説明

HMGCoA還元酵素インヒビターの組合せ及びその使用

本発明は、生理学的に不安定なリンカーを介して少なくとも一つの第二薬理学的成分に結合された第一薬理学的成分を含む化合物、又はその塩を提供する。本発明は、個体における心血管疾患又は心血管疾患関連病状を緩和する方法も提供する。上記方法は、心血管疾患を有する個体に、第二薬理学的成分に結合した第一薬理学的成分を有し、それ自体か、又はそれを構成する薬理学的成分のいずれか若しくは双方が、心血管疾患を緩和、治療若しくは予防するよう作用する、有効量の化合物を投与する段階を含む。本発明の化合物は、薬物デリバリー装置中でデリバリーできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照:
本出願は、2005年4月12日付け米国仮特許出願第60/670,772号の利益を主張するものであって、それにより、その明細書は、引用によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景:
冠状動脈心疾患および卒中を含む心血管疾患は、米国における死因の筆頭をなす。心血管疾患の主要危険因子は、高い血中コレステロール、高い血圧(高血圧)、並びに喫煙及び食餌の因子である[Coronary Heart Disease Epidemiology: From Aetiology To Public Health, Marmot M & Elliott P, eds., pp.35-66 (Oxford University Press, New York, 1992)中、Stamler, J., "Established Major Coronary Risk Factors"]。高い血中コレステロールは、冠状動脈心疾患の主要危険因子であり、高血圧は、卒中の主要危険因子である。高血圧は、心筋梗塞の危険性も増大させる可能性がある。多くの臨床試験で、心血管疾患を治療するための抗高血圧及び脂質低下薬物の薬効が立証されている[アメリカ国立衛生研究所(NHI), "The Sixth Report Of The Joint National Committee On Prevention, Detection, Evaluation, And Treatment Of High Blood Pressure" NIH publication No. 98-4080 (Rockville, Maryland:米国保健福祉省, アメリカ国立衛生研究所, 国立心肺血液研究所, November 1997);National Cholesterol Education Program. "Second Report Of The Expert Panel On Detection, Evaluation And Treatment Of High Blood Cholesterol In Adults" NIH publication No. 93-3095 (Rockville, Maryland:米国保健福祉省, アメリカ国立衛生研究所, 1993)]。
【0003】
しかし、心血管疾患に関する危険性のいくつかの重要な指標は、近年では改良されていないか、横ばいであるか、又は逆転している。例えば、高血圧の人々の約70%は、140/90mmHg未満のレベルで管理される状態になく、卒中による死亡率は、最近では低下していない[国立心肺血液研究所 "Morbidity & Mortality: 1998 Chartbook On Cardiovascular, Lung, And Blood Diseases. (Rockville, Maryland:米国保健福祉省, アメリカ国立衛生研究所, 1998;Higgins, M & Thom, T, Int. J. Epidemiol. 1989;18: S58-S66)。心不全は、高齢者に対する健康上の不安材料として浮上しており[CDC, MMWR 47:633-7 (1998)]、心筋梗塞その他の高血圧関連疾患を体験した成人は、心不全に関する危険性が上昇したままである。
【0004】
薬物療法は、患者がその治療規制に従う場合にのみ有効である。薬物療法の使用に対する患者の不服従という問題は、我々の医療体制が直面する最も重要な問題である。患者の将来に及ぼす不服従の悪影響が、高血圧の患者について報告されている[Morse, G.D. et al., Am. J. Hosp. Pharm. 43: 905-909 (1986)]。逆に、抗高血圧薬物療法を受けるのにより従順である患者は、血圧管理を達成する可能性がより高いという充分な証拠がある[Caro, J.J. & Speckman, J.L., J. Hypertension. 16: S31-S34 (1998)]。
【0005】
高血圧を管理するのに異なるいくつかの薬物標的を利用できることから、多剤処方を可能にしている。一つの薬物を用いても患者の約50%のみの血圧を管理できるにすぎないため、多剤投与を避けるのは困難である。しかしながら、そのような多剤処方計画は、患者の従順性を低下させる[Oparil, S. & Calhoun, D.A, American Family Physician, 1007 (March 1, 1998)]。この問題に対する部分的解決としては、摂取すべき丸薬の数を減らし、個々の成分の用量依存性副作用を軽減することによって、患者の従順性を改善するための、固定用量併用療法が策定されている[Sica, D.A., Drugs, 48: 16-24 (1994)]。しかし、単一用量形態で併用するには、米国法は、併用の際に各成分が(全て)治療効果に寄与しなければならないこと、及び各成分の投与量が、標的となる集団(すなわち、その高血圧が一種類の薬物では容易に管理されない患者)の大多数の比率でその併用が安全かつ効果的であるようでなければならないことを要求している[連邦法施行規則第21巻第300章第50項(「固定併用」の方針)、同第330章第10(a)(4)(iv)項も参照されたい]。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記により、医学分野では、一回に一の処方で、心血管疾患を治療するのに効果的である、一種類以上の薬物をデリバリーして、その他にも利点はあるがとりわけ、患者の従順性を増大させる薬学的化合物に対する要求が持続的に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約:
本発明は、生理学的に不安定なリンカーを介して少なくとも一つの第二薬理学的成分に結合された第一薬理学的成分を含む化合物、又はその塩を提供する。第一薬理学的成分は、HMGCoA還元酵素インヒビターである。第二薬理学的成分は、アンギオテンシンII(AT1)レセプターブロッカー、コレステロール吸収ブロッカー、コレステリルエステル伝達タンパク質インヒビター(又はHDL若しくはLDLレベルに有利に作用するその他の薬剤)、又は第一のHMGCoA還元酵素インヒビターと同じ、若しくは異なるHMGCoA還元酵素インヒビターから選ばれる。二以上の薬理学的成分は、共有結合又はイオン相互作用のいずれによって結合することもできる。
【0008】
本発明は、生理学的に不安定なリンカーを介して少なくとも一つの第二薬理学的成分に結合された第一薬理学的成分を含む化合物又はその塩にも関する。薬理学的成分は、互いに独立して、ACEインヒビター、心臓保護剤、ステロイド及びコルチコステロイド、性ステロイド、アポトーシスインヒビター、MMPの発現/活性を変える薬剤、並びに抗炎症剤から選ばれる。二以上の薬理学的成分は、共有結合若しくはイオン相互作用のいずれによって結合することもできる。
【0009】
本発明は、個体における心血管疾患又は心血管疾患関連病状を緩和する方法も提供する。上記方法は、心血管疾患を有する個体に、第二薬理学的成分に結合した第一薬理学的成分を有し、それ自体か、又はそれを構成する薬理学的成分のいずれか若しくは双方が、心血管疾患を緩和、治療若しくは予防するよう作用する、有効量の化合物を投与する段階を含む。本発明の化合物は、薬物デリバリー装置でデリバリーできる。
【0010】
本発明の化合物の使用は、心血管疾患の患者とその医師との双方にとって便利である。化合物の投与は、患者の従順性の向上も促して、それが健康を改善する。
本発明の化合物の使用は、それが薬物調合のための滴定工程の単純化を可能とすることから、薬剤師にとっても便利である。場合によっては、調合された化合物の費用は、包装の費用を含めると、個々の成分の製造のそれを下回ることもあり得る。
【0011】
その上、本発明の化合物は、追加的又は相乗的な効果によって、別個の心血管効果を可能にすることを合理的に期待できる。そのような追加的又は相乗的な効果が生じるときは、別個の成分の、より低い必要用量において、有害事象の緩和を達成できる。一般に、改善された全体的抗高血圧効果は、別個の成分の比率が、固定用量の併用の不在下で利用できるものに優る場合に達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の詳細な説明:
本発明は、薬理活性を有する成分の薬理学的性能及びデリバリー特性を、それらを結合して、新規化合物を形成することによって向上させる手段を提供する。「薬理学的成分」とは、活性を有するか、又は活性化されたときに、意図された医学的効果を生じることができる化合物である。薬理学的成分は、代表的には、(一般的には、化合物を投与しようとする個体、特にヒト、又はヒトの疾患若しくは病状のモデルとなる哺乳動物の身体内であるか、場合によっては鳥類若しくは哺乳動物等の動物の身体内で、上記化合物の獣医学的投与の際に)薬物標的と相互作用させたときにこれらの効果を生じる。本発明では、薬理学的成分は、動物、特に哺乳動物、より詳しくはヒトにおける高血圧、並びに高血圧関連疾患及び病状に効果がある。高血圧関連疾患は、医療業界では公知であり、脳、心臓及び腎臓の血管に対する損傷、卒中、心不全、腎不全、並びに心筋梗塞(MI)の危険性の上昇を含む。
【0013】
本発明の化合物は、(通常は不安定な)結合によって相互に共有結合して、単独の化合物を形成するか、又は相互にイオン結合して、単独の作用組成物[米国特許第6,051,576号明細書を参照されたい:引用により組み込まれる]を形成する、少なくとも二つの薬理学的成分の組成物である。本明細書に用いられる限りでの用語「コドラッグ」は、第二の小分子残基と結合した第一の小分子残基を含んで、両残基とも、その未結合形態では(例えば結合の不在下では)生物学的活性を有する、化合物又はそのプロドラッグ形態を意味する。上記残基間の結合は、共有性であるか、若しくはイオン性であり、直接的、又はリンカーを介して間接的である。第一の小分子は、第二のものと同じでも、又は異なってもよい。本明細書で言うところのコドラッグは、任意で同種コドラッグ又は異種コドラッグでもよい。「対称型コドラッグ」とも呼ばれる「同種コドラッグ」は、切断又は解離により、一つの薬物の二以上の分子を生成し、その他の薬物分子を生成しないコドラッグを意味する。すなわち、同種コドラッグは、第二の薬物の残基を組み込むことなしに、専ら唯一つの薬物の二以上の残基で構成される。「非対称型コドラッグ」とも呼ばれる「異種コドラッグ」は、切断又は解離により、少なくとも二つの異なる薬物の残基を生成するコドラッグを意味する。
【0014】
本明細書に用いられる限りでの用語「プロドラッグ」は、第二の小分子残基と結合した第一の小分子残基を意味し、ここで残基の一方には、生物学的活性がない。いくつかの実施態様では、プロドラッグは、そのプロドラッグ形態では生物学的に不活性でもよい。上記残基間の結合は、共有結合であり、直接的、又はリンカーを介して間接的のいずれであることもできる。生物学的活性を有する化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で加水分解されて目的の分子を生じる、エステル、無水物、アミド及びカルバマートを含む。その他の実施態様では、プロドラッグは、宿主動物の酵素活性によって変換される。
【0015】
これによれば、プロドラッグ配合物は、必ずしも徐放性投与形態としては分類されない。しかし、薬物の物理化学的特性を(プロドラッグ化合物を生じるよう)生体内可逆的に改変できることは、より優れた薬物動態学的又は物理化学的特性を可能にし、そのため、この薬物の薬物血中レベル対時間プロファイルに影響を及ぼすことができる。従って、プロドラッグ配合物は、個体における薬理学的成分の持続的放出、及び治療レベルの持続の計画に用いることができる。従って、プロドラッグ配合物は、個体における薬理学的成分の持続的放出、及び治療レベルの持続の計画に用いることができる。
【0016】
本発明の化合物は、第一及び第二薬理学的成分を有し、その他の薬理学的成分(例えば第三薬理学的成分、場合によれば第四薬理学的成分等々)も有することができる。一実施態様では、本発明の化合物は、第一薬理学的成分及び第二薬理学的成分を等モル量で含有する。特定の実施態様では、上記化合物は、一つの第一薬理学的成分及び一つの第二薬理学的成分を有する。
【0017】
本発明の化合物は、高血圧の治療のためのいくつかの利点を有する。とりわけ、患者のため、処方医のため、外科医のため、及び(錠剤配合物中の、それぞれが異なる特性を有する活性成分の数を減らすことによって)薬剤師のための利点がある。患者及び医師のためには、本発明の化合物は、摂取すべき丸薬の数を減少させて便利にすることによって、患者の従順性を促すことができる。本発明の化合物は、また、成分が相乗効果を有することができるため、いずれの薬理学的成分よりも優れた薬物化合物であることができる。本発明の化合物は、単一の化合物が投与されることから、好都合にも、改良された生物学的利用能を調合薬に与えることもできる。その上、いかなる患者集団の相異も、医師が二つの化合物ではなく単一化合物の形で処方箋を書くことができる。本発明の化合物により、上記薬理学的成分間の吸収の差は、それぞれ異なる投薬量の必要が無い。
【0018】
本明細書に用いられる限りで、用語「治療する」または「治療」は、ある状態の症状、臨床的徴候、及びその根源となる病理を、対象者の病状を改善又は安定化するようにして改善、緩和若しくは阻止することを含む。本明細書に用いられる限りで、かつ当技術分野に理解される限りでも、「治療」は、有益であるか、又は望ましい、臨床的結果等の結果を得るための手法である。有益であるか、又は望ましい臨床的結果は、検出可能であれ、不能であれ、一以上の徴候若しくは病状の緩和若しくは改善、疾患の程度の低下、疾患の安定化された(すなわち悪化しない)病状、疾患の拡大の防止、発病遅延又は疾患の進行の遅延、疾患病状の改善又は緩和、及び(部分的であれ、全体的であれ)寛解が挙げられるがこれらに限られない。「治療」は、治療を受けないならば予測される生存と比較して、生存を延長することを意味することもできる。
【0019】
「薬理学的成分間の共有結合」
一実施態様では、本発明の化合物は、二以上の薬理学的成分の共有結合によって形成される(実施例1〜2を参照されたい)。薬理学的成分は、可逆的な共有結合によって1の化合物として結合する結果、身体の目的の部位で、共有結合された薬理学的成分を切断して、上記薬理学的成分の活性形態を、又は目的の薬物へのプロドラッグ前駆体を、再生できる。薬理学的成分の切断の速度は、上記薬理学的成分を結び付ける結合の種類、薬理学的成分の選択、及び化合物の物理的形態によって制御できる。
【0020】
第一及び第二薬理学的成分は、直接的な共有結合、又はリンカーの基(L基)を介しての間接的な共有結合のいずれによって共有結合させてもよい。この関係は、次式(I):
【0021】
1−L−A2 (I)
[式中、A1及びA2は、それぞれ、上に定義されたような第一薬理学的成分及び第二薬理学的成分の残基であり、結合する(L)基は、上記の直接的結合又はリンカーのいずれかである]
で一般的に表すことができる。結合する基が直接的結合であるとき、上の式(I)は、式(II)として、より簡潔に表せる:
1−A2 (II)
式(I)の化合物は、生理学的流体、例えば血漿と接触したとき、加水分解を受ける。
一定の実施態様では、Lを含む化合物は、式(III):
【0022】
【化1】

