説明

FPDモジュールの位置決めマーク認識装置及びFPDモジュールの組立装置

【課題】2つの位置決めマークからの反射光の光路差及び光路方向を変更可能で、簡易小型化した装置を提供する。
【解決手段】同一平面上にない2つのワークにそれぞれ設けられた位置決めマークを照射する照明装置と、それぞれの位置決めマークからの反射光を撮像する撮像装置と、を備える。さらに、2つのワークと撮像装置との間に配設され、それぞれの位置決めマークからの反射光を、少なくとも2回垂直に反射させることにより、撮像装置までの反射光の光路長が同一となるように複数の光学素子を組み合わせてなる光路差変更手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)の表示基板に対して、搭載部材を実装する際の位置決めを行うためのFPDモジュールの位置決めマーク認識装置及びFPDモジュールの組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FPDには、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)、プラズマディスプレイ等がある。
このFPDにおける表示基板では、その周縁部に、搭載部材が実装される。ここで、搭載部材は、駆動ICチップをフレキシブル印刷回路基板(FPC:Flexible Printed Circuit)に実装したチップオンフィルム(COF:Chip on Film)と、FPCを用いず、駆動ICチップを表示基板に直接搭載するチップオングラス(COG:Chip on Glass)の2つを総称する。
また、表示基板の周辺には、さらに、プリント回路基板(PCB:Printed Circuit Board)等の周辺基板が実装され、その結果、FPDモジュールが組み立てられる。
【0003】
FPDモジュールの組立ラインでは、複数の処理工程により、表示基板の周縁部および周辺に、搭載部材およびPCBの実装を行う。
【0004】
FPDモジュールの組立ラインにおける処理工程の一例として、(1)表示基板端部の搭載部材貼付け部を清掃する端子クリーニング工程と、(2)清掃後の表示基板端部に異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を貼り付けるACF工程がある。また、(3)表示基板のACFを貼付した位置に、搭載部品を位置決めして仮圧着(搭載)する搭載工程と、(4)仮圧着した搭載部材を加熱圧着してACFにより固定する本圧着工程がある。さらに、(5)搭載部材の表示基板側と反対側に、予めACFを貼付したPCBを搭載するPCB工程がある。
【0005】
特に、工程(3)の表示基板に搭載部材を位置決めする工程では、表示基板側の電極と搭載部材側の出力電極の高密度化により、両者の厳格な位置決め精度が要求される。
【0006】
表示基板及び搭載部材という2つのワークの位置決めのために、両ワークに、一対の位置決めマークが各々設けられている。両ワークの対応する一対の位置決めマーク相互の位置決め誤差を検出することによって、位置決め調整を行うことができる。
【0007】
この位置決め調整は、具体的には、一対の位置決めマークに照明光を照射して、この照明下で位置決めマークを撮像し、撮像された各位置決めマークのXY座標軸位置を認識して、位置決め誤差を演算することにより行う。そして、演算された補正値に基づいて、一方側または両方のワークのハンドリング手段の動作によって、位置決め調整を行う。
【0008】
この位置決め調整の際、表示基板の位置決めマークが表示基板の端面よりも、最大7mm程度内側にあり、搭載部材側の位置決めマークを同時に撮像して認識するためには、広視野が必要となる。広視野のカメラのレンズを選定すると分解能が悪くなり、精度が低下する。このため、ある程度離れた距離(約10mm)を高分解能で認識可能な2視野分割方式が望まれていた。
【0009】
また、表示基板と搭載部材との位置決め時には、あらかじめ搭載部材を持ち上げて上方から表示基板上に搭載するため、両者は、同一平面内ではなく、約2mmの高低差がある。この状態で、高精度のカメラで撮像すると、焦点深度が浅いため、焦点ぼけが生じ、表示基板と搭載部材両者の位置決めマークの位置を正確に検出することができない。言い換えると、それぞれの位置決めマークからの反射光は、撮像時に、この高低差分の光路差が生じる。このため、それぞれの位置決めマークからの反射光の光路差を補正する必要があった。
