説明

MEMSデバイスの製造方法およびMEMSデバイス

【課題】 基板に沿った方向に相対的に移動可能な一対の対向電極を有するMEMSデバイスにおいて、他方の対向電極の下端部を削ることなく、一方の対向電極の下端部を短く削ることが可能な技術を提供する。
【解決手段】 本発明の製造方法は、半導体ウェハを準備する工程と、半導体ウェハの下側表面から第1導電体層と絶縁体層を貫通して第2導電体層に達する第1溝部を形成する工程と、前記第1溝部に導電体からなる保護部を形成する工程と、半導体ウェハの上側表面にレジストパターンを形成する工程と、反応性イオンエッチング法により第2導電体層に一対の対向電極を形成する工程と、反応性イオンエッチング法を継続して一方の対向電極の下端部を削る工程と、絶縁体層を選択的に除去する工程を備えている。その製造方法では、前記第1溝部は一対の対向電極が対向する方向に関して他方の対向電極の両側面の外側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、基板に沿った方向に相対的に移動可能な一対の対向電極を有するMEMSデバイスの製造方法およびMEMSデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路作製技術を利用して3次元構造を備えるMEMSデバイスを製造する技術が開発されており、圧力センサ、加速度センサ、ジャイロスコープ、光偏向装置、RFスイッチ、可変容量キャパシタ等の各種デバイスが実現されている。半導体集積回路作製技術で3次元構造を実現するために、犠牲層である絶縁体層を含む積層基板を選択的かつ局所的にエッチングする技術が利用される。本明細書でいうMEMSデバイスとは、成膜技術とエッチング技術に代表される半導体集積回路作製技術を利用し、犠牲層である絶縁体層を含む積層基板を選択的かつ局所的にエッチングすることによって実現された3次元構造を備える装置をいう。
【0003】
特許文献1には、基板に沿った方向に相対的に移動可能な一対の対向電極を有するMEMSデバイスが開示されている。このMEMSデバイスでは、一方の対向電極の上端部が、他方の対向電極の上端部に比べて、高さが低くなるように加工されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−294455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一対の対向電極のうち、一方の対向電極の下端部を他方の対向電極の下端部よりも高さが高くなるように加工したい場合がある。特許文献1の技術では、一方の対向電極の上端部を他方の対向電極の上端部よりも高さが低くなるように加工しているものの、下端部については、一方の対向電極と他方の対向電極を同じ高さとしている。一方の対向電極の下端部を他方の対向電極の下端部よりも高さが高くなるように加工することが可能な技術が期待されている。
【0006】
本明細書では、上記の課題を解決する技術を提供する。本明細書では、基板に沿った方向に相対的に移動可能な一対の対向電極を有するMEMSデバイスにおいて、他方の対向電極の下端部を削ることなく、一方の対向電極の下端部を削ることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、基板に沿った方向に相対的に移動可能な一対の対向電極を有するMEMSデバイスの製造方法を開示する。その製造方法は、基板となる第1導電体層の上に絶縁体層が積層し絶縁体層の上に第2導電体層が積層した半導体ウェハを準備する工程と、半導体ウェハの下側表面から第1導電体層と絶縁体層を貫通して第2導電体層に達する第1溝部を形成する工程と、前記第1溝部に導電体からなる保護部を形成する工程と、半導体ウェハの上側表面に一対の対向電極の形状に対応したレジストパターンを形成する工程と、反応性イオンエッチング法により半導体ウェハの上側表面から第2導電体層を選択的にエッチングして第2導電体層に一対の対向電極を形成する工程と、反応性イオンエッチング法を継続し絶縁体層に蓄積した電荷によって側方に弾かれるイオンを利用して一方の対向電極の下端部を削る工程と、絶縁体層を選択的に除去する工程を備えている。その製造方法では、前記第1溝部は一対の対向電極が対向する方向に関して他方の対向電極の両側面の外側に配置されている。
【0008】
上記の製造方法では、反応性イオンエッチング法によって第2導電体層を選択的にエッチングすることで、第2導電体層に一対の対向電極が形成される。この際に、第2導電体層が除去された箇所では、絶縁体層が露出するとともに、第1溝部を利用して形成された導電体からなる保護部も露出する。その後、さらに反応性イオンエッチング法を継続すると、絶縁体層の表面に電荷が蓄積し、その電荷によって照射されたイオンが側方に弾かれて、残存している第2導電体層の下端部が側面から削られる。この際に、導電体からなる保護部が露出している箇所では、表面に電荷が蓄積しないので、照射されたイオンはほとんど側方に弾かれることがない。すなわち、反応性イオンエッチング法を継続する際に、第1溝部に形成された保護部は、その上方の第2導電体層の下端部を保護する役割を果たす。この保護部は、他方の対向電極の両側面の外側に配置されているから、他方の対向電極の下端部はほとんど削られることなく、一方の対向電極の下端部のみを側面から削ることができる。
