説明

CDR回路、受信装置、および通信システム

【課題】簡易な回路構成で、高速かつジッタ入力に強く、信号エラーの発生を抑止することが可能なCDR回路、受信装置、および通信システムを提供する。
【解決手段】CDR回路310は、遅延素子312−1〜312−4を含み、定期的に信号遷移の挿入されたデータ入力をトリガとしてクロックを抽出する分周器320と、分周器で抽出されたクロックに同期して入力データ信号をラッチするラッチ315−1〜315−8とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばデジタル信号を受信するシリアル通信に適用されるCDR回路、受信装置、および通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、シリアルデータ通信では、図1に示すように、送信機1から受信機2に、データ線3とクロック線4によりデータDTとクロックCLKを並列に伝送する方式がとられてきた。
受信機2にはデータDTとクロックCLKがあるタイミングで入力され、受信機2は入力クロックの遷移のタイミングで入力データをラッチする。
この場合、受信機2の回路構成は簡素になる反面、データDTとクロックCLKの配線遅延に差があると入力データをラッチするタイミングがずれるため、高速なデータ通信に使用することは難しい。
【0003】
そこで、高速シリアルデータ通信には、クロックエンベデッド方式と呼ばれる方式が一般に使われている。
図2は、クロックエンベデッド伝送方式を説明するための図である。
【0004】
クロックエンベデッド伝送方式は、送信機1Aから受信機2Aにデータ信号のみを伝送する方式で、クロック信号を伝送しないため、上述したデータとクロック配線間の遅延差問題が発生しない。
受信機2A内にはCDR回路(クロック・データ・リカバリ回路)という回路が搭載されている。このCDR回路はデータ信号の遷移の周期性を利用してデータ列信号からクロック信号を再生する回路であり、受信機2Aはこの再生されたクロックを使って入力信号のラッチを行う。
【0005】
CDR回路はクロックを再生する際にデータの遷移点を基準にしてクロック信号の周波数を調整するため、ある一定頻度以上のデータの遷移率が必要になる。データの遷移があまりにも少ないと、クロックを抽出する情報が無いため、安定したクロック抽出ができない。
そこで、CDR回路を使うクロックエンベデッド方式のシリアル信号伝送では、何らかの方式を用いてデータ内のビット遷移率が小さくなりすぎないように保証する。
【0006】
図3は、基準遷移を用いたクロックエンベデッド伝送方式であって、ビット遷移率を保つための方式の1方式を示す図である。
この方式は、特許文献1に開示されている技術に採用されている。
この方式では、信号データの一定ビット数ごとに立ち上がり遷移を挿入して、クロック遷移が一定間隔以内で必ず受信機に入力されるようにしている。
【0007】
また、立ち上がりエッジの代わりに、立下りエッジを一定周期おきに挿入するという方式も同様の効果がある。
さらに、基準遷移の前のビットの値に応じて立下りもしくは立ち上がりエッジを挿入するという方式も存在する。マンチェスタ符号化(特許文献2参照)はこの方式の一種である。
【0008】
図4は、マンチェスタ符号化を用いた伝送信号の例を示す図である。
図4の例では、2ビットに1回必ずビット遷移が発生することがわかる。マンチェスタ符号の受信機ではこの遷移を利用することによって受信機のCDR回路の構成を単純化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2863763号
【特許文献2】USP4100541
【特許文献3】特開2009−232462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
CDR回路の具体的な構成例について説明する。
図5は、図3の基準遷移を用いてデータ信号のクロック再生を行うCDR回路の構成例を示す図である。
図6は、図5のCDR回路の動作概要を示すタイミングチャートである。
ここでは、例として基準遷移周期は4ビットとしている。
【0011】
図5のCDR回路10は、位相比較器11、セレクタ12、電圧制御発振器(VCO)13、分周器14、およびD型フリップフロップ(DFF)15を有する。
【0012】
CDR回路10において、VCO13は入力データ速度をfbpsとすると、周波数fHzで発振して、抽出クロックECKを発生させている。
位相比較器11は抽出クロックECKと入力データIDの位相を比較してその結果を出力しており、セレクタ12がONになったときのみその結果をVCO13の周波数制御信号を更新する。
