説明

CMP後のウェーハを洗浄するための熱的方法

【解決手段】化学機械研磨後に半導体ウェーハを洗浄するための方法を提供する。方法の一例では、ウェーハに酸化環境における熱処理を施し、その後、還元環境における熱処理を施す。酸化環境における熱処理では、残留物を除去すると共に、露出した銅を酸化して酸化銅層を形成する。還元環境における熱処理では、その後、酸化銅を元素銅へ還元する。これにより、露出した銅は清浄となり、無電解メッキ等、更なる処理のための状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造の分野に関し、特に、ウェーハ洗浄に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、そのバックエンドオブライン(BEoL)相互接続構造を含め、銅により形成された導電線及び他の特徴部(Feature)を含む。ウェーハ上での半導体デバイス製造中、銅は、通常、誘電層に画成されたトレンチ又はビア内に堆積される。その後、銅及び誘電層を平坦化して、追加層を堆積させるための平滑面を提供する。平坦化のための一般的な方法は、化学機械平坦化(CMP)である。CMP処理は、通常、次の層の形成前に除去を要する残留物をウェーハの露出面に残す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
CMP残留物を除去するための通常の方法には、ウェーハの洗浄が含まれる。例えば、ウェーハを、最初に酸性溶液、次に塩基性溶液において洗浄するか、あるいは、最初に塩基性溶液、その後に酸性溶液により洗浄することができる。しかしながら、こうした方法には、銅を除去することで、周囲の誘電層に対して窪んだ銅特徴部が生じる傾向を有するという欠点がある。CMP残留物を除去するための他の方法では、ウェーハを活発なプラズマに露出し、残留物をエッチングにより取り去る。
【0004】
本発明は、露出した銅にも、誘電層にも害を与えない、CMP残留物を除去するための新規な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
CMP後洗浄方法の一例は、約100℃より高い温度の気相酸化環境においてウェーハを処理し、その後、約100℃より高い温度の気相還元環境においてウェーハを処理することを備える。酸化環境におけるウェーハの処理は、O2又はO3を含有する雰囲気中におけるウェーハの処理を含み得ると共に、還元環境におけるウェーハの処理は、H2を含有する雰囲気中におけるウェーハの処理を含み得る。本方法は、更に、酸化環境におけるウェーハの処理の前に、塩基性溶液によりウェーハを処理することを備え得る。塩基性溶液は、例えば、約8から約11の範囲のpHを有し得ると共に、一部の実施形態において、水酸化テトラメチルアンモニウムを含む。
【0006】
本発明は、更に、Cu2O表面層を有する導電性特徴部を含むCMP後ウェーハを洗浄するための方法を提供する。この方法の一例は、CuO表面層を形成するために第一の気相環境においてCu2O表面層を酸化させ、第二の気相環境においてCuO表面層を元素銅に還元することを備える。Cu2O表面層の酸化処理は、約100℃より高い温度のO2又はO3を含有する雰囲気中におけるウェーハの処理を含み得ると共に、CuO表面層の還元処理は、約100℃より高い温度のH2を含有する雰囲気中におけるウェーハの処理を含み得る。方法は、更に、Cu2O表面層の酸化処理の前に、塩基性溶液により残留層を実質的に除去することを含み得る。
【0007】
本発明の他の方法は、ウェーハの導電性特徴部上にキャッピング層を選択的に形成することを対象とする。この方法の一例は、ウェーハを洗浄し、無電解メッキにより導電性特徴部上に選択的にキャッピング層を形成することを備える。この方法において、ウェーハの洗浄は、CuO表面層を形成するために第一の気相環境において導電性特徴部のCu2O表面層を酸化させ、その後、第二の気相環境においてCuO表面層を元素Cuに還元することを含み得る。一部の実施形態において、キャッピング層は、コバルト又はコバルト合金を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】誘電層内に配置された導電性特徴部を含むCMP後ウェーハの断面図である。
【図2】図1の導電性特徴部の上部の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による図1のCMP後ウェーハを洗浄するための方法のフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態による酸化環境における処理後の図2に示した導電性特徴部の上部の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による還元環境における処理後の図3に示した導電性特徴部の上部の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による導電性特徴部上に選択的に配置されたキャッピング層を含むウェーハの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、化学機械研磨後に半導体ウェーハを洗浄するための方法を提供する。方法の一例では、ウェーハに酸化環境における熱処理を施し、その後、還元環境における熱処理を施す。酸化環境における熱処理では、残留物を除去すると共に、露出した銅を酸化して酸化銅層を形成する。還元環境における熱処理では、その後、酸化銅を元素銅へ還元する。これにより、露出した銅は清浄となり、無電解メッキ等、更なる処理のための状態となる。
【実施例】
【0010】
図1は、化学機械研磨(CMP)処理後のウェーハ100の断面図である。ウェーハ100は、誘電層110と、誘電層110内に配置され、露出した導電性特徴部120とを備える。図1は、更に、CMP処理により誘電層110と導電性特徴部120との表面に残された残留層130を示している。残留層130は、例えば、洗浄残留物及び防蝕剤を含む可能性があり、通常は銅−有機物複合体である。残留層130は、導電性特徴部120の無電解メッキ等、更なる処理の前に、可能な限り完全に除去するべきである。
【0011】