【0009】
上記の製造方法では、前記第1導電体層が単結晶シリコンから構成されており、前記絶縁体層が酸化シリコンから構成されており、前記第2導電体層が単結晶シリコンから構成されており、前記保護部が金属から構成されていてもよい。
【0010】
金属はシリコンに比べてエッチングレートが遅いから、上記の場合には、反応性イオンエッチング法を継続して一方の対向電極の下端部を削る際に、保護部が消失してしまうことがない。他方の対向電極の下端部を確実に保護することができる。
【0011】
あるいは、上記の製造方法では、前記第1導電体層が単結晶シリコンから構成されており、前記絶縁体層が酸化シリコンから構成されており、前記第2導電体層が単結晶シリコンから構成されており、前記保護部がポリシリコンから構成されていてもよい。
【0012】
ポリシリコンは溝部への成膜や充填を容易に行うことができるから、上記の場合には、第1溝部への保護部の形成を容易に行うことができる。また、ポリシリコンと単結晶シリコンは熱膨張係数の差が小さいから、製造されるMEMSデバイスの基板における反りの発生を抑制することができる。
【0013】
上記の製造方法は、反応性イオンエッチング法を行う前に、半導体ウェハの下側表面から第1導電体層と絶縁体層を貫通して第2導電体層に達する第2溝部を形成する工程と、前記第2溝部に絶縁体層よりも誘電率の高い絶縁体からなる誘導部を形成する工程をさらに備えており、前記第2溝部は、一対の対向電極が対向する方向に関して、前記一方の対向電極の両側面の外側に配置されていることが好ましい。
【0014】
上記の製造方法では、反応性イオンエッチング法を継続する際に、一方の対向電極の両側面の外側下方には誘導部が露出しており、他方の対向電極の両側面の外側下方には保護部が露出している。誘導部は絶縁体層よりも誘電率の高い絶縁体から構成されているので、表面に多くの電荷が蓄積し、照射されたイオンが側方に弾かれやすくなる。これによって、一方の対向電極の下端部が速やかに削られる。製造工程の迅速化を図ることができる。
【0015】
上記の製造方法では、前記第1導電体層が単結晶シリコンから構成されており、前記絶縁体層が酸化シリコンから構成されており、前記第2導電体層が単結晶シリコンから構成されており、前記誘導部が窒化シリコンから構成されていてもよい。
【0016】
窒化シリコンは溝部への成膜や充填を容易に行うことができるから、上記の場合には、第2溝部への誘導部の形成を容易に行うことができる。
【0017】
本明細書は、第1導電体層に形成された基板と、絶縁体層を挟んで第1導電体層に積層された第2導電体層に形成されており基板に沿った方向に相対的に移動可能な一対の対向電極を有するMEMSデバイスを開示する。そのMEMSデバイスでは、一方の対向電極の下端部が側面から削られており、基板に垂直な方向に基板を貫通する第1溝部が形成されており、一対の対向電極が対向する方向に関して、他方の対向電極の両側面の外側に、第1溝部が配置されている。
【0018】
上記のMEMSデバイスは、製造時に、第1溝部に導電体からなる保護部を形成しておいて、反応性イオンエッチング法によって第2導電体層に一対の対向電極を形成した後も、引き続き反応性イオンエッチング法を継続することによって、容易に製造することができる。
【0019】
上記のMEMSデバイスでは、第1溝部に導電体からなる保護部が形成されたまま残されていることがある。あるいは、第1溝部に形成された保護部が、最終的に除去されていることがある。
【0020】
上記のMEMSデバイスでは、基板に垂直な方向に基板を貫通する第2溝部が形成されており、一対の対向電極が対向する方向に関して、一方の対向電極の両側面の外側に、第2溝部が配置されていることが好ましい。
【0021】
上記のMEMSデバイスは、製造時に、第2溝部に絶縁体層よりも誘電率の高い絶縁体からなる誘導部を形成しておくことで、反応性イオンエッチング法を継続する際に、一方の対向電極の下端部を速やかに削ることができる。製造工程の迅速化を図ることができる。
【0022】
上記のMEMSデバイスでは、第2溝部に絶縁体層よりも誘電率の高い絶縁体からなる誘導部が形成されたまま残されていることがある。あるいは、第2溝部に形成された誘導部が、最終的に除去されていることがある。
【発明の効果】
【0023】