セレクタ12は、分周器14で抽出クロックECKを4分周して作った分周クロックDECKによって制御されており、入力データの基準遷移と抽出クロックECKの比較結果だけを取り出す構成になっている。
【0013】
全体として、このCDR回路10は、入力データIDの基準遷移に対してロックするPLL(フェーズ・ロック・ループ)回路として動作する。
PLL回路は位相比較器11の出力を使ってVCO13の動作周波数を変化させることにより動作するため、入力データの周波数が変化した場合に、VCO13の発振周波数がゆらぎに追随するまでの時間に必ずある遅延が発生する。
よって、図5のCDR回路10は、入力データ信号に高速なジッタ(データ周波数のゆらぎ)が加わった際には、抽出クロックの変化がジッタに追随できず、信号エラーを起こしやすいという欠点がある。
【0014】
図7は、特許文献3に開示された基準遷移を用いてデータ信号のクロック再生を行うCDR回路の構成例を示す図である。
図8は、図7のCDR回路の動作概要を示すタイミングチャートである。
【0015】
図7のCDR回路20は、遷移検出器21、基準遷移取出し回路22、クロック生成回路23、マスク信号生成器24、位相比較器25、遅延素子26−1〜26−4、およびDFF27−1〜27−4を有する。
ここでは、入力データ速度をfbpsとする。
【0016】
遷移検出器21は入力データIDからデータ遷移に対応する最大周波数fHzの遷移パルスSPLSを生成する。
基準遷移取出し回路22は,遷移パルスSPLSから基準遷移に対応する遷移パルスのみを取り出す。
クロック生成回路23は,基準遷移パルスRSPLSに対応するf/4Hzの抽出クロックECK1を生成し、その信号を1/fsecの遅延素子26−1〜26−4を使って遅らせて抽出クロックECK2〜ECK5を作成する。
基準遷移パルスRSPLSを抽出するためのタイミング信号は抽出クロックECK1〜ECK5のいずれかを使ってマスク信号発生器24によって生成する。
遅延素子26−1〜26−4の遅延量は抽出クロックECK1と抽出クロックECK4の位相を位相比較器25で比較し、これらをそろえるようにフィードバック制御される。
【0017】
回路全体としては、基準遷移を使って遅延を制御するDLL回路として動作する。入力データ信号にジッタが印加された場合に位相が追随するまでの最大遅延量が4/fsecしかないため、先のPLL型のものより強いジッタ耐力を持つ。
しかしながら、この回路構成ではマスク信号生成器24、基準遷移取出し回路22、クロック生成回路24の遅延が動作速度上限を制限しており、高速に動作させることが難しいという問題点を持つ。
【0018】
本発明は、簡易な回路構成で、高速かつジッタ入力に強く、信号エラーの発生を抑止することが可能なCDR回路、受信装置、および通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の観点のCDR回路は、遅延素子を含む、定期的に信号遷移の挿入されたデータ入力をトリガとしてクロックを抽出する分周器と、上記分周器で抽出されたクロックに同期して入力データ信号をラッチするラッチとを有する。
【0020】
本発明の第2の観点の受信装置は、データ線を伝播された定期的に信号遷移の挿入されたシリアルデータ信号を受信し、受信したシリアルデータ信号に応じてクロックおよびデータをリカバリするCDR回路を有し、上記CDR回路は、遅延素子を含む、定期的に信号遷移の挿入されたデータ入力をトリガとしてクロックを抽出する分周器と、上記分周器で抽出されたクロックに同期して入力データ信号をラッチするラッチと、を含む。
【0021】
本発明の第3の観点の通信システムは、定期的に信号遷移の挿入されたシリアルデータ信号をデータ線に送信する送信装置と、上記データ線を伝播された定期的に信号遷移の挿入されたシリアルデータ信号を受信する受信装置と、を有し、上記受信装置は、受信したシリアルデータ信号に応じてクロックおよびデータをリカバリするCDR回路を有し、上記CDR回路は、遅延素子を含む、定期的に信号遷移の挿入されたデータ入力をトリガとしてクロックを抽出する分周器と、上記分周器で抽出されたクロックに同期して入力データ信号をラッチするラッチと、を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡易な回路構成で、高速かつジッタ入力に強く、信号エラーの発生を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一般的なシリアルデータ通信方式を説明するための図である。
【図2】クロックエンベデッド伝送方式を説明するための図である。
【図3】基準遷移を用いたクロックエンベデッド伝送方式であって、ビット遷移率を保つための方式の1方式を示す図である。
【図4】マンチェスタ符号化を用いた伝送信号の例を示す図である。