[式中、Zは、O、N、CH2、CH2O又はCH2Sであり、YはO又はNであり、XはOまたはSである]
【0023】
共有結合は、例えば、エステル、カルボナート、環状リン酸エステル又はカルバマート結合であることができる。生理学的に不安定な結合は、生理学的流体、例えば血漿中と近似する条件下で不安定である、いかなる結合でもよい。この結合は、直接的結合(例えば、アミド、カルボナート、カルバマート、スルホナート又はスルファマート結合)でもよいか、又は結合基(例えば、C1〜C12ジアルコール、C1〜C12ヒドロキシアルカン酸、C1〜C12ヒドロキシアルキルアミン、C1〜C12ジカルボン酸、C1〜C12アミノ酸又はC1〜C12ジアミン)でもよい。結合は、直接的なアミド、カルボナート、カルバマート及びスルファマート結合、並びにコハク酸、サリチル酸、ジグリコール酸及びそれらのハロゲン化物を介しての結合でもよい。
【0024】
好適な結合は、−OC(O)CH2−、−OC(O)O−、−OCH2C(O)CH2O−、−OCH2CH(OH)CH2O−、−OCH2C(O)(OCH2CH2nOC(O)CH2O−、−O(CH23O−、−(OCH2CH2nO−、
【0025】
【化2】

[式中、nは、1〜6の整数である]
という種類のものである。
【0026】
この結合は、一般的に約6〜約8のpHである、生理学的条件下で不安定であることができる。結合の不安定度は、結合の個々の種類、生理学的流体の正確なpH及びイオン強度、並びにin vivoで加水分解反応を触媒する傾向がある酵素の存否に依存する。一般的に、in vivoでの結合の不安定度は、化合物が生理学的流体に可溶化されていないときの結合の安定度と対比して測定される。従って、本発明のいくつかの化合物は、いくつかの生理学的流体中では比較的安定でもよいのに、in vivo(又は自然に又は刺激されて生じる生理学的流体に溶解したin vitroでの)では、単体そのまま又は非生理学的流体(例えばアセトン等の非水性溶媒)に溶解したときに比べて、加水分解を比較的受けやすい。そのため、不安定な結合は、薬物を水溶液、特に血漿のような生理学的流体に溶解したときに、加水分解反応でかなり加水分解産物が生じるように傾かせるようなものである。
【0027】
その上、この共有結合は、酵素特異的であることができ、例えばエステラーゼに対して酵素学的に不安定であるか、又は特定の領域で、例えば胃腸管内で、それが粘膜を横切る際、又は血流中に入る際に分解するよう設計できる設定できる。あるいは、共有結合は、化学的に不安定(例えば結合の塩基触媒性加水分解)でもよい。
【0028】
第一薬理学的成分若しくは第二薬理学的成分、又はそれら双方は、結合と縮合して、加水分解に対して不安定な結合を形成できる基を保有するか、又は保有するよう改変できる成分でもよい。そのような基の例は、ヒドロキシ(−OH)基、アミン基、酸(−COOH)基、スルホンアミド基及びスルホナート(−SO3H)基である。
【0029】
用語「アミド」は、本明細書に用いられる限りで、基:
【0030】
【化3】

[式中、R9及びR10は、互いに独立して、水素若しくはヒドロカルビル基を表すか、又はR9及びR10は、それらが結合しているN原子と一緒になって、4〜8原子を環構造内に有する複素環を完成する]
を意味する。
【0031】
用語「アミン」及び「アミノ」は、当技術分野に認められており、非置換及び置換アミンの双方、並びにその塩、例えば、
【0032】
【化4】

[式中、R9、R10及びR10'は、互いに独立して、水素若しくはヒドロカルビル基を表すか、又はR9及びR10は、それらが結合しているN原子と一緒になって、4〜8原子を環構造内に有する複素環を完成する]
で表される成分を意味する。
【0033】
用語「カルバマート」は、当技術分野に認められており、基
【0034】
【化5】