本明細書が開示する技術によれば、基板に沿った方向に相対的に移動可能な一対の対向電極を有するMEMSデバイスにおいて、他方の対向電極の下端部を削ることなく、一方の対向電極の下端部を削ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1の加速度センサ10、および実施例2の加速度センサ50の平面図である。
【図2】実施例1の加速度センサ10について図1のII−II断面で見た縦断面図である。
【図3】実施例1の加速度センサ10、および実施例2の加速度センサ50について図1のIII−III断面で見た縦断面図である。
【図4】(A)は実施例1の加速度センサ10で、固定電極114に対して可動電極116が下方に変位した状態を示す図であり、(B)は実施例1の加速度センサ10で、固定電極114に対して可動電極116が上方に変位した状態を示す図である。
【図5】実施例1に係る加速度センサ10の製造工程を示す図である。
【図6】実施例1に係る加速度センサ10の製造工程を示す図である。
【図7】実施例1に係る加速度センサ10の製造工程を示す図である。
【図8】実施例1に係る加速度センサ10の製造工程を示す図である。
【図9】実施例1に係る加速度センサ10の製造工程を示す図である。
【図10】実施例1に係る加速度センサ10の製造工程を示す図である。
【図11】実施例1に係る加速度センサ10の製造工程を示す図である。
【図12】実施例1に係る加速度センサ10における保護部208の平面的な配置の例を示す図である。
【図13】実施例1に係る加速度センサ10における保護部208の平面的な配置の他の例を示す図である。
【図14】実施例1の変形例に係る加速度センサ10における保護部212の構成を示す図である。
【図15】実施例1の変形例に係る加速度センサ10における保護部214の構成を示す図である。
【図16】実施例1の変形例に係る加速度センサ10における保護部208の構成を示す図である。
【図17】実施例1の変形例に係る加速度センサ10における保護部215の構成を示す図である。
【図18】実施例2の加速度センサ50について図1のII−II断面で見た縦断面図である。
【図19】実施例2に係る加速度センサ50の製造工程を示す図である。
【図20】実施例2に係る加速度センサ50の製造工程を示す図である。
【図21】実施例2に係る加速度センサ50の製造工程を示す図である。
【図22】実施例2に係る加速度センサ50の製造工程を示す図である。
【図23】実施例2に係る加速度センサ50の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
好ましい実施例の特徴を最初に列記する。
(特徴1)一方の対向電極は可動電極であり、他方の対向電極を固定電極である。
【実施例1】
【0026】
以下では図1−図3を参照しながら、実施例1に係る加速度センサ10の構造について説明する。図2、図3に示すように、加速度センサ10は、導電体からなる第1層20と、絶縁体からなる第2層30と、導電体からなる第3層40の積層構造を有している。具体的には、本実施例の加速度センサ10では、第1層20は不純物を添加した単結晶シリコンからなり、第2層30は酸化シリコンからなり、第3層30は不純物を添加した単結晶シリコンからなる、いわゆるSOI(Silicon on Insulator)構造を有している。
【0027】
図1−図3に示すように、加速度センサ10は、支持基板100と、プルーフマス102と、支持梁104と、枠状支持部106を備えている。支持基板100は第1層20に形成されている。プルーフマス102、支持梁104、枠状支持部106は第3層40に形成されている。枠状支持部106は、第2層30に形成された絶縁支持部108を介して、支持基板100に対して固定されている。支持梁104は枠状支持部106とプルーフマス102の間を連結している。プルーフマス102は、矩形の平板形状に形成されている。プルーフマス102は、支持基板100から間隙を隔てて、支持基板100に対して略平行となるように、支持梁104によって支持されている。支持梁104は、Y方向およびZ方向についての曲げ剛性およびせん断剛性が低くなるように、細長い形状に形成されている。従って、例えばプルーフマス102にY方向の慣性力が作用すると、支持梁104がY方向に撓んで、プルーフマス102は支持基板100に対してY方向に相対変位する。また、プルーフマス102にZ方向の慣性力が作用すると、支持梁104がZ方向に撓んで、プルーフマス102は支持基板100に対してZ方向に相対変位する。このときの支持梁104の撓み量は、プルーフマス102に作用する慣性力の大きさに応じたものとなる。言い換えると、支持基板100に対するプルーフマス102の相対変位量は、プルーフマス102に作用する加速度の大きさに応じたものとなる。従って、支持基板100に対するプルーフマス102の変位量を検出することで、加速度センサ10に作用している加速度を検出することができる。
【0028】
