説明

高密度実装用配線基板およびその製造方法

【課題】耐熱性、低誘電率、低吸水率、低熱膨張率、導体や絶縁膜相互の高密着性、優れた膜強度や破断伸び率、半導体デバイス実装における応力にも耐え、信頼性を有し、高速、高密度実装に最適な高密度実装用配線基板を提供する。
【解決手段】高密度実装用配線基板用のベース基材の上に少なくとも1層の層間絶縁膜と導体配線パターンを形成し、前記絶縁膜の少なくとも1層がポリベンゾオキサゾール膜からなり、前記ポリベンゾオキサゾール膜と導体配線パターンの間にTi、Ti系化合物およびNiの少なくとも1種類からなる接着層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高密度実装用配線基板に関する。詳しくは、本発明は、半導体デバイスを高密度に搭載し、高速かつ高密度なモジュールやシステムを実現するのに最適な高密度実装用配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体デバイスの高速かつ高集積化に伴い、これを搭載する配線基板を構成する層間絶縁膜やパッシベーション膜には、半田リフローや半導体デバイスをリペアするのに十分な耐熱性、高速伝送を実現する低誘電率、さらには優れた信頼性を達成するための低吸水率、低熱膨張率、導体や絶縁膜相互の高密着性、高膜強度、良好な破断伸び率などが要求されている。
【0003】配線基板を構成する層間絶縁膜やパッシベーション膜としては、ポリイミド樹脂(例えば、特開平4−284455号公報、特開平5−165217号公報)、有機珪素樹脂(例えば、特開平3−043455号公報、特開平4−046934号公報、特開平6−130364号公報、特開平7−022508号公報)などが提案されている。
【0004】しかしながら、上記ポリイミド樹脂の場合は、硬化反応時に縮合水を伴うため硬化時における収縮率が大きく、配線段差の平坦性に劣り、高精度かつ高密度な配線基板の形成が困難である。また大きな収縮応力が発生するため、膜を多層化した場合に、クラックが発生してしまう。さらには、ポリイミド樹脂内にCuイオンがマイグレーションするため、低抵抗のCuを導体材料として適用するには絶縁信頼性上の問題がある。
【0005】有機珪素樹脂においては、硬化時の収縮はポリイミド樹脂ほど深刻ではないものの、珪素基の導入により樹脂の吸水率が大きくなり、耐湿信頼性に問題が生じている。さらには熱膨張率も珪素基の導入により大きくなり、半導体デバイスを搭載したときの応力が大きくなり、クラックが発生してしまう。
【0006】一方、収縮応力が発生せず耐湿信頼性も良好な層間絶縁膜として、ベンゾシクロブテン樹脂(例えば、特開平4−167596号公報)、フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート樹脂(例えば、特開平9−214141号公報)が考案されている。特にこれらの樹脂の場合は、前記ポリイミド樹脂とは異なり、Cuとの間にイオンマイグレーションも起こらず、コストパフォーマンスに優れたCu配線をバリアメタルなしで形成できる。また、ポリイミド樹脂とは異なり、キュア時における収縮率も小さく、配線段差の平坦性に優れている。
【0007】しかしながら、上記ベンゾシクロブテン樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート樹脂は、ポリイミド樹脂ほどの膜強度や破断伸び率、さらには可とう性を有さず、配線基板単体では問題ないものの、特に大面積の半導体デバイスをフリップチップ方式によりベアで実装したときに発生する実装応力に樹脂が耐えきれず、クラックが発生してしまう。
【0008】収縮応力が発生せず耐湿信頼性に優れ、かつ良好な膜強度、破断伸び率、可とう性にも優れた層間絶縁膜として、ポリベンゾオキサゾール膜が挙げられる。なかでも特開平11−181094号公報に開示されているような含フッ素ポリベンゾオキサゾールは、特に低誘電率な利点も有しており、多層配線用層間絶縁膜としてその用途が開示されている。
