説明

MEMSセンサ

【課題】シリコン基板と絶縁基板とを接合した時に形成される密閉空間部の圧力を調整することの可能なMEMSセンサを得る。
【解決手段】シリコン基板4と、シリコン基板4の上下両面4a、4bに接合される一対の絶縁基板2、3と、シリコン基板4と絶縁基板2、3とを接合した時に形成される密閉空間部6とを備えたMEMSセンサ1において、絶縁基板2、3またはシリコン基板4の露出した外表面3bに、密閉空間部6と連通する貫通孔7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、錘部と当該錘部を揺動自在に支持するばね部とが形成されたシリコン基板と、このシリコン基板の上下両面に接合される一対の絶縁基板と、を備えたMEMSセンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなMEMSセンサにあっては、シリコン基板と絶縁基板とを陽極接合により接合するとともに、シリコン基板と絶縁基板とを接合した時に、錘部と絶縁基板との間にギャップが形成されるようになっている。これにより錘部の動作性の確保が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−022018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のMEMSセンサにあっては、錘部と絶縁基板との間に形成されるギャップが、絶縁基板により囲まれた密閉空間部となっている。そのため、シリコン基板と絶縁基板との陽極接合時に、ギャップとなる密閉空間部の圧力を調整することが困難となるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、シリコン基板と絶縁基板とを接合した時に形成される密閉空間部の圧力を調整することの可能なMEMSセンサを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にあっては、シリコン基板と、前記シリコン基板の上下両面に接合される一対の絶縁基板と、前記シリコン基板と前記絶縁基板とを接合した時に形成される密閉空間部とを備えたMEMSセンサにおいて、前記絶縁基板またはシリコン基板の露出した外表面に、前記密閉空間部と連通する貫通孔を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のMEMSセンサによれば、絶縁基板またはシリコン基板の露出した外表面に密閉空間部と連通する貫通孔を設けたので、密閉空間部の圧力を調整することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態にかかる加速度センサの平面図である。
【図2】図2は、図1に示す加速度センサの断面図である。
【図3】図3は、図1のA−A線断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2実施形態にかかる加速度センサの平面図である。
【図5】図5は、図4に示す加速度センサの断面図である。
【図6】図6は、図5に示す加速度センサの貫通孔を封止材にて封止した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。以下では、MEMSセンサとして、静電容量式の加速度センサを例示する。なお、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0011】
[第1実施形態]
本実施形態の加速度センサ1は、図1〜図3に示すように、半導体素子ディバイスを形成したシリコン基板4と、このシリコン基板4の上下両面4a、4bにそれぞれ接合される一対のガラス基板(絶縁基板)2,3と、を備えている。そして、本実施形態では、このシリコン基板4と第1のガラス基板2および第2のガラス基板3とを陽極接合により接合するようにしている。
【0012】
シリコン基板4には、公知の半導体プロセスにより間隙5が形成されている。これによりシリコン基板4には、周縁部に形成される略矩形状の枠部41、固定電極体42、可動電極体となる錘部43および当該錘部43を揺動自在に支持するばね部44が形成されている。
【0013】
間隙5は、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)などにより垂直エッチング加工をすることで、間隙5の側壁面がシリコン基板4の表面と垂直となるように形成される。このようにして、垂直エッチング加工により形成された間隙5の側壁面同士は、互いに略平行に対向することになる。反応性イオンエッチングとしては、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を備えたエッチング装置によるICP加工を利用することができる。
【0014】
固定電極体42は、シリコン基板4のセンターラインYを中心として左右2箇所に設けられており、複数の櫛歯状固定電極42bの外側部が幹部42aによって連結されている。すなわち、複数の櫛歯状固定電極42bは、幹部42aから所定間隔をもって平行に突設されている。
