説明

MEMSセンサ

【課題】製造コストの増加を抑制しながら、互いに絶縁すべき複数の配線を交差させることができ、しかも物理量検出を良好に維持することができるMEMSセンサを提供する。
【解決手段】表面21に一対のX−検出素子Dが設けられたSOI基板2上の第2層間膜20上に、これらX−検出素子D間を接続する素子間配線43を敷設する。一方、第2層間膜20上において、素子間配線43を横切る方向にX−ブリッジ配線31の主配線36およびZ−検出上部電極配線33の主配線36が敷設されている。これらの主配線36との接触を避けるために、X−検出素子Dの下部電極25と同一層に中継配線45を形成し、この中継配線45を利用して素子間配線43が構成する回路を第2層間膜20内に迂回させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)センサは、外力の作用により変化する「構造」を利用することにより、物体に生じる加速度、角速度、圧力などを検出する。
たとえば、特許文献1の図1に開示されたモーションセンサ(1)は、枠形の支持部(S)と、支持部(S)の内側に十文字形に配置された4つの梁(F)と、当該4つの梁(F)のそれぞれに結合した柱形の連結部(C)と、連結部(C)に結合した錘(M)と、4つの梁(F)のそれぞれに設けられたピエゾ抵抗素子(131)・検出圧電素子(30b)と、4つの梁(F)のそれぞれに設けられ4つの梁(F)を撓ませることにより錘(M)を駆動する駆動圧電素子(30a)と、各圧電素子(30a・30b)を被覆するように支持部(S)および梁(F)上に積層された絶縁層(40)と、この絶縁層(40)上に形成され、各圧電素子(30a・30b)に接続された表面配線層(50)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−145259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば、特許文献1のモーションセンサのようなMEMSセンサにおいて、圧電素子などの容量素子間を配線で接続する場合がある。そのとき、配線を敷設可能なスペースに対して配線の数が多いと、或る回路を形成する配線を引き回すにあたって、他の回路を形成する配線を横切らなければならない箇所が生じる。
そのような場合、いわゆる多層配線構造を採用し、一方の回路を形成する配線を上位の配線層に迂回させれば、当該配線同士を互いに接触しないように交差させることができる。特許文献1のモーションセンサにおいては、たとえば、絶縁層(40)の上にさらに絶縁層を積層し、駆動圧電素子(30a)に接続された表面配線層(50)を当該絶縁層上に迂回させれば、駆動圧電素子(30a)に接続された表面配線層(50)と、検出圧電素子(30b)に接続された表面配線層(50)とを接触しないように交差させることができると考えられる。
【0005】
しかしながら、絶縁層を積層する工程、当該絶縁層に迂回させるための配線を形成する工程などの工程を追加しなければならず、全体としての工程数が増えてしまう。この工程数の増加に伴い、製造コストが嵩むという不具合を生じる。また、繊細な構造を有する梁(F)などの可動部に多層配線構造が形成されると、繊細な梁(F)に余計なストレスが加わり、物理量の検出に悪影響を及ぼすおそれもある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、製造コストの増加を抑制しながら、互いに絶縁すべき複数の配線を交差させることができ、しかも物理量検出を良好に維持することができるMEMSセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための請求項1に記載のMEMSセンサは、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられ、誘電体と、この誘電体を挟んで対向する下部電極および上部電極とを有する容量素子と、前記半導体基板上に積層され、前記容量素子を被覆する絶縁層と、前記絶縁層上に形成され、第1配線および当該絶縁層上において前記第1配線により分断された第2配線を含む主配線と、前記下部電極または前記上部電極と同一層に形成され、当該層において前記下部電極または前記上部電極の表面に沿う横方向に沿って前記第1配線を横切るように延びる中継配線とを含み、前記絶縁層上において分断された前記第2配線は、前記中継配線を介して互いに電気的に接続されている。
【0008】
この構成によれば、絶縁層上で分断された第2配線が、絶縁層内部において第1配線を横切る中継配線を介して互いに電気的に接続されている。これにより、第1配線に接触しないように第2配線の導通を図ることができる。しかも、容量素子の上部電極または下部電極の形成時に、第2配線の迂回路を形成する配線(中継配線)を同時に形成することができる。そのため、工程数の増加を防止することができるので、製造コストの増加を抑制することができる。
【0009】
また、半導体基板は、請求項2に記載のように、外力により変形可能な薄膜部および当該薄膜部を支持するフレームを有していてもよい。その場合、前記第1配線、前記第2配線および前記中継配線は、前記薄膜部上に敷設されていてもよい。薄膜部上に配線が敷設される場合でも、本発明の構成によれば、第1配線と交差する中継配線のベースを形成するために、主配線のベースとなる絶縁層上に絶縁層をさらに積層する必要がない。そのため、薄膜部に余計なストレスが加わることを抑制することができる。
【0010】
また、請求項3に記載のように、前記容量素子が、前記薄膜部上に配置され、それぞれ前記誘電体が圧電体である第1圧電素子および第2圧電素子を含み、前記薄膜部上の前記第2配線が、前記第1圧電素子と前記第2圧電素子とを電気的に接続する素子間配線と、当該素子間配線に電気的に接続されたパッド配線とを含んでいてもよい。
その場合、請求項4に記載のように、素子間配線が、絶縁層上で第1配線により分断されていてもよい。素子間配線が分断される構成では、請求項4に記載のように、前記中継配線が、前記第1圧電素子の前記下部電極および前記第2圧電素子の前記下部電極と同一層においてそれら下部電極のいずれからも分離され、前記横方向に沿って前記第1配線を横切るように形成された下部金属層からなり、当該下部金属層と、分断された各前記素子間配線とを接続するプラグをさらに含むことが好ましい。
【0011】
この構成では、中継配線が第1および第2圧電素子の各下部電極のいずれからも分離されているので、第1および第2圧電素子の各電極(上部電極および下部電極)から中継配線を電気的に絶縁することができる。そのため、素子間配線における中継配線との接続側とは反対側の接続対象を適宜設定することにより、第1圧電素子と第2圧電素子とを直列に接続することもできるし、並列に接続することもできる。