加速度センサ10は、Y方向検出部110と、Z方向検出部124を備えている。Y方向検出部110は、固定電極支持部112と、固定電極支持部112から伸びる櫛歯状の固定電極114と、プルーフマス102から伸びる櫛歯状の可動電極116を備えている。固定電極支持部112、固定電極114および可動電極116は、第3層40に形成されている。固定電極支持部112は、第2層30に形成された絶縁支持部113を介して、支持基板100に対して固定されている。固定電極114と可動電極116は、Y方向に関して互いに対向するように配置されている。固定電極114と可動電極116の間には、両者の対向面積と距離に応じた静電容量が構成される。固定電極114に対して可動電極116がY方向に変位すると、固定電極114と可動電極116の間のY方向の距離が変化し、それに応じて固定電極114と可動電極116の間の静電容量の大きさが変化する。この静電容量の変化を検出することで、プルーフマス102の支持基板100に対するY方向の変位量を検出することができる。なお、本実施例の加速度センサ10では、プルーフマス102に対して一方側(例えば図1の上側)に配置されたY方向検出部110と、他方側(例えば図1の下側)に配置されたY方向検出部110の出力を組み合わせることで、製造公差等に起因する容量誤差を補正することができる。
【0029】
図2、図3に示すように、Z方向検出部124は、固定電極としての役割を果たす支持基板100と、可動電極としての役割を果たすプルーフマス102から構成されている。支持基板100とプルーフマス102の間には、両者の対向面積と距離に応じた静電容量が構成される。支持基板100に対してプルーフマス102がZ方向に変位すると、支持基板100とプルーフマス102の間の静電容量の大きさが変化する。この静電容量の変化を検出することで、プルーフマス102の支持基板100に対するZ方向の変位量を検出することができる。
【0030】
本実施例の加速度センサ10では、プルーフマス102と、支持梁104と、枠状支持部106と、可動電極116が、第3層40の単結晶シリコンをトリミングすることで、継ぎ目無く一体的に形成されている。従って、プルーフマス102と、支持梁104と、枠状支持部106と、可動電極116は、互いに同電位に保たれている。
【0031】
加速度センサ10は、枠状支持部106の電位(Z方向検出部124の可動電極であるプルーフマス102の電位でもあり、Y方向検出部110の可動電極116の電位でもある)を検出する第1表面電極118と、支持基板100の電位(すなわち、Z方向検出部124の固定電極の電位)を検出する第2表面電極120と、Y方向検出部110の固定電極114の電位を検出する第3表面電極122を備えている。これらの表面電極からの出力に基づいて、図示しない演算回路で演算処理を行うことで、加速度センサ10に作用するY方向およびZ方向の加速度をそれぞれ検出することができる。
【0032】
図2に示すように、本実施例の加速度センサ10では、可動電極116の上端が固定電極114の上端よりも低くなり、可動電極116の下端は固定電極114の下端よりも高くなるように、Y方向検出部110が形成されている。従って、Z方向に関して、プルーフマス102が支持基板100に近づく方向に相対変位した場合でも、図4の(A)に示すように、可動電極116と固定電極114の対向面積が変化しない。また、プルーフマス102が支持基板100から遠ざかる方向に相対変位した場合でも、図4の(B)に示すように、可動電極116と固定電極114の対向面積が変化しない。従って、Y方向検出部110での検出結果に、プルーフマス102のZ方向の変位が影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0033】
また、本実施例の加速度センサ10では、可動電極116の下端は固定電極114の下端よりも高くなるように形成されているので、支持基板100と可動電極116の間の距離が確保され、支持基板100と可動電極116の間の寄生容量が小さく抑えられている。特に、図4の(A)に示すように、プルーフマス102が支持基板100に対して沈み込んだ場合でも、支持基板100と可動電極116の間の距離が確保され、支持基板100と可動電極116の間の寄生容量が小さく抑えられている。本実施例の加速度センサ10によれば、支持基板100と可動電極116の間の寄生容量が常に小さく抑えられ、この寄生容量が加速度センサ10の検出値に及ぼす影響を抑制することができる。
【0034】
また、本実施例の加速度センサ10では、可動電極116は下端に近づくにつれて幅が狭くなるように形成されているものの、固定電極114については上端から下端まで幅が一定となるように形成されている。従って、可動電極116が固定電極114に対してZ方向に変位した場合であっても、可動電極116と固定電極114の間の距離が変化しない。可動電極116と固定電極114の間の容量の変動を抑制することができる。
【0035】