【0015】
錘部43は、左右に配置された固定電極体42の間に配置されており、センターラインYに沿って配置される幹部43aと、この幹部43aから櫛歯状固定電極42bの延在方向と平行に延設される複数の櫛歯状可動電極43bを備えている。
【0016】
そして、複数の櫛歯状可動電極43bは、幹部43aから隣り合う2つの櫛歯状固定電極42b間に挿入されるように所定間隔をもって平行に突設されている。すなわち、櫛歯状固定電極42bと櫛歯状可動電極43bとは、それぞれが交互に配置されることになる。
【0017】
幹部43aの両端部には、上述したばね部44がそれぞれ連結されており、このばね部44を介して錘部43を支持する枠部41が錘部43および固定電極体42の周縁部に形成されている。
【0018】
各ばね部44は、連続する1本の細長い線状ばね44aを複数段のつづら折り状に折曲させた形状をしている。線状ばね44aの一端部44bは、幅方向に延びる線状ばね44aの略中央部に設けられており、枠部41の内壁部にそれぞれ連結されている。また、線状ばね44aの他端部44cは、線状ばね44aの略中央部に設けられ、錘部43の幹部43aにそれぞれ連結されている。
【0019】
このように、ばね部44を錘部43と枠部41に連結することで、ばね部44が枠部41に対して錘部43を弾性的に可動支持するバネ要素として機能する。
【0020】
これにより、本実施形態では、錘部43に対し、バネ要素としてのばね部44、ばね部44に接続された枠部41により支持される質量要素(マス)としての機能を与え、これらバネ要素と質量要素とによってバネ−マス系を構成している。そして、質量要素としての錘部43の位置変位による錘部43、固定電極体42間の静電容量値の変化を検出し、検出された静電容量値の変化に基づき加速度センサ1に加えられた加速度や角加速度(物理量)を検知するようになっている。
【0021】
具体的には、この静電容量値の変化は、錘部43、固定電極体42にそれぞれ形成された複数の櫛歯状可動電極43b、櫛歯状固定電極42bからなる検出部49a,49bによって検出される。
【0022】
例えば、図1に示すセンターラインY方向に加速度が与えられると、櫛歯状可動電極43bがセンターラインY方向に変位する。そして、検出部49aの櫛歯状可動電極43b、櫛歯状固定電極42bで検出される静電容量値と、検出部49bの櫛歯状可動電極43b、櫛歯状固定電極42bで検出される静電容量値とによって、センターラインY方向の加速度を検出することができる。
【0023】
また、図2に示すように、錘部43には櫛歯状可動電極43cに電気的に接続される第1の導電層46aが設けられている。さらに、図2中46bは、左側の固定電極体42の櫛歯状固定電極42bに電気的に接続される第2の導電層であり、46cは、右側の固定電極体42の櫛歯状固定電極42bに電気的に接続される第3の導電層である。
【0024】
そして、第1のガラス基板2の第1〜第3の導電層46a〜46cに対応する部位には、サンドブラスト加工等によってスルーホール21が形成されている。そして、シリコン基板4上に設けられた第1〜第3の導電層46a〜46cを各スルーホール21の奥にそれぞれ露出させている。そして、第1のガラス基板2の表面2a上から各スルーホール21の内周面上にかけて電気的に接続された一連の導電性薄膜(図示せず)を成膜するようにして、各導電性薄膜から固定電極体42および錘部43の電位を検出できるようにしている。なお、各導電性薄膜は、第1のガラス基板2の表面2a上に互いに接触しないように形成される。また、第1のガラス基板2の表面2a上は、樹脂層(図示せず)によって被覆(モールド成形)するのが好適である。
【0025】
また、図3に示す図1のA−A線断面図のように、シリコン基板4と第1のガラス基板2および第2のガラス基板3との接合面にはギャップ47および31がそれぞれ形成されている。すなわち、シリコン基板4の少なくとも錘部43と第1および第2のガラス基板2、3との間にギャップ47、31が形成されており、これにより、シリコン基板4各部の絶縁性や錘部(可動電極)43の動作性の確保が図られている。
【0026】
なお、本実施形態では、シリコン基板4の上面4aを、錘部43およびばね部44の形成領域およびその周縁部を含めて凹設することで、錘部43の上方への変位を許容するギャップ47を形成している。また、第2のガラス基板3の上面3aを、錘部43の形成領域およびその周縁部を含めて凹設することで、錘部43の下方への変位を許容するギャップ31を形成している。
【0027】
そして、第1のガラス基板2とシリコン基板4とを陽極接合するとともに、シリコン基板4と第2のガラス基板3とを陽極接合することにより、三層構造の加速度センサ1が形成される。このとき、第1のガラス基板2が接合されたシリコン基板4と第2のガラス基板3とを接合することによって、ギャップ47および31が一対のガラス基板2、3により囲われた密閉空間部6となる。このように、密閉空間部6が形成されてしまうと当該空間部6の圧力を調整することが困難となり、陽極接合時に密閉空間部6の圧力が高まってしまう。