【0010】
前者の広視野に対応するため、特許文献1に、図6に示すような2視野分割レンズが提案されていた。
2視野分割レンズユニット400の構成は、図6に示すように、結像用レンズ43の光軸Aと一致するように撮像装置内に、カメラ80が配置されている。2視野分割レンズユニット400として、この光軸Aを線対称となるように、2組の「ハ」の字型に配された一対の反射ミラーが配設されている。
【0011】
結像用レンズ43の後方側には、一対の第1の反射ミラー41a,41bが配置されている。カメラ80の前方側に、一対の第2の反射ミラー42a,42bが配置されている。第2の反射ミラー42a,42bは、第1の反射ミラー41a,41bの後方に位置され、第1の反射ミラー41a,41bで反射された反射像をさらに反射させる。つまり、図6中、結像用レンズ43の上側に入射される位置決めマークM1の反射光は、第1の反射ミラー41bで反射され、さらにその反射像が、第2の反射ミラー42aで反射される。また、図6中、結像用レンズ43の下側に入射される位置決めマークM2は、第1の反射ミラー41aで反射され、更にその反射像が、第2の反射ミラー42bで反射される。
【0012】
従って、第1の反射ミラー41aに位置決めマークM2を反射させ、第1の反射ミラー41bに位置決めマークM1の像を反射させることによって、位置決めマークM1,M2の像の光路が相互に分離される。このように、第1の反射ミラー41a、41bと第2の反射ミラー42a,42bとにより、結像用レンズ43に入射した光の光路が分離され、それぞれの反射ミラーで反射された位置決めマークM1、M2の反射像がカメラ80の撮像面に結像される。
【0013】
図6に示す2視野分割レンズユニット400においては、結像用レンズ43から第1の反射ミラー41a,41bに至る光路の途中で、また第1の反射ミラー41a,41bから第2の反射ミラー42b,42aまでの光路途中で光路が交差する。なお、これら各光路の交差位置の前側にはカメラ80に迷光が入り込むのを防止するための遮光部材44a,44bが配置されている。また、カメラ80の前側にも同様の遮光部材45a、45bが配置されている。
【0014】
特許文献1に開示されている2視野分割レンズでは、一対の「ハ」の字型の反射ミラーを2組ずつ配設するようにしているため、2視野分割レンズユニット自体の長さが長くなってしまい、装置構成が複雑かつ大型となる。さらに、光路差の補正については、対処されていないため、焦点距離の補正を別に行う必要がある。
【0015】
また、光路差を補正するものとして、特許文献2に開示されているような光屈折素子が提案されている。これは、単一板状のガラスや透明樹脂からなる光屈折素子を反射光の光路上に配置することにより、搭載部材側の電極と表示基板側の電極とを、同一焦点距離に位置させるものである。これにより、透過する光屈折素子の厚みに、屈折率を乗じた分の光路差を補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平2007―19147号公報
【特許文献2】特開平9−45728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献2に開示されている技術では、2つの位置決めマークの反射光の光路上に、単一板状の光屈折素子を透過させて光路差を調整するようにしているため、光路長及び光路方向のフレキシブルな変更は困難であった。
【0018】
本発明の目的は、上記問題点を考慮し、光路長及び光路方向の変更が自由に選定できる簡易小型のFPDモジュールの位置決めマーク認識装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のFPDモジュールの位置決めマーク認識装置では、同一平面上にない2つのワークにそれぞれ設けられた位置決めマークを照射する照明装置と、それぞれの位置決めマークからの反射光を撮像する撮像装置と、を備える。