【0012】
たとえば、分断された一方および他方の素子間配線の接続対象が、同種の電極である場合(つまり、接続対象が、第1圧電素子の上部電極および第2圧電素子の上部電極である場合、または第1圧電素子の下部電極および第2圧電素子の下部電極である場合)には、第1および第2圧電素子の並列接続を達成することができる。また、分断された一方および他方の素子間配線の接続対象が、異種の電極である場合(つまり、接続対象が、第1圧電素子の上部電極および第2圧電素子の下部電極である場合、または第1圧電素子の下部電極および第2圧電素子の上部電極である場合)には、第1および第2圧電素子の直列接続を達成することができる。
【0013】
また、請求項5に記載のように、素子間配線がアルミニウムからなり、下部金属層が白金からなる場合には、第1圧電素子と第2圧電素子とを接続する回路を構成する配線のうち、アルミニウムよりも電気伝導率が低い配線(白金配線)を下部金属層の部分に留めることができる。そのため、第1圧電素子と第2圧電素子との距離が遠い場合でも、第1配線の近傍まで素子間配線を利用すれば、第1圧電素子と第2圧電素子との間の平均電気伝導率の低下を抑制することができる。なお、白金配線は、Ptのみからなる配線に限らず、たとえば、Pt/TiのようにPtを主として含む配線を含む概念である。
【0014】
また、請求項6に記載のように、前記MEMSセンサは、前記下部金属層上に形成され、前記第1圧電素子および前記第2圧電素子の前記圧電体と同一材料からなるダミー圧電体をさらに含んでいてもよい。
この構成では、第1および第2圧電素子の圧電体を圧電材料のエッチングにより形成する際に、当該圧電材料における圧電体を形成すべき領域と同様に、ダミー圧電体を形成すべき領域もマスクで覆われる。これにより、エッチング中、下部金属層(中継配線)におけるダミー圧電体直下の部分をエッチングガス等のエッチング媒体から保護することができる。この保護により、下部金属層へのダメージを抑制し、下部電極層の厚さを維持することができる。その結果、下部金属層の内部抵抗の上昇を抑制することができる。
【0015】
また、ダミー圧電体が形成される場合、前記プラグは、請求項7に記載のように、前記ダミー圧電体を厚さ方向に貫通して前記下部金属層に接続されていてもよい。また、請求項8に記載のように、前記ダミー圧電体から前記下部金属層が露出していれば、前記プラグは、前記ダミー圧電体を避けて前記下部金属層の前記露出した部分に接続されていてもよい。
【0016】
また、第2配線がパッド配線と素子間配線とを含む場合、請求項9に記載のように、パッド配線と素子間配線とが、絶縁層上で第1配線により分断されていてもよい。パッド配線と素子間配線との間が分断される構成では、請求項9に記載ように、前記中継配線が、前記第1圧電素子の前記下部電極から前記第1配線を横切るように前記横方向に一体的に引き出された電極引出部を含み、前記パッド配線と前記第1圧電素子の前記上部電極とを接続する第1プラグと、前記素子間配線と前記電極引出部とを接続する第2プラグとをさらに含むことが好ましい。
【0017】
この構成では、中継配線と第1圧電素子の下部電極とが一体的に形成されているので、中継配線と当該下部電極とを簡単かつ確実な構造で接続することができる。
また、請求項10に記載のように、前記MEMSセンサは、前記第1圧電素子の前記圧電体から前記電極引出部の表面に沿って一体的に引き出された圧電体引出部をさらに含んでいてもよい。
【0018】
この構成では、第1および第2圧電素子の圧電体を圧電材料のエッチングにより形成する際に、当該圧電材料における圧電体を形成すべき領域と同様に、圧電体引出部を形成すべき領域もマスクで覆われる。これにより、エッチング中、電極引出部(中継配線)における圧電体引出部直下の部分をエッチングガス等のエッチング媒体から保護することができる。この保護により、電極引出部へのダメージを抑制し、電極引出部の厚さを維持することができる。その結果、電極引出部の内部抵抗の上昇を抑制することができる。
【0019】
また、前記圧電体引出部が形成される場合、前記第2プラグは、請求項11に記載のように、前記圧電体引出部を厚さ方向に貫通して前記電極引出部に接続されていてもよい。また、請求項12に記載のように、前記圧電体引出部から前記電極引出部が露出していれば、前記第2プラグは、前記圧電体引出部を避けて前記電極引出部の前記露出した部分に接続されていてもよい。
【0020】
また、前記素子間配線が、絶縁層上で第1配線により分断されている場合、請求項13に記載のように、前記中継配線が、前記第1圧電素子の前記上部電極および前記第2圧電素子の前記上部電極と同一層においてそれら上部電極のいずれからも分離され、前記横方向に沿って前記第1配線を横切るように形成された上部金属層からなり、当該上部金属層と、分断された各前記素子間配線とを接続するプラグをさらに含んでいてもよい。
【0021】
この構成によれば、請求項4と同様に、中継配線が第1および第2圧電素子の各上部電極のいずれからも分離されているので、第1および第2圧電素子の各電極(上部電極および下部電極)から中継配線を電気的に絶縁することができる。そのため、素子間配線における中継配線との接続側とは反対側の接続対象を適宜設定することにより、第1圧電素子と第2圧電素子とを直列に接続することもできるし、並列に接続することもできる。
【0022】
また、請求項14に記載のように、素子間配線がアルミニウムからなり、上部金属層がイリジウムからなる場合には、第1圧電素子と第2圧電素子とを接続する回路を構成する配線のうち、アルミニウムよりも電気伝導率が低い配線(イリジウム配線)を上部金属層の部分に留めることができる。そのため、第1圧電素子と第2圧電素子との距離が遠い場合でも、第1配線の近傍まで素子間配線を利用すれば、第1圧電素子と第2圧電素子との間の平均電気伝導率の低下を抑制することができる。なお、イリジウム配線は、Irのみからなる配線に限らず、たとえば、Ir/IrO2-のようにIrを主として含む配線を含む概念である。
【0023】
また、請求項15に記載のように、前記第1圧電素子および前記第2圧電素子は、前記薄膜部の変形を検出するために配置された検出用素子であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るモーションセンサの模式的な平面図である。
【図2】図1に示すモーションセンサの模式的な斜視図であって、一部を断面で表した図である。
【図3】図1に示すビームの要部拡大図である。
【図4】図1に示すビームの要部拡大図であって、図3のピエゾ抵抗素子およびピエゾ抵抗素子と同一層に形成された要素のみを表している。
【図5】図1に示すビームの要部拡大図であって、図3の下部電極および圧電体ならびにそれらと同一層に形成された要素のみを表している。