【図5】図3の基準遷移を用いてデータ信号のクロック再生を行うCDR回路の構成例を示す図である。
【図6】図5のCDR回路の動作概要を示すタイミングチャートである。
【図7】特許文献3に開示された基準遷移を用いてデータ信号のクロック再生を行うCDR回路の構成例を示す図である。
【図8】図7のCDR回路の動作概要を示すタイミングチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る通信システムの基本的な構成を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る受信装置おけるCDR回路の構成を示す図である。
【図11】図10のCDR回路の動作概要を示すタイミングチャートである。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る受信装置おけるCDR回路の構成を示す図である。
【図13】図12のCDR回路の動作概要を示すタイミングチャートである。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る受信装置おけるCDR回路の構成を示す図である。
【図15】図14のCDR回路の動作概要を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施形態(CDR回路の第1の構成例)
2.第2の実施形態(CDR回路の第2の構成例)
3.第3の実施形態(CDR回路の第3の構成例)
【0025】
図9は、本発明の実施形態に係る通信システムの基本的な構成を示す図である。
【0026】
本通信システム100は、送信装置200と、受信装置300、送信装置200と受信装置300間に接続されたデータ線400を含んで構成されている。
【0027】
送信装置200は、複数の位相同期したシリアルデータ信号SDTを受信装置300にデータ線400を通して受信装置300に送信する。
【0028】
受信装置300は、データ線400を伝播したシリアルデータ信号SDTを受信するシリアル通信の受信機として機能する。
受信装置300は、CDR(クロック・データ・リカバリ回路)310が搭載されている。
CDR回路310は、定期的に信号遷移の挿入されたデータ入力をトリガとして、内部に遅延素子をもった分周器によってクロックを抽出し、そのクロックを用いて信号のデータ信号のラッチを行う。
CDR回路310は、分周器の内部の遅延素子の遅延量を、抽出したクロックおよび遅延素子によって遅延した抽出クロックの位相差を比較してフィードバック制御を行う。
【0029】
以下、本実施形態の特徴的な構成を有する受信装置300におけるCDR回路の構成および機能について具体的に説明する。
ここでは例として基準データ遷移間隔を4ビットにとって説明する。
【0030】
<第1の実施形態>
図10は、本発明の第1の実施形態に係る受信装置おけるCDR回路の構成を示す図である。
【0031】
図10のCDR回路310は、分周用のDFF(D型フリップフロップ)311、遅延素子312−1〜312−4、インバータ313−1,313−2、位相比較器314、データラッチ用のDFF315−1〜315−8を含んで構成される。
DFF311および遅延素子312−1〜312−4により分周器320が形成されている。
【0032】
DFF311のクロック入力端Cが受信した入力信号であるシリアルデータ信号SDTの供給ラインに接続され、データ入力端Dがインバータ313−1の出力に接続されている。DFF311のデータ出力端Qが遅延素子312−1の入力端、位相比較器314の一方の入力端、DFF315−1のクロック入力端C、およびDFF315−2の反転クロック入力端XCに接続されている。
DFF311は、データ出力端Qから第1抽出クロックECK11を出力する。
【0033】
遅延素子312−1の出力端は、遅延素子312−2の入力端DFF315−3のクロック入力端C、およびDFF315−4の反転クロック入力端XCに接続されている。
遅延素子312−1は、DFF311による第1抽出クロックECK11を遅延させた第2抽出クロックECK12を出力する。
【0034】
遅延素子312−2の出力端は、遅延素子312−3の入力端、DFF315−5のクロック入力端C、およびDFF315−6の反転クロック入力端XCに接続されている。
遅延素子312−2は、遅延素子312−1による第2抽出クロックECK12を遅延させた第3抽出クロックECK13を出力する。
【0035】
遅延素子312−3の出力端は、遅延素子312−4の入力端、インバータ313−1の入力端、DFF315−7のクロック入力端C、およびDFF315−8の反転クロック入力端XCに接続されている。