【0009】しかしながら、ポリベンゾオキサゾール、特に含フッ素ポリベンゾオキサゾールの場合は、そのまま層間絶縁膜に適用すると、導体配線との密着性が実用上十分でない、熱膨張率が大きく半導体デバイスを搭載したときの応力が大きい、引き裂き強度が小さく、取り扱い性が悪い、などの問題点が生じ、これらの改善が求められている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、以上の点を鑑み、耐熱性、低誘電率、低吸水率、低熱膨張率、導体や絶縁膜相互の高密着性を有し、さらには膜強度や破断伸び率などに優れ、半導体デバイス実装における応力にも耐え、信頼性に優れ、かつ高速、高密度実装に最適な高密度実装用配線基板を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を達成するために鋭意検討した結果、本発明では次のような着想に基づいている。すなわち本発明は、ベース基材上に少なくとも1層の層間絶縁膜と導体配線パターンとを有してなり、前記絶縁膜の少なくとも1層がポリベンゾオキサゾール膜からなることとし、さらに、ポリベンゾオキサゾール膜と導体配線パターンの間に、Ti、Ti系化合物、またNiの少なくとも1種類からなる接着層を設けることとしている。ここで、ポリベンゾオキサゾールとしては、一般式(1)[化6]
【0012】
【化6】


(式中、0.05≦n≦0.5、n+m=1であり、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は任意の二官能基を示す。)で示される化合物が好ましく用いられる。一般式(1)で表される化合物のうち、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4のいずれかにフッ素が含まれる化合物を含フッ素ポリベンゾオキサゾールと称する。前記含フッ素ポリベンゾオキサゾールは特に低誘電率、低吸水率に優れ、電気特性上望ましい反面、導体配線との密着性に劣っているが、本発明の高密度実装用配線基板によりこの問題を解決することができる。
【0013】さらに、本発明のベース基材上へのポリベンゾオキサゾール膜の形成において、ベース基材とポリベンゾオキサゾール膜の間に、ガラス転移温度が180℃から350℃の範囲である熱可塑性ポリイミド樹脂層を設けることにより、ベース基材とポリベンゾオキサゾール膜の密着性を改善することができる。
【0014】また、ポリベンゾオキサゾール膜は、ある程度の強度を有するが、引き裂き強度が弱く、フィルムとして取り扱いにくかった。しかしながら、上記ベース基材が少なくとも10μmの厚みを有するポリイミド樹脂層を少なくとも有することとしている高密度実装用配線基板によりこの問題を解決することができる。
【0015】さらには、ベース基材上に形成された層間絶縁膜がポリベンゾオキサゾール膜と熱膨張率が40ppm以下である樹脂膜からなる複合化絶縁膜であることとしている高密度実装用配線基板により、半導体デバイスを搭載したときの応力を抑え、クラックの発生を防ぐことができる。
【0016】従って、本発明は以下のように列挙される。
【0017】(1)ベース基材、前記ベース基材上に形成された少なくとも1層の層間絶縁膜、前記絶縁膜の上に形成されたTi、Ti系化合物およびNiのうち少なくとも1種からなる接着層および前記接着層の上に形成された導体配線パターンからなり、前記絶縁膜のうち少なくとも1層がポリベンゾオキサゾール膜であることを特徴とする高密度実装用配線基板。
【0018】(2)前記絶縁膜と前記導体配線パターンが交互に順次積層されて多層配線構造を形成していることを特徴とする(1)に記載の高密度実装用配線基板。
【0019】(3)ベース基材、前記ベース基材上に形成された少なくとも1層の層間絶縁膜、前記絶縁膜の上に形成されたTi、Ti系化合物およびNiのうち少なくとも1種からなる接着層および前記接着層の上に形成された導体配線パターンからなり、前記ベース基材に直接的に接合する層間絶縁膜がポリベンゾオキサゾール膜であることを特徴とする高密度実装用配線基板。
【0020】(4)前記Ti系化合物がTiW、TiNおよびTiCから選ばれたものであることを特徴とする(3)に記載の高密度実装用配線基板。