【図6】図1に示すビームの要部拡大図であって、図3の上部電極および上部電極と同一層に形成された要素のみを表している。
【図7】図3に示すビームの切断面A−Aを表す断面図である。
【図8】図3に示すビームの切断面B−Bを表す断面図である。
【図9A】図1に示すモーションセンサの製造工程の一部を示す模式的な断面図であって、図8と同じ断面を表している。
【図9B】図9Aの次の工程を示す図である。
【図9C】図9Bの次の工程を示す図である。
【図9D】図9Cの次の工程を示す図である。
【図10】図7に示すビームの第1変形例を示す図である。
【図11】図7に示すビームの第2変形例を示す図である。
【図12】図7に示すビームの第3変形例を示す図である。
【図13】図7に示すビームの第4変形例を示す図である。
【図14】図7に示すビームの第5変形例を示す図である。
【図15】図7に示すビームの第6変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
<モーションセンサ1の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るモーションセンサ1の模式的な平面図である。図2は、図1に示すモーションセンサ1の模式的な斜視図であって、一部を断面で表した図である。
【0026】
モーションセンサ1は、三次元空間において直交する3軸(X軸、Y軸およびZ軸)に沿って作用する3軸加速度および3軸まわりに作用する3軸角速度を検出する6軸モーションセンサである。
このモーションセンサ1は、表面21および裏面22を有する半導体基板としての平面視矩形状のSOI(Silicon On Insulator)基板2を備えている。SOI基板2の表面21は、たとえば、検出素子や検出回路などが形成される素子形成面であり、裏面22は、たとえば、支持基板(たとえば、ガラス基板などの封止基板)が接合される実装面である。
【0027】
説明の便宜上、以下では、SOI基板2の1対の対向辺に平行な方向をX方向とし、SOI基板2の他対の対向辺に平行な方向をY方向とし、SOI基板2の厚さ方向に平行な方向をZ方向として本実施形態を説明する。SOI基板2を水平面に置いたとき、X方向およびY方向は互いに直交する2つの水平な直線(X軸およびY軸)に沿う2つの水平方向(第1水平方向および第2水平方向)となり、Z方向は鉛直な直線(Z軸)に沿う鉛直方向(高さ方向)となる。なお、Z方向については、SOI基板2の裏面22が下側に配置されるモーションセンサ1の基本姿勢を基準として、上下方向ということがある。
【0028】
SOI基板2は、その裏面22側から表面21側へ向かって順に、シリコン基板3と、酸化シリコンからなる絶縁層4と、シリコンからなる活性層5とが積層された構造を有している。SOI基板2の総厚さは、たとえば、557.5μm程度であり、各層の厚さは、たとえば、シリコン基板3が550μm程度、絶縁層4が1.5μm程度、活性層5が6μm程度である。
【0029】
SOI基板2は、フレーム6と、錘7と、薄膜部としてのビーム8とを有している。この実施形態では、フレーム6および錘7は、SOI基板2のシリコン基板3、絶縁層4および活性層5からなる積層構造で構成され、ビーム8は、SOI基板2の活性層5で構成されている。
フレーム6は、平面視四角環状(枠状)に形成されている。このフレーム6上には、SOI基板2上に形成された各種配線29〜35(後述)に接続される電極パッド9が複数設けられている。複数の電極パッド9は、フレーム6の各辺に複数個同数ずつ(この実施形態では、10個ずつ)設けられ、各辺において互いに等しい間隔を空けて配置されている。
【0030】
錘7は、フレーム6によって取り囲まれる領域に、フレーム6との間に間隔を空けて配置されている。錘7は、四角柱状の中央柱状部10と、その周囲の4つの四角柱状の周囲柱状部11とからなる。中央柱状部10および各周囲柱状部11は、いずれもフレーム6と同じ厚さ(高さ)を有している。中央柱状部10は、フレーム6によって囲まれる領域の中央部に、外周縁がフレーム6の内周縁(内面)と平行をなすように配置されている。周囲柱状部11は、中央柱状部10の上面の各対角線の両側への延長線上に1つずつ配置されている。そして、中央柱状部10の側面の各角部に対して、周囲柱状部11の側面の1つの角部が接続されている。これにより、中央柱状部10および4つの周囲柱状部11は、一体をなして、フレーム6と同じ厚さを有する錘7を構成している。
【0031】
ビーム8は、この実施形態では4本設けられ、互いに隣り合う周囲柱状部11の各間において、それらの周囲柱状部11の側面に対して間隔を空けて平行に延びている。ビーム8の長手方向(以下、この方向を「ビーム8の縦断方向」ということがある。)一端は、フレーム6に接続され、その他端は、中央柱状部10に接続されている。また、ビーム8は、SOI基板2の活性層5で構成されていることにより、捩れ変形および撓み変形が可能である。これにより、4本のビーム8は、錘7をフレーム6に対して揺振可能に支持している。
【0032】
各ビーム8には、容量素子としての駆動圧電素子12および検出圧電素子13、ならびにピエゾ抵抗素子14が設けられている。
駆動圧電素子12は、各ビーム8とフレーム6との境界に1個ずつ合計4個設けられ、ビーム8とフレーム6との間に跨るように配置されている。駆動圧電素子12には、錘7をフレーム6の周方向に沿って周回運動させるための交流電圧が印加される。
【0033】
検出圧電素子13は、各ビーム8と中央柱状部10との境界に複数個同数ずつ(この実施形態では、3個ずつ)設けられており、センサに作用する角速度成分を検出する。各境界に設けられた複数個の素子は、互いに間隔を空けてビーム8の長手方向に直交する幅方向(以下、この方向を「ビーム8の横断方向」ということがある。)に沿って並べられ、それぞれがビーム8と中央柱状部10との間に跨るように配置されている。
【0034】
ピエゾ抵抗素子14は、各ビーム8に複数個ずつ設けられている。複数のピエゾ抵抗素子14は、X軸、Y軸およびZ軸それぞれに作用する加速度の検出回路として、たとえば4個のピエゾ抵抗素子14からなる3つのブリッジ回路を構成している。たとえば、X軸に対応するブリッジ回路は、X方向に沿って延びるビーム8上の4個のピエゾ抵抗素子14で構成され、Y軸に対応するブリッジ回路は、Y方向に沿って延びるビーム8上の4個のピエゾ抵抗素子14で構成されている。また、Z軸に対応するブリッジ回路は、4つのビーム8それぞれから1個ずつ選ばれた合計4個のピエゾ抵抗素子14で構成されている。なお、図1および図2では、複数のピエゾ抵抗素子14の一部のみを表している。
【0035】