遅延素子312−3は、遅延素子312−2による第3抽出クロックECK13を遅延させた第4抽出クロックECK14を出力する。
【0036】
遅延素子312−4の出力端は、インバータ313−2の入力端に接続されている。
遅延素子312−4は、遅延素子312−3による第4抽出クロックECK14を遅延させた第5抽出クロックECK15を出力する。
【0037】
インバータ313−2の出力が、位相比較器314の他方の入力に接続されている。
位相比較器314の出力は、縦続接続された遅延素子312−1〜312−4の遅延量を調整するための制御端子に接続されている。
位相比較器314は、第5抽出クロックECK15の反転信号と第1抽出クロックECK11の位相をそろえるように、遅延素子312−1〜312−4の遅延量をフィードバック制御する。
【0038】
また、データラッチ用のDFF315−1〜315−8のデータ入力端Dは、入力信号であるシリアルデータ信号SDTの供給ラインに接続されている。
【0039】
次に、上記構成を有するCDR回路310の動作を説明する。
図11(A)〜(F)は、図10のCDR回路の動作概要を示すタイミングチャートである。
図11(A)は入力シリアルデータSDTを、図11(B)は第1抽出クロックECK11を、図11(C)は第2抽出クロックECK12を、図11(D)は第3抽出クロックECK13をそれぞれ示している。図11(E)は第4抽出クロックECK14を、図11(F)は第5抽出クロックECK15をそれぞれ示している。
ここでは、入力データ信号速度を1/fとする。
【0040】
データ信号SDTはDFF311のクロック入力端Cに供給されている。DFF311はデータ信号SDTの立ち上がり遷移時に第4抽出クロックECK14の反転信号をラッチして第1抽出クロックECK11として出力する。
抽出クロックECK11から1/fsecの遅延素子312−1〜312−4によって第5抽出クロックECK15が生成される。
ここで、遅延素子312−1〜312−4は、第5抽出クロックECK15の反転信号と第1抽出クロックECKの位相をそろえるように、位相比較器314からフィードバック制御されている。
【0041】
全体として、DFF311と遅延素子312−1〜312−3は入力データ信号SDTの1/2分周器の形となっているが、DFF311の入力が出力より遅延素子312−1〜312−3によって3/4ビット分遅れている。このため、DFF311の出力が反転したのち3/4ビット分の時間はデータ入力が無視されることになる。
結果として、図11(A)〜(F)に示すように、基準遷移に同期した1/2周波数のクロックECK11〜ECK15が抽出される。
【0042】
そして、抽出クロックECK11〜ECK14を使って、DFF315−1〜315−8において、立ち上がりと立下りの両方で入力データをラッチすることによって、入力データ信号SDTをラッチすると同時に1/8デシリアライズすることができる。
【0043】
図10のCDR回路310を用いた場合、図7のCDR回路と同様に入力データ信号にジッタが印加された場合に位相が追随するまでの最大遅延量が4/fsecしかないため、図7の回路とほぼ同等の強いジッタ耐力を持つ。
さらに、CDR回路310の内部での動作周波数が最大で1/8fHzの信号であり、図7の回路のように、マスク信号生成回路、基準遷移取出し回路、クロック生成回路による遅延が発生しないため、高速な動作が可能である。
また、図7のCDR回路は、回路の起動時に基準遷移のみからなる初期化信号を入力する必要があるが、本実施形態によるCDR回路はそれ以外の信号によっても初期化することが可能である。
【0044】
<第2の実施形態>
図12は、本発明の第2の実施形態に係る受信装置おけるCDR回路の構成を示す図である。
図13(A)〜(F)は、図12のCDR回路の動作概要を示すタイミングチャートである。
図13(A)は入力シリアルデータSDTを、図13(B)は第1抽出クロックECK11を、図13(C)は第2抽出クロックECK12を、図13(D)は第3抽出クロックECK13をそれぞれ示している。図13(E)は第4抽出クロックECK14を、図13(F)は第5抽出クロックECK15をそれぞれ示している。
【0045】
本第2の実施形態に係るCDR回路310Aが第1の実施形態に係るCDR回路310と異なる点は、次の通りである。
第1の実施形態に係るCDR回路310は、データ信号SDTの立ち上がり遷移時の同期したクロックを抽出している。
本第2の実施形態に係るCDR回路310Aは、基準遷移に立ち上がり、立下りの両方を使用した信号に対する回路として構成されている。
【0046】
具体的には、図12のCDR回路310Aは、分周用のDFF311Aが正負2つのクロック入力端C,XCを有する両エッジトリガDFFにより形成されている。