【0021】(5)前記Ti系化合物のW、NおよびCの含量が少なくとも0.1重量%であることを特徴とする(4)に記載の高密度実装用配線基板。
【0022】(6)前記絶縁膜と前記導体配線パターンが交互に順次積層されて多層配線構造を形成していることを特徴とする(3)に記載の高密度実装用配線基板。
【0023】(7)前記ポリベンゾオキサゾール膜が一般式(1)[化7]
【0024】
【化7】


(式中、0.05≦n≦0.5、n+m=1であり、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は任意の二官能基を示す。)で表されるポリベンゾオキサゾールからなることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1つに記載の高密度実装用配線基板。
【0025】(8)前記ベース基材とこれに直接的に接合するポリベンゾオキサゾール膜の間に、ガラス転移温度が180℃から350℃の範囲である熱可塑性ポリイミド樹脂膜を設けることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1つに記載の高密度実装用配線基板。
【0026】(9)前記ポリイミド樹脂膜の厚みが少なくとも10μmであることを特徴とする(8)に記載の高密度実装用配線基板。
【0027】(10)前記絶縁膜が、前記ポリベンゾオキサゾール膜と熱膨張率が40ppm以下である樹脂膜からなる複合化絶縁膜であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1つに記載の高密度実装用配線基板。
(11)ベース基材上に一般式(1)[化8]
【0028】
【化8】


(式中、0.05≦n≦0.5、n+m=1であり、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は任意の二官能基を示す。)で表されるポリベンゾオキサゾール膜を形成する工程、前記ポリベンゾオキサゾール膜上にTi、Ti系化合物およびNiのうち少なくとも1種からなる接着層をスパッタリング法、蒸着法および無電解めっき法のうちいずれかの方法により形成する工程、前記接着層の上にCu、Pd、PtおよびAuのうち少なくとも1種からなる金属膜を形成する工程、前記金属膜の上に導体配線パターンに相当する部分を除いてフォトレジストをパターニングする工程、前記フォトレジストでマスキングされていない部分に金属めっき膜を無電解めっき法により形成する工程および、前記フォトレジストを剥離して、次いで前記金属膜の余剰分を、次いで前記接着層の余剰分をエッチングにより除去して前記導体配線パターンを形成する工程からなることを特徴とする高密度実装用配線基板の製造方法。
(12)ベース基材上に一般式(1)[化9]
【0029】
【化9】


(式中、0.05≦n≦0.5、n+m=1であり、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は任意の二官能基を示す。)で表される化合物から第1ポリベンゾオキサゾール膜を形成する工程、前記第1ポリベンゾオキサゾール膜上にTi、Ti系化合物およびNiのうち少なくとも1種からなる第1接着層をスパッタリング法、蒸着法および無電解めっき法のうちいずれかの方法により形成する工程、前記第1接着層の上にCu、Pd、PtおよびAuのうち少なくとも1種からなる金属膜を形成する工程、前記金属膜の上に第1導体配線パターンに相当する部分を除いてフォトレジストをパターニングする工程、前記フォトレジストでマスキングされていない部分に金属めっき膜を無電解めっき法により形成する工程、前記フォトレジストを剥離して、次いで前記金属膜の余剰分を、次いで前記接着層の余剰分をエッチングにより除去して前記第1導体配線パターンを形成する工程、前記第1導体配線パターン上に、スパッタリング法、蒸着法および無電解めっき法のうちいずれかの方法とフォトリソ法により、Ti、Ti系化合物およびNiのうち少なくとも1種からなる第2接着層を形成し、前記第2接着層の上に前記一般式(1)で表される化合物により第2ポリベンゾオキサゾール膜を形成する工程からなることを特徴とする高密度実装用配線基板の製造方法。