[式中、R9及びR10は、互いに独立して、水素又はヒドロカルビル基を表す]
を意味する。
【0035】
用語「カルボナート」は、当技術分野に認められており、基−OCO2−を意味する。
用語「エステル」は、本明細書に用いられる限りで、基−C(O)OR9[R9は、ヒドロカルビル基を表す]を意味する。
本明細書に用いられる限りで用語「ハロゲン化物」は、ハロゲンを意味し、クロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを含む。
【0036】
用語「複素環」は、置換若しくは非置換非芳香族環構造、好ましくは3〜10員環、より好ましくは3〜7員環を意味して、その環構造は、少なくとも一つのヘテロ原子、好ましくは1〜4個のヘテロ原子、より好ましくは1又は2個のヘテロ原子を含む。用語「複素環」は、二以上の炭素が、少なくとも一方が複素環である隣接する2環で共有される、二以上の環を有する多環系も含む。複素環基として、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタム等が挙げられる。
【0037】
用語「ヒドロカルビル」及び「アルカン」又は「アルカン性の」は、本明細書に用いられる限りで、=O又は=S置換基を有さない炭素原子を介して結合された基であり、
代表的には、少なくとも一つの炭素−水素結合、及び専ら炭素骨格を有するが、任意でヘテロ原子を含んでもよい基を意味する。従って、メチル、エトキシエチル、2−ピリジル、及びトリフルオロメチル等の基でさえ、本発明の目的からはヒドロカルビルと考えられるが、アセチル(結合炭素上に=O置換基を有する)及びエトキシ(炭素ではなく、酸素を介して結合されている)は、そうではない。ヒドロカルビル基として、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環、アルキル、アルケニル、アルキニル及びそれらの組合せが挙げられるがこれらに限られない。
【0038】
化学的成分、例えばアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシに関して使用されるときの用語「低級」は、置換基に10個以下、好ましくは6個以下の非水素原子が存在する基を含むものとする。例えば「低級アルキル」は、10個以下、好ましくは6個以下の炭素原子を有するアルキル基を意味する。ある態様では、本明細書に定義されるアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシ置換基は、単独の場合でも、列挙されたヒドロキシアルキル及びアラルキル(この場合、例えばアリール基内の原子は、アルキル置換基内の炭素原子を数えるときには無視される)等の他の置換基と組み合わせた場合でも、それぞれ、低級アシル、低級アシルオキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル又は低級アルコキシである。
【0039】
用語「スルファマート」は、当技術分野に認められており、一般式
【0040】
【化6】

[式中、R9及びR10は、互いに独立して、水素又はヒドロカルビルを表す]
で示される基を意味する。
【0041】
用語「スルホンアミド」は、当技術分野に認められており、一般式
【0042】
【化7】