その他の構成は図10のCCDR回路310と同様である。
【0047】
このように、第2の実施形態のCDR回路310Aは、第1抽出クロックECK11を生成するDFF311に立ち上がりと立下りの両方で動作するDFFを適用することによって、図13(A)に示すようなデータ信号からもクロック抽出が可能となる。
【0048】
<第3の実施形態>
図14は、本発明の第3の実施形態に係る受信装置おけるCDR回路の構成を示す図である。
【0049】
本第3の実施形態に係るCDR回路310Bが第2の実施形態に係るCDR回路310Aと異なる点は、差動構成としてことにある。
具体的には、DFF311Bが差動型両エッジトリガDFFにより形成され、縦続接続される遅延素子が差動型遅延素子312B−1〜312B−4により形成されている。
また、ラッチ用DFF315B−1〜315B−8は、クロック入力は正側クロック入力端Cを有し、負側(反転側)のクロック入力は用いていない。
また、本第3の実施形態に係るCDR回路310Bは、第1および第2の実施形態に係るCDR回路310,310Aで必要であったインバータが不要となっている。
【0050】
DFF311Bのクロック入力端Cおよびクロック反転入力端XCが受信した入力信号であるシリアルデータ信号SDTの供給ラインに接続されている。
DFF311Bのデータ入力端Dが遅延素子312B−3の反転データ出力端に接続され、反転データ入力端XDが遅延素子312B−3の正側出力に接続されている。
DFF311Bのデータ出力端Qが遅延素子312B−1の正側入力、位相比較器314の一方の入力端DFF315B−2のクロック入力端Cに接続されている。DFF311Bの反転出力端Qが遅延素子312B−2の反転データ入力端DFF315B−1のクロック入力端Cに接続されている。
DFF311Bは、データ出力端Qから第1抽出クロックECK11を出力し、反転出力端XQから第2抽出反転クロックXECK11を出力する。
【0051】
遅延素子312B−1の正側出力は、遅延素子312B−2の正側入力端DFF315−4のクロック入力端Cに接続され、反転出力が遅延素子312B−2の反転データ入力端、およびDFF315−3のクロック入力端Cに接続されている。
遅延素子312B−1は、DFF311Bによる第1抽出クロックECK11および第2抽出反転クロックXECK11を遅延させた第2抽出クロックECK12および第2抽出反転クロックXECK12を出力する。
【0052】
遅延素子312B−2の正側出力は、遅延素子312B−3の正側入力端DFF315B−6のクロック入力端Cに接続され、反転出力が遅延素子312B−3の反転データ入力端、およびDFF315−5のクロック入力端Cに接続されている。
遅延素子312B−2は、遅延素子312B−1による第2抽出クロックECK12および第2抽出反転クロックXECK12を遅延させた第3抽出クロックECK13および第3抽出反転クロックXECK13を出力する。
【0053】
遅延素子312B−3の正側出力は、遅延素子312B−4の正側入力端DFF315B−8のクロック入力端C、およびDFF311Bの反転データ入力端XDに接続されている。遅延素子312B−3の反転出力が遅延素子312B−4の反転データ入力端、およびDFF315−7のクロック入力端C、およびDFF311Bのデータ入力端Dに接続されている。
遅延素子312B−3は、遅延素子312B−2による第3抽出クロックECK13および第3抽出反転クロックXECK13を遅延させた第4抽出クロックECK14および第4抽出反転クロックXECK14を出力する。
【0054】
遅延素子312B−4の反転出力が位相比較器314の他方の入力に接続されている。
遅延素子312B−4は、遅延素子312B−3による第4抽出反転クロックXECK14を遅延させた第5抽出反転クロックXECK15を出力する。
【0055】
位相比較器314の出力は、縦続接続された遅延素子312B−1〜312B−4の遅延量を調整するための制御端子に接続されている。
位相比較器314は、第5抽出反転クロックXECK15の反転信号と第1抽出クロックECK11の位相をそろえるように、遅延素子312B−1〜312B−4の遅延量をフィードバック制御する。
【0056】
また、データラッチ用のDFF315B−1〜315B−8のデータ入力端Dは、入力信号であるシリアルデータ信号SDTの供給ラインに接続されている。
【0057】
次に、上記構成を有するCDR回路310Bの動作を説明する。
図15(A)〜(K)は、図14のCDR回路の動作概要を示すタイミングチャートである。
図15(A)は入力シリアルデータSDTを、図15(B)は第1抽出クロックECK11を、図15(C)は第1抽出反転クロックXECK11をそれぞれ示している。