(13)ベース基材上にポリイミド樹脂膜を形成する工程、前記ポリイミド樹脂膜の上に導体配線パターンを形成し、支持基板を形成する工程、前記支持基板の前記導体配線パターン側の面上に一般式(1)[化10]
【0030】
【化10】


(式中、0.05≦n≦0.5、n+m=1であり、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は任意の二官能基を示す。)で表される化合物からポリベンゾオキサゾール膜を形成する工程、前記ポリベンゾオキサゾール膜の上に熱膨張率が40ppm以下である樹脂膜を形成して前記ポリベンゾオキサゾール膜と前記樹脂膜の複合化絶縁膜を形成する工程からなることを特徴とする高密度実装用配線基板の製造方法。
(14)ベース基材上にポリイミド樹脂膜を形成する工程、前記ポリイミド樹脂膜の上に第1導体配線パターンを形成し、支持基板を形成する工程、前記支持基板の前記第1導体配線パターン側の面上に一般式(1)[化11]
【0031】
【化11】


(式中、0.05≦n≦0.5、n+m=1であり、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は任意の二官能基を示す。)で表される化合物から第1ポリベンゾオキサゾール膜を形成する工程、前記第1ポリベンゾオキサゾール膜の上に熱膨張率が40ppm以下である第1樹脂膜を形成して前記第1ポリベンゾオキサゾール膜と前記第1樹脂膜の第1複合化絶縁膜を形成する工程、前記第1複合化絶縁膜上に第2導体配線パターンを形成する工程、前記第2導体配線パターン上に一般式(1)で表される化合物から第2ポリベンゾオキサゾール膜を形成する工程、前記第2ポリベンゾオキサゾール膜の上に熱膨張率が40ppm以下である第2樹脂膜を形成して前記第2ポリベンゾオキサゾール膜と前記第2樹脂膜の第2複合化絶縁膜を形成する工程からなることを特徴とする高密度実装用配線基板の製造方法。
【0032】
【発明の実施の形態】本発明のポリベンゾオキサゾールは前記した一般式(1)で表される化合物であり、中でも含フッ素ポリベンゾオキサゾールは好ましく用いられる。含フッ素ポリベンゾオキサゾールの一例は、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4として以下のような構造式[化12]を用いて示される。
【0033】
【化12】


ポリベンゾオキサゾールは、一般に、ビス(アミノフェノール)化合物とジカルボン酸ジハライドまたはジカルボン酸ジエステルの反応により得られるポリヒドロキシアミドを脱水閉環反応させて得られる。
【0034】前記構造式[化12]で示される含フッ素ポリベンゾオキサゾールは、例えば、次のようにして得られる。先ず、4,4’−ジカルボキシルジフェニルエーテルと1−ヒドロキシベンゾトリアゾールから活性エステルを合成する。次に、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと1−ヒドロキシベンゾトリアゾールからエステルを合成する。このエステルに2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを反応させる。この反応液に先に合成した活性エステルを加えて反応させて、含フッ素ポリベンゾオキサゾールを合成する。次に本発明について図面を参照して説明する。
【0035】図1は、少なくとも1層の層間絶縁膜と導体配線パターンとを有してなり、前記絶縁膜の少なくとも1層がポリベンゾオキサゾール膜からなる支持基板、即ち、高密度実装用配線基板であって、ポリベンゾオキサゾール膜と導体配線パターンの間に、Ti、Ti系化合物およびNiの少なくとも1種類からなる接着層を設ける、高密度実装用配線基板の製造工程の一例を示す断面構成図である。