【0028】
そこで、本実施形態では、第2のガラス基板3の外表面となる下面3bに、密閉空間部6と連通する貫通孔7を設けるようにしている。なお、この貫通孔7の形成部位は、一対のガラス基板2、3またはシリコン基板4の露出した外表面であればどこに設けてもよい。すなわち、本実施形態では上記外表面として、第1のガラス基板2の上面2aおよび側面2c、2d、第2のガラス基板3の側面3c,3d、シリコン基板4の側面4c,4dを含むものとする。第1のガラス基板2の側面2c,2dや第2のガラス基板3の側面3c,3dに貫通孔7を形成する場合には、密閉空間部6に向けて略L字状に折れ曲がるようにして開口を形成すればよい。
【0029】
また、本実施形態では、このような貫通孔7が形成された第2のガラス基板3を、第1のガラス基板2が接合されたシリコン基板4に接合する際に、真空中で陽極接合するようにしている。
【0030】
このような構成により、陽極接合時にシリコン基板4の錘部43がガラス基板2に固着してしまう所謂スティッキングを抑制することができるという利点がある。すなわち、真空でない状態で陽極接合を行うと、電圧を印加した際の多大な静電吸引力により錘部43がガラス基板2に引きつけられてしまうが、真空中で陽極接合を行うとその静電吸引力を低減することができる。
【0031】
その一方で、真空中で陽極接合を行う構成では、内部の密閉空間部6が真空状態のままであるとエアダンピング効果がなくなり、一定の加速度が入力された際に密閉空間部に空気が存在するセンサと比べて、錘部が余分に動き過ぎてしまうという問題がある。
【0032】
そこで、本実施形態では、シリコン基板4とガラス基板2、3との陽極接合後に、第2のガラス基板3に形成された貫通孔7を介して密閉空間部6に空気を充填するようにしている。その後、図3に示すように、本実施形態では貫通孔7を封止する封止部としてのパッキン材8を用いることで、貫通孔7を封止する。これにより、加速度センサ1の使用時に外部から液体や異物などが浸入してしまうのを防止することができる。なお、この封止部はパッキン材8に限定されず、例えば貫通孔7内に封止材を充填したり、貫通孔7を外側からシートで覆うようにしてもよい。
【0033】
以上の構成により、本実施形態の加速度センサ1によれば、ガラス基板(絶縁基板)2、3またはシリコン基板4の露出した外表面としての第2のガラス基板3の下面3bに、密閉空間部6と連通する貫通孔7を設けている。そのため、密閉空間部6の圧力を調整することができるようになる。これにより、シリコン基板4とガラス基板2、3との陽極接合時に、密閉空間部6の圧力が高まってしまうのを抑制でき、錘部43やばね部44などが損傷してしまうのを抑制できるという利点がある。
【0034】
また、本実施形態では、シリコン基板4とガラス基板2、3とを真空中で陽極接合するようにしている。そのため、陽極接合時にシリコン基板4の錘部43がガラス基板2に固着してしまう所謂スティッキングを抑制することができるという利点がある。その一方で、第2のガラス基板3の下面3bには貫通孔7が形成されているので、陽極接合後に貫通孔7を介して密閉空間部6に空気を導入することができる。これにより、密閉空間部6が真空状態のままとなることを阻止して、エアダンピング効果が得られなくなってしまうのを防止できる。
【0035】
さらに、本実施形態では、第2のガラス基板3の下面3bに形成された貫通孔7を封止するパッキン材(封止部)8を備えるので、加速度センサ1の使用時に外部から液体や異物などが密閉空間部6に浸入してしまうのを防止できる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。図4〜図6は、本実施形態にかかる加速度センサ100を示した図である。上記第1実施形態に示す加速度センサ1が錘部の水平変位によって加速度を検出するのに対して、本実施形態の加速度センサ100は錘部の上下変位によって加速度を検出するようになっている。
【0037】
本実施形態の加速度センサ100は、上記第1実施形態と同様に、半導体素子ディバイスを形成したシリコン基板104と、このシリコン基板104の上下両面104a、104bに接合される一対のガラス基板(絶縁基板)102,103と、を備えている。そして、このシリコン基板104と第1のガラス基板102および第2のガラス基板103とを陽極接合により接合するようにしている。また、第1のガラス基板102には、当該第1のガラス基板102の下面に錘部105の設置領域に対応した固定電極121(図5参照)が設けられている。なお、本実施形態では、固定電極121は第1のガラス基板102のシリコン基板104に形成したギャップ107と対向する領域に形成されている。
【0038】