さらに、2つのワークと撮像装置との間に配設され、それぞれの位置決めマークからの反射光を、少なくとも2回垂直に反射させることにより、撮像装置までの反射光の光路長が同一となるように複数の光学素子を組み合わせてなる光路差変更手段と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、光路差及び光路方向の変更がフレキシブルに行える簡易小型のFPDモジュールの位置決めマーク認識装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のFPDモジュールの位置決めマーク認識装置の第1の実施の形態例を示す斜視図である。
【図2】本発明のFPDモジュールの位置決めマーク認識装置の第1の実施の形態例において照明装置を同軸落射方式とした形態例を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明のFPDモジュールの液晶パネルと搭載部材の位置決め調整を説明する構成図である。
【図4】本発明のFPDモジュールの位置決めマーク認識装置の第1〜第4の実施の形態例の要部拡大図である。(a)は、第1の実施の形態例、(b)は第2の実施の形態例、(c)は第3の実施の形態例、(d)は第4の実施の形態例である。
【図5】撮像装置の撮像面を模式的に示す説明図である。
【図6】従来の2視野分割レンズの機構を説明する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のFPDモジュールの位置決めマーク認識装置の第1〜第4の実施の形態例について、図1〜図5を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0023】
既に説明していることであるが、FPDモジュールの組立装置のライン構成例として、下記の5工程(ユニット)がある。すなわち、(1)表示基板側端部の搭載部材貼り付け部の端子クリーニング工程(端子クリーニングユニット)、(2)表示基板端部に異方性導電シート(ACF)を貼り付けるACF工程(ACFユニット)、(3)表示基板のACFを貼付した位置に、搭載部材を位置決めして仮圧着装置により仮圧着(搭載)する仮圧着工程(仮圧着ユニット)と、(4)仮圧着した搭載部材を加熱圧着してACFにより固定する本圧着(実装)工程(本圧着ユニット)、(5)搭載部材の表示基板側と反対側に、予めACFを貼付したPCBを搭載するPCB工程(PCBユニット)がある。
【0024】
本発明のFPDモジュールの位置決めマーク認識装置(以下、位置決めマーク認識装置)は、工程(3)の搭載部材を表示基板に位置決めを行う装置に用いられる。具体的には、図1に示すように、表示基板である液晶パネル2の周縁部に、搭載部材3を実装するための装置に用いられる。ここで、搭載部材3は、チップオンフィルム(COF)と、チップオングラス(COG)の2つを総称したものをいう。
図示しないが、液晶パネル2の周辺に、さらに、PCB(Printed Circuit Board)等の周辺基板が実装されて、FPDモジュールとして組み立てられる。
【0025】
位置決めマーク認識装置は、図1、2に示すように、撮像装置4a、4b、光路差変更手段6a,6b(図2参照)、照明装置7(7a,7b)及び光路分割手段30から構成される。左右の位置決めマークのそれぞれに対応して、撮像装置4a,4b、光路差変更手段6a,6bが2組ずつ左右に振り分けられて配置されている。
【0026】
液晶パネル2は、図1に示すように、2枚のガラス製の方形薄板からなる上基板2aと下基板2bとから構成されている。下基板2bは上基板2aから所定の幅にわたって突出しており、搭載部材3は、この下基板2bの突出部に搭載される。なお、図1中、下基板2bの突出部は、簡略のため、1辺としているが、実際には、少なくとも2辺以上を突出部としている。搭載部材3は、フレキシブル印刷回路基板(FPC)に駆動ICチップ5を実装したものである。搭載部材3には駆動ICチップ5からの配線パターンである入力電極5a及び出力電極5bが形成されている。
【0027】
また、下基板2bの表面にも配線パターンである電極8が形成されており、搭載部材3を液晶パネル2に搭載することによって、これらの電極同士を電気的に導通させるようにする。搭載部材3と液晶パネル2との接合は、ACF9を用いて行われる。図1に示すように、液晶パネル2の下基板2b側の電極8が設けられている部位にACF9が貼り付けられており、搭載部材3はこのACF9を介して液晶パネル2に搭載される。
【0028】