【0036】ベース基材11上に、前記一般式(1)で示されるポリベンゾオキサゾールを用いて、ポリベンゾオキサゾール膜12を形成する(図1a)。次に、Ti、Ti系化合物およびNiの少なくとも1種類からなる接着層13を、例えばスパッタリング法、蒸着法、無電解めっき法などで形成し、次いでCu、Pd、Pt、Auなどの金属膜14を同様にして形成する(図1b)。次に、例えば導体配線パターンとなるべき部分を抜くようにしてフォトレジスト15をパターニングし、フォトレジストのマスキングされていない部分を電解めっき法などでCuなどの金属めっき膜16を析出させる(図1c)。フォトレジスト15を剥離し、最後に表面に出ている金属膜14、さらには接着層13をエッチングにより除去することにより導体配線パターン17を形成し、高密度実装用配線基板を形成する(図1d)。
【0037】さらに、多層構造の高密度実装用配線基板を形成するにあたり、必要に応じて、導体配線パターン17上に、スパッタリング法、蒸着法また無電解めっき法とフォトリソ法を用いて、Ti、Ti系化合物およびNiの少なくとも1種類からなる接着層18を形成し、次いでポリベンゾオキサゾール膜19を絶縁膜として形成することも有効である(図1e)。
【0038】ポリイミド樹脂上に導体配線パターンを形成するときの接着層としては、CrまたはMoなどがよく知られている。一方、ポリベンゾオキサゾール膜上には、Ti、Ti系化合物またはNiを接着層に適用することにより良好な密着性が得られることが判明した。特に、Ti系化合物、なかでもTiW、TiNおよびTiCについては、W、NおよびCおのおのの添加物とも少なくとも0.1重量%添加することにより、ベース基材とポリベンゾオキサゾール膜の間に非常に優れた密着性が得られることが判明した。そのものは接着層13用の材料として最適である。
【0039】ベース基材11の材料は特に限定されるものではなく、金属、樹脂、プリント基板、セラミック、ガラス、Siなどさまざまなものが適用でき、リジットなものはもちろんのこと、フィルムのような形状のものでもよい。またベース基材を特に用意せず、例えばフィルム形状のポリベンゾオキサゾール膜12上に直接的に導体配線パターン16を形成したものや最終的にベース基材11が除去された構造のものも、本発明の高密度実装用配線基板として有効である。図2は、ベース基材上へのポリベンゾオキサゾール膜の形成において、ベース基材とポリベンゾオキサゾール膜の間に、ガラス転移温度が180℃から350℃の範囲である熱可塑性ポリイミド樹脂層を設ける、高密度実装用配線基板の製造工程の一例を示す断面構成図である。
【0040】例えば導体配線パターン21を有するベース基材22上に、膜厚0.01μm〜10μm、望ましくは膜厚1μmのガラス転移温度が180℃から350℃の範囲である熱可塑性ポリイミド樹脂層23を形成する(図2a)。次いで、ポリベンゾオキサゾール膜24を形成する(図2b)。以後、例えば図1で説明した本発明の方式に従って、ポリベンゾオキサゾール膜24上に導体配線パターン25が形成され、高密度実装用配線基板が形成される(図2c)。
【0041】熱可塑性ポリイミド樹脂は加熱により接着性を示すため、これからなる層を設けることにより、導体配線パターン21またはベース基材22と、ポリベンゾオキサゾール膜24との間の密着性に優れた高密度実装用配線基板を得ることができる。熱可塑性ポリイミド樹脂層23のガラス転移温度は、180℃から350℃が適当であることが明らかとなった。すなわち、180℃以下のものを適用すれば、半田リフロー工程や半導体デバイス実装工程に耐熱性上問題があり、層間剥離や膨れが生じてしまう。一方、350℃以上のものを適用すれば、ポリベンゾオキサゾール膜24の硬化温度が300℃程度のため、ガラス転移温度にまで達せず、十分な接着強度が得られなかった。
【0042】また、熱可塑性ポリイミド樹脂層23には、ポリイミド樹脂自体が熱可塑性であるもののほか、非熱可塑性ポリイミド樹脂をベースとしてこれに熱可塑性成分を含有させ、ポリイミド樹脂に熱可塑性を付与させたものも適用することができる。
【0043】図3は、ベース基材が少なくとも10μmの厚みを有するのポリイミド樹脂層を少なくとも有しており、また、本発明の図1または図2に記載のものと同様である、高密度実装用配線基板の製造工程一例を示す断面構成図である。