以下では図5−図11を参照しながら、本実施例の加速度センサ10の製造方法について説明する。図5−図11は、図1のII−II線断面、すなわち、図2の断面に相当する。
【0036】
まず、図5に示すように、不純物を添加した単結晶シリコンからなる第1層20と、酸化シリコンからなる第2層30と、不純物を添加した単結晶シリコンからなる第3層40の積層構造を有するSOIウェハ202を用意した後、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching; RIE)によって、第3層40の表面に、浅く広い溝部204を形成する。浅く広い溝部204の位置は、製造される加速度センサ10の可動電極116の位置に対応しており、浅く広い溝部204の深さは、可動電極116の上端の高さに対応している。なお、第1層20は、製造される加速度センサ10の支持基板100に相当する。
【0037】
次いで、図6に示すように、ディープRIE法によって、SOIウェハ202の背面側から、第1層20に、深く細い溝部206を形成する。深く細い溝部206は、第1層20を貫通して、第2層30との界面まで到達させる。深く細い溝部206は、製造される加速度センサ10の固定電極114の両側に配置されるように、その位置が設定されている。
【0038】
次いで、図7に示すように、酸化膜RIE法によって、深く細い溝部206を延伸させて、第2層30を貫通して第3層40との界面まで到達させる。
【0039】
次いで、図8に示すように、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition; CVD)法によって、深く細い溝部206に、金属を充填し、保護部208を形成する。保護部208を形成する金属としては、例えばアルミや銅などを用いることができる。
【0040】
次いで、図9に示すように、第3層40の表面にレジストパターン210を形成して、ディープRIE法によって、第3層40をトリミングする。これによって、第3層40に、プルーフマス102、支持梁104、枠状支持部106、固定電極支持部112、固定電極114、可動電極116が形成される。
【0041】
次いで、図10に示すように、ディープRIE法をそのまま継続(オーバーエッチング)して、可動電極116の下端部を除去する。ディープRIE法によって第3層40をエッチングして第2層30が露出した後、さらにディープRIE法を継続すると、露出した第2層30の表面に電荷が蓄積していく。第2層30の表面に蓄積された電荷によって、照射されたイオンが側方に弾かれて、可動電極116の下端部が側面から削られる。本実施例では、可動電極116の下端の高さが所定の高さになるまで、オーバーエッチングを継続する。
【0042】
なお、上記のオーバーエッチングの際には、第2層30の表面に保護部208が露出している箇所では、第2層30の表面に電荷が蓄積しない。従って、オーバーエッチングを行う際にも、保護部208の近傍では、照射されたイオンが側方に弾かれることがない。言い換えると、保護部208は、オーバーエッチングの際に、その上方近傍に位置する第3層40を保護する役割を果たす。本実施例では、固定電極114の両側に保護部208が配置されているので、オーバーエッチングの際に、固定電極114の下端部が削られてしまうことを防ぐことができる。
【0043】
なお、上記のオーバーエッチングの際には、保護部208が配置されていない、枠状支持部106や固定電極支持部112の縁部でも、側方に弾かれたイオンによって下端部が削られる。しかしながら、枠状支持部106や固定電極支持部112の大きさに比べて削られる範囲は非常に小さく、枠状支持部106や固定電極支持部112の機能に影響を及ぼさないため、ここでは図示を省略している。
【0044】
次いで、図11に示すように、レジストパターン210を除去して、犠牲層である第2層30の酸化シリコンを選択的に除去する。これによって、第2層30から、絶縁支持部108および絶縁支持部113を除いた部分が除去される。
【0045】
そして、保護部208を除去することで、図1−図3に示す加速度センサ10を得ることができる。なお、保護部208については、除去することなく、そのまま残存させることもできる。
【0046】
上記の実施例では、深く細い溝部206に金属を充填して、中実の保護部208を形成する場合について説明した。これとは異なり、深く細い溝部206の内側表面のみに金属を成膜して、中空の保護部208を形成してもよい。
【0047】
オーバーエッチングの際に固定電極114の下端を保護する保護部208の平面的な配置については、例えば図12に示すように、固定電極114の両側面の外側に連続的に配置してもよいし、図13に示すように、固定電極114の両側面の外側に離散的に配置してもよい。
【0048】