上述したように、搭載部材3の液晶パネル2への搭載は、搭載部材3側の出力電極5bと液晶パネル2側の電極8を確実に接続する必要がある。このために、搭載部材3と液晶パネル2との間を、高精度に位置決めした後に接続されることになる。
【0029】
また、図1に示す例では、照明装置7は下方からの照明として用いられている。すなわち、照明装置7は、表示基板2及び搭載部材3の位置決めマークに対して略垂直に照射するように、表示基板2及び搭載部材3に対して対向して配設されている。なお、照明装置7は、図示しないLEDランプを1個又は2個からなる。
【0030】
次に、光路分割手段30について説明する。図1に示すように、光路分割手段30は、照明装置7と表示基板2との間に配設される。表示基板2及び搭載部材3の一対の位置決めマークに対して、照明装置7からの照明光を、右側の位置決めマーク10a,11a及び左側の位置決めマーク10b、11bを区別して照射する。そして、両者の反射光を、右側の位置決めマーク10a,11aと左側の位置決めマーク10b、11bとを区別して、反射させるようにしている。
【0031】
光路分割手段30は、第1のプリズム31a,31b、第2のプリズム34a,34bと遮蔽部33とから構成される。第1のプリズム31a,31bは、一対の45°プリズムからなり、斜辺側である前面にハーフミラー32a,32bが接着されている。なお、ハーフミラー32a,32bは、可視域用の多層ハーフミラーである。
【0032】
また、第1のプリズム31a,31bの1つの等辺側である背面は、黒色加工されており、第1のプリズム31a,31bの背面同士を接着することにより、遮蔽部33が構成される。黒色加工は、サンドブラストにより砂目加工されている。第1のプリズム31a,31bの背面同士の接着及び第1のプリズム31a,31bの前面のハーフミラー32a,32bとの接着は、カナダバルサム等の光学接着剤により行う。
【0033】
照明装置7からの照明光は、遮蔽部33により左右に区別されて、第1のプリズム31a,31b内に入射後、ハーフミラー32a,32bを透過して、右側の位置決めマーク10a、11aと、左側の位置決めマーク10b、11bを別個に照射する。
そして、照射された両者の一対の位置決めマークの反射光は、第1のプリズム31a,31bの斜辺側の前面のハーフミラー32a,32bで、左右にそれぞれ区別されて垂直に反射される。ハーフミラー32a,32bで垂直に曲折された反射光は、ハーフミラー32a,32bに対向して配設された光路差変更手段6a,6b(図2参照)に入射される。
【0034】
また、照射された一対の位置決めマークの反射光は、図2の破線に示す光路方向と逆向きに、2つの平行四辺形プリズム62a,62b,63a,63bにそれぞれ入射される。外方の側辺で垂直に反射され、内方側の側辺で垂直に反射されて、45°プリズム62a,62b、63a,63b側に出射する。45°プリズム61a,61bの斜辺の反射ミラーで垂直に反射されて、上方の鏡筒46a,46b内に入射される。鏡筒46a,46b内に入射された反射光が、カメラ47a,47bにより撮像される。
【0035】
カメラ47a,47bの撮像面90を、図5に模式的に示す。
撮像面90は2つの撮像領域91a,91bに分けられている。撮像領域91aには右側の位置決めマークM1(図1中、10a)が結像され、撮像領域91bには左側の位置決めマークM2(図1中、11a)は結像される。なお、一対のカメラ47a,47bは光路分割手段30を挟んで相対向する位置に配設されているので、左右の位置決めマーク間隔が短い場合でも、一対のカメラ47a、47bを相互に干渉しないで配置することができる。
【0036】
なお、照明装置は、上述したような下方照明(図1参照)に限定されるものではない。
図2に示すように、同軸落射方式とすることもできる。図2では、照明装置7a,7bは、撮像装置4a,4bの鏡筒46a,46bの中程にそれぞれ配設されている。照明装置7a,7bは、LEDランプである。図2中、一点鎖線で示すように、照明装置7a,7bからの照明光は、鏡筒46a,46b内に長手方向45°傾斜して配置されたハーフミラー49a,49bで、垂直方向(図2中、鉛直下方)に反射される。
【0037】