【0044】ベース基材31上に少なくとも10μmの厚みを有するポリイミド樹脂層32を形成し、少なくとも10μmの厚みを有するポリイミド樹脂層を有する支持基板33を形成する(図3a)。次いで、例えば図1または図2に記載した本発明の方式に従って、ポリイミド樹脂層32上にポリベンゾオキサゾール膜34が絶縁膜として形成され、さらには導体配線パターン35が形成される(図3b)。最後にベース基材31を完全に除去するか、あるいはエッチング、研磨法などで薄くするなどして、フィルム形状の高密度実装用配線基板を形成する(図3c)。
【0045】ポリベンゾオキサゾール膜は、強度はあるものの引き裂き強度が弱く、フィルム形状の高密度実装用配線基板として取り扱いにくい。しかしながら、膜強度、引き裂き強度ともに優れたポリイミド樹脂層をベース基材として用いることにより、十分な引き裂き強度を有するフィルム形状の高密度実装用配線基板を形成することができる。
【0046】図4は、ベース基材上に形成した絶縁膜がポリベンゾオキサゾール膜と熱膨張率が40ppm以下である樹脂膜からなる複合化絶縁膜である、高密度実装用配線基板の製造工程一例を示す断面構成図である。
【0047】例えば、ベース基材41上にポリイミド樹脂層42、さらには導体配線パターン43を有する支持基板44を用意する(図4a)。次に、支持基板44の導体配線パターン43側の面上に第1ポリベンゾオキサゾール膜45を形成し、次いでその上に熱膨張率が40ppmである樹脂膜46を形成し、複合化絶縁膜47を有する高密度実装用配線基板を形成する(図4b)。さらに必要に応じて、複合化絶縁膜47上に導体配線パターン48を形成し、さらに第2ポリベンゾオキサゾール膜49と熱膨張率40ppm以下の樹脂膜50からなる複合化絶縁膜51を形成し、以後この工程を繰り返すことにより、多層の複合化構造の絶縁膜を有する高密度実装用配線基板を形成することもできる(図4c)。
【0048】ポリベンゾオキサゾール膜は熱膨張率が大きく、特に高密度実装用配線基板が多層構造のときには半導体デバイスを搭載したときの応力が大きく、配線基板が反ったり、ポリベンゾオキサゾール膜にクラックが入ったりした。しかしながら、ポリベンゾオキサゾール膜と熱膨張率が40ppmである樹脂膜の複合化絶縁膜を使用することにより、これらの問題点が解決できることが判明した。
【0049】熱膨張率が40ppmである樹脂膜としては、例えば、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート樹脂などの膜を用いることができ、このうち特にフルオレン骨格を有するエポキシアクリレート樹脂が配線段差の平坦性にも優れており、多層構造の高密度実装用配線基板の形成に好適であった。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、耐熱性、低誘電率、低吸水率、低熱膨張率、導体や絶縁膜相互の高密着性を有し、さらには膜強度や破断伸び率などに優れ、半導体デバイス実装における応力にも耐え、信頼性に優れ、かつ高速、高密度実装に最適な高密度実装用配線基板が提供でき、高速かつ高密度なモジュールやシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベース基材上に少なくとも1層の層間絶縁膜と導体配線パターンとを有してなり、前記絶縁膜の少なくとも1層がポリベンゾオキサゾール膜からなり、ポリベンゾオキサゾール膜と導体配線パターンとの間に、Ti、Ti系化合物、あるいはNiの少なくとも1種類からなる接着層を有する、高密度実装用配線基板の製造プロセスの一実施形態を示す断面構成図である。
【図2】ベース基材上へのポリベンゾオキサゾール膜の形成において、ベース基材とポリベンゾオキサゾール膜との間に、ガラス転移温度が180℃から350℃の範囲である熱可塑性ポリイミド樹脂層を有する、高密度実装用配線基板の製造プロセスの一実施形態を示す断面構成図である。
【図3】ベース基材が、少なくとも10μmの厚みを有するポリイミド樹脂層を少なくとも有する、高密度実装用配線基板の製造プロセスの一実施形態を示す断面構成図である。
【図4】ベース基材上に形成した絶縁膜が、ポリベンゾオキサゾール膜と熱膨張率40ppm以下の樹脂膜からなる複合化絶縁膜である、高密度実装用配線基板の製造プロセスの一実施形態を示す断面構成図である。