上記の実施例では、保護部208の上端が第2層30と第3層40の界面に位置する場合について説明した。これとは異なり、例えば、図7で深く細い溝部206を第2層30と第3層40の界面まで延伸させた後、さらにディープRIE法によって、第3層40の中まで深く細い溝部206を延伸させることで、図16に示すように、保護部208の上端が固定電極114の下端より高くなるように形成することもできる。この構成の場合、オーバーエッチングによって可動電極116の下端部を加工する際に、保護部208が露出する面積を増大するので、固定電極114の下端部を確実に保護することができる。なお、保護部208は最終的に除去することもできるし、そのまま残存させることもできる。保護部208をそのまま残存させた場合、保護部208は可動電極116のY方向の変位に対する機械的なストッパとして機能する。
【0049】
上記の実施例では、導電性材料からなる第1層20と、絶縁性材料からなる第2層30と、導電性材料からなる第3層40の積層構造を有するSOIウェハ202から加速度センサ10を製造する場合について説明した。これとは異なり、例えば図17に示すように、より多くの層からなる積層構造を有するウェハから、同様の製造方法によって、加速度センサ10を製造することもできる。図17は、導電性の第1層216と、絶縁性の第2層218と、導電性の第3層220と、絶縁性の第4層222と、導電性の第5層224の積層構造を有する積層ウェハ226から、加速度センサ10を製造する場合について示している。
【0050】
上記の実施例では、上下方向に厚さが均一な保護部208を形成する場合について説明した。これとは異なり、例えば図14に示すように、上端部の厚さが下方の部分の厚さよりも大きな形状の保護部212を形成してもよい。このような保護部212は、図7で深く細い溝部206を延伸させる際に、酸化膜RIE法に代えて、等方性エッチングによって第2層30の酸化シリコンを深く細い溝部206の先端から側方に向けてエッチングすることで、形成することができる。このような構造とすることで、固定電極114の両側面の直下に確実に保護部212を形成することができ、オーバーエッチングによって可動電極116の下端部を加工する際に、固定電極114の下端部を確実に保護することができる。この場合も、深く細い溝部206に金属を充填して、中実の保護部212を形成してもよいし、深く細い溝部206の内側表面のみに金属を成膜して、中空の保護部212を形成してもよい。なお保護部212は最終的に除去することもできるし、除去することなく、そのまま残存させることもできる。保護部212を除去しないで残存させる場合には、固定電極114と保護部212が導通しているため、支持基板100の他の部位(少なくとも、Z方向検出部124の固定電極となる部位)と保護部212の間を絶縁するための構造を別途有することが好ましい。
【0051】
上記の実施例では、固定電極114の両側に一対の保護部208を配置する構成について説明した。これとは異なり、例えば図15に示すように、固定電極114より幅が厚く、固定電極114の両側からはみ出る大きさの保護部214を形成してもよい。この場合も、深く細い溝部206に金属を充填して、中実の保護部214を形成してもよいし、深く細い溝部206の内側表面のみに金属を成膜して、中空の保護部214を形成してもよい。なお保護部214は最終的に除去することもできるし、除去することなく、そのまま残存させることもできる。保護部214を除去しないで残存させる場合には、固定電極114と保護部214が導通しているため、支持基板100の他の部位(少なくとも、Z方向検出部124の固定電極となる部位)と保護部214の間を絶縁するための構造を別途有することが好ましい。
【0052】
上記の実施例では、保護部208が金属からなる場合について説明した。金属はシリコンに比べてエッチングレートが遅いので、可動電極116の下端部を除去するオーバーエッチングの際に、保護部208が消失してしまうことがなく、固定電極114の下端部を確実に保護することができる。これとは異なり、保護部208の材料としては、導電性の他の材料を用いることもできる。例えば、保護部208として不純物を添加したポリシリコンを用いる場合には、成膜や充填が容易である上、第1層20の単結晶シリコンとの間で熱膨張係数の差が小さく、基板100の反りを生じにくいという利点がある。この場合も、深く細い溝部206にポリシリコンを充填して、中実の保護部208を形成してもよいし、深く細い溝部206の内側表面のみにポリシリコンを成膜して、中空の保護部208を形成してもよい。また、図14に示すような保護部212や、図15に示すような保護部214を、ポリシリコンによって形成することもできる。
【実施例2】
【0053】
本実施例の加速度センサ50は、図1−図3に示す実施例1の加速度センサ10とほぼ同様の構成を供えているが、図18に示すように、固定電極114の下方の基板100に深く細い溝部206が形成されているだけでなく、可動電極116の下方の基板100に深く細い溝部228が形成されている点で、実施例1の加速度センサ10と異なる。