このモーションセンサ1では、駆動圧電素子12に交流の駆動電圧を印加することにより、ビーム8が3次元振動して、錘7がフレーム6の周方向に沿って周回運動する。そして、モーションセンサ1に角速度が作用し、作用した角速度と錘7の速度とに応じたコリオリ力が錘7に発生すると、ビーム8に歪みが生じる。ビーム8の歪みにより、ビーム8上の検出圧電素子13に応力が作用し、その応力が検出圧電素子13で電圧に変換される。そのため、検出圧電素子13で発生した電圧を信号として取り出せば、モーションセンサ1に作用した3軸角速度を検出することができる。
【0036】
また、モーションセンサ1に加速度が作用して錘7が振れると、錘7に慣性力が作用してビーム8に歪みが生じる。このビーム8の歪みにより、ビーム8上のピエゾ抵抗素子14に応力が作用し、ピエゾ抵抗素子14の抵抗率が変化する。そのため、各ピエゾ抵抗素子14の抵抗率の変化量を信号として取り出せば、その信号に基づいて、モーションセンサ1に作用した3軸加速度を検出することができる。
<ピエゾ抵抗素子14、駆動圧電素子12および検出圧電素子13のビーム8上における配置形態>
図3〜図6は、図1に示すビーム8の要部拡大図である。なお、図4は、図3のピエゾ抵抗素子14およびピエゾ抵抗素子14と同一層に形成された要素のみを表している。また、図5は、図3の下部電極および圧電体ならびにそれらと同一層に形成された要素のみを表している。また、図6は、図3の上部電極および上部電極と同一層に形成された要素のみを表している。また、図7は、図3に示すビーム8の切断面A−Aを表す断面図である。図8は、図3に示すビーム8の切断面B−Bを表す断面図である。
【0037】
まず図3〜図4、図7〜図8を参照して、歪みゲージとしてのピエゾ抵抗素子14は、ビーム8の表層部にその一部として形成されている。ピエゾ抵抗素子14は、たとえば、n型の活性層5へのp型不純物の拡散により導電性が付与されて形成された素子であり、一様なp型不純物濃度を有している。
ピエゾ抵抗素子14は、この実施形態では、たとえば、第1のブリッジ回路としてのX方向検出用のブリッジ回路(つまり、X方向の加速度を検出するためのブリッジ回路)を構成する第1抵抗としてのX−抵抗素子Rと、X方向検出用のブリッジ回路とは異なる第2のブリッジ回路としてのZ方向検出用のブリッジ回路(つまり、Z方向の加速度を検出するためのブリッジ回路)を構成する第2抵抗としてのZ−抵抗素子Rとを含んでいる。
【0038】
なお、X方向およびZ方向検出用の抵抗として例示された第1および第2抵抗は、たとえば、最終製品の特性に合わせて、X方向検出用、Y方向検出用およびZ方向検出用として設計することができる。
X−抵抗素子RおよびZ−抵抗素子Rは、それぞれビーム8の長手方向に沿う長尺状に形成されており、ビーム8の幅方向中央において、ビーム8の長手方向に沿って配置されている。具体的には、ビーム8とフレーム6との間に跨るように、かつ、平面視で駆動圧電素子12と重なるようにZ−抵抗素子Rが配置され、このX−抵抗素子Rからフレーム6から離れる方向へ向かってX−抵抗素子R、X−抵抗素子RおよびZ−抵抗素子Rという順に配置されている。
【0039】
次に、図3および図5、図7〜図8を参照して、SOI基板2の表面21には、SiO膜15(厚さ125Å程度)およびNSG(Nondoped Silicate Glass)からなる第1層間膜16(厚さ2500Å程度)が順に積層されている。
駆動圧電素子12および検出圧電素子13は、この第1層間膜16上に設けられている。
【0040】
駆動圧電素子12は、ビーム8とフレーム6との境界に配置されたZ−抵抗素子Rおよび当該Z−抵抗素子Rに隣接するX−抵抗素子Rからなる1組のピエゾ抵抗素子14を覆うように配置されている。
駆動圧電素子12は、誘電体としての圧電体17と(たとえば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛))、当該圧電体17を上下方向両側から挟む1組の上部電極18(たとえば、Pt/Ti)および下部電極19(たとえば、Ir/IrO)を有している。
【0041】
検出圧電素子13は、駆動圧電素子12に対してフレーム6に遠い側に間隔を空けて設けられている。
検出圧電素子13は、この実施形態では、第1の方向としてのX方向まわりの角速度を検出するためのX−検出素子Dと、X方向とは異なる第2の方向としてのZ方向まわりの角速度を検出するためのZ−検出素子Dとを含んでいる。
【0042】
Z−検出素子Dは、ビーム8の幅方向中央に配置され、当該Z−検出素子Dに対してビーム8の幅方向両側にX−検出素子Dが配置されている。
なお、X方向およびZ方向検出用の素子として例示された第1および第2の検出用素子は、たとえば、最終製品の特性に合わせて、X方向検出用、Y方向検出用およびZ方向検出用として設計することができる。
【0043】
X−検出素子DおよびZ−検出素子Dは、誘電体としての圧電体23と(たとえば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛))、当該圧電体23を上下方向両側から挟む上部電極24X,24Z(たとえば、Pt/Ti)および下部電極25(たとえば、Ir/IrO)を有している。
検出圧電素子13では、圧電体23および下部電極25は、X−検出素子DおよびZ−検出素子D間で共有されている。圧電体23および下部電極25は、駆動圧電素子12により覆われた1組のピエゾ抵抗素子14とは異なる、X−抵抗素子Rおよび当該X−抵抗素子Rに隣接するZ−抵抗素子Rからなる他の1組のピエゾ抵抗素子14を覆うように配置されている。
【0044】
つまり、この実施形態では、ビーム8の幅方向中央部に、下部電極25、圧電体23および上部電極24Zが順に積層された積層構造を有するZ−検出素子Dが形成されている。このZ−検出素子Dを構成する下部電極25および圧電体23は、ビーム8の幅方向両側にほぼ同じ長さ分引き出された引出部を有している。X−検出素子Dは、当該下部電極25の引出部および圧電体23の引出部、さらに圧電体23の引出部上において、Z−検出素子Dの上部電極24Zのビーム8の幅方向両側に当該上部電極24Zに対して間隔を空けて一つずつ形成された上部電極24Xによって構成されている。この実施形態では、Z−検出素子Dに対してビーム8の幅方向一方側(図3および図5の紙面上側)のX−検出素子Dが、本発明の第1圧電素子の一例であり、他方側(図3および図5の紙面下側)のX−検出素子Dが、本発明の第2圧電素子の一例である。
【0045】
そして、第1層間膜16上には、駆動圧電素子12および検出圧電素子13を被覆するSiOからなる第2層間膜20(厚さ5000Å程度)が積層されている。絶縁層としての第2層間膜20上には、電極パッド9が形成されている。
第2層間膜20上には、PSG(Phosphorus Silicate Glass)膜26(厚さ750Å程度)およびSiN膜27(厚さ7000Å程度)が順に積層されている。これらPSG膜26およびSiN膜27には、電極パッド9を露出させるパッド開口28が形成されている。