[式中、R9及びR10は、互いに独立して、水素又はヒドロカルビルを表す]
で示される基を意味する。
【0043】
本発明の化合物を製造するための例示的な反応図式を、図3〜4に図示する(特に実施例1〜2を参照されたい)。これらの図式は、シンバスタチン又はロバスタチンの代わりに他のスタチン類で置き換えることによって一般化できる。同様に、これらの図式は、テルミサルタンの代わりに他のアンギオテンシンレセプターブロッカーで置き換えることによって一般化できる。また、これらの図式は、適切なリンカー及び薬剤を出発材料として用いることによって一般化できる。
【0044】
一般に、第一薬理学的成分及び第二薬理学的成分を直接結合しようとする場合、第一薬理学的成分を、生理学的条件下で不安定である結合を形成するのに適した条件下で、第二薬理学的成分と縮合させる。ある場合には、上記成分の一方、他方又は双方にあるいくつかの反応性に富む基を保護することが必要になる。
【0045】
上記成分をリンカー、例えばコハク酸又はジグリコール酸を介して共有結合させようとする場合、第一薬理学的成分を、初めにリンカーと縮合できる。ときには、反応を、適切な溶媒、例えばアセトニトリル中で、適切な触媒、例えばカルボジイミド及びジメチルアミノピリジン(DMAP)、求核触媒、の存在下でか、又は縮合水若しくは他の反応生成物を除去するのに適した条件(例えば還流)下でか、あるいはそれらのうち二以上を組み合わせて実施するのが好都合である。第一の成分をリンカーと縮合させた後、結合した第一成分及びリンカーを、第二薬理学的成分と縮合させる。やはり時には、反応を、適切な溶媒、例えばアセトニトリル中、適切な触媒の存在下でか、又は縮合水若しくは他の反応生成物を除去するのに適した条件(例えば還流)下でか、あるいはそれらのうち二つ以上を組み合わせて実施するのが好都合である。一以上の活性基が保護されている場合は、保護基を選択的な条件下で除去するのが好都合であるが、保護基の加水分解産物及び保護された基が生理学的に無害である場合は、活性基を保護されたままにしておくのも好都合である。
【0046】
活性基は、その反応性を増大させるよう誘導体化できる。例えば、第一成分が酸であり、第二成分がアルコールである(すなわち、フリーヒドロキシル基がある)場合、第一成分を誘導体化して、対応する酸ハロゲン化物、例えば酸塩化物又は酸臭化物を形成してもよい。本発明の化合物を製造するための慣用的に誘導体化された出発材料を用いて、本発明の化合物の収率を上昇させ、製造原価を削減し、純度を向上させる等々のためのその他の可能性は、当分野で公知である。
【0047】
ジカルボン酸、ジアルコール、アミノ酸等々を、適切なリンカーであるとして上に記載したが、その他のリンカーも本発明の対象範囲内にある。例えば、本発明の化合物の加水分解産物は、ジカルボン酸を含んでもよく、結合を作成するのに用いられる実際の試薬は、例えばジアセチルクロライド若しくはジアセチルブロマイド等のハロゲン化ジアセチル、又は二価無水物でもよい。可能なその他の酸、アルコール、アミノ、スルファート及びスルファモイル誘導体も、対応する結合を作成するための試薬として用いてもよい。
【0048】
本発明の一の有利な実施態様では、コドラッグが、治療される人に活性代謝物をデリバリーするために用いることができる。プロドラッグは、活性化合物へと代謝によって転化されるまでは、薬理学的活性が無くてもよい。薬物の代謝物が治療効果を生じる場合、それは「活性代謝物」であると考えられる。例えば、第一薬理学的成分は、HMGCoA還元酵素インヒビターのラクトン加水分解産物、例えばロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン又はセリバスタチン(しかしプラバスタチン又はフルバスタチンではない)に類似する構造を有する、ヒドロキシ酸であることができる。第一薬理学的成分については、開環ヒドロキシ酸が活性代謝物であることが多い。
【0049】
薬理学的成分間のイオン結合:
一実施態様では、化合物は、二以上の薬理学的成分間のイオン相互作用によって形成される。米国特許第6,051,576号明細書(引用により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0050】
塩形成は、プロトン移動又は中和反応のいずれかを伴う酸塩基反応であり、そのため、そのような反応に影響する因子によって制御される。理論的には、適切な酸又は塩基の特徴を示すあらゆる化合物が、塩形成に参加できる。特に重要なのは、酸又は塩基の相対強度、並びに関与する薬理学的成分の酸性度及び塩基性度定数である。これらの因子は、塩形成が生じるか否かを決定し、生じる塩の安定性の指標となる。塩形式は、親化合物の溶出速度、溶解度、安定性及び吸湿性等の数多くの物理化学的特性に影響することが公知である。塩形成は、製剤配合物に有用であるが、それは、これらの特性が、ひいては薬物の利用可能性及び配合の特性に影響を及ぼすからである。
【0051】
本発明の化合物を製造する例示的な一手順では、第一薬理学的成分を、等価量の第二薬理学的成分とともに有機溶媒に溶解する。次いで、この溶液を、窒素雰囲気下、室温で、液体/半固体粘調物質になるまで蒸発させる。次いで、アルコール等の適切な有機溶媒の使用によって、上記化合物を結晶化する。残余の液体は、継続的な加熱によって除去できる。次いで、当技術分野に公知の手段によって、上記化合物を数多くの公知投与形態またはデリバリー系のいずれか一つへと配合する。米国特許第5,385,941号明細書を参照されたい。PCT公開出願WO99/11259及びWO00/73298も参照されたい。そのような塩を形成するのに適したその他の手順は、当業者には公知である。
その上、本発明の化合物は、鉱酸塩、カルボン酸塩又はアミノ酸塩として存在するか、又はそれらの形で配合できる。
【0052】
ある実施態様では、第一薬理学的成分は、HMGCoA還元酵素インヒビターである。HMGCoA還元酵素インヒビター(スタチンとしても知られる)は、現在では、高コレステロールに対する最も効果的な薬物である。加えて、スタチンは、炎症及び多発性硬化症の治療若しくは阻害、並びにアルツハイマー病、糖尿病、骨粗鬆症及び卒中の治療若しくは予防に有益な活性を有することが見出されている。従って、少なくとも一つのHMGCoA還元酵素インヒビター(又は好ましくは二つの、例えば二量体若しくは異種二量体)を含む化合物は、炎症及び/又は多発性硬化症を治療若しくは阻害するのに用いることができる。もう一つの実施態様では、少なくとも一つのHMGCoA還元酵素インヒビター(又は好ましくは二つの、例えば二量体若しくは異種二量体)を含む化合物は、アルツハイマー病及び/又は糖尿病及び/又は骨粗鬆症及び/又は卒中の治療若しくは予防に用いることができる。
【0053】
コレステロール生合成の調節は、それがアテローム性動脈硬化症、脳血管性及び冠動脈心血管性疾患と関連するために、長い間、熱心に研究される主題であった。コレステロール合成の制御は、主として、経路で最初に関与する段階で発生し、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA(HMGCoA)還元酵素によって触媒される。スタチンは、コレステロールの形成に必要な酵素である、ヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素(EC1.1.1.34)をブロックする。この酵素に関する別称として、ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素(還元されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸);3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA還元酵素;β−ヒドロキシ−β−メチルグルタリル補酵素A還元酵素;ヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素(NADPH);S−3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA還元酵素;NADPH−ヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素;HMGCoA還元酵素−メバロナート;NADP−酸化還元酵素(アセチル化CoA);3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA還元酵素(NADPH)及び(R)−メバロナート;NADP酸化還元酵素(CoAアセチル化性)が挙げられる。この酵素は、(S)−3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA+2NADPH2から(R)−メバロナート+CoA+2NADPへの転換を触媒する。
【0054】
スタチン群の薬物のうちには、リピトール(商標)(アトルバスタチン)、プラバコール(商標)(プラバスタチン)、ゾコール(商標)(シンバスタチン)、メバコール(商標)(ロバスタチン)、レスコール(商標)(フルバスタチン)、ベイコール(商標)(セリバスタチン)、クレストール(商標)(ロスバスタチン)、メバスタチン、ピタバスタチン、ダルバスタチン、グレンバスタチン、ジヒドロメビノリン(dihydromevinolin)、SDZ−265859、BMS−180431、CP−83101及びL−669262がある。
【0055】
スタチン群の化合物の構造は、薬理学業界の当業者には公知である。スタチンは、一般に、HMG様成分を共有することが当技術分野に公知である(図2を参照されたい)。スタチンは、一般に、HMGCoA様成分に共有結合した、堅固な疎水性基を共有することが公知である。ロバスタチン、プラバスタチン及びシンバスタチンは、コンパクチン(メバスタチンとしても知られる)の置換デカリン環構造が類似している。Istvan, E.S.及びDeisenhofer, J.[J. Science, 292: 1160-64 (2001)]は、この群のインヒビターを1型スタチンとして分類している。フルバスタチン、セリバスタチン、アトルバスタチン及びロスバスタチンは、HMG様成分に結合した比較的大きい基を有する、完全に合成されたHMGCoA還元酵素インヒビターである。Istvan及びDeisenhoferは、これらのインヒビターを2型スタチンと称している。更なる群としては、性質が非常に疎水性(例えばセリバスタチン)から部分的に疎水性(例えばロスバスタチン)までにわたる。スタチンは、すべて、基質のHMGCoAの結合についてHMGRの競合インヒビターであるが、NADPHの結合についてはそうではない。スタチン−酵素複合体のKI(阻害定数)値は、0.1〜2.3nMにわたるのに対して、HMGCoAについてのミカエリス定数Kmは、4μMである。
【0056】
Istvan及びDeisenhoferは、ヒトHMGCoA還元酵素の触媒部分の構造が、どのように異なるスタチンと複合体形成するかを決定した。スタチンというかさばる疎水性化合物は、HMG結合のポケット、及びCoAとの結合表面の一部を占める。こうして、スタチンが結合したとき、基質であるHMGCoAのHMGCoA還元酵素への接近がブロックされる。
【0057】
スタチンは、血中コレステロールレベルを下げるのに、また高コレステロールレベルの主な結果の一つである心臓発作を防止するのにも、非常に効果的であることが立証されている。コレステロールが損傷を生じる過程は、アテローム性動脈硬化症として公知であり、動脈壁にコレステロールを含有するプラークの蓄積を伴うが、これは一緒になって、動脈を結果的にブロックする可能性がある。心臓に供給する動脈内のプラークは、心発作を招き、脳に供給する動脈でのそれは、卒中を引き起こす。
【0058】
用語「予防する」は、当技術分野に認知されており、局所的再発(痛み等)等の症状、癌等の疾患、心不全等の症候群の複合、又は他の何らかの医学的病状と関連して用いられるときは、当技術分野に充分に理解されている。そして「予防する」は、その組成物を摂取しない対象者に比して、対象者の医学的病状の徴候の頻度を低下させるか、又はその開始を遅延させる、組成物の投与を含む。従って、癌の予防は、例えば統計的及び/又は臨床的に有意な量で、処置されない対照集団と比べた予防処置を受けている患者集団における検出可能な癌成長の数を減少させ、及び/又は処置集団における検出可能な癌成長の出現を、処置されない対照集団と対比して遅延させること等を含む。感染の予防は、処置集団における感染の診断者数を、処置されない対照集団と対比して減少させ、及び/又は処置集団における感染症状の開始を、処置されない対照集団と対比して遅延させること等を含む。疼痛の予防は、処置集団における対象者が経験する疼痛の感覚を、処置されない対照集団と対比してその強さを低減するか、あるいは遅延させること等を含む。
【0059】
スタチンは、一般に、副作用がほとんど無く、全体的なコレステロール、LDL(いわゆる「悪玉」)コレステロール及びトリグリセリドを低下させるばかりでなく、HDL(いわゆる「善玉」)コレステロールを上昇させもする。一次及び二次予防試験は、上昇した低密度リポタンパク質コレステロールレベルを下げるためにスタチンを用いることが、冠動脈での発病及び冠動脈性心疾患による死亡を実質的に削減できることを示した。二次的冠動脈性心疾患の予防手段としての脂質の低下を裏付ける強い証拠が、三大試験、すなわち「スカンジナビアシンバスタチン生存研究(4Sスタディ)」[Lancet 344: 1383-9 (1994)]、「虚血性疾患におけるプラバスタチンによる長期干渉(LIPID)」調査[Sacks, F.M. et al., N. Engl. J. Med., 335: 1001-9 (1996)]、並びに「コレステロール及び再帰事象(CARE)」試験[N. Engl. J. Med., 339: 1349-57 (1998)]からもたらされていて、HMGCoA還元酵素インヒビター(スタチン)での処置は、冠動脈での発病を減少させ、また死亡率を低下させた。上記研究は又、いくつかのスタチンが再発性心発作ばかりでなく、最初の心発作も予防するのに同様に有効であることも示した。いくつかのスタチンは、卒中の危険性を低下させるのにも有効である。新たな研究によれば、通常のコレステロールレベルの集団でさえ、コレステロール低下薬を摂取することで恩恵を受けることが示されている。スタチン療法は、コレステロールレベルが5mmol/Lより高く、10年間の冠動脈性心疾患の危険率が30%以より高い、70歳以下の高血圧の対象者における一次予防のために示される[Ramsay, L.E., J. Human Hypertension, 13, 569-592 (1999)及びRamsay, L. E, British Med, J., 319: 630-635 (1999)]。
【0060】
不幸にも、スタチンは、不充分に処方されている。「米国コレステロール教育計画」は、コレステロールのスクリーニング及び治療のための指針を推奨している[Arch. Intern. Med., 148: 36-69 (1988)及びNational Cholesterol Education Program, NIH publication no. 97-3794 (1997)]。しかしながら、かかりつけ(一次診療)医は、これまでは、臨床医療にこれらの指針を不適切に採用している[Am. Fam. Physician 63: 309-20, 323-4 (2001)を参照されたい]。その上、処方されたときでさえ、患者の順守が問題である。
スタチンの経口投与のための代表的ないくつかの1日服用量を、下記の表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
第一薬理学的成分がHMGCoA還元酵素インヒビターである実施態様の例では、第二薬理学的成分は、アンギオテンシンレセプターブロッカー、コレステロール吸収インヒビター、コレステリルエステル伝達タンパク質インヒビター及びHMGCoA還元酵素インヒビターから選ばれる。
【0063】
アンギオテンシンレセプターブロッカー(ARB):
アンギオテンシンレセプターブロッカーは、他の群の薬物、例えばアンギオテンシン転換酵素(ACE)インヒビターとは異なるアンギオテンシンIIによって影響される系に対して、特殊な効果を有する。この異なる効果のために、アンギオテンシンレセプターブロッカーは、アンギオテンシンレセプターブロッカーによる、より低い副作用のプロファイルに明らかなように、より良く患者に認容される[Annals of Long-Term Care 7[8]: 305-308 (1999)]。
【0064】
レニン・アンギオテンシン経路の最終的な活性メッセンジャーが、アンギオテンシンIIである。アンギオテンシンIIは、直接的な血管収縮、中枢及び末梢レベルの双方での交感神経系活性の増強作用、アルドステロン合成の刺激、及びその結果生じるナトリウムの放出、並びに腎臓による体液保持、及びアルギニン・バソプレッシン放出の刺激等の、様々な機構によって血圧を上昇させる。加えて、アンギオテンシンIIは、血管に直接損傷を与える様々な作用も有する。アンギオテンシンIIは又、血管の損傷応答にも役割を有して、傷害部位への白血球付着を刺激し、超酸化物及びペルオキシ亜硝酸塩の形成、並びに傷害の腔部位への様々な細胞種の増殖及び移動を促すが、これらの事象は、アテローム斑又は新生内膜の形成を招く。アンギオテンシンII及びその構成ペプチドのいくつかも又、抗血栓剤PAI−1の合成を刺激して、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の活性化が、アテローム性動脈硬化症、並びに心発作及び卒中等の血栓塞栓症に罹患しやすくなることを示唆する。
【0065】
アンギオテンシンIIは、AT1レセプターに結合して、血管収縮及び体液保持を引き起こすが、これらは、双方とも、血圧の上昇へと導く。アンギオテンシンレセプターブロッカーは、AT1レセプターをブロックすることによって血圧を降下させるものであり、それによってアンギオテンシンIIが細胞内の変化を生じるよう作用し合うことができる4種類のレセプターの一つである。[Brown, N.J. & Vaughn D.E., Circulation 97:1411-1420 (1998)]。AT1レセプターブロッカーは、AT1レセプター固有のシグナリングをブロックして、その結果、他の抗高血圧薬物より完全な、かつ、心筋損傷に対する大きな防護を与えることのできるアンギオテンシンIIのブロックを生じる。
【0066】
AT1レセプターブロッカーは、アンギオテンシンIIの非ペプチドアナログである[Burnier M. & Brunner H.R., Lancet 355: 637-45 (2000)]。アンギオテンシンレセプターブロッカーの群の薬物として、カンデサルタン(カンデサルタン、シレキセチル;アタカンド(商標);ブロプレス(商標))、イルベサルタン(アバプロ(商標))、ロサルタン(コザール(商標))、テルミサルタン(ミカルディス(商標))、バルサルタン(ディオバン(商標))及びエプロサルタン(テベテン(商標))が挙げられる。接尾辞「−サルタン」は、この群を、他の抗高血圧薬物から区別している。アンギオテンシンレセプターブロッカーは、それらの化学構造、効能、生体利用能、血漿半減期(テルミサルタンが最長の半減期を有し、ロサルタンは最短である)及び代謝のいずれかが異なる。アンギオテンシンレセプターブロッカーは、プロドラッグとしては作用しない(例えば、肝臓によって活性薬剤へと転換されるまでは不活性である)。しかし、ロサルタンは、薬物作用の持続期間を延長するのにも役立つ、活性代謝物を有する。
【0067】
アンギオテンシンレセプターブロッカーは、一般的には、1日1回服用され、有意な副作用を生じることは一般的にない。しかし、臨床試験では、いくつかの薬剤は、[The Sixth Report of the Joint National Committee on the Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure. Arch. Intern. Med. 157 (1997)]に概説されるような適切な血圧目標を達成するには、1日2回用いなければならないと示唆される。稀ではあるが、それらは腎機能に干渉するか、又はそれを悪化させる。
アンギオテンシンレセプターブロッカーは、人体内で処理される仕方が異なる。
【0068】
【表2】

