秒の条件により熱圧着されて接続される。
【0069】
以下、半導体装置100の製造方法について、図2を用いて更に説明する。図2は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。
【0070】
まず、図2(a)に示すように、配線15を有する基板20上に、接続バンプ30を形成する位置に開口を有するソルダーレジスト50を形成する。このソルダーレジスト50は必ずしも設ける必要はないが、基板20上にソルダーレジスト50を設けることにより、配線15間のブリッジの発生を抑制し、接続性・絶縁信頼性を向上させることができる。
【0071】
次に、図2(a)に示すように、ソルダーレジスト50の開口に接続バンプ30を形成する。そして、図2(b)に示すように、ソルダーレジスト50を除去した後、フィルム状の接着剤組成物40を基板20上に貼付する。フィルム状の接着剤組成物40の貼付は、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等によって行うことができる。フィルム状の接着剤組成物40の供給面積や厚みは、半導体チップ10及び基板20のサイズや、接続バンプ30の高さ等によって適宜設定される。
【0072】
フィルム状の接着剤組成物40を基板20に貼り付けた後、半導体チップ10の配線15と接続バンプ30とを位置合わせする。続いて、フリップチップボンダー等の接続装置を用いて、半導体チップ10と基板20とを接続バンプ30の融点以上の温度で加熱しながら押し付けて、図2(c)に示すように、半導体チップ10と基板20とを接続すると共に、フィルム状の接着剤組成物40によって半導体チップ10及び基板20間の空隙を封止充填する。以上により、半導体装置100が得られる。
【0073】
上記半導体装置の製造方法では、位置合わせをした後に仮固定し、リフロー炉で加熱処理することによって、接続バンプ30を溶融させて半導体チップ10と基板20とを接続してもよい。仮固定の段階では、金属接合を形成することが必ずしも必要ではないため、上述の本圧着に比べて低荷重、短時間、低温度による圧着でよく、生産性が向上すると共に接続部の劣化を抑制することができる。
【0074】
また、半導体チップ10と基板20とを接続した後、オーブン等で加熱処理を行って、接続性・絶縁信頼性を高めてもよい。加熱温度は、フィルム状接着剤の硬化が進行する温度が好ましく、完全に硬化する温度がより好ましい。加熱温度、加熱時間は適宜設定される。
【0075】
上記半導体装置の製造方法では、フィルム状の接着剤組成物40を半導体チップ10に貼付した後に基板20を接続してもよい。また、半導体チップ10及び基板20を配線15及び接続バンプ30により接続した後、半導体チップ10及び基板20間の空隙にペースト状の接着剤組成物を充填してもよい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0077】
以下に実施例・比較例の使用材料、合成・評価方法を示す。
(a)エポキシ樹脂A
ビスフェノールF型液状エポキシ(ジャパンエポキシレジン株式会社、商品名:YL983U、以下「YL983」という)。240℃熱重量減少量:1.5%。270℃熱重量減少量:5.02%。
単官能液状エポキシ(旭電化工業株式会社、商品名:ED−509S、以下「ED」という)。240℃熱重量減少量:99%。270℃熱重量減少量:99%。
(b)硬化剤A
2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成株式会社製、商品名:2PHZ−PW、以下「2PHZ」という)。240℃熱重量減少量:13.0%。270℃熱重量減少量:17.1%。
2−フェニル−4-メチル−5-ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成株式会社製、商品名:2P4MHZ−PW、以下「2P4MHZ」という)。240℃熱重量減少量:10.1%。270℃熱重量減少量:11.5%。
(c)エポキシ樹脂B
トリフェノールメタン骨格含有多官能固形エポキシ(ジャパンエポキシレジン株式会社、商品名:EP1032H60、以下「EP1032」という)。240℃熱重量減少量:0.4%。270℃熱重量減少量:0.5%。
柔軟性エポキシ(ジャパンエポキシレジン株式会社、商品名:YL7175)。240℃熱重量減少量:1.15%。270℃熱重量減少量:1.5%。
(d)重量平均分子量10000以上の高分子成分(ベース樹脂)
フェノキシ樹脂(東都化成株式会社、商品名:ZX1356)。240℃熱重量減少量:1.3%。270℃熱重量減少量:1.5%。
(e)フィラ
シリカフィラ(アドマテックス株式会社、商品名:SE2050、平均粒径:0.5μm)
【0078】
(高分子化硬化剤の合成)
以下の合成方法により高分子化硬化剤a〜dを合成した。
【0079】
(高分子化硬化剤a)
YL983のエポキシ等量1mol(5.33g、エポキシ等量:169)に対して、2PHZ1.5mol(9.65g、Mw:204)を、全体のNVが40%になるように、枝付きフラスコ中の溶媒N−メチル−2−ピロリドン(関東化学製、以下「NMP」という)中に添加した。
【0080】