照明装置7a,7bからの照明光が、光路差変更手段6a,6bの45°プリズム61a,61bの1つの等辺側に入射すると、斜辺側の反射ミラーで、図2中、プリズム61aでは左側に垂直反射し、プリズム61bでは右側に垂直反射して、他の等辺側から出射する。45°プリズム61a,61bの他の等辺側に配設された平行四辺形プリズム62a,62b、63a,63b内に、照明光が、各々入射すると、平行四辺形プリズム62a,62bの内方の側辺側で外方に垂直反射する。さらに、照明光は、平行四辺形プリズム62a,62b内の側辺間の長さ方向を透過し、外方の側辺で垂直に反射して、平行四辺形プリズム62a,62bから出射する。平行四辺形プリズム63a,63bも同様である。このように、同軸落射方式の照明の場合には、位置決めマークからの反射光とは逆方向の経路となる。
【0038】
次に、位置決め調整を、図3に基づいて説明する。
液晶パネル2は位置調整機構付きのテーブル12に真空吸着等の手段で固定されている。一方、搭載部材3は吸着ヘッド13に吸着保持されており、この吸着ヘッド13は搭載用ロボット14に把持されている。液晶パネル2のテーブル12への設置時と、搭載部材3の吸着ヘッド13による吸着時は、それぞれ粗精度で仮位置決めされる。
【0039】
仮位置決めのため、テーブル12に固定されている液晶パネル2と吸着ヘッド13に保持されている搭載部材3との間には多少の位置決め誤差がある。この位置決め誤差を補正するため、両者を正確に位置合わせして、搭載用ロボット14を作動させて、搭載部材3を液晶パネル2の下基板2bにおける所定位置に搭載させる必要がある。なお、搭載用ロボット14は、XY方向の移動機構及びθ方向の回転調整機構を備えている。
これは、図示しないが他の辺の搭載を行う搭載用ロボット14が複数あるため、液晶パネル2を固定した方が、効率が良いためである。なお、搭載用ロボット14が1台の場合は、XY方向の移動をテーブル12で行い、θ方向の回転調整を搭載用ロボット14で行っても良い。
【0040】
このため、図1に示すように、液晶パネル2及び搭載部材3には、それぞれ位置決めマークが形成されている。具体的には、液晶パネル2側には、位置決めマーク10a,10bが形成され、搭載部材3側には、位置決めマーク11a,11bが形成されている。これらの位置決めマークの位置を、撮像装置4a,4bのカメラ47a,47bにより撮像して、基準位置からの位置決め誤差を算出し、テーブル12及び搭載用ロボット14(図3参照)のXY方向及びθ方向の移動機構の駆動によって、それらの位置決め誤差を補正するようにしている。
【0041】
この撮像装置4a,4bのカメラ47a,47bは、図1に示すように、鏡筒46a、46bの一端側に配置されている。カメラ47a,47bは、標準レンズを備えた高性能の小型CCDカメラである。標準レンズは、例えば、2倍(±0.5%)、焦点距離165±3mm、焦点深度340μmである。なお、照明装置の使用光線の波長は、例えば、400〜550nm、透過率90%である。
【0042】
そして、図3に示したように、カメラ47a,47bにより撮像した位置決めマークの基準位置からのずれを制御回路15で検出して制御信号を出力する。この制御信号は、駆動回路16に入力され、この駆動回路16によってテーブル12及び搭載用ロボット14が駆動されることになり、その結果、液晶パネル2と搭載部材3が正確に位置決めされる。その後、搭載部材3を液晶パネル2に熱圧着して搭載する。
【0043】
図3に示すように、液晶パネル2の下基板2bと搭載部材3とは位置決め時に、同一平面上ではなく、2mm程度の高低差がある。これは、あらかじめ搭載部材3側を持ち上げた状態から表示基板2上に仮圧着するためである。この状態で、深度の浅い高精度のカメラで撮像すると、焦点ぼけが生じてしまうため、その位置を正確に検出することができない。言い換えると、両者の位置決めマークからの反射光は、撮像時に、この高さの差分だけ光路差が生じることになる。この光路差を補正するため、本実施の形態では、撮像装置4a,4bの鏡筒46a、46b内の一端側(カメラ47a,47bと反対側)に、光路差変更手段6a,6b(図2参照)が配設されている。
【0044】
光路変更手段6a,6bは、図2に一例を示すように、光学素子であるプリズムを複数組み合わせて構成される。
本実施の形態例では、左右の位置決めマークのそれぞれについて、直角2等辺3角形プリズムである45°プリズム61a(61b)と、2つの平行四辺形プリズム62a,63a(62b、63b)とからなるプリズムユニットを2組備える。平行四辺形プリズム62a,62b、63a,63bは、鋭角が45°で、上辺及び下辺(図2中、鉛直方向の対向辺のうち、右側の入射側を下辺、左側の出射側を上辺とする)間の高さが同じで、側辺(図2中、鉛直方向に45°傾斜する辺とする)間の長さが異なるようにしている。