【0069】
大規模試験によって、高齢の心不全患者におけるアンギオテンシンレセプターブロッカーの効果が評価された[The Evaluation of Losartan in the Elderly (ELITE) trial. Pitt, B. et al., Lancet 349:747-752 (1997)]。全体として、結果は、アンギオテンシンレセプターブロック薬は、具体的には、腎機能、高カリウム血症及び咳の分野に関連する限り、ACEインヒビターより良く(患者に)認容されたことを示した。
【0070】
コレステロール吸収インヒビター:
コレステロール吸収インヒビターは、小腸におけるコレステロール及び関連するフィトステロールの吸収を選択的に阻害する。この群のインヒビターは、肝臓におけるコレステロール合成を阻害せず、むしろ小腸の刷毛縁に局在し、そして作用すると思われ、コレステロールの吸収を阻害して、腸コレステロールの肝臓へのデリバリーの減少へと導く。これは、肝臓コレステロール貯蔵の減少、及び血液からのコレステロールの除去率の上昇を生じる。この明確な作用機構は、HMGCoA還元酵素インヒビターのそれと相補的である。エゼチミベ(ezetimibe)(ゼチア(商標))は、この薬物群のFDAが承認しようとする最初の一員であり、総コレステロール、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL)、トリグリセリド(TG)及びLDLの主要タンパク質成分であるアポリポタンパク質(ApoB)を減少させることが見出されている。加えて、エゼチミベは、高コレステロール血症の患者の高密度リポタンパク質コレステロール(HDL)を上昇させることが示されている。
【0071】
更に、エゼチミベと、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン及びロバスタチンから選ばれたHMGCoA還元酵素インヒビターとの同時投与は、単独で投与されたHMGCoA還元酵素インヒビターに比して、総コレステロール、LDL、ApoB及びTGの有意な低下、並びにプラバスタチンを除いて、HDLの上昇を招く。臨床研究も又、エゼチミベは、単独で投与したときは、LDLを17%減少させたのに対して、シンバスタチン又はアトルバスタチンのいずれかと組み合わせて投与したとき、LDLが更に12〜20%減少することを立証した。エゼチミベの代表的な投与量及び投与は、単独でか、又はHMGCoA還元酵素インヒビターと組み合わせて、1日1回10mgである。
【0072】
コレステリルエステル伝達タンパク質インヒビター:
第二薬理学的成分は、トルセトラピブ又はその活性代謝産物等の、コレステリルエステル伝達タンパク質を阻害し、HDLコレステロールのレベルを上昇させる薬剤でもよい。
【0073】
HMGCoA還元酵素インヒビター:
ある実施態様では、第二薬理学的成分は、第一のHMGCoA還元酵素インヒビターと同じ、又は異なるHMGCoA還元酵素インヒビターでもよい。二つのHMGCoA還元酵素インヒビターを含む本発明の化合物は、好ましくは、それらが誘導されてきた元のそれぞれの化合物の特性に比して改良された特性を有する。
【0074】
例えば、第一のHMGCoA還元酵素インヒビターは、環境条件及び/又は通常の貯蔵条件下では、第二のHMGCoA還元酵素インヒビターと結合したとき、未結合HMGCoA還元酵素インヒビターに比して、より徐々に分解できる(そのため、より長い貯蔵期間を有する)。もう一つの態様では、二つのHMGCoA還元酵素インヒビターを結合することは、結合していない構成化合物の配合物に比して、より容易な配合物を与えることができる。例えば、結合した化合物は、重合性デリバリー系中でより可溶性にもできる。いくつかの実施態様では、二つのHMGCoA還元酵素インヒビターの結合は、薬学的に許容され得る担体とより容易に混合できる化合物を与え得る。更に一つの実施態様では、結合したHMGCoA還元酵素インヒビターは、例えば、結合したHMGCoA還元酵素インヒビターが室温で固体であり、一以上の未結合構成化合物が室温で液体である場合等に、固体の投与形態に用いるための未結合構成化合物より容易に適合できる。そのような実施態様では、構成化合物は、互いに結合させたときは、未結合形態より多大な利便性並びに/又は効率で調製、貯蔵及び/若しくはデリバリーできる。
【0075】
本発明は、生理学的に不安定なリンカーを介して少なくとも一つの第二薬理学的成分に結合した第一薬理学的成分を含む化合物であって、両薬理学的成分とも、活性を有するか、又は活性化されたときに、心疾患を改善させるよう作用する化合物又はその塩にも関する。薬理学的成分は、互いに独立して、ACEインヒビター、心臓保護剤、ステロイド及びコルチコステロイド、性ステロイド、アポトーシスインヒビター、MMPの発現/活性を変える薬剤、並びに抗炎症剤から選ばれる。二以上の薬理学的成分は、共有結合又はイオン相互作用のいずれかによって結合されてもよい。
【0076】
ACEインヒビター:
第二薬理学的成分は、ACEインヒビターでもよい。適切なACEインヒビターは、カプトプリル、ゾフェノプリル、ホシノプリル、エナラプリル、エナマプリル(enamapril)、セラノプリル、シラゾプリル(cilazopril)、デラプリル、ペントプリル、キナプリル、ラミプリル、リシノプリル、及びそのような化合物の塩が挙げられるがこれらに限られない。
【0077】
心臓保護剤:
第二薬理学的成分は、心臓保護剤でもよい。適切な心臓保護剤は、ベラパミル、ジルチアゼム、ジギタリス及びアデノシンが挙げられるがこれらに限られない。
【0078】
ステロイド及びコルチコステロイド:
第二薬理学的成分は、ステロイド又はコルチコステロイドでもよい。適切なステロイドは、アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルドステロン、アルゲストン(algestone)、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾル(cortivazol)、デフラザコルト(deflazacort)、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコルト、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコルタル(formocortal)、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール(halobetasol)、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタマート(hydrocortamate)、ヒドロコルチゾン、エタボン酸ロテプレドノール、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルバート(prednicarbate)、プレドニゾロン、25−ジエチルアミノ酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド及びトリアムシノロンヘキサセトニドが挙げられるがこれらに限られない。好適実施態様では、ステロイド系抗炎症剤は、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン及びトリアムシノロン、並びにアセトニド及び低級アルカン酸エステル、例えば酢酸エステル、プロピオン酸エステル及び酪酸エステルのようなそれらの誘導体からなる群から選ばれる。
【0079】
性ステロイド:
第二薬理学的成分は、性ステロイドでもよい。適切な性ステロイドは、アンドロゲン(例えばテストステロン、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン及びデヒドロエピアンドロステロン)、エストロゲン(例えばエストラジオール及びジエチルスチルベストロール)及びプロゲスタゲン(例えばプロゲステロン及びプロゲスチン)が挙げられるがこれらに限られない。
【0080】
アポトーシスインヒビター:
第二薬理学的成分は、アポトーシスインヒビターでもよい。アポトーシスインヒビターは、Bax、Bik/Nbk、Bak、Bad及びBidが挙げられるがこれらに限られない一群の薬剤である[Peter, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 94:12736-12737 (1997):その全体が本明細書に組み込まれる]。
【0081】
MMPの発現/活性を変える薬剤:
第二薬理学的成分は、MMPインヒビターでもよい。適切なMMPインヒビターは、4−[4−(4−フルオロフェノキシ)ベンゼンスルホニルアミノ]テトラヒドロピラン−4−カルボン酸ヒドロキシアミド;5−メチル−5−(4−(4’−フルオロフェノキシ)フェノキシ)ピリミジン−2,4,6−トリオン;5−n−ブチル−5−(4−(4’−フルオロフェノキシ)フェノキシ)ピリミジン−2,4,6−トリオン;及びプリノミスタット(prinomistat)が挙げられるがこれらに限られない。
【0082】
抗炎症剤:
第二薬理学的成分は、抗炎症剤でもよい。適切な抗炎症剤は、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン(fenoprofen)、フロクタフェニン(floctafenine)、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン(indoprofen)、ケトプロフェン、ケトロラク(ketorolac)、ロルノキシカム、モラゾン(morazone)、ナプロキセン、ペリソキサル(perisoxal)、ピルプロフェン(pirprofen)、プラノプロフェン、スプロフェン、スクシブゾン(suxibuzone)、トロペシン(tropesin)、キシモプロフェン(ximoprofen)、ザルトプロフェン、ジロイトン(zileuton)及びゾメピラク、並びに薬学的に許容され得るその塩、エステル、プロドラッグ及び保護された形態が挙げられるがこれらに限られない。
【0083】
高血圧の診断:
高血圧及び高血圧関連病状の診断、並びに高血圧に対する医学的治療で恩恵を受ける個人の特定は、標準的な医学的診断である。更なる案内は、国際高血圧学会及び世界保健機構[J. Hypertension 17: 151-183 (1999)]から得られるが、これらは、若年、中年又は糖尿病の対象者を、130/80mmHg未満、及び年配者には140/90mmHg未満の目標血圧へと治療しなければならないと示唆している。英国高血圧学会は、160mmHg以上の最高血圧、又は100mmHg以上の最低血圧での治療の開始を推奨している。英国高血圧学会は、140〜159mmHgの最高血圧と90〜99mmHgの最低血圧との間の対象者は、その他の危険因子の存在下で、140/85mmHg未満の目標血圧を目指して治療されなければならないと示唆する。糖尿病患者では、英国高血圧学会の目的は、血圧を140/80mmHg未満に下げることである。その他の案内を表3に与える。
【0084】
【表3】