スピナーを投入し、スターラー(FINE COMPANY CO.,LTD、FINE AUTO STIRRER)を用いて500〜1000rpmで撹拌した。還流管を設置し、水冷却を行いながら、オイルバスで150℃/3h撹拌後、再沈殿法によりNMPを除去した。再沈殿は、用いた溶媒の3倍質量のトルエンで3回、同様に3倍質量のヘキサンで3回洗浄した。洗浄後、クリーンオーブン(ESPEC製)で110℃/1h乾燥し、高分子化硬化剤aを得た(Mw:12300、Mn:9200、分散度:1.34、240℃熱重量減少量:9.81%、270℃熱重量減少量:9.95%)。
【0081】
2PHZとエポキシ樹脂との反応に起因する2PHZの窒素に結合したプロトンはH−NMRでは12〜13ppmにピークが確認される。上述した高分子型硬化剤aもブロードではあるが12.5ppm付近にピークを確認した。
【0082】
(高分子化硬化剤b)
YL983のエポキシ等量1mol(5.33g、エポキシ等量:169)に対して、2PHZ1.8mol(11.58g、Mw:204)を、全体のNVが40%になるように、枝付きフラスコ中のNMP中に添加した。その後、実施例1と同様の手法により、高分子化硬化剤bを得た(Mw:10900、Mn:9000、分散度:1.21、240℃熱重量減少量:6.32%、270℃熱重量減少量:8.45%)。
高分子化硬化剤bは、H−NMRにおいてブロードではあるが12.5ppm付近にピークを確認した。
【0083】
(高分子化硬化剤c)
YL983のエポキシ等量1mol(5.33g、エポキシ等量:169)に対して、2P4MHZ1.5mol(8.9g、Mw:188)を、全体のNVが40%になるように、枝付きフラスコ中のNMP中に添加した。その後、実施例1と同様の手法により、高分子化硬化剤cを得た(Mw:9900、Mn:8100、分散度:1.22、240℃熱重量減少量:6.04%、270℃熱重量減少量:7.95%)。
2P4MHZとエポキシ樹脂との反応に起因する2P4MHZの窒素に結合したプロトンはH−NMRでは12〜13ppmにピークが確認される。上述した高分子型硬化剤cもブロードではあるが12.5ppm付近にピークを確認した。
【0084】
(高分子化硬化剤d)
EDのエポキシ等量1mol(5.33g、エポキシ等量:206)に対して、2PHZ1.5mol(7.9g、Mw:204)を、全体のNVが40%になるように、枝付きフラスコ中のNMP中に添加した。その後、実施例1と同様の手法により、高分子化硬化剤dを得た(Mw:7900、Mn:7200、分散度:1.09、240℃熱重量減少量:7.35%、270℃熱重量減少量:9.66%)。
高分子化硬化剤dは、H−NMRにおいてブロードではあるが12.5ppm付近にピークを確認した。
【0085】
(フィルム状接着剤の作製)
(実施例1)
上述のように合成した高分子化硬化剤aを0.0002mol、YL7175を1.0g、EP1032を0.9g、シリカフィラを2.0g、全体がNV60%になるようにトルエンと酢酸エチルの混合溶媒(質量比1:1)に添加した。その後、Φ0.8mm、Φ2.0mmのビーズを固形分と同質量加え、ビーズミル(フリッチュ・ジャパン株式会社、遊星型微粉砕機P−7)で30分撹拌した。その後、ZX1356を1.0g加え、再度ビーズミルで30分撹拌した。撹拌に用いたビーズをろ過によって除去した。作製したワニスを小型精密塗工装置(廉井精機)で塗工し、クリーンオーブン(ESPEC製)で乾燥し(110℃、10分)、フィルム状接着剤を得た。
【0086】
(実施例2〜4及び比較例1〜2)
高分子化硬化剤aに代えて表2に示す硬化剤を用いたこと以外は、実施例1と同様に行って実施例2〜4及び比較例1〜2のフィルム状接着剤を得た。
【0087】
(評価方法)
(1)分子量測定方法
高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、商品名:C−R4A)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの値として、高分子化硬化剤の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定した。溶媒はDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)を用いた。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の値から、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)を求めた。
【0088】
(2)熱重量減少量測定方法
サンプル(高分子化硬化剤等)をPtパンに入れ、10℃/minで35℃から400までの熱重量減少量をTG/DTA測定装置(セイコーインスツル株式会社、EXSTAR6000)を用いて測定した。240℃熱重量減少量及び270℃熱重量減少量を各サンプルについて測定した。
【0089】
(3)ボイド発生率評価方法