<ビーム8上の配線構造>
次に、図3〜図8を参照して、SOI基板2上には、電極パッド9から、駆動圧電素子12、検出圧電素子13およびピエゾ抵抗素子14などの各種素子に電力を供給する配線29〜35が敷設されている。
【0046】
当該配線29〜35は、駆動圧電素子12の上部電極18に電力を供給する駆動上部電極配線29、駆動圧電素子12の下部電極19に電力を供給する駆動下部電極配線30、X−抵抗素子Rに電力を供給するX−ブリッジ配線31、Z−抵抗素子Rに電力を供給するZ−ブリッジ配線32、X−検出素子Dの上部電極24Xに電力を供給するX−検出上部電極配線34、Z−検出素子Dの上部電極24Zに電力を供給するZ−検出上部電極配線33、およびX−検出素子DおよびZ−検出素子Dで共有される下部電極25に電力を供給する検出下部電極配線35を含んでいる。
【0047】
これらの配線29〜35は、電極パッド9と同一層(具体的には、第2層間膜20上)に形成された主配線36と、当該主配線36よりも下層に形成された副配線37D,37Mとを含んでいる。
電極パッド9から各種素子に至る配線は、本来的には、その始端(電極パッド9)から終端に至るまで、内部抵抗などを考慮して選択された材料を用いて、電極パッド9と同一層に敷設された主配線36であることが好ましい。しかしながら、SOI基板2上の配線スペースには制限があり、当該スペースに対して配線数が多いと、異なる回路を構成する配線同士が接触するおそれがある。そこで、この実施形態では、電極パッド9の同一層の主配線36と、ピエゾ抵抗素子14と同一層(具体的には、SOI基板2の活性層5の表層部)の下層拡散配線37D(図4に表された配線)、各下部電極19,25と同一層(具体的には、第1層間膜16上)の下層金属配線37M(図5に表された配線)などの副配線とを組み合わせて配線29〜35を形成することにより、配線間接触の問題を回避する。なお、配線によっては、主配線36のみで構成されるものがある。
【0048】
主配線36は、この実施形態では、Alからなる配線である。下層拡散配線37D(副配線)は、ピエゾ抵抗素子14と同様に、不純物の拡散により活性層5に部分的に導電性が付与されて形成された配線である。下層金属配線37M(副配線)は、各下部電極19,25と同一材料(この実施形態では、Ir/IrO)からなる配線である。この下層金属配線37Mの上には、駆動圧電素子12の圧電体17および検出圧電素子13の圧電体23と同一材料(たとえば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛))からなる、ダミー圧電体38が形成されている。
【0049】
駆動上部電極配線29は、主配線36のみで構成されており、駆動圧電素子12の上部電極18に対して電気的に接続されている。また、駆動下部電極配線30も同様に、主配線36のみで構成されており、駆動圧電素子12の下部電極19に対して電気的に接続されている。
X−ブリッジ配線31は、ビーム8を縦断するようにビーム8上に敷設され、複数のX−抵抗素子Rを直列に接続している。このX−ブリッジ配線31は、主配線36および下層拡散配線37D(副配線)の組み合わせからなる。副配線としての下層拡散配線37Dは、ビーム8の縦断にあたって、平面視で駆動圧電素子12および検出圧電素子13(Z−検出素子D)に重なる部分に敷設されている。また、ビーム8の縦断方向(長手方向)に沿って延びるX−ブリッジ配線31(主配線36)は、駆動圧電素子12と検出圧電素子13との間の領域において分岐している。分岐された主配線36(分岐配線39)は、ビーム8の横断方向(幅方向)に沿ってビーム8の周縁部へ延び、当該ビーム8の周縁部をビーム8の縦断方向に沿って敷設されている。
【0050】
Z−ブリッジ配線32は、ビーム8を縦断するようにビーム8上に敷設され、複数のZ−抵抗素子Rを直列に接続している。このZ−ブリッジ配線32は、主配線36および下層拡散配線37D(副配線)の組み合わせからなる。副配線としての下層拡散配線37Dは、ビーム8の縦断にあたって、平面視で駆動圧電素子12および検出圧電素子13(Z−検出素子D)に重なる部分に敷設されている。また、ビーム8の縦断方向(長手方向)に沿って延びるZ−ブリッジ配線32(主配線36)は、駆動圧電素子12と検出圧電素子13との間の領域において分岐している。分岐された主配線36(分岐配線40)は、ビーム8の横断方向(幅方向)に沿って、X−ブリッジ配線31が引き回されたビーム8の周縁部とは反対側のビーム8の周縁部へ延び、当該ビーム8の周縁部をビーム8の縦断方向に沿って敷設されている。
【0051】
Z−検出上部電極配線33は、ビーム8の周縁部においてZ−ブリッジ配線32の分岐配線40に並んで敷設されている。そして、X−検出素子Dにおけるフレーム6に遠い側の端部を取り囲むように、当該端部付近でフレーム6に近い側へ平面視U字状に転回し、Z−検出素子Dの上部電極24Zに電気的に接続されている。
この場合、ビーム8の縦断方向に沿って延びるZ−検出上部電極配線33(主配線36)は、駆動圧電素子12と検出圧電素子13との間の領域において、ビーム8の横断方向に延びるZ−ブリッジ配線32の分岐配線40(主配線36)により分断されている。つまり、Z−検出上部電極配線33とZ−ブリッジ配線32との関係において、Z−ブリッジ配線32の分岐配線40が、本発明の第1配線の一例であり、この分岐配線40により分断されたZ−検出上部電極配線33が、本発明の第2配線の一例である。
【0052】
そこで、この実施形態では、Z−検出上部電極配線33の主配線36に、ビーム8の縦断方向に沿ってZ−ブリッジ配線32(分岐配線40)を横切るように延びる、本発明の下部金属層の一例としての中継配線41を組み合わせている。中継配線41は、主配線36よりも下層の下層金属配線37Mにより構成されている。これにより、Z−検出上部電極配線33とZ−ブリッジ配線32(分岐配線40)との接触を防止することができる。
【0053】
当該中継配線41(下層金属配線37M)は、駆動圧電素子12の下部電極19および検出圧電素子13の下部電極25のいずれからも分離されており、その上には、中継配線41の長さ方向両端部を露出させるようにダミー圧電体38が設けられている。そして、Z−検出上部電極配線33の主配線36と、Z−検出上部電極配線33の中継配線41(下層金属配線37M)とは、第2層間膜20を厚さ方向に貫通するプラグ42により接続されている。当該プラグ42は、ダミー圧電体38を避けて中継配線41の両端部に接続されている。
【0054】
X−検出上部電極配線34は、ビーム8の幅方向にZ−検出素子Dを挟んで互いに対向する、Z−検出素子Dに対して一方側のX−検出素子Dの上部電極24Xと他方側のX−検出素子Dの上部電極24Xとを電気的に接続する素子間配線43と、当該素子間配線43と電極パッド9とを電気的に接続するパッド配線44とを含んでいる。