【0085】
経口投与向けの投与量及び配合物:
本発明の化合物を投与するための投与量は、当業者が算出できる[Goodman & Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed. (Pergamon Press, NY 1990)及びThe Merck Index, 11th Ed. (Merck and Co., Inc., Rahway, NJ 1989)を参照されたい:ともに引用によって本明細書に組み込まれる]。投与量は、好ましくは、体重1kgあたり約1〜約500mg/kgの範囲内であり、好ましくは、1日1〜2回投与する。化合物の経口投与に適切な投与量に関する更なる手引きは、それぞれ、第一薬理学的成分及び第二薬理学的成分についての投与量中に見出され得る(表1及び2を参照されたい)。第一薬理学的成分及び第二薬理学的成分の投与の刊行物記載の報告、並びに当業者に公知の情報から、本発明の化合物の投与のための適切な治療範囲を合理的に概算できる。一例として、表1及び2に与えられた情報から、本発明の化合物は、有効投与量の範囲で投与できる。範囲の下限は、通常1μg/日、好ましくは1mg/日、より好ましくは5mg/日、より好ましくは10mg/日、より好ましくは20mg/日、より好ましくは25mg/日、最も好ましくは75又は80mg/日である。範囲の上限は、通常300mg/日、好ましくは160mg/日、より好ましくは100mg/日、最も好ましくは80又は40mg/日である。本発明の化合物は、1日1回のみか、多くとも2回投与する。
【0086】
本発明の化合物は、体液に溶解したときは不安定であり、急速に加水分解されて、二つの活性親薬物を再生する。しかし、固体形態では、加水分解するには初めに溶液として存在しなければならないため、水性の環境中でさえ安定である。
【0087】
その他の投与量及び配合物:
本発明の方法は、好都合には、本発明の化合物を用いて、それを必要とする個人に、当技術分野に認められた方式で、例えば静脈内、皮下、筋内、若しくは注射というその他の非経口様式を経由してか、又は外科的な移植によってそれをデリバリーできる。静脈内注射は可能であるが、本発明の化合物の特性は、皮下若しくは筋内移植、又は軟組織内への注射に充分に適合する。
【0088】
本発明の化合物は、懸濁液(ナノ粒子粒径範囲)として配合することもでき、粒径の上限は、目標とする適用方法に依存するにすぎない。
【0089】
本発明の一実施態様では、本発明の化合物を、固体形態、例えば、直接注射され得るペレットとして調製できる。本発明の化合物のペレットは、共役形態の低い溶解度を反映して薬物を溶液又は体液中に徐々に放出することができる。ペレットは、化合物のみからか、又はポリ乳酸及びポリグリコール化合物のような、移植可能な生体内被侵食性の物質とともに配合してよい。ペレットは、当技術分野に公知の方法によって配合し、組成物を0.1〜約100%含有する。
【0090】
本発明のその他の実施態様では、本発明の化合物を、例えばヤシ油等の植物油中の無水溶液又は懸濁液として調製し、筋内に注射する。本発明の化合物は、リポソーム、液体、懸濁液、ミクロスフィア又はナノ粒子のような注射可能形態で投与できる。そのような水性溶液、リポソーム、エマルジョン及び懸濁液の調製は、当業者に公知である[Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990)を参照されたい]。
【0091】
もう一つの実施態様では、化合物は、例えばカプセル剤、錠剤又はゲルキャップ等の経口配合物である。本発明の更に一つの実施態様では、化合物は、局所適用可能形態、例えば経皮貼布剤、軟膏、懸濁液、液剤、エリキシル剤又は点眼剤である[Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990)を参照されたい]。
【0092】
徐放系:
本発明の一実施態様では、高血圧及び高血圧関連疾患病状に関連する全身又は局所的な薬理若しくは生理学的効果を求めて、化合物の制御放出又は持続的放出のための制御デリバリー系に、本発明の化合物(固体、液体又はコロイド状のいずれか)が含まれる。そのような疾患病状は、当業者には公知である[Goodman & Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed. (Pergamon Press, NY, 1990)及びThe Merck Index, 11th Ed. (Merck and Co., Inc., Rahway, N.J. 1989)を参照されたい:両文献とも引用によって本明細書に組み込まれる]。
【0093】
この制御デリバリー系は、化合物が、生理学的条件下で重合体基質からの拡散速度が、上記重合体基質の透過性によって律速されないように選ぶのが好ましい。制御デリバリー系の考察に関しては、米国特許第6,051,576号明細書(引用によって本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0094】
本発明の化合物の配合物は、放出、生体適合性又は外見を最適化するために、その他いくつかの置換物質を含有してもよく、徐放装置又は徐放系内で用いてもよい。そのような置換物質は、当業者には公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990)に解説されている。更に、上記化合物は、ビタミンB6とイソニアジド等の望ましくない効果を軽減するために、別の薬剤に結合してもよい。本発明のもう一つの実施態様は、他の薬物又はプロドラッグ分子とともに配合された化合物である。
【0095】
本発明の化合物は、生体内被侵食性又は非生体内被侵食性デリバリー系内に配合して、その放出を更に制御してもよい。そのような生体内被侵食性デリバリー系は、周囲の薄膜、又は化合物によるマトリックスを形成するポリ乳酸(生体内被侵食性)を含み、薬学的特性が更に改良されてもよい。ポリ乳酸は、2、5及び10%ポリ乳酸の溶液として配合することができ、縫合線に付着したペレットを生成するのに用いられている。薬理学的活性薬剤のための完全生体内被侵食性である徐放系は、別の生体内被侵食性物質、例えばポリビニル酸、ポリ無水物、コラーゲン、又はポリブチルシアノアクリレートのようなポリアルキルシアノアクリレート等との配合物中の本発明の化合物で構成してもよい。2%ポリビニルアルコールは、結膜下デリバリーのためにペレットをコートするのに用いられている。ポリブチルシアノアクリレート(生体内被侵食性)は、ペレットのマトリックスを形成するのにも用いられている。
【0096】
本発明のもう一つの実施態様では、本発明の化合物は、体液と生体適合性を有し、本質的に不溶性である天然又は合成重合体を含有する、非侵食性マトリックス若しくは貯留系内に含まれる。そのような材料は、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、架橋結合ポリ酪酸ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、可塑化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、ポリビニルエステル、ポリ酪酸ビニル、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ソフトナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、架橋結合ポリビニルピロリドン、ポリトリフルオロクロロエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ(1,4−イソプロピリデンジフェニレンカーボネート)、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−フマル酸ジエチル共重合体、シリコーンゴム(特に医薬等級のもの)ポリジメチルシロキサン、エチレン−プロピレンゴム、シリコーン−カーボネート共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体及び塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体が挙げられるがこれらに限られない。
【0097】
本発明の化合物を含有する系は、外科的切開付近、軟組織付近の部位、又はその双方に直接移植できる。本発明のいくつかの実施態様では、本発明の化合物を一以上の重合体賦形剤と併用するのが望ましいことがある。そのような重合体賦形剤は、生理学的に許容され得るいかなる重合体、例えば生体内被侵食性又は非生体内被侵食性重合体でもよい。
【0098】
本発明の組成物に役立つ重合体として、本発明の化合物が透過可能であるか、又は生体内被侵食性であるために、本発明の化合物を徐放方式で放出する、生物学的に許容され得るいかなる重合体が挙げられる。本発明の好適実施態様では、上記重合体は、それが重合体からの本発明の化合物の放出速度における主要な速度決定因子にならないような透過性を有する。本発明のいくつかの実施態様では、上記重合体は、非生体内被侵食性である。本発明に役立つ非生体内被侵食性重合体の例として、ポリビニルアルコール及びポリウレタンが挙げられる。本発明のその他の実施態様では、重合体は生体内被侵食性である。本発明に役立つ生体内被侵食性重合体の例として、ポリ無水物、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリアルキルシアノアクリレート、又はそれらの誘導体及び共重合体が挙げられる。当業者は、上記重合体の生体内被侵食性又は非生体内被侵食性の選択が、系の最終的な物理学的形態に依存することを認識するが、より詳しくは下記に記載される。その他の例示的重合体として、ポリシリコーン、及びヒアルロン酸から誘導される重合体が挙げられる。当業者は、上記重合体が、それが重合体からの低溶解性薬剤の放出における主要な速度決定因子にならないような透過性を付与するのに適した条件下で製造されることを当然に理解する。
【0099】
上記に加えて、適切な重合体として、天然に産する材料(例えばコラーゲン又はヒアルロン酸)、又は体液及び哺乳動物組織との生体適合性を有し、上記重合体が接触することになる体液に本質的に不溶である合成材料が挙げられる。又、適切な重合体は、上記重合体中に分散/懸濁させた低溶解性薬剤と、体液中のタンパク質性成分との相互作用を本質的に妨げる。体液に迅速に溶解する重合体、又は非常に可溶性に富む重合体であり、低溶解性薬剤とタンパク質性成分との相互作用を許すものの使用は、重合体の溶解、又はタンパク質性成分との相互作用が薬物放出の定常性に影響することになるため、回避しなければならない。
【0100】
その他の適切な重合体として、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン−酢酸ビニル(PVA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド、ポリカルボン酸、ポリアルキルアクリレート、セルロースエーテル、ポリアルキル−アルキルアクリレート共重合体、ポリエステル−ポリウレタンブロック共重合体、ポリエーテル−ポリウレタンブロック共重合体、ポリジオキサノン、ポリ(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸及びPEO−PLA共重合体が挙げられる。
更に適切な重合体は、米国特許第6,051,576号明細書(引用によって組み込まれる)に記載されている。
【0101】
本発明の一以上の実施態様の詳細を、説明と共に上記で記載した。本明細書に記載されたものと類似するか、又は等価であるいかなる方法及び材料も、本発明の実施又は試験に用いることができるが、ここでは好適な方法及び材料を記載する。本発明のその他の特徴及び利点は、記載及びクレームから明白である。明細書及び付記されたクレーム中、文脈が別途明示しない限り、単数形は、複数の指示対象を含む。別途規定されない限り、本明細書に用いられる技術的学術的用語は、すべて、本発明が属する業界の当業者によって共通して理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に引用された特許及び刊行物は、すべて、引用によって組み込まれる。
【実施例】
【0102】
以下の実施例は、本発明の好適実施態様をより充分に例示するために提示される。これらの実施例は、付記されたクレームによって規定されるとおりであって、本発明の対象範囲をいかなる方途でも限定すると解されてはならない。
【0103】
実施例1:テルミサルタンとシンバスタチンとの組み合わせ(図3):
テルミサルタン(51mg)、EDCl(24mg)、及び触媒量のDMAPを、0〜5℃のジクロロメタン1.5ml及びアセトニトリル0.5mlにアルゴン下で溶解した。15分後、シンバスタチン(44mg)を加え、得られた溶液を、氷浴中で15分間、次いで、室温で一晩撹拌した。反応混合物を、ジクロロメタンで希釈し、次いで重炭酸ナトリウム水溶液、水、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒の蒸発によって、無色の油を得て、これを、分取薄層クロマトグラフィー(TLC)によって精製した。クロマトグラフィーによる精製により、純粋な生成物22mgを得た。
1H-NMR (CDCl3), 0.70 (t, 3H), 0.82 (m, 6H), 1.10 (m, 9H), 2.78 (s, 3H), 3.02 (m, 2H), 3.70 (s, 3H), 4.38(m, 1H), 5.17 (m, 1H), 5.28 (m, 1H), 5.38 (m, 1H), 5.50 (s, 2H), 5.75 (m, 1H), 6.00 (m, 1H), 7.05-7.60 (m, 12H), 7.80 (m, 2H)。
【0104】
実施例2:テルミサルタンとロバスタチンとの組み合わせ(図4):
実施例1の手順に従い、テルミサルタン(100mg)とロバスタチン(56mg)との組み合わせ化合物を、EDCI(38mg)を縮合剤として用い、触媒量のDMAPの存在下、ジクロロメタン(1.5ml)及びアセトニトリル(0.5ml)の混合物中で製造した。未精製反応混合物のクロマトグラフィーによる精製によって、純粋な化合物46mgを得た。
1H-NMR (CDCl3), 0.72 (t, 3H), 0.82 (m, 3H), 1.10 (m, 9H), 2.78 (s, 3H), 3.02 (m, 2H) 3.82 (s, 3H), 4.35 (m, 1H), 4.61 (m, 1H), 5.18 (m, 1H), 5.33 (m, 1H), 5.52 (s, 2H), 5.77 (m, 1H), 6.00 (m, 1H), 7.05-7.60 (m, 12H), 7.80 (m, 2H)。
【0105】
実施例3:トリエチレングリコールによるロバスタチンの二量体:
【0106】
【化8】