【0054】
以下では図19−図23を参照しながら、本実施例の加速度センサ10の製造方法について説明する。図19−図23は、図1のII−II線断面、すなわち、図18の断面に相当する。
【0055】
まず、実施例1の図5−図8までの各工程と同様の工程を実施して、不純物を添加した単結晶シリコンからなる第1層20と、酸化シリコンからなる第2層30と、不純物を添加した単結晶シリコンからなる第3層40の積層構造を有するSOIウェハ202に、浅く広い溝部204と、保護部208を形成する。
【0056】
次いで、図19に示すように、ディープRIE法によって、SOIウェハ202の背面側から、第1層20に、深く細い溝部228を形成する。深く細い溝部228は、第1層20を貫通して、第2層30との界面まで到達させる。深く細い溝部228は、製造される加速度センサ50の可動電極116の両側に配置されるように、その位置が設定されている。さらに、酸化膜RIE法によって、深く細い溝部228を延伸させて、第2層30を貫通して第3層40との界面まで到達させる。
【0057】
次いで、図20に示すように、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition; CVD)法によって、深く細い溝部228に、窒化シリコンを充填し、誘導部230を形成する。
【0058】
次いで、図21に示すように、第3層40の表面にレジストパターン210を形成して、ディープRIE法によって、第3層40をトリミングする。これによって、第3層40に、プルーフマス102、支持梁104、枠状支持部106、固定電極支持部112、固定電極114、可動電極116が形成される。
【0059】
次いで、図22に示すように、ディープRIE法をそのまま継続(オーバーエッチング)して、可動電極116の下端部を除去する。この際に、第2層30の表面に誘導部230が露出している箇所では、多くの電荷が蓄積するので、誘導部230が形成されていない箇所に比べて、照射されたイオンが側方に弾かれやすくなる。これによって、可動電極116の下端部が速やかに削られる。他方、保護部208が露出している箇所では、電荷がほとんど蓄積せず、照射されたイオンが側方に弾かれることがない。これによって、固定電極114の下端部が削られてしまうことを防ぐことができる。本実施例では、可動電極116の下端の高さが所定の高さになるまで、オーバーエッチングを継続する。
【0060】
次いで、図23に示すように、レジストパターン210を除去して、犠牲層である第2層30の酸化シリコンを選択的に除去する。これによって、第2層30から、絶縁支持部108および絶縁支持部113を除いた部分が除去される。
【0061】
そして、保護部208と誘導部230を除去することで、加速度センサ50を得ることができる。なお、保護部208と誘導部230については、除去することなく、そのまま残存させることもできる。
【0062】
実施例1において保護部208について説明したのと同様に、誘導部230は、深く細い溝部228に窒化シリコンを充填して、中実構造に形成してもよいし、深く細い溝部228の内側表面のみに窒化シリコンを成膜して、中空構造に形成してもよい。
【0063】
実施例1において保護部208について説明したのと同様に、誘導部230は、可動電極116の両側面の外側に連続的に配置してもよいし、可動電極116の両側面の外側に離散的に配置してもよい。
【0064】
実施例1において保護部208について説明したのと同様に、誘導部230は、上下方向に厚さが均一な形状に形成してもよいし、上端部の厚さが下方の部分の厚さよりも大きな形状に形成してもよい。このような誘導部230は、図19の工程で深く細い溝部228を延伸させる際に、酸化膜RIE法に代えて、等方性エッチングによって第2層30の酸化シリコンを深く細い溝部228の先端から側方に向けてエッチングすることで、形成することができる。
【0065】
実施例1において保護部208について説明したのと同様に、誘導部230は、可動電極116の両側に一対配置する構成としてもよいし、可動電極116より幅を厚くして、可動電極116の両側からはみ出るように配置する構成としてもよい。
【0066】
上記の実施例では、誘導部230が窒化シリコンからなる場合について説明したが、誘導部230の材料としては、第2層30の酸化シリコンよりも誘電率の高い材料であれば、どのような材料を用いても良い。
【0067】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0068】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0069】
10,50 加速度センサ
20 第1層
30 第2層
40 第3層
100 支持基板
102 プルーフマス
104 支持梁