素子間配線43は、ビーム8の幅方向に一方側および他方側のX−検出素子Dに跨るように敷設されている。
【0055】
この場合、ビーム8の幅方向に跨るX−検出上部電極配線34の素子間配線43(主配線36)は、Z−検出素子Dにおけるフレーム6に遠い側端部付近において、ビーム8の縦断方向に沿って延びるX−ブリッジ配線31(主配線36)およびビーム8の周縁部からフレーム6に近い側へ平面視U字状に転回してZ−検出素子Dの上部電極24Zに接続されるZ−検出上部電極配線33(主配線36)により分断されている。つまり、X−検出上部電極配線34(素子間配線43)と、X−ブリッジ配線31およびZ−検出上部電極配線33との関係においては、X−ブリッジ配線31およびZ−検出上部電極配線33が、本発明の第1配線の一例であり、これらX−ブリッジ配線31およびZ−検出上部電極配線33により分断された素子間配線43の主配線36が、本発明の第2配線の一例である。
【0056】
そこで、この実施形態では、素子間配線43の主配線36に、ビーム8の横断方向に沿ってX−ブリッジ配線31およびZ−検出上部電極配線33を横切るように延びる、本発明の下部金属層の一例としての中継配線45を組み合わせている。中継配線45は、主配線36よりも下層の下層金属配線37Mにより構成されている。これにより、X−検出上部電極配線34と、X−ブリッジ配線31およびZ−検出上部電極配線33との接触を防止することができる。
【0057】
当該中継配線45(下層金属配線37M)は、駆動圧電素子12の下部電極19および検出圧電素子13の下部電極25のいずれからも分離されており、その上には、中継配線45の長さ方向両端部を露出させるようにダミー圧電体38が設けられている。そして、X−検出上部電極配線34の主配線36と、X−検出上部電極配線34の中継配線45(下層金属配線37M)とは、第2層間膜20を厚さ方向に貫通するプラグ46により接続されている。当該プラグ46は、ダミー圧電体38を避けて中継配線45の両端部に接続されている。
【0058】
パッド配線44は、ビーム8の周縁部においてX−ブリッジ配線31の分岐配線39に並んで敷設されている。そして、一方側のX−検出素子Dにおけるフレーム6に遠い側の端部に沿って屈曲し、素子間配線43に電気的に接続されている。
この場合、ビーム8の縦断方向に沿って延びるパッド配線44(主配線36)は、駆動圧電素子12と検出圧電素子13との間の領域において、ビーム8の横断方向に延びるX−ブリッジ配線31の分岐配線39により分断されている。つまり、X−検出上部電極配線34(パッド配線44)と、X−ブリッジ配線31との関係においては、X−ブリッジ配線31の分岐配線39が、本発明の第1配線の一例であり、この分岐配線39により分断されたパッド配線44の主配線36が、本発明の第2配線の一例である。
【0059】
そこで、この実施形態では、パッド配線44の主配線36に、ビーム8の縦断方向に沿ってX−ブリッジ配線31を横切り、電極パッド9の直下にまで延びる、本発明の下部金属層の一例としての中継配線47を組み合わせている。中継配線47は、主配線36よりも下層の下層金属配線37Mにより構成されている。これにより、X−検出上部電極配線34(パッド配線44)と、X−ブリッジ配線31との接触を防止することができる。電極パッド9と、X−検出上部電極配線34の中継配線47とは、第2層間膜20を厚さ方向に貫通するプラグ48により接続されている。
【0060】
検出下部電極配線35は、X−検出素子DおよびZ−検出素子Dで共有される下部電極25に一体的に接続されている。検出下部電極配線35は、図3では、下層金属配線37M(副配線)のみが表されている。
<モーションセンサ1の製造方法>
図9A〜図9Dは、図1に示すモーションセンサ1の製造工程を工程順に示す模式的な断面図であって、図8と同じ断面を表している。
【0061】
モーションセンサ1を製造するには、まず、図9Aに示すように、シリコン基板3、絶縁層4および活性層5を含むSOI基板2の活性層5に、p型不純物をドーピングすることにより、ピエゾ抵抗素子14および下層拡散配線37Dが形成される。次いで、SOI基板2上に、たとえば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によりSiO膜15および第1層間膜16が順に形成される。
【0062】
次いで、図9Bに示すように、公知のスパッタ技術により、第1層間膜16上に、Ir/IrOからなる金属材料、PZTからなる圧電材料およびPt/Tiからなる金属材料が順に積層される。その後、公知のパターニング技術により、Ir/IrOが選択的にエッチングされ、さらに、PTZが選択的にエッチングされる。当該圧電材料のエッチングにより、駆動圧電素子12の圧電体17、検出圧電素子13の圧電体23、およびダミー圧電体38が同時に形成される。続いて、Pt/Tiが選択的にエッチングされることにより、駆動圧電素子12の下部電極19、検出圧電素子13の下部電極25、下層金属配線37M(中継配線41,45,47を含む)が同時に形成される。
【0063】
次いで、図9Cに示すように、第1層間膜16上に、駆動圧電素子12および検出圧電素子13を覆うように第2層間膜20が積層される。次いで、第2層間膜20が選択的にエッチングされることにより、中継配線41,45,47を構成する下層金属配線37Mに対してコンタクトをとるためのコンタクトホールが形成される。次いで、電極パッド9および主配線36用の金属材料(たとえば、Al)がスパッタされ、この金属材料がパターニングされることにより、電極パッド9、各種配線の主配線36およびプラグ42,46,48が同時に形成される。
【0064】
次いで、図9Dに示すように、第2層間膜20上に、PSG膜26およびSiN膜27が順に積層される。そして、公知のエッチング技術により、これらPSG膜26およびSiN膜27を貫通するように、パッド開口28が形成される。続いて、シリコン基板3が裏面22から研削される。研削後、公知のパターニング技術により、錘7およびフレーム6を形成すべき領域上に、フォトレジストからなるマスク(図示せず)が形成される。このマスクを介して、SOI基板2が裏面22側からシリコン基板3の途中までドライエッチングされる。これにより、錘7とフレーム6の形状が成形され、同時に、錘7とフレーム6とを隔てる溝が形成される。この後、溝内にエッチング液が供給されることにより、溝内の絶縁層4がウェットエッチングにより除去され、同時に活性層5からなるビーム8が形成される。以上の工程を経て、図1〜図8に示すモーションセンサ1が得られる。
<本実施形態による作用効果>