誘電層110は、SiO2、又はSiO2より低い誘電率を有する低誘電率(「low−k」)材料を含み得る。こうしたlow−k材料、特に、誘電率が3より低いものは、完成したデバイスに優れた電気特性を与えるため、半導体デバイス製造において好まれる度合いが高まっている。適切なlow−k材料には、例えば、フルオロケイ酸塩ガラス(FSG)、有機ケイ酸塩ガラス(OSG)、及び高多孔性SiO2が含まれる。
【0012】
導電性特徴部120は、例えば、銅製の導電線又はビアである。図1には単一の導電性特徴部120のみを図示しているが、導電性特徴部120は、一般にウェーハ100上に存在する多数の導電性特徴部を表すために使用される。
【0013】
図2は、図1の導電性特徴部120の上部の拡大図である。残留層130は、明確化のため図2において省略されている。図2に示したように、導電性特徴部120が銅を含む時、CMP処理により、導電性特徴部120は、酸化銅(Cu2O)の薄い表面層200を備えた状態となる。
【0014】
図3は、残留層130を除去するためにウェーハ100を洗浄するための方法300の一例を表すフローチャートである。方法は、随意的に塩基性溶液によりウェーハ100を処理すること310と、気相酸化環境においてウェーハを処理すること320と、気送管現環境においてウェーハを処理すること330と、を含む。ここで、「気相」とは、環境内の物質の相がプラズマではなく気体であることを示す。
【0015】
方法300は、随意的に、塩基性溶液によりウェーハ100を処理することにより開始される。一部の実施形態において、塩基性溶液は、pHが10であり、塩基性溶液の適切なpH範囲は、約8から約11である。塩基性溶液は、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。こうした条件下における塩基性溶液中での適切な滞留時間は、約30秒から約2分間である。塩基性溶液によるウェーハ100の処理310は、誘電層110の表面と、導電性特徴部120の表面とから、残留層130の実質的部分を除去する役割を果たす。一部の実施形態では、処理310により、ほぼ単分子層の残留層130が、誘電層110の表面と導電性特徴部120の表面との両方に残る。塩基性溶液による処理310は、Cu2O表面層200(図2)を有意に変化させない。
【0016】
次に、ウェーハ100を酸化環境において処理する320。塩基性溶液によりウェーハ100を処理すること310は随意的であるため、一部の実施形態において、方法300は、酸化環境における処理320により開始される。酸化環境の一例は、約1%から約10%の分子酸素(O2)又は約1%から約2%のオゾン(O3)を含有した雰囲気を含み、窒素、ヘリウム、又はアルゴンといった不活性ガスを雰囲気の残部とする。本明細書において使用した百分率は、特に記載が無い限り全て体積百分率である。
【0017】
酸化環境の適切な温度範囲は、約100℃から約400℃である。更に好ましい温度は、約150℃から約250℃の範囲である。酸化環境内の圧力は、標準気圧以下にし得る。圧力の一例は、約1Torrである。こうした条件下における酸化環境内での適切な滞留時間は、約2分間であるが、約1分間から約5分間の範囲にし得る。塩基性溶液によるウェーハ100の随意的な処理310を省略すると、一般に滞留時間は長くなる。
【0018】
酸化環境における処理320は、残留層130内の有機物質を分解及び揮発させる役割を果たす。酸化環境の高温は、更に残留層130において水を脱着させる役割を果たす。加えて、酸化環境は、導電性特徴部120のCu2O表面層200を酸化させる役割を果たす。図4に示したように、Cu2O表面層200(図2)は、酸化され、酸化銅(CuO)表面層400が形成される。
【0019】
次に、ウェーハ100を還元環境において処理330する。還元環境は、例えば、分子水素(H2)を含有した雰囲気を含む。雰囲気は、本質的に完全に水素にすること、あるいは、窒素、ヘリウム、又はアルゴン等の不活性ガスと水素との混合物を含むことが可能である。還元環境内の圧力は、標準気圧以下にし得る。標準気圧において、水素の適切な濃度は、約4%である。約1Torrから約10Torr等の低圧において、雰囲気は、完全に水素となり得る。還元環境の適切な温度範囲は、約100℃から約400℃である。更に好ましい温度は、約150℃から約250℃の範囲である。一部の実施形態では、処理320及び330の両方を通して、同じ温度が維持される。こうした条件下における還元環境内での適切な滞留時間は、約1分間から約2分間である。
【0020】
図5に示したように、還元環境における処理330は、CuO表面層400(図4)を元素銅(Cu)の表面層500へ還元する役割を果たす。還元環境における処理330に続いて、ウェーハ100は、例えば、導電性特徴部120上のキャッピング層の選択的無電解メッキ等により、更に処理可能である。コバルト及びコバルト合金の無電解メッキを行う方法は、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込むものとする2006年12月22日提出の米国特許出願第11/644,697号「コバルト合金の無電解メッキ」及び2006年8月30日提出の米国特許出願第11/513,634号「選択的金属堆積用の銅表面を設計するプロセス及びシステム」において教示される。図6は、無電解メッキにより導電性特徴部120上にキャッピング層600を選択的に形成した後のウェーハ100を示す。元素銅表面層500は、コバルト及びコバルト合金キャッピング層の核生成及び成長にとって、Cu2O表面層200より優れた表面をもたらすという利点を有する。
【0021】
上述した明細書において、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、当業者には、本発明が特定の実施形態に限定されないことが理解されよう。上述した本発明の様々な特徴及び態様は、個別に又は一緒に使用し得る。更に、本発明は、本明細書の広義の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書において説明したものを超える任意の数の環境及び用途において利用可能である。したがって、本明細書及び図面は、限定ではなく例示と見做されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMP後洗浄方法であって、