【符号の説明】
11、22、31、41 ベース基材
12、19、24、34、45、49 ポリベンゾオキサゾール膜
13、18 接着層
14 金属膜
15 フォトレジスト
16 金属めっき膜
17、21、25、35、43、48 導体配線パターン
23 熱可塑性ポリイミド樹脂層
32、42 ポリイミド樹脂層
33、44 支持基板
46、50 樹脂膜
47、51 絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】ベース基材、前記ベース基材上に形成された少なくとも1層の層間絶縁膜、前記絶縁膜の上に形成されたTi、Ti系化合物およびNiのうち少なくとも1種からなる接着層および前記接着層の上に形成された導体配線パターンからなり、前記絶縁膜のうち少なくとも1層がポリベンゾオキサゾール膜であることを特徴とする高密度実装用配線基板。
【請求項2】前記絶縁膜と前記導体配線パターンが交互に順次積層されて多層配線構造を形成していることを特徴とする請求項1に記載の高密度実装用配線基板。
【請求項3】ベース基材、前記ベース基材上に形成された少なくとも1層の層間絶縁膜、前記絶縁膜の上に形成されたTi、Ti系化合物およびNiのうち少なくとも1種からなる接着層および前記接着層の上に形成された導体配線パターンからなり、前記ベース基材に直接的に接合する層間絶縁膜がポリベンゾオキサゾール膜であることを特徴とする高密度実装用配線基板。
【請求項4】前記Ti系化合物がTiW、TiNおよびTiCから選ばれたものであることを特徴とする請求項3に記載の高密度実装用配線基板。
【請求項5】前記Ti系化合物のW、NおよびCの含量が少なくとも0.1重量%であることを特徴とする請求項4に記載の高密度実装用配線基板。
【請求項6】前記絶縁膜と前記導体配線パターンが交互に順次積層されて多層配線構造を形成していることを特徴とする請求項3に記載の高密度実装用配線基板。
【請求項7】前記ポリベンゾオキサゾール膜が一般式(1)[化1]
【化1】


(式中、0.05≦n≦0.5、n+m=1であり、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は任意の二官能基を示す。)で表されるポリベンゾオキサゾールからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高密度実装用配線基板。
【請求項8】前記ベース基材とこれに直接的に接合するポリベンゾオキサゾール膜の間に、ガラス転移温度が180℃から350℃の範囲である熱可塑性ポリイミド樹脂膜を設けることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の高密度実装用配線基板。
【請求項9】前記ポリイミド樹脂膜の厚みが少なくとも10μmであることを特徴とする請求項8に記載の高密度実装用配線基板。
【請求項10】前記絶縁膜が、前記ポリベンゾオキサゾール膜と熱膨張率が40ppm以下である樹脂膜からなる複合化絶縁膜であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の高密度実装用配線基板。
【請求項11】ベース基材上に一般式(1)[化2]
【化2】


(式中、0.05≦n≦0.5、n+m=1であり、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は任意の二官能基を示す。)で表されるポリベンゾオキサゾール膜を形成する工程、前記ポリベンゾオキサゾール膜上にTi、Ti系化合物およびNiのうち少なくとも1種からなる接着層をスパッタリング法、蒸着法および無電解めっき法のうちいずれかの方法により形成する工程、前記接着層の上にCu、Pd、PtおよびAuのうち少なくとも1種からなる金属膜を形成する工程、前記金属膜の上に導体配線パターンに相当する部分を除いてフォトレジストをパターニングする工程、前記フォトレジストでマスキングされていない部分に金属めっき膜を無電解めっき法により形成する工程および、前記フォトレジストを剥離して、次いで前記金属膜の余剰分を、次いで前記接着層の余剰分をエッチングにより除去して前記導体配線パターンを形成する工程からなることを特徴とする高密度実装用配線基板の製造方法。