45°プリズム61a,61bの1つの等辺中央を中心として、45°の2つの平行四辺形プリズム62a,62b、63a,63bの上辺の鋭角が外方に向くように配設されている。
【0045】
45°プリズム61a,61b及び2つの平行四辺形プリズム62a,62b、63a,63bの反射面に、反射ミラーが配設されている。45°プリズム61a,61bでは、斜辺側に反射ミラーが配設される。平行四辺形プリズム62a,62b、63a,63bでは、側辺にそれぞれ反射ミラーが配設される。
【0046】
平行四辺形プリズムの側辺間の長さを変更することにより、透過する反射光の光路長を変えることができる。すなわち、平行四辺形プリズムの側辺の長さの差に、プリズム材質の屈折率を乗じたものが光路差補正分となる。両プリズムは、ガラス又はプラスチック等の材料からなる。例えば、硼珪酸ガラスのプリズムでは、屈折率1.51〜1.53である。
光路差変更手段6a、6bは、プリズムの種類及び配置を種々変更することにより、光路長及び光路方向を変更することができる。
【0047】
次に、光路差変更手段6a、6bの他の態様例として、図4に示す第1の実施の形態例の変形例、および第2〜第4の実施の形態例を説明する。
説明のため、ここでは、図2に示す右側の位置決めマークに対応する光路差変更手段6aのみを説明する。なお、左側の位置決めマークに対応する光路差変更手段6bについても同様である。
図4では、図2に示す同軸落射方式の照明装置7a,7bからの一点鎖線で示される照明光が光路差変更手段6a、6bを透過する場合について説明する。
【0048】
図4(a)は、図2に示した第1の実施の形態例の光路差変更手段6aと同様の構成で、2つの平行四辺形プリズム62a,63aの側辺の対向辺間の長さを変更した変形例を示したものである。図4(a)中、上方の平行四辺形プリズム62aが、下方の平行四辺形プリズム63aよりも、側辺間の長さが1.5倍程度長くなっている。
【0049】
図4(b)は、本発明の第2の実施の形態例である。
第1の実施の形態と異なる点は、上側の平行四辺形プリズム62aの左側の上辺側に、直方体プリズム64を配設した点である。なお、光路差変更手段6aの2つの平行四辺形プリズム62a,63aの大きさは第1の実施の形態と変わらない(但し、図4(a)に示した変形例とは異なる)。これにより、直方体プリズム64内の光の透過長さに、直方体プリズム64の屈折率を乗じた分だけ光路差を変化させることができる。
【0050】
図4(c)は、本発明の第3の実施の形態例である。
第1,第2の実施の形態と異なる点は、45°プリズム61aの位置及び向きである。図4(c)に示すように、45°プリズム61aの斜辺は、上向きであり、照明光が垂直左向きに反射するように配設されている。このため、平行四辺形プリズム62a、63aは、45°プリズム61aの等辺に配設せず、45°プリズム61aからの光線が各々の平行四辺形プリズム62a,63aに入射する位置に各々配置される。なお、本実施の形態例では、45°プリズムを使用しているが、これに限定されるものではなく、斜辺と同位置に、単に反射ミラーを45°傾斜して配設するようにしても良い。
【0051】
図4(d)は、本発明の第4の実施の形態例である。
第4の実施の形態では、第1〜3の実施の形態と異なる点は、光路差変更手段6aに、45°プリズムがなく、側辺間の長さが異なる2つの平行四辺形プリズム62a、63aのみで構成している点である。
図4(d)に示すように、2つの45°平行四辺形プリズム62a、63aは、下辺側の鋭角同士を当接させ、上辺側の鋭角が外方に向くように配設されている。そして、撮像装置4aの鏡筒48aからの照明光が直接2つの45°平行四辺形プリズム62a、63a内に入射するように配置されている。このため、撮像装置4a、4bは、光路分割手段30に対向する向き、すなわち、長手方向一直線上に配置されることになる。
【0052】