図15(D)は第2抽出クロックECK12を、図15(E)は第2抽出反転クロックXECK12を、図15(F)は第3抽出クロックECK13を、図15(G)は第3抽出反転クロックXECK13をそれぞれ示している。
図15(H)は第4抽出クロックECK14を、図15(I)は第4抽出反転クロックXECK14を、図15(J)は第5抽出クロックECK15を、図15(K)は第5抽出反転クロックXECK15をそれぞれ示している。
ここでは、入力データ信号速度を1/fとする。
【0058】
データ信号SDTはDFF311Bのクロック入力端Cおよびクロック反転入力端XCに供給されている。
DFF311Bはデータ信号SDTの立ち上がりおよび立ち下がり遷移時に第4抽出反転クロックXECK14および第4抽出クロックECK14をラッチして第1抽出クロックECK11および第1抽出反転クロックXECK11として出力する。
第1抽出クロックECK11および第1抽出反転クロックXECK11から1/fsecの遅延素子312B−1〜312N−4によって第5抽出反転クロックXECK15が生成される。
ここで、遅延素子312B−1〜312B−4は、第5抽出反転クロックXECK15と第1抽出クロックECKの位相をそろえるように、位相比較器314からフィードバック制御されている。
【0059】
全体として、DFF311Bと遅延素子312B−1〜312B−3は入力データ信号SDTの1/2分周器の形となっているが、DFF311Bの入力が出力より遅延素子312B−1〜312B−3によって3/4ビット分遅れている。このため、DFF311Bの出力が反転したのち3/4ビット分の時間はデータ入力が無視されることになる。
結果として、図15(A)〜(K)に示すように、基準遷移に同期した1/2周波数のクロックECK11〜ECK15および反転クロックXECK11〜XECK15が抽出される。
【0060】
そして、抽出クロックECK11〜ECK14および抽出反転クロックXECK11〜XECK14を使って、DFF315B−1〜315B−8において入力データをラッチする。これにより、入力データ信号SDTをラッチすると同時に1/8デシリアライズすることができる。
【0061】
本第3の実施形態によれば、図2のCDR回路310Aでは必要なインバータ素子を無くすことが可能であり、さらに高速な動作が可能となる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、一定周期ごとにクロック信号を挿入する信号伝送方式の受信装置、特にCDR回路に特徴を有するものであり、図7の回路と同程度の入力ジッタに対する耐力を持ちつつ、高速なクロック抽出を可能とするものである。
すなわち、本実施形態によれば、簡易な回路構成で、高速かつジッタ入力に強く、信号エラーの発生を抑止することができる。
【0063】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
100・・・通信システム、200・・・送信装置、300,300A、300B・・・受信装置、310,310A,310B・・・CDR回路、311,311A,311B・・・分周用DFF(D型フリップフロップ)、312−1〜312−4,312B−1〜312B−4・・・遅延素子、314・・・位相比較器、315−1〜315−8,315B−1〜315B−8・・・ラッチ用DFF。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遅延素子を含み、定期的に信号遷移の挿入されたデータ入力をトリガとしてクロックを抽出する分周器と、
上記分周器で抽出されたクロックに同期して入力データ信号をラッチするラッチと
を有するCDR回路。
【請求項2】
上記分周器は、
クロック入力端への入力信号に同期してデータ入力端からデータを入力し、データ出力端から保持したデータを抽出クロックとして出力するフリップフロップと、
上記フリップフロップのデータ出力端に対して接続される1つの遅延素子またはデータ出力端に対して縦続接続される複数の遅延素子と、を含み、
上記遅延素子はそれぞれ、
入力クロックを遅延させた抽出クロックを出力し、
上記フリップフロップのデータ入力端には、上記1つの遅延素子の出力抽出クロックまたは複数の遅延素子のうちのいずれかの遅延素子の出力抽出クロックの反転信号が供給される
請求項1記載のCDR回路。
【請求項3】
上記フリップフロップは、
入力データ信号遷移の立ち上がりと立下りに同期する両エッジトリガ型である
請求項2記載のCDR回路。
【請求項4】
上記フリップフロップは。
データ入力端と反転データ入力端、およびデータ出力端と反転データ出力端を有する差動型両エッジトリガ型であり、上記データ出力端から抽出クロックを出力し、上記反転データ出力端から抽出反転クロックを出力し、