以上のように、このモーションセンサ1によれば、図8に示すように、第2層間膜20上において、Z−ブリッジ配線32の分岐配線40により分断されたZ−検出上部電極配線33(主配線36)が、駆動圧電素子12の下部電極19および検出圧電素子13の下部電極25と同一層に形成された中継配線41を介して互いに電気的に接続されている。これにより、Z−ブリッジ配線32に接触しないようにZ−検出上部電極配線33(主配線36)の導通を図ることができる。
【0065】
しかも、図9Bに示すように、駆動圧電素子12の下部電極19および検出圧電素子13の下部電極25の形成時に、Z−検出上部電極配線33(主配線36)の迂回路を形成する配線(中継配線41)を同時に形成することができる。そのため、工程数の増加を防止することができるので、製造コストの増加を抑制することができる。
とりわけ、このモーションセンサ1のように、薄膜状のビーム8に各種配線29〜35が敷設される場合でも、Z−ブリッジ配線32と交差する中継配線41のベースを形成するために、Z−検出上部電極配線33(主配線36)のベースとなる第2層間膜20上に層間膜をさらに積層する必要がない。そのため、ビーム8に余計なストレスが加わることを抑制することができる。その結果、モーションセンサ1による加速度および角速度の検出を精度よく行うことができる。
【0066】
また、中継配線41が、駆動圧電素子12の下部電極19および検出圧電素子13の下部電極25から分離されて形成されている。そのため、Z−検出上部電極配線33の大部分をAl配線(主配線36)で形成し、Alよりも電気伝導率が低いPt配線(下層金属配線37M)を中継配線41の部分に留めることができる。その結果、Z−検出上部電極配線33の平均電気伝導率の低下を抑制することができる。
【0067】
また、中継配線41上にダミー圧電体38が形成されている。そのため、図9Bに示す工程において圧電材料をエッチングするときに、中継配線41におけるダミー圧電体38直下の部分をエッチングガスから保護することができる。この保護により、中継配線41へのダメージを抑制し、中継配線41の厚さを維持することができる。その結果、中継配線41の内部抵抗の上昇を抑制することができる。
【0068】
また、図7に示すように、第2層間膜20上において、X−ブリッジ配線31およびZ−検出上部電極配線33により分断されたX−検出上部電極配線34の素子間配線43(主配線36)が、駆動圧電素子12および検出圧電素子13の下部電極19,25と同一層に形成された中継配線45を介して互いに電気的に接続されている。これにより、X−ブリッジ配線31およびZ−検出上部電極配線33に接触しないようにX−検出上部電極配線34の素子間配線43(主配線36)の導通を図ることができる。
【0069】
この場合にも、前述した製造コストの抑制、検出精度の向上、配線の平均電気伝導率の低下抑制、中継配線45の内部抵抗の上昇抑制といった効果を発現することができる。
とりわけ、中継配線45が、駆動圧電素子12の下部電極19および検出圧電素子13の下部電極25から分離されて形成されている。そのため、当該中継配線45を、検出圧電素子13の下部電極25から電気的に絶縁することができる。したがって、この実施形態のように、素子間配線43の接続対象を2つのX−検出素子Dの上部電極24Xとすることにより、2つのX−検出素子D間を並列に接続することができる。
【0070】
また、図3に示すように、第2層間膜20上において、X−ブリッジ配線31の分岐配線39により分断されたX−検出上部電極配線34のパッド配線44(主配線36)についても同様に、駆動圧電素子12および検出圧電素子13の下部電極19,25と同一層に形成された中継配線47を介して互いに電気的に接続されている。これにより、X−ブリッジ配線31の分岐配線39に接触しないようにX−検出上部電極配線34のパッド配線44(主配線36)の導通を図ることができる。
【0071】
この場合にも、前述した製造コストの抑制、検出精度の向上、配線の平均電気伝導率の低下抑制、中継配線47の内部抵抗の上昇抑制といった効果を発現することができる。
<中継配線の変形例>
図10〜図15は、それぞれ図7に示すビーム8の第1〜第6変形例を示す図である。
或る回路を形成する主配線36の中継配線は、前述の実施形態で説明した形態に限らず、他の形態でも構成することができる。なお、図10〜図15では、図1〜図8に示した符号のうち、変形例の説明に必要な符号のみを表している。
【0072】
図10に示すように、X−検出上部電極配線34の素子間配線43(主配線36)を迂回させる中継配線45の上に設けられたダミー圧電体38は、中継配線45のほぼ全面を覆っていてもよい。この場合、プラグ46は、ダミー圧電体38を貫通して中継配線45に接続されていてもよい。
また、図11に示すように、当該中継配線45上のダミー圧電体38が省略されていてもよい。
【0073】
図12は、X−検出上部電極配線34のパッド配線44と素子間配線43とが、X−ブリッジ配線31の主配線36に分断される態様を表している。
図12に示すように、中継配線は、Z−検出素子Dに対してビーム8の幅方向一方側のX−検出素子Dの下部電極25からX−ブリッジ配線31の主配線36を横切るように一体的に引き出された電極引出部49であってもよい。また、ダミー圧電体38は、X−検出素子Dの圧電体から当該電極引出部49の表面に沿って一体的に引き出された圧電体引出部50であってもよい。
【0074】
この構成では、中継配線(電極引出部49)とX−検出素子Dの下部電極25とが一体的に形成されているので、中継配線(電極引出部49)と当該下部電極25とを簡単かつ確実な構造で接続することができる。
また、パッド配線44と一方側のX−検出素子Dの上部電極24Xとを、第1プラグとしてのプラグ51を用いて接続し、素子間配線43と電極引出部49とを、第2プラグとしてのプラグ52を、圧電体引出部50を貫通させて接続し、さらに、素子間配線43のプラグ52とは反対側の端部の接続対象を他方側のX−検出素子Dの上部電極24Xとすることにより、電極パッド9に対して、一方側および他方側のX−検出素子D間を直列に接続することができる。
【0075】
また、図13に示すように、圧電体引出部50は、電極引出部49の端部を露出するように引き出されてよく、その場合、プラグ52は、当該圧電体引出部50を避けて電極引出部49に接続される。また、図14に示すように、電極引出部49上の圧電体引出部50が省略されていてもよい。
また、図15に示すように、X−検出上部電極配線34の素子間配線43(主配線36)を迂回させる中継配線は、駆動圧電素子12の上部電極18および検出圧電素子13の上部電極24X,24Zと同一層に形成され、かつ、これら上部電極18,24X,24Zから分離されて形成された上部金属層53により構成されていてもよい。この場合、素子間配線43と上部金属層53とは、プラグ54により接続されている。