【0107】
ロバスタチンのナトリウム塩(0.173g、0.3892mmol)及び1,2−ビス(ヨードエトキシ)エタン(0.072g、0.1946mmol)を、室温の無水ジメチルホルムアミド1.5mlにアルゴン下で溶解した。得られた黄色溶液を、暗所にて室温で48時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、残渣を酢酸エチルに溶解した。溶液を水、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。クロマトグラフィー精製により、純粋生成物(0.108g、58%)を得た。
【0108】
実施例4:ジエチレングリコールビス(グリコラート)によるアトルバスタチンの二量体:
【0109】
【化9】

【0110】
アトルバスタチンのセシウム塩(0.120g、0.2123mmol)及びジエチレングリコールビス(ヨードアセタート)(0.047g、0.106mmol)を、室温の無水ジメチルホルムアミド1.5mlにアルゴン下で溶解した。得られた溶液を、暗所にて室温で24時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、シリカゲルでのクロマトグラフィーにより分離して、無色油状生成物を得た(0.083g、60%)。
【0111】
実施例5:ジヒドロキシアセトンによるアトルバスタチンの二量体:
【0112】
【化10】

【0113】
アトルバスタチンのセシウム塩(0.183g、0.3238mmol)及び1,3−ジヨードアセトン(0.050g、0.1619mmol)を、室温の無水ジメチルホルムアミド2mlにアルゴン下で溶解した。得られた黄色溶液を、暗所にて室温で24時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、残渣を酢酸エチルに溶解した。有機溶液を重亜硫酸ナトリウム水溶液、水及び食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を蒸発させて、粗生成物を得て、これを分取TLCクロマトグラフィー精製した。収率:0.098g、52%。
【0114】
実施例6:ジヒドロキシアセトンビス(グリコラート)によるアトルバスタチンの二量体:
【0115】
【化11】

【0116】
アトルバスタチンのセシウム塩(0.217g、0.3850mmol)及びジヒドロキシアセトン ジヨードアセタート(0.082g、0.192mmol)を、室温の無水ジメチルホルムアミド3mlにアルゴン下で溶解した。得られた黄色溶液を、暗所にて室温で24時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、残渣を酢酸エチルに溶解した。有機溶液を重亜硫酸ナトリウム水溶液、水及び食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した。粗生成物をクロマトグラフィー精製した。収率:0.151g、61%。
【0117】
実施例7:2,6−ビス(ヒドロキシメチル)ピリジンによるアトルバスタチンの二量体:
【0118】
【化12】

【0119】
アトルバスタチンのセシウム塩(0.200g、0.3539mmol)及びビス(ブロモメチル)ピリジン(0.047g、0.177mmol)を、室温の無水ジメチルホルムアミド2ml及びアセトニトリル1.5mlにアルゴン下で溶解した。得られた無色溶液を、室温で一晩撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、残渣を酢酸エチルに溶解した。有機溶液を水及び食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。粗生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーによって精製して、0.119g、55%の二量体を得た。
【0120】
実施例8:アトルバスタチンとエゼチミベとの結合体:
【0121】
【化13】

【0122】
アトルバスタチンのセシウム塩(0.043g、0.0769mmol)及びヨード酢酸エゼチミベ(0.044g、0.0769mmol)を、室温の無水ジメチルホルムアミド2.5mlにアルゴン下で溶解した。得られた淡黄色溶液を、暗所にて室温で一晩撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、分取TLCクロマトグラフィーによって精製して、結合体0.042g(55%)を得た。
【0123】
実施例9:シンバスタチンとエゼチミベとの結合体:
【0124】
【化14】