フィルム状接着剤におけるボイド発生率の評価方法は、図3の各部材を用いて次のように行った。まず、実施例1〜4、比較例1〜2で作製したフィルム状接着剤を切り抜き、10mm×10mm×0.03mmのフィルム状接着剤51を得た。次に、銅箔をコーティングしたガラスエポキシ基板52(25mm×25mm×0.3mm)上にフィルム状接着剤51を100℃でラミネートした。その後、FCB3(パナソニック製)を用いて、銅バンプ53を介してはんだボール54が付いたチップ55(銅バンプ53+はんだボール54:40μm、バンプピッチ80μm、チップサイズ:7mm×7mm×725μm)をフィルム状接着剤51に圧着した。圧着条件:240℃、10秒、0.1MPaのサンプルと、圧着条件:270℃、10秒、0.1MPaのサンプルとをそれぞれ作製した。
【0090】
ボイド発生率は、圧着後のサンプルを超音波探査映像装置(HITACHI製)により外観画像を撮り、スキャナGT−9300UF(EPSON社製)でチップ上のフィルム状接着剤の画像を取り込み、画像処理ソフトAdobe Photoshopを用いて、色調補正、二階調化によりボイド部分を識別し、ヒストグラムによりボイド部分の占める割合を算出した。チップ上のフィルム部分の面積を100%とした。ボイド発生率が1%以下である場合をA、1%より大きく5%以下である場合をB、5%より大きい場合をCとした。図4(a)に、ボイド発生率がAとして評価される基板の外観(実施例1:ボイド発生率0.1%)を示す。図4(b)に、ボイド発生率がBとして評価される基板の外観(比較例1:ボイド発生率3.5%)を示す。図4(c)に、ボイド発生率がCとして評価される基板の外観(比較例3:ボイド発生率12.05%)を示す。
【0091】
合成した高分子化硬化剤及び評価結果を表1,2に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
表1より、240℃熱重量減少量や270℃熱重量減少量が10%より大きい成分を用いた場合であっても、プレ高分子化することで10%以下の熱重量減少量を与える高分子化硬化剤a〜dが得られることが確認された。
【0095】
表2より、240℃熱重量減少量や270℃熱重量減少量が10%以下である高分子化硬化剤a〜dを用いたフィルム状接着剤は、240℃圧着及び270℃圧着のそれぞれにおいてボイドの発生が抑制されていることが確認された。
【符号の説明】
【0096】
10…半導体チップ、15…配線、20…基板、30…バンプ、40…接着剤組成物、50…ソルダーレジスト、51…フィルム状接着剤、52…銅箔をコーティングしたガラスエポキシ基板、53…銅バンプ、54…はんだボール、55…シリコンチップ、100,200…半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤の反応により得られる高分子化硬化剤であって、
前記高分子化硬化剤の熱重量減少量が、前記(A)成分又は前記(B)成分の少なくとも一方の熱重量減少量が10%より大きくなる温度において10%以下である、高分子化硬化剤。
【請求項2】
半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置における前記半導体チップ及び前記配線回路基板の間、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置における前記複数の半導体チップの間に配置される半導体用接着剤に用いられ、前記半導体用接着剤が240℃以上で加熱される、請求項1に記載の高分子化硬化剤。
【請求項3】
240℃における熱重量減少量が10%以下である、請求項1又は2に記載の高分子化硬化剤。
【請求項4】
前記(B)成分が、非共有電子対を有する窒素原子含有化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子化硬化剤。
【請求項5】
前記非共有電子対を有する窒素原子含有化合物がイミダゾール類である、請求項4に記載の高分子化硬化剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化硬化剤と、(C)分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、を含む、樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂組成物を含有する、半導体用接着剤。
【請求項8】
フィルム状である、請求項7に記載の半導体用接着剤。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の半導体用接着剤を用いた、半導体装置。
【請求項10】
(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を反応させる高分子化硬化剤の製造方法であって、前記高分子化硬化剤の熱重量減少量が、前記(A)成分又は前記(B)成分の少なくとも一方の熱重量減少量が10%より大きくなる温度において10%以下となるように、前記(A)成分及び前記(B)成分を反応させる、高分子化硬化剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−195778(P2011−195778A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66760(P2010−66760)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】