上記各遅延素子は、
抽出クロックを入力する正側入力端と、抽出反転クロックを入力する反転入力端と、抽出クロックを出力する正側出力端と、抽出反転クロックを出力する反転出力端と、を含み、
上記フリップフロップのデータ入力端には、上記1つの遅延素子の出力抽出反転クロックまたは複数の遅延素子のうちのいずれかの遅延素子の出力抽出反転クロックが供給され、
上記フリップフロップの反転データ入力端には、上記1つの遅延素子の出力抽出クロックまたは複数の遅延素子のうちのいずれかの遅延素子の出力抽出クロックが供給される
請求項3記載のCDR回路。
【請求項5】
分周器の内部の遅延素子の遅延量を、抽出したクロックおよび遅延素子によって遅延した抽出クロックの位相差を比較してフィードバック制御を行う位相比較器を含む
請求項1から4のいずれか一に記載のCDR回路。
【請求項6】
上記フリップフロップの出力クロック、および上記1または複数の遅延素子から出力されたクロックに同期して入力データ信号をラッチする複数のラッチを含む
請求項1から5のいずれか一に記載のCDR回路。
【請求項7】
データ線を伝播された定期的に信号遷移の挿入されたシリアルデータ信号を受信し、受信したシリアルデータ信号に応じてクロックおよびデータをリカバリするCDR回路を有し、
上記CDR回路は、
遅延素子を含む、定期的に信号遷移の挿入されたデータ入力をトリガとしてクロックを抽出する分周器と、
上記分周器で抽出されたクロックに同期して入力データ信号をラッチするラッチと、を含む
受信装置。
【請求項8】
上記分周器は、
クロック入力端への入力信号に同期してデータ入力端からデータを入力し、データ出力端から保持したデータを抽出クロックとして出力するフリップフロップと、
上記フリップフロップのデータ出力端に対して接続される1つの遅延素子またはデータ出力端に対して縦続接続される複数の遅延素子と、を含み、
上記遅延素子はそれぞれ、
入力クロックを遅延させた抽出クロックを出力し、
上記フリップフロップのデータ入力端には、上記1つの遅延素子の出力抽出クロックまたは複数の遅延素子のうちのいずれかの遅延素子の出力抽出クロックの反転信号が供給される
請求項7記載の受信装置。
【請求項9】
上記フリップフロップは、
入力データ信号遷移の立ち上がりと立下りに同期する両エッジトリガ型である
請求項8記載の受信装置。
【請求項10】
上記フリップフロップは。
データ入力端と反転データ入力端、およびデータ出力端と反転データ出力端を有する差動型両エッジトリガ型であり、上記データ出力端から抽出クロックを出力し、上記反転データ出力端から抽出反転クロックを出力し、
上記各遅延素子は、
抽出クロックを入力する正側入力端と、抽出反転クロックを入力する反転入力端と、抽出クロックを出力する正側出力端と、抽出反転クロックを出力する反転出力端と、を含み、
上記フリップフロップのデータ入力端には、上記1つの遅延素子の出力抽出反転クロックまたは複数の遅延素子のうちのいずれかの遅延素子の出力抽出反転クロックが供給され、
上記フリップフロップの反転データ入力端には、上記1つの遅延素子の出力抽出クロックまたは複数の遅延素子のうちのいずれかの遅延素子の出力抽出クロックが供給される
請求項9記載の受信装置。
【請求項11】
分周器の内部の遅延素子の遅延量を、抽出したクロックおよび遅延素子によって遅延した抽出クロックの位相差を比較してフィードバック制御を行う位相比較器を含む
請求項7から10のいずれか一に記載の受信装置。
【請求項12】
上記フリップフロップの出力クロック、および上記1または複数の遅延素子から出力されたクロックに同期して入力データ信号をラッチする複数のラッチを含む
請求項7から11のいずれか一に記載の受信装置。
【請求項13】
定期的に信号遷移の挿入されたシリアルデータ信号をデータ線に送信する送信装置と、
上記データ線を伝播された定期的に信号遷移の挿入されたシリアルデータ信号を受信する受信装置と、を有し、
上記受信装置は、
受信したシリアルデータ信号に応じてクロックおよびデータをリカバリするCDR回路を有し、
上記CDR回路は、
遅延素子を含む、定期的に信号遷移の挿入されたデータ入力をトリガとしてクロックを抽出する分周器と、
上記分周器で抽出されたクロックに同期して入力データ信号をラッチするラッチと、を含む
通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−39357(P2012−39357A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177337(P2010−177337)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】