【0125】
シンバスタチンのセシウム塩(0.076g、0.1337mmol)及びヨード酢酸エゼチミベ(0.077g、0.1337mmol)を、室温の無水ジメチルホルムアミド2.5mlにアルゴン下で溶解した。得られた淡黄色溶液を、室温で一晩撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、分取TLCクロマトグラフィーによって精製して、結合体0.068g(58%)を得た。
【0126】
これまでの記載は、例示のためにのみ提示されたにすぎず、本発明は、本明細書に開示された詳細な形態に限定しようとするものではなく、クレームの記載により定めされる。
本明細書に引用されたすべての参考文献、特許その他の文書は、引用によって明示的に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】レニン−アンギオテンシン−アルドステロン系の図式である。
【図2】HMGCoA還元酵素インヒビター間の構造の類似性を示す図式である[Istvan, E.S. & Deisenhofer, J., Science 292: 1160-64 (2001)より]。HMG成分を点線の四角によって示し、HMGCoAのKm値を示す。この図に示していないのは、ロバスタチン(1型HMGCoA還元酵素インヒビター)及びプロバスタチン(2型HMGCoA還元酵素インヒビター)である。
【図3】テルミサルタン及びシンバスタチンに関する反応スキームの図式である。
【図4】テルミサルタン及びロバスタチンに関する反応スキームの図式である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に不安定な結合を介して第二薬理学的成分に共有結合した第一薬理学的成分を含む化合物であって、
(a)第一薬理学的成分が、HMGCoA還元酵素インヒビター、又はHMGCoA還元酵素インヒビターのプロドラッグであり、
(b)第二薬理学的成分が、アンギオテンシンII(AT1)レセプターブロッカー、若しくはアンギオテンシンIIレセプターブロッカーのプロドラッグ、コレステロール吸収インヒビター、コレステロール吸収インヒビターのプロドラッグ、コレステリルエステル伝達タンパク質インヒビター、若しくはコレステリルエステル伝達タンパク質インヒビターのプロドラッグ、又はHMGCoA還元酵素インヒビター、若しくはHMGCoA還元酵素インヒビターのプロドラッグである
化合物、又はその塩。
【請求項2】
生理学的流体と接触したときに分解して、HMGCoA還元酵素インヒビター及びアンギオテンシンIIレセプターブロッカーを形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
HMGCoA還元酵素インヒビターが、アトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン及びロスバスタチンから選ばれる、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
アンギオテンシンII(AT1)レセプターブロッカーが、テルミサルタン、ロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、シレキセチル及びその他のアンギオテンシンIIレセプターブロッカーから選ばれる、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
第一薬理学的成分及び第二薬理学的成分を等モル量で含有する、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
第一薬理学的成分が、アミド、カルボナート、カルバマート、エーテル、エステル、スルホナート及びスルファマート結合から選ばれる一以上の生理学的に不安定な共有結合を介して第二薬理学的成分に共有結合された、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
無機酸塩、カルボン酸塩又はアミノ酸塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
第一薬理学的成分と第二薬理学的成分との共有結合の切断の際に、活性薬物が再生される、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
第一薬理学的成分と第二薬理学的成分との共有結合の切断の際に、プロドラッグが生成される、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
第一薬理学的成分と第二薬理学的成分との共有結合の切断の際に、活性代謝産物が生成される、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
請求項1記載の化合物を含む、注射可能組成物。
【請求項12】
リポソーム、懸濁液、ミクロスフィア又はナノ粒子である、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
固体形態をなす、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
請求項1記載の化合物を含む、全身投与に適した組成物。
【請求項15】
カプセル剤、錠剤及びゲルキャップ剤から選ばれる、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
請求項1記載の化合物を含む、局所投与に適した組成物。
【請求項17】
経皮貼布剤、軟膏、クリーム剤、懸濁液、液剤、エリキシル剤及び点眼剤から選ばれる、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
請求項1記載の化合物を含む移植可能な装置。
【請求項19】
上記化合物を移植可能な装置に塗装した、請求項18記載の装置。
【請求項20】
請求項1記載の化合物と、被侵食性デリバリービヒクルとを含む組成物。
【請求項21】
請求項1記載の化合物と、非被侵食性デリバリービヒクルとを含む組成物。
【請求項22】
心血管疾患を治療する方法であって、心血管疾患を有する個体に、生理学的に不安定な結合を介して第二薬理学的成分に共有結合した第一薬理学的成分を含み、
(a)第一薬理学的成分が、HMGCoA還元酵素インヒビター、又はHMGCoA還元酵素インヒビターのプロドラッグであり、
(b)第二薬理学的成分が、アンギオテンシンIIレセプターブロッカー、若しくはアンギオテンシンIIレセプターブロッカーのプロドラッグ、コレステロール吸収インヒビター、コレステロール吸収インヒビターのプロドラッグ、コレステリルエステル伝達タンパク質インヒビター、若しくはコレステリルエステル伝達タンパク質インヒビターのプロドラッグ、又はHMGCoA還元酵素インヒビター、若しくはHMGCoA還元酵素インヒビターのプロドラッグである、
薬学的有効量の化合物又はその塩を投与する段階を含む方法。
【請求項23】
化合物を、注射、吸入、移植、鼻内スプレーとして適用、直腸に適用、膣内に適用、経口摂取、及び局所適用から選ばれる方法によって投与する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
第一薬理学的成分が、−OCH2C(O)CH2O−、−OCH2CH(OH)CH2O−、−OCH2C(O)(OCH2CH2nOC(O)CH2O−、−O(CH23O−、−(OCH2CH2nO−、
【化1】

[式中、nは、1〜6の整数である]
から選ばれる一以上の生理学的に不安定な共有結合を介して第二薬理学的成分に共有結合している、請求項1記載の化合物。
【請求項25】
生理学的に不安定な結合を介して第二薬理学的成分に共有結合された第一薬理学的成分を含む化合物であって、
上記第一及び第二薬理学的成分が、独立して、ACEインヒビター、心臓保護剤、ステロイド及びコルチコステロイド、性ステロイド、アポトーシスインヒビター、MMPの発現/活性を変える薬剤、並びに抗炎症剤から選ばれる、化合物又はその塩。
【請求項26】
第一薬理学的成分及び第二薬理学的成分を等モル量で含有する、請求項25記載の化合物。
【請求項27】
第一薬理学的成分が、アミド、カルボナート、カルバマート、エーテル、エステル、スルホナート及びスルファマート結合から選ばれる一以上の生理学的に不安定な共有結合を介して第二薬理学的成分に共有結合された、請求項25記載の化合物。
【請求項28】
第一薬理学的成分が、−OCH2C(O)CH2O−、−OCH2CH(OH)CH2O−、−OCH2C(O)(OCH2CH2nOC(O)CH2O−、−O(CH23O−、−(OCH2CH2nO−、
【化2】

[式中、nは、1〜6の整数である]
から選ばれる一以上の生理学的に不安定な共有結合を介して第二薬理学的成分に共有結合している、請求項25記載の化合物。
【請求項29】
第一薬理学的成分及び第二薬理学的成分を等モル量で含有する、請求項25記載の化合物。
【請求項30】
無機酸塩、カルボン酸塩又はアミノ酸塩である、請求項25記載の化合物。
【請求項31】
第一薬理学的成分と第二薬理学的成分との共有結合の切断の際に、活性薬物が再生される、請求項25記載の化合物。
【請求項32】
第一薬理学的成分と第二薬理学的成分との共有結合の切断の際に、プロドラッグが生成される、請求項25記載の化合物。
【請求項33】
第一薬理学的成分と第二薬理学的成分との共有結合の切断の際に、活性代謝産物が生成される、請求項25記載の化合物。
【請求項34】
請求項25記載の化合物を含む、注射可能組成物。
【請求項35】
リポソーム、懸濁液、ミクロスフィア又はナノ粒子である、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
固体形態をなす、請求項25記載の化合物。
【請求項37】
請求項25記載の化合物を含む、全身投与に適した組成物。
【請求項38】
カプセル剤、錠剤及びゲルキャップ剤から選ばれる、請求項37記載の組成物。
【請求項39】
請求項25記載の化合物を含む、局所投与に適した組成物。
【請求項40】
経皮貼布剤、軟膏、クリーム剤、懸濁液、液剤、エリキシル剤及び点眼剤から選ばれる、請求項39記載の組成物。
【請求項41】
請求項25記載の化合物を含む移植可能な装置。
【請求項42】
上記化合物を移植可能な装置に塗装した、請求項41記載の装置。
【請求項43】
請求項25記載の化合物と、被侵食性デリバリービヒクルとを含む組成物。
【請求項44】
請求項25記載の化合物と、非被侵食性デリバリービヒクルとを含む組成物。
【請求項45】
心血管疾患を治療する方法であって、心血管疾患を有する個体に、生理学的に不安定な結合を介して第二薬理学的成分に共有結合した第一薬理学的成分を含み、
上記第一及び第二薬理学的成分が、独立して、ACEインヒビター、心臓保護剤、ステロイド及びコルチコステロイド、性ステロイド、アポトーシスインヒビター、MMPの発現/活性を変える薬剤、並びに抗炎症剤から選ばれる、
薬学的有効量の化合物又はその塩を投与する段階を含む方法。
【請求項46】
化合物を、注射、吸入、移植、鼻内スプレーとして適用、直腸に適用、膣内に適用、経口摂取、及び局所適用から選ばれる方法によって投与する、請求項45記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−535928(P2008−535928A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506699(P2008−506699)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/013907
【国際公開番号】WO2006/110882
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(501224877)シヴィダ・インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】