106 枠状支持部
108 絶縁支持部
110 Y方向検出部
112 固定電極支持部
113 絶縁支持部
114 固定電極
116 可動電極
118 第1表面電極
120 第2表面電極
122 第3表面電極
124 Z方向検出部
202 SOIウェハ
204 浅く広い溝部
206 深く細い溝部
208,212,214 保護部
210 レジストパターン
216 第1層
218 第2層
220 第3層
222 第4層
224 第5層
226 積層ウェハ
228 深く細い溝部
230 誘導部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に沿った方向に相対的に移動可能な一対の対向電極を有するMEMSデバイスの製造方法であって、
基板となる第1導電体層の上に絶縁体層が積層し、絶縁体層の上に第2導電体層が積層した半導体ウェハを準備する工程と、
半導体ウェハの下側表面から、第1導電体層と絶縁体層を貫通して、第2導電体層に達する第1溝部を形成する工程と、
前記第1溝部に導電体からなる保護部を形成する工程と、
半導体ウェハの上側表面に、一対の対向電極の形状に対応したレジストパターンを形成する工程と、
反応性イオンエッチング法により、半導体ウェハの上側表面から、第2導電体層を選択的にエッチングして、第2導電体層に一対の対向電極を形成する工程と、
反応性イオンエッチング法を継続し、絶縁体層に蓄積した電荷によって側方に弾かれるイオンを利用して、一方の対向電極の下端部を削る工程と、
絶縁体層を選択的に除去する工程を備えており、
前記第1溝部は、一対の対向電極が対向する方向に関して、他方の対向電極の両側面の外側に配置されていることを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1導電体層が単結晶シリコンから構成されており、前記絶縁体層が酸化シリコンから構成されており、前記第2導電体層が単結晶シリコンから構成されており、前記保護部が金属から構成されていることを特徴とする請求項1のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1導電体層が単結晶シリコンから構成されており、前記絶縁体層が酸化シリコンから構成されており、前記第2導電体層が単結晶シリコンから構成されており、前記保護部がポリシリコンから構成されていることを特徴とする請求項1のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項4】
反応性イオンエッチング法を行う前に、以下の2つの工程、すなわち、
半導体ウェハの下側表面から、第1導電体層と絶縁体層を貫通して、第2導電体層に達する第2溝部を形成する工程と、
前記第2溝部に絶縁体層よりも誘電率の高い絶縁体からなる誘導部を形成する工程をさらに備えており、
前記第2溝部は、一対の対向電極が対向する方向に関して、前記一方の対向電極の両側面の外側に配置されていることを特徴とする請求項1のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第1導電体層が単結晶シリコンから構成されており、前記絶縁体層が酸化シリコンから構成されており、前記第2導電体層が単結晶シリコンから構成されており、前記誘導部が窒化シリコンから構成されていることを特徴とする請求項4のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項6】
第1導電体層に形成された基板と、
絶縁体層を挟んで第1導電体層に積層された第2導電体層に形成されており、基板に沿った方向に相対的に移動可能な一対の対向電極を有するMEMSデバイスであって、
一方の対向電極の下端部が側面から削られており、
基板に垂直な方向に基板を貫通する第1溝部が形成されており、
一対の対向電極が対向する方向に関して、他方の対向電極の両側面の外側に、第1溝部が配置されていることを特徴とするMEMSデバイス。
【請求項7】
前記第1溝部に導電体からなる保護部が形成されている請求項6のMEMSデバイス。
【請求項8】
基板に垂直な方向に基板を貫通する第2溝部が形成されており、
一対の対向電極が対向する方向に関して、一方の対向電極の両側面の外側に、第2溝部が配置されていることを特徴とする請求項6または7のMEMSデバイス。
【請求項9】
前記第2溝部に絶縁体層よりも誘電率の高い絶縁体からなる誘導部が形成されている請求項8のMEMSデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−157941(P2012−157941A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19885(P2011−19885)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】