図示はしないが、図4(a)〜(d)の反射面をすべて反射ミラーとして構成することもできる。本実施の形態例のように、プリズムを使用するメリットとしては、プリズム内を光線が透過するため、塵埃による反射面の汚れを防止することができることである。また、プリズム同士が、互いに同質材料となるため、プリズムと空気の屈折率の違いにより中央側に寄る現象、いわゆる「けられ」を防止することができる。さらに、プリズム同士を接着することにより、光線の反射角度の調整を高精度に行うことができる。
【0053】
上述したように、本実施の形態の位置決めマーク認識装置では、光路差変更手段6a,6bの配設により、撮像装置のカメラは標準レンズで良いため、従来のような大型の2視野分割レンズが不要となり、装置構成を簡易小型化することができる。
また、光路差変更手段6a,6bは、種類や大きさの異なるプリズムや反射ミラーの組み合わせにより、光路方向の変更や光路長の補正を各々行うことができるので、多様な位置決め調整に対応することができる。
また、光路差変更手段6a,6bでは、従来のように、撮像装置の鏡筒内で光軸を交差させることもないので、光軸調整が容易である。
【0054】
本発明は上述した実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施の形態では、位置決めマーク認識装置のワークとして液晶セルに搭載部材を位置決めする場合に適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、有機EL、プラズマディスプレイ等を構成する表示基板に搭載部材を実装する場合の位置決めマークの光路差を補正するための装置に用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
4a,4b…撮像装置、6a,6b…光路差変更手段、61a,61b…直角2等辺3角形プリズム(45°プリズム)、62a,62b,63a,63b…平行四辺形プリズム、7、7a,7b…照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面上にない2つのワークにそれぞれ設けられた位置決めマークに光を照射する照明装置と、
前記それぞれの位置決めマークからの反射光を撮像する撮像装置と、
前記2つのワークと前記撮像装置との間に配設され、前記それぞれの位置決めマークからの反射光を、少なくとも2回垂直に反射させることにより、前記撮像装置までの該反射光の光路長が同一となるように複数の光学素子を組み合わせてなる光路差変更手段と、
を備えたFPDモジュールの位置決めマーク認識装置。
【請求項2】
前記光路差変更手段は、複数のプリズムの組合せからなるようにした、
請求項1に記載のFPDモジュールの位置決めマーク認識装置。
【請求項3】
前記複数のプリズムの組合せは、1つの直角2等辺3角形プリズム及び2つの鋭角が45°の平行四辺形プリズムの組合せからなるようにした、
請求項2に記載のFPDモジュールの位置決めマーク認識装置。
【請求項4】
前記照明装置は、前記撮像装置と同軸に配置され、該照明装置の照明光が、前記位置決めマークからの反射光と逆向きの経路となるようにした、請求項1〜3のいずれかに記載のFPDモジュールの位置決めマーク認識装置。
【請求項5】
一方のワークに設けられた一対の位置決めマークと他方のワークに設けられた一対の位置決めマークとを位置決めする位置決めマーク認識装置と、端部にACFが貼り付けられた該一方のワークに該他方のワークを仮圧着する仮圧着装置と、を備える仮圧着ユニットと、
仮圧着した前記他方のワークを加熱圧着して固定する本圧着ユニットと、を備え、
前記位置決めマーク認識装置は、同一平面上にない2つのワークにそれぞれ設けられた位置決めマークに光を照射する照明装置と、
前記それぞれの位置決めマークからの反射光を撮像する撮像装置と、
前記2つのワークと前記撮像装置との間に配設され、前記それぞれの位置決めマークからの反射光を、少なくとも2回垂直に反射させることにより、前記撮像装置までの該反射光の光路長が同一となるように複数の光学素子を組み合わせてなる光路差変更手段と、を有する、FPDモジュールの組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−42436(P2012−42436A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186557(P2010−186557)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】