【0076】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、MEMSセンサの一例として、ジャイロセンサを取り上げたが、本発明は、ジャイロセンサに限らず、MEMS技術により作製される加速度センサ、圧力センサなどの各種デバイスに適用することができる。
【0077】
また、前述の実施形態で説明した中継配線を採用した配線構造は、ビーム8に敷設された配線に限らず、フレーム10に敷設された配線に適用することもできる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 モーションセンサ
2 SOI基板
6 フレーム
7 錘
8 ビーム
9 電極パッド
10 中央柱状部
11 周囲柱状部
12 駆動圧電素子
13 検出圧電素子
17 (駆動圧電素子の)圧電体
18 (駆動圧電素子の)上部電極
19 (駆動圧電素子の)下部電極
20 第2層間膜
21 (SOI基板の)表面
22 (SOI基板の)裏面
23 (検出圧電素子の)圧電体
24X (X−検出素子の)上部電極
24Z (Z−検出素子の)上部電極
25 (検出圧電素子の)下部電極
31 X−ブリッジ配線
32 Z−ブリッジ配線
33 Z−検出上部電極配線
34 X−検出上部電極配線
36 主配線
37D 下層拡散配線
37M 下層金属配線
38 ダミー圧電体
39 (X−ブリッジ配線の)分岐配線
40 (Z−ブリッジ配線の)分岐配線
41 (Z−検出上部電極配線の)中継電極
42 プラグ
43 (X−検出上部電極配線の)素子間配線
44 (X−検出上部電極配線の)パッド配線
45 (素子間配線の)中継電極
46 プラグ
47 (パッド配線の)中継電極
48 プラグ
49 電極引出部
50 圧電体引出部
51 プラグ
52 プラグ
53 上部金属層
54 プラグ
X−抵抗素子
Z−抵抗素子
X−検出素子
Z−検出素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられ、誘電体と、この誘電体を挟んで対向する下部電極および上部電極とを有する容量素子と、
前記半導体基板上に積層され、前記容量素子を被覆する絶縁層と、
前記絶縁層上に形成され、第1配線および当該絶縁層上において前記第1配線により分断された第2配線を含む主配線と、
前記下部電極または前記上部電極と同一層に形成され、当該層において前記下部電極または前記上部電極の表面に沿う横方向に沿って前記第1配線を横切るように延びる中継配線とを含み、
前記絶縁層上において分断された前記第2配線は、前記中継配線を介して互いに電気的に接続されている、MEMSセンサ。
【請求項2】
前記半導体基板は、外力により変形可能な薄膜部および当該薄膜部を支持するフレームを有しており、
前記第1配線、前記第2配線および前記中継配線は、前記薄膜部上に敷設されている、請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項3】
前記容量素子は、前記薄膜部上に配置され、それぞれ前記誘電体が圧電体である第1圧電素子および第2圧電素子を含み、
前記薄膜部上の前記第2配線は、前記第1圧電素子と前記第2圧電素子とを電気的に接続する素子間配線と、当該素子間配線に電気的に接続されたパッド配線とを含む、請求項2に記載のMEMSセンサ。
【請求項4】
前記素子間配線が、前記絶縁層上において前記第1配線により分断されており、
前記中継配線が、前記第1圧電素子の前記下部電極および前記第2圧電素子の前記下部電極と同一層においてそれら下部電極のいずれからも分離され、前記横方向に沿って前記第1配線を横切るように形成された下部金属層からなり、
当該下部金属層と、分断された各前記素子間配線とを接続するプラグをさらに含む、請求項3に記載のMEMSセンサ。
【請求項5】
前記素子間配線がアルミニウムからなり、
前記下部金属層が白金からなる、請求項4に記載のMEMSセンサ。
【請求項6】
前記下部金属層上に形成され、前記第1圧電素子および前記第2圧電素子の前記圧電体と同一材料からなるダミー圧電体をさらに含む、請求項4または5に記載のMEMSセンサ。
【請求項7】
前記プラグが、前記ダミー圧電体を厚さ方向に貫通して前記下部金属層に接続されている、請求項6に記載のMEMSセンサ。
【請求項8】
前記ダミー圧電体から前記下部金属層が露出しており、
前記プラグが、前記ダミー圧電体を避けて前記下部金属層の前記露出した部分に接続されている、請求項6に記載のMEMSセンサ。
【請求項9】
前記パッド配線と前記素子間配線との間が、前記絶縁層上において前記第1配線により分断されており、
前記中継配線は、前記第1圧電素子の前記下部電極から前記第1配線を横切るように前記横方向に一体的に引き出された電極引出部を含み、
前記パッド配線と前記第1圧電素子の前記上部電極とを接続する第1プラグと、
前記素子間配線と前記電極引出部とを接続する第2プラグとをさらに含む、請求項3に記載のMEMSセンサ。
【請求項10】
前記第1圧電素子の前記圧電体から前記電極引出部の表面に沿って一体的に引き出された圧電体引出部をさらに含む、請求項9に記載のMEMSセンサ。
【請求項11】
前記第2プラグが、前記圧電体引出部を厚さ方向に貫通して前記電極引出部に接続されている、請求項10に記載のMEMSセンサ。
【請求項12】
前記圧電体引出部から前記電極引出部が露出しており、
前記第2プラグが、前記圧電体引出部を避けて前記電極引出部の前記露出した部分に接続されている、請求項10に記載のMEMSセンサ。
【請求項13】
前記素子間配線が、前記絶縁層上において前記第1配線により分断されており、
前記中継配線が、前記第1圧電素子の前記上部電極および前記第2圧電素子の前記上部電極と同一層においてそれら上部電極のいずれからも分離され、前記横方向に沿って前記第1配線を横切るように形成された上部金属層からなり、
当該上部金属層と、分断された各前記素子間配線とを接続するプラグをさらに含む、請求項3に記載のMEMSセンサ。
【請求項14】
前記素子間配線がアルミニウムからなり、
前記上部金属層がイリジウムからなる、請求項4に記載のMEMSセンサ。
【請求項15】
前記第1圧電素子および前記第2圧電素子は、前記薄膜部の変形を検出するために配置された検出用素子である、請求項3〜14のいずれか一項に記載のMEMSセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−83304(P2012−83304A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231576(P2010−231576)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】