シリコン基板104は略矩形状に形成されており、このシリコン基板104には、第1のガラス基板102の厚み方向(図5中上下方向)に変位可能な錘部105が設けられている。さらに、本実施形態では、錘部105が可動電極を構成している。この錘部105は、当該錘部105を囲むように配置された略枠状の支持部116にばね部106としての2本のビーム161を介して支持されている。なお、各ビーム161は、厚み方向に可撓性を有するように厚み寸法を錘部105および支持部116のそれぞれの厚みよりも十分に小さく設定している。すなわち、ビーム161は、支持部116に対して錘部105を弾性的に可動支持するバネ要素として機能している。
【0039】
このように、本実施形態では、錘部105に、バネ要素としてのビーム161によって可動支持される質量要素としての機能を与え、これらバネ要素と質量要素とによってバネ−マス系を構成している。そして、質量要素としての錘部105の変位から、その加速度や角加速度を得ることができるようになっている。
【0040】
そして、図5に示すように、シリコン基板104と第1のガラス基板102および第2のガラス基板103との接合面にはギャップ107および131がそれぞれ形成されており、シリコン基板104各部の絶縁性や錘部105の動作性の確保が図られている。また、固定電極121と錘部105との間のギャップ107を検知ギャップとして、ギャップ107を介して相互に対向する固定電極121と錘部105との間の静電容量を検出するようになっている。なお、本実施形態では、アルカリ性湿式異方性エッチング液(例えば、KOH、TMAH、EDP水溶液等)を用いたシリコン異方性エッチングによりシリコン基板104の一部を除去することでギャップ107を形成している。
【0041】
また、錘部105の周囲にはビーム161の厚み方向に貫通した2つのスリット117が形成されており、各ビーム161は、これら2つのスリット117により幅寸法が規定されている。
【0042】
このスリット117は、反応性イオンエッチングなどにより垂直エッチング加工をすることで、スリット117の側壁面をシリコン基板104の表面と垂直となるように形成される。このようにして、垂直エッチング加工により形成されたスリット117の側壁面同士は、互いに略平行に対向することになる。反応性イオンエッチングとしては、例えば、誘導結合型プラズマを備えたエッチング装置によるICP加工を利用することができる。
【0043】
本実施形態では、単結晶のシリコン基板(Si基板)に公知のエッチング加工を施すことで錘部105と各ビーム161と支持部116とが形成されている。そして、錘部105が可動電極を構成し、錘部105の変位に応じた可動電極と固定電極121との間の静電容量値の変化として加速度や角加速度(物理量)を検知するようになっている。このとき、錘部105は、略四角錘台状に形成されており、固定電極121との対向面105aが略平面になっている。なお、本実施形態では、錘部105が可動電極を構成しているが、錘部105における固定電極121との対向面105aに可動電極を別途形成するようにしてもよい。
【0044】
また、第1のガラス基板102の表面102a上に、第1の導電性薄膜111を成膜し、固定電極121の電位を取得する配線パターンとして用いるとともに、第2の導電性薄膜(図示せず)を成膜し、錘部105の電位を取得する配線パターンとして用いている。
【0045】
本実施形態では、図4に示すように、第1のガラス基板102のギャップ107は、錘部105が形成される略枠状の部分から支持部116の一部まで延在させた延在部107aを有している。そして、第1のガラス基板102の延在部107aに対応する部位に、サンドブラスト加工等によって第1のスルーホール122を形成するとともに、第1のガラス基板102のギャップ107から外れた部位(即ち、平面視で第1のガラス基板102の固定電極121が形成されていない部位)に、第2のスルーホール123を形成している。そして、シリコン基板104の上面の一部を当該第1のスルーホール122および第2のスルーホール123の奥にそれぞれ露出させ、第1のガラス基板102の表面102a上から第1のスルーホール122および第2のスルーホール123の内周面上および第1のガラス基板102の表面102a上にかけて電気的に接続された一連の第1の導電性薄膜111および第2の導電性薄膜(図示せず)を成膜するようにして、当該第1の導電性薄膜111および第2の導電性薄膜(図示せず)から固定電極121および錘部105の電位を検出できるようにしている。なお、第1の導電性薄膜111および第2の導電性薄膜(図示せず)は、互いに接触しないように形成されている。
【0046】
また、図5中、109は各導電性薄膜に導通される導電層であり、110はその導電層109とシリコン基板104とを絶縁する絶縁層である。そして、第1のスルーホール122に対応した導電層109は固定電極121に短絡されるとともに、第2のスルーホール123に対応した導電層109はシリコン基板104の支持部116に短絡されている。
【0047】