【請求項12】ベース基材上に一般式(1)[化3]
【化3】


(式中、0.05≦n≦0.5、n+m=1であり、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は任意の二官能基を示す。)で表される化合物から第1ポリベンゾオキサゾール膜を形成する工程、前記第1ポリベンゾオキサゾール膜上にTi、Ti系化合物およびNiのうち少なくとも1種からなる第1接着層をスパッタリング法、蒸着法および無電解めっき法のうちいずれかの方法により形成する工程、前記第1接着層の上にCu、Pd、PtおよびAuのうち少なくとも1種からなる金属膜を形成する工程、前記金属膜の上に第1導体配線パターンに相当する部分を除いてフォトレジストをパターニングする工程、前記フォトレジストでマスキングされていない部分に金属めっき膜を無電解めっき法により形成する工程、前記フォトレジストを剥離して、次いで前記金属膜の余剰分を、次いで前記接着層の余剰分をエッチングにより除去して前記第1導体配線パターンを形成する工程、前記第1導体配線パターン上に、スパッタリング法、蒸着法および無電解めっき法のうちいずれかの方法とフォトリソ法により、Ti、Ti系化合物およびNiのうち少なくとも1種からなる第2接着層を形成し、前記第2接着層の上に前記一般式(1)で表される化合物により第2ポリベンゾオキサゾール膜を形成する工程からなることを特徴とする高密度実装用配線基板の製造方法。
【請求項13】ベース基材上にポリイミド樹脂膜を形成する工程、前記ポリイミド樹脂膜の上に導体配線パターンを形成し、支持基板を形成する工程、前記支持基板の前記導体配線パターン側の面上に一般式(1)[化4]
【化4】


(式中、0.05≦n≦0.5、n+m=1であり、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は任意の二官能基を示す。)で表される化合物からポリベンゾオキサゾール膜を形成する工程、前記ポリベンゾオキサゾール膜の上に熱膨張率が40ppm以下である樹脂膜を形成して前記ポリベンゾオキサゾール膜と前記樹脂膜の複合化絶縁膜を形成する工程からなることを特徴とする高密度実装用配線基板の製造方法。
【請求項14】ベース基材上にポリイミド樹脂膜を形成する工程、前記ポリイミド樹脂膜の上に第1導体配線パターンを形成し、支持基板を形成する工程、前記支持基板の前記第1導体配線パターン側の面上に一般式(1)[化5]
【化5】


(式中、0.05≦n≦0.5、n+m=1であり、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は任意の二官能基を示す。)で表される化合物から第1ポリベンゾオキサゾール膜を形成する工程、前記第1ポリベンゾオキサゾール膜の上に熱膨張率が40ppm以下である第1樹脂膜を形成して前記第1ポリベンゾオキサゾール膜と前記第1樹脂膜の第1複合化絶縁膜を形成する工程、前記第1複合化絶縁膜上に第2導体配線パターンを形成する工程、前記第2導体配線パターン上に一般式(1)で表される化合物から第2ポリベンゾオキサゾール膜を形成する工程、前記第2ポリベンゾオキサゾール膜の上に熱膨張率が40ppm以下である第2樹脂膜を形成して前記第2ポリベンゾオキサゾール膜と前記第2樹脂膜の第2複合化絶縁膜を形成する工程からなることを特徴とする高密度実装用配線基板の製造方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2002−57465(P2002−57465A)
【公開日】平成14年2月22日(2002.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−238967(P2000−238967)
【出願日】平成12年8月7日(2000.8.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】