約100℃より高い温度の気相酸化環境においてウェーハを処理し、その後、
約100℃より高い温度の気相還元環境において前記ウェーハを処理することを備える方法。
【請求項2】
前記酸化環境における前記ウェーハの処理は、O2を含有する雰囲気中において前記ウェーハを処理することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記雰囲気は、約1%から約10%のO2を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記酸化環境における前記ウェーハの処理は、O3を含有する雰囲気中において前記ウェーハを処理することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記雰囲気は、約1%から約2%のO3を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記酸化環境の前記温度は、約150℃から約250℃である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記酸化環境内の圧力は、約1Torrである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記酸化環境における前記ウェーハの処理は、前記ウェーハを前記酸化環境内において、約1分間から約5分間の滞留時間に渡って保持することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記還元環境における前記ウェーハの処理は、H2を含有する雰囲気中において前記ウェーハを処理することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記雰囲気は、H2と不活性ガスとの混合物を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記還元環境内の圧力は、約1Torrから約10Torrである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記還元環境の前記温度は、約150℃から約250℃である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記酸化環境の温度と、前記還元環境の温度とは、同一である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記還元環境における前記ウェーハの処理は、前記ウェーハを前記還元環境内において、約1分間から約2分間の滞留時間に渡って保持することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記酸化環境における前記ウェーハの処理の前に、塩基性溶液により前記ウェーハを処理することを更に備える、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記塩基性溶液は、約8から約11の範囲のpHを有する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記塩基性溶液は、水酸化テトラメチルアンモニウムを含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記塩基性溶液における前記ウェーハの処理は、前記ウェーハを前記塩基性溶液中に、約30秒間から約2分間の滞留時間に渡って保持することを含む、請求項15記載の方法。
【請求項19】
Cu2O表面層を有する導電性特徴部を含むCMP後のウェーハを洗浄するための方法であって、
CuO表面層を形成するために第一の気相環境において前記Cu2O表面層を酸化させ、
第二の気相環境においてCuO表面層を元素銅に還元させること、を備える方法。
【請求項20】
前記第一の気相環境は、約100℃より高い温度のO2を含有する雰囲気を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記第一の気相環境は、約100℃より高い温度のO3を含有する雰囲気を含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記第二の気相環境は、約100℃より高い温度のH2を含有する雰囲気を含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
Cu2O表面層を酸化させる前に、塩基性溶液により残留層を実質的に除去することを更に備える、請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記塩基性溶液は、約8から約11の範囲のpHを有する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記塩基性溶液は、水酸化テトラメチルアンモニウムを含む、請求項23記載の方法。
【請求項26】
ウェーハの導電性特徴部上にキャッピング層を選択的に形成する方法であって、
CuO表面層を形成するために第一の気相環境において前記導電性特徴部のCu2O表面層を酸化させ、その後、
第二の気相環境において前記CuO表面層をCuに還元させることを含む
前記ウェーハの洗浄と、
無電解メッキにより導電性特徴部上に選択的に前記キャッピング層を形成すること、を備える方法
【請求項27】
前記ウェーハの洗浄は、前記Cu2O表面層を酸化させる前に、塩基性溶液により前記ウェーハを処理することを備える、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記キャッピング層は、コバルト又はコバルト合金を含む、請求項26記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−530129(P2010−530129A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507421(P2010−507421)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/005744
【国際公開番号】WO2008/140697
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】