ところで、本実施形態では、上述したように、シリコン基板104にギャップ107を形成するとともにシリコン基板104の厚み方向に貫通した2つのスリット117を形成することで、錘部105を支持部116に2本のビーム161を介して支持させている。これにより、錘部105、ビーム161および支持部116は一体に形成されている。したがって、錘部105、ビーム161および支持部116の電位はほぼ等電位とみなすことができる。なお、第1のガラス基板102の表面102a上は、樹脂層(図示せず)によって被覆(モールド成形)するのが好適である。
【0048】
ここで、本実施形態では、ガラス基板102、103またはシリコン基板104の露出した外表面としてのシリコン基板104の側面104dに、ギャップ107および131により形成される密閉空間部600と連通する貫通孔700を設けている。
【0049】
そして、本実施形態にあっても、このような貫通孔700が形成されたシリコン基板104と第1のガラス基板102および第2のガラス基板103とを接合する際に、真空中で陽極接合するようにしている。そして、シリコン基板104とガラス基板102、103との陽極接合後に、貫通孔700を介して密閉空間部600に空気を充填し、その後、図8に示すように、貫通孔700に封止部としての封止材800を充填することで、貫通孔700を封止する。これにより、加速度センサ100の使用時に外部から液体や異物などが浸入してしまうのを防止することができる。なお、上記第1実施形態のように、パッキン材を用いて貫通孔700を封止することも可能である。また、貫通孔700を外側からシートで覆うようにしてもよい。
【0050】
以上の構成により、本実施形態の加速度センサ100によれば、ガラス基板(絶縁基板)102、103またはシリコン基板104の露出した外表面としてのシリコン基板104の側面104dに、密閉空間部600と連通する貫通孔700を設けている。そのため、密閉空間部600の圧力を調整することができるようになる。これにより、シリコン基板104とガラス基板102、103との陽極接合時に、密閉空間部600の圧力が高まってしまうのを抑制でき、錘部105やばね部106などが損傷してしまうのを抑制できる。
【0051】
また、シリコン基板104とガラス基板102、103とを真空中で陽極接合するようにしているので、陽極接合時にシリコン基板104の錘部105がガラス基板102に固着してしまうのを抑制することができる。その一方で、シリコン基板104の側面104dには貫通孔700が形成されているので、陽極接合後に貫通孔700を介して密閉空間部600に空気を導入することができる。これにより、密閉空間部600が真空状態のままとなることを阻止して、エアダンピング効果が得られなくなってしまうのを防止できる。
【0052】
さらに、シリコン基板104の側面104dに形成された貫通孔700を封止する封止材(封止部)800を備えるので、加速度センサ100の使用時に外部から液体や異物などが密閉空間部600に浸入してしまうのを防止できる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、MEMSセンサとして静電容量式の加速度センサを例示したが、これに限定されず、その他のMEMSセンサ、例えば角速度センサや振動センサ等にあっても本発明を適用することができる。
【0055】
また、錘部、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
1、100 加速度センサ(MEMSセンサ)
2、102 第1のガラス基板(絶縁基板)
3、103 第2のガラス基板(絶縁基板)
3b 下面(外表面)
4、104 シリコン基板
4d、104d 側面(外表面)
30、105 錘部
44、106 ばね部
6、600 密閉空間部
7、700 貫通孔
8 パッキン材(封止部)
800 封止材(封止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、前記シリコン基板の上下両面に接合される一対の絶縁基板と、前記シリコン基板と前記絶縁基板とを接合した時に形成される密閉空間部とを備えたMEMSセンサにおいて、
前記絶縁基板またはシリコン基板の露出した外表面に、前記密閉空間部と連通する貫通孔を設けたことを特徴とするMEMSセンサ。
【請求項2】
前記シリコン基板と前記絶縁基板とを真空中で陽極接合するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のMEMSセンサ。
【請求項3】
前記貫通孔を封止する封止部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMEMSセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−24762(P2013−24762A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160647(P